JP7708134B2 - 超高強度鋼管杭及びその製造方法 - Google Patents
超高強度鋼管杭及びその製造方法Info
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Description
[1] 母材部と管軸方向にサブマージアーク溶接で形成された溶接部とを有する超高強度鋼管杭であって、
前記母材部の成分組成は、質量%で、
C:0.04~0.11%、
Si:0.55%以下、
Mn:1.30~2.00%、
P:0.030%以下、
S:0.006%以下、
Al:0.060%以下、
Nb:0.01~0.10%、
N:0.006%以下
を含有し、さらに、
Cu:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Cr:1.00%以下、
Mo:1.00%以下、
V:0.10%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0050%以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
REM:0.100%以下
のうちから選ばれた1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
前記母材部の成分は、式(1)で規定されるPcmが0.170~0.220であり、
前記溶接部の溶接金属の成分組成は、質量%で、
C:0.04~0.11%、
Si:0.20~0.55%、
Mn:1.30~2.00%、
Ni:0.50~5.00%、
Mo:0.30~5.00%、
N:0.010%以下、
O:0.060%以下、
P:0.030%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.100%以下
を含有し、さらに、
Cu:1.00%以下、
Cr:1.00%以下、
Nb:0.08%以下、
V:0.10%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0050%以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
REM:0.100%以下
のうちから選ばれた1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
前記溶接金属の成分は、式(1)で規定されるPcmが0.200~0.300であり、かつ式(2)で規定されるCSが0.0以上であり、
前記母材部の管軸方向の降伏強度が700MPa以上、前記母材部の管軸方向の引張強度が780~930MPaであり、
溶接継手の管周方向の引張強度が780MPa以上であり、
前記母材部および前記溶接金属は、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上である、超高強度鋼管杭。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
CS=5.1-36.3C-0.6Mn-Ni+1.4Mo ・・・(2)
ここで、式(1)および式(2)における各元素は含有量(質量%)を表し、含有しない元素は含有量を0とする。
[2] [1]に記載の超高強度鋼管杭の製造方法であって、
前記母材部の成分組成を有する鋼を、1000~1250℃に加熱後、圧延終了温度を650~950℃とする熱間圧延を行い、次いで500℃以下の冷却停止温度まで加速冷却を行い、次いで空冷により室温まで冷却して厚鋼板とし、
前記厚鋼板を冷間で管状に成形し、前記管状の突合せ部を管軸方向に、1極の成分組成あるいは複数電極の平均成分組成が、質量%で、C:0.01~0.14%、Si:0.20~0.70%、Mn:0.70~2.30%、Ni:1.0~10.0%およびMo:0.5~5.0%を含有する溶接ワイヤとフラックスとを用いて、サブマージアーク溶接を行い、前記溶接金属を形成する、超高強度鋼管杭の製造方法。
[3] [1]に記載の超高強度鋼管杭の製造方法であって、
前記母材部の成分組成を有する鋼を、1000~1250℃に加熱後、圧延終了温度を650~950℃とする熱間圧延を行い、次いで300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、次いで300~650℃の焼き戻し温度まで再加熱し、次いで室温まで冷却して厚鋼板とし、
前記厚鋼板を冷間で管状に成形し、前記管状の突合せ部を管軸方向に、1極の成分組成もしくは複数電極の平均成分組成が、質量%で、C:0.01~0.14%、Si:0.20~0.70%、Mn:0.70~2.30%、Ni:1.0~10.0%およびMo:0.5~5.0%を含有する溶接ワイヤとフラックスとを用いて、サブマージアーク溶接を行い、前記溶接金属を形成する、超高強度鋼管杭の製造方法。
はじめに、本発明の厚鋼板の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分組成における「%」は、すべて「質量%」を意味する。
Cは、加速冷却によって製造される厚鋼板の強度を高めるために最も有効な元素である。しかし、C含有量が0.04%未満では十分な強度を確保できず、C含有量が0.11%を超えると靭性および溶接割れ感受性を劣化させる。従って、C含有量は0.04~0.11%の範囲内とする。C含有量は、好ましくは0.05%以上であり、また好ましくは0.08%以下である。
Siは脱酸のために添加するが、Si含有量が0.55%を超えると靭性や溶接性を劣化させる。従って、Si含有量は0.55%以下の範囲内とする。Si含有量は好ましくは0.35%以下である。脱酸の効果を得るためには、Si含有量は0.03%以上とすることが好ましい。
Mnは安価であり、厚鋼板の強度および靭性の向上のために積極的にMnを添加するが、Mn含有量が1.30%未満ではその効果が十分ではなく、Mn含有量が2.00%を超えると溶接性を劣化させる。従って、Mn含有量は1.30~2.00%の範囲内とする。Mn含有量は、好ましくは1.60~2.00%である。
Pは不可避的不純物元素であり、中心偏析部の硬さを上昇させることで靭性や溶接性を劣化させる。この傾向はP含有量が0.030%を超えると顕著となる。従って、P含有量は0.030%以下とする。P含有量は、好ましくは、0.015%以下である。しかし、Pの過度の低減は、精錬コストの高騰を招くため、P含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、鋼板中においては一般にMnS系の介在物となることで靭性や溶接性を劣化させる。この傾向は、S含有量が0.006%を超えると顕著となる。従って、S含有量は0.006%以下とする。S含有量は好ましくは、0.003%以下である。しかし、Sの過度の低減は、精錬コストの高騰を招くため、S含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
Alは脱酸のために添加するが、Al含有量が0.060%を超えると靭性や溶接性を劣化させる。従って、Al含有量は0.060%以下の範囲内とする。Al含有量は、好ましくは0.010%以上であり、また好ましくは0.050%以下である。
Nbは、熱間圧延時の結晶粒の粒成長を抑制し、微細粒化により靭性を向上させる元素である。その効果を得るためにはNbを0.01%以上含有する必要がある。一方で、0.10%を超えてNbを含有すると溶接性を劣化させる。従って、Nb含有量は0.01~0.10%の範囲内とする。Nb含有量は、好ましくは0.02%以上であり、また好ましくは0.06%以下である。
Nは不可避的不純物元素であり、固溶することで靭性や溶接性を劣化させる。この傾向はN含有量が0.006%を超えると顕著となる。従って、N含有量は0.006%以下とする。しかし、精錬コスト低減のため、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Cuは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Cuを0.01%以上含有しないと効果がなく、1.00%を超えてCuを含有すると表面疵が発生する。従って、Cuを含有する場合は、Cu含有量を1.00%以下とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.50%以下である。Cu含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Niを0.01%以上含有しないと効果がなく、1.00%を超えてNiを含有すると表面疵が発生する。従って、Niを含有する場合は、Ni含有量を1.00%以下とすることが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは0.50%以下である。Ni含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Crは、焼き入れ性を高めることで強度の上昇に有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Crを0.01%以上含有しないと効果がなく、1.00%を超えてCrを含有すると溶接性が劣化する。従って、Crを含有する場合は、Cr含有量を1.00%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.50%以下である。Cr含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Moは、焼き入れ性を高めることで強度の上昇に有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Moを0.01%以上含有しないと効果がなく、1.00%を超えてMoを含有すると溶接性が劣化する。従って、Moを含有する場合は、Mo含有量を1.00%以下とすることが好ましい。Mo含有量は、より好ましくは0.50%以下である。Mo含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Vは析出強化により強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有できる。Vを0.01%以上含有しないと効果がなく、0.10%を超えてVを含有すると靭性を劣化させる。従って、Vを含有する場合は、V含有量を0.10%以下とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.05%以下である。V含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Tiは、TiNを形成してスラブ加熱時の結晶粒の粒成長を抑制するだけでなく、溶接熱影響部の結晶粒の粒成長を抑制し、厚鋼板及び厚鋼板の溶接熱影響部の微細粒化により靭性を向上させる。Tiは、必要に応じて含有できる。Tiを0.01%以上含有しないとその効果がなく、0.05%を超えてTiを含有すると靭性を劣化させる。従って、Tiを含有する場合は、Ti含有量を0.05%以下とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.03%以下である。Ti含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Bは焼入れ性を大幅に向上させ、強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有できる。Bを0.0001%以上含有しないとその効果はなく、0.0050%を超えてBを含有すると靭性が劣化する。従って、Bを含有する場合は、B含有量を0.0050%以下とする。B含有量は、好ましくは0.0001%以上である。
Caは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Ca含有量が0.0010%未満ではその効果がなく、0.0100%を超えてCaを含有しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性や内部品質を劣化させる。従って、Caを含有する場合は、Ca含有量を0.0100%以下とすることが好ましい。Ca含有量は、好ましくは0.0010%以上である。
Mgは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Mg含有量が0.0010%未満ではその効果がなく、0.0100%を超えてMgを含有しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性や内部品質を劣化させる。従って、Mgを含有する場合は、Mg含有量を0.0100%以下とすることが好ましい。Mg含有量は、好ましくは0.0010%以上である。
REM(Rare Earth Metal:希土類金属)は硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であり、必要に応じて含有できる。REM含有量が0.001%未満ではその効果がなく、0.100%を超えてREMを含有しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性や内部品質を劣化させる。従って、REMを含有する場合は、REM含有量を0.100%以下とすることが好ましい。REM含有量は、好ましくは0.001%以上である。
Pcmは溶接割れ感受性の指標として広く知られている。母材部の成分における、以下の式(1)で規定されるPcmが0.170未満になると、溶接熱影響部の硬さが低下することで、継手強度の低下を引き起こす。また、母材部の成分におけるPcmが0.220を超えると、溶接熱影響部の硬さが上昇し、その結果、溶接後に低温割れを引き起こす。従って、母材部の成分におけるPcmは0.170~0.220に制御する。母材部の成分におけるPcmは、好ましくは0.180以上であり、また好ましくは0.210以下である。
ここで、式(1)における各元素は含有量(質量%)を表し、含有しない元素は含有量を0とする。
本発明におけるサブマージアーク溶接により形成された溶接部の溶接金属の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分組成における「%」は、すべて「質量%」を意味する。
溶接金属のC含有量は0.04~0.11%の範囲内とする必要がある。C含有量が0.04%未満では溶接金属の強度が不足するとともに高温割れが発生する。C含有量が0.11%を超えると溶接金属に炭化物が多くなり、靭性が劣化する。C含有量は、好ましくは0.05%以上であり、また好ましくは0.08%以下である。
SiはP、Sの偏析を助長する働きがあるため、割れの発生を助長するだけでなく、Cの拡散を遅くする。そのため、Siはフェライト安定化元素ではあるがオーステナイトを安定化し、マルテンサイトの生成を助長し、その結果、溶接金属の靭性を劣化させる。そのため、Si含有量は0.55%以下とする必要がある。Si含有量が少なすぎると溶接金属中の酸素量が高まり、靭性を損なう恐れがあるので、Si含有量は0.20%以上とする必要がある。従って、溶接金属のSi含有量は0.20~0.55%の範囲内とする。
Si含有量は、好ましくは0.25%以上であり、また好ましくは0.50%以下である。
溶接金属のMn含有量は1.30~2.00%の範囲内とする必要がある。MnはPの凝固偏析を助長し、割れの発生を助長するだけでなく、積層欠陥エネルギーを高めるため、800℃以下でのオーステナイト安定化効果が著しい。これにより、ベイナイト変態を抑制しマルテンサイトが発生しやすくなるため、多量のMnの添加は溶接金属の靭性を劣化させる。よって、Mn含有量は2.00%以下とする必要がある。しかし、Mn含有量が1.30%より少ない場合には溶接金属の酸素量が高まり、むしろ靭性を損なう懸念があるので、Mnを1.30%以上含有することが必要である。Mn含有量は、好ましくは1.50%以上であり、また好ましくは1.80%以下である。
Niは高強度鋼の低温靭性を向上させるために重要な元素である。Mnとは異なり、Niの添加は積層欠陥エネルギーを低めるので、オーステナイトが機械的に安定化されにくく、延性が確保される。従って、靭性向上のためにNiを0.50%以上含有する必要がある。しかし、化学的にオーステナイトを安定化するため、多量にNiを添加すると最終凝固相にフェライト相が晶出しなくなり、低温割れが発生する。そのため、Mo、C、Mnとのバランスを取りながらCSが0.0以上になる範囲でNiを含有する必要がある。Ni含有量の上限としては5.00%である。従って、溶接金属のNi含有量は0.50~5.00%の範囲内とする。Ni含有量は、1.00%以上とすることが好ましい。Ni含有量は、4.00%以下とすることが好ましい。
Moは、フェライト安定化元素として溶接金属の凝固形態を制御するのに極めて重要な元素であり、かつ、オーステナイトを不安定化させて溶接金属ミクロ組織にベイナイトを生じさせ、靭性を向上させる極めて重要な働きを持つ。そのため、少なくともMo含有量は0.30%以上とすることが必要である。一方、Mo含有量が5.00%を超えると、特に外面溶接金属の靭性を損なう。従って、溶接金属のMo含有量は0.30~5.00%の範囲内とする必要がある。Mo含有量は、好ましくは0.40%以上であり、また好ましくは4.00%以下である。
溶接金属中の固溶N量を低減すると靱性が改善する。特にN含有量を0.010%以下とすることで溶接金属の靭性が著しく改善されるため、上限を0.010%とする。溶接材料製造時の精錬コスト増大抑制のため、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
溶接金属中の酸素量を低減すると靱性が改善する。特にO(酸素)の含有量を0.060%以下とすることで溶接金属の靭性が著しく改善されるため、上限を0.060%とする。溶接材料製造時の精錬コスト増大抑制のため、O含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Pは不可避的不純物元素であり、溶接金属の靭性や溶接性を劣化させる。この傾向はP含有量が0.030%を超えると顕著となる。従って、P含有量は0.030%以下とする。P含有量は、好ましくは0.015%以下である。しかし、Pの過度の低減は、溶接材料製造時の精錬コストの高騰を招くため、P含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、溶接金属中においては一般にMnS系の介在物となることで靭性や溶接性を劣化させる。この傾向は、S含有量が0.010%を超えると顕著となる。従って、S含有量は0.010%以下とする。S含有量は、好ましくは0.008%以下である。しかし、Sの過度の低減は、溶接材料製造時の精錬コストの高騰を招くため、S含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
Alは溶接金属の酸素量低減のために添加するが、Al含有量が0.100%を超えると靭性や溶接性を劣化させる。従って、Al含有量は0.100%以下の範囲内とする。Al含有量は、好ましくは0.080%以下である。Al含有量は、好ましくは0.010%以上である。
Cuは液相線と固相線間の温度範囲を広げ、高温割れの発生を助長するだけでなく、低温割れ感受性も高める働きがある。Cuは、必要に応じて含有できる。そのため、Cuを含有する場合は、溶接金属のCu含有量は1.00%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Crは、フェライト安定化元素として溶接金属の凝固形態を制御する元素であり、かつ、オーステナイトを不安定化させて溶接金属ミクロ組織にベイナイトを生じさせ、靭性を向上させる。Crは、必要に応じて含有できる。Cr含有量が1.00%を超えると、特に外面溶接金属の靭性を損なう。従って、Crを含有する場合は、溶接金属のCr含有量は1.00%以下とする。Cr含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Nbは溶接金属の高強度化に寄与するが、0.08%を超えてNbを含有すると溶接金属の靭性を損なう。Nbは、必要に応じて含有できる。従って、Nbを含有する場合は、溶接金属のNb含有量は0.08%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Vは溶接金属の高強度化に寄与するが、0.10%を超えてVを含有すると溶接金属の靭性を損なう。Vは、必要に応じて含有できる。従って、Vを含有する場合は、溶接金属のV含有量は0.10%以下とする。V含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Tiは溶接金属中では脱酸元素として働き、溶接金属中の酸素の低減に有効であり、必要に応じて含有できる。この効果を得るためには0.01%以上のTiの含有が必要である。しかし、Ti含有量が0.05%を超えた場合、余剰となったTiが炭化物を形成し溶接金属の靱性を劣化させるため、Ti含有量の上限を0.05%とする。従って、Tiを含有する場合は、溶接金属のTi含有量は0.05%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.01%以上である。
Bは、溶接金属の強度を確保するために添加することができる。Bは、必要に応じて含有できる。その効果を得るためには、B含有量を0.0001%以上とすることが有効である。但し、溶接金属中のB含有量が0.0050%を超えると靱性の低いマルテンサイト組織が生成する。そのため、Bを含有する場合は、溶接金属のB含有量は0.0050%以下とする。B含有量は、好ましくは0.0001%以上である。
Caは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Ca含有量が0.0010%未満ではその効果がなく、0.0100%を超えてCaを含有しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性や内部品質を劣化させる。従って、Caを含有する場合は、溶接金属のCa含有量を0.0100%以下とする。Ca含有量は、好ましくは0.0010%以上である。
Mgは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であり、必要に応じて含有できる。Mg含有量が0.0010%未満ではその効果がなく、0.0100%を超えてMgを含有しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性や内部品質を劣化させる。従って、Mgを含有する場合は、溶接金属のMg含有量を0.0100%以下とする。Mg含有量は、好ましくは0.0010%以上である。
REMは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であり、必要に応じて含有できる。REM含有量が0.001%未満ではその効果がなく、0.100%を超えてREMを含有しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性や内部品質を劣化させる。従って、REMを含有する場合は、溶接金属のREM含有量を0.100%以下とする。REM含有量は、好ましくは0.001%以上である。
Pcmは溶接割れ感受性の指標であるが、溶接金属の引張強度とも高い相関を持つ。溶接金属の成分における、上記の式(1)で規定されるPcmが0.200未満の場合、溶接金属の硬度が低下し、その結果、所望の溶接金属の引張強度を得ることができない。また、溶接金属の成分におけるPcmが0.300を超えた場合、溶接金属の硬度が上昇し、その結果、溶接金属の低温割れが発生する。そのため、溶接金属におけるPcmは0.200~0.300に制御する。溶接金属におけるPcmは、好ましくは0.210以上であり、また好ましくは0.290以下である。
CSとは、溶接金属の横割れ発生を定量化するパラメータである。溶接金属の成分組成をCS≧0.0となる範囲に制御することにより、溶接金属凝固時に粗大な結晶粒の生成を防止し、高強度溶接金属の横割れを防止することが可能である。従って、溶接金属における、以下の式(2)で規定されるCSを0.0以上とする。溶接金属凝固時に粗大な結晶粒の生成を防止するため、CSは0.5以下とすることが好ましい。
ここで、式(2)における各元素は含有量(質量%)を表し、含有しない元素は含有量を0とする。
本発明の超高強度鋼管杭は、以下に示す超高強度な母材部および溶接金属となる。鋼管杭の性能の規定理由を下記に示す。
本発明では、実際の溶接構造物用鋼板として適用実績の多いJIS SBHS700の要求値に合わせている。なお、鋼管杭は地震や津波などが発生した場合、管軸方向に応力を受けるため、管軸方向の降伏強度を規定している。
上述と同様に、実際の溶接構造物用鋼板として適用実績の多いJIS SBHS700の要求値に合わせている。なお、鋼管杭は地震や津波などが発生した場合、管軸方向に応力を受けるため、管軸方向の引張強度を規定している。
溶接継手の引張強度は、母材部と同じ引張強度下限を規定している。規定理由は同様のため、説明を省略する。
-10℃における溶接金属のシャルピー吸収エネルギー:27J以上
本発明では、寒冷地での鋼管杭の埋設を想定し、-10℃を規定温度としている。シャルピー試験片は、母材部については管軸方向で、かつ、1/4t(板厚1/4位置)から2mmVノッチ試験片を採取するものとし、溶接金属については管周方向で、かつ、1/2t(溶接部厚さの1/2位置)から2mmVノッチ試験片を採取するものとする。
本発明では、厚鋼板をTMCPプロセス(第1実施形態)あるいはDQTプロセス(第2実施形態)で製造することができる。なお、例えば津波防護構造などの鋼管杭に適用する観点からは、厚鋼板の板厚は6~60mmであることが好ましい。
TMCPプロセスで厚鋼板を製造する場合には、上記の母材部の成分組成を有する鋼(スラブ)を、1000~1250℃に加熱後、圧延終了温度を650~950℃とする熱間圧延を行い、次いで500℃以下の冷却停止温度まで加速冷却を行い、次いで空冷により室温まで冷却して、厚鋼板を製造する。
熱間圧延開始時に、鋼組織を完全にオーステナイト化するため、スラブを加熱する際の下限温度を1000℃とする。一方、1250℃を超える温度までスラブを加熱すると、オーステナイト粒成長が著しく、母材靱性が劣化するため、スラブを加熱する際の上限温度を1250℃とする。上記の加熱温度は、好ましくは1050℃以上であり、また好ましくは1200℃以下である。
熱間圧延は、その終了温度が最も母材性能と相関する。圧延終了温度が650℃未満となった場合、その後の加速冷却の効果が下がり、所望の強度を満足することができない。一方で圧延終了温度が950℃を超えると、結晶粒が粗大となり、母材靭性が劣化する。そのため、圧延終了温度は650~950℃とする。上記の加熱温度は、好ましくは700℃以上であり、また好ましくは900℃以下である。
冷却停止温度が500℃を超えると変態強化が不足し、所望の強度を満たせないため、冷却停止温度の上限を500℃とする。従って、冷却停止温度は500℃以下とする。冷却停止温度の下限は特にもうけないが、冷却停止温度が低いと母材靭性が劣化する傾向にあるため、冷却停止温度はより好ましくは300~500℃とする。
DQTプロセスで厚鋼板を製造する場合には、上記の母材部の成分組成を有する鋼(スラブ)を、1000~1250℃に加熱後、圧延終了温度を650~950℃とする熱間圧延を行い、次いで300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、次いで300~650℃の焼き戻し温度まで再加熱し、次いで室温まで冷却して、厚鋼板を製造する。なお、以下には第1実施形態と異なる条件について説明する。
冷却停止温度が300℃未満の場合、変態強化により焼き戻し前の強度が上昇し、焼き戻し後も所望の強度が確保できる。従って、冷却停止温度は300℃未満とする。冷却停止温度の下限は特にもうけないが、冷却停止温度が低いと母材靭性が劣化する傾向にあるため、冷却停止温度は10℃以上とすることが好ましい。
焼き戻し温度が300℃未満の場合、転位の固着が十分に実現できず、焼き戻し効果が得られないため、焼き戻し温度を300℃以上とする。また、焼き戻し温度が650℃を超えると転位の消失が大きくなり、所望の強度が得られないため、焼き戻し温度の上限を650℃とする。従って、焼き戻し温度は300~650℃とする。上記の焼き戻し温度は、好ましくは350℃以上であり、また好ましくは600℃以下である。
焼き戻し温度にまで再加熱した後、例えば、空冷や水冷により室温まで冷却する。
本発明のサブマージアーク溶接に用いる溶接ワイヤの成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分組成における「%」は、すべて「質量%」を意味する。また、サブマージアーク溶接は複数電極(複数の溶接ワイヤ)を用いて溶接を行うことがあるが、その場合、平均成分組成を用いる。この平均成分組成が以下の数値範囲内にあればよい。
溶接ワイヤのC含有量は、上記の溶接金属で必要とされるC量の範囲を得るために、母材希釈および大気から入る量を勘案して0.01~0.14%の範囲内とする。溶接ワイヤのC含有量は、好ましくは0.04%以上であり、また好ましくは0.12%以下である。
溶接ワイヤのSi含有量は、上記の溶接金属で必要とされるSi量の範囲を得るために、母材希釈およびフラックス中のSiO2からの還元を考慮して0.20~0.70%の範囲内とする。
溶接ワイヤのMn含有量は、上記の溶接金属で必要とされるMn量の範囲を得るために、母材希釈および脱酸による消耗ロスを考慮して0.70~2.30%の範囲内とする。
溶接ワイヤのNi含有量は、上記の溶接金属で必要とされるNi量の範囲を得るために、1.0~10.0%の範囲内とする。
溶接ワイヤのMo含有量は、上記の溶接金属で必要とされるMo量の範囲を得るために、0.5~5.0%の範囲内とする。
Pは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも0.050%以下にする。
Sは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも0.010%以下にする。
Alは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも0.100%以下にする。
Nは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも0.0100%以下にする。
Crは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも3.0%以下にする。
Vは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも0.10%以下にする。
Tiは溶接金属での上限を満たすために、少なくとも0.10%以下にする。
Claims (3)
- 母材部と管軸方向にサブマージアーク溶接で形成された溶接部とを有する超高強度鋼管杭であって、
前記母材部の成分組成は、質量%で、
C:0.04~0.11%、
Si:0.55%以下、
Mn:1.30~2.00%、
P:0.030%以下、
S:0.006%以下、
Al:0.060%以下、
Nb:0.01~0.10%、
N:0.006%以下
を含有し、さらに、
Cu:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Cr:1.00%以下、
Mo:1.00%以下、
V:0.10%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0050%以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
REM:0.100%以下
のうちから選ばれた1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
前記母材部の成分は、式(1)で規定されるPcmが0.170~0.220であり、
前記溶接部の溶接金属の成分組成は、質量%で、
C:0.04~0.11%、
Si:0.20~0.55%、
Mn:1.30~2.00%、
Ni:0.50~5.00%、
Mo:0.30~5.00%、
N:0.010%以下、
O:0.060%以下、
P:0.030%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.100%以下
を含有し、さらに、
Cu:1.00%以下、
Cr:1.00%以下、
Nb:0.08%以下、
V:0.10%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0050%以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
REM:0.100%以下
のうちから選ばれた1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
前記溶接金属の成分は、式(1)で規定されるPcmが0.200~0.300であり、かつ式(2)で規定されるCSが0.0以上であり、
前記母材部の管軸方向の降伏強度が700MPa以上、前記母材部の管軸方向の引張強度が780~930MPaであり、
溶接継手の管周方向の引張強度が780MPa以上であり、
前記母材部および前記溶接金属は、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上である、超高強度鋼管杭。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
CS=5.1-36.3C-0.6Mn-Ni+1.4Mo ・・・(2)
ここで、式(1)および式(2)における各元素は含有量(質量%)を表し、含有しない元素は含有量を0とする。 - 請求項1に記載の超高強度鋼管杭の製造方法であって、
前記母材部の成分組成を有する鋼を、1000~1250℃に加熱後、圧延終了温度を650~950℃とする熱間圧延を行い、次いで500℃以下の冷却停止温度まで加速冷却を行い、次いで空冷により室温まで冷却して厚鋼板とし、
前記厚鋼板を冷間で管状に成形し、前記管状の突合せ部を管軸方向に、1極の成分組成あるいは複数電極の平均成分組成が、質量%で、C:0.01~0.14%、Si:0.20~0.70%、Mn:0.70~2.30%、Ni:1.0~10.0%およびMo:0.5~5.0%を含有する溶接ワイヤとフラックスとを用いて、サブマージアーク溶接を行い、前記溶接金属を形成する、超高強度鋼管杭の製造方法。 - 請求項1に記載の超高強度鋼管杭の製造方法であって、
前記母材部の成分組成を有する鋼を、1000~1250℃に加熱後、圧延終了温度を650~950℃とする熱間圧延を行い、次いで300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、次いで300~650℃の焼き戻し温度まで再加熱し、次いで室温まで冷却して厚鋼板とし、
前記厚鋼板を冷間で管状に成形し、前記管状の突合せ部を管軸方向に、1極の成分組成もしくは複数電極の平均成分組成が、質量%で、C:0.01~0.14%、Si:0.20~0.70%、Mn:0.70~2.30%、Ni:1.0~10.0%およびMo:0.5~5.0%を含有する溶接ワイヤとフラックスとを用いて、サブマージアーク溶接を行い、前記溶接金属を形成する、超高強度鋼管杭の製造方法。
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