本発明の溶存水素濃度測定装置の第1の実施形態における全体の装置構成を概略的に示すブロック図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置における作用電極の構成例を概略的に示す斜視図である。
BDD膜及びPt-BDD膜のSEM像を示す図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において複数回のCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において溶存水素濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において溶存水素濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
同一の放置時間の被測定液について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の応答電流のピーク電流密度と、GC測定による溶存水素濃度とをプロットした特性図である。
作用電極にPt電極を用いた場合のCV測定結果を示す特性図である。
作用電極にPt-BDD電極を用いた場合のCV測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において多数回のCV測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において多数回のCV測定を行った際の応答電流のピーク電流密度と測定回数とをプロットした特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてCV測定前及びCV測定後のPt-BDD膜のSEM像を示す図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の結果を示す特性図である。
硫酸溶液のCV測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水をベースに作製した実サンプルについてのCV測定結果を示す特性図である。
本発明の溶存水素濃度測定装置の第2の実施形態における全体の装置構成を概略的に示すブロック図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
KCl水溶液による各KCl濃度の試料及び水道水由来の水溶液による各KCl濃度の試料について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定を行って得た応答電流のピーク値の平均値と、電気伝導度の測定値とをプロットした特性図である。
KCl水溶液と水道水由来の水溶液とのKCl濃度及び電気伝導度の関係を示す特性図である。
KCl水溶液における応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係を表す対応式に相当する特性図である。
KCl水溶液における電気伝導度に対する飽和水素濃度の特性図である。
KCl水溶液における電気伝導度と水素濃度差との関係を示す特性図である。
KCl水溶液における電気伝導度と水素濃度比との関係を示す特性図である。
水道水由来の水溶液における電気伝導度と飽和水素濃度との関係を示す特性図である。
水道水由来の水溶液における電気伝導度と水素濃度差との関係を示す特性図である。
水道水由来の水溶液における電気伝導度と水素濃度比との関係を示す特性図である。
図1は本発明の溶存水素濃度測定装置の第1の実施形態における全体の装置構成を概略的に示しており、図2は図1の溶存水素濃度測定装置における作用電極の構成例を概略的に示している。この実施形態は、電気伝導度を考慮する必要のない被測定液の溶存水素濃度を測定する装置の例である。
図1において、10は水素水等の溶存水素濃度を測定すべき被測定液11が存在するセル、12は被測定液11中に浸漬された作用電極(WE)、13は被測定液11中に浸漬され作用電極12の電位を決定する際の基準となる参照電極(RE)、14は被測定液11中に浸漬され作用電極12との間の電流回路を形成する対電極(CE)、15はこれら作用電極12、参照電極13及び対電極14に電気的に接続された測定回路をそれぞれ示している。
測定回路15は、CV測定を行うための、ポテンショスタット(定電位電解装置)15aと、このポテンショスタット15aに接続されており本実施形態ではコンピュータから構成される情報処理装置15bとを備えている。ポテンショスタット15aによって作用電極12と参照電極13との間の電位差を直線的に掃引し、情報処理装置15bによって作用電極12と対電極14との間を流れる応答電流のピーク値を検出することによって被測定液11中の溶存水素濃度を取得する。
情報処理装置15bは、検出した応答電流のピーク値から、被測定液11中の溶存水素濃度を取得する。即ち、情報処理装置15bには、応答電流のピーク値と溶存水素濃度との対応式又は対応データがあらかじめ設定されて記憶されており、ピーク値が検出されるとこの対応式又は対応データから溶存水素濃度を得ることができる。単なる一例であるが、対応式は、Hcon=a×Apeak+bで表される。ここで、Hconは溶存水素濃度、Apeakは応答電流のピーク値、a及びbは定数である。
本実施形態においては、作用電極12には白金(Pt)が修飾された導電性ダイヤモンド電極を用いており、参照電極13にはAg/AgClを用いており、対電極14には白金(Pt)を用いている。
図2に示すように、この作用電極12は、シリコン基板12a上に導電性ダイヤモンド膜であるボロンドープドダイヤモンド(BDD)膜12bを成膜し、そのBDD膜12bの表面に白金(Pt)12cが電着によって修飾して形成されている。
BDD膜12bの成膜は、例えば、シリコンウエハの鏡面側をダイヤモンドパウダ付きの研磨パッドで研磨し、メタノールで超音波洗浄して乾燥させた後、マイクロ波プラズマ化学気相成長法(マイクロ波プラズマCVD法)を用いて、水素ガス、炭素源及びホウ素源を供給することで行った。単なる一例であるが、プラズマ出力は5000W、成膜時間は6時間とした。
白金(Pt)の修飾は、クロノアンペロメトリーにより、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)を還元処理し、BDD膜12bの表面に白金12cを電着した。ここで、作用電極にBDD膜、対電極に白金(Pt)、参照電極にAg/AgClを用いた。溶液は、0.5M 硫酸(H2SO4)を用いて1mM H2PtCl6を調製した。印加電圧は-0.3V、印加時間は150秒であった。
図3は成膜したBDD膜及びその上に白金(Pt)を修飾したPt-BDD膜のSEM像を示している。同図(A)はBDD膜、同図(B)はPt-BDD膜であり、倍率は10000倍である。同図(B)に示すように、BDD膜上に、白い粒のように見えるPtが修飾されている。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置について、以下に述べるように、種々の検討を行った。
まず、CV測定の再現性及び溶存水素濃度の測定可能性について検討した。
図2に示すPt-BDD膜12bを有する作用電極12を作成し、図1に示す装置によりCV測定を行った。参照電極13はAg/AgCl、対電極14はPtとした。前処理としては、0.1M KCl(塩化カリウム)を用い、印加電圧が0.6V、印加時間が30秒のクロノアンペロメトリーを行った。作用電極12の研磨処理は行っていない。被測定液としては、0.1M KCl溶液を入れた容器に高圧で水素ガスを充填して作製した水素水を用いた。水素ガスは株式会社ドクターズマン製の水素充填マシンDAYS(登録商標)によって取得した。CV測定における印加電圧の掃引は-6V~+0.2V、掃引速度は100mV/sであった。
再現性については、CV測定を3回(1st~3rd)行って調べた。図4はCV測定結果であるボルタモグラムを示している。横軸は作用電極12の参照電極13に対する電位(V)、縦軸は作用電極12及び対電極14間の電流の電流密度(μA/cm2)である。同図から分かるように、3回のCV測定において良好な再現性が得られている。その結果、本実施形態の構成によれば(Pt-BDD膜12bを有する作用電極12を用いれば)、水素水のCV測定が可能であることが分かる。
溶存水素濃度の測定可能性については、CV測定の溶存水素濃度依存性を調べた。溶存水素濃度は、水素ガスを充填した被測定液の容器の蓋を開け、空気中に放置した時間(0分、30分、60分、90分、120分)によって変化させた。図5はその測定結果を示している。横軸及び縦軸は図4の場合と同じである。同図から分かるように、時間の経過と共に溶存水素濃度が低下すると、応答電流のピーク電流密度も低下している。従って、本実施形態の構成によれば(Pt-BDD膜12bを有する作用電極12を用いれば)、溶存水素濃度の測定が可能であることが分かる。
次に、本実施形態の溶存水素濃度測定装置についてCV測定による応答電流のピーク電流密度と、ガスクロマトグラフィ(GC)の測定による溶存水素濃度との対応関係を検討した。
前述の場合と同様に、水素ガスを充填した被測定液を作製してから容器の蓋を開け、空気中に放置した時間(5分、30分、60分、90分、120分)毎に本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定とGCによる溶存水素濃度測定とを行った。図6は本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の結果を示している。横軸及び縦軸は図4の場合と同じである。
GC測定に使用した機器は、株式会社タイヨウ製のTRIlyzer mBA-3000であり、検出器としては半導体ガスセンサ、カラムはパックドカラム、キャリアガスは合成空気、インジェクション量は1mL(25℃)であった。このGCによる溶存水素濃度測定結果を表1に示す。
図7は、同一の放置時間(同一の溶存水素濃度)の被測定液について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の応答電流のピーク電流密度と、GC測定による溶存水素濃度とをプロットした特性図である。横軸は溶存水素濃度(ppm)、縦軸は応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)である。同図から、CV測定の応答電流のピーク電流密度とGC測定の溶存水素濃度との検量線が直線に乗り、CV測定による溶存水素濃度の測定が可能であることが分かる。なお、この検量線の近似式は、応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)=130×溶存水素濃度(ppm)-136となり、変換すると、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)+1.05となる。さらに、この計測における電極のピーク電流密度(μA/cm2)=1.5×ピーク値(μA)と変換することが可能であり、ピーク値(μA)に変換すると、溶存水素濃度(ppm)=0.01155×応答電流のピーク値(μA)+1.05となる。これは、前述した対応式Hcon=a×Apeak+bにおいて、a=0.01155、b=1.05とした場合に相当する。この式から、応答電流のピーク値Apeakが得られれば、溶存水素濃度Hconが求められることとなる。
次に、本実施形態の溶存水素濃度測定装置の作用電極12に関してCV測定の研磨前処理が不要であることを検討した。
図8は作用電極として従来技術のようにPt電極を用いた場合の4回(1st~4th)のCV測定結果を示し、図9は本実施形態のようにPt-BDD電極を用いた場合の3回(1st~3rd)のCV測定結果を示している。横軸及び縦軸は図4の場合と同じである。Pt電極の場合も、Pt-BDD電極の場合も、前処理としての研磨は行われていない。
作用電極としてPt電極を用いた場合、図8に示すように測定回数を重ねるごとに応答電流のピーク電流密度が低減するのに対して、作用電極としてPt-BDD電極を用いた場合、図9に示すように測定回数を重ねても応答電流のピーク電流密度はさほど変化せず、安定して再現性のあることが確認された。これは、Pt電極が研磨による前処理を必要とするのに対し、Pt-BDD電極が研磨による前処理を必要としないことを意味している。
次に、本実施形態の溶存水素濃度測定装置における作用電極12の繰り返し再現性及び耐久性について検討した。
図10は本実施形態の溶存水素濃度測定装置において、同一の作用電極12を用いた場合の28回(1~28)のCV測定結果を示している。横軸及び縦軸は図4の場合と同じである。また、図11は28回のCV測定における応答電流のピーク電流密度と測定回数とをプロットした図である。同図において、横軸は測定回数、縦軸は作用電極12及び対電極14間の電流の電流密度(μA/cm2)である。なお、被測定液は測定ごとに作製した。
図10に示すように、28回のCV測定において良好な再現性が得られている。また、図11に示すように、同一の作用電極でCV測定を重ねていっても、応答電流のピーク電流密度は、多少のばらつきはあるものの、全体としては減少していないことが分かる。
図12はCV測定前及び28回のCV測定後のPt-BDD膜のSEM像を示している。同図(A)はCV測定前、同図(B)は28回のCV測定後であり、倍率は4000倍である。同図(B)に示すように、Pt-BDD膜上に修飾されたPtが多少は減少しているが、電極自体に劣化がなく安定性が確認された。
次に、上述した耐久性試験において生じた応答電流のピーク電流密度のばらつきについて検討した。
まず、同じ条件で作製した複数の水素水について、CV測定とGC測定とを行い溶存水素濃度を測定した。図13は本実施形態の溶存水素濃度測定装置による5回(1st~5th)のCV測定の結果を示している。横軸及び縦軸は図4の場合と同じである。
GC測定に使用した機器は、株式会社タイヨウ製のTRIlyzer mBA-3000であり、検出器としては半導体ガスセンサ、カラムはパックドカラム、キャリアガスは合成空気、インジェクション量は1mL(25℃)であった。このGCによる溶存水素濃度測定結果を表2に示す。
一方、被測定液として、硫酸溶液(0.1MのKClに1mMのH2SO4)を用い、繰り返しCV測定を行った。硫酸をCV測定した場合、水素水と同様に水素のピークを見ることが可能である。また、硫酸の濃度は1mMと一定に維持される。図14はこの硫酸溶液の30回(1~30)のCV測定結果を示している。横軸及び縦軸は図4の場合と同じである。同図から、30回の連続測定においてCV測定結果は全て一致していることが分かる。
図13及び表2と、図14とから、応答電流のピーク電流密度のばらつきは、作用電極の精度に基づくものではなく、作製した水素水の溶存水素のばらつきに基づくものであることが推察された。その結果、Pt-BDDによる作用電極12の耐久性が証明された。
以上述べた検討においては、水素水に導電性を持たせるために電解質としてKClを添加している。しかしながら、市販されている水素水の多くは水道水に水素を充填して作製されているため、実サンプルとして、水道水をベースに作製した水素水についてCV測定の検討を行った。
図15は水道水をベースに作製した実サンプルについてのCV測定結果を示しており、KClを0.1M添加した場合、KClを添加しない場合のCV測定の応答電流のピーク電流密度を表している。同図において、横軸は測定回、縦軸は応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)である。同図から分かるように、KClを添加せず電解質が少ない場合、応答電流のピーク電流密度は下がるが、5回の測定で再現性が得られた。その結果、被測定液を調製しないでも、水道水をベースに作製した実サンプルでCV測定が可能であり、溶存水素濃度を計測できることが分かった。
以上説明したように、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によれば、Pt-BDD電極である作用電極を用いてCV測定により応答電流のピーク電流密度を検出し、被測定液中の溶存水素濃度を取得しているため、電気化学測定法によって、再現性良く溶存水素濃度を測定することが可能である。また、Pt-BDD電極を用いているため、測定前に電極の研磨処理が不要となり、安定して高感度に溶存水素濃度の測定を行うことができる。また、Pt-BDD電極は、繰り返し測定した場合の良好な安定性及び耐久性が確認されている。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置は、電気伝導度を考慮する必要のない被測定液の溶存水素濃度を測定する場合に用いて好適である。即ち、日本の水道水で作製した水素水を測定する場合など、平均的水道水(例えば、電気伝導度10mS/m程度なる水道水)を基準に水素濃度と応答電流のピーク値(又はピーク電流密度)にて検量線を得ておけば、電気伝導度の考慮は不要である。これは、例えば、水道水、ミネラル水、血液、輸液、透析水等を被測定液とする場合である。
図16は本発明の溶存水素濃度測定装置の第2の実施形態における全体の装置構成を概略的に示している。この実施形態は、電気伝導度を考慮する必要のある被測定液の溶存水素濃度を測定する装置の例である。
図16において、110は水素水等の溶存水素濃度を測定すべき被測定液111が存在するセル、112は被測定液111中に浸漬された作用電極(WE)、113は被測定液111中に浸漬され作用電極112の電位を決定する際の基準となる参照電極(RE)、114は被測定液111中に浸漬され作用電極112との間の電流回路を形成する対電極(CE)、115はこれら作用電極112、参照電極113及び対電極114に電気的に接続された測定回路をそれぞれ示している。また、116は測定回路115に接続されており、被測定液111の想定される電気伝導度値を選択する選択スイッチを示している。選択スイッチ116は、電気伝導度値の選択をアナログ式又はデジタル式に行う接点切替スイッチ、ボリューム又はデジタルスイッチである。
測定回路115は、CV測定を行うための、ポテンショスタット(定電位電解装置)115aと、このポテンショスタット115aに接続されており本実施形態ではコンピュータから構成される情報処理装置115bとを備えている。選択スイッチ116はこの情報処理装置115bに接続されている。ポテンショスタット115aによって作用電極112と参照電極113との間の電位差を直線的に掃引し、情報処理装置115bによって作用電極112と対電極114との間を流れる応答電流のピーク値を検出し、出したピーク値から測定液111中の溶存水素濃度を取得する。この場合、選択スイッチ116で指定された電気伝導度値に応じて溶存水素濃度を補正する。
情報処理装置115bは、検出した応答電流のピーク値と選択スイッチ116によって指定された電気伝導度とから、被測定液111中の溶存水素濃度を取得する。即ち、情報処理装置115bには、あらかじめ計測して得た被測定液の複数の電気伝導度値が設定されており、選択スイッチ116からの入力によって1つの電気伝導度値が指定される。応答電流のピーク値から溶存水素濃度を算出する際に、この指定された電気伝導度値によって、溶存水素濃度の補正が行われる。即ち、電気伝導度と応答電流のピーク値とは直線の対応関係にあり、応答電流のピーク値は被測定液の電気伝導度に影響を受ける。このため、本実施形態では、この影響を排除するように、応答電流のピーク値から算出される溶存水素濃度を電気伝導度に応じて補正している。
情報処理装置115bには、応答電流のピーク値と溶存水素濃度との対応式又は対応データがあらかじめ設定されて記憶されており、ピーク値が検出されると、この対応式又は対応データから溶存水素濃度を得ることができる。得られた溶存水素濃度に、電気伝導度に基づく補正が行われ、最終的な溶存水素濃度が得られる。単なる一例であるが、応答電流のピーク値と溶存水素濃度との対応式は、Hcon=a×Apeak+bで表され、これに電気伝導度の補正を行う場合は、Hcon=a×Apeak+b+c、又はHcon=(a×Apeak+b)×dで表される。ここで、Hconは溶存水素濃度、Apeakは応答電流のピーク値、a及びbは定数、cは加算で補正を行う場合の水素濃度差、dは乗算で補正を行う場合の水素濃度比である。
本実施形態においては、作用電極112には白金(Pt)が修飾された導電性ダイヤモンド電極を用いており、参照電極113にはAg/AgClを用いており、対電極114には白金(Pt)を用いている。
作用電極112の構成及び作製方法は、第1の実施形態における図2に示す作用電極12と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態において、CV測定の応答電流のピーク値を被測定液の電気伝導度に応じてどのように補正すべきかを検討するために、まず、種々のKCl濃度のKCl水溶液である試料を用意すると共に水道水をKClで調製して得られた水溶液(以下、水道水由来の水溶液)である試料を用意し、それら試料の電気伝導度を測定した。
試料の電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製のコンパクト電気伝導率計LAQUAtwinを用いた。この電気伝導率計は、被測定液中に1対の通電用電極を有する電気伝導率セルを浸漬し、これに電流を流して抵抗を測定して電気伝導率を求めるものである。
KCl水溶液による種々のKCl濃度の試料について測定した電気伝導率を表3に示し、水道水由来の水溶液による種々のKCl濃度の試料について測定した電気伝導率を表4に示す。なお、表4において、KCl濃度が0のデータは、KClが添加されておらず、水道水のみの場合である。
これら種々のKCl濃度の試料の各々について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置により繰り返しCV測定を行った。図17はKCl水溶液によるKCl濃度1mMの試料の4回(1st~4th)の測定結果であり、図18はKCl水溶液によるKCl濃度2.5mMの試料の3回(1st~3rd)の測定結果であり、図19はKCl水溶液によるKCl濃度5mMの試料の5回(1st~5th)の測定結果であり、図20はKCl水溶液によるKCl濃度7.5mMの試料の9回(1st~9th)の測定結果であり、図21はKCl水溶液によるKCl濃度10mMの試料の9回(1st~9th)の測定結果である。また、図22は水道水由来の水溶液によるKCl濃度1mMの試料の10回(1st~10th)の測定結果であり、図23は水道水由来の水溶液によるKCl濃度2.5mMの試料の12回(1st~12th)の測定結果であり、図24は水道水由来の水溶液によるKCl濃度5mMの試料の16回(1st~16th)の測定結果であり、図25は水道水由来の水溶液によるKCl濃度7.5mMの試料の14回(1st~14th)の測定結果であり、図26は水道水由来の水溶液によるKCl濃度10mMの試料の11回(1st~11th)の測定結果である。これらの図において、横軸は作用電極12の参照電極13に対する電位(V)、縦軸は作用電極12及び対電極14間の電流(μA)である。
図27は、KCl水溶液による各KCl濃度の試料及び水道水由来の水溶液による各KCl濃度の試料について、CV測定を行って得た応答電流のピーク値の平均値とその電気伝導度の測定値とをプロットした特性図である。横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は応答電流のピーク値(ピーク電流値)(μA)であり、AがKCl水溶液による試料、Bが水道水由来の水溶液による試料である。同図から、CV測定の応答電流のピーク値と電気伝導度との検量線が直線に乗った。この検量線の近似式は、KCl水溶液については、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851となり、応答電流のピーク値を電流密度に換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)=0.414×電気伝導度(mS/m)+47.777となる。水道水由来の水溶液については、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932となり、応答電流のピーク値を電流密度に換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)=0.375×電気伝導度(mS/m)+52.398となる。
図28は、表3及び表4に基づいて、KCl水溶液と水道水由来の水溶液とのKCl濃度及び電気伝導度の関係を示している。横軸はKCl(mM)、縦軸は電気伝導度(mS/m)である。KCl水溶液の電気伝導度は、一般に、「近似0」がゼロ濃度の直線性を示すが、図28に示す特性もKCl水溶液の電気伝導度は「近似0」となっている。また、水道水由来の水溶液では、KCl濃度が1mM程度では電気伝導度が水道水の影響を受けているが、KCl濃度が2.5mM以上(電気伝導度が50mS/m以上)では、電気伝導度がほとんどKClに基づく値となっている。
次に、CV測定の応答電流のピーク値を被測定液の電気伝導度に応じてどのように補正すべきかを実際に検討する。
KCl水溶液による検討
KCl水溶液について、図27から応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851なる対応式Aが得られ、電流密度(μA/cm2)=1.5×電流(μA)の関係から換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)=0.414×電気伝導度(mS/m)+47.777が得られる。本来は、KCl濃度により最大に溶解する溶存水素量が同一となることはないが、水道水の大気中での最大溶解濃度を1.6ppmとして演算すると仮定している。
また、第1の実施形態で説明した応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係から、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)+1.05なる対応式が得られる。図29はこの対応式に相当する応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係を示している。横軸は応答電流のピーク値(μA)、縦軸は溶存水素濃度(ppm)である。
前述したように、水道水のみの場合の電気伝導度は16.7mS/mであり、水道水の大気中の最大溶存水素濃度は1.6ppmとなり、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=(1.6-1.05)/(0.0077×1.5)=47.62μAとなる。計測値は応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851=0.2759×16.7+31.851=36.46μAとなる。
演算値と計測値との間に約11μAの差が生じている。この11μAは溶存水素濃度に換算すると、溶存水素濃度差(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)=0.0077×1.5×11=0.13ppmとなる。この差が許容範囲か否かは用途に応じると思われ、その被測定水溶液の用途によっては電気伝導度補正が必要になる。
日本における水道水の電気伝導度は、ほぼ5~20(mS/m)であり、応答電流のピーク値、ピーク値の電流密度(ピーク電流密度)、及び溶存水素濃度を求めると、表5に示すようになる。
この表5より、求められた溶存水素濃度には、0.05ppm程度の差があるのみであり、これは誤差範囲である。従って、日本の水道水からの水素水を計測するならば、電気伝導度10mS/m程度なる標準水を基準に水素濃度と応答電流のピーク値(又はピーク電流密度)にて検量線を得ておけば、測定結果への電気伝導度の影響は無視できることが分かる。水道水の他に、ミネラル水、血液、輸液、透析水等を被測定液とする場合も、それらの中心的被測定液での標準検量線が得られれば電気伝導度は無視することができる。
また、図28に示したKCl濃度と電気伝導度との関係から、電気伝導度範囲を0~150mS/mの広範囲で計測を行う場合には、補正を行うことが望ましい状況となる。ここで、電気伝導度が16.4mS/mにおける飽和水素濃度は1.6ppmであり、応答電流のピーク値の電流密度150μA/cm2(電流値100μA)におけるピーク電流密度値と溶存水素濃度との関係から飽和濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×電流密度(μA/cm2)+1.05=0.0077×150+1.05=2.20(ppm)となる。この100μAのピーク値となる電気伝導度は、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851を変換して、電気伝導度(mS/m)=(ピーク値(μA)‐31.851)/0.2759=(100-31.851)/0.2759=247(mS/m)となる。図30は、電気伝導度が16.4mS/mのときの飽和水素濃度を1.6ppmとし、電気伝導度が247mS/mのときの飽和水素濃度を2.2ppmとして表した、電気伝導度に対する飽和水素濃度の特性である。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は飽和水素濃度(ppm)である。
同図より、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0026×電気伝導度(mS/m)+1.5573が成り立つことが分かる。この結果と計測値結果とをまとめると、表6に示すようになる。表6において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0026×電気伝導度(mS/m)+1.5573で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との差が水素濃度差(ppm)であり、水素濃度差(ppm)=-0.0006×電気伝導度(mS/m)+0.1394で与えられる。
図31は表6における電気伝導度(mS/m)と水素濃度差(ppm)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度差(ppm)である。応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水素濃度差を加算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
即ち、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05-(0.0006×電気伝導度(mS/m))+0.1394=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)-0.0006×電気伝導度(mS/m)+1.1894で求めることができる。
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表7のようになる。
表7より、以上の補正方法によれば、誤差が1%程度生じるが、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
因みに、上述したような加算補正では無く、乗算補正で補正後演算水素濃度を求めると、表8に示すようになる。表8において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0026×電気伝導度(mS/m)+1.5573で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との比が水素濃度比であり、水素濃度比=演算飽和水素濃度(ppm)/計測演算飽和水素濃度(ppm)で与えられる。
図32は表8における電気伝導度(mS/m)と水素濃度比(飽和/計測)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度比(飽和/計測)である。水素濃度比(飽和/計測)は補正係数であり、応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水水素濃度比(飽和/計測)、即ち補正係数を乗算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
図32から、補正係数=-0.0005×電気伝導度(mS/m)+1.0946の関係が成り立つため、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=(0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05)×(-0.0005×電気伝導度(mS/m)+1.0946)で求めることができる。
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表9のようになる。
表9より、この補正方法によれば、誤差が1%程度生じるが、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
水道水由来の水溶液による検討
水道水由来の水溶液について、図27から応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932なる対応式Bが得られ、電流密度(μA/cm2)=1.5×電流(μA)の関係から換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)=0.3749×電気伝導度(mS/m)+52.398が得られる。本来は、KCl濃度により最大に溶解する溶存水素量が同一となることはないが、水道水の大気中での最大溶解濃度を1.6ppmとして演算すると仮定している。
また、第1の実施形態で説明した応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係から、図29に示す、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×応答電流のピーク電流密度(μA/cm2)+1.05なる対応式が得られる。
前述したように、水道水のみの場合の電気伝導度は16.7mS/mであり、水道水の大気中の最大溶存水素濃度は1.6ppmとなり、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=(1.6-1.05)/(0.0077×1.5)=47.62μAとなる。計測値は応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932=0.2759×16.7+34.932=39.12μAとなる。
演算値と計測値との間に約8.5μAの差が生じている。この8.5μAは溶存水素濃度に換算すると、溶存水素濃度差(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)=0.0077×1.5×8.5=0.098ppmとなる。この差が許容範囲か否かは用途に応じると思われ、その被測定水溶液の用途によっては電気伝導度補正が必要になる。
表5に関連して説明したように、日本の水道水で水素水を作製する際に、電気伝導度10mS/m程度なる標準水を基準に水素濃度と応答電流のピーク値(又はピーク電流密度)にて検量線を得ておけば、日本の水道水で水素水を作製する際に、測定結果への電気伝導度の影響は無視できる。水道水の他に、ミネラル水、血液、輸液、透析水等を被測定液とする場合も電気伝導度は無視することができる。
また、図28に示したKCl濃度と電気伝導度との関係から、電気伝導度範囲を0~150mS/mの広範囲で計測を行う場合には、補正を行うことが望ましい状況となる。ここで、電気伝導度が16.4mS/mにおける飽和水素濃度は1.6ppmであり、応答電流のピーク値の電流密度150μA/cm2(電流値100μA)におけるピーク電流密度値と溶存水素濃度との関係から飽和濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×電流密度(μA/cm2)+1.05=0.0077×150+1.05=2.20(ppm)となる。この100μAのピーク値となる電気伝導度は、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932を変換して、電気伝導度(mS/m)=(ピーク値(μA)‐34.932)/0.2499=(100-34.932)/0.2499=260(mS/m)となる。図33は、電気伝導度が16.4mS/mのときの飽和水素濃度を1.6ppmとし、電気伝導度が260mS/mのときの飽和水素濃度を2.2ppmとして表した、電気伝導度に対する飽和水素濃度の特性である。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は飽和水素濃度(ppm)である。
同図より、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0025×電気伝導度(mS/m)+1.5596が成り立つことが分かる。この結果と計測値結果とをまとめると、表10に示すようになる。表10において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0025×電気伝導度(mS/m)+1.5596で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との差が水素濃度差(ppm)であり、水素濃度差(ppm)=-0.0004×電気伝導度(mS/m)+0.1061で与えられる。
図34は表10における電気伝導度(mS/m)と水素濃度差(ppm)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度差(ppm)である。応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水素濃度差を加算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
即ち、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05-(0.0004×電気伝導度(mS/m))+0.1061=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)-0.0004×電気伝導度(mS/m)+1.156で求めることができる。
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表11のようになる。
表11より、以上の補正方法によれば、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
因みに、上述したような加算補正では無く、乗算補正で補正後演算水素濃度を求めると、表12に示すようになる。表12において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0025×電気伝導度(mS/m)+1.5596で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との比が水素濃度比であり、水素濃度比=演算飽和水素濃度(ppm)/計測演算飽和水素濃度(ppm)で与えられる。
図35は表12における電気伝導度(mS/m)と水素濃度比(飽和/計測)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度比(飽和/計測)である。水素濃度比(飽和/計測)は補正係数であり、応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水水素濃度比(飽和/計測)、即ち補正係数を乗算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
図35から、補正係数=-0.0003×電気伝導度(mS/m)+1.0708の関係が成り立つため、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=(0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05)×(-0.0003×電気伝導度(mS/m)+1.0708)で求めることができる。
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表13のようになる。
表13より、この補正方法によれば、誤差が2%程度生じるが、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
なお、本実施形態における、CV測定の再現性及び溶存水素濃度の測定可能性についての検討結果、CV測定による応答電流のピーク値とGCの測定による溶存水素濃度との対応関係の検討結果、作用電極に関してCV測定の研磨前処理が不要であることの検討結果、作用電極の繰り返し再現性及び耐久性についての検討結果、耐久性試験において生じた応答電流のピーク値のばらつきについての検討結果、並びに実サンプルとして、水道水をベースに作製した水素水についてCV測定の検討結果は、第1の実施形態の場合と同様であった。
以上説明したように、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によれば、Pt-BDD電極である作用電極を用いてCV測定により応答電流のピーク値を検出し、被測定液中の溶存水素濃度を取得しているため、電気化学測定法によって、再現性良く溶存水素濃度を測定することが可能である。また、Pt-BDD電極を用いているため、測定前に電極の研磨処理が不要となり、安定して高感度に溶存水素濃度の測定を行うことができる。また、Pt-BDD電極は、繰り返し測定した場合の良好な安定性及び耐久性が確認されている。さらに、検出した応答電流のピーク値を、被測定液の電気伝導度に応じて補正しているため、電気伝導度を考慮する必要のある被測定液であっても溶存水素濃度を正しくかつ正確に測定することができる。
上述した第2の実施形態においては、選択スイッチ116から入力される電気伝導度値に応じて応答電流のピーク値を補正しているが、被測定液111の電気伝導度を測定するセンサを設け、このセンサによって測定された電気伝導度値に応じて応答電流のピーク値を補正しても良い。
本実施形態の溶存水素濃度測定装置は、電気伝導度を考慮する必要のある被測定液の溶存水素濃度を測定する場合に用いて好適である。即ち、被測定液の電気伝導度範囲が100mS/mを超える様な大きな範囲の被測定液になる場合には、場合によっては、電気伝導度を考慮する必要がある。これは、例えば、純水、飲料水、炭酸水、醤油、ドレッシング、ジュース等の被測定液を同一計測器で測定する場合である。
以上説明した実施形態においては、CV測定回路により、作用電極と参照電極との間の電位差を直線的に掃引してこれら作用電極と対電極との間を流れる応答電流のピーク値を検出しているが、ピーク値が現れる電位差が予見できる場合には、その電位差又はその電位差を含む所定範囲の電位差を作用電極と参照電極との間に印加してピーク応答電流を測定し、溶存水素濃度を算出するように構成しても良い。これにより、回路構成が簡単となり、小型かつ安価な溶存水素濃度測定装置を提供することができる。
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。