以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
[ポリエステル樹脂の製造方法]
本発明のポリエステル樹脂の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物との縮合反応において、反応溶媒として、シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒Aを用いることを特徴とする。
先述のとおり、活性エステル樹脂のような芳香族系ポリエステル樹脂は、本質的に有機溶媒に対する溶解性が不良であり、製造工程における油水分離の際に、分液界面の消失や多量のエマルジョン中間層の生成が起こるなど深刻な問題を招来する場合があった。中でも、芳香族多環骨格を有する剛直骨格系の活性エステル樹脂は、反応溶媒に対する溶解性が特に低く、製造工程での不具合がより顕著となる傾向にあった。
これに対し、反応溶媒として溶媒Aを用いる本発明の製造方法によれば、剛直骨格系の活性エステル樹脂を製造する場合であっても、製造工程での不具合を大幅に改善することができる。溶媒Aは、これまで反応溶媒として慣用されてきたトルエンやMIBKなどに比し安全性が高いことも相俟って、本発明は、製造工程での不具合を大幅に改善しつつ、安全性の観点にも高度に配慮されたポリエステル樹脂の製造技術を提供することに著しく寄与するものである。
-溶媒A-
溶媒Aは、シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上である。
溶媒Aの沸点は、ポリエステル樹脂の製造後に溶媒Aを蒸留除去し易いなどの観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。該沸点の下限は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂を含むワニス状の樹脂組成物を製造する際の溶媒として溶媒Aを用いる場合など、極端な揮発を避ける観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、90℃以上又は100℃以上である。したがって一実施形態において、溶媒Aの沸点は70~150℃の範囲である。
溶媒Aとして用いられるシクロアルキルアルキルエーテルは、好ましくは下記式(1)で表される。
(式中、
R11は、炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
R12は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
式(1)中、R11は、炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表す。該シクロアルキル基の炭素原子数は、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、その上限は、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下又は6以下である。
式(1)中、R12は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。該アルキル基の炭素原子数は、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
中でも、剛直骨格系の活性エステル樹脂を製造する場合であっても、製造工程での不具合を大幅に改善し得る観点から、式(1)で表されるシクロアルキルアルキルエーテルとしては、シクロペンチルC1-3アルキルエーテル、シクロヘキシルC1-3アルキルエーテルが好ましく、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテルが特に好ましい。
溶媒Aとして用いられるアルキルテトラヒドロピランは、好ましくは下記式(2)で表される。
(式中、
R21は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
式(2)中、R21は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。該アルキル基の炭素原子数は、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
式(2)中、R21で表されるアルキル基の結合位置は、特に限定されず、2位、3位、4位の何れであってもよい。
中でも、剛直骨格系の活性エステル樹脂を製造する場合であっても、製造工程での不具合を大幅に改善し得る観点から、式(2)で表されるアルキルテトラヒドロピランとしては、4-C1-3アルキルテトラヒドロピランが好ましく、4-メチルテトラヒドロピランが特に好ましい。
好適な一実施形態において、溶媒Aは、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル又は4-メチルテトラヒドロピランを含む。
本発明の製造方法において、反応溶媒中の溶媒Aの濃度は、製造工程での不具合を改善する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上又は95質量%以上であり、100質量%(反応溶媒は溶媒Aのみ)であってもよい。
-酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物の縮合反応-
本発明の製造方法において、ポリエステル樹脂は、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物との縮合反応(エステル化反応)により製造される。
反応溶媒として上記の溶媒Aを用いる本発明の製造方法によれば、ポリエステル樹脂の種類によらず、その製造工程、詳細には油水分離工程で良好な油水分離性を実現することが可能である。斯かる本発明の効果をより享受し得る観点から、製造対象であるポリエステル樹脂は、油水分離工程で不具合が生じ易い傾向にある、活性エステル樹脂、すなわち活性エステル基を含有するポリエステル樹脂であることが好ましい。本発明において「活性エステル基」とは、芳香族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有するエステル結合部をいうほか、架橋性樹脂の架橋特性を発現する限りにおいて脂肪族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有するエステル結合部も包含する。したがって好適な一実施形態において、ポリエステル樹脂は、活性エステル基を含有する。
本発明の製造方法において、製造するポリエステル樹脂は、架橋性樹脂の架橋特性を十分に発現する観点から、1分子中に平均して2~10個の活性エステル基を含有することが好ましい。
先述のとおり、活性エステル樹脂の中でも、芳香族多環骨格を有する剛直骨格系の活性エステル樹脂は、製造工程での不具合がより顕著となる傾向にあった。この点、反応溶媒として上記の溶媒Aを用いる本発明の製造方法によれば、芳香族多環骨格を有する剛直骨格系の活性エステル樹脂を製造する場合であっても、その製造工程での不具合を大幅に改善し得る。なお、芳香族多環骨格とは、2つ以上の環状構造を含む骨格であって、該環状構造のうち少なくとも1つが芳香環である骨格をいい、2つ以上の環状構造は縮合していいてもよく、縮合していなくてもよい。芳香族多環骨格としては、剛直骨格系の活性エステル樹脂を構成する従来公知の任意の芳香族多環骨格であってよく、例えば、ナフタレン骨格及びアントラセン骨格等の芳香環が縮合した芳香族炭化水素骨格;ビフェニル骨格等の2つ以上の芳香環が単結合で結合するなど、縮合することなく含有される芳香族炭化水素骨格(非縮合型芳香族炭化水素骨格);1,1,3-トリメチルインダン骨格等を含めたインダン骨格及びフルオレン骨格等の5員環化合物と芳香環とが縮合した芳香族炭化水素骨格等が挙げられる。したがって好適な一実施形態において、ポリエステル樹脂は、芳香族多環骨格を有する活性エステル樹脂である。
本発明の製造方法において、酸ハライド化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物は、それらの縮合反応によりポリエステル樹脂を製造し得る限り任意の種類を用いてよい。酸ハライド化合物としては、少なくとも一部に2価以上の酸ハライド化合物を含む限り特に限定されず、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて、2価以上の酸ハライド化合物のみを用いてもよく、1価の酸ハライド化合物と2価以上の酸ハライド化合物との混合物を用いてもよい。同様に、芳香族ヒドロキシ化合物は、少なくとも一部に2価以上の芳香族ヒドロキシ化合物を含む限り特に限定されず、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて、2価以上の芳香族ヒドロキシ化合物のみを用いてもよく、1価の芳香族ヒドロキシ化合物と2価以上の芳香族ヒドロキシ化合物との混合物を用いてもよい。
好適な一実施形態において、酸ハライド化合物として2価の酸ハライド化合物を、芳香族ヒドロキシ化合物として1価の芳香族ヒドロキシ化合物と2価の芳香族ヒドロキシ化合物の混合物を用いる。すなわち、酸ハライド化合物が2価であり、芳香族ヒドロキシ化合物が1価と2価の混合物である。斯かる実施形態では、末端構造が1価の芳香族ヒドロキシ化合物に由来するポリエステル樹脂に帰着する傾向にある。
他の好適な一実施形態において、酸ハライド化合物として1価の酸ハライド化合物と2価の酸ハライド化合物の混合物を、芳香族ヒドロキシ化合物として2価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いる。すなわち、酸ハライド化合物が1価と2価の混合物であり、芳香族ヒドロキシ化合物が2価である。斯かる実施形態では、末端構造が1価の酸ハライド化合物に由来するポリエステル樹脂に帰着する傾向にある。
以下、本発明の製造方法において、好適に用いることができる酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物について一例を示す。上記のとおり、反応溶媒として溶媒Aを用いる本発明の製造方法によれば、芳香族多環骨格を有する酸ハライド化合物(下記式(3)中のRa1が芳香族多環骨格を含む場合)や芳香族多環骨格を有する芳香族ヒドロキシ化合物(下記式(5)中のRb1-[L-Rb1]n部分が芳香族多環骨格を含む場合)を用いて剛直骨格系の活性エステル樹脂を製造する場合であっても、製造工程での不具合を大幅に改善することができる。
--酸ハライド化合物--
2価の酸ハライド化合物としては、好ましくは下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
(式中、
Ra1は、2価の芳香族基又は2価の脂肪族基を表し、
Zは、ハロゲン原子を表す。)
Ra1で表される2価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。Ra1におけるアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14、さらに好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。好適な一実施形態において、Ra1で表される2価の芳香族基は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は、置換基を有していてもよいナフチレン基であり、より好適には置換基を有していてもよいフェニレン基である。また、Ra1におけるアリーレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。
Ra1で表される2価の脂肪族基は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキレン基、又は、置換基を有していてもよいアルケニレン基である。Ra1におけるアルキレン基やアルケニレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Ra1で表される2価の脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上又は8以上であり、その上限は特に限定されないが、通常、30以下、20以下、18以下などとし得る。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、Ra1におけるアルキレン基やアルケニレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。
Zで表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
2価の酸ハライド化合物は、先述のとおり、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて適宜決定してよい。2価の酸ハライド化合物の好適な具体例としては、置換基を有していてもよいイソフタル酸クロリド、置換基を有していてもよいテレフタル酸クロリド、置換基を有していてもよいスベリン酸クロリド、置換基を有していてもよいセバシン酸クロリド等が挙げられる。
1価の酸ハライド化合物としては、好ましくは下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
(式中、
Ra2は、1価の芳香族基又は1価の脂肪族基を表し、
Zは、先述のとおりである。)
Ra2で表される1価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよいアリール基である。Ra2におけるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14、さらに好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。好適な一実施形態において、Ra2で表される1価の芳香族基は、置換基を有していてもよいフェニル基、又は、置換基を有していてもよいナフチル基である。また、Ra2におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。
Ra2で表される1価の脂肪族基は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアルケニル基である。Ra2におけるアルキル基やアルケニル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Ra2で表される2価の脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上又は8以上であり、その上限は特に限定されないが、通常、30以下、20以下、18以下などとし得る。また、Ra2におけるアルキル基やアルケニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。
1価の酸ハライド化合物は、先述のとおり、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて適宜決定してよい。1価の酸ハライド化合物の好適な具体例としては、置換基を有していてもよいベンゼンカルボン酸クロリド、置換基を有していてもよいナフタレンカルボン酸クロリド、置換基を有していてもよいカプロン酸クロリド、置換基を有していてもよいエナント酸クロリド、置換基を有していてもよいカプリル酸クロリド等が挙げられる。
--芳香族ヒドロキシ化合物--
2価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、好ましくは下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
(式中、
Rb1は、それぞれ独立に、2価の芳香族基を表し、
Lは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、
nは、0~5の整数を表す。)
Rb1で表される2価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。Rb1におけるアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14、さらに好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。好適な一実施形態において、Rb1で表される2価の芳香族基は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は、置換基を有していてもよいナフチレン基であり、より好適には置換基を有していてもよいフェニレン基である。また、Rb1におけるアリーレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、及びアリールアルキル基(アリール基の炭素原子数6~10、アルキル基の炭素原子数1~6)から選択される1種以上がより好ましい。Rb1におけるアリーレン基は、置換基としてヒドロキシ基を有していてもよい。斯かる場合、式(5)で表される芳香族ヒドロキシ化合物の価数は2超であってよい。
Lは、単結合又は2価の連結基を示す。Lで表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の有機基が挙げられ、中でも、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、又は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基が好ましい。
Lにおける2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、アルカポリエニレン基(二重結合の数は好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、さらにより好ましくは2)等が挙げられ、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基が好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基がより好ましく、シクロアルキレン基がさらに好ましい。Lにおける2価の脂肪族基の炭素原子数は特に限定されず、例えば2価の脂肪族基がシクロアルキレン基である場合、その炭素原子数は好ましくは3~15、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
Lにおける2価の芳香族基としては、例えば、アリーレン基及びヘテロアリーレン基が挙げられ、アリーレン基が好ましい。Lにおけるアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フルオレンジイル基(例えば9H-フルオレン-9,9-ジイル基)、フェナントレンジイル基、インダンジイル基、ピレンジイル基等が挙げられる。Lにおけるヘテロアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは3~21、より好ましくは3~15、さらに好ましくは3~9である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。ヘテロアリーレン基としては、例えば、ピロールジイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピリダジンジイル基、ピリミジンジイル基、ピラジンジイル基、トリアジンジイル基等が挙げられる。
Lで表される2価の基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。
nは、0~5の整数であり、好ましくは0~3、より好ましくは0~2の整数である。
2価の芳香族ヒドロキシ化合物は、先述のとおり、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて適宜決定してよい。2価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、nが1以上である成分として、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状化合物とフェノール類との重付加反応物、各種ビスフェノール化合物等が挙げられる。不飽和脂肪族環状化合物とフェノール類の重付加反応物としては、例えば、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ノルボルナジエン、リモネン、ビニルシクロヘキセン等の不飽和脂肪族環状化合物と、置換基を有していてもよいフェノール(例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、ハロフェノール等)との重付加反応物が挙げられ、具体的には例えば、ジシクロペタジエン-フェノール重付加物等が挙げられる。ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールフルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールM等が挙げられる。また、nが0である成分として、芳香環上の炭素原子に2個のヒドロキシ基が結合したジオール(ベンゼンジオール、ナフタレンジオールなど)等が挙げられる。
1価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、好ましくは下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
(式中、
Rb2は、1価の芳香族基を示す。)
Rb2で表される1価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよいアリール基である。Ra2におけるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14、さらに好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。好適な一実施形態において、Ra2で表される1価の芳香族基は、置換基を有していてもよいフェニル基、又は、置換基を有していてもよいナフチル基である。また、Ra2におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。
1価の芳香族ヒドロキシ化合物は、先述のとおり、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて適宜決定してよい。1価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいナフトール、置換基を有していてもよいフェノール等が挙げられる。
本発明の製造方法において、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物は、ハライド基と芳香族性ヒドロキシ基のモル比率(前者:後者)が、1.00:0.80~1.00:1.20の範囲となるような量比にて用いることが好ましく、1.00:0.90~1.00:1.10の範囲となるような量比にて用いることがより好ましい。
また、酸ハライド化合物として1価と2価の混合物を用いる場合、1価の化合物と2価の化合物の量比は、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて適宜決定してよいが、例えば、1価の化合物由来のハライド基と2価の化合物由来のハライド基のモル比率(前者:後者)が、1.00:0.80~1.00:10.00の範囲となるような量比にて用いることが好ましく、1.00:0.90~1.00:5.00の範囲となるような量比にて用いることがより好ましい。1価の化合物由来のハライド基に対する2価の化合物由来のハライド基の量比が高くなると、ポリエステル樹脂の縮合度が高まる傾向にある。
また、芳香族ヒドロキシ化合物として1価と2価の混合物を用いる場合、1価の化合物と2価の化合物の量比は、目的とするポリエステル樹脂の構造に応じて適宜決定してよいが、例えば、1価の化合物由来の芳香族性ヒドロキシ基と2価の化合物由来の芳香族性ヒドロキシ基のモル比率(前者:後者)が、1.00:0.80~1.00:10.00の範囲となるような量比にて用いることが好ましく、1.00:0.90~1.00:5.00の範囲となるような量比にて用いることがより好ましい。1価の化合物由来の芳香族性ヒドロキシ基に対する2価の化合物由来の芳香族性ヒドロキシ基の量比が高くなると、ポリエステル樹脂の縮合度が高まる傾向にある。
本発明の製造方法において、反応溶媒として用いる溶媒Aの添加量は、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物の合計量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、80質量%以上又は100質量%以上であり、その上限は、好ましくは500質量%以下、より好ましくは450質量%以下、さらに好ましくは400質量%以下である。したがって好適な一実施形態において、溶媒Aの添加量は、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物の合計量100質量%に対して、30~500重量%である。
縮合反応においては、脱ハロゲン化水素剤を用いてよい。脱ハロゲン化水素剤としては、アルカリ類やアミン類といった従来公知の任意のものを用いてよく、例えば、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)や水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の第3級アミン類等が挙げられる。脱ハロゲン化水素剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、脱ハロゲン化水素剤の添加量は、縮合反応を進行させ得る限り特に限定されず、その種類に応じて適宜決定してよい。
縮合反応においてはまた、層間移動触媒を用いてよい。これらは、エステル化反応において用いることのできる従来公知の任意のものを用いてよい。
縮合反応における反応温度は、縮合反応が進行する限り特に限定されず、例えば、0~80℃の範囲としてよい。また縮合反応における反応時間は、目的とするポリエステル樹脂の構造が達成される限り特に限定されず、例えば、30分間~8時間の範囲としてよい。
縮合反応後にポリエステル樹脂を精製してよい。例えば、縮合反応後、副生塩や過剰量の出発原料を系内から除去するために、水洗や精密濾過などの精製工程を施してもよい。詳細には、縮合反応後、副生塩を溶解するに必要な量の水を添加して、油水分離することによって、副生塩を含む水層を系外に排出する。さらに水洗して油水分離することによって、副生塩を含む水層を系外に排出する操作を繰り返してもよい。斯かる水洗・油水分離の操作においては、必要に応じて酸を添加し中和してもよい。中和に用いる酸としては、リン酸第二ナトリウム等の従来公知の任意のものを使用してよい。その後、薬剤或いは共沸蒸留による脱水工程を経て精密濾過し不純物を除去精製した後に、必要に応じて、反応溶媒を蒸留除去することにより、ポリエステル樹脂を得ることができる。
好適な一実施形態において、本発明の製造方法は、以下の(1)~(4)の工程:
(1)シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒Aに、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物を溶解して溶液を得る工程;
(2)溶液に脱ハロゲン化水素剤を添加して縮合反応を行う工程;
(3)縮合反応の後、水を添加して油水分離することによって、副生塩を系外に排出させる工程;及び
(4)さらに水洗して油水分離することによって精製する工程
を含む。
工程(1)で用いる溶媒Aや、酸ハライド化合物、芳香族ヒドロキシ化合物は先述のとおりであり、それらの量比についても先に説明したとおりである。溶媒Aへの溶解の方法は、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物が溶解し得る限り特に限定されず、攪拌しながら適宜加温して溶解させるなどすればよい。加温する場合、液温は、例えば20~40℃の範囲としてよい。溶媒Aを用いる本発明の製造方法においては、酸ハライド化合物や芳香族ヒドロキシ化合物を容易に溶解して溶液を得ることができる。
工程(2)で用いる脱ハロゲン化水素剤は先述のとおりであり、縮合反応の反応温度や時間も先に説明したとおりである。
工程(3)において、縮合反応後の反応液に水を添加して油水分離する。そして、水層を棄却することにより、副生塩を系外に排出することができる。先述のとおり、溶媒Aを用いる本発明の製造方法では、油水分離時に分液界面の消失や多量のエマルジョン中間層の生成などの不具合が生じることを大幅に減じることができる。これにより、副生塩を効率的に系外に排出し得ると共に、収率よく目的のポリエステル樹脂を得ることが可能である。また、溶媒Aは、これまで反応溶媒として慣用されてきたトルエンやMIBKなどに比し安全性が高いことも相俟って、本発明は、製造工程での不具合を大幅に改善しつつ、安全性の観点にも高度に配慮することが可能である。
工程(4)の水洗・油水分離は、工程(3)と同様に実施してよい。また、水洗・油水分離の際に、必要に応じて酸を添加し中和してよいことは先に説明したとおりである。
好適な一実施形態において、本発明の製造方法は、上記の(1)~(4)の工程に加えて、以下の(5)、(6)の工程:
(5)脱水処理して副生塩を析出させる工程;及び
(6)濾過によって副生塩を除去する工程
をさらに含む。
工程(5)における脱水処理は、先述のとおり、薬剤(脱水剤)あるいは共沸蒸留により実施してよい。脱水剤を使用する場合、該脱水剤は、硫酸マグネシウム等の従来公知の任意のものを使用してよい。
工程(6)における濾過は、工程(5)で生じた析出副生塩を濾過し得る任意の方法を用いてよく、好ましくは精密濾過膜による精密濾過を用いる。精密濾過膜の材料や濾過孔の大きさは、析出副生塩を十分に濾過除去し得る限り特に限定されず、従来公知の任意の材料や大きさを選択・決定してよい。
先述のとおり、副生塩を除去した後、反応溶媒を蒸留除去することにより、ポリエステル樹脂を得ることができる。ここで、反応溶媒として上記の溶媒Aを用いる本発明の製造方法においては、反応溶媒を除去しないであるいはその一部のみ除去してそのまま樹脂組成物の溶媒に使用してもよい。溶媒Aは、通常の成膜条件にて揮発することから、ワニス状の樹脂組成物を構成する溶媒Aとしても有益であり、先述のとおり安全性が高いことから、安全性の観点にも高度に配慮されたワニス状の樹脂組成物を実現できる。
[樹脂架橋剤]
本発明の製造方法により得られたポリエステル樹脂は、樹脂架橋剤として好適に用いることができる。本発明は、斯かる樹脂架橋剤も提供する。
一実施形態において、本発明の樹脂架橋剤は、(A)ポリエステル樹脂、(B)シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒を含有する。
(A)成分であるポリエステル樹脂は、原料である酸ハライド化合物や芳香族ヒドロキシ化合物をはじめ、上記[ポリエステル樹脂の製造方法]欄にて説明したとおりである。(A)成分の数平均分子量(Mn)は、樹脂架橋剤として樹脂組成物に配合して用いる観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3500以下又は3000以下である。該Mnの下限は、特に限定されず、例えば、200以上、300以上、400以上などとし得る。(A)成分のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
(B)成分である溶媒は、シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒である限り特に限定されない。(B)成分は、ポリエステル樹脂を製造する際に反応溶媒を除去しない場合やその一部のみを除去した場合は、反応溶媒として用いた溶媒Aであってよい。したがって一実施形態において、本発明の樹脂架橋剤は、本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂と反応溶媒として用いた溶媒Aを含有する。あるいは、ポリエステル樹脂を製造する際に反応溶媒を除去した場合は、得られたポリエステル樹脂に、シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒を添加してもよい。(B)成分は、その好適な例も含めて、上記[ポリエステル樹脂の製造方法]欄にて説明したとおりである。
本発明の樹脂架橋剤において、(A)成分と(B)成分との量比は、(B)成分に(A)成分が溶解し得る限り任意に決定してよい。本発明の樹脂架橋剤では、(A)成分が、芳香族多環骨格を有する剛直骨格系の活性エステル樹脂である場合であっても、十分に溶解した状態とし得るため、後述する樹脂組成物を容易に調製できるという利点も有する。
[樹脂組成物]
本発明の製造方法により得られたポリエステル樹脂を用いて樹脂組成物を製造することができる。本発明は、斯かる樹脂組成物も提供する。例えば、本発明の樹脂組成物は、架橋性樹脂とポリエステル樹脂を含んでよく、該ポリエステル樹脂が、本発明の製造方法により得られたポリエステル樹脂であることを特徴とする。
一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、(A)ポリエステル樹脂、(B)シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒、及び、(C)架橋性樹脂を含有する。
(A)成分であるポリエステル樹脂は、原料である酸ハライド化合物や芳香族ヒドロキシ化合物をはじめ、上記[ポリエステル樹脂の製造方法]欄にて説明したとおりである。また、その数平均分子量(Mn)の好適範囲は、上記[樹脂架橋剤]欄にて説明したとおりである。
(B)成分である溶媒は、シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒である限り特に限定されない。(B)成分は、ポリエステル樹脂を製造する際に反応溶媒を除去しない場合やその一部のみを除去した場合は、反応溶媒として用いた溶媒Aであってよい。したがって一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂と反応溶媒として用いた溶媒A、及び架橋性樹脂を含有する。あるいは、ポリエステル樹脂を製造する際に反応溶媒を完全に除去した場合は、得られたポリエステル樹脂に、架橋性樹脂と共に、シクロアルキルアルキルエーテル及びアルキルテトラヒドロピランからなる群から選択される1種以上の溶媒を添加してもよい。(B)成分は、その好適な例も含めて、上記[ポリエステル樹脂の製造方法]欄にて説明したとおりである。
(C)成分である架橋性樹脂としては、(A)成分との組み合わせにおいて架橋することができる限り、その種類は特に限定されない。(A)成分との組み合わせにおいて、誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる観点から、(C)成分は、熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂としては、プリント配線板や半導体チップパッケージの絶縁層を形成する際に使用される公知の樹脂を用いてよい。以下、(C)成分として用いることのできる熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂について説明する。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(A)成分との組み合わせにおいて、誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる観点から、(C)成分は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂は、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のエポキシ基を有する限り、その種類は特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)に分類し得るが、本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含む場合、配合割合(液状:固体状)は質量比で20:1~1:20の範囲(好ましくは10:1~1:10、より好ましくは3:1~1:3)としてよい。
エポキシ樹脂のエポキシ基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ基当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。エポキシ樹脂のMwは、GPC法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
ラジカル重合性樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、(A)成分との組み合わせにおいて、誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる観点から、(C)成分は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジクナーモレキュールズ社製)などの、ダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格を含むマレイミド樹脂;発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されない。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されない。スチリル樹脂としては、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、熱硬化性樹脂のみ含んでもよく、ラジカル重合性樹脂のみ含んでもよく、熱硬化性樹脂とラジカル重合性樹脂を組み合わせて含んでもよい。
本発明の樹脂組成物において、(C)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(C))は、(C)成分が架橋し得る限り特に限定されないが、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1以上としてよい。該質量比((A)/(C))の上限は、例えば、2以下、1.9以下、1.8以下などとしてよい。したがって一実施形態において、(C)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(C))は、0.2~2.0である。
本発明の樹脂組成物は、さらに無機充填材を含んでもよい。無機充填材を含有させることにより、線熱膨張率や誘電正接をさらに低下させることができる。
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、具体的用途に応じて選択してよい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の市販品としては、例えば、「UFP-30」(電化化学工業社製);「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SC4050-SX」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC-C2」(何れもアドマテックス社製);「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」(トクヤマ社製)、「DAW-0525」(デンカ社製)等が挙げられる。
無機充填材の平均粒径は、具体的用途に応じて好適な範囲を決定してよい。例えば、プリント配線板の層間絶縁層や半導体チップパッケージの再配線形成層を形成する場合には、硬化物(絶縁層)表面が低粗度となり、微細配線形成を容易にする観点から、無機充填材の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。また、半導体チップパッケージの封止層を形成する場合には、封止成形時の流動性を向上させる観点から、無機充填材の平均粒径は、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、さらに好ましくは12μm以下、10μm以下又は8μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されず、具体的用途に応じて決定してよく、例えば0.01μm以上、0.02μm以上、0.03μm以上、0.05μm以上又は0.1μm以上などとし得る。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製LA-950等を使用することができる。
無機充填材は、アミノシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、スチリルシラン系カップリング剤、アクリレートシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性、分散性を向上させたものが好ましい。
本発明の樹脂組成物が無機充填材を含む場合、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、5質量%以上、10質量%以上であり、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上又は80質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば95質量%以下、90質量%以下などとし得る。
本発明の樹脂組成物は、さらにポリエステル樹脂以外の樹脂架橋剤を含んでもよい。
ポリエステル樹脂以外の樹脂架橋剤としては、「TD2090」、「TD2131」(DIC社製)、「MEH-7600」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」(明和化成社製)、「NHN」、「CBN」、「GPH-65」、「GPH-103」(日本化薬社製)、「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、「LA7052」、「LA7054」、「LA3018」、「LA1356」(DIC社製)などのフェノール系硬化剤;「F-a」、「P-d」(四国化成社製)、「HFB2006M」(昭和高分子社製)などのベンゾオキサジン系架橋剤;メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物などの酸無水物系架橋剤;PT30、PT60、BA230S75(ロンザジャパン社製)などのシアネートエステル系架橋剤などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物がポリエステル樹脂以外の樹脂架橋剤を含む場合、樹脂組成物中の該樹脂架橋剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、下限は、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上などとし得る。
本発明の樹脂組成物は、さらに架橋促進剤を含んでもよい。架橋促進剤を含むことにより、架橋時間及び架橋温度を効率的に調整することができる。
架橋促進剤としては、例えば、「TPP」、「TPP-K」、「TPP-S」、「TPTP-S」(北興化学工業社製)などの有機ホスフィン化合物;「キュアゾール2MZ」、「2E4MZ」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「Cl1Z-A」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2PHZ」(四国化成工業社製)などのイミダゾール化合物;ノバキュア(旭化成工業社製)、フジキュア(富士化成工業社製)などのアミンアダクト化合物;1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4-ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物;コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の有機金属錯体又は有機金属塩等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物が架橋促進剤を含む場合、樹脂組成物中の架橋促進剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、下限は、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上などとし得る。
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。斯かる添加剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよい。
本発明の樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに(B)成分以外の有機溶媒(以下、「他の有機溶媒」ともいう。)を含んでもよい。他の有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶媒;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。他の有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、上記の成分のうち必要な成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。本発明の樹脂組成物が(A)成分と(B)成分を組み合わせて含む場合、(A)成分を溶解させ易いことから、樹脂組成物を容易に調製することが可能である。
本発明の樹脂組成物は、半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、半導体チップパッケージにおいて再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
[シート状積層材料(樹脂シート、プリプレグ)]
本発明の樹脂組成物は、そのまま使用することもできるが、該樹脂組成物を含むシート状積層材料の形態で用いてもよい。
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含み、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
樹脂組成物層の厚さは、用途によって好適値は異なり、用途に応じて適宜決定してよい。例えば、樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板や半導体チップパッケージの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下又は50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上などとし得る。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
支持体としてはまた、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
一実施形態において、樹脂シートは、必要に応じて、任意の層をさらに含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
樹脂シートは、例えば、ワニス状の樹脂組成物を調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。有機溶剤として(B)成分を含む場合、(B)成分は通常の成膜条件にて揮発することに加えて、先述のとおり安全性が高いことから、安全性の観点にも高度に配慮しつつ樹脂シートを製造可能である。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板や半導体チップパッケージの薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
本発明のシート状積層材料は、半導体チップを封止するため(半導体封止用)に好適に使用することができ、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用に好適に使用することができる。本発明のシート状積層材料はまた、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶層間縁層用)により好適に使用することができる。
[半導体チップパッケージ]
本発明の半導体チップパッケージは、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む。本発明の半導体チップパッケージはまた、先述のとおり、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる、再配線層を形成するための絶縁層(再配線形成層)を含んでもよい。
半導体チップパッケージは、例えば、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて、下記(1)乃至(6)の工程を含む方法により製造することができる。工程(3)の封止層あるいは工程(5)の再配線形成層を形成するために、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いればよい。以下、樹脂組成物や樹脂シートを用いて封止層や再配線形成層を形成する一例を示すが、半導体チップパッケージの封止層や再配線形成層を形成する技術は公知であり、当業者であれば、本発明の樹脂組成物や樹脂シートを用いて、公知の技術に従って半導体パッケージを製造することができる。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
-工程(1)-
基材に使用する材料は特に限定されない。基材としては、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板(例えばFR-4基板);ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる基板などが挙げられる。
仮固定フィルムは、工程(4)において半導体チップから剥離することができると共に、半導体チップを仮固定することができれば材料は特に限定されない。仮固定フィルムは市販品を用いることができる。市販品としては、日東電工社製のリヴァアルファ等が挙げられる。
-工程(2)-
半導体チップを、その電極パッド面が仮固定フィルムと接合するように、仮固定フィルム上に仮固定する。半導体チップの仮固定は、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の公知の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージの生産数等に応じて適宜設定することができ、例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に整列させて仮固定することができる。
-工程(3)-
本発明の樹脂組成物を半導体チップ上に塗布し、又は、本発明の樹脂シートの樹脂組成物層を半導体チップ上に積層し、硬化(例えば熱硬化)させて封止層を形成する。
例えば、樹脂シートの形態で用いる場合、半導体チップと樹脂シートの積層は、樹脂シートの保護フィルムを除去した後、支持体側から樹脂シートを半導体チップに加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを半導体チップに加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、半導体チップの表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。半導体チップと樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してもよく、その積層条件は、プリント配線板の製造方法に関連して後述する積層条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
積層の後、樹脂組成物を熱硬化させて封止層を形成する。熱硬化の条件は、プリント配線板の製造方法に関連して後述する熱硬化の条件と同様である。
樹脂シートの支持体は、半導体チップ上に樹脂シートを積層し熱硬化した後に剥離してもよく、半導体チップ上に樹脂シートを積層する前に支持体を剥離してもよい。
本発明の樹脂組成物を塗布して封止層を形成する場合、その塗布条件としては、本発明の樹脂シートに関連して説明した樹脂組成物層を形成する際の塗布条件と同様としてよい。
-工程(4)-
基材及び仮固定フィルムを剥離する方法は、仮固定フィルムの材質等に応じて適宜変更することができ、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法、及び基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法等が挙げられる。
仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100~250℃で1~90秒間又は5~15分間である。また、基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
-工程(5)-
再配線形成層(絶縁層)を形成する材料は、再配線形成層(絶縁層)形成時に絶縁性を有していれば特に限定されず、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂、熱硬化性樹脂が好ましい。本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて再配線形成層を形成してもよい。
再配線形成層を形成後、半導体チップと後述する導体層を層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。ビアホールは、再配線形成層の材料に応じて、公知の方法により形成してよい。
-工程(6)-
再配線形成層上に形成する導体層の材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望の半導体チップパッケージのデザインによるが、一般に1μm~35μm、好ましくは1μm~20μmである。
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により再配線形成層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、再配線形成層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層(再配線層)を形成することができる。
なお、工程(5)及び工程(6)を繰り返し行い、導体層(再配線層)及び再配線形成層(絶縁層)を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
半導体チップパッケージを製造するにあたって、(7)導体層(再配線層)上にソルダーレジスト層を形成する工程、(8)バンプを形成する工程、(9)複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程をさらに実施してもよい。これらの工程は、半導体チップパッケージの製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
以上は、最初に半導体チップを設け、その電極パッド面に再配線層を形成する工法、すなわちチップ1st(Chip-1st)工法で製造する場合の一例である。本発明の半導体チップパッケージは、斯かるチップ1st工法のほか、最初に再配線層を設け、該再配線層に、その電極パッド面が再配線層と電気接続し得るような状態にて、半導体チップを設け、封止する工法、すなわち再配線層1st(RDL-1st)工法で製造してもよい。
本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて封止層、再配線形成層を形成することにより、半導体パッケージが、ファンイン(Fan-In)型パッケージであるかファンアウト(Fan-Out)型パッケージであるかの別を問わず、伝送損失の少ない半導体チップパッケージを実現することができる。一実施形態において、本発明の半導体チップパッケージは、ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである。本発明の樹脂組成物、樹脂シートは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)の別を問わず、適用できる。一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)である。他の一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)である。
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去(デスミア)も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。工程(V)は、半導体チップパッケージの製造方法に関連して説明した工程(6)と同様に実施してよい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
導体層はまた、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる層を含む。本発明の半導体装置は、本発明の半導体チップパッケージ又はプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
<実施例1>ポリエステル樹脂(1)の製造
攪拌装置、温度計、滴下漏斗、窒素ガス吹込み口が装着された0.5リットル四つ口丸フラスコに、芳香族ヒドロキシ化合物としてジシクロペンタジエン-フェノール重付加物(JFEケミカル社製「J-DPP85」、水酸基当量165g/eq.)33gと1-ナフトール14.4g、ハライド化合物としてイソフタル酸クロリド30.5g、層間移動触媒0.39g、反応溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル130gを仕込み(クロリド基:芳香族性ヒドロキシ基=0.3モル:0.3モル)、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で20%NaOH水溶液60.0gを、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように1時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた後に、蒸留水50gを添加して、副生無機塩を完全に溶解した後に、その液を分液漏斗に移して静置分液して下層(水層)を棄却した。さらに水洗を3回繰り返し完全に中和した後に共沸蒸留で脱水し、精密ろ過した。その溶液を200℃で真空蒸留して溶媒を除去することによって目的のポリエステル樹脂(1)56gを得た。
<実施例2~8>ポリエステル樹脂(2)~(8)の製造
反応溶媒、酸ハライド化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を以下の表1に示す種類に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂(2)~(8)を製造した。酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物は、ハライド基:芳香族性ヒドロキシ基=0.3モル:0.3モルとなるような量にて使用し(芳香族性ヒドロキシ基は、1価芳香族ヒドロキシ化合物由来のものが0.1モル、2価芳香族ヒドロキシ化合物由来のものが0.2モル)、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物の合計量100質量%に対し反応溶媒の添加量は約167質量%とした。
<比較例1~4>ポリエステル樹脂(C1)~(C4)の製造
反応溶媒、酸ハライド化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を以下の表2に示す種類に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂(C1)~(C4)を製造した。酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物は、ハライド基:芳香族性ヒドロキシ基=0.3モル:0.3モルとなるような量にて使用し(芳香族性ヒドロキシ基は、1価芳香族ヒドロキシ化合物由来のものが0.1モル、2価芳香族ヒドロキシ化合物由来のものが0.2モル)、酸ハライド化合物と芳香族ヒドロキシ化合物の合計量100質量%に対し反応溶媒の添加量は約167質量%とした。
実施例及び比較例において、縮合反応後(分液漏斗における静置分液時)の油水分離性は、以下の基準にしたがって評価した。
油水分離性の評価基準:
○:有機層と水層が明瞭に分離する
△:有機層又は水層が濁り、分離に時間がかかる
×:全体がエマルジョン状態となり分離が困難である
ポリエステル樹脂(1)~(8)について、該ポリエステル樹脂22部、エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」)27部、無機充填材((株)アドマテックス製「SC4050-SX])74部、架橋促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.6部を溶媒45部に溶解させてワニス状の樹脂組成物を調製した。溶媒としては、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル又は4-メチルテトラヒドロピランを用いた。
得られた樹脂組成物を、支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、120℃で2分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。これにより、塗工性よく厚さの均一な樹脂組成物層を備える樹脂シートを作製することができた。