本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
本明細書において、「(ヘテロ)アリール基」は、アリール基又はヘテロアリール基を意味する。
1.ホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物
本発明のホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、一般式(1):
[式中、Y1は酸素原子又は置換若しくは非置換アミノカチオンを示す。Y2は酸素アニオン又は置換若しくは非置換アミノ基を示す。R1及びR2は同一又は異なって、置換若しくは非置換(ヘテロ)アリール基、又は置換若しくは非置換アルキル基を示す。R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基を示す。ただし、R3及びR4の少なくとも1つは置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基である。R5は水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、又は置換若しくは非置換アリール基を示す。R6、R7、R8及びR9は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、又はスルホン酸基を示す。R6とY1、R7とY2、R8とY1、及びR9とY2よりなる群から選ばれる少なくとも1種は、一緒になって、置換若しくは非置換アルキレン基を構成していてもよい。]
で表されるイオンを含有する。
一般式(1)において、Y1は酸素原子又は置換若しくは非置換アミノカチオンであり、Y2は酸素アニオン又は置換若しくは非置換アミノ基である。
このうち、Y1が置換若しくは非置換アミノカチオンでありY2が置換若しくは非置換アミノ基である場合は、一般式(1A):
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は前記に同じである。R6a、R7a、R8a及びR9aは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、又はスルホン酸基を示す。R10、R11、R12a及びR13aは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換(ヘテロ)アリール基を示す。R6aとR10、R7aとR13a、R8とR11、及びR9aとR12aよりなる群から選ばれる少なくとも1種は、一緒になって、置換若しくは非置換アルキレン基を構成していてもよい。]
で表されるホスホニウムローダミンカチオンを含有するホスホニウムローダミン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物となる。
また、Y1が酸素原子でありY2が酸素アニオンである場合は、一般式(1B):
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は前記に同じである。R6b、R7b、R8b及びR9bは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、又はスルホン酸基を示す。]
で表されるホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物となる。
また、Y1が酸素原子でありY2が置換若しくは非置換アミノ基である場合は、一般式(1C):
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は前記に同じである。R6c、R7c、R8c及びR9cは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、又はスルホン酸基を示す。R12c及びR13cは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換(ヘテロ)アリール基を示す。R7cとR13c、及びR9cとR12cよりなる群から選ばれる少なくとも1種は、一緒になって、置換若しくは非置換アルキレン基を構成していてもよい。]
で表されるホスホニウムロドールカチオンを含有するホスホニウムロドール化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物となる。
つまり、一般式(1)において、Y1で示される置換若しくは非置換アミノカチオンは、=(NR10R11)+を意味し、Y2で示される置換若しくは非置換アミノ基は、-NR12aR13a又は-NR12cR13cを意味する。R10、R11、R12a、NR12c、R13a及びR13cについての詳細は後述する。
このように、本発明のホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、Y1及びY2の種類によって、3種類の化合物群を包含している。
なかでも、ホスホニウムローダミン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物や、ホスホニウムロドール化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の場合は、キサンテン骨格のリン原子上にカチオンを有するカチオン型の化合物であり、細胞内で負電荷を有するミトコンドリア等に集積し選択的に可視化できることが期待される。特に、ホスホニウムローダミン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の場合は、キサンテン骨格のリン原子上と、置換若しくは非置換アミノカチオンを構成する窒素原子上の2箇所にカチオンを有しているジカチオン型の化合物であり、これまでにない構造的な特徴を有する蛍光色素であり、細胞内で負電荷を有するミトコンドリア等に集積しやすく特に選択的に可視化できることが期待される。
また、ホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の場合は、キサンテン骨格のリン原子上にカチオンを有し、酸素アニオン上にアニオンを有しており、同一分子内にカチオンとアニオンを有していることから、これまでにない構造的な特徴を有する蛍光色素であり、負のソルバトクロミズムを有する。
一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R1及びR2で示されるアリール基としては、単環アリール基、縮環アリール基及び多環アリール基のいずれも採用でき、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基等の炭素数6~18のアリール基(特に炭素数6~14のアリール基)が挙げられる。
R1及びR2で示されるアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、特に制限はなく、水酸基、後述のハロゲン原子、上記アリール基、後述のヘテロアリール基、後述のアルキル基、後述のアルコキシ基、後述のアルケニル基、後述のアルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~5個が好ましく、1~3個がより好ましい。
一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R1及びR2で示されるヘテロアリール基としては、単環ヘテロアリール基及び多環ヘテロアリール基のいずれも採用でき、例えば、ピロリジル基、ピロリル基、テトラヒドロチエニル基、チエニル基、オキソラニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピペリジル基、ピリジル基、ピラジル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
R1及びR2で示されるヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、特に制限はなく、水酸基、後述のハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、後述のアルキル基、後述のアルコキシ基、後述のアルケニル基、後述のアルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
上記一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R1及びR2で示されるアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用できる。
直鎖アルキル基としては、炭素数1~6(特に1~4)の直鎖アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~6(特に3~5)の分岐鎖アルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。
R1及びR2で示されるアルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、後述のハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、後述のアルコキシ基、後述のアルケニル基、後述のアルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
なかでも、R1及びR2としては、分子の安定性等の観点から、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換単環アルキル基等が好ましく、置換若しくは非置換アリール基がより好ましい。
上記一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R3及びR4で示されるアルキル基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
上記一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R3及びR4で示されるアルコキシ基としては、特に制限はなく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基等の炭素数1~6(特に1~4)のアルコキシ基が挙げられる。
R3及びR4で示されるアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、後述のハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、上記アルコキシ基、後述のアルケニル基、後述のアルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
R3及びR4は、少なくとも1つは置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基である。R3及びR4の双方が水素原子である場合は、化合物の安定性に劣る。また、化合物の安定性の観点から、R3及びR4は、いずれも置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基であることが好ましい。
上記一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R5で示されるアルキル基及びアリール基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R5で示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R5で示されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基等の炭素数2~6(特に2~4)のアルケニル基が挙げられる。
R5で示されるアルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、上記ハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、後述のアルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
一般式(1)、(1A)、(1B)及び(1C)において、R5で示されるアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基等の炭素数2~6(特に2~4)のアルキニル基が挙げられる。
R5で示されるアルキニル基は、置換基を有していてもよい。アルキニル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、上記ハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
R5は、合成の容易さ等の観点から、水素原子であることが好ましい。
一般式(1)において、R6、R7、R8及びR9で示されるハロゲン原子及びアルキル基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。また、一般式(1A)におけるR6a、R7a、R8a及びR9aで示されるハロゲン原子及びアルキル基、一般式(1B)におけるR6b、R7b、R8b及びR9bで示されるハロゲン原子及びアルキル基、一般式(1C)におけるR6c、R7c、R8c及びR9cで示されるハロゲン原子及びアルキル基も同様である。
一般式(1)において、R6、R7、R8及びR9としては、合成の容易さ、吸収極大波長、蛍光極大波長、ソルバトクロミズム等の観点から、水素原子であることが好ましい。なお、光安定性の向上を目的とする場合は、R6、R7、R8及びR9をハロゲン原子とすることもできる。また、一般式(1A)におけるR6a、R7a、R8a及びR9a、一般式(1B)におけるR6b、R7b、R8b及びR9b、一般式(1C)におけるR6c、R7c、R8c及びR9cも同様である。
一般式(1)において、Y1で示される置換若しくは非置換アミノカチオンは、一般式(1A)にも記載のとおり、=(NR10R11)+を意味する。
R10及びR11で示されるアルキル基は、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
R10及びR11は、(ヘテロ)アリール基とする場合は蛍光強度の低下を招き、水素原子とする場合はキノイド型になった際に外れてしまってカチオン性を失う一方、アルキル基とする場合は蛍光強度を損なわない。
なお、一般式(1)において、Y1に関しては、ホスホニウムローダミン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を目的とする場合は置換若しくは非置換アミノカチオンを採用し、ホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物や、ホスホニウムロドール化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を目的とする場合は酸素原子を採用することが好ましい。
一般式(1)において、Y2で示される置換若しくは非置換アミノ基は、一般式(1A)及び(1C)にも記載のとおり、-NR12aR13a又は-NR12cR13cを意味する。
R12a、R12c、R13a及びR13cで示されるアルキル基は、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
R12a、R12c、R13a及びR13cは、(ヘテロ)アリール基とする場合は蛍光強度の低下を招き、水素原子とする場合はキノイド型になった際に外れてしまってカチオン性を失う一方、アルキル基とする場合は蛍光強度を損なわない。
なお、一般式(1)において、Y2に関しては、ホスホニウムローダミン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物や、ホスホニウムロドール化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を目的とする場合は置換若しくは非置換アミノ基を採用し、ホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を目的とする場合は酸素アニオンを採用することが好ましい。
上記一般式(1)において、R6とY1、R7とY2、R8とY1、及びR9とY2は、一緒になって、置換若しくは非置換アルキレン基を構成してもよい。また、上記一般式(1A)において、R6aとR10、R7aとR13a、R8とR11、及びR9とR12aは、一緒になって、置換若しくは非置換アルキレン基を構成してもよい。また、上記一般式(1C)において、R7cとR13c、及びR9cとR12cは、一緒になって、置換若しくは非置換アルキレン基を構成してもよい。
このようなアルキレン基としては、炭素数1~6(特に炭素数2~4)のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。アルキレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、特に制限はなく、水酸基、上記ハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
ただし、水溶性をより向上させ、イメージングの際の非特異吸着をより抑制する観点からは、R6とY1、R7とY2、R8とY1、及びR9とY2のいずれも、互いに結合して置換若しくは非置換アルキレン基を構成しないことが好ましい。
このような条件を満たす本発明のホスホニウム化合物としては、例えば、
[式中、Phはフェニル基を示す。]
等で表されるホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物が好ましい。
本発明のホスホニウム化合物は、塩の状態で存在することもできる。一般式(1B)で示されるホスホニウムフルオレセイン化合物の場合は、分子内にカチオンとアニオンとを有しているため、分子内塩(双性イオン)となり得る。一方、一般式(1A)で表されるホスホニウムローダミン化合物や、一般式(1C)で表されるホスホニウムロドール化合物の場合は、酸付加塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩;p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等を挙げることができる。これらのほか、グリシン等のアミノ酸との塩を形成する場合もある。
また、本発明のホスホニウム化合物は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。
このような本発明のホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、例えば、一般式(1A)で表されるホスホニウムローダミン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の場合は、水中では、吸収極大波長が690~730nm、特に695~725nmであり、蛍光極大波長が730~770nm、特に735~765nmであることが好ましい。また、一般式(1B)で表されるホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の場合は、水中では、吸収極大波長が630~660nm、特に635~655nmであり、蛍光極大波長が670~700nm、特に675~695nmであることが好ましい。また、一般式(1C)で表されるホスホニウムロドール化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の場合は、水中では、吸収極大波長が660~690nm、特に665~685nmであり、蛍光極大波長が700~730nm、特に695~725nmであることが好ましい。
本発明のホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物(本発明の蛍光色素)がホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物である場合は、溶媒の極性によって吸収極大波長及び蛍光極大波長が変化する化合物群(ソルバトクロミック蛍光色素)である。例えば、溶媒の極性が非常に小さいトルエン等の非極性溶媒中では、吸収極大波長が670~700nm、特に675~695nmであり、蛍光極大波長が720~750nm、特に725~745nmであることが好ましい。
用途範囲を拡張するための蛍光色素として、ソルバトクロミック蛍光色素が期待されている。ソルバトクロミック蛍光色素は、周辺環境の極性を区別することができるため、蛍光プローブに広く利用されている。しかしながら、従来から使用されているソルバトクロミック蛍光色素は、溶媒の極性の大小により吸収極大波長及び蛍光極大波長が変化する蛍光色素であるが、水等の極性が非常に大きな溶媒中では蛍光量子収率が著しく小さい問題がある。
ソルバトクロミック蛍光色素は、正の溶媒効果を有する蛍光色素と、負の溶媒効果を有する蛍光色素とに分けられる。大部分のソルバトクロミック蛍光色素は、正の溶媒効果を有しており、図1左図のように、溶媒の極性が増大するにつれて吸収極大波長及び蛍光極大波長が長波長シフトする。逆に、負の溶媒効果を有するソルバトクロミック蛍光色素は、典型的には、図1右図のように、溶媒の極性が増大するにつれて吸収極大波長及び蛍光極大波長が短波長シフトする。細胞イメージングのためには、水等の極性が非常に大きな溶媒中において蛍光量子収率が大きいことが求められるため、本発明のように、負の溶媒効果を有する負のソルバトクロミック蛍光色素は有用である。
以上から、吸収極大波長及び蛍光極大波長をより長波長化するとともに、吸収極大波長及び蛍光極大波長の溶媒依存性をより高めることが可能である。なお、ホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物である場合は、溶媒が水やPBS緩衝液等のような水溶液である場合には、吸収極大波長及び蛍光極大波長を特に大きくすることができる。つまり、本発明の蛍光色素のうち、ホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物である場合は、溶媒の極性が増大するほど吸収極大波長及び蛍光極大波長が短波長化する、負のソルバトクロミック蛍光色素とも表記することができる。
このように、本発明のホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、各種染色剤、蛍光色素等の学術研究用試薬の他、装置仕様に適合する特定の励起及び蛍光波長を有する蛍光色素等の診断装置用検出試薬等としても有用である。
2.ホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の製造方法
本発明のホスホニウム化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、特に制限されず、例えば、一般式(B)で表されるホスホニウムフルオレセイン化合物を例に取ると、以下の反応式1:
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6b、R7b、R8b、R9bは前記に同じである。R14及びR15は同一又は異なって、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アシル基、又は置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基を示す。X-はカウンターイオンを示す。]
にしたがって、合成することができる。
反応式1において、R14及びR15で示されるアルキル基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
反応式1において、R14及びR15で示されるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアルカノイル基等が挙げられる。
R14及びR15で示されるアシル基は、置換基を有していてもよい。アシル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、上記ハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
反応式1において、R14及びR15で示されるアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等の炭素数1~6のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
R14及びR15で示されるアルコキシカルボニル基は、置換基を有していてもよい。アルコキシカルボニル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、上記ハロゲン原子、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
反応式1において、X-で示されるカウンターイオンとしては、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、硝酸イオン(NO3
-)、トリフルオロメチル酢酸イオン(CF3COO-)、メタンスルホナートイオン、トルエンスルホナートイオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン、四フッ化ボラートイオン、ヘキサフルオロホスファートイオン等が挙げられる。
原料として使用する一般式(2)で表される化合物は、公知又は市販品を使用することができる。一般式(2)で表される化合物を合成する場合は、例えば、Philos Trans A Math Phys Eng Sci. 2017 Aug 28; 375 (2101): 20170007.に記載の方法にしたがって合成することができる。
なお、ホスホニウムロドール化合物及びホスホニウムローダミン化合物も、基質である一般式(2)で表される化合物(2)の代わりに、適切な基質を選択することで、同様に合成することができる。
化合物(2)→化合物(3)
リチウム化合物としては、特に制限はなく、公知のものが採用でき、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;シクロヘキシルリチウム等のシクロアルキルリチウム;フェニルリチウム等のアリールリチウム等が挙げられる。これらのうち、本工程では、収率、合成の容易さの観点から、アルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムがより好ましい。これらリチウム化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
上記リチウム化合物の使用量は、特に制限はなく、収率、合成の容易さ等の観点から、化合物(2)1モルに対して、0.8~5.0モルが好ましく、1.0~3.0モルが好ましい。
亜鉛化合物としては、特に制限はなく、収率、合成の容易さ等の観点から、塩化亜鉛、臭化亜鉛等のハロゲン化亜鉛が好ましい。
上記亜鉛化合物の使用量は、特に制限はなく、収率、合成の容易さ等の観点から、化合物(2)1モルに対して、0.1~5モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましい。
亜鉛化合物は、配位子を使用して錯体を形成することもできる。この場合、配位子化合物を投入して系中で錯体を形成することもできるし、錯体を形成してから系中に投入することもできる。
このような配位子としては、例えば、2,2’-ビピリジル、4,4’-(tert-ブチル)ビピリジル、4,4’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジル、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジル、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジル、4,4’-ビス(メトキシカルボニル)-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジシアノ-2,2’-ビピリジル、フェナントロリン、2,2’-ビピリミジル、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン等が挙げられる。これらの配位子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
上記配位子の使用量は、特に制限はなく、収率、合成の容易さ等の観点から、亜鉛化合物1モルに対して、0.1~5モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましい。
本工程において使用され得る有機溶媒としては、特に制限されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物が好ましい。
反応条件は、反応が十分に進行する程度が好ましく、例えば、反応雰囲気は酸化性雰囲気(例えば、酸素ガス雰囲気、空気中等)が好ましく、反応温度は室温(20~30℃程度)が好ましく、反応時間は5分~96時間、特に10分~72時間が好ましい。
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行うこともでき、次の工程を行うことができる。
化合物(3)→化合物(1B)
ルイス酸としては、例えば、三臭化ホウ素、三臭化アルミニウム、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、ヨードトリメチルシラン等が挙げられる。これらのルイス酸は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
なお、通常、ルイス酸は化合物(3)に対して過剰量を使用することが好ましく、ルイス酸の使用量は、化合物(3)1モルに対して、2~10モルが好ましく、3~8モルがより好ましい。
反応は通常反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられ、合成の容易さ、収率等の観点から、脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。これらの反応溶媒は単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、-50~100℃が好ましく、0~50℃がより好ましい。反応時間は特に制限されず、反応が十分に進行する時間とすることが好ましい。
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理をすることにより、本発明のホスホニウムフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を得ることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
合成例1:4-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)アニソール
式中、Meはメチル基を示す。iPrはイソプロピル基を示す。Phはフェニル基を示す。THFはテトラヒドロフランを示す。
無水テトラヒドロフラン(THF)中の4-ブロモ-3-ヨードアニソールの溶液に、臭化イソプロピルマグネシウムを-20℃で滴下した。-20℃で1時間撹拌した後、ジフェニルホスフィンクロリドを加え、得られた混合物を-20℃で1時間撹拌した。混合物を室温に温め、一晩撹拌した。塩化アンモニウムの飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相を酢酸エチル(EtOAc)で3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(EtOAc)=10:1~5:1)に供し、続いて室温でヘキサン/ジクロロメタン溶媒系からの再結晶により精製し、4-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)アニソール(4.40g,11.9mmol,59%)を白色固体として得た。
合成例2
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。nBuはn-ブチル基を示す。THFはテトラヒドロフランを示す。
無水テトラヒドロフラン(THF;25mL)中の合成例1で得た4-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)アニソール(3.71g,10mmol)の溶液に、-78℃でn-ブチルリチウム(nBuLi;7mL,11mmol)の1.58Mヘキサン溶液をゆっくりと加え、得られた混合物を同じ温度で1時間撹拌した。テトラヒドロフラン(THF;8mL)中の4-メトキシ安息香酸のワインレブアミド(1.95g,10mmol)の溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を室温まで温めて一晩攪拌した。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相を酢酸エチル(EtOAc)で3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(EtOAc)=5:1~3:1)に供して精製し、ジアリールケトン化合物(2.27g,5.3mmol,53%)を黄色がかった固体として得た。
合成例3
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。THFはテトラヒドロフランを示す。
2,6-キシリルマグネシウムブロミド/塩化リチウム溶液(1M、10mL)に、25mLの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した合成例2のジアリールケトン化合物(2.13g,5mmol)の溶液を加えた。冷却浴を除去し、反応混合物を室温で2時間及び70℃で2日間撹拌した。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相を酢酸エチル(EtOAc)で3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(EtOAc)=10:1~5:1)に供して精製し、トリアリールアルコール化合物(1.08g,2mmol,38%)を白色固体として得た。
合成例4
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。Acはアセチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。X-はカウンターイオンを示す。
無水酢酸(8mL)中の合成例3で得たトリアリールアルコール化合物(1.08g,2mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(TFA;0.5mL,6mmol)を室温でゆっくりと加え、得られた混合物を同じ温度で1時間撹拌した。次に水を加え、水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール(MeOH)=5:1)に供して精製し、対応するホスホニウム塩(1.26g,2mmol,99%)を白色固体として得た。
合成例5
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。nBuLiはn-ブチルリチウムを示す。TMEDAはテトラメチルエチレンジアミンを示す。X-はカウンターイオンを示す。
無水テトラヒドロフラン(THF;10mL)中の合成例4で得たホスホニウム塩(0.83g,2.1mmol)の溶液に、-78℃で1.58Mのn-ブチルリチウム(nBuLi;1.58mL,2.5mmol)及び塩化亜鉛/テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)錯体(0.53g,2.1mmol)をゆっくりと加え、得られた混合物をアルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。アルゴンを酸素に置換した後、攪拌を維持した。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール(MeOH)=10:1~5:1)に供して精製し、ホスホニウムアルコール化合物(0.81g,1.3mmol,60%)を白色固体として得た。
実施例1:ホスホニウムフルオレセイン
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
無水ジクロロメタン(CH2Cl2;2mL)中の実施例1で得たホスホニウムアルコール化合物(0.1g,0.15mmol)の溶液に、三臭化ホウ素(BBr3;0.8mL,0.8mmol)の1.0Mのジクロロメタン溶液を-78℃でゆっくりと加え、得られた混合物を同じ温度で30分間撹拌した。混合物を室温まで温め、24時間撹拌した。水を加えることにより反応を停止し、水相をジクロロメタンで4回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール(MeOH)=10:1)に供して精製し、ホスホニウムフルオレセイン化合物(0.03g,0.06mmol,41%)を赤色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.88-7.80 (2H, m), 7.74-7.66 (8H, m), 7.29 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.14 (2H, d, J = 7.6 Hz), 6.86 (2H, dd, J = 10.0, 8.0 Hz), 6.79 (2H, dd, J = 19.2, 2.4 Hz), 6.49 (2H, dd, J = 10.0, 2.4 Hz), 1.93 (6H, s)。
実施例2:ホスホニウムフルオレセイン
式中、Phはフェニル基を示す。
合成例3で使用した2,6-キシリルマグネシウムブロミド/塩化リチウム溶液を、2-トリルマグネシウムブロミド/塩化リチウム溶液に変えて、合成例3~5及び実施例1の手順に従って合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.88-7.79 (2H, m), 7.75-7.62 (8H, m), 7.39 (1H, t, J = 7.0 Hz), 7.31 (1H, t, J = 7.0 Hz), 7.30 (1H, d, J = 7.0 Hz), 7.07 (1H, d, J = 7.0 Hz), 6.87 (2H, dd, J = 9.8, 8.0 Hz), 6.80 (2H, dd, J = 18.4, 2.4 Hz), 6.47 (2H, dd, J = 9.8, 2.4 Hz), 1.95 (3H, s)。
合成例6
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
無水テトラヒドロフラン(THF;11mL)中の合成例1で得た4-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)アニソール(1.23g,3.3mmоl)の溶液に、-78℃でn-ブチルリチウム(nBuLi;7mL,3.6mmоl)の1.58Mヘキサン溶液をゆっくりと加え、得られた混合物を同じ温度で一時間撹拌した。テトラヒドロフラン(THF;3mL)中の4-ジメチルアミノ安息香酸のワインレブアミド(0.63g,3mmоl)の溶液をゆっくり加えた。混合物を一晩室温まで温めた。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相を酢酸エチルで三回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル=5:1~1:1)に供して精製し、対応するジアリールケトン化合物(0.51g,1.16mmоl,39%)を黄色がかった固体として得た。
合成例7
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
2-トリルマグネシウムブロミド/塩化リチウム溶液(0.3M、12mL)に、24mLの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した合成例6で得たジアリールケトン化合物(0.51g,1.16mmol)の溶液を0℃で加えた。反応混合物を室温で2時間及び70℃で一晩撹拌した。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相を酢酸エチル3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル=5:1~1:1)に供して精製し、対応するトリアリールメタノール化合物(0.11g,0.21mmоl,18%)を白色固体として得た。
合成例8
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。Acはアセチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
無水酢酸(Ac2O;1mL)中の合成例7で得たトリアリールメタノール化合物(0.11g,0.21mmоl)の溶液に、トリフルオロ酢酸(TFA;0.1mL,1mmоl)を室温でゆっくり加え、得られた混合物を同じ温度で2時間撹拌した。次に水を加え、水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール=10:1~5:1)に供して精製し、対応するホスホニウム塩(0.1g,0.2mmоl,95%)を白色固体として得た。
合成例9
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。nBuLiはn-ブチルリチウムを示す。TMEDAはテトラメチルエチレンジアミンを示す。THFはテトラヒドロフランを示す。
無水テトラヒドロフラン(THF;2mL)中の合成例8で得たホスホニウム塩(0.10g,0.20mmol)の溶液に、-78℃で1.58Mのn-ブチルリチウム(nBuLi;1.58mL,0.24mmol)及び塩化亜鉛/テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)錯体(0.05g,0.2mmol)をゆっくりと加え、得られた混合物をアルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。アルゴンを酸素に置換した後、攪拌を維持した。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール(MeOH)=10:1~5:1)に供して精製し、対応するホスホニウムアルコール化合物(0.07g,0.13mmol,65%)を得た。
実施例3:ホスホニウムロドール
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
無水ジクロロメタン(CH2Cl2;1.3mL)中の合成例9で得たホスホニウムアルコール(0.07g,0.13mmol)の溶液に、三臭化ホウ素(BBr3;0.67mL,0.67mmol)の1.0Mのジクロロメタン溶液を-78℃でゆっくりと加え、得られた混合物を同じ温度で30分間撹拌した。混合物を室温まで温め、24時間撹拌した。水を加えることにより反応を停止し、水相をジクロロメタンで4回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール(MeOH)=10:1)に供して精製し、対応するホスホニウムロドール(0.06g,0.1mmol,75%)を青色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.99-7.67 (10H, m), 7.46-7.37 (3H, m), 7.22 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.19-6.93 (7H, m), 6.77 (1H, dd, J = 16.0, 2.4 Hz), 2.90 (6H, s), 1.60 (3H, s)。
合成例10
式中、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基を示す。Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
無水テトラヒドロフラン(THF;7mL)中のN-Boc-N-メチル-4-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)アニリン(1.03g,2.2mmоl)の溶液に、-78℃でn-ブチルリチウム(nBuLi;1.41mL,2.2mmоl)の1.56Mヘキサン溶液をゆっくりと加え、得られた混合物を同じ温度で一時間撹拌した。テトラヒドロフラン(THF;3mL)中のN-Boc-N-メチルアミノ安息香酸のワインレブアミド(0.64g,2.2mmоl)の溶液をゆっくり加えた。混合物を一晩室温まで温めた。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより反応を停止し、水相を酢酸エチルで三回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル=3:1~1:1)に供して精製し、対応するジアリールケトン化合物(0.78g,1.25mmоl,57%)を黄色固体として得た。
合成例11
式中、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基を示す。Phはフェニル基を示す。
2,6-キシリルマグネシウムブロミド/塩化リチウム溶液(0.2M、12mL)に、24mLの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した合成例10で得たジアリールケトン化合物(0.78g,1.25mmol)の溶液を0℃で加えた。反応混合物を室温で2時間及び70℃で一晩撹拌した。塩化アンモニウム飽和水溶液を加えることにより、反応を停止し、水相を酢酸エチル3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル=5:1~1:1)に供して精製し、対応するトリアリールメタノール化合物(0.41g,0.55mmol,44%)を白色固体として得た。
合成例12
式中、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基を示す。Phはフェニル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
無水ジクロロメタン(2mL)中の合成例10のトリアリールメタノール化合物(0.4g,0.55mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(TFA;0.21mL,2.8mmol)を室温でゆっくり加え、得られた混合物を同じ温度で3日間撹拌した。次に水を加え、水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液としてクロロホルム/メタノール=10:1~5:1)に供して精製し、対応するホスホニウム塩(0.31g,0.5mmol,90%)を緑色固体として得た。
実施例4:ホスホニウムローダミン
式中、Phはフェニル基を示す。Meはメチル基を示す。DMFはジメチルホルムアミドを示す。
無水ジメチルホルムアミド(DMF;0.5mL)中の合成例12で得たホスホニウム塩(0.07g,0.11mmol)の溶液に炭酸カリウム(0.05g,0.33mmol)とヨードメタン(15μL,0.24mmol)を室温でゆっくり加え、得られた混合物を80℃で3日間撹拌した。1日おきに同量のヨードメタンを追加で加えた。次に水を加え、水相を酢酸エチルで5回洗浄した。次に四フッ化ホウ酸ナトリウムの2M水溶液を加え、ジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、そして濃縮した。ジクロロメタン/ジエチルエーテルで再結晶し、対応するホスホニウムローダミン化合物(10mg,0.01mmоl,12%)を緑色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.05-7.95 (6H, m), 7.89-7.82 (4H, m), 7.45-7.36 (3H, m), 7.29-7.22 (4H, m), 7.14 (2H, dd, J = 9.8, 2.6 Hz), 3.37 (12H, s), 1.90 (6H, s)。
試験例1:光物理特性
ホスホニウムフルオレセイン化合物(実施例1)、ホスホニウムロドール化合物(実施例3)及びホスホニウムローダミン化合物(実施例4)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した。ホスホニウムフルオレセイン化合物(実施例1)の測定には、水(pH7.1)にホスホニウムフルオレセイン化合物(実施例1)を5.0×10-5M溶解させた試料溶液を用いた。ホスホニウムロドール化合物(実施例3)の測定には、10質量%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する水(pH7.0)にホスホニウムロドール化合物(実施例3)を5.0×10-5M溶解させた試料溶液を用いた。ホスホニウムローダミン化合物(実施例4)の測定には、水(pH5.3)にホスホニウムローダミン化合物(実施例4)を1.0×10-5M溶解させた試料溶液を用いた。各試料溶液を用いて、Shimadzu UV-3150 spectrometerにより測定した。また、蛍光スペクトルは、HITACHI F-4500 spectrometerで、各試料溶液を用いて測定した。結果を図2~4に示す。図2~4において、左側が吸収スペクトル、右側が蛍光スペクトルである。
試験例2:蛍光の溶媒依存性の評価
ホスホニウムフルオレセイン化合物(実施例1)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを、様々な溶媒中で測定した。溶媒としては、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、トルエンを用い、ホスホニウムフルオレセイン化合物(実施例1)の濃度を5.0×10-5Mとして、上記試験例1と同様に吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した。結果を図5及び表1に示す。