図面を参照しながら各実施形態について説明する。以降の説明では、素子10を発振器として用いる場合について説明を行うが、素子10は受信器として用いることも可能である。ここで、テラヘルツ波とは、10GHz以上100THz以下、より好適には30GHz以上30THz以下の周波数領域内の電磁波を示す。
各実施形態の説明において、他の実施形態と同一の構成については説明を省略する場合がある。実施形態は、適宜変更、あるいは他の実施形態と適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
本実施形態に係る素子10について、図1(a)、図2~図5を用いて説明する。素子10の構成について、図1(a)、図2~図4を相互に参照して説明する。図1(a)は素子10の上部から見た上面模式図である。図1(a)は上面視したときの素子10を示していると言える。図1(a)には、X方向、Y方向、Z方向を示している。X方向とY方向は交差すればよいが、図1(a)では直行するものとする。X方向とY方向は1つの面に含まれる。Z方向はX方向とY方向に直行し、Z方向は上向きとも称する。図2は素子10の外観を模式的に示す斜視図である。図3(a)は、図1(a)のA-A’線における素子10の断面模式図である。図3(b)は、図1(a)のB-B’線における素子10の断面模式図である。図4は素子10の第2の導体層を示す平面模式図である。
図1(a)、図2~図4に示すように、素子10が有する基板113、誘電体層104、半導体層115などの各構成の積層方向における各構成の長さを「厚さ」または「高さ」と呼ぶ。また、基板113に対して、誘電体層104や半導体層115が存在する方向を「上」と呼ぶ。
図1(a)を用いて素子10について説明する。素子10は、周波数fTHzのテラヘルツ波を発振または検出する素子であり、半導体材料からなる。素子10には、アンテナが複数配されている。本実施形態では、素子10は、9つのアンテナ100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、100h、100iが3×3のマトリクス状に配置されたアンテナアレイを備える。
アンテナの構成について説明する。アンテナ100a~アンテナ100iのそれぞれは同様の構成を有する。以下の説明において、アンテナ100aの構成について詳細に説明し、他のアンテナ100b~100iにおけるアンテナ100aと同様の構成部分については、詳細な説明を省略する。また、説明の中で、各アンテナ100a~100iが有する構成の符番の末尾に、各アンテナに対応するアルファベットを記載している。例えば、第2の導体層103のうち、アンテナ100aに有する構成は、第2の導体層103aと対応付けて記載する。
アンテナ100aは、テラヘルツ波を共振する共振器と、テラヘルツ波を送信または受信する放射器を兼ねている。また、各アンテナは、検出または発生するテラヘルツ波の波長以下、または当該波長の整数倍のピッチで配置することができる。
図3(a)に示すように、基板113と、第1の導体層106と、第2の導体層103aとがこの順に積層されている。第1の導体層106と第2の導体層103aとの間には誘電体層1042と誘電体層1041とが第1の導体層106側からこの順に配されている。アンテナ100a~アンテナ100iと同様に、第2の導体層103a~103iのそれぞれは同様の構成を有する。第2の導体層103aと第2の導体層103bとの間には、第3の導体層110abが配されている。第3の導体層110abは、アンテナ100a~100iと同様に、第3の導体層110bc、第3の導体層110cfなどを含む。第2の導体層103bと第2の導体層103cとの間には、第3の導体層110bcが配されている。以下の説明において、例えば、アンテナ100xとアンテナ100yの間を結ぶ導体層は、導体層110xyあるいは導体層110yxなどと示す。導体層に限らず、結合層などでも同様である。
アンテナ100aは、第1の導体層106と、第2の導体層103aと、その間に配された半導体層101aと、を少なくとも有する。半導体層101aは、後に詳述するが共鳴トンネルダイオード(Resonant tunneling Diode:RTD)であり、RTD101aや活性層101aとも称する。以下、RTD101aと称する場合もある。アンテナ100aは、更に、半導体層115aや、オーミック接合するための電極116aや、第2の導体層103aとRTD101aとの接続のための導体117aとを含む。結合線109abは、第3の導体層110abを含む。第3の導体層110abと第1の導体層106との間には、バイアスライン111x2が配されている。バイアスライン111x2は、誘電体層1042と誘電体層1041との間に位置する。
図3(b)では、図3(a)で示されたバイアスライン111x2と同じ層に、バイアスライン111y2などが配されている。バイアスライン111y2は、線路108g1や108d2を構成する。第2の導体層103aは、導体107g1と、線路108g1と、線路108d2と、導体107d2と、を経由して、第2の導体層103bと接続する。バイアスライン111y2の層は、図2に示すように、バイアス回路120と電気的に接続する。バイアス回路120は、電源回路とも称する。なお、第1の導体層106は、図2に示すように、接地される。図3(a)および図3(b)に示される、第1の導体層106を含む層を第1配線層とし、バイアスライン111を含む層を第2配線層とし、第2の導体層103と第3の導体層110とを含む層を第3配線層と称することもできる。各配線層に含まれる導体は、同一高さに位置するともいえる。高さとは、基板113の表面からの高さを意味する。
図4は、第2の導体層103と第3の導体層110とを含む同一高さに位置するパターンを模式的に示したものである。ここで、複数のアンテナ100を有する素子について説明する。
素子10のアンテナ利得の増加を目的として、複数のアンテナ100を配することが考えられている。それぞれのアンテナ100には、上述のようにRTD101が配されており、それぞれのアンテナ100において相互注入同期させることで、アンテナ利得が増大する。複数のアンテナ100の間を同期するためには、隣接アンテナ間を結合する結合線が必要である。ここで、結合線はカップリングラインとも称する。
結合線は、これまで詳細な検討がなされていなかった。具体的には、隣接アンテナと結合線で接続する場合には、横方向(磁界方向・H方向)および縦方向(電界方向・E方向)の何れか或いは両方で位相整合条件を満たすことが困難であった。このため、アンテナ数の増加と共に縦方向、あるいは横方向のどちらかの注入同期が不十分となり利得の増加が低減されていた。また、指向性の向上が予想よりも減少していた。従って、アンテナアレイを用いることによる効率のよいテラヘルツ波の発生および検出ができなかった。
図4を用いて、複数のアンテナ100を結合する結合線について説明を行う。まず、複数のアンテナ100をX方向で結合する場合について説明する。アンテナ100eは、アンテナ100fと結合線109efによって結合されている。X方向におけるアンテナの結合を説明する。アンテナ100eは、結合線109efを介してアンテナ100fと結合され、結合線109deを介してアンテナ100dと結合される。アンテナ100hは、結合線109hiを介してアンテナ100iと結合され、結合線109ghを介してアンテナ100gと結合される。アンテナ100bは、結合線109bcを介してアンテナ100cと結合され、結合線109abを介してアンテナ100aと結合される。図4において、各アンテナは、各結合線と直接接続しているが、容量結合によって接続していてもよい。ここで、X方向は、上述の縦方向であり、電界の方向、すなわちE方向である。
次に、複数のアンテナ100をY方向で結合する場合について説明する。アンテナ100のY方向の結合は、結合線109fiと、結合線109cfと、結合線1091heと、結合線1091ebと、結合線1092heと、結合線1092ebと、結合線109dgと、結合線109adと、によってなされる。結合線1091heは結合線109hiと結合線109efとを結合し、結合線1091ebは結合線109efと結合線109bcとを結合する。結合線1092heは結合線109ghと結合線109deとを結合し、結合線1092ebは結合線109deと結合線109abとを結合する。
アンテナ100eに着目すると、次のようになる。アンテナ100eに対して、第1の方向(縦方向)でアンテナ100eの両側に隣接したアンテナ100fおよびアンテナ100dが配置されている。アンテナ100eは、第1の方向(縦方向)に延びる結合線109efおよび109edで、アンテナ100fおよびアンテナ100dとそれぞれ接続されている。同様に、第1の方向と交差する第2の方向(横方向)でアンテナ100eの両側に隣接したアンテナ100hおよびアンテナ100bが配置されている。ここで、本実施形態で用いたパッチアンテナの場合は、第1の方向はテラヘルツ波の共振方向(共振電界の伝搬方向、電界方向、E方向)であり、第2の方向は第1の方向の直交方向(磁界方向、H方向)となる。なお、本発明は、上記のような水平・垂直偏波を放射するアンテナだけでなく円偏波を放射するアンテナにも適用される。
また、アンテナ100eに着目すると、次のようになる。第1の方向(縦方向)で、アンテナ100dと、アンテナ100eと、アンテナ100fはこの順に配されている。第1の方向と交差する第2の方向(横方向)で、アンテナ100hと、アンテナ100eと、アンテナ100bはこの順に配されている。アンテナ100eとアンテナ100fは第1の方向に沿った結合線109efで結合され、アンテナ100eとアンテナ100dは第1の方向に沿った結合線109deで結合されている。アンテナ100eとアンテナ100bは第2の方向に沿った結合線1091ebで結合され、アンテナ100eとアンテナ100hは第2の方向に沿った結合線1091heで結合されている。
ここで、第1のアンテナをアンテナ100eとし、第2のアンテナをアンテナ100fとし、第3のアンテナをアンテナ100dとし、第4のアンテナをアンテナ100hとし、第5のアンテナをアンテナ100bとする。第1の方向としてX方向とし、第2の方向としてY方向とすると、次のように説明できる。第1の方向において、第2のアンテナと、第1のアンテナと、第3のアンテナとがこの順に配される。第2の方向において、第4のアンテナと、第1のアンテナと、第5のアンテナとがこの順に配される。第2のアンテナの第2の導体層は、第1のアンテナの第2の導体層と第1の方向に延びる第1の結合線を介して接続され、第1のアンテナの第2の導体層は、第3のアンテナの第2の導体層と第1の方向に延びる第2の結合線を介して接続される。第4のアンテナの第2の導体層は、第1のアンテナの第2の導体層と第2の方向に延びる第3の結合線を介して接続され、第1のアンテナの第2の導体層は、第5のアンテナの第2の導体層と第2の方向に延びる第4の結合線を介して接続される。ここで、第1の結合線は109efであり、第2の結合線は結合線109deである。第3の結合線は結合線1091heあるいは結合線1092heであり、第4の結合線は結合線1091ebあるいは結合線1092ebである。
図4に示したように、素子10は、第1の方向(縦方向)と交差する第2の方向(横方向)に延びる結合線1091he、1092he、1091eb、1092ebをさらに備える。そして、第2の方向に延びる結合線1091he、1091ebは、第1の方向に延びる結合線109hi、109ef、109bcと接続されている。また、第2の方向に延びる結合線1092he、1092ebは、第1の方向に延びる結合線109gh、109de、109abと接続されている。このような接続によって、複数のアンテナ100の結合を行うことができる。また、このような接続によって、アンテナの利得が増大する。なお、結合線同士が接続する場合には、結合線同士が連続して形成された導体、すなわち一体の導体からなっていてもよい。
結合線は、次のように接続されることが好ましい。隣接アンテナのRTD間の電気長が2πの整数倍となるような長さとすることが好ましい。例えば、第1の方向としてX方向を取った時に、X方向に延びる結合線109deは、RTD100eとRTD100dの電気長が2πとなる長さである。また、第2の方向としてY方向を取った時に、Y方向に延びる結合線1091ebあるいは結合線1092ebは、RTD100eと100bの電気長が4πとなる長さである。ここで、電気長とは、結合線内を伝搬する高周波の伝搬速度を考慮した配線長である。各アンテナのRTD101a~101iから正位相で相互注入同期することが容易となる。なお、長さの範囲の誤差は±1/4πである。
更に、結合について説明する。図5(a)および図5(b)は、本実施形態の素子10を説明するための模式図である。図5(a)および図5(b)は、アンテナと結合線との関係を模式的に示した図である。図5(c)はアンテナ数と電磁波の放射角の相関を示すグラフである。
図5(a)は、XY方向に結合した素子10を、図5(b)は、X方向のみを結合した素子10’の構成を示している。ここで、図中の「+」と「-」は、アンテナアレイを定在する周波数fTHzの共振電界の腹とその極性を示しており、「×」は共振電界の節を示している。素子10’は、中心のアンテナ100eとY方向に隣接する2つのアンテナ100h、あるいはアンテナ100bとを結合する結合線がないため、Y方向におけるアンテナ間の同期は不十分であった。素子10のアンテナ100eは、Y方向で隣接するアンテナ100hおよびアンテナ100bと結合線で接続されているため、Y方向のアンテナ間の同期が十分に行われている。よって、アンテナの利得が増大する。
更に、アンテナ間の位相整合条件を満たすために、X方向で隣接するアンテナ間の対称軸からX方向にシフトした位置でX方向とY方向の結合線は接続される。言い換えると、X方向で隣接するアンテナ間の中心からX方向に沿ってシフトした位置でX方向とY方向の結合線は接続される。例えば、X方向に隣接するアンテナ100eと100dの場合については次のようになる。アンテナ100eと100dがY方向に延びる線分を基準に線対称となる場合、該線分がX方向と交差する点である対称点を取る。X方向の結合線109deとY方向の結合線1092heは、対称点からX方向にシフトした位置で接続されている。X方向の結合線109deとY方向の結合線1092ebは、対称点からX方向にシフトした位置で接続されている。シフト量は例えば、30umである。図1(a)において、X方向における2つのアンテナ100間の距離を長さLX1とし、Y方向における2つのアンテナ100間の距離を長さLY1とする。ここで、結合線109abと結合線1092ebの接続は、長さLX1の中心からアンテナ100a側にシフトしている。ここで、シフトとは、オフセットともいう。
より好ましくは、X方向とY方向の結合線は、テラヘルツ波の周波数で結合線に定在する共振電界の節以外の位置で接続される。言い換えると、X方向で隣接するアンテナ間の、テラヘルツ波の周波数fTHzにおける電気的な対称の中心からシフトした位置でX方向とY方向の結合線は接続されることが好ましい。これは、テラヘルツ波の周波数で結合線に定在する共振電界の節で両者を接続した場合、縦横のアンテナ間の位相整合条件が矛盾してしまうためである。よって、干渉による出力の弱め合いが生じうる。また、指向性に乱れが生じうる。
図5(c)にアンテナ数と放射角の相関を示すグラフを示す。グラフ上で直線と破線は計算値(ANSYS社HFSS使用)を示しており、各点は2×2、4×4、5×5、6×6アレイの実測データを表す。縦方向のみを結合した素子10’の場合は、3×3以上のアンテナアレイで横方向の同期が不十分となることがわかる。そして、指向性の改善の効果が飽和することが分かる。また、縦横の2方向でアンテナを結合する素子10の構成は、縦横両方向でアンテナ数増加に伴い指向性は改善され放射角は先鋭化することが計算・実測の両面で確認することが出来る。接続された横方向の結合線の効果で、アンテナ100eのように隣接アンテナに周囲を囲まれたアンテナの数が増加する3×3以上のアンテナアレイであっても、アンテナ間の同期が縦横方向で十分にとれていることを示している。つまり、アンテナ間の位相整合条件が満たされている。従って、本実施形態の素子によれば、M×Nアレイ(MおよびNは自然数)において周囲を隣接アンテナで囲まれたアンテナでも少なくとも縦方向、および縦横両方向における結合の強化と位相整合が両立する。よって、図5(a)に示した素子10は、図5(b)に示した縦方向のみを同期した素子10’の場合と比べてアンテナの出力の強度の増強が見込まれる。また、指向性の改善が見込まれる。
なお、各アンテナ間に1本の結合線を縦横に配置する構成は、結合線の本数を最小限に抑えて結合に起因するテラヘルツ波に損失を低減した好適な構成であるが、これに限定されない。
以下、詳細なアンテナの構成について説明を行う。図3(a)、(b)に示すように、アンテナ100aは、第1の導体層106と、第2の導体層103aと、誘電体層104とを有する。誘電体層104は、第1の導体層106と第2の導体層103aの2つの導体層(配線層)の間に位置する。このようなアンテナ100aの構成は、有限な長さのマイクロストリップラインなどを用いたマイクロストリップ型のアンテナと呼ばれる。本実施形態では、マイクロストリップ型の共振器であるパッチアンテナを用いた例について説明する。
図3(a)、(b)に示すように、第2の導体層103aは、誘電体層104(半導体層115a)を介して第1の導体層106と対向するように配置されている、アンテナ100aのパッチ導体である。第2の導体層103aは、半導体層115aと電気的に接続されている。アンテナ100aは、第2の導体層103aのA-A’方向(共振方向)の幅がλTHz/2である共振器として動作するように設定されている。第1の導体層106は、電気的に接地されている接地導体である。なお、λTHzは、アンテナ100aで共振するテラヘルツ波の誘電体層104における実効波長であり、テラヘルツ波の真空中における波長をλ0として、誘電体層104の実効的な比誘電率をεrとすると、λTHz=λ0×εr-1/2として表される。
図3(a)、(b)に示すように、アンテナ100aは、半導体構造体を有する。半導体構造体は、例えば、メサ型の構造体である。半導体構造体は、半導体層115aと、半導体層101aとを含む。更に、半導体構造体は、オーミック電極である第3の電極116aを有する。半導体層115aは、アンテナ100aの内部に位置し、テラヘルツ波の電磁波を発振または検出するための構成である。図1(a)においては、アンテナ100aは、半導体層101aのみを示しているが、半導体層115aも半導体層101aと第2の導体層103aとの間に配されている。
以下、半導体層101aについて説明する。半導体層101aは、テラヘルツ波に対する電磁波の利得または非線形性を有する半導体層から構成される。テラヘルツ波の周波数帯で電磁波利得を有する典型的な半導体層としては、共鳴トンネルダイオード(Resonant tunneling Diode:RTD)があり、活性層とも称する。本実施形態では、半導体層101aとしてRTDを用いた例について説明する。また、以降において、半導体層101aをRTD101aと呼ぶ場合もある。
RTD101aは、複数のトンネル障壁層を含み構成される共鳴トンネル構造層を有し、複数のトンネル障壁の間に量子井戸層が設けられており、キャリアのサブバンド間遷移によりテラヘルツ波を発生する多重量子井戸構造を備える。RTD101aは、電流電圧特性の微分負性抵抗領域において、フォトンアシストトンネリング現象に基づくテラヘルツ波の周波数領域の電磁波利得を有しており、微分負性抵抗領域において自励発振する。
アンテナ100aは、RTD101aと、半導体層115aと、パッチアンテナが集積されたアクティブアンテナである。アンテナ100a単体から発振されるテラヘルツ波の周波数fTHzは、パッチアンテナと半導体層115aのリアクタンスとを組み合わせた全並列共振回路の共振周波数によって決定される。具体的には、非特許文献1に記載された発振器の等価回路から、RTDとアンテナのアドミタンス(YRTDおよびYaa)を組み合わせた共振回路について、(1)式の振幅条件と(2)式の位相条件とを満たす周波数が発振周波数fTHzとして決定される。
Re[YRTD]+Re[Yaa]≦0 (1)
Im[YRTD]+Im[Yaa]=0 (2)
ここで、YRTDは、半導体層115aのアドミタンスであり、Reは実部、Imは虚部をそれぞれ示す。半導体層115aは、負性抵抗素子であるRTD101aを含むので、Re[YRTD]は負の値を有する。また、Yaaは、半導体層115aから見たパッチアンテナ100aの全構造のアドミタンスを示す。
なお、半導体層101aとして、数百から数千層の半導体層多層構造を持つ量子カスケードレーザ構造(Quantum Cascade Laser:QCL)を用いてもよい。この場合、半導体層115aは、QCL構造を含む半導体層である。また、半導体層101aとして、ミリ波帯でよく用いられるガンダイオードやインパットダイオードのような負性抵抗素子を用いてもよい。また、半導体層101aとして、一端子を終端したトランジスタなどの高周波素子を用いてもよく、トランジスタとしては、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、化合物半導体層系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT)などが好適である。また、半導体層101aとして、超伝導体層を用いたジョセフソン素子の微分負性抵抗を用いてもよい。
誘電体層104は、第1の誘電体層1041と第2の誘電体層1042の2層から構成される。パッチアンテナなどのマイクロストリップ型の共振器は、誘電体層104が厚いことによって、導体損失が低減され放射効率が改善される。誘電体層104は、厚膜が形成可能なこと(典型的には3μm以上)、テラヘルツ帯で低損失・低誘電率であること、かつ、微細加工性がよいこと(平坦化やエッチング)が求められる。ここで、誘電体層104の厚さは、厚いほど放射効率は上がるが、厚すぎると多モードの共振が生じることがある。このため、誘電体層104の厚さは、上限として、発振波長の1/10以下の範囲で設計することが好ましい。一方、発振器の高周波化と高出力化にはダイオードの微細化と高電流密度化が必要であるため、誘電体層104は、ダイオードの絶縁構造体として、リーク電流抑制やマイグレーション対策も求められる。本実施形態では、上記の2つの目的を満たすために、第1の誘電体層1041と第2の誘電体層1042には、材料の異なる2種類の誘電体層を用いている。
第1の誘電体層1041には、材料の具体例として、BCB(ベンゾシクロブテン、ダウケミカル社製、εr1=2)やポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの有機誘電体材料が好適に用いられる。ここで、εr1は第1の誘電体層1041の比誘電率である。また、比較的厚膜を形成することが可能であり、かつ、誘電率が低いTEOS酸化膜やスピンオングラスなどの無機の誘電体材料を、第1の誘電体層1041に用いてもよい。
また、第2の誘電体層1042には、絶縁性(直流電圧に対して電気を通さない絶縁体・高抵抗体としてふるまう性質)、バリア性(電極に用いる金属材料の拡散防止の性質)、加工性(サブミクロンの精度で加工が可能な性質)が求められる。これらを満たす材料の具体例としては、酸化シリコン(εr2=4)、窒化シリコン(εr2=7)、酸化アルミ、窒化アルミなどの無機の絶縁体材料が好適に用いられる。εr2は、第2の誘電体層1042の比誘電率である。
ここで、本実施形態のように誘電体層104が2層構成の場合、誘電体層104の比誘電率をεrは、第1の誘電体層1041の厚さと比誘電率εr1および第2の誘電体層1042の厚さと比誘電率εr2から決定される実効的な比誘電率である。また、アンテナと空間のインピーダンス整合という観点からは、アンテナと空気の誘電率差は少ない方が好ましいので、第1の誘電体層1041は、第2の誘電体層1042とは異なる材料であり、比誘電率が低い(εr1<εr2である)材料を用いるとよい。なお、素子10において、誘電体層104は、2層構成である必要はなく、上述した材料のうちの1層のみによって構成された構造であってもよい。
半導体層115aは、基板113の上に形成された第1の導体層106の上に配置される。半導体層115aと第1の導体層106とは、電気的に接続されている。なお、オーム性損失を低減するため、半導体層115aと第1の導体層106は、低抵抗で接続されることが好ましい。半導体層115aに対して、第1の導体層106が配置されている側と反対側に電極116aが配置されており、電極116aと半導体層115aとは電気的に接続されている。半導体層115aおよび電極116aは、第2の誘電体層1042に埋め込まれており、第2の誘電体層1042によって周囲を被覆されている。
電極116aは、半導体層115aとオーム性接続された導体であれば、直列抵抗に起因したオーム性損失やRC遅延の低減に好適である。オーミック電極として電極116aを用いる場合、材料としては、例えば、Ti/Pd/Au、Ti/Pt/Au、AuGe/Ni/Au、TiW、Mo、ErAsなどが好適に用いられる。また、半導体層115aの電極116aと接する領域が高濃度に不純物がドーピングされた半導体であれば、より接触抵抗が低くなり、高出力化と高周波化に好適である。テラヘルツ波帯で用いられるRTD101aの利得の大きさを示す負性抵抗の絶対値は概ね1~100Ωのオーダーであるため、電磁波の損失はその1%以下に抑えることが好適である。従って、オーミック電極におけるコンタクト抵抗は目安として1Ω以下に抑制するとよい。また、テラヘルツ波帯で動作するためには、半導体層115aの幅(≒電極116a)は、典型値として0.1~5μm程度である。このため、コンタクト抵抗は、抵抗率を10Ω・μm2以下にして0.001~数Ωの範囲に抑制することが好適である。
また、電極116aに対して、オーム性ではなくショットキー接続するような金属を用いた構成も考えられる。この場合、電極116aと半導体層115aとの接触界面は整流性を示し、アンテナ100aはテラヘルツ波の検出器として好適な構成である。以下、本実施形態では、電極116aとしてオーミック電極を用いた構成について説明する。
RTD101aの上下に配置されるアンテナ100aの内部では、図3(a)に示すように、基板113、第1の導体層106、半導体層115a、電極116a、導体117a、第2の導体層103aの順に積層される。
導体117aは、誘電体層104の内部に形成されており、第2の導体層103aと電極116aとは導体117aを介して電気的に接続されている。ここで、導体117aの幅が大きすぎると、パッチアンテナ100aの共振特性の劣化と寄生容量増加による放射効率の低下が生じる。このため、導体117aの幅は、共振電界に干渉しない程度の寸法が好ましく、典型的には、アンテナ100aに定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の実効波長λの1/10以下が好適である。また、導体117aの幅は、直列抵抗を増やさない程度に小さくてもよく、目安としては表皮深さの2倍程度まで縮小できる。直列抵抗が1Ωを超えない程度まで小さくすることを考えると、導体117aの幅は典型的には0.1μm以上20μm以下の範囲が目安である。
図1(a)において、第2の導体層103aは、導体107a1および導体107a2を経由して、線路108a1および線路108a2と電気的に接続される。また、線路108a1、108a2は、チップ内に形成された共通配線であるバイアスライン111を経由してバイアス回路120に電気的に接続される引き出し線である。線路108は、アンテナのそれぞれから引き出されている。バイアス回路120は、アンテナ100aのRTD101aにバイアス信号を供給するための電源である。従って、バイアスライン111と、隣り合うアンテナのそれぞれから引き出された線路108とが接続されることによって、各アンテナの半導体層115にバイアス信号が供給される。バイアスライン111が共通であることで十分な配線幅が確保出来るため、配線抵抗のばらつきに起因したアンテナ間の動作電圧ばらつきが低減できるため、アレイ数が増えても同期が安定化する。また、アンテナ周囲の構造を対称にすることが可能になり、放射パターンが崩れない。
導体107a1、107a2は、線路108a1、108a2を第2の導体層103aに電気的かつ機械的に接続するための接続部である。導体117a、導体107a1、107a2のように、上下の層間を電気的に接続する構造はビアと呼ばれる。第1の導体層106および第2の導体層103aは、パッチアンテナを構成する部材としての役割に加えて、これらのビアと接続されることによって、RTD101aに電流を注入するための電極も兼ねている。ビアである導体117aや導体107a1、107a2としては、抵抗率が1×10-6Ω・m以下の材料が好ましい。具体的には、材料として、Ag、Au、Cu、W、Ni、Cr、Ti、Al、AuIn合金、TiNなどの金属および金属化合物が好適に用いられる。
導体107a1、107a2の幅は、第2の導体層103aの幅より小さい。ここで示す幅とは、アンテナ100a内の電磁波共振方向(=A-A’方向)における幅である。また、導体107a1(導体107a2)と接続される線路108a1(線路108a2)の部分(接続部)の幅は、第2の導体層103a(アンテナ100a)の幅より小さい(細い)。また、これらの幅は、アンテナ100aに定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の実効波長λの1/10以下(λ/10以下)が好適である。導体107a1、107a2と線路108a1、108a2は、アンテナ100a内の共振電界に干渉しない程度の寸法および位置に配置することが、放射効率改善には好ましいためである。
また、導体107a1、107a2の位置は、アンテナ100aに定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の電界の節に配置されていることが好ましい。このとき、導体107a1、107a2と線路108a1、108a2は、発振周波数fTHz付近の周波数帯においてRTD101aの微分負性抵抗の絶対値よりインピーダンスが十分に高い構成である。言い換えると、線路108a1、108a2は、発振周波数fTHzにおいてRTDからみて高インピーダンスであるように、アンテナ100a以外の他のアンテナと接続されている。この場合、他のアンテナとアンテナ100aとは、周波数fTHzにおいて、バイアスライン111経由の経路ではアイソレーション(分離)されている。これにより、バイアスライン111およびバイアス回路120を経由して、各アンテナに誘起される発振周波数fTHzの電流が、隣接するアンテナに影響することがない。また、アンテナ100a内を定在する発振周波数fTHzの電界とこれらの給電部材との干渉が抑制される。素子10における他のアンテナ100b~100iについても、アンテナ100aと同様である。
バイアスライン111は、アンテナ100a~100iの共通のバイアス配線(配線層)である。アンテナ100a~100iは、それぞれに接続された線路108a1、108a2~線路108i1、108i2を経由してバイアスライン111と接続される。バイアスライン111のうち、A-A’方向(共振方向)の配線は111x1~111x4として、B-B’方向の配線は111y1~111y4として、図3(a)、図3(b)では図示している。なお、本説明においては、素子10のバイアス共通配線の全体を表す場合はバイアスライン111と表記している。
図2において、バイアス回路120は、RTD101a~101iにバイアス信号を供給するために、チップより外に配置された電源である。バイアス回路120は、RTD101a~101iのそれぞれと並列に接続されたシャント抵抗121、配線122、電源123、シャント抵抗121と並列に接続された容量124を含む。
配線122は、寄生的なインダクタンス成分を必ず伴うため、図2ではインダクタンスとして示している。電源123は、RTD101a~101iそれぞれを駆動するために必要な電流を供給し、RTD101a~101iそれぞれにかかるバイアス電圧を調整する。バイアス電圧は、典型的には、RTD101a~101iに用いたRTDの微分負性抵抗領域の電圧から選択される。バイアス回路120は、チップ内配線であるバイアスライン111と接続されている。アンテナ100aの場合、バイアス回路120からのバイアス電圧は、線路108a1および線路108a2を経由してアンテナ100a内のRTD101aに供給される。他のアンテナ100b~100iについてもアンテナ100aと同様である。
シャント抵抗121および容量124は、バイアス回路120に起因した比較的低周波の共振周波数(典型的にはDC(直流;Direct Current)から10GHzの周波数帯)の寄生発振を抑制する役割を有する。シャント抵抗121の値は、並列接続されたRTD101a~101iの合成された微分負性抵抗の絶対値と等しいか少し小さい値が選択される。容量124も、シャント抵抗121と同様に、並列接続されたRTD101a~101iの合成された微分負性抵抗の絶対値と素子のインピーダンスが等しいか、少し低く設定される。すなわち、バイアス回路120は、これらのシャント構造により、DCから10GHzの周波数帯において利得に相当する合成した負性抵抗の絶対値より低インピーダンスであるように設定されている。一般的には、容量124は、上述の範囲内であれば大きい方が好ましく、本実施形態の例であれば、数十pF程度の容量である。容量124は、デカップリング容量であり、例えば、アンテナ100aと基板を共にしたMIM(Metal-insulator-Metal)構造を利用してもよい。
素子10は、3×3のマトリクス配置された9つのアンテナ100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、100h、100iを有するアンテナアレイである。アンテナ100a~100iのそれぞれは、周波数fTHzのテラヘルツ波を単体で発振する。隣接したアンテナ間は、結合線109によって相互に結合されており、テラヘルツ波の発振周波数fTHzにおいて相互注入同期(相互に同期)されている。
ここで、相互注入同期とは、複数の自励発振器が、相互作用により引き込み同期して発振することである。例えば、アンテナ100aとアンテナ100bとは、結合線109abによって相互に結合されており、アンテナ100aとアンテナ100dとは結合線109adによって相互に結合される。他の隣接するアンテナ間も同様である。なお、「相互に結合される」とは、あるアンテナに誘起された電流が他の隣接するアンテナに作用して、互いの送受信特性を変化させる現象のことである。相互に結合されたアンテナを同位相または逆位相において同期することで、相互注入同期現象により各アンテナ間における電磁界の強め合いまたは弱め合いを引き起こす。これによって、アンテナ利得の増減を調整することができる。なお、本説明においては、素子10のアンテナ間を結合する結合線全体を表す場合は結合線109と表記する。また、結合線109を構成する各アンテナ間を結合する結合線については、各アンテナに対応するアルファベットを用いて表記している。例えば、アンテナ100aとアンテナ100bとを結合する結合線は、結合線109abと表記する。
素子10の発振条件は、J.Appl.Phys.,Vol.103,124514(2008)(非特許文献2)に開示された2つ以上の個別のRTD発振器を結合した構成における相互注入同期の条件により決定される。具体的には、アンテナ100aとアンテナ100bとが結合線109abによって結合されているアンテナアレイの発振条件を考える。このとき、正位相の相互注入同期と逆位相の相互注入同期との2つの発振モードが生じる。正位相の相互注入同期の発振モード(evenモード)の発振条件は(4)式および(5)式で表され、逆位相の相互注入同期の発振モード(oddモード)の発振条件は(6)式および(7)式で表される。
正位相(evenモード):周波数f=feven
Yeven=Yaa+Yab+YRTD
Re(Yeven)≦0 (4)
Im(Yeven)=0 (5)
逆位相(oddモード):周波数f=fodd
Yodd=Yaa+Yab+YRTD
Re(Yodd)≦0 (6)
Im(Yodd)=0 (7)
ここで、Yabは、アンテナ100aとアンテナ100bとの間の相互アドミタンスである。Yabは、アンテナ間の結合の強さを表す結合定数に比例し、理想的には-Yabの実部が大きく、虚部がゼロとなるのが好ましい。本実施形態の素子10は正位相での相互注入同期する条件で結合されており、発振周波数fTHz≒fevenである。他のアンテナについても同様に、各アンテナ間は結合線109において上述の正位相の相互注入同期条件を満たすように結合されている。
結合線109は、第3の導体層110と第1の導体層106とによって誘電体層104を挟んだマイクロストリップラインである。例えば、図3(a)に示すように、結合線109abは、第3の導体層110abと第1の導体層106とによって誘電体層104を挟んだ構造である。同様に、結合線109bcは第3の導体層110bcによって、結合線109adは第3の導体層110adによって、結合線109cfは第3の導体層110cfによって、誘電体層104を第1の導体層106とで挟む。
図4において、素子10の各アンテナ間はDC結合によって結合されている。アンテナ100aとアンテナ100bとを結合する結合線109abの上導体層である第3の導体層110abは、第2の導体層103a、103bに直接接続されている。図3や図4に示したように、素子10において、第3の導体層110abと、第2の導体層103a、103bは同じ層に形成されている。同様に、アンテナ100aとアンテナ100eとを結合する結合線109aeの上導体層である第3の導体層110aeは、第2の導体層103a、103eに直接接続されている。第3の導体層110aeと、第2の導体層103a、103eは同じ層に形成されている。
本構造により、アンテナ100aに対してアンテナ100bおよびアンテナ100eは相互に結合されており、発振するテラヘルツ波の周波数fTHzにおいて相互に同期して動作する。このようなDC結合によって同期されたアンテナアレイは、隣接アンテナ間を強い結合で同期することができるため、引き込みによる同期動作がしやすく、各アンテナの周波数や位相のばらつきに強い。
なお、素子10において、結合線109とバイアスライン111は異なる層に配置されている。例えば、図3(a)に示したように、アンテナ100aとアンテナ100bを結合する結合線109abを構成する第3の導体層110abと、バイアスライン111を構成する第4の導体層111x2とは異なる層に配置される。また、アンテナ100aとアンテナ100dを結合する結合線109adを構成する第3の導体層110adと、バイアスライン111を構成する第4の導体層111x1は異なる層に配置される。言い換えると、結合線109が基板113の面内方向(積層方向と垂直な方向)に延在する部分を有する配線層と、バイアスライン111が基板113の面内方向に延在する部分を有する配線層とが、異なる層に配置されている。ここで、結合線109が面内方向に延在する部分を有する配線層とは、第3の導体層110と第1の導体層106である。一方、バイアスライン111が面内方向に延在する部分を有する配線層とは、第4の導体層111である。なお、本実施形態では、全てのアンテナにおける、全ての第3の導体層110と第1の導体層106は、第4の導体層111のいずれとも異なる層に配置されている。
このように、高い周波数(fTHz)を伝送する結合線109と低い周波数(DC~数十GHz)を伝送するバイアスライン111とを異なる層に配置する。このことで、各レイヤー内で伝送線の幅、長さ、引き回しなどのレイアウトを自在に設定することができる。
また、素子10では、基板113側から順に、基板113、第1の導体層106、第2の導体層103aの順に積層されている。そして、結合線109とバイアスライン111の少なくともいずれかが、第1の導体層106と第2の導体層103との間の層に配置されている。例えば、図3(a)に示すように、第4の導体層111x2、111x1は、第1の導体層106と第2の導体層103との間の層に配置される。
さらに、図1(a)に示すように、上から見て(平面視において)、結合線109とバイアスライン111は互いに交差する。例えば、平面視において、第3の導体層110abと第4の導体層111x2は互いに交差し、第3の導体層110adと第4の導体層111y3は互いに交差している。図3(a)、図3(b)に示すように、交差する導体層は異なる高さに位置する。
このように、結合線109とバイアスライン111を互いに交差させて線路を引くことよって、より省レイアウトな構成を実現することができる。従って、このような構成にすることで、m×n(m≧2、n≧2)のマトリクス状にアンテナを配置したようなアンテナアレイにおいても、配置するアンテナ数を増やすことができる。本実施形態によれば、アンテナ数を増やしても、アンテナ間の同期をとるための結合線(結合線109)と、それぞれのRTD101にバイアスを供給するための給電線(バイアスライン111)の物理的な干渉が抑制できる。従って、素子10において、並べられるアンテナ数の上限の制限が抑制されて、アレイ数増加に伴う指向性や正面強度の大きな改善効果を期待することができる。
また、結合線109とバイアスライン111の少なくともいずれかを、アンテナを構成する2つの導体層間の層に配置することによって、省レイアウトの構成を実現できる。具体的には、結合線109、または/および、バイアスライン111を、アンテナ100a~100iを構成する誘電体層104のうちアンテナ以外の余剰領域に埋め込む。このことで、波長程度のピッチで配置された隣接アンテナ間の比較的小さいスペースに複数の伝送線を配置することができるので、アンテナ数増加に伴う線路数の増加にも十分対応することができる。
なお、テラヘルツ帯では表皮効果による抵抗が増大するため、アンテナ間の高周波伝送に伴う導体損失が無視できない。導体層間の電流密度の増加に伴い、単位長さあたりの導体損失(dB/mm)は増大する。マイクロストリップラインの場合は、単位長さあたりの導体損失(dB/mm)は、誘電体厚の2乗に反比例する。従って、アンテナアレイの放射効率を上げるためには、アンテナだけでなく結合線109を構成する誘電体を厚くして導体損失を低減することが好適である。これに対して、本実施形態に係る素子10では、第1の誘電体層1041における第1の導体層106側にバイアスライン111を配し、周波数fTHzの高周波が伝送される第3の導体層110を誘電体層104の上層に配する構成である。この構成であれば、テラヘルツ帯における導体損失に伴うアンテナアレイの放射効率の低下を抑制することができる。この場合、アンテナ100aにおいて、基板113側から順に、基板113、第1の導体層106、第4の導体層111x1、111x2、第2の導体層103aおよび第3の導体層110ad、110abの順に積層される。他のアンテナの間を結合する結合線109とバイアスライン111の関係も同様である。
なお、導体損失の観点から、結合線109を構成する誘電体の厚さは1μm以上がよく、より好ましくは誘電体厚を2μm以上に設定すれば、テラヘルツ帯の導体損失によるロスは2割程度に抑制される。同様に、導体損失の観点から、結合線109を構成する第3の導体層110と第1の導体層106との厚さ方向の間隔は広い方が好ましい。また、結合線109を構成する第3の導体層110とバイアスライン111を構成する第4の導体層111との厚さ方向の間隔は、広い方が好ましい。バイアスライン111については、誘電体を2μm以下、好ましくは1μm以下に設定することでギガヘルツ帯くらいまでの低インピーダンス線路として機能させることができる。また、誘電体を2μm以上に厚く設定した場合でも、素子30のようにバイアスラインにシャント部品を接続する構成にすることによって低インピーダンス線路として機能させることができる。
また、本実施形態に係る素子10では、隣接するアンテナは、アンテナ間に配置された共通のバイアスライン111によって給電される。例えば、図3(b)に示すように、アンテナ100aは、導体107a2と線路108a2を経由してバイアスライン111y3と接続され、アンテナ100dは、導体107d1と線路108d1を経由してバイアスライン111y3と接続されている。同様に、アンテナ100aとアンテナ100bは、隣接しているため、両アンテナ間に配置された共通のバイアスライン111x2と接続されることによってバイアス信号が給電される。他のアンテナ100b~100iのバイアスライン111についても同様である。このように、チップ内の配線であるバイアスライン111を各アンテナ間で共通化することで、同一チャネルでの駆動が可能となり、駆動方式を単純化することができる。また、配線数が減り1本の配線を太くすることができるので、アレイ数増加に伴う配線抵抗増加と、それに伴うアンテナ間の動作点ズレが抑制される。これにより、アレイ数を増やしたことによって生じる各アンテナ間の周波数ズレおよび位相ズレが抑制されるので、アレイによる同期効果がより得やすい。
なお、バイアスライン111の共通化は、必須の構成ではない。例えば、多層化や微細化でバイアスライン111を各アンテナに複数用意して個別給電とする構成であってもよい。この場合、各アンテナ間のバイアスライン111経由のアイソレーションが強化されるので、低周波の寄生発振のリスクを低減できる。また、素子10において、線路108a1、108a2~線路108i1、108i2とバイアスライン111は、発振周波数fTHzより低い低周波数帯においてRTD101a~101iの負性抵抗に比べて低インピーダンスであることが好ましい。さらに好ましくは、並列接続されたRTD101a~101iの合成された微分負性抵抗の絶対値と等しいか少し小さい値のインピーダンスであるとよい。これにより、低周波数のマルチモード発振を抑制することができる。
以上のように、本実施形態によれば、アンテナアレイの同期により従来よりも高効率に発振または検出できる。
実施形態1に係るテラヘルツ波を発振する素子10の具体的な構成について、図1(a)および図2を用いて説明する。素子10は、0.45~0.50THzの周波数帯域で単一モード発振が可能な半導体デバイスである。基板113は、InP基板である。RTD101a~101iは、基板113上に格子整合したInGaAs/AlAsによる多重量子井戸構造から構成され、本実施形態では、二重障壁構造のRTDを用いている。これは、RTDの半導体層ヘテロ構造ともいう。
RTD101a~101iの電流電圧特性は、測定値で、ピーク電流密度が9mA/μm2であり、単位面積当たりの微分負性コンダクタンスが10mS/μm2である。アンテナ100aでは、RTD101aを含む半導体層115aと、オーミック電極である第3の電極116aとから構成されるメサ構造が形成されている。メサ構造は、本実施形態では直径2μmの円状である。このとき、RTD101aの微分負性抵抗の大きさはダイオード1個当たり約-30Ωである。この場合、RTD101aを含む半導体層115aの微分負性コンダクタンス(GRTD)は約30mSと見積もられ、RTD101aのダイオード容量(CRTD)は約10fFと見積もられる。
アンテナ100aは、パッチ導体である第2の導体層103aと接地導体である第1の導体層106とによって、誘電体層104を挟んだ構造のパッチアンテナである。アンテナ100aの内部には、RTD101aを含む半導体層115aが集積されている。アンテナ100aは、第2の導体層103aの一辺が150μmの正方形パッチアンテナであり、アンテナの共振器長(L)は150μmである。
パッチ導体である第2の導体層103aと接地導体である第1の導体層106には、抵抗率の低いAu薄膜を主体とした金属層が用いられている。第2の導体層103aは、Ti/Au(=5/300nm)を含む金属により構成されている。第2の導体層103aと第1の導体層106との間の層には、誘電体層104が配置されている。誘電体層104は、5μm厚のBCB(ベンゾシクロブテン、ダウケミカル社製、εr1=2)からなる第1の誘電体層1041と、2μm厚のSiO2(プラズマCVD、εr2=4)からなる第2の誘電体層1042の2層によって構成される。
第1の導体層106は、Ti/Pd/Au層(20/20/200nm)と、電子濃度が1×1018cm-3以上のn+-InGaAs層(100nm)からなる半導体層とから構成されており、金属と半導体層は低抵抗なオーミック接触で接続されている。
電極116aは、Ti/Pd/Au層(20/20/200nm)からなるオーミック電極である。電極116aは、半導体層115aに形成された電子濃度が1×1018cm-3以上のn+-InGaAs層(100nm)からなる半導体層と低抵抗なオーミック接触で接続されている。
RTD101aの周囲では、基板113側から順に、基板113、第1の導体層106、半導体層115a、電極116a、Cuを含む導体で構成された導体117a、第2の導体層103aの順に積層されており、電気的に接続されている。RTD101aは、第2の導体層103aの重心から共振方向(AA’方向)に、第2の導体層103aの一辺の40%(60μm)シフトした位置に配置されている。ここで、アンテナ100a内におけるRTD101aの位置によりRTDからパッチアンテナに高周波を給電する際の入力インピーダンスが決定される。第2の導体層103aは、Cuにより形成されたビアである導体107a1、107a2を経由して、下層に配置された線路108a1、108a2に接続される。
線路108a1、108a2は、第2の誘電体層1042上に積層されたTi/Au(=5/300nm)を含む金属層で形成されている。線路108a1、108a2は、チップ内に形成された共通配線であるバイアスライン111を経由してバイアス回路120に接続される。バイアスライン111は、第2の誘電体層1042上に積層されたTi/Au(=5/300nm)を含む金属層によって形成される。アンテナ100aは、RTD101aの負性抵抗領域にバイアスが設定されることにより、周波数fTHz=0.5THzにおいて0.2mWのパワーでの発振が得られるように設計されている。
導体107a1、107a2は、直径10μmの円柱構造である。線路108a1、108a2は、共振方向(=A-A’方向)における幅が10μm、長さが75μmのTi/Au(=5/300nm)を含む金属層で形成されたパターンで構成される。導体107a1、107a2は、共振方向(=A-A’方向)における中心であり、かつ、B-B’方向における端において第2の導体層103aと接続されている。この接続位置は、アンテナ100aに定在するfTHzのテラヘルツ波の電界の節に相当する。
素子10は、9つのアンテナ100a~100iが3×3のマトリクス配置されたアンテナアレイである。それぞれのアンテナは、単体で周波数fTHzのテラヘルツ波を発振する設計であり、A-A’方向およびB-B’方向ともに340μmピッチ(間隔)で配置されている。隣接するアンテナ間は、Ti/Au(=5/300nm)で構成された第3の導体層110を含む結合線109によって相互に結合されている。例えば、アンテナ100aとアンテナ100bとは、結合線109abによって相互に結合されている。また、中心のアンテナ100eは、第1の方向(縦方向)に延びる結合線109efおよび109edで、アンテナ100fおよびアンテナ100dとそれぞれ接続されている。同様に、第2の方向(横方向)に延びる結合線1091he、1092he、1091eb、1092ebにより、アンテナ100eは隣接するアンテナ100hおよびアンテナ100bとそれぞれ接続されている。ここで、アンテナ100eと100dの場合は、縦方向の結合線109deと横方向の結合線1092he、1092ebは、アンテナ100eと100dの縦方向の対称の中心からA方向に30umシフトした位置で接続されている。つまり、アンテナ100eとアンテナ100dとを結ぶ線分の中心以外で接続されている。第2の導体層103aと第2の導体層103bとは、同層に形成された幅5μm、長さ190μmの第3の導体層110abによって直接接続されている。また、アンテナ100aとアンテナ100dとは、結合線109adによって相互に結合されている。第2の導体層103aと第2の導体層103dとは、これらと同じ層に形成された幅5μm、長さ440μmの第3の導体層110adによって直接接続されている。他のアンテナ間も同様である。アンテナ100a~100iは、発振周波数fTHz=0.5THzにおいて互いに位相がそろった状態(正位相)で相互注入同期されて発振する。
チップ内に形成された共通配線であるバイアスライン111は、各アンテナ共通のバイアス配線であり、各アンテナ100a~100iに接続された線路108a1、108a2~線路108i1、108i2と接続される。
素子10では、結合線109abの第3の導体層110abとバイアスライン111の第4の導体層111x1との関係のように、結合線109とバイアスライン111とが異なる層に配置されている。また、素子10は、基板113側から、基板113、第1の導体層106、第2の導体層103aの順に積層されている。また、第3の導体層110abと第4の導体層111x1のように、バイアスライン111が第1の導体層106と第2の導体層103との間の層に配置されている。また、結合線109とバイアスライン111は互いに交差する。他のアンテナ100b~100iの間を結合する結合線109とバイアスライン111の関係も同様である。このような構成であることで、アンテナ間の同期をとるための結合線(結合線109)と、それぞれのRTD101にバイアスを供給するための給電線(バイアスライン111)との物理的な干渉が低減できる。従って、並べられるアンテナ数の上限が増えるので、アレイ数増加に伴う指向性や正面強度の大きな改善効果を期待できる。
(素子の製造方法について)
次に、本実施形態の素子10の製造方法(作製方法)について説明する。
(1)まず、InPで構成される基板113上に、RTD101a~101iを含む半導体層115a~115iを構成するInGaAs/AlAs系の半導体層多層膜構造がエピタキシャル成長によって形成される。これは、分子ビームエピタキシー(MBE)法や有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法などによって形成される。
(2)半導体層115a~115iの上にオーミック電極である電極116a~116iを構成するTi/Pd/Au層(20/20/200nm)がスパッタリング法により成膜される。
(3)電極116a~116iおよび半導体層115a~115iが、直径2μmの円形のメサ形状に成形されて、メサ構造が形成される。ここで、メサ形状の形成には、フォトリソグラフィ―とICP(誘導性結合プラズマ)によるドライエッチングが用いられる。
(4)エッチングされた面にリフトオフ法によって、基板113上に第1の導体層106が形成された後に、プラズマCVD法によって第2の誘電体層1042となる厚さが2μmの酸化シリコンが成膜される。
(5)第2の誘電体層1042の上に線路108a1~i2およびバイアスライン111を構成する第4の導体層111としてTi/Au層(=5/300nm)が形成される。
(6)スピンコート法とドライエッチング法を用いて第1の誘電体層1041となる厚さ5μmのBCBによる埋め込みおよび平坦化が行われる。
(7)フォトリソグラフィ―とドライエッチングによりビアとなる導体117a~117iおよび導体107a1~107i2を形成する部分のBCBおよび酸化シリコンが除去されて、ビアホール(コンタクトホール)が形成される。この際、グレースケール露光を含むフォトリソグラフィを用いれば、第1の誘電体層1041および第2の誘電体層1042、結合線109を形成するためのビアホールのテーパー角度を任意に制御することもできる。
(8)ビアホール内にCuを含む導体によって、ビアである導体117a~117iおよび導体107a1~107i2が形成される。導体117a~117iおよび導体107a1~107i2の形成には、スパッタリング法、電気めっき法、化学的機械研磨法を用いて、Cuによるビアホール埋め込みと平坦化が実施される。
(9)各アンテナの第2の導体層103a~103iおよび結合線109を構成する第3の導体層110となる電極Ti/Au層(=5/300nm)がスパッタリング法によって成膜される。
(10)フォトリソグラフィ―とICP(誘導性結合プラズマ)によるドライエッチングによって、第2の導体層103a~103iおよび結合線109を構成する第3の導体層110のパターニングが行われる。
(11)最後に、シャント抵抗121や容量124が形成されて、これらがワイヤーボンディングなどで配線122および電源123と接続されることによって、素子10が完成する。なお、容量124は、例えばMIM(Metal Insulator Metal)容量である。
なお、素子10への電力の供給はバイアス回路120から行われ、通常は微分負性抵抗領域となるバイアス電圧を印加してバイアス電流を供給すると、素子10は発振器として動作する。
本実施形態の素子10は好適なアンテナアレイを有する。よって、アンテナ利得の向上と指向性向上の少なくとも1つを達成したアンテナアレイの提供を可能としている。
なお、素子10のアンテナ100のそれぞれは、図1(b)に示すような変形も可能である。図1(b)は、図1(a)の素子10のアンテナ100aの変形例を示す上面模式図である。図1(b)では、アンテナ100aは、少なくとも2つの半導体層、すなわち半導体層101a1と、半導体層101a2を有する。半導体層101a1と半導体層101a2は、半導体層101と同等の構成を有する。このような構成によって、よりアンテナの利得が向上する。
また、アンテナ100aは、正方形のパッチアンテナである。図1(b)では、パッチアンテナの対向する二辺の中心を結ぶ線分を点線で示している。点線の交点がパッチアンテナの中心である。導体107a1と導体107a2のそれぞれは、X方向に沿って伸びるパッチアンテナの二辺の中心に位置する。半導体層101a1と半導体層101a2は、Y方向に沿って伸びるパッチアンテナの二辺の中心を結ぶ点線上に位置する。また、半導体層101a1と半導体層101a2はパッチアンテナの中心から等距離に位置する。このような構成によって、アンテナの動作が安定する。
(実施形態2)
実施形態2に係る素子20の構成および断面模式図を図6(a)、図6(b)、図7(a)、図7(b)に示す。なお、素子20における下記以外の構成および構造は、実施形態1に係る素子10の同名の構成と同様であるため詳細な説明を省略する。図6(a)は実施形態1の図4に対応し、図6(b)は実施形態1の図5(a)に対応する図面であり、重複する説明は省略する。図6(b)は図6(a)の構成における共振電界の節と腹の位置を説明するための模式図である。図7(a)および図7(b)は、実施形態1の図3(a)および図(b)に対応する図面であり、重複する説明は省略する。
素子20は、9つのアンテナ200a~200iが3×3のマトリクス状に配置されたアンテナアレイである。アンテナ200aは、実施形態1とは異なり、1つのアンテナの中にテラヘルツ波に対する電磁波の利得または非線形性を有する半導体層を2つ備える。具体的には、図7(a)に示すように、アンテナ200aは、RTD201a1を含む半導体層215a1とRTD201a2を含む半導体層215a2とを備えている。
図7(a)において、半導体層215a1と半導体層215a2に対して、第1の導体層206が配置されている側と反対側には電極216a1と電極216a2が配置されている。第1の導体層206と電極216a1との間に半導体層215a1が配され、第1の導体層206と電極216a2との間に半導体層215a2が配されている。電極216a1と半導体層215a1は電気的に接続されており、電極216a2と半導体層215a2とは電気的に接続されている。また、電極216a1、216a2と第2の導体層203aとの間に接続されたビアである導体217a1、導体217a2を経由して、バイアス回路120から2つのRTD201a1、201a2にバイアス信号が給電される。
図6(a)に示すように、RTD201a1は、第2の導体層203aの重心から共振方向(すなわちAA’方向)に、第2の導体層203aの一辺の長さの40%シフトした位置に配置されている。一方、RTD201a2は、第2の導体層203aの重心から共振方向(すなわちAA’方向)に第2の導体層203aの一辺の長さの-40%シフトした位置に配置されている。すなわち、RTD201a1とRTD201a2とは、第2の導体層203aの重心を通り、かつ、共振方向および積層方向と垂直な直線(中心線)を軸として線対称となる位置に配置される。この場合、RTD201a1とRTD201a2は、互いに位相が反転した状態(逆位相)で相互注入同期して発振する。このように、RTDをアンテナ内に左右上下対称に配置した構成は、アレイ数増加に伴う指向性や正面強度の改善効果がより得やすい構成である。
結合線209は、誘電体層204の上に積層された誘電体層218の上に積層された第5の導体層210と第1の導体層206とによって、誘電体層204および誘電体層218を挟んだマイクロストリップ線路から構成される。例えば、図7(a)に示したように、結合線209abは、第5の導体層210abと第1の導体層206とによって、誘電体層204および誘電体層218を挟んだ構造である。
同様に、結合線209bcは第5の導体層210bcを上導体層として、結合線209adは第5の導体層210adを上導体層として、第1の導体層206とで、誘電体層204および誘電体層218を挟んだ構造である。
素子20は、各アンテナ間をAC結合(容量結合)によって結合した構成のアンテナアレイである。例えば、アンテナ200aとアンテナ200bとを結合する結合線209abの上導体層である第5の導体層210abは、平面視において、第2の導体層203a、203bと放射端付近で5μmだけ重なっている。他のアンテナ200b~200iのアンテナ間の結合についても同様である。
導体層が重なった部分では、第2の導体層203a、203b、誘電体層218、第5の導体層210abの順に積層されており、金属-絶縁体-金属(MIM)の容量構造を形成している。この際、第2の導体層203aと第2の導体層203bとの間はDCにおいてオープンであり、fTHzより下の低周波領域において、結合の大きさが小さいため素子間のアイソレーションが確保される。一方、発振周波数fTHzの帯域において、アンテナ間の結合の大きさを容量で調整することができる。このような構造は、アンテナ間の結合を大幅に弱めることができるので、アンテナ間の伝送ロスの抑制にもつながり、アンテナアレイの放射効率向上が期待できる。
本実施形態の素子20は、中心に配置されたアンテナ200eと第2の方向(横方向)で隣接するアンテナの間に第2の方向(横方向)に延伸する結合線を2本配置した例である。具体的には、アンテナ200eと200fの間には、第2の方向(横方向)に延びる結合線2091he、2092fi、2092cf、2091ebが配置され、第1の方向に延びる結合線209efと接続されている。また、アンテナ200eと200dの間には、第2の方向(横方向)に延びる結合線2092he、2091dg、2091ad、2092ebが配置され、第1の方向に延びる結合線209deと接続されている。
素子20における結合線は、アンテナ200iとアンテナ200fとアンテナ200cが配された行と、アンテナ200hとアンテナ200eとアンテナ200bが配された行との間に、梯子状に設けられている。これらの行の間には、X方向に沿って、結合線209bcと、結合線209hiと、結合線209efとが配されている。また、これらの行の間には、Y方向に沿って、結合線2092fiと、結合線2092cfと、結合線2091heと、結合線2091ebが配されている。結合線2092fiと結合線2092cfは、結合線209bcと結合線209hiと接続する。結合線2092fiと結合線2092cfは、結合線209efにて接続する。結合線2091heと結合線2091ebは、結合線209bcと結合線209hiと接続する。結合線2091heと結合線2091ebは、結合線209efにて接続する。各結合線は一体の導電体から形成されていてもよい。なお、アンテナ200と結合線とはAC結合によって接続されている。
更に、アンテナ200hとアンテナ200eとアンテナ200bが配された行と、アンテナ200gとアンテナ200dとアンテナ200aが配された行との間に、結合線は梯子状に設けられている。これらの行の間には、X方向に沿って、結合線209ghと、結合線209deと、結合線209abとが配されている。また、これらの行の間には、Y方向に沿って、結合線2092heと、結合線2092ebと、結合線2091dgと、結合線2091adが配されている。結合線2092heと結合線2092ebは、結合線209ghと結合線209abと接続する。結合線2092heと結合線2092ebは、結合線209deにて接続する。結合線2091dgと結合線2091adは、結合線209ghと結合線209adと接続する。結合線2091dgと結合線2091adは、結合線209deにて接続する。各結合線は一体の導電体から形成されていてもよい。なお、アンテナ200と結合線とはAC結合によって接続されている。
ここで、アンテナ間の位相整合条件を満たすために、第2の方向(横方向)に延びる結合線は、第1の方向で隣接するアンテナ間の対称の中心から第1の方向に所定の距離だけシフトした位置で第1の方向の結合線と接続されている。本実施形態の例であれば、第1の方向と第2の方向の結合線は、テラヘルツ波の周波数で結合線に定在する共振電界の節から上方向および下方向に30umシフトした位置で接続されている。このように第2の方向の結合線を2本配置する構成であれば、横方向のアンテナ間の結合が強化されるので、より強い相互注入同期の効果が得られる。よって、アンテナの利得が向上する。また、1本の時と比べて結合線とアンテナの接続配置の対称性が良くなるので、放射パターンが整う効果が見込まれる。
(実施形態3)
図8(a)、図8(b)は、本実施形態の素子30の構成を説明する図を示す。素子30は、9つのアンテナ300a~300iが3×3のマトリクス状に配置されたアンテナアレイである。アンテナ300a~300iのそれぞれは、実施形態1に係る素子10と同じく、1つのアンテナの中にテラヘルツ波に対する電磁波の利得または非線形性を有する半導体層を1つ備える。図8(a)は実施形態1の図4に対応し、図8(b)は実施形態1の図5(a)に対応する図面であり、重複する説明は省略する。
素子30は、アレイ端に配置されたアンテナの結合線が外方向に延伸された構成である。例えば、4隅のアンテナ300a、300c、300g、300iは、横方向にライン3091a、3092a、3091c、3092c、3091g、3092g、3091i、3092iが接続されて結合線が延伸されている。同様に、縦方向はライン3093a、3093c、3093g、3093iが接続されて結合線が延伸されている。また、アレイの端で且つ4隅以外のアンテナ300b、300d、300f、300hは、縦方向に3093d、3093fが、横方向に3091b、3092b、3091h、3092hが接続されており、それぞれの結合線が延伸されている。このような構成にすることで、アレイの端の部分においても、アンテナと縦方向に配された結合線、および横方向に配された結合線の少なくともいずれかで同一の関係となる。つまり、アンテナ300eと結合線との関係が、他のアンテナ300と結合線との関係とレイアウトが均一となっている。よって、端の影響による不要な反射や位相不整合が低減されるため、位相同期の強化や、放射パターンが整う効果が見込まれる。加えて、単位アンテナ毎にアンテナと結合線が縦方向・横方向に対称な形状となっているため、アンテナアレイの設計が単純化されて容易になるメリットがある。本実施形態では、X方向の結合線とアンテナおよびY方向の結合線とアンテナとの対称性を担保したが、いずれか1つの対称性を向上させるたけでもよい。
なお、素子30のような構成は、単アンテナやアレイ端の結合線を電気的に終端することで端の影響による不要な反射や位相不整合をさらに低減することが出来るので、位相同期の強化や放射パターンの調整により良い構成である。
(実施形態4)
図9(a)、図9(b)は、本実施形態の素子40の構成を説明する図を示す。図9(a)は実施形態1の図4に対応し、図9(b)は実施形態1の図5(a)に対応する図面であり、重複する説明は省略する。
素子40は、単位アンテナから縦方向および横方向にそれぞれ独立した結合線が引き出された構成である。例えば、アンテナ400eからは縦方向に結合線409ef、409deが引き出され、アンテナ400f、400dと接続される。また、横方向には結合線4091he、4092he、4091eb、4092ebが引き出されて、400h、400bと接続されている。結合線は、各アンテナの発振器であるRTD401a~401iを正位相で相互注入同期するために、隣接アンテナの発振器間の電気長が2πの整数倍となるような長さに調整される。すなわち、2つのアンテナの半導体層同士の電気長をL1としたときに、結合線の長さL2は、L1=2π×k(kは整数)を満たすように設定するとよい。第1の方向(縦方向)の結合線409deはRTD401eとRTD401dの電気長が2πとなるような長さで調整されている。また、第2の方向に延びる結合線4091eb、4092ebは、RTD401eと401bの電気長が4πとなる長さで調整される。この際、素子40のような上右左の3方向に分岐された結合線の場合は、それぞれの結合線の長さを個別に調整してアンテナ間の電気長を調整することが出来る。このような構成は、縦横の結合線を個別設計出来るので設計の自由度が向上する。なお、素子40のような構成は、単アンテナやアレイ端の結合線を電気的に終端することで端の影響による不要な反射や位相不整合をさらに低減することが出来るので、位相同期の強化や放射パターンの調整により良い構成である。
(実施形態5)
本実施形態では、実施形態1~4のいずれかの素子をテラヘルツカメラシステムに適用した場合について説明する。以下、図10を参照して説明する。テラヘルツカメラシステム1100は、テラヘルツ波を放射する発信部1101と、テラヘルツ波を検出する受信部1102とを有する。更に、テラヘルツカメラシステム1100は、外部からの信号に基づき発信部1101や受信部1102の動作を制御し、検出したテラヘルツ波に基づく画像を処理、あるいは外部へ出力するための制御部1103を有する。各実施形態の素子は、発信部1101であってもよいし、受信部1102であってもよい。
発信部1101からのテラヘルツ波は被写体1105にて反射し、受信部1102にて検出される。このような発信部1101と受信部1102を有するカメラシステムをアクティブ型のカメラシステムとも称する。なお、発信部1101がないパッシブ型カメラシステムにおいて、各実施形態の素子を受信部として用いることができる。
よって、高いアンテナ利得を有する各実施形態の素子を用いたカメラシステムは高い検出感度や、高画質の画像を得ることが可能となる。
(実施形態6)
本実施形態の素子50の構成を図11(a)~図12(c)を用いて説明する。図11(a)および図11(b)は素子50の上面模式図である。図11(c)は、素子50の1つのアンテナの要部を拡大した上面模式図である。図11(d)は、素子50の1つのアンテナの要部の変形例を示す。図12(a)、図12(b)、図12(c)は、図11(a)に対応する素子50の断面を示す模式図である。素子50における下記以外の構成および構造は、実施形態1に係る半導体素子100の構成と同様であるため詳細な説明を省略する。
図11(a)に示すように、素子50は、9つのアンテナ500a~500iが3×3のマトリクス状に配置されたアンテナアレイである。素子50は、アンテナ500aを単位アンテナとして、単位アンテナが0.6波長のピッチで並べられたアンテナアレイである。
素子50は、Y方向に沿って配された容量530を有する。素子50では、容量530は12個が示されている。Y方向に沿って、2つのアンテナの間に配された容量530は、2つのアンテナの符号を用いて容量530adなどと示し、図11(a)では6つ示されている。Y方向に沿って、アンテナアレイの外周に配された容量530は、隣接するアンテナの符号を用いて容量530aなどと示し、図11(a)では6つ示されている。
素子50は、X方向に沿って配された容量531と容量532を有する。容量531はアンテナ500a~アンテナ500iの間に配され、容量532はアンテナ500a~アンテナ500iの周囲に配される。容量531は、2つのアンテナの間に位置し、2つのアンテナの符号を用いて、容量531abなどと示す。素子50において、容量531は6つが示されている。容量521は、アンテナアレイの外周に位置し、隣接するアンテナの符号を用いて、容量532aなどと示す。素子50において、容量521は、6つが示されている。
アンテナ500aは、発振周波数fTHzにおいてX方向およびY方向の隣接アンテナ間で電力伝送を行うための伝送線である複数の結合線を備える。結合線は、カップリングラインとも称する。少なくとも1つのアンテナは、複数の結合線を備える。少なくとも1つのアンテナは、少なくとも3本以上の結合線と接続されている。少なくとも1つのアンテナは、少なくとも4つ以上の異なるアンテナと結合線を介して接続されている。ここで、結合線がアンテナと結合しているという場合には、アンテナと結合線が容量を介して電気的に接続している場合と、アンテナと結合線が直接接続している場合や、アンテナと結合線が1つの導電体で構成されている場合を含む。結合線は、マイクロストリップライン構造を有している。マイクロストリップライン構造は、1つの導体層と、誘電体と、他の導体層とを有する。以降の説明において、理解を容易にするため1つの導体層と結合線の符号を同一の符号を用いて説明する場合がある。
アンテナアレイの1行目には、アンテナ500i、アンテナ500f、アンテナ500cがY方向に沿ってこの順に配されている。アンテナアレイの2行目にはアンテナ500h、アンテナ500e、アンテナ500bがY方向に沿ってこの順に配されている。アンテナアレイの3行目にはアンテナ500g、アンテナ500d、アンテナ500aがY方向に沿ってこの順に配されている。X方向を上方向とすると、3行目の上に2行目、2行目の上に1行目のアンテナが配されている。
結合線について説明する。まず、図11(a)に記載の複数の導体層5091、複数の導体層509、複数の導体層5092のそれぞれは、結合線として機能しうる。簡単のため2行目に着目すると、2行目のアンテナ500h、アンテナ500e、アンテナ500bには、1行目のアンテナとの間に、導体層5091と、導体層509とが配されている。また、2行目のアンテナ500h、アンテナ500e、アンテナ500bには、3行目のアンテナとの間に、導体層5092と、導体層509とが配されている。ここで2つのアンテナを結合する導体層には2つのアンテナの符号を付している。例えば、アンテナ500eに着目する。アンテナ500hとアンテナ500eとの間は、導体層5091heと導体層5092heで結合されている。アンテナ500eとアンテナ500bとの間は、導体層5091ebと導体層5092ebで結合されている。アンテナ500eとアンテナ500fとの間は、導体層509efで結合されている。アンテナ500eとアンテナ500dとの間は、導体層509deで結合されている。
言い換えると、アンテナ500hは、導体層5091heと結合し、導体層5092heと結合する。アンテナ500eは、導体層5091heと結合し、導体層5092heと結合する。アンテナ500eは、導体層5091heと導体層5092heを介してアンテナ500hと結合する。アンテナ500eは、導体層5091ebと結合し、導体層5092ebと結合する。アンテナ500bは、導体層5091ebと結合し、導体層5092ebと結合する。アンテナ500eは、導体層5091ebと導体層5092ebを介して、アンテナ500bと結合する。アンテナ500eは、導体層509efと結合する。アンテナ500fは、導体層509efと結合する。アンテナ500eは、導体層509efを介して、アンテナ500fと結合する。アンテナ500eは、導体層509deと結合する。アンテナ500dは、導体層509deと結合する。アンテナ500eは、導体層509deを介して、アンテナ500dと結合する。
図11(a)のアンテナの符号をxyとするとき、x≠y≠zでx、y、zはa~iである。導体層5091xyはアンテナに対して上に位置し、Y方向の結合を行う。導体層5092xyはアンテナに対して下に位置し、Y方向の結合を行う。また、導体層5091xyと導体層5092xyの間には509xzが配される。ここで、上下とはX方向に沿った位置を意味し、図11(a)の紙面の上下を意味する。
アンテナアレイの端部について説明する。図11(a)に示すアンテナアレイのうち、端部のアンテナについては対象が表示されていないため、例えば5091hや5091iといった表記なっている。しかし、他のアンテナについても同様に導体層が配されていてもよい。また、例えば、アンテナ500dに着目すると、アンテナ500dに結合する導体層5093dは、他のアンテナと結合していない。導体層5093dは、容量532dに結合していてもよい。導体層5093dは終端しているともいえる。
このような導体層の配置の関係は、アンテナ500eと同様である。すなわち、このような構成によって、アンテナアレイの端部に位置するアンテナと導体層との配置の関係と、アンテナアレイの内部に位置するアンテナと導体層との配置の関係が同等になる。つまり、単位セルとしてアンテナ500aが、アンテナ500b~アンテナ500iに繰り返し配置されているともいえる。このような構成によって、アンテナアレイの対称性を高めることができる。
アンテナと容量の関係を説明する。容量530、容量531、容量532は、シャント素子として機能しうる。X方向に配された複数の容量531と複数の容量532は、結合線である導体層を介して、アンテナの上部の導体層と結合する。また、Y方向に沿って配された複数の容量530は、アンテナの上部の導体層と結合する。このような構成にすることで、結合線における寄生発振を低減することができる。本明細書において結合は、容量結合の場合と直接接続の場合を含みうる。
容量531は、複数の導体層と結合することができる。つまり、1つの容量531を複数の導体層で共有することができる。例えば、容量531abを用いて説明する。容量531abには、導体層509abと、導体層5091aと、導体層5091adと、導体層5092bと、導体層5092ebとが結合する。容量532についても同様で、1つの容量531を複数の導体層で共有することができる。例えば、容量532aには、導体層5092aと、導体層5092adと、結合線5093aとが結合する。このような構成にすることで、素子の共有による素子面積の削減が可能である。また、容量530は、複数のアンテナと結合することができる。つまり、つまり、1つの容量530を複数のアンテナで共有することができる。例えば、容量530adを用いて説明する。容量530adには、アンテナ500aの導体層と、アンテナ500dの導体層とが結合する。各アンテナに接続する容量を共有化することでき、素子面積の削減が可能となる。これら容量530~容量532と、導体層と容量の接続の構成については、後に、図12(a)~図12(c)を用いて説明する。
アンテナ500aは、発振素子を構成するRTD501a1とRTD501a2を有する。アンテナ500bは、RTD501b1とRTD501b2を有する。アンテナ500dは、RTD501d1とRTD501d2を有する。他のアンテナにおいても同様である。
図11(b)は、図11(a)のアンテナアレイの単位アンテナであるアンテナ500aの上面図である。アンテナ500aは、パッチアンテナである。アンテナ500aは、少なくとも導体層503aを有する。導体層503aは、バイアスが供給され、Z方向に沿った断面において上部に位置するため上部の導体層ともいえる。アンテナ500aは、内部にテラヘルツ波に対する電磁波の利得または非線形性を有する活性層を、少なくとも1つ以上備える。具体的には、アンテナ500aは、2つの活性層を有し、RTD501a1を含む半導体層515a1と、RTD501a2を含む半導体層515a2とを有する。アンテナ500aは、単体でも発振周波数fTHzで発振する設計となっている。図11(b)において、RTD501a1、RTD501a2、導体層503a、バイアスライン511a、導体層509aは、アンテナ500aの中心に対して左右上下に対称な構成となっていることが望ましい。ここで、左右上下とは、図11(a)および図11(b)において、X方向(AA‘方向)およびY方向(BB’方向)を意味する。
容量530aは、抵抗5212と、MIM容量を構成する導体層5224と、線路508a2と、導体層507a2とを有する。容量530adは、抵抗5211と、MIM容量を構成する導体層5223と、線路508a1と、ビア507a1とを有する。また、開口505aと開口505adは、導体層に配された開口である。導体層は、バイアスライン511aと、線路508a1と、線路508a2を含む。以下、線路、ビアは導体層ともいえる。
容量532aは、導体層5221と、導体層5071と、抵抗5191と、抵抗5192と、導体層5072とを有する。容量531abは、少なくとも導体層5222と、抵抗5193と、抵抗5194とを有する。ここで、導体層5071、導体層5082はビアともいえる。
図11(b)において、導体層5091adは、一部が示されている。導体層5091adは、抵抗5511と、抵抗5233とを有する。導体層5091adは、他の部分を更に有する。他の部分は、図示された部分がアンテナ500d側に5511を基準として線対称に配された構成である。導体層5091aは、抵抗5512と、抵抗5234とを有する。導体層5091adは抵抗5233を介して容量531abと、導体層5091aは抵抗5234を介して容量531abと結合する。
同様に、図11(b)において、導体層5092adは、一部が示されている。導体層5092adは、抵抗5513と、抵抗5231とを有する。導体層5092adは、他の部分を更に有する。他の部分は、図示された部分がアンテナ500d側に抵抗5513を基準として線対称に配された構成である。導体層5092aは、抵抗5514と、抵抗5232とを有する。導体層5092adは抵抗5231を介して容量532aと、導体層5092aは抵抗5232を介して容量532aと結合する。
図11(b)に示すように、アンテナ500aが有する素子の配置は対称性が高い配置となっている。また、アンテナ500aに結合される各素子の配置も対称性が高い。このような構成によって、放射パワーの低下を抑制することができる。
図11(c)は、図11(b)に示すアンテナ500aの結合線と容量と部分の拡大図である。導体層509abの一部と、導体層5091aと、導体層5091adの一部が示さされている。導体層5093aと、導体層5092aと、導体層5092adの一部が示さされている。導体層509abの一部の長さと導体層5093aの長さを等しくし、導体層5091aの長さと導体層5091adの一部との長さを等しくし、導体層5092aの長さと導体層5092adの一部の長さを等しくする。また、導体層5091aの長さと導体層5092aの長さを等しくし、導体層5091adの一部との長さと導体層5092adの一部の長さを等しくする。このような構成によって、アンテナ500aの対称性を向上させることができる。
図12(a)~図12(c)を用いて、図11(b)に対応した断面構造を説明する。図12(a)は、図11(b)のA-A’線に対応した断面模式図である。図12(b)は、図11(b)のB-B’線に対応した断面模式図である。図12(c)は、図11(b)のC-C’線に対応した断面模式図である。
図12(a)に示すように、素子50は、基板513、導体層506、導体層5222、導体層5221、導体層503a、導体層509ab、導体層5093aを有する。素子50は、RTD501a1を含む半導体層515a1、RTD501a2を含む半導体層515a2、導体層516a1、導体層516a2、導体層517a1、導体層517a2、導体層514を有する。素子50は、誘電体5043、誘電体5042、誘電体501、誘電体5044を有する。導体層517a1、導体層517a2、導体層514はビアあるいはプラグともいえる。導体層506は、例えばグランド、接地電圧を供給する。
導体層509abは、導体層506と、導体層509abと導体層506との間の誘電体とによって結合線を構成する。導体層5093aは、導体層506と、導体層5093aと導体層506との間の誘電体とによって結合線を構成する。導体層503aは、導体層506と、導体層503aと導体層506との間の誘電体と、RTD501a1と、RTD501a2によって共振器として機能する。導体層5222は、導体層506と、導体層5222と導体層506との間の誘電体とによって容量531abを構成する。導体層5221は、導体層506と、導体層5221と導体層506との間の誘電体とによって容量532aを構成する。導体層509abと導体層503aは、Z方向に重なるように配され、重なり部分は長さL1となる。導体層5093aと導体層503aは、Z方向に重なるように配され、重なり部分は長さL2となる。すなわち、2本の結合線と1つのアンテナが結合している。導体層509abと容量531abは接続し、導体層5093aと容量532aは接続する。
接続について、図12(c)を用いて説明する。図12(c)の構成について、図12(a)と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。図12(c)に示すように、素子50は、抵抗5191、抵抗5192、導体層5071、導体層5072、導体層514、導体層5093aを有する。導体層5093aは導体514を介して容量532aに接続する。導体層5093aは、導体層514、抵抗5191、導体5071、導体層5221と直列に接続する。導体層5093aは、導体層514、抵抗5192、導体5072、導体層5221と直列に接続する。導体層5071、導体層5072、導体層514はビアやプラグなどとも称する。
図12(b)の構成について、図12(a)および図12(c)と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。素子50は、導体層507a1、導体層507a2、導体層508a1、導体層508a2、導体層511a、導体層512、導体層5223、導体層5224を有する。素子50は、抵抗5211、抵抗5212を有する。導体層507a1、導体層507a2、導体層512は、ビアあるいはプラグとも称する。導体層503aは、導体層507a1、導体層508a1、抵抗5211、導体層512を介して、導体層5223と接続する。つまり、導体層503aは、容量530adと接続する。また、導体層503aは、導体層507a2、導体層508a2、抵抗5212、導体層512を介して、導体層5224と接続する。つまり、導体層503aは、容量530aと接続する。ここで、2つの場所において、導体層511は導体層512と離間して配されている。導体層511aは、紙面手前および紙面奥の少なくとも一方において、導体層508a1および導体層508a2の少なくとも一方と接続している。紙面手前および紙面奥とは、X方向における位置である。言い換えると、Y方向およびZ方向を含む断面において、導体層511aは、開口505adと開口505aを有する。
上述の複数の導体層は、基板513の上面からの距離が異なる構成となっている。例えば、図12(a)~図12(c)の要部の構成においては次のようになっている。第1層は導体層506を含み、第2層は導体層5221、導体層5222、導体層5223、導体層5224を含み、第3層は導体層512、導体層5071、導体層5072を含む。第4層は導体層508a1、導体層508a2、導体層5191、導体層5192、導体層511aを含む。第5層は導体層508a1、導体層508a2、導体層5191、導体層5192、導体層511aを含む。第6層は導体層507a1と導体層507a2を含み、第7層は導体層503aを含み、第8層は導体層514を含み、第8層は導体層509abと導体層5093aを含む。各構成の位置は、任意の製造方法を選択することで変更することも可能である。
図12(a)~図12(c)において、導体層506は、容量や結合線などの各構成に対して共通に設けられている。導体層506は、素子50の全面に渡り配された一体の導体層容量である。このような導体層506によって、供給する電圧の変動を低減することができる。
素子50の構成について、図11(a)~図12(c)を用いて、更に説明する。上述したように、複数の結合線は、マイクロストリップ構造を有する。結合線は、1の導体層と、誘電体と、他の導体層とからなる。例えば、導体層509a、導体層509ab、導体層5093a、導体層5091ad、導体層5091a、導体層5092ad、導体層5092aと、導体層506および導体層511aで誘電体504、誘電体5044を挟んだ構造のマイクロストリップ線路である。導体層511aは、fTHzで接地導体として動作する、バイアスラインともいえる。アンテナ500aは、パッチアンテナとパッチアンテナに接続されたマイクロストリップ線路から構成されており、単一アンテナでも発振周波数fTHzで発振する設計となっている。導体層506は第1の導体層ともいえる。
アンテナ500aのパッチアンテナは、導体層509aとAC結合(容量結合)によって結合される。例えば、図11(b)と図12(a)に示したように、アンテナ500aの導体層503aと導体層509abの導体層は、平面視において、アンテナ500aの放射端付近で絶縁体を挟んで重なっている。重なり長さはL1である。長さL1は例えば、5μmとする。導体層が重なった部分は、導体層503a、誘電体層5044、導体層509abの順に積層された金属-絶縁体-金属(MIM)の容量構造である。容量値は、例えば、20fFである。導体層503aと導体層509abはDCおよびfTHzより下の低周波領域(~10GHz)でオープンとなり、アンテナ間の分離が確保される。一方、発振周波数fTHzの帯域では、容量でインピーダンスを調整してアンテナ間の結合の強弱を調整する。他の導体層5091ad、導体層5091a、導体層5092ad、導体層5092a、導体層5093aについても同様である。
図11(b)に示したとおり、アンテナ500aは、各放射端で上右左の3方向にカップリングラインが分岐されており、各6本の導体層とそれぞれ独立に接続されている。6本の導体層は、導体層5091ad、導体層5091a、導体層5092ad、導体層5092a、導体層509ab、導体層5093aである。従って、2つのアンテナと1本のカップリングラインが2:1:1の関係で接続されている。このような構成は、2つのアンテナと1本のカップリングラインからなる組を個別に独立して長さや幅を調整することが可能となるため、アンテナアレイにおける各アンテナ間の電気長とインピーダンスを個別調整する際に好適である。従って、縦横のカップリングラインを個別に調整出来るので、設計の自由度が向上する。図11(c)に示したように、アンテナの放射端における導体層509aの接続部が複数のカップリングラインが合流して1点で接続するような構成や、アンテナ内の接続部の面積を増やして結合量を増やす構成も考えられる。用途に応じて適宜選択することが出来る。
導体層509aの幅は、マイクロストリップラインのインピーダンスの調整パラメータであり、アンテナ500aとの整合と伝送損失低減の観点で設計する。導体層509aの長さは、隣接アンテナ内の同位置にあるRTDとの電気長が2πの整数倍となるように設計することが好ましい。アンテナ500aの場合、X方向に延びる導体層509abは、RTD501a1とRTD501b1の電気長が2πとなる長さとなる。従って、図11(c)に示される導体層509abの一部は導体層509abの半分(電気長π)となる長さに設定される。また、導体層509abの一部と、導体層5093aは同じ長さに設定される。同様に、Y方向に延びる導体層5091adの一部と、導体層5092adは、RTD501a1とRTD501d1との間、およびRTD501a2とRTD501d2との間の電気長の4πとなる長さの半分、すなわち電気長2πとなるような長さに設定される。また、導体層5091aは、少なくとも導体層5091adの1/2倍および導体層5092adの1/2倍のいずれかの長さに設定されうる。また、導体層5092aは、少なくとも導体層5091adの1/2倍および導体層5092adの1/2倍のいずれかの長さに設定されうる。
導体層509aは、モード安定化のために発振周波数fTHzの共振電界の節に接続したシャント部品を備える。図11(c)にあるように、導体層509aとシャント部品はビア514を介して接続される。シャント部品は、抵抗と容量を有する。シャント部品は、例えば、スナバ回路である。抵抗5191、抵抗5192、抵抗5231、抵抗5232、容量532aが直列接続される。抵抗5193、抵抗5194、抵抗5233、抵抗5234、容量531abは直列接続される。抵抗は、例えば20Ωであり、TiWなどの薄膜からなる。容量は、例えば20pFであり、MIM容量である。容量532aは、導体層5221と導体層506で誘電体5043を挟んだ容量構造である。容量531abは、導体層5222と導体層506で誘電体5043を挟んだ容量構造である。これにより、発振周波数fTHz以外の高周波をACショートし低インピーダンス化することで、アンテナアレイにおけるマルチモード発振を抑制することが出来る。また、導体層509aは、発振周波数fTHzの共振電界の腹の位置に抵抗5511、抵抗5512、抵抗5513、抵抗5514が接続されている。これら抵抗は、例えば、抵抗値20Ωであり、TiWの薄膜からなる。これにより、発振周波数fTHz以外の周波数や位相ズレの成分を損失させてモード安定化をおこなう。
発振周波数fTHzの共振電界の節および腹に配置したこれらの部品は、単位アンテナであるアンテナ500aの導体層509aの端部における電気的な終端の役割も果たす。例えば、アンテナ500aの上下(X方向)にアンテナを接続しない場合について説明する。導体層509abの導体層503aと接続されない側の端は開放端となる。また、導体層5093aの導体層503aと接続されない側の端は開放端となる。解放端が存在する場合、共振特性に影響が生じることがある。アンテナ501aのように、端をfTHzの共振電界の節に接続したシャント部品でACショートして終端することで、不要な反射や位相不整合を低減して周波数fTHzの共振が安定化する。また、左右(Y方向)にアンテナを接続しない場合も同様である。導体層5091ad、導体層5091a、導体層5092ad、導体層5092aの端に接続した抵抗がインピーダンスを調整する終端の役割を果たす。抵抗は、発振周波数fTHzの共振電界の腹に位置する。本実施形態は、単アンテナやアレイ端のカップリングラインを電気的に終端して端の影響を低減することで、発振の安定化、位相同期の強化、および放射パターン調整のうち少なくとも1つに対して好適な構成でとなりうる。
次に、RTD501a1とRTD501a2への電力供給のためのバイアスラインについて説明する。バイアスラインは導体層511である。アンテナ501aは、バイアスラインもアンテナ500aの中心(重心)に対して紙面の上下左右に対称な構成としている。紙面の上下左右とは、X方向およびY方向であり、A-A’方向とB-B’方向ともいえる。導体層503aのfTHzにおける共振電界の節で接続された導体層507a1と導体層507a2は、線路508a1および線路508a2を経由して共通配線である導体層511aと接続される。線路508a1および線路508a2は、導体層507a1および導体層507a2との接続部における配線幅は細く、共通配線である導体層511aに近づくにつれて線路508a1および508a2の配線幅が太くなるペンシル状の先細り形状とした。配線幅のうち細い部分は、λTHz/10以下の長さである。導体層507a1と導体層507a2の接続幅が細いことで、バイアスラインとアンテナ内のfTHzの共振電界との干渉や損失が抑制される。また、徐々に配線幅が太くなることで、DCから低周波数帯(<100MHz)の配線抵抗は削減されるので各アンテナの動作電圧ばらつきが抑制される。このような配線構造は、低周波数帯の配線抵抗減による動作電圧ばらつき抑制と、fTHzにおけるアンテナ内の干渉や損失の抑制が両立するため、アンテナアレイの相互注入同期の安定動作に好適な構成である。また、線路508a1および線路508a2は、スナバ回路と接続されている。スナバ回路は、抵抗5211、容量530aの導体層5223を直列に接続した構成である。また、スナバ回路は、抵抗5212、容量530adの導体層5224を直列に接続した構成である。抵抗5211、抵抗5212は、例えば15Ωであり、TiWの薄膜である。導体層5223と、導体層506と、それらの間の誘電体5043で、容量530adが構成される。導体層5224と、導体層506と、それらの間の誘電体5043で、容量530aが構成される。容量530a、容量530adの容量値は、例えば10pFである。スナバ回路により、RTDに近い導体層511a、線路508a1、線路508a2は、100GHz以下の周波数帯でACショートされ、低インピーダンス化される。従って、バイアスラインのインダクタンスに起因した100GHz以下の寄生発振を低減することができる。
図11(b)は、単位アンテナであるアンテナ500aを0.6波長の等ピッチで3×3個配置し、隣接アンテナ間をカップリングラインで接続したアンテナアレイである。カップリングラインを接続することで、各アンテナのRTD501a1とRTD501i2が正位相で相互注入同期される。また、導体層511aも隣接間ですべて接続されて共通の導体層511、すなわち共通のバイアスラインとなる。共通のバイアスラインによって、共通電源から各アンテナのRTDにバイアス信号を供給することができる。この際、隣接アンテナのスナバ回路が接続されて、対称性を維持することが好ましい。例えば、アンテナ500aとアンテナ500dであればスナバ回路530adが接続され、対称性を向上させることができる。スナバ回路530adは、抵抗とMIM容量からなる。スナバ回路530adは、アンテナごとに接続され、共通の導体層511に接続される。スナバ回路530adは、隣接するアンテナ間に配置される。スナバ回路530adのように部品レイアウト削減による集積度増のため、隣接アンテナ間で容量を共有しても良い。このスナバ回路530adを含むアンテナごとに配置されたスナバ回路でアンテナアレイの共通の導体層511を100GHz以下の周波数帯でACショートし低インピーダンス化し、これにより各アンテナ間の低周波発振を抑制する。つまり、複数のアンテナに対して、少なくとも1つのスナバ回路が接続されている。
アンテナ500eは、上下左右に4つの異なるアンテナ500f、アンテナ500d、アンテナ500h、アンテナ500bとカップリングラインを介して接合されている。また、アンテナ500eと上下に並ぶアンテナ500fとアンテナ500dは、それぞれ1本の独立した結合線によって1:1で接続されている。また、アンテナ500eと左右に並ぶアンテナ500hとアンテナ500bは、それぞれ2本の独立した結合線によって1:1で接続されている。つまり、アンテナ500eは合計6本の結合線と接続されている。アンテナ500eから伸びる一本の結合線5091ebは枝分かれせずに、隣接する1つのアンテナ500bに接続される。このように、アンテナ部品と結合線が対称配置された単位アンテナを規則的に並べるアンテナアレイであれば、単位アンテナのインピーダンスをベースとして、近似により大規模なM×Nアレイ(MとNはアンテナ個数であり自然数である)を高精度且つ効率良く設計することが可能となる。また、縦方向(X方向)および横方向(Y方向)の両方にカップリングラインを引き回すことが出来るので、隣接アンテナ間の相互注入同期が強化されて、アンテナアレイの同期による指向性制御が容易となる。
図11(d)は、本実施形態の変形例を示す平面模式図である。素子51と素子52は、図11(b)のアンテナ500aのX方向における上部を示している。つまり、導体層503aと結合線5091adと結合線509abと結合線5091aとの結合部を示している。図11(b)において3本の結合線の端部が離間して配されていたのに対して、素子51では3本の結合線の端部は1体となっている。換言すると、アンテナ500aと結合する1つの結合線が2つ以上、例えば3つに分岐しているともいえる。また、素子52では、素子51に対して3又に分岐する部分が離間している。言い換えると、図11(b)における3本の結合線の端部をY方向に延びた別の導体層で接続しているともいえる。
素子51および素子52は、平面視において、結合するアンテナの外縁の内側において1本の結合線であり、外縁の外側において3本の結合線に分岐しているともいえる。また、素子51および素子52の構成は、例えば、アンテナと3本の結合線が1つの接続点で接続しているともいえる。また、図11(b)においては、平面視において、結合するアンテナの外縁の内側において3本の結合線であり、各結合線が離間して配されている。つまり、図11(b)では、アンテナと3本の結合線は、3つの接続点で接続しているともいえる。ここで、接続点は結合点であってもよく、接続は結合であってもよい。このような構成によって、3つの結合線の間の同期をとることができる。
図11(a)のアンテナアレイの配列に関して、M×Nは3×3に限らず、4×4や5×5などのアンテナアレイに拡張することも可能である。
(実施形態7)
図13(a)は、実施形態6の変形例である素子60の上面図である。符号を振った構成以外は、図11(a)に示す構成と同等である。
図13(a)では、アンテナアレイの中心のアンテナ600eは、接続出来る隣接アンテナが上下(X方向)に2つ以上、左右(Y方向)に2つ以上あるため、左右上下に伸びた結合線609eで隣接アンテナと接続する。アンテナ600eの構成は、図11(a)に示すアンテナ500eと同様である。一方、アレイ端にあるアンテナ600a~600dおよび600f~600iは、隣に配されたアンテナが無い方向の結合線が設けられていない。素子60の各結合線の長さおよびインピーダンスは、前述の節と腹に配置する結合線がなくても発振周波数fTHzが安定して同期するように調整することができる。従って、各アンテナにおける結合線の本数を減らしても周波数fTHzの共振特性の変動を低減することができる。素子60は、例えば、アンテナの上端と下端においてにおいて、隣接する2つのアンテナと結合線が1:1:1の関係で接続し、別々に独立に接続する。アンテナの上端と下端とは、X方向におけるアンテナの端部である。よって、fTHzの共振特性を変化させずに不要なカップリングラインを間引くことが可能である。素子60は、例えば、アンテナの左端と右端において、隣接する2つのアンテナと結合線が1:2:1の関係で接続する。アンテナの右端と左端とはY方向におけるアンテナ端部である。
アンテナアレイの外周部に配されたアンテナにおいて、アンテナアレイの外周側に結合線を配さないことで、結合線の端部は9つのアンテナのいずれかと結合される。THz帯のマイクロストリップライン構造では、表皮効果による導体損失と、tanδ増による誘電体損が生じ、電力伝送に伴う損失が増加しうる。よって、結合のための電力伝送が増えるほど損失も増加するため、同期と損失にはトレードオフの関係が生じうる。本実施形態のような構成であれば、結合に寄与しない結合線を削減することができるため、損失を低減することができる。注入同期による指向性制御と伝送ロス減による正面利得増の両立が可能となる。また、カップリングラインの開放端を無くすことで、前述の終端部品の集積が不要となる。よって、製造誤差による特性ばらつきの低減や製造コストの低減が可能である。
図13(b)は、素子60のアンテナアレイの配列を4×4アレイに拡張した素子70の上面模式図である。図13(b)では、図13(a)のアンテナを構成する導体層と結合線を構成する導体層のみを示す。図13(a)のように対称性の高いアンテナと結合線からなる単位アンテナを用いることで、低次のアンテナアレイと同じ設計ルールで奇数・偶数よらずM×Nアレイ(M、Nは自然数)に拡張することが出来る。ここで、仮に、アンテナアレイの重心を点Oで示す。
図13(b)において、素子70は、アンテナ700a~アンテナ700pを有する。素子70において、複数のアンテナの間は、図13(a)に示すように、結合線709、結合線7091、結合線7092によって結合されている。このような構成によっても、アンテナの同期をとりつつ、損失を低減することが可能となる。
(実施形態8)
本実施形態では、実施形態7の変形例である素子70の変形例を示す。図14(a)~図20(b)は、図13(b)に示した素子70の結合線の変形例を示す。図14(a)~図20(b)では、図13(b)と同様にアンテナを構成する導体層と結合線を構成する導体層のみを示す。
図14(a)~図15(b)は、素子70に対してY方向に沿って設けられた結合線の本数を変更した構成である。このような構成によって、アンテナ間の結合による注入同期と、伝送の損失を低減することできる。伝送の損失を低減は、放射パワーを増大させることができる。
図14(a)は、素子71を示す上面模式図である。素子70に対して、Y方向に延びた結合線が6本削減されている。具体的には、素子70の結合線7092dh、結合線7092hl、結合線7092lp、結合線7091ae、結合線7091ei、結合線7091imが、素子71では配されていない。単位アレイが2×2アレイとすると、単位アレイUA1は、アンテナ700d、アンテナ700c、アンテナ700g、アンテナ700hを含む。アンテナ700d、アンテナ700c、アンテナ700g、アンテナ700hが結合線7091dh、結合線709cd、結合線7092cg、結合線709ghによって環状に結合される。更に、アンテナ700c、アンテナ700gが結合線7091cgによって環状に結合される。単位アレイUA2は、アンテナ700a、アンテナ700b、アンテナ700e、アンテナ700fを含む。アンテナ700a、アンテナ700b、アンテナ700e、アンテナ700fが結合線7091bf、結合線709ab、結合線7092ae、結合線709efによって環状に結合される。更に、アンテナ700f、アンテナ700bが結合線7092bfよって環状に結合される。単位アレイUA1と単位アレイUA2のアンテナと結合線の配置はミラー対称の配置といえる。他の単位アレイについても同様であり、アンテナアレイとして高い対称性を有することができる。
図14(b)は、素子72を示す上面模式図である。素子71から更に、Y方向に延びた結合線が6本削減されている。具体的には、素子71の結合線7092bf、結合線7092fj、結合線7092jn、結合線7091cg、結合線7091gk、結合線7091koが、素子72では配されていない。単位アレイが2×2アレイとすると、単位アレイUA1は、アンテナ700d、アンテナ700c、アンテナ700g、アンテナ700hを含む。アンテナ700d、アンテナ700c、アンテナ700g、アンテナ700hが結合線によって環状に結合される。アンテナ700h、アンテナ700g、アンテナ700k、アンテナ700lが結合線によって環状に結合される。アンテナ700l、アンテナ700k、アンテナ700o、アンテナ700pが結合線によって環状に結合される。他の単位アレイについても同様であり、アンテナアレイとして高い対称性を有することができる。
図15(a)は、素子73を示す上面模式図である。素子71から更に、Y方向に延びた結合線が6本削減されている。具体的には、素子71の結合線7092cg、結合線7092gk、結合線7092ko、結合線7091bf、結合線7091fj、結合線7091jnが、素子73では配されていない。単位アレイが2×2アレイとすると、単位アレイUA1は、アンテナ700d、アンテナ700c、アンテナ700g、アンテナ700hを含む。アンテナ700dとアンテナ700cは結合線709cdで結合され、アンテナ700gとアンテナ700hは結合線709fhで結合される。アンテナ700cとアンテナ700gは結合線7091cgで結合され、アンテナ700hとアンテナ700dは結合線7091dhで結合される。単位アレイUA2は、アンテナ700a、アンテナ700b、アンテナ700e、アンテナ700fを含む。アンテナ700aとアンテナ700bは結合線709abで結合され、アンテナ700eとアンテナ700fは結合線709efで結合される。アンテナ700aとアンテナ700eは結合線7092aeで結合され、アンテナ700bとアンテナ700fは結合線7092bfで結合される。単位アレイUA1と単位アレイUA2のアンテナと結合線の配置はミラー対称の配置といえる。他の単位アレイについても同様であり、アンテナアレイとして高い対称性を有することができる。
図15(b)は、素子74を示す上面模式図である。素子73から更に、Y方向に延びた結合線が6本削減されている。具体的には、素子73の結合線7092bf、結合線7092fj、結合線7092jn、結合線7091cg、結合線7091gk、結合線7091koが、素子74では配されていない。素子74でも、他の例と同様に単位アレイを取ることができる。単位アレイUA1と単位アレイUA2のアンテナと結合線の配置はミラー対称の配置といえる。他の単位アレイについても同様であり、アンテナアレイとして高い対称性を有することができる。
例えば、図15(a)は、X方向とY方向に1本ずつ同数のカップリングラインを配置し、且つ、アンテナアレイの端と中央のアンテナに接続されるカップリングラインの本数差が少なくすることで、同期と損失のバランスがとれた配置となっている。また、図14(a)~図15(b)において、アンテナアレイの重心を取った時に、アンテナアレイと結合線の配置は対称となる構成とすることができる。
図16(a)~図18(a)は、更なる変形例である。単位アレイの設計ルールを、M×Nアレイ(M、Nともに偶数)に拡張することで実現が可能である。変形例の中には、例えば、図16(a)、図17(a)、図18(a)など、単位アレイ同士の間の結合を1つのアンテナが担っている構成がある。このような構成によって、結合に寄与する結合線の本数を削減することができるため、アレイの端と中央での同期のばらつき低減が可能となる。
図16(a)は、素子75を示す上面模式図である。素子70に対して、X方向およびY方向に延びた結合線が削減されている。素子75は4つの単位アレイUA1~単位アレイUA4を含む。単位アレイUA1は、アンテナ700c、アンテナ700d、アンテナ700g、アンテナ700hを含む。単位アレイUA2は、アンテナ700a、アンテナ700b、アンテナ700e、アンテナ700fを含む。単位アレイUA3は、アンテナ700i、アンテナ700j、アンテナ700m、アンテナ700nを含む。単位アレイUA4は、アンテナ700k、アンテナ700l、アンテナ700o、アンテナ700pを含む。単位アレイUA1~単位アレイUA4はそれぞれ、1本の結合線7091と、1本の結合線7092と、2本の結合線709を含む。例えば、単位アレイUA1について説明する。アンテナ700cとアンテナ700dは結合線709cdで結合され、アンテナ700dとアンテナ700hは結合線7091dhで結合される。アンテナ700hとアンテナ700gは結合線709ghで結合され、アンテナ700gとアンテナ700cは結合線7092cgで結合される。つまり、4つのアンテナが環状に4本の結合線によって結合されている。他の単位アレイUA2~単位アレイUA4も同様である。そして、各単位アレイの1つのアンテナが環状に結合されている。具体的には、アンテナ700gとアンテナ700fは結合線709fgで結合され、アンテナ700fとアンテナ700jは結合線7092fjで結合される。アンテナ700jとアンテナ700kは結合線709jkで結合され、アンテナ700kとアンテナ700gは結合線7091gkで結合される。
図16(b)は、素子76を示す上面模式図である。素子70に対して、X方向およびY方向に延びた結合線が削減されている。具体的には、素子70の結合線7091hl、結合線7092hl、結合線7091ei、結合線7091eiが、素子76では配されていない。素子76では、単位アレイが1×2(1行2列)であり、2つのアンテナが環状に結合線によって結合されている。単位アレイUA1はアンテナ700dとアンテナ700hを含む。アンテナ700dとアンテナ700hは、結合線7091dhと結合線7092dhで環状に結合されている。単位アレイUA2はアンテナ700cとアンテナ700gを含む。アンテナ700cとアンテナ700gは、結合線7091cgと結合線7092cgで環状に結合されている。アンテナ700dとアンテナ700cは結合線709cdで結合され、アンテナ700gとアンテナ700hは結合線709ghで結合される。他の1×2の単位アレイの接続関係、および2×2の単位アレイの接続関係も同様である。図16(a)と同様に、各単位アレイの1つのアンテナが環状に結合されている。具体的には、アンテナ700gとアンテナ700fは結合線709fgで結合され、アンテナ700fとアンテナ700jは結合線7092fjで結合される。アンテナ700jとアンテナ700kは結合線709jkで結合され、アンテナ700kとアンテナ700gは結合線7091gkで結合される。更に、結合線7092gkによりアンテナ700gとアンテナ700kが結合され、結合線7091fjによりアンテナ700fとアンテナ700jが結合される。このような構成によって、1×2の単位アレイの対称性を維持しつつ、各単位アレイを結合することができる。
図17(a)は、素子77を示す上面模式図である。素子70に対して、X方向およびY方向に延びた結合線が削減されている。素子77では、単位アレイが1×2であり、2つのアンテナが環状に結合線によって結合されている。単位アレイUA1はアンテナ700dとアンテナ700hを含む。アンテナ700dとアンテナ700hは、結合線7091dhと結合線7092dhで環状に結合されている。単位アレイUA2はアンテナ700cとアンテナ700gを含む。アンテナ700cとアンテナ700gは、結合線7091cgと結合線7092cgで環状に結合されている。アンテナ700gとアンテナ700hは結合線709ghで結合されているが、アンテナ700dとアンテナ700cは結合線709cdで結合されていない。他の1×2の単位アレイの接続関係、および2×2の単位アレイの接続関係も同様である。各単位アレイの1つのアンテナ同士が、環状に結合されている。具体的には、アンテナ700gとアンテナ700fは結合線709fgで結合され、アンテナ700fとアンテナ700jは結合線7092fjで結合される。アンテナ700jとアンテナ700kは結合線709jkで結合され、アンテナ700kとアンテナ700gは結合線7091gkで結合される。更に、結合線7092gkによりアンテナ700gとアンテナ700kが結合され、結合線7091fjによりアンテナ700fとアンテナ700jが結合される。アンテナアレイのアンテナと結合線の配置を、アンテナアレイの重心を基準に、点対称にすることができる。
図17(b)は、素子78を示す上面模式図である。素子78では、図16(a)の素子75と同様に単位アレイが2×2であり、4つのアンテナが環状に結合線によって結合されている。アンテナ700g、アンテナ700f、アンテナ700j、アンテナ700kは、素子75に示す結合線7091gk、結合線709fg、結合線709jk、結合線7092fjで結合されている。更に、アンテナ700g、アンテナ700f、アンテナ700j、アンテナ700kは、結合線7092gk、結合線7091fjで結合されている。
図18(a)は、素子79を示す上面模式図である。素子79では、図16(a)の素子75と同様に単位アレイが2×2であり、4つのアンテナが環状に結合線によって結合される。また、素子75と同様に各単位アレイのアンテナ700g、アンテナ700f、アンテナ700j、アンテナ700kが結合線によって結合される。素子75との違いは、単位アレイUA1~単位アレイUA4のそれぞれにおいて、結合線7091および結合線7092が入れ替わっている点である。具体的には、単位アレイUA1において、アンテナdとアンテナhは結合線7092dhで結合され、アンテナcとアンテナgは結合線7091cgで結合される。アンテナ700gとアンテナ700kが結合線7092gkで結合され、アンテナ700jとアンテナ700fが結合線7091fjで結合される。このような形態でも、高い対称性を有するアンテナアレイを提供することができる。
ここで、図17(a)、図17(b)では、端または中央に位置する任意の1つのアンテナに結合する結合線の本数を変えて、アンテナアレイの端と中央の結合のばらつきを低減することが可能である。
図18(b)~図20(b)は、更なる変形例を示す。発明者の検討により、以下の3つの条件が重要であることを見出した。1つは、X方向とY方向に接続される結合線の本数を同数に近づけることである。1つは、アンテナアレイの端と中央のアンテナに接続される結合線の本数の差を小さくすることである。1つは、アンテナ内の2放射端に接続される結合線の本数の差を小さくすることである。これらの構成によって、縦横の結合のバランスがとれ、且つ、アンテナアレイの端と中央で同期のばらつきを低減することができる。例えば、図18(b)、図19(a)、図19(b)は指向性を整えるためにX方向・Y方向の対称性を優先した構成であり、図20(a)、図20(b)は、結合線の本数削減による損失低減を優先した構成である。
図18(b)は、素子80を示す上面模式図である。素子80では、単位アレイが1×2である。アンテナアレイは、単位アレイUA1~単位アレイUA12を含む。素子80では、単位アレイが含むアンテナは、隣接する単位アレイのアンテナを含み、複数の単位アレイが重畳するように配されている。単位アレイUA1はアンテナ700dとアンテナ700hを含み、単位アレイUA2はアンテナ700cとアンテナ700gを含み、単位アレイUA3はアンテナ700bとアンテナ700fを含み、単位アレイUA4はアンテナ700aとアンテナ700eを含む。単位アレイUA5はアンテナ700hとアンテナ700lを含み、単位アレイUA6はアンテナ700gとアンテナ700kを含み、単位アレイUA7はアンテナ700fとアンテナ700jを含み、単位アレイUA8はアンテナ700eとアンテナ700iを含む。単位アレイUA9はアンテナ700lとアンテナ700pを含み、単位アレイUA10はアンテナ700kとアンテナ700oを含む。単位アレイUA11はアンテナ700jとアンテナ700nを含み、単位アレイUA12はアンテナ700iとアンテナ700mを含む。単位アレイUA2、単位アレイUA3、単位アレイUA6、単位アレイUA7、単位アレイUA10、単位アレイUA11は、各アンテナの上下に結合された2本の結合線709と結合線7091と結合線7092によって結合されている。この構成は、図13(b)と同様である。しかし、単位アレイUA1、単位アレイUA5、単位アレイUA9は、アンテナの下端に結合された1本の結合線709と、隣接するアンテナと結合された結合線7092とが結合される。単位アレイUA4、単位アレイUA8、単位アレイUA12は、アンテナの上端に結合された1本の結合線709と、隣接するアンテナと結合された結合線7091とが結合される。
図19(a)は、素子81を示す上面模式図である。素子81では、図18(b)に示した素子80と同様に、単位アレイが1×2である。アンテナアレイは、素子80と同様な単位アレイUA1~単位アレイUA12を含む。素子81において、各アンテナは結合線709によってX方向に結合されている。そして、各アンテナのY方向の結合は、結合線7091あるいは結合線7092のいずれかによってなされている。つまり、Y方向に隣接するアンテナの間には、結合線7091あるいは結合線7092のいずれかが配されている。このような構成によっても、対称性の高いアンテナアレイを提供することができる。
図19(b)は、素子82を示す上面模式図である。素子82では、図19(a)の素子81と同様に、単位アレイが1×2であり、各アンテナのY方向の結合は、結合線7091あるいは結合線7092のいずれかによってなされている。
図20(a)は、素子83を示す上面模式図である。素子83では、図19(a)の素子81と同様に、単位アレイが1×2であり、各アンテナのY方向の結合は、結合線7091あるいは結合線7092のいずれかによってなされている。
図20(b)は、素子84を示す上面模式図である。素子84では、図19(a)の素子81と同様に、単位アレイが1×2であり、各アンテナのY方向の結合は、結合線7091あるいは結合線7092のいずれかによってなされている。しかし、Y方向のアンテナを結合する結合線が間引かれている。例えば、単位アレイUA2、単位アレイUA4、単位アレイUA5、単位アレイUA7、単位アレイUA10、単位アレイUA12では、結合線7091あるいは結合線7092によってY方向に配された2つのアンテナを結合している。しかし、単位アレイUA1、単位アレイUA3、単位アレイUA6、単位アレイUA8、単位アレイUA9、単位アレイUA11は、Y方向に配された2つのアンテナは結合されていない。
図21は、これまで説明した4×4のアンテナアレイについて、アンテナ間の同期の程度と1アンテナあたりの放射パワーとの相関を示す模式図である。横軸の「同期の程度」は、アンテナアレイの正面利得がアンテナ数の何乗倍で比例増加するかを表す。縦軸の「放射パワー/アンテナ」は1アンテナから全方位に放射される発振パワーの大きさを表す。例えば、無損失の結合線を有する理想アンテナアレイの場合は、無損失で相互注入同期が得られるので、1アンテナあたりの最大放射パワーと指向性先鋭化による正面利得増強(2乗則)が両立する。例えば、放射パワーは0.3mWである。比較例2として示す。
現実には、マイクロストリップラインの電力伝送に伴う損失が生じ、THz帯では特に顕著になる。このため、接続例4、接続例5、接続例1のように結合線の本数の増やすと伝送損失が増える。そして、その損失分だけ1アンテナあたりの放射パワーは低下する傾向となる。一方、結合線の本数を増やすことでアンテナ間の結合が強くなるため、アンテナアレイの相互注入同期により指向性は先鋭化する。このため、結合線の本数を増やすことで、正面利得はアンテナ数の2乗則に比例して増強する傾向に近づけることができる。なお、結合線が無い場合を比較例1として示す。この場合には、結合線でアンテナ間を伝送される電力の損失がないため、1アンテナあたりの放射パワーは最大となる。しかし、アンテナ間の結合が弱く相互注入同期が生じないため、指向性の先鋭化は生じない。従って、正面利得の増加はアンテナ数倍に比例するので、「同期の程度」は1乗則となる。上記で説明したアンテナアレイは、X方向とY方向の結合線の本数を調整して設計することで、所望の放射パワー、指向性を両立することが可能となる。また、正面利得の増大が可能となる。ここで、接続例1は図13(a)の構成であり、接続例4は図15(b)の構成であり、接続例5は図15(a)の構成である。
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、キャリアが電子である場合を想定して説明しているが、これに限定されるものではなく、正孔(ホール)を用いたものであってもよい。また、基板や誘電体の材料は用途に応じて選定すればよく、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムヒ素、ガリウムリンなどの半導体層や、ガラス、セラミック、ポリテトラフルオロエチレン、リエチレンテレフタラートなどの樹脂を用いることができる。
さらに、上述の実施形態では、テラヘルツ波の共振器として正方形パッチアンテナを用いているが、共振器の形状はこれに限られたものではない。例えば、矩形および三角形などの多角形、円形、楕円形などのパッチ導体を用いた構造の共振器などを用いてもよい。
また、素子に集積する微分負性抵抗素子の数は、1つに限るものではなく、微分負性抵抗素子を複数有する共振器としてもよい。線路の数も1つに限定されず、複数の線路を有する構成でもよい。上述の実施形態に記載の素子を用いて、テラヘルツ波の発振および検出が可能である。
また、上述のそれぞれの実施形態では、RTDとして、InP基板上に成長したInGaAs/AlAsからなる2重障壁RTDについて説明してきた。しかし、これらの構造や材料系に限られることなく、他の構造や材料の組み合わせであっても本発明の素子を提供することができる。例えば、3重障壁量子井戸構造を有するRTDや、4重以上の多重障壁量子井戸を有するRTDを用いてもよい。
また、RTDの材料としては、以下の組み合わせのそれぞれを用いてもよい。
・GaAs基板上に形成したGaAs/AlGaAs/およびGaAs/AlAs、InGaAs/GaAs/AlAs
・InP基板上に形成したInGaAs/InAlAs、InGaAs/AlAs、InGaAs/AlGaAsSb
・InAs基板上に形成したInAs/AlAsSbおよびInAs/AlSb
・Si基板上に形成したSiGe/SiGe
上述の構造と材料は、所望の周波数などに応じて適宜選定すればよい。
上述した本実施形態の構成は、アンテナアレイにおいて並べられるアンテナ数の上限が無くなり、アレイ数増加に伴う指向性や正面強度の大きな改善効果がある。従って、上述した実施形態の構成によって、より効率の良いテラヘルツ波の発生および検出が実現出来る好適な素子を提供することが出来る。