JP7722966B2 - 情報処理システム、情報処理方法及び情報処理プログラム - Google Patents
情報処理システム、情報処理方法及び情報処理プログラムInfo
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Description
本節では、ハードウェア構成について説明する。
図1は、情報処理システム1を表す構成図である。情報処理システム1は、情報処理装置2と、ユーザ端末3と、を備える。情報処理装置2と、ユーザ端末3と、は、電気通信回線を通じて通信可能に構成されている。一実施形態において、情報処理システム1とは、1つまたはそれ以上の装置または構成要素からなるものである。仮に例えば、情報処理装置2のみからなる場合であれば、情報処理システム1は、情報処理装置2となりうる。以下、これらの構成要素について説明する。
図2は、情報処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置2は、通信部21と、記憶部22と、プロセッサ23とを備え、これらの構成要素が情報処理装置2の内部において通信バス20を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
図3は、ユーザ端末3のハードウェア構成を示すブロック図である。ユーザ端末3は、通信部31と、記憶部32と、プロセッサ33と、表示部34と、入力部35とを備え、これらの構成要素がユーザ端末3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。通信部31、記憶部32およびプロセッサ33の説明は、情報処理装置2における各部の説明と同様のため省略する。
図4は、プロセッサ23が備える機能部の一例を示す図である。図4に示すように、プロセッサ23は、取得部231と、データ同化部232と、補正部233と、出力部234と、を備える。
本節では、前述した情報処理システム1において実行される情報処理について説明する。当該情報処理は、例えば、強的秩序相を有する物質のモデルに対するシミュレーション結果を用いて、当該強的
秩序相の動的性質のシミュレーションを行うために用いられる。以下、一例として、強的秩序相として強磁性相を有する物質(強磁性体)を対象とする情報処理の一例について説明する。強磁性体としては、例えば、Fe、Fe3O4、FePt、Ni-Zn ferriteなどの鉄系磁石である。なお、強磁性体はこれに限らず任意であり、Co系磁石、Ni系磁石、Nd系磁石などの無機化合物磁石であっても、有機磁性体であってもよい。
図5は、情報処理システム1において実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、当該情報処理は、図示されない任意の例外処理を含みうる。例外処理は、当該情報処理の中断や、各処理の省略を含む。当該情報処理にて行われる選択または入力は、ユーザによる操作に基づくものでも、ユーザの操作に依らず自動で行われるものでもよい。
まず、ステップS1にて、取得部231は、強磁性相を有する物質のモデルを取得し、プロセッサ23は、取得されたモデルに基づく、所定の物性シミュレーションを実行する。これにより、出力部234は、強磁性体の物性に関する第1の推定値を出力する。第1の推定値は、強的秩序相での秩序変数の温度依存性と、結合係数と、を含む。第1の推定値は、異方性エネルギーの温度依存性、交換スティフネス定数A(exchange stiffness constant)の温度依存性、ダンピング定数αの温度依存性などをさらに含み得る。
強的秩序相での秩序変数の温度依存性は、飽和値と、相転移温度と、を含み得る。飽和値は、絶対零度での強的秩序相の飽和状態に対応する秩序変数の値である。相転移温度は、秩序変数の値が0となることによる強的秩序相からの相転移を表す。本実施形態では、強的秩序相が強磁性相であるため、秩序変数は、物質の自発磁化Mである。飽和状態は、対象となる物質が、ほぼ単一の強的秩序性を示すドメイン構造となっている状態である。飽和値は、物質の飽和磁化、特に絶対零度での飽和磁化M0である。相転移温度は、強磁性相から常磁性相への相転移に対応するキュリー温度Tcである。すなわち、強的秩序相での秩序変数の温度依存性は、強磁性相での自発磁化Mの温度依存性である。本実施形態の自発磁化Mは、例えば、温度の上昇とともに飽和磁化M0から減少し、キュリー温度Tcにて0となるような温度依存性を有する。以下、説明の便宜上、第1の推定値に含まれる自発磁化Mの温度依存性を第1の自発磁化の温度依存性M1といい、第1の推定値に含まれるキュリー温度Tcを、第1の推定キュリー温度Tc1という。
結合係数は、強的秩序相の形成に寄与する、物質のサイト間の相互作用の大きさを示す。本実施形態の結合係数は、強的秩序相が強磁性相であることに伴い、磁気交換係数Jijである。磁気交換係数Jijは、サイト間の相互作用を表す。詳細には、磁気交換係数Jijは、物質内のi番目のサイトと、j番目のサイトに位置するスピン間の相互作用を表す。スピン間の相互作用は、スピン間の交換相互作用や、スピン間の磁気的な相互作用などを含み得る。磁気交換係数Jijは、例えば、スピン間の交換エネルギーに対応する第1のハミルトニアンH1を規定する。
交換スティフネス定数Aは、単位体積あたりの交換エネルギーの変動量の大きさを示す量である。交換スティフネス定数Aは、磁気交換係数Jijに基づき計算可能である。絶対零度における交換スティフネス定数A0は、例えば、平均場近似を用いて、以下のような磁気交換係数Jijの総和によって表される。
異方性エネルギーは、物質における強的秩序相の秩序変数の異方性の大きさを示す。本実施形態の異方性エネルギーは、磁気異方性エネルギーK(magnetic anisotropy energy:MAE)である。磁気異方性エネルギーKは、強磁性体中のスピンの向きに応じて異なる。磁気異方性エネルギーKは、例えば、スピンの一軸異方性(Uniaxial anisotropy)に起因する第2のハミルトニアンH2や、結晶構造の対称性に起因する第3のハミルトニアンH3などによる寄与を含み得る。本実施形態の第3のハミルトニアンH3は、物質が立方晶である場合のものである。
物質のモデルは、例えば、対象となるハミルトニアンや、物質の結晶構造に関する情報や、物質における物性の近似方法(計算に組み込む相互作用の種類、大きさ、表現形式など)などを含む。対象となるハミルトニアンは、着目する系に応じて適宜設定される。例えば、対象となるハミルトニアンは、上記第1のハミルトニアンH1~第3のハミルトニアンH3の寄与を含み得る。また、対象となるハミルトニアンは、ゼーマンエネルギーの寄与やジャロシンスキー守谷相互作用の寄与などに対応する項を含んでいてもよい。
第一原理計算は、取得された物質のモデルに基づき絶対零度における第1の推定値を出力する。本実施形態の第一原理計算は、密度汎関数法(Density Functional Theory:DFT)を用いて行われる。なお、絶対零度における第1の推定値の計算手法は、第一原理計算に限られず、ハートリーフォック法、平均場近似、古典モンテカルロ法、量子モンテカルロ法、変分モンテカルロ法など任意の手法が採用可能である。本実施形態の第一原理計算は、絶対零度における第1の推定値として、絶対零度における飽和磁化M0と、結合係数(磁気交換係数Jij)と、絶対零度における磁気異方性エネルギーKと、を出力する。なお、磁気異方性エネルギーKは、一軸異方性に起因するエネルギーと、結晶構造の対称性に起因するエネルギーと、を含んでいてもよい。
有限温度計算は、出力された絶対零度における第1の推定値に基づき、有限温度における第1の推定値を出力する。有限温度における第1の推定値は、有限温度における自発磁化Mの温度依存性と、有限温度における磁気異方性エネルギーの温度依存性K1と、を含む。有限温度における自発磁化Mの温度依存性は、自発磁化Mが0となるキュリー温度Tcを含む。有限温度計算の具体的態様は、例えば、量子モンテカルロ法、第一原理分子動力学法、第一原理格子動力学法など、任意である。本実施形態では、有限温度計算として、あえて古典モンテカルロ法が用いられる。これにより、第1の推定値を得るための計算負荷を軽減することで、計算時間の短縮や、より大きな系でのシミュレーションが実現可能となる。以下、説明の便宜上、絶対零度における第1の推定値と、有限温度における第1の推定値と、を総称して、単に第1の推定値ということがある。言い換えれば、第1の推定値は、絶対零度における第1の推定値と、有限温度における第1の推定値と、を含む。
次に、処理がステップS2に進み、取得部231は、上記物性シミュレーションによって計算される第1の推定値と、上記物性シミュレーションの対象となる物質に対する測定によって得られる測定値と、を取得する。
測定値は、強的秩序状態にて測定された物性値である。測定値は、自発磁化Mの温度依存性の少なくとも一部を含む。自発磁化Mの温度依存性は、例えば、相転移温度としてのキュリー温度Tcや、絶対零度における飽和磁化M0などを含む。以下、説明の便宜上、測定値に含まれる自発磁化Mの温度依存性を測定磁化の温度依存性MEといい、測定値に含まれるキュリー温度Tcを測定キュリー温度TcEといい、測定値に含まれる絶対零度における飽和磁化M0を測定飽和磁化M0Eという。
ダンピング定数αは、サイトにおける微視的な秩序変数の減衰度合いを示す。本実施形態のダンピング定数αは、以下のランダウ・リフシッツ・ギルバート方程式(LLG方程式)に用いられるギルバートダンピング定数であり、例えば、有効磁場H_effによる磁化の歳差運動の抑制度合いを示す。
次に、処理がステップS3に進み、データ同化部232は、取得された第1の推定値と測定値とに基づき、データ同化処理を実行する。これにより、データ同化部232は、第1の推定値が測定値に同化された、第2の推定値を計算する。第2の推定値は、第1の推定値と同様の物性値を含み得る。第2の推定値は、例えば、データ同化が行われた自発磁化Mの温度依存性、キュリー温度Tc、磁気交換係数Jij、磁気異方性エネルギーK、交換スティフネス定数Aなどを含む。データ同化処理の詳細は後述される。以下、説明の便宜上、第2の推定値に含まれる自発磁化Mの温度依存性を第2の自発磁化の温度依存性M2といい、第2の推定値に含まれるキュリー温度Tcを第2の推定キュリー温度Tc2という。また、第2の推定値に含まれる磁気交換係数Jijを第2の推定磁気交換係数Jij2という。さらに、第2の推定値に含まれる磁気異方性エネルギーKの温度依存性を、第2の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K2という。
次に、ステップS4に進み、出力部234は、第1のデータ同化処理が行われた結合係数を、第2の推定値として出力する。出力された第2の推定値は、例えば、マイクロ磁気シミュレーションの入力パラメータなど、任意の用途に用いられる。具体的には、出力部234は、LLG方程式に第1の推定値及び第2の推定値を代入することにより、マイクロ磁気シミュレーションを行う。
次に、ステップS3のデータ同化処理について説明する。図6は、データ同化処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS100にて、データ同化部232は、取得された第1の推定値と測定値とに基づき、結合係数に対する第1のデータ同化処理と、取得された第1の推定値に含まれる自発磁化Mの温度依存性M1に対する第2のデータ同化処理と、を含む処理を行う。
測定基準値は、データ同化処理(特に第1のデータ同化処理)の際に用いられる物性値である。測定基準値は、相転移温度としての測定キュリー温度TcE、及び飽和値としての測定飽和磁化M0Eのうちの少なくとも一方を含む。
推定基準値は、相転移温度としての第1の推定キュリー温度Tc1及び飽和値としての第1の推定飽和磁化M01のうち、取得された第1の推定値のうち測定基準値に対応する値である。測定基準値が測定キュリー温度TcEを含む場合、推定基準値は、第1の推定キュリー温度Tc1を含む。一方、測定基準値が測定飽和磁化M0Eを含む場合、推定基準値は、第1の推定飽和磁化M01を含む。
次に、処理がステップS200に進み、データ同化部232は、第1のデータ同化処理が行われた結合係数(本実施形態では第2の推定磁気交換係数Jij2)、及び第2のデータ同化処理が行われた秩序変数の温度依存性(本実施形態では第2の自発磁化の温度依存性M2)のうちの少なくとも1つに基づき、第1の推定値に含まれる異方性エネルギーの温度依存性(本実施形態では第1の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K1)に対する第3のデータ同化処理を行う。これにより、出力部234は、第3のデータ同化処理が行われた異方性エネルギーの温度依存性(本実施形態では第2の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K2)を、第2の推定値としてさらに出力する。
次に、処理がステップS300に進み、プロセッサ23は、ステップS100及びステップS200にて計算された第2の推定値に基づき物性シミュレーションを行う。これにより、出力部234は、第1のダンピング定数α1の温度依存性を出力する。そして、データ同化部232は、出力される第1のダンピング定数α1に対する第4のデータ同化処理を行う。これにより、データ同化が行われた第2のダンピング定数α2が第2の推定値として得られる。
まず、ステップS101にて、プロセッサ23は、取得された測定値が測定キュリー温度TcEを含むか否かを判定する。当該判定は、ユーザの入力に応じて行われても、測定値の形式に応じて行われてもよい。
測定値が測定キュリー温度TcEを含む場合(ステップS101の判定結果が肯定の場合)、処理がステップS102に進み、データ同化部232は、測定基準値としての測定キュリー温度TcEと、当該測定キュリー温度TcEに対応する推定基準値としての第1の推定キュリー温度Tc1とに基づき、第1の推定磁気交換係数Jij1のデータ同化を行う。第1の推定磁気交換係数Jij1のデータ同化を行うステップS102の処理が、推定基準値が第1の推定キュリー温度Tc1である場合における第1のデータ同化処理であるといえる。第1のデータ同化処理であるともいえる。
次に、処理がステップS103に進み、第1の推定キュリー温度Tc1に対する測定キュリー温度TcEの比TcE/Tc1に基づき、第1の自発磁化の温度依存性M1のデータ同化を行う。これにより、第1の自発磁化の温度依存性M1より実験事実に即したキュリー温度Tcを有する第2の自発磁化の温度依存性M2が得られる。この場合、第2の推定磁気交換係数Jij2を用いて改めて求められた第2の推定キュリー温度Tc2と測定キュリー温度TcEとの差異が、ある閾値より大きい場合には、再度第2の推定キュリー温度Tc2を第1の推定キュリー温度Tc1として、処理がステップS102に戻ることもある。第1の自発磁化の温度依存性M1のデータ同化を行うステップS103が、本実施形態の第2のデータ同化処理の1つであるともいえる。
図7に示すように、次に、処理がステップS104に進み、プロセッサ23は、測定値が、相転移温度以外の有限温度での物質における秩序変数の値を少なくとも1つ含むか否かを判定する。本実施形態では、補正部233は、測定値が、測定キュリー温度TcE以外の有限温度での自発磁化Mの値を少なくとも1つ含むか否かを判定する。言い換えれば、補正部233は、測定磁化の温度依存性MEが、測定基準値以外の値(すなわち測定キュリー温度TcE又は測定飽和磁化M0E以外の値)を含むか否かを判定する。
測定値が、相転移温度以外の有限温度での物質における秩序変数の値を少なくとも1つ含む場合、(ステップS104の判定結果が肯定の場合)、処理がステップS105に進み、補正部233は、さらに、当該有限温度での物質における秩序変数の値に基づき、推定値に含まれる秩序変数の温度依存性を補正する。本実施形態では、補正部233は、測定磁化の温度依存性MEに含まれる有限温度における自発磁化Mの値に基づき、ステップS103の処理によって得られた第2の自発磁化の温度依存性M2を補正する。当該補正の具体的態様は任意であるが、例えば、補正部233は、第2の自発磁化の温度依存性M2を当該有限温度における自発磁化Mの値に基づき、最小二乗法や最尤法等によりフィッティングすることにより、第2の自発磁化の温度依存性M2を補正する。このとき、当該補正の拘束条件として、第2の推定キュリー温度Tc2を固定してもよい。これにより、ステップS103の処理によってキュリー温度Tcのデータ同化の結果を保ったまま、より実験事実に即した第2の自発磁化の温度依存性M2を得ることができる。補正部233は、補正された第2の自発磁化の温度依存性M2を、最新の第2の自発磁化の温度依存性M2として更新する。取得部231は、第2の自発磁化の温度依存性M2の絶対零度における値から、第2の推定飽和磁化M02を得ることもできる。
次に、処理がステップS106に進み、データ同化部232は、推定値に含まれる磁気交換係数Jij及び自発磁化Mの温度依存性に基づき、交換スティフネス定数Aの温度依存性を計算する。データ同化部232は、上述した関係式を用いて交換スティフネス定数Aの温度依存性を計算すればよい。ステップS105の処理が行われている場合、データ同化部232は、ステップS102にて得られる第2の推定磁気交換係数Jij2とステップS105にて補正される第2の自発磁化の温度依存性M2とに基づき、交換スティフネス定数Aの温度依存性を計算する。そして、出力部234は、交換スティフネス定数Aの温度依存性を出力する。出力部234は、計算されている種々のパラメータの最新の値を、第2の推定値として出力する。ステップS105を経由する場合、第2の推定値は、ステップS102にて得られる第2の推定磁気交換係数Jij2と、ステップS105にて得られる補正後の第2の自発磁化の温度依存性M2と、ステップS106にて得られる交換スティフネス定数Aの温度依存性と、を含む。ステップS106の処理が終了した場合、プロセッサ23は、ステップS100の処理を終了する。
一方、測定値が測定キュリー温度TcEを含まない場合(ステップS101での判定結果が否定の場合)、処理がステップS107に進み、プロセッサ23は、測定値が、相転移温度(キュリー温度Tc)以外の有限温度での物質における秩序変数(自発磁化M)の値を少なくとも1つ含むか否かを判定する。判定処理の詳細は、ステップS104と同様である。
測定値が、相転移温度以外の有限温度(絶対零度とその近傍も含む)での物質における秩序変数の値を少なくとも1つ含む場合、(ステップS107の判定結果が肯定の場合)、処理がステップS108に進み、補正部233は、さらに、当該有限温度での物質における秩序変数の値に基づき、推定値に含まれる秩序変数の温度依存性を補正する。本実施形態では、補正部233は、測定磁化の温度依存性MEに含まれる有限温度における自発磁化Mの値に基づき、ステップS1の処理によって取得された第1の自発磁化の温度依存性M1を補正する。これにより、取得部231は、補正された第1の自発磁化の温度依存性M1から、測定キュリー温度TcE及び測定飽和磁化M0Eのうちの少なくとも1つ(すなわち測定基準値)を取得する。当該補正の具体的態様は任意であるが、例えば、補正部233は、最小二乗法や最尤法等によりフィッティングすることにより、第2の自発磁化の温度依存性M2を補正する。ステップS108での補正では、第2の推定飽和磁化M02を固定しない。これにより、より実験事実に即した第2の自発磁化の温度依存性M2を得ることで、より正確な飽和磁化M0の推定値得ることができる。測定飽和磁化M0Eが実験的に得られていない場合、補正部233は、この推定された飽和磁化M0を実質的に測定飽和磁化M0Eとする。測定飽和磁化M0Eが実験的に得られている場合、補正部233は、測定飽和磁化M0Eをそのまま利用する。補正部233は、補正された第1の自発磁化の温度依存性M1を、最新の第2の自発磁化の温度依存性M2として更新する。当該補正された第1の自発磁化の温度依存性M1は、第1の推定飽和磁化M01や第1の推定キュリー温度Tc1を含む。
次に、測定基準値としての測定飽和磁化M0E(言い換えれば、補正後の第1の推定飽和磁化M01)と、推定基準値としての補正前の第1の推定飽和磁化M01に基づき、第1の推定磁気交換係数Jij1のデータ同化を行う。第1の推定磁気交換係数Jij1のデータ同化を行うステップS109の処理が、推定基準値が第2の推定飽和磁化M02である場合における第1のデータ同化処理であるともいえる。
次に、処理がステップS110に進み、データ同化部232は、補正後の第1の推定飽和磁化M01に対する測定飽和磁化M0Eの比M0E/M01に基づき、補正後の第1の自発磁化の温度依存性M1のデータ同化を行う。これにより、第1の自発磁化の温度依存性M1より実験事実に即した飽和磁化M0を有する第2の自発磁化の温度依存性M2が得られる。第1の自発磁化の温度依存性M1のデータ同化を行うステップS110が、本実施形態の第2のデータ同化処理の1つであるともいえる。
図7に示すように、次に、処理がステップS106に進み、データ同化部232は、推定値に含まれる磁気交換係数Jij及び自発磁化Mの温度依存性に基づき、交換スティフネス定数Aの温度依存性を計算する。ステップS108~ステップS110を経由している場合、データ同化部232は、ステップS109にて得られる第2の推定磁気交換係数Jij2とステップS110にて得られる第2の自発磁化の温度依存性M2とに基づき、交換スティフネス定数Aの温度依存性を計算すればよい。
次に、上記ステップS200の処理の詳細について説明する。図10は、ステップS200の処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、ステップS201にて、プロセッサ23は、第1の推定値に含まれる結合係数(第1の推定磁気交換係数Jij1)とデータ同化処理(詳細には第1のデータ同化処理)が行われた結合係数(第2の推定磁気交換係数Jij2)との差異が第1の結合閾値以上であるか否かを判定する。なお、両者の差異の形式は、差分、変化量、変化率、比など任意である。第1の結合閾値は、第2の推定値に求められる精度に応じて任意に設定可能である。
第1の推定磁気交換係数Jij1と第2の推定磁気交換係数Jij2との差異が第1の結合閾値以上である場合(すなわち、ステップS201の判定結果が肯定の場合)、処理がステップS202に進み、データ同化部232は、ステップS100にて計算された第2の推定値の少なくとも1つに基づき、第1の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K1に対するデータ同化を行う。第1の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K1に対するデータ同化を行うステップS202の処理が、本実施形態の第3のデータ同化処理の1つであるといえる。
次に、ステップS203において、プロセッサ23は、測定値が異方性エネルギーの温度依存性(測定磁気異方性エネルギーの温度依存性KE)を含むか否かを判定する。
測定値が異方性エネルギーの温度依存性(測定磁気異方性エネルギーの温度依存性KE)を含む場合(ステップS203の判定結果が肯定の場合)、補正部233は、当該異方性エネルギーの温度依存性の測定結果(測定磁気異方性エネルギーの温度依存性KE)に基づき推定値に含まれる異方性エネルギーの温度依存性を補正する。ステップS202の処理が行われている場合、ステップS204での補正対象は第2の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K2となる。一方、ステップS202の処理が省略されている場合、ステップS204での補正対象は第1の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性K1となる。
次に、上記ステップS300の処理の詳細について説明する。図13は、ステップS300の処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、ステップS301にて、プロセッサ23は、第1の推定磁気交換係数Jij1と第2の推定磁気交換係数Jij2との差異が第2の結合閾値以上であるか否かを判定する。第2の結合閾値は、要求される精度や計算資源に応じて適宜設定可能である。なお、第1の推定磁気交換係数Jij1と第2の推定磁気交換係数Jij2との差異は、第1の自発磁化の温度依存性M1と第2の自発磁化の温度依存性M2との差異と相関がある。そのため、ステップS301での判定は、第1の自発磁化の温度依存性M1と第2の自発磁化の温度依存性M2との差異に基づく判定と同義である。
第1の推定値に含まれる結合係数(第1の推定磁気交換係数Jij1)と第2の推定値に含まれる結合係数(第2の推定磁気交換係数Jij2)との差異が第2の結合閾値以上である場合(ステップS301の判定結果が肯定の場合)、処理がステップS302に進み、プロセッサ23は、第2の推定値に基づき物性シミュレーションを行う。具体的には、プロセッサ23は、物性シミュレーションとして、第一原理計算による絶対零度におけるダンピング定数α0を計算し、当該ダンピング定数α0に加え、第2の推定磁気交換係数Jij2や第2の推定飽和磁化M02など、第2の推定値を入力とする有限温度計算を行う。その結果、出力部234は、第1のダンピング定数α1を出力する。これにより、第1の推定値を用いてα1等を計算する場合に比べて、より実験事実に即したダンピング定数αが得られる。なお、ステップS302での第一原理計算の具体的手法は、例えば、SPR-KKRプログラムに含まれる線形応答理論に基づくアルゴリズムが好ましい。なお、これに限られず当該計算の具体的手法は、Akai-KKRプログラム内のアルゴリズムを用いるものでもよい。その後、処理がステップS304に進む。
一方、第1の推定値に含まれる結合係数(第1の推定磁気交換係数Jij1)と第1のデータ同化処理が行われた結合係数(第2の推定磁気交換係数Jij2)との差異が第2の結合閾値未満である場合、処理がステップS303に進み、プロセッサ23は、第1の推定値に基づき物性シミュレーションを行う。具体的には、プロセッサ23は、物性シミュレーションとして、第1の推定磁気交換係数Jij1や第1の推定飽和磁化M01など、第1の推定値を入力とする有限温度計算を行う。その結果、出力部234は、第1のダンピング定数α1を出力する。その後、処理がステップS304に進む。
ステップS304にて、プロセッサ23は、測定値が秩序変数に共役な場の印加による物質(強磁性体)での電力損失Pに関する情報を含むか否かを判定する。本実施形態では、プロセッサ23は、測定値が測定磁気感受率μEを含むか否かを判定する。電力損失Pは、例えば、渦電流損失P_Eや、ヒステリシス損失P_Hを含む。渦電流損失P_Eは、以下のように表される。
次に、処理がステップS305に進み、データ同化部232は、当該電力損失に関する情報と、ステップS100及びステップS200にて得られた推定値とに基づき、第1のダンピング定数α1に対するデータ同化を行う。これにより、データ同化部232は、データ同化が行われた第1のダンピング定数である第2のダンピング定数α2を計算する。ダンピング定数αに対するデータ同化を行うステップS305の処理は、本実施形態における第4のデータ同化処理の1つであるといえる。
ステップS306にて、出力部234は、上記データ同化処理等によって得られる種々の物性値を、最新の推定値として出力する。出力部234は、第2の推定値が得られている物性値について、第2の推定値を出力し、第2の推定値が得られていない物性値については第1の推定値を出力する。当該推定値は、例えば、第2の推定磁気交換係数Jij2、第2の自発磁化の温度依存性M2、第2のダンピング定数α2などを含む。出力される推定値は、マイクロ磁気シミュレーション等の所定のシミュレーションに利用可能である。その後、ステップS300の処理が終了する。
上記情報処理の態様はあくまで一例であり、これに限られない。
もちろん、この限りではない。
2 :情報処理装置
3 :ユーザ端末
20 :通信バス
21 :通信部
22 :記憶部
23 :プロセッサ
30 :通信バス
31 :通信部
32 :記憶部
33 :プロセッサ
34 :表示部
35 :入力部
231 :取得部
232 :データ同化部
233 :補正部
234 :出力部
A :交換スティフネス定数
A0 :交換スティフネス定数
H :磁場
Jij :磁気交換係数
Jij1 :第1の推定磁気交換係数
Jij2 :第2の推定磁気交換係数
K :磁気異方性エネルギー
K0 :絶対零度における磁気異方性エネルギー
K01 :第1の推定値に含まれる絶対零度における磁気異方性エネルギー
K02 :第2の推定値に含まれる絶対零度における磁気異方性エネルギー
K1 :第1の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性
K2 :第2の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性
K21 :補正前の第2の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性
K22 :補正後の第2の推定磁気異方性エネルギーの温度依存性
KE :測定磁気異方性エネルギーの温度依存性
M :自発磁化
M0 :飽和磁化
M01 :第1の推定飽和磁化
M02 :第2の推定飽和磁化
M0E :測定飽和磁化
M1 :第1の自発磁化の温度依存性
M2 :第2の自発磁化の温度依存性
ME :測定磁化の温度依存性
P :電力損失
P_E :渦電流損失
P_H :ヒステリシス損失
P_HE :測定ヒステリシス損失
T :温度
Tc :キュリー温度
Tc1 :第1の推定キュリー温度
Tc2 :第2の推定キュリー温度
TcE :測定キュリー温度
α :ダンピング定数
α1 :第1のダンピング定数
α2 :第2のダンピング定数
μ :複素磁気感受率
μ2 :虚数成分
μE :測定磁気感受率
Claims (11)
- 情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、強的秩序相を有する物質のモデルに基づく、所定の物性シミュレーションによって計算される、前記物質の物性に関する第1の推定値と、前記物質に対する測定によって得られる測定値と、を取得し、
ここで、前記第1の推定値は、前記強的秩序相での秩序変数の温度依存性と、前記強的秩序相の形成に寄与する前記物質のサイト間の相互作用の大きさを示す結合係数と、を含み、
データ同化処理ステップでは、前記測定値が測定基準値を含む場合、推定基準値に対する前記測定基準値の比を、前記結合係数に対する前記推定基準値の依存性を表す次数に応じて、取得された前記第1の推定値に含まれる前記結合係数に対して乗算することで、当該結合係数に対する第1のデータ同化処理を行い、
ここで、前記測定基準値は、前記秩序変数の値が0となることによる前記強的秩序相からの相転移を表す相転移温度、及び絶対零度での前記強的秩序相の飽和状態に対応する前記秩序変数の値である飽和値のうちの少なくとも一方を含み、
前記推定基準値は、取得された前記第1の推定値に含まれる前記相転移温度及び前記飽和値のうち、前記測定基準値に対応する値であり、
出力ステップでは、前記第1のデータ同化処理が行われた前記結合係数を、第2の推定値として出力する、もの。 - 請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記データ同化処理ステップでは、さらに、前記比に基づき、取得された前記秩序変数の温度依存性の乗算をすることで、取得された前記第1の推定値に含まれる前記秩序変数の温度依存性に対する第2のデータ同化処理を行い、
前記出力ステップでは、前記第2のデータ同化処理が行われた前記秩序変数の温度依存性を、前記第2の推定値としてさらに出力する、もの。 - 請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記物性シミュレーションは、前記物質のモデルに基づき絶対零度における前記第1の推定値を出力する第一原理計算と、前記絶対零度における前記第1の推定値に基づき、有限温度における前記第1の推定値を出力する有限温度計算と、を含み、
ここで、前記絶対零度における前記第1の推定値は、前記結合係数を含み、
前記第2のデータ同化処理では、前記第1のデータ同化処理が行われた前記結合係数を用いて、再度前記有限温度計算を行う、もの。 - 請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記データ同化処理ステップでは、前記測定値が、前記相転移温度以外の有限温度での前記物質における前記秩序変数の値を少なくとも1つ含む場合、さらに、当該有限温度での前記物質における前記秩序変数の値に基づき、前記第1の推定値または前記第2の推定値に含まれる前記秩序変数の温度依存性を補正する、もの。 - 請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記第1の推定値は、前記秩序変数の異方性の大きさを示す異方性エネルギーの温度依存性をさらに含み、
前記データ同化処理ステップでは、前記第1の推定値に含まれる前記結合係数と前記第1のデータ同化処理が行われた前記結合係数との差異が第1の結合閾値以上である場合、または、前記第1の推定値に含まれる前記秩序変数の温度依存性と前記第1のデータ同化処理が行われた前記秩序変数の温度依存性との差異が第1の変数閾値以上である場合、さらに、前記第2の推定値に基づき、前記第1の推定値に含まれる前記異方性エネルギーの温度依存性に対する第3のデータ同化処理を行い、
前記出力ステップでは、前記第3のデータ同化処理が行われた前記異方性エネルギーの温度依存性を、前記第2の推定値としてさらに出力する、もの。 - 請求項5に記載の情報処理システムにおいて、
前記データ同化処理ステップでは、前記測定値が前記異方性エネルギーの温度依存性を含む場合、当該異方性エネルギーの温度依存性に基づき前記第1の推定値または前記第2の推定値に含まれる前記異方性エネルギーの温度依存性を補正する、もの。 - 請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力ステップでは、前記第1の推定値に含まれる前記結合係数と前記第2の推定値に含まれる前記結合係数との差異が第2の結合閾値以上である場合、または、前記第1の推定値に含まれる前記秩序変数の温度依存性と前記第2の推定値に含まれる前記秩序変数の温度依存性との差異が第2の変数閾値以上である場合、前記第2の推定値に基づき前記物性シミュレーションを行うことで、第1のダンピング定数の温度依存性を出力し、
ここで、前記ダンピング定数は、前記サイトにおける微視的な前記秩序変数の減衰度合いを示す、もの。 - 請求項7に記載の情報処理システムにおいて、
前記データ同化処理ステップでは、前記測定値が、前記秩序変数に共役な場の印加による前記物質での電力損失に関する情報を含む場合、当該電力損失に関する情報と前記第1の推定値または前記第2の推定値とに基づき、前記第1のダンピング定数に対する第4のデータ同化処理を行い、
前記出力ステップでは、前記第4のデータ同化処理が行われた前記第1のダンピング定数である第2のダンピング定数を出力する、もの。 - 請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記強的秩序相は、強磁性相であり、
前記秩序変数は、前記物質の自発磁化であり、
前記結合係数は、前記サイト間の磁気結合係数であり、
前記相転移温度は、前記強磁性相から常磁性相への相転移に対応するキュリー温度であり、
前記飽和値は、前記物質の飽和磁化である、もの。 - 情報処理方法であって、
請求項1~請求項9の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを含む、方法。 - 情報処理プログラムであって、
少なくとも1つのコンピュータに、請求項1~請求項9の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを実行させる、もの。
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