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JP7730744B2 - 電力変換器の制御器および制御方法 - Google Patents
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JP7730744B2 - 電力変換器の制御器および制御方法 - Google Patents

電力変換器の制御器および制御方法

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Description

本開示は、電力変換器の制御器および制御方法に関する。
マイクログリッド等のように交流電源系統と蓄電設備とが連系した電源系統において、交流電源系統と蓄電設備との間には、交流電源系統の交流電力を直流電力に変換し、蓄電設備の直流電力を交流電力に変換する電力変換器が接続されている。
このような電源系統の一部において不具合が発生した場合、交流電源系統と蓄電設備との間の交流配線において瞬間的な電圧低下が発生する可能性がある。このような瞬間的な電圧低下が生じた場合でも、連系運転を継続し、交流電源系統における電圧回復時に電力変換器から交流配線に出力される電力を電圧低下状態から早急に復旧させることが求められる。例えば、日本電気技術規格委員会の承認規格である系統連系規程(JEAC9701-2019)では、FRT(Fault Ride Through)要件の1つとして、残電圧が20%以上の場合、位相変化なしで継続時間が0.3秒の電圧低下に対しては運転を継続し、交流電源系統における電圧回復後、0.1秒以内に電圧低下前の出力の80%以上に復旧すること等が定められている。
一方、下記特許文献1には、このような電源系統において用いられる電力変換器において、制御方式の変更を行うことなく、蓄電設備を交流電源系統から切り離して自立運転に切り替えることができ、しかも、再度交流電源系統に蓄電設備を接続して自立運転から連系運転に切り替え可能とする電力変換器が提案されている。
具体的には、特許文献1における電力変換器は、電力変換器の代わりに仮想の原動機発電機が接続されたと仮定した場合に、当該仮想の原動機発電機が出力するべき電流を推定し、推定された電流を電力変換器が出力する電流目標値として決定する仮想発電機モデル制御によって制御される。
国際公開第2013/008413号
上記特許文献1のように仮想の原動機発電機を模擬した電力変換器の制御態様において、交流配線において瞬間的な電圧低下が生じた場合に、連系運転を継続し、交流電源系統における電圧回復時に電圧低下状態から早急に復旧するためには、改善の余地がある。
本開示は、上記課題を解決するものであり、制御方式を変更することなく自立運転と連系運転との切り替えが可能であり、かつ、連系運転時に瞬間的な電圧低下が生じた場合でも連系運転を継続し、交流電源系統における電圧回復時に電圧低下状態から早急に復旧することができる電力変換器の制御器および制御方法を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る電力変換器の制御器は、蓄電設備と交流電源系統との間で電力変換を行う電力変換器の制御器であって、前記交流電源系統と前記電力変換器とを接続する交流配線における電圧、周波数および前記電力変換器から前記交流配線に出力される電流を取得し、前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、所定の有効電力指令値に対する前記電力変換器有効電力の偏差である第1偏差に基づく値に、前記第1の垂下特性を示す係数を掛ける演算を含む周波数目標値演算処理によって周波数目標値を算出し、前記周波数目標値に対する前記交流配線における周波数の偏差である第2偏差を積算して内部相差角を算出し、所定の無効電力指令値に対する前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器無効電力の偏差である第3偏差に基づく値に、所定の基準電圧を加算して内部起電圧目標値を算出し、前記内部相差角と、前記内部起電圧目標値と、前記交流配線における電圧とから、電流目標値を算出し、前記電流目標値を所定の第1範囲内に制限して電流指令値を生成し、前記電流目標値に対する前記電流指令値の偏差である第4偏差と、前記交流配線における電圧とから電力補正値を算出し、前記電力補正値により前記第1偏差を補正することにより、前記周波数目標値を補正し、前記交流配線における電圧を所定の制限範囲内に制限した制限電圧を生成し、前記電流指令値に対する前記交流配線に出力される電流の偏差である第5偏差に基づく値に前記制限電圧を加えて電圧指令値を生成することにより、前記電力変換器の駆動信号を生成する。
本開示の他の態様に係る電力変換器の制御方法は、蓄電設備と交流電源系統との間で電力変換を行う電力変換器の制御方法であって、前記交流電源系統と前記電力変換器とを接続する交流配線における電圧、周波数および前記電力変換器から前記交流配線に出力される電流を取得し、前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、所定の有効電力指令値に対する前記電力変換器有効電力の偏差である第1偏差に基づく値に、前記第1の垂下特性を示す係数を掛ける演算を含む周波数目標値演算処理によって周波数目標値を算出し、前記周波数目標値に対する前記交流配線における周波数の偏差である第2偏差を積算して内部相差角を算出し、所定の無効電力指令値に対する前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器無効電力の偏差である第3偏差に基づく値に、所定の基準電圧を加算して内部起電圧目標値を算出し、前記内部相差角と、前記内部起電圧目標値と、前記交流配線における電圧とから、電流目標値を算出し、前記電流目標値を所定の第1範囲内に制限して電流指令値を生成し、前記電流目標値に対する前記電流指令値の偏差である第4偏差と、前記交流配線における電圧とから電力補正値を算出し、前記電力補正値により前記第1偏差を補正することにより、前記周波数目標値を補正し、前記交流配線における電圧を所定の第2範囲内に制限した制限電圧を生成し、前記電流指令値に対する前記交流配線に出力される電流の偏差である第5偏差に基づく値に前記制限電圧を加えて電圧指令値を生成することにより、前記電力変換器の駆動信号を生成する。
本開示によれば、制御方式を変更することなく自立運転と連系運転との切り替えが可能であり、かつ、連系運転時に瞬間的な電圧低下が生じた場合でも連系運転を継続し、交流電源系統における電圧回復時に電圧低下状態から早急に復旧することができる。
図1は、本開示の一実施の形態における電力変換器の制御器を含む電源系統の概略構成を示すブロック図である。 図2は、図1に示す制御器における周波数目標値演算部の構成を示すブロック図である。 図3は、図1に示す制御器における内部相差角演算部の構成を示すブロック図である。 図4は、図1に示す制御器における内部起電圧目標値演算部の構成を示すブロック図である。 図5は、図1に示す制御器における電流指令値演算部の構成を示すブロック図である。 図6は、図1に示す制御器における駆動信号生成部の構成を示すブロック図である。 図7は、第1シミュレーションにおける出力電力の時間変化を示すグラフである。 図8は、第1シミュレーションにおける周波数の時間変化を示すグラフである。 図9は、第1シミュレーションにおける内部相差角の時間変化を示すグラフである。 図10は、第1シミュレーションにおける実施例のd軸電流指令値およびd軸電流の時間変化を示すグラフである。 図11は、第1シミュレーションにおける比較例のd軸電流指令値およびd軸電流の時間変化を示すグラフである。 図12は、第1シミュレーションにおける電力変換器からの出力電流の時間変化を示すグラフである。 図13は、実施例についての第2シミュレーションの結果に基づく、交流配線における交流電圧および周波数の時間変化を示すグラフである。 図14は、比較例1についての第2シミュレーションの結果に基づく、交流配線における交流電圧および周波数の時間変化を示すグラフである。 図15は、比較例2についての第2シミュレーションの結果に基づく、交流配線における交流電圧および周波数の時間変化を示すグラフである。
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または同じ機能を有する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
[システム構成]
図1は、本開示の一実施の形態における電力変換器の制御器を含む電源系統の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態における電源系統1は、商用電源系統等の交流電源系統2と、蓄電設備3と、電力変換器4と、を備えている。交流電源系統2と電力変換器4とは、交流配線5により接続されている。蓄電設備3と電力変換器4とは、直流配線6により接続されている。本実施の形態において、交流電源系統2が、三相交流系統である場合を例示する。
蓄電設備3は、二次電池、電気二重層キャパシタ、燃料電池等を含む。電力変換器4は、複数のパワー半導体素子を備え、当該パワー半導体素子のオン/オフを高速に切り替えることにより、蓄電設備3からの直流電力を交流電力に変換して交流配線5に出力する、あるいは、交流電源系統2からの交流電力を直流電力に変換して蓄電設備3を蓄電する。電力変換器4には、パワー半導体素子のオン/オフを制御するための制御器10が接続されている。
電源系統1は、電圧検出器7および電流検出器8を備えている。電圧検出器7は、交流配線5における電圧を検出する。電流検出器8は、電力変換器4から交流配線5に出力される電流を検出する。例えば、電圧検出器7はPT(Potential Transformer)として知られる変成器であり、電流検出器8はCT(Current Transformer)として知られる変流器である。検出された電圧および電流は、制御器10に入力される。
蓄電設備3には蓄電設備3の状態、例えば、電圧、電流、温度、圧力等を検出するための状態検出器9が接続されている。状態検出器9の出力は、状態監視器11に入力される。状態監視器11は、蓄電設備の状態を監視する他、蓄電設備3の充電率を示すSOC(State Of Charge)の計算を行う。状態監視器11は、制御器10に接続されており、蓄電設備3の状態異常を検出した場合に、異常信号を制御器10に送信する。制御器10は、状態監視器11から異常信号を受信した場合、電力変換器4の運転を停止する。
制御器10は、例えばマイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを備えている。例えば、制御器10は、CPU、RAM等のメインメモリ、通信インターフェイス等を備えている。
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、手段、または部は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
制御器10は、電圧演算部71、電流演算部72、電力演算部73、周波数目標値演算部80、内部相差角演算部82、内部起電圧目標値演算部83、電流指令値演算部84および駆動信号生成部85の各制御ブロックを備えている。上記の通り、これらの各制御ブロックは、それぞれ処理回路または回路と見なされる。制御器10は、各制御ブロックにおける処理を実行することにより、電力変換器4の代わりに交流配線5に仮想の発電機が接続されたと仮定した場合に当該仮想の発電機が交流配線5に出力する電力を模擬して、電力変換器4が交流配線5に出力する電力を制御する仮想発電機モデル制御を行う。以下、各制御ブロックについて詳しく説明する。
[電圧演算部]
電圧演算部71は、電圧検出器7で検出された各相の瞬時電圧v,v,vから次式により交流電圧Vacを算出する。
また、電圧演算部71は、公知のPLL(Phase Lock Loop)演算により、交流配線5における周波数facおよび位相φacを算出する。また、電圧演算部71は、各相の瞬時電圧v,v,vおよび位相φacから次式により交流電圧の回転座標系、すなわち、dq座標系の各座標軸における電圧であるd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを算出する。このように、本実施の形態において、制御器10は、電圧検出器7で検出された瞬時電圧v,v,vから交流配線5における電圧Vd,Vqおよび周波数facを取得する。
[電流演算部]
電流演算部72は、電流検出器8で検出された各相の瞬時電流i,i,iから次式により電力変換器4から交流配線5に出力される交流電流Iacを算出する。
また、電流演算部72は、電流検出器8で検出された各相の瞬時電流i,i,iおよび電圧演算部71で演算された位相φacから次式により交流電流の回転座標系の各座標軸における電流であるd軸電流Id、q軸電流Iqを算出する。このように、本実施の形態において、制御器10は、電流検出器8で検出された瞬時電流i,i,iから交流配線5における電流Id,Iqを取得する。
[電力演算部]
電力演算部73は、電圧演算部71で算出された電圧Vd,Vqおよび電流演算部72で算出された電流Id,Iqから次式により対応する電力変換器有効電力Pacおよび電力変換器無効電力Qacを算出する。なお、以下では、電力変換器有効電力Pacおよび電力変換器無効電力Qacを単に有効電力Pacおよび無効電力Qacと称する場合がある。
なお、本実施の形態において、上記のように、有効電力Pacおよび無効電力Qacが、電圧検出器7および電流検出器8から得られる電圧Vd,Vqおよび電流Id,Iqから演算により求められる例を示したがこれに限られない。例えば、これに代えて、電源系統1が交流配線5における有効電力Pacおよび無効電力Qacを検出する電力検出器を備えていてもよい。すなわち、制御器10は、有効電力Pacおよび無効電力Qacを外部から取得してもよい。例えば、電力検出器は、公知の電力計により構成され得る。なお、以下では、電圧演算部71で得られた交流配線5における電圧Vd,Vqを系統電圧と称する場合があり、電流演算部72で得られた電力変換器4から交流配線5に出力される電流Id,Iqを系統電流と称する場合がある。
[周波数目標値演算部]
図2は、図1に示す制御器における周波数目標値演算部の構成を示すブロック図である。図2に示すように、周波数目標値演算部80は、周波数目標値演算処理を行う。周波数目標値演算処理において、周波数目標値演算部80は、有効電力Pacに対する周波数facの関係が所定の第1の垂下特性を有するように周波数目標値fac_refを算出する。なお、第1の垂下特性は、有効電力Pacが大きくなると周波数facが小さくなり、有効電力Pacが小さくなると周波数facが大きくなるような特性を意味する。
具体的には、周波数目標値演算部80は、所定の有効電力指令値Pac_cmdに対する有効電力Pacの偏差である第1偏差D1=Pac_cmd-Pacから後述する電力補正値Pac_cmpを差し引き、その値に第1の垂下特性を示すドループ係数Dr_pを掛けた値を算出する。
本実施の形態において、周波数目標値演算部80は、算出された値を一次遅れ演算部86に入力し、一次遅れ演算を行う。これにより、実際の発電機において生じる慣性モーメントが仮想発電機モデルにおいて模擬される。なお、一次遅れ演算以外の演算処理により発電機において生じる慣性モーメントを模擬してもよい。
さらに、一次遅れ演算部86から出力された値は、上下限リミッタ87に入力される。上下限リミッタ87は、一次遅れ演算部86から出力された値を所定の上限値と所定の下限値との間に制限して周波数参照値Δfac_refを出力する。なお、周波数目標値演算部80に、一次遅れ演算部86、上下限リミッタ87またはその双方を設けずに、周波数参照値Δfac_refが算出されてもよい。
周波数目標値演算部80は、上下限リミッタ87から出力された周波数参照値Δfac_refに所定の周波数指令値fac_cmdを加算して周波数目標値fac_refを算出する。
交流配線5に接続される負荷の消費電力が増大し、交流配線5における周波数facが低下すると、電力変換器4が出力する交流電圧に対して、交流配線5における交流電圧の進み位相が増大する。これを受けて、制御器10は、当該進み位相を相殺すべく、周波数目標値fac_refを低下させる。この結果、電力変換器4が出力する有効電力Pacが増大する。
反対に、交流配線5に接続される負荷の消費電力が減少し、交流配線5における周波数facが上昇すると、電力変換器4が出力する交流電圧に対して、交流配線5における交流電圧の遅れ位相が増大する。これを受けて、制御器10は、当該遅れ位相を相殺すべく、周波数目標値fac_refを上昇させる。この結果、電力変換器4が出力する有効電力Pacが減少する。
[内部相差角演算部]
図3は、図1に示す制御器における内部相差角演算部の構成を示すブロック図である。図3に示すように、内部相差角演算部82は、周波数目標値演算部80で算出された周波数目標値fac_refに対する交流配線5における周波数facの偏差である第2偏差D2=fac_ref-facを算出し、それを積分器88に入力して積算する。積分器88では、当該第2偏差D2に単位変換用の係数Kwを掛けた仮想発電機の回転速度を積分することにより、仮想発電機における内部相差角θを算出する。
[内部起電圧目標値演算部]
図4は、図1に示す制御器における内部起電圧目標値演算部の構成を示すブロック図である。図4に示すように、内部起電圧目標値演算部83は、電力演算部73で算出された無効電力Qacに基づいて交流電圧目標値Vac_refを算出する。ここで、内部起電圧目標値演算部83は、無効電力Qacに対する交流電圧Vacの関係が所定の第2の垂下特性を有するように交流電圧目標値Vac_refを算出する。なお、第2の垂下特性は、無効電力Qacが大きくなると交流電圧Vacが小さくなり、無効電力Qacが小さくなると交流電圧Vacが大きくなるような特性を意味する。
具体的には、内部起電圧目標値演算部83は、所定の無効電力指令値Qac_cmdに対する無効電力Qacの偏差である第3偏差D3=Qac_cmd-Qacに第2の垂下特性に応じたドループ係数Dr_qを掛け、その値に、所定の基準電圧である交流電圧指令値Vac_cmdを加えて交流電圧目標値Vac_refを算出する。
内部起電圧目標値演算部83は、交流電圧目標値Vac_refに対する交流電圧Vacの偏差を比例積分演算することにより、内部起電圧目標値Ef_refを生成する。比例積分演算における伝達関数は、例えば、比例ゲインをKpとし、積分ゲインをKiとすると、Kp+Ki/sで表される。このように、無効電力指令値Qac_cmdに対する無効電力Qacの偏差である第3偏差D3に対して第2の垂下特性を与えることにより、仮想発電機において無効電力Qacを用いた自動電圧調整(AVR)制御を模擬した制御態様を容易に実現することができる。
なお、内部起電圧目標値演算部83は、周波数目標値演算部80と同様に、交流電圧目標値Vac_refに対する交流電圧Vacの偏差を比例積分演算した結果に一次遅れ演算を行ってもよい。また、内部起電圧目標値演算部83は、交流電圧目標値Vac_refに対する交流電圧Vacの偏差を比例積分演算した結果または一時遅れ演算の結果に、上下限リミッタを適用してもよい。
[電流指令値演算部]
図5は、図1に示す制御器における電流指令値演算部の構成を示すブロック図である。図5に示すように、電流指令値演算部84において、内部相差角演算部82で算出された内部相差角θと、内部起電圧目標値演算部83で算出された内部起電圧目標値Ef_refと、電圧演算部71で算出されたd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqとが関数演算部89に入力される。関数演算部89は、次式に示す演算を行い、電流目標値Id_ref,Iq_refを算出する。
上記式で求められる電流目標値Id_ref,Iq_refは、交流配線5における交流電圧Vacと同じ電圧を出力する電源と、内部起電圧目標値Ef_refと同じ電圧を出力する電源との間に総合インピーダンスr+jxが接続されたと仮定した場合に、当該総合インピーダンスに流れる電流値である。
ところで、総合インピーダンスr+jxは、蓄電設備3の内部インピーダンスr+jxと、蓄電設備3と交流電源系統2との間の外部インピーダンスr+jxの和として定義される。しかし、実際の蓄電設備3における内部インピーダンスr+jxはほぼゼロに等しく、総合インピーダンスr+jxは蓄電設備3と交流配線5との間の外部インピーダンスr+jxにほぼ等しい。しかしながら、前述のとおり、本実施の形態においては、電流目標値Id_ref,Iq_refを算出するに際して、蓄電設備3の内部インピーダンスr+jxと、蓄電設備3と交流電源系統2との間の外部インピーダンスr+jxとの和である総合インピーダンスr+jxを用いることとした。
特に、蓄電設備3の内部インピーダンスr+jxを仮想的に大きくして、総合インピーダンスr+jxを求め、この仮想インピーダンスを用いて電流目標値Id_ref,Iq_refを算出すれば、安定した運転が可能となる。なぜならば、複数の電力変換器4を並列運転した場合、電力変換器4間のわずかな電圧差で大きく出力バランスが崩れてしまうのは、電力変換器4のインピーダンスが低いからである。蓄電設備3の内部インピーダンスを仮想的に大きくすることにより、電力変換器4のインピーダンスが高くなり、電圧差による出力バランスが不安定になるのを防止することができる。例えば、内部インピーダンスr+jxが現実的にはほぼゼロのところ、総合インピーダンスにおいて抵抗分を0.1PU、リアクタンス分を0.4PUとすればかなりの安定化を図ることができる。
つまり、電流指令値演算部84は、仮想発電機が電力変換器4の代わりに交流配線5に接続されていると仮定し、当該仮想発電機が内部起電圧目標値演算部83と内部相差角演算部82とにより求められた内部起電圧を発生させた場合に、交流配線5に出力される電流値を推定している。これにより、電力変換器4の見掛け上のインピーダンスが上昇し、交流電源系統2との連系運転時や電力変換器4同士の並列運転においてシステムが不安定になることを抑制している。
さらに、電流指令値演算部84は、電流目標値Id_ref,Iq_refを所定の第1範囲内に制限して電流指令値Id_cmd,Iq_cmdを生成する。すなわち、関数演算部89の出力である電流目標値Id_ref,Iq_refは、それぞれリミッタ90,91に入力される。
リミッタ90は、d軸電流目標値Id_refが第1範囲の上限値以上である場合、当該上限値をd軸電流指令値Id_cmdとして出力する。リミッタ90は、d軸電流目標値Id_refが第1範囲の下限値以下である場合、当該下限値をd軸電流指令値Id_cmdとして出力する。リミッタ90は、d軸電流目標値Id_refが第1範囲内である場合、d軸電流目標値Id_refをd軸電流指令値Id_cmdとして出力する。リミッタ91は、q軸電流目標値Iq_refに対して、リミッタ90と同様の制限処理を行う。なお、リミッタ90,91において設定される上限値および下限値は、それぞれ互いに異なる値でもよいし、同じ値でもよい。リミッタ90,91が出力した電流指令値Id_cmd,Iq_cmdは、駆動信号生成部85に入力される。
さらに、電流指令値演算部84は、電流目標値Id_ref,Iq_refに対する電流指令値Id_cmd,I_cmdの偏差である第4偏差D4d,D4qとして得られる電流偏差Id_cmp,Iq_cmpと、系統電圧Vd,Vqとから電力補正値Pac_cmpを算出する。
より具体的には、電流指令値演算部84は、リミッタ90の入力であるd軸電流目標値Id_refからリミッタ90の出力であるd軸電流指令値Id_cmdを差し引いてd軸電流偏差Id_cmp=D4d=Id_ref-Id_cmdを生成する。同様に、電流指令値演算部84は、リミッタ91の入力であるq軸電流目標値Iq_refからリミッタ91の出力であるq軸電流指令値Iq_cmdを差し引いてq軸電流偏差Iq_cmp=D4q=Iq_ref-Iq_cmdを生成する。電流偏差Id_cmp,Iq_cmpおよび系統電圧Vd,Vqは、電力補正値演算部92に入力される。
電力補正値演算部92は、d軸電圧Vdにd軸電流偏差Id_cmpを掛けた値と、q軸電圧Vqにq軸電流偏差Iq_cmpを掛けた値とを加えて電力補正値Pac_cmpを算出する。すなわち、電力補正値Pac_cmpは、Pac_cmp=Vd*Id_cmp+Vq*Iq_cmpで表される。
電流指令値演算部84では、仮想発電機モデルから算出される理論上の電流出力である電流目標値Id_ref,Iq_refに対して、電力変換器4がトリップしないように、電流指令値Id_cmd,Iq_cmdを第1範囲内に制限している。電力補正値Pac_cmpは、仮想発電機モデルから算出される理論上の電流出力に対して、電力変換器4の上記制約から出力できなかった電力に相当する。
電力補正値Pac_cmpは、上述したように、周波数目標値演算部80に入力される。周波数目標値演算部80は、図2に示すように、所定の有効電力指令値Pac_cmdに対する有効電力Pacの偏差である第1偏差D1から電力補正値Pac_cmpを差し引く。これにより、周波数目標値演算部80は、電力補正値Pac_cmpにより第1偏差D1=Pac_cmd-Pacを補正することにより、周波数目標値fac_refを補正する。
このように、電流指令値Id_cmd,Iq_cmdが仮想発電機モデルから算出される理論上の電流出力に対して制限されることにより、電力変換器4から仮想発電機モデルに応じた電力が出力されない場合であっても、周波数目標値演算部80において、電力変換器4から仮想発電機モデルに応じた電力が出力されたと仮定して周波数目標値fac_refが算出される。したがって、電流指令値Id_cmd,Iq_cmdが制限されたことによって周波数目標値fac_refが過大になることを抑制することができる。
[駆動信号生成部]
図6は、図1に示す制御器における駆動信号生成部の構成を示すブロック図である。図6に示すように、駆動信号生成部85には、交流配線5における電流Id,Iq、位相φacおよび電流指令値Id_cmd,Iq_cmdが入力される。駆動信号生成部85は、系統電流Id,Iqが電流指令値Id_cmd,Iq_cmdになるような駆動信号Soを生成し、電力変換器4に出力する。
具体的には、駆動信号生成部85は、電流指令値Id_cmd,Iq_cmdに対する系統電流Id,Iqの偏差である第5偏差D5d=Id_cmd-Id,D5q=Iq_cmd-Iqを比例積分演算する。さらに、駆動信号生成部85は、系統電圧を所定の制限範囲内に制限した制限電圧を生成する。制限電圧は、少なくともd軸電圧Vdまたはq軸電圧Vqが所定の制限範囲内で変化し得る電圧である。
本実施の形態においては、駆動信号生成部85にd軸電圧Vdが入力される。駆動信号生成部85に入力されたd軸電圧Vdは、リミッタ93に入力される。リミッタ93は、d軸電圧Vdを所定の第2範囲に制限したd軸制限電圧Vdlを出力する。本実施の形態において、d軸制限電圧Vdlの大きさは、d軸電圧Vdの定格電圧を1としたとき、0以上1以下である。駆動信号生成部85は、d軸電流Idに関する第5偏差D5dについての比例積分演算の結果に、d軸制限電圧Vdlを加える。すなわち、d軸電流Idに関する第5偏差D5dについての比例積分演算の結果に加えられるd軸制限電圧Vdlは、d軸電圧Vdの大きさが定格電圧以下である場合、そのときのd軸電圧Vdに応じて変化し得る。
なお、本実施の形態においては、q軸電流Iqに関する第5偏差D5qについての比例積分演算の結果に、q軸制限電圧は加えない。これは、従来のq軸電圧加算項として固定値である0を加えるのに等しい。
さらに、駆動信号生成部85は、交流配線5における電流に関する第5偏差D5d,D5qについての比例積分演算の結果から干渉成分を差し引く。仮想発電機においてd軸電流Idとq軸電流Iqとの間にはd軸電流Idが変化するとq軸電流Iqが変化し、q軸電流Iqが変化するとd軸電流Idが変化するという干渉が生じる。駆動信号生成部85は、電流指令値Id_cmd,Iq_cmdに基づく電圧指令値Vd_cmd,Vq_cmdからこのような干渉成分を取り除く非干渉処理を行う。
具体的には、駆動信号生成部85は、d軸電流Idに関する第5偏差D5dについての比例積分演算の結果からq軸電流Iqに所定のゲインXqを掛けたq軸干渉成分XqIqを差し引く。同様に、駆動信号生成部85は、q軸電流Iqに関する第5偏差D5qについての比例積分演算の結果にd軸電流Idに所定のゲインXdを掛けたd軸干渉成分XdIdを加える。
以上より、駆動信号生成部85は、下記式により電流指令値Id_cmd,Iq_cmdから電圧指令値Vd_cmd,Vq_cmdを算出する。ここで、Kd,Kq,Xd,Xqは所定のゲインを表し、Tid,Tiqは、所定の時定数を表す。
駆動信号生成部85は、電圧指令値Vd_cmd,Vq_cmdから三相交流である交流配線5の各相の瞬時電圧v,v,vの目標値va_ref,vb_ref,vc_refを算出する。具体的には、電圧指令値Vd_cmd,Vq_cmdは、dq-abc変換部94に入力される。dq-abc変換部94は、下記式に基づいて電圧指令値Vd_cmd,Vq_cmdから交流配線5の各相の瞬時電圧の目標値va_ref,vb_ref,vc_refを算出する。
算出された瞬時電圧の目標値va_ref,vb_ref,vc_refは、信号変換部95に入力される。信号変換部95は、瞬時電圧の目標値va_ref,vb_ref,vc_refに基づいて電力変換器4をスイッチングするための駆動信号Soを生成する。例えば、駆動信号Soは、PWM制御信号である。駆動信号生成部85は、このようにして生成された駆動信号Soを出力する。駆動信号Soは、電力変換器4に入力され、交流配線5への出力電圧が駆動信号Soに基づいて制御される。
[効果]
本実施の形態によれば、電力変換器4の代わりに交流配線5に仮想発電機が接続されたと仮定した場合に当該仮想発電機が交流配線5に出力する電力を模擬するために、仮想発電機の内部起電圧目標値Ef_refおよび内部相差角θが算出され、当該内部起電圧目標値Ef_ref、内部相差角θおよび交流配線5における電圧Vd,Vqから仮想発電機から出力される電流を推定している。電源系統1において系統事故等が発生し、瞬間的な電圧低下が発生すると、この電流の推定値が過大な値となる。そのため、当該電流の推定値をそのまま電流指令値として電力変換器4を駆動すると、電力変換器4が過電流によりトリップまたは破損する恐れがある。この結果、瞬間的な電圧低下時において運転継続し、かつ、交流電源系統2における電圧回復時に電圧低下状態から早急に復旧することができなくなる。
そこで、本実施の形態においては、リミッタ90,91により、仮想発電機から出力される電流として推定された電流目標値Id_ref,Iq_refを第1範囲内に制限した電流指令値Id_cmd,Iq_cmdを用いて電力変換器4が駆動される。これにより、瞬間的な電圧低下時の過電流を抑制することができる。さらに、d軸電流指令値Id_cmdのフィードバックループに、d軸電圧Vdを第2範囲内に制限したd軸制限電圧Vdlが加算されるため、瞬間的な電圧低下時の電流制御の応答性を高めることができ、過電流によるトリップを防止することができる。
上記のように、本実施の形態においては、仮想発電機から出力される電流の推定値をリミッタ90,91により制限しているため、電力変換器4から出力される電力も制限される。本実施の形態では、所定の有効電力指令値Pac_cmdに対する有効電力Pacの偏差である第1偏差D1から仮想発電機における周波数目標値fac_refが推定され、当該周波数目標値fac_refから内部相差角θが算出される。
そのため、瞬間的な電圧低下時において有効電力Pacが制限されると、第1偏差D1が増大し、周波数目標値fac_refも増大する。この結果、瞬間的な電圧低下時において内部相差角θが理論値よりも大きくなり、電圧低下状態からの復旧時に電源系統1において大きな電力動揺を生じさせてしまう。このため、交流電源系統2における電圧回復時に電圧低下状態からの早急な復旧ができなくなる恐れがある。
そこで、本実施の形態においては、電流目標値Id_ref,Iq_refに対する電流指令値Id_cmd,I_cmdの偏差である第4偏差D4d=Id_cmp,D4q=Iq_cmpと、交流配線5における電圧Vd,Vqとから電力補正値Pac_cmpが算出される。算出された電力補正値Pac_cmpが周波数目標値fac_refを算出するための第1偏差D1から差し引かれる。これにより、リミッタ90,91で制限されることによる電力の出力低下に伴う周波数目標値fac_refの上昇が抑制され、瞬間的な電圧低下時に生じる内部相差角θの増大が抑制される。したがって、交流電源系統2における電圧回復時に電力動揺の発生が抑制され、電力変換器4における連系運転を電圧低下状態から早急に復旧させることができる。
従来の仮想発電機モデル制御においては、制御方式を変更することなく連系運転と自立運転とを切り替えることを可能とするために、駆動信号生成部において電流フィードバックがPI制御により行われ、系統電圧の加算項として、d軸電圧Vd=1、q軸電圧Vq=0が加算されることにより、電圧指令値Vd_cmd,Vq_cmdが算出される。これにより、制御方式を変更することなく連系運転と自立運転との間の切り替えが可能となる反面、瞬間的な電圧低下が生じた場合に追従が遅れ、過渡的に過大な電流が流れる恐れがある。
これに対し、本実施の形態においては、駆動信号生成部85において、系統電圧の加算項として、交流配線5における電圧を制限した電圧が加えられる。すなわち、駆動信号生成部85は、d軸電流に関する第5偏差D5d=Id_cmd-Idについての比例積分演算の結果に、d軸制限電圧Vdlを加算する。これにより、従来の仮想発電機モデル制御と同様に制御方式を変更することなく連系運転と自立運転との間の切り替えを可能としつつ、瞬間的な電圧低下発生時における電流制御の応答性を高めることができる。
また、瞬間的な電圧低下時における運転継続および電圧低下状態からの早急な復旧を実現するための他の方法として、瞬間的な電圧低下の発生を検出し、一時的に制御方式を切り替えることが考えられる。しかし、この場合、瞬間的な電圧低下の発生を検出するための追加の設備が必要となる。一方で、本実施の形態によれば、瞬間的な電圧低下の発生時においても、制御方式を変更する必要がない。したがって、瞬間的な電圧低下の発生を検出する必要がないため、電源系統1において追加の設備を必要とすることなく瞬間的な電圧低下時における運転継続および交流電源系統における電圧回復時の電圧低下状態からの早急な復旧を実現できる。
[シミュレーション結果]
(1)瞬間的な電圧低下の発生に関するシミュレーション
以下に、第1シミュレーションとして、上記実施の形態の電源系統1において瞬間的な電圧低下を発生させた場合のシミュレーションの結果を以下に示す。第1シミュレーションでは、実施例として、図1に示される電源系統1について、交流電源系統2において残留電圧20%、継続時間0.3秒の瞬間的な電圧低下が発生した場合の挙動についてのシミュレーションを実施し、比較例と比較した。第1シミュレーションにおいては、シミュレーション開始から5秒後に瞬間的な電圧低下が発生し、さらに0.3秒後に交流電源系統2における電圧が回復している。
なお、比較例は、図1に示す電源系統1において電力補正値Pac_cmpによる補正が行われないこと、および、電流フィードバック制御において、制限電圧加算項であるd軸制限電圧Vdlの加算および干渉成分XqIq,XdIdの減算が行われず、交流配線5における電流に関する第5偏差D5d,D5qについてPI制御を行っていることが相違する。なお、比較例においても、図5に示す電流指令値演算部84におけるリミッタ90,91による電流制限は行われるとした。
図7は、第1シミュレーションにおける出力電力の時間変化を示すグラフである。比較例における出力電力Pcのグラフによれば、シミュレーション開始から5.3秒後の交流電源系統2における電圧回復後、電力変換器の出力電力Pcが大きく負の領域に振れている。これは、後述する内部相差角のシミュレーション結果からも分かるように、瞬間的な電圧低下中に生じた内部相差角の増大が過大となり、脱調現象が発生したと考えられる。このため、例えば、系統連系規程(JEAC9701)において定められるFRT要件の1つである、交流電源系統における電圧回復後、0.1秒以内に電圧低下前の出力の80%以上に復旧することを満足することができない。
一方、実施例における出力電力Peのグラフによれば、脱調現象は発生せず、電圧回復後の電力動揺が低く抑えられている。この結果、上記FRT要件を満足している。これは、電力補正値Pac_cmpを用いた電力補償制御により、瞬間的な電圧低下時における周波数目標値fac_refおよび内部相差角θの上昇が抑制されていることに起因すると考えられる。
図8は、第1シミュレーションにおける周波数の時間変化を示すグラフである。図8のグラフにおける周波数は、電圧演算部71で得られる周波数facに相当する値である。比較例における周波数frcのグラフによれば、瞬間的な電圧低下時において、電流指令値に対する制限が行われることにより、出力電力が抑制されるため、周波数frcが上昇する。さらに、電圧回復後は、脱調現象が発生し、周波数frcがさらに上昇する結果となった。
一方、実施例における周波数freのグラフによれば、電力補正値Pac_cmpを用いた電力補償制御により、周波数freの上昇が抑制されている。電圧回復後も脱調現象は発生せず、周波数freは一旦減少するものの、その後短期間で元の周波数に近い値に復帰している。
図9は、第1シミュレーションにおける内部相差角の時間変化を示すグラフである。比較例における内部相差角θcのグラフと実施例における内部相差角θeのグラフとを比較すると、比較例における内部相差角θcの方が瞬間的な電圧低下時により大きく変化している。さらに、比較例においては、電圧回復後に瞬間的に正の値から負の値に変化している。これは、瞬間的な電圧低下時の比較例における内部相差角θcの変化の傾きが大きいために、電圧回復時に位相差を戻すことができず、そのまま脱調状態に至ったことを示している。
一方、実施例における内部相差角θeのグラフによれば、電圧回復後、内部相差角θeは、元の状態に戻っている。これは電力補正値Pac_cmpを用いた電力補償制御の効果によると考えらえる。
図10は、第1シミュレーションにおける実施例のd軸電流指令値およびd軸電流の時間変化を示すグラフである。また、図11は、第1シミュレーションにおける比較例のd軸電流指令値およびd軸電流の時間変化を示すグラフである。また、図12は、第1シミュレーションにおける電力変換器からの出力電流の時間変化を示すグラフである。図12のグラフにおける出力電流は、上記式(3)で得られる電力変換器4から交流配線5に出力する交流電流Iacに相当する値である。
図11に示す比較例のグラフによれば、瞬間的な電圧低下時において、d軸電流Idcがd軸電流指令値Idccに追従できていない。すなわち、d軸電流指令値Idccがリミッタにより制限されているにもかかわらず、d軸電流Idcが当該d軸電流指令値Idccを上回っている。これに対して、図10に示す実施例のグラフによれば、d軸電流Ideがd軸電流指令値Idceにほぼ追従できている。これは、電流フィードバックループに、制限電圧加算項であるd軸制限電圧Vdlが追加されていることによると考えられる。
図12に示す電流指令値に関して、比較例における電流指令値Icのグラフによれば、瞬間的な電圧低下直後において、電流指令値Icが定格電流の2.5倍を超えている。そのため、この時点で過電流により電力変換器がトリップする可能性がある。一方、実施例における電流指令値Ieのグラフによれば、瞬間的な電圧低下時においても電流指令値Ieは適切に制限されていることが分かる。
(2)連系運転から自立運転への移行に関するシミュレーション
以下に、第2シミュレーションとして、上記実施の形態の電源系統1において連系運転から自立運転への切り替えを行った場合のシミュレーションの結果を以下に示す。第2シミュレーションでは、第1シミュレーションと同様の実施例と比較例(以下、比較例1)とを用いて、比較例1において実現されている連系運転から自立運転への切り替えが実施例においても遜色なく実現できるかどうかを検証した。さらに、上記実施の形態の電源系統1において、電流フィードバックループに追加する電圧加算項を制限しない場合を比較例2として、連系運転から自立運転への切り替えを行った場合のシミュレーションを併せて行った。何れの例においても、シミュレーション開始から5秒のタイミングで連系運転から自立運転に切り替えた場合がシミュレーションされている。
図13は、実施例についての第2シミュレーションの結果に基づく、交流配線における交流電圧および周波数の時間変化を示すグラフである。また、図14は、比較例1についての第2シミュレーションの結果に基づく、交流配線における交流電圧および周波数の時間変化を示すグラフである。これらのグラフにおける交流電圧は、上記式(1)で得られる交流電圧Vacに相当する値である。また、これらのグラフにおける周波数は、電圧演算部71で得られる周波数facに相当する値である。
図14に示す比較例1の交流電圧Vc1および周波数fc1のグラフによれば、連系運転から自立運転への移行の際に、電力変換器から出力される電力の変動等により、交流電圧Vc1および周波数fc1がわずかに動揺する。これは仮想発電機モデル制御において期待される応答である。図13に示す実施例の交流電圧Veおよび周波数feのグラフにおいても、図14に示す比較例1のグラフと同様の結果となっている。したがって、実施例の電源系統1においても比較例1と同様に、連系運転から自立運転への切り替えが問題なく実現できると考えられる。
図15は、比較例2についての第2シミュレーションの結果に基づく、交流配線における交流電圧および周波数の時間変化を示すグラフである。比較例2においては、シミュレーション開始から5秒後に交流電源系統2と電力変換器4との間で解列した後、交流電圧Vc2および周波数fc2がともに異常な値となり、自立運転ができていないことが分かる。
(3)シミュレーションについてのまとめ
以上の2つのシミュレーションの結果から、上記実施の形態における電源系統1の制御態様によれば、制御方式を変更することなく自立運転と連系運転との切り替えが可能であり、かつ、連系運転時に瞬間的な電圧低下が生じた場合でも連系運転を継続し、交流電源系統2における電圧回復時に電圧低下状態から早急に復旧することができることが分かる。
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
例えば、上記実施の形態においては、電源系統1における交流配線5が三相系統である場合について説明したが、これに限られない。例えば、交流配線5が単相二線系統または単相三線系統の場合であっても、各種演算の方法が系統の方式に応じて異なることを除いて同様の電源系統1を構築可能である。
また、上記実施の形態においては、駆動信号生成部85において、d軸電流Idのフィードバックループにd軸制限電圧Vdlを追加する態様を例示したが、これに加えてまたはこれに代えて、q軸電流Iqのフィードバックループにq軸制限電圧Vqlを追加してもよい。すなわち、駆動信号生成部85は、q軸電流指令値Iq_cmdに対するq軸電流Iqの偏差D5q=Iq_cmd-Iqに基づく値に、制限電圧としてq軸電圧Vqを所定の第3範囲内に制限したq軸制限電圧Vqlを加えて、q軸電圧指令値Vq_refを生成してもよい。
また、上記実施の形態においては、d軸制限電圧Vd1を生成するためのd軸電圧Vdの制限範囲である第2範囲を、d軸電圧Vdの定格電圧を1としたとき、0以上1以下としたが、これに限られない。ただし、第2範囲は、d軸電圧Vdの定格電圧を1としたとき、1以下の範囲であることが好ましい。また、q軸電流Iqのフィードバックループにq軸制限電圧Vqlを追加する場合、d軸制限電圧Vdlは例えば、d軸電圧Vdの定格電圧を1としたとき、1等の固定値でもよい。また、q軸制限電圧Vq1を生成するためのq軸電圧Vqの制限範囲である第3範囲は、電源系統1に応じて適宜設定され得る。ただし、第3範囲は、q軸電圧Vqの定格電圧を1としたとき、0を含む範囲であることが好ましい。
また、上記実施の形態においては、駆動信号生成部85においてd軸-q軸間の非干渉化処理を行うべくd軸電流Idに関する第5偏差D5dから干渉成分XqIqを差し引き、q軸電流Iqに関する第5偏差D5qに干渉成分XdIdを加える演算を行っている例を示したが、干渉成分XqIqの減算および干渉成分XdIdの加算はなくてもよい。
[本開示のまとめ]
本開示の一態様に係る電力変換器の制御器は、蓄電設備と交流電源系統との間で電力変換を行う電力変換器の制御器であって、前記交流電源系統と前記電力変換器とを接続する交流配線における電圧、周波数および前記電力変換器から前記交流配線に出力される電流を取得し、前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、所定の有効電力指令値に対する前記電力変換器有効電力の偏差である第1偏差に基づく値に、前記第1の垂下特性を示す係数を掛ける演算を含む周波数目標値演算処理によって周波数目標値を算出し、前記周波数目標値に対する前記交流配線における周波数の偏差である第2偏差を積算して内部相差角を算出し、所定の無効電力指令値に対する前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器無効電力の偏差である第3偏差に基づく値に、所定の基準電圧を加算して内部起電圧目標値を算出し、前記内部相差角と、前記内部起電圧目標値と、前記交流配線における電圧とから、電流目標値を算出し、前記電流目標値を所定の第1範囲内に制限して電流指令値を生成し、前記電流目標値に対する前記電流指令値の偏差である第4偏差と、前記交流配線における電圧とから電力補正値を算出し、前記電力補正値により前記第1偏差を補正することにより、前記周波数目標値を補正し、前記交流配線における電圧を所定の制限範囲内に制限した制限電圧を生成し、前記電流指令値に対する前記交流配線に出力される電流の偏差である第5偏差に基づく値に前記制限電圧を加えて電圧指令値を生成することにより、前記電力変換器の駆動信号を生成する。
上記構成によれば、仮想発電機から出力される電流として推定された電流目標値を第1範囲内に制限した電流指令値を用いて電力変換器が駆動される。これにより、瞬間的な電圧低下時の過電流を抑制することができる。さらに、電流指令値のフィードバックループに、交流配線における電圧を所定の制限範囲内に制限した制限電圧が加算されるため、瞬間的な電圧低下時の電流制御の応答性を高めることができ、過電流によるトリップを防止することができる。
さらに、上記構成においては、電流目標値に対する電流指令値の偏差である第4偏差と、交流配線における電圧とから電力補正値が算出される。算出された電力補正値が周波数目標値を算出するための第1偏差から差し引かれる。これにより、仮想発電機から出力される電流として推定された電流目標値に対して電流指令値が制限され、当該制限された電流指令値に基づいて出力電力が決定されることによる電力の出力低下に伴う周波数目標値の上昇が抑制される。この結果、瞬間的な電圧低下時に生じる内部相差角の増大が抑制される。したがって、交流電源系統における電圧回復時に電力動揺の発生が抑制され、電圧低下状態から早急に復旧させることができる。
また、上記構成においては、駆動信号を生成するための電流フィードバックループに加えられる電圧の加算項として、交流配線における電圧を所定の制限範囲内に制限した電圧が加えられる。これにより、従来の仮想発電機モデル制御と同様に制御方式を変更することなく連系運転と自立運転との間の切り替えを可能としつつ、瞬間的な電圧低下発生時における電流制御の応答性を高めることができる。
前記電流指令値は、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を含み、前記制御器は、前記交流配線における電圧の瞬時値からd軸電圧およびq軸電圧を算出し、前記交流配線における電流の瞬時値からd軸電流およびq軸電流を算出し、前記d軸電流指令値に対する前記d軸電流の偏差に基づく値に前記制限電圧として前記d軸電圧を所定の第2範囲内に制限したd軸制限電圧を加えてd軸電圧指令値を生成し、前記q軸電流指令値に対する前記q軸電流の偏差に基づく値をq軸電圧指令値として生成してもよい。
前記d軸制限電圧の大きさは、前記d軸電圧の定格電圧を1としたとき、0以上1以下であってもよい。
2 交流電源系統
3 蓄電設備
4 電力変換器
10 制御器
71 電圧演算部
72 電流演算部
80 周波数目標値演算部
82 内部相差角演算部
83 内部起電圧目標値演算部
84 電流指令値演算部
85 駆動信号生成部

Claims (4)

  1. 蓄電設備と交流電源系統との間で電力変換を行う電力変換器の制御器であって、
    前記交流電源系統と前記電力変換器とを接続する交流配線における電圧、周波数および前記電力変換器から前記交流配線に出力される電流を取得し、
    前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、所定の有効電力指令値に対する前記電力変換器有効電力の偏差である第1偏差に基づく値に、前記第1の垂下特性を示す係数を掛ける演算を含む周波数目標値演算処理によって周波数目標値を算出し、
    前記周波数目標値に対する前記交流配線における周波数の偏差である第2偏差を積算して内部相差角を算出し、
    所定の無効電力指令値に対する前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器無効電力の偏差である第3偏差に基づく値に、所定の基準電圧を加算して内部起電圧目標値を算出し、
    前記内部相差角と、前記内部起電圧目標値と、前記交流配線における電圧とから、電流目標値を算出し、
    前記電流目標値を所定の第1範囲内に制限して電流指令値を生成し、
    前記電流目標値に対する前記電流指令値の偏差である第4偏差と、前記交流配線における電圧とから電力補正値を算出し、
    前記電力補正値により前記第1偏差を補正することにより、前記周波数目標値を補正し、
    前記交流配線における電圧を所定の制限範囲内に制限した制限電圧を生成し、前記電流指令値に対する前記交流配線に出力される電流の偏差である第5偏差に基づく値に前記制限電圧を加えて電圧指令値を生成することにより、前記電力変換器の駆動信号を生成する、制御器。
  2. 前記電流指令値は、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を含み、
    前記制御器は、
    前記交流配線における電圧の瞬時値からd軸電圧およびq軸電圧を算出し、
    前記交流配線における電流の瞬時値からd軸電流およびq軸電流を算出し、
    前記d軸電流指令値に対する前記d軸電流の偏差に基づく値に前記制限電圧として前記d軸電圧を所定の第2範囲内に制限したd軸制限電圧を加えてd軸電圧指令値を生成し、
    前記q軸電流指令値に対する前記q軸電流の偏差に基づく値をq軸電圧指令値として生成する、請求項1に記載の制御器。
  3. 前記d軸制限電圧の大きさは、前記d軸電圧の定格電圧を1としたとき、0以上1以下である、請求項2に記載の制御器。
  4. 蓄電設備と交流電源系統との間で電力変換を行う電力変換器の制御方法であって、
    前記交流電源系統と前記電力変換器とを接続する交流配線における電圧、周波数および前記電力変換器から前記交流配線に出力される電流を取得し、
    前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、所定の有効電力指令値に対する前記電力変換器有効電力の偏差である第1偏差に基づく値に、前記第1の垂下特性を示す係数を掛ける演算を含む周波数目標値演算処理によって周波数目標値を算出し、
    前記周波数目標値に対する前記交流配線における周波数の偏差である第2偏差を積算して内部相差角を算出し、
    所定の無効電力指令値に対する前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器無効電力の偏差である第3偏差に基づく値に、所定の基準電圧を加算して内部起電圧目標値を算出し、
    前記内部相差角と、前記内部起電圧目標値と、前記交流配線における電圧とから、電流目標値を算出し、
    前記電流目標値を所定の第1範囲内に制限して電流指令値を生成し、
    前記電流目標値に対する前記電流指令値の偏差である第4偏差と、前記交流配線における電圧とから電力補正値を算出し、
    前記電力補正値により前記第1偏差を補正することにより、前記周波数目標値を補正し、
    前記交流配線における電圧を所定の第2範囲内に制限した制限電圧を生成し、前記電流指令値に対する前記交流配線に出力される電流の偏差である第5偏差に基づく値に前記制限電圧を加えて電圧指令値を生成することにより、前記電力変換器の駆動信号を生成する、制御方法。
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