実施形態に係る細胞の培養方法は、閉鎖系内で細胞を培養することを含む。閉鎖系とは、例えば、完全に閉鎖された系であり、閉鎖系内と外部との間でガスの交換が生じない。閉鎖系は、例えば密閉されており、閉鎖系内に外気が進入しない。例えば、閉鎖系内に閉鎖系外の細胞、微生物、ウイルス、及び塵が進入しない。例えば、閉鎖系内の物質が閉鎖系外に流出しない。
細胞は、閉鎖系内の液体培地中で培養されてもよいし、ゲル培地中で培養されてもよい。また、細胞は、閉鎖系内で接着培養されてもよいし、浮遊培養されてもよい。閉鎖系内で細胞を培養している間、培地は攪拌されてもよいし、攪拌されなくともよい。細胞を接着培養する際には、フィーダー細胞を用いてもよいし、フィーダー細胞を用いなくともよい。細胞を浮遊培養する際には、フィーダー細胞を用いなくともよい。
閉鎖系内で培養される細胞は、ヒトを含む動物細胞であってもよいし、昆虫細胞であってもよいし、植物細胞であってもよい。
閉鎖系内で培養される細胞は、例えば体細胞であってもよいし、分化細胞であってもよいし、未分化細胞であってもよいし、幹細胞であってもよい。閉鎖系内で培養される細胞は、特に限定されないが、例えば、血液系細胞、神経系細胞、心筋系細胞、上皮系細胞、血管内皮細胞、間葉系細胞、線維芽細胞、肝細胞、インスリン産生細胞、網膜色素上皮細胞、及び角膜細胞であってもよい。
血液系細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、メガカリオサイト、マクロファージ、顆粒球、好中球、好酸球、造血幹細胞、血液幹・前駆細胞、赤血球、白血球及び血小板等の血液細胞であってもよい。神経系細胞は、神経細胞及びグリア細胞、オリゴデンドロサイト、神経幹細胞であってもよい。心筋系細胞は、心筋幹細胞及び心筋細胞、ペースメーカー細胞であってもよい。上皮系細胞は、ケラチノサイト、腸管上皮細胞、口腔上皮、角膜上皮細胞上皮細胞であってもよい。間葉系細胞は、真皮細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、及び軟骨細胞等であってもよい。
幹細胞は、例えば、人工多能性幹(iPS)細胞、胚性幹細胞(ES細胞)及び体性幹細胞である。体性幹細胞は、間葉系幹細胞であってもよい。細胞が幹細胞である場合、幹細胞は、培地中で、未分化の状態を維持し、多能性を維持したまま増殖する。
例えば、幹細胞は、浮遊培養される前に、シングルセル又は細胞塊に分解され、シングルセル又は細胞塊に分解された幹細胞が、培地に入れられる。シングルセル又は細胞塊は、クローナリティを保ったまま増殖し、培地中でコロニーを形成する。
幹細胞は、例えば、幹細胞用培地中で培養される。幹細胞用培地としては、例えば、mTeSR1(登録商標、STEMCELL TECHNOLOGIES)等のヒトES/iPS培地を使用可能である。
ただし、幹細胞用培地は、これに限定されず、種々の幹細胞培地が使用可能である。例えば、20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)、GlutaMAX(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)、及び非必須アミノ酸(NEAA)を含む培地を幹細胞培地として使用してもよい。あるいは、Primate ES Cell Medium、Reprostem、ReproFF、ReproFF2、ReproXF(Reprocell)、TeSR2、TeSRE8、ReproTeSR(STEMCELL Technologies)、PluriSTEM(登録商標)Human ES/iPS Medium(Merck)、NutriStem (登録商標)XF/FF Culture Medium for Human iPS and ES Cells、Pluriton reprogramming medium(Stemgent)、PluriSTEM(登録商標)、Stemfit AK02N、Stemfit AK03(Ajinomoto)、ESC-Sure(登録商標)serum and feeder free medium for hESC/iPS(Applied StemCell)、及びL7(登録商標)hPSC Culture System (LONZA)等を幹細胞培地として使用してもよい。
閉鎖系内の培地は、閉鎖系内で培養される細胞の種類に応じて、適宜選択される。例えば、細胞が血液系細胞である場合、血液系細胞に適した培地が閉鎖系に入れられる。例えば、細胞が間葉系細胞である場合、間葉系細胞に適した培地が閉鎖系に入れられる。
培地は、例えば、basic fibroblast growth factor(bFGF)等の成長因子を含まなくともよい。あるいは、培地は、bFGF等の成長因子を、400μg/L以下、40μg/L以下、あるいは10μg/L以下の低濃度で含んでもよい。
また、培地は、tgf-βを含まなくともよい。あるいは、培地は、tgf-βを2μg/L(2ng/mL)以下、600ng/L以下、300ng/L以下、あるいは100ng/L以下の低濃度で含んでもよい。
培地は、カドヘリン、ラミニン、フィブロネクチン、及びビトロネクチンからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでいてもよい。
培地がゲル培地である場合、ゲル培地は、例えば、培地に脱アシル化ジェランガムを終濃度が0.001重量%から0.5重量%、0.005重量%から0.1重量%、あるいは0.01重量%から0.05重量%となるよう添加することにより調製される。
ゲル培地は、ジェランガム、ヒアルロン酸、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物を含んでいてもよい。また、ゲル培地は、メチルセルロースを含んでいてもよい。メチルセルロースを含むことにより、細胞同士の凝集がより抑制される。
あるいは、ゲル培地は、poly(glycerol monomethacrylate) (PGMA)、poly(2-hydroxypropyl methacrylate) (PHPMA)、Poly (N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)、amine terminated、carboxylic acid terminated、maleimide terminated、N-hydroxysuccinimide (NHS) ester terminated、triethoxysilane terminated、Poly (N-isopropylacrylamide-co-acrylamide)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-acrylic acid)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-butylacrylate)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-methacrylic acid)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-methacrylic acid-co-octadecyl acrylate)、及びN-Isopropylacrylamideから選択される少なくの温度感受性ゲルを含んでいてもよい。
なお、本開示において、ゲル状の培地あるいはゲル培地とは、ポリマー培地を包含する。
閉鎖系内で細胞を培養している間、閉鎖系内の培地の温度は、例えば、0℃以上、4℃以上、15℃以上、20℃以上、あるいは34℃以上に保たれる。また、閉鎖系内で細胞を培養している間、閉鎖系内の培地の温度は、例えば、45℃以下、39℃以下、あるいは20℃以下に保たれる。閉鎖系内で細胞を培養している間、ヒーター及びクーラー等の温度制御装置を用いて、閉鎖系内の培地の温度を制御してもよい。
閉鎖系に入れられる培地のpHは、例えば、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、あるいは8.0以上である。また、閉鎖系に入れられる培地のpHは、例えば、10.0以下、9.0以下、8.8以下、あるいは8.0以下である。閉鎖系内に入れられた培地は、閉鎖系内に存在することにより、細胞を培養している間、pHが上記範囲内に保たれる傾向にある。閉鎖系に入れられる培地のpHが7.0以上あるいは8.0以上であると、閉鎖系内で細胞を培養中に乳酸を中和してpHの低下を抑制するので、好ましい。
閉鎖系内で細胞を培養している間、閉鎖系内に二酸化炭素ガス、窒素ガス、及び酸素ガスの少なくともいずれか、あるいは全てを供給しなくともよい。また、閉鎖系内で細胞を培養している間、閉鎖系内の二酸化炭素濃度を制御しなくともよい。閉鎖系内で細胞を培養している間、閉鎖系外の二酸化炭素濃度を制御しなくともよい。例えば、閉鎖系を、二酸化炭素(CO2)インキュベーター内に配置しなくともよい。ただし、閉鎖系を、二酸化炭素(CO2)インキュベーター内に配置することは妨げられない。
閉鎖系内で細胞を培養する際には、閉鎖系内に空気層等のガス層がないか、少ないことが好ましい。そのため、閉鎖系内にはガス層が残らないか、少なくなるように、閉鎖系内に培地が充填されることが好ましい。
閉鎖系内で細胞を培養している間、培地は、外気に触れないように、閉鎖系内で循環させてもよい。閉鎖系内において、細胞懸濁液と、循環する培地との間に、半透膜を配置し、半透膜を介して、培地の有効成分を細胞懸濁液に浸透させてもよい。
閉鎖系内で、細胞は、例えば、3時間以上、1日以上、14日以上、あるいは30日以上培養される。ただし、継代、培地の交換、及び培地の追加の際には、閉鎖系は開放されてもよい。
なお、細胞の播種と継代に間に、培地の交換及び追加を行わなくともよい。この場合、播種と継代の間では、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養される。播種と継代の間、例えば、1日以上、5日以上、あるいは10日以上、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養される。
細胞の継代と継代に間に、培地の交換及び追加を行わなくともよい。この場合、継代と継代の間では、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養される。継代と継代の間、例えば、1日以上、5日以上、あるいは10日以上、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養される。
あるいは、細胞の播種と継代に間に、閉鎖系を開放し、培地の追加又は交換をしてもよい。また、細胞の継代と継代に間に、閉鎖系を開放し、培地の追加又は交換をしてもよい。培地の追加又は交換は、1日以上おき、2日以上おき、あるいは5日以上おきにしてもよい。培地に追加又は交換と継代のとき以外は、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養される。
また、実施形態に係る細胞の誘導方法は、閉鎖系内で細胞を誘導することを含む。閉鎖系は、上述したとおりである。誘導とは、リプログラミング、初期化、分化転換(Transdifferentiation or Lineage reprogramming)、分化誘導及び細胞の運命変更(Cell fate reprogramming)等を指す。
閉鎖系内で誘導される細胞は、予め閉鎖系外で誘導因子を導入された細胞であってもよい。あるいは、閉鎖系内の培地に誘導因子を添加し、閉鎖系内で培養されている誘導因子を導入されていない細胞に誘導因子を導入して、閉鎖系内で細胞を誘導してもよい。
閉鎖系内で誘導される細胞は、動物細胞であってもよいし、植物細胞であってもよい。
細胞は、閉鎖系内の液体培地中で誘導されてもよいし、閉鎖系内のゲル培地中で誘導されてもよい。また、細胞は、閉鎖系内で接着培養されながら誘導されてもよいし、浮遊培養されながら誘導されてもよい。閉鎖系内で細胞を誘導している間、培地は攪拌されてもよいし、攪拌されなくともよい。細胞を接着培養しながら誘導する際には、フィーダー細胞を用いてもよいし、フィーダー細胞を用いなくともよい。細胞を浮遊培養しながら誘導する際には、フィーダー細胞を用いなくともよい。
閉鎖系内で細胞は、iPS細胞等の幹細胞に誘導されてもよい。閉鎖系内で細胞は、幹細胞以外の別種の細胞に誘導されてもよい。閉鎖系内でiPS細胞及びES細胞等の幹細胞が、別種の細胞に誘導されてもよい。
閉鎖系内でiPS細胞に誘導される細胞は、血液細胞等の血液系細胞であってもよい。あるいは、閉鎖系内でiPS細胞に誘導される細胞は、繊維芽細胞、髄幹細胞、ケラチノサイト、毛乳頭細胞、口腔上皮細胞、及び体性幹前駆細胞等であってもよい。閉鎖系内で細胞は、例えば、血液系細胞、神経系細胞、心筋系細胞、上皮系細胞、間葉系細胞、肝細胞、インスリン産生細胞、網膜色素上皮細胞、及び角膜細胞に誘導されてもよい。
血液細胞は、血液から分離される。血液は、例えば末梢血及び臍帯血であるが、これらに限定されない。血液は、成年から採取されてもよいし、未成年から採取されてもよい。採血の際には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヘパリン、及び生物学的製剤基準血液保存液A液(ACD-A)液等の抗凝固剤を用いる。
血液細胞は、例えば、単核球細胞(Mono nuclear cell)、好中球、好酸球、リンパ球、マクロファージ、血液幹・前駆細胞、及び血管内皮細胞等の有核細胞であり、赤血球、及び血小板を含まない。血液細胞は、例えば血管内皮前駆細胞、血液幹・前駆細胞、T細胞、又はB細胞であってもよい。T細胞は、例えばαβT細胞である。
単核球細胞は、血液細胞の分離用媒体、及び遠心分離装置等を用いて、血液から分離される。血液細胞の分離用媒体としてFicoll(GEヘルスケア)を使用する場合の、単核球細胞の分離方法は、以下のとおりである。
低温では単核球細胞の分離精度が悪くなる傾向にあるため、遠心機を4℃から42℃好ましくは18℃に設定する。成年又は未成年のヒトから10μLから50mLの血液を採血し、血液が固まらないように血液にEDTAを含むキレート剤を加えて優しく混ぜる。また、ヒトリンパ球分離用の媒体(Ficoll-Paque PREMIUM、GEヘルスケアジャパン)を5mLずつ2本の15mLチューブに分注する。5mLの血液に対して5mLのPBSを加えて希釈し、チューブ中のヒトリンパ球分離用の媒体の上に5mLずつ重層する。この時、界面を乱さないように、希釈血液をチューブの管壁を伝わらせてゆっくりと媒体上に加える。
チューブ中の溶液を、10×gから1000×g、好ましくは400×gで、4℃から42℃好ましくは18℃で5分から2時間、好ましくは30分間遠心する。遠心後、チューブ中に白く濁った中間層が現れる。この白く濁った中間層は、単核球細胞を含んでいる。チューブ中の白く濁った中間層をピペットマンでゆっくりと回収し、新しい15mLチューブに移す。この際、下層は吸い取らないようにする。白く濁った中間層は、1本のチューブより1mL程度回収できる。2本分の中間層をまとめて1本のチューブに移す。
回収した単核球細胞に対し、1mLから48mL、好ましくは12mLのPBSを加えて、溶液をさらに10×gから1000×g、好ましくは200×g、4℃から42℃、好ましくは18℃で1分から60分、好ましくは10分間遠心する。その後、アスピレータを用いて溶液の上清を吸引して除去し、1mLから12mL、好ましくは3mLの既知組成無血清造血細胞培地(X-VIVO(登録商標)10、ロンザ)を加えて懸濁し、単核球細胞懸濁液を得る。そのうち10μLの単核球細胞懸濁液をトリパンブルーで染色して血球計算盤でカウントする。
採血管としてバキュテイナ(登録商標、BD)を使用する場合の、単核球細胞の分離方法は、以下のとおりである。
低温では単核球細胞の分離精度が悪くなる傾向にあるため、遠心機を4℃から42℃、好ましくは18℃に設定する。成年又は未成年のヒトから、採血管(バキュテイナ(登録商標)、BD)を用いて8mL採血し、転倒混和して抗凝固剤と混和する。その後、バランスを調整し、溶液を4℃から42℃、好ましくは18℃、100×gから3000×g、好ましくは1500×gから1800×gでスイングロータで1分から60分、好ましくは20分間遠心する。遠心後、血漿層である上層を取り除き、ピペッティングして単核球層とゲルに張り付いている血球を懸濁して懸濁液を得る。得られた懸濁液を、別の15mLチューブに移す。
15mLチューブの懸濁液に1mLから14mL、好ましくは12mLのPBSを加えて、懸濁液を4℃から42℃、好ましくは18℃、100×gから3000×g、好ましくは200×gで1分から60分、好ましくは5分間遠心する。遠心後、上清をアスピレータで除去する。また、溶血剤(PharmLyse(登録商標)、10倍濃度、BD)を滅菌水で1倍濃度に希釈する。15mLチューブ中のペレットをタッピングでほぐし、1mLから14mL、好ましくは1mLの溶血剤を加える。その後、室温で遮光し、1分間から60分間、好ましくは1分間溶液を静置する。
次に、15mLチューブに1mLから14mL、好ましくは12mLのPBSを加えて、4℃から42℃、好ましくは室温で、100×gから3000×g、好ましくは200×gで1分から60分、5分間遠心する。遠心後、上清をアスピレータで除去し、1mLから15mL、好ましくは3mLの既知組成無血清造血細胞培地(X-VIVO(登録商標)10、ロンザ)を加えて懸濁し、単核球細胞懸濁液を得る。そのうち10μLの単核球細胞懸濁液をトリパンブルーで染色して血球計算盤でカウントする。
血液から単核球細胞を分離する方法は、上記の方法に限られず、例えば、透析膜を使用して、血液から単核球を分離してもよい。また、全血単核球濃縮用ピュアセルセレクトシステム(登録商標、PALL)、血球細胞除去用浄化器(セルソーバE、登録商標、旭化成)、及び血小板製剤用白血球除去フィルター(セパセルPL、登録商標、PLX-5B-SCD、旭化成)等のフィルターも使用可能である。
単核球細胞は、赤血球を重力沈降又は遠心分離することにより有核細胞を分離することが可能な赤血球沈降剤を用いて分離されてもよい。赤血球沈降剤の例としては、HetaSep(登録商標、STEMCELL Technologies)及びHES40(NIPRO)が挙げられる。
また、単核球細胞としては、Cellular Technology Limited社から販売されているCTL-UP1や、Sanguine Biosciences社のPBMC-001等を使用してもよい。
あるいは、血液細胞としては、セルバンカー1、ステムセルバンカー GMPグレード、及びステムセルバンカー DMSOフリー GMPグレード(ゼノアック)等の細胞凍結保存液を用いて凍結保存された血液細胞を解凍して用いてもよい。
単核球細胞を解凍する際には、まず、15mLチューブに1mLから15mL、好ましくは8mLの既知組成無血清造血細胞培地(X-VIVO(登録商標)10、ロンザ)を入れておき、凍結した単核球細胞の入ったチューブを4℃から42℃、好ましくは37℃の温浴槽にいれて、単核球細胞を溶かし始める。その後、少し氷が残っている状態で、単核球細胞の入ったチューブを温浴槽から引きあげ、単核球細胞を既知組成無血清造血細胞培地の入ったチューブに移す。そのうち10μLの単核球細胞懸濁液をトリパンブルーで染色して血球計算盤でカウントする。
血液細胞は、細胞表面マーカーに基づいて分離されてもよい。血液幹・前駆細胞は、CD34が陽性である。T細胞は、CD3、CD4、CD8のいずれかが陽性である。B細胞は、CD10、CD19、CD20のいずれかが陽性である。血液幹・前駆細胞、T細胞、又はB細胞は、例えば、自動磁気細胞分離装置及び免疫磁気ビーズを用いて、血液細胞から分離される。あるいは、予め分離された単核球細胞を用意してもよい。ただし、細胞表面マーカーに基づいて分離されていない血液細胞を用いてもよい。
CD34陽性細胞は、幹・前駆細胞であり、リプログラミングされやすい傾向にある。また、CD3陽性細胞であるT細胞を用いてiPS細胞を作製すると、T細胞由来のiPS細胞はTCRリコンビネーションの型を保持しているので、T細胞に効率的に分化誘導できる傾向にある。
接着培養されている細胞に、誘導因子を導入する。あるいは、ゲル培地で浮遊培養されている細胞に、誘導因子を導入する。誘導因子はRNAであってもよい。誘導因子は、センダイウイルスに含まれていてもよい。あるいは、誘導因子は、トランスフェクションにより細胞に導入されてもよい。誘導因子はDNAであってもよい。誘導因子は、プラスミドに含まれていてもよい。
誘導因子は、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、及びレトロウイルスに含まれていてもよい。
誘導因子はタンパク質であってもよい。
センダイウイルスとしては、CytoTune(登録商標、Invitrogen)が使用可能である。センダイウイルスの力価(タイター)の指標としては、感染多重度(MOI)が挙げられる。センダイウイルスのMOIは、例えば、0.1から100.0、あるいは1.0から50.0である。
細胞を幹細胞に誘導する場合、例えば細胞に導入される誘導因子は、OCT3/4のmRNA、SOX2のmRNA、KLF4のmRNA、及びc-MYCのmRNAを含む。誘導因子として、OCT4を改良したM3Oを使用してもよい。また、誘導因子は、LIN28A、FOXH1、LIN28B、GLIS1、p53-dominant negative、p53-P275S、L-MYC、NANOG、DPPA2、DPPA4、DPPA5、ZIC3、BCL-2、E-RAS、TPT1、SALL2、NAC1、DAX1、TERT、ZNF206、FOXD3、REX1、UTF1、KLF2、KLF5、ESRRB、miR-291-3p、miR-294、miR-295、NR5A1、NR5A2、TBX3、MBD3sh、TH2A、TH2B、及びP53DDからなる群から選択される少なくとも一つの因子のmRNAをさらに含んでいてもよい。これらのmRNAは、TriLinkから入手可能である。
誘導因子に含まれるmRNAは、プソイドウリジン(Ψ)、5-メチルシトシン(m5C)、5-メチルウリジン(5meU又はm5U)、N1-メチルシュードウリジン(me1Ψ)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-ヒドロキシメチルウリジン(5hmU)、5-フォーミルウリジン(5fU)、5-カルボキシメチルエステルウリジン(5camU)、チエノグアノシン(thG)、N4-メチルシチジン(me4C)、5-メチルシチジン(m5C)、5-メチオキシチジン(5moC)、5-ヒドロキシメチルシチジン(5hmC)、5-ヒドロキシシチジン(5hoC)、5-フォルムシチジン(5fC)、5-カルボキシシチジン(5caC)、N6-メチル-2-アミノアデノシン(m6DAP)、ジアミノプリン(DAP)、2’-O-メチルウリジン(Um又はm2’-OU)、2-チオウリジン(s2U)、及びN6-メチルアデノシン(m6A)からなる群から選択される少なくとも1つで修飾されていてもよい。
シトシンは5-メチルシトシン(m5C)で置換されてもよい。ウラシルはシュードウラシルで置換されてもよい。
誘導因子に含まれるmRNAは、ポリアデニル化されていてもよい。
誘導因子に含まれるmRNAは、インビトロで転写される(IVT)RNAのポリアデニル化によって調製されてもよい。mRNAは、ポリ(A)末端をコードするDNAテンプレートを用いることによって、IVTの間にポリアデニル化されてもよい。mRNAがキャッピングされてもよい。細胞における発現の効率性を最大化するために、大部分のmRNA分子がキャップを含有することが好ましい。mRNAは5’cap[m7G(5’)ppp(5’)G]構造を有していてもよい。当該配列はmRNAを安定化させ、転写を促進させる配列である。5’triphosphateをもつmRNAからは、脱リン酸化処理により5’triphosphateを取り除いてもよい。mRNAはAnti-Reverse Cap Analog(ARCA)として[3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G]を有していてもよい。ARCAは転写開始点より前に挿入される配列であり、転写されるmRNAの効率は二倍となる。mRNAはPolyAテールを有していてもよい。
誘導因子に含まれるmRNAは、リボヌクレアーゼIII(RNaseIII)で処理されていてもよい。
また、誘導因子に含まれるmRNAは、自己増殖能を持つリプリケイティブRNAであってもよい。リプリケイティブRNAとは、自己増殖能を持つRNAであり、通常のRNAと異なり、RNAの複製に必要なタンパク質を発現させる能力を併せ持っている。リプリケイティブRNAはアルファウイルスの一種であるベネズエラ馬脳炎(VEE)ウイルス由来である。リプリケイティブRNAを細胞にトランスフェクションすると、リプログラミング因子を作り続けるRNAを細胞に発現させることができるため、誘導因子RNAを細胞に複数回導入することを省くことが可能となる。
リプリケイティブRNAの配列は、アルファウイルスレプリコンRNA、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ピクスナ(Pixuna)ウイルス、及び西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)からなる群から選択されるアルファウイルスから得られる配列を含んでいてよい。
また、リプリケイティブRNAは、シンドビス(Sindbis)ウイルス、セムリキ森林(Semliki Forest)ウイルス、ミデルブルグ(Middelburg)ウイルス、チクングニア(Chikungunya)ウイルス、オニョンニョン(O’nyong-nyong)ウイルス、ロスリバー(Ross River)ウイルス、バーマフォレスト(Barmah Forest)ウイルス、ゲタ(Getah)ウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、ウナ(Una)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ワタロア(Whataroa)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、Kyzylagachウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、及びバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスからなる群から選択されるアルファウイルスから得られる配列を含んでいてよい。
リプリケイティブRNAは、例えば、5’から3’に向かって、(VEE RNAレプリカーゼ)-(プロモーター)-(RF1)-(自己切断型ペプチド)-(RF2)-(自己切断型ペプチド)-(RF3)-(IRESもしくはコアプロモーター)-(RF4)-(IRESもしくは任意のプロモーター)-(任意に選択可能なマーカー)-(VEE 3’UTR及びポリAテール)-(任意に選択可能なマーカー)-プロモーターを含んでいる。上記のRF1-4は、多能性細胞への細胞の脱分化を誘導する因子である。上記のRF2-3、RF3-4、RF4は任意である。上記のRF1-4は、OCT-4、KLF4、SOX-2、c-MYC、LIN28A、LIN28B、GLIS1、FOXH1、p53-dominant negative、p53-P275S、L-MYC、NANOG、DPPA2、DPPA4、DPPA5、ZIC3、BCL-2、E-RAS、TPT1、SALL2、NAC1、DAX1、TERT、ZNF206、FOXD3、REX1、UTF1、KLF2、KLF5、ESRRB、miR-291-3p、miR-294、miR-295、NR5A1、NR5A2、TBX3、MBD3sh、TH2A、及びTH2Bからなる群から選択されてもよい。
誘導因を導入される細胞が培養される培地は、誘導因を導入される細胞の種類に応じて適宜選択される。また、誘導因を導入された細胞が培養される培地は、誘導因を導入された細胞の種類に応じて適宜選択される。
上述したように、培地は、例えば、bFGF等の成長因子を含まなくてもよいし、あるいは、成長因子を低濃度で含んでいてもよい。また、培地は、tgf-βを含まないか、tgf-βを低濃度で含んでいてもよい。培地は、カドヘリン、ラミニン、フィブロネクチン、及びビトロネクチンからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでいてもよい。
培地がゲル培地である場合、培地は、上述したように少なくとも1種の高分子化合物を含んでいてもよい。また、ゲル培地は、メチルセルロースを含んでいてもよい。あるいは、ゲル培地は、上述したように、温度感受性ゲルを含んでいてもよい。
閉鎖系内で細胞を誘導している間、閉鎖系内の培地の温度は、例えば、上述した閉鎖系内で細胞を培養している間の温度と同様である。
細胞が誘導される閉鎖系に入れられる培地のpHは、例えば、上述した細胞が培養される閉鎖系に入れられる培地のpHと同様である。
閉鎖系内で細胞を誘導している間、閉鎖系内に二酸化炭素ガス、窒素ガス、及び酸素ガスの少なくともいずれか、あるいは全てを供給しなくともよい。また、閉鎖系内で細胞を誘導している間、閉鎖系内の二酸化炭素濃度を制御しなくともよい。閉鎖系内で細胞を誘導している間、閉鎖系外の二酸化炭素濃度を制御しなくともよい。例えば、閉鎖系を、二酸化炭素(CO2)インキュベーター内に配置しなくともよい。ただし、閉鎖系を、二酸化炭素(CO2)インキュベーター内に配置することは妨げられない。
閉鎖系内で細胞を誘導する際には、閉鎖系内に空気層等のガス層がないか、少ないことが好ましい。そのため、閉鎖系内にはガス層が残らないか、少なくなるように、閉鎖系内に培地が充填されることが好ましい。
閉鎖系内で細胞を誘導している間、培地は、外気に触れないように、閉鎖系内で循環させてもよい。閉鎖系内において、細胞懸濁液と、循環する培地との間に、半透膜を配置し、半透膜を介して、培地の有効成分を細胞懸濁液に浸透させてもよい。
閉鎖系内で、細胞は、例えば、1日以上、14日以上、あるいは30日以上培養されながら誘導される。ただし、継代、培地の交換、及び培地の追加の際には、閉鎖系は開放されてもよい。
なお、細胞の播種と継代に間に、培地の交換及び追加を行わなくともよい。この場合、播種と継代の間では、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養されながら誘導される。播種と継代の間、例えば、1日以上、5日以上、あるいは10日以上、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養されながら誘導される。
細胞の継代と継代に間に、培地の交換及び追加を行わなくともよい。この場合、継代と継代の間では、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養されながら誘導される。継代と継代の間、例えば、1日以上、5日以上、あるいは10日以上、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養されながら誘導される。
あるいは、細胞の播種と継代に間に、閉鎖系を開放し、培地の追加又は交換をしてもよい。また、細胞の継代と継代に間に、閉鎖系を開放し、培地の追加又は交換をしてもよい。培地の追加又は交換は、1日以上おき、2日以上おき、あるいは5日以上おきにしてもよい。培地に追加又は交換と継代のとき以外は、閉鎖系が全く開放されることなく、閉鎖系内の細胞は培養されながら誘導される。
誘導因子を導入された細胞がiPS細胞に誘導(リプログラミング)されたか否かは、例えば、細胞の形態から確認することができる。あるいは、細胞がiPS細胞に誘導されたか否かは、サイトフローメータで、未分化であることを示す細胞表面マーカーであるTRA-1-60、TRA-1-81、SSEA-1、及びSSEA5から選択される少なくとも一つの表面マーカーが陽性であるか否かを分析することにより行うことができる。TRA-1-60は、iPS/ES細胞に特異的な抗原であり、分化細胞では検出されない。iPS細胞はTRA-1-60陽性画分からのみできることから、TRA-1-60陽性細胞はiPS細胞の種と考えられる。
実施形態に係る内部で細胞を培養又は誘導するための閉鎖系は、例えば、図1に示すような細胞培養器を備えていてもよい。細胞培養器は、培養成分が透過可能な培養成分透過部材10と、培養成分透過部材10の一方の面を覆う、細胞含有培地を保持し、細胞を培養するための培養槽30と、培養成分透過部材10の他方の面を覆う、培地を保持するための培地保持槽40と、を備える。培養槽30内の細胞含有培地は、培養成分透過部材10に接触可能である。また、培地保持槽40内の培地は、培養成分透過部材10に接触可能である。培地保持槽40内の培地は、細胞を含有していない。
培養成分透過部材10は、培地保持槽40内の培地の有効成分を、培養槽30内の細胞含有培地中に透過させる。また、培養成分透過部材10は、培養槽30内の細胞含有培地中の老廃物を、培地保持槽40内の培地中に透過させてもよい。培養成分透過部材10としては、例えば、半透膜及びメッシュが使用可能である。半透膜は、透析膜を含む。
培養成分透過部材10が半透膜である場合、半透膜の分画分子量は、例えば、0.1KDa以上、10KDa以上、あるいは50KDa以上である。半透膜は、例えば、セルロースエステル、エチルセルロース、セルロースエステル類、再生セルロース、ポリスルホン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル系ポリマーアロイ、ポリカーボネート、ポリアミド、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、銅アンモニウムレーヨン、鹸化セルロース、ヘモファン膜、フォスファチジルコリン膜、及びビタミンEコーティング膜等からなる。
培養成分透過部材10がメッシュである場合、メッシュは、培養槽30内で培養される細胞又は細胞塊よりも小さい孔を有する。これにより、培養槽30内の細胞又は細胞塊が培地保持槽40内に移動することが妨げられる。メッシュの材料は、例えば樹脂及び金属であるが、特に限定されない。培養成分透過部材10の表面は、細胞非接着性であってもよい。
実施形態に係る細胞培養器は、培養成分透過部材10を挟む、それぞれ開口が設けられた培養側プレート21及び培地側プレート22と、をさらに備えていてもよい。培養側プレート21及び培地側プレート22は、培養槽30内の細胞含有培地及び培地保持槽40内の培地の圧力により、培養成分透過部材10が変動することを抑制するよう、培養成分透過部材10を挟み込むようにして、培養成分透過部材10を保持する。これにより、圧力変動により、培養成分透過部材10が培養槽30あるいは培地保持槽40の内壁に接触することが抑制される。培養側プレート21及び培地側プレート22は、培養槽30内の細胞含有培地及び培地保持槽40内の培地から受ける圧力で変動しない硬さを有する。培養側プレート21及び培地側プレート22の材料は、例えば樹脂及び金属であるが、特に限定されない。培養側プレート21の表面は、細胞非接着性であってもよい。なお、培養成分透過部材10が培養槽30内の細胞含有培地及び培地保持槽40内の培地から受ける圧力により変動しない場合、培養側プレート21及び培地側プレート22は省略されてもよい。
培養側プレート21には、培養槽30内の細胞含有培地が培養成分透過部材10に接することができるよう、開口が設けられている。また、培地側プレート22には、培地保持槽40内の培地が培養成分透過部材10に接することができるよう、開口が設けられている。培養側プレート21の開口を介して、培養槽30内の細胞含有培地の成分及び培地保持槽40内の培地の成分が培養成分透過部材10を透過可能である。培養側プレート21及び培地側プレート22のそれぞれに設けられた開口の形状は、例えば円であるが、特に限定されない。培養側プレート21及び培地側プレート22のそれぞれに設けられた開口は、培養成分透過部材10が変動することを抑制できる範囲内の大きさを有する。開口は、例えば、格子状に、あるいはランダムに、培養側プレート21及び培地側プレート22のそれぞれに設けられる。
培養側プレート21は、例えば黒色等の濃色を有していてもよい。培養側プレート21が濃色を有していると、培養側プレート21を背景として、細胞含有培地中の細胞を高いコントラストで視認したり、画像化したりすることが可能である。培養側プレート21の開口が設けられていない部分の面積等の大きさが、細胞あるいは細胞塊よりも大きいと、培養側プレート21の開口が設けられていない部分を背景として細胞あるいは細胞塊を高いコントラストで視認したり、画像化したりすることが容易になる。ただし、細胞あるいは細胞塊に照射する光を調整することにより、培養成分透過部材10や培養側プレート21が透明であっても、細胞あるいは細胞塊を視認したり、画像化したりすることも可能である。
培養槽30と、培地保持槽40と、は、ネジ、ピンあるいは電磁石等で固定されてもよい。培養槽30の接触部と、培養側プレート21の一方の面の少なくとも一部と、が密着する。培養側プレート21の他方の面の少なくとも一部と、培養成分透過部材10の一方の面の少なくとも一部と、が密着する。培養成分透過部材10の他方の面の少なくとも一部と、培地側プレート22の一方の面の少なくとも一部と、が密着する。培地側プレート22の他方の面の少なくとも一部と、培地保持槽40の接触部と、が密着する。密着させる際には、適宜、パッキン等を使用してもよい。パッキンは、例えば、培養成分透過部材10と培養槽30の間に配置されてもよい。パッキンは、培養成分透過部材10の外周と培養槽30の間に配置されてもよい。培養成分透過部材10と培養槽30の間に配置されるパッキンの外径は、培養成分透過部材10の外径より大きくてもよい。また、パッキンは、例えば、培養成分透過部材10と培地保持槽40の間に配置されてもよい。パッキンは、培養成分透過部材10の外周と培地保持槽40の間に配置されてもよい。培養成分透過部材10と培地保持槽40の間に配置されるパッキンの外径は、培養成分透過部材10の外径より大きくてもよい。
培養槽30は、例えば、筐体31及び筐体31を覆うカバー32を備える。筐体31及びカバー32は一体化していてもよい。培養槽30の内壁には、細胞が接着しないよう、poly-HEMA(poly 2-hydroxyethyl methacrylate)等の細胞非接着性物質をコーティングして、培養槽30の内壁を細胞非接着性にしてもよい。筐体31には、培養側プレート21の開口を介して培養成分透過部材10を露出させるための開口131が設けられている。図2に示すように、培養槽30のカバー32には、培養槽30内の細胞含有培地を観察可能な窓132が設けられている。窓132の材料としては、例えば、ガラス及び樹脂が使用可能である。
実施形態に係る細胞培養器は、窓132を加熱及び冷却するための、温度調節部を備えていてもよい。温度調節部は、窓132に配置され、窓を加熱する透明導電膜等の透明ヒーターであってもよい。あるいは、実施形態に係る細胞培養器は、培養槽30の筐体31又はカバー32を加熱及び冷却するための温度調節部を備えていてもよい。筐体31、カバー32、及び窓132のいずれかを温度調節部で温度調節することにより、培養槽30内の細胞含有培地を温度調節することが可能である。実施形態に係る細胞培養器は、培養槽30内の細胞含有培地の温度を測る温度計をさらに備えていてもよい。温度計は、細胞含有培地に接触することなく培養槽30の温度に基づいて細胞含有培地の温度を測ってもよいし、細胞含有培地に接触して細胞含有培地の温度を直接測ってもよい。この場合、細胞含有培地の温度が所定の温度となるよう、温度調節部がフィードバック制御されてもよい。
図1に示すように、培養槽30には、培養槽30内に流体を供給するための供給口231と、培養槽30内の流体を排出するための排出口331と、が、設けられている。例えば、供給口231に、流体を供給するためのバッグ、蛇腹及びシリンジ等の供給器を接続可能な図2に示すプラグ33が挿入される。供給器は、ポンプ等の流体機械であってもよい。ただし、図1に示す供給口231に、注入装置が直接接続されてもよい。供給器は供給口231に着脱可能であり、供給器が供給口231に接続されていない場合は、供給口231は密閉可能であり、供給口231を介した培養槽30内外の流体の交換が生じない。
プラグ33は、ニードルレスコネクターであってもよい。ニードルレスコネクターは、スプリットセプタム型であってもよいし、メカニカルバルブ型であってもよい。プラグ33がスプリットセプタム型のニードレスコネクターである場合、プラグ33は、スリットが設けられたディスク弁を備える。培養槽30内に流体を供給する際には、ディスク弁のスリットに供給器あるいは供給器に接続された流路が挿入される。スリットに供給器あるいは供給器に接続された流路が挿入されていない場合、スリットは密閉する。スリットに供給器あるいは供給器に接続された流路が挿入された場合、ディスク弁は供給器あるいは供給器に接続された流路の外周に密着する。したがって、プラグ33に供給器あるいは供給器に接続された流路が挿入された場合も、プラグ33を介して外気が培養槽30内に進入しない。ただし、プラグ33は、針が刺入されるコネクターであってもよい。
また、例えば、排出口331に、培養槽30内の流体を排出するためのバッグ、蛇腹及びシリンジ等の排出器が接続可能な図2に示すプラグ34が挿入される。排出器は、ポンプ等の流体機械であってもよい。ただし、図1に示す排出口331に、排出器が直接接続されてもよい。排出器は、能動的に培養槽30内の流体を吸引してもよい。あるいは、排出器は、培養槽30内の圧力に応じて受動的に内部容積を増加させ、培養槽30から押し出された流体を受容してもよい。排出器は排出口331に着脱可能であり、排出器が排出口331に接続されていない場合は、排出口331は密閉可能であり、排出口331を介した培養槽30内外の流体の交換が生じない。プラグ34は、ニードルレスコネクターであってもよい。ニードルレスコネクターは、スプリットセプタム型であってもよいし、メカニカルバルブ型であってもよい。プラグ34に排出器あるいは排出器に接続された流路が挿入された場合も、プラグ34を介して外気が培養槽30内に進入しない。ただし、プラグ34は、針が刺入されるコネクターであってもよい。
例えば、培養槽30が、培養側プレート21、培養成分透過部材10、及び培地側プレート22を間に挟んで培地保持槽40に密着している状態であり、培養槽30内に空気が入っている場合、排出口331から培養槽30内の空気を排出しながら、供給口231から培養槽30内に細胞含有培地を注入することにより、図2に示す培養槽30内に細胞含有培地を入れることが可能である。また、培養槽30内の空気層を完全になくすことも可能である。ただし、培養槽30内に空気層が残っていてもよい。培養槽30内に既に細胞含有培地が入っている場合、図1に示す排出口331から培養槽30内の細胞含有培地を排出しながら、供給口231から培養槽30内に別の細胞含有培地を注入することにより、図2に示す培養槽30内の細胞含有培地の少なくとも一部を置換することが可能である。
実施形態に係る細胞培養器は、培養槽30を保持可能であり、培養槽30の傾きを調整可能な培養槽保持部材をさらに備えていてもよい。培養槽30の傾きを調整することにより、培養槽30内の空気等のガスを排出することが容易になる。
培養槽30の供給口231及び排出口331は、栓等により閉塞可能である。あるいは、培養槽30の供給口231及び排出口331にそれぞれ接続されるプラグ33及びプラグ34が閉塞可能である。また、あるいは、培養槽30の供給口231は供給器に接続されることによって、外部から遮蔽され、培養槽30の排出口331は排出器に接続されることによって、外部から遮蔽されることが可能である。供給口231及び排出口331が閉塞され、図2に示すように培養槽30が培地保持槽40に密着させられた場合、培養槽30内は培養槽30外の空気から密閉される。これにより、培養槽30内に外気が進入することが抑制され、培養槽30内の細胞含有培地のpHの変化が抑制され、所定の範囲内に保たれる。なお、本発明者らの知見により、細胞は、完全に閉鎖された密閉空間で培養可能であるため、培養槽30内に、二酸化炭素ガス、窒素ガス、及び酸素ガス等を積極的に供給しなくともよい。そのため、培養槽30をCO2インキュベーター内に配置しなくともよい。また、密閉されている培養槽30内に、培養槽30外に存在する細胞、微生物、ウイルス、及び塵等が進入しないため、培養槽30内の清浄度が保たれる。そのため、培養槽30をクリーンルーム内に配置しなくともよい。培養槽30は、ガス非透過性物質で包埋されていてもよい。換言すれば、培養槽30は、ガス非透過性物質中に埋め込まれていてもよい。
図1に示す培地保持槽40には、培地側プレート22の開口を介して培養成分透過部材10を露出させるための図3に示す開口140が設けられている。開口140は、図1に示す培養成分透過部材10で覆われる。また、図3に示す培地保持槽40には、培地保持槽40内に流体を導入するための導入口240と、培地保持槽40内の流体を排出するための排出口340が設けられている。さらに、培地保持槽40内には、複数の整流板41が配置されていてもよい。複数の整流板41は、例えば、培地保持槽40の対向する内壁から、交互に突出するように配置されている。
例えば、培地保持槽40が、図1に示す培地側プレート22、培養成分透過部材10、及び培養側プレート21を間に挟んで培養槽30に密着している状態であり、培地保持槽40内に空気が入っている場合、図3に示す排出口340から培地保持槽40内の空気を排出しながら、導入口240から培地保持槽40内に細胞培地を注入することにより、培地保持槽40内に細胞培地を入れることが可能である。また、培地保持槽40内に既に培地が入っている場合、排出口340から培地保持槽40内の細胞培地を排出しながら、導入口240から培地保持槽40内に細胞培地を注入することにより、培地保持槽40内に細胞培地を流すことが可能である。
複数の整流板41が培地保持槽40内に配置されている場合、培地保持槽40内において、培地は、導入口240から排出口340に向かって、複数の整流板41に沿って流れる。そのため、培地の成分が、培養成分透過部材10に接触する機会が確保される。
あるいは、図4に示すように、培地保持槽40の内壁に、図3に示す導入口240に連通する1又は複数の吐出口241を設けてもよい。図4に示す複数の吐出口241は、例えば、横一列に設けられる。複数の吐出口241の数や、配列は、均等に配置されてもよいし、ランダムに配置されてもよい。複数の吐出口241の数や、配列は、培地の粘度等の特性に応じて設定される。図5に示すように、培地を複数の吐出口241から吐出することにより、培地保持槽40内において、培養成分透過部材10に接触する培地の均一性を向上することが可能である。
培地保持槽40の内壁には、1又は複数の吐出口241が設けられた吐出ブロック145が挿入可能であってもよい。例えば、複数の吐出口241の数や配列等のパターンが異なる吐出ブロック145を用意して、培地や培養される細胞の特性に応じて使い分けてもよい。培地保持槽40の内壁の重力に対して上側は、上方又は下方に屈曲又は湾曲していてもよい。培地保持槽40の内壁の重力に対して下側は、上方又は下方に屈曲又は湾曲していてもよい。
図4及び図5に示すように、培地保持槽40の内壁の複数の吐出口241近傍には、開口242が設けられていてもよい。複数の吐出口241から吐出された培地が培地保持槽40内に貯まるにつれて、培地保持槽40内の空気が開口242から外部に流出する。培地を培地保持槽40に入れた後、開口242は密閉してもよい。
図3に示すように、培地保持槽40の導入口240と排出口340は、培地流路200で接続され、培地保持槽40と、培地流路200と、の間を培地が循環可能であってもよい。培地流路200は、樹脂チューブやシリコンチューブ等を備えていてもよい。培地流路200は、ガス非透過性物質で包埋されていてもよい。換言すれば、培地流路200は、ガス非透過性物質中に埋め込まれていてもよい。例えば、培地流路200は、樹脂、ガラス、及び金属等からなる部材中に設けられた孔であってもよい。この場合、例えば、凹部が設けられた部材同士を貼りあわせることにより、培地流路200が形成される。培地流路200には、培地を培地保持槽40内に導入し、培地を培地保持槽40内から排出するための流体機械が設けられていてもよい。流体機械は、例えば、培地を培地保持槽40内に導入するための導入用流体機械51と、培地を培地保持槽40内から排出するための排出用流体機械52と、を備える。
図1に示す導入用流体機械51及び排出用流体機械52としては、容積式ポンプが使用可能である。容積式ポンプの例としては、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、及びダイヤフラムポンプを含む往復ポンプ、あるいは、ギアポンプ、ベーンポンプ、及びネジポンプを含む回転ポンプが挙げられる。ダイヤフラムポンプの例としては、チュービングポンプ及び圧電(ピエゾ)ポンプが挙げられる。チュービングポンプは、ペリスタルティックポンプと呼ばれる場合もある。また、様々な種類のポンプを組み合わせたマイクロ流体チップモジュールを用いてもよい。
ペリスタポンプ(登録商標)、チュービングポンプ、及びダイヤフラムポンプ等の密閉型ポンプを用いると、図3に示す培地流路200内部の培地にポンプが直接接触することなく、送液することが可能である。あるいは、導入用流体機械51及び排出用流体機械52としては、シリンジポンプを使用してもよい。密閉型ポンプ以外のポンプであっても、加熱滅菌処理等により再利用が可能である。
導入用流体機械51が密閉型ポンプである場合、図1に示すように、導入用流体機械51は、ポンプヘッド151と、モーター等の駆動部251と、を備える。ポンプヘッド151と、駆動部251と、は、着脱可能である。ポンプヘッド151は、チューブ等の培地流路を外側からしごくローラーを備える。駆動部251は、ポンプヘッド151のローラーを回転させる。排出用流体機械52が密閉型ポンプである場合、排出用流体機械52は、ポンプヘッド152と、モーター等の駆動部252と、を備える。ポンプヘッド152と、駆動部252と、は、着脱可能である。ポンプヘッド152は、チューブ等の培地流路を外側からしごくローラーを備える。駆動部252は、ポンプヘッド152のローラーを回転させる。
図3に示すように、培地流路200には、培地が入ることができる培地タンク60が設けられていてもよい。培地流路200から培地タンク60に入った培地は、再び、培地流路200に流れ出ていく。培地タンク60を設けることにより、培地流路200と培地保持槽40との間を循環する培地の容量を大きくすることが可能である。
培地タンク60には、培地タンク60内に流体を供給するための供給口と、培地タンク60内の流体を排出するための排出口と、が、設けられていてもよい。例えば、培地タンク60の供給口に、流体を供給するためのバッグ、蛇腹及びシリンジ等の供給器を接続可能な図6に示すプラグ61が挿入される。供給器は、ポンプ等の流体機械であってもよい。ただし、培地タンク60の供給口に、供給器が直接接続されてもよい。供給器は供給口に着脱可能であり、供給器が供給口に接続されていない場合は、供給口は密閉可能であり、供給口を介した培地流路200内外の流体の交換が生じない。あるいは、供給口は、供給器に接続されることによって、外部から遮蔽される。プラグ61は、ニードルレスコネクターであってもよい。ニードルレスコネクターは、スプリットセプタム型であってもよいし、メカニカルバルブ型であってもよい。プラグ61に供給器あるいは供給器に接続された流路が挿入された場合も、プラグ61を介して外気が培地タンク60内に進入しない。ただし、プラグ61は、針が刺入されるコネクターであってもよい。
また、例えば、培地タンク60の排出口に、培地タンク60内の流体を排出するためのバッグ、蛇腹及びシリンジ等の排出器が接続可能なプラグ62が挿入される。排出器は、ポンプ等の流体機械であってもよい。ただし、培地タンク60の排出口に、排出器が直接接続されてもよい。排出器は、能動的に培地流路内の流体を吸引してもよい。あるいは、排出器は、培地流路内の圧力に応じて受動的に内部容積を増加させ、培地流路から押し出された流体を受容してもよい。排出器は排出口に着脱可能であり、排出器が排出口に接続されていない場合は、排出口は密閉可能であり、排出口を介した培地流路200内外の流体の交換が生じない。あるいは、排出口は、排出器に接続されることによって、外部から遮蔽される。プラグ62は、ニードルレスコネクターであってもよい。ニードルレスコネクターは、スプリットセプタム型であってもよいし、メカニカルバルブ型であってもよい。プラグ62に排出器あるいは排出器に接続された流路が挿入された場合も、プラグ62を介して外気が培地タンク60内に進入しない。ただし、プラグ62は、針が刺入されるコネクターであってもよい。
例えば、図1に示す培地保持槽40が、培地側プレート22、培養成分透過部材10、及び培養側プレート21を間に挟んで培養槽30に密着している状態であり、図3に示す培地保持槽40、培地流路200及び培地タンク60内に空気が入っている場合、培地タンク60の排出口から培地保持槽40、培地流路200及び培地タンク60内の空気を排出しながら、培地タンク60の供給口から培地保持槽40、培地流路200及び培地タンク60内に培地を注入することにより、培地保持槽40、培地流路200及び培地タンク60内に培地を入れることが可能である。培地保持槽40、培地流路200及び培地タンク60内の空気層を完全になくしてもよいし、空気層が残っていてもよい。
培地流路200に、培地が充填された供給器と空の排出器を接続し、流体機械を駆動させて、供給器から培地流路200に培地を導入させ、排出器に空気を導入させてもよい。この際、供給器が能動的に培地流路200に培地を注入してもよいし、流体機械の駆動により低圧になった培地流路200に供給器内の培地が吸引され、供給器内の内部容積が受動的に減少しもよい。また、排出器が能動的に培地流路200内の空気を吸引してもよいし、流体機械の駆動により高圧になった培地流路200内の空気が排出器に流入し、排出器の内部容積が受動的に増加してもよい。
また、培地保持槽40、培地流路200及び培地タンク60内に既に培地が入っている場合、培地タンク60の排出口から培地タンク60内の培地を排出しながら、培地タンク60の供給口から培地タンク60内に培地を注入することにより、培地タンク60内に細胞培地を置換することが可能である。
培地流路200に、培地が充填された供給器と空の排出器を接続し、流体機械を駆動させて、供給器から培地流路200に新しい培地を導入させ、排出器に古い培地を導入させてもよい。この際、供給器が能動的に培地流路200に新しい培地を注入してもよいし、流体機械の駆動により低圧になった培地流路200に供給器内の新しい培地が吸引され、供給器内の内部容積が受動的に減少しもよい。また、排出器が能動的に培地流路200内の古い培地を吸引してもよいし、流体機械の駆動により高圧になった培地流路200内の古い培地が排出器に流入し、排出器の内部容積が受動的に増加してもよい。
培地流路200及び培地保持槽40内に培地を供給するための供給口と、培地流路200及び培地保持槽40内の空気を排出するための排出口は、培地流路200の培地タンク60が設けられた部分以外に設けられていてもよい。例えば、培地流路200及び培地保持槽40内に培地を供給するための供給口と、培地流路200及び培地保持槽40内の空気を排出するための排出口は、培地流路200に設けられていてもよい。
実施形態に係る細胞培養器は、培地保持槽40、培地流路200、及び培地タンク60の少なくともいずれかを加熱及び冷却するための、温度調節部を備えていてもよい。培地保持槽40、培地流路200、及び培地タンク60のいずれかを温度調節部で温度調節することにより、培地を温度調節することが可能である。実施形態に係る細胞培養器は、培地の温度を測る温度計をさらに備えていてもよい。温度計は、培地に接触することなく培地保持槽40、培地流路200、及び培地タンク60の少なくともいずれかの温度に基づいて培地の温度を測ってもよいし、培地に接触して培地の温度を直接測ってもよい。この場合、培地の温度が所定の温度となるよう、温度調節部がフィードバック制御されてもよい。
図3に示すように、培地保持槽40、培地流路200、ポンプヘッド151、ポンプヘッド152、及び培地タンク60は、流路ケース70内に格納されてもよい。流路ケース70内において、培地保持槽40、培地流路200、ポンプヘッド151、ポンプヘッド152、及び培地タンク60は、ガス非透過性物質中に完全に埋め込まれていてもよい。培地流路200は、ガス非透過性物質中にトンネル状に設けられていてもよい。例えば、流路ケース70には、ポンプヘッド151に軸を挿入するための穴、ポンプヘッド152に軸を挿入するための穴、培地タンク60の供給口にプラグ61を挿入するための穴、及び培地タンク60の排出口にプラグ62を挿入するための穴が設けられている。培地タンク60の供給口にプラグ61を挿入するための穴、及び培地タンク60の排出口にプラグ62を挿入するための穴は、塞ぐことが可能であってもよい。
図7に示すように、導入用流体機械51の駆動部251及び排出用流体機械52の駆動部252は、基板状の駆動部保持部材80に配置されてもよい。駆動部保持部材80には、培地タンク60の供給口にプラグ61を挿入するための穴、及び培地タンク60の排出口にプラグ62を挿入するための穴82が設けられている。培地タンク60の供給口にプラグ61を挿入するための穴、及び培地タンク60の排出口にプラグ62を挿入するための穴82は、塞ぐことが可能であってもよい。
駆動部保持部材80は、図1に示すパッキン90を介して、流路ケース70に密着させられる。パッキン90は、流路ケース70と駆動部保持部材80の接触部から流路ケース70内に空気が進入することを抑制する。
培地を培地保持槽40内に導入し、培地を培地保持槽40内から排出するための流体機械を流体機械用外気遮断部材で覆ってもよい。流体機械用外気遮断部材は、例えば、図7に示すように、駆動部保持部材80に配置された導入用流体機械51の駆動部251を覆う導入用流体機械用外気遮断部材351と、駆動部保持部材80に配置された排出用流体機械52の駆動部252を覆う排出用流体機械用外気遮断部材352と、を備える。
流路ケース70と、駆動部保持部材80と、は、着脱可能である。駆動部保持部材80を流路ケース70に密着させ、培地タンク60の供給口にプラグ61を挿入するための穴、及び培地タンク60の排出口にプラグ62を挿入するための穴を塞ぎ、導入用流体機械51の駆動部251を導入用流体機械用外気遮断部材351で覆い、排出用流体機械52の駆動部252を排出用流体機械用外気遮断部材352で覆うと、流路ケース70内が外気から遮断され、流路ケース70内に外気が進入することができなくなる。そのため、流路ケース70内外のガスの交換が生じなくなる。したがって、培地保持槽40及び培地流路200内に外気が進入しなくなる。培地流路用外気遮断部材の少なくとも一部を構成する流路ケース70内を外気から遮断することにより、培地流路200がガス透過性のチューブであっても、培地保持槽40及び培地流路200内の培地のpHの変動を抑制し、所定の範囲内に保つことが可能となる。
なお、本発明者らの知見により、細胞は、完全に閉鎖された密閉空間で培養可能であるため、培地保持槽40及び培地流路200内に、二酸化炭素ガス、窒素ガス、及び酸素ガス等を積極的に供給しなくともよい。そのため、培地保持槽40及び培地流路200をCO2インキュベーター内に配置しなくともよい。また、密閉されている培地保持槽40及び培地流路200内に、培地保持槽40及び培地流路200外に存在する細胞、微生物、ウイルス、及び塵等が進入しないため、培地保持槽40及び培地流路200内の清浄度が保たれる。そのため、培地保持槽40及び培地流路200をクリーンルーム内に配置しなくともよい。培地保持槽40は、ガス非透過性物質で包埋されていてもよい。換言すれば、培地保持槽40は、ガス非透過性物質中に埋め込まれていてもよい。
流路ケース70から駆動部保持部材80を外した際、培地タンク60の供給口にプラグ61を挿入するための流路ケース70の穴、及び培地タンク60の排出口にプラグ62を挿入するための流路ケース70の穴を塞ぐことにより、流路ケース70内を密閉し、流路ケース70内部の物質が外部に流出したり、流路ケース70内に外気が進入したりすることを抑制することが可能である。
内部に培地流路200及びポンプヘッド151、152を含む流路ケース70は、使い捨て可能である。一方、駆動部251、252を保持している駆動部保持部材80は、繰り返し利用することが可能である。
例えば、図2に示す導入用流体機械51によって培地保持槽40内に送液される培地の量と、排出用流体機械52によって培地保持槽40から排出される培地の量と、が同じになるよう、導入用流体機械51及び排出用流体機械52は制御される。導入用流体機械51及び排出用流体機械52は、培地保持槽40内に、常時、培地を送液してもよいし、適宜間隔をおいて、培地を送液してもよい。
培地を、常時、培地保持槽40内に送液する場合、培地保持槽40内に送液される培地の流量は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、培地及び培地中の細胞塊を撮影装置で監視し、培地及び培地中の細胞塊の状態に応じて、培地保持槽40内に送液される培地の流量を増加させたり、減少させたりしてもよい。
また、培地保持槽40内に培地を常時送液せずに、例えば、培地の状態、培地中の細胞塊の状態、細胞数、細胞塊数、培地の濁度、及びpHの変化に応じて、培地の送液の開始及び終了をしてもよい。この場合も、培地及び培地中の細胞塊の状態に応じて、送液される培地の流量を増加させたり、減少させたりしてもよい。
攪拌されている培地中では、細胞同士がランダムに衝突し、結合して、様々な大きさの細胞塊(コロニー)が形成される場合がある。そのためコロニー間の均質性が保てない場合がある。さらに、大きすぎるコロニーにおいては、コロニーの中まで栄養や成長因子が届かず、内部から分化、細胞死してしまう場合がある。その一方で、小さすぎるコロニーは、継代培養には適さない場合がある。これに対し、図2に示す培養槽30内では、培地の流速が遅いか、培地が流動しないため、細胞同士が衝突する頻度が低い。そのため、コロニーにおいてクローナリティを維持することが可能である。したがって、例えば、細胞がiPS細胞等の幹細胞である場合、1つの細胞由来の幹細胞のクローナリティを担保することが可能である。また、幹細胞同士が衝突する頻度が低いため、幹細胞のコロニーの大きさを均質に保つことが可能である。
実施形態に係る細胞培養器は、培養槽30のカバー32の窓132を介して、培養槽30内の細胞含有培地を撮影する写真カメラやビデオカメラ等の撮影装置をさらに備えていてもよい。
実施形態に係る細胞培養器によれば、例えば、完全閉鎖系で細胞が培養されるため、培養装置からの細胞の漏れ出しによるクロスコンタミネーションのリスクを低減することが可能である。また、例えば、細胞がHIV肝炎ウイルス等のウイルスに感染している場合であっても、細胞の漏れ出しによるオペレーターへの感染のリスクを低減することが可能である。さらに、細胞培養器内の培地が、細胞培養器外の空気中の細菌、ウイルス及びカビ等にコンタミネーションするリスクを低減することが可能である。またさらに、実施形態に係る細胞培養器によれば、CO2インキュベーターを用いることなく、細胞を培養することも可能である。
なお、例えば、培地の循環が不要な場合は、図3に示す培地保持槽40に培地流路200を接続しなくともよい。また、培養槽30内で細胞は浮遊培養されてもよいし、接着培養されてもよい。細胞が接着培養される場合、図1に示す培養側プレート21の表面が細胞接着性であってもよいし、培養成分透過部材10の表面が細胞接着性であってもよい。また、実施形態に係る細胞培養器の培養槽30内で、細胞を培養しながら誘導してもよい。さらに、培地流路が培地保持槽や培養槽に接続されずに使用され、閉鎖系としての培地流路内で細胞を培養又は誘導してもよい。
閉鎖系は、図1から図7に示した細胞培養器に限定されない。例えば、閉鎖系は容器であってもよい。容器は、チューブやフラスコであってもよい。容器は、樹脂製であってもよいし、ガラス製であってもよい。容器内部を完全に閉鎖するために、容器のキャップや蓋等の周囲を、パラフィンフィルム等のフィルムで巻き付けてもよい。
(実施例1)
幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)をゲル化してゲル培地を作製した。ゲル培地のpHは、4.0から10.0の間に調整した。ゲル培地にシングルセル又は細胞塊にされたiPS細胞を2×105個/mLを添加した。15mLファルコンチューブ(登録商標、コーニング)にiPS細胞を含むゲル培地を入れた。その後、一部のファルコンチューブのキャップを固く締め、さらにファルコンチューブ及びキャップの周囲をパラフィンフィルム(パラフィルム、登録商標、Bemis)で巻きつけ、ファルコンチューブ内を外気から遮断し、ファルコンチューブ内のガス(空気)が完全に外気と交換されないようにした。他のファルコンチューブは、キャップを締めるのみで、パラフィンフィルムを巻きつけなかった。
パラフィンフィルムで巻きつけなかったファルコンチューブを37℃、二酸化炭素濃度が5%のインキュベーター内に配置し、iPS細胞の浮遊培養を開始した。また、パラフィンフィルムで巻きつけたファルコンチューブを37℃の恒温槽に配置し、CO2インキュベーターには入れずにiPS細胞の浮遊培養を開始した。恒温槽としては、温度を電子的に制御することができるビーズバス、ウォーターバス及び恒温機を使用した。恒温槽は、実験室内に配置され、実験室内の空気から遮蔽されていなかった。その後、2日に一度、それぞれのファルコンチューブのキャップを開け、2mLのpHが4.0から10.0の間のゲル培地をファルコンチューブ内に追加した。ゲル培地を追加した後は、上記のとおり、キャップを締め、恒温槽に配置するファルコンチューブは、キャップの周囲をパラフィンフィルムで巻きつけた。
ファルコンチューブ内での培養を開始してから7から10日後、ファルコンチューブのキャップを開け、ゲル培地中に形成されたiPS細胞の細胞塊をフィルターを用いて回収し、PBSで洗浄し、ファルコンチューブに入れた。さらに、細胞塊に500μLの細胞解離試薬(TrypLE Select、登録商標、Thermo Fisher)を添加し、CO2インキュベーター内で細胞塊を5分間インキュベートした。次に、インキュベーターからファルコンチューブを取り出し、ファルコンチューブ内に500μLの幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を入れ、細胞塊を懸濁して、iPS細胞をシングルセルにした。ファルコンチューブ内に2mLの幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を添加し、遠心機を用いて200gでファルコンチューブを遠心した。遠心後、ファルコンチューブ内の上清を除去し、iPS細胞をゲル培地をファルコンチューブに入れた。その後、上記と同様に、2日に一度ゲル培地を追加しながら、7から10日間、iPS細胞を密閉されたファルコンチューブ内で浮遊培養した。
以後、上記と同様に、継代及び7から10日間の浮遊培養を繰り返し、合計して1か月以上、iPS細胞を密閉されたファルコンチューブ内で浮遊培養した。
ファルコンチューブをインキュベーター内に配置して培養したiPS細胞、及びファルコンチューブをビーズバスに配置して培養したiPS細胞を顕微鏡で観察したところ、図8に示すように、いずれも、均一な細胞塊を形成していることが確認された。ビーズバス以外の恒温槽に配置されたファルコンチューブ内で培養されたiPS細胞でも同様の結果が得られた。
また、継代時に、一部のシングルセルのiPS細胞を分注し、4%-パラホルムアルデヒドを用いてiPS細胞を固定した。さらに、フローサイトメーターを用いて、固定されたiPS細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定した。TRA-1-60は、多能性幹細胞の代表的な表面抗原であり、分化した細胞では発現量が減少することが知られている。
その結果、図9に示すように、培養開始から8日目、28日目、及び38日目において、ファルコンチューブをインキュベーター内に配置して培養したiPS細胞、及びファルコンチューブをビーズバスに配置して培養したiPS細胞は、いずれも、ほぼ100%TRA1-60陽性であった。ビーズバス以外の恒温槽に配置されたファルコンチューブ内で培養されたiPS細胞でも同様の結果が得られた。したがって、容器を密閉して閉鎖系にすると、容器内の二酸化炭素濃度を制御せずとも、幹細胞を長期間にわたって、未分化状態で多能性を保ちながら培養できることが示された。
(実施例2)
実施例1と同様にゲル培地を作製した。ゲル培地にシングルセルにされたiPS細胞を2×105個/mLを添加した。2mLゴムパッキン付きガス非透過性チューブに、内部に空気層が残らないように2mLのiPS細胞を含むゲル培地を入れた。その後、チューブのキャップを固く締め、さらにチューブ及びキャップの周囲をパラフィンフィルムで巻きつけ、チューブ内を外気から遮断し、チューブ内に外気が侵入しないようにした。これにより、培養中に、ゲル培地がガス(空気)層に接触しないようにした。
パラフィンフィルムで巻きつけたチューブのそれぞれを37℃のCO2インキュベーター内及びCO2インキュベーター外の37℃の恒温槽に配置し、iPS細胞の浮遊培養を開始した。恒温槽としては、温度を電子的に制御することができるビーズバス、ウォーターバス及び恒温機を使用した。恒温槽は、実験室内に配置され、実験室内の空気から遮蔽されていなかった。培養の途中、培地の追加又は交換をしなかった。チューブ内での培養を開始してから10から11日後、チューブのキャップを開け、ゲル培地中に形成されたiPS細胞の細胞塊をフィルターを用いて回収し、PBSで洗浄し、チューブに入れた。さらに、細胞塊に500μLの細胞解離試薬(TrypLE Select、登録商標、Thermo Fisher)を添加し、CO2インキュベーター内で細胞塊を5分間インキュベートした。次に、インキュベーターからチューブを取り出し、チューブ内に500μLの幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を入れ、細胞塊を懸濁して、iPS細胞をシングルセルにした。チューブ内に2mLの幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を添加し、遠心機を用いて200gでチューブを遠心した。遠心後、チューブ内の上清を除去し、iPS細胞の細胞数が2×105個/mLとなるよう、ゲル培地をチューブに入れた。その後、上記と同様に、ゲル培地の追加又は交換をせずに、5から11日間、iPS細胞を密閉されたチューブ内で浮遊培養した。
以後、上記と同様に、継代及び5から11日間の浮遊培養を繰り返し、合計して1か月以上、iPS細胞を密閉されたチューブ内で浮遊培養した。
チューブをインキュベーター内に配置して培養したiPS細胞をカメラ及び顕微鏡で観察したところ、図10に示すように、均一な細胞塊を形成していることが確認された。インキュベーター外の恒温槽に配置されたチューブ内で培養されたiPS細胞でも同様の結果が得られた。
また、継代時に、一部のシングルセルのiPS細胞を分注し、4%-パラホルムアルデヒドを用いてiPS細胞を固定した。さらに、フローサイトメーターを用いて、固定されたiPS細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定した。その結果、図11に示すように、培養開始から10日目、21日目、及び30日目において、チューブをインキュベーター内に配置して培養したiPS細胞は、90%以上TRA1-60陽性であった。インキュベーター外の恒温槽に配置されたチューブ内で培養されたiPS細胞でも同様の結果が得られた。したがって、容器を密閉すると、容器内の二酸化炭素濃度を制御せず、かつ培地の追加及び交換をせずとも、幹細胞を長期間にわたって、未分化状態で多能性を保ちながら培養できることが示された。
(実施例3)
実施例1と同様にゲル培地を作製した。ゲル培地にシングルセルにされたiPS細胞を添加した。15mLファルコンチューブに2mLのiPS細胞を含むゲル培地を入れた。その後、ファルコンチューブのキャップを固く締めた。
ファルコンチューブを37℃、CO2インキュベーター内に配置し、iPS細胞の浮遊培養を開始した。その後、2日に一度、ファルコンチューブのキャップを開け、2mLのpHが4.0から10.0の間のゲル培地をファルコンチューブ内に追加した。ゲル培地を追加した後は、上記のとおり、キャップを締めた。
ファルコンチューブ内での培養を開始してから7から10日後、ファルコンチューブのキャップを開け、ゲル培地中に形成されたiPS細胞の細胞塊をフィルターを用いて回収し、PBSで洗浄し、ファルコンチューブに入れた。さらに、細胞塊に500μLの細胞解離試薬(TrypLE Select、登録商標、Thermo Fisher)を添加し、CO2インキュベーター内で細胞塊を5分間インキュベートした。次に、インキュベーターからファルコンチューブを取り出し、ファルコンチューブ内に20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)、GlutaMAX(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)、及び非必須アミノ酸(NEAA)を含む500μLの培地を入れ、細胞塊を懸濁して、iPS細胞をシングルセルにした。ファルコンチューブ内に2mLの幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を添加し、遠心機を用いて200gでファルコンチューブを遠心した。遠心後、ファルコンチューブ内の上清を除去し、iPS細胞の細胞数が2×105個/mLとなるよう、ゲル培地をファルコンチューブに入れた。その後、上記と同様に、2日に一度ゲル培地を追加しながら、7から10日間、iPS細胞を密閉されたファルコンチューブ内で浮遊培養した。
以後、上記と同様に、継代及び7から10日間の浮遊培養を繰り返し、合計して1か月以上、iPS細胞を密閉されたファルコンチューブ内で浮遊培養した。
ファルコンチューブ内で培養したiPS細胞を顕微鏡で観察したところ、図12に示すように、いずれも、細胞塊を形成していることが確認された。また、実施例3と同様に、フローサイトメーターを用いて、iPS細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定したところ、図13に示すように、培養開始から7から21日目におけるiPS細胞は、ほぼ100%TRA-1-60陽性であった。
(実施例4)
増殖因子を培地(StemSpan H3000、登録商標、STEMCELL Technologies Inc.)に添加し、さらに培地に脱アシル化ゲランガムを添加して、ゲル培地を用意した。
用意したゲル培地を15mLチューブに入れ、ゲル培地に2×105個の血液細胞(単核球)を播種した。その後、15mLチューブを37℃のCO2インキュベーター内に配置し、7日間、血液細胞を培養した。その後、ゲル培地にOCT3/4、SOX2、KLF4、cMYCを搭載するセンダイウイルスベクター(CytoTune-iPS2.0、株式会社IDファーマ)を感染多重度(MOI)が10.0となるよう添加し、血液細胞をセンダイウイルスに感染させた。
ゲル培地にセンダイウイルスを添加した後、ゲル培地に30mLの幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を添加し、フィーダー細胞を播種したフラスコに、センダイウイルスに感染した細胞を含む培地を入れ、15日間、フラスコを放置し、センダイウイルスに感染した細胞を接着培養した。フラスコ内には、空気層が全くなかった。その間、図14に示すように、フラスコのキャップ周辺をパラフィンフィルムで巻き付け、フラスコ内を完全に閉鎖し、培地交換及びガス交換を全く行わず、フラスコ内のCO2濃度の制御もしなかった。
15日後、細胞を顕微鏡で観察したところ、図15に示すように、ES細胞様コロニーを形成していることが確認された。図16に示すように、コロニーのうち100%近くがES細胞様コロニーであった。また、4%-パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定し、フローサイトメーターを用いて、固定された細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定したところ、図17(a)に示すように、誘導前の細胞においては、ほぼ100%TRA-1-60陰性であったのに対し、図17(b)に示すように、誘導後の細胞においては、ほぼ100%TRA-1-60陽性であり、ほぼ完全にリプログラミングされていることが確認された。したがって、完全に閉鎖された環境下において、培地交換及びガス交換をすることなく、幹細胞以外の細胞からiPS細胞を誘導できることが示された。
(実施例5)
実施例4と同様に用意したゲル培地を15mLチューブに入れ、ゲル培地に2×105個の血液細胞(単核球)を播種した。その後、15mLチューブを37℃のCO2インキュベーター内に配置し、7日間、血液細胞を培養した。その後、ゲル培地にOCT3/4、SOX2、KLF4、cMYCを搭載するセンダイウイルスベクター(CytoTune-iPS2.0、株式会社IDファーマ)を感染多重度(MOI)が10.0となるよう添加し、血液細胞をセンダイウイルスに感染させた。
ゲル培地にセンダイウイルスを添加した後、ゲル培地に15mLのゲル化した幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を添加し、そのうち15mLのセンダイウイルスに感染した細胞を含む培地を15mLチューブに入れ、15日間、15mLチューブを放置し、センダイウイルスに感染した細胞を浮遊培養した。15mLチューブ内には、空気層が全くなかった。その間、15mLチューブ内を完全に閉鎖し、培地交換及びガス交換を全く行わず、15mLチューブ内のCO2濃度の制御もしなかった。
15日後、細胞を顕微鏡で観察したところ、図18に示すように、ES細胞様コロニーを形成していることが確認された。また、4%-パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定し、フローサイトメーターを用いて、固定された細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定したところ、図19に示すように、ほぼ100%TRA-1-60陽性であり、ほぼ完全にリプログラミングされていることが確認された。したがって、完全に閉鎖された環境下において、培地交換及びガス交換をすることなく、幹細胞以外の細胞からiPS細胞を誘導できることが示された。
(実施例6)
図20及び図21に示すように、半透膜110(旭化成株式会社又はSPECTRUM)を、培養側プレート21及び培地側プレート22で挟み、さらに、半透膜110、培養側プレート21及び培地側プレート22を、培養槽30及び培地保持槽40で挟み込んだ。
20%の代替血清(KnockOut SR、登録商標、Gibco)を含む幹細胞培地(リプロセル)をゲル化してゲル培地を作製した。ゲル培地にシングルセルにされたiPS細胞を2×105個/mLを添加して、細胞含有培地を調製した。
細胞含有培地をシリンジに入れ、シリンジをプラグ33を介して培養槽30の供給口231に接続した。また、空のシリンジをプラグ34を介して培養槽30の排出口331に接続した。次に、培養槽30の供給口231から培養槽30内に、シリンジ内の細胞含有培地を注入した。培養槽30内の圧力上昇により、排出口331に接続されたシリンジのピストンが受動的に上昇し、培養槽30内の空気は、培養槽30の排出口331に接続されたシリンジ内に移動した。培養槽30内の空気層が完全になくなるまで、培養槽30内に細胞含有培地を注入した。その後、培養槽30の供給口231及び排出口331を遮蔽した。
ゲル培地をシリンジに入れ、シリンジをプラグ61を介して培地保持槽40の導入口240に接続した。また、空のシリンジをプラグ62を介して培地保持槽40の排出口340に接続した。次に、培地保持槽40の導入口240から培地保持槽40内に、シリンジ内のゲル培地を注入した。培地保持槽40内の圧力上昇により、培地保持槽40の排出口340に接続されたシリンジが受動的に上昇し、培地保持槽40内の空気は、培地保持槽40の排出口340に接続されたシリンジ内に移動した。培地保持槽40内の空気層が完全になくなるまで、培地保持槽40内にゲル培地を注入した。その後、培地保持槽40の導入口240及び排出口340を遮蔽した。これにより、培養槽30及び培地保持槽40内部を密閉し、培養槽30及び培地保持槽40の内部と外部とで、ガス交換が完全に生じないようにした。
培養槽30内でiPS細胞の浮遊培養を開始した。その後、2日に一度、培地保持槽40内の2mLのゲル培地を、2mLの新鮮なゲル培地に交換した。培養槽30内での培養を開始してから7から10日後、培養槽30内の細胞含有培地をシリンジで排出し、ゲル培地中に形成されたiPS細胞の細胞塊をフィルターを用いて回収し、PBSで洗浄し、ファルコンチューブに入れた。さらに、細胞塊に500μLの細胞解離酵素(TrypLE Select、Thermo Fisher)を添加し、CO2インキュベーター内で細胞塊を5分間インキュベートした。次に、インキュベーターからファルコンチューブを取り出し、ファルコンチューブ内に500μLの細胞培地を入れ、細胞塊を懸濁して、iPS細胞をシングルセルにした。ファルコンチューブ内に2mLの細胞培地を添加し、遠心機を用いて200gでファルコンチューブを遠心した。遠心後、ファルコンチューブ内の上清を除去し、iPS細胞とゲル培地をファルコンチューブに入れて、細胞含有培地を調製した。その後、上記と同様に、細胞含有培地を培養槽30に注入し、2日に一度、培地保持槽40内の2mLのゲル培地を交換しながら、7から10日間、iPS細胞を浮遊培養した。
以後、上記と同様に、継代及び7から10日間の浮遊培養を繰り返し、合計して1か月以上、iPS細胞を密閉された培養槽30内で浮遊培養した。
培養槽30で培養したiPS細胞を顕微鏡で観察したところ、図22に示すように、いずれも、均一な細胞塊を形成していることが確認された。
また、継代時に、一部のシングルセルのiPS細胞を分注し、4%-パラホルムアルデヒドを用いてiPS細胞を固定した。さらに、フローサイトメーターを用いて、固定されたiPS細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定した。その結果、図23に示すように、培養開始から39日目におけるiPS細胞は、90%以上TRA-1-60陽性であった。したがって、容器を密閉すると、容器内の二酸化炭素濃度を制御せずとも、幹細胞を長期間にわたって、未分化状態で多能性を保ちながら培養できることが示された。
(実施例7)
実施例6と同様に細胞含有培地を調製した。また、図2に示した細胞培養器と同様の細胞培養器を用意した。培養槽30内の空気層が完全になくなるまで、培養槽30内に細胞含有培地を注入した。その後、培養槽30の供給口及び排出口を遮蔽した。また、培地保持槽40、培地流路200、及び培地タンク60をゲル培地で充填した。その後、培地タンク60の導入口及び排出口を遮蔽した。これにより、培養槽30及び培地保持槽40内部を密閉し、培養槽30及び培地保持槽40の内部と外部とで、ガス交換が完全に生じないようにした。
培地保持槽40、培地流路200、及び培地タンク60内でゲル培地を循環させ、培養槽30内でiPS細胞の浮遊培養を開始した。その後、2から6日に一度、培地タンク60内の10mLのゲル培地を、10mLの新鮮なゲル培地に交換した。培養槽30内での培養を開始してから7から10日後、培養槽30内の細胞含有培地をシリンジで排出し、実施例6と同様の継代処理をして、上記と同様に、細胞含有培地を培養槽30に注入し、4日に一度、培地タンク60内の10mLのゲル培地を交換しながら、7から10日間、iPS細胞を浮遊培養した。
以後、上記と同様に、継代及び7から10日間の浮遊培養を繰り返し、合計して1か月以上、iPS細胞を密閉された培養槽30内で浮遊培養した。
培養槽30で培養したiPS細胞を顕微鏡で観察したところ、図24に示すように、いずれも、均一な細胞塊を形成していることが確認された。また、実施例6と同様に、フローサイトメーターを用いて、iPS細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定したところ、図25に示すように、培養開始から15日目におけるiPS細胞は、ほぼ100%TRA-1-60陽性であった。
(実施例8)
増殖因子を培地(StemSpan H3000、登録商標、STEMCELL Technologies Inc.)に添加し、さらに培地に脱アシル化ゲランガムを添加して、ゲル培地を用意した。
用意したゲル培地を15mLチューブに入れ、ゲル培地に2×105個の血液細胞を播種した。その後、15mLチューブをCO2インキュベーター内に配置し、7日間、血液細胞(単核球)を培養した。その後、ゲル培地にOCT3/4、SOX2、KLF4、cMYCを搭載するセンダイウイルスベクター(CytoTune-iPS2.0、株式会社IDファーマ)を感染多重度(MOI)が10.0となるよう添加し、血液細胞をセンダイウイルスに感染させた。
ゲル培地にセンダイウイルスを添加した後、ゲル培地に15mLのゲル化した幹細胞培地(20%KnockOut SR(登録商標、ThermoFisher SCIENTIFIC)を含むDMEM/F12)を添加し、そのうち15mLのセンダイウイルスに感染した細胞を含む培地を図20及び図21に示す培養槽30に入れ、ゲル培地を培地保持槽40に注入した。実施例6と同様に、培養槽30及び培地保持槽40内部を密閉し、培養槽30及び培地保持槽40の内部と外部とで、ガス交換が完全に生じないようにした。
培養槽30内で誘導因子を導入された細胞の浮遊培養を開始した。その後、2日に一度、培地保持槽40内の2mLのゲル培地を、2mLの新鮮なゲル培地に交換した。
15日後、細胞を顕微鏡で観察したところ、図26に示すように、ES細胞様コロニーを形成していることが確認された。また、4%-パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定し、フローサイトメーターを用いて、固定された細胞における細胞表面抗原TRA-1-60の発現量を測定したところ、図27に示すように、90%以上TRA-1-60陽性であり、ほぼ完全にリプログラミングされていることが確認された。したがって、完全に閉鎖された環境下において、培地交換及びガス交換をすることなく、幹細胞以外の細胞からiPS細胞を誘導できることが示された。