以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
<<実施形態>>
本発明の実施形態に係る温度インジケータについて説明する。本発明の実施形態に係る温度インジケータは、第1温度検知材料と、第2温度検知材料とを含む。
<第1温度検知材料>
第1温度検知材料は、示温材を含む。以下、第1温度検知材料に用いる示温材の構成について図1および図2A及び図2Bを用いて説明する。
<示温材>
示温材としては、温度変化(昇温/降温)により色濃度が可逆的に変化する材料を用いる。示温材は、電子供与性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕色剤と、変色の温度範囲を制御するための消色剤と、を含む。
図1は示温材の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。示温材は、融解後に急冷すると結晶化せずに非晶状態のまま凝固する材料である。
図1では、降温過程(図の左向き矢印(←))において、結晶化が起こらないため、結晶化による発熱ピークが観察されない。一方、昇温過程(図の右向き矢印(→))において、結晶化による発熱ピークが観察される。この発熱ピークが現れた温度と時間において、結晶化が進行し、示温材の変色が進行する。Tgはガラス転移点であり、Tmは融点である。
発熱ピークが現れる温度は、昇温速度や経過時間に依存する。これは、結晶化現象が温度と時間の積算により発生するためである。低速で昇温するとピークは低温に現れ、高速で昇温するとピークは高温に現れるか、あるいは現れずに融点Tmで融解する。
各温度での結晶化速度は、Tg以下の非晶状態から昇温して、融点Tm以下の一定温度においたときの結晶化度の時間変化により求められる。図2Aは示温材の結晶化度の温度および時間依存性を示す図である。図2Aのように、Tg近傍では結晶化は長時間経過しても進行しないが、Tgより高い温度では温度に依存し短時間で進行するようになる。
結晶化速度の具体的な求め方としては、特に限定されないが、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結晶化度の温度および時間依存性を測定することから算出することができる。結晶化度の温度および時間依存性の求め方としては、示温材を融点Tm以上の温度にて融解し、その後ガラス転移点Tg以下の所定の温度まで、-2000℃/sなどにて急冷する。その後2000℃/sなどにて高速に所定の温度まで昇温し、一定時間その温度で保持する。保持した際、非晶質の結晶化が進行することで、結晶化による発熱ピークが検出される。この発熱ピークの熱流束の積算値を結晶化度とみなすと、図2Aのように、所定の温度での結晶化度の時間依存性を算出することができる。この結晶化度の例えば1/2の値になる時間を結晶化に要する時間とみなすと、この時間の逆数を結晶化に要する速度の尺度(結晶化速度)として算出することができる。このような手法にて、図2Bの結晶化速度の温度依存性を求めることが可能である。
図2Aより、結晶化度が一定値になるまでの時間を導出し、その逆数を速度の尺度(結晶化速度)とすることで、図2Bに示すような各温度での結晶化速度と温度の関係を算出することができる。図2Bによると、結晶化速度はある温度において極大値T1を持つことがわかる。
結晶化が起こると顕色するため、温度インジケータとしての検知温度と検知時間の要求に合わせて、結晶化速度を設定する。例えば、ある温度で1時間経過した後に結晶化が開始する示温材であれば、その温度にて1時間経過したことを検知する材料として使用可能である。
温度検知材料の顕色速度の具体的な求め方としては、特に限定されないが、例えば、温調機としてペルチェ式冷却加熱ステージを用い、色の検出方法として、カメラやファイバー式色差計を用いることで、測定することができる。色濃度の温度および時間依存性の求め方としては、温度検知材料を融点Tm以上の温度にて融解し、その後ガラス転移点Tg以下の所定の温度まで、-30℃/minなどにて急冷する。その後30℃/minなどにて高速に所定の温度まで昇温し、一定時間その温度で保持する。保持した際、カメラや色差計などを用いて、温度検知材料の変色過程を観察する。色濃度の算出方法についても特に限定されない。カメラや色差計などにてRGBやLab色空間での色を評価し、白色などの特定の色からの色差にて色濃度を算出することが可能である。これにより、図2Aのようなグラフとして、各温度での色濃度の時間依存性が測定可能である。この色濃度の例えば1/2の値になる時間を変色に要する時間とみなすと、この時間の逆数を変色に要する速度の尺度(変色速度)として算出することができる。このような手法にて、図2Bのようなグラフとして、変色速度の温度依存性を求めることが可能である。この変色速度の温度依存性は、結晶化速度の温度依存性とほぼ同一の関係性になる。
以下、時間と温度の積算で色が変化し、且つ高温での加熱により色の初期化が可能な温度検知材料について説明する。
図3は、実施形態に係る第1温度インジケータの示温材の色濃度変化を示す図である。図3において、縦軸は色濃度、横軸は温度である。
図3は、示温材の色濃度と温度の関係を示す図である。示温材は、色濃度変化にヒステリシス特性を有する。示温材として、消色剤に結晶化しにくい材料を用いると、示温材の消色開始温度Td以上の融解状態であるPから顕色開始温度Ta以下に急冷させた際、消色剤が顕色剤を取りこんだまま非晶状態を形成して消色状態を保持する。この状態から、昇温過程で、顕色開始温度Ta以上に温度を上げると、消色剤が結晶化して顕色する。したがって、示温材を含む温度インジケータを用いれば、顕色開始温度Ta未満で温度管理するときに、管理範囲を逸脱し、Ta以上の温度に達したか否かを検知することができる。
温度インジケータを、商品等の物品の流通時における物品の温度管理等に利用する場合は、色戻りしないことが要求される。流通時に一度温度が上昇し、色が変化したとしても、流通過程で再び温度が降下し、色が元に戻ってしまうと、温度の変化の有無を把握することができないためである。しかしながら、本実施形態に係る示温材は、消色温度Td以上に加熱しない限り色戻りしないため、温度環境の変化を知ることが可能である。
示温材の顕色開始温度Taは、Tg近傍であり、消色開始温度TdはTm近傍になるため、温度インジケータとしての要求仕様にあわせて、TgとTmを設定する。
次に、示温材を構成するロイコ染料、顕色剤および消色剤について説明する。
(ロイコ染料)
ロイコ染料は、電子供与性化合物であって、従来、感圧複写紙用の染料や、感熱記録紙用染料として公知のものを利用できる。例えば、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロフタランキサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等が挙げられる。ロイコ染料の具体例としては、9-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)スピロ[ベンゾ[a]キサンテン-12,3’-フタリド]、2-メチル-6-(Np-トリル-N-エチルアミノ)-フルオラン6-(ジエチルアミノ)-2-[(3-トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン-9-スピロ-3’-フタリド、3,3-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、2’-アニリノ-6’-(ジブチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン]、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1-エチル-8-[N-エチル-N-(4-メチルフェニル)アミノ]-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロスピロ[11H-クロメノ[2,3-g]キノリン-11,3’-フタリド]が挙げられる。
示温材は、2種以上のロイコ染料を組み合わせて用いてもよい。
(顕色剤)
顕色剤は、電子供与性のロイコ染料と接触することで、ロイコ染料の構造を変化させて呈色させるものである。顕色剤としては、感熱記録紙や感圧複写紙等に用いられる顕色剤として公知のものを利用できる。このような顕色剤の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,2′-ビフェノール、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、パラオキシ安息香酸エステル、没食子酸エステル等のフェノール類等を挙げることができる。顕色剤は、これらに限定されるものではなく、電子受容体でありロイコ染料を変色させることができる化合物であれば用いることができる。また、カルボン酸誘導体の金属塩、サリチル酸およびサリチル酸金属塩、スルホン酸類、スルホン酸塩類、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル類、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等を用いてもよい。
しかし、消色剤に用いる材料に応じて、顕色剤がロイコ染料を顕色させることができる色濃度が異なる。消色剤が顕色剤を取りこんだまま非晶状態を形成する消色状態、消色剤が結晶化しロイコ染料と顕色剤を結合させる顕色状態、それぞれの色濃度は、顕色剤と消色剤の組み合わせ、およびその比率に依存する。そのため、ロイコ染料と、消色剤として後述するエステル化合物やステロイド化合物との組み合わせにおいて、十分に色濃度が薄い消色状態(消色性)を示し、十分に色濃度が濃い顕色状態(顕色性)を示す顕色剤を選定する必要がある。
また、色の初期化や加熱式マーキング装置でのマーキング時において、温度検知材料や温度検知インクに用いる示温材の融点以上に加熱されるため、この加熱時に色味の変色等が発生しないための耐熱性が求められる。具体的には、120~180℃程度の高温加熱時に顕著な退色が生じないことが求められる。加熱式マーキング装置に適用する場合は、インクを液体状態の適正な粘度に長時間保持する必要があるため、120~180℃程度に数時間~数十時間晒されても顕著な退色が生じないことが求められる。
さらに、インクやインジケータが長時間、屋内照明や屋外光に晒されてもインクが退色しない耐光性も求められる。温度検知材料および温度検知インクに用いられる材料の内、光劣化が最も生じやすい材料として、ロイコ染料と顕色剤が挙げられる。ロイコ染料はインクの色味に影響するため、顧客要求に対する選択性が高い方が良く、本発明では限定されない。一方で、顕色剤は他の特性が同等であれば、示温材の耐光性が高くなる材料が好ましい。
上記のため、消色剤である種々のエステル化合物やステロイド化合物に対して高い消色性および顕色性を示し、耐熱性および耐光性が高い顕色剤が求められる。このような顕色剤の具体例としては、2,2′-ビスフェノール、4,4‘-シクロヘキシリデンビス(2-シクロヘキシルフェノール)、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン、4,4’-シクロヘキシリデンビス(o-クレゾール)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビスフェノールP、4,4‘-(9-フルオレニリデン)ジフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールM、4,4’-チオジフェノール、ビスフェノールS、4,4‘-ビフェノール、4,4’-オキシジフェノール、4,4‘-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール、4,4‘-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール、4,4’-エチリデンビスフェノール(ビスフェノールE)、4,4‘-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、1,1’-メチレンビス(2-ナフトール)、テトラブロモビスフェノールA、4-ヒドロキシフェニル(4’-n-プロポキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール化合物を好ましく用いることができる。
示温材は、これらの顕色剤を1種、または、2種類以上組み合わせてもよい。顕色剤を組合せることによりロイコ染料の呈色時の色濃度を調整可能である。本顕色剤の使用量は所望される色濃度に応じて選択する。例えば、通常前記したロイコ色素1重量部に対して、0.1~100重量部程度の範囲内で選択すればよい。
(消色剤)
消色剤は、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させることが可能な化合物であり、ロイコ染料と顕色剤との呈色温度を制御できる化合物である。一般的に、ロイコ染料が呈色した状態の温度範囲では、消色剤が相分離した状態で固化している。また、ロイコ染料が消色状態となる温度範囲では、消色剤は融解しているか、非晶状態を形成しており、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させる機能が発揮された状態である。そのため、消色剤の状態変化温度が示温材の温度制御に対して重要になる。
消色剤の材料としては、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させることが可能である材料を幅広く用いることができる。極性が低くロイコ染料に対して顕色性を示さず、ロイコ染料と顕色剤を溶解させる程度に極性が高ければ、様々な材料が消色剤になり得る。代表的には、ヒドロキシ化合物、エステル化合物、ペルオキシ化合物、カルボニル化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ハロゲン化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、N-オキシド化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、アジ化合物、エーテル化合物、油脂化合物、糖化合物、ペプチド化合物、核酸化合物、アルカロイド化合物、ステロイド化合物など、多様な有機化合物を用いることができる。具体的には、トリカプリン、ミリスチン酸イソプロピル、酢酸 m-トリル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、1,4-ジアセトキシブタン、デカン酸デシル、フェニルマロン酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、くえん酸トリエチル、フタル酸ベンジルブチル、ブチルフタリルブチルグリコラート、N-メチルアントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、サリチル酸2-ヒドロキシエチル、ニコチン酸メチル、4-アミノ安息香酸ブチル、p-トルイル酸メチル、4-ニトロ安息香酸エチル、フェニル酢酸2-フェニルエチル、けい皮酸ベンジル、アセト酢酸メチル、酢酸ゲラニル、こはく酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、オキサル酢酸ジエチル、モノオレイン、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、酢酸リナリル、フタル酸ジ-n-オクチル、安息香酸ベンジル、ジエチレングリコールジベンゾアート、p-アニス酸メチル、酢酸 m-トリル、けい皮酸シンナミル、プロピオン酸2-フェニルエチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸メチル、アントラニル酸メチル、酢酸ネリル、パルミチン酸イソプロピル、4-フルオロ安息香酸エチル、シクランデラート (異性体混合物)、ブトピロノキシル、2-ブロモプロピオン酸エチル、トリカプリリン、レブリン酸エチル、パルミチン酸ヘキサデシル、酢酸tert-ブチル、1,1-エタンジオールジアセタート、しゅう酸ジメチル、トリステアリン、アセチルサリチル酸メチル、ベンザルジアセタート、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2、3-ジブロモ酪酸エチル、2-フランカルボン酸エチル、アセトピルビン酸エチル、バニリン酸エチル、イタコン酸ジメチル、3-ブロモ安息香酸メチル、アジピン酸モノエチル、アジピン酸ジメチル、1,4-ジアセトキシブタン、ジエチレングリコールジアセタート、パルミチン酸エチル、テレフタル酸ジエチル、プロピオン酸フェニル、ステアリン酸フェニル、酢酸1-ナフチル、ベヘン酸メチル、アラキジン酸メチル、4-クロロ安息香酸メチル、ソルビン酸メチル、イソニコチン酸エチル、ドデカン二酸ジメチル、ヘプタデカン酸メチル、α-シアノけい皮酸エチル、N-フェニルグリシンエチル、イタコン酸ジエチル、ピコリン酸メチル、イソニコチン酸メチル、DL-マンデル酸メチル、3-アミノ安息香酸メチル、4-メチルサリチル酸メチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル、DL-マンデル酸イソアミル、メタントリカルボン酸トリエチル、ホルムアミノマロン酸ジエチル、1,2-ビス(クロロアセトキシ)エタン、ペンタデカン酸メチル、アラキジン酸エチル、6-ブロモヘキサン酸エチル、ピメリン酸モノエチル、乳酸ヘキサデシル、ベンジル酸エチル、メフェンピル-ジエチル、プロカイン、フタル酸ジシクロヘキシル、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、4-アミノ安息香酸イソブチル、4-ヒドロキシ安息香酸ブチル、トリパルミチン、1,2-ジアセトキシベンゼン、イソフタル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、バニリン酸メチル、3-アミノ-2-チオフェンカルボン酸メチル、エトミデート、クロキントセット-メキシル、ベンジル酸メチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニル、4-アミノ安息香酸プロピル、エチレングリコールジベンゾアート、トリアセチン、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、3-ニトロ安息香酸メチル、酢酸4-ニトロフェニル、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル、くえん酸トリメチル、3-ヒドロキシ安息香酸エチル、3-ヒドロキシ安息香酸メチル、トリメブチン、酢酸4-メトキシベンジル、ペンタエリトリトールテトラアセタート、4-ブロモ安息香酸メチル、1-ナフタレン酢酸エチル、5-ニトロ-2-フルアルデヒドジアセタート、4-アミノ安息香酸エチル、プロピルパラベン、1,2,4-トリアセトキシベンゼン、4-ニトロ安息香酸メチル、アセトアミドマロン酸ジエチル、バレタマートブロミド、安息香酸2-ナフチル、フマル酸ジメチル、アジフェニン塩酸塩、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸エチル、酪酸ビニル、ビタミンK4、4-ヨード安息香酸メチル、3、3-ジメチルアクリル酸メチル、没食子酸プロピル、1,4-ジアセトキシベンゼン、メソしゅう酸ジエチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(cis-,trans-混合物)、1,1,2-エタントリカルボン酸トリエチル、ヘキサフルオログルタル酸ジメチル、安息香酸アミル、3-ブロモ安息香酸エチル、5-ブロモ-2-クロロ安息香酸エチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、アリルマロン酸ジエチル、ブロモマロン酸ジエチル、エトキシメチレンマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、1,3-アセトンジカルボン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、3-アミノ安息香酸エチル、安息香酸エチル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、ニコチン酸エチル、フェニルプロピオル酸エチル、ピリジン-2-カルボン酸エチル、2-ピリジル酢酸エチル、3-ピリジル酢酸エチル、安息香酸メチル、フェニル酢酸エチル、4-ヒドロキシ安息香酸アミル、2,5-ジアセトキシトルエン、4-オキサゾールカルボン酸エチル、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリメチル(cis-,trans-混合物)、3-(クロロスルホニル)-2-チオフェンカルボン酸メチル、ペンタエリトリトールジステアラート、ラウリン酸ベンジル、アセチレンジカルボン酸ジエチル、メタクリル酸フェニル、酢酸ベンジル、グルタル酸ジメチル、2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル、フェニルシアノ酢酸エチル、1-ピペラジンカルボン酸エチル、ベンゾイルぎ酸メチル、フェニル酢酸メチル、酢酸フェニル、こはく酸ジエチル、トリブチリン、メチルマロン酸ジエチル、しゅう酸ジメチル、1,1-シクロプロパンジカルボン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、4-tert-ブチル安息香酸メチル、2-オキソシクロペンタンカルボン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、4-メトキシフェニル酢酸エチル、4-フルオロベンゾイル酢酸メチル、マレイン酸ジメチル、テレフタルアルデヒド酸メチル、4-ブロモ安息香酸エチル、2-ブロモ安息香酸メチル、2-ヨード安息香酸メチル、3-ヨード安息香酸エチル、3-フランカルボン酸エチル、フタル酸ジアリル、ブロモ酢酸ベンジル、ブロモマロン酸ジメチル、m-トルイル酸メチル、1,3-アセトンジカルボン酸ジエチル、フェニルプロピオル酸メチル、酪酸1-ナフチル、o-トルイル酸エチル、2-オキソシクロペンタンカルボン酸メチル、安息香酸イソブチル、3-フェニルプロピオン酸エチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、1,1-エタンジオールジアセタート、アジピン酸ジイソプロピル、フマル酸ジイソプロピル、けい皮酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、ネオペンチルグリコールジアクリラート、トリオレイン、ベンゾイル酢酸エチル、p-アニス酸エチル、スベリン酸ジエチル、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸アミド、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、3-(tert-ブトキシカルボニル)フェニルボロン酸、ラセカドトリル、4-[(6-アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]-4´-シアノビフェニル、2-(ジメチルアミノ)ビニル3-ピリジルケトン、アクリル酸ステアリル、4-ブロモフェニル酢酸エチル、フタル酸ジベンジル、3,5-ジメトキシ安息香酸メチル、酢酸オイゲノール、3,3’-チオジプロピオン酸ジドデシル、酢酸バニリン、炭酸ジフェニル、オキサニル酸エチル、テレフタルアルデヒド酸メチル、4-ニトロフタル酸ジメチル、(4-ニトロベンゾイル)酢酸エチル、ニトロテレフタル酸ジメチル、2-メトキシ-5-(メチルスルホニル)安息香酸メチル、3-メチル-4-ニトロ安息香酸メチル、2,3-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、4´-アセトキシアセトフェノン、trans-3-ベンゾイルアクリル酸エチル、クマリン-3-カルボン酸エチル、BAPTAテトラエチルエステル、2,6-ジメトキシ安息香酸メチル、イミノジカルボン酸ジ-tert-ブチル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、3,4,5-トリメトキシ安息香酸メチル、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸メチル、ジステアリン酸ジエチレングリコール、3,3’-チオジプロピオン酸ジテトラデシル、4-ニトロフェニル酢酸エチル、4-クロロ-3-ニトロ安息香酸メチル、1,4-ジプロピオニルオキシベンゼン、テレフタル酸ジメチル、4-ニトロけい皮酸エチル、5-ニトロイソフタル酸ジメチル、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリエチル、N-(4-アミノベンゾイル)-L-グルタミン酸ジエチル、酢酸2-メチル-1-ナフチル、7-アセトキシ-4-メチルクマリン、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸メチル、4,4’-ジアセトキシビフェニル、5-アミノイソフタル酸ジメチル、1,4-ジヒドロ-2、6-ジメチル-3,5-ピリジンジカルボン酸ジエチル、4,4´-ビフェニルジカルボン酸ジメチル、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチルなどのエステル化合物や、コレステロール、コレステリルブロミド、β-エストラジオール、メチルアンドロステンジオール、プレグネノロン、安息香酸コレステロール、酢酸コレステロール、リノール酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、n-オクタン酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、3-クロロコレステン、trans-けい皮酸コレステロール、デカン酸コレステロール、ヒドロけい皮酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、酪酸コレステロール、ぎ酸コレステロール、ヘプタン酸コレステロール、ヘキサン酸コレステロール、こはく酸水素コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、吉草酸コレステロール、フタル酸水素コレステロール、フェニル酢酸コレステロール、クロロぎ酸コレステロール、2,4-ジクロロ安息香酸コレステロール、ペラルゴン酸コ
レステロール、コレステロールノニルカルボナート、コレステロールヘプチルカルボナート、コレステロールオレイルカルボナート、コレステロールメチルカルボナート、コレステロールエチルカルボナート、コレステロールイソプロピルカルボナート、コレステロールブチルカルボナート、コレステロールイソブチルカルボナート、コレステロールアミルカルボナート、コレステロールn-オクチルカルボナート、コレステロールヘキシルカルボナート、アリルエストレノール、アルトレノゲスト、9(10)-デヒドロナンドロロン、エストロン、エチニルエストラジオール、エストリオール、安息香酸エストラジオール、β-エストラジオール17-シピオナート、17-吉草酸β-エストラジオール、α-エストラジオール、17-ヘプタン酸β-エストラジオール、ゲストリノン、メストラノール、2-メトキシ-β-エストラジオール、ナンドロロン、(-)-ノルゲストレル、キネストロール、トレンボロン、チボロン、スタノロン、アンドロステロン、アビラテロン、酢酸アビラテロン、デヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロステロンアセタート、エチステロン、エピアンドロステロン、17β-ヒドロキシ-17-メチルアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン、メチルアンドロステンジオール、メチルテストステロン、Δ9(11)-メチルテストステロン、1α-メチルアンドロスタン-17β-オール-3-オン、17α-メチルアンドロスタン-17β-オール-3-オン、スタノゾロール、テストステロン、プロピオン酸テストステロン、アルトレノゲスト、16-デヒドロプレグネノロンアセタート、酢酸16,17-エポキシプレグネノロン、11α-ヒドロキシプロゲステロン、17α-ヒドロキシプロゲステロンカプロアート、17α-ヒドロキシプロゲステロン、酢酸プレグネノロン、17α-ヒドロキシプロゲステロンアセタート、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸プレグネノロン、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール、ブデソニド、コルチコステロン、酢酸コルチゾン、コルチゾン、コルテキソロン、デオキシコルチコステロンアセタート、デフラザコート、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、17-酪酸ヒドロコルチゾン、6α-メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾロン、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、コール酸メチル、ヒオデオキシコール酸メチル、β-コレスタノール、コレステロール-5α,6α-エポキシド、ジオスゲニン、エルゴステロール、β-シトステロール、スチグマステロール、β-シトステロールアセタートなどのステロイド化合物などが挙げられる。ロイコ染料および顕色剤との相溶性の観点から、これらの化合物を含むことが好ましい。勿論、これらの化合物に限定されるものではなく、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させることが可能である材料であれば何でもよい。
また、これらの消色剤を1種、または2種類以上組み合わせてもよい。消色剤を組合せることにより、凝固点、結晶化速度、融点、ガラス転移点の調整が可能である。
示温材に用いる消色剤としては、消色剤が融解している温度から、急冷過程において結晶化せず、ガラス転移点近傍で非晶化する必要がある。そのため、結晶化しにくい材料が好ましい。急冷速度を非常に速くすればほとんどの材料で非晶状態を形成するが、実用性を考慮すると、汎用的な冷却装置による急冷で非晶状態を形成する程度に結晶化にしにくい方が好ましい。さらに最も好ましいのは、融点以上の融解状態から自然に冷却する過程で非晶状態を形成する程度に結晶化しにくい材料が好ましい。この条件として、少なくとも20℃/分以下の速度でも融点からガラス転移点まで冷却したときに非晶状態を形成する消色剤が好ましく、1℃/分以下の速度でも融点からガラス転移点まで冷却したときに非晶状態を形成する消色剤が最も好ましい。
示温材の色を初期化するためには、示温材の消色剤の融点以上に温度を上げる必要がある。色の初期化温度としては、管理温度付近では起こりづらい程度に高温である必要があるが、実用性を考慮すると、汎用的な加熱装置により加熱可能な温度域であることが望ましい。また温度検知材料としては、示温材を保護するためにマトリックス材やマイクロカプセルを用いるため、これらの耐熱性も考慮する必要がある。具体的には、40℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下が最も好ましい。
示温材には、少なくとも上記のロイコ染料、顕色剤、消色剤を含む。ただし、顕色作用および消色作用を1分子中に含む材料を含む場合、顕色剤および消色剤は無くてもよい。また、結晶化により色が変わる性能が保持されれば、ロイコ染料、顕色剤、消色剤以外の材料を含むこともできる。例えば、ロイコ染料ではない染料や顔料を含むことで、消色時、顕色時の色を変更することが可能である。
示温材を第1温度検知材料に適用するにあたり、示温材を被覆し、分散させる技術が必要になる。具体的には、前記の組み合わせの示温材とマトリックス材を混合することで形成する相分離構造体を少なくとも含むか、示温材をマイクロカプセル化したものを少なくとも含む。その形態の例を以下に示す。
(マトリックス材)
マトリックス材は、示温材と混合したときに、示温材の顕色性および消色性を損なわない材料である必要がある。そのため、それ自身が顕色性を示さない材料であることが好ましい。このような材料として、電子受容体ではない非極性材料を用いることができる。
また、マトリックス材中に示温材が分散した相分離構造を形成させるために、マトリックス材としては次の2つの条件を満たす材料を用いる必要がある。2つの条件とは、温度インジケータの使用温度で固体状態であること、ロイコ染料、消色剤、および顕色剤と相溶性の低い材料であること、である。ロイコ染料、顕色剤、消色剤、いずれかの材料がマトリックス材と固溶した状態では、温度検知機能は損なわれてしまうためである。また、使用温度で固体状態のマトリックス材を用いることにより、温度検知材料が取り扱いやすくなる。
以上の条件を満たすマトリックス材としては、ハンセン溶解度パラメーターにより予測される分子間の双極子相互作用によるエネルギーδpおよび分子間の水素結合によるエネルギーδhがそれぞれ3以下である材料を好ましく用いることができる。具体的には、極性基を有さない材料、炭化水素のみで構成される材料を好ましく用いることができる。具体的には、パラフィン系、マイクロクリスタリン系、オレフィン系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系などのワックスや、プロピレン、エチレン、スチレン、シクロオレフィン、シロキサン、テルペンなどの骨格を多く持つ低分子材料や高分子材料、これらの共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、融点以上で低粘度の融解液になり、融点以下で容易に固体化する材料が取扱い性がよい。また、有機溶媒に溶け、有機溶媒の揮発過程で固体化する材料も取扱い性がよい。具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン、ポリスチレン、テルペン樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンオイルなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリオレフィンの分子量および液体状態での粘度は特に限定されないが、液体状態で低粘度であると気泡の内包が少なく成形性がよい。具体的には、分子量5万以下であって、融点近傍での粘度が5~50000mPa・sであることが好ましく、分子量1万以下であって、融点近傍での粘度が10~10000mPa・sであることがさらに好ましい。
また、これらのマトリックス材は、複数種を併用することも可能である。
また、使用温度において液体状態である材料でも、示温材と相分離構造を示せば、マトリックス材として用いることが可能である。マトリックス材が高粘度の液体であれば、固体状態のマトリックス材と同様に取り扱い性に優れる。しかしながら、マトリックス材が高粘度の場合でも、長期間の使用においてマトリックス材中の示温材の沈降・凝集は避けられず、最終的には2相に分離してしまう。そのため、温度検知材料としての長期安定性は低くなる。
<相分離構造体>
図4A及び図4Bは、第1温度検知材料の相分離構造を示す模式図であり、図4Aは消色している状態の場合、図4Bは顕色している状態の場合である。相分離構造体1(第1温度検知材料1)は、マトリックス材3中に示温材2が分散した構造を形成している。
図5A及び図5Bは、第1温度検知材料の光学顕微鏡写真であり、図5Aは消色している状態の場合、図5Bは顕色している状態の場合である。光学顕微鏡写真から、相分離構造体1について、マトリックス材3中に示温材2が分散した構造を形成していることが確認できる。
相分離構造体1は、マトリックス材3の融点が示温材2の融点と近いものを用いている。示温材2の顕色開始温度は示温材2のガラス転移点近傍であり、その温度においてマトリックス材3は融解しないため、示温材2の変色過程において温度検知材料は固体状態を保持する。一方で、示温材2が融点以上において固体から液体に状態変化し、色の初期化が生じる際、マトリックス材3も融解する。そのため、加熱式マーキング装置に適用する際など、示温材2の色の初期化とともに温度検知材料を融解することができ、初期化温度よりわずかに高い温度に加熱することで温度検知材料を吐出、マーキングすることが可能である。
一方で、マトリックス材3の融点が示温材2の融点と離れた温度のものを用いても問題ない。例えば、マトリックス材3の融点が示温材2の融点よりも高い場合、示温材2が固体から液体に状態変化し、色の初期化が生じる際、マトリックス材3が融解しないため、温度検知材料は固体状態を保持することが可能である。
また、マトリックス材3と示温材2とは相分離しており、且つマトリックス材3が示温材の色変化に影響を与えないことから、示温材2の温度検知機能をそのまま保持することが可能である。
マトリックス材3中に内包する示温材2の濃度は特に限定されないが、示温材2:1重量部に対して、マトリックス材3を0.1重量部以上100重量部以下含むことが好ましい。示温材2:1重量部に対するマトリックス材3の濃度が100重量部以下であると、温度検知材料としての視認性の低下を抑制できる。また、マトリックス材3の濃度を、示温材2の濃度と同等以上とすることにより、マトリックス材3および示温材2のそれぞれが繋がりあった構造(以下、共連続構造という。)になるのを抑制することができる。共連続構造でもマトリックス材3と示温材2とは相分離しているため、温度検知材料としての機能は損なわれないが、マトリックス材3中から示温材2が液漏れすることで長期安定性を損なう恐れがある。また、示温材2が結晶化する際、隣接する示温材2間にて結晶成長が進展してしまい、顕色時間の再現性の低下や色ムラ発生のリスクが高まることが懸念される。そのため、示温材2:1重量部に対して、マトリックス材3は1重量部以上10重量部以下にすることがさらに好ましい。
マトリックス材3中に分散した示温材2からなる相の長径は、100nm以上1mm以下であることが好ましく、100nm以上100μm以下であることがより好ましい。示温材2からなる相の大きさは特に限定されないが、100nm以上とすることにより示温材2とマトリックス材3の界面による検知温度への影響を抑制できる。また、1mm以下とすることにより、示温材2とマトリックス材3とを区別して視認することが困難となり、温度検知材料の色ムラを抑えることができる。示温材2からなる相の大きさは、界面活性剤を添加することや冷却工程において攪拌しながら冷却することにより、小さくすることができる。なお、示温材2からなる相の長径とは、示温材2からなる相を楕円に近似したときの近似楕円の長径である。
上記の条件を満たす温度検知材料中への示温材2の分散の手法として、示温材2をマイクロカプセル化して、マイクロカプセルを分散媒に分散させる手法もある。マイクロカプセル膜を分散媒と考え、マイクロカプセル化した示温材2をそのまま用いることも可能である。
温度検知材料中には、結晶化により色が変わる性能が保持されれば、ロイコ染料、顕色剤、消色剤以外の材料を含むこともできる。たとえば、相分離構造体1中にマイクロカプセルなどを含むこともできる。これにより、2種以上の示温材2を温度検知材料に含むことが可能であり、2通り以上の温度変化を検知する材料を作製することが可能である。
示温材2をマイクロカプセル化することにより、示温材2の光や湿度等に対する耐環境性が向上し、保存安定性、変色特性の安定化等が可能となる。また、マイクロカプセル化により、インクを調製した際に、ロイコ染料、顕色剤、消色剤が他の樹脂剤、添加剤等の化合物から受ける影響を抑制することが可能である。
マイクロカプセル化には、公知の各種手法を適用することが可能である。例えば、乳化重合法、懸濁重合法、コアセルベーション法、界面重合法、スプレードライング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、2種以上異なる方法を組み合わせてもよい。
マイクロカプセルに用いる樹脂被膜としては、多価アミンとカルボニル化合物から成る尿素樹脂被膜、メラミン・ホルマリンプレポリマ、メチロールメラミンプレポリマ、メチル化メラミンプレポリマーから成るメラミン樹脂被膜、多価イソシアネートとポリオール化合物から成るウレタン樹脂被膜、多塩基酸クロライドと多価アミンから成るアミド樹脂被膜、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化ビニル等の各種モノマー類から成るビニル系の樹脂被膜が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、形成した樹脂被膜の表面処理を行い、インクや塗料化する際の表面エネルギーを調整することで、マイクロカプセルの分散安定性を向上させる等、追加の処理をすることもできる。
また、マイクロカプセルの直径は、保存安定性等が課題となるため、0.1~100μm程度の範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.1~10μmの範囲がよい。
相分離構造体1は、乳鉢などで砕いて、粉体化することも可能である。これによりマイクロカプセルと同様の取り扱いが可能である。
相分離構造体1およびマイクロカプセルは、溶媒や樹脂材料等と混合し、溶媒インク化することも可能である。その際、インク化のための分散安定化や、溶剤への耐性向上や、光や湿度等に対する耐環境性が向上などのため、シランカップリング処理、表面グラフト化、コロナ処理などにより表面処理をしても構わない。また、相分離構造体1およびマイクロカプセルを、さらにマトリックス材3やマイクロカプセルで被覆することも可能である。
<相分離構造体の製造方法>
第1温度検知材料(相分離構造体1)は、例えば、以下の方法で作製することができる。温度検知材料の製造方法は、ロイコ染料と、顕色剤と、消色剤と、マトリックス材と、をマトリックス材の融点以上の温度に加温し、混合する混合工程と、混合工程で得られる混合物を、マトリックス材の凝固点以下の温度に冷却する冷却工程と、を備える。冷却工程において、マトリックス材と示温材とは速やかに相分離し、マトリックス材中にロイコ染料と、顕色剤と、消色剤とからなる相が分散した相分離構造を形成する。
マトリックス材の融点以上に加温し液体状態にする際、示温材と、マトリックス材の相溶性次第で、示温材とマトリックス材が相溶する(示温材が微小に分散し、目視上相溶しているように見える)場合と、相溶しない(示温材とマトリックス材が2相に分離する)場合がある。このとき、相溶している方が取扱いやすさの観点において好ましい。示温材とマトリックス材は、マトリックス材が固体状態である使用温度のときは相分離する必要があるが、マトリックス材が液体状態である加温状態ではその限りではない。使用温度で示温材とマトリックス材とが相分離し、加温状態で示温材とマトリックス材とが相溶するためには、特に含有量の多い消色剤の極性がある程度の範囲内にあるとよい。消色剤の極性が小さすぎると使用温度でマトリックス材と相溶してしまい、極性が大きすぎると、加温状態でマトリックス材と分離してしまう。具体的な極性の計算方法としてハンセン溶解度パラメーターにより予測される分子間の双極子相互作用によるエネルギーδpおよび分子間の水素結合によるエネルギーδhがそれぞれ1以上10以下である材料を好ましく用いることができる。しかしながら、消色剤の極性が大きく、加温状態でも示温材とマトリックス材が相溶しない材料についても、撹拌しながら冷却することで、相分離構造を形成させることは可能である。また、界面活性剤を添加して、相溶させてもよい。
マトリックス材の凝固点以下に冷却し、相分離構造を形成させる際、示温材とマトリックス材との相溶性次第で、示温材の分散構造の大きさが異なる。特に含有量の多い消色剤とマトリックス材について、ある程度相溶性がよいと細かく分散し、相溶性が悪いと大きく分散する。分散構造の大きさは特に限定されないが、100nm未満になると、示温材とマトリックス材との界面の影響が出てくるため、検知温度に影響が出ることがある。また、1mmを超えると、示温材とマトリックス材のそれぞれを視認することが可能になり、温度検知体の色ムラが大きくなる。そのため、分散構造の大きさは100nm以上、1mm以下が好ましく、特に、100nm以上、100μm以下が最も好ましい。この分散構造を実現するためにも、具体的な極性の計算方法としてハンセン溶解度パラメーターにより予測される分子間の双極子相互作用によるエネルギーδpおよび分子間の水素結合によるエネルギーδhがそれぞれ1以上10以下である消色剤を好ましく用いることができる。また、冷却工程において、撹拌しながら冷却することや界面活性剤を添加することで、分散構造の大きさを小さくすることも可能である。
<加熱式マーキング装置>
第1温度検知材料は、様々な加熱式マーキング装置に適用することができる。加熱式マーキング装置は、加熱により材料を低粘度に制御し、材料を吐出、印刷する装置であり、加熱式インクジェットプリンタや加熱式ディスペンサやグルーガン等が挙げられる。相分離構造体からなる温度検知材料は、マトリックス材および示温材の融点以上に加熱することで低粘度な液体状態となるため、インク化することなく、加熱式マーキング装置にて印刷可能である。さらに、印刷時の加熱により色の初期化が可能であるため、印刷直後からの温度検知材料による温度管理が可能である。このことは、加熱式マーキング装置とは別に、温度検知材料を初期化するための加熱装置が不要になることを意味するため、設備コストの観点から有用である。加熱式マーキング装置により印刷するタイミングとしては、管理温度下にて温度管理した被印字対象物に温度検知材料を印刷したり、室温下などにて被印字対象物に温度検知材料を印刷した後、温度検知材料が顕色する前に管理温度帯に被印字対象物を移動させたりすること等が考えられる。
<インク化>
予めマトリックス材料中に示温材が分散した相分離構造体や、マイクロカプセル化した第1温度検知材料を作製し、溶剤と混合することにより、温度検知インクを作製することが可能である。温度検知インクは、ペン、スタンプ、クレヨン、インクジェットなどのインクや印刷用の塗料に適用することが可能となる。
温度検知インクは、溶剤中に第1温度検知材料が分散した形態を示す。そのためには、示温材を包含するマトリックス材料やマイクロカプセルと相溶性が低い溶剤を用いる必要がある。
マトリックス材料を用いた相分離構造体を温度検知材料として用いる場合、溶剤としては、極性の高い溶媒を用いることが好ましい。極性の高い溶媒としては、水、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類を好ましく用いることができる。他にも、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等を用いることができる。
マイクロカプセル化した温度検知材料を用いる場合、溶剤としては、マイクロカプセルの材質が耐性をもつ溶媒を用いることが好ましい。マイクロカプセルの材質として極性の高い材質を用いた場合、極性の低い有機溶媒を用いたほうが良く、具体的には、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの無極性溶媒、石油、鉱物油、シリコーンオイルなどの油類が特に好ましく、他には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等があげられる。
マイクロカプセルの材質として極性の低い材質を用いた場合、極性の高い溶媒を用いたほうが良く、具体的には、水、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類を好ましく用いることができる。他にも、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等を用いることができる。
これらの温度検知インクは液体状態においても温度及び時間検知機能を有し、さらに被印字対象等に印字、筆記、押印等することにより溶媒が揮発することで、温度検知材料のみが印字物を構成する。この印字物を、温度インジケータとして使用することができる。
温度検知インクには、温度及び時間検知機能に影響しない程度であれば、有機溶媒や水などの溶液に添加物をさらに添加してもよい。例えば、顔料を含むことで、消色時、顕色時の色を変更することが可能である。
温度検知インクは、各種添加剤や溶媒が使用可能である。また温度検知材料や添加剤の量を変えることで、粘度を調整することも可能である。これにより、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、ラベルプリンタ、サーマルプリンタなどの様々な印刷装置用インクとして適用可能である。
<インクジェット用インク>
インク溶液の抵抗が高い場合、帯電制御式インクジェットプリンタにおけるインクの吐出部において、インク粒子がまっすぐ飛ばず、曲がる傾向がある。そのため、インク溶液の抵抗は概ね2000Ωcm以下にする必要がある。
インクに含まれる樹脂、有機溶媒(特に、インクジェットプリンタ用インクの有機溶媒としてよく用いられるメチルエチルケトン、エタノール等)は導電性が低いので、インク溶液の抵抗は5000~数万Ωcm程度と大きい。抵抗が高いと、帯電制御式インクジェットプリンタでは所望の印字が困難となる。そこで、インク溶液の抵抗を下げるために、インクに導電剤を添加する必要がある。
導電剤としては、錯体を用いることが好ましい。導電剤は用いる溶剤に溶解することが必要で、色調に影響を与えないことも重要である。また導電剤は一般には塩構造のものが用いられる。これは分子内に電荷の偏りを有するので、高い導電性が発揮できるものと推定される。
以上のような観点で検討した結果、導電剤は塩構造で、陽イオンはテトラアルキルアンモニウムイオン構造が好適である。アルキル鎖は直鎖、分岐どちらでもよく、炭素数が大きいほど溶媒に対する溶解性は向上する。しかし炭素数が小さいほど、僅かの添加率で抵抗を下げることが可能となる。インクに使う際の現実的な炭素数は2~8程度である。
陰イオンはヘキサフルオロフォスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン等が溶剤に対する溶解性が高い点で好ましい。
なお、過塩素酸イオンも溶解性は高いが、爆発性があるので、インクに用いるのは現実的ではない。それ以外に、塩素、臭素、ヨウ素イオンも挙げられるが、これらは鉄やステンレス等の金属に接触するとそれらを腐食させる傾向があるので好ましくない。
以上より、好ましい導電剤は、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、テトラペンチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、テトラヘキシルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、テトラオクチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラプロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラペンチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラオクチルアンモニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
<第2温度検知材料>
本実施形態に係る温度インジケータに含まれる第1温度検知材料は、図2Bに示した通り、T1近傍より高い温度域において、変色速度が低下することが課題である。これに対し、本実施形態に係る温度インジケータは、第1温度検知材料に加えて、更に第2温度検知材料を含むことで、T1近傍より高い温度域に到達したことを第2温度検知材料の変色にて示すことが可能である。
図6Aは、第2温度検知材料の変色速度の温度依存性を示す図である。食品や医薬品の品質劣化を模擬するにあたり、第1温度検知材料の変色速度が遅くなってしまう温度域において、変色速度が速い第2温度検知材料を用いることで、機能補完することが目的になる。そのため、ある温度(変色開始温度をT2とする)で急峻に変色開始する材料が好ましく、変色速度についても、ある温度以上で急激に変色速度が大きくなる材料が好ましい。なお、T2は、「色変化開始温度」とも称呼される場合がある。
図6Bは、第1温度検知材料と第2温度検知材料の変色速度の温度依存性を示す図である。第1温度検知材料は、食品や医薬品の管理温度を逸脱した際、管理温度近傍では緩やかに変色する材料が求められるが、第2温度検知材料には、食品や医薬品が非常に高温に晒された際、異常加熱が発生したことを検知するために、高温にて非常に早く変色する材料が求められる。そのため、第2温度検知材料の変色速度としては、第1温度検知材料の変色速度よりも速くなる方が良い。
第2温度検知材料は、第1温度検知材料(示温材)のガラス転移点Tgよりも高く、且つ、第1温度検知材料(示温材)の融点Tmよりも低い温度範囲内で不可逆的に色変化する。また、第2温度検知材料の変色開始温度T2(色変化開始温度)は、第1温度検知材料の変色速度の極大値T1の近傍にあることが好ましい。これにより、第1温度検知材料の変色速度が遅くなってしまう温度域において、すみやかに第2温度検知材料の変色が発生するため、温度インジケータの変色により、温度異常状態を示すことが可能である。第2温度検知材料の変色開始温度T2が、第1温度検知材料の顕色開始温度Taや示温材のガラス転移点Tgより低いと、第1温度検知材料の変色速度が温度上昇に対して増加するという機能が発現するより低い温度で第2温度検知材料の変色が発生してしまい、TTIとしての機能が失われることになる。また、第2温度検知材料の変色開始温度をT2が、第1温度検知材料の消色開始温度Tdや示温材の融点Tmより高いと、食品や医薬品が非常に高温に晒された際、第1温度検知材料と第2温度検知材料のいずれも発色しない温度域ができてしまい、第2温度検知材料を含む意味合いが薄くなってしまう。なお、第1温度検知材料の変色速度の極大値T1は、「色変化速度最大温度」とも称呼される場合がある。
第1温度検知材料の結晶化速度は、図2Bのようなグラフになるが、示温材の種類によっては、結晶が準安定相(配向が乱れた結晶)を形成する温度域と、安定相を形成する温度域を有するものがある。このことなどにより、結晶化速度は図2Bのような単一のピークではなく、複数のピークに分かれる場合や見かけ上ブロード(最大値からの変化率が緩やか)なピークになる場合がある。特に結晶化速度の最大値を取る温度T1以上の温度にて、緩やかに速度が低下するピークになることが多い。変色速度も同様である。そのため、第2温度検知材料の変色開始温度T2は、第1温度検知材料の変色速度の極大値T1の近傍にて、第1温度検知材料の種類に応じて、適宜最適な温度に調整することが良い。
第1温度検知材料の具体的な変色温度に関し、食品や医薬品の品質管理に適用することを想定すると、変色開始温度に関係するガラス転移点Tgは-40℃以上60℃以下であり、且つ、初期化温度に関係する融点Tmは60℃以上150℃以下であり、且つ、TgとTmとの温度差は、100℃以上150℃以下であることが好ましい。このような温度関係であれば、変色速度の極大値T1の-20℃以上60℃以下の範囲に第2温度検知材料の変色開始温度T2を調整することが好ましい。
図7Aは、第2温度検知材料の色濃度と温度との関係を示す図である。第2温度検知材料は、昇温過程で、変色開始温度T2以上に温度を上げると変色する。この際、再び温度が降下したとしても、色戻りしないことが要求される。色が元に戻ってしまうと、温度の変化の有無を把握することができないためである。すなわち、一度変色したら色戻りしない不可逆性の示温材を好ましく用いることができる。
図7Bは、第1温度検知材料及び第2温度検知材料の色濃度と温度の関係を示す図である。第2温度検知材料の変色開始温度T2は、第1温度検知材料の顕色開始温度Taよりも高く、消色開始温度Tdよりも低いことが特徴である。
また、第1温度検知材料は消色温度Td以上に加熱することで色を初期化できるという特徴があるが、第2温度検知材料にはこの機能を求めていない。第1温度検知材料の変色開始温度は食品や医薬品の管理温度近傍、すなわち冷凍・冷蔵などの低温域であることが多く、初期化機能が無いと温度検知材料の保管・運用自体が難しくなる。それに対し、第2温度検知材料は、異常加熱されたことを検知することを目的としており、初期化機能がなくても、常温での保管・運用が可能であることが多いためである。勿論、初期化機能を有する材料を用いることも可能であるが、ある温度にて急峻に変色する不可逆性の示温材は、汎用的な材料が多数存在するため、それらを用いることで、温度インジケータの低コスト化を図ることが可能である。
第2温度検知材料としては、第1温度検知材料の変色速度の極大値T1近傍の温度にて急峻に変色する不可逆性の示温材を幅広く用いることが可能である。例えば、感熱材、感熱紙、感熱シート、感熱塗料、感熱インク、感熱マイクロカプセルなど、汎用的な示温材を温度インジケータの構造に合せて選択することが可能である。
<温度インジケータの構成>
本実施形態に係る温度インジケータは、第1温度検知材料および第2温度検知材料に加えて、これらを直接的又は間接的に支持する基材を含んでいてもよい。本実施形態に係る温度インジケータは、基材と、前記第1温度検知材料および前記第2温度検知材料とを少なくとも含んでいれば、様々な構成を用いることができる。第1温度検知材料と第2温度検知材料とが接触していても良いし、基材内にて離れていても良い。またインクの中に第1温度検知材料のマイクロカプセルと第2温度検知材料のマイクロカプセルを含むことなどにより、見かけ上1種の温度検知材料として取り扱うことも可能である。
温度インジケータは以下の形態に限定されるものではないが、一例を示す。
図8は、最も簡易的な温度インジケータの例を示す模式図である。温度インジケータ4は、基材5と第1温度検知材料1と第2温度検知材料6とを有し、第1温度検知材料1と第2温度検知材料6をそれぞれ基材5の一主面上に配置している。なお、第1温度検知材料が基材5の一主面に配置され、第2温度検知材料6が基材5の他主面に配置されてもよい。
温度検知材料が基材から剥離しないように、第1温度検知材料1と第2温度検知材料6の一方、あるいは双方を透明基材や透明性のある接着剤などで覆っても良い。この温度インジケータにおいて、第1温度検知材料1の色が変色していれば、食品や医薬品が管理温度から逸脱し、品質劣化が進行していることを検知することができる。第2温度検知材料6の色が変色していれば、食品や医薬品が管理温度よりも顕著に高い温度に晒されたことを検知することができる。
図8の温度インジケータ4では、第1温度検知材料1は加熱により初期化可能である。そのため、第1温度検知材料1のみを選択的に加熱することで、温度インジケータ4の初期化が可能である。第2温度検知材料6に初期化できない材料を用いる場合、第1温度検知材料1と第2温度検知材料6とを近い位置(近接するように)に配置すると、第1温度検知材料1を選択的に初期化することは難しくなる。一方で、第3者に簡単に初期化されてしまうことを防ぐ(第3者が初期化してしまったことを検知する)ことができる。この場合も、レーザー加熱などの微細加温など、第3者が取り扱うことが難しい加熱方法を用いることで、温度インジケータの初期化は可能である。
なお、近接とは、両者が接触している状態を含み、一方と他方との間の間隔がゼロ(即ち、接触状態)又は両者の間に間隔が有る場合、その両者の距離が近いことをいう。例えば、上記の微細加熱以外の加熱方法では両者のうちの一方のみの選択的な加熱が難しいような距離は、両者の距離が近いということができる。例えば、両者の距離が、40mm以下である場合、両者の距離が近いということができる。
(基材)
本実施形態において、基材の材料は、温度インジケータに要求される機能によって自由に選択できる。温度検知材料の初期化温度としては、60℃以上150℃以下が最も好ましいため、温度インジケータを初期化することを想定する場合、この温度より耐熱性が高い基材であれば材質に依らず適用可能である。たとえば、紙やプラスチックなどの有機材料や、セラミックスや金属などの無機材料や、それらの複合材料など自由に選択可能である。高強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性、断熱性、導電性など、温度インジケータに要求される特性に合わせて選択する。シールを用いることで、検知したい対象物に対して密着させる(ラベル化する)ことも可能である。また、透明性の有無も特に限定されない。温度検知材料が基材に接していない面から変化過程を観察可能である。透明基材や透明性のある接着剤などで温度検知材料を覆っている場合も同様に、変化過程を観察可能である。一方で、接着剤に透明性が無い場合でも、基材に透明性があれば、基材の外側から温度検知材料の変色過程を観察可能である。
基材のデザイン等も限定されない。温度検知材料の変色特性以外の情報を印刷することや、温度検知材料の色を検査するために有効になる色を印刷することなどが可能である。
基材は、数種の材料で層構造を形成してもよい。たとえば、図9のように、温度検知材料1の周りを囲うように基材5を形成させてもよい。これにより、温度検知材料1の基材5に対する平滑性が高くなるため、第1温度検知材料1の色濃度の濃淡が少なくなる。
図9の一例では、第1温度検知材料1の上部を透明基材で覆っている。この透明基材および透明性のある接着剤7に、紫外線遮断材料などを含ませることで、温度検知材料1の光退色を抑制することなども可能である。また、紫外線、湿度、酸素などを検知して透明性が損なわれる材料を設けるなど、温度検知材料の変色特性以外の機能を温度インジケータに持たせることも可能である。
図9の一例では、最上部に第2温度検知材料6を配置している。この構造では、第1温度検知材料の色を視認可能な面を第2温度検知材料が覆っているため、第2温度検知材料は初期状態において透明性を有する必要がある。この場合、例えば、透明感熱シールなどを好ましく用いることができる。図10の一例のように、第2温度検知材料の配置位置をずらし、第1温度検知材料の色が視認可能であれば、第2温度検知材は透明性のない感熱シールでも問題ない。
図9の一例などでは、たとえば、温度インジケータに第1温度検知材料と第2温度検知材料をそれぞれ付与するタイミングを変えることで、実運用しやすくすることが可能である。第2温度検知材料を付与する前の温度インジケータであれば、初期化が可能であるため、温度インジケータを食品や医薬品に付与する直前に加熱初期化し、その後に第2温度検知材料を付与することで、それ以降は第3者が初期化できない温度インジケータとし取り扱うことが可能である。
次に、実施例および比較例を示しながら本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(第1温度検知材料の作製)
ロイコ染料として3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(山田化学工業製CVL)を1重量部、顕色剤として東京化成工業製没食子酸オクチルを1重量部、消色剤として東京化成工業製ビタミンK4を100重量部、マトリックス材料として三井化学製ハイワックス200Pを100重量部用いた。これらの材料を、消色剤およびマトリックス材の融点以上である150℃で溶かして混合し、自然冷却により固化させることで、相分離構造を有する温度検知材料を作製した。
(第1温度検知材料の付与)
作製した第1温度検知材料について、武蔵エンジニアリング製ジェットディスペンサAeroJetにて150℃で加熱し、液体状態にすることで、基材上に吐出した。基材としては、汎用のコート紙を用いた。
(第2温度検知材料の付与、および温度インジケータの作製)
第2温度検知材料として、東芝テック製クリアサーマルラベルを用いた。基材上に吐出した第1温度検知材料の近接位置に第2温度検知材料を貼付けることで、温度インジケータを作製した。
(変色特性の評価)
温度インジケータ作製後、1分以内に物品の管理温度として想定し、示温材のガラス転移点(5℃程度)以下である0℃に5分保持した後、30℃/分で示温材のガラス転移点以上の25℃まで昇温し、その状態での温度インジケータの色濃度の時間変化を観察した。その結果を、図11A及び図11B並びに図12に示す。なお、図11Aは出願図面の仕様上、白黒画像になっており、カラー画像にした場合、黒はその濃度に応じた濃さの青色になる(図13A及び図15Aも同様。)。図11Bは出願図面の仕様上、白黒画像になっており、カラー画像にした場合、黒はその濃度に応じた濃さの灰褐色になる(図13B及び図15Bも同様。)。
図11A及び図11Bの画像、および図12の色濃度データより、25℃の温度下において、図11Aの第1温度検知材料が時間とともに顕色(青色に顕色)していく様子が確認された。これは25℃という温度が、消色剤のガラス転移点以上であり、示温材が結晶化したためである。一方で、図11Bの第2温度検知材料は全く変色しなかった。これにより、第1温度検知材料が、管理温度以上の温度にて温度と時間の積算にて変色する過程が確認できた。
次に、再び温度インジケータ作製後、1分以内に物品の管理温度として想定し、示温材のガラス転移点以下である0℃に5分保持した後、30℃/分で示温材の融点(110℃程度)以上の150℃まで昇温し、その過程での温度インジケータの色濃度の温度依存性を観察した。その結果を、図13A及び図13B並びに図14に示す。図13A及び図13Bの画像並びに図14の色濃度データより、図13Aの第1温度検知材料が25℃近傍から変色開始し、そのまま顕色状態を保持した状態で、第2温度検知材料が80℃近傍から変色開始した。その後、第1温度検知材料が示温材の融点の110℃近傍より消色し、色が初期化される様子が確認された。これにより、第1温度検知材料の初期化が起こる前に、第2温度検知材料が高温加熱により変色する過程が確認できた。
次に、再び温度インジケータ作製後、1分以内に物品の管理温度として想定し、示温材のガラス転移点以下である0℃に5分保持した後、15℃、25℃、35℃、45℃、55℃、65℃、75℃、85℃、95℃、105℃、115℃の各温度のホットプレートに速やかに静置した際の温度インジケータの色濃度の時間変化を観察した。その結果を、図15A及び図15Bに示す。図15Aの第1温度検知材料の変色速度が最も速くなったのは55℃であり、図15Bの第2温度検知材料の変色開始は85℃以上から見られた。すなわち、第1温度検知材料の変色速度の極大値T1は55℃近傍であり、第2温度検知材料の変色開始温度をT2は75℃~85℃の間にあることが分かった。これにより、T1≦T2の関係が成立し、T2はT1より20~30℃程度高いことが確認できた。
以上より、本実施例に係る温度インジケータは、ある温度域において、時間と温度の積算で色が変化することで温度検知可能であり、その温度域以上の温度において、色が急峻に変化することで異常加熱されたことを検知可能であることが確認できた。
<<変形例>>
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態において、複数の第1温度検知材料及び複数の第2温度検知材料は、基材上に配置されるようにしてもよく、その場合、第3者に簡単に初期化されてしまうことを防ぐ観点から、近接する第1温度検知材料及び第2温度検知材料が1組以上存在するようにしてもよく、全ての第1温度検知材料のそれぞれが、少なくとも一つの第2温度検知材料に近接していることが好ましい。例えば、上記実施形態において、第2温度検知材料は、第1温度検知材料のガラス転移点と第1温度検知材料の融点との間の真ん中の温度である中間温度以上であり、且つ、第1温度検知材料の融点以下である温度範囲内に、第2温度検知材料の色変化が開始する温度である色変化開始温度を有していてもよい。