JP7743843B2 - 衛生陶器 - Google Patents
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Description
衛生陶器用の素地と、当該素地の表面に設けられた釉薬層とを備えてなり、
前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上2.5μm以下であり、
前記衛生陶器の表面は、パーフルオロポリエーテル鎖を含み、
前記衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖における、C-F結合を有する全ての炭素原子とそれに結合される酸素原子の合計数に対するC-F結合を有する全てのフッ素原子数の割合が1.1以上1.7以下であり、
前記ピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるCF3結合を有する炭素原子の数の割合が20at%以下であることを特徴とする。
本発明において、「衛生陶器」とは、バスルーム、トイレ空間、化粧室、洗面所、または台所などで用いられる陶器製品を意味する。具体的には、大便器、小便器、便器のサナ、便器タンク、洗面器、手洗い器などを意味する。
本発明において、衛生陶器用の素地1は特に限定されず、衛生陶器10に使用される公知の衛生陶器用の素地を利用できる。衛生陶器用の素地1は、珪砂、長石、石灰石、粘土などを原料として調製し成形し焼成することにより得られた、従来知られた衛生陶器用の素地であってよい。
本発明において、釉薬層2の表面の算術平均線粗さRaは、0.03μm以上2.5μm以下である。好ましくは、釉薬層2の表面の算術平均線粗さRaは、0.03μm以上1.5μm以下である。より好ましくは、釉薬層2の表面の算術平均線粗さRaは、0.03μm以上1.0μm以下である。算術平均線粗さRaは、JIS-B0633(2001年)の「7.触針式表面粗さ測定機による評価の方式及び手順」に準拠して、JIS-B0651(2001年)に準拠した触針式表面粗さ測定装置を用いて得られる。本発明において、釉薬層2の表面の算術平均線粗さRaは、衛生陶器10の表面の算術平均線粗さRaと同じであると考えられる。したがって、衛生陶器10の表面の算術平均線粗さRaを測定することにより、釉薬層2の算術平均線粗さRaを求めることが可能である。この理由は、衛生陶器10の表面に含まれるパーフルオロポリエーテル鎖3は、釉薬層2の表面の粗さに影響を与えない程度の高さを有するためである。具体的には、パーフルオロポリエーテル鎖3は、20nm以下の高さを有することが好ましい。本発明において、釉薬層2は、その表面が上記のRaを満たす限り、当業者が一般的に釉薬層と理解する組成を備えるものであってよい。本発明の一つの態様によれば、釉薬層2は、酸化物に換算して下記表1に記載される組成を備える。
本発明において、衛生陶器10は、例えば、まず、衛生陶器用の素地1の上に釉薬層2を形成し、次いで、釉薬層2の表面にパーフルオロポリエーテル鎖3を含む処理液を適用することにより製造することができる。具体的には、以下の方法により製造することができる。
本発明による衛生陶器10の表面は、パーフルオロポリエーテル鎖3を含む。パーフルオロポリエーテル鎖3は、フッ素原子が結合した炭素原子と、当該炭素原子が酸素原子を介して結合したエーテル結合を繰り返し構造中に含む鎖であり、例えば、-[(CF2)x-O]-(xは、自然数)で表される繰り返し単位を含む。具体的には、(CF2)-O、(C2F4)-O、(C3F6)-O、(C4F8)-Oなどの繰り返し単位である各エーテル結合が1つ以上ランダムに結合された鎖である。本発明において、繰り返し単位の合計数が大きい方が好ましいが、200以下であることがより好ましい。
[TOF―SIMS測定条件]
一次イオン源:Bi3+
一次イオン加速電圧:30keV
一次イオン電流値:0.2pA(at 10kHz)
一次イオンパンチング:あり
測定範囲:500μm×500μm
サイクルタイム:400μs
ピクセル数:128×128pixels
真空度:9-8hPa
二次イオン:Negative Ion
中和銃:あり
本発明において、衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、パーフルオロポリエーテル鎖3における、C-F結合を有する全ての炭素原子とそれに結合される酸素原子の合計数に対するC-F結合を有する全てのフッ素原子の数の割合(以下、「F/(C+O)比」という)は、1.1以上1.7以下である。F/(C+O)比は、1.1以上1.5以下であることが好ましい。これにより、パーフルオロポリエーテル鎖3は優れた可撓性と優れた撥水性を有する。その理由として下記が考えられるが、本発明はこれに限られるものではない。パーフルオロポリエーテル鎖は、フッ素原子と酸素原子と炭素原子とを含み、炭素原子にフッ素原子と酸素原子が結合していると考えられる。一般に、炭素原子と結合する原子は正四面体構造の頂点に位置するため、炭素単結合を軸に自由回転することができる。そのため、無数の立体配座を取ることができる。パーフルオロポリエーテル鎖のようにエーテル結合を含む場合、エーテル結合の酸素原子と結合する2つの炭素原子間において、間に位置する酸素原子の存在によって相互作用は働きにくくなり、ねじれの位置によるエネルギー的な差は殆どない。その為、エーテル結合を含む有機鎖は炭素-酸素単結合を軸に比較的自由に回転することができる。例えば、エーテル結合を多く有するパーフルオロポリエーテル鎖は、エーテル結合を持たないフルオルアルキル鎖などと比較して、その形状は自由度高く変化する。即ち、可撓性に優れると考えられる。また、パーフルオロポリエーテル鎖中に含まれるフッ素原子の数の割合が多いほど、衛生陶器表面の表面エネルギーは小さくなる。即ち、撥水性に優れると考えられる。F/(C+O)比は、炭素原子数を一定として見れば、フッ素原子と酸素原子の存在割合を示している。したがって、F/(C+O)比の値が大きいほどフッ素原子の割合が多い、即ち撥水性に優れることを意味し、逆にF/(C+O)比の値が小さいほど酸素原子の割合が多い、即ち可撓性に優れることを意味する。例えば、パーフルオロポリエーテル鎖3中に存在する酸素原子の割合が多い場合はその分フッ素原子の割合は小さくなる為、可撓性は高くなるが逆に撥水性は低下する。このように、パーフルオロポリエーテル鎖の撥水性と可撓性は互いにトレードオフの関係となっており、高耐久で防汚性の高い衛生陶器とするためにはこの撥水性と可撓性のバランスが重要であるといえる。したがって、パーフルオロポリエーテル鎖3が有する優れた撥水性と可撓性により、本発明による衛生陶器は高い防汚性と長期の耐久性、とりわけ耐摺動性を備えることができる。F/(C+O)比の算出方法は後述する。
本発明において、衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、パーフルオロポリエーテル鎖3における、C-F結合を有する全ての炭素原子の数に対するCF3結合を有する炭素原子の数の割合(以下、「CF3結合を有する炭素原子の数の割合」ともいう)は、20at%以下である。CF3結合を有する炭素原子数の割合が20at%以下であることにより、パーフルオロポリエーテル鎖31の優れた可撓性が維持されると考えられる。換言すると、CF3結合を有する炭素原子数の割合が20at%を超えると、パーフルオロポリエーテル鎖31の可撓性は低下すると考えられる。理由としては、CF3結合を有する炭素原子数の割合が20at%を超えると、側鎖にパーフルオロアルキル鎖が含まれる可能性が高くなる。これにより、立体障害が生じやすくなることで、主鎖であるパーフルオロポリエーテル鎖中に含まれるエーテル結合の回転自由度が低下し、可撓性が低下することが考えられる。
本発明において、衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、パーフルオロポリエーテル鎖3における、C-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する酸素原子の数の割合(以下、「O/C比」という)は、0.1以上であることが好ましい。O/C比は、高い方が、パーフルオロポリエーテル鎖3の可撓性が高くなるため好ましい。具体的には、O/C比は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがさらに好ましく、0.4以上であることがさらにより好ましい。これにより、パーフルオロポリエーテル鎖3は優れた可撓性を有する。その理由として下記が考えられるが、本発明はこれに限られるものではない。パーフルオロポリエーテル鎖3は、フッ素原子と酸素原子と炭素原子とを含み、炭素原子にフッ素原子と酸素原子が結合していると考えられる。一般に、炭素原子と結合する原子は正四面体構造の頂点に位置するため、炭素単結合を軸に自由回転することができる。そのため、無数の立体配座を取ることができる。パーフルオロポリエーテル鎖のようにエーテル結合を含む場合、エーテル結合の酸素原子と結合する2つの炭素原子間において、間に位置する酸素原子の存在によって相互作用は働きにくくなり、ねじれの位置によるエネルギー的な差は殆どない。その為、エーテル結合を含む有機鎖は炭素-酸素単結合を軸に比較的自由に回転することができる。例えば、エーテル結合を多く有するパーフルオロポリエーテル鎖は、エーテル結合を持たないフルオルアルキルシラン化合物などと比較して、その形状は自由度高く変化する。即ち、可撓性に優れると考えられる。そして、パーフルオロポリエーテル鎖3が有する優れた可撓性により、本発明による衛生陶器は高い耐久性、とりわけ耐摺動性を備えることができる。O/C比の算出方法は後述する。
本発明において、F/(C+O)比、CF3結合を有する炭素原子の数の割合、およびO/C比は、衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)により測定することにより得られる。なお、XPS測定する前に、衛生陶器の表面を中性洗剤とスポンジを用いて洗浄し、その後超純水にて十分にすすぎ洗いを行うことが好ましい。
XPS装置として、K-ALPHA(thermo scientific製)を用い、以下のXPS測定条件でXPS測定することによりC1s、F1s、O1sのスペクトルを得ることができる。複数のサンプルを纏めて測定する場合は、X線照射によるC―F結合の分解を回避するため、各サンプルを少なくとも1cm以上離した状態でXPS測定を行うことが好ましい。
なお、XPSは、軟X線を試料表面に照射し、試料表面のイオン化に伴い放出される光電子を補足してエネルギー分析を行う手法であり、得られるスペクトルは各電子軌道から放出される光電子ピークを示すため、得られる光電子ピークは元素記号と電子軌道で表記する(例:炭素の1s軌道から得られた光電子ピークを「C1s」と表記する)。
X線条件:単色化AlKα線、30W、12kV
分析領域:200μmφ
中和銃条件:0.1V、200μA
光電子取り出し角:90°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:55eV
分析元素(エネルギー範囲、ステップサイズ):
C1s(278-308eV、0.01eV)、F1s(679-699eV、0.03eV)、O1s(523-543eV、0.03eV)
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:200V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタサイクル:1秒
得られたスペクトルは、データ解析ソフトウェアAvantage(Version5、Thermo Scientific社製)を用いてピーク分離する。ピーク分離とは、得られたスペクトルの全体波形において、検出したピークによって波形分離し、得られたそれぞれの波形に対応する結合状態を特定することである。このピーク分離により、同一元素(本発明においては、炭素原子)でありながら、パーフルオロポリエーテル鎖に含まれる異なる結合状態の割合の算出が可能となる。ピーク分離の方法の詳細を以下に説明する。まず、得られたF1sのスペクトルにおいて、炭素原子と結合するフッ素原子に由来するピークのF1sの結合エネルギーが688.5eVとなるように、測定したC1s、F1s、O1sの結合エネルギー範囲全体におけるピーク位置を補正する。その状態で、C1sのスペクトル中に存在する結合種類(1)~(5)の光電子スペクトルについて、ピーク分離を行う。以下、C1sのピーク分離の具体的な方法について示す。まず、C1sの測定範囲における278eV(開始点)~300eV(終了点)の範囲において、shirley法によってピークのバックグラウンドを除去する。ただし、開始点と終了点については、各点を中央値とする±0.25eVの範囲の強度の平均値をその点におけるバックグラウンド強度とする。例えば、C1sの開始点278eVにおいては、中央値である278eVの±0.25eVの範囲、つまり277.75eV~278.25eVの範囲における強度の平均値を開始点のバックグラウンド強度とする。その後、C1sの結合エネルギーにおける285eVのピークをC-C結合またはC-H結合、C1sの結合エネルギーにおける286eVのピークをC-O結合、表2に記載の結合種類(1)~(5)のC1sの結合エネルギーのピークを各結合種類、C1sの結合エネルギーにおける296.8±1.0eVのピークをK2p1/2としてそれぞれ帰属させ、ピークを追加する。その他、ソフトウェア上で提案されるピークについても必要に応じて追加する。追加するピークは、ピーク形状がGauss-Lorentz分布に従うものとする。その後、下記のピークのフィッティング条件を用いてフィッティングを行うことで、各結合種類のスペクトルを得る。フィッティング結果が下記のフィッティング完了判断基準に満たない場合、画面に表示される二次微分スペクトル中の正の極大値の中で最大値を取るC1sの結合エネルギーの位置に1つピークを追加し、再度下記のピークのフィッティング条件を用いてフィッティングを行う。この操作を、下記のフィッティング完了判断基準を満たすまで行い、一度フィッティングを終える。続いて、296.8±1.0eVの範囲でK2p1/2のピークが確認される場合、以下の手順によってカリウムのピークによる影響を除く。まず、上記のフィッティングを行うことによって定められたK2p1/2の結合エネルギー、ピーク高さおよび半値幅(FWHM)の各数値をソフトウェア上で指定する。このとき、K2p3/2の結合エネルギーはK2p1/2の結合エネルギーより2.8eV小さい値とし、K2p3/2の半値幅はK2p1/2と等しいとしてソフトウェア上で数値を指定する。さらにK2p3/2のピーク面積がK2p1/2のピーク面積の1.95~2.05倍となるようにソフトウェア上でピーク高さを調整する。その後、再び下記のピークのフィッティング条件を用いてフィッティングを行うことで、カリウムのピークを考慮した各結合種類のスペクトルを得る。以上より、XPSのピーク分離を完了する。
[ピークのフィッティング条件]
Fitting Algorithm:Powell
Maximum Iterations:500
Convergence:1e-05
Gauss-Lorentz Mix:Product
[フィッティング完了判断基準]
Normalised Chi Square≦10.0
XPSのピーク分離により特定された結合種類(1)~(5)のスペクトルからデータ解析ソフトウェアAvantage(Version5、Thermo Scientific社製)を用いて結合種類(1)~(5)の組成比を算出する。
ピーク分離を行って得られた各結合種類(1)~(5)のスペクトルのピーク面積強度(Area Intensity)の合計に対する、各結合種類(1)~(5)のピーク面積強度の割合を、各結合種類(1)~(5)のパーフルオロポリエーテル鎖における組成比と定義し、at%単位で算出する。
ピーク分離によって得られた結合種類(1)~(5)の組成比から、パーフルオロポリエーテル鎖に含まれるF/(C+O)比を得る。算出された結合種類(1)~(5)の組成比からは直接的にパーフルオロポリエーテル鎖に含まれる炭素原子数、酸素原子数、およびフッ素原子数それぞれを求めることはできないため、F/(C+O)比を下記方法で算出する。パーフルオロポリエーテル鎖に含まれる炭素原子数を100であると仮定し、結合種類(1)~(5)それぞれの炭素原子の組成比もそのまま炭素原子の数として考える。結合種類(1)~(5)それぞれに結合している原子の種類は固定されている為、パーフルオロポリエーテル鎖における炭素原子数を100としたときの酸素原子数およびフッ素原子数を求めることができる。これにより、F/(C+O)比を求めることができる。
・ 中心原子の炭素原子にCが結合している場合、このCは炭素原子数にカウントしない
・ 中心原子の炭素原子にOが結合している場合、このOは1/2個としてカウントする
・ 中心原子の炭素原子にFが結合している場合、このFは1個としてカウントする
に従って、炭素原子の数は、結合種類(2)についての34.0個と、結合種類(4)についての56.0個、結合種類(5)についての10.0個との合計100個とされ、また酸素原子の数は、結合種類(2)についての34.0×2×1/2個と、結合種類(4)についての56.0×1×1/2個、そして結合種類(5)についての10.0×0×1/2との合計62.0個とされる。また、フッ素原子の数は、結合種類(2)についての34.0×2×1個と、結合種類(4)についての56.0×2×1個、そして結合種類(5)についての10.0×2×1個との合計200.0個とされる。したがって、F/(C+O)比は1.23と算出される。この算出されたF/(C+O)比の小数点第2位を四捨五入することにより、本発明のF/(C+O)比を求める。
本発明において、ピーク分離によって得られた結合種類(3)の組成比が高い、つまり20at%を超える場合、パーフルオロポリエーテル鎖が結合種類(3)を有していることを意味する。これは、パーフルオロポリエーテル主鎖が側鎖(-CF3)を有している可能性が高いことを意味する。
ピーク分離によって得られた結合種類(1)~(5)の組成比から、パーフルオロポリエーテル鎖に含まれるO/C比を得る。算出された結合種類(1)~(5)の組成比からは直接的にパーフルオロポリエーテル鎖に含まれる炭素原子数および酸素原子数それぞれを求めることはできないため、O/C比を下記方法で算出する。パーフルオロポリエーテル鎖に含まれる炭素原子数を100であると仮定し、結合種類(1)~(5)それぞれの炭素原子の組成比もそのまま炭素原子の数として考える。結合種類(1)~(5)それぞれに結合している原子の種類は固定されている為、パーフルオロポリエーテル鎖における炭素原子数を100としたときの酸素原子数を求めることができる。これにより、O/C比を求めることができる。
・ 中心原子の炭素原子にCが結合している場合、このCは炭素原子数にカウントしない
・ 中心原子の炭素原子にOが結合している場合、このOは1/2個としてカウントする
に従って、炭素原子の数は、結合種類(2)についての34.0個と、結合種類(4)についての56.0個、結合種類(5)についての10.0個との合計100個とされ、また酸素原子の数は、結合種類(2)についての34.0×2×1/2個と、結合種類(4)についての56.0×1×1/2個、そして結合種類(5)についての10.0×0×1/2との合計62.0個とされる。したがって、O/C比は0.62と算出される。この算出されたO/C比の小数点第2位を四捨五入することにより、本発明のO/C比を求める。
本発明において、後記するXPSの深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、衛生陶器表面のXPS測定点を始点とし、この始点におけるフッ素原子のピーク面積(As)に対する、ある測定点におけるフッ素原子のピーク面積(Aa)とその1点前の測定点におけるフッ素原子のピーク面積(Ab)との差の絶対値の割合が1.0at%以下となった終点までのスパッタ時間が60秒以下であることが好ましい。本発明において、釉薬層の表面に含まれるパーフルオロポリエーテル鎖3の高さは、衛生陶器の表面のXPSの深さ方向分析によるスパッタ時間を指標として特定することができる。
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:200V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタサイクル:1秒
なお、スパッタ電圧とはArイオン銃に印加する電圧、スパッタ範囲とはスパッタリングにより削る表面の範囲を指す。また、スパッタサイクルとは深さ方向の一測定ごとにArガスを連続して照射した時間を指し、スパッタサイクルの総和をスパッタ時間とする。
終点:|Ab-Aa|/As≦0.01
1-1.衛生陶器用の素地、および釉薬層の作製
<衛生陶器用の素地の作製>
珪砂、長石、石灰石、粘土などを原料として調製した衛生陶器用の泥漿を、石膏型で鋳込み成形し、成形体を得た。この成形体を乾燥させた。なお、乾燥させた成形体を後記の焼成工程において焼成したものが「衛生陶器用の素地」である。
酸化物に換算して以下の表3に記載される組成を備える複数の釉薬原料を用意した。各釉薬原料600g、水400gおよびアルミナボール1kgを、容積2リットルの陶器製ポット中に入れ、ボールミルにより約65時間粉砕して、釉薬を得た。
釉薬層の表面に存在する汚れを除去し、表面に存在する水酸基を活性化するため、後述する前処理1または2を行った。
まず、中性洗剤(製品名:クリーンエース、アズワン製)を市販のスポンジiに含ませて釉薬層表面を洗浄した。次いで、セリア粉(Treibacher Industrie AG社製)を釉薬層表面に少量振りかけて、市販のスポンジiiで洗浄した。次いで、釉薬層表面に流水を当てながら、市販のスポンジiiiで残存しているセリア粉を除去し、さらに超純水を当てて洗浄した(スポンジi、ii、iiiは異なるものであり、それぞれ分けて使用した)。
その後、アルカリ性洗剤(製品名:セミクリーン、横浜油脂工業製)の濃度を、イオン交換水で5wt%に調整した、アルカリ性洗剤入り水溶液に釉薬層を浸漬させ、5分間超音波洗浄した。次いで、釉薬層表面に超純水を当ててアルカリ性洗剤を除去した。さらに、釉薬層を超純水に浸漬させ、5分間超音波洗浄した。次いで、釉薬層表面に超純水を再度当てて、エアダスターで水分を除去した。
まず、中性洗剤(製品名:クリーンエース、アズワン製)を市販のスポンジiに含ませて釉薬層表面を洗浄した。次いで、釉薬層表面に流水を当てて中性洗剤を除去した。
その後、アルカリ性洗剤(製品名:セミクリーン、横浜油脂工業製)の濃度を、イオン交換水で5wt%に調整した、アルカリ性洗剤入り水溶液に釉薬層を浸漬させ、5分間超音波洗浄した。次いで、釉薬層表面に超純水を当ててアルカリ性洗剤を除去した。さらに、釉薬層を超純水に浸漬させ、5分間超音波洗浄した。次いで、釉薬層表面に超純水を再度当てて、エアダスターで水分を除去した。
<試薬の調製>
パーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物またはフルオロアルキル鎖を含む化合物を含む下記試薬a~gを調製した。なお、試薬a~gすべてにおいて、フッ素が結合した炭素原子を含む部分構造を明記している。各試薬に含まれる有効成分の構造式において、XSiは、Si原子を少なくとも一つ含み、Si原子にフッ素原子を含まない有機基と、水酸基または加水分解可能な基とが結合したものを意味する。加水分解可能な基とは、アルコキシ基、ハロゲノ基を意味する。具体的には、-OCH3、-OCH2CH3、-Clである。
・フルオロアルキルエーテル(CAS No.163702-06-4) 30-40%
・フルオロアルキルエーテル(CAS No.163702-06-5) 40-50%
・式(a)のパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物(有効成分)10-20%
・エチルノナフルオロブチルエーテル(CAS No.163702-05-4) 25-35%
・エチルノナフルオロイソブチルエーテル(CAS No.163702-06-5) 45-55%
・式(b)のパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物(有効成分)15-25%
・エチルノナフルオロブチルエーテル(CAS No.163702-05-4) 25-35%
・エチルノナフルオロイソブチルエーテル(CAS No.163702-06-5) 45-55%
・式(c)のパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物(有効成分)15-25%
・1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(CAS No.80793-17-5)
99.5%以上
・式(d)のパーフルオロポリエーテル鎖含有シラン化合物(有効成分)0.5%未満
・エチルノナフルオロブチルエーテル(CAS No.163702-05-4) 25-35%
・エチルノナフルオロイソブチルエーテル(CAS No.163702-06-5) 45-55%
・式(e)のパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物(有効成分)15-25%
・フルオロアルキルエーテル 80-85%
・式(f)のパーフルオロポリエーテル鎖(CF3側鎖を含む)を含む化合物(有効成分) 15-20%
・式(g)のフルオロアルキル鎖を含む化合物(有効成分,CAS No.83048-65-1)>98.0%
フッ素溶媒(製品名:NOVEC7200、スリーエム製)30gに、試薬aを206μL滴下し、軽く攪拌し、試薬aの有効成分の濃度が約0.1wt%である処理液aを得た。同様の方法により、試薬b、c、e、f、gを含む処理液b、c、e、f、gを得た。試薬dは、有効成分の濃度が0.1wt%であったため、フッ素溶媒による希釈はせずに、試薬dをそのまま処理液dとして用いた。
前処理1をした基材Aの表面に、スプレーガンを用いて圧力0.04MPaで処理液aを塗布し、30秒間静置し、120℃の乾燥炉で30分間熱乾燥を行った。その後、温度80℃、湿度80%に設定した恒温恒湿槽で3時間、室温大気圧下で17時間の養生を行い、実施例1の衛生陶器を得た。
同様の方法にて、下記表7に示す前処理を行った基材A~Fおよび各処理液を用いて、実施例2~15および比較例1~10の衛生陶器を得た。
上記のとおり作製した衛生陶器(実施例1~15、比較例1~10)について、以下の分析・評価を行った。
実施例1~5および比較例1~2の衛生陶器について、各衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)により測定した。なお、測定前に、各衛生陶器の表面を中性洗剤とスポンジを用いて洗浄し、その後超純水にて十分にすすぎ洗いを行った。
X線条件:単色化AlKα線、30W、12kV
分析領域:200μmφ
中和銃条件:0.1V、200μA
光電子取り出し角:90°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:55eV
分析元素(エネルギー範囲、ステップサイズ):
C1s(278-308eV、0.01eV)、F1s(679-699eV、0.03eV)、O1s(523-543eV、0.03eV)
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:200V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタサイクル:1秒
得られたスペクトルについて、データ解析ソフトウェアAvantage(Version5、Thermo Scientific社製)を用いてピーク分離した。
まず、得られたF1sのスペクトルにおいて、炭素原子と結合するフッ素原子に由来するピークのF1sの結合エネルギーが688.5eVとなるように、測定したC1s、F1s、O1sの結合エネルギー範囲全体におけるピーク位置を補正した。その状態で、C1sのスペクトル中に存在する結合種類(1)~(7)の光電子スペクトルについて、ピーク分離を行った。以下、C1sのピーク分離の具体的な方法について示す。まず、C1sの測定範囲における278eV(開始点)~300eV(終了点)の範囲において、shirley法によってピークのバックグラウンドを除去した。ただし、開始点と終了点については、各点を中央値とする±0.25eVの範囲の強度の平均値をその点におけるバックグラウンド強度とした。例えば、C1sの開始点278eVにおいては、中央値である278eVの±0.25eVの範囲、つまり277.75eV~278.25eVの範囲における強度の平均値を開始点のバックグラウンド強度とした。その後、C1sの結合エネルギーにおける285eVのピークをC-C結合またはC-H結合、C1sの結合エネルギーにおける286eVのピークをC-O結合、表5に記載の結合種類(1)~(7)のC1sの結合エネルギーのピークを各結合種類、C1sの結合エネルギーにおける296.8±1.0eVのピークをK2p1/2としてそれぞれ帰属させ、ピークを追加した。その他、ソフトウェア上で提案されるピークについても必要に応じて追加した。追加したピークは、ピーク形状がGauss-Lorentz分布に従うものとした。その後、下記のピークのフィッティング条件を用いてフィッティングを行うことで、各結合種類のスペクトルを得た。フィッティング結果が下記のフィッティング完了判断基準に満たない場合、画面に表示される二次微分スペクトル中の正の極大値の中で最大値を取るC1sの結合エネルギーの位置に1つピークを追加し、再度下記のピークのフィッティング条件を用いてフィッティングを行った。この操作を、下記のフィッティング完了判断基準を満たすまで行い、一度フィッティングを終えた。続いて、296.8±1.0eVの範囲でK2p1/2のピークが確認された処理液a、b、d、e、f、gについて、以下の手順によってカリウムのピークによる影響を除いた。まず、上記のフィッティングを行うことによって定められたK2p1/2の結合エネルギー、ピーク高さおよび半値幅(FWHM)の各数値をソフトウェア上で指定した。このとき、K2p3/2の結合エネルギーはK2p1/2の結合エネルギーより2.8eV小さい値とし、K2p3/2の半値幅はK2p1/2と等しいとしてソフトウェア上で数値を指定した。さらにK2p3/2のピーク面積がK2p1/2のピーク面積の1.95~2.05倍となるようにソフトウェア上でピーク高さを調整した。その後、再び下記のピークのフィッティング条件を用いてフィッティングを行うことで、カリウムのピークを考慮した各結合種類のスペクトルを得た。以上より、XPSのピーク分離を完了した。
[ピークのフィッティング条件]
Fitting Algorithm:Powell
Maximum Iterations:500
Convergence:1e-05
Gauss-Lorentz Mix:Product
[フィッティング完了判断基準]
Normalised Chi Square≦10.0
ピーク分離により特定された結合種類(1)~(7)のスペクトルから、データ解析ソフトウェアAvantage(Version5、Thermo Scientific社製)を用いて結合種類(1)~(7)の組成比を算出した。具体的には、XPS測定・ピーク分離して得られた結合種類(1)~(7)のスペクトル全てのピーク面積強度の合計に対する、各結合種類(1)~(7)のスペクトルのピーク面積強度の割合を、各結合種類(1)~(7)のパーフルオロポリエーテル鎖またはフルオロアルキル鎖における組成比と定義し、at%単位で算出した。結果を表6に示す。
パーフルオロポリエーテル鎖における結合種類(3)の組成比を算出した。得られた結果を下記表7に示す。
ピーク分離によって得られた結合種類(1)~(7)の組成比から、既に説明した手法を用いて、パーフルオロポリエーテル鎖またはフルオロアルキル鎖のF/(C+O)比を算出した。結果を下記表7に示す。
ピーク分離によって得られた結合種類(1)~(7)の組成比から、既に説明した手法を用いて、パーフルオロポリエーテル鎖またはフルオロアルキル鎖のO/C比を算出した。結果を下記表7に示す。
衛生陶器の表面について、XPSの深さ方向分析を行った。衛生陶器表面のXPS測定後、前述の「XPS測定条件」と「スパッタリング条件」とを用い、Arイオンを使用したスパッタリングとXPS測定を交互に繰り返した。XPS測定は、スパッタリング条件の「スパッタサイクル」ごとに行った。XPSの深さ方向分析により、スペクトル情報を得た。各衛生陶器の表面のXPS測定点を始点とし、この始点におけるフッ素原子のピーク面積(As)に対する、ある測定点におけるフッ素原子のピーク面積(Aa)とその1点前の測定点におけるフッ素原子のピーク面積(Ab)との差の絶対値の割合が1.0at%以下となった点を終点とし、上記始点から終点までのスパッタ時間を求めた。結果を表7に示す。
各衛生陶器について、下記の耐久試験1または耐久試験2の後、水垢清掃性評価を行った。
衛生陶器表面にイオン交換水を1~2mL滴下し、スポンジ(スコッチブライト(登録商標)ハイブリッド貼り合わせスポンジ、スリーエムジャパン製)の不織布部分を荷重50g/cm2で表面に押し当て、その状態からスポンジを20000回往復させた。
40℃に維持したアルカリ性洗浄剤(カビキラー、ジョンソン株式会社製)に各衛生陶器を16時間浸漬した。その後、衛生陶器を取り出し、流水を当て、次いで超純水を当ててエアダスターで水分を飛ばした。次いで、上述の耐久試験1(摺動試験)を行った。
25℃に維持したアルカリ性洗浄剤(カビキラー、ジョンソン株式会社製)に各衛生陶器を1.6時間浸漬した。その後、各衛生陶器を取り出し、流水を当て、次いで超純水を当ててエアダスターで水分を飛ばした。次いで、各衛生陶器表面にイオン交換水を1~2mL滴下し、スポンジ(スコッチブライト(登録商標)ハイブリッド貼り合わせスポンジ、スリーエムジャパン製)の不織布部分を荷重50g/cm2で表面に押し当て、その状態からスポンジを6000回往復させた。
水100mL中にシリカ(Si)を9.0~10.0mg含み、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)をそれぞれ1.0~2.0mg含み、カリウムを0~1.0mg含む市販の水をイオン交換水で5.5倍に希釈し、試験水を作製した。この試験水200μLを耐久試験1後の衛生陶器表面、耐久試験2後の衛生陶器表面、または耐久試験3後の衛生陶器表面に滴下し、大気圧下で温度25℃、湿度70%に設定した恒温恒湿槽内で16時間乾燥させることで表面に水垢を形成させた。
2 釉薬層
3 パーフルオロポリエーテル鎖
10 衛生陶器
Claims (5)
- 衛生陶器用の素地と、当該素地の表面に設けられた釉薬層とを備えてなる衛生陶器であって、
前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上2.5μm以下であり、
前記衛生陶器の表面は、下記の式7で表されるパーフルオロポリエーテル鎖:
(式中、p,q,r,sは繰り返し単位の数、すなわち0以上の整数であり、p,q,r,sの和は3~200であり、式中の各繰り返し単位はランダムに結合したものであってもよく、各繰り返し単位からなるそれぞれの高分子鎖同士が結合したものであってもよい。Rf1及びRf2はそれぞれ水素原子がフッ素原子に置換された、炭素原子を含む有機鎖を表す。)
を含み、
前記パーフルオロポリエーテル鎖が膜を形成してなり、
前記衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、前記衛生陶器の表面における、C-F結合を有する全ての炭素原子とそれに結合される酸素原子の合計数に対するC-F結合を有する全てのフッ素原子数の割合が1.1以上1.7以下であり、
前記ピーク分離によって得られる、前記衛生陶器の表面における、C-F結合を有する全ての炭素原子の数に対するCF3結合を有する炭素原子の数の割合が20at%以下であり、
XPSの深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、前記衛生陶器の表面のXPS測定点を始点とし、この始点におけるフッ素原子のピーク面積(As)に対する、ある測定点におけるフッ素原子のピーク面積(Aa)とその1点前の測定点におけるフッ素原子のピーク面積(Ab)との差の絶対値の割合が1.0at%以下となった終点までのスパッタ時間が60秒以下であり、
前記XPSの深さ方向分析は、下記XPS測定条件:
X線条件:単色化AlKα線、30W、12kV
分析領域:200μmφ
中和銃条件:0.1V、200μA
光電子取り出し角:90°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:55eV
分析元素(エネルギー範囲、ステップサイズ):C1s(278-308eV、0.01eV)、F1s(679-699eV、0.03eV)、O1s(523-543eV、0.03eV)
でのXPS測定と、下記スパッタリング条件:
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:200V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタサイクル:1秒
でのスパッタリングとを併用して実施されることを特徴とする衛生陶器。 - 前記式7で表されるパーフルオロポリエーテル鎖は、下記の式8~12で表されるパーフルオロポリエーテル鎖:
(式中、l:m:n=23.2:22.3:0.4(平均値)であり、式中の繰り返し単位はランダムに配列している。);
(式中、lの平均値は22.9である。);
(式中、lの平均値は23.2である。);
(式中、lの平均値は18である。);
(式中、lの平均値は23.4である。)
から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の衛生陶器。 - 前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上1.5μm以下である、請求項1または2に記載の衛生陶器。
- 前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上1.0μm以下である、請求項3に記載の衛生陶器。
- 前記衛生陶器の表面における、C-F結合を有する全ての炭素原子とそれに結合される酸素原子の合計数に対するC-F結合を有する全てのフッ素原子数の割合が1.1以上1.5以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の衛生陶器。
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