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JP7745595B2 - 正極活物質およびその製造方法、ならびに正極活物質を備えた非水電解質二次電池 - Google Patents
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JP7745595B2 - 正極活物質およびその製造方法、ならびに正極活物質を備えた非水電解質二次電池 - Google Patents

正極活物質およびその製造方法、ならびに正極活物質を備えた非水電解質二次電池

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Description

本発明は、正極活物質およびその製造方法、ならびに正極活物質を備えた非水電解質二次電池に関する。
非水電解質二次電池の正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が広く用いられている。また近年、電池特性を改善する目的で、粒子状のリチウム遷移金属複合酸化物の表面に、タングステンを含む化合物をコートすることがなされている(特許文献1~4参照)。これに関連して、例えば特許文献1には、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物とタングステン酸ニッケルとを混合して混合物を得る工程と、上記混合物を、例えば150℃で乾燥する工程と、を含む、正極活物質の製造方法が開示されている。
特開2019-133839号公報 特開2010-040383号公報 国際公開第2013/015069号 国際公開第2015/141194号
非水電解質二次電池は、その普及に伴い、さらなる性能の向上が求められている。特に、車両等の移動体に搭載される高入出力タイプの蓄電デバイスでは、入出力特性とサイクル特性とを高いレベルで兼ね備えることが求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、入出力特性とサイクル特性とを高いレベルで兼ね備える非水電解質二次電池を実現できる正極活物質を提供することにある。
本発明により、粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、上記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に付着した被覆層と、を備え、上記被覆層は、CoおよびMnから選択される第1元素と、6族に属する第2元素と、を含む複合酸化物を含み、透過電子顕微鏡での断面観察に基づく平均厚みが50nm以上200nm以下である、正極活物質が提供される。
粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物が上記被覆層を備えることで、電解質との反応を抑制でき、優れたサイクル特性を実現できる。また、被覆層の厚みを所定値以下とすることで、Li移動が阻害されにくくなり、優れた入出力特性を実現できる。したがって、上記構成によれば、入出力特性とサイクル特性とを高いレベルで兼ね備えた非水電解質二次電池を好適に実現できる。
また、本発明により、粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、CoおよびMnから選択される第1元素および6族に属する第2元素を含む化合物と、を混合して、混合物を得る混合工程と、酸素の存在下、上記混合物を500℃以上800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を含む、正極活物質の製造方法が提供される。これにより、上記したような正極活物質を好適に製造することができる。
図1は、一実施形態に係る正極活物質を模式的に示す断面図である。 図2は、一実施形態に係る非水電解質二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。 図3は、例1の正極活物質の断面SEM観察画像である。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明のいくつかの好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない非水電解質二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握されうる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池全般をいう。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
〔正極活物質〕
図1は、一実施形態に係る正極活物質1を模式的に示す断面図である。正極活物質1は、母材となるNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2と、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の表面の少なくとも一部に付着した被覆層4と、を備える。被覆層4は、典型的には、物理的および/または化学的な結合によって、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に付着している。被覆層4は、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に融着していることが好ましい。なお、図1は、例示であり図示されたものに限定されない。
Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2は、必須元素としてLi元素とNi元素とを含む複合酸化物である。Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の具体例として、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムニッケルコバルト系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2は、Niに加えて、Co、Mnのうちの少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。なかでも、初期抵抗が小さい等、電池特性に優れることから、Ni、Co、Mnを含むリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が好ましい。
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ba、Sr、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、K、Fe、Cu、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムニッケルコバルト系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物は、電池のエネルギー密度を向上する観点から、リチウム以外の金属元素の合計に対するNi含有量を70モル%以上と高くした高Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物を含むことが好ましい。Niの含有量は、75モル%以上、例えば80モル%以上であることが好ましい。本発明者の知見によれば、高Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物は、Ni含有量が低いリチウム複合酸化物に比べて、相対的にサイクル特性が低下しやすい。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。
リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物は、下式(I)で表される組成を有することが好ましい。
LiαNiMnCo (I)
上記式(I)中の、α、x、y、z、およびtはそれぞれ、1.00≦α≦1.30、0.25<x<0.90、0<y<0.60、0<z<0.60、0≦t≦0.10、x+y+z+t=1を満たす。0<tのとき、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ta、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。
αは、好ましくはα≦1.20を満たし、より好ましくはα≦1.10を満たす。電池特性(例えば入出力特性やサイクル特性)を向上する観点から、xは、好ましくは0.5≦xを満たし、より好ましくは、0.7≦xを満たし、例えば0.8≦x≦0.9であり、yは、好ましくは0.01≦yを満たし、より好ましくは、0.03≦y≦0.20を満たし、例えば0.05≦y≦0.1であり、zは、好ましくは0.01≦z≦0.50を満たし、より好ましくは0.05≦z≦0.30を満たし、例えば0.10≦z≦0.20である。tは、好ましくは0≦t≦0.05を満たし、より好ましくは0である。
Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2は、層状岩塩型の結晶構造を有することが好ましい。このような結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物等が挙げられる。ただし、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の結晶構造は、スピネル構造等であってもよい。なお、結晶構造は、X線回折法等で確認できる。
図1において、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2は粒子状である。Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の形状は特に限定されないが、ここでは略球状である。ただし、不定形状等であってもよい。なお、本明細書において「略球状」とは、全体として概ね球体と見なせる形態を示し、電子顕微鏡の断面観察画像に基づく平均アスペクト比(長径/短径比)が、概ね1~2、例えば1~1.5であることをいう。
いくつかの実施形態において、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2は、複数の一次粒子が物理的または化学的な結合力によって凝集してなる二次粒子状であることが好ましい。Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2(すなわち二次粒子)は、多数の一次粒子が集合して1つの粒子が形成された一次粒子の集合体であることが好ましい。なお、本明細書において「一次粒子」とは、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2を構成する粒子の最小単位をいい、具体的には、外見上の幾何学的形態から判断した最小の単位をいう。1つの二次粒子を構成する一次粒子の数は、典型的には10個以上、例えば20個以上、好ましくは100個以上、より好ましくは数百個以上である。なお、1つの二次粒子における一次粒子の数は、電子顕微鏡(例えば、走査電子顕微鏡)を用いて、1万~3万倍の拡大倍率で二次粒子を観察することにより、確認できる。
特に限定されるものではないが、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2が二次粒子状である場合、二次粒子の平均粒子径(D50)は、電池特性(例えば入出力特性やサイクル特性)を向上する観点から、1~50μmが好ましく、3~30μmがより好ましい。なお、本明細書において「平均粒子径(D50)」とは、メジアン径(D50)を指し、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径を意味する。
二次粒子を構成する一次粒子の平均一次粒子径は、二次粒子の機械的強度と電池のサイクル特性とを好適に高める観点から、0.1~2μm以上が好ましく、0.2~1μmがより好ましく、0.4~0.5μmが特に好ましい。なお、本明細書において「平均一次粒子径」とは、上記断面観察画像から把握され、かつ任意に選ばれる複数(例えば10個以上)の一次粒子の長径の平均値を指す。平均一次粒子径は、例えば、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(例えば「Mac-View」)を用いて、上記断面観察画像から任意に選択した複数の一次粒子の長径をそれぞれ求め、その平均値を算出することにより求めることができる。
また、いくつかの実施形態において、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2は、単粒子状であってもよい。なお、本明細書において「単粒子」とは、単一の結晶核の成長によって生成した粒子であり、よって結晶粒界を含まない単結晶体の粒子をいう。1つの単粒子を構成する一次粒子の数は、典型的には10個未満、例えば2~5個程度である。粒子が単結晶体であることは、例えば、電子顕微鏡(例えば、走査電子顕微鏡)による電子線回折像の解析によって確認できる。
被覆層4は、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の表面の少なくとも一部に付着し、正極活物質1の少なくとも一部の外表面を構成している。被覆層4によるNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2の被覆率は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、95%以上(すなわち、実質的にNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2の全体を覆っていること)が特に好ましい。なお、被覆層4が二次粒子の表面に付着していること、および、被覆層4で被覆されている部分の割合(被覆率)は、例えば正極活物質1に対して後述のX線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析を行うこと等によって確認できる。
被覆層4は、第1元素と第2元素とを含む複合酸化物(以下、「被覆酸化物」ともいう。)を含んでいる。第1元素は、コバルト(Co)および/またはマンガン(Mn)である。第1元素は、Coを含むことが好ましく、Coであることがより好ましい。これにより、入出力特性とサイクル特性とをより高いレベルでバランスして、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。第2元素は、6族(クロム族)に属する元素、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種を含んでいる。なかでも、Wを含むことが好ましく、Wであることがより好ましい。これにより、入出力特性とサイクル特性とをより高いレベルでバランスして、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。
被覆酸化物は、下式(II)で表される組成を有することが好ましい。
AeAe (II)
上記式(II)中のAeは、上記第1元素であり、Aeは、上記第2元素である。被覆酸化物の具体例として、CoWO、MnWO、CoCrO、MnCrO、CoMoO、MnMoO等が挙げられる。
被覆層4は、上記した被覆酸化物で構成されていてもよいし、例えば被覆層4のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2に近い部分では、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に由来する元素を含んだ化合物(例えばLi化合物)が含まれていてもよい。被覆層4の全体に占める被覆酸化物の割合は、質量基準で、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上(すなわち、実質的に被覆層4が被覆酸化物で構成されていること)が特に好ましい。
被覆層4は、透過電子顕微鏡での断面観察に基づく平均厚みが、50~200nmである。平均厚みを所定値以上とすることで、電解質との反応を好適に抑制できる。その結果、充放電を繰り返してもSEI(Solid Electrolyte Interface)膜の成長が抑えられ、電池のサイクル特性を適切に向上できる。かかる観点から、被覆層4の平均厚みは、60nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上が特に好ましい。また、平均厚みを所定値以下とすることで、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2のLi移動が阻害されにくくなるため、正極の抵抗を低減でき、電池の入出力特性を適切に向上できる。かかる観点から、被覆層4の平均厚みは、190nm以下が好ましく、170nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。
被覆層4は、WOを実質的に含まないことが好ましい。これにより、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2のLi移動が阻害されにくくなるため、電池特性(例えばエネルギー密度や入出力特性)を向上できる。被覆層4は、LiWOを実質的に含まないことが好ましい。これにより、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2からのLiの溶出を抑制でき、電池特性(例えばサイクル特性)を向上できる。
被覆層4は、Ni元素を実質的に含まないことが好ましい。被覆層4は、特許文献1に記載されるようなNiWOを実質的に含まないことが好ましい。本発明者の検討によれば、NiWOを含む場合、後述する製造方法の(2)焼成工程で、NiとLiの反応によりNiがLi層に移行する、所謂、カチオンミキシングが生じることがある。NiWOを実質的に含まないことで、電池特性(例えばエネルギー密度やサイクル特性)をより良く向上できる。なお、本明細書において、「実質的に含まない」とは、ここに開示される技術の効果を著しく阻害しない限りにおいて、対象成分をごく微量含有する場合を許容する用語であり、例えば被覆層4に占める対象成分の割合が、1質量%未満であることをいう。
被覆層4がNiを実質的に含まない場合、正極活物質1は、XPS分析によって最表面から深さ10nmまでの領域を測定し、この領域において、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に含まれる遷移金属元素と、被覆層4に含まれる第1元素および第2元素と、の合計を100mol%としたときに、上記Ni元素の割合は、概ね3mol%以下であることが好ましく、1mol%以下であることが好ましい。上記XPS分析において、Ni元素は検出下限以下であることがより好ましい。上記Ni元素の割合は、被覆層4の厚みを表す指標となる。上記Ni元素の割合が所定値以下(好ましくは検出下限以下)であることは、被覆層4の厚みが10nm以上あることを示す。上記Ni元素の割合が所定値以下であることにより、電池のサイクル特性をさらに向上できる。なお、XPS分析の詳しい測定条件は、後述する実施例に示す。
被覆層4がNiを実質的に含まない場合、正極活物質1は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によって表面の縦3μm×横3μmの範囲を観察し、エネルギー分散型X線(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)分析で元素マッピングを行い、この範囲において、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に含まれる遷移金属元素と、被覆層4に含まれる第1元素および第2元素との合計を100mol%としたときに、Ni元素の割合が、概ね10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることがより好ましい。上記Ni元素の割合は、正極活物質1の最表面に露出しているNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2の割合、言い換えれば被覆層4のコーティングのバラつきを示す指標となる。すなわち、上記Ni元素の割合が所定値以下であることは、被覆層4によるNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2の被覆率が高く、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に被覆層4が満遍なくコートされていることを示す。上記Ni元素の割合が所定値以下であることにより、電池のサイクル特性をさらに向上できる。なお、SEM-EDX分析の詳しい測定条件は、後述する実施例に示す。
〔正極活物質の製造方法〕
上記したような正極活物質1は、例えば、(1)混合工程と、(2)焼成工程とを、この順に含む製造方法によって好適に製造することができる。ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
(1)混合工程は、母材としての粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2と、被覆酸化物源と、を混合して、混合物を得る工程である。混合方法は特に限定されず、従来公知の乾式混合法や湿式混合法を採用することができる。簡便性およびコスト性の観点からは乾式混合法が好ましい。乾式混合は、従来公知の手法、例えば、ジェットミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ディスパー、乳鉢等で行いうる。なお、乾式混合の際は、被覆酸化物源をより均一に被覆させるよう、分散剤としてエタノールを適宜添加してもよい。粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2は、従来公知の手法(例えば晶析法)で製造することもできるし、市販品を購入して用意してもよい。被覆酸化物源は、CoおよびMnから選択される第1元素と、6族に属する第2元素と、を含む化合物である。被覆酸化物源は、酸化物であってもよい。被覆酸化物源としては、例えばCoWO、MnWO等が挙げられる。
Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2と被覆酸化物源との混合比は、例えば被覆層4の厚みが50~200nmの所望の値となるように決定するとよい。Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の平均粒子径等によっても異なりうるが、例えば、被覆層4の厚みを10nm程度とするには、被覆酸化物源を、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に対して、概ね0.01質量%(100ppm)程度添加することが好ましく、被覆層4の厚みを100~150nm程度とするには、被覆酸化物源を、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に対して、概ね0.1質量%(1000ppm)程度添加することが好ましく、被覆層4の厚みを1000nm程度とするには、被覆酸化物源を、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2に対して、概ね1質量%(10000ppm)程度添加することが好ましい。
(2)焼成工程は、酸素の存在下、上記混合工程で得られた混合物を500~800℃の温度で焼成する工程である。本発明者の検討によれば、焼成温度を500℃以上とすることで、被覆酸化物源を好適に溶融させて、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物2の表面に融着させることができる。そのため、例えば特許文献1に記載されるように150℃で低温コーティングを行う場合に比べて、相対的に被覆層4の形成ムラを低減して、被覆率を高められる。また、バラつきの少ない被覆層4を形成できる。かかる観点から、焼成温度は、600℃以上が好ましく、700℃以上がより好ましい。焼成温度の上限は、高温焼成時のリチウムの揮発によるリチウム減少と、2次粒子の成長の観点から、概ね900℃以下、例えば850℃以下とするとよい。焼成時間は、概ね1~24時間、好ましくは5~12時間とするとよい。昇温速度は、例えば5~40℃/分とするとよい。焼成雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、酸素雰囲気ないし大気雰囲気が好ましい。このようにして、母材としてのNi含有リチウム遷移金属複合酸化物2の表面に被覆酸化物を付着させ、ここで開示される正極活物質1を製造できる。
〔非水電解質二次電池〕
図2は、一実施形態に係る非水電解質二次電池100の内部構造を模式的に示す断面図である。図2に示す非水電解質二次電池100は、扁平形状の電極体20と、非水電解質80とが、扁平な角形の電池ケース30に収容され密閉されてなる角型電池である。なお、図2は、例示であり図示されたものに限定されない。非水電解質二次電池は、他の実施形態において、コイン型、ボタン型、円筒型、ラミネートケース型等であってもよい。
電池ケース30は、電極体20と非水電解質80とを収容する外装容器である。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。電池ケース30の外表面には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36と、が設けられている。正極端子42は正極集電板42aと電気的に接続され、負極端子44は負極集電板44aと電気的に接続されている。
電極体20は、ここでは、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の帯状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態の捲回電極体である。ただし、他の実施形態において、電極体は、矩形状の正極と矩形状の負極とが矩形状のセパレータを介して積層されてなる積層電極体であってもよい。図2に一部破断して示すように、正極シート50は、帯状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に、長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、帯状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に、長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。
電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交する幅方向)の両端には、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した正極活物質層非形成部分52a、および負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した負極活物質層非形成部分62aが、外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aは、それぞれ集電部として機能する。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ、正極集電板42aおよび負極集電板44aが設けられている。なお、正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aの形状は、図示例のものに限られない。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aは、所定の形状に加工された集電タブとして形成されていてもよい。
正極集電体52は、帯状である。正極集電体52は、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。正極集電体52は、ここではアルミニウム箔である。正極活物質層54は、少なくとも上記した正極活物質1を含んでいる。正極活物質層54は、上記した正極活物質1以外の種類の正極活物質を含んでもよい。正極活物質層54に含まれる正極活物質全体を100質量%としたときに、上記した正極活物質1の割合は、概ね50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、例えば85~100質量%であるとよい。これにより、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮できる。
正極活物質層54は、さらに正極活物質以外の添加成分を含んでもよい。添加成分としては、例えば、導電材、バインダ、リン酸三リチウム等が挙げられる。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、グラファイト等の炭素材料が挙げられる。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂が挙げられる。
特に限定されないが、正極活物質層54の全体を100質量%としたときに、正極活物質の割合は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80~99質量%であり、さらに好ましくは85~98質量%である。導電材の割合は、0.5~15質量%が好ましく、例えば1~10質量%、さらには1~5質量%がより好ましい。バインダの割合は、0.5~15質量%が好ましく、例えば0.8~10質量%、さらには1~5質量%がより好ましい。
負極集電体62は、帯状である。負極集電体62は、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。負極集電体62は、ここでは銅箔である。負極活物質層64は負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、例えば、Si、SiO(酸化ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)等のSi含有材料や、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用しうる。負極活物質層64は、負極活物質以外の添加成分を含んでもよい。添加成分としては、例えば、バインダ、増粘剤等が挙げられる。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂が挙げられる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース類が挙げられる。
セパレータシート70は、帯状である。セパレータシート70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル等の樹脂製の多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータシート70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
非水電解質80は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する非水電解液である。ただし、他の実施形態において、ポリマー電解質であってもよい。非水溶媒としては、一般的な非水電解質二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類等の有機溶媒を、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF等のリチウム塩が挙げられる。
非水電解質二次電池100は、各種用途に利用可能であるが、入出力特性とサイクル特性とを高いレベルで兼ね備えることから、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
以下、本発明に関する例を説明するが、本発明をかかる例に示すものに限定することを意図したものではない。
<正極活物質の準備>
〔例1~7〕 例1~7では、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物に被覆層を形成したものを正極活物質として用意した。すなわち、まず、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物として、次の式:Li1.04Ni0.83Co0.06Mn0.1;で示される粒子状のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)を用意した。次に、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物と、表1に示す被覆酸化物源とを乾式混合した(混合工程)。なおこのとき、混合比は、焼成後の被覆層が表1に示す厚みとなるように調整した。例えば例3では、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物と被覆酸化物源との混合比を、1.00mol:0.0005molとした。そして、酸素雰囲気下において、790℃で8時間焼成することにより、被覆酸化物源を溶融させ、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物の表面に被覆層を融着させた(焼成工程)。以上のようにして、正極活物質を得た。
〔参考例〕 参考例では、上記組成のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)をそのまま正極活物質として使用した。
<正極活物質の評価1(XPS)>
例1~3,7と参考例の正極活物質について、下記条件でXPS分析を行った。そして、測定元素の組成分析を行い、最表面から深さ10nmまでの領域において、各元素の存在量(mol)を算出した。この値を用いて、次の式:{Ni/(W+Ni+Co+Mn)}×100;から、Ni元素の割合(mol%)を算出した。結果を表1に示す。なお、表1において、「N.D」はNi元素が検出下限以下だったことを示している。
装置:PHI 5000 VersaProbe II(ULVAC-PHI社製)
・X線源:AlKα単色光
・照射範囲:φ100μm HP(1400×200)
・電流電圧:100W、20kV
<正極活物質の評価2(SEM-EDX)>
例1~3,7と参考例の正極活物質について、SEM-EDX分析を行った。具体的にはまず、正極活物質の表面の指定領域(縦3μm×横3μmの範囲)を、下記条件でSEM観察し、SEM観察画像を得た。一例として、図3に、例1の正極活物質の断面SEM観察画像を示す。
装置:SU1000(日立電子顕微鏡システム製)
・加速電圧 :3~5kV
・スポット強度 :90
・フォーカス距離:10mm
次に、得られたSEM観察画像から、画像解析ソフトを用いて、下記の手順で距離Aと距離Bを計測し、被覆層の厚み(=距離A-距離B)を算出した。結果を表1に示す。
・距離A:正極活物質の中心を原点とし、被覆層の表面までの距離。
・距離B:正極活物質の中心を原点とし、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の表面までの距離。
次に、得られたSEM観察画像の指定領域を、下記条件でEDX分析し、Ni,Co,Mn,Wの各元素について元素マッピングし、それぞれの存在量を算出した。この値を用いて、次の式:{Ni/(W+Ni+Co+Mn)}×100;から、Ni元素の割合(mol%)を算出した。結果を表1に示す。なお、表1の「N.D」は、Ni元素が検出下限以下だったことを示している。
・装置:JSM―7800(JEOL製))
・積算回数:3回
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
上記正極活物質と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、正極活物質:AB:PVdF=100:1:1の質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極活物質層形成用スラリーを調製した。この正極活物質層形成用スラリーをアルミニウム箔(正極集電体)の上に塗布し、乾燥して正極活物質層を形成した。そして、圧延ローラーにより正極活物質層をロールプレスした後、所定の寸法に裁断して正極シートを作製した。
また、負極活物質としてのSi含有材料(SiO)および黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、(SiO+C):SBR:CMC=100:1:1の質量比で混合し、イオン交換水を適量加えて、負極活物質層形成用スラリーを調製した。この負極活物質層形成用スラリーを銅箔(負極集電体)の上に塗布し、乾燥して負極活物質層を形成した。そして、圧延ローラーにより負極活物質層をロールプレスした後、所定の寸法に裁断して負極シートを作製した。
また、セパレータとして、PP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを用意した。次に、正極シートと負極シートとを、セパレータが介在するようにしつつ重ね合わせて、電極体を作製した。次に、電極体に電極端子を取り付け、これをアルミニウムラミネートフィルム製の電池ケースに挿入して、非水電解質を注液した。なお、非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、EC:EMC=1:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。その後、電池ケースを封止することによって、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
<初期特性(初期容量および初期抵抗)の評価>
25℃の環境下、各評価用リチウムイオン二次電池を、0.1Cの充電レートで4.2Vまで定電流充電した後、0.1Cの放電レートで3.0Vまで定電流放電した。そして、定電流放電時の放電容量を正極活物質の重量で除して、初期放電容量(Ah/g)を求めた。結果を表1に示す。なお、表1には、放電容量の値とともに、初期放電容量が、190mAh/g以上の場合に「◎」、180mAh/g以上かつ190mAh/g未満の場合に「〇」、180mAh/g未満の場合に「×」と、あわせて示している。
次に、25℃の環境下、電池の充電状態をSOC50%に調整し、1時間休止した後、5Cの定電流で10秒間の定電流放電を行った。そして、放電直前の開回路電圧(V0)と、10秒放電後の閉回路電圧(V1)から、次の式:抵抗=(V0-V1)/5Cの電流値;で、初期抵抗を算出した。
<サイクル特性の評価>
25℃の環境下、0.5Cの充電レートで4.3Vまで定電流充電した後、0.5Cの放電レートで2.8Vまで定電流放電する充放電を1サイクルとして、各評価用リチウムイオン二次電池に対して、100サイクルのハイレート充放電を繰り返し、初期放電容量と同様にして、サイクル試験後の放電容量を求めた。結果を表1に示す。そして、次の式:容量維持率=(サイクル試験後の放電容量/初期放電容量)×100;で、容量維持率(%)を算出した。結果を表1に示す。なお、表1には、容量維持率の値とともに、90%以上の場合に「◎」、85%以上かつ90%未満の場合に「〇」、85%未満の場合に「×」と、あわせて示している。
次に、初期抵抗と同様にして、サイクル試験後の抵抗を求め、次の式:抵抗増加率=〔(サイクル試験後の抵抗-初期抵抗)/初期抵抗〕×100;で、抵抗増加率(%)を算出した。結果を表1に示す。なお、表1には、抵抗増加率の値とともに、50%以上の場合に「×」、31%以上かつ50%未満の場合に「〇」、31%以下の場合に「◎」と、あわせて示している。
表1の結果より、参考例および例1は、サイクル後に電池特性の低下が顕著だった。例7は、初期放電容量が低かった。これらに対して、例2~6では、相対的に初期放電容量が高く、またサイクル後の電池特定の低下が抑えられていた。かかる結果は、ここに開示される発明の技術的意義を示すものである。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記した実施形態では、Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物と被覆酸化物源とを乾式混合法で混合していたが、これには限定されない。他の実施形態において、湿式混合法でNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と被覆酸化物源とを混合してもよい。その場合、(1)混合工程は、(1-1)第1混合工程と、(1-2)第2混合工程と、(1-3)乾燥工程とを、この順に含みうる。また、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。例えば、(1-3)乾燥工程の後に、(1-4)粒度調整工程を含んでもよい。
(1-1)第1混合工程では、第1元素源(典型的には水溶性のイオン化合物)を含む水性溶液を用意する。水性溶液は、第1元素源(Co源および/またはMn源)を水性溶媒に溶解させることで調製できる。水性溶媒は、典型的には水であるが、水を主体とする混合溶媒であってもよい。混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合しうる有機溶剤、例えば低級アルコール、低級ケトン等を使用できる。第1元素源のアニオンは、第1元素源が水溶性となるように適宜選択することができ、例えば酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン、塩化物イオン等でありうる。なかでも酢酸イオンが好ましい。水性溶液の濃度は、第1金属元素(Coおよび/またはMn)の合計が、概ね1~3mol/Lとなるように調製することが好ましい。
(1-2)第2混合工程では、従来公知の晶析法によって、粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物の表面に、前駆体としての水酸化物を生成させる。具体的には、まず、反応容器に、粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、上記用意した第1元素源を含む水性溶液と、第2元素のアルカリ性化合物とを添加して、反応液を調製する。アルカリ性化合物としては、強塩基(アルカリ金属の水酸化物等)および/または弱塩基(アンモニア等)を含み、水酸化物の生成を阻害しないものを好ましく使用し得る。具体例として、第2元素のアンモニウム塩が挙げられる。なかでもタングステン酸アンモニウムが好ましい。反応液中のアンモニウムイオン濃度は、概ね、0~30g/L、好ましくは5~25g/L、例えば5~20g/Lとなるように調製することが好ましい。
次に、上記調製した反応液をアルカリ性条件(pH>7の条件)下で攪拌混合する。攪拌混合は、例えば、超音波の照射や、マグネチックスターラー等で行い得る。反応液のpHは、概ね、10≦pH≦14、好ましくは、11≦pH≦14、例えば、11≦pH≦12とするとよい。また、撹拌速度は、概ね400rpm以上、好ましくは600rpm以上、より好ましくは800rpm以上、例えば1000~1500rpmとするとよい。これにより、粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物の表面に、第1元素と第2元素とを含む水酸化物を析出(晶析)させ、前駆体を得る。
(1-3)乾燥工程では、水酸化物の析出が終了した後、前駆体を単離・洗浄してから乾燥させる。単離は、従来公知の手法、例えば、遠心分離、濾過、デカンテーション等の固液分離法や噴霧乾燥法等で行い得る。そして、単離した前駆体を水等で洗浄することにより、未反応の原料化合物や不純物等を除去する。乾燥は、従来公知の手法、例えば自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥等で行い得る。乾燥温度は、典型的には水性溶媒の沸点以上、具体的には、概ね100℃以下、例えば60~100℃が好ましい。
(1-4)粒度調整工程では、乾燥後の前駆体の粒度を調整する。一例では、従来公知の手法で前駆体の凝集を解砕する。他の一例では、篩い(網目状の部材)を通じて予め定められた粒径の前駆体を選別する。以上のようにして得られた混合物は、上記した実施形態の(2)焼成工程に供することができる。
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、上記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に付着した被覆層と、を備え、上記被覆層は、CoおよびMnから選択される第1元素と、6族に属する第2元素と、を含む複合酸化物を含み、透過電子顕微鏡での断面観察に基づく平均厚みが50nm以上200nm以下である、正極活物質。
項2:上記被覆層は、Niを実質的に含まず、X線光電子分光分析によって上記正極活物質の最表面から深さ10nmまでの領域を測定し、上記領域において、上記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属元素と、上記被覆層に含まれる上記第1元素および上記第2元素と、の合計を100mol%としたときに、Ni元素の割合が1mol%以下である、項1に記載の正極活物質。
項3:上記被覆層は、Niを実質的に含まず、走査電子顕微鏡によって上記正極活物質の表面の縦3μm×横3μmの範囲を観察し、エネルギー分散型X線分析で元素マッピングを行って、上記範囲において、上記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属元素と、上記被覆層に含まれる上記第1元素および上記第2元素と、の合計を100mol%としたときに、Ni元素の割合が5mol%以下である、項1または項2に記載の正極活物質。
項4:上記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物が、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物である、項1~項3のいずれか1つに記載の正極活物質。
項5:上記第1元素が、Coである、項1~項4のいずれか1つに記載の正極活物質。
項6:上記第2元素が、Wである、項1~項5のいずれか1つに記載の正極活物質。
項7:正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池であって、上記正極が、項1~項6のいずれか1つに記載の正極活物質を含む、非水電解質二次電池。
項8:粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、CoおよびMnから選択される第1元素および6族に属する第2元素を含む化合物と、を混合して、混合物を得る混合工程と、酸素の存在下、上記混合物を500℃以上800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を含む、正極活物質の製造方法。
1 正極活物質
2 Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物
4 被覆層
20 電極体
30 電池ケース
50 正極シート(正極)
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
64 負極活物質層
70 セパレータシート
80 非水電解質
100 非水電解質二次電池

Claims (6)

  1. 粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、前記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に付着した被覆層と、を備える正極活物質であって
    前記被覆層は、
    CoおよびMnから選択される第1元素と、6族に属する第2元素としてのタングステン(W)と、を含み、かつ次式:Ae WO (式中のAe は、前記第1元素である);で表される酸化物を含み、
    Niを実質的に含まず、X線光電子分光分析によって前記正極活物質の最表面から深さ10nmまでの領域を測定し、前記領域において、前記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属元素と、前記被覆層に含まれる前記第1元素および前記第2元素と、の合計を100mol%としたときに、Ni元素の割合が1mol%以下であり、
    透過電子顕微鏡での断面観察に基づく平均厚みが50nm以上200nm以下である、正極活物質。
  2. 前記被覆層は、Niを実質的に含まず、
    走査電子顕微鏡によって前記正極活物質の表面の縦3μm×横3μmの範囲を観察し、エネルギー分散型X線分析で元素マッピングを行って、前記範囲において、前記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属元素と、前記被覆層に含まれる前記第1元素および前記第2元素と、の合計を100mol%としたときに、Ni元素の割合が5mol%以下である、
    請求項1に記載の正極活物質。
  3. 前記Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物が、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物である、
    請求項1または2に記載の正極活物質。
  4. 前記第1元素が、Coである、
    請求項1または2に記載の正極活物質。
  5. 正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池であって、
    前記正極が、請求項1または2に記載の正極活物質を含む、
    非水電解質二次電池。
  6. 請求項1または2に記載の正極活物質の製造方法であって、
    粒子状のNi含有リチウム遷移金属複合酸化物と、CoおよびMnから選択される第1元素とWとを含む化合物と、を混合して、混合物を得る混合工程と、
    酸素の存在下、前記混合物を500℃以上800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、
    を含む、正極活物質の製造方法。
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