本開示の原理の理解を促す目的のため、次に、好まれる実施形態を記載するために、好まれる実施形態の参照が為され、具体的な言葉遣いが使用されるであろう。それにもかかわらず、これによる本開示の範囲の限定は意図されず、本明細書に説明されている本開示のそのような変更およびさらなる修正は、本開示が関係する技術分野の当業者によって通常想起される通りに企図されることが理解されるであろう。
定義
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、この冠詞の文法上の目的語の1つをまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書で使用される。例として、「1つのエレメント(an element)」は、少なくとも1つのエレメントを意味し、2つ以上のエレメントを含むことができる。
「約」は、所与の値が、所望の結果に影響を与えることなく、終点を「僅かに上回る」または「僅かに下回る」ことができることを仮定して、数値的範囲の終点に柔軟性を提供するように使用される。
用語「を含む(including)」、「を含む(comprising)」または「を有する」およびこれらの変形形態の本明細書における使用は、この用語の前に収載されているエレメントおよびその均等ならびに追加的なエレメントを包含することを意図する。本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連する収載されている項目のうち1種または複数のありとあらゆる可能な組合せと共に、選択肢(「または」)の意味で解釈される場合は組合せの欠如を指し、これを包含する。
本明細書で使用される場合、移行句「から本質的になる」(および文法上の異形)は、列挙されている材料またはステップ、ならびに請求されている発明の「基本的および新規特徴(複数可)に大幅な影響を与えないもの」を包含するものとして解釈されたい。よって、用語「から本質的になる」は、本明細書で使用される場合、「を含む(comprising)」の均等として解釈されるべきではない。
さらに、本開示はまた、一部の実施形態では、本明細書に示されるいずれかの特色または特色の組合せが、除外または省略され得ることを企図する。例を示すと、本明細書が、複合体が構成成分A、BおよびCを含むことを記述する場合、A、BもしくはCのいずれかまたはこれらの組合せが、単独でまたはいずれかの組合せで省略および否定され得ることが特に意図される。
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に他に指示がなければ、範囲内に納まる別々の値のそれぞれを個々に参照する簡便な方法として機能することが単に意図され、別々の値のそれぞれが、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が、1%~50%として記述される場合、2%~40%、10%~30%または1%~3%等の値等が、本明細書に明確に列挙されることが意図される。上述は、特に意図されるものの単なる例であり、列挙されている最低値および最高値の間の数値および最低値および最高値を含む数値のあらゆる可能な組合せは、本開示において明確に記述されていると考慮されるべきである。
用語「疾患」は、本明細書で使用される場合、生物の一部に影響を与える、構造または機能のいずれかの異常状態および/または障害を含むがこれらに限定されない。これは、感染性疾患もしくは化学的毒素等の外部因子、またはがん、がん転移およびその他の内部機能障害によって引き起こされ得る。
用語「有効量」または「治療有効量」は、有益なまたは望ましい生物学的および/または臨床的結果をもたらすのに十分な量を指す。
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」は、患者によって顕在化されたまたは患者が易罹患性となり得る疾患、障害または病原体感染に応答して為される臨床介入を指す。処置の目標は、疾患、障害、疾患原因媒介体(例えば、細菌またはウイルス)もしくは状態の症状の軽減もしくは予防、その進行もしくは悪化を遅くすることもしくは停止、および/または疾患、障害もしくは状態の寛解を含む。
他に規定がなければ、本明細書で使用されているあらゆる技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。
化学的に規定された、間質不含オルガノイド培養システム
本開示は、一部には、本発明者らによる、肺胞幹細胞増殖、維持および分化を包含する、機能的なかつ別個の細胞状況の生成を可能にする、化学的に規定された間質不含のオルガノイド培養システムの発見に基づく。3次元培養物(オルガノイド)における肺幹細胞の成長のための化学的に規定された培養システムは、培養における未知の成長構成成分またはフィーダーの使用を要求しない。
本明細書で使用される場合、用語「オルガノイド」は、培養において成長された幹細胞に由来する、自己形成された三次元(3D)構造または実体を指す。オルガノイド培養物は、ある特定の型の細胞のみを産生すること等により、臓器の複雑さを再現することができる、または臓器の選択された側面を表現することができる。あるいは、分化前のある特定のステージにおいて、これは、幹細胞のみで構成されていてよい。
幹細胞は、自身を複製する(自己再生する)能力および他の細胞型を生じる能力の両方を有する細胞である。幹細胞が分裂すると、娘細胞は、幹細胞のままでいることができる、またはより特化した型の細胞になることができる、または1種または複数の特化した細胞型へと分化する他の娘細胞を生じることができる。2種の型の哺乳動物幹細胞は、胚盤胞または着床前胚に存在する未分化細胞に由来する多能性胚性幹細胞と、成体組織または臓器に見出される成体幹細胞である。成体幹細胞は、組織または臓器の正常なターンオーバーまたは再生を維持することができ、損傷後に組織または臓器において細胞を修復および補充することができる。
本明細書で使用される場合、用語「幹細胞」は、増殖および自己再生することができ、1種または複数の他の細胞型を生成する能力を有する前駆細胞を生じることができる未分化細胞を、または分化細胞を生じ得る先駆体を指す。ある特定の場合では、娘細胞または前駆もしくは先駆細胞は、分化細胞を生じることができる。ある特定の場合では、娘細胞または前駆もしくは先駆細胞は、それ自身が増殖および自己再生することができると共に、その後に1種または複数の成熟細胞型へと分化する後代を産生することができる。
前駆細胞は、自己再生することができるか、または分化細胞型へと分化することができるという点において幹細胞と同様の細胞を指すが、前駆細胞は既に、幹細胞よりも特化または規定されている。
本開示の幹細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヤギおよび非ヒト霊長類を含むがこれらに限定されない、いずれかの動物に由来することができる。
本開示のオルガノイド培養システムによって育生され得る幹細胞は、正常(例えば、対象の健康な組織由来の細胞)または異常細胞(例えば、形質転換された細胞、確立された細胞または罹病組織試料に由来する細胞)であり得る。
一部の実施形態では、本開示のオルガノイド培養物は、肺幹細胞に由来することができる。肺幹細胞の分裂は、肺の構造の再生を促進することができる。肺幹細胞の例は、気管基底細胞、細気管支分泌細胞(クラブ細胞またはクララ細胞としても公知)、クラブバリアント細胞、肺胞上皮前駆(AEP)細胞、クララバリアント細胞、遠位肺前駆体、p63+Krt5-気道細胞、系譜陰性上皮前駆体、気管支肺胞上皮幹細胞(BASC)、Sox9+p63+細胞、神経内分泌前駆細胞、遠位気道幹細胞、粘膜下腺導管細胞、人工多能性幹細胞由来肺幹細胞および肺胞2型上皮(AEC2またはAT2と本明細書において称される)細胞を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、オルガノイド培養物は、肺胞2型細胞を含有する。AEC2細胞は、自己再生することができると共に、肺胞1型上皮細胞(AEC1)の前駆体として作用することができる。AEC2細胞は、定常状態下および傷害条件下の両方で、AEC1細胞集団を補充することができる。三次元(3D)(オルガノイド)培養物において、AEC2細胞は、AEC2細胞マーカー(例えば、Sftpc、Sftpb、Lamp3、Lpcat7、HTII-280)を発現する細胞およびAEC1細胞マーカー(例えば、Ager(RAGE)、HopxおよびCav1)を発現する細胞および/または移行状況マーカーを発現する細胞を含有する肺胞球を形成することができる。
一部の実施形態では、本開示のオルガノイド培養物は、皮膚、乳腺、食道、膀胱、前立腺、卵巣および唾液腺を含む臓器由来の基底幹細胞に由来することができる。
したがって、本開示の一態様は、無血清培地および細胞外基質構成成分を含む、これからなるまたはこれから本質的になる細胞培養培地であって、化学的に規定されており、かつ間質不含である細胞培養培地を提供する。
本開示の細胞培養培地を使用して、多数の異なる細胞を培養することができる。一部の実施形態では、細胞培養培地は、幹細胞培養培地である。一部の実施形態では、細胞培養培地は、肺幹細胞培養培地である。一部の実施形態では、細胞培養培地は、肺胞2型細胞培養培地である。一部の実施形態では、細胞培養培地は、腫瘍細胞培養培地(例えば、肺腫瘍細胞)である。一部の実施形態では、細胞培養培地は、病原体に感染した細胞のための細胞培養培地である。
用語「細胞培養培地」は、本明細書で使用される場合、細胞または組織を育生(例えば、増殖、維持または分化)することができる、栄養素を含有する液体、半液体またはゼラチン状物質を指す。
用語「化学的に規定された培地」は、本明細書で使用される場合、培地において使用されている化学物質の全てが既知であり、酵母、動物または植物組織が培地に存在しない、培地を指す。化学的に規定された培地は、既知含量の全成分を有することができる。
「間質不含」細胞培養培地は、本明細書で使用される場合、間質細胞または間質結合組織を含有しない細胞培養培地を指す。間質細胞(生きていても、固定されていてもよい)の例は、免疫細胞、骨髄由来細胞、内皮細胞、周皮細胞、平滑筋細胞および線維芽細胞を含むがこれらに限定されない。
用語「細胞外基質構成成分」または「ECM」は、周囲の細胞に構造および生化学的支持を提供する細胞培養培地成分を指す。細胞外基質構成成分は、線維性タンパク質およびグリコサミノグリカンの連動する網目を含有することができる。本開示の細胞外基質構成成分は、プロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸)、ヒアルロン酸、タンパク質、コラーゲン(例えば、原線維(I、II、III、V、XI型)、FACITコラーゲン(断続性三重らせんを有する線維付随性コラーゲン)(IX、XII、XIV、XIX、XXI型コラーゲンおよびコラーゲンXXII型アルファ1)、短鎖(コラーゲンVIIIおよびX型)、基底膜(コラーゲンIV型)およびVI、VII、XII型コラーゲン)、エラスチン、フィブロネクチン、エンタクチンまたはラミニンを含むことができる。本明細書に記載されている培養培地において使用される細胞外基質構成成分は、エンゲルブレスホルムスワム(Engelbreth-Holm-Swarm)(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されたゼラチン状タンパク質混合物であり得る。細胞外基質構成成分の例は、Matrigel(商標)、I型コラーゲン、Cultrex増殖因子低減基底膜、R型またはヒト型ラミニンを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、細胞外基質構成成分は、Matrigelである。他の実施形態では、細胞外基質構成成分は、BD Biosciences(San Jose、California)#354230のMatrigelである。
用語「無血清培地」またはSFMは、血清(例えば、凝固した血液から分離されたタンパク質に富んだ液)の非存在下で特異的な細胞型の成長を支持することができる1種または複数の成長栄養素を含有する培地を指す。無血清培地を使用することの利点は、細胞培養バッチ間の一貫性の改善、細胞培養培地の各バッチが、使用前に品質保証について検査される必要がないこと、病原体混入リスクの減少、細胞培養研究の再現性の改善、ならびに細胞培養産物の単離および精製の改善を含む。
無血清培地の用語「成長栄養素」は、小分子化合物(例えば、SB431542、CHIR99021、BIRB796、DMH-1またはY-27632)、組換えタンパク質(例えば、ヒトEGF、マウスFGF10、マウスIL-1βまたはマウスノギン)、サプリメント(例えば、ヘパリン、N-2、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、HEPES、GlutaMAXまたはN-アセチル-L-システイン、増殖因子、酵素阻害剤(例えば、トリプシン阻害剤)、必須ビタミン、ニューロペプチド、ニューロトランスミッターおよび微量元素(例えば、銅、マンガン、亜鉛およびセレニウム)等の種々の成分を含むことができる。
一部の実施形態では、無血清培地は、TGF-β阻害剤を含むことができる。TGF-β阻害剤の例は、LTBP(潜在型TGF-β結合タンパク質)、A 77-01、A 83-01、AZ 12799734、D 4476、ガルニセルチブ(Galunisertib)、GW 788388、IN 1130、LY 364947、R 268712、SB 505124、SB 525334、SD 208、SM 16、ITD
1、SIS3、N-アセチルピューロマイシン、SB431542、RepSoxおよびLY2109761を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、GSK3阻害剤を含むことができる。GSK-3阻害剤の例は、CHIR 99021、LiCl2、AT7519、CHIR-98014、TWS119、チデグルシブ、SB415286、BIO、SB216763、AZD2858、AZD1080、AR-A014418、TDZD-8、LY2090314、2-D08、BIO-アセトキシム(acetoxime)、IM-12、1-アザケンパウロン(Azakenpaullone)または6-ブロモインディルビン-3’-オキシムを含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、p38 MAPキナーゼ阻害剤を含むことができる。p38 MAPキナーゼ阻害剤の例は、SB202190、BIRB796、PD 169316およびSB203580を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、抗凝固薬(抗血栓薬)を含むことができる。抗凝固薬の例は、ヘパリンまたはワルファリンを含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、1種または複数の増殖因子を含むことができる。増殖因子の例は、上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)(例えば、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23)、インスリン様増殖因子(IGF)(例えば、IGF-1、IGF-2)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)、顆粒細胞-マクロファージコロニー刺激因子、トランスフェリン、幹細胞因子(SCF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子-アルファ(TGF-アルファ)、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびトランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-ベータ)を含むがこれらに限定されない。無血清培地における使用のための増殖因子またはホルモンは、植物もしくは動物から精製されても、または組換えDNA技術を使用して細菌もしくは酵母において産生されてもよい。
一部の実施形態では、無血清培地は、ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤を含むことができる。ROCK阻害剤の例は、Y27632、リパスジル(K-115)、ネタルスジル(AR-13503)、RKI-18およびRKI-11を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、基本培地サプリメントまたは基礎培地を含むことができる。基本培地サプリメントの例は、インスリン-トランスフェリン-セレニウムおよび改良DMEM/F12(ダルベッコ変法イーグル培地/HamのF-12)を含むがこれらに限定されない。本開示の培養培地がスケーラブルであり、培地の体積を培養サイズに従って調整することができることが理解されるであろう。
一部の実施形態では、無血清培地は、L-グルタミンの代用品を含むことができる。L-グルタミンの代用品の例は、Glutamax、L-アラニル-L-グルタミン(AlaGln)およびGlutaminePlusを含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、ニューロン細胞培養構成成分を含むことができる。ニューロン細胞培養構成成分の例は、B-27を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、緩衝剤を含むことができる。緩衝剤は、生理的pH(例えば、約7.2~約7.6)を維持することができる細胞培養培地の構成成分である。本開示の細胞培養培地における使用に適した緩衝剤の例は、HEPES、重炭酸ナトリウムおよびフェノールレッドを含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、抗酸化剤を含むことができる。本開示の細胞培養培地における使用に適した抗酸化剤の例は、N-アセチル-L-システイン(N-acety-L-cysteine)、アスコルビン酸およびビタミンCを含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、抗生物質を含むことができる。本開示の細胞培養培地における使用に適した抗生物質の例は、抗生物質-抗真菌薬、pen/strepおよびゲンタマイシンを含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、無血清培地は、改良DMEM/F12(ダルベッコ変法イーグル培地/HamのF-12)におけるSB431542、CHIR 99021、BIRB796、ヘパリン、EGF(例えば、ヒトEGF、マウスEGF)、FGF10、Y27632、インスリン-トランスフェリン-セレニウム、Glutamax、B27、N2、HEPES、N-アセチルシステイン、抗生物質-抗真菌薬、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成長栄養素を含むことができる。
一部の実施形態では、細胞培養培地の無血清培地および細胞外基質構成成分は、約1:1の比で混合される。
一部の実施形態では、肺幹細胞(例えば、2型肺胞上皮細胞)培養培地は、無血清培地およびMatrigelの1:1混合物を含む、これからなるまたはこれから本質的になり、無血清培地は、5μM~20μMのSB431542、1μM~10μMのCHIR
9902、0.5μM~5μMのBIRB796、2.5μg/ml~20μg/mlのヘパリン、5ng/ml~50ng/mlのEGF、5ng/ml~10ng/mlのFGF10、5nM~20nMのY27632、インスリン-トランスフェリン-セレニウム(1.7μMのインスリン、0.068μMのトランスフェリンおよび0.038μMのセレニウム)、0.5%~2%のGlutamax、1%~3%のB27、0.5%~2%のN-2、10mM~20mMのHEPES、0.75mM~2mMのN-アセチルシステインおよび0.5%~2%の抗生物質-抗真菌薬の濃度を含み、これらの構成成分は全て、改良DMEM/F12基礎培地に含有され、培地は、間質不含である。
一部の実施形態では、肺幹細胞(例えば、2型肺胞上皮細胞)培養培地は、無血清培地およびMatrigelの1:1混合物を含む、これからなるまたはこれから本質的になり、無血清培地は、改良DMEM/F12における約10μMのSB431542、3μMのCHIR 9902、1μMのBIRB796、5μg/mlのヘパリン、50ng/mlのEGF、10ng/mlのFGF10、10nMのY27632、インスリン-トランスフェリン-セレニウム(1.7μMのインスリン、0.068μMのトランスフェリンおよび0.038μMのセレニウム)、1%のGlutamax、2%のB27、1%のN-2、15mMのHEPES、1.25mMのN-アセチルシステインおよび1%の抗生物質-抗真菌薬の濃度を含み、培地は、間質不含である。
本開示の別の態様は、肺幹細胞(例えば、2型肺胞上皮細胞)培養増殖培地を提供する。用語「増殖培地」または「無血清、フィーダー不含」または「SFFF」は、本明細書で互換的に使用され、ex vivoで幹細胞の増殖および増殖を支持することができる細胞培養培地を指す。
本開示の増殖培地は、無血清培地および細胞外基質構成成分を含むことができ、培養培地は、化学的に規定されており、かつ間質不含であり、増殖培地は、1種または複数のサイトカインをさらに含む。
サイトカインは、細胞シグナル伝達において役割を果たすことができる小型のタンパク質(例えば、約5~20kDa)である。サイトカインの例は、インターロイキン-1α(IL-1α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-11(IL-11)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(IL-13)、インターロイキン-14(IL-14)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-16(IL-16)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-17(interleukin-17)(IL-18)、INF-α、INF-β、INF-γおよび腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、増殖培地は、IL-1β、TNFαおよび/またはこれらの組合せからなる群から選択されるサイトカインを含む。一部の実施形態では、増殖培地は、マウスIL-1βを含む。他の実施形態では、増殖培地は、マウスTNFαを含む。
一部の実施形態では、増殖培地は、約0.1ng/mL~約10ng/mLの濃度でIL-1βを含む。一部の実施形態では、増殖培地は、約10ng/mlの濃度でIL-1βを含む。
一部の実施形態では、増殖培地は、約0.1ng/mL~約10ng/mLの濃度でTNFαを含む。一部の実施形態では、増殖培地は、約10ng/mlの濃度でTNFαを含む。
一部の実施形態では、SFFF培地は、SB431542、CHIR99021、BIRB796、Y-27632、ヒトEGF、マウスFGF10、マウスIL-1β、ヘパリン、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、HEPES、GlutaMAX、N-アセチル-L-システイン、および改良DMEM/F12の基礎培地を含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
一部の実施形態では、SFFF培地は、改良DMEM/F12の基礎培地における約10μMのSB431542、約3μMのCHIR99021、約1μMのBIRB796、約10μMのY-27632、約50ng/mlのヒトEGF、約10ng/mlのマウスFGF10、約10ng/mlのマウスIL-1B、約5μg/mlのヘパリン、約1×のB-27サプリメント、約1×の抗生物質-抗真菌薬、約15mMのHEPES、約1×のGlutaMAXおよび約1.25mMのN-アセチル-L-システインを含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
他の実施形態では、SFFF培地は、改良DMEM/F12の基礎培地におけるSB431542、CHIR99021、BIRB796、Y-27632、ヒトEGF、ヒトFGF10、ヘパリン、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、HEPES、GlutaMAXおよびN-アセチル-L-システインを含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
他の実施形態では、SFFF培地は、改良DMEM/F12の基礎培地における約10μMのSB431542、約3μMのCHIR99021、約1μMのBIRB796、約10μMのY-27632、約50ng/mlのヒトEGF、約10ng/mlのヒトFGF10、約5μg/mlのヘパリン、約1×のB-27サプリメント、約1×の抗生物質-抗真菌薬、約15mMのHEPES、約1×のGlutaMAXおよび約1.25mMのN-アセチル-L-システインを含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
一部の実施形態では、増殖培地は、ヒト肺幹細胞(例えば、ヒトAEC2細胞)自己再生のために調合される。
処置期間において異なる時点で、異なる持続時間にわたり、一部の成長栄養素を本開示の培養培地に添加することができることが理解されるであろう。処置期間は、幹細胞が培養培地と接触している期間を指す。
一部の実施形態では、1種または複数の成長栄養素は、処置期間の持続時間にわたり常時、増殖培地中に存在する。増殖培地中に常時存在し得る成長栄養素の例は、SB431542、CHIR99021、BIRB796、EGF、FGF10、ヘパリン、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、HEPES、GlutaMAXおよび/またはN-アセチル-L-システインを含む。
一部の実施形態では、1種または複数の成長栄養素は、処置期間の限定された持続時間にわたり(例えば、培養の0日目~4日目にまたは最初の4日間だけ)、増殖培地中に存在する。一部の実施形態では、ROCK阻害剤(例えば、Y-27632)は、処置期間の0日目~4日目に、増殖培地中に存在する。一部の実施形態では、サイトカイン(例えば、IL-1β)は、処置期間の最初の4日間のみに存在する。
用語「増殖」、「増殖する」または「増加する」は、肺幹細胞増殖の文脈で使用される場合、肺幹細胞(例えば、AEC2細胞)の数の統計的に有意な量での増加を意味する。用語「増殖」、「増殖する」または「増加する」は、対照または参照レベルと比較した、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%のもしくは最大100%かつ100%を含む増加、または対照または参照レベルと比較した、少なくとも約2倍もしくは少なくとも約3倍もしくは少なくとも約4倍もしくは少なくとも約5倍、少なくとも約6倍もしくは少なくとも約7倍もしくは少なくとも約8倍、少なくとも約9倍もしくは少なくとも約10倍の増加または10倍もしくはそれよりも多いいずれかの増加を意味する。対照/参照試料は、例えば、本明細書に記載されている増殖培地または方法を使用して増殖されていない、例えば、増殖培地培養の開始時におけるまたは増殖培地培養物に添加された細胞の初期数における、同じ生物学的供給源から得られる細胞の集団を指す。
本開示の別の態様は、肺幹細胞(例えば、2型肺胞上皮細胞)培養維持培地を提供する。用語「維持培地」または「AMM」は、本明細書で互換的に使用され、細胞培養において細胞の特定の細胞状況を維持することができる細胞培養培地を指す。例えば、本開示の維持培地を使用して、このようなオルガノイドにおけるAEC1細胞の誘導を抑圧しつつ、AEC2細胞同一性を維持することができる。
一部の実施形態では、本開示の維持培地は、本開示の増殖培地および骨形成タンパク質(BMP)阻害剤を含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
BMP阻害剤の例は、ノギン、DMH-1、コーディン、グレムリン、クロスベインレス、USAG-1、LDN193189、フォリスタチン、フォリスタチン様、DMH-2、LDN 212854、LDN 214117、ドルソモルフィン(Dorsomorphin)二塩酸塩およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、維持培地は、BMP阻害剤を含み、BMP阻害剤は、ノギンまたはDMH-1である。一部の実施形態では、ノギンは、マウスノギンである。
一部の実施形態では、本開示の維持培地は、約1ng/ml~約10ng/mlの濃度でノギンを含む。一部の実施形態では、本開示の維持培地は、約10ng/mlの濃度でノギンを含む。
一部の実施形態では、本開示の維持培地は、約0.1μM~約5μMの濃度でDMH-1を含む。一部の実施形態では、維持培地は、約1μMの濃度でDMH-1を含む。
一部の実施形態では、BMP阻害剤は、処置期間の持続時間全体にわたり、維持培地中に存在する。
一部の実施形態では、AMM培地は、改良DMEM/F12の基礎培地におけるSB431542、CHIR99021、BIRB796、DMH-1、Y-27632、ヒトEGF、マウスFGF10、マウスIL-1β、マウスノギン、ヘパリン、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、HEPES、GlutaMAXおよびN-アセチル-L-システインを含む。
一部の実施形態では、AMM培地は、改良DMEM/F12の基礎培地における約10μMのSB431542、約3μMのCHIR99021、約1μMのBIRB796、約1μMのDMH-1、約10μMのY-27632、約50ng/mlのヒトEGF、約10ng/mlのマウスFGF10、約10ng/mlのマウスIL-1β、約(aout)10ng/mlのマウスノギン、約5μg/mlのヘパリン、約1×のB-27サプリメント、約1×の抗生物質-抗真菌薬、約15mMのHEPES、約1×のGlutaMAXおよび約1.25mMのN-アセチル-L-システインを含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
一部の実施形態では、維持培地は、ヒト肺幹細胞(例えば、ヒトAEC2細胞)維持のために調合される。
本開示の別の態様は、肺幹細胞(例えば、2型肺胞上皮細胞)培養分化培地を提供する。用語「分化培地」または「ADM」は、本明細書で互換的に使用され、細胞培養において細胞の異なる細胞状況へと分化するための細胞の特定の細胞状況を促進することができる細胞培養培地を指す。例えば、本開示の分化培地を使用して、AEC2細胞をAEC1細胞へと変換することができる。
本開示の分化培地は、1種または複数の増殖因子およびサプリメントを含むことができる。さらに、本開示の分化培地は、血清(例えば、ウシ胎仔血清、ヒト血清)を含有することができる。
本開示の分化培地は、分化培地および細胞外構成成分(例えば、Matrigel)の1:1混合物を含むことができる。
一部の実施形態では、分化培地は、改良DMEM/F12の基礎培地におけるITS、Glutamax、ヘパリン、EFG、FGF10、血清(例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清)および抗生物質-抗真菌薬のうち少なくとも1種、ならびに/またはこれらの組合せを含む、これからなるまたはこれから本質的になる。
一部の実施形態では、分化培地は、改良DMEM/F12の基礎培地における約のITS、インスリン1.7μM、トランスフェリン0.068μMおよび亜セレン酸塩:0.038μM、約1%のGlutamax、約5μg/mlヘパリン、約5ng/mlヒトEFG、約1ng/mlマウスFGF10、約10%ウシ胎仔血清および約1%anti-anti(抗細菌薬および抗真菌薬)の濃度を含む。
一部の実施形態では、分化培地は、改良DMEM/F12の基礎培地におけるヒトEGF、マウスFGF10、ヘパリン、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、GlutaMAX、N-アセチル-L-システインおよびウシ胎仔血清を含む。
一部の実施形態では、分化培地は、改良DMEM/F12の基礎培地における約5ng/mlのヒトEGF、約1ng/mlのマウスFGF10、約5μg/mlのヘパリン、約1×のB-27サプリメント、約1×の抗生物質-抗真菌薬、約1×のGlutaMAX、約1.25mMのN-アセチル-L-システイン、約10%のFBSを含む。
一部の実施形態では、分化培地は、改良DMEM/F12の基礎培地におけるヒトEGF、ヒトFGF10、ヘパリン、B-27サプリメント、抗生物質-抗真菌薬、GlutaMAX、N-アセチル-L-システイン、N-アセチル-L-システインおよびヒト血清を含む。
一部の実施形態では、分化培地は、改良DMEM/F12の基礎培地における約5ng/mlのヒトEGF、約1ng/mlのヒトFGF10、約5μg/mlのヘパリン、約1×のB-27サプリメント、約1×の抗生物質-抗真菌薬、約1×のGlutaMAX、約1.25mMおよび約10%のヒト血清を含む。
一部の実施形態では、分化培地の成長栄養素は、処置期間の持続時間全体にわたり、分化培地中に存在する。
一部の実施形態では、分化培地は、TGFβおよびp38キナーゼの阻害剤を含有しない。
一部の実施形態では、分化培地は、ヒト肺幹細胞(例えば、ヒトAEC2細胞)分化のために調合される。
一部の実施形態では、本開示の分化培地は、血清(ウシ胎仔血清またはヒト血清)を含有せず、よって、無血清培地と考慮される。
本開示の無血清分化培地は、血清の代わりにサイトカインを含むことができる。一部の実施形態では、本開示の無血清分化培地は、約10ng/ml~約50ng/mlの濃度でIL-6を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の無血清分化培地は、約20ng/mlの濃度でIL-6を含む。
一部の実施形態では、肺幹細胞が維持培地において培養された後に、または肺幹細胞が本開示のSFFF培地において培養された後に、本開示の無血清分化培地を使用して、肺幹細胞(例えば、AEC2細胞)を培養することができる。
本開示の別の態様は、肺胞上皮細胞の培養、増殖、維持および/または分化のための化学的に規定された間質不含のオルガノイド培養システムであって、本開示の培地のいずれかにおいて培養された単離された肺胞上皮細胞を含むシステムを提供する。
本システムの一部の実施形態では、肺胞上皮細胞は、2型肺胞上皮細胞を含む。本システムの他の実施形態では、肺胞上皮細胞は、AEC2およびAEC1細胞の混合物を含む。本システムの他の実施形態では、肺胞上皮細胞は、いずれか所与の時点で、培養培地においてAEC2細胞を優勢に(例えば、50%、60%、70%、80%、90%または99%超)含む。本システムの他の実施形態では、肺胞上皮細胞は、分化培地によるAEC2細胞の処置後に、AEC1細胞を優勢に(例えば、50%、60%、70%、80%、90%または99%超)含む。
方法
本発明のさらに別の態様は、ex vivoオルガノイド培養物において肺幹細胞を増殖、維持および/または分化する方法であって、肺幹細胞を得るステップと、細胞を本開示の培養培地と接触させるステップとを含む、これからなるまたはこれから本質的になる方法を提供する。
用語「肺幹細胞を得るステップ」は、細胞または細胞の集団を、それが本来存在する対象または肺試料から除去するプロセスを指す。肺幹細胞は、生きているまたは死亡した対象における健康なまたは罹病した肺組織から得ることができる。肺幹細胞は、疾患(肺疾患またはその他(otherwise))を有する対象、または肺疾患を発症するリスクがある対象から得ることができる。肺幹細胞が、本開示の培養培地と接触して置かれる前に、細胞または細胞の集団は、試料由来の他の型の細胞または組織から分離および精製することができる。
上述の方法の一部の実施形態では、肺幹細胞は、気管基底細胞、細気管支分泌細胞(クラブ細胞またはクララ細胞としても公知)、クラブバリアント細胞、肺胞上皮前駆体(AEP)細胞、クララ細胞、クララバリアント細胞、遠位肺前駆体、p63+Krt5-気道細胞、系譜陰性上皮前駆体、気管支肺胞上皮幹細胞(BASC)、Sox9+p63+細胞、神経内分泌前駆細胞、遠位気道幹細胞、粘膜下腺導管細胞、人工多能性幹細胞由来肺幹細胞および肺胞2型上皮(AEC2)細胞を含む。一部の実施形態では、肺幹細胞は、肺胞2型上皮(AEC2)細胞を含む。
上述の方法の一部の実施形態では、培養培地は、本開示の増殖培地、維持培地または分化培地である。
上述の方法の一部の実施形態では、サイトカインは、培養の最初の約4日間にわたり培養培地に添加される。
一部の実施形態では、増殖培地、維持培地または分化培地は、ヒト幹細胞による使用のために調合される。
上述の方法の一部の実施形態では、肺幹細胞は、対象に投与される。上述の方法の一部の実施形態では、肺幹細胞は、治療有効量で対象に投与される。
用語「投与」または「投与すること」は、ヒト、霊長類、哺乳動物、哺乳動物対象、動物、獣医学対象、プラセボ対象、研究対象、実験対象、細胞、組織、臓器または体液に適用される場合、限定することなく、対象、細胞、組織、臓器または体液およびその他への、外因的リガンド、試薬、プラセボ、小分子、医薬剤、治療剤、診断剤または組成物の接触を指す。投与は、例えば、治療的、薬物動態的、診断的、研究的、プラセボ的および実験方法を指すことができる。「投与」はまた、例えば、細胞の、試薬、診断、結合組成物または別の細胞によるin vitroおよびex vivo処置を包含する。
本開示のシステムおよび方法によって培養された肺幹細胞(例えば、AEC2細胞)は、脳室内(intracerebroventricular)、頭蓋内、眼内、脳内、心室内(intraventricular)、気管内および静脈内を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知のいずれかの経路によって、対象(例えば、ヒト、マウス、サル、または肺を有するいずれかの哺乳動物)に投与することができる。
上述の方法の一部の実施形態では、所望の肺幹細胞は、本開示の増殖培地を使用してin vitroで増殖して、治療法、研究または貯蔵(例えば、凍結保存による)に要求される十分な数の細胞を得ることができる。一部の実施形態では、所望の肺幹細胞は、対象(例えば、ヒト、マウス、または肺を有するいずれかの哺乳動物)における収集、注射および/または生着に十分な量で増殖することができる。
上述の方法の一部の実施形態では、オルガノイド培養物は、遺伝子編集または肺疾患モデル化のための使用に十分な量で増殖することができる。
本開示の別の態様は、線維芽細胞の非存在下で肺腫瘍細胞を培養する方法であって、対象から腫瘍細胞を単離するステップ、腫瘍細胞を、請求項7~12のいずれかに記載の増殖培地と接触させるステップを含む方法を提供する。本開示の細胞培養培地を使用して、腫瘍細胞を増殖して、研究目的のための(例えば、がん病理学を理解するためのまたは治療剤の有効性を検査するための)腫瘍に基づくオルガノイドモデルの作成に使用することができる。
肺腫瘍細胞は、肺がんを患う対象から単離することができる。単離される腫瘍細胞は、原発性肺腫瘍または続発性肺腫瘍(例えば、別の組織において開始し、肺に転移するがん)であり得る。肺腫瘍細胞の例は、小細胞癌、組み合わせた小細胞癌、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、パンコースト腫瘍細胞、神経内分泌腫瘍、または肺カルチノイド腫瘍細胞を含むがこれらに限定されない、小細胞肺がん細胞または非小細胞肺がん細胞を含むがこれらに限定されない。確立された肺がん細胞系を、本開示の培養培地と共に使用することもできる。本開示の細胞培地と共に使用することができる肺がん細胞系は、ATCCウェブサイト上に見出すことができる。肺がん細胞系の例は、EML4-ALK融合-A549同質遺伝子的細胞系、NCI-H838[H838]、HCC827、SK-LU-1、HCC2935、HCC4006、NCI-H1819[H1819]、NCI-H676B[H676B]、Hs 618.T、HBE4-E6/E7[NBE4-E6/E7]、NCI-H1666[H1666、H1666]、NCI-H23[H23]、NCI-H1435[H1435]、NCI-H1563[H1563]、703D4およびNCI-H1688[H1688]、NCI-H187[H187]、NCI-H661[H661]、NCI-H460[H460]、NCI-H1299、NCI-H1155[H1155]、DMS 114、NCI-H69[H69]、DMS 79、DMS
53、SW 1271[SW1271、SW1271]、SHP-77、NCI-H209[H209]、NCI-H146[H146]、NCI-H345[H345]、NCI-H1341[H1341]、DMS 153、NCI-H82[H82]、NCI-H1048[H1048]、NCI-H128[H128]、NCI-H446[H446]、NCI-H128[H128]、NCI-H510A[H510A、NCI-H510]、H69AR. HLF-a、Hs 913T、GCT[巨細胞腫瘍]、SW 900[SW-900、SW900]、LL/2(LLC1)、HBE135-E6E7、Tera-2、NCI-H292[H292]、sNF02.2、NCI-H1703[H1703]、NCI-H2172[H2172]、NCI-H2444[H2444]、NCI-H2110[H2110]、NCI-H2135[H2135]、NCI-H2347[H2347]、NCI-H810[H810]、NCI-H1993[H1993]およびNCI-H1792[H1792]を含むがこれらに限定されない。
本開示の別の態様は、病原体に感染した肺胞球を培養する方法であって、本開示の培養培地により肺細胞を培養するステップと、肺細胞を感染するのに有効な量で病原体を肺細胞に接種するステップとを含む、これからなるまたはこれから本質的になる方法を提供する。
本開示のさらに別の態様は、オルガノイド培養物において病原体感染を処置または予防することができる薬剤を同定するための方法であって、i)本開示の培地において細胞を培養するステップと、ii)細胞を感染するのに有効な量で病原体を細胞に接種するステップと、iii)細胞を薬剤と接触させるステップと、iv)薬剤が、薬剤で処置されなかった細胞と比べて、細胞における病原体の量の低減を引き起こすか決定するステップとを含む、これからなるまたはこれから本質的になる方法を提供する。
一部の実施形態では、細胞に病原体を接種する前に、細胞またはオルガノイド培養物は、薬剤と接触される。病原体による感染前に細胞を薬剤と接触させるステップは、薬剤が、予防薬として作用することができる(例えば、病原体による感染を予防またはその重症度を低減することができる)か決定することができる。
他の実施形態では、細胞に病原体を接種した後に、細胞またはオルガノイド培養物は、薬剤と接触される。病原体による感染後に細胞を薬剤と接触させるステップは、薬剤が、病原体感染を処置することができるか決定することができる。
一部の実施形態では、薬剤で処置されなかった対照細胞と比べた、細胞における病原体の量の低減は、対照細胞または参照レベルと比較した、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の低減もしくは最大100%かつ100%を含む低減、または約2分の1以下もしくは約3分の1以下もしくは約4分の1以下もしくは約5分の1以下、約6分の1以下もしくは約7分の1以下もしくは約8分の1以下、約9分の1以下もしくは約10分の1以下への低減または10分の1もしくはそれに満たないいずれかの低減であり得る。
本明細書で使用される場合、用語「感染する」または「感染」は、疾患を引き起こす病原体による人間、オルガノイドまたは細胞の罹患を指す。
病原体は、細菌、ウイルスまたは真菌であり得る。
一部の実施形態では、病原体は、ヒトまたは肺を持ついずれかの動物の肺に感染する細菌、ウイルスまたは真菌である。
肺に感染し得る細菌は、Bordetella pertussis、Streptococcus pneumonia、Haemophilus influenza、Staphylococcusaureus、Moraxellacatarrhalis、Streptococcuspyogenes、Pseudomonas aeruginosa、NeisseriameningitidisまたはKlebsiellapneumoniaeを含むがこれらに限定されない。
肺に感染し得るウイルスは、229E(アルファコロナウイルス)、NL63(アルファコロナウイルス)、OC43(ベータコロナウイルス)、HKU1(ベータコロナウイルス)、MERS-CoV(中東呼吸器症候群またはMERSを引き起こすベータコロナウイルス)、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群またはSARSを引き起こすベータコロナウイルス)またはSARS-CoV-2(コロナウイルス疾患2019またはCOVID-19を引き起こす新型コロナウイルス)、インフルエンザ-Aウイルス(例えば、H1N1、H7N9、低病原性鳥インフルエンザ、高病原性鳥インフルエンザまたはH5N1)、インフルエンザ-Bウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)またはエンテロウイルス(例えば、エンテロウイルス71)を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。
肺に感染し得る真菌は、Aspergillus(Aspergillosis)を含むがこれに限定されない。
一部の実施形態では、病原体に感染され得る細胞は、気管基底細胞、細気管支分泌細胞、クラブバリアント細胞、肺胞上皮前駆細胞、クララバリアント細胞、遠位肺前駆体、p63+Krt5-気道細胞、系譜陰性上皮前駆体、気管支肺胞上皮幹細胞、Sox9+p63+細胞、神経内分泌前駆細胞、遠位気道幹細胞、粘膜下腺導管細胞、人工多能性幹細胞由来肺幹細胞または肺胞2型上皮である。一部の実施形態では、病原体に感染され得る細胞は、肺胞2型上皮細胞(AECまたはAT2)である。
一部の実施形態では、上述の方法と共に使用される培養培地は、本開示の増殖培地、本開示の維持培地または本開示の分化培地である。
「薬剤」は、本明細書で使用される場合、疾患の処置、予防または緩和に使用することができる小分子、タンパク質、ペプチド、遺伝子、化合物または他の薬学的活性成分を指す。
本開示の別の態様は、SARS-CoV-2に感染した肺胞球におけるウイルス力価を低減する方法であって、肺胞球がSARS-CoV-2に曝露される前に、肺胞球を薬剤と接触させるステップを含む、これからなるまたはこれから本質的になり、肺胞球が、薬剤と接触されなかった肺胞球と比べて低減されたウイルス力価を示す、方法を提供する。
上述の方法の一部の実施形態では、薬剤は、インターフェロンである。インターフェロンは、いくつかのウイルスの存在に応答して宿主細胞によって作製および放出されるシグナル伝達タンパク質の一群である。インターフェロンは、I型、II型またはIII型インターフェロンであり得る。インターフェロンの例は、INF-α、INF-β、INF-ε、INF-k、INF-w、INF-γ、IL10R2およびINFR1を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、インターフェロンは、IFNαおよびIFNγである。
キット
本開示の別の態様は、肺胞上皮細胞の培養、増殖、維持および/または分化のための化学的に規定された間質不含のオルガノイド培養システムを含む、これからなるまたはこれから本質的になるキットであって、本開示の培地および使用のための説明書を含む、これからなるまたはこれから本質的になるキットを提供する。
本開示の別の態様は、オルガノイド培養物において細菌、ウイルスおよび真菌感染を処置または予防する薬剤を決定するための、化学的に規定された間質不含のオルガノイド培養システムを含むキットであって、本開示の培地および使用のための説明書を含む、これからなるまたはこれから本質的になるキットを提供する。
本開示の別の態様は、オルガノイド培養物またはその派生物においてex vivoおよびin vivoで細菌、ウイルスおよび真菌感染を処置または予防する薬剤を決定するための、化学的に規定された間質不含のオルガノイド培養システムを含むキットであって、本開示の培地および使用のための説明書を含む、これからなるまたはこれから本質的になるキットを提供する。
次の実施例は、説明として提供されており、限定として提供されるものではない。
材料と方法
マウス
Sftpctm1(cre/ERT2)Blh(Sftpc-CreER)、Rosa26R-CAG-lsl-tdTomatoは、C57BL/6バックグラウンドにおいて維持した。NU/J(ヌード)、B6J.129(Cg)-Igs2tm1.1(CAG-cas9*)Mmw/J(H11-Cas9)、B6.129S4-Krastm4Tyj/J(Kras-lsl-G12D)は、Jackson Laboratoryから得た。Ctgf-GFPは、University of California、Los Angelesからご厚意により贈与された。Sftpc-GFPマウスは、以前に記載された(Blanpain et al., 2014, Science 344, 1242281)。系譜追跡のため、マウスに、経口胃管栄養により0.2mg/gタモキシフェン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を与えた。ブレオマイシン傷害のため、2.5U/kgブレオマイシンを、タモキシフェンの最終用量の2週間後に鼻腔内投与し、マウスを毎日モニターした。動物実験は、Duke University施設内実験動物委員会によって承認された。
マウス肺組織解離およびFACS選別
肺解離およびFACSを、以前に記載された通りに行った(Chung et al., 2018, Development, 145(9):1-10)。簡潔に説明すると、肺を、DMEM/F12におけるディスパーゼ(5U/ml)、DNase I(0.33U/ml)およびコラゲナーゼI型(450U/ml)を含有する酵素溶液1mlにより気管内で膨張させた。分離された肺葉をさいの目に切り、3ml酵素溶液と共に30分間37℃で回転しつつインキュベートした。反応を等しい量のDMEM/F12+10%FBS培地でクエンチし、100μm濾過器を通して濾過した。細胞ペレットを、赤血球細胞溶解緩衝剤(100μM EDTA、10mM KHCO3、155mM NH4Cl)に5分間再懸濁し、10%FBSを含有するDMEM/F12で洗浄し、40μm濾過器を通して濾過した。総細胞を450gで5分間4℃にて遠心分離し、FACSによってAT2単離のために細胞ペレットを処理した。
ヒト肺組織解離
ヒト肺解離は、以前に記載された通りであった(Zacharias et al.,
2018, Nature 555, 251-255)。簡潔に説明すると、胸膜を除去し、残っているヒト肺組織(およそ2g)を、1%抗生物質-抗真菌薬を含有するPBSで洗浄し、小片になるようにカットした。目に見える小さい気道および血管を慎重に除去して、目詰まりを回避した。次に、試料を30mlの酵素混合物(コラゲナーゼI型:1.68mg/ml、ディスパーゼ:5U/ml、DNase:10U/ml)により37℃で1時間、回転しつつ消化した。細胞を、100μm濾過器を通して濾過し、濾過器を通した15ml DMEM/F12+10%FBS培地でリンスした。450gで10分間の遠心分離後に上清を除去し、細胞ペレットを赤血球細胞溶解緩衝剤に10分間再懸濁し、10%FBSを含有するDMEM/F12で洗浄し、40μm濾過器を通して濾過した。総細胞を450gで5分間4℃にて遠心分離し、AT2単離のために細胞ペレットを処理した。
ヒトおよびマウスAT2細胞の単離
磁気活性化細胞選別(MACS)または蛍光活性化細胞選別(FACS)に基づくプロトコールによって、AT2細胞を単離した。マウスAT2単離のため、総肺細胞ペレットをMACS緩衝剤(1×PBS、pH7.2、1%BSAおよび2mM EDTA)に再懸濁した。製造業者の使用説明書に従ってMACSビーズを使用して、CD31/CD45陽性細胞を枯渇させた。CD31/CD45枯渇後に、TdTomatoレポーターに基づきAT2細胞を選別し、レポーターなしのAT2細胞については、以前に記載された通りに、次の抗体を使用して細胞を染色した:EpCAM/CD326、PDGFRα/CD140aおよびLysotracker(Katsura et al., 2019, Stem Cell Reports, 12(4):657-666)。ヒトAT2細胞の単離のため、およそ2百万~1千万個の総肺細胞をMACS緩衝剤に再懸濁し、ヒトTruStain FcXと共に15分間4℃で、続いてHTII-280(1:60希釈)抗体と共に1時間4℃でインキュベートした。細胞をMACS緩衝剤で2回洗浄し、次いで抗マウスIgMマイクロビーズと共に15分間4℃でインキュベートした。細胞をLSカラムにロードし、標識された細胞を磁気により採取した。ヒトAT2細胞のFACSに基づく精製のため、総肺細胞ペレットをMACS緩衝剤に再懸濁した。製造業者の使用説明書に従ってCD326(EpCAM)マイクロビーズを使用して、細胞をEpCAM集団について正に選択した。CD326選択された細胞を、HTII-280およびLysoTrackerで37℃にて25分間、続いて二次Alexa抗マウスIgM-488で10分間37℃にて染色した。FACS Vantage SEおよびSONY SH800Sを使用して、選別を行った。
肺胞球(オルガノイド)培養
マウスの従来の肺胞球培養(MTEC培地を使用)を以前に記載された通りに行った(Barkauskas et al., 2013, J. Clin. Invest. 123, 3025-3036)。簡潔に説明すると、Sftpc-CreER;R26R-lsl-tdTomatoマウス由来のFACS選別された系譜標識されたAT2(1~3×103個)細胞、およびPDGFRα+(5×104個)細胞をMTEC/Plusまたは無血清培地に再懸濁し、等しい体積の増殖因子低減Matrigel(BD Biosciences、San Jose、CA、#354230)と混合した。
フィーダー不含培養のため、AT2(1~3×103個)を無血清培地に再懸濁し、等しい量のMatrigelと混合した。Transwell培養のため、24ウェル0.4μm Transwellインサート(Falcon)に100μlの培地/Matrigel混合物を播種した。液滴(drop)培養のため、50μlの細胞-培地/Matrigel混合物の液滴3個を6ウェルプレートの各ウェルにプレーティングした。培地を1日おきに交換した。
無血清培地は、改良DMEM/F12(Thermo、Waltham、MA)において10μM SB431542(Abcam、Cambridge、UK)、3μM CHIR99021(Tocris、Bristol、UK)、1μM BIRB796(Tocris、Bristol、UK)、5μg/mlヘパリン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)、50ng/mlヒトEGF(Gibco)、10ng/mlマウスFGF10(R&D systems、Minneapolis、MN)、10μM Y27632(Selleckchem、Houston、TX)、インスリン-トランスフェリン-セレニウム(Thermo、Waltham、MA)、1%Glutamax(Thermo、Waltham、MA)、2%B27(Thermo、Waltham、MA)、1%N2(Thermo、Waltham、MA)、15mM
HEPES(Thermo、Waltham、MA)、1.25mM N-アセチルシステイン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)および1%抗生物質-抗真菌薬(anti-anti)(Thermo、Waltham、MA)を含有した。肺胞増殖培地のため、10ng/mlマウスIL-1b(BioLegend、San
Diego、CA)、10ng/mlマウスTNFa(BioLegend、San Diego、CA)を無血清培地に添加した。肺胞維持培地のため、10ng/mlマウスノギン(Peprotech、Rocky Hill、NJ)および1μM DMH-1(Tocris、Bristol、UK)を肺胞増殖培地に添加した。肺胞分化培地は、改良DMEM/F12においてITS、Glutamax、5μg/mlヘパリン、5ng/mlヒトEGF、1ng/mlマウスFGF10、10%ウシ胎仔血清および1%抗生物質-抗真菌薬(anti-anti)を含有した。
詳細なSFFFおよびAMM培地組成については、表1を参照されたい。
ヒト肺胞球培養のため、HTII-280+ヒトAT2(1~3×103個)を無血清培地に再懸濁し、等しい量のMatrigelと混合し、6ウェルプレートにプレーティングした。詳細なマウスおよびヒト無血清、フィーダー不含(SFFF)培地組成については、表1および表2を参照されたい。
肺胞球継代培養
上に記載されている通りの組成のAMM培地において、マウス肺胞球継代培養実験を行った。簡潔に説明すると、FACS選別されたマウスAT2細胞(2×103個)をAMM培地に再懸濁し、等しい体積のMatrigelと混合した。50μlの細胞-培地/Matrigel混合物の液滴3個を、生物学的複製(n=3)毎に6ウェルプレートの各ウェルにプレーティングした。継代毎に、マウスIL-1β(10ng/ml)を最初の4日間にわたり添加し、その後、培地をIL-1βなしのAMMに置き換えた。培地を3日毎に交換した。マウス肺胞球を10日毎に継代した。ヒト肺胞球継代のため、AT2細胞(3×103個)をSFFF培地に再懸濁し、等しい体積のMatrigelと混合した。50μlの細胞-培地/Matrigel混合物の液滴3個を、ドナー(n=3)毎に6ウェルプレートの各ウェルにプレーティングした。肺胞球を10~14日毎に継代した。
AT2分化
詳細なマウスおよびヒトAT2-分化培地(ADM)組成については、表を参照されたい。分化のため、それ以外のことが記述されている場合を除いて、マウス肺胞球をAMM培地において10日間培養し、これをAT2-分化培地にスイッチし、続いてさらに7日間培養した。分化のため、それ以外のことが記述されている場合を除いて、SFFF培地において10日間培養されたヒト肺胞球をADMにスイッチし、さらに12~15日間培養した。培地を3日毎に交換した。ヒトAT2-分化培地は、FBSの代わりにヒト血清を含有する。分化培地は、血清の代わりにIL-6(20ng/mL)を含むこともできる。
バルクRNAseqおよびqPCR研究のための肺胞球感染実験
肺胞球培養物を感染させるために、細胞を1ml PBSで洗浄し、次いで1のMOIでウイルスを細胞に添加した。ウイルスおよび細胞を3.5時間37℃でインキュベートし、その後、ウイルスを除去し、細胞培養培地を添加した。感染を48または120時間進行させ、次いで肺胞球をPBSで洗浄し、上に記載されている通りに解離させた。最後に、肺胞球由来細胞をTrizolにおいて貯蔵し、-80℃で貯蔵した。
SARS-CoV-2によるAT2肺胞球の感染
ヒト肺胞球培養物を500μl 1×PBSで短時間2回洗浄した。SARS-CoV-2-GFP(icSARS-CoV-2-GFP)ウイルスは、以前に記載された(Hou et al., 2020)。簡潔に説明すると、PrimeSTAR GXL HiFi DNAポリメラーゼを使用したRT-PCRによって、SARS-CoV-2
WA1ゲノム全体を網羅する7種のcDNA断片を増幅した。各断片の間のジャンクションは、非パリンドローム部位BsaI(GGTCTCN)またはBsmBI(CGTCTCN)を含有し、それぞれ特有の4ヌクレオチド突出末端を有する。断片EおよびFは、両末端に2個のBsmBI部位を含有するが、他の断片は、ジャンクションにBsaI部位を有する。各断片を高コピーベクターpUC57にクローニングし、サンガー配列決定によって検証した。サイレントな突然変異T15102Aを、遺伝的マーカーとしてプラスミドDのnsp12における保存された領域に導入した。ORF7遺伝子を置き換えることにより、GFPを挿入した。次に、培養物に、200μlの1×107PFU/mlのicSARS-CoV-2-GFPウイルス(Hou et al., 2020)または偽培養物のために200μlの1×PBSを接種した。5%CO2を補充した状態で肺胞球を37℃で2時間インキュベートさせた。インキュベーション後に、接種材料を除去し、肺胞球培養物を500μl 1×PBSで3回洗浄した。1mLのSFFF培地を各培養物に添加した。肺胞球を37℃で72時間インキュベートし、感染中に24時間毎に試料を採取した。試料採取するために、100μlの培地を除去した。次に、等しい体積の新鮮培地を培養物に添加して、試料採取された体積を置き換えた。Vero E6細胞(USAMRIID)におけるプラークアッセイによって、72時間後にウイルス力価を最終的に決定した。3日後にニュートラルレッド染色によってウイルスプラークを可視化した(Hou et al., 2020)。組織学的解析のため、肺胞球を10%ホルマリン溶液において7日間固定し、続いてPBSにおいて3回洗浄した。
インターフェロン処置
インターフェロンおよびサイトカイン処置実験のため、P2またはP3継代由来のヒトAT2細胞(2.5×104個)をmatrigelの表面で培養した。細胞のプレーティングに先立ち、12ウェルプレートを、matrigel(1:1のmatrigelおよびSFFFMミックス)で30分間予めコーティングした。IL-1βなしのSFFFMにおいてAT2細胞を7~10日間成長して、肺胞球を形成させた。RNA単離および定量的PCRのため、肺胞球を20ng/mlインターフェロン(IFNα、IFNβ、IFNγ)で12時間または72時間処置した。組織学的解析のため、肺胞球を指し示されているインターフェロンで72時間処置した。ウイルス感染に先立ち、ヒト肺胞球培養物を10ng IFNαまたは10ng IFNγで18時間前処置した。IFN阻害研究のため、培養時間全体にわたり肺胞球を1μMルキソリチニブで処置した。
RNA単離およびqRT-PCR
RNA単離のため、TrypLE(商標)選択酵素を37℃で10分間使用して、肺胞球を解離して単一細胞懸濁液とした。細胞ペレットを300μlのTRIzol(商標)LS試薬に再懸濁した。DNase I処置を用いて、製造業者の使用説明書に従ってDirect-zol RNA MicroPrepキットを使用して、全RNAを抽出した。SuperScript IIIとランダムヘキサマーまたはマイナス鎖特異的プライマーを使用して、各試料の600ngの単離された全RNAから逆転写を行った。StepOnePlusシステム(Applied Biosystems)とPowerUp(商標)SYBR(商標)Greenマスターミックスを使用して、定量的RTPCRアッセイを行った。標準曲線の方法を使用して、全標的遺伝子のmRNAの相対的な含量を決定した。各試料における標的遺伝子転写物をグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対して正規化した。使用されたプライマーを表3に収載する。
バルクRNA配列決定および差次的遺伝子発現解析
NEBNextポリ(A)mRNA磁気単離モジュール(New England BioLabs、Ipswich、MA、#E7490)を使用して、各試料由来の精製されたRNA(1μg)をポリA RNAについて濃縮した。NEBNext Ultra
II RNA Library Prep Kit for Illumina(New England BioLabs、Ipswich、MA、#E7770)を使用して、ライブラリーを調製した。試料毎に少なくとも1500万個のリードによるHiSeq Xを使用して、ペアードエンド配列決定(リード毎に150bp)を行った。FastQC(www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)を使用して、配列決定されたリードの品質を評価した。Cutadapt(Martin, 2011)を使用して、ポリA/Tテイルをトリミングした。アダプター配列をトリミングし、24bpよりも短いリードは、Trimmomatic(Bolger et al., 2014)を使用してトリミングした。リードを、デフォルト設定によるHisat2(Kim et al., 2019)を使用して、UCSCから得たヒト(hg38)およびSARS-CoV2(wuhCor1)の参照ゲノムにマッピングした。SAMtools(Li et al., 2009)を使用して、重複リードを除去した。SUBREAD(Liao et al., 2014)のfeatureCountsオプションを使用して、断片数を計数した。対照および処置の間で差次的に発現された遺伝子(DEG)の正規化および抽出は、R package、DESeq2(Love et al., 2014)を使用して行った。
腫瘍オルガノイド培養物
CreリコンビナーゼおよびGFPを保有するアデノウイルス(SignaGen Laboratories、SL100706)を使用して、K-raslsl-G12D;Rosa26R-CAG-lsl-tdTomatoマウスに腫瘍を誘導した。6~8週齢前後で、マウスを、100μlにおけるおよそ2.5×107プラーク形成単位のウイルスに鼻腔内感染させた。腫瘍誘導の少なくとも8ヶ月後に肺を単離した。目に見える腫瘍小結節を顕微鏡下で手作業により解剖し、上に記載されている通りに解離した。細胞を抗EPCAM/CD326抗体およびLysotrackerで染色し、SONY SH800Sを使用することにより、腫瘍細胞をtdTomato+、EPCAM+およびLysotracker+集団として選別した。FACS選別された細胞を培地に再懸濁し、等しい量のMatrigelと混合した。50μlに2×103個の細胞を含有する液滴3個を、6ウェルプレートにプレーティングした。培地を1日おきに交換した。
オルガノイド由来細胞のグラフト
10~12日目にアクターゼ(Accutase)(Sigma-Aldrich)と、それに続く0.25%トリプシン-EDTA処置により、オルガノイドを解離して単一細胞とし、1%Matrigelおよび10mM EDTAを有する無血清培地に再懸濁した。ブレオマイシンの鼻腔内投与の10日後に、ヌードマウスに、5~7×105個の細胞を含有する培地80μlを気管内注射した。グラフトの少なくとも2ヶ月後に、肺を固定し解析した。
組織調製および切片作製
Transwell由来の肺および肺胞球を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)でそれぞれ4℃にて4時間および室温にて30分間固定した。液滴由来のオルガノイド培養物は、先ず1%低融点アガロース(Sigma)で浸漬し、4%で室温にて30分間固定した。OCT凍結ブロックのため、試料をPBSで洗浄し、30%スクロースと共に4℃で一晩インキュベートした。そして次に、試料を30%スクロース/OCTの1:1混合物と共に4時間4℃でインキュベートし、OCTに包埋し、凍結切片作製した(10μm)。パラフィンブロックのため、試料を脱水し、パラフィンに包埋し、7μmで切片作製した。
免疫染色
パラフィン切片は、抗原回復の前に先ずワックス除去し、再水和した。抗原回復システム(Electron Microscopy Sciences、Hatfield、PA)中の10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤またはウォーターバス(90℃で15分間)または5分間室温の0.05%トリプシン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)処置を使用することにより、抗原回復を行った。切片をPBSで洗浄し、透過処理し、PBSにおける3%BSAおよび0.1%Triton X-100で30分間室温にてブロッキングし、続いて、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベーションした。次に、切片をPBSにおける0.05%Tween(登録商標)-20(PBST)で3回洗浄し、ブロッキング緩衝剤における二次抗体と共に1時間室温でインキュベートし、PBSTで3回洗浄し、DAPI入りのFluor G試薬を使用してマウントした。一次抗体は次の通りであった:プロサーファクタントタンパク質C(Millipore、Burlington、MA ab3786、1:500)、RAGE/AGER(R&D systems、Minneapolis、MN、MAB1179、1:250)、HOPX(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX、sc-30216、1:250、sc-398703、1:250)、T1a/PODOPLANIN(DSHB、クローン8.1.1、1:1000)、KRT8(DSHB、TROMA-I、1:50)、tdTomato(ORIGENE、AB8181-200、1:500)、CLDN4(Invitrogen、Carlsbad、CA 36-4800、1:200)、GFP(Novus Biologicals、Littleton、CO、NB100-1770、1:500)。
ほぼ(near)単一細胞懸濁液において染色を定量化するために、TrypLE(商標)選択酵素を37℃で15分間使用して、肺胞球バブル(bubble)を解離した。活発なピペッティングによりMatrigelを破壊した。次に、肺胞球由来細胞を、matrigelで予めコーティングされた(5~10%Matrigelを30分間)カバーガラスまたはチャンバースライドに2~3時間プレーティングした。次に、細胞を4%パラホルムアルデヒドにおいて固定した。
電子顕微鏡
オルガノイドを、0.1Mカコジル酸緩衝剤pH7.4(Electron Microscopy Sciences、EMS、Hatfield、PA)中2.5%グルタルアルデヒド(Electron Microscopy Sciences、EMS、Hatfield、PA)において3時間室温で固定した。次に、0.1Mカコジル酸塩において試料を3回、各10分間洗浄し、0.1Mカコジル酸緩衝剤中1%タンニン酸(Sigma)において5分間室温で後固定し、0.1Mカコジル酸緩衝剤において再度3回洗浄した。オルガノイドを、0.1Mカコジル酸緩衝剤中1%四酸化オスミウム(Electron Microscopy Sciences、EMS)において一晩暗所で4℃にて後固定した。試料を10分間0.1N酢酸緩衝剤において3回洗浄し、1%酢酸ウラニル(Electron Microscopy Sciences、EMS、Hatfield、PA)において1時間室温でブロック染色した。次に、試料を、氷上のアセトン:70%、80%、90%、100%により、各10分間脱水し、次いで、プロピレンオキシドと共に室温で15分間インキュベートした。試料は、EMbed 812(EMS)へと交換して、3時間室温で放置した。新鮮なEmbed 812へと交換し、一晩室温で放置し、その後、これを新鮮に調製されたEMbed 812中に包埋し、一晩60℃で重合させた。包埋された試料から70nmで薄切片作製し、グリッドを1%酢酸ウラニル水において5分間室温で、続いてクエン酸鉛において2.5分間室温で染色した。2200×および14500×の拡大率でFEI Tecnai G2 Twinにおいてグリッド上の切片を撮像した。
ホールマウントイメージング
肺のホールマウントイメージングのため、肺を4%PFAで固定し、CUBIC-15によって透明化した。蛍光ステレオスコープ(Zeiss Lumar.V12)を使用することにより、画像を得た。オルガノイドのため、Sftpc-CreER;Rosa26R-lsl-tdTomatoから単離されたAEC2細胞を、35mmガラス底培養皿上で肺胞増殖培地において成長し、オルガノイドを培養の7および10日目に4%PFAにおいて30分間室温で固定した。次に、試料をPBST(1×PBS+0.1%TritonX-100)において4回、各30分間洗浄し、ブロッキング溶液(1×PBS+0.3%TritonX-100中1.5%BSA)において1時間室温でブロッキングし、ブロッキング溶液における抗SFTPC(1:500、Millipore、Burlington、MA)および抗AGER(1:500 R&D)と共に一晩37℃でインキュベートした。次に、オルガノイドをPBST(4×30分間)において洗浄し、PBSTにおいて二次抗体と共に1時間37℃でインキュベートし、30分間PBST+DAPIにおいて1回、PBSTにおいて2回各30分間室温で洗浄した。20×または40×対物レンズを使用したOlympus共焦点顕微鏡FV3000を使用して、画像を捕捉した。
ライブイメージング
Sftpc-GFPマウスから(form)単離されたAEC2細胞を、35mmガラス底培養皿上で3日間、肺胞増殖培地において成長した。顕微鏡(VivaView-Olympus)により20分間の間隔でDIC画像を取得した。3日間のイメージングの後に(培養の6日目)、培地を交換し、イメージングを再度開始し(培養の8日目)、さらに2日間続けた。
プラスミド構築、AAV6産生およびオルガノイドにおけるHITIに基づく遺伝子編集
骨格としてAAV:ITR-U6-sgRNA-hSyn-Cre-2AEGFP-KASH-WPRE-shortPA-ITR(Addgeneプラスミド#60231)を使用することにより、Sftpc特異的gRNAベクターを調製した。先ず、hSyn-Cre-2A-EGFP-KASH-WPREカセットをXbaIおよびRsrII消化によって除去し、gRNA結合配列に隣接するEGFP遺伝子をプラスミドへとクローニングした。CRISPR/Cas9の標的部位を選択するためのウェブツール「CHOPCHOP」を使用することにより、Sftpc特異的gRNAを、コード領域の末端の近くに設計し、U6プロモーターの下流のSapI部位に挿入した。本研究において使用されたCRISPR/Cas9標的配列(20bp標的および3bp PAM配列(下線が引かれている))は、GGATGCTAGATATAGTAGAGTGG(配列番号01)である。小規模AAV産生は、近年発表された方法に従った。手短に説明すると、HEK293T細胞を12ウェルプレートにプレーティングし、次いで、細胞密度が60~80%集密度に達したら、PEI Max(Polysciences、Warrington、PA;24765)によりウェル当たり0.4μg AAVプラスミド、0.8μgヘルパープラスミドpAd-DeltaF6および0.4μg血清型2/6プラスミドをトランスフェクトした。12時間後、細胞を次に、1%Glutamax(ThermoFisher、Waltham、MA;35050061)および10%FBSを補充したグルタミン不含DMEM(ThermoFisher、Waltham、MA;11960044)において2日間インキュベートした。AAV含有上清培地を採取し、0.45μmフィルター管を通して濾過し、使用まで4℃で貯蔵した。遺伝子編集のため、AEC2(EPCAM+Lysotracker+細胞)をH11-Cas9マウスから単離した。AEC2(5×104個)を肺胞増殖培地に再懸濁し、100μlのAAV含有上清と共に37℃で1時間回転しつつインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、肺胞増殖培地に再懸濁し、等しい量のMatrigelと混合し、6ウェルプレートにプレーティングした。肺胞増殖培地を1日おきに交換した。オルガノイドが成長されたら、これを上に記載されている通りに解離して単一細胞とし、GFP+細胞をFACSによって精製した。
小滴に基づく単一細胞RNA配列決定(Drop-seq)
Matrigelに包埋されたオルガノイドを、アクターゼと共に37℃で20分間インキュベートし、続いて、0.25%トリプシン-EDTAと共に37℃で10分間インキュベーションした。10%FBSを補充したDMEM/F-12 Hamを使用してトリプシンを不活性化し、次いで、細胞を、0.01%BSAを補充したPBSに再懸濁した。細胞は3,000μl/時間、mRNA捕捉ビーズは3,000μl/時間および小滴生成油は13,000μl/時間の流速でマイクロ流体チャネルに通すために、40μm濾過器を通して濾過された細胞を100個の細胞/μlで利用した。予め増幅するステップ(1サイクルの95℃3分間、15~17サイクルの98℃15秒間、65℃30秒間、68℃4分間および1サイクルの72℃10分間、8から採用)のためのDNAポリメラーゼを、Terra PCR Directポリメラーゼ(#639271、Takara)によって置き換えた。他のプロセスは、本来のDrop-seqプロトコール9に記載されている通りに行った。HiSeq Xと150bpペアードエンド配列決定を使用して、ライブラリーを配列決定した。
Drop-seqのための計算解析
dropSeqPipe v0.3(hoohm.github.io/dropSeqPipe)を使用してFASTQファイルを処理し、アノテーションバージョン91によりGRCm38ゲノムにマッピングした。次に、R package Seurat v3.0.6(Stuart et al., 2019)を使用して、特有の分子識別子(UMI)計数をさらに解析した。SCTransform v0.2(Hafemeister and Satija, 2019)を使用して、UMI計数を正規化した。Jackstrawプロットに基づき有意である主(Principle)成分を、t-SNEプロットを生成するために使用した。重複(duplet)を除外した後に、tSNEプロットにおけるSftpc、Sftpa1、Sftpa2、Sftpb、Lamp3、Abca3、Hopx、Ager、Akap5、Epcam、Vim、Pdgfra、Ptprc、Pecam1およびMki67の濃縮に基づき、特異的な細胞クラスターを同定した。
COVID-19患者肺の単一細胞RNA配列決定のための計算解析
6名の重症COVID-19患者肺(GSE145926(Bost et al.,
2020, Cell, 181(7):1475-1488))および対照肺(GSE135893(Habermann et al., 2019))の公開されている単一細胞RNA-seqデータセットを、Gene Expression Omnibus(GEO)から得た。LAMP3、ABCA3、KRT5、KRT15、DNAH1、FOXJ1、SCGB3A1およびSCGB1A1に基づき、重症COVID-19患者肺におけるEpCAM陽性上皮細胞クラスターをさらにクラスター化した。LAMP3、NKX2-1およびABCA3の≧1 UMI計数を有するAT2細胞を、重症COVID-19患者肺および対照肺の間の比較に利用した。UMI計数を、SCTransformを使用して、ミトコンドリア遺伝子のパーセンテージに対して正規化および回帰した。FindMarkersを使用して、重症COVID-19患者および対照肺において濃縮された遺伝子を抽出し、R package Enhanced Volcano
v1.5.4によって導かれたボルケーノプロットに示した。≧2 log2倍の変化を有する遺伝子を、Enrichr(Kuleshov et al., 2016)クエリーのためのインプットとして使用して、データベース - BioPlanetにより濃縮されたシグナル伝達経路を得た。
統計
標本サイズは、予め決定されなかった。データは、各実験内の変動を指し示すために、標準誤差(s.e.m)を伴う平均値として提示した。Excel、PrismおよびRにおいて統計解析を行った。両側スチューデントt検定を、2種の実験条件の間の比較に使用した。3種以上の条件による実験のため、ANOVAとそれに続くチューキー・HSD方法によって統計有意性を計算した。シャピロ・ウイルク検定を使用して、データが正規分布しているか検査し、非正規分布を示した2種の条件の間の比較のためにウィルコクソン順位和検定を使用した。3種以上の条件のため、本出願人らは、スチール・ドワス検定を使用した。
(実施例1)
肺胞オルガノイド培養物のための化学的に規定された条件の確立
以前の研究は、肺常在性PDGFRa+線維芽細胞が、血清および多くの未知の構成成分(詳細については方法セクションを参照)を含有するMTEC培地において共培養された場合に、AEC2の成長を支持することができることを実証した(Schwartz
et al., 2018, Ann. Am. Thorac. Soc. 15,
S192-S197、Barkauskas et al., 2013, J. Clin. Invest. 123, 3025-3036、Frank et al., 2016, Cell Rep. 17, 2312-2325、Katsura
et al., 2019, Stem Cell Rep. 12, 657-666、Lee et al., 2014, Cell 156, 440-455、Lee et al., 2013, Am. J. Respir. Cell Mol.
Biol. 48, 288-298)。興味深いことに、AEc2は、PDGFRa+線維芽細胞の非存在下で複製せず、線維芽細胞から発出するパラクリンまたは接触媒介性シグナルのいずれかが、AEC2増殖に必須であることを暗示する。
情報交換(すなわち、パラクリンまたは接触媒介性)の性質を精査するために、AEC2-線維芽細胞共培養システムを3種の異なるモードでセットアップした:i)AEC2細胞のみ(条件A);ii)AEC2および線維芽細胞は物理的に分離された(条件B);ならびにiii)線維芽細胞と混合されたAEC2(条件C)。条件Cが、最大コロニー形成効率(CFE)(8.71%±0.92%)を生じ、条件Bにおいて中等度~低(2.40%±0.10%)が生じ、オルガノイドなし(0%±0%)が条件Aにおいて観察されたことが見出された(図1A~図1C)。これらのデータは、接触媒介性シグナル伝達の必要がなく、短い範囲のパラクリンシグナル伝達が、線維芽細胞およびAEC2の間の情報交換を媒介していることを示唆する。
これらの細胞の間で情報交換するパラクリンシグナルを同定するために、上述の共培養システム由来の細胞において単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。品質管理フィルタリングの後に、k-平均クラスタリングを行い、確率的近傍埋込み(t-SNE)によって細胞を可視化し、EpCAM+上皮細胞およびVimentin+/Pdgfra間質細胞からなる2個の主要クラスターを同定した。注目すべきことに、Pecam+内皮細胞およびPtprc+免疫細胞からなる2個の小さいクラスター(それぞれ<10個の細胞)が観察された(図2A、図2Bおよび図2C)。上皮細胞クラスター内で、Sftpc+AEC2、Ager+AEC1およびSftpc+/Mki67+増殖AEC2からなる3個のサブクラスターが観察された。注目すべきことに、Pdgfra+細胞内のActa2+/Pdgfra+筋線維芽細胞が見出された。これらのデータは、3次元オルガノイド培養物が、そのin vivo対応物(counter part)と同様の細胞多様性および遺伝子発現プロファイルに似ていることを指し示す。scRNA-seq解析は、肺胞オルガノイド培養物における上皮および間質細胞の間の発生経路における受容体-リガンド相互作用を指し示した。しかし、これらのプロセスは、自発的に発生し、おそらく、間質および血清含有培養条件によって媒介される。
より規定された培養システムを達成するために、上述のscRNA-seqデータをマイニングして、上皮および線維芽細胞において発現されるリガンド-受容体ペアを見出した。AEC2および線維芽細胞において差次的に濃縮される多くのシグナル伝達経路構成成分が見出された。とりわけ、線維芽細胞においてwnt(wnt4、wnt5a)、BMP(Bmp4、Bmp5)、TGFb(Tgfb1、Tgfb3)およびFGF(Fgf2、Fgf7、Fgf10)シグナル伝達経路の多くのリガンドが見出され、一方、対応する受容体が、AEC2において同定された;wnt(Fzd1、Fzd2)、BMP(Bmpr1a、Bmpr2)、TGFb(Tgfbr1、Tgfbr2)およびFGF(Fgfr1、Fgfr2)(図2Dおよび図2E)。興味深いことに、BMP(Fst、Fstl1、Grem1)およびTGFβ(Ltbp1、Ltbp2、Ltbp3)の阻害剤も、線維芽細胞において濃縮されていることも見出された。これらのデータは、線維芽細胞が、AEC2の増殖および分化の両方を動的および空間的に調節することができることを指し示す。
AEC2培養のための無血清かつ化学的に規定された培地を開発するために、経路モジュレーションのための特異的な受容体に対する小分子モジュレーターまたはリガンドを使用した。以前の研究は、wntおよびEGF経路の活性化ならびにTGFβ経路の阻害が、AEC2複製に必須であることを実証した。加えて、scRNA-seqガイドインタラクトーム解析は、AEC2維持および複製のための、wntおよびEGFの要求ならびにTGFβ経路の阻害をさらに支持した(図2Dおよび図2E)。したがって、細胞成長に重大な意味を持つ必須栄養素を既知濃度で含有する基礎培地を調合し、本培地に、CHIR、EGFおよびSB431542を補充した。本培地をAEC2-線維芽細胞共培養システムにおいて検査したところ、低いCFEおよびコロニーサイズにもかかわらず、AEC2が、血清およびウシ下垂体抽出物に由来する他の未知の因子の必要がなく、本培地において増殖することができることを見出した。本培地を基礎培地として使用し、p38キナーゼ阻害(EGF経路を増強することが公知)、FGF7、FGF9およびFG10を含む他の経路を検査した。AEC2増殖におけるp38阻害の中程度の効果が観察されたが、FGF7およびFGF10単独または組合せの両方が、最大CFEを生じた。FGF7およびFGF10の両方がオルガノイド培養物に添加された場合、オルガノイドのCFE(SCEにおける10.7%±2.6%、対、SCE+p38iにおける13.5%±1.2%、対、SCE+p38i+FGF7における15.9%±0.6%、対、SCE+p38i+FGF10における16.5%±0.7%、対、SCE+p38i+FGF7+10における15.4%±0.7%[n=3]15日目;平均±SEM)またはサイズ(SCEにおける629.7±170.7μm、対、SCE+p38iにおける823.8±228.3μm、対、SCE+p38i+FGF7における967.6±304.8μm、対、SCE+p38i+FGF10における921.1±271.2μm、対、SCE+p38i+FGF7+10における812.3±256.2μm[n=3];平均±SEM)における相加効果はなかった(図3A、図3Bおよび図3C)。とりわけ、新たに調合された培地におけるCFE(MTECにおける9.8%±0.8%[n=3]、対、無血清における22.0%±0.5%[n=3]、10日目;平均±SEM)およびコロニーサイズ(MTECにおける505.0±104.7μm、対、無血清における1228.2±363.7μm[n=3];平均±SEM)の有意な増加が見出された(図4A、図4Bおよび図4C)。
AEC2(SFTPC)およびAEC1(RAGEとしても公知のAGER)マーカーに対する免疫蛍光解析は、オルガノイドが、AEC2およびAEC1の両方で構成されていることを明らかにした(データ図示せず)。注目すべきことに、AEC2およびAEC1マーカーを同時発現する多くの細胞が観察された。
これらのデータは、本実施例に記載されている新たな培地が、以前に使用されたMTC培地に存在する血清およびウシ下垂体抽出物に取って代わることができることを明らかにした。
(実施例2)
一過性IL1処置は、オルガノイド培養物における線維芽細胞依存性を克服する
上述の培地が、線維芽細胞なしでAEC2細胞成長を支持することができるか検査するために、AEC2オルガノイド培養物を線維芽細胞の非存在下でセットアップした。非常に小さく、より少ないオルガノイドが、これらの条件で観察され、AEC2が、自身の成長のために追加的な因子を要求することを指し示す。以前の研究は、IL1β/TNFa媒介性NFkBシグナル伝達が、傷害後のAEC2細胞複製および再生に必須であり、AEC2ニッチの構成成分として機能することを実証した(Katsura et al., 2019, Stem Cell Rep. 12, 657-666)。したがって、IL1sおよびTNFaが、上述の無血清培地に添加され、これらの条件が、AEC2オルガノイド培養物において線維芽細胞に取って代わることができるか検査された。対照(IL1β/TNFaなし)と比較してサイズが有意により大きい多数のオルガノイドが観察された。注目すべきことに、IL1β処置培養におけるCFEは、線維芽細胞含有条件と同様の効率に達した。加えて、免疫蛍光解析は、これらのオルガノイドが、AEC2およびAEC1の両方で構成されていることを示唆する。同様のオルガノイドサイズ(IL1s/TNFaなしの433.4±77.7μm、対、IL1β/TNFaありの857.2±339.5μm[n=3];平均±SEM)およびCFE(IL1β/TNFaなしの4.0%±0.3%[n=3]、対、IL1β/TNFaありの21.0%±1.3%[n=3]、15日目;平均±SEM)が、IL1β単独またはTNFa単独または組合せにおいて観察され、IL1sまたはTNFaのいずれかが、AEC2自己再生および分化を維持しつつ、線維芽細胞に取って代わるのに十分であることを指し示す(図5A、図5Bおよび図5C、ならびにデータ図示せず)。IL1β/TNFa媒介性NFkBシグナル伝達は、細胞増殖、生存およびアポトーシスを調節する多面的な機能を有することが公知であり、in vivoで組織傷害修復プロセスの初期ステージに関連する。LaCanna et al., 2019, J. Clin. Invest. 129, 2107-2122;Karin et al., 2009, Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 1, a000141、DiDonato et al., 2012, Immunol. Rev. 246,
379-400、Cheng et al., 2007, J. Immunol.
Baltim. Md 1950 178, 6504-6513。
したがって、IL1β処置が、初期ステージにおいてまたは培養期間全体にわたり必要であるかが問われた。これを検査するために、オルガノイド培養物セットアップ後の異なる日数の時点でIL1βを除去した。連続的補充(20.91%±1.61%、n=3;平均±SEM)と比較して、3日目(19.85%、n=2)または5日目(20.35%±0.30%、n=3)または7日目(19.33%±0.84%、n=3)に培養培地からIL1βが除去された場合であっても、CFEの減少は観察されなかった(図6Aおよび図6B)。
ヒト肺胞球培養物においてヒトIL-1βの影響も検査した。7日目に、3名の個々のドナー由来のヒト肺胞球を含有する培地からヒトIL-1βを除去し、さらに7~15日間培養した(図7A)。IL-1βによる処置は、オルガノイドの数およびサイズ(これは成長速度を反映する)を有意に増強した(図7B、図7Cおよび図7D)。
まとめると、これらのデータは、AEC2が、新たに確立された無血清フィーダー不含条件(以降、肺胞増殖培地と称される)において培養される場合、オルガノイド培養物の初期ステージにおける一過性IL1β刺激が、線維芽細胞に取って代わるのに十分であることを明らかにした。
(実施例3)
規定された培養条件由来のAEC2は、in vivoおよびex vivoで機能的である
層状体の存在は、AEC2の同一性および機能を規定するためのベンチマークアッセイとして使用される(Beers, et al., 2017, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 57, 18-27)。本出願人らのオルガノイド培養物由来AEC2における層状体の存在を検査するために、電子顕微鏡解析を行った。10および15日目の、SFFF培地において培養された標識された(tdTomato+)細胞に由来する肺胞球の概略図および代表的な画像を図8Aに示す。オルガノイド由来のAEC2における多数の層状体(図8B)。
マウスAEC2を継代することができるか検査するために、オルガノイド由来細胞を5継代にわたりサブ(sub)継代した。5継代にわたる細胞数の定量化は、継代にわたる細胞の総数の指数関数的増加を明らかにし、これが自己再生し、マーカーの発現を維持することができることを明らかにする(図9Aおよび図9B)。
ヒトAEC2を継代することができるか検査するために、ヒトドナーからHTII-280+細胞を単離および精製した(図10A)。SFFF培地において培養されたオルガノイドにおける細胞数のイメージングおよび定量化は、10継代のうち数継代にわたるAEC2マーカーの発現および自己再生を維持した(図10B、図10C、図10D、図10Eおよび図10F)。IL-1βにおいて培養されたオルガノイドは、数継代にわたりAEC2マーカーの発現および自己再生を維持した(図10G、図10H、図10Iおよび図10J)。IL-1βにおけるオルガノイド培養物は、数継代にわたり分化能を維持し(図10Kおよび図10L)、SFFF培地において培養されたオルガノイドは、10継代のうち数継代にわたり分化能を維持した(図10Mおよび図10N)。
次に、オルガノイド培養物が、Cas9/Crispr媒介性ゲノム編集に受け入れられるか検査された。これを検査するために、Sftpc遺伝子コード配列の3’末端にT2A-GFPコードDNAを挿入するための、近年記載された相同性に依存しない導入遺伝子組込み(homology independent transgene integration)(HITI)方法を使用した。成功した遺伝子編集は、クローナルに派生したAEC2オルガノイドにおけるGFP発現によって可視化された(図11A)。これらのデータは、本出願人らのオルガノイド条件が、遺伝子編集および疾患モデル化に受け入れられることの概念実証として機能する。近年の研究は、オルガノイドに基づく腫瘍モデルを使用して、ex vivoで腫瘍形成を研究した。実際に、近年の研究は、MTEC培地を使用して、線維芽細胞の存在下で肺腺癌細胞を培養した。
新たに確立された培養培地が、線維芽細胞の非存在下で肺腫瘍由来細胞の培養に適しているか検査するために、Kras G12D/tdTomatoマウスから腫瘍小結節を単離し、tdTomato+腫瘍細胞を精製した(図11B)。本出願人らの新たに確立された培地において間質細胞の非存在下でこのような腫瘍細胞を使用して、オルガノイド培養物をセットアップし、これをMTEC培地と直接的に比較した。興味深いことに、腫瘍細胞は、新たな培地において多数のオルガノイドを発生したが、MTEC培地においては発生しなかった(CFE、MTECにおける0.7%±0.2%、対、肺胞増殖培地における20.0%±1.4%[n=3]、5日目;平均±SEM)(図11C、図11Dおよび図11E)。これらのデータは、新たに確立された培地条件が、間質細胞の非存在下であってもex vivoで腫瘍細胞成長を支持することを明らかにした。
最後に、オルガノイド由来細胞を、in vivoで生着するその能力について検査した。これを検査するために、tdTomato標識細胞懸濁液を、肺を損傷するためにブレオマイシンを投与されたヌードマウスの肺に気管内注射した(図11F)。注射の2ヶ月後に、傷害された肺におけるtdTomato+細胞パッチのパッチを観察した(図11Gおよび図11H)。免疫蛍光および組織学的解析は、生着した細胞が、再生された組織へと統合され、AEC2およびAEC1のマーカーを発現したことをさらに明らかにし、オルガノイド由来細胞の成功した生着を指し示す(図11I)。まとめると、新たに確立された培地由来のオルガノイド由来細胞は、AEC2のin vivo相関物に似ており、遺伝子編集に受け入れられ、生着アッセイにおいて再生する組織へと機能的に統合されることができる。
(実施例4)
AEC2維持および分化のための化学的に規定された条件
肺胞増殖培地に由来するオルガノイドにおけるAEC2およびAEC1マーカーに対する免疫蛍光解析は、細胞の大部分(ほぼ80%)が、AEC2と共にAEC1マーカーを同時発現したことを指し示し、これらの条件が、同じ細胞においてAEC2およびAEC1同一性の両方を促進していることを指し示す(図12A、図12Bおよび図12C)。興味深いことに、scRNA-seqガイド上皮-間質細胞インタラクトームは、BMPシグナル伝達のリガンド(Bmp4)および阻害剤(Fst、Fstl1およびGrem1)が、それぞれAEC2および間質細胞において発現されることを明らかにした(図2Dおよび図2E)。さらに、近年の研究は、AEC2からAEC1への分化にBMPシグナル伝達が関与することを示唆した(Chung et. al., 2018, Development 145, dev163014;Lee et al., 2014, Cell 156, 440-455)。したがって、間質細胞の非存在下で、AEC2細胞によって産生されたBMPリガンドが、オートクリン様式で作用し、分化を誘導することが仮定された。
BMPシグナル伝達の阻害が、AEC2細胞同一性を維持しつつ、AEC1同一性の出現を遮断するか検査するために、肺胞増殖培地に、BMPシグナル伝達の阻害剤(ノギンおよびDMH1)を補充した。SFTPCおよびRAGEに対するホールマウント免疫染色および定量化は、各オルガノイドにおけるRAGE発現オルガノイドの数(30%まで低下)およびRAGE発現細胞の数(>5%)の劇的な低減を明らかにした(図12Dおよび図12E)。AEC2およびAEC1のマーカー解析は、肺胞維持培地において培養されたオルガノイドが、6継代にわたり自己再生特性を維持したことをさらに明らかにした(図12F~図12J)。これらのデータは、BMP 阻害剤入りの肺胞増殖培地(肺胞維持培地と称される)が、このようなオルガノイドにおけるAEC1細胞の誘導を抑圧しつつ、AEC2細胞同一性を維持することを明らかにした(図13)。
これらのデータは、BMPシグナル伝達が、AEC1分化に必要であるという以前の研究と合致している。しかし、オルガノイドがBMP4リガンドで処置された場合のAEC2からAEC1細胞への完全分化は、観察されず、BMPシグナル伝達は、必要であるが、分化の誘導に十分ではないことを示唆する。
AEC2からAEC1への分化を誘導し得る因子を見出すために、分化を促進すると以前に考えられた様々な分子を検査した(デキサメタゾン、T3、BMP4、TGFsおよびIBMX(ホスホジエステラーゼ阻害剤))。血清含有MTEC培地を使用した上述の実験において、AEC2細胞の自発的分化を観察した。したがって、少量の血清と組み合わせた、AEC2成長を促進する因子の減少または完全排除が、分化を刺激し得ると考えられた。これを検査するために、マウス肺由来のAEC2を維持培地において10日間培養し、次いで、TGFおよびp38キナーゼの阻害剤を除去し、EGFおよびFGFの量を(10分の1に)減少させ、10%ウシ胎仔血清を培地に添加し(以降、肺胞-Diff培地と称される)、細胞を10日間培養した(図14A)。肺胞-Diff培地におけるRAGE、HOPXおよびT1a+細胞の数の有意な増加が観察された。肺胞-Diff培地由来細胞における単一細胞トランスクリプトーム解析は、このようなオルガノイドが、多数のAEC1細胞で構成されていることを明らかに指し示した。注目すべきことに、増殖するAEC2細胞の数の有意な減少が観察され、このことは、血清中に存在する因子が、AEC2増殖を防止し得ることを指し示し、開発され、上に記載された肺胞増殖培地の重要性をさらに断定する(図14B、図14Cおよび図14D)。
まとめると、また、本明細書に記載されている通り、器官型培養におけるAEC2の増殖、維持および分化のための培養条件が決定された。
(実施例5)
肺胞幹細胞分化のための化学的に規定された(無血清)条件
AEC1へのAEC2分化を誘導し得る因子を同定するために、線維芽細胞と共培養したオルガノイドからscRNA-seqデータをマイニングした。AEC2の受容体で結合し得る、線維芽細胞において発現される分子を探索した。IL6転写物の濃縮が、線維芽細胞において同定された(図15A)。以前の研究は、AEC2が、IL6受容体を発現することを明らかにした(Zepp et al., 2017, Cell, 170(6):1134-1148)。IL6が、AEC2分化の誘導に十分であるか検査するために、肺胞維持培地においてマウスAEC2を10日間培養して、オルガノイド培養物においてAEC2を増殖した。次に、オルガノイドを、血清を欠如するが、IL6(20ng/mL)を補充した肺胞分化培地で処置し、これをさらに10日間培養した。本培地において培養したオルガノイドの免疫染色解析は、AGERを含むAEC1マーカーの強い発現を明らかにした(図15B)。同様に、IL6(20ng/mL)を補充したADM(血清なし)に培地を置き換える前に、ヒトAEC2をSFFF培地において14日間培養した(図15C)。これらの研究は、IL6処置が、培養物においてAEC1へのマウスおよびヒトAEC2の両方の分化の誘導に十分であることをさらに明らかにした。
SARS-CoV-2が、肺胞球由来AT2細胞に感染することができるか検査するために、GFP融合タンパク質を有する、近年開発されたリバースエンジニアリングされた(reverse-engineered)SARS-CoV-2ウイルスを利用した(Hou et al., 2020, Cell, 182(2):429-446)。SFFF培地(IL1βを欠如)におけるmatrigel表面にヒト肺胞球を10~12日間培養し、SARS-CoV-2-GFPと共に2時間インキュベートし、PBSで洗浄して、残留ウイルス粒子を除去し、次いで、72時間にわたり解析のために採取した(図16A)。GFPは、ウイルス曝露された肺胞球において、感染48時間後もの初期に検出されたが、対照肺胞球においては検出されなかった(図16B)。培養上清を使用したその後のプラーク形成アッセイは、ウイルス放出が、24時間目にピークとなるが、後に減退したことを明らかにした(図16C)。この観察は、3名の異なるドナー由来の細胞にわたって一貫していた。注目すべきことに、PBSによる多数の洗浄にもかかわらず、感染の直後に有意な数のウイルス粒子が観察された。この結果は、Matrigel中のウイルスの封入が原因である可能性が高かった。にもかかわらず、ウイルス力価は、24hpiで増加し、SARS-CoV-2が、AEC細胞において生産的に複製することを実証する(図16C)。定量的RT-PCRは、対照と比較して、SARS-CoV-2感染細胞におけるウイルスRNAの存在をさらに明らかにした(図16D)。ウイルス複製をさらに確認するために、ウイルスのマイナス鎖を特異的に認識するプライマーを使用してqRT-PCRを行った。実際に、肺胞球培養物におけるウイルス複製が観察された(図16E)。
(実施例7)
AT2は、SARS-CoV-2感染に応答してインターフェロンおよび炎症性経路を活性化する
SARS-CoV-2(野生型)に対するAT2の応答への洞察を得るために、感染の48時間後の肺胞球培養物における不偏のゲノムワイドトランスクリプトームプロファイリングを行った。全ての配列決定されたリードのうち、ウイルス転写物は、4.7%を占め、ヒト転写物は、95.3%を占め、ウイルスがAT2において増殖していたことを指し示す。以前の研究は、ウイルス感染に応答して、標的細胞が、典型的に、I型(IFN-I)およびIII型(IFN-III)インターフェロン(それぞれa/bおよびλ)を産生し、これらがその後、抗ウイルス防御機構の発揮に進む、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)、炎症性ケモカインおよびサイトカインを含む、転写因子IRF、STAT1/2およびNF-κBの標的を活性化することを示した(Barrat et al., 2019, Nat. Immunol. 20, 1574-1583)。したがって、感染対非感染肺胞球の差次的遺伝子発現解析が、複数のインターフェロン(IFN)およびそれらの標的を含む、一般的なウイルス応答遺伝子に関係する転写物の濃縮を明らかにしたことが重要であった。具体的には、SARS-CoV-2感染AT2は、I型IFN(IFNA7、IFNB1およびIFNE)と共にIII型IFN(IFNL1、IFNL2およびIFNL3)の転写物が濃縮されていたが、II型IFN(IFNG)リガンドは濃縮されていなかった(図17Aおよび図17B)。I型(IFNAR1およびIFNAR2)、II型(IFNGR1およびIFNGR2)およびIII型(IFNLR1およびIL10RB)IFNの受容体は、対照AT2細胞において発現され、SARS-CoV-2感染後にIFNAR2およびIFNGR2の中程度の増加が見出された(図17Aおよび図17C)(Platanias, 2005;Syedbasha
and Egli, 2017)。
これらのデータは、SARS-CoV-2感染に応答して、AT2が、それらのコグネート受容体を活性化するようにオートクリンまたはパラクリン(AT2の近隣)機構のいずれかを介して潜在的に作用し得る、IおよびIII型IFNリガンドを産生することを指し示す。実際に、IFN刺激性遺伝子(ISG)、IFN誘導性タンパク質コード遺伝子(IFI)およびテトラトリコペプチドリピートコード遺伝子によるIFN誘導性タンパク質(IFIT)を含む多数のIFN標的遺伝子が、SARS-CoV-2感染AT2において上方調節された(図17Aおよび図17D)。その上、IFN受容体の下流のシグナル伝達経路の構成成分であることが公知の鍵となる転写因子STAT1およびSTAT2もまた、感染AT2細胞において上方調節された。
経路解析は、全3クラスのIFN標的が上方調節されたが、最も顕著なものがI型およびII型IFNシグナル伝達であったことを明らかにした。II型IFNリガンド(IFNG)の非存在にもかかわらず、SARS-CoV-2感染AT2細胞におけるIFNγ応答メディエーターの正準標的の有意な上方調節が観察された(図17Aおよび図17D)。この知見は、以前に記載された通りに(Barrat et al., 2019;Bartee et al., 2008)、下流標的の有意な重複および異なるクラスのIFN経路の間のクロストークが存在することを示唆する。他の顕著な上方調節された遺伝子は、ケモカイン(CXCL10、CXCL11およびCXCL17)およびプログラム細胞死関連遺伝子(TNFSF10、CASP1、CASP4、CASP5およびCASP7)を含む(図17A)。対照的に、感染AT2細胞におけるDNA複製および細胞周期に関連する転写物(PCNA、TOP2A、MCM2およびCCNB2)の有意な下方調節が観察された(図17A)。選択された標的(IFNA7、IFNB1、IFNL1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IL1A、IL1B、IL6、CSCL10)は、感染後の初期(48時間)および後期(120時間)時点における独立した定量的RT-PCRアッセイを使用して検証された。まとめると、トランスクリプトーム解析は、SARS-CoV-2に応答した肺胞球由来AT2における、増殖関連転写物の下方調節と並んで、インターフェロン、炎症性および細胞死シグナル伝達の有意な上方調節を明らかにした。
(実施例8)
SARS-CoV-2感染は、サーファクタントの喪失および肺細胞死を誘導する
初代AT2細胞が、どのようにSARS-CoV-2感染に対して初期に応答するのかについてさらなる洞察を得るために、免疫組織化学的検査を使用して、感染の24時間~72時間後の肺胞球における細胞変化を解析した。感染肺胞球の定量化は、29.22%がSARS+であることを明らかにした(図18A)。免疫染色は、感染肺胞球におけるGFPおよびSARS-CoV-2スパイクタンパク質の同時発現を明らかにした。各肺胞球におけるGFP+細胞の数の変動が見出された。したがって、肺胞球は、各肺胞球におけるSARS+細胞の数に応じて、低(1~10個の細胞)および高(>10個)へと広くカテゴリー化された(図18B)。次に、SFTPC、SFTPBおよびHTII-280を含むAT2細胞マーカーの解析は、感染細胞(GFP+またはSARS+)におけるサーファクタントタンパク質SFTPCおよびSFTPBの発現の劇的な喪失または減少を明らかにしたが、これは、対照肺胞球においては見られなかった(図18C)。注目すべきことに、HTII-280発現は、SARS-CoV-2感染ヒト肺胞球において免疫染色によって可視化される通り、変化しなかった。サーファクタントタンパク質発現の喪失は、免疫染色によって可視化される通り、高感染肺胞球においてより明らかであった。GFP+細胞の一部は、AT1細胞に似ている僅かに細長い形態を示したが、SARS-CoV-2およびAGERを検出するための同時免疫染色により可視化される通り、AT1細胞マーカーに対する免疫染色は、感染細胞がAT1細胞へと分化しなかったことを明らかにした。これらのデータは、AT2が、SARS-CoV-2感染に応答してサーファクタント発現を下方調節するという、本出願人らのscRNA-seqデータと一致する。
病理組織学的証拠は、COVID-19肺において肺胞実質の喪失があることを示唆する(Huang et al., 2020, Lancet Lond. Engl.
395, 497-506)。SARS-CoV-2感染が細胞死を誘導するか検査するために、アポトーシス細胞のマーカーである活性カスパーゼ3に対する免疫染色を行った。アポトーシス細胞は、ウイルスに曝露された肺胞球において見出されたが、対照においては見出されず、AT2細胞が、SARSCoV-2感染に応答して細胞死を起こすことを示唆する。著しいことに、細胞死は、SARS+およびSARS-細胞の両方において観察され、非感染近隣細胞におけるパラクリン機構誘導性細胞死を示唆する(図18D)。さらに、増殖細胞のマーカーであるKi67に対する免疫染色は、対照と比較して、ウイルス曝露された肺胞球における全体的な細胞複製の明らかな差を明らかにしなかった(図18E)。まとめると、これらのデータは、SARS-CoV-2感染が、細胞自律性および非自律性機構の両方を介して、AT2細胞においてサーファクタントタンパク質の下方調節および細胞死の増加を誘導することを示す。
(実施例9)
SARS-CoV-2感染肺胞球およびCOVID-19肺由来のAT2におけるトランスクリプトーム全体にわたる類似性
肺胞球におけるAT2におけるSARS-CoV-2誘導性応答を、COVID-19肺に見られる変化と直接的に比較するために、6名の重症COVID-19患者から得た気管支肺胞洗浄液(BALF)由来の公開されているscRNA-seqデータセットを利用した(Bost et al., 2020, Cell, 181(7):1475-1488;Liao et al., 2020, Nature Medicine, 26:842-844)。先ず、COVID-19患者肺由来のAT2と、健康な肺由来のAT2細胞の遺伝子発現プロファイルを比較した(図19)。COVID-19患者AT2細胞におけるケモカイン(CXCL10、CXCL14およびIL32)、インターフェロン標的(IFIT1、ISG15およびIFI6)および細胞死(TNFSF10、ANXA5およびCASP4)経路関連転写物の有意な上方調節が見出された(図20Aおよび図20B)。興味深いことに、SFTPA1、SFTPA2、SFTPB、SFTPCおよびSFTPDを含むサーファクタント遺伝子、ならびにプロ形態(pro-form)のサーファクタントタンパク質の成熟タンパク質へのプロセシングを触媒する遺伝子産物であるNAPSAが、COVID-19患者AT2細胞において有意に下方調節された一方、他のAT2細胞マーカーの変化は、最小かつごく僅かであった(図20Aおよび図20B)。経路解析は、COVID-19 AT2細胞におけるI型およびII型IFNシグナル伝達、炎症性プログラムおよび細胞死経路の有意な濃縮を明らかにした。次に、SARS-CoV-2感染したex vivo培養物およびCOVID-19患者肺由来のAT2の間の転写物を直接的に比較した。これにより、上方調節された転写物における際だった類似性が明らかになった。これらは、IFNリガンドおよびその標的を含むケモカインおよびサイトカインの上方調節を含み、肺胞球に由来するAT2が、SARSCoV-2感染後にヒト肺由来のAT2と同様に応答することを指し示す。
(実施例10)
AT2は、外因的IFNに応答し、SARSCoV-2感染に関連する特色を再現する
トランスクリプトーム解析は、SARS-CoV-2感染後の肺胞球およびヒト肺由来のAT2におけるインターフェロンシグネチャーにおける際だった類似性を明らかにした。以前の研究は、IFNが、文脈依存性様式で細胞変化を誘導することを示した。例えば、IFNaおよびIFNbは、肺においてインフルエンザウイルス感染に応答して保護効果を提供し、一方、IFNgは、慢性炎症に応答して腸細胞においてアポトーシスを誘導する(Koerner et al., 2007, J. Virol. 81, 2025-2030;Takashima et al., 2019, Sci. Immunol. 4(42))。AT2におけるIFNの直接的な効果を検査するために、肺胞球を、SFFF培地における精製された組換えIFNa、IFNbおよびIFNgで処置し、これらを72時間培養した。先ず、全処置において脱離された細胞を観察し、IFNg処置肺胞球において最大ほぼ3倍増加した効果があった(図21A)。活性カスパーゼ3に対する免疫染色は、全IFN処置に応答した細胞死の有意な誘導を明らかにし、最大の効果はIFNgによる(図21B)。対照的に、細胞増殖のマーカーであるKi67に対する免疫染色によって明らかにされる通り、IFNbおよびIFNg処置における細胞増殖の有意な低減が観察された(図21C)。著しいことに、免疫染色は、対照と比較して、全IFNで処置された肺胞球におけるSFTPB発現の低減を明らかにした。同様の傾向は、qRT-PCRによって評価される通り、SFTPCおよびSFTPB転写物について観察された(図21Dおよび図21E)。これらのデータは、SARS-CoV-2感染後のAT2肺胞球由来のトランスクリプトームデータと一致する。注目すべきことに、IFNa、IFNbおよびIFNgによる処置は、ACE2のレベルを有意に増強したが、TMPRSS2転写物を増強せず、このことは、他の細胞型における以前の研究と合致する(Hou et al., 2020;Ziegler et al., 2020)(図21Fおよび図21G)。同様の傾向が、SARS-CoV-2感染細胞において観察され、SARS-CoV-2感染をその後に増幅する、IFNおよびACE2が関与する正のループを示唆する(図21H)。
(実施例11)
IFNによる前処置は、肺胞球におけるSARS-CoV-2複製を低減する
近年の研究は、IFNによる前処置が、Calu-3およびVero-2細胞におけるSARS-CoV-2複製を低減したことを示唆した。IFN処置単独由来の上述のデータは、AT2細胞死の増加を生じたため、ウイルス感染前のIFNによる肺胞球の前処置の効果を検査した。したがって、ウイルス感染に先立ち、肺胞球を、より低い用量のIFNαおよびIFNγ(10ng)で18時間前処置した(図22A)。感染後24時間目および48時間目の、その後のプラーク形成アッセイは、IFNによる前処置が、肺胞球におけるウイルス力価を有意に低減したことを明らかにした(図22B)。加えて、ウイルス複製におけるIFNシグナル伝達阻害の効果も検査した。これを行うために、肺胞球を、IFNシグナル伝達の阻害剤であるルキソリチニブで18時間前処置し、ウイルス感染後に処置を続けた(図22A)。プラーク形成アッセイは、ウイルス複製の増加を明らかにした(図22B)。まとめると、これらのデータは、IFNによる前処置が予防的効果を与え、一方、IFN阻害がウイルス複製を促進することを示唆する。
考察
肺胞球培養物を使用して、AT2が、SARS-CoV-2受容体、ACE2を発現し、ウイルス感染に対して感受性であることが実証された。トランスクリプトームプロファイリングは、AT2が、感染後のより後の時点において多数のIFN、サイトカイン、ケモカインおよび細胞死関連遺伝子の発現を活性化する「炎症性状況」の出現をさらに明らかにした。これらのデータは、より後の時点まで、SARS-CoV(2003)感染後の遅延した宿主自然免疫応答を示す前の研究と一致する(Menachery et al., 2014, mBio, 5(3): e01174-14)が、感染後の異なる時点における宿主応答の動力学的解析の必要も強調する。トランスクリプトームおよび免疫組織化学的解析の両方が、SARS-CoV-2感染肺胞球におけるサーファクタントタンパク質の下方調節を明らかにした。典型的に、ウイルス感染によって細胞において活性化されるのはI型およびIII型経路であるため、II型IFN経路が、ex vivoでAT2細胞において活性化されるという知見は、驚くべきことである(Barrat et al., 2019, Nat. Immunol. 20, 1574-1583;Bartee et al., 2008, Curr. Opin. Microbiol. 11, 378-383)。著しいことに、肺胞球由来AT2由来のこれらの予想外の知見は、COVID-19患者肺由来のAT2細胞における応答を反映し、SARS-CoV-2研究のための肺胞球由来AT2の関連性をさらに支持する。
本研究は、IFNによる前処置が、肺胞球における予防的有効性を示すことの証拠をさらに提供した。
オルガノイド培養物において成長されたAT2細胞が、Calu-3、A549、VeroおよびH1299等の現在使用されている細胞系よりも好まれることには、いくつかの理由が存在する。例えば、ヒト肺腺癌に由来するA549細胞は、ウイルス感染研究において肺胞上皮細胞の代替物として広範に使用されてきた。しかし、A549細胞系は、上皮タイトジャンクションを形成する能力を含む、肺上皮細胞の中核的特色を欠如する;これは、多数の遺伝的変更も有する(Osada et al., 2014, Genes Genomes 21, 673-683)。より重要なことに、A549細胞は、SARS-CoV-2受容体、ACE2を発現せず、ウイルス感染研究は、この受容体の異所的発現に頼る。したがって、形質転換された細胞系は、ネイティブ肺上皮細胞を忠実に再現しない(Mason and Williams, 1980, Biochim. Biophys. Acta 617:36-50)。対照的に、肺胞幹細胞(AT2)に基づく肺胞球は、分子的、形態的特色を保持し、適した条件下でAT1細胞へと分化する能力を維持する、高度に極性化した上皮構造である。
当業者であれば、本開示が、目的を実行し、言及されている目標および利点ならびにそれらに固有のものを得るように十分に適応されることを容易に認めるであろう。本明細書に記載されている本開示は、好まれる実施形態の現在の代表であり、例示的であり、本開示の範囲における限定として意図するものではない。その変化および他の使用は、当業者によって想起され、それらは、特許請求の範囲によって規定される本開示の精神の内に包含される。
本明細書において引用されているいずれかの非特許または特許文書を含むいずれかの参考文献が、先行技術を構成することは承認されない。特に、他に記述がなければ、本明細書におけるいずれかの文書の参照が、これらの文書のいずれかが、米国または他のいずれかの国における当技術分野の共通一般知識の一部を形成することの承認を構成しないことが理解されるであろう。参考文献についてのいずれかの記述は、その著者が断定する事柄を記すものであり、本出願人は、本明細書に引用されている文書のいずれかの正確性および妥当性を検証する権利を留保する。それ以外のことが明確に指し示されない限り、本明細書に引用されているあらゆる参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
引用されている参考文献に見出されるいずれかの定義および/または記載の間にいずれかの相違がある場合、本開示が優先するものとする。