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JP7748799B2 - メラノソームの分解促進作用の評価方法 - Google Patents
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JP7748799B2 - メラノソームの分解促進作用の評価方法 - Google Patents

メラノソームの分解促進作用の評価方法

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本発明は、メラノソームの分解促進作用の評価方法、メラノソームの分解促進物質のスクリーニング方法、及びメラノソームの分解促進作用の評価モデルに関する。
メラノサイト内で産生されたメラニンを含むメラノソームは、ケラチノサイトに貪食され、ケラチノサイト内の核周囲に集積することで紫外線による損傷から核を保護している。このケラチノサイトに貪食されたメラノソームは永続的に存在するわけではなく、ケラチノサイト内で分解され、最終的にはターンオーバーによって皮膚から排出されている。一方、皮膚のシミ部位では、メラノソームの産生が高まると共に、メラノソームが分解されずケラチノサイト内に蓄積されている。そのため、シミの改善には、ケラチノサイト内に蓄積したメラノソームの分解を促進することが有効であると考えられている。
従来、メラノソームの分解促進作用の評価方法として、メラノサイトから抽出したメラノソームをケラチノサイトに貪食させ後、被験物質で一定時間処理してメラニン量又はメラノソーム量を測定する方法が一般的である(例えば、特許文献1~4参照)。しかしながら、従来の評価方法では、抽出したメラノサイトを使用することが必要であるため、作業時間や工程が増えるという欠点がある。また、従来の評価方法では、メラノソームをケラチノサイトに添加して人為的に貪食させており、メラノサイトからケラチノサイトへのメラノソームの受け渡しが行われていないため、実際の細胞間におけるメラノソーム取り込み量を反映できておらず、表皮に存在するメラノソーム貪食ケラチノサイトの細胞モデルを正しく再現できていないおそれがある。
また、従来、メラノソームの分解促進作用の評価方法として、メラノサイトとケラチノサイトを混合培養した後に、被験物質を添加してメラノソームの分解促進作用を評価する方法も提案されている。しかしながら、このような混合培養法を使用した評価系では、メラノソーム貪食ケラチノサイトとメラノサイトが混在して存在するため、メラノサイトへの影響を除外して、被験物質のメラノソームの分解促進作用を評価することができないという欠点がある。
特開2015-10070号公報 特開2018-70566号公報 特開2018-76302号公報 特開2019-218268号公報
本発明の目的の一つは、表皮に実際に存在するメラノソーム貪食ケラチノサイトに近い評価モデルを構築することである。また、本発明の他の目的は、当該評価モデルを使用して、メラノソームの分解促進作用の評価方法、及びメラノソームの分解促進物質のスクリーニング方法を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養することにより、メラノサイトで産生されたメラノソームをケラチノサイトに貪食させた後に、当該液透過性膜からメラノサイトを除去することにより得られた評価モデルは、実際の表皮でのメラノソーム貪食ケラチノサイトの形成機構に近い手法で作成されており、当該評価モデルを使用することにより、高い精度で、メラノソームの分解促進作用の評価やメラノソームの分解促進物質のスクリーニングが行い得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 被験物質のメラノソームの分解促進作用を評価する方法であって、
液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる第1工程、
前記第1工程後に、液透過性膜からメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する第2工程、
前記第2工程で得られた評価モデルを被験物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する第3工程、及び
前記第3工程おいて測定されたメラニン量又はメラノソーム量に基づいて、被験物質のメラノソームの分解促進作用を判定する第4工程
を含む、評価方法。
項2. 前記第1工程において、液透過性膜を底部に有するカルチャーインサートを用いて培養容器を区切ってケラチノサイトとメラノサイトを隔てて共培養することにより、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる、項1に記載の評価方法。
項3. 候補物質の中からメラノソームの分解促進作用を有する物質をスクリーニングする方法であって、
液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる第I工程、
前記第I工程後に、液透過性膜からメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する第II工程、
前記第II工程で得られた評価モデルを候補物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する第III工程、及び
前記第III工程おいてメラニン量又はメラノソーム量を低下させた候補物質を、メラノソームの分解促進作用を有するものとして選定する第IV工程
を含むスクリーニング方法。
項4. 前記第I工程において、液透過性膜を底部に有するカルチャーインサートを用いて培養容器を区切ってケラチノサイトとメラノサイトを隔てて共培養することにより、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる、項3に記載のスクリーニング方法。
項5. メラノソームの分解促進作用の評価モデルであって、
液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着しており、
液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養することによりケラチノサイトにメラノソームを貪食させた後に、当該液透過性膜からメラノサイトを除去することにより得られる、評価モデル。
本発明では、メラノサイトから産生されたメラノソームが液透過性膜を介してケラチノサイトに受け渡されることにより、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させているので、表皮に実際に存在するメラノソーム貪食ケラチノサイトに近い評価モデルを作製できており、高い精度で、メラノソームの分解促進作用の評価やメラノソームの分解促進物質のスクリーニングを行うことが可能になっている。
液透過性膜を介してケラチノサイトとメラノサイトを共培養する際の手順の一例を模式的に示した図である。 実施例1及び比較例1~3で得られたケラチノサイト付着ビドリゲル膜に対してフォンタナ・マッソン染色を行い、ケラチノサイトが付着している側の表面を光学顕微鏡で観察した像である。 実施例1で得られたケラチノサイト付着ビドリゲル膜をラパマイシン存在下又は非存在下で培養した後に、フォンタナ・マッソン染色を行い、ケラチノサイトが付着している側の表面を光学顕微鏡で観察した像である。
1.メラノソームの分解促進作用の評価方法
本発明の評価方法は、被験物質のメラノソームの分解促進作用を評価する方法である。具体的には、本発明の評価方法は、以下の第1工程~第4工程を含むことを特徴とする。
第1工程:液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる工程。
第2工程:前記第1工程後に、液透過性膜からメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する工程。
第3工程:前記第2工程で得られた評価モデルを被験物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する工程。
第4工程:前記第3工程おいて測定されたメラニン量又はメラノソーム量に基づいて、被験物質のメラノソームの分解促進作用を判定する工程。
以下、本発明の評価方法について、工程毎に説明する。
[第1工程]
第1工程では、第1工程:液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる。第1工程では、メラノサイトから産生されたメラノソームが、液透過性膜を介してケラチノサイトに受け渡され、メラノソーム貪食ケラチノサイトが生成する。
液透過性膜とは、培地を透過可能であり、且つケラチノサイト及びメラノサイトの支持体となり得る膜である。液透過膜の種類については、特に制限されないが、好ましくは多孔質膜が挙げられる。多孔質膜の素材としては、例えば、コラーゲン、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはコラーゲンが挙げられる。また、多孔質膜の孔径については、細胞を透過せず、且つ培地を透過可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、10~2000nm、好ましくは30~1500nm、より好ましくは50~1000nmが挙げられる。
また、第1工程で使用するケラチノサイト及びメラノサイトの由来については、特に制限されないが、ヒトにおけるメラノソームの分解促進作用の評価、ヒトに適用されるメラノソームの分解促進物質をスクリーニングに適した評価モデルを得るという観点から、ヒト由来であることが好ましい。
第1工程において、液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養するには、例えば、以下の第1-1工程及び第1-2工程により行うことができる。
第1-1工程:液透過性膜をセットした培養容器にケラチノサイト又はメラノサイトの一方を播種して一次培養を行うことにより、液透過性膜の一方の面にケラチノサイト又はメラノサイトを付着させる。
第1-2工程:第1-1工程後の液透過性膜を、ケラチノサイト又はメラノサイトが付着していない面が上側になるように培養容器にセットし、他方の細胞(ケラチノサイト又はメラノサイト)を播種して共培養を行うことにより、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる。
第1-1工程で使用する培養容器は、液透過性膜上で細胞培養が可能であるものであればよく、例えば、培養プレート、培養ディッシュ等が挙げられる。第1-1工程で使用する培養容器として、好ましくは培養プレートが挙げられる。
第1-1工程及び第1-2工程で播種する細胞は、一方がケラチノサイトで他方がメラノサイトであればよい。例えば、前記第1-1工程でメラノサイトを播種し、前記第1-2工程でケラチノサイトを播種してもよく、また、前記第1-1工程でケラチノサイトを播種し、前記第1-2工程でメラノサイトを播種してもよいが、記第1-1工程でメラノサイトを播種し、前記第1-2工程でケラチノサイトを播種することが好ましい。
第1-1工程において、液透過性膜上に播種する細胞数については、特に制限されないが、例えば、1×102~1×105細胞/cm2程度、好ましくは5×102~8×104細胞/cm2程度、より好ましくは1×103~4×104細胞/cm2程度が挙げられる。
第1-1工程における一次培養で使用される培地については、播種する細胞の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地等が挙げられる。一次培養に使用される培地には、必要に応じて、牛血清アルブミン(BSA)、ウシ胎児血清(FCS)等が含まれていてもよい。また、メラノサイト培養用に最適化された培地(例えば「DermaLife M Comp kit」、Life Cell technology)やケラチノサイト培養用に最適化された培地(例えば、「HUMEDIA-KG2」、クラボウ株式会社)は市販されており、市販の専用培地を使用することもできる。
第1-1工程における一次培養の培養時間については、播種する細胞の種類、播種する細胞数等に応じて、細胞が液透過性膜に付着できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば12~96時間、好ましくは18~82時間、より好ましくは24~48時間が挙げられる。なお、培養期間中は、必要に応じて、新鮮な培地に培地交換を行ってもよい。
また、第1-1工程における一次培養の培養条件については、播種する細胞が生育可能な条件に設定すればよいが、例えば、約5%のCO2環境下で、36~38℃、好ましくは37℃が挙げられる。
第1-2工程で使用する培養容器は、液透過性膜上で細胞培養が可能であるものであればよく、第1-1工程で使用した培養容器を引き続き使用することができる。
第1-2工程では、第1-1工程後の液透過性膜を培養容器内で、細胞が付着している面を下側、細胞が付着していない面を上側になるようにセットする。この状態で、ケラチノサイト及びメラノサイトの内、第1-1工程で播種していない方の細胞を、液透過性膜の細胞が付着していない面(培養容器内の液透過性膜の上側の面)に播種して、ケラチノサイトとケラチノサイトを液透過性膜を介して分離した状態で共培養を行う。
第1-2工程において、液透過性膜上に播種する細胞数については、特に制限されないが、例えば、1×102~1×105細胞/cm2程度、好ましくは5×102~8×104細胞/cm2程度、より好ましくは1×103~4×104細胞/cm2程度が挙げられる。
また、第1-2工程における共培養で使用される培地については、ケラチノサイトとメラノサイトの双方が生育可能なものであればよく、例えば、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地等が挙げられる。また、共培養に使用される培地には、必要に応じて、牛血清アルブミン(BSA)、ウシ胎児血清(FCS)等が含まれていてもよい。また、ケラチノサイトとメラノサイトの双方が生育可能であれば、ケラチノサイト培養用に最適化された培地(例えば、「HUMEDIA-KG2」、クラボウ株式会社)を使用することもできる。
第1-2工程における共培養の培養時間については、メラノサイト内のメラノソームがケラチノサイトに受け渡され、メラノソーム貪食ケラチノサイトが生じる範囲に設定すればよく、例えば2~10日間、好ましくは3~9日間、より好ましくは3~8日間が挙げられる。なお、培養期間中、必要に応じて、新鮮な培地に培地交換を行ってもよい。
また、第1-2工程における共培養の培養雰囲気については、ケラチノサイトとメラノサイト内が生育可能な条件に設定すればよいが、例えば、約5%のCO2雰囲気下で、36~38℃、好ましくは37℃が挙げられる。
斯くして第1-2工程を行うことにより、一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着し、他方の面にメラノサイトが付着した液透過性膜が得られる。
第1-1工程及び第1-2工程は、液透過性膜を底部に有するカルチャーインサートを用いて培養容器を区切ってケラチノサイトとメラノサイトを隔てて共培養することにより実施できる。当該培養容器を使用して第1-1工程及び第1-2工程を行う手順を以下の(1)及び(2)に示し、その模式図を図1に示す。なお、図1では、便宜上、カルチャーインサートの内側表面の液透過性膜にケラチノサイトを付着させ、当該カルチャーインサートの外側表面の液透過性膜にメラノサイトを付着させているが、配置されるケラチノサイトとメラノサイトは、その逆であってもよい。
(1)先ず、カルチャーインサートの外側表面の多孔質膜を上面にして、当該多孔質膜の外側表面の外周から上に延びるリング状ホルダーを装着して容器を形成し、一方の細胞の懸濁液を入れて培養することにより、当該細胞をカルチャーインサートの外側表面の多孔質膜に付着させる(第1-1工程)。
(2)次いで、培養液を除去して、前記リング状ホルダーを外し、カルチャーインサートをカルチャーインサートの受け皿となるプレート(コンパニオンプレート)に装着し、カルチャーインサート内に他方の細胞の懸濁液を入れて培養する(第1-2工程)。
[第2工程]
第2工程では、第1工程後の液透過性膜から付着しているメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する。第2工程において液透過性膜の一方の面に付着しているメラノサイトを除去することにより、メラノサイトによる影響を排除してメラノソーム分解促進作用を評価することが可能になる。
第2工程では、第1工程後の液透過性膜の一方の面に存在するメラノサイトのみを除去し、他方の面に存在するメラノソーム貪食ケラチノサイトは液透過性膜に付着した状態を維持しておく必要がある。そのため、メラノサイトの除去は、トリプシン等の薬剤処理を使用しない方がよく、例えば、綿棒、スパチュラ等を使用して物理的に行うことが好ましい。
[第3工程]
第3工程では、被験物質の存在下で前記評価モデルをインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量を測定する。
被験物質とは、メラノソームの分解促進作用の評価対象となる物質である。被験物質は、メラノソームの分解促進作用が知られている物質であってもよく、また、当該作用が知られていない物質であってもよい。また、被験物質の種類については、特に制限されず、天然物、合成物、半合成物が挙げられる。被験物質として、具体的には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、植物エキス、動物エキス、糖類(多糖、オリゴ糖、単糖等を含む)、脂質(リン脂質、糖脂質等を含む)、界面活性剤、その他の高分子有機化合物、その他の低分子有機化合物、無機化合物、その他の生体由来化合物、それらの修飾物、それらの誘導体等が挙げられる。被験物質は、1種の化合物のみからなるものであってもよく、また2種以上の化合物が含まれるものであってもよい。
第3工程において、インキュベートする際の被験物質の濃度については、特に制限されないが、例えば、0.01~2.0重量%程度に設定すればよい。また、被験物質の濃度は、低濃度から高濃度に段階的に設定してもよい。
また、第3工程において、被験物質と前記評価モデルを共存させる際の溶媒については、ケラチノサイトが生存状態を維持できるものであればよく、例えば、培地、緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは培地が挙げられる。溶媒として培地を使用する場合、培地の種類については、特に制限されないが、例えば、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地等が挙げられる。また、培地には、必要に応じて、牛血清アルブミン(BSA)、ウシ胎児血清(FCS)等が含まれていてもよい。また、ケラチノサイト培養用に最適化された培地(例えば、「HUMEDIA-KG2」、クラボウ株式会社)を使用することもできる。
第3工程におけるインキュベート時間については、候補物質の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~5日間、好ましくは2~5日間、より好ましくは2~3日間が挙げられる。なお、インキュベート期間中、候補物質が含まれる新鮮な溶媒で、必要に応じて溶媒交換を行ってもよい。
第3工程におけるインキュベート時の雰囲気については、ケラチノサイトとメラノサイトが生存状態を維持できる条件に設定すればよいが、例えば、約5%のCO2雰囲気下で、36~38℃、好ましくは37℃が挙げられる。
第3工程では、被験物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する。
ケラチノサイト内のメラニン量は、例えば、フォンタナ・マッソン染色法によって定性的に測定できる。また、ケラチノサイト内のメラニン量は、例えば、1N水酸化ナトリウム水溶液でケラチノサイトからメラニンを抽出して、得られた抽出液の450nmの吸光度を測定することにより定量することもできる。
また、ケラチノサイト内のメラノソーム量は、例えば、Pmel17、gp87等のメラノソームの膜タンパク質量を測定する方法によって定量的又は定性的に測定できる。メラノソームの膜タンパク質量の測定は、具体的には、免疫染色、ウエスタンブロッティング等により行うことができる。
[第4工程]
第4工程では、前記第3工程おいて測定されたメラニン量又はメラノソーム量に基づいて、被験物質のメラノソームの分解促進作用を判定する。具体的には、前記第3工程においてメラニン量又はメラノソーム量を低下させた被験物質は、メラノソームの分解促進作用があると判定される。一方、前記第3工程においてメラニン量又はメラノソーム量を低下させなかった被験物質は、メラノソームの分解促進作用がないと判定される。
第4工程において、被験物質が、メラニン量又はメラノソーム量を低下させているか否かについては、被験物質を添加することなく第3工程を実施したコントロールとの比較に基づいて判定できる。具体的には、前記コントロールに比べてメラニン量又はメラノソーム量が低い程、被験物質はメラノソームの分解促進作用が高いと判定できる。また、前記コントロールに比べてメラニン量又はメラノソーム量が同等である被験物質は、メラノソームの分解促進作用がないと判定できる。
2.メラノソームの分解促進物質のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、候補物質の中から、メラノソームの分解促進作用を有する物質を選定する方法である。具体的には、本発明のスクリーニング方法は、以下の第I工程~第IV工程を含むことを特徴とする。
第I工程:液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる工程。
第II工程:前記第I工程後に、液透過性膜からメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する工程。
第III工程:前記第II工程で得られた評価モデルを候補物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する工程。
第IV工程:前記第III工程おいてメラニン量又はメラノソーム量を低下させた候補物質を、メラノソームの分解促進作用を有するものとして選定する工程。
以下、本発明のスクリーニング方法について、工程毎に説明する。
[第I工程及び第II工程]
第I工程及び第II工程は、それぞれ前記評価方法における第1工程及び第2工程と同様である。
[第III工程]
第III工程では、候補物質の存在下で前記評価モデルをインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する。
候補物質とは、スクリーニングに供され、メラノソームの分解促進作用を有しているか否かの判定に供される物質である。候補物質の種類については、特に制限されず、天然物、合成物、半合成物が挙げられる。候補物質として、具体的には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、植物エキス、動物エキス、糖類(多糖、オリゴ糖、単糖等を含む)、脂質(リン脂質、糖脂質等を含む)、界面活性剤、その他の高分子有機化合物、その他の低分子有機化合物、無機化合物、その他の生体由来化合物、それらの修飾物、それらの誘導体等が挙げられる。候補物質は、1種の化合物のみからなるものであってもよく、また2種以上の化合物が含まれるものであってもよい。
第III工程において、インキュベートする際の候補物質の濃度については、前記スクリーニング方法における第3工程の被験物質の濃度と同様である。また、第III工程において、使用する溶媒、インキュベート時間、インキュベート時の雰囲気、インキュベートした後のメラニン量又はメラノソーム量の測定方法等については、前記スクリーニング方法における第3工程の場合と同様である。
[第IV工程]
第IV工程では、前記第III工程おいてメラニン量又はメラノソーム量を低下させた候補物質を、メラノソームの分解促進作用を有するものとして選定する。
第III工程において、メラニン量又はメラノソーム量を低下させているか否かについては、被験物質を添加することなく第III工程を実施したコントロールとの比較に基づいて判定できる。具体的には、前記コントロールに比べてメラニン量又はメラノソーム量が低い場合には、候補物質はメラノソームの分解促進作用を有していると判定され、前記コントロールに比べてメラニン量又はメラノソーム量が低い程、候補物質はメラノソームの分解促進作用が高いと判定できる。
メラノソームの分解促進作用を有するものとして選定された候補物質は、美白効果等が期待される成分として、化粧料等の外用製剤の分野での使用が期待される。また、メラノソームの分解促進作用を有するものとして選定された候補物質は、メラノソームの分解機序の解明等における実験ツールとして使用することもできる。
3.メラノソームの分解促進作用の評価モデル
本発明の評価モデルは、メラノソームの分解促進作用の評価のために使用される評価モデルであって、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着しており、液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養することによりケラチノサイトにメラノソームを貪食させた後に、当該液透過性膜からメラノサイトを除去することにより得られるものであることを特徴とする。以下、本発明の評価モデルについて詳述する。
本発明の評価モデルは、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着しており、当該液透過性膜の他方の面には細胞が付着していない状態の細胞付着膜である。具体的には、本発明の評価モデルは、前記評価方法における第1工程及び第2工程を経て得られるものである。
本発明の評価モデルでは、液透過性膜に付着しているメラノソーム貪食ケラチノサイトは、実際の表皮でのメラノソーム貪食ケラチノサイトの形成機構に近い手法で作製されているため、メラノソームの分解促進作用の評価やメラノソームの分解促進物質のスクリーニング等を行う際のモデル細胞として使用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
試験例1
1.ケラチノサイトが付着している液透過性膜の作製
[実施例1]
Ad-MEDビドリゲル2(12ウェルタイプ、関東化学株式会社製)を用いて、メラノソーム貪食ケラチノサイトを付着させた液透過性膜を作製した。当該ad-MEDビドリゲル2には、ビドリゲル膜(コラーゲン線維が高密度に折り重なった多孔質膜、膜面積1cm2、孔径67nm)を底部に有するカルチャーインサート、及び当該カルチャーインサートの受け皿となる12ウェルプレートが備わっている。また、当該ad-MEDビドリゲル2の付属品として購入したオプションリング(リング状ホルダー)も使用した。当該オプションリングは、カルチャーインサートの外側表面のビドリゲル膜を上にした状態で、ビドリゲル膜の外側表面の外周から上に延びるように装着して、一時的にウェルを形成できるように構成されている。
先ず、カルチャーインサートにオプションリングを装着し、カルチャーインサートの外側表面のビドリゲル膜が底部、オプションリングが壁部を形成したウェル状にした。次いで、DermaLife M Comp kit培地(Life Cell technology)で懸濁したヒト正常メラノサイト(NHEM(NB)、クラボウ株式会社製)を4×104個/ウェルとなるように、オプションリングで壁部を形成したウェル内に播種し、37℃、5%CO2の環境で2日間培養し、カルチャーインサートの外側表面のビドリゲル膜にメラノサイトを付着させた。
次いで、ウェル内から培養液を除去した後にオプションリングを外し、HUMEDIA-KG2培地(クラボウ株式会社)を添加した12ウェルプレートのウェルに、外側表面(下側)のビドリゲル膜にメラノサイトを付着させたカルチャーインサートを挿入して固定した。その後、カルチャーインサート内に、HUMEDIA-KG2培地で懸濁したヒト正常ケラチノサイト(NHEK(NB)、クラボウ株式会社製)を1×104個/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO2の環境で7日間培養した。
次いで、12ウェルプレートのウェルからカルチャーインサート内を取り出し、滅菌した後にPBS(-)に浸した綿棒を用いて、カルチャーインサートの外側表面のビドリゲル膜に付着しているメラノサイトを除去し、ケラチノサイト付着ビドリゲル膜を得た。
[比較例1]
Ad-MEDビドリゲル2(12ウェルタイプ、関東化学株式会社製)を用いて、カルチャーインサート内でケラチノサイトを培養し、ケラチノサイト付着ビドリゲル膜を得た。ケラチノサイトの培養条件は、前記実施例1と同様である
[比較例2]
10%FBS(ウシ胎児血清)を含有するHAMF12培地を用いて、75cm2フラスコでヒトメラノーマ細胞(HMV-II、RCB368)を37℃、5%CO2の環境でコンフルエントな状態になるまで培養した。培養後、ヒトメラノーマ細胞を回収し、遠心分離した後、上清を捨て細胞ペレットを回収し、-20℃で凍結させた。凍結させた細胞ペレットにlysis buffer(0.1 M Tris-HCl,pH7.5,1% Igepal CA-630, 0.01%SDS)1mlを添加して十分に懸濁した後、4℃で20分間静置した。静置後,細胞溶解液を遠心分離(1,000×g、5分、4℃)し、得られた上清をマイクロチューブに移し、遠心分離を行った(1,000×g、5分、4℃)。上清を新しいマイクロチューブに移して遠心分離を行い(20,000×g、5分、4℃)、上清を除去した。得られたペレットにPBS(-)0.05mLを添加することによりメラノソーム溶液を調製した。
Ad-MEDビドリゲル2(12ウェルタイプ、関東化学株式会社製)の12ウェルプレートのウェルにHUMEDIA-KG2培地(クラボウ株式会社)を添加した後にカルチャーインサートを挿入して固定した。その後、カルチャーインサート内に、HUMEDIA-KG2培地で懸濁したヒト正常ケラチノサイト(NHEK(NB)、クラボウ株式会社製)を1×104個/ウェルとなるように播種し、更に前記で調製したメラノソーム溶液を50μl添加して37℃、5%CO2の環境で7日間培養した。斯くして、メラノソームを取り込ませたケラチノサイト付着ビドリゲル膜を得た。
[比較例3]
抽出したメラノソームを添加しなかったこと以外は、前記比較例2と同条件で、ケラチノサイト付着ビドリゲル膜を得た。
2.ケラチノサイトが付着している液透過性膜の評価
実施例1及び比較例1~3で得られたケラチノサイト付着ビドリゲル膜に対してフォンタナ・マッソン染色を行ってメラニンを可視化し、ケラチノサイトが付着している側の表面を光学顕微鏡で観察した。得られた結果を図2に示す。この結果、メラノソームを抽出してケラチノサイトに添加した比較例1では、一部のケラチノサイトにおいてのみメラノソームの貪食が確認されたが、ケラチノサイトとメラノサイトをビドリゲル膜を介して分離した状態で共培養した実施例1では、ケラチノサイトの全体に亘って均一にメラノソームを貪食していることが確認された。
試験例2
前記実施例1と同条件で、ケラチノサイト付着ビドリゲル膜(メラノサイトは除去済)を有するカルチャーインサートを準備した。
HUMEDIA-KG2培地を添加した12ウェルプレートのウェルに、前記カルチャーインサートを挿入して固定した。その後、カルチャーインサート内に、ラパマイシン1μg/mlを含むHUMEDIA-KG2培地0.5mlを添加し、37℃、5%CO2の雰囲気で3日間培養した。また、コントロールとして、ラパマイシン1μg/mlを含むHUMEDIA-KG2培地に代えて、ラパマイシンを含まないHUMEDIA-KG2培地を使用したこと以外は、前記と同条件で培養を行った。なお、ラパマイシンは、メラノソーム分解作用が示唆されている化合物である。
培養後の細胞付着膜に対してフォンタナ・マッソン染色を行ってメラニンを可視化し、ケラチノサイトが付着している側の表面を光学顕微鏡で観察した。
更に、培養後の細胞付着膜から細胞を剥離し、1×105 cellsの細胞を1N水酸化ナトリウム水溶液0.1mlに浸漬して細胞を超音波により破砕した後、十分な撹拌を行い、80℃で20分間インキュベートすることによりメラニンを抽出し、450nmの吸光度を測定し、ケラチノサイト内のメラニン量を求めた。
フォンタナ・マッソン染色して光学顕微鏡で観察した結果を図3に示し、ケラチノサイト内のメラニン量を測定した結果を表1に示す。この結果、ラパマイシンを添加して培養した場合には、コントロールに比べてメラニン量の低下が認められ、実施例1で作製したケラチノサイト付着ビドリゲル膜は、メラノソーム分解作用を正しく評価できることが確認された。

Claims (5)

  1. 被験物質のメラノソームの分解促進作用を評価する方法であって、
    液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる第1工程、
    前記第1工程後に、液透過性膜からメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する第2工程、
    前記第2工程で得られた評価モデルを被験物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する第3工程、及び
    前記第3工程おいて測定されたメラニン量又はメラノソーム量に基づいて、被験物質のメラノソームの分解促進作用を判定する第4工程
    を含む、評価方法。
  2. 前記第1工程において、液透過性膜を底部に有するカルチャーインサートを用いて培養容器を区切ってケラチノサイトとメラノサイトを隔てて共培養することにより、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる、請求項1に記載の評価方法。
  3. 候補物質の中からメラノソームの分解促進作用を有する物質をスクリーニングする方法であって、
    液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養し、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる第I工程、
    前記第I工程後に、液透過性膜からメラノサイトを除去することにより、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着している評価モデルを作製する第II工程、
    前記第II工程で得られた評価モデルを候補物質の存在下でインキュベートした後に、評価モデルのケラチノサイト内のメラニン量又はメラノソーム量を測定する第III工程、及び
    前記第III工程おいてメラニン量又はメラノソーム量を低下させた候補物質を、メラノソームの分解促進作用を有するものとして選定する第IV工程
    を含むスクリーニング方法。
  4. 前記第I工程において、液透過性膜を底部に有するカルチャーインサートを用いて培養容器を区切ってケラチノサイトとメラノサイトを隔てて共培養することにより、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させる、請求項3に記載のスクリーニング方法。
  5. 被験物質のメラノソームの分解促進作用を評価するための評価モデルの使用であって、
    前記評価モデルが、液透過性膜の一方の面にメラノソーム貪食ケラチノサイトが付着しており、液透過性膜の一方の面にケラチノサイトを付着させ、他方の面にメラノサイトを付着させた状態で培養することによりケラチノサイトにメラノソームを貪食させた後に、当該液透過性膜からメラノサイトを除去することにより得られ、
    前記評価モデルが、被験物質の存在下でインキュベートされるものである、前記使用。

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