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JP7749189B2 - 面内無方向性電磁金属板及びその製造方法 - Google Patents
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JP7749189B2 - 面内無方向性電磁金属板及びその製造方法 - Google Patents

面内無方向性電磁金属板及びその製造方法

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Description

本発明は、面内無方向性電磁金属板及びその製造方法に関する。
従来の電磁鋼板は、圧延及び熱処理を組み合わせ、それらの条件を厳密に制御することで結晶方位を配向させ、磁気特性を向上させている。例えば、特許文献1には、鋳造材を圧延する工程と圧延を行った圧延材を加熱(熱処理)する工程とを行う、鉄板の製造方法が開示されている。
特願2015-32147号公報
近年、電磁鋼板に印加される交流電源の周波数が高くなってきており、電磁鋼板表面近傍の磁気特性が特に重要になってきている。しかしながら、従来の電磁鋼板は、表面近傍だけではなく内部を含めた全体について結晶方位を制御しているため、表面近傍の磁気特性についてまだまだ改善の余地がある。
また、従来の電磁鋼板では、製造における各工程の管理が複雑である。例えば、熱処理工程において、高温(例えば1300℃)に加熱して長時間(例えば100時間)保持することが必要であり、製造エネルギーが高い。さらに、磁気特性を向上させるために、組成のコントロールも厳密に行わなければならず、電磁鋼板を容易に作製することが困難である。
本発明は、結晶方位が制御され、磁気特性に優れた面内無方向性電磁金属板及びその製造方法を提供する。
本発明の一の態様である面内無方向性電磁金属板は、金属板の表面の面内において結晶方位が配向されている。
上記面内無方向性電磁金属板によれば、金属板の表面の面内において結晶方位を所定の方向に制御している。そのため、磁気特性を向上させることができる。これにより、モータの鉄心(コア)やリアクトル材料等に用いられる電磁金属板として適用できる。
また、上記面内無方向性電磁金属板は、金属板の表面近傍において結晶方位を制御している。そのため、高周波での磁気特性に優れている。これにより、圧延及び熱処理を行い、表面だけではなく全体の結晶方位を制御した従来の電磁鋼板に比べて、高周波での磁気特性に優れている。
上記面内無方向性電磁金属板において、結晶の<001>方向が板面法線方向に対して略平行に揃えられていてもよい。この場合には、結晶の磁化容易軸である<001>方向を所定の方向、すなわち板面法線方向(金属板の表面に直交する方向)に対して略平行となるように制御し、磁気特性を向上させることができる。
また、金属板の表面の面内における結晶方位分布の測定において、結晶の<001>方向について、板面法線方向から75°~105°の間に形成されたピーク群よりも高い強度のピークが、板面法線方向から0°~15°の間に少なくとも1つ検出される結晶方位分布を有していてもよい。この場合には、結晶の磁化容易軸である<001>方向を所定の方向に制御し、磁気特性を向上させることができる。
また、上記測定において、結晶の<111>方向について、板面法線方向から0°~15°の間と、板面法線方向から39°~85°の間と、に形成されるピーク群が検出される結晶方位分布を有していてもよい。この場合には、結晶の磁化困難軸である<111>方向を所定の方向に制御し、磁気特性を向上させることができる。
また、金属板の表面から深さ100μmまでの領域のうち、金属板の表面を含む少なくとも一部の領域において、結晶方位が配向されていてもよい。この場合には、金属板の表面近傍の領域において結晶方位を制御し、磁気特性を向上させることができる。
また、金属板を構成する金属材料は、結晶構造が体心立方格子構造又は体心正方格子構造の鉄鋼材料であってもよい。この場合には、磁気特性をより向上させることができる。また、モータの鉄心(コア)やリアクトル材料等に用いられる電磁鋼板として適用できる。
また、鉄鋼材料は、純鉄であってもよい。この場合には、磁気特性をより一層向上させることができる。
本発明の他の態様である面内無方向性電磁金属板の製造方法は、金属板の表面の面内において結晶方位が配向されている面内無方向性電磁金属板の製造方法であって、金属板の表面に投射材を投射して表面加工処理を行う。
上記面内無方向性電磁金属板の製造方法によれば、金属板の表面に投射材を投射して表面加工処理を行うことにより、金属板の表面の面内において結晶方位を所定の方向に容易に制御できる。そのため、従来の電磁鋼板のように、結晶方位を制御するために圧延及び熱処理を行う場合に比べて、複雑な工程管理を行う必要がない。また、高温・長時間の熱処理を行う必要がなく、製造エネルギーを低減できる。これにより、結晶方位が制御され、磁気特性に優れた電磁金属板を容易に製造できる。
また、上記製造方法によって製造される面内無方向性電磁金属板は、金属板の表面近傍において結晶方位を制御している。そのため、高周波での磁気特性に優れている。これにより、圧延及び熱処理を行い、表面だけではなく全体の結晶方位を制御した従来の電磁鋼板に比べて、高周波での磁気特性に優れている。
上記面内無方向性電磁金属板の製造方法において、上記表面加工処理における投射材の投射圧力及び投射時間の少なくとも一方を調整し、金属板の表面の面内における結晶方位の配向状態を制御してもよい。この場合には、金属板の表面の面内において結晶方位を精度良く制御できる。
また、上記表面加工処理を行った後、さらに熱処理を行ってもよい。この場合には、金属板の表面の面内において結晶方位を精度良く制御できる。
また、上記表面加工処理を行う前に、金属板の表面のうち、少なくとも上記表面加工処理を行う領域に潤滑剤を塗布してもよい。この場合には、上記表面加工処理時に金属板の表面とその金属板の表面に投射する投射材との摩擦が小さくなり、金属板の表面の面内において結晶方位を精度良く制御できる。
また、金属板を構成する金属材料は、結晶構造が体心立方格子構造又は体心正方格子構造の鉄鋼材料であってもよい。この場合には、より磁気特性に優れた電磁鋼板を製造できる。また、モータの鉄心(コア)やリアクトル材料等の適用に有効な電磁鋼板を製造できる。
また、鉄鋼材料は、純鉄であってもよい。この場合には、より一層磁気特性に優れた電磁鋼板を製造できる。
試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた逆極点図(IPF)マップである。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料における、X線回折(XRD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた逆極点図(IPF)マップである。 試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた逆極点図(IPF)マップである。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料における、X線回折(XRD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた逆極点図(IPF)マップである。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料における、X線回折(XRD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料における、X線回折(XRD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。 試料における、電子線後方散乱回折(EBSD)法によって得られた(001)極点図及び(111)極点図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[面内無方向性電磁金属板]
まず、面内無方向性電磁金属板について説明する。
面内無方向性電磁金属板は、金属板の表面の面内において結晶方位が配向されている。
面内無方向性電磁金属板は、板状の金属材料により構成することができる。金属材料としては、例えば、純鉄、鉄合金等を用いることができる。鉄合金としては、例えば、炭素鋼、鉄シリコン合金等を用いることができる。また、金属材料としては、鉄以外の銅等の金属やその合金等を用いてもよい。
面内無方向性電磁金属板において、結晶方位が配向されている金属板の表面の面内とは、金属板の表層(表面近傍の領域)のことであり、例えば、金属板の表面から深さ100μmまでの領域をいう。
面内無方向性電磁金属板において、金属板の表面の面内において結晶方位が配向されていることは、例えば、金属板の表面の面内における結晶方位分布を測定することによって確認できる。結晶方位分布の測定は、例えば、局所的な領域の測定に好適な電子線後方散乱回折(EBSD)法、広範囲の領域の測定に好適なX線回折(XRD)法等を用いることができる。
面内無方向性電磁金属板において、結晶の<001>方向が板面法線方向に対して略平行に揃えられていてもよい。ここでの略平行とは、例えば、結晶の<001>方向が板面法線方向に対して0°~15°の傾きに制御されていることをいう。
金属板の表面の面内における結晶方位分布の測定において、結晶の<001>方向について、板面法線方向から75°~105°の間に形成されたピーク群よりも高い強度のピークが、板面法線方向から0°~15°の間に少なくとも1つ検出される結晶方位分布を有していてもよい。ここで、結晶の<001>方向が板面法線方向から0°~15°の間に存在する結晶は、他の<001>方向が板面法線方向から75°~105°の間に存在する。よって、板面法線方向から0°~15°の間と、板面法線方向から75°~105°の間とに、結晶の<001>方向のピークが形成される。
上記測定において、結晶の<111>方向について、板面法線方向から0°~15°の間と、板面法線方向から39°~85°の間と、に形成されるピーク群が検出される結晶方位分布を有していてもよい。ここで、<111>方向が板面法線方向から0°~15°の間に存在する結晶は、もう1つの<111>方向が板面法線方向から55°~85°に存在する。また、<001>方向が板面法線方向から0°~15°に存在する結晶は、その<111>方向が板面法線方向から39°~69°に存在する。よって、板面法線方向から0°~15°の間と、板面法線方向から39°~85°の間とに、結晶の<111>方向のピークが形成される。
面内無方向性電磁金属板において、金属板の表面から深さ100μmまでの領域のうち、金属板の表面を含む少なくとも一部の領域において、結晶方位が配向されていてもよい。ここで、金属板の表面から深さ100μmまでの領域のうち、金属板の表面を含む少なくとも一部の領域とは、例えば、金属板の表面から深さ10μmまでの領域であってもよいし、金属板の表面から深さ50μmまでの領域であってもよいし、金属板の表面から深さ100μmまでの領域であってもよい。
[面内無方向性電磁金属板の製造方法]
次に、面内無方向性電磁金属板の製造方法について説明する。
面内無方向性電磁金属板の製造方法は、金属板の表面に投射材を投射して表面加工処理を行う。
上記表面加工処理としては、金属板の表面に投射材を投射し、投射材を金属板の表面に高速で衝突させて表面加工を行う方法を用いることができ、例えば、ショットピーニング、ショットブラスト等を用いることができる。
上記表面加工処理に用いる投射材の材質は、投射して衝突させる金属板の材質等によって適宜選択することができる。例えば、金属板を構成する金属材料として鉄鋼材料を用いた場合には、投射材としてジルコン粒子等の硬質粒子を用いることができる。
上記表面加工処理の条件は、適宜調整することができる。例えば、投射材の投射圧力、投射時間、金属板の表面と投射材を投射する投射ノズルとの距離等を調整することができる。投射材の投射圧力や投射時間を調整することにより、金属板の表面の面内における結晶方位の配向状態を制御してもよい。
また、上記表面加工処理を行った後、さらに熱処理を行ってもよい。熱処理では、金属板を所定の温度に加熱し、所定の時間保持する。熱処理の条件は、適宜調整することができ、例えば、加熱温度、保持時間等を調整することができる。熱処理の条件を調整することにより、金属板の表面の面内において結晶方位を精度良く制御できる。
また、熱処理における加熱温度は、例えば、400℃~800℃とすることができ、特に500℃~650℃とすることができる。これにより、従来の電磁鋼板の製造に比べて、高温で加熱する必要がないため、製造エネルギーを大幅に低減できる。また、金属板の表面の面内において結晶方位を精度良く制御できる。
また、熱処理における保持時間(加熱時間)は、例えば、0.5時間~10時間とすることができる。熱処理における保持時間は、金属板の表面の面内における結晶方位を精度良く制御するため、金属板の材質等によって適宜調整すればよい。
また、上記表面加工処理を行う前に、金属板の表面のうち、少なくとも上記表面加工処理を行う領域(加工領域)に潤滑剤を塗布してもよい。金属板の表面の加工領域に塗布する潤滑剤としては、例えば、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素等)、二硫化モリブデン、黒鉛、鉱物油等を用いることができる。
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
(実施例)
<ショットピーニング前の結晶方位分布>
まず、試料を作製した。具体的には、厚さ1.5mmの市販の純Fe圧延板から15mm×15mmの試料片を切り出すことにより、純Feからなる金属板を得た。そして、金属板に対し、550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した。これにより、焼鈍処理を施したショットピーニング前の試料(試料A1)を作製した。
次に、試料(試料A1)の表面を走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JIB4600-F)で観察した。図1は、試料の表面を観察した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図1のSEM写真から、ショットピーニング前の試料は、等軸状の結晶粒を有していることがわかる。
次に、試料(試料A1)の表面における結晶方位分布を電子線後方散乱回折(EBSD)検出器(TSL社製、OIM Data Collection7)付き走査型電子顕微鏡で解析した。図2は、EBSD法によって得られた、試料の表面の結晶方位分布を示す逆極点図(IPF)マップである。図2のIPFマップからも、ショットピーニング前の試料は、等軸状の結晶粒を有していることがわかる。
また、図3は、EBSD法によって得られた、試料の表面の面内における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。図3の極点図から、試料の表面の面内において、結晶の<001>方向及び<111>方向ともに配向分布しておらず、ランダムであることがわかる。
次に、試料(試料A1)の表面をX線回折装置(リガク社製、SmartLabo)で分析した。図4は、X線回折(XRD)法によって得られた、試料の表面の面内における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。XRD法は、上述のEBSD法に比べて広い範囲での測定結果を得ることができる。EBSD法によって局所的な領域を測定して得られた図3の極点図では、結晶の<001>方向及び<111>方向ともに配向分布していなかったが、XRD法によって広範囲の領域を測定して得られた図4の極点図では、結晶の<001>方向及び<111>方向ともに配向分布しており、圧延再結晶集合組織が観察された。
<ショットピーニング後の結晶方位分布>
次に、試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.6MPa、投射時間10minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置(不二製作所社製、ニューマブラスター)を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング後の試料(試料A2)を作製した。
次に、試料(試料A2)の加工表面を走査型電子顕微鏡で観察した。図5は、試料の加工表面近傍における断面微細組織を示すSEM写真である。なお、試料の加工表面とは、ショットピーニングを施した試料の表面(ショットピーニング加工面)のことである。また、試料の断面とは、試料の厚み方向に沿った断面のことである。図5のSEM写真から、試料の表面近傍の領域(図5の領域A)では、塑性変形した部分が見られる。例えば、試料の表層50μm~100μmの部分(試料の表面からの深さが50μm~100μmの領域)では大きな塑性変形を受けた領域が存在しているが、それよりも内部では大きな塑性変形が生じていないことがわかる。
次に、試料(試料A2)の加工表面をEBSD検出器付き走査型電子顕微鏡で解析した。図6は、EBSD法によって得られた、試料の加工表面近傍における断面の結晶方位分布を示すIPFマップである。図6のIPFマップから、試料の加工表面から深さ30μm程度までの領域(図6の領域B)では、ショットピーニングによる結晶粒微細化が生じていることがわかる。この結果から、ショットピーニングを施した試料は、加工表面から内部に向けて微細組織が変化していることがいえる。
次に、試料(試料A2)に対して加工表面から15μm内部まで研磨し、その研磨した面(内部加工面)を走査型電子顕微鏡で観察した。図7は、試料の内部加工面を観察したSEM写真である。図7のSEM写真からも、試料の加工表面から15μm内部の内部加工面では、結晶粒が微細であり、大きな塑性変形が生じていることがわかる。
次に、試料(試料A2)の内部加工面をEBSD検出器付き走査型電子顕微鏡で解析した。図8は、EBSD法によって得られた、試料の内部加工面の結晶方位分布を示すIPFマップである。図8のIPFマップからも、試料の加工表面から15μm内部の内部加工面では、結晶粒が微細であることがわかる。
また、図9は、EBSD法によって得られた、試料の内部加工面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。図9の極点図から、図9の右下の模式図に示すように、Feの磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と略平行になるように強く配向分布していることがわかる。また、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と略平行に配向するとともに、他の<001>方向が加工表面内でランダムに分布していることがわかる。すなわち、磁化容易軸である<001>方向の最も高い強度のピークが加工表面の板面法線方向から0°~15°の間に、具体的には板面法線方向と約11°の角度をなす位置に強く配向分布している。また、他の<001>方向が加工表面の板面法線方向から75°~105°の間において、具体的には板面法線方向から約79°~101°の間においてランダムに強く配向分布している。さらに、<001>方向に比べてわずかであるが、磁化困難軸である<111>方向も、<001>方向と同様に加工表面の板面法線方向と平行に弱く配向していることがわかる。具体的には、磁化困難軸である<111>方向のピーク群が板面法線方向から0°~15°の間と板面法線方向から39°~85°の間とに形成されている。
次に、試料(試料A2)を粉末X線回折装置で分析した。図10は、XRD法によって得られた、試料の加工表面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。図10の極点図からも、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるように強く配向分布していることがわかる。また、磁化困難軸である<111>方向も、<001>方向と同様に加工表面の板面法線方向と平行に弱く配向していることがわかる。よって、XRD法によって得られた結果(図10)は、EBSD法によって得られた結果(図9)と一致する。このような結晶方位分布は、無方向性電磁鋼板と同様の結晶方位分布を有しており、Fe(鉄)の磁気特性を向上させることが期待できる。
<ショットピーニング後の結晶方位分布に及ぼす投射圧力の影響>
550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.2MPa及び0.6MPa、投射時間10minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング後の試料(試料A3)を作製した。
次に、試料(試料A3)に対して加工表面から15μm内部まで研磨し、その研磨した面(内部加工面)を走査型電子顕微鏡で観察した。図11は、試料の内部加工面を観察したSEM写真である。図11のSEM写真から、試料の加工表面から15μm内部の内部加工面では、投射圧力0.2MPa及び0.6MPaでショットピーニングを施した試料とも、結晶粒が微細であり、大きな塑性変形が生じていることがわかる。
次に、試料(試料A3)の内部加工面をEBSD検出器付き走査型電子顕微鏡で解析した。図12は、EBSD法によって得られた、試料の内部加工面の結晶方位分布を示すIPFマップである。図12のIPFマップからも、試料の加工表面から15μm内部の内部加工面では、結晶粒が微細であることがわかる。
また、図13は、EBSD法によって得られた、試料の内部加工面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。図13の極点図から、0.2MPaの投射圧力でショットピーニングを施した試料は、圧延再結晶集合組織を多少残していたが、0.6MPaの投射圧力でショットピーニングを施した試料は、磁化容易軸である<001>方向の最も高い強度のピークが加工表面の板面法線方向から0°~15°の間に、具体的には板面法線方向と約11°の角度をなす位置に強く配向分布している。また、他の<001>方向が加工表面の板面法線方向から75°~105°の間において、具体的には板面法線方向から約79°~101°の間において強く配向分布している。このように、純Feの結晶方位分布は、投射材の投射圧力の調整により制御可能であることがわかる。
次に、550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.2MPa及び0.6MPa、投射時間30minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング後の試料(試料A4)を作製した。
次に、試料(試料A4)を粉末X線回折装置で分析した。図14は、XRD法によって得られた、試料の加工表面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。図14の極点図から、投射圧力0.2MPa及び0.6MPaでショットピーニングを施した試料とも、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるように強く配向分布していることがわかる。そのため、より長時間のショットピーニングを施すと、投射圧力が小さくても、純Feの磁気特性を改善するような結晶方位分布になるといえる。しかし、投射圧力0.6MPaの場合は、投射時間30minのショットピーニングを施すことで、磁化困難軸である<111>方向が加工表面の板面法線方向と平行になるような配向が、投射時間10minに比べて強くなっている。それゆえ、このような純Feの結晶方位分布は、投射圧力及び投射時間で制御可能である。
<ショットピーニング後の結晶方位分布に及ぼす投射時間の影響>
550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.6MPa、投射時間5~30min(5min、10min、30min)の条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング後の試料(試料A5)を作製した。
次に、試料(試料A5)を粉末X線回折装置で分析した。図15は、XRD法によって得られた、試料の加工表面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。図15の極点図から、投射時間が増えるにつれて、まず、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるような配向分布が強くなっていくことがわかる。その後、磁化困難軸である<111>方向が加工表面の板面法線方向と平行になるような配向分布が強くなっていくことがわかる。それゆえ、純Feへのショットピーニングでは、<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行になるような集合組織が形成した後、<111>方向が加工表面の板面法線方向と平行になるような集合組織も形成していくことがわかる。よって、純Feの磁気特性を改善するためには、適切な投射時間が必要である。
<ショットピーニング後の熱処理による効果>
ここでは、ショットピーニング後に熱処理を施さない試料(試料A6)と、ショットピーニング後に熱処理を施した試料(試料A7)とを作製して比較することにより、ショットピーニング後の熱処理による効果を確認した。
試料A6を作製するにあたっては、550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.6MPa、投射時間10minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング後に熱処理を施さない試料A6を作製した。
試料A7を作製するにあたっては、550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.6MPa、投射時間10minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。
その後、ショットピーニングを施した試料に、熱処理を施した。熱処理では、所定の温度に加熱し、所定の時間保持した。加熱温度は、500℃~650℃の範囲内において最適な温度に設定した。保持時間(加熱時間)は、0.5時間~5時間の範囲内において最適な時間に設定した。これにより、ショットピーニング後に熱処理を施した試料A7を作製した。
次に、試料A6及び試料A7に対して加工表面から15μm内部まで研磨し、その研磨した面(内部加工面)をEBSD検出器付き走査型電子顕微鏡で解析した。図16は、EBSD法によって得られた、試料A6及び試料A7の内部加工面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。
図16の極点図から、ショットピーニング後に熱処理を施さない試料A6であっても、ショットピーニング後に熱処理を施した試料A7であっても、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるように強く配向分布していることがわかる。
また、両者を比較すると、ショットピーニング後に熱処理を施した試料A7のほうが、ショットピーニング後に熱処理を施さない試料A6に比べて、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるような配向分布がより強くなっていることがわかる。また、磁化困難軸である<111>方向が加工表面の板面法線方向と平行になるような配向分布が弱くなっていることがわかる。このように、ショットピーニング後に熱処理を行うことにより、磁化容易軸である<001>方向のみが加工面法線方向と平行になるような配向分布を有し、かつ試料内部の格子欠陥の量が少ない試料を作製することができる。そのため、試料表面の面内において結晶方位を精度良く制御でき、磁気特性をより一層向上させることができる。
<ショットピーニング前の潤滑剤塗布による効果>
ここでは、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布しない試料(試料A8)と、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布した試料(試料A9)とを作製して比較することにより、ショットピーニング前の潤滑剤塗布による効果を確認した。
試料A8を作製するにあたっては、550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面に、投射圧力0.6MPa、投射時間15minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布しない試料A8を作製した。
試料A9を作製するにあたっては、550℃、1時間の条件にて焼鈍処理を施した試料(試料A1と同様の試料)の表面のうち、ショットピーニングを施す領域(加工領域)に、潤滑剤を塗布した。潤滑剤としては、ボロンナイトライド(窒化ホウ素)を用いた。
その後、潤滑剤を塗布した試料の表面に、投射圧力0.6MPa、投射時間15minの条件にてショットピーニングを施した。ショットピーニングでは、エアノズル式ショットピーニング装置を用いた。また、ショット材(投射材)としてジルコン粒子を用いた。また、試料表面と投射ノズルの距離は30mmとした。これにより、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布した試料A9を作製した。
次に、試料A8及び試料A9に対して加工表面から15μm内部まで研磨し、その研磨した面(内部加工面)をEBSD検出器付き走査型電子顕微鏡で解析した。図17は、EBSD法によって得られた、試料A8及び試料A9の内部加工面における結晶の<001>方向及び<111>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図及び(111)極点図である。
図17の極点図から、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布しない試料A8であっても、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布した試料A9であっても、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるように強く配向分布していることがわかる。
また、両者を比較すると、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布した試料A9のほうが、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布しない試料A8に比べて、磁化容易軸である<001>方向が加工表面の板面法線方向と平行に、かつ他の<001>方向が加工表面内でランダムになるような配向分布がより強くなっていることがわかる。また、磁化困難軸である<111>方向が加工表面の板面法線方向と平行になるような配向分布が弱くなっていることがわかる。このように、ショットピーニング前に潤滑剤を塗布することにより、ショットピーニング時に試料表面とその試料表面に投射する投射材との摩擦が小さくなる。その結果、ショットピーニングで試料表面に生じる塑性変形は、せん断成分が小さく、かつ圧縮成分が大きくなる。そのため、試料表面の面内において結晶方位を精度良く制御でき、磁気特性をより一層向上させることができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態(実施例)に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。

Claims (6)

  1. 純鉄からなる金属板の表面の面内において結晶の<001>方向が板面法線方向に対して略平行に揃えられており、
    前記金属板の表面の面内における結晶方位分布の測定において、結晶の<001>方向の結晶方位分布を示す(001)極点図では、板面法線方向から75°~105°の間に形成されたピーク群よりも高い強度のピークが、板面法線方向から0°~15°の間に少なくとも1つ検出される結晶方位分布を有する、
    面内無方向性電磁金属板。
  2. 前記測定において、結晶の<111>方向の結晶方位分布を示す(111)極点図では、板面法線方向から0°~15°の間と、板面法線方向から39°~85°の間と、に形成されるピーク群が検出される結晶方位分布を有する、請求項1に記載の面内無方向性電磁金属板。
  3. 前記金属板の表面から深さ100μmまでの領域のうち、前記金属板の表面を含む少なくとも一部の領域において、結晶方位が配向されている、請求項1又は2に記載の面内無方向性電磁金属板。
  4. 純鉄からなる金属板の表面の面内において結晶の<001>方向が板面法線方向に対して略平行に揃えられている面内無方向性電磁金属板の製造方法であって、
    ショットピーニングにより前記金属板の表面に投射材を投射して表面加工処理を行い、
    前記表面加工処理を行った後、前記金属板にさらに熱処理を行う、
    面内無方向性電磁金属板の製造方法。
  5. 前記表面加工処理における前記投射材の投射圧力及び投射時間の少なくとも一方を調整し、前記金属板の表面の面内における結晶方位の配向状態を制御する、請求項4に記載の面内無方向性電磁金属板の製造方法。
  6. 前記表面加工処理を行う前に、前記金属板の表面のうち、少なくとも前記表面加工処理を行う領域に潤滑剤を塗布する、請求項4又は5に記載の面内無方向性電磁金属板の製造方法。
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