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JP7749482B2 - スプラインの診断装置、ホイスト、及び電動車両 - Google Patents
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JP7749482B2 - スプラインの診断装置、ホイスト、及び電動車両 - Google Patents

スプラインの診断装置、ホイスト、及び電動車両

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Description

本発明は、動力伝達機構のひとつであるスプラインの摩耗や劣化の状態を診断するスプラインの診断装置、ホイスト、及び電動車両に関するものである。
スプラインは機械的な回転力の伝達に用いられる結合方式であり、スプラインを構成する一方の軸(以下、スプライン軸という)には、外周に歯車の歯が加工された形状を有しており、もう一方の軸(以下、ボスという)には、スプライン軸の歯車を挿入するための凹凸溝が加工された形状を有している。
スプライン軸をボスに嵌め合わせることで、大きな回転力を伝達することが可能となる。このように、スプライン軸の歯車をボスの凹凸溝に嵌め合わせているため、カップリング等の動力伝達機構と比較して、大きな回転力が作用した場合にも滑りが発生しないという利点があるため、大きな回転力を伝達する用途で使用されることが多い。
また、スプライン軸の歯車をボスに形成した軸方向の凹凸溝に嵌め合わせるために、両者の間には微小な隙間が存在している。そのため、軸方向に可動であるために、スプライン軸側やボス側が軸方向に若干変位が生じた場合であってもその動きを吸収することが可能となる。
スプラインの用途の1つとして、ホイストが挙げられる。ホイストは、電動モータを備えた巻上装置で、ワイヤロープを巻き上げることで吊荷を上昇移動させ、巻き下げることで吊荷を下降移動させる産業機械である。
ホイストにおいては、吊荷を持ち上げているときに回転力伝達部で滑りが発生すると、吊荷が傾いたりする危険性がある。この滑りを防止するために、電動モータの回転力を巻上機構へと伝達するところに、スプラインによる結合方式が用いられている。
上述の通り、スプライン軸の歯車とボスの凹凸溝の間には微小な隙間が存在しているため、電動モータが回転する際に、スプライン軸の外周側にある歯車がボスの凹凸溝に片当たりする現象がある。ホイストの場合、吊荷の上昇動作と下降動作で電動モータの回転方向が逆になるため、正転時と逆転時で歯車の異なる側の歯面が、凹凸溝の壁面に片当たりする。
そして、ホイストを長期間使用すると、スプライン軸の歯車の歯面が徐々に削れて劣化してしまい、回転力の伝達不良が発生する恐れがある。そのため、定期的にスプライン軸を点検して劣化状態を確認することが重要となるが、スプライン軸の歯車は、ボスの凹凸溝に嵌め合わせているため、嵌め合わせ状態で目視によって確認することは不可能である。したがって、点検のためにスプライン軸をボスから取り外して開放点検する必要があり、作業工数が多くかかる問題がある。また、この方法では故障の予兆を窺い知ることはできない。
このような課題を解決するために、スプライン軸をボスから取り外すことなく、スプラインの摩耗や劣化状態を確認する方法として、特開平5-164656号公報(特許文献1)や、特開平5-346323号公報(特許文献2)に記載の方法が知られている。
特許文献1では、スプライン軸の近傍に取り付けた振動センサを使用する方法が記載されている。具体的には、振動センサで検出した振動速度または振動加速度とスプライン軸の歯車の実測磨耗量との間に非常に高い相関があることから、動速度ないしは振動加速度の値からスプライン軸の歯車の磨耗量を推定することを可能としている。
また、特許文献2では、スプライン軸に設置した変位計を使用する方法が記載されている。具体的には、スプライン軸を加減速させたときの円周方向の隙間を変位計で計測し、その隙間量の値からスプライン軸の歯車の摩耗量を推定することで、スプラインを開放することなくスプライン軸の歯車の摩耗を点検することを可能としている。
特開平5-164656号公報 特開平5-346323号公報
ところで、特許文献1や特許文献2に記載されている方法では、スプライン軸の近傍に振動センサや変位計を設置する必要があるために、センサを配置する空間的な制約で、センサを設置できない場合がある。また、振動センサや変位計に異常が発生した場合、センサ自体のメンテナンスのためにスプライン軸の近傍を開放する必要がある。
本発明の目的は、スプライン軸をボスから取り外すことなく、スプライン軸の歯車の摩耗や劣化状態を確認でき、しかもセンサ自体のメンテナンスのためにスプライン軸の近傍を開放する必要がないスプラインの診断装置、ホイスト、及び電動車両を提供することにある。
本発明は、スプライン軸を駆動する電動モータの電流を計測する電流計測部と、電流計測部で計測した電流を周波数解析して特定周波数成分を算出する周波数成分算出部と、周波数成分算出部で算出した特定周波数成分に基づいてスプライン軸の歯車の摩耗状態を推定する摩耗状態推定部とを有するスプラインの診断装置を特徴とする。
本発明によれば、スプライン軸を駆動する電動モータの電流に基づいてスプライン軸の歯車の摩耗や劣化状態を推定することが可能となるため、スプラインの開放点検が不要となる。また、電動モータに電力を供給するケーブルに電流センサを設置するため、センサに不具合が発生した場合であってもスプライン軸の近傍を開放する必要がないという効果を奏する。
本発明が適用されるクレーンの構成を示す構成図である。 スプライン軸とボス部の嵌め合い状態を示すものであり、スプラインの歯とボスの凹凸溝が接触していない状態を示す説明図である。 スプライン軸とボス部の嵌め合い状態を示すものであり、スプラインの歯とボスの凹凸溝が接触している状態を示す説明図である。 本発明の実施形態になるスプラインの摩耗診断フローを示すフローチャート図である。 本発明の実施形態になる電流計測からパラメータP(電流強度)を算出するまでの過程を説明する説明図である。 正常なスプラインの特徴量を説明する説明図である。 摩耗が生じたスプラインの特徴量を説明する説明図である。 運転回数と特徴量の分布を説明する説明図である。 本発明の他の実施形態になるクレーンの構成を示す構成図である。 図6に示す実施形態でホイストAにおける正常なスプラインの吊荷重量と特徴量の関係を説明する説明図である。 図6に示す実施形態でホイストAにおける摩耗が生じたスプラインの吊荷重量と特徴量の関係を説明する説明である。 図6に示す実施形態でホイストBにおける正常なスプラインの吊荷重量と特徴量の関係を説明する説明図である。 図6に示す実施形態でホイストBにおける摩耗が生じたスプラインの吊荷重量と特徴量の関係を説明する説明である。 図6に示す実施形態でホイストCにおける正常なスプラインの吊荷重量と特徴量の関係を説明する説明図である。 図6に示す実施形態でホイストCにおける摩耗が生じたスプラインの吊荷重量と特徴量の関係を説明する説明である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
尚、スプラインによる結合方式の適用事例として、以下ではホイストのスプラインを対象とした例を示しているが、ホイストに限定されるものではなく、電動モータで駆動されるスプライン軸であれば本発明が適用可能であり、例えば電気自動車やハイブリッド車のように、電動モータで車輪を駆動する機構にも適用可能である。
図1にホイストの基本構成を示している。図1に示すように、巻上用モータ10は、電線11を介して電源12に接続されており、3相の電圧が巻上用モータ10に印加されている。3相の電圧が印加されると巻上用モータ10が回転し、これに伴って巻上用モータ10のシャフト13が回転する。シャフト13の片端の外周面は、スプライン軸13Sとされて歯車形状となっており、ボス14の凹凸溝に嵌め合い結合されている。
これにより、巻上用機構(巻上ドラム)15に巻上用モータ10の回転力が伝達される。巻上用機構15が回転すると、巻上用機構15に取り付けられているワイヤロープ16が巻き取られ、先端のフック17と、フック17に固定された吊荷18が上昇する。また、巻上用モータ10の回転方向を逆転させると、ワイヤロープ16は巻き解かれるため、フック17は下降方向に移動する。これによって、吊荷18も下降方向に移動して荷下ろしすることが可能となる。
このように、巻上用モータ10の回転力を用いて吊荷18を巻き上げるのがホイストの基本的な動作である。また、電線11の少なくとも1つの相には、電流を計測するための電流計測手段19が設けられている。電流計測手段19で計測した電流データは、診断装置20に入力され、スプライン軸13Sの摩耗や劣化状態を診断する。診断した結果は表示部21に表示される。
尚、図1では電流計測手段19が電線11に設置された例を示しているが、電源12がインバータの場合には、インバータの制御に用いられる電流フィードバック値や、電流指令値などの情報を代わりに用いることも可能である。また、診断装置20に関しても、インバータ内部にあるマイコン等の演算処理が可能な電子部品に実装することも可能である。
図2(a)にスプライン軸13Sとボス14の凹凸溝の断面を模した図を示している。なお、スプライン軸13Sの歯車の断面形状は一例であり、これに限定されるものではない。図2(a)に示すように、スプライン22は、スプライン軸13Sの歯車23が、ボス14の凹凸溝24に軸方向から嵌め合い結合されている。嵌め合い結合を可能とするために、歯車23と凹凸溝24の間には微小な隙間Gが存在している。スプライン軸13Sには歯車23が周方向に一定の間隔で設けられている。歯車23には、ボス14の凹凸溝24に接触する歯面23f、23rが形成されている。
一方、図2(b)は駆動軸であるスプライン軸13Sが回転したときの図である。スプライン軸13Sが矢印(F)方向に回転すると、歯車23の歯面23fがボス14の凹凸溝24の壁面に接触するため、回転力がスプライン軸13Sからボス14に伝達される。図示は省略するが、スプライン軸13Sが矢印(F)方向と反対側に回転した場合には、歯車23の歯面23rがボス14の凹凸溝24の反対の壁面に接触して、矢印(F)とは反対方向の回転力をボス14に伝達する。
ホイストの場合、例えば矢印(F)方向に回転したときに吊荷18を上昇させ、矢印(F)と反対方向に回転したときに吊荷18を下降させる。これらの動作を繰り返すことで、スプライン軸13Sが正転/逆転を繰り返し、これによって歯面23fや歯面23rが擦り減ったり、傷ついたりして摩耗が進行する。
また、上述のように正転方向と逆転方向で動作が異なるため、歯車23の歯面23fと歯面23rで摩耗が均一に進まない場合もある。そして、歯面23f、23rの摩耗が進行すると、歯車23の機能が喪失して回転力の伝達不良が発生してしまう恐れがある。そのため、歯車23の機能が喪失する前に、歯車23の劣化を検出する必要がある。
次に、上述の課題に対応するため、本発明で提案するスプラインの診断装置20の動作(摩耗検知方法)を説明する。尚、以下の説明は、故障の発生を診断すること、及び故障の発生を予兆することにも適用できるものである。
図3に診断装置20の処理フローを示すフローチャートを示し、図4は電流によるの故障診断の方法を示している。
「ステップS1」では、図4(a)に示すように、巻上用モータ10に流れるΔt区間の電流を電流計測手段19で取得する。Δt区間の電流を取得する方法は、Δt区間だけ取得した段階で「ステップS2」に移行(逐次計算)してもよいし、全区間(ここではT区間)のデータを計測した後に、Δt区間毎にデータを分割してステップS2に移行(随時計算)してもよい。
次に、「ステップS2」~「ステップS4」では、図4(b)に示すように、Δt区間の電流に対して高速フーリエ変換(FFT)のような周波数解析を行って周波数スペクトルを演算する。電流の周波数スペクトルは、図4(b)のように電流の基本周波数にピークがあり、そこから低周波数側と高周波数側に下がっていく特性となる。
この周波数スペクトルのうち、特定の周波数のスペクトルをパラメータPとして抽出して記憶させる。尚、ホイストのスプラインの診断の例では、電流の基本波周波数の側帯波として現れる特定周波数成分(図4(b)における矢印(P)で示している部分)の値をパラメータP(電流強度)として抽出している。
上述の特定周波数成分は、電流を周波数解析した周波数スペクトルのうち、電流の駆動周波数(Fb)の側帯波成分であり、モータの回転周波数(Fr)に起因する周波数(Fb+Fr、及びFb-Fr)のうち少なくとも1つの周波数の電流強度である。
本実施例では、ホイストのスプライン軸13Sの歯車23の歯面が摩耗して回転ぶれが発生する現象を、巻上用モータ10に流れる電流を用いて検出することを特徴としている。本実施形態では、巻上用モータ10の1回の駆動中の電流データからパラメータPを複数個抽出するために、T区間のデータを複数のΔt区間に分割(T>Δt)し、Δt区間毎にパラメータPを算出するようにしている。ここで、Δt区間は、電流の駆動周波数(Fb)の逆数(1/Fb)よりも大きく設定されている。
このように分割することで、T/Δt個のパラメータPを算出して記憶することができる。そして、記憶したパラメータPは図4(c)に示す頻度分布のようになる。後述するように、スプライン22の摩耗に起因する回転ぶれの影響でパラメータPの分布が変化することに着目して診断する。
そのため、「ステップS5」ではT/Δt個分(所定の個数)のパラメータPが記憶されているかを判定する。所定の個数のパラメータPが記憶されていない場合は、再び「ステップS1」に戻って同様の処理を実行する。一方、所定の個数のパラメータPが記憶されている場合は「ステップS6」へと移行する。
「ステップS6」では、T/Δt個分のパラメータP(以下、パラメータ群)の分布に関わる情報の統計量を特徴量として抽出する。統計量の具体例としては以下のような例がある。図4(c)の頻度分布において、最大値や最小値、平均値の他に、分布の左右の面積が等しくなる位置を表す中央値、最も頻度が高い値である最頻値などがある。本実施形態では,上述した平均値を特徴量として用いている。
また、この他に分布の拡がりを表す統計量であるレンジ(最大と最小の差)や、分散、標準偏差を用いても良い。更に、頻度分布の形を表す統計量である歪度や尖度を用いることもできる。また、特徴量は1つに限定されるものではなく、複数の統計量を用いてもよいし、複数の統計量から演算した新たな評価指標を特徴量として用いても良い。このように、要は、パラメータ群の分布に関わる情報の統計量を特徴量とすれば良いものである。
最後に、「ステップS7」では、特徴量(平均値)に基づいてスプラインの状態を判定する。判定方法の一例を説明すると、まずスプライン22が正常な状態のときの特徴量(平均値)を学習データ(判定の基準値=閾値)とする。次に、診断時の特徴量(平均値)と学習データ(判定の基準値=閾値)との乖離度を算出し、この乖離度があらかじめ定めている乖離度を上回った場合に「スプラインの状態が異常(摩耗した)」と判定する。
図5(a)、及び図5(b)にホイストのスプライン22が正常状態の場合と、摩耗が進行した場合のときのパラメータPの頻度分布を示している。尚、スプライン22の状態のみが異なっており、吊荷の荷重や動作時間などは同一としている。
図5(a)、及び図5(b)に示すように、スプライン22のスプライン軸13Sの歯車23の摩耗状態が異なると、頻度分布の形状が異なっていることが分かる。この例では、正常状態のスプライン22である図5(a)の頻度分布に対して、劣化したスプライン22である図5(b)の頻度分布の方が、パラメータPの分布の平均値が低くなっている。このように、プライン軸13Sの歯車23の摩耗が、特徴量を使用して判断することができる。
図5(c)は再現性を確認した結果を示している。ホイストに正常な状態のスプライン22と、摩耗が進行したスプライン22をそれぞれ組み付けて複数回運転し、各回の電流データから特徴量(この例ではパラメータPの平均値)を抽出した結果である。
図5(c)から判るように、同じ状態であれば特徴量は安定して推移しており、特徴量の大きさからスプライン軸13Sの歯車23が正常か、或いは摩耗が進行しているかを判定できる。このように、本実施形態では、或る同一運転条件下において、電流から算出したパラメータPの分布が、スプライン22の摩耗状態によって変化するという事象に基づいて、スプライン22の摩耗状態を診断している。尚、パラメータPは、本実施形態では電流強度を用いているが、スプラインの摩耗を表すものであれば、これに限定されるものではない。
次に、図6にスプライン22の診断精度を向上させる実施形態を示している。この実施形態では、上述したの図1の構成に加えて吊荷重量計25を診断の入力として付加している点が異なる。吊荷重量を付加して診断精度が向上する原理について以下説明する。
図7~図9に、3種類の異なるホイスト(A、B、C)の吊荷重量を、3種類の荷重(W1<W2<W3)に変化させて駆動したときの巻上用モータ10の電流を計測し、上述した特徴量(図5(a)、及び図5(b)に示したパラメータPの平均値)を計算した結果を示している。尚、これらは各吊荷重量でホイストを複数回に亘って運転したときの特徴量を示しており、計測ばらつきを含めて評価した結果となっている。
図7(a)は、任意のホイスト(ホイストAと表記する)に対して、正常なスプラインを組み込んだときに計測した巻上用モータ10の電流から求めた、特徴量と吊荷重量の相関を示す図である。一方、図7(b)はホイストAのスプラインのみを摩耗品に組み換えて計測した巻上用モータ10の電流から求めた、特徴量と吊荷重量との相関を示す図である。
図7(a)に示すように正常なスプラインの場合は、特徴量が吊荷重量(W1<W2<W3)の増加に対して正の相関(傾きSnが正)となっているのに対して、図7(b)に示すように摩耗したスプラインの場合は、特徴量が吊荷重量(W1<W2<W3)の増加に対して負の相関(傾きSdが負)となっていることが分かる。
この検討では、スプラインのみを正常品から摩耗品に変えているため、特徴量と吊荷重量の相関が変化したのは、スプラインの摩耗による影響であると言える。そのため、特徴量と吊荷重量との相関(例えば、傾きSnと傾きSdの差)に基づいてスプラインの摩耗を診断することが可能となる。
また、特徴量の大きさで診断するのではなく、特徴量と吊荷重量の相関に基づいて診断する理由について説明する。例えば、図7(a)と図7(b)の例では、吊荷重量(W2)のときの特徴量は、正常なスプラインと摩耗したスプラインでほぼ同じ値となっているため、特徴量のみでは診断が難しいことが分かる。一方で、他の吊荷重量(W1やW3)の特徴量も含めて評価することで、スプラインの摩耗を精度よく診断できる。
次に、他のホイスト(ホイストBと表記する)で検討した事例について、図8(a)と図8(b)に示している。ホイストBの場合には、正常なスプラインの場合も摩耗したスプラインの場合も、特徴量と吊荷重量の相関は正(傾きSnと傾きSdの両者ともに正)となっている。ただし、傾きの大きさが「Sn>Sd」となっていることが分かる。
本検討事例においても、前述の通りホイストBにおいてスプラインのみを正常品から摩耗品に変えているため、特徴量と吊荷重量の相関が変化したのは、スプラインの摩耗による影響であると推測できる。そのため、このケースでも特徴量と吊荷重量の相関(傾きの大きさ)によってスプラインの摩耗が検知できることを示している。
尚、ホイストAと同様に、特徴量の大きさのみで診断した場合、吊荷重量(W2の)ときの特徴量は、正常なスプラインと摩耗したスプラインでほぼ同じ値となっているため、特徴量のみでは診断が難しいことが分かる。以上の結果からも、特徴量と吊荷重量の相関に基づいて診断することで、スプラインの摩耗を精度よく検知できる。
次に、更に他のホイスト(ホイストCと呼称)で検討した事例について、図9(a)と図9(b)に示している。ホイストCの場合は、正常なスプラインの場合も摩耗したスプラインの場合も、特徴量と吊荷重量の相関は負(傾きSnと傾きSdの両者ともに負)となっている。ただし、傾きの大きさが「Sn<Sd」となっていることが分かる。
本検討事例においても、前述のホイストAやホイストBと同様、スプラインのみを正常品から摩耗品に変えているため、特徴量と吊荷重量の相関が変化したのは、スプラインの摩耗による影響と推測できる。また、ホイストCについても、特徴量の大きさのみで診断した場合、吊荷重量(W1)のときの特徴量が正常時と摩耗時でほぼ同じ値となっているため、特徴量のみでは診断が難しいことが分かる。以上の結果から、特徴量と吊荷重量の相関(傾きの大きさ)に基づいて診断することで、スプラインの摩耗を精度よく検知できる。
最後に摩耗の度合い(以下、摩耗度D)を評価する方法の一例を説明する。本実施形態では、「特徴量と吊荷重量の相関」に基づいてスプラインの摩耗度Dを評価するため、以下のような評価式(1)が考えられる。
D=|S-Sn|…(1)
上式における「S」は、診断するタイミングにおける特徴量と吊荷重量の相関の傾きであり、「Sn」は基準となる特徴量と吊荷重量の相関の傾き(例えば、スプラインが新品の時に算出した傾き)である。
傾き(S)と傾き(Sn)の差分値の絶対値を摩耗度(D)とすることで、傾きの変化量が大きい場合に摩耗の進行も進んでいると評価することが可能となる。尚、上式は摩耗度(D)を最も簡単に評価する方法を示しているだけであり、これに限定されるものではない。
例えば、正常時の傾き(Sn)のクラスタを定義して、そのクラスタからの乖離度を摩耗度(D)として評価しても良い。また、摩耗度(D)の感度を高めるために、傾き(S)や傾き(Sn)に係数をかけて重み付けをしても良いし、傾き(S)や傾き(Sn)に代わる、特徴量と吊荷重量の相関を表す指標を用いても良い。
以上に説明した実施形態は、ホイストに関するものであったが、電気自動車、ハイブリッド車のような電動車両にも適用できるものである。つまり、上述した電源12をリチウム電源とし、巻上用モータ10を車輪駆動モータとし、巻上用装置15を車輪としたとき、車輪駆動モータと車輪の間の連結機構にスプラインを用いて動力を伝達する場合に、本実施形態の構成を適用することができる。そして、電流計測部は車両を駆動する車輪駆動モータに流れる電流を計測し、車輪駆動用モータに流れる電流に基づいてスプラインの摩耗を診断することができる。
このように、本発明は、スプライン軸を駆動する電動モータの電流を計測する電流計測部と、電流計測部で計測した電流を周波数解析して特定周波数成分を算出する周波数成分算出部と、周波数成分算出部で算出した特定周波数成分に基づいてスプライン軸の歯車の摩耗状態を推定する状態推定部とを有するスプラインの診断装置を特徴とする。
これによれば、スプライン軸を駆動する電動モータの電流に基づいてスプライン軸の歯車の摩耗や劣化状態を推定することが可能となるため、スプラインの開放点検が不要となる。また、電動モータに電力を供給するケーブルに電流センサを設置するため、センサに不具合が発生した場合であってもスプライン軸の近傍を開放する必要がないという効果を奏する。
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
10…巻上用モータ、11…電線、12…3相電源、13S…スプライン軸、14…ボス、15…巻上用装置、19…電流計測部、20…診断装置、21…表示部、22…スプライン、23…歯車、23f、23r…歯面、24…凹凸溝。

Claims (9)

  1. スプライン軸の歯車の摩耗状態を診断するスプラインの診断装置において、
    前記スプライン軸を駆動する電動モータの電流を計測する電流計測部と、
    前記電流計測部で計測した前記電流を周波数解析して特定周波数成分を算出する周波数成分算出部と、
    前記周波数成分算出部で算出した前記特定周波数成分に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する摩耗状態推定部を備え、
    前記周波数成分算出部は、前記電流計測部で計測した所定区間の前記電流を複数の解析区間に分割し、前記解析区間の前記電流を周波数解析して前記特定周波数成分を算出し、
    前記摩耗状態推定部は、複数の前記解析区間の前記特定周波数成分の分布に係る情報に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する
    ことを特徴とするスプラインの診断装置。
  2. 請求項1に記載のスプラインの診断装置において、
    前記所定区間をT区間とし、前記解析区間をΔt区間としたとき、前記電流計測部で計測した前記T区間の前記電流を前記Δt区間(<T)に分割し、
    前記周波数成分算出部は、前記Δt区間の前記電流を周波数解析して前記特定周波数成分を算出し、
    前記摩耗状態推定部は、T/Δt個の前記特定周波数成分の分布に係る情報に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する
    ことを特徴とするスプラインの診断装置。
  3. 請求項2に記載のスプラインの診断装置において、
    前記特定周波数成分は、前記電流を周波数解析した周波数スペクトルのうち、前記電流の駆動周波数(Fb)の側帯波成分であり、前記電動モータの回転周波数(Fr)に起因する周波数(Fb+Fr及びFb-Fr)のうち少なくとも1つの周波数の電流強度である
    ことを特徴とするスプラインの診断装置。
  4. 請求項3に記載のスプラインの診断装置において、
    前記Δt区間は、前記電流の前記駆動周波数(Fb)の逆数(1/Fb)よりも大きい
    ことを特徴とするスプラインの診断装置。
  5. 請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のスプラインの診断装置において、
    前記特定周波数成分の分布に係る情報として、前記T/Δt個の前記特定周波数成分の最大値、最小値、平均値、中央値、最頻値のうち、少なくとも1つの物理量である
    ことを特徴とするスプラインの診断装置。
  6. 請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のスプラインの診断装置において、
    前記特定周波数成分の分布に係る情報として、前記T/Δt個の前記特定周波数成分の分散、標準偏差、歪度、尖度のうち、少なくとも1つの物理量である
    ことを特徴とするスプラインの診断装置。
  7. 吊荷を巻き上げ/巻き下げする巻上用機構、及び前記巻上用機構を駆動する巻上用モータを備え、前記巻上用モータのシャフトと前記巻上用機構のボスは、スプラインによって嵌め合い結合されているホイストにおいて、
    前記ホイストは、
    前記スプラインのスプライン軸を駆動する前記巻上用モータの電流を計測する電流計測部と、前記電流計測部で計測した前記電流を周波数解析して特定周波数成分を算出する周波数成分算出部と、前記周波数成分算出部で算出した前記特定周波数成分に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する摩耗状態推定部からなる診断装置を備え、
    前記周波数成分算出部は、前記電流計測部で計測した所定区間の前記電流を複数の解析区間に分割し、前記解析区間の前記電流を周波数解析して前記特定周波数成分を算出し、
    前記摩耗状態推定部は、複数の前記解析区間の前記特定周波数成分の分布に係る情報に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する
    ことを特徴とするホイスト。
  8. 吊荷を巻き上げ/巻き下げする巻上用機構、及び前記巻上用機構を駆動する巻上用モータを備え、前記巻上用モータのシャフトと前記巻上用機構のボスは、スプラインによって嵌め合い結合されているホイストにおいて、
    前記ホイストは、
    前記スプラインのスプライン軸を駆動する前記巻上用モータの電流を計測する電流計測部と、前記電流計測部で計測した前記電流を周波数解析して特定周波数成分を算出する周波数成分算出部と、前記周波数成分算出部で算出した前記特定周波数成分に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する摩耗状態推定部からなる診断装置を備え、
    前記摩耗状態推定部は、前記巻上用モータの前記電流に加えて、前記吊荷の重量を入力とし、前記吊荷の重量と前記電流から導出した前記特定周波数成分の分布に係る情報に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する
    ことを特徴とするホイスト。
  9. 駆動車輪、及び前記駆動車輪を回転駆動する車輪駆動用モータを備え、前記車輪駆動用モータと前記駆動車輪の間の連結機構にスプラインを用いて動力を伝達する電動車両において、
    前記電動車両は、
    前記スプラインのスプライン軸を駆動する前記車輪駆動用モータの電流を計測する電流計測部と、前記電流計測部で計測した前記電流を周波数解析して特定周波数成分を算出する周波数成分算出部と、前記周波数成分算出部で算出した前記特定周波数成分に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する摩耗状態推定部からなる診断装置を備え、
    前記周波数成分算出部は、前記電流計測部で計測した所定区間の前記電流を複数の解析区間に分割し、前記解析区間の前記電流を周波数解析して前記特定周波数成分を算出し、
    前記摩耗状態推定部は、複数の前記解析区間の前記特定周波数成分の分布に係る情報に基づいて前記スプライン軸の摩耗状態を推定する
    ことを特徴とする電動車両。
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