[第1例]
本開示の実施の形態の第1例について、図1~図26を用いて説明する。本例の2段変速機1は、駆動源である駆動モータ2の出力トルクを増大する、すなわち回転を減速するか、または、増大せずにそのまま差動装置3に伝達する。
図1~図2(b)では、発明の理解を容易にするために、2段変速機1および差動装置3を構成する各要素を、模式的に表している。
本例の2段変速機1は、駆動モータ2と、入力部材4と、出力部材5と、摩擦係合装置7と、回転伝達状態切換装置8と、遊星変速機構9とを備える。
入力部材4は、2段変速機1を収容するハウジングなどにより構成され、かつ、使用時にも回転しない固定部分10に対し、図示しない転がり軸受などによって回転自在に支持されている。本例では、入力部材4は、筒状(中空)に構成されている。また、入力部材4は、軸方向片側(図1の右側)の端部に、駆動モータ2の出力軸11に備えられた駆動歯車12と噛合する入力歯車13を有する。
出力部材5は、入力部材4と同軸に、かつ、入力部材4に対する相対回転を可能に支持されている。本例では、出力部材5は、筒状の入力部材4の径方向内側に、図示しない転がり軸受などを介して、入力部材4に対する相対回転を可能に支持されている。また、出力部材5は、軸方向片側の端部に出力歯車14を有する。出力歯車14は、差動装置3の入力部に備えられた歯車に噛合している。出力部材5は、差動装置3の入力部を回転駆動する。
駆動モータ2は、入力部材4を、駆動歯車12と入力歯車13とからなる歯車式の減速機を介して回転駆動する。
遊星変速機構9は、入力部材4に接続されている入力要素と、出力部材5に接続され、前記入力要素と相対回転可能である出力要素と、および、前記入力要素および前記出力要素と相対回転可能である回転要素とを備える。
遊星変速機構9は、サン要素と、前記サン要素の周囲に該サン要素に対する相対回転を可能に支持されたリング要素と、前記サン要素と前記リング要素とに対する相対回転を可能に支持されたキャリア要素と、前記サン要素と前記リング要素とにトルク伝達を可能に係合し、かつ、前記キャリア要素に回転可能に支持された複数個のプラネタリ要素とを有する。
前記入力要素は、前記サン要素、前記リング要素、および前記キャリア要素のうちのいずれかにより構成される。
前記出力要素は、前記サン要素、前記リング要素、および前記キャリア要素のうちのいずれかであって、前記入力要素とは別の要素により構成される。
前記回転要素は、前記サン要素、前記リング要素、および前記キャリア要素のうち、前記入力要素および前記出力要素を除く残りの要素により構成される。
本例では、遊星変速機構9を、歯車同士を噛合させてなる遊星歯車機構により構成している。すなわち、前記サン要素はサンギヤ101により構成され、前記リング要素はリングギヤ102により構成され、前記キャリア要素はキャリア103により構成され、前記複数個のプラネタリ要素は複数個のプラネタリギヤ104により構成される。したがって、遊星変速機構9は、複数個のプラネタリギヤ104のそれぞれが、サンギヤ101とリングギヤ102との両方に噛合するシングルピニオン式の遊星歯車機構により構成される。
本開示を実施する場合、遊星減速機構して、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を採用することもできる。あるいは、遊星変速機構として、遊星ローラ機構により構成することもできる。この場合、前記サン要素はサンローラにより構成され、前記リング要素はリングローラにより構成され、と、前記複数個のプラネタリ要素は複数個のプラネタリローラにより構成される。
本例では、サンギヤ101は、回転部材6の軸方向片側の端部に備えられている。
回転部材6は、入力部材4および出力部材5と同軸に、かつ、入力部材4および出力部材5に対する相対回転を可能に支持されている。より具体的には、回転部材6は、回転伝達状態切換装置8と、摩擦係合装置7を構成するカム装置28と、該カム装置28を構成する駆動カム34を回転部材6に対し回転可能に支持するためのラジアル軸受38とを介して、固定部分10に対し回転可能に支持されている。
回転部材6は、軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した小径フランジ部15を有し、かつ、小径フランジ部15よりも軸方向他側(図1の左側)に位置する部分に、径方向外側に向けて突出したフランジ部16を有する。
フランジ部16は、中空円形板状の第1円輪部18と、第1円輪部18の径方向外側の端部から軸方向他側に向けて折れ曲がった第1円筒部19と、第1円筒部19の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった中空円形板状の第2円輪部20と、第2円輪部20の径方向外側の端部から軸方向他側に向けて折れ曲がった第2円筒部21とを有する。第1円輪部18は、径方向中間部複数箇所に、摩擦係合装置7を構成する押圧部材58の部分円筒部63を挿通するための部分円弧形の通孔17を有する。
本例では、回転部材6は、小径フランジ部15を有する軸部材22に、図13(b)の左側に示すような、段付円筒部材23を外嵌固定することにより構成されている。すなわち、段付円筒部材23は、フランジ部16と、該フランジ部16の第1円輪部18の径方向内側の端部から軸方向他側に向けて折れ曲がった小径円筒部24とを有する。小径円筒部24の内周面に備えられた雌スプライン部25は、軸部材22の外周面に備えられた雄スプライン部にスプライン係合させるなどにより、段付円筒部材23を軸部材22に支持固定されている。ただし、段付円筒部材と軸部材とを、圧入や溶接などにより結合固定することで、回転部材を構成することもできる。
本例では、前記回転要素は、サンギヤ101により構成される。
リングギヤ102は、サンギヤ101の周囲に、該サンギヤ101と同軸に配置され、かつ、入力部材4にトルク伝達を可能に接続されている。本例では、リングギヤ102は、入力部材4の軸方向中間部に備えられている。
本例では、前記入力要素は、リングギヤ102により構成される。
キャリア103は、径方向に関してサンギヤ101とリングギヤ102との間に、該サンギヤ101および該リングギヤ102と同軸に配置され、かつ、出力部材5にトルク伝達を可能に接続されている。
本例では、前記出力要素は、キャリア103により構成される。
複数個のプラネタリギヤ104は、サンギヤ101とリングギヤ102とに噛合する。複数個のプラネタリギヤ104のそれぞれは、キャリア103に、自身の中心軸を中心とする回転(自転)を可能に支持されている。
回転伝達状態切換装置8は、前記回転要素(本例ではサンギヤ101)と使用時にも回転しない固定部分10との間に配置され、該固定部分10に対して前記回転要素であるサンギヤ101が回転可能なフリーモードと回転不能なロックモードとを切り換える。
本例では、回転伝達状態切換装置8は、図15~図18に示すように、互いに同軸に配置された第1部材71および第2部材72と、駆動カム34の回転に伴い回転するモードセレクト部材73とを備える。
第1部材71は、サンギヤ101にトルク伝達可能に接続されており、第2部材72は、固定部分10に対し支持固定されている。本例の回転伝達状態切換装置8は、第1部材71の回転方向にかかわらず、固定部分10に対する第1部材71の回転が許容されるフリーモードと、第1部材71の回転方向にかかわらず、固定部分10に対する第1部材71の回転が阻止されるロックモードとに加え、第1部材71の所定方向の回転のみが許容されるワンウェイクラッチモードを有する。具体的には、本例の回転伝達状態切換装置8は、モードセレクト部材73の回転に基づいて、フリーモードとロックモードとワンウェイクラッチモードとが切り換わる。
第1部材71は、外周面に、円周方向に関して係合凹部74と凸部75とを交互に配置してなる、歯車状の凹凸部76を有する。第1部材71は、内周面に、円周方向に凹部と凸部とを交互に配置してなる外径側凹凸係合部77を有する。第1部材71は、外径側凹凸係合部77を、回転部材6の第2円筒部21の外周面に備えられた内径側凹凸係合部78に係合することにより、回転部材6に対して相対回転を不能に支持されており、回転部材6およびサンギヤ101と一体的に回転する。
第2部材72は、第1部材71の周囲に第1部材71と同軸に、かつ、第1部材71に対する相対回転を可能に支持されている。第2部材72の内周面は、第1部材71の凸部75の先端面に隙間を介して対向している。第2部材72は、外周面に、円周方向に凹部と凸部とを交互に配置してなる内径側凹凸係合部79を有する。第2部材72は、内径側凹凸係合部79を、固定部分10の内周面に備えらえた外径側凹凸係合部に係合することにより、固定部分10に対して相対回転を不能に支持されている。
第2部材72は、矩形の断面形状を有する基部80と、基部80の軸方向片側面の径方向外側の端部から軸方向片側に向けて全周にわたり突出した円筒部81とを備える。
基部80は、円周方向に関して交互に配置された、複数個ずつ(図示の例では6個ずつ)の第1保持凹部82および第2保持凹部83を有する。
それぞれの第1保持凹部82は、基部80の内周面と軸方向他側面とに開口する。第1保持凹部82は、ばね保持部84aと、台座部85aとを備える。ばね保持部84aは、軸方向他側から見て、円周方向片側(図17~図19の時計方向前側)に向かうほど径方向外側に向かう方向に伸長する方向に長軸が配置された、略矩形の開口形状を有する。台座部85aは、軸方向他側から見て略円形の開口形状を有し、ばね保持部84aの円周方向他側(図17~図19の時計方向後側)に隣接して配置されている。
それぞれの第2保持凹部83は、基部80の内周面と軸方向他側面とに開口し、ばね保持部84bと、台座部85bとを備える。第2保持凹部83は、軸方向他側から見た場合に、第2部材72の中心軸を含む仮想平面に関して、第1保持凹部82と対称な形状を有する。
回転伝達状態切換装置8は、フリーモードとロックモードとワンウェイクラッチモードとを実現するために、第1部材71と第2部材72との間に、第1爪部材86および第2爪部材87と、第1爪付勢部材88および第2爪付勢部材89とを有する。本例では、第1爪部材86、第2爪部材87、第1爪付勢部材88、および第2爪付勢部材89の個数は複数かつ同数である。
それぞれの第1爪部材86は、第1基部90と、第1係合爪91とを備える。
第1基部90は、略円柱状に構成され、第1保持凹部82の台座部85aに、第2部材72の中心軸と平行な枢軸を中心とする揺動を可能に支持(枢支)されている。
第1係合爪91は、略平板状に構成され、第1基部90から円周方向片側に向けて延出している。第1係合爪91は、軸方向他側部分を、モードセレクト部材73の環状凸部92の外周面に対向(係合)させ、かつ、軸方向片側部分を、第1部材71の凹凸部76に対向(係合凹部74に対する係脱を可能に係合)させている。
それぞれの第2爪部材87は、第2保持凹部83の台座部85bに揺動可能に支持された第2基部93と、第2基部93から円周方向他側に向けて延出する第2係合爪94とを備える。第2爪部材87は、軸方向他側から見た場合に、第2部材72の中心軸を含む仮想平面に関して、第1係合爪91と対称な形状を有し、かつ、第1係合爪91と対称に配置される。
第1爪付勢部材88は、第1爪部材86の第1係合爪91を、第1部材71の係合凹部74に係合させる方向に弾性的に付勢する。すなわち、第1爪付勢部材88は、第1爪部材86に対し、第1爪部材86が第1基部90の中心軸(枢軸)を中心として、図18の時計方向に揺動する方向の付勢力を付与する。具体的には、第1爪付勢部材88は、コイルばねなどの弾性部材により構成され、第1保持凹部82のばね保持部84aの底面(径方向内側を向いた面)と、第1係合爪91の径方向外側面との間に、弾性的に圧縮された状態で保持されている。
、第1爪付勢部材88と同様の弾性部材により構成され、軸方向他側から見た場合に、第2部材72の中心軸を含む仮想平面に関して、第1爪付勢部材88と対称に配置される。すなわち、第2爪付勢部材89は、第2保持凹部83のばね保持部84bの底面と、第2係合爪94の径方向外側面との間に、弾性的に圧縮された状態で保持され、第2爪部材87の第2係合爪94を、第1部材71の係合凹部74に係合させる方向に弾性的に付勢する。
モードセレクト部材73は、図16に示すように、略円輪板状の基部95と、基部95の軸方向他側面の径方向中間部から軸方向他側に向けて全周にわたり突出した環状凸部92とを備える。
基部95は、軸方向他側面のうち、径方向中間部の円周方向等間隔複数箇所(図示の例では3箇所)に、プレート側係合孔96を有する。それぞれのプレート側係合孔96には、ピン部50の軸方向片側の端部ががたつきなく内嵌(係合)される。すなわち、モードセレクト部材73は、駆動カム34と一体的に(同じ方向に同じ速度で)回転する。
環状凸部92は、外周面の円周方向複数箇所に、径方向外側に向けて突出した突出部97を有する。すなわち、環状凸部92は、外周面に、円周方向に関して突出部97と凹部とを交互に配置してなる、歯車状の凹凸部98を有する。
第1部材71および第2部材72と、モードセレクト部材73とは、蓋体99および止め輪100により、相対回転可能に、かつ、軸方向の相対変位を不能に(軸方向に不用意に分離しないように)組み合わされて、回転伝達状態切換装置8を構成する。
第1部材71を、第2部材72の基部80の軸方向片側部分の径方向内側に配置した状態で、第2部材72の軸方向片側面に、円輪状の蓋体99をねじ止めにより支持固定し、蓋体99の径方向内側部分の軸方向他側面を、第1部材71の軸方向片側面に対向させている。これにより、第2部材72に対する第1部材71の軸方向片側への変位が阻止される。
モードセレクト部材73の環状凸部92を、第2部材72の基部80の軸方向他側部分の径方向内側に配置し、環状凸部92の先端面(軸方向片側面)を第1部材71の軸方向他側面に摺接または近接対向させ、かつ、基部95の径方向外側部分の軸方向片側面を、第2部材72の基部80の軸方向他側面に摺接または近接対向させた状態で、第2部材72の円筒部81の内周面の軸方向他側の端部に止め輪100を係止している。これにより、第2部材72に対する第1部材71およびモードセレクト部材73の軸方向他側への変位が阻止される。
回転伝達状態切換装置8は、モードセレクト部材73の回転に基づいて、第1爪部材86の第1係合爪91と第1部材71の係合凹部74との係合状態、および、第2爪部材87の第2係合爪94と係合凹部74との係合状態を切り換えることで、フリーモードとロックモードとワンウェイクラッチモードとを切り換え可能に構成されている。
<フリーモード>
フリーモードでは、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向の位相を調整し、図19(A)に示すように、突出部97により、第1係合爪91を第1爪付勢部材88の弾力に抗して径方向外側に向けて押し上げ、かつ、第2係合爪94を第2爪付勢部材89の弾力に抗して径方向外側に向けて押し上げる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91および第2係合爪94との係合が外れる。この状態では、第1部材71と第2部材72との相対回転方向にかかわらず、第2部材72に対する第1部材71の回転が許容される。すなわち、第1部材71の回転方向にかかわらず、固定部分10に対する第1部材71の回転が許容される。
<ロックモード>
ロックモードでは、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向の位相を調整し、図19(B)に示すように、突出部97を、第1爪部材86の第1係合爪91および第2爪部材87の第2係合爪94から円周方向に外れた部分に位置させる。すなわち、円周方向に関して、凹凸部98のうちの凹部と、第1係合爪91および第2係合爪94との位相を一致させる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91および第2係合爪94とが係合する。この状態では、第1部材71と第2部材72との相対回転方向にかかわらず、第2部材72に対する第1部材71の回転が阻止される。すなわち、第1部材71の回転方向にかかわらず、固定部分10に対する第1部材71の回転が阻止される。
<ワンウェイクラッチモード>
ワンウェイクラッチモードでは、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向の位相を調整し、図19(C)に示すように、突出部97により、第2係合爪94のみを第2爪付勢部材89の弾力に抗して径方向外側に向けて押し上げる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91とが係合し、かつ、係合凹部74と第2係合爪94との係合が外れる。この状態では、第2部材72に対する第1部材71の前記所定方向(図19(C)の時計方向)の回転のみが許容され、かつ、前記所定方向と反対方向(図19(C)の反時計方向)の回転が阻止される。
すなわち、第1部材71が、第2部材72に対し前記所定方向に回転しようとすると、凹凸部76の凸部75により、第1係合爪91が第1爪付勢部材88の弾力に抗して径方向外側に押し上げられる。この結果、第1部材71の前記所定方向への回転が許容される。これに対して、第1部材71が、第2部材72に対し前記所定方向と反対方向に回転しようとした場合には、係合凹部74と第1係合爪91との係合により、第1部材71の前記所定方向と反対方向への回転が阻止される。要するに、回転伝達状態切換装置8は、ラチェット式のワンウェイクラッチとして動作する。
なお、前記所定方向は、入力部材4の正転方向と一致する。入力部材4の正転方向とは、自動車を前進させる際の入力部材4の回転方向をいう。
摩擦係合装置7は、軸方向の相対変位を可能に支持された、少なくとも1枚の第1摩擦板30および少なくとも1枚の第2摩擦板31を有し、前記サン要素(サンギヤ101)、前記リング要素(リングギヤ102)、および前記キャリア要素(キャリア103)のうちのいずれか2つの要素同士の間に配置され、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合わせることで、前記いずれか2つの要素が一体となって回転する接続モードに切り換え、かつ、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力を解放することで、前記いずれか2つの要素が相対回転する切断モードに切り換える。
本例では、摩擦係合装置7は、サンギヤ101とリングギヤ102との間に備えられ、前記接続モードでは、サンギヤ101とリングギヤ102が一体となって回転し、前記切断モードでは、サンギヤ101とリングギヤ102とが相対回転する。これにより、前記接続モードでは、入力部材4と回転部材6との間でトルクが伝達され、前記切断モードでは、入力部材4と回転部材6との間でトルクが伝達されない。
本例では、摩擦係合装置7は、摩擦係合部26と、弾性付勢部材27と、カム装置28と、電動アクチュエータ29とを備える。
本例では、摩擦係合部26は、回転部材6に支持された複数枚の第1摩擦板30と、入力部材4に支持された複数枚の第2摩擦板31とを、交互に重ね合わせてなる多板クラッチにより構成されている。
複数枚の第1摩擦板30は、第1円筒部19の外周面に、軸方向変位を可能に、かつ、第1円筒部19に対する相対回転を不能に支持されている。
複数枚の第2摩擦板31は、入力部材4の軸方向他側の端部内周面に、軸方向変位を可能に、かつ、入力部材4に対する相対回転を不能に支持されている。
弾性付勢部材27は、回転部材6と摩擦係合部26との間に備えられ、かつ、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う方向に弾性的に付勢する。本例では、弾性付勢部材27は、ピストン32と、弾性部材33とを有する。
ピストン32は、回転部材6に対する軸方向変位を可能に支持されている。本例では、ピストン32は、中空円形板状に構成され、かつ、回転部材6のうち、軸方向に関して小径フランジ部15とフランジ部16との間部分の周囲に、回転部材6に対する軸方向変位を可能に支持されている。ピストン32は、径方向外側部分の軸方向他側の端面を、第1摩擦板30および第2摩擦板31のうちで最も軸方向片側に位置する第1摩擦板30または第2摩擦板31の軸方向片側面に対向させている。
弾性部材33は、回転部材6とピストン32との間に備えられている。本例では、弾性部材33は、回転部材6の小径フランジ部15の軸方向他側面と、ピストン32の軸方向片側面との間に、弾性的に圧縮された状態で挟持されている。すなわち、弾性付勢部材27は、弾性部材33が弾性的に復元しようとする力により、ピストン32を介して、最も軸方向片側の第1摩擦板30または第2摩擦板31を軸方向他側に向けて押圧することで、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う方向に弾性的に付勢している。
本例では、弾性部材33は、少なくとも1枚(本例では2枚)の皿ばねにより構成されている。ただし、本開示を実施する場合、弾性部材の具体的な構成は、特に限定されるものではない。たとえば、弾性部材を、少なくとも1個のコイルばねにより構成することもできる。
カム装置28は、駆動カム34と、該駆動カム34に対する相対回転および軸方向の相対変位を可能に支持された被駆動カム35とを有する。カム装置28は、駆動カム34の回転に伴い、被駆動カム35を駆動カム34との軸方向間隔が拡がる方向に相対変位させることに基づいて、弾性付勢部材27を、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力を解除する方向に押圧する。
本例では、駆動カム34は、回転部材6に対し、該回転部材6および入力部材4に対する回転を可能に、かつ、回転部材6に対する軸方向変位を不能に支持されている。具体的には、駆動カム34は、図4などに示すように、筒状部材37とラジアル軸受38とアンギュラ玉軸受39とにより、回転部材6に対して該回転部材6に対する相対回転を可能に支持されている。
筒状部材37は、円筒部40と、該円筒部40の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった外向フランジ部41とを有する。筒状部材37は、外向フランジ部41を固定部分10に対して、ねじ止めなどにより支持固定される。
ラジアル軸受38は、回転部材6の軸方向他側の端部に外嵌固定された内輪42と、筒状部材37の円筒部40に内嵌固定された外輪43と、内輪42と外輪43との間に転動自在に配置された複数個の転動体44とを有する。図示の例では、ラジアル軸受38は、転動体44として玉を使用した複列深溝玉軸受により構成されている。ただし、ラジアル軸受は、ラジアル荷重とアキシアル荷重とを支承することができる限り、特に限定されず、たとえば、深溝玉軸受、ラジアルアンギュラ玉軸受、もしくはラジアル円すいころ軸受などにより構成することもできる。
アンギュラ玉軸受39は、筒状部材37の円筒部40に外嵌固定された内輪45と、駆動カム34に内嵌固定された外輪46と、内輪45と外輪46との間に転動自在に配置された複数個の玉47とを有する。
本例では、駆動カム34は、外周面に、はすば歯車であるホイール歯49を有し、かつ、軸方向片側面の径方向中間部の円周方向複数箇所(図示の例では3箇所)に、軸方向片側に向けて突出するピン部50を有する。
被駆動カム35は、回転部材6の周囲に、軸方向変位のみ可能に配置されている。本例では、被駆動カム35は、中空円形板形状を有し、固定部分10に対して軸方向変位を可能に支持されている。本例では、被駆動カム35の内周面に備えられた雌スプライン部51を、筒状部材37の円筒部40の軸方向片側部分の外周面に備えられた雄スプライン部52にスプライン係合させることで、被駆動カム35を固定部分10に対して軸方向変位を可能に支持している。
ただし、固定部分に対する被駆動カムの支持方法は、被駆動カムを固定部分に対し、軸方向変位のみ可能に支持することができれば、特に限定されない。たとえば、被駆動カムと固定部分とのうちの一方に備えられた凸部と、他方に備えられた凹溝とをキー係合させるなどにより、被駆動カムを固定部分に対して軸方向変位可能に支持することもできる。
被駆動カム35は、図12に示すように、径方向中間部の円周方向複数箇所(図示の例では3箇所)に、軸方向に貫通する矩形孔53を有し、かつ、矩形孔53のそれぞれの径方向両側部分から軸方向他側に向けて突出する略半円形板状の支持板部54a、54bを有する。支持板部54a、54bのうち、径方向外側の支持板部54aは、径方向に貫通する円孔である支持孔55を備え、かつ、径方向内側の支持板部54bは、径方向外側面に、円形の開口を有する支持凹部56を備える。
被駆動カム35は、スラスト軸受57と押圧部材58とを介して、弾性付勢部材27のピストン32に対向している。
スラスト軸受57は、押圧部材58と被駆動カム35との間に備えられている。スラスト軸受57は、1対の軌道輪59a、59bと、該1対の軌道輪59a、59b同士の間に転動自在に配置された複数個の転動体60とを有する。1対の軌道輪59a、59bのうち、軸方向他側の軌道輪59bは、被駆動カム35に対し支持固定されている。
押圧部材58は、円筒状の基部62と、基部62の軸方向片側の端部の円周方向複数箇所(図示の例では3箇所)から、軸方向片側に向けて突出した部分円筒部63とを有する。基部62の軸方向他側の端部には、スラスト軸受57の1対の軌道輪59a、59bのうちの軸方向片側の軌道輪59aが支持固定されている。部分円筒部63は、回転部材6の通孔17に挿通されており、該部分円筒部63の先端部(軸方向片側の端部)は、ピストン32の軸方向他側面の径方向中間部に対向している。
本例では、押圧部材58と回転部材6との間に、該スラスト軸受57に予圧を付与するための予圧付与手段61が備えられている。予圧付与手段61は、押圧部材58と、回転部材6を構成するフランジ部16の第1円輪部18の軸方向他側面との間に弾性的に圧縮した状態で挟持されている。これにより、図2(b)に示すように、ピストン32を、弾性部材33の弾性復元力に抗して、軸方向片側に向けて押圧した状態においても、スラスト軸受57に予圧を付与するとともに、スラスト軸受57が弾性付勢部材27とカム装置28との間から脱落することを防止している。
なお、予圧付与手段61の弾力は、弾性部材33の弾性復元力よりも小さくなっている。予圧付与手段61は、たとえば、少なくとも1枚の皿ばねや、少なくとも1個のコイルばねにより構成することができる。本例では、予圧付与手段61は、1個のコイルばねにより構成されている。
本例では、カム装置28は、駆動カム34と被駆動カム35とを相対変位させるための手段として、複数個(本例では3個)の転動体36と、駆動カム34に備えられた駆動カム面48とを備えている。
図11に示すように、駆動カム面48は、駆動カム34の軸方向片側面の径方向内側部分に、凹部と凸部とを同数ずつ、円周方向に交互に配置することにより構成される。駆動カム面48は、図14(A)~図14(D)に示すように、第1底部48a、第1傾斜面部48b、第1平坦面部48c、第2傾斜面部48d、第2底部48e、第3傾斜面部48f、第2平坦面部48g、および第4傾斜面部48hの順に、転動体36の個数回(本例では3回)だけ繰り返し配置して構成される。
駆動カム面48のうち、第1平坦面部48cおよび第2平坦面部48gが、軸方向に関して最も片側に位置し、すなわち凸部の先端部に位置し、かつ、第1底部48aおよび第2底部48eが、軸方向に関して最も他側に位置する。駆動カム34の中心軸に直交する仮想平面Pに対する第3傾斜面部48fおよび第4傾斜面部48hの傾斜角度は、仮想平面Pに対する第1傾斜面部48bよりも大きい。
第1傾斜面部48bの傾斜角度と、第3傾斜面部48fおよび第4傾斜面部48hの傾斜角度とはいずれも、転動体36が転がり落ちるように移動することも乗り上げるように移動することもできる大きさに設定されている。第3傾斜面部48fと第4傾斜面部48hとは傾斜方向を反対とし、傾斜角度を互いに同じとしている。
ただし、第3傾斜面部48fと第4傾斜面部48hの傾斜角度を互いに異ならせることもできる。また、第1傾斜面部48bの傾斜角度と、第3傾斜面部48fおよび第4傾斜面部48hの傾斜角度とを互いに同じとすることもできる。
仮想平面Pに対する第2傾斜面部48dの傾斜角度は、転動体36が乗り上げることができる限り、任意の大きさに設定することができる。
転動体36のそれぞれは、円筒形状を有し、円柱状の支持軸64と複数個のころ65とを介して、支持板部54a、54bに対し自転を自在に支持されている。すなわち、支持軸64のうち、被駆動カム35の中心軸を中心とする径方向に関する外側の端部を、径方向外側の支持板部54aの支持孔55に内嵌固定し、かつ、支持軸64のうち、被駆動カム35の中心軸を中心とする径方向に関する内側の端部を、径方向内側の支持板部54bの支持凹部56に内嵌固定している。
複数個のころ65は、転動体36の内周面と支持軸64の軸方向中間部外周面との間に転動自在に挟持されている。これにより、転動体36は、被駆動カム35の中心軸を中心とする放射方向を向いた自転軸Cを中心とする回転(自転)を自在に、被駆動カム35に支持されている。
転動体36を被駆動カム35に支持した状態で、転動体36の軸方向片側部分は、矩形孔53の内側に配置される。転動体36のそれぞれは、外周面を、駆動カム34の軸方向他側面に備えられた駆動カム面48に転がり接触させている。
本例の2段変速機1では、駆動カム34を回転駆動し、駆動カム面48のうちの第1底部48aまたは第2底部48eからの転動体36の乗り上げ量を増減させることで、被駆動カム35を軸方向に移動させ、摩擦係合部26の接続状態と切断状態とを切り換える。
摩擦係合部26を切断状態とする場合、図14(B)および図14(D)に示すように、転動体36を、駆動カム面48の第1平坦面部48cもしくは第2平坦面部48gに位置させるか、または、第1傾斜面部48b、第2傾斜面部48d、第3傾斜面部48f、もしくは第4傾斜面部48hへの乗り上げ量を増大させる。
被駆動カム35を駆動カム34との軸方向間隔が拡がる方向である軸方向片側に移動させることで、スラスト軸受57と押圧部材58とを介して、弾性付勢部材27のピストン32を軸方向片側に向けて押圧し、弾性部材33を弾性的に圧縮する。これにより、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力を減少させ、最終的には喪失させる。このようにして、摩擦係合部26が切断されることで、摩擦係合装置7が切断モードに切り換わる。
これに対して、摩擦係合部26を接続状態とする場合、図14(A)および図14(C)に示すように、転動体36を、駆動カム面48の第1底部48aまたは第2底部48eに位置させるか、または、第1傾斜面部48b、第2傾斜面部48d、第3傾斜面部48f、もしくは第4傾斜面部48hへの乗り上げ量を減少させる。
これにより、被駆動カム35を駆動カム34との軸方向間隔が縮まる方向である軸方向他側に移動させることで、弾性付勢部材27のピストン32を軸方向片側に向けて押圧する力を減少させる。ピストン32を軸方向片側に向けて押圧する力が減少すると、主に第1摩擦板30および弾性部材33の弾性復元力により、ピストン32とスラスト軸受57と押圧部材58とが、軸方向他側に向けて押圧され、かつ、ピストン32により、最も軸方向片側の第1摩擦板30または第2摩擦板31が軸方向他側に向けて押圧される。したがって、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合って、摩擦係合部26が接続されることで、摩擦係合装置7が接続モードに切り換わる。
本例の2段変速機1では、駆動カム34を回転させることに基づいて、被駆動カム35を確実に軸方向に変位させることができ、2段変速機1のモード切り換えを、精度よく行うことができる。
転動体として玉を使用した場合、駆動カムを回転させた場合に、転動体の表面と、駆動カム面との転がり接触部に滑りが生じる可能性がある。転動体の表面と、駆動カム面との転がり接触部に滑りが生じた場合、被駆動カムが軸方向に変位できなくなったり、駆動カムの回転量に対する被駆動カムの軸方向変位量を十分に確保できなくなったりする可能性がある。
本例の2段変速機1では、転動体36として、ローラを使用し、かつ、転動体36を被駆動カム35に対し、該被駆動カム35の中心軸を中心とする放射方向を向いた自転軸Cを中心とする回転(自転)を自在に支持している。このため、転動体36の外周面と、駆動カム面48との転がり接触部に滑りが生じることを防止でき、駆動カム34の回転に基づいて、被駆動カム35を確実に軸方向に変位させることができる。この結果、2段変速機1のモード切換を精度よく行うことができる。ただし、カム装置を構成する転動体として、玉を使用することもできる。
本例では、カム装置28は、駆動カム34と被駆動カム35との間に転動体36を挟持することにより構成されているが、本開示を実施する場合、カム装置は、弾性付勢部材を、第1摩擦板と第2摩擦板とを互いに押し付け合う力を解除する方向に押圧することができる限り、特に限定されず、その他の公知の任意の手段を適用することも可能である。
たとえば、カム装置として、駆動カムの駆動カム面と被駆動カムの被駆動カム面との間に転動体を配置した構造、駆動カムの駆動カム面と被駆動カムの被駆動カム面とを直接係合(摺動)させた構造、または、外周面に円周方向に伸長し、かつ、軸方向に変化するガイド溝を有する被駆動カムと、前記ガイド溝に沿った変位を可能に係合する係合凸部を有する駆動カムとを有する構造などを採用することができる。
電動アクチュエータ29は、シフトモータ66および減速機67を有し、シフトモータ66により、減速機67を介して駆動カム34を回転駆動する。
本例では、減速機67は、ウォーム減速機により構成されている。すなわち、減速機67は、シフトモータ66の出力軸に接続されたウォーム68の外周面に備えられたウォーム歯を、駆動カム34の外周面に備えられたホイール歯49に噛合させることにより構成される。ウォーム68は、1対の支持軸受69a、69bにより、固定部分10に対して回転可能に支持されている。
ただし、減速機67は、電動モータの出力軸に備えられた平歯車または傘歯車と、駆動カムに備えられた平歯車または傘歯車とを噛合させることにより構成したり、電動モータの出力軸と駆動カムとの間にベルトまたはチェーンをかけ渡すことで構成したりすることもできる。
本例では、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間に、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間隔を拡げる方向に弾性的に付勢するリターンスプリング70がさらに備えられている。リターンスプリング70の弾力は、弾性付勢部材27の弾性部材33の弾性復元力よりも小さくなっている。摩擦係合部26を切断状態とする場合に、リターンスプリング70の作用により、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間隔が広がり、摩擦係合部26を確実に切断させることが可能となっている。
本例の2段変速機1は、回転伝達状態切換装置8をフリーモードとし、かつ、摩擦係合装置7を接続モードとした第1のモードと、回転伝達状態切換装置8をロックモードとし、かつ、摩擦係合装置7を切断モードとした第2のモードとを備える。
具体的には、回転伝達状態切換装置8をフリーモードとし、かつ、摩擦係合装置7を接続モードとすることで、2段変速機1を第1のモードに切り換えると、遊星変速機構9は、全体が一体となって回転する、のり付け状態となる。この状態では、入力部材4に入力されたトルクは、増大されずに、そのまま出力部材5に伝達される。
これに対して、回転伝達状態切換装置8をロックモードとし、かつ、摩擦係合装置7を切断モードとすることで、2段変速機1を第2のモードに切り換えると、入力部材4に入力されたトルクは、遊星変速機構9で増大されてから出力部材5に伝達される。すなわち、本例の2段変速機1では、第1のモードが、入力部材4と出力部材5との間の減速比が小さい低減速比モードに相当し、かつ、第2のモードが、低減速比モードに比べて減速比が大きい高減速比モードに相当する。
本例の2段変速機1は、高減速比モード(第2のモード)から低減速比モード(第1のモード)への切換途中において、減速比切換モードを経由する。さらに、本例の2段変速機1は、入力部材4と出力部材5との間でトルクを伝達しないニュートラルモード、および、出力部材5の回転をロックするパーキングモードにも切り換えることができる。
<低減速比モード(第1のモード)>
2段変速機1を低減速比モードに切り換えるには、摩擦係合装置7を接続モードに切り換え、かつ、回転伝達状態切換装置8をフリーモードに切り換える。
本例では、電動アクチュエータ29により駆動カム34を回転させることに基づいて、転動体36を、駆動カム面48の第1底部48aに位置させ、被駆動カム35を、駆動カム34との軸方向間隔が縮まる方向(軸方向他側)に向けて変位させる。これにより、弾性付勢部材27のピストン32を軸方向片側に向けて押圧する力を喪失させる。
主に第1摩擦板30および弾性部材33の弾性復元力により、ピストン32とスラスト軸受57と押圧部材58とが、軸方向他側に向けて押圧され、かつ、ピストン32により、最も軸方向片側の第1摩擦板30または第2摩擦板31が軸方向他側に向けて押圧される。
これにより、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合って、摩擦係合部26が接続されることで、摩擦係合装置7が接続モードに切り換わる。この結果、入力部材4と回転部材6とが一体的に回転するようになり、サンギヤ101とリングギヤ102とが一体的に回転するようになる。
摩擦係合装置7を接続モードに切り換えると同時に、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向に関する位相を調整することに基づいて、図19(A)に示すように、突出部97により、第1係合爪91を径方向外側に向けて押し上げ、かつ、第2係合爪94を径方向外側に向けて押し上げる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91および第2係合爪94との係合が外れて、回転伝達状態切換装置8は、第1部材71と第2部材72との相対回転方向にかかわらず、第2部材72に対する第1部材71の回転が許容されるフリーモードに切り換わる。この結果、固定部分10に対する回転部材6の回転が許容され、サンギヤ101の回転が許容される。
低減速比モードでは、サンギヤ101とリングギヤ102とキャリア103との回転方向および回転速度が同じとなり、遊星変速機構9全体が一体となって回転する、のり付け状態となる。したがって、入力部材4の回転トルクは、図2(a)に太線で示すように、入力部材4、キャリア103、および出力部材5の順に伝達されて、出力部材5から取り出される。
<高減速比モード(第2のモード)>
2段変速機1を高減速比モードに切り換えるには、摩擦係合装置7を切断モードに切り換え、かつ、回転伝達状態切換装置8をロックモードに切り換える。
本例では、電動アクチュエータ29により駆動カム34を回転させることに基づいて、転動体36を、駆動カム面48の第1平坦面部48cに位置させ、被駆動カム35を、駆動カム34との軸方向間隔が拡がる方向(軸方向片側)に向けて変位させる。これにより、スラスト軸受57と押圧部材58とを介して、弾性付勢部材27のピストン32を軸方向片側に向けて押圧することで、弾性部材33を弾性的に圧縮し、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力を喪失させる。
リターンスプリング70の作用により、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間隔が広がり、摩擦係合部26が切断されることで、摩擦係合装置7が切断モードに切り換わる。この結果、入力部材4と回転部材6とが相対回転するようになり、サンギヤ101とリングギヤ102とが相対回転可能になる。
摩擦係合装置7を切断モードに切り換えると同時に、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向に関する位相を調整することに基づいて、図19(B)に示すように、突出部97を、第1係合爪91および第2係合爪94から円周方向に外れた部分に位置させる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91および第2係合爪94とが係合し、回転伝達状態切換装置8は、第1部材71と第2部材72との相対回転方向にかかわらず、第2部材72に対する第1部材71の回転が阻止されるロックモードに切り換わる。この結果、固定部分10に対する回転部材6の回転が阻止され、サンギヤ101の回転が阻止される。
高減速比モードでは、入力部材4の回転トルクは、図2(b)に太線で示すように、入力部材4、リングギヤ102、プラネタリギヤ104の自転運動、サンギヤ101との噛合に基づくプラネタリギヤ104の公転運動、キャリア103、および出力部材5の順に伝達されて、出力部材5から取り出される。高減速比モードにおける、入力部材4と出力部材5との間の減速比は、リングギヤ102とサンギヤ101との歯車比(リングギヤ102の歯数/サンギヤ101の歯数)により決定される。
本例の2段変速機1では、1個の電動アクチュエータ29により、1個の駆動カム34を回転駆動することに基づいて、摩擦係合装置7のモードおよび回転伝達状態切換装置8のモードを切り換えることで、入力部材4と出力部材5との間の減速比を高低の2段階に切り換えることができる。
具体的には、たとえば、入力部材4に入力される動力が低速かつ高トルクの領域では、2段変速機1を高減速比モードに切り換え、高速かつ低トルクの領域では、低減速比モードに切り換える。このため、電気自動車や、ハイブリッド自動車が電動モータのみを駆動源として走行している際の加速性能および高速性能を、図41の実線aのうちで点Pよりも左側部分と、鎖線bのうちで点Pよりも右側部分とを連続させたような特性であって、図41に破線cで示したガソリンエンジン車に近いものとすることができる。
本例の2段変速機1では、電動アクチュエータ29により、1個の駆動カム34を回転駆動することに基づいて、摩擦係合装置7のモードおよび回転伝達状態切換装置8のモードを切り換える。すなわち、本例の2段変速機1では、クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を制御するための油圧システムが必要ない。このため、電気自動車やハイブリッド自動車において、システムを簡略化してコストを低減でき、かつ、電費性能を向上することができる。
なお、本開示の2段変速機を実施する場合、摩擦係合装置のモード切り換えと、回転伝達状態切換装置のモード切り換えとを、別々のアクチュエータにより行うこともできる。
本例では、高減速比モードから低減速比モードへの切り換えに伴う変速ショックの発生を防止するべく、駆動モータ2の出力トルクおよび回転数Rsと、シフトモータ66の回転数とを制御するとともに、2段変速機1を減速比切換モードに切り換える。これにより、出力部材5の回転トルクが不連続に変化することを防止しつつ、高減速比モードから低減速比モードに切り換えられるように構成されている。
<減速比切換モード>
2段変速機1の高減速比モードから低減速比モードへの切り換えが開始されると、まず、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向に関する位相を調整することに基づいて、図19(C)に示すように、突出部97により、第2係合爪94のみを第2爪付勢部材89の弾力に抗して径方向外側に向けて押し上げる。
これにより、第1係合爪91のみが、第1部材71の係合凹部74に係合して、回転伝達状態切換装置8は、第2部材72に対する第1部材71の前記所定方向(図19(C)の所定方向)の回転のみを許容し、かつ、前記所定方向と反対方向の回転を阻止するワンウェイクラッチモードに切り換わる。
回転伝達状態切換装置8がワンウェイクラッチモードに切り換わると同時に、あるいは、ワンウェイクラッチモードに切り換わった後、摩擦係合装置7を切断モードから接続モードへの切り換えを開始する。摩擦係合装置7の切断モードから接続モードへの切換中においては、駆動カム34の回転に基づき、図14(B)に示す状態から図14(A)に示す状態へと、転動体36は、駆動カム面48の第1傾斜面部48bを下っていく。
転動体36の、駆動カム面48の第1底部48aから乗り上げ量が徐々に減少することに伴い、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合う力が徐々に大きくなる(摩擦係合部26の締結力Fが徐々に大きくなる)。このとき、入力部材4は、第2摩擦板31の軸方向両側面を、第1摩擦板30の軸方向両側面に滑らせながら(摺接させながら)回転する。
入力部材4の正転方向への回転中に、摩擦係合部26の締結力Fが徐々に増大していくと、回転伝達状態切換装置8の第2部材72に前記所定方向と反対方向に加わるトルクが徐々に減少していく。このとき、回転伝達状態切換装置8は、ワンウェイクラッチモードに切り換えられているため、第2部材72に前記所定方向と反対方向にトルクが加わっても、第2部材72は回転しない。第2部材72に前記所定方向と反対方向に加わるトルクが徐々に減少して0となった後、第2部材72に加わるトルクの方向が逆転する(第2部材72に前記所定方向のトルクが加わる)と、その瞬間に、第2部材72の前記所定方向への回転が許容される。
<ニュートラルモード>
2段変速機1をニュートラルモードに切り換えるには、摩擦係合装置7を切断モードに切り換え、かつ、回転伝達状態切換装置8をフリーモードに切り換える。
電動アクチュエータ29により駆動カム34を回転させることに基づいて、転動体36を、駆動カム面48の第2平坦面部48gに位置させ、被駆動カム35を、駆動カム34との軸方向間隔が拡がる方向(軸方向片側)に向けて変位させる。これにより、スラスト軸受57と押圧部材58とを介して、弾性付勢部材27のピストン32を軸方向片側に向けて押圧することで、弾性部材33を弾性的に圧縮し、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力を喪失させる。
リターンスプリング70の作用により、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間隔が広がり、摩擦係合部26が切断されることで、摩擦係合装置7が切断モードに切り換わる。この結果、入力部材4と回転部材6とが相対回転するようになり、サンギヤ101とリングギヤ102とが相対回転可能になる。
摩擦係合装置7を接続モードに切り換えると同時に、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向に関する位相を調整することに基づいて、図19(A)に示すように、突出部97により、第1係合爪91を径方向外側に向けて押し上げ、かつ、第2係合爪94を径方向外側に向けて押し上げる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91および第2係合爪94との係合が外れて、回転伝達状態切換装置8は、第1部材71と第2部材72との相対回転方向にかかわらず、第2部材72に対する第1部材71の回転が許容されるフリーモードに切り換わる。この結果、固定部分10に対する回転部材6の回転が許容され、サンギヤ101の回転が許容される。
ニュートラルモードでは、入力部材4と出力部材5とが互いに空転し、該入力部材4と出力部材5との間でトルクが伝達されなくなる。
<パーキングロックモード>
2段変速機1をパーキングロックモードに切り換えるには、摩擦係合装置7を接続モードに切り換え、かつ、回転伝達状態切換装置8をロックモードに切り換える。
電動アクチュエータ29により駆動カム34を回転させることに基づいて、転動体36を、駆動カム面48の第2底部48eに位置させ、被駆動カム35を、駆動カム34との軸方向間隔が縮まる方向(軸方向他側)に向けて変位させる。これにより、弾性付勢部材27のピストン32を軸方向片側に向けて押圧する力を喪失させる。そして、主に第1摩擦板30および弾性部材33の弾性復元力により、ピストン32とスラスト軸受57と押圧部材58とが、軸方向他側に向けて押圧され、かつ、ピストン32により、最も軸方向片側の第1摩擦板30または第2摩擦板31が軸方向他側に向けて押圧される。
これにより、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合って、摩擦係合部26が接続されることで、摩擦係合装置7が接続モードに切り換わる。この結果、回転部材6に対する入力部材4の回転が阻止され、サンギヤ101に対するリングギヤ102の回転が阻止される。
摩擦係合装置7を接続モードに切り換えると同時に、第2部材72に対するモードセレクト部材73の円周方向に関する位相を調整することに基づいて、図19(B)に示すように、突出部97を、第1係合爪91および第2係合爪94から円周方向に外れた部分に位置させる。
これにより、第1部材71の係合凹部74と、第1係合爪91および第2係合爪94とが係合し、回転伝達状態切換装置8は、第1部材71と第2部材72との相対回転方向にかかわらず、第2部材72に対する第1部材71の回転が阻止されるロックモードに切り換わる。この結果、固定部分10に対する回転部材6の回転が阻止され、サンギヤ101の回転が阻止される。
パーキングロックモードでは、入力部材4と出力部材5との回転がロックされる。
高減速比モードから低減速比モードへの切換時に、出力部材5の回転トルクが不連続(急激)に変化することを防止して変速ショックの発生を防止するための、駆動モータ2およびシフトモータ66の制御について、図25および図26を用いて説明する。以下では、高減速比モードから低減速比モードへの切換前後で、出力部材5の回転トルクをほぼ一定に維持する場合の例について説明する。
車両の走行速度やアクセル開度などの条件に基づいて、高減速比モードから低減速比モードへの切り換えが開始されると、まず、電動アクチュエータ29により駆動カム34を回転駆動することで、回転伝達状態切換装置8をワンウェイクラッチモードに切り換え、かつ、駆動カム34の回転方向に関する位相を、クラッチタッチポイントθfまで移動させる(S1)。
クラッチタッチポイントθfは、弾性付勢部材27が、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力が発生し始める点である。換言すれば、クラッチタッチポイントθfは、ピストン32の軸方向他側の端部と、最も軸方向片側に位置する第1摩擦板30または第2摩擦板31とが接触し始める点、すなわちクラッチクリアランスCf(図24参照)が0となる点である。本例では、クラッチタッチポイントθfは、後述する機能により、予め求めておく。
駆動カム34の回転方向に関する位相を、クラッチタッチポイントθfまで移動させると、トルクフェーズ(S2)に移行する。トルクフェーズでは、電動アクチュエータ29により、駆動カム34を所定の回転数(回転速度)で回転駆動し、転動体36の、第1底部48aからの乗り上げ量を減少させることで、第1摩擦板30と第2摩擦板31との押し付け力、すなわち摩擦係合部26の締結力Fを徐々に増大させていく。これと同時に、駆動モータ2の出力トルクを徐々に増大させていく。
すなわち、仮に駆動モータ2の出力トルクを一定に維持した場合、トルクフェーズにおいては、摩擦係合部26の締結力Fの増大に伴い、該摩擦係合部26に伝達されるトルクが増大していくため、出力部材5の回転トルクが減少していってしまう。本例の2段変速機1では、摩擦係合部26の締結力Fの増大にかかわらず、出力部材5の回転トルクをほぼ一定に維持できるように、摩擦係合部26の締結力Fの増大、すなわち駆動カム34の回転量に応じて、駆動モータ2の出力トルクを徐々に増大させる。
駆動カム34の回転量と、駆動モータ2の出力トルクの増大量との関係は、予め実験や計算により求めておく。本例では、S2における駆動カム34の回転数を、S1における駆動カム34の回転数よりも小さくしている。ただし、S2における駆動カム34の回転数を、S1における駆動カム34の回転数と同じとすることもできるし、S1における駆動カム34の回転数よりも大きくすることもできる。
S2では、より具体的には、駆動カム34を所定角度だけ回転させると同時に、駆動モータ2の出力トルクを、駆動カム34の回転量に応じた分だけ増大させる。次のS3で、トルクフェーズが終了しているか否かを判定する。
トルクフェーズでは、摩擦係合部26の締結力Fの増大に伴い、摩擦係合部26に伝達される(摩擦係合部26を通過する)トルクであるクラッチトルクが増大し、回転伝達状態切換装置8の第2部材72に前記所定方向と反対方向に加わるトルクが徐々に減少していく。第2部材72に前記所定方向と反対方向に加わるトルクが徐々に減少して0となった後、第2部材72に加わるトルクの方向が逆転する(第2部材72に前記所定方向のトルクが加わる)と、その瞬間に、第2部材72の前記所定方向への回転が許容され、サンギヤ101の回転が許容される。サンギヤ101が回転すると、駆動モータ2の出力軸11の回転数Rsが減少し始める。
本例の2段変速機1では、駆動モータ2の出力軸11に取り付けられた回転センサの出力信号に基づいて、出力軸11の回転数Rsが所定値以上減少したと判断される場合に、トルクフェーズが終了したと判定する。この判定は、駆動モータ2の出力軸11に取り付けられた回転センサに基づいて行う。
出力軸11の回転数Rsがほぼ一定である、すなわち出力軸11の回転数Rsの減少量が所定値よりも小さく、トルクフェーズが終了していないと判断された場合、S2に戻る。
S3において、出力軸11の回転数Rsの減少量が所定値以上であり、トルクフェーズが終了していると判定された場合には、イナーシャフェーズ(S4-1~S4-3)に移行する。
イナーシャフェーズでは、まず、駆動モータ2の出力トルクを速やかに減少させ、出力軸11の回転数Rsのさらなる減少を促す(S4-1)。駆動モータ2の出力トルクの減少量は、出力軸11の回転数Rsのさらなる減少を促進できる限り、特に限定されるものではない。具体的には、たとえば、駆動モータ2の出力トルクを、0、あるいは、負の値まで減少させることができる。
出力軸11の回転数Rsが減少し始めたら、入力部材4の回転トルクが、2段変速機1の低減速比モードへの切換完了状態において出力部材5が出力すべき回転トルクである目標トルクとなるよう、駆動モータ2の出力トルクを増大させる(S4-2)。本例では、高減速比モードから低減速比モードへの切換前後で、出力部材5の回転トルクをほぼ一定としているため、入力部材4の回転トルクが、高減速比モードから低減速比モードへの切換開始時の出力部材5の回転トルクに等しくなるまで、駆動モータ2の出力トルクを増大させる。
駆動モータ2の出力トルクを増大させる速さは、イナーシャフェーズ完了までに、入力部材4の回転トルクを目標トルクまで増大させられるように制御される。本例では、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間の摩擦係数μと、摩擦係合部26の入力回転数Rinと出力回転数Routとの差分(差回転)Vとに基づいて、駆動モータ2の出力トルクを制御する。摩擦係合部26の入力回転数Rinは、第1摩擦板30の回転数であって、本例ではリングギヤ102の回転数および入力部材4の回転数と同じである。また、摩擦係合部26の出力回転数Routは、第2摩擦板31の回転数であって、本例ではサンギヤ101の回転数と同じである。
本例の2段変速機1では、出力軸11の回転数Rsの減少に伴い、入力部材4の回転数が減少し、差回転Vが小さくなるにしたがって、駆動モータ2の出力トルクを増大させ、差回転Vが0になった時点で、入力部材4の回転トルクが目標トルクになるように制御する。摩擦係数μと差回転Vとの関係であるμ-V特性は、後述する機能により、予め求めておく。
次に、S4-3では、差回転Vが0であるか否かを判定する。本例の2段変速機1では、差回転Vが0になり、摩擦係合部26の入力回転数Rinと出力回転数Routとが等しくなると、遊星変速機構9は、のり付け状態となり、入力部材4の回転数と、出力部材5の回転数とが等しくなる。
本例では、入力部材4の回転数と、出力部材5の回転数とが等しいか否かを判定することで、差回転Vが0であるか否かを判定する。具体的には、入力部材4の回転数と、出力部材5の回転数との差分ΔRが、所定の範囲内に収まっているか否かを判定する。この判定は、出力軸11または入力部材4と出力部材5とにそれぞれ取り付けられた回転センサの出力信号に基づいて行われる。
差分ΔRが、所定の範囲内に収まっていない、すなわち差回転Vが0ではないと判定された場合、所定時間経過後、再びS4-3を実行する。
差分ΔRが、所定の範囲内に収まっている、すなわち差回転Vが0であると判定された場合、イナーシャフェーズが終了したものと判断し、次のS5に移行する。
S5では、電動アクチュエータ29により駆動カム34を、所定の円周方向に関する位相まで回転させ、転動体36を、駆動カム面48の第1底部48aに位置させ、被駆動カム35を、駆動カム34との軸方向間隔が縮まる方向である軸方向他側に向けて変位させる。これにより、押圧部材58の軸方向片側の端部と、ピストン32の軸方向他側面との間のピストンクリアランスCpを確保する。換言すれば、ピストンクリアランスCpを0以上、好ましくは0よりも大きくする。
転動体36を第1底部48aに移動させた後は、終了に進む。以上により、2段変速機1を、高減速比モードから低減速比モードに切り換える。その後は、駆動カム34の円周方向に関する位相を維持することで、2段変速機1を低減速比モードに維持する。
本例の2段変速機1では、駆動モータ2およびシフトモータ66を制御することにより、高減速比モードと低減速比モードとを切り換える際にも、出力部材5の回転トルクが(急激)に変化することを防止して変速ショックの発生を防止することができる。ただし、変速ショックの発生を防止するためには、駆動モータ2の出力トルクおよび回転数Rs、並びに、シフトモータ66の回転を制御するタイミングが重要になる。
たとえば、駆動カム34の回転方向に関する位相がクラッチタッチポイントθfまで達していないにもかかわらず、S2に移行し、駆動モータ2の出力トルクを増大させてしまうと、図26(F)に破線で示すように、出力部材5の回転トルクが不用意に増大してしまう可能性がある。
2段変速機1の使用に伴い、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗量が増大していくと、摩擦係合装置7を接続モードに切り換えるための、弾性付勢部材27による、最も軸方向片側の第1摩擦板30または第2摩擦板31の軸方向他側への必要押圧量が増大する。
換言すれば、摩擦係合装置7を切断モードに切り換える際の、カム装置28による、ピストン32の軸方向片側への必要押圧量が減少する。この結果、駆動カム34の回転角度θとシフトモータ66の電流値Aとの関係は、図21(a)に示す状態から図21(b)に示す状態へと変化する。すなわち、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗量が増大すると、クラッチタッチポイントθfが小さくなる。
図21(a)および図21(b)は、摩擦係合装置7を接続モードから切断モードに切り換える際の、駆動カム34の回転角度θとシフトモータ66の出力トルクTおよび電流値Aとの関係を示す線図である。図21(a)は、第1摩擦板30および第2摩擦板31が摩耗していない新品時の場合を示し、図21(b)は、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗が大幅に進行した場合を示している。
第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗量が増大すると、ピストンタッチポイントθpも小さくなる。ピストンタッチポイントθpは、摩擦係合部26を接続状態から切断状態に切り換える方向に駆動カム34を回転させる場合に、弾性付勢部材27が、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力を解除する方向に押圧され始める点である。換言すれば、ピストンタッチポイントθpは、摩擦係合部26を切断状態から接続状態に切り換える方向に駆動カム34を回転させる場合に、押圧部材58の軸方向片側の端部と、ピストン32の軸方向他側面との間のピストンクリアランスCp(図22参照)が生じ始める点である。
本例の2段変速機1は、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗にかかわらず、変速ショックを防止するための機能を備える。具体的には、本例の2段変速機1は、ピストンタッチポイントθpを検出する第1の機能と、クラッチタッチポイントθfを検出する第2の機能と、高減速比モードと低減速比モードとを切り換える際に、駆動カム34の回転量を、ピストンタッチポイントθpおよび/またはクラッチタッチポイントθfに基づいて調整する第3の機能とを備える。
図21(a)および図21(b)からも明らかなとおり、摩擦係合装置7のモード切換時、シフトモータ66の出力トルクTと、シフトモータ66の電流値Aとは、同じ傾向で変化する。本例の2段変速機1は、ピストンタッチポイントθpおよびクラッチタッチポイントθfを、摩擦係合装置7を接続モードから切断モードに切り換える際のシフトモータ66の電流値Aに基づいて検出する。
摩擦係合装置7が接続モードに切り換えられた状態では、カム装置28の転動体36は、駆動カム面48の第1底部48aに位置する。この状態では、図22に示すように、押圧部材58の軸方向片側の端部と、ピストン32の軸方向他側面との間にピストンクリアランスCpが存在している。このピストンクリアランスCpの存在に基づいて、ピストン32の軸方向他側への変位が許容されている。したがって、弾性部材33が弾性的に復元しようとする力により、ピストン32が軸方向他側に弾性的に押圧され、該ピストン32により、最も軸方向片側の第1摩擦板30または第2摩擦板31を軸方向他側に向けて押圧されることで、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合う。
摩擦係合装置7を接続モードから切断モードに切り換えるには、シフトモータ66への通電に基づき、駆動カム34を前記所定方向に回転させ、第1底部48aからの転動体36の乗り上げ量を増大させていく。このとき、シフトモータ66の電流値Aは、一時的に流れる起動電流を除き、ほぼ一定となる(図21(a)および図21(b)中の範囲α)。
第1底部48aからの転動体36の乗り上げ量を増大させることで、押圧部材58を軸方向片側に向けて移動させていくと、図23に示すように、押圧部材58の軸方向片側の端部が、ピストン32の軸方向他側面に接触する。換言すれば、ピストンクリアランスCpが0になる。
図23に示す状態から、さらにシフトモータ66により、駆動カム34を前記所定方向に回転駆動すると、被駆動カム35により、押圧部材58を介して、ピストン32が、弾性部材33の弾性復元力に抗して、軸方向片側に向けて押圧される。この状態では、弾性部材33の弾性復元力の一部が、押圧部材58およびスラスト軸受57を介して、カム装置28により支承され、かつ、残りが、摩擦係合部26と回転伝達状態切換装置8とを介して固定部分10により支承される。
ピストン32が軸方向片側に向けて押圧されていくと、主に第2摩擦板31および弾性部材33の弾性復元力に基づいて、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力が徐々に低下していく。すなわち、摩擦係合部26の締結力Fが徐々に低下していく。
摩擦係合部26の締結力Fを徐々に低下させていく間、シフトモータ66の電流値Aは、ほぼ一定の増加率(傾き)で増加していく(図21(a)および図21(b)中の範囲β)。すなわち、範囲βにおける電流値Aの増加率は、範囲αにおける電流値Aの増加率よりも大きくなっている。
本例の2段変速機1では、第1の機能により、該摩擦係合装置7を接続モードから切断モードに切り換えるべく、シフトモータ66に通電を開始した後、シフトモータ66の電流値Aが、所定の第1閾値以上の増加率で増大し始めるときの駆動カム34の回転方向に関する位相(基準位置(たとえば、転動体36が凹部の底部に位置する初期位置)からの回転角度)θを、ピストンクリアランスCpが0になるピストンタッチポイントθpとして検出する。第1閾値は、予め実験やシミュレーションなどによって求めることができる。
電流値Aの増加率は、駆動カム34の単位回転角度Δθ当たりの電流値Aの増加量ΔAである。なお、駆動カム34を一定の回転速度で前記所定方向に回転させる場合、単位時間当たりの電流値Aの増加量ΔAを判定に使用することもできる。
摩擦係合部26の締結力Fが徐々に低下していき、該締結力Fが0になると、その瞬間から、図24に示すように、ピストン32の軸方向他側の端部と、最も軸方向片側に位置する第1摩擦板30または第2摩擦板31との間にクラッチクリアランスCfが生じ始める。クラッチクリアランスCfが生じ始めると、弾性部材33の弾性復元力のほぼすべてを、押圧部材58およびスラスト軸受57を介して、カム装置28により支承することになる。
このようにクラッチクリアランスCfが生じ始めた後は、シフトモータ66の電流値Aは、緩やかに、かつ、対数的に増加する(図21(a)および図21(b)中の範囲γ)。すなわち、範囲γにおける電流値Aの増加率は、範囲βにおける電流値Aの増加率よりも小さくなっている。
本例の2段変速機1では、第2の機能により、摩擦係合装置7を接続モードから切断モードに切り換える際、駆動カム34の回転方向に関する位相がピストンタッチポイントθpを超えた後、シフトモータ66の電流値Aの増加率が、所定の第2閾値以下となったときの駆動カム34の回転方向に関する位相θを、クラッチクリアランスCfが0になるクラッチタッチポイントθfとして検出する。なお、第2閾値は、第1閾値よりも小さい。第2閾値は、予め実験やシミュレーションなどによって求めることができる。
ピストンタッチポイントθpおよびクラッチタッチポイントθfの検出は、2段変速機1を搭載した自動車の走行に支障がない限り、任意のタイミングで実施することができる。具体的には、たとえば、イグニッションキーをONした直後や、キックダウン加速中やエンジンブレーキ作動時のように、2段変速機1を低減速比モードから高減速比モードに切り換えるときなどのタイミングで実施することができる。
ただし、上記操作を車両の走行中に実施しようとした場合、駆動カム34を任意の回転速度で駆動することができないなどの問題がある。このため、ピストンタッチポイントθpおよびクラッチタッチポイントθfの検出は、イグニッションキーをONした直後などの車両停止中に実施することが好ましい。なお、ピストンタッチポイントθpおよびクラッチタッチポイントθfの検出は、該検出を実行できるタイミングで、毎回実行することができるし、前回の実行時から所定の時間を経過している場合に実行することもできる。
本例の2段変速機1は、高減速比モードと低減速比モードとを切り換える際に、減速機67を介してシフトモータ66により回転駆動する駆動カム34の回転量を、第1の機能により検出したピストンタッチポイントθpおよび/または第2の機能により検出したクラッチタッチポイントθfに基づいて調整する。具体的には、たとえば、高減速比モードから低減速比モードへの切換前後で、出力部材5の回転トルクをほぼ一定に維持する場合、S1において、駆動カム34の回転方向に関する位相の目標値として、第2の機能により検出したクラッチタッチポイントθfを使用する。
本例の2段変速機1では、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗に伴って、ピストンタッチポイントθpおよびクラッチタッチポイントθfが初期位置から変化した場合でも、修正後のピストンタッチポイントθpおよびクラッチタッチポイントθfに基づいて、変速制御を実施することができる。このため、本例の2段変速機1によれば、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗にかかわらず、変速ショックの発生を防止することができる。
本例の2段変速機1は、所定の学習開始条件が満たされていることを条件に、第1のモード(本例では、低減速比モード)と第2のモード(本例では、高減速比モード)との間でモード切換を実施し、該モード切換中のイナーシャフェーズにおいて、駆動モータ2の出力トルクと、駆動モータ2の出力軸11の角加速度とに基づいて、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間の摩擦係数を算出することで、該摩擦係数と、前記いずれか2つの要素(本例では、サンギヤ101とリングギヤ102)の回転数の差である差回転との関係であるμ-V特性を得る(μ-V特性の学習方法を実行する)機能を有する。
本例の2段変速機1は、第1のモード(本例では、低減速比モード)と第2のモード(本例では、高減速比モード)との間でモードを切り換える際に、前記学習機能により得た前記μ-V特性に基づいて、駆動モータ2の出力トルクおよび第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力の大きさを制御する(2段変速機1の変速制御方法を実行する)機能を有する。
摩擦係合部26のμ-V特性は、潤滑油の油温および第1摩擦板30と第2摩擦板31との接触部(摺動部)の表面温度などの使用環境の変化や、経年劣化などに伴って変化する。本例の2段変速機1は、所定の学習開始条件が満たされていることを条件に摩擦係合部26のμ-V特性を得る学習機能を実行し、かつ、高減速比モードと低減速比モードとを切り換える際に、学習機能により得たμ-V特性に基づいて、トルクフェーズにおける駆動モータ2の出力トルク、および、イナーシャフェーズにおける第1摩擦板30と第2摩擦板31とを互いに押し付け合う力の大きさ、すなわち摩擦係合部26の締結力Fを制御する変速制御機能を実行する。
本例の2段変速機1の学習機能では、前記いずれか2つの要素(本例では、サンギヤ101とリングギヤ102)の回転数の差である差回転として、摩擦係合部26への入力回転数と出力回転数との差分(第1摩擦板30の回転数と第2摩擦板31の回転数との差分、差回転)Vを用いる。
学習開始条件は、2段変速機1を搭載した自動車の走行に支障がなく、該2段変速機1を高減速比モードと低減速比モードとの間でモードを切り換えることができる限り、任意の条件とすることができる。たとえば、自動車の走行中であって、2段変速機1を、高減速比モードから低減速比モードに切り換えるとき、または、低減速比モードから高減速比モードに切り換えるときなどに実施することができる。
μ-V特性の学習機能は、該学習機能を実行できるタイミングで、毎回実行することができる。あるいは、前回の実行時から所定の時間を経過したこと、および/または、潤滑油の油温や第1摩擦板30と第2摩擦板31との摺接部の表面温度、外気温などが所定温度以上変化するなどの使用環境に変化があったことなどを、学習開始条件に含むこともできる。
学習機能を実行するタイミングとしては、所定の学習条件が満たされたことを前提に、高減速比モードと低減速比モードとの間でのモード切換の直前、すなわち、該学習機能の実行開始後に、該モード切換が開始されるようにする、あるいは、該モード切換の直後、すなわち、該モード切換が開始された直後に、該学習機能が実行されるようにすることができる。
具体的には、前記モード切換の前後において、出力部材5の回転トルクおよび回転数Routをほぼ一定に維持できるように、高減速比モードと低減速比モードとの間でのモード切り換えが実行される。μ-V特性の学習は、高減速比モードから低減速比モードへの切換中、および/または、低減速比モードから高減速比モードへの切換中のイナーシャフェーズにおいて行われる。以下では、高減速比モードから低減速モードへの切換中のイナーシャフェーズにおいて、μ-V特性の学習を行う場合について説明する。
高減速比モードから低減速比モードへの切り換えが開始され、駆動カム34の回転方向に関する位相θがクラッチタッチポイントθfまで移動する。その後、駆動カム34の回転方向に関する位相θが増加していくと、トルクフェーズとイナーシャフェーズとを順に経て、2段変速機1が低減速比モードに切り換えられる。
図26に示すように、トルクフェーズにおいては、差回転Vは変化せず、一定に維持されるのに対し、摩擦係合部26に伝達される(摩擦係合部26を通過する)クラッチトルクTclは増大していく。
イナーシャフェーズにおいては、クラッチトルクTclは変化せず、一定に維持されるのに対し、駆動モータ2の出力軸11の回転数Rsが減少し始める。出力軸11の回転数Rsが減少すると、入力部材4の回転数Rinが減少するため、摩擦係合部26の入力回転数Rinと出力回転数Routの差分である差回転Vが減少していく。
差回転Vが減少し始めたこと、すなわち差回転Vの単位時間当たりの変化量dV/dtが所定の閾値を超えたことを条件に、イナーシャフェーズが開始されたと判断することができる。具体的には、本例では、駆動モータ2の出力軸11に取り付けられた回転センサの出力信号に基づいて、該出力軸11の回転数Rsが所定値以上減少したと判断される場合に、イナーシャフェーズが開始されたと判定する。
イナーシャフェーズにおいては、入力部材4の回転トルクTinと、入力部材4の角加速度dωin/dtとに基づいてクラッチトルクTclを算出する。さらに、クラッチトルクTclとクラッチ荷重Fclとに基づいて、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間の摩擦係数μを算出し、該摩擦係数μと差回転Vとの関係であるμ-V特性を求める。
本例の2段変速機1では、イナーシャフェーズにおけるクラッチトルクTcl[N・m]は、次の(1)式により求めることができる。
(1)式中、αは、遊星変速機構9の減速比(=サンギヤ101の歯数/リングギヤ102の歯数)を表す。Iinは、入力部材4に接続された部分のイナーシャ(慣性モーメント)を表す。入力部材4に接続された部分とは、摩擦係合装置7のモードおよび回転伝達状態切換装置8のモードにかかわらず、入力部材4と一体的に回転する部分である。すなわち、Iinは、入力部材4とリングギヤ102と複数の第1摩擦板30とからなる結合体のイナーシャである。
Isunは、サンギヤ101に接続された部分のイナーシャを表す。サンギヤ101に接続された部分は、摩擦係合装置7のモードおよび回転伝達状態切換装置8のモードにかかわらず、サンギヤ101が回転する時には、該サンギヤ101と一体的に回転し、かつ、サンギヤ101が回転しない時には、回転しない部分である。すなわち、Isunは、回転部材6とサンギヤ101と複数の第2摩擦板31と第1部材71とからなる結合体のイナーシャである。
イナーシャフェーズにおけるクラッチトルクTclは、次の(2)によっても求めることができる。
(2)式中、Fclは、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合う力、すなわちクラッチ荷重を表す。クラッチ荷重Fclは、駆動カム34の回転方向に関する位相θとの関係で、工場出荷時、または、2段変速機1を搭載した自動車の出荷時および/もしくは点検時などに、予め実験や計算により求めておくことができる。
Rclは、摩擦係合部26の有効半径を表す。有効半径Rclは、第1摩擦板30と第2摩擦板31との摺接部の外径と内径との和の1/4とすることもできるし、第1摩擦板30と第2摩擦板31との摺接部の径方向外側部分の面積と径方向内側部分の面積とが等しくなる半径とすることもできる。
(2)式を変形すると、次の(3)式が得られる。
さらに(3)式に(1)式を代入することにより、摩擦係数μは、次の(4)式で表すことができる。
(4)式中、入力部材4の回転トルクTinは、駆動モータ2で発生するトルクの指示値(制御値)Tmotに基づいて求めることができる。すなわち、入力部材4の回転トルクTinは、次の(5)式により求めることができる。
(5)式中、βは、駆動歯車12と入力歯車13との間の減速比(=入力歯車13の歯数/駆動歯車12の歯数)を表す。
(4)式中、入力部材4の角加速度dωin/dtは、入力部材4または駆動モータ2の出力軸11に取り付けられた回転速度センサの出力信号に基づいて求めることができる。クラッチ荷重Fclは、駆動カム34の回転方向に関する位相θに基づいて、予め実験や計算により求めておいた関係から推定することができる。
以上のように、イナーシャフェーズにおいては、入力部材4の回転トルクTinと、入力部材4の角加速度dωin/dtとに基づいてクラッチトルクTclを算出することができ、さらに、クラッチトルクTclとクラッチ荷重Fclとに基づいて、第1摩擦板30と第2摩擦板31との間の摩擦係数μを算出することができる。
差回転Vは、入力部材4と出力部材5とにそれぞれ取り付けられた回転速度センサの出力信号に基づいて求めることができる。
本例の2段変速機1では、高減速比モードから低減速比モードへの切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、図42に示すようなμ-V特性を求めることができる。μ-V特性は、マップまたは式として、図示しない制御器のメモリに記憶される。
実際には、クラッチ荷重Fclも、第1摩擦板30および第2摩擦板31の摩耗や、弾性部材33およびリターンスプリング70の劣化などの影響によって経年変化する。ただし、本例の2段変速機1では、(4)式および(5)式に示すように、工場出荷時、または、2段変速機1を搭載した自動車の出荷時および/もしくは点検時などに、予め実験や計算により求めておいたクラッチ荷重Fclに基づいて、摩擦係数μを求めている。このため、クラッチ荷重Fclの経年変化による影響も含んだμ-V特性を得ることができる。
以上の説明では、高減速比モードから低減速モードへの切換中のイナーシャフェーズにおいて、μ-V特性の学習を行う場合について説明したが、μ-V特性の学習は、低減速比モードから高減速比モードへの切換中のイナーシャフェーズにおいて行うこともできる。
本例の2段変速機1の変速制御機能により、高減速比モードと低減速比モードとを切り換える際の、トルクフェーズにおける駆動モータ2の出力トルク、および、イナーシャフェーズにおける摩擦係合部26の締結力Fを、学習機能により求めたμ-V特性に基づいて制御して、出力部材5の回転トルクを制御することができる。摩擦係合部26の締結力Fを制御するため、具体的には、シフトモータ66を制御することで、駆動カム34の回転を制御する。
本例の2段変速機1は、摩擦係合部26の摩擦係数μが、使用環境の変化や経年劣化などの影響によって変化した場合でも、該影響による変動分を補正したμ-V特性に基づいて、変速制御を実施することができる。このため、本例の2段変速機1によれば、使用環境の変化や経年劣化などの摩擦係数μへの影響にかかわらず、変速ショックの発生を防止することができる。
本例の2段変速機1では、高減速比モードから低減速比モードへの切り換え途中に、減速比切換モードを経由しているため、モード切り換えに伴う変速ショックを抑えつつ、トルク損失を抑えることができる。この理由について、図27および図28を参照しつつ説明する。
図27は、比較例の2段変速機の一部を示している。比較例の2段変速機は、入力部材4と回転部材6との相対回転の可否、換言すればリングギヤ102とサンギヤ101との相対回転の可否を切り換える第1の摩擦係合装置105と、固定部分10に対する回転部材6の回転の可否、換言すればサンギヤ101の回転の可否を切り換える第2の摩擦係合装置106とを備える。すなわち、比較例の2段変速機は、本例の2段変速機の回転伝達状態切換装置8に代えて、第1摩擦板30と第2摩擦板31とを押し付けたり離隔させたりすることでモードを切り換える、第2の摩擦係合装置106を採用している。
比較例では、電動アクチュエータによりカム装置28zの駆動カム34zを回転駆動し、第1の被駆動カム107と第2の被駆動カム108とを軸方向に変位させることに基づいて、第1の摩擦係合装置105のモードと第2の摩擦係合装置106のモードとを切り換える。第1の被駆動カム107と第2の被駆動カム108とは、駆動カム34zの回転に伴って互いに異なる位相で変位する(軸方向に関して互いに反対方向に変位(進退)する)。
比較例の2段変速機において、減速比が大きい高減速比モードから減速比が小さい低減速比モードへの切換中は、図28に示すように、第1の摩擦係合装置105の締結力が徐々に大きくなり、かつ、第2の摩擦係合装置106の締結力が徐々に小さくなる。このため、高減速比モードから低減速比モードへの切換中に、第2の摩擦係合装置106の締結力が徐々に小さくなって十分ではなくなると、サンギヤ101がプラネタリギヤ104の公転に引き摺られ、回転部材6と固定部分10との間でトルクの損失が発生する。
比較例の2段変速機においても、第1の摩擦係合装置105の締結力が徐々に大きくなることに伴い、サンギヤ101に前記所定方向と反対方向に加わるトルクが徐々に減少して0となった後、サンギヤ101に加わるトルクの向きが逆転する。しかしながら、比較例の2段変速機では、サンギヤ101に加わるトルクの向きが逆転し、プラネタリギヤ104の公転方向とサンギヤ101の回転方向とが一致した瞬間には、第2の摩擦係合装置106の締結力は十分に大きくすることができない。このため、サンギヤ101は、固定部分10に対して引き摺られ、サンギヤ101と固定部分10との間でトルクの損失が発生する。
本例の2段変速機1では、駆動カム34の回転に基づいて、高減速比モードから低減速比モードに切り換えるべく、摩擦係合装置7を切断モードから接続モードへと切り換え始めるよりも前に、回転伝達状態切換装置8をワンウェイクラッチモードとしている。このため、摩擦係合装置7を切断モードから接続モードへ切り換えるべく、摩擦係合部26の締結力Fを徐々に大きくし、サンギヤ101に加わるトルクの方向が逆転した瞬間に、サンギヤ101の前記所定方向への回転を許容できるようにしている。このため、モード切り換えに伴う変速ショックを抑えつつ、2段変速機1におけるトルク損失を抑えることができる。
減速比切換モードにおける、入力部材4と出力部材5との間の減速比は、摩擦係合部26の締結力Fが、第1摩擦板30の軸方向両側面と第2摩擦板31の軸方向両側面との当接部においてトルクの損失が生じない程度に小さい状態では、高減速比モードにおける減速比と同じである。一方、摩擦係合部26の締結力Fが、第1摩擦板30の軸方向両側面と第2摩擦板31の軸方向両側面との当接部で滑りを生じることなくトルクを伝達できる程度の大きさまで増大した状態では、低減速比モードにおける減速比と同じ、すなわち1である。
摩擦係合部26の締結力Fが、第1摩擦板30の軸方向両側面と第2摩擦板31の軸方向両側面との当接部において滑りを生じる程度の状態では、入力部材4と出力部材5との間の減速比は、入力トルクの大きさや回転速度などに応じた値となる。
入力部材4が正転方向に回転している状態であって、高減速比モードから減速比切換モードへの切換中においては、回転伝達状態切換装置8の第2部材72には、前記所定方向と反対方向にトルクが加わる。ここで、回転伝達状態切換装置8においては、第2部材72の前記所定方向と反対方向への回転は、ロックモードからワンウェイクラッチモードへの切り換え途中においても阻止される。すなわち、高減速比モードから減速比切換モードへの切換中における、入力部材4と出力部材5との間の減速比は、高減速比モードにおける減速比と同じである。
入力部材4が正転方向に回転している場合であって、減速比切換モードから低減速比モードへの切換中においては、回転伝達状態切換装置8の第2部材72には、前記所定方向にトルクが加わる。ここで、回転伝達状態切換装置8においては、第2部材72の前記所定方向への回転は、ワンウェイクラッチモードからフリーモードへの切り換え途中においても許容される。
入力部材4が逆転方向に回転する場合、すなわち本例の2段変速機1を搭載した自動車の後退時に、車両が高速で走行することはほとんどない。このため、入力部材4が逆転方向に回転している場合に、高減速比モードから低減速比モードへの切換時に、正転方向への回転時のように、摩擦係合装置7をワンウェイクラッチモードにすることで、サンギヤ101に加わるトルクの方向が逆転した瞬間に、該サンギヤ101の回転を許容する減速比切換モードに切り換える必要性は乏しい。
入力部材4が正転方向に回転する場合であっても、低減速比モードから高減速比モードへの切換時は、主に車両は減速状態にある。この場合、入力部材4から出力部材5への動力の伝達は行われないため、2段変速機1を減速比切換モードに切り換える必要性は乏しい。
本例の2段変速機1によれば、トルクの伝達効率を良好に確保することができる。この理由について、次に説明する。
カム装置28が押圧力を発生した状態、すなわち被駆動カム35により、スラスト軸受57と押圧部材58とを介して、ピストン32を軸方向片側に向けて押圧した状態(図2(b)に示す状態)では、スラスト軸受57に軸方向片側を向いた力が加わる。また、被駆動カム35によりピストン32を軸方向片側に向けて押圧することに伴う反力が、転動体36と駆動カム34とを介して、ラジアル軸受38に軸方向他側に向けて加わる。
スラスト軸受57を構成する軸方向片側の軌道輪59aは、押圧部材58とピストン32とを介して回転部材6に支持され、かつ、軸方向他側の軌道輪59bは、カム装置28とアンギュラ玉軸受39と筒状部材37とを介して固定部分10に支持されている。また、ラジアル軸受38を構成する内輪42は、回転部材6に外嵌固定され、かつ、外輪43は、筒状部材37とアンギュラ玉軸受39とを介して、カム装置28の駆動カム34に支持されている。
本例の2段変速機1では、カム装置28が押圧力を発生した状態、すなわちピストン32が軸方向片側に向けて押圧され、弾性部材33の軸方向寸法が弾性的に縮まり、第1摩擦板30と第2摩擦板31とが互いに押し付け合う力を解除されて摩擦係合装置7が切断された状態においては、回転伝達状態切換装置8がロックモードになる。摩擦係合装置7が切断され、かつ、回転伝達状態切換装置8がロックモードに切り換わった高減速比モードでは、固定部分10に対する回転部材6の相対回転が阻止される。
この状態では、スラスト軸受57を構成する軸方向片側の軌道輪59aと軸方向他側の軌道輪59bとは相対回転せず、かつ、ラジアル軸受38を構成する内輪42と外輪43とは相対回転しない。要するに、スラスト軸受57およびラジアル軸受38に軸方向(図2(b)の左右方向)の力が加わり、転がり抵抗が大きくなった状態では、スラスト軸受57を構成する軸方向片側の軌道輪59aと軸方向他側の軌道輪59bとは相対回転せず、かつ、ラジアル軸受38を構成する内輪42と外輪43とは相対回転しない。このため、スラスト軸受57およびラジアル軸受38でのトルク損失の発生を防止することができる。
カム装置28が発生した押圧力は、被駆動カム35から、押圧部材58およびスラスト軸受57とピストン32と弾性部材33とを介して、回転部材6に軸方向片側向きに加わる。これに対して、カム装置28が押圧力を発生することに伴う反力は、駆動カム34から、ラジアル軸受38を介して、回転部材6に軸方向他側向きに加わる。このように、カム装置28が押圧力を発生することに伴う軸方向の力は、回転部材6内で打ち消し合う(相殺される)。
回転伝達状態切換装置8がフリーモードに切り換わり、固定部分10に対する回転部材6の相対回転が許容された状態(図2(a)に示す状態)においては、摩擦係合装置7は接続されており、カム装置28は押圧力を発生していない。この状態では、スラスト軸受57およびラジアル軸受38に、カム装置28が押圧力を発生することに伴う軸方向(図2(a)の左右方向)の力が加わっていないため、スラスト軸受57およびラジアル軸受38の転がり抵抗が徒に大きくなることはなく、トルク損失が過度に大きくなることもない。
本例の2段変速機1では、モード切換中の短い時間を除き、カム装置28が押圧力を発生することに伴う軸方向の力が加わり、転がり抵抗が大きくなった状態で、スラスト軸受57およびラジアル軸受38が回転することはない。したがって、スラスト軸受57およびラジアル軸受38での過大なトルク損失の発生を防止することができて、2段変速機1のトルクの伝達効率を良好に確保することができる。
ただし、本開示の2段変速機は、ワンウェイクラッチモードを有しない、すなわちフリーモードおよびロックモードのみを有する回転伝達状態切換装置を備える構造に適用することもできる。このような変形例では、高減速比モードから低減速比モードに切り換える際、図29に示すように、回転伝達状態切換装置をロックモードからフリーモードに切り換えた後で、摩擦係合装置を切断モードから接続モードに切り換える。
[第2例]
図30は、本開示の実施の形態の第2例を示している。本例の2段変速機1aは、第1例の2段変速機1から、摩擦係合装置7aの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7aは、サンギヤ101とキャリア103との間に配置されている。
本例の2段変速機1aでは、回転伝達状態切換装置8をフリーモードとし、かつ、摩擦係合装置7aを接続モードとすることで、2段変速機1aを第1のモードに切り換えると、遊星変速機構9は、全体が一体となって回転する、のり付け状態となる。すなわち、入力部材4に入力されたトルクは、増大されずに、そのまま出力部材5に伝達される。
これに対して、回転伝達状態切換装置8をロックモードとし、かつ、摩擦係合装置7aを切断モードとすることで、2段変速機1aを第2のモードに切り換えると、入力部材4に入力されたトルクは、遊星変速機構9で増大されてから出力部材5に伝達される。具体的には、入力部材4の回転トルクは、入力部材4、リングギヤ102、プラネタリギヤ104の自転運動、サンギヤ101との噛合に基づくプラネタリギヤ104の公転運動、キャリア103、および出力部材5の順に伝達されて、出力部材5から取り出される。
本例では、第1のモードが、入力部材4と出力部材5との間の減速比が小さい低減速比モードに相当し、かつ、第2のモードが、低減速比モードに比べて減速比が大きい高減速比モードに相当する。
本例の2段変速機1aにおいても、高減速比モードと低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1aでは、摩擦係数μは、次の(6)式により求めることができる。
本例の2段変速機1aも、高減速比モードと低減速比モードとを切り換える際、トルクフェーズにおける駆動モータ2の出力トルク、および、イナーシャフェーズにおける摩擦係合部26の締結力Fを、学習機能により求めたμ-V特性に基づいて制御することができ、使用環境の変化や経年劣化などの摩擦係数μへの影響にかかわらず、変速ショックの発生を防止することができる。第2例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第3例]
図31は、本開示の実施の形態の第3例を示している。本例の2段変速機1bも、第1例の2段変速機1および第2例の2段変速機1aから、摩擦係合装置7bの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7bは、リングギヤ102とキャリア103との間に配置されている。
本例の2段変速機1bを第1のモードに切り換えると、遊星変速機構9は、のり付け状態となり、入力部材4に入力されたトルクは、増大されずに、そのまま出力部材5に伝達される。これに対して、2段変速機1bを第2のモードに切り換えると、入力部材4に入力されたトルクは、遊星変速機構9で増大されてから出力部材5bに伝達される。
本例の2段変速機1bにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1bでは、摩擦係数μは、次の(7)式により求めることができる。
第3例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第2例と同様である。
[第4例]
図32は、本開示の実施の形態の第4例を示している。本例の2段変速機1cでは、入力部材4aが、遊星変速機構9のサンギヤ101にトルク伝達を可能に接続され、かつ、出力部材5aが、キャリア103にトルク伝達を可能に接続されている。摩擦係合装置7cは、サンギヤ101とキャリア103との間に配置され、かつ、回転伝達状態切換装置8aは、固定部分10とリングギヤ102との間に配置されている。
本例の2段変速機1cを、回転伝達状態切換装置8をフリーモードとし、かつ、摩擦係合装置7cを接続モードとすることで、2段変速機1cを第1のモードに切り換えると、遊星変速機構9は、のり付け状態となる。すなわち、入力部材4aに入力されたトルクは、そのまま出力部材5aに伝達される。
回転伝達状態切換装置8aをロックモードとし、かつ、摩擦係合装置7cを切断モードとすることで、2段変速機1cを第2のモードに切り換えると、入力部材4aに入力されたトルクは、遊星変速機構9で増大されてから出力部材5aに伝達される。具体的には、入力部材4aの回転トルクは、入力部材4a、サンギヤ101、プラネタリギヤ104の自転運動、リングギヤ102との噛合に基づくプラネタリギヤ104の公転運動、キャリア103、および出力部材5aの順に伝達されて、出力部材5aから取り出される。
本例の2段変速機1cにおいても、第2のモードである高減速比モードから第1のモードである低減速比モードへの切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1cでは、摩擦係数μは、次の(8)式により求めることができる。
(8)式中のIringは、リングギヤ102に接続された部分のイナーシャを表す。リングギヤ102に接続された部分は、摩擦係合装置7cのモードおよび回転伝達状態切換装置8aのモードにかかわらず、リングギヤ102が回転する時には、該リングギヤ102と一体的に回転し、かつ、リングギヤ102が回転しない時には、回転しない部分である。第4例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第5例]
図33は、本開示の実施の形態の第5例を示している。本例の2段変速機1dは、第4例の2段変速機1cから、摩擦係合装置7dの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7dは、リングギヤ102とキャリア103との間に配置されている。
本例の2段変速機1dにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1dでは、摩擦係数μは、次の(9)式により求めることができる。
第5例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第4例と同様である。
[第6例]
図34は、本開示の実施の形態の第6例を示している。本例の2段変速機1eでは、第4例の2段変速機1cおよび第5例の2段変速機1dから、摩擦係合装置7eの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7eは、サンギヤ101とリングギヤ102との間に配置されている。
本例の2段変速機1eにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1eでは、摩擦係数μは、次の(10)式により求めることができる。
第6例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第4例と同様である。
[第7例]
図35は、本開示の実施の形態の第7例を示している。本例の2段変速機1fにおいては、遊星変速機構9aは、ダブルピニオン式の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、遊星変速機構9aは、サンギヤ101aに噛合させた内径側の複数個のプラネタリギヤ104aと、リングギヤ102aに噛合させた外径側の複数個のプラネタリギヤ104bとを備え、内径側のプラネタリギヤ104aと外径側のプラネタリギヤ104bとを互いに噛合させ、かつ、キャリア103aに回転可能に支持してなる。
本例では、入力部材4bは、キャリア103aにトルク伝達可能に接続され、かつ、出力部材5bは、リングギヤ102aにトルク伝達可能に接続されている。摩擦係合装置7fは、サンギヤ101aとキャリア103aとの間に配置され、かつ、回転伝達状態切換装置8bは、固定部分10とサンギヤ101aとの間に配置されている。
本例の2段変速機1fを、回転伝達状態切換装置8bをフリーモードとし、かつ、摩擦係合装置7fを接続モードとすることで、2段変速機1fを第1のモードに切り換えると、遊星変速機構9aは、のり付け状態となる。すなわち、入力部材4bに入力されたトルクは、そのまま出力部材5bに伝達される。
回転伝達状態切換装置8bをロックモードとし、かつ、摩擦係合装置7fを切断モードとすることで、2段変速機1fを第2のモードに切り換えると、入力部材4bに入力されたトルクは、遊星変速機構9aで増大されてから出力部材5bに伝達される。具体的には、入力部材4bの回転トルクは、入力部材4b、キャリア103a、プラネタリギヤ104a、104bの公転運動、サンギヤ101aとの噛合に基づく内径側のプラネタリギヤ104aの自転運動、外径側のプラネタリギヤ104bの自転運動、リングギヤ102a、および出力部材5bの順に伝達されて、出力部材5bから取り出される。
本例の2段変速機1fにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1fでは、摩擦係数μは、次の(11)式により求めることができる。
第7例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第8例]
図36は、本開示の実施の形態の第8例を示している。本例の2段変速機1gは、第7例の2段変速機1fから、摩擦係合装置7gの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7gは、リングギヤ102aとキャリア103aとの間に配置されている。
本例の2段変速機1gにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1gでは、摩擦係数μは、次の(12)式により求めることができる。
第8例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第7例と同様である。
[第9例]
図37は、本開示の実施の形態の第9例を示している。本例の2段変速機1hは、第7例の2段変速機1fおよび第8例の2段変速機1gから、摩擦係合装置7hの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7hは、サンギヤ101aとリングギヤ102aとの間に配置されている。
本例の2段変速機1hにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1hでは、摩擦係数μは、次の(13)式により求めることができる。
第9例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第7例と同様である。
[第10例]
図38は、本開示の実施の形態の第10例を示している。本例の2段変速機1iでは、入力部材4cが、遊星変速機構9aのサンギヤ101aにトルク伝達を可能に接続され、かつ、出力部材5cが、リングギヤ102aにトルク伝達を可能に接続されている。摩擦係合装置7iは、サンギヤ101aとキャリア103aとの間に配置され、かつ、回転伝達状態切換装置8cは、固定部分10とキャリア103aとの間に配置されている。
本例の2段変速機1iを、回転伝達状態切換装置8cをフリーモードとし、かつ、摩擦係合装置7iを接続モードとすることで、2段変速機1iを第1のモードに切り換えると、遊星変速機構9aは、のり付け状態となる。すなわち、入力部材4cに入力されたトルクは、そのまま出力部材5cに伝達される。
これに対して、回転伝達状態切換装置8cをロックモードとし、かつ、摩擦係合装置7iを切断モードとすることで、2段変速機1iを第2のモードに切り換えると、入力部材4cに入力されたトルクは、遊星変速機構9aで増大されてから出力部材5cに伝達される。具体的には、入力部材4cの回転トルクは、入力部材4c、サンギヤ101a、内径側のプラネタリギヤ104aの自転運動、外径側のプラネタリギヤ104bの自転運動、リングギヤ102a、および出力部材5cの順に伝達されて、出力部材5cから取り出される。
本例の2段変速機1iにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1iでは、摩擦係数μは、次の(14)式により求めることができる。
(14)式中のIcarrierは、キャリア103aに接続された部分のイナーシャを表す。キャリア103aに接続された部分は、摩擦係合装置7iのモードおよび回転伝達状態切換装置8cのモードにかかわらず、キャリア103aが回転する時には、該キャリア103aと一体的に回転し、かつ、キャリア103aが回転しない時には、回転しない部分である。第10例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第7例と同様である。
[第11例]
図39は、本開示の実施の形態の第11例を示している。本例の2段変速機1jは、第10例の2段変速機1iから、摩擦係合装置7jの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7jは、リングギヤ102aとキャリア103aとの間に配置されている。
本例の2段変速機1jにおいても、第2のモードである高減速比モードと、第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1jでは、摩擦係数μは、次の(15)式により求めることができる。
第11例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第10例と同様である。
[第12例]
図40は、本開示の実施の形態の第12例を示している。本例の2段変速機1kは、第10例の2段変速機1iおよび第11例の2段変速機1jから、摩擦係合装置7kの配置のみ変更している。具体的には、本例では、摩擦係合装置7kは、サンギヤ101aとリングギヤ102aとの間に配置されている。
本例の2段変速機1kにおいても、第2のモードである高減速比モードと第1のモードである低減速比モードとの間でのモード切換中のイナーシャフェーズにおいて、所定の時間間隔ごとに、摩擦係数μと差回転Vとを求めることで、μ-V特性を求めることができる。本例の2段変速機1kでは、摩擦係数μは、次の(16)式により求めることができる。
第12例のその他の部分の構成および作用効果は、第1例および第10例と同様である。