本発明は、空中に浮揚して飛行する輸送体の分野に関し、より具体的には、垂直離着陸並びに静止飛行能力を有する電動航空機に関する。
(概説)
本開示のいくつかの実施形態の広範な態様は、航空機の少なくとも1つの翼の方向に対して固定された斜角で配向した、複数の動力付きプロペラを備える、無人又は有人の、有翼の空中輸送体(航空機)に関する。本明細書では、この構成の特徴は「固定された翼-ロータ間斜角」と称し、その更なる詳細及び定義を以下に述べる。例として、プロペラに対する翼の「斜角」は、5°~45°の間の範囲、10°~35°の間の範囲、15°~30°の間の範囲、20°~25°の間の範囲から任意に選択される。
いくつかの実施形態において、航空機は、垂直離陸、斜め離陸(本明細書では、後で定義するように垂直離陸の一種とみなす)、及び短距離離陸用の少なくとも一つに構成される。いくつかの実施形態では、航空機は垂直着陸及び短距離着陸用の少なくとも一つに構成される。
航空機の垂直離陸及び/又は着陸のあり得る利点としては、航空機に使用するための土地空間の必要量の削減、離着陸に必要な専用化空間の削減(例えば、駐車場を着陸場としても使用できる)、離着陸の安全性の向上(例えば、地面近くでの速度がより小さい)などがある。固定翼(非回転翼)航空機のあり得る利点としては、空気のみを通しての前進運動からの効率的かつ信頼性の高い揚力の生成がある。
航空機の設計は、垂直離着陸機(VTOL)機能を固定(非回転)翼飛行支援に組み合わせることを追求してきた。「固定翼」という用語は、当技術分野においては、例えばヘリコプタ、マルチコプタ、又はオートジャイロのロータとは反対に、「揚力生成のために中心で回転しない翼」のことを意味するように使用されることに留意されたく、これが、本明細書で使用するこの用語の意味である。「固定」という用語の他の用法に関する意味は、後で説明する。
VTOLと固定翼を組み合わせようとする努力に関連し、それによって対処される、考えられる問題がいくつかある。広義においては、これらの問題は、垂直/水平飛行遷移の信頼性、追加される機械的複雑さ、追加される自重、非回転翼の航空機を用いて垂直飛行と前進飛行の両方のハイブリッドを実現するために必要なエンジニアリング上の妥協に根差すその他の不利益、を含んでいた。
いくつかの設計では、単純に垂直方向及び水平方向に別々の推進器を(自重が増えることを容認して)提供した。これに対して、固定翼VTOL航空機の垂直推力機能が前進飛行時に「無駄になる」ことを潜在的に回避するために、動的、及び静的遷移の解決策が提案され、実装された。動的実装では、例えばロータのマウントを回転可能とすること、及び調整板(バッフル)の使用の少なくとも一方によって、航空機の機体そのものに対して推力を再配向可能とする。ただし、動的解決策は特に機械的な複雑さの増加が絡み、また、飛行遷移時の潜在的な安全問題も関係する。これらの問題に対処することは、さらには、関連する潜在的な制御の複雑さと費用の増加を伴う。
テールシッターなどの静的遷移策もまた提案及び実装され、これは実質的に航空機全体が、垂直配向状態から水平配向状態へ90°遷移する。全体を通して同じ推進器が使用され、最初は垂直配向して離陸のための揚力を提供し、次いで次第に傾斜して水平速度を加え、十分な揚力が達成されて航空機の巡航方向への90°遷移が完了するまで傾斜が増加される。逆の遷移をして着陸を可能とするが、目標着陸ゾーンを外すことなく航空機の前進速度をキャンセルするという安全上の複雑さが追加される。
新技術が使用可能になると、以前は使用できなかったか、気づかなかった解決策が、潜在的に実行可能になり得る。例えば、小型ながらも強力な電気モータの増加、それを補完する蓄電能力の増加、及び安価で高性能な制御電子回路の出現により、複数の、プロペラに連結された電気モータ(本明細書では「ロータ」)によって駆動される多種の航空機が開発され、開発中であり、または開発が期待されている。本明細書においては、この努力分野全般を「マルチロータ技術」と称する。
固定翼が発生する揚力も(例えば、上記の設計手法によれば)マルチロータ技術と共に利用可能であるという何らかの認識があった。
驚くべきことに、本発明者らは、固定された翼-ロータ間斜角を有する固定(非回転)翼は、任意選択的に本明細書で説明する他の設計特徴と結合させることで、前進飛行(巡航)、離陸、及び着陸の少なくとも一つの段階に関して(マルチロータ技術と結合させる場合に特に、ただし排他的ではない)潜在的な利点を提供することに気づいた。具体的には、荷物及び乗客の少なくとも一方を搬送できるに十分なサイズの航空機、例えば非積載時質量が50kg以上、及び積載質量が120kg以上の少なくとも一方、任意選択的に複数の乗客、例えば2、3、4、6、8、10人又はそれ以上の乗客を搬送可能なサイズを含む航空機に、この潜在的な利点が出てくる。特に、これらのサイズ範囲又はそれ以上の航空機に関しては、安全性、堅牢性、簡単さ、信頼性、航続距離、効率、余力、及び/又は制御への応答性に関する事項が非常に重要であり、例えば、基本的な機能性ばかりでなく、規制当局の認可及び市場の受け入れの少なくとも一方などにも関係する。
航空機の前進飛行モードにおいて、いくつかの実施形態では、駆動プロペラから発生する揚力は、前方と上方の両方向を向いているが、翼で生成される揚力は重力の引力の方向に対して平行かつ逆方向である。この動作モードは、翼で生成される揚力が、その重量と抗力による飛行負荷への寄与よりも飛行支援への寄与が大きいように構成されている限り、揚力発生に駆動プロペラのみを使用するよりもエネルギー効率に関して潜在的な利点を提供する。翼は(少なくとも標準の動作においては)機体の全重量を担ってはいないので、すべてを翼で支持する設計の場合に比べて任意選択的により軽く、より薄く、及び/又はより小さく設計することが可能であり、飛行支援への翼の正味の寄与を潜在的に増加させることができる。固定翼の揚力が飛行支援に寄与するだけの前進速度に達して、ロータがオプションとして低推力状態で動作する限りは、ロータの動作及び設計の少なくとも一方にもまた潜在的な利点がある。持続的なロータの推力出力への要件が下がるので、任意選択的に、ロータ構成部品(例えば電気モータ及びプロペラの少なくとも一方)の、重量、パワー、及び速度の少なくとも一つを低減させることができる。
いくつかの実施形態では、航空機はマルチロータ設計で構成され、航空機の制御(安定化及び操縦)は、航空機のロータへの差動推力を適用することにより行われる。飛行制御ソフトウェアにより、前進飛行中のヨー、ロール、及びピッチの少なくとも一つに関する飛行面安定化への必要性を軽減又は排除可能である。軽減された動翼は潜在的に効率を向上させる。逆に、飛行制御ソフトウェアは任意選択的に、より高速において1つ以上の軸の安定化制御の実行を削減(任意選択的には完全に停止)するように構成されている。それは航空機の空力特性そのもので実行されるからである。例えば、後方設置の垂直スタビライザを備える航空機は、十分に高い前進速度においては、潜在的にヨーイングから保護される。瞬間的なヨーイングは、スタビライザの垂直面を空気流に押し返される方向に向けようとし、その空気流によって前方を向いたヨー方向が回復される。同様に、空気力学的なピッチ角は任意選択的に、主翼と水平スタビライザ(あるいは複数の翼からなる他の構成)との間の力の均衡によって確立される。これにより航空機のピッチが十分に狭い範囲に保持される傾向があるので、飛行ソフトウェアは前進飛行中のピッチ制御の行使を放棄することができる。1つ以上の軸における安定性制御の軽減及び排除(すなわち飛行ソフトウェア制御の行使を軽減及排除)を起動することは、測定された前進速度によって自動的に行われてもよいし、手動であってもよい。
固定翼は、任意選択的に、それ自体が操縦翼面を含まない。このことは設計の簡単さ及び重量の少なくとも一方にとって潜在的な利点を持つ。或いは、例えば、1つ以上のロータのモータへの電力が失われた場合の緊急制御、及び操縦性の付加の少なくとも一方のために、固定翼は操縦翼面を含む。
ただし、潜在的な利益は前進飛行特性への効果に限らず、固定された翼-ロータ間の斜角構成が異なれば、異なる潜在的な利点を有する。
本発明者らは、いくつかの潜在的な短距離飛行の航空機用途では、前進飛行とホバリングについて同様のエネルギー収支要件バランスとなる(例えば、互いに約1~2倍以内のエネルギー収支要件である)ことに気づいた。比較的長距離で高効率な前進飛行は、特にホバリング飛行にエネルギー収支の安全マージン部分を割り当てる場合に、比較的短距離であるが低効率のホバリング飛行によりバランスされる。この割り当ては所定の2地点間の飛行に対しては合理的な選択である。それは、着陸地点に阻害条件があって、それを回避及び/又はなくなるまで待機するために、ロイター飛行及びホバリング操縦の少なくとも一方を必要とするために、安全マージンの必要性が生じる可能性があるからである。従って、例えば30分の前進飛行能力には、(安全マージンを含めて)約4分のホバリング能力が仮定されて与えられる場合がある。いくつかの実施形態において、ホバリング飛行は(例えば、空気力学的な揚力の利点がないために)前進飛行の約5倍の電力を使用するので、その結果、前進飛行とホバリング飛行のエネルギー収支の公称バランスは約3:2の比となる。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、翼-ロータ間斜角を有して装備された航空機の前進飛行に関し、ロータは、その推力の気流が、前進飛行中に翼が受ける空気流とは異なる方向に向かうように、翼に対して取り付けられている。いくつかの実施形態では、翼-ロータ間斜角は固定されている。
いくつかの実施形態では、ロータは翼長内に(例えば、翼の先端よりも胴体に近くに)取り付けられる。いくつかの実施形態では、取付け構成は、少なくとも1つのロータがその中心を翼の下方かつ前方にして取り付けられ、かつ少なくとも1つのロータがその中心を翼の上方かつ後方にして取り付けられる。この構成においては、任意選択的に、ロータはほぼ平面構成をとって取り付けられ、翼の配向に対して(ピッチ軸を中心に)傾斜している。
本開示のいくつかの実施形態では、前進の巡航飛行中(例えば約55km/hより速い速度において)は翼とプロペラの両方が揚力を生成し、例えば、翼が揚力の少なくとも10%、揚力の25%、揚力の30%、揚力の50%、「揚力の大部分」(揚力の50%超)、あるいは揚力の70%を生成し、プロペラが、少なくとも10%の揚力を含む残りの揚力を提供する。これらの例から、翼により生成される揚力が前進飛行の全揚力の内の比較的大きな部分(例えば揚力の大部分)であることが潜在的な利点であり、翼の揚力を使用することが任意選択的に、空中に留まるためにロータ推力の垂直方向成分を使用する必要を低減し、前進飛行に必要とされる垂直方向推力と水平方向推力の合計は一般的に、水平方向に静止したホバリング飛行に必要な垂直方向推力よりも小さい。
ロータと翼の両方が揚力の生成に使用されている限り、互いの揚力生成機能への干渉を回避するようにそれらを配置すること、及び構成することが潜在的な利点である。プロペラと翼はいずれも、(少なくとも最初に当たる時に)空気の層流内で動作するように意図されており、乱気流が発生するときは、航空機の性能に重要な振動及び効率の低下をもたらす傾向がある。プロペラからの初期気流(wash)は乱気流であり、推力と同一方向を向いている。翼はまた、その後流に乱流を残す。したがって、翼とプロペラの両方を動作させる場合、それらの「出力」(後流/気流)を互いの他方の「入力」(前縁/吸気)から離すことにより潜在的な利益を得る。本明細書に提供される説明の目的に関して、ロータに中心を持つ直円柱、すなわちロータ(あるいは他のタイプのモータアセンブリ)により生成される推力の軸に一致する中心長手軸を有し、ロータのプロペラ、タービンブレード、ジェットの流出開口、又はその他の主たる気流生成要素/気流成形要素の半径に等しい半径を有する直円柱と交差しない限り、翼は、ロータの推力との干渉を回避すると言われている。翼が、この円柱の外で、モータアセンブリにより誘起された空気の乱れと交差する場合、少なくとも本説明の目的に関しては、モータアセンブリ推力そのものとのそのような干渉はないものと考えられる。
ロータ中心の左右方向の位置(すなわち、航空機中心からのピッチ軸に沿った距離)は、任意選択的に、航空機の中心位置から、航空機の翼長の外側までの範囲である。航空機の中心にないロータは、バランスを維持し、飛行応力を等価にするために、対応する1対(各側に1つづつ)として提供されることが好ましい。潜在的に、マルチロータ航空機(例えば6以上のロータを有するマルチコプタ)は、1つ以上のロータが動作不能であるか欠損したとしても、(任意選択的に制御への適切な調整をすることで)安全に飛行を継続する。
翼長内にモータを取り付ける特別の利点は、取り付け物への応力の低減である。取り付け部材は任意選択的により短くなり、例えば、それを航空機の残りの部分に取り付ける接合部に掛かるてこ力が小さくなる。モータを翼の先端又は先端付近に取り付けることを避けることは(別の例として)、翼自体をより軽量に構築することを潜在的に可能とし、結果として潜在的に自重の軽減にもなる。飛行の安定性は、ロータを相互に離間して取り付けることにより潜在的に向上が、このことはまた、取付け部へのてこ応力を増加させる傾向となる。モータを胴体の前部と後部に取り付けることにより、いくつかの実施形態の取り付け部材は、胴体そのものの剛性を利用して、さらに短く維持される。
さらに、翼とロータがその配置に関して相互に独立である限り、ロータの気流内に延在する心配、又はロータそのものを支えるため及びロータの推力を航空機へ伝達するための少なくとも一方の強化を心配することなしに、翼は揚力を提供するその機能に適するように長く及び/又は薄く設計することが可能である。
モータを翼の前方と後方の両方に取り付ける概念は、重心がロータの間(重力の引力に直交する平面内の間を含む)に支えられた状態で、(少なくともいくつかの飛行条件において)航空機が翼のないマルチロータ航空機の飛行特性で動作することを可能とする。同じ構成においては、翼は(少なくとも高速の前進飛行で)その揚力を重心又はその近くに働かせることも可能である。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、固定された翼-ロータ間斜角を装備する航空機の離陸及び着陸の少なくとも一方の方式に関する。固定された翼-ロータ間斜角は、例えば適切に構成された着陸装置の提供により支援される、そのような方式の範囲に関する潜在的な利点を特に提供する。
航空機の垂直離陸モードでは、いくつかの実施形態において、プロペラは(例えば航空機全体のピッチ軸回転によって)重力の引力に平行かつ反対向きの揚力を働かせるような方向に向けられる(付随的に、翼の方向を固定された斜角に従って、その水平前進飛行時の方向から傾斜させる)。このモードは、地上走行なしで離陸又は着陸することを含めて、ホバリングモードで航空機を上昇または下降させるのに使用することができる。垂直離陸は、地上走行なしであるか、又は固定翼による揚力生成なしであるか、又はその両方である。任意選択的に、垂直離陸に先行して、航空機の一方の側を地面に接触させたまま他方の側を持ち上げることによって最初傾斜していたプロペラを、水平にする操縦が行われる。
航空機の斜め離陸モードにおいては、地面に対して斜めの方向に(地上走行なし、又は事前に固定翼による顕著な揚力なし、又はその両方で)航空機が発進する。任意選択的に、プロペラはもともと地面に対して斜めの角度に向いて(「傾斜して」)おり、斜め離陸の方向はプロペラの方向に垂直である。任意選択的に、翼は斜め離陸の間に、水平前進飛行のための方向にピッチ角傾斜される。ただし、斜め離陸においては、翼の他のピッチ傾斜、前方に傾斜(航空機の機首がさらに下向きにピッチ)又は後方に傾斜(航空機の機首がさらに上向きにピッチ)等を除外するような制限はない。
斜め離陸の間、傾斜したプロペラは、前進推力と揚力推力の両方を生成する。離陸に十分な推力への遷移は十分に早く、結果的に前進推力が地上の前進走行をもたらさないか、又は離陸時の速度ではまだ弱い前進加速度でしかないかのいずれかであり、航空機に作用する揚力への翼の寄与は10%未満である。前進走行がもし起きれば、それは推力の立ち上がり期間中に地面の摩擦が克服された、偶発的な移動であり得る。任意選択的に、斜め離陸における前方移動は、航空機の長さ未満の距離の範囲である。
斜め離陸の後、任意選択的に航空機は空中で垂直推力(水平プロペラ)モードへ再配向され、最初の離陸中に発生した前進速度をキャンセルしても、しなくてもよい。航空機の発進の他のモードに対して垂直離陸を区別する特徴が、前進運動において固定翼による揚力発生に依存しない、ということである限り、斜め離陸は垂直離陸の分類に属するものと考えることができる(本明細書では概ねそのように扱う)。従って、記述が特に地上静止ホバリングに関係する場合を除き、「垂直離陸」には、本明細書の斜め離陸が含まれる。
着陸は離陸時の配向の逆の段階を踏む。ただし地上速度を減少またはキャンセルする操縦が入る場合がある。着陸前に完全にキャンセルされない場合には、「斜め」着陸となり、航空機は地上において少なくとも部分的に減速する。本明細書における「垂直着陸」には、たとえ着地時にゼロでない地上速度があるとしても、顕著な固定翼揚力が生成されていない状態(例えば全揚力の10%未満)での空中浮揚状態からの着陸が含まれる。ただし、本明細書に記載の実施形態では、小さい目標物、例えば着陸パッドに着陸する前に、「瞬時制動」を示すあらゆるものを回避するために、対地静止ホバリングに入ることが想定され得る。最初の着地(例えば対地静止ホバリング中に地面に接触すること)の後、更に静止する際に、航空機は再配向して、ロータを傾斜状態に戻してもよい。
垂直/斜めの着陸及び離陸は、本明細書では略語VTOL(vertical takeoff and/or landing:垂直離陸、及び着陸の少なくとも一方。この略語はしばしば、「及び」の接続詞により定義されることに注意されたい)に包含される。略語VTOLは航空機の能力を記述するためのものであって、その機能を垂直離着陸だけに限定するものではないことを理解されたい。また、略語VTOLは、垂直離陸と垂直着陸が必ず結合していることを主張するものと理解されるべきではない。
垂直離陸や垂直着陸でない動作の例として、本明細書に記載の航空機のいくつかの実施形態の短距離離陸モードにおいて、航空機は離陸の前に地上を短距離だけタキシングする。ここでの「短距離離陸モード」は固定翼に支援され、離陸時の対気速度は翼が全揚力の少なくとも10%の寄与をするのに十分である。いくつかの実施形態では、航空機は短距離着陸が可能である。そこでは航空機が、固定翼で生成される少なくとも10%の残存揚力を有する前進運動で着地する。定義上、短距離離陸は、離陸走行の開始から450m以内で15mの障害物をクリアすることを可能とする。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、有翼航空機に関し、これは翼に対して、固定された斜角に配向された動力付きプロペラで構成され、着陸した状態では、プロペラは地面に対しても斜めの角度に保持される。
前に簡単に触れた基本的な「テールシッター」の設計は、乗員及び貨物の少なくとも一方の位置を90°回転させる可能性があり、これは快適でなく、貨物を大幅に移動させる結果となり得る。角度のそのような極端な変化を、例えば回転するシート又はコンパートメントにより軽減することは、胴体、キャビン、及びコックピットの少なくとも一つ設計上の課題の克服を潜在的に要求する。
本開示のいくつかの実施形態では、そのような大きな回転は最初から回避される。前進飛行からホバリング飛行への配向調整は、例えば、固定された翼-ロータ間斜角と同じであって、好ましくは45°未満であり、例えば約15°~30°の範囲内、及び約20°~25°の範囲内の少なくとも一方である。いくつかの実施形態では、座席又はコンパートメントを数度傾斜させることで、航空機の貨物が経験する実効的な角度変化を更に低減できる可能性がある。
前進飛行中の揚力をロータ推力に継続して依存することは、純粋な固定翼揚力よりも揚力効率が潜在的に低下することを意味するが、翼のないマルチロータ駆動の航空機の基本線から考えると、それでも揚力効率の利得に潜在的な利点がある。
さらに、航空機の貨物が、地面に対して向きの違いを経験するとき、潜在的な利点がある。
本発明者らは、2状態遷移に対する驚異的な代替案は、3状態遷移であり、これは、互いに斜めの角度で配向された翼とロータとを有するロータ駆動の航空機を用いて、任意選択的に実装されることに気づいた。あるいは、いくつかの実施形態においては、方向遷移は離陸及び着陸の少なくとも一方に対して任意選択的に回避可能である。
いくつかの実施形態において、離陸時、あるいは離陸直後に、航空機は、ロータ(及び正味の結合ロータ推力ベクトルの少なくとも一方)が垂直方向から離れて傾斜している着陸状態から、ロータ及び正味の結合ロータ推力ベクトルの少なくとも一方が垂直である中間的な垂直離陸状態(任意選択的に、着陸装置がまた地面に接している状態で開始される)まで、まず遷移する。次に、離陸後、及び十分な高度が得られた後の少なくとも一方に、航空機は、ロータ及び正味の結合ロータ推力ベクトルの少なくとも一方が再び垂直方向から離れて、任意選択的に、着陸状態の方向と同一、又は別の方向に傾斜した第3の状態に遷移する。そして、いくつかの実施形態においては、座席又はその他の航空機内の設備が、航空機の着地構成にとって最も快適であるようにされる。離陸中にのみこの配向が乱れることがあるが、その後、正常飛行中に快適な配向に回復される。
垂直離陸の一変形である斜め離陸モードにおいては、中間的な乱れも必要としない。任意選択的により、地上にある航空機から完全な前進飛行までの遷移を通して、同一の配向が保持される。このことは、離陸時の航空機貨物の最大傾斜角を低減する上で潜在的な利点を有する。
着陸では、逆の手順となる。ホバリング状態(例えば、ロータが垂直方向に向いている)から着陸した状態(例えばロータが垂直方向から傾斜している)への遷移は、任意選択的に、空中で(可能性としては、航空機が着地する前に短時間水平加速を加えて地上でのブレーキを可能とする)、あるいは地面に接触した後に発生する。
前述したように、地上での乗員の着座位置は、任意選択的に離陸前と飛行中の両方と同じであり、「傾斜着座」の段階は、垂直離陸、着陸、及び可能性としては着陸前の速度減少の期間のみに限られる。任意選択的に、それぞれの場合で着座の方向にいくらかの差異が残る。例えば、前進飛行における航空機は、中で着座している者には「最も快適」な方向であり、この時、ロータは固定された翼-ロータ間斜角によって前方へ傾斜している。地上では、航空機はこの角度から少しだけ(例えば約1°~10°の範囲内で)後方に傾斜し、乗員に適度なリクライニングの感覚を与える。適度な範囲の椅子の調整可能角度(例えば、最大で約10°~15°)を使用して、椅子の着座角度をさらに、ただし適切だと思われる角度に変更可能であることを理解されたい。
傾斜ロータによる着陸状態は、いくつかの実施形態では、ロータ取り付けアームと着陸装置の相対的長さを適切に選択することで達成される。前方配置のロータを翼の下に配置することは、それを地面に対して非常に近くにする効果を潜在的に有し、ロータが塵及びがれきの少なくとも一方との相互作用を潜在的に受け易くなることに特に注意されたい。任意選択的に、より長い着陸装置、及び適度な「後方傾斜」の少なくとも一方を使用してこの弱点を軽減する。任意選択的に、着陸装置自体を、地上の航空機の配向を変更するために調節可能である(例えば、貨物の搭載及び乗客の搭乗の少なくとも一方のために前方傾斜し、離陸前に後方傾斜してロータが地面に接触しないようにする、など)。
いくつかの実施形態では、航空機の減速は、航空機の前方傾斜を減少させることを含む。この構成において翼は、少なくとも高速度において潜在的にブレーキとなる。任意選択的に、航空機のロータのピッチが(垂直の正味の推力ベクトルの位置を過ぎて)逆転されて、更なる減速を加える。任意選択的に、航空機は、その前傾したロータピッチの少なくとも一部を維持したまま、約半回転までヨーイングするよう制御され、その後、空中を後方に飛行しながらある期間減速される。任意選択的に、そのような操縦は、対気速度が十分に下がって、翼が制御システムの補償能力を超える航空機の動揺をさせなくなってから、実行される。
任意選択的に(例えば自動操縦及び自動支援操縦の少なくとも一方の下で)、水平減速により(任意選択的に後退飛行中の)、航空機の着地とほぼ同時に対地速度を0に減速する。このことの潜在的な利点は、下降中に航空機をより水平に維持することであり、それにより乗員の快適さが増し、貨物の移動、及び航空機のバランスが崩れるリスクを低減する。
いくつかの実施形態では、(任意選択的に比較的低出力の)補助モータが提供される。これが必要に応じてホバリング、水平操縦、加速、減速、及び対向推力とのバランスの少なくとも一つのための追加推力を提供するように(特に着陸時及び離陸時の少なくとも一方において)作動する。これは、(例えばピッチに対する)少ない傾斜調整で、低加速操縦を可能とする、潜在的な利点である。補助モータは、任意選択的に軽量であって、自重という不利益を低減する。任意選択的に、これらは、高速前進飛行中の抗力低減のために、ブレードをフェザリングし、後退させ、及び/又は空気流の外に旋回させるために取り付けられる。任意選択的に、前進飛行中に、追加推力を生成するために動作され、任意選択的に、例えば着陸操縦中に逆転して使用される。いくつかの実施形態では、補助エンジンは便利であるが、航空機の操縦、或いは他の方法により耐空性を維持するために必要なものではない。いくつかの実施形態では、補助エンジンは、例えば安定化のための冗長性を提供する。例えば、衝突などの事象(例えば、複数のモータ取り付けアーム、或いは複数のモータを担持する1つのモータ取り付けアームに損傷を与える、背の高い障害物との衝突)は、潜在的に複数のメインモータを動作不能として、残りのモータでは完全に補償できない飛行不安定性を生成する。そのような状態においては補助モータを作動して飛行安定性の少なくとも一部の維持を助け、例えば緊急着陸を実行できるまでの間、航空機のバランスを取れるようにすることが可能である。
たとえば、各アームに2つのモータを有する、8モータの(あるいは別の)同軸配置において、ポールからの外部衝撃が例えば同一アーム上の2つのモータを動作不能にした場合、乗物は安定性を失ってひっくり返る可能性がある。追加の2つのモータがあれば、そのように場合において、安定性が維持される。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、航空機の自己傾斜ロータ取り付けアセンブリに関し、これは、ピボットバーと、ピボットバー、及びピボットバーのピボットマウント(本明細書ではヒンジとも称する)の両側に取り付けられた複数のロータと、を備え、ロータは、バーをピボットマウント及びピッチ軸を中心に回動させるように動作可能である。
いくつかの実施形態では、ピボットバーのピボット角度範囲は、相対的な水平方向と相対的な垂直方向との間に制限される。方向は、ピボットマウントの両側におけるロータへの相対電力を変化させることにより選択される。結果として、ロータの相対電力を変化させることによって2つのモード間を選択的に転換可能な双安定機構となる。1つのモードにおいて、ピボットバーはピボット角度範囲のより水平側に対して固定され、他方のモードでは、ピボットバーはピボット角度範囲のより垂直側に固定される。
いくつかの実施形態では、モード切替制御の一部は、航空機の重力と揚力の中心にかかる力を使用して実行される。いくつかの実施形態では、航空機の重心と、その揚力の空気力学的中心とは、いずれもピボットマウントのピボット中心の前方に位置している。ピボットバーのピボット角度範囲は、ホバリング飛行において航空機の重量が、胴体とピボットバーとをホバリング推力の生成に適切な相対的方向に固定するように制限されている。前方飛行で生成された揚力がピボットから重量による力を解放すると、ピボットバーは(たとえば前方ロータと後方ロータの相対的な電力の適切な調整により)より垂直方向に回転させられ、一方で、航空機のその他のピッチは空気力学的力によって安定化されたままである。任意選択的に、ピボット角度範囲には、ロータ推力の適切なバランスが、取り付けアセンブリを固定された前方飛行構成にも「ロック」するような、別の制限もある。
任意選択的に、ピボットバーは航空機の左右の両側に配置され、ピボットバーは互いに結合されて1つのピボットフレームを形成する。任意選択的に、ピボットバーは機械的には接続されておらず、例えばフライト制御ソフトウェアによって協働する。任意選択的に、1つのピボットバーが、ロータが航空機の本体に衝突することなく自由に動ける位置(例えば航空機の後方)に保持される。
いくつかの実施形態では、ピボットマウントは、ピボット中心が前後方向にずれていて、自己傾斜ロータ取り付けアセンブリの重心の前方となるように配置されている。モータがオフの状態において、自己傾斜ロータ取り付けアセンブリは従って、重力の下で、航空機の前方を左にして横から見たときに、時計方向に回転しようとする。この回転の傾向は、ホバリング飛行に対して適切な方向、例えば、ロータが始動すると、最初はロータ推力ベクトルが垂直下向きである方向にロータを保持する位置で機械的に停止する。ロ。空中に浮揚すると、ピボットマウントの姿勢はもはやピボットマウントの重心により制御されず、代わって差動推力の力によって制御される。
いくつかの実施形態において、航空機の胴体と翼の重心は、ピボット中心の前方に置かれる。その結果、航空機がロータ推力で上昇するとき、航空機の胴体と翼はピッチダウン方向に回転する傾向がある。このピッチダウン方向の運動は、ピボットマウントもまたピッチダウン方向に引っ張る傾向がある。それは、ピボットマウントは胴体に比較して、相対的なピッチアップ方向にはそれ以上移動できないからである。結果として、自己傾斜ロータ取り付けアセンブリ及び胴体-翼アセンブリは、力の原因が異なるとしても、地上にある場合と実質的に同じように相互に固定されたままとなる。
航空機全体の傾斜は、重心が機体全体を下方にピッチングさせるすべての傾向に対してバランスを取る推力を含めて、後方ロータに比べて前方ロータに相対的に異なる推力を与えることにより制御可能である。
この時点で、ロータは前進推力を出すように再配向される。速度が上がっていくと、それに応じて翼は、これもピボット中心の前方にある(また、いくつかの実施形態では翼と胴体の重心の前方にある)揚力中心から、前方揚力を生成し始める。この揚力が、航空機の重量によりピボットマウントにかかっていた「ロック」を解除する。この時点から、前方ロータよりも後方ロータへ相対的により多く配分される推力が、航空機胴体と翼に追従されることなしに、ピボットマウントをより垂直方向に回転させようとする。これは航空機胴体と翼は既に翼の揚力によって相対的に上方向のピッチに保持されているからである。
任意選択的に、回転遷移の速度は、ピボットの抵抗、例えば、旋回に対する摩擦(例えばそこに掛かっている表面摩擦及び粘性の少なくとも一方)の抵抗、及び慣性(例えばフライホイールによる)の抵抗の少なくとも一方により制限されることで、ピボットマウントのピッチ回転運動が遅くなる(例えば、緩やかな再配向となる)。垂直着陸に備えて、選択により上側(後方)ロータは下側(前方)ロータに対して小さい動力が提供され、それらはホバリング位置に戻される。対気速度が低下すると、航空機の重量はピボットマウントによる支持に戻り、ホバーロックを回復する。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、2つの同軸電気モータを備える可変ブレードピッチロータに関する。いくつかの実施形態において、2つの同軸電気モータのそれぞれが、ロータのプロペラブレードの基部の異なる部分にヒンジで取り付けられる。各電気モータの電気ロータ部の相対位置の変化が、プロペラブレードのピッチの変化に転換される。いくつかの実施形態において、1つの電気モータだけが、ブレードに直接取り付けられる。ブレードの回転は、他の電気モータの電気ロータ部の相対位置に結合された、ギヤ(例えば、ラチェット及びピニオン)機構で駆動される。いくつかの実施形態では、ブレードピッチは、その全範囲(最小ピッチから最大ピッチまで)に亘って1秒未満で可変である。ピッチ変化の範囲は、例えば、約5°、10°、15°の範囲、又はその他の範囲である。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、プロペラガード(保護体)に関し、これは、そのガードが取り囲むプロペラに対して斜めの方向に配向されたときに、空気力学的な抗力を減少させるような形状となっている。いくつかの実施形態では、プロペラガードの壁は概略斜円筒形となっており、円筒の斜度は、プロペラガード壁の半径方向の各断面が航空機の水平前進飛行の方向を指すように選択される。いくつかの実施形態では、プロペラガードの壁の少なくとも一部が翼形となっており、任意選択的には揚力を生成する形状の翼形となっている。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、複数の個別巻線コイルからなる電気モータに関し、個別巻線コイルのそれぞれは電気モータのステータの周りで単一の位置を占める(例えば、別のコイルの介在によってそれ自体から分離されていない)。いくつかの実施形態では、各コイルは、ロータの磁石の角度位置を検出する、電気的力及び磁気的力の少なくとも一方のセンサとして作用するか、あるいはそれに関係している。個別コイルごとに、それぞれの個別コイルコントローラが、検知に基づいてコイルに供給される電流の極性及び強度の少なくとも一方を選択する。
任意選択的に、複数の個別巻線コイルは、そのコイルが電気的に相互接続されていなくても、協働して単相の電気モータとして作用するように構成される(例えば、同時に実質的に同一レベルで同一極性の起電力を発生させる)。任意選択的に、個別のコントローラが相互に連携していないとしても、これらは協働して単相の電気モータとして作用する。
任意選択的に、個別巻線コイルのすべてが同時に動作して、電気モータのロータに力を働かせる。このことは、電気モータが所与の数のコイルでより大きなピークの力を出すことが可能となる潜在的な利点である。部品点数は可能性として増えるが、各部品そのものは、例えば個別のコイルに対する電力処理要件が低減されるために、他で要求されるものより軽くなり得る。別の潜在的な利点は、単一のコイルの損失(例えば短絡による)が、必ずしも電気モータの動作停止にはならないことである。別の潜在的な利点は、コイル自体が、複雑さ及びコストの少なくとも一方を低減して製造され得ることである。別の潜在的な利点は、例えば電気モータのメンテナンスの一環として、コイルが電気モータ内で個別に交換可能であることである。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、バッテリユニットの電力供給配置に関し、ロータの各組が航空機の対角線上の対向するコーナーに配置されたロータから構成されている場合に、複数のバッテリユニットのそれぞれが、異なる対応するロータの組へ電力供給可能とするいくつかの実施形態においてこの構成は、対角線上の対向する推力に突然の不均衡を発生させる、単一のバッテリユニットの出力損失から生じる航空機の不安定さを、潜在的に防止するように作用する。
いくつかの実施形態において、複数のプロペラを有するロータ、及びこれらのプロペラを駆動するための対応する複数の電力ユニットが、任意選択的に、各電力ユニットごとに異なるバッテリユニットによって電力供給される。したがって、いくつかの実施形態において、各ロータに電力供給するように構成された2つのバッテリユニットがあり、各バッテリユニットはまた対角線上で対向するロータの電力ユニットに電力を供給する。本明細書では、これを「対角線的に配線された」電力構成とも称する。
ロータは「対角線上で対向」し、その結果、対角線上で対向するロータ間に送達された推力の不均衡は、航空機を回転の対角軸を中心に、対向するロータが取り付けられているその対角線にほぼ垂直に回転させる傾向がある。回転の対角軸は、他のロータのごく近くを通過するので、補正用の安定化推力を提供するためには、不均衡の推力差の少なくとも2倍の、任意選択的にはさらに多くの、例えば5倍、10倍、又はそれ以上の、推力の変化を提供する必要がある。対角上で対向するロータは、本明細書の図15に関連して説明するように、「均衡化の役割」をするロータの組のロータでもあることに留意されたい。
したがって、例えば、対角線上で対向するロータの対うちの1つの電力ユニット(例えば複数の電力ユニットの内の1つ)が機能を完全に停止した場合、潜在的にはその対以外には、それ自体の推力を変更して、推力の不均衡(これは次いで、対角線上で対向するロータの対に波及する)の克服に間に合わせることのできるロータはない。いくつかの実施形態において、(例えば、航空機の4つのコーナーのそれぞれにロータを備える構成において)、1つのロータの故障による回転の対角軸は、潜在的に残りのロータのサブセットの非常に近くを通る可能性があるので、そのいずれのロータも、航空機の安定性を維持するために十分に制御された対抗推力を提供するよう動作することさえできない。その結果、これらの残りのロータのサブセットは、相対的に小さい不均衡、及び遷移的な不均衡の少なくとも一つからの回復でさえ提供するには能力的に無力である。例えば、いくつかの実施形態において、対のうちの1つのロータサブセットが重大な出力不良を起こした(例えば出力の半分又はすべてを失う)場合には、対角軸を中心とする回転が開始される。回転が検知されると(例えば航空機の制御システムに接続された慣性計測ユニットによって)、いくつかの実施形態においては、もう1つの(対角線上で対向する)ロータのサブセットにおける出力を低減することが、正常な航空機の応答である。ただし、検知される前に回転は既に一定の大きさの運動量にまで達することもあり、いずれにしても出力の制御では即座に出力を下げることは不可能であるか、又は安定性を回復しようとする試みは航空機の姿勢の振動をもたらす可能性もあり、その双方もあり得る。これは、より重い航空機であって、より大きな運動量が付随する航空機に潜在的に特有の問題である。この状況が必ずしも回復不能ではないとしても(例えば、航空機自体の重心が十分に低くて、反転の防止に役立っている場合もある)、少なくともいくつかの故障モードにおいて、対角軸の周りの回転、及び回転運動量の蓄積の少なくとも一方を起こし得る制御遅延のリスクを排除又は低減することは潜在的な利点である。
対角線的に配線された電力構成では、バッテリユニットの電力喪失を含む故障モード(例えば接続の喪失、又はバッテリユニットそのものの機能不良)は、電力の喪失が対角線上で対向するモータ間で本質的に同時に発生するという点で、潜在的に自己バランス可能であり、したがって、飛行コントローラが回転の開始を検知すること及び補正を命令することの少なくとも一方とは関係なしに、故障そのものの本質的な一部として推力の均衡化が始まる。
いくつかの実施形態では、ロータの電力ユニットへの電力の喪失(例えばバッテリユニットの故障による)は、ロータのコントローラにより検知される。これは任意選択的には、ロータの別の電力ユニットへの電力の増加を自動開始する信号として使用される(例えば、航空機姿勢の変化が検知される前であっても)。これは、例えば電力喪失不良モードに応答する制御遅延を低減するために、潜在的な利益である。任意選択的に、信号による電力部分の増加は一時的であり、例えば信号の効果は、例えば、姿勢検知ベースの制御を優先して、時間と共に低減される。一時的であることは、(例えば、故障後の飛行平衡の喪失を低減するための)より緊急な応答を、それ自体が飛行平衡の再確立に干渉する可能性を有する永続的な新因子を導入することなく、可能とするという潜在的な利点を有する。
任意選択的に、信号は他のロータの制御に使用するため、例えば、対角線上の対向するロータの電力ユニットの電力の停止または減少を(選択的、一時的に)命令又は確認するために伝搬される。これは、例えば、1つのロータの電力接続だけに影響する損傷に対して応答する制御遅延を低減するという潜在的な利点を有する。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、複数のロータのそれぞれが、それ自体に対応する飛行コントローラの制御下にあるような、複数の飛行コントローラユニットの配置に関する。任意選択的に、各飛行コントローラは、それが制御するロータの場所に取り付けられ、任意選択的に、それ自身の慣性計測ユニット(IMU)を備える。これにより、1つの飛行コントローラの故障が1つの飛行コントローラの制御にしか影響しない限りにおいて、堅牢性に関する潜在的な利点が提供される。このことはまた、例えば支柱及び機体の少なくとも一方の屈曲により発生し得る、飛行制御の共振を低減する潜在的な利点を提供する。これは、各ロータがIMUを有する飛行コントローラの制御下にあり、IMUは機体の屈曲によるロータ姿勢の同じ局所的な変動を測定するからである。
いくつかの実施形態では、飛行コントローラユニット間で飛行データ(例えばIMUデータ)が共有され、各飛行コントローラは、航空機の現在の飛行状態を記述する同一の飛行データへのアクセスを有する。したがって、各飛行コントローラユニットは、航空機全体の飛行状態の同一の記述にアクセスする。任意選択的に、各飛行コントローラユニットの各IMUからのデータは、各飛行コントローラユニットごとに同一の組合せ方法(例えば、同一のアルゴリズムと任意選択的に平均化のための重み付け、及び外れ値データなどの例外処理の同一排除方法の少なくとも一方を含む)を用いて、航空機の飛行状態の1つの推定値にまとめられる。
しかしながら、任意選択的に、各飛行コントローラユニットは、その特定のロータへの制御コマンドの生成、及びこれらの制御コマンドの結果の評価の少なくとも一方において、それ自身のIMUによって測定された飛行データに特別の裁量を有している。いくつかの実施形態では、飛行コントローラは任意選択的に、航空機の全体的な飛行状態に向けた制御コマンドを発行する(例えば、任意選択的にすべての飛行コントローラユニットに対して同一である、共有された飛行データから計算する)。ただし、飛行コントローラは任意選択的に、命令の迅速な実行を判断するために、自身のIMUからの飛行データに特定の重み付けをする。これは例えば、姿勢変化の速度などであり、これは航空機の飛行状態の全体的な変化を及ぼす前に、局所的な機体の屈曲によって部分的に吸収される可能性がある。この判断は任意選択的に、飛行コントローラの制御出力の調整の仕方に影響し、潜在的には制御の発振を減衰又は防ぐことを助ける。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、マルチモータ航空機のヨー制御に関し。ここで、ロータは複数の同軸に取り付けられた反転回転プロペラを備える。
本開示のいくつかの実施形態では、ヨー制御は、ロータブレードが加速/減速されるときの回転運動量の変化に対する反作用、及び回転するロータからの抗力による空気質量に与えられる回転の少なくとも一方を通して行われる。本明細書ではこれを「ヨートルク」と称する。追加又は代替的に、ロータはロール軸(及び、任意選択的にロータと航空機の重心とのほぼ間に延在する軸に垂直な軸の少なくとも一方)の周りに傾斜して配向される。傾斜は、ロール軸に平行な航空機の正中軸に対して、内方向又は外方向へ数度(例えば5°以下)である。これはロータにヨー制御の支援に利用可能な推力成分を潜在的に与え、本明細書ではこれを「ヨー推力」と呼ぶ。好ましくは、傾斜は推力成分をヨー方向に分散させ、これは、ヨートルクの使用を補償するロータの能力にほぼ等しいか、それより小さい。
任意選択的に、単一プロペラのロータ設計の場合には、ヨー推力がヨートルクに加えられるように傾斜方向が選択される。例えば、時計方向(上から見た場合)に回転するロータの速度を上昇させて、反時計方向にヨートルクを与える。同じロータは、その推力を上げることが反時計方向のヨーをもたらす方向にも向けられる。
一般的には、他の方向に加えられた力に影響を与えないで(例えば、ピッチ、ロール、又は高度の変化をもたらさないで)ヨー制御を行えることが好ましい。したがって、ロータは一般的には、対抗位置(例えば、相互に対角線上で対向する位置)にあるロータが、航空機のローリング又はピッチングを回避する比率で、回転/推力を同時に増加させるように制御される。高度の変化を避けるために、ヨートルク/ヨー推力の増加を提供する、ロータからの追加の推力は、他のロータ、典型的には反対方向のヨートルク/ヨー推力を提供するロータからの減少する推力によってバランスがとられ、この減少そのものが好ましくは対角線上でバランスしている。したがって、(例えば)時計方向へのヨー制御は、任意選択的に、例えばすべての反時計方向に回転するロータを増やし、時計方向に回転するロータを減らすことにより実行される。
いくつかの実施形態では、ロータには複数の同軸配置のプロペラ、例えばロータ当たり2つの反転同軸プロペラが配置される。ヨー推力を用いたヨー制御はそのような配置で提供可能であるが、同軸プロペラの両方がより高速で一度に回転すると、互いに相手のヨートルク効果に対向し、利用可能なヨー制御を減少させる可能性がある。逆kに、(例えば)時計方向の複数のプロペラがより速く回転し、反時計方向のプロペラがそれより遅く回転する場合、ヨー推力の正味の変化は減少し、ヨー推力を用いるヨー制御は損なわれる可能性がある。特により重い航空機及び限られたエネルギー収支の少なくとも一方では、両方の効果に対するヨーオーソリティの損失が重大な不利となり得る。利用可能なヨー操縦の力を減少することは、航空機自体が地上停止している場合ですら、例えば、風の力に対抗してヨー方向を制御する航空機の能力を損ない、これは安全及び低速の操縦性の少なくとも一方に対する潜在的な問題である。静止した空気中においても、ヨー操縦性の低下は特に飛行のホバリング段階の時間を増大させる可能性があり、これは、(1)エネルギーが極めて急速に使用される飛行の段階、(2)飛行の予備エネルギーを割り当てたと考えられやすい飛行の段階、の両方であり、したがって、航空機の定格範囲からも減点される。
本開示のいくつかの実施形態において、飛行コントローラは(少なくとも正常な環境においては)、同軸配置プロペラを有する各ロータにおける2つのプロペラの片方にだけヨートルクを加えるように構成され、各ロータがヨー推力とヨートルクの両方を一緒に増減させるように制御される。したがって、ロータが時計方向のヨー推力を提供する傾きで取り付けられている場合には、その反時計方向に回転するプロペラは、より高速で回転させられて、時計方向のヨートルクと反時計方向のヨー推力との両方を同時に付加する。時計方向に回転するプロペラの速度は変化しないままとされるが、それは、より高速で回転すると、ヨートルクを介して加えられるヨーオーソリティに逆らい、より低速で回転すると、ヨー推力を介して加えられるヨーオーソリティに逆らうからである。
ロータに対して(例えば)対角線上に取り付けられた相手側のロータは、好ましくは同様に制御され、ピッチ/ロールが乱されないように正味の力を維持する。高度もまた保持されるために、反時計方向のヨー推力を与えるために傾斜したロータは、反時計方向に回転するプロペラではなく、時計方向に回転するプロペラの回転を特に減少させることにより正味の推力を低減することが好ましい。このことは、その方向に制御されたヨー軸の周りの正味の推力を増加させるという更なる効果も有する。
いくつかの実施形態において、制御されたプロペラは、それぞれのロータのすべての上層プロペラ、あるいはすべての下層プロペラである。例えば、偶数個のロータを備えるロータ構成において、時計方向に回転する上部プロペラと反時計方向に回転する下部プロペラとを有する各ロータは、逆の構成を有する2つのロータに隣接する(そしてその逆も同様)。そしてさらに各ロータは、それ自体とは反対方向にヨー推力を出すように傾斜した2つのロータに隣接する。各ロータの場合、制御に使用されるプロペラは、そのロータのヨー推力の印加方向とは反対の方向に回転する。1以上のロータがヨー制御から除外される場合があり、それは例えば奇数個のロータの場合である。
任意選択的に、例えば航空機の反対側のモータが反対方向に傾斜することで、反対側のロータは時計方向と反時計方向の回転プロペラの相対的な上部から下部への順番が逆転する(そして上部から下部への順番は、任意選択的に右/左、及び前/後の両方で逆転する)。
いくつかの実施形態において、飛行制御は任意選択的に、パイロットの命令を受け取った場合を除き、特定の対気速度より上では前進飛行中にヨーオーソリティの能動的な行使を中止する。これは、航空機の本質的なヨー安定性を誘起するのに十分な垂直に突出した空力的表面を有する実施形態に関して可能である。
(定義)
本明細書において、重力に対して垂直方向の平面内の前進飛行運動を、「水平前進飛行」又は「対地平行」飛行と称する。「飛行」が他の修飾なしに言及される場合、「水平前進飛行」であると理解されたい。
航空機の翼は、航空機が水平前進飛行をしているとき、翼の実際の形状あるいはその断面がどのように向いていようとも、水平である、又は「地面」、「地球面」若しくは「地表面」に平行であると称する。例えば、上向きの翼も、翼の水平前進飛行の間は「地面に平行」と称される。また、(「水平飛行ピッチ方向」にある)「水平な翼」は一定高度における空気流の方向に依存し、前進飛行の文脈内での翼弦の方向の詳細及び迎え角の少なくとも一方には依存しない。本明細書では、水平飛行時の翼、及び水平翼の前進飛行の少なくとも一方は、翼の方向が平坦な地面に平行であり、かつ揚力が重力と均衡している理想的な状態のことを指す。一定速度では、抗力が前進飛行方向における水平推力とバランスする。これは飛行の段階、及び航空機の荷重などの飛行条件に依存して、必ずしも前進飛行の真の条件ではないが、基準としての役割を果たす。
対照的に、「翼の方向」は明確に、翼の進行端と前縁との間で測定される翼弦のピッチ方向であることを理解すべきである(翼の「ピッチ方向」は同じ方向を指す)。翼弦は異なる断面においては僅かに異なるように傾斜され得るので、「翼の方向」はより具体的に、弦の長さで重みづけした翼弦の方向の平均を指す。複数の翼を備える実施形態の場合には、すべての翼の、翼長及び弦長で重みづけした弦の方向の平均が計算される。翼弦の方向が可変(例えば、その形状が可変)の場合、ここで意図する弦は、より具体的に、最も効率のよい前進飛行中であって、同時に最も効率的な巡航速度における翼構成に適用可能な弦のことである。
一般的に、翼は前進飛行運動中に理想的(最も効率的)な迎え角を生成するような向きを取り、それは翼弦の方向の約0°~12°内である。理想的な迎え角は、静止空気中をその航空機の定格巡航速度で移動している間の翼全体での揚力対抗力の比において最も効率がよい。
明示的には、「翼-ロータ間斜角」は、特定の飛行の詳細に拘わらず、航空機の機体に固有の属性により固定される翼の方向に対して測定される。本明細書において、航空機に関して、方向及び角度(及びその変化)は、特に明記しない限り、より具体的には、航空機のピッチ軸に対する方向/角度のことを指す。方向/角度のヨー及びロール成分は、必要に応じて明示的に示される。
本明細書において、「ロータ」は、動力を与えられた推力を航空機に提供するユニットを当初から含むとして理解されるべきである。例えばプロペラ、動力源、及び動力源が回転させるプロペラに結合されたシャフトを含み、動力源が回転することでプロペラを回転させる。推力を生成可能な要素に関しては、「モータ」及び「モータアセンブリ」という用語もまた本明細書で使用される。一般的に、(推力発生装置としての)モータはロータとして、あるいはタービンやジェットなどの別の推進装置として実装可能である。本明細書では、「モータアセンブリ」という用語は、この意味での推力発生装置を指す。逆に、本明細書でロータが言及された場合、説明が具体的に反転回転プロペラ及び/又はプロペラピッチ角などの、プロペラに特有の性能面に関係する場合を除いて、ロータは任意選択的に、別の種類のモータアセンブリ(例えばジェット又はタービン)で置き替えられることを理解されたい。ロータのプロペラの配向面は、その正味の推力方向に垂直であることが理解される。プロペラのない推力発生装置を用いる実施形態に関しては、「プロペラの面」という言及は、「正味の推力方向に対して直交する面」で置き換え可能である。
「モータ」という用語が特に電気モータなどの動力源を指す(かつ、推力発生要素/モータアセンブリ全体ではない)場合、それは具体的に「モータ(それ自体)」と明記されるか、或いはその用語が特に動力源を指すことが他の形で示される。
動力源は、例えば電気モータ(それ自体)、内燃エンジン、又はタービンを含み得る。電気又は燃料の形で動力源にエネルギーを供給するための装置は、動力源とは別と考えられる。反対に、航空機の「プロペラ」の言及は、回転シャフトを介してプロペラが取り付けられている動力源の存在を暗示するが、本明細書で使用する用語「プロペラ」は、動力源をそれ自体は含まない。ただし、単一の動力源が2つ以上のプロペラに動力を供給し得ることも、また、逆に1つのプロペラが2つ以上の動力源により動力供給されることも、排除されない。プロペラと動力源とが1対1の関係にあるというデフォルトの約束事が本明細書では説明の目的で採用されるが、いくつかの実施形態では、例えば単一のプロペラが複合動力源、例えば2つの同一線上のステータ/ロータのペアを介して、1つのプロペラに動力を伝える電気モータによって動作されるように記述される。上記の意味に加えて、「ロータ」は、電気モータの構成要素としても使われる用語である。本明細書では、この代替的な意味は、例えば、ロータは電気モータの一部であること、及びロータは対応するステータとペアをなすこと、の少なくとも一方を特定することによって示される。
本明細書では、「プロペラの向き」とは、プロペラが回転する面の方向を言う。また、本明細書では、「モータの向き」とは、プロペラシャフトの回転軸の方向(したがって、これはプロペラの向きに対して直角である)のことを言う。プロペラの向きに対して斜めを向いている翼は、したがって、モータの向きに対しても斜めである。ただし、例えばプロペラの向きから30°傾斜され、かつモータの向きから60°傾斜されることもできる。ここで具体的には、プロペラに対する翼の「斜角」は、任意選択的に、5°~45°の範囲内、10°~35°の範囲内、15°~30°の範囲内、20°~25°の範囲内から選択される。異なる角度を選択することによる潜在的な利点を含む効果は、本明細書に記載の実施形態に関連して議論される。
また、本明細書で言及する角度形成の成分は、他の注記がない限り、ピッチ軸の周りである。
本明細書に記載の特定の実施形態の内のいくつかは、固定された翼-ロータ間斜角を有するものとして説明される。本明細書において、(例えばプロペラと翼との)方向の間の角度が「固定」されているという説明は、航空機の実施形態の運転中にその角度が変わらないこと、そして具体的には、航空機の前進飛行と離陸/着陸モードと間での遷移の一部として変化しないことを機能的に明示する。いくつかの実施形態では、2つの構成要素間の固定角度は、構造的には、航空機の構成要素の相互接続によって(例えば静的な支柱及び締結具を用いて)提供され、飛行中での構成要素の相対的配向の変更は提供されない。固定角度は、地上で航空機を再構成することによって変換可能であることは除外されない。「固定」として説明される角度を有する実施例は、例えば航空機にかかる力の変化の結果として、飛行中に、支柱などの部材にある程度の屈曲を許容する実施形態を除外するものではない。またこの用語は、可動翼操縦翼面を含む実施形態も除外しない。「固定される」のは、翼の本体であり、例えば、その向きは、翼の基部が航空機の胴体に固着される向きで設定されるからである。いくつかの実施形態では、「固定」とは、航空機の少なくとも50%の質量に対して不動であることを意味する。
ここで、翼-ロータ間斜角(これはプロペラ面に対する翼の相対的角度である)に関連して説明した角度は、翼-推力軸間斜角(プロペラに対して垂直方向を向いたロータの推力軸を指す)にも適用可能である。この角度は90°から固定された翼-ロータ間斜角を引いたものとして定義される。この角度はこのように変換されても、依然として同じ実際の構成を指している。ロータ推力がバッフルによって偏向される場合には、「ロータの」推力軸は、ロータプロペラ面の向きに対して依然として直角であると考えるべきである。
固定され、かつ斜めである翼-ロータ角度の利点には、この特徴を有する航空機の、機械的なシンプルさ、並びに、リスク、コスト及び重量の少なくとも一つの低減が含まれる。ただし、翼-ロータ間斜角には、それが固定であれ非固定であれ、潜在的な利点もあることを理解されたい。したがって、いくつかの実施形態に関して「固定された」として説明される翼-ロータ角度及び翼-推力軸角度は、(いくつかの代替的実施形態において)代わりに任意選択的に、同じ特定の角度を、前進飛行での使用に好ましく利用可能な、ただし固定されていない構成として実装される。すなわち、角度は飛行中に可変である。そのような実施形態は、明確に言及される場合はどこでも、「可変」の翼-ロータ間斜角を有する。そのような相補的な実施形態もまた明示的に与えられた「固定」角の例から理解されるべきであるとの教示は、「固定」という意味を変えるものではない。むしろ、固定された翼-ロータ間斜角を含むとして本明細書で説明されるあらゆる実施形態は、巡航前進飛行のために可変の翼-ロータ間斜角を使用する他の実施形態を補完するものである。
翼-ロータ間斜角(固定又は可変)は、いくつかの実施形態において、航空機運転の前進飛行及びホバリングの両モードにおける推力を提供するように一体的に最適化された、固定ピッチプロペラ設計を(固定翼と一緒に)使用において潜在的な利点を有する。任意選択的に、ロータ(あるいは複数のロータの組)は、ホバリング(例えば正味で垂直方向の)推力を提供する、翼に対する第1の方向(あるいは複数の方向の組)と、前進飛行の推力成分を提供する、翼に対する少なくとも第2の方向(あるいは複数の方向の組)と、で動作可能である。配向変換(ホバリングモードから前進飛行モードへの)は、任意選択的に任意の適切な角度を経由することが可能である。いくつかの実施形態では、配向変換は、固定された翼-ロータ間斜角に関して本明細書で説明した翼-ロータ間斜角の大きさと実質的に同じ角度、例えば、5°~45°の範囲内、10°~35°の範囲内、15°~30°の範囲内、及び20°~25°の範囲内の少なくとも一つから選択される角度を経由する。
任意選択的に、変換範囲は比較的小さい(最大で約5°、10°、又はその他の角度の範囲内)。任意選択的に、このことは、ロータはその物理的に可能な移動範囲全体にわたって、安全かつ完全に飛行可能な方向に位置していることを保証することにより、潜在的な利点を提供し、一方で、例えば航空機の現在の荷重及び他の飛行条件の少なくとも一方に従って、角度を「チューニング」することによって得られる、ホバリング及び飛行の少なくとも一方の追加的な効率という潜在的な利益は保持されたままである。
角度変換機構は、任意選択的に、例えば任意の適切なギヤ、ケーブル、及び連係駆動機構の少なくとも一つを含む。特定の種類の角度変換機構に関しては、小さい角度機構の使用が利点を有する可能性がある。例えば、たった数度(例えば10°未満)の作動運動を与えるスライドバー式のリンク機構は、90°全体の運動、あるいは45°程度のより小さい範囲の運動を可能とするリンク装置よりも、より軽量、より簡単であまり目立たず、また、より堅牢である可能性がある。具体的には、ロータは複数のリンクバーを使用して取り付けることができ、各バーを互いに短くしたり長くしたりすることで選択的に傾斜させることが可能である。(例えば)2本バーのマウントは、1本バーのマウントと同等の剛性を、少ない材料で達成できる可能性がある。ロータまでの電力ケーブル配線及びホース配管の少なくとも一方は、可変角度ロータを有する実施形態のために必要とされる柔軟性と緩みを、任意選択的に提供する。
したがって上記の要素のいくつかにより、いくつかの実施形態において、3つ以上のプロペラと、1つ以上の翼とを有する、無人又は有人の航空機が提供され、ここで、翼は、飛行中は地面に対して平行であり、モータは翼に対してある角度で固定されて、前進飛行においてモータ推力の一部が揚力を生成し、一部が航空機を前方へ牽引することができる。離陸中及び着陸中の少なくとも一方では、航空機は、地面に対して平行なプロペラで任意選択的にホバリングする(すなわち、航空機は垂直離陸及び着陸が可能である)。
特定の運転モードを明示的に必要とする特徴を有する航空機の実施形態に関するものを除いて、本明細書に記載の航空機の実施形態は、任意選択的に有人又は無人又はその両方であり、また航空機は任意選択的に、航空機又は地上から操作されるか、自動モードで飛行するか、その両方である。
特定のモータ種類を明示的に必要とする特徴を有する航空機の実施形態に関するものを除いて、本明細書に記載の航空機の実施形態のモータは任意選択的に、例えば、電気モータ、内燃機関モータ、及びタービンモータ(それ自体)の少なくとも一つである。
特定の推力推進の種類を明示的に必要とする特徴を有する航空機の実施形態に関するものを除いて、本明細書に記載の航空機の空気推力推進は任意選択的に、例えばプロペラ、ダクテッドファン、ジェットエンジン、及びロケットブースタの少なくとも一つにより提供される。
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、ホバリング飛行と前進飛行の両方を行うように設計された航空機に関し、その前進飛行水平推力の少なくとも50%は、翼に対して斜めに向いたロータから供給される。いくつかの実施形態では、この斜角は約20°~25°の間である。任意選択的に、斜角は固定されている。任意選択的に、斜角は調節可能である。任意選択的に、約20°~25°の間の斜角の範囲は、前進飛行のために、この範囲外の別の角度に調節される。
本発明者らは、斜めに傾斜したロータはその推力の大部分を垂直方向に向ける(前進飛行の推力への寄与を低減する)が、特に、効率的なホバリング推力も発生可能であるプロペラブレードを備えるロータに関しては、高速において、他の場合は失われる水平推力の効率を回復する可能性があることに気づいた。固定プロペラブレードは一般に、効率が最大となる、関連する空気の自由流れ速度がある。空気の自由流れ速度がこの速度を超えて増加すると、ブレードはその「かみ合い」を失い、空気の動きが既に早すぎるために、ブレードは通り抜けた空気へあまりエネルギーを伝えることができないと言われることがある。ブレードピッチが高いほど高速性能が潜在的に増大する。例えば、可変ピッチブレードは、一般的に高速の対気速度においてそのブレードピッチを増加させるように設計されている。
特にホバリング用途のプロペラブレードでは、任意選択的にブレードピッチが相対的に低い領域を備えている(低速の自由流空気速度での失速を低減/回避するために)が、この低ピッチは比較的高速(例えば巡航水平飛行での)自由流空気速度において、有効出力を潜在的に減少させる。ロータ(例えば、そのようなブレードを備えるロータ)の向きが水平に近いほど、全体の前進空気速度の一部しかロータの推進軸に対して平行に向かわないので、プロペラはより遅い空気流を「見る」ことになる。このことは潜在的に、相対的にホバリング用に最適化された(低速に最適化された)プロペラブレードに、それにも拘らず高い空気速度の、例えば完全に水平方向の推力を形成するように配向された等価のプロペラの(所与の効率に対する)約2倍の速度の、効率的な水準の前進推力を提供させることを可能とする。
特定の動作理論に拘泥することなしに、本発明者らは、ホバリング可能なプロペラを、前進飛行方向に対して約20°~25°の間の斜角に配向することが、潜在的にこのプロペラ特性の特別の利点を引き出すことを見いだした。
任意選択的に、特定の航空機は特定の最適巡航速度で設計される。これは、例えば、重量、要求される航続距離、要求される空中滞在時間、利用可能なエネルギー収支、及び要求されるエネルギー予備力などの少なくとも一つの制約条件内で、例えば、翼/ロータ角度、プロペラブレードのピッチ、及び翼の設計の少なくとも一つを選択することによって最適化される。本開示のいくつかの実施形態の一般的な巡航対気速度は、30~130キロノット(約55km/h~240km/h)の範囲である。設計巡航速度の約50%で発生する翼の揚力の一般的な大きさは、航空機重量の約25%である。設計巡航速度の約75%で発生する翼の揚力の一般的な大きさは、航空機重量の約50%である。巡航速度において、発生する翼揚力の一般的な大きさは、航空機重量の約70%~90%である。
本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示はその適用において、以下の説明に提示され、図面に示される、構成要素の構造と配置及び方法の詳細に、必ずしも制限されるものではないことを理解されたい。本発明の特徴を含む、本開示で説明される特徴は、他の実施形態において可能であり、或いは様々な方法で実行又は実施可能である。
(固定翼-固定モータの取り付け配置)
まず図1Aを参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、翼120のピッチ軸方向131に対して固定された斜角に配向されたロータ102を有する、ロータ駆動翼120を備えた航空機の概略図である。図1Bも参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、翼121の方向131に対して固定された斜角に配向されたロータ102を有する、航空機の胴体140に取り付けられたプロペラ駆動翼121の概略図である。これらの図は、航空機が、水平前進飛行中に図に示す方向に向いているものとして示されている。両方の図において、プロペラ方向132と翼方向131との間の、翼-ロータ間の固定された斜角130(ピッチ軸の周りの)が示されている。示されている角度は一例であり、いくつかの実施形態では、例えば5°~45°の範囲内、10°~35°の範囲内、15°~30°の範囲内、及び20°~25°の範囲内の少なくとも一つから選択される。
図1Aは、前方及び後方ロータ102の対が翼120に固定され、1つの対の各ロータ102は、翼120の取り付けられた、それぞれ1本の前方アーム110A又は後方アーム110Bによって固定されており、したがって、翼はロータ102の間に位置している。図1Aにおいて、本明細書の他の図に示す実施形態と同様に、いくつかの実施形態では各ロータ102は、1以上のプロペラ104と、動力源としての1以上のモータ103とを備えている。いくつかの実施形態では、ロータ102は反転回転するプロペラを備えている。これはトルク力を均衡させるための潜在的な利点である。任意選択的に、胴体(図示せず)が翼120に取り付けられている。
図1Bは、胴体140を含む航空機の構成を示し、胴体に少なくとも1つの後方ロータ102が、翼120に対して固定された斜角で後方アーム110Bによって取り付けられ、かつ前方ロータ102の対が、それぞれ個別の前方/側方アーム110Hによって取り付けられている。任意選択的に、各ロータは、複数のプロペラ及び動力源を備えている。
図1A~図1Bに示す特徴は、翼120よりも下方に配置された前方取付けロータ102と、翼120より上方に配置された後方取り付けロータ102とを含む。この構成は、たとえ(図1Aに示すように)ロータのすべてが前方から後方への軸(ロール軸に平行な)に沿って一列になっていたとしても、翼120(前方及び後方)の上、及びロータ102の中への空気流の損失を、低減又は防止する。完全な前進飛行では、ロータ102及び翼120の両方が揚力を提供する。ホバリング及び低速飛行の少なくとも一方においては高度を維持するために、ロータ102への動力を増加すること、及びロータ102を再配向して(例えば翼120の再配向を含めて、航空機を再配向させることにより)プロペラの向き132が例えば実質的に地面に平行になるようにすることの少なくとも一方が可能である。
したがって、翼120によって提供される揚力は、必ずしも航空機を空中に維持するものではなく、(翼の抗力の犠牲のもとに)ロータ102の推力角が前方に傾斜することによる(任意の特定の力に対する)揚力の損失を相殺するための余分の揚力を提供することが可能である。任意選択的に、ロータ102のみによる運転が耐空性として確立されており、その結果、航空機の全重量の支持を翼に依存することはない。任意選択的に、このことにより、翼120はより小さく、薄く、より軽量な構造として設計可能となり、抗力及び荷重の少なくとも一方の低減を可能とし得る。
いくつかの実施形態では、重心の前方に据え付けられたロータ(モータ自体及びプロペラを含む)は、重心の後方に据え付けられたロータ(モータ自体及びプロペラを含む)に関して、異なる傾斜角(任意選択的にピッチ軸を含む、任意の軸に対する)及び異なるプロペラの幾何学的形状の少なくとも一方を有する。この選択肢は、本明細書に記載のすべての航空機の実施形態で利用可能である。
いくつかの実施形態では、空中輸送体(航空機)の設計において、翼によって生成される揚力中心を航空機の重心の前方又は後方に配置する。このことは潜在的に、前進飛行中の上向き又は下向きのピッチモーメントを空中輸送体にもたらす。いくつかの実施形態では、これは飛行制御による命令、例えば、揚力中心が重心の後方にある場合には前方モータの動力を上げ、後方モータの動力を下げるように命令し、また揚力中心が重心の前方にある場合にはその逆とするように命令することで補償される。この選択肢は、その機能上、揚力中心をその航空機の重心に配置することを必要とする特徴を有する航空機の実施形態に関する場合を除いて、本明細書に記載のすべての航空機の実施形態で利用可能である。
任意選択的に、重心の前方方又は後方側にあり、前進飛行中は追加的な動力を必要とするプロペラ及びモータの設計及び傾斜角の少なくとも一方は、前方飛行性能に対して相対的に(例えば動力源強度及び/又はプロペラ設計により)最適化される。他方で、重心の前方側又は後方側にあり、前進飛行中はより少ない動力を必要とするプロペラ及びモータの設計及び傾斜角の少なくとも一方は、ホバリング性能に対して最適化することが可能である。潜在的にこれが全体的な性能を向上させる。
いくつかの実施形態において、プロペラ設計の最適化には、通過する空気のより高い相対速度、又は通過する空気のより低い相対速度での効率が比較的良好に最適化されるように、プロペラブレードの(任意選択的に固定された)ピッチ角の設計に対する調整が含まれる。例えば、プロペラは第1の(垂直)対気速度に対して最大効率を有するが、これよりも高い速度の飛行での使用が意図される。プロペラの効率の一部は、いくつかの実施形態においては、プロペラを前進飛行の方向に対して斜めの角度に傾斜させることで回復される。したがって、この斜めに傾けることによる、前進飛行に対して失われる推力効率は、任意選択的に、少なくとも部分的に取り戻される。
いくつかの実施形態において、前進飛行性能に対して最適化されたプロペラブレードのピッチ角は、非常に急峻なピッチ部分を備えるので(すなわち、所与の自由流の空気速度に対してそのように大きな前進比を生成するので)、ホバリング飛行中に失速する。例えば、前進飛行に最適化されたプロペラブレードの失速ゾーンは、ブレード長の少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも50%である。典型的には、失速ゾーンはブレードの半径方向内側部分(例えばプロペラハブに接続される側)から広がる。典型的な失速角度においては、迎え角は、ブレード又は翼弦の方向から約15°以上外れている。
いくつかの実施形態では、例えば、重心の前方側又は後方側にあるプロペラは、反対側にあるプロペラよりも相対的に大きいブレードピッチ傾斜(及びより大きな失速ゾーンの少なくとも一方)が与えられる。いくつかの実施形態では、重心のより近く又はより遠くに配置されたプロペラは、ピッチ角の重心からより遠いプロペラ(これらの群の1つに含まれるプロペラは、任意選択的に、ピッチ角の重心に対して同一側又は異なる側に配置される)よりも相対的により大きいブレードピッチ傾斜(及びより大きな失速ゾーンの少なくとも一方)が与えられる。より具体的には、いくつかの実施形態において、重心により近いプロペラは、重心から相対的に遠方に離れたプロペラに比べて相対的に最適化されて(例えばピッチ角の選択によって)、ホバリング中に効率的な高推力を与える。より遠方のプロペラは任意選択的に、その相対的な機械的利点を利用して、(例えば、失速損失、及びプロペラの回転速度の制御の少なくとも一方によって)低いホバリング推力を与えるように構成される。
いくつかの実施形態では、前方ロータ及び後方ロータは、ロール軸上で重心から異なる距離(例えば、ホバリング飛行及び他の飛行角度の少なくとも一方において異なる距離)に取り付けられる。これは、特定のピッチ角を維持するためにどの相対的な推力が使用されることに潜在的に影響する。例えば、重心により近いロータからの推力により航空機本体にかかるトルクは、任意選択的に、より低い推力を使用する別のロータによって重心からより遠い点からかけられるトルクによって平衡される。いくつかの実施形態では、このことを使用して、前進推力に最適化されたロータが、ホバリング推力を生成するように最適化されたロータよりも、より小さい下向きの推力を生成するような角度にされること(例えば着陸中に)を可能とする。いくつかの実施形態において、より水平に近いロータの近くに重心がある航空機を設計することにより、より垂直に近い飛行中推力方向を有するロータから提供される前進飛行の総推力は、より水平に近い飛行中推力方向を有するロータから提供される総推力に比べて減少する。あるいは、いくつかの実施形態において、より水平推力に近いロータからの垂直推力の損失は、それらを航空機の重心から相対的により遠いところに配置することによって補償される。任意選択的に、飛行制御ソフトウェアは、例えば、積荷の重量の違い、その分布の違い、飛行中の乗客の移動、及び貨物の移動の少なくとも一つによって生じ得る、重心の違いに応じて出力を調整するように構成されている。これらの調整は、任意選択的に、明示的にプログラムされるか、例えば、指令されたロータ出力に応答する航空機の姿勢の応答性の自動検知を利用して決定されるか、又はその両方である。
空気力学的な揚力の中心が航空機の静的な重心からずれている実施形態においては、空気力学的表面の揚力中心が、前進飛行中に航空機の「実効的」重心の移動に寄与し得ることに留意されたい。
いくつかの実施形態において、相対的に低推力の「ホバリング補助」モータが、ロール軸上の重心から相対的にかなり遠い、例えば、重心の反対側のそれと釣り合うモータよりも、少なくとも2倍、3倍、又は4倍遠い位置に配置される。このことは、重心に対してホバリング補助モータと同じ側にある主モータが、より水平推力に近い姿勢で取り付けられる可能性を提供し、前進飛行効率に潜在的な利点をもたらす。任意選択的に、ホバリング補助モータは、埋め込まれ、流線形のカウリング内に担持され、フェザリング可能であり(例えば空気流の方向に対して平坦化可能であり)、折り畳み可能であり、或いは前進飛行中の抗力を低減するために格納可能である。任意選択的に、低出力要件により、ホバリング補助モータ及びその取り付け具を十分に軽量化することで、自重及び抗力の少なくとも一方による不利益は、水平推力効率の向上によって正当化されるようにする。ホバリング補助モータはいくつかの実施形態では、航空機の耐空性のために動作可能である必要はない。むしろ、航空機が異なるピッチ角及びより可変のピッチ角の少なくとも一方に向いているときに、何らかの形で行われる減速やホバリングなどに対して、任意選択的な代替手段を提供する。
前方ロータ及び後方ロータが異なるピッチ方向(姿勢)で取り付けられている場合には、ホバリングモードにおいて、どちらのプロペラのタイプも地面に対して平行ではなく、むしろ、例えばプロペラの面がV字型又は逆V字型を形成するように向き合う形であり得ることに特に留意されたい。ここで、そのような構成は、正味の推力の方向に関する限りは、すべてが共通のピッチ方向を共有するロータに対して、「地面水平」と等価な推進方向を生成すると考えられるべきである。これは、すべてのロータにより生成される組み合わされた推力は地面に直交するからである。
ここで図1Cを参照し、これは、本開示のいくつかの実施形態による、翼120に対して固定された斜角に向けられたロータ102A、102Bを有する航空機において、それぞれ前方ロータ102Aを通り抜け、後方ロータ102Bを通り抜け、また翼120を超えて流れる空気流152、151、150を概略的に示す。
本開示のいくつかの実施形態においてモータ(例えば、ロータ102A、102B)は、プロペラへの空気流及びプロペラからの空気流が翼によって妨害されないように、あるいは翼による流れの擾乱が最小化されるように配置される。例えば、どのモータも空気を翼表面、及び翼表面方向の少なくとも一方には向けないか、どのモータも翼表面に向かう推力ベクトルを持たないか、その両方である。さらに、いくつかの実施形態では、ロータは、例えば翼の渦によって乱される可能性のある空気が、ロータに取り込まれないような配置となっている。例えば、図1Cに示すように、前方ロータ102Aは翼120の下方かつ前方にアーム161によって取り付けられ(ロータは航空機の左右両側に少なくとも1つ取り付けられるものと理解されたい)、後方ロータ102B(これも航空機の左右両側にある)は翼120の上方かつ後方にアーム160によって取り付けられる。翼の前方に配置されることに加え、前方ロータ102Aは航空機の重心の前方に配置される。後方ロータ102Bは、翼の後方に配置されることに加え、航空機の重心の後方に配置される。
前進飛行中、翼120に当たる空気流は、プロペラ104の後流によって妨害されない(あるいは最小限にしか妨害されない)。またプロペラ104への空気流及びプロペラ104からの空気流は翼120によって妨害されない。ホバリング中は、プロペラ104への/からの空気流は翼120によって妨害されない(あるいは最小限にしか妨害されない)。
この相互干渉の回避(例えば、胴体140及び翼120の面の少なくとも一方から離れて延びるアーム上にロータを組み付けること)が、固定翼-ロータのハイブリッド航空機に使用される、揚力及び前進推力の少なくとも一方を生成する構成要素の効率に関する潜在的な利点である。
次に図1Dを参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、翼120を備えると共に、翼の方向131に対して固定された斜角に向けられたロータ102を有する航空機の、着陸装置163、164の配置を概略的に示す。
いくつかの実施形態では、着陸装置163、164は、モータ(例えばロータ102A、102B)を支えるアーム161、160に取り付けられる。着陸装置は任意選択的に、例えばスキッド、脚又は車輪付きのタイプであって、また、飛行中は任意選択的に格納可能である。
図に示す着陸構成においては、地面165と、ロータ102A、102Bのプロペラのピッチ132との間の角度134は斜角であり、また、地面165と、翼120のピッチ133との間の角度133は斜角であることに留意されたい。いくつかの実施形態では、これが着陸した航空機のピッチ方向となり、これは、航空機のホバリング飛行ピッチと航空機の完全前進飛行方向との間の方向である。異なる航空機の方向角度及び個別要素の相互の方向の少なくとも一方の関係、特徴及び潜在的な利点については、本明細書中の例えば図10A~図10Fに関連して議論する。
ここで図1E~図1Gを参照し、これらは本開示のいくつかの実施形態による、翼120を備えると共に、翼120の方向131に対して固定された斜角に配向されたロータ102を有する、ロータ駆動航空機の概略図である。
図1E~図1Fは、前方及び後方のロータ102の対が翼120に固定され、各ロータ102が、翼120に取り付けられたそれぞれ1本の前方アーム110A又は後方アーム110Bによって固定された構造をそれぞれ示し、したがって、翼はロータ102の対の間に位置している。いくつかの実施形態では、各ロータは1以上のプロペラ104と、動力源としての1以上のモータ103とを備えている。任意の数のこのような対が、翼又はその縁にわたる任意の位置で使用可能である。図1Eでは、2つのロータ対のそれぞれが、翼120のそれぞれの先端(外側端部)に取り付けられ、図1Fでは、追加のロータ対が翼120の中央に取り付けられている。図1Fと図1Eの違いは、2つの追加のロータを加えたことである。より多くのロータが(例えば、より重い翼本体を支えるために)例えば図示したように任意選択的に追加されることを理解されたい。
図1Gは、翼の中間にバー110A、110Bで取り付けられたロータ102の対と、それぞれがバー110Cによって翼120の各外翼端に取り付けられた追加のロータ102の対との組み合わせを示し、バー110Cは、前方又は後方に向かってではなく、翼120のピッチ軸にほぼ平行に延びている。
ここで図1H~図1Oを参照し、これらは本開示のいくつかの実施形態による、翼121と胴体140を備えると共に、ロータ102が翼121の方向に対して固定された斜角に向けられた、ロータ駆動航空機の概略図である。
モータは任意選択的に、空中輸送体の任意の適切な部分、例えば、胴体又は胴体延長部(本明細書で「アーム」又は「バー」とも称する構造体を含む)、翼、翼同士の間又は翼と胴体の間の支柱、及びスタビライザの垂直面上に直接取付けられる。
いくつかの観点において、図1Hの頭上(オーバーヘッド)の後退翼の設計は、図11A~図11Cに示す設計と同様であり、胴体140の前方で部分的に下にある(かつ翼121に対して完全に下方の)アーム110Aに取り付けられた2つのロータ102と、胴体140の後方で上にあるアーム110Bに取り付けられた2つのロータ102とを有する。翼121は胴体140の頭上に取り付けられている。前方アームは任意選択的に2本の分離したアームであってもよいし、1つの単一バー、例えば機首を横切るバーであってもよい。
図1I~図1Mは、いくつかのモータ103とプロペラ104とが垂直スタビライザ110Cに取り付けられている構成の例を示す。
図1N~図1Oは、モータが翼121、124の間のバー110E、110G、及び任意選択的により、複数翼又は先尾翼型構成において、これらのバーの延長に取り付けられる構成の例を示す。アームは2つの翼を、あるいは翼とスタビライザとを接続し、モータは2つの面間においてアームに取り付けることができる。
ここで図1Pを参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、翼121と2つの胴体140A、140Bとを備え、ロータ102、102Cが翼121の方向に対して固定された斜角に向けられた、ロータ駆動航空機の概略図である。図1Pの航空機は、2つの胴体部分140A、140Bのそれぞれに2人の乗客用の座席150を含んでいる。ロータプロペラが同一サイズであるというような特定の要件はないことに留意されたい。例えば、ロータ102Cのプロペラ104Cは、任意選択的に、ロータ102のプロペラ104よりサイズが大きい。
次に図1Qを参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、翼121と4席の胴体140C、140Bとを備え、ロータ102が翼121の方向に対して固定された斜角に向けられた、ロータ駆動航空機の概略図である。ロータ102及びそれらの取り付け支柱の詳細は、胴体140C内の4つの座席150の配置を示すために省略されている。
図1E~図1Qは、最大6個のロータを備えた実施形態を含んでいる。より多くのロータが(例えばより重い航空機を支えるために)、航空機のサイズ及び重量の少なくとも一方による要請に従って、任意選択的に追加されることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態においては、図1Oの胴体140が引き伸ばされ、必要に応じてバー110Gに沿って追加のロータ102が追加される。追加のロータ102は同一バーに沿って追加される必要はなく、例えば、追加の支柱又はバーに追加することも可能である。すべてのロータ102が同一平面状にあることも、翼121、124に対して同一の斜め方向を共有することも必要とされないことも強調される。例えば、図10A~図10Iに関連して異なる方向の構成が説明されている。
示された取り付けの選択肢は、尾翼、前尾翼、複数翼又は他の安定化若しくは揚力生成要素を、明示的に示されていない要素の構成を含めて、有する空中輸送体に適用可能であることを理解されたい。
(操縦中の要素の相対的配向及び姿勢変化)
ここで図10A~図10Cを参照し、これらは、本開示のいくつかの実施形態による、離陸動作時及び着陸動作時の少なくとも一方の航空機姿勢変化の概略図である。
図10Aは、地上の航空機1015を表す。この例では、前方ロータ1022Aと後方ロータ1022Bとの両方が、主翼1025と任意選択的な副翼1026(任意選択的に航空機の尾翼の一部として実装される)とに対して、同じ斜めのピッチ角に配向されている。任意選択的に、これらは異なるピッチ角に配向されるが、ここでは説明のために同一のピッチ角を使用する。
同じく図示されているのは、後方と前方の着陸装置キャリッジ1023、1024、胴体1025、及び可変姿勢(「リクライニング式」)コックピットチェア1021である。コックピットチェア1021は、航空機キャビン内の配置を一般的に表し、航空機の全体の傾斜とは無関係に、乗員及び貨物の少なくとも一方の姿勢角度調整を可能とする。
模式的な椅子1001がコックピットチェア1021の姿勢に対応する。翼面1002が主翼1025のピッチ方向(副翼1026のピッチ方向に任意選択的に平行)に対応する。プロペラ面1003が、ロータ1022A、1022Bのプロペラ方向に平行な面を表す。接地面1004が、着陸キャリッジ1023,1024が接地する面を表す。着陸装置キャリッジ1024、1023は、任意選択的に複数の位置の間を移動可能である(例えば、飛行中は格納される)が、説明のために固定して図示されている。
ここに示す例においては、翼-ロータ間ピッチ角の傾斜は45°で示されている。航空機1015が着陸しているとき、着陸装置キャリッジ1023、1024は、翼面1002が地面に対して斜め(約15°)であり、プロペラ面1003が逆の傾斜で地面に斜め(約30°)であるように航空機を保持するように構成されている。模式的な椅子1001は垂直位置に示されている。任意選択的に、模式的椅子1001は厳密に垂直ではなく、例えば、キャビンの乗員に提供される好適な視界及び人間工学の少なくとも一方の観点からの、「快適な」垂直である。
図10Bは、すべて同じ要素で、相対的な角度もまた同一であり、ホバリング、最初の離陸、及び着陸接触の少なくとも一つの期間において、航空機全体が上方向(機首が上)に約30°ピッチングした状態を示す。プロペラ面1003は水平方向に向いており、それによって(ロータ1022A,1022Bからの推力に対応する)推力ベクトル1010を(上向き揚力の生成に対応して)垂直下向きに向ける。翼面1002は、飛行中に揚力を提供する有効な方向から外れて傾斜しており、ホバリング中の飛行特性には重要ではない。模式的な椅子1001は約30°だけ後方に傾斜している。比較のために、典型的な定期旅客機の上昇角度は任意選択的に、約15~20°である(典型的に25°で上昇する商業航空機も存在する)。任意選択的に、コックピットチェア1021は離陸中に、図に示す位置からそれ自身が前方に、例えば最大で約15°まで傾けることが可能であり、通常の定期旅客機の上昇角の範囲内に完全に保つことが可能である。
図10Cは、殆どの相対角度が同じままの、同一要素を再び示すが、ここでは、模式的な椅子1001A(及び対応するコックピットチェア1021)が、それ以前の方向から約15°前方に傾斜して示されている(これも模式的な椅子1001を示す点線で表す)ことが異なる。航空機1015は完全な前進飛行姿勢の配向となっており、着陸姿勢から下方向に約30°傾いている。ロータ1022A、1022Bは地面に対して約45°の角度の向きとなっており、その推力は水平推力1012と垂直推力1011との間でほぼ均等に分割されている。翼1025の前進空気速度は揚力(下方向に押し下げるベクトル1013の反対の向き)と、僅かな大きさの抗力(前方向に押し出すベクトル1014と反対の向き)をもたらす。
特にキャビンの乗員は、任意選択的に+15°~-30°の範囲(椅子や他のキャビンの調整なしで)のピッチ変化を受け、調整有では(図示するように)約0°~-30°の範囲のみの変化を受けることがわかる。±30°を超える調整が可能な椅子は、この範囲を、例えば0°~-15°の間にさらに低減可能である。さらに、たとえロータ1022A、1022Bが運転中に合計約45°のピッチ角まで揺れたとしても、典型的な着陸姿勢及び巡航前進飛行中の姿勢は特に、任意選択的に0°に保持され、最大傾斜の期間は、離陸及び着陸の少なくとも一方の期間に限られる。さらに、着陸状態から前進飛行への遷移は、任意選択的に、さらにより限定された角度、すなわち図10Aの着陸状態の配向から、さらに前方へ(機首を下向きに)約15°傾けた図10Cの前進飛行中の配向に、直接変化する角度で発生する。このことは、(例えば、もし椅子の傾斜が前進飛行のピッチの遷移に同期されていれば)乗客には姿勢変化を全く受けさせなくする可能性がある。これに限らないが、比較的少数の乗客座席のみの(例えば1、2、又は3列の)航空機では特に、航空機の着陸時の構成において座席の列に高さの差、例えば約20~50cm以上の差がある。より長い航空機(例えば座席が4列以上)では、これは不便な可能性があり、座席のより水平な着陸時の構成が任意選択的に使用される。ホバリング飛行においては、このような長い航空機の座席領域は(航空機そのものと共に)再配向される可能性があり、その結果、例えば客室の床の座席間通路は後方に傾斜する。前進飛行においては、同じ客室の床は前方に傾斜する。
任意選択的に、着陸前の減速中にキャビンの乗員/貨物が経験する前進姿勢変化は、ゆっくり減速すること、空気力学的な抗力を利用すること、前方ピッチをゆっくり減少させること、及び減速段階の一部の間で航空機全体をヨーイングさせて後方飛行させること、の少なくとも一つにより最小に維持される。完全なホバリングから着陸への降下は通常、乗員/貨物を依然としてほぼ-30°の傾斜(この例では)にさせる可能性がある。いくつかの(例えば、回転式着陸装置を用いた)実施形態においては、そのような着陸方法が適切であると考えられる状況において、着陸のために低速の対地速度(任意選択的には後進)での降下をすれば、このように経験される傾斜をなおも減少できる可能性がある。
翼の揚力(ベクトル1013と逆向き)が下向きのロータ推力ベクトル1011よりも優勢である場合に効率は潜在的に増加し、より多くのモータ推力が水平推力ベクトル1012に向けられることに留意されたい。したがって、ロータ1022A、1022Bのより前傾した飛行配向と引き換えに、飛行のいずれかの段階において乗員の余分な傾斜を受け入れることにより、潜在的な利点が達成される。
ここで、図12Aを参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、航空機の離陸時の航空機の再配向方法を概略的に示すフローチャートである。説明される航空機は(例えば、図1A~1B、図10A~図10F、及び/又は図11A~図11Cに関して説明したように)、翼と、翼120のピッチ方向に対して固定された斜角に向いたロータとを備える。
ブロック1210において、いくつかの実施形態では、例えば図1Cや図10Aに関連して説明したように、航空機が地上にあり、航空機のプロペラが地面に斜めの方向にある状態で、航空機への積載/搭乗が行われる。プロペラの角度は、例えば約10°~35°、15°~30°の範囲内、又はその他の角度範囲内で任意に選択される。任意選択的に、航空機の翼もまた、例えば、約10°~35°、15°~30°の範囲内、又はその他の角度範囲内で、地面に対して斜めに向いている。任意選択的に、プロペラと翼は地面に対して反対の斜角に配向されており、したがって、それぞれの地面に対する斜角の合計が、互いに相対的な斜角を与える。
ブロック1212において、いくつかの実施形態では、離陸の第1の段階が発生する。この段階は、任意選択的に、着陸装置の一部が、地面への接触、及び地面に対して静止、の両方の状態を保持している間に、航空機を再配向することを含む。いくつかの実施形態では、これには、当初地面に対して斜めを向いている航空機のプロペラが、地面に対して実質的に平行な向きとなるまで、航空機を後方に傾けることが含まれる。いくつかの実施形態では、これは地面に対する翼のピッチ角を増加させることにもなる。
ブロック1214において、いくつかの実施形態では、離陸の第2の段階が発生する。航空機が地面から離れ、ホバリングする。ブロック1212で説明したように地面に接している間に航空機を再配向しなかった場合には、任意選択的に、短時間の左右方向加速の後に、空中で再配向する。ホバリング飛行中、航空機は任意選択的に、前進飛行に遷移するために適切な任意の高度まで上げられる。ブロック1214も本発明のいくつかの実施形態に対して任意選択的なものであり、そのような実施形態のいくつかにおいて、離陸は、ホバリングを回避して、着陸状態から前進飛行へと直接進む。ただし、ホバリング中に高度を増すことの潜在的な利点は、近隣の地上物体との衝突のリスクを低減すること、及び前進飛行を開始する前に航空機を再配向する機会があることの少なくとも一方であり、これは前進速度が獲得された後に大きく旋回操縦をする必要性を潜在的に回避できる。
ブロック1216において、いくつかの実施形態では、前進飛行が後に続く。この前進飛行への遷移には、いくつかの実施形態においては、後方ロータと前方ロータと(あるいは、他の推力装置との)間の出力比率の調整が含まれる。これにより、航空機の傾斜を引き起こし、水平方向への正味推力成分の再配向が付随する。前進飛行への遷移は、航空機が常時下向きのロータ推力によって支持され、それが航空機の浮揚を維持する(例えば、下向きの加速度を防止するか、は高度を維持するか、又はその両方)のに充分である出力体制のときに、任意選択的に発生する。前進速度が大きくなると、翼が揚力を発生させる。任意選択的に、前方ロータ出力と後方ロータ出力との比を調整して、目標とするピッチを維持する。任意選択的に、例えば巡航前進飛行のための目標高度に達すると、翼上を流れる空気流によって少なくとも高度を維持するのに必要な揚力の一部が提供されるまでロータ出力を低減する。これが、垂直推力を提供するためにロータ推力のみを使用する場合よりも潜在的に効率を向上させる。
ここで図12Bを参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、航空機の着陸時の航空機の再配向方法を概略的に示すフローチャートである。説明される航空機は(例えば、図1A~1B、図10A~図10F、及び/又は図11A~図11Cに関して説明したように)、翼と、翼120のピッチ方向に対して固定された斜角に向いた配向されたロータとを備える。
ブロック1220において、いくつかの実施形態では、例えば図12Aのブロック1216で説明したように、航空機は前進飛行をしている。
ブロック1222において、いくつかの実施形態では、着陸の第1の段階の間に、前進速度がキャンセルされる。これは例えば、図10A~図10Cに関連して説明したように、任意選択的に複数の手法の内の1以上を使用して行われる。多くの場合、前進速度のキャンセルは、ロータのピッチを配向して、水平推力成分を減少させるか方向を変えることを含む。いくつかの技術では、追加又は代替的に、航空機全体をヨーイングさせることでロータを再配向してもよい。前進速度のキャンセルはいくつかの実施形態では、例えば、ローリング着陸を実行する場合などにおいて、任意選択的である。
ブロック1224において、いくつかの実施形態では、着陸の第2の段階の間に、航空機はその水平速度がキャンセルされて、ホバリングしながらに降下する。この場合、プロペラの方向は一般的に地面に対して平行である。プロペラが(例えばピッチングにより)異なる方向に向いている場合、その正味の水平推力ベクトルがゼロになるように制御され、航空機が静止したまままでいることを可能とする。
ブロック1226において、いくつかの実施形態では、航空機は図12Aのブロック1210に関連して説明した状態を回復する。
次に図10D~図10Fを参照し、これらは本開示のいくつかの実施形態による、相互に異なる角度となっている、前方ロータ1032Aと後方ロータ1032Bとを有する航空機1035の概略図である。また、図10G~図10Iも参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、相互に異なる角度になっている前方ロータ1052Aと後方ロータ1052Bを有する航空機1055の概略図である。図10D~図10Fにおいて、ロータは、それらの面が航空機の比較的下側又は下方において交差するように相互に傾斜している。図10G~図10Iにおいて、ロータは、それらの面が航空機の比較的上側又は上方において交差するように相互に傾斜している。図10D~図10Iの他の要素は、例えば図10A~図10Cに関して説明したものと任意選択的に同一である。相対的な傾斜は、任意選択的に、最大約7°までの範囲内(例えば5°)で選択される。この傾斜は、傾斜の十分な類似性を保持することで、ホバリングモードと前進飛行モードとの両方においてモータの協働運転を容易にしながら、潜在的に重要な性能チューニング(ホバリング/前進飛行性能に関する、前方モータと後方モータとの任意選択的な差動チューニング)の利点をもたらすのに十分である。任意選択的に、相対的な傾斜は、例えば最大で約15°、30°、又はその他の角度までの異なる範囲内から選択される。ただし、これらの範囲内での差が大きいほど、航空機が最適化されている性能特性に依存して、1以上の飛行モードに対する制御の複雑さが増し、性能的な見返りが減少する結果となる可能性がある。
例えば図1A~図1Bで説明したように、前方ロータ1032A、1052Aと後方ロータ1032B、1052Bは、互いに異なる固定角度(それぞれピッチ面1042、1043、1052、1053に対応する)で配向可能であり、翼1025及び翼面1002に対しても同様である。任意選択的に、着陸状態(図10D、図10G)、ホバリング状態(図10E、図10H)、及び完全な前進飛行(図10F、図10I)の少なくとも一つの間の遷移角度は、図10A~図10Cに示すような、対応する同じ配向構成に関するものと同じ程度に小さい。
任意選択的に、両方のロータの組1032A、1032B、1052A、1052Bは、ホバリング飛行中は、同じ出力で反対のピッチ角(水平に対して)で動作し、任意選択的に、それらはホバリング推力に対して等しい寄与をし、その結果、それぞれの垂直推力は互いに相殺しあう(たとえば図10E、図10Hに示すように)。このホバリング状態は、すべてのロータが垂直である構成とは、制御特性において潜在的に違いがある。それは、出力自体の調整、及び出力により影響を受ける姿勢調整は、ホバリングしようとしている間の水平推力へ影響するからである。制御プログラミング及び電子回路の少なくとも一方は、好ましくはこのことを考慮に入れて構成される。任意選択的に、ホバリング中に異なる出力及び異なる対向ピッチ角の少なくとも一方が使用される。任意選択的に、ロール軸に沿って重心と同じ側にあるロータの組は、異なる配向に設定されたロータの組を含む(例えば、2つの外側ロータがある配向であり、中間のロータが別の配向である)。また垂直ベクトルの正味の方向はロータへ異なる電力供給をすることで制御される。そのような構成に対する制御入力を単純化するために、フライ・バイ・ワイヤ(Fly-by-wire)制御論理が任意選択的に使用される。
図10F、図10Iは、完全な前進飛行姿勢にある航空機1035、1055を示す。ロータ1032B(図10Fの後方)又はロータ1052A(図10Iの前方)は、より水平に近い推力を生成するような方向となっており、その一方で、ロータ1032A、1052Bは、より垂直に近い推力を生成する方向となっている。翼1025によってどれだけの揚力が提供されるかによって、ロータ1032A、1052Bは、任意選択的にかなり抑制され、例えば水平飛行の制御及び維持の少なくとも一方に十分な出力にまで減らされる。対照的に、ロータ1032B又は1052Aのほぼ全推力を、前進推力の提供に利用可能である。前進飛行の方向に対して少し傾いた角度を維持することは、ロータが前進飛行方向に対して完全に直交する向きとなった場合よりも、より低い前進比を維持することによる潜在的な利点と、高速における潜在的により大きな効率とを提供する、ということに留意されたい。
航空機1035、1055が、機体の浮揚維持に十分な揚力が翼1025から生成される前に、誤って(あるいは翼1025の失速に影響されて)前進飛行ピッチに回転された場合、例えばロータ1032A、1052Bへの電力を増加させ、かつ任意選択的にピッチ角を揺動させて戻して、ロータ1032B、1052Aも揚力方向の推力により寄与できるようすることで、航空機1035、1055を、安定飛行モードに戻すことが可能である。
任意選択的に、ロータの十分な揚力(任意選択的に、高度の維持及び下向き加速度の防止の少なくとも一方に十分なロータ単独からの揚力からなる)の回復は、角度変化を同時に必要とせずに、あるいは例えばピッチ角で約5°を超える角度変化を必要とせずに、(飛行揚力を提供するために翼を水平にした)完全な前進飛行ピッチから遂行される。このことは新しい平衡状態でのピッチにおいてロータ推力が航空機のバランスを取る際に潜在的に発生し得る、更なる角度変化を除外するものではない。「必要とせずに」という限定は、航空機の重量をバランスさせ、かつ高度の低下及び下向き加速度の防止の少なくとも一方に十分なだけ提供されている、推力の瞬間的な垂直成分のレベルについて言及する。
いくつかの実施形態において、ロータ推力を飛行前方方向に調整して、対気速度ゼロの状態、低対気速度の状態(例えば、時速約30キロ未満)、及び翼の失速速度より時速10~20キロの範囲内だけ低い対気速度の状態の少なくとも一つから、配向変化なしで翼失速を軽減する。いくつかの実施形態において、航空機の重心の前方及び後方に位置するロータの組は、45°未満、30°未満、又は15°未満の角度だけ互いに対して傾斜した、正味の推力ベクトルピッチを生成する。
(有人航空機の設計)
ここで図11A~図11Eを参照し、これらは本開示のいくつかの実施形態による、任意選択的に有人飛行用に構成された航空機1100の概略図であり、翼1120を備えると共に、翼1120のピッチ方向に対して固定された斜角に配向されたロータ11012を有する。
いくつかの実施形態において、航空機1100は、任意選択的に、その先端にウィングレット1122があり、また任意選択的に、胴体1140頂部に取り付けられた、上向き翼(upswept wing)1121を備えている。乗客/乗員のコンパートメント1141(例えば2人乗員のコンパートメント)は、任意選択的に大きな視程角度を備え、また任意選択的に、航空機の機首近くに低く広がって、ホバリング時に想定されるような後方ピッチ角において下方及び前方の少なくとも一方の視程を増すようにされた透明な円蓋を含む。いくつかの実施形態において、例えば計器ディスプレイ及びユーザインタフェースの少なくとも一方としてパネルディスプレイ1142を使用して、中心線近くに計器を集中させることにより、低く広がる円蓋が容易となる。
後方ロータ1102は、翼1121の後方および上方に延びるアーム1110Bに取り付けられている。前方ロータは、翼1121の前方および下方に延びるアーム1110Aに取り付けられ、任意選択的に前方ロータ1102の中心(例えば、電気モータ1103の中心)を胴体1140の下方に配置する。高翼設計は、下部ロータを胴体1140の下方のあまり遠くない位置に取り付け可能とする潜在的な利点がある。例えば、ロータプロペラ1104のブレードが胴体1140の底部より上に延びるように選択できる。
いくつかの実施形態において、着陸装置キャリッジ1162が前方アーム1110Aに取り付けられる。後方着陸装置キャリッジ1161は、任意選択的に専用支柱によって胴体1140に取付けられる。
航空機1100への入口は、任意選択的に、航空機の前方コックピット窓1143の周りに画定されたドアを介する。これは任意選択的に、例えば航空機の正面の近く又は中心線に沿ってヒンジで接続されており、ドアを開けると、上方向に跳ね上がる。追加又は代替的に、いくつかの実施形態では航空機1100及び航空機1100の貨物倉の少なくとも一方への入口は、胴体1140の後ろかつ下側に位置しており、例えば下面1144に沿っている。任意選択的に、下面1144はドア1145として構成されており(図11D)、これは下方向に回動して開き、任意選択的に、傾斜面及び階段の少なくとも一方を形成する。そのような階段の踏み板は、ドア1145がその正常な開放構成にあって、かつ航空機1100が完全に接地しているときは、水平に延びる方向(着陸装置の接地面によって定義される平面に平行)となっている。
追加又は代替的に、航空機1100への入口は、サイドドア入口、例えば階段1147(これは任意で胴体から折り畳まれる)、及び/又は戸口1148(持ち上げた構成で開くように図示されているが、任意選択的に、戸口1148は異なる方向に開く)を含む構成で提供される。階段1147の踏み板は、航空機1100が通常の着地構成の時は、水平に延びる方向である。本明細書に記載の乗客用の大きさとされた航空機の任意の実施形態では、階段によるアクセスが任意選択的に提供されることに留意されたい。一般的に階段の踏み板は、航空機が完全に着陸しているとき、踏み板が地面に対して平行な状態で展開されるように構成されている。いくつかの実施形態では、結果的に、踏み板及び翼、及び、踏み板及びロータの少なくとも一方が、それぞれが他方に対して斜めに向く構成となる。
ロータ1102と翼1121との相対的に斜めのピッチ角は、図11A~11Cの任意の図において理解することができる。図11Cにおいては、プロペラ1104の面に平行に向くと共に、翼を斜めに横切る面1160が示されている。ここに示す実施形態では、この面はロータ1102のそれぞれとも、ほぼ同じ位置で交差する。これは任意選択的な特徴であり、いくつかの実施形態では、ロータ面はそこからずれており平行である。任意選択的に、例えば本明細書の図10D~10Iに関して説明したように、ロータ面もまた相互に斜交している。
ここで図16を参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、任意選択的に有人飛行用に構成された航空機1600の概略図であり、翼1621を備えると共に、翼1621のピッチ軸方向に対して固定された斜角に配向されたロータ1602を有する。
いくつかの実施形態では、補助ロータ1605が、任意選択的に翼に対して斜角で、翼1621に取り付けられている。この斜角は、ロータ1602の、ロータ-翼間斜角と同じであってもよいし、異なる斜角、例えば、翼1621に作用するロータ1605からの空気流による部分推力ベクトルを考慮に入れて調整される斜角であってもよい。
いくつかの実施形態では、補助ロータ1605は、必要に応じて、ホバリング、水平操縦、加速、減速、及び対向推力の均衡化の少なくとも一つのために(特に、着陸時及び離陸時の少なくとも一方に、また任意選択的に1以上のロータ1602が故障した場合に)追加の推力を提供するように作動する。図16の構成において、ロータ1605は、それを完全な前進飛行に使用すると翼1621の面に直接的に下向きの推力を加える傾向になるので、特に補助的なホバリング推力を提供するための使用に適している。したがって、補助ロータ1605のプロペラは、任意選択的に、ブレードのピッチ角が低対気速度に適するように構成されている。
任意選択的に、補助ロータ1605は、高速前進飛行中の抗力低減のために、ブレードをフェザリングする、後退させる、及び空気流の外で旋回させることの少なくとも一つを行うように構成される。完全な前進飛行中は、ロータ1605のプロペラブレードは任意選択的に、翼1620の空気力学的な影響を最小化する位置に保持される。例えば、ロータ1605のプロペラブレードは、そのもっとも鉛直な位置に、又は翼1621の近接する面に垂直に、又はその両方の位置に保持される。任意選択的に、2つのブレードプロペラがロータ1605に使用される。このことは高速の前進飛行中に、これらのロータからの振動の増加をもたらす可能性があるが、例えばキャビンの快適さへの振動の影響は、これらのロータを離陸、着陸、及び緊急時の少なくとも一つの時に動作することにより、任意選択的に最小化される。
補助ロータ1605は任意選択的に、ロータ1602よりも軽く(例えば、約半分の出力と重量のモータ、ブレードの少ないプロペラ、例えば4つのブレードに対して2つのブレードである)、それにより自重の不利益を低減する。任意選択的に、補助ロータ1605は、ロータ1602よりも相対的に短いプロペラブレードを有する(潜在的に前進飛行中の寄生抗力を低減する)。また任意選択的に、動作時には、毎分より高い回転数で回転して、ブレードサイズが小さいことを補う助けとなり得る。
任意選択的に、補助ロータ1605は、前進飛行中に、余分の推力を生成するために作動され、任意選択的に、例えば着陸操縦中に、逆転して使用される。いくつかの実施形態では、補助エンジンは利便性及び安全性の少なくとも一方に関する要素であるが、航空機の操縦又はその他の通常の耐空性の提供のために必要ではない。いくつかの実施形態では、補助エンジン1605は、例えば安定化のための冗長性を提供する。例えば、衝突などの事象(例えば、複数のロータ取り付けアーム1610A、1610B、及び複数のロータを担持する1つのロータ取り付けアームの少なくとも一つに損傷を与える、背の高い地上の障害物との衝突)は、潜在的に複数のメインモータ1602を動作不能とし、残りのロータ1602では完全に補償できない飛行不安定性を生成する。そのような状態においては、補助ロータ1605を任意選択的に作動させて飛行安定性の少なくとも一部の維持の助けとし、例えば緊急着陸を実行できるまでの間、航空機のバランスを取ることを可能とする。通常、4つのロータ構成では、もし3つのロータ構成に減った場合には、ホバリングでの安定化は極めて困難となる。一方、5、6、又はそれ以上の数のロータであれば、一般的に、ロータの損失があった場合に容易に安定化可能である。
エネルギー収支の考慮に関しては、補助ロータ1605は少なくともいくつかのロータ1602に対するホバリング飛行推力の生成要件を低減することにより潜在的に利点を与える。したがって、これらのロータを前進飛行により効率的に設計することが可能となる(例えば、より大きなブレードピッチを有するように)か、又はホバリング飛行中により低い電力(例えば、より小さいプロペラ失速ゾーン)での運転が可能となるか、又はその両方が可能となる。任意選択的に、補助ロータ1605のプロペラは、航空機が着陸すると、翼に平行に回転して格納される。ブレードが2つのプロペラ構成では、これにより補助ロータブレードが地上装置及び障害物の少なくとも一方との干渉が潜在的に低減される。
航空機1600は着陸装置なしで示されているが、着陸装置は任意選択的に、例えば図11A~11Cに示すように、あるいは別の構成で提供される。図11A~11Cの航空機と比べて、航空機1600は、翼先端のスタビライザではなく、垂直スタビライザ1622上に垂直安定化面を配置している。いくつかの実施形態において、垂直スタビライザ1622は前進飛行において航空機1600に十分な空気力学的安定性を与えるので、前進飛行に関してはヨー安定化のための積極的な能動飛行制御(例えば、ロータプロペラ速度及びロータ推力の少なくとも一方の調整による)は任意選択的に停止される。
胴体1640及び乗客/乗員コンパートメント1641は、任意選択的に胴体1140及び乗客/乗員コンパートメント11140に対応する。
(バランス傾斜するモータ取り付けサブフレーム)
ここで、図2~図4を参照し、これらは本開示のいくつかの実施形態による、航空機200のロータ配向遷移機構を概略的に示す。
いくつかの実施形態において、翼1Bは飛行中に地面に平行に傾斜され(翼-水平)、胴体1Aに固定されて翼-胴体アセンブリ1を形成する。1つ以上のモータ(例えばロータ)8がサブフレーム2に固定され、このサブフレームはヒンジ3で翼胴体アセンブリ1に取付けられて、航空機のピッチ軸を中心に回転可能とされる。
いくつかの実施形態において、サブフレーム2はヒンジ3で自由に回転するが、摩擦装置が回転速度を制限する。
いくつかの実施形態において、サブフレーム2の回転角は、翼及び胴体1に対する最大ピッチダウン角に機械的に制限され、これが、モータ8の推力を航空機の前進軸6に整列させる。ただしこの角度は正確な前進軸方向より小さくても大きくてもよい。
サブフレーム2の回転角は、いくつかの実施形態において、翼及び胴体に対する最大ピッチアップ角に機械的に制限され、ここで、モータ8の推力は航空機200上方及び垂直軸5の僅かに前方に整列される。
胴体と翼の上のヒンジの長手方向位置は、胴体翼アセンブリ1の重心7より後方にある。
ヒンジ3のサブフレーム2上の長手方向位置は、いくつかの実施形態では、サブフレーム2の重心の前にある。高速の前進飛行において、胴体翼アセンブリの揚力中心4は、重心の前方にある。
低速飛行、離陸、着陸、及びホバリングの間は(図2)、翼1Bからの揚力13は小さく、重力10と、ヒンジ3上のモータの垂直揚力9との間のバランスが支配的である。これにより胴体翼アセンブリ1がピッチダウン方向11に回転して、サブフレーム2に対する最大ピッチダウン配向において均衡する。
この配向においてサブフレーム2が揚力を生成し、それにより、胴体1Aと翼1Bの長手軸が、地面に対して僅かにピッチアップした角度15で航空機をホバリングさせる。
ホバリングにおいて、いくつかの実施形態では、航空機の安定性と操縦性は、電子飛行コントローラにより調整されるモータへの差動推力を用いて制御される。
前進飛行を開始するために、航空機200全体が作動推力制御を用いて、胴体1Aと翼1Bの長手軸が地面に平行となる角度までピッチダウンする。この配向では、モータ8の推力の一部が前方を向くので、航空機200は前方へ飛行し始める。
前進速度が増加すると(図3)、胴体翼アセンブリ1で生成される揚力13はより強くなり、ヒンジ3に対する揚力中心によってかかるトルクが、重力による静的バランスでヒンジ3に対してかかる逆のトルクよりも大きくなる。この時点において、胴体1Aと翼1Bによってヒンジ3にかかるピッチアップトルクが、ヒンジに対して胴体1Aと翼1Bのピッチアップ回転12を起こさせる。
いくつかの実施形態では、ヒンジ摩擦装置が任意選択的にこの回転を遅くする。
飛行コントローラは、例えばヒンジ3上のセンサ、サブフレーム2及び胴体-翼アセンブリ1の少なくとも一方の配向センサ、によりヒンジ回転を検知するように構成される。飛行コントローラは、任意選択的に差動推力14をかけてサブフレーム2の配向を変化させ、胴体及び翼のピッチアップを補償及び排除する。
図4は、力のバランスによりサブフレームが機械的停止6まで完全にピッチダウンする、巡航速度での構成を示す。
スローダウンのプロセスはスピードアップの逆である。
前進飛行中、航空機の姿勢は任意選択的に差動推力及び操縦翼面の少なくとも一方によって制御される。
いくつかの実施形態において、飛行制御システムはセンサを備え、胴体-翼アセンブリ1とサブフレーム2との両方の姿勢(ピッチ配向)、及びそれらの間の角度を検知する。これは、ヒンジ3上のセンサ、サブフレーム2及び胴体翼アセンブリ1の少なくとも一方配向センサ、又はその両方によって行うことができる。
いくつかの実施形態においては、飛行制御は、胴体-翼アセンブリ1又はサブフレーム2のいずれかの目標姿勢(ピッチ方向)、又は両方の姿勢の組み合わせの関数である角度を維持するための差動推力を命令するように構成される。
任意選択的に、航空機は胴体-翼アセンブリに固定された追加のモータを備える。いくつかの実施形態においては、追加のモータは前進飛行軸に対して垂直で上向きの推力を有し、ホバリング及び垂直離着陸にのみ使用される。任意選択的に、追加のモータは、例えば図1A~図1Oに関して説明したように、翼1Bの向きに対して斜めの向きに配置される。
追加のモータは任意選択的に、胴体-翼アセンブリの姿勢の制御に使用される。ヒンジは、特に補助モータが使用される場合には、摩擦なしであってよい。逆に、主に胴体-翼アセンブリの姿勢を調整するために、1以上の旋回モータが任意選択的に使用される。この使用は、飛行中の選択された瞬間、例えば、着陸操縦の間に任意選択的に作動され、そこでは補助推力能力の使用が、可変ピッチ操縦に対する選択的な代替手段となる。前進飛行中の進路外への旋回(例えば水平方向への)は、抗力の節約になる可能性がある。旋回は、任意選択的に、旋回モータを順方向又は逆方向の推力モードで作動させてモータを角度限界まで動かすことにより実行される。
航空機200用のモータ(それ自体)は、電気、内燃機関、及びタービンの少なくとも一つを含むが、これらに限定されない。この航空機の空気推力推進には、プロペラ、ダクテッドファン、ジェットエンジン、及びロケットブースタの少なくとも一つが含まれるが、これらに限定されない。
(独立した推力制御のためのサブフレーム傾斜)
ここで図5~図6を参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、航空機500のロータ配向遷移機構を概略的に示す。
いくつかの実施形態においては、有人又は無人の航空機500は4つ以上のプロペラと1つ以上の翼とを備え、翼501Bは飛行中に揚力を提供するために地面に平行にピッチするように構成され、かつ胴体501Aに固定される。モータ504の一部は胴体-翼アセンブリ501に固定され、これらのモータの推力が航空機の垂直軸に沿ってほぼ上向きに整列される(ただしこの角度は任意選択的に、正確な上向き方向より小さいか、又は大きい)。モータ505の別の部分は、ヒンジ503で翼胴体アセンブリ501に取り付けられたサブフレーム502に固定され、これによりサブフレーム502の航空機のピッチ軸を中心とする回転が可能となる。
サブフレーム502は、翼501Bと胴体501Bに対して機械的に制限される最大ピッチアップ角度までの角度内で、ヒンジ上を自由に回転でき、それにより一般的にモータ505の推力を航空機500の前進軸に整列させる。任意選択的に、この角度は航空機の正確な前進軸方向よりも小さいか、又は大きい。
サブフレーム502の回転角は、翼501Bと胴体501Aとに対して機械的に制限される最小ピッチダウン角度に制限され、そのピッチ角では、モータ505の推力が航空機500の垂直軸に沿ってほぼ上向きに整列される。任意選択的に、この角度は正確な上向き方向よりも小さいか、又は大きい。
サブフレーム502上のヒンジ503は、サブフレームモータ推力が上向きであるとき、1つ以上のモータ505がヒンジの前方にあり、1つ以上のモータがヒンジの後方にあるように配置される。飛行コントローラは、ヒンジ上のセンサ、サブフレームと胴体翼アセンブリ上の配向センサ、又はこれらの組合せのいずれかによって、ヒンジ回転を検知する。飛行コントローラは、ヒンジの前方及び後方のサブフレームモータに差動推力を適用して、サブフレームの配向を変えることが可能である。
離陸(図6)、着陸、及びホバリングの間、いくつかの実施形態において、飛行コントローラはサブフレームモータに差動推力を適用して、サブフレームモータ505の推力方向を全体として上向きに維持する。これは例えば、サブフレームヒンジ503の前方のモータ505により大きな推力を加え、サブフレームヒンジ503の後方のモータ505により小さい推力を加えることによって、あるいはサブフレーム502をその最小ピッチダウン角度(及び最も水平に近い角度の少なくとも一方)に「ピン止め」する任意の相対的な推力を加えることによって行われる。
この向きにおいて、サブフレームモータ505及び固定モータ504は、胴体501Aと翼501Bの長手方向が地面と平行となる向き(すなわちその前進飛行の向き)で航空機をホバリングさせる方向に揚力を生成する。ホバリングにおいて、航空機の安定性及び操縦性は、固定モータ504と、サブフレームモータ505の総推力との間の差動推力を使用して制御される。電子飛行コントローラがこの差動推力を調整する。
前進飛行(図5)を始めるために、サブフレームモータ505間に上述とは反対に相対的にバランスするような差動推力を加えることで、サブフレーム502を前方に傾ける。これにより航空機500が前方への飛行を開始する。速度が上昇するにつれ、翼501Bが揚力を生成し、航空機500の浮揚を維持する。いくつかの実施形態において、固定モータ504の推力を低減することで、サブフレーム2の角度をその推力が前方を向くまでピッチダウンさせる。
前進飛行中、航空機の姿勢は、固定モータ504間の差圧推力、操縦翼面(例えば翼501Bの)、及び前述したようなサブフレーム502の角度及び総推力の少なくとも一方の変化、の少なくとも一つにより制御される。
任意選択的に、前進飛行中、いくつかの制御構成により固定モータ504の停止を可能とする。航空機500のモータ(それ自体、すなわち動力源)は、任意選択的に、例えば電気、内燃機関、及びタービンの少なくとも一つの動力源を備える。航空機500の空気推力推進には、任意選択的に、例えば、プロペラ、ダクテッドファン、ジェットエンジン、及びロケットブースタの少なくとも一つが含まれる。
(可変ピッチプロペラ)
ここで図7~図9を参照し、これらは、本開示のいくつかの実施形態による電気モータ配置の概略図であり、電気モータ700の2つの部品間に差動推力をかけることによって、プロペラ回転中にプロペラブレード705、706の迎え角を変更可能である。
いくつかの実施形態では、プロペラを通る空気の軸流速度にしたがって、プロペラ効率と出力を最適化するために、ブレード角度の変更が使用される。任意選択的に、本明細書に記載の任意の航空機の実施形態(例えば、図1A~1O、図10A~11E、図16の実施形態)には、可変ピッチ角ブレードが提供されている。
電気モータ700(これは「モータ自体」であり、すなわちプロペラ705A、706Aを動かすための動力源である)は、いくつかの実施形態では、永久磁石ロータ703、704を回転させるための磁場生成用の導電性ワイヤのコイルが巻かれた磁極を有する、2つのステータ701、702を備える。
2つのステータ701、702は、1つが他方(次の2つ)の前に固定されている。2つのステータ701、702は、寸法及び電気特性が同様でも、異なっていてもよい。
各ステータ701、702の周りに、対応する自由回転するロータ703、704が、回転を可能とするベアリング又はその他のカップリング上に取り付けられる(ロータ703、704はモータ700自体の電気機械的な部品であって、自己完結型の推進ユニットではないことを明確にしておきたい)。各ロータにはステータのコイルに対面する永久磁石がある。2つのロータ703、704は、寸法及び磁気特性が同様でも、異なっていてもよい。
いくつかの実施形態では、1つのロータ703にブレード705A、705B(図8、9)が自由回転ヒンジ707で取り付けられる。このヒンジは、ブレード705A、705Bの回転面に対するブレード迎え角を変化させる方向への回転を可能とする。
各ブレード705Aは、例えば、第2のロータ704にヒンジ接続されたレバー705により、又は、例えば第2のロータ704上の別の歯車又はその一部と噛合する歯を有する歯車又はその一部を含む歯付き機構706により、第2のロータ704にも接続される。
第2のロータ704への接続は、2つのロータ703、704の間の位置の違いが、ブレード705A、705Bの迎え角の変化をもたらすように構成される。
電力は電気モータ制御ユニットから各ステータ701、702へ提供される。2つの電気モータ制御ユニットの出力電力は電子コントローラによって命令される。
この電子コントローラは、例えば航空機制御器及び電子コントローラの少なくとも一方から、スロットル及びプロペラピッチ命令を受信する。
いくつかの実施形態では、コントローラは2つの電子モータコントローラに対して別々の電力レベルを命令する。任意選択的に、2つのユニットによって提供される電力の合計が、スロットル命令で要求される推力に等しい。任意選択的に、またいかなる特定の操作理論にも関係せずに、2つの電子モータコントローラ間の(すなわちそれらにかけられた)電力の差(すなわち電力の変化)が、ピッチ命令によって要求されるプロペラピッチ角の調整をさせる。追加又は代替的に、かついかなる特定の操作理論にも関係せずに、コントローラによって命令された個別の電力レベルを変えることで、プロペラブレードの基部に掛かる力を変更して、プロペラピッチ角を調整する。任意選択的に、電気モータの1つは他方より大幅に強力であり、ブレードを回転させて推力を生成する大部分の力を出す。弱い方の電気モータは、プロペラブレードが空気中を移動する時にプロペラブレードを捩ろうとする力を克服(ブレードへのその連結をてこ力として作用)するのに十分な強さである。
この可変ピッチ方式は、プロペラ付きの電気モータが空中又は水中で推力を生成するために使用される他の用途においても使用可能である。
任意選択的に、センサがピッチ角の制御及び確認の少なくとも一方に使用される。
いくつかの実施形態では、各個別ブレードには、それ自身のピッチ角制御用のステータ/ロータの組が設けられ、例えばメインの動力用ステータ/ロータの組と、4つのブレードのそれぞれに1つ設けられた、4つのピッチ制御用ステータ/ロータの組と、が設けられる。ブレードーステータ/ロータの組の相対的に異なる位置に適応して、機械的結合は互いに異なって構成される。いくつかの実施形態では、この個別化されたブレード姿勢制御は、回転中に、ヘリコプタの場合のようなサイクリックブレード制御機能を実現するために、ブレードピッチを連続的に変化させるように操作される。ヘリコプタはサイクリックブレード制御を使用してロール及びピッチを変化させる。マルチコプタはロール/ピッチ制御をそのロータの差動操作によって達成可能であるが、サイクリックブレード制御を追加することで、例えば、より胴体近く(重心の近く)の位置にあるロータは、他で達成されるものに比べてより大きな姿勢制御の役割を果たす。
(オプションの電気モータ設計と制御方法)
ここで図13を参照し、これは、本発明のいくつかの実施形態による、電気モータ(それ自体)1300の概略ブロック図である。括弧のついたブロックは、モータに複数個含まれるユニットを示す。
いくつかの実施形態では、電気モータ1300(それ自体、さらには、例えば図7の電気モータ700であってもよい)は、導電性ワイヤのコイル1311を有する少なくとも1つのステータ(例えば、ステータ1302)と、一般的なブラシレス電気モータと同様に永久磁石1308を備えるロータ1301(すなわち、電気モータ1300のロータ部品)と、を備える。ただし、一般的なブラシレス電気モータと違って、ここに記載の電気モータの実施形態のステータ上の各コイル1311は、それ自身の導電性ワイヤで巻かれて、他のコイル1311には接続されていない。一般的なブラシレス電気モータにおいては、いくつかのコイルが単一ワイヤで巻かれて相を形成し、相は異なるペアの組み合わせ(例えば3相モータの6つのペアと極性の組合せのそれぞれ)で相互に接続されて、ステータを連続的に回転させる。
またいくつかの実施形態では、各コイル1311が、電力スイッチング部品を含む、それ自身の制御ユニット1312を有する。スイッチング部品は、任意選択的に、所定の極性又は逆の極性でコイルに電力を供給し、コイルの端部に北又は南の磁場を生成するか、コイルから電力を切断するかの切り替えを行うことができる。これらの3つのオプションの切り替えは、例えば最大数千ヘルツの非常に高速で繰り返し切り替えることができる。
各コイル1311の各スイッチングユニットの目的とする状態は、論理回路及び制御用マイクロプロセッサ1313の少なくとも一方で順番に決定される。
任意選択的に、論理回路又は制御用マイクロプロセッサ1313は、各コイルの各コントローラユニットに取り付け可能であるか、或いは、すべてのコイルの電力スイッチングユニットに接続されて制御する中央論理回路又は制御用マイクロプロセッサ(例えば図に示すように)であってもよい。
バッテリ又は他の外部電源1314からの電力は、すべてのコイル制御ユニットに接続された、正又は負の極性のDCバスによって、すべてのコイル制御ユニットへ分配される。
任意選択的に、ロータ位置センサ1315(例えば、一般的なブラシレスモータで知られている1つ以上のタイプの任意のもの)を使用して、ステータ1302に対するロータ1301の位置を判定して、論理回路又はマイクロプロセッサ1314がモータ1300の動作中に切替のタイミングを合わせることを可能とする。任意選択的に、その時通電されていないコイル1311に生成される電流を(逆起電力を用いて)検知することにより、電力が決定される。
モータ1300の一般的なブラシレスモータに対する潜在的な利点は、任意の所与の瞬間に2/3のコイルしか通電されない一般的な3相ブラシレスモータと違って、すべてのコイルを使用してほとんどの時間においてモータに電力を供給できることである。これは、一般的なブラシレスモータに対して、本発明のモータの重量当たりのトルクと出力を潜在的に増加させる。
いくつかの実施形態では、他の潜在的利点として、コイル間をつなぐワイヤ及びモータから出て外部コントローラへ接続する位相ワイヤの排除による、軽量化及び電力損失低減の少なくとも一つがある。
別の潜在的利点としては、一般的なブラシレス電気モータの場合、モータコントローラの故障はモータの故障となるが、電気モータ1300には冗長性が含まれていて、コイルコントローラ1312の故障は、モータ1300の定格出力をコイル1311の数で割ったものにほぼ比例する、部分的な電力低下となることである。
また製造に関する潜在的な利点もある。一般的なモータの製造工程はモータ全体の巻線を必要とするが、モータ1300は、それぞれが自身の制御ユニット1312を有する、同一構成の別個のコイル1311から簡単に組み立てられる。また、メンテナンスにおいて、モータ全体のコイルを解いて巻き直す必要なく、1つのコイル1311を交換することが可能である。
モータ1300は任意選択的に、ステータ1302を内側部品とし、永久磁石ロータ1301を外側とする、又はステータ1302を外側にして永久磁石ロータ1301を内側とする、又はステータ1302とロータ1301とをモータ1300の回転軸に沿う方向に一方を他方の上に積み重ねる、又は一般的なブラシレスモータに使用される他の任意の相対位置とするように構成される。
任意のサイズ及び数の、ステータコイル1311とロータ磁石1308との対を使用可能である。
(プロペラガード)
ここで図14A~図14Cを参照し、これらは本開示のいくつかの実施形態による、航空機の角度付きのプロペラガード1401を概略的に示す。
図14Aは、ロータ1402と共にロータガード1401を含むロータ装置1400を示す。ロータ1402は、少なくとも1つのモータ1406と、関連するプロペラブレード1405とを備える。いくつかの実施形態では、ロータガード1401はプロペラ1402とほぼ同じ面内に配向している。
図14Bは航空機側から見たロータガード1401を示す。図14Cは、航空機の前方、かつロータガード1401の少し上から見たロータガード1401を示す。いくつかの実施形態では、ロータガード1401は水平方向(水平半径方向に)に長く、垂直方向に短い形状の、比較的平坦化された断面の前方部分1401Aを有する。任意選択的に、これは翼断面又は翼状の断面に近い。任意選択的に、この翼状の断面は、航空機の翼120の最適迎え角と同様の最適迎え角の向きとなっている。
いくつかの実施形態では、ロータガード1401の中央部1401Bはより垂直に向いている。すなわち垂直方向により長く、水平方向に(水平な半径方向において)より短い。後部1401Cは任意選択的に断面が平坦化されており、例えば前部1401Aと同じ形状である。ロータガード1401の全体形状は、任意選択で概して短い斜円柱からなるとして理解され、この短い円柱の頂部と底部とが互いに対して一方向にずれている。任意選択的に、ずれることによりロータガード1401を、前進飛行方向に対して最小の輪郭とすることができる。
ロータガード1401の潜在的な利点として、プロペラガード1401による抗力の最小化があり、さらにはプロペラガード1401からの潜在的な揚力の寄与がある。いくつかの実施形態では、ロータ装置1400全体には複数のロータが含まれる(例えば、二重反転プロペラのスタック)。ロータガード1401は任意選択的に傾斜しており、プロペラのスタックと小さな斜角で交差するようになっており、例えば、前部では下側ロータと同一高さであり、後部では上側ロータと同一高さである。
(協調電力供給)
ここで図15を参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、複数のバッテリユニット1501A、1501B、1501C、1501Dを、複数のモータ1502A、1502B、1502C、1502D、1503A、1503B、1503C、1503Dへ接続する電力接続を概略的に示す。モータは航空機の周囲における物理的配置を近似的に示している。バッテリユニットの物理的配置は、任意選択的に任意の適切な配置とされる。モータは反転二重ロータアセンブリとして対となっており、すなわち、1502Aと1503A、1502Bと1503B、1502Cと1503C、1502Dと1503Dの対である。
本開示の複数の実施形態では、航空機の対角線上の対向するコーナーに配置されたモータを含むモータ配置を記述している。一種の潜在的に不安定な飛行モードは、航空機の1つのコーナーの1つ以上のロータが弱くなるか、動作不能になることから生じる。このモードでは、制御がこれを防止するために行使される前に、反対側のコーナーの1つ以上のロータが、航空機を反転させるに十分な推力を提供することがあり得る。例えば、モータ1502Bが非作動になった場合、モータ1502Cから加えられるあらゆる推力は、モータ1502Aと1502Dとを結ぶ線にほぼ平行に延びる軸の周りで航空機全体を回転させようとする。
電気を動力とするシステムにおいては、ロータ故障が発生し得る1つの状況は、バッテリの故障である。本開示のいくつかの実施形態において、ロータ給電は複数のバッテリユニットの間に分配されることで、バッテリユニットの故障が、航空機の安定化において相互に均衡化の役割を有する組のロータに影響するようにする。任意選択的に(例えば、図15に示すように)、複数の別個のバッテリユニットが各ロータの組へ給電する。
したがって、例えばモータ1502Bと1502Cが共通してバッテリユニット1501Aに接続され、モータ1503Bと1503Bが共通してバッテリユニット1501Dに接続される。モータ1502Aと1502Dが共通してバッテリユニット1501Bに接続され、モータ1503Aと1503Dが共通してバッテリユニット1501Cに接続される。いずれか1つのバッテリユニットが故障しても、残りのロータの組をなおもバランス(均衡化)させて動作させることができる。本明細書の記述の目的のために、「均衡化の役割」をするロータの組の中のロータは、航空機の重心及び前進飛行の移動方向に直交して設定される基準フレームに対して、対向するコーナーから作用するように配置される。すなわち、航空機の前部から後部へ延びる中心軸及びその中心軸を横切る水平軸のいずれからも離れて、重心から横方向にずれて配置される。いくつかの実施形態では、均衡化の役割をする複数のロータは、それらの間に位置する少なくとも1つのロータを更に有する。例えば、もしそれがなければ両者の間に制御されない対角回転軸を延在させる傾向があるからである。
(飛行コントローラ)
ここで図17を参照し、これは本開示のいくつかの実施形態による、分散型飛行制御システムの制御ユニット1700を概略的に示す。
いくつかの実施形態では、制御ユニット1700のすべての要素が各個別のロータ(及び、任意選択的に、マルチプロペラロータの各モータ/プロペラサブユニット)に提供される。これにより、1つの飛行コントローラ1701の故障は、1つのモータの動作にしか重大な影響を与えないという潜在的な利点が提供される。
いくつかの実施形態では、飛行コントローラ1701は、オプションとしての慣性計測ユニット(IMU)1702、速度計算(3つの空間軸のそれぞれでの)を実行するモジュール1703、及び、IMU1702から受信する飛行計測データ1714、他の飛行コントローラ1701から受信する飛行計測データ1711、及び任意選択的に中央IMUからの飛行計測データ1712に基づいて、姿勢計算を実行するモジュール1704、の少なくとも一つを含む。制御ユニット1700ごとに個別のIMUを備える実施形態では、飛行計測データ1713は他の飛行コントローラに出力される。
現在の計算された速度1715及び姿勢1716は、命令計算ユニット1705に転送され、そこでは、これらを制御入力1718(例えば操縦桿、飛行管制官、及び姿勢命令の少なくとも一つから受信する)とともに使用して、モータコントローラ1706に与える出力命令1710を生成する。モータコントローラ1706は次いで、モータ1707(例えばロータの動力源)の電力を制御する。任意選択的に、出力命令1710と共に送信される制御命令は、モータ1707動作の他の態様、例えばブレードピッチ、複数のプロペラからなるロータのプロペラの差動制御、あるいは別の制御態様を含む。
いくつかの実施形態では、各飛行コントローラ1701は、モータ1707の近くの位置に配置される。結果として、IMU1702の検知には自動的に、機体及び支柱の屈曲(航空機フレームの屈曲)の少なくとも一方が取り込まれ、それが制御応答時間及び精度の少なくとも一方を改善する可能性を持つ。例えば、取付け支柱の屈曲によりロータ推力姿勢の変化の一部分が吸収されるために、モータ命令が与えられたとき、ロータ推力の方向の完全な、或いは即座の変化は、中央IMUでは検知されない可能性がある。IMU1702をモータ1707の近くに配置することで、この種類の検知の歪みを減少できる可能性がある。
任意選択的に、センサデータの平均や他の組み合わせ、及び選択の少なくとも一つが使用される。いくつかの実施形態では、航空機の目標状態は、すべての飛行コンロローラ1701について同じであり、すべての飛行コントローラ1701によってアクセス可能な現在の推定飛行状態に基づいている。いくつかの実施形態では、推定される現在の飛行状態は、例えば、航空機の複数の飛行コントローラから入力を受信し、結果をそこへ分配して戻す中央コントローラによって計算される。追加又は代替的に、航空機全体の推定された現在の飛行状態は、同じ共通グループのIMU1702からの、任意選択的にはすべてのIMU1702からの、飛行データ1711を用いて、各個別の飛行コントローラ1701において計算される。任意選択的に、1以上のIMUからのデータが、例えば、他のIMU1702からの飛行データとの相関が取れないため、又は別の理由によって、計算から除外される。
いくつかの実施形態では、速度及び姿勢の計算では、ローカルのIMUデータ1714を優先するが、他の利用可能なIMUデータ1711、1712との比較を用いてその検証を行う。いくつかの実施形態では、ローカルのIMUからのデータ1714は、より動的な(例えば制御入力の変化する)飛行期間の間は、特別の優先及び関連性の少なくとも一方が与えられ、これにより応答速度が上がり、制御共振が低減される可能性がある。
特に姿勢に関しては、姿勢計算モジュール1704は、利用可能な全入力の平均値か他の組合せ及び/又は選択(例えば通常予想される測定値の変動と一致する最も極端な検知された姿勢)を任意選択的に使用し、異なるロータが異なる姿勢となるように操縦させようとする姿勢検知の歪みを潜在的に回避する。
ローカルデータに、他の入力の総体的一致内容との不合理な違いがみられる場合(例えば機体が損傷を受けていないとの仮定の下に、物理的に非現実的な大きさで、大部分の他の入力と異なっている場合)、任意選択的にそれを無視して他の利用可能なデータを選んでもよい。同様に、他のデータソースからの個々の入力は、それが、例えば他の大部分のデータソースと矛盾する不合理な示度を与える場合、任意選択的に無視してもよい。
任意選択的に、他の利用可能なIMUデータ1711、1712は、ローカル飛行コントローラ1701に、例えば、他の制御ユニット1700がどのように反応する可能性が高いかを考慮に入れた、より高度な制御決定をさせるようにする。任意選択的に、ロータは、「番犬」信号を相互に提供し、その継続的な機能状態を示し、正常動作に失敗するか部分的に失敗するとき相互に報告するように構成されている。任意選択的に、飛行制御システムモジュールは、1以上のロータが報告及び正常動作の少なくとも一方をやめたことを検知すると、より完全に独立制御に頼る(あるいは、それに代わって、より完全に集中制御に頼る)、フォールバックモードに入る。任意選択的に、集中制御と独立制御のいずれを選択するかは、検出される故障のパターンに依存する。
ただし、各飛行コントローラが、少なくとも通常は、全面的又はほとんど全面的にそれ自身のセンサの示度に依存することが、簡単さ、及び飛行特性の解析可能性の少なくとも一方の点で潜在的な利点がある。これらは、いずれの場合においても、本質的に残りの制御システムの複合的な挙動をまとめて「検知している」ものとしても理解することができる。各個別の飛行コントローラ1701が、与えられた制御入力1718の組に応答するために、自分自身のIMUデータの状態が何であるべきかを「知っている」限りは、電力を増加させ、電力を減少させ、又はその他の方法でモータ1707を制御して、航空機をその目標状態に向けて速度及び方向を動かすように動作することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、飛行コントローラ1701(任意選択的に別の飛行コントローラ構成)は、複数の反転プロペラを備えるロータの、1つだけのプロペラの回転方向の回転速度を制御することにより、ヨーを制御するように構成されている。任意選択的に、ロータは、ヨー方向に一部の推力を向ける傾斜で配向される。この制御方法は、潜在的に、ヨー推力とヨートルクの両方を、例えば概説で述べたようにヨーオーソリティの行使に使用されることを可能とする。
(総論)
この出願から満了する特許の存続期間の間に、駆動推力生成モータのための多くの関連する動力源が開発されることが予想されるが、動力源という用語の範囲は、そのような新技術を先験的に含むことを意図している。
本明細書において量又は値に関して使用される「約」という用語は「±10%以内」を意味する。
用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、及びそれらの活用形は、「含むがそれに限らない」ことを意味する。
「からなる」という用語は、「含み、かつ限定される」ということを意味する。
「本質的に~からなる」という用語は、組成、方法又は構造が追加的な成分、ステップ及び部分の少なくとも一つを含み得るが、その追加的な成分、ステップ及び部分の少なくとも一つが特許請求の組成、方法又は構造の基本的かつ新規の特性を実質的に変更しない場合に限る、ことを意味する。
本明細書で使用の、単数形の「1つの(a、an)」、「前記(the)」は文脈が明確にそうでないことを指示しない限り、複数の言及も含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を、それらの混合物も含めて含み得る。
「例」及び「例示的」という用語は、本明細書では、「例、実例又は例示に供する」という意味で使用される。「例」又は「例示的」として記述されるあらゆる実施形態は、他の実施形態よりも好適又は有利であるとして、又は他の実施形態の特徴を組み込むことを排除するとして、またはその両方として、必ずしも解釈されるべきではない。
「任意選択的に(optionally)」という用語は、本明細書においては、「ある実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するように使用される。本開示の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が相反しない限り、複数の「任意選択的な」特徴を含み得る。
本明細書で使用の「方法」という用語は、与えられたタスクを達成するための、やり方、手段、技術及び手順を指し、これに限らないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の専門家に既知であるか又はそれらの専門家により、既知のやり方、手段、技術及び手順から容易に開発される、そのようなやり方、手段、技術及び手順を含む。
本明細書で使用の「対処する(treating)」という用語は、状態の進行を無効にする、実質的に抑制する、遅延させる又は逆行させること、状態の臨床的又は審美的な症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
本出願を通して、実施形態は範囲形式を参照して提示され得る。範囲形式の記述は、単に便宜的かつ簡単のためのものであって、本開示の記述の範囲の一定不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は、その範囲内の個別の数値と共にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、「1~6」というような範囲の記述は、その範囲にある個別の数字、例えば1、2、3、4、5、6、と共に、「1~3」「1~4」「1~5」「2~4」「2~6」「3~6」などの具体的に開示された部分範囲を有すると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに拘わらず適用される。
本明細書に数値範囲(例えば「10~15」、「10から15」、あるいは別のそのような範囲を示すもので結合された任意の数字の対)が示されるときはいつでも、文脈に明確にそうでないことが指示されない限り、示された範囲の限界内の任意の数(分数又は整数)が、その範囲の限界を含めて含まれることが意味される。第1の指定数と第2の指定数と「にわたる/にわたった/の間の範囲の」という句、及び、第1の指定数「から」第2の指定数「まで(to)」、「最大で(第2の指定数)まで(up to)」、「まで(until)」、第2の指定数を「含んでそこまで(through)」「にわたる/にわたった/の間の範囲の」という句は、本明細書では互換可能に使用されて、第1の指定数及び第2の指定数、並びにその間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
本開示の説明は、特定の実施形態とともに提供したが、多くの代替、修正、及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、本開示の説明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にあるそのような代替、修正及び変形のすべてを包含することが意図されている。
本明細書で言及したすべての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許又は特許出願が具体的かつ個別的に参照により本明細書に組み込まれるように表示された場合と同じ程度に、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願中のいかなる参照の引用または特定は、そのような参照が本開示に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクション見出しに使用される限りでは、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
特定の特徴は、わかりやすくするために本開示では別々の実施形態の文脈に記述されていても、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈中に記述される本発明の様々な特徴は、別々または適切な部分的組合せで提供されることも、又は本開示の任意の他の説明された実施形態に適切であるとして提供されることも、可能である。様々な実施形態の文脈で記述される特定の特徴は、これらの要素なしではその実施形態が動作不能でない限りは、これらの実施形態の必須の特徴とは見なされない。
さらに、本出願のあらゆる優先権書類は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。