以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における絶縁性樹脂シートは、図1に示すように、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを含有する成形材料1を用いた溶融押出成形法で薄いフィルムに成形される絶縁性樹脂フィルム2であり、電線の絶縁被覆用、モータの絶縁用、高周波回路基板用、スラストワッシャー用、各種テープ用等として利用されることにより、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
絶縁性樹脂フィルム2は、300℃以上の融点を有する結晶性熱可塑性ポリイミド(結晶性TPI)樹脂100質量部と、溶融流動性を有するフッ素樹脂0.5質量部以上100質量部以下とを少なくとも含有する成形材料1を用いた溶融押出成形法で薄膜の帯形に成形される。この絶縁性樹脂フィルム2の成形材料1は、少なくとも300℃以上の融点を有する結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部と、絶縁性や接着性に優れ、溶融流動性を有するフッ素樹脂0.5質量部以上100質量部以下とを含有し、これら結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とが混練されることで調製される。
成形材料1には、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂が使用されるが、これは非晶性熱可塑性ポリイミド樹脂を使用すると、耐熱性が低くなり、250℃を越えるよう温度環境下では絶縁性樹脂フィルム2が変形あるいは溶融してしまうからである。この成形材料1の結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂は、機械的性質、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、低吸水性、電気的特性等に優れ、粉状、顆粒状、フレーク状、ペレット状のいずれかに形成される。また、単独あるいは2種類以上がブレンドして使用される。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、例えば4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルに一種以上のテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸を脱水環化して得られる結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂があげられる。4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルに一種以上のテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸を脱水環化して得られる熱可塑性ポリイミド樹脂に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物があげられる。これらの中では、ピロメリット酸二無水物が最適である。テトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは2種以上混合して用いられる。
4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルに一種以上のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミド酸を脱水環化して得られる熱可塑性ポリイミド樹脂としては、特公平08-022952号公報記載の熱可塑性ポリイミド樹脂があげられる。製品例としては、三井化学社製の製品名:オーラムシリーズがあげられる。
この結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点は、300℃以上、好ましくは350℃以上450℃以下、より好ましくは370℃以上430℃以下、さらに好ましくは370℃以上400℃以下である。この結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、あるいは変性体も使用することができる。形状は、粉状、フレーク状、ペレット状、塊状等、いかなる形状でも良い。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の他の具体例としては、上記例の他、テトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミン成分を主成分とするジアミン成分からなる結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂があげられる。この結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂のテトラカルボン酸成分としては、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ピロメリット酸等が該当する。また、これらのアルキルエステル体も使用することが可能である。
これらの中でも、テトラカルボン酸成分のうち、50モル%を越える成分がピロメリット酸であることが好ましい。これは、テトラカルボン酸成分がピロメリット酸を主成分とすれば、絶縁性樹脂フィルム2の耐熱性、二次加工性、及び低吸水性が向上するからである。係る観点から、テトラカルボン酸成分のうち、ピロメリット酸は、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が良い。とりわけ、テトラカルボン酸成分の全て(100モル%)がピロメリット酸であるのが最適である。
熱可塑性ポリイミド樹脂のジアミン成分は、脂肪族ジアミン(脂環族ジアミンをも含む)を主成分とすることが重要である。すなわち、ジアミン成分のうち、50モル%を越える成分が脂肪族ジアミンであることが重要であり、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。とりわけ、ジアミン成分の全て(100モル%)が脂肪族ジアミンであるのが最適である。この主成分が脂肪族ジアミンであることにより、絶縁性樹脂フィルム2に優れた耐熱性、低吸水性、成形性、及び二次加工性を付与することができる。
ジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミンとしては、炭化水素基の両末端にアミン基を有するジアミン成分であれば、特に限定されるものではないが、耐熱性を重視する場合には、環状炭化水素の両末端にアミン基を有する脂環族ジアミンを含むことが好ましい。この脂環族ジアミンの具体例としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等があげられる。これらの中では、耐熱性と成形性、二次加工性を両立できるという観点から、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが最適である。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の溶融押出成形性や絶縁性樹脂フィルム2の二次加工性を重視する場合には、ジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミンとして、直鎖状炭化水素の両末端にアミン基を有する直鎖状脂肪族ジアミンを含むことが好ましい。この直鎖状脂肪族ジアミンとしては、アルキル基の両末端にアミン基を有するジアミン成分であれば、特に制限されるものではないが、具体例として、エチレンジアミン(炭素数2)、プロピレンジアミン(炭素数3)、ブタンジアミン(炭素数4)、ペンタンジアミン(炭素数5)、ヘキサンジアミン(炭素数6)、ヘプタンジアミン(炭素数7)、オクタンジアミン(炭素数8)、ノナンジアミン(炭素数9)、デカンジアミン(炭素数10)、ウンデカンジアミン(炭素数11)、ドデカンジアミン(炭素数12)、トリデカンジアミン(炭素数13)、テトラデカンジアミン(炭素数14)、ペンタデカンジアミン(炭素数15)、ヘキサデカンジアミン(炭素数16)、ヘプタデカンジアミン(炭素数17)、オクタデカンジアミン(炭素数18)、ノナデカンジアミン(炭素数19)、エイコサン(炭素数20)、トリアコンタン(炭素数30)、テトラコンタン(炭素数40)、ペンタコンタン(炭素数50)等が該当する。
これらの中では、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の溶融押出成形性や絶縁性樹脂フィルム2の二次加工性、低吸湿性に優れるという観点から、炭素数4~12の直鎖状脂肪族ジアミンが最適である。これらの直鎖状脂肪族ジアミンは、炭素数1~10の枝分かれ構造を有するものでも良い。
ジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミン以外の成分としては、他のジアミン成分を含んでいても良い。具体的には、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)1,4’-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(3-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,6-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン成分、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等のエーテルジアミン成分、シロキサンジアミン類等が該当する。
ジアミン成分は、脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンのいずれか、又は両方を含んでも良いが、耐熱性と成形性のバランスに優れることから、脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンの両方を含むことが好ましい。脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンを両方含む場合、それぞれの含有量は、脂環族ジアミン:直鎖状脂肪族ジアミン=99:1~1:99モル%の範囲であることが好ましく、90:10~10:90モル%であることがより好ましく、80:20~20:80モル%であることがさらに好ましく、70:30~30:70モル%であることが特に好ましく、60:40~40:60モル%が最適である。これは、ジアミン成分に含まれる脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンの割合が係る範囲であれば、絶縁性樹脂フィルム2の耐熱性と結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の溶融押出成形性のバランスを向上させることができるからである。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点(融解温度ともいう)は、300℃以上、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは300℃以上350℃以下、さらに好ましくは310℃以上340℃以下が良い。これは、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が300℃未満の場合には、耐熱性を有する絶縁性樹脂フィルム2を得ることができないという理由に基づく。これに対し、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が400℃を越える場合には、絶縁性樹脂フィルム2の溶融押出成形中に溶融流動性のフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、あるいは変性体も使用することが可能である。また、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の形状は、粉状、フレーク状、ペレット状、塊状等、いかなる形状でも良い。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂は特に限定されるものではないが、特許第5365762号公報、特許第6024859号公報、特許第6037088号公報記載、あるいは特許第6394662号公報記載の熱可塑性を有するポリイミド樹脂、好ましくは特許第6024859号公報、特許第6037088号公報記載、あるいは特許第6394662号公報に記載された熱可塑性のポリイミド樹脂が好適である。この結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、高強度、高耐熱性、高耐溶剤性、結晶性、フィルム成形性に優れるサープリムシリーズ〔三菱瓦斯化学社製:製品名〕があげられる。
このようなテトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミン成分を主成分とするジアミン成分とからなる結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂は、融点が300℃以上、好ましくは300℃以上370℃以下であるため、溶融押出成形を400℃未満の温度で実施することができ、しかも、成形中のフッ素樹脂の分解を防止することができるので、成形性の観点から最適である。
フッ素樹脂は、溶融流動性を有し、融点未満の場合には、固体であるタイプが好ましい。これは、固体ではなく、液体の場合、成形された絶縁性樹脂フィルム2から滲み出し、絶縁性樹脂フィルム2と接触している物品を汚染させるからである。この溶融流動性を有するフッ素樹脂の形状は、粉状、フレーク状、ペレット状、塊状等、いかなる形状でも良い。
溶融流動性を有するフッ素樹脂の具体例としては、融点が302~310℃のポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、以下、PFA樹脂という、連続最高使用温度:260℃)、融点が250~275℃のテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体樹脂、以下、FEP樹脂という、連続最高使用温度:205℃)、融点が218~270℃のテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体樹脂(四フッ化エチレン-エチレン共重合体樹脂、ETFE樹脂、連続最高使用温度:150℃)、融点が210~216℃のポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(三フッ化塩化エチレン樹脂、PCTFE樹脂、連続最高使用温度:120℃)、融点が160~180℃のポリビニデンフルオライド樹脂(フッ化ビニリデン樹脂、PVdF樹脂、連続最高使用温度:120℃)、融点が120~250℃のフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(連続最高使用温度:80~120℃)、接着性フッ素樹脂等があげられる。
係るフッ素樹脂の中では、融点が250℃以上、連続最高使用温度が200℃以上で耐熱性に優れ、入手のし易さ、取扱性、コストの観点から、PFA樹脂、FEP樹脂、接着性フッ素樹脂が好ましく、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に対する分散性が優れる接着性フッ素樹脂がより好ましい。PFA樹脂とFEP樹脂は、単独あるいはブレンドして使用することができる。
接着性フッ素樹脂は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂への分散性、溶融流動性、耐薬品性、耐熱性、機械的性質、低誘電特性等に優れる点から、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという)、及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという)に基づく繰り返し単位(a)、ジカルボン酸無水物基を有し、かつ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(b)、及びその他のモノマー(但し、繰り返し単位(a)、(b)と重複する場合には、そのモノマーを除く)に基づく繰り返し単位(c)を含有する。
係る接着性フッ素樹脂において、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、及び繰り返し単位(c)の合計モル量に対し、繰り返し単位(a)が50~99.89モル%、繰り返し単位(b)が0.01~5モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1~49.99モル%である。好ましくは繰り返し単位(a)が50~99.47モル%、繰り返し単位(b)が0.03~3モル%であり、繰り返し単位(c)が0.5~49.97モル%、より好ましくは繰り返し単位(a)が50~98.95モル%、繰り返し単位(b)が0.05~2モル%であり、繰り返し単位(c)が1~49.95モル%が良い。
これは、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、及び繰り返し単位(c)のモル%が係る範囲にあれば、接着性フッ素樹脂の耐熱性や耐薬品性が向上するからである。また、繰り返し単位(b)のモル%が係る範囲にあれば、接着性フッ素樹脂の結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂との接着性が向上するからである。さらに、繰り返し単位(c)のモル%が係る範囲にあれば、接着性フッ素樹脂の成形性や耐ストレスクラック性等の機械物性が向上するからである。
上記「ジカルボン酸無水物基を有し、かつ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマー」(以下、単に環状炭化水素モノマーと略称する)は、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素であって、しかも、ジカルボン酸無水物基と環内重合性不飽和基を有する重合性化合物をいう。
環状炭化水素としては、1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素が好ましい。すなわち、有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、有橋多環炭化水素の2以上が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素が縮合した環状炭化水素であることが好ましい。また、環状炭化水素モノマーは、環内重合性不飽和基、すなわち炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基を1つ以上有する。この環状炭化水素モノマーはさらにジカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有し、ジカルボン酸無水物基は炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合していても良く、環外の2つの炭素原子に結合していても良い。
ジカルボン酸無水物基は、上記環状炭化水素の環を構成する炭素原子であって、かつ隣接する2つの炭素原子に結合することが好ましい。さらに、環状炭化水素の環を構成する炭素原子には、水素原子の代わりに、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、その他の置換基が結合していても良い。具体例としては、以下の式(1)~(8)で表されるものがあげられる。ここで、式(2)、(5)~(8)におけるRは、炭素原子数1~6の低級アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子、上記低級アルキル基中の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基を示す。
上記環状炭化水素モノマーとしては、好ましくは式(1)で表される5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、NAHという)、式(3)、(4)で表される酸無水物である環状炭化水素モノマー、式(2)、及び式(5)~(8)において、置換基Rがメチル基である環状炭化水素モノマーがあげられる。より好ましくはNAHが良い。
その他のモノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、VdFという)、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという)、CF2=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでも良いペルフルオロアルキル基)、CF2=CFORf2SO2X1(Rf2は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでも良いペルフルオロアルキレン基、X1はハロゲン原子又は水酸基)、CF2=CFORf2CO2X2(ここで、Rf2は上記と同じ、X2は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ここで、pは1又は2)、CH2=CX3(CF2)qX4(ここで、X3及びX4は、互いに独立に水素原子、又はフッ素原子、qは2~10の整数)、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2~4のオレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等があげられる。その他のモノマーは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
CF2=CFORf1の具体例としては、例えばCF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等があげられる。好ましくは、CF2=CFOCF2CF2CF3である。また、CH2=CX3(CF2)qX4の具体例としては、例えばCH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等があげられる。好ましくは、CH2=CH(CF2)4F又はCH2=CH(CF2)2Fである。
その他のモノマーとしては、好ましくはVdF、HFP、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く)、CF2=CFORf1、CH2=CX3(CF2)qX4、エチレン、プロピレン、及び酢酸ビニルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、HFP、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く)、CF2=CFORf1、エチレン、及びCH2=CX3(CF2)qX4からなる群から選ばれる1種以上である。最も好ましくは、HFP又はCF2=CFORf1である。また、CF2=CFORf1としては、Rf1が炭素数1~6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2~4のペルフルオロアルキル基がより好ましく、ペルフルオロプロピル基が最適である。
接着性フッ素樹脂の具体例としては、例えば、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/NAH共重合体、TFE/HFP/NAH共重合体、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/HFP/NAH共重合体、TFE/VdF/NAH共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)4F/NAH/エチレン共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)2F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)4F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)2F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)2F/NAH/エチレン共重合体等があげられる。
係る接着性フッ素樹脂の融点は、150℃以上320℃以下が好ましく、200℃以上310℃以下がより好ましい。この融点は、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、及び繰り返し単位(c)の含有割合を上記範囲内で適宜選定して調整することができる。
接着性フッ素樹脂の高分子末端基としては、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物残基等の接着性官能基を有すれば、接着性フッ素樹脂以外の結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂との接着性に優れるので好ましい。また、接着性官能基を有する高分子末端基は、接着性フッ素樹脂の製造時に、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより、導入することができる。
接着性フッ素樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、ラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が用いられる。この重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体、及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体、並びに乳化剤を使用する乳化重合があげられるが、特に溶液重合が望ましい。
接着性フッ素樹脂は特に限定されるものではないが、好ましくは特許第4424246号公報、特許第5263269号公報、特許第5365939号公報記載、あるいは特開2019-43134号公報記載の接着性フッ素樹脂があげられる。この接着性フッ素樹脂の製品例としては、LH-8000〔AGC社製:製品名〕、AH-5000〔AGC社製:製品名〕、AH-2000〔AGC社製:製品名〕、EA-2000等〔AGC社製:製品名〕があげられる。これら接着性フッ素樹脂の中では、耐熱性に優れるEA-2000が好適である。
溶融流動性を有するフッ素樹脂の温度350℃における見掛けの剪断粘度は、荷重50kgfが作用する場合、1×101Pa・s以上1×105Pa・s以下、好ましくは1×102Pa・s以上7×104Pa・s以下、より好ましくは5×102Pa・s以上5×104Pa・s以下、さらに好ましくは7×102Pa・s以上3×104Pa・s以下の範囲内とされる。これは、係る範囲の見掛けの剪断粘度であれば、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂中に溶融流動性を有するフッ素樹脂を均一に分散させることができ、絶縁性、機械的特性、滑り性、優れた絶縁性樹脂フィルム2の製造が期待できるからである。
逆に、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度が1×101Pa・s未満の場合には、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に対する溶融流動性を有するフッ素樹脂の分散性に劣るため、絶縁性樹脂フィルム2からフッ素樹脂が分離してしまい、目ヤニ化して絶縁性樹脂フィルム2の品質低下を招くからである。また、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの溶融粘度が1×105Pa・sを越える場合には、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に対する溶融流動性を有するフッ素樹脂の均一分散性が低下し、絶縁性樹脂フィルム2中で溶融流動性を有するフッ素樹脂がダマ状となり、絶縁性や機械的特性の低下を招くからである。
溶融流動性を有するフッ素樹脂の温度350℃における見掛けの剪断粘度は上記範囲から逸脱すると、絶縁性樹脂フィルム2から溶融流動性を有するフッ素樹脂が分離して目ヤニの発生原因となり、絶縁性樹脂フィルム2の品質低下を招くが、この点について詳しく説明すると、絶縁性樹脂フィルム2をフィルム成形する場合、ダイスの出口(ダイリップとも言う)に目ヤニと呼ばれる多量の付着物が付着して堆積することがある。係る目ヤニが堆積すると、絶縁性樹脂フィルム2にダイラインが生じたり、目ヤニがダイス出口から離れて絶縁性樹脂フィルム2に混入し、その結果、絶縁性樹脂フィルム2の品質低下を招くのである。
フッ素樹脂の中で最も耐熱性に優れ、比誘電率が小さい樹脂はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂であるが、このポリテトラフルオロエチレン樹脂は、溶融流動性が非常に低く、温度350℃における見掛けの剪断粘度が荷重50kgfの作用する場合、1×105Pa・sを越えたり、あるいは溶融流動しないため、測定することができない。また、溶融流動性が非常に低いため、300℃以上の融点を有する結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に添加し、300℃以上の温度で溶融混練すると、ポリテトラフルオロエチレン樹脂が溶融凝集し、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂中でダマ状となり、均一分散することができない。したがって、比誘電率が均一な絶縁性樹脂フィルム2を製造することは困難である。
溶融流動性を有するフッ素樹脂の添加量は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して0.5質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上70質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上30質量部以下が良い。これは、溶融流動性を有するフッ素樹脂の添加量が0.5質量部未満の場合には、絶縁性樹脂フィルム2の比誘電率が低下しないおそれがあるからである。これに対し、100質量部を越える場合には、成形材料1の溶融伸びが低下し、絶縁性樹脂フィルム2の成形中にフィルムに孔開きが発生したり、絶縁性樹脂フィルム2の機械的強度が大幅に低下するおそれがあるからである。また、溶融した結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂からなる成形材料1が溶融押出成形機10内で滑り、溶融押出成形機10内に成形材料1を供給することができず、その結果、絶縁性樹脂フィルム2を成形することができなくなるおそれがあるからである。
絶縁性樹脂フィルム2の成形材料1は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂を含有する他、本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルペンテン(PMP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、脂肪族ポリケトン樹脂を含有しても良い。
また、成形材料1には、本発明の特性を損なわない範囲において、上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、核剤、無機化合物、有機化合物等を選択的に添加することもできる。
上記において、絶縁性樹脂フィルム2を製造する場合には、先ず、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを用意し、これらにより成形材料1を調製して樹脂フィルム成形用の溶融押出成形機10に投入し、厚さ1000μm以下、例えば1μm以上1000μm以下の絶縁性樹脂フィルム2を製造する。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂は、溶融流動性を有するフッ素樹脂との溶融混練前に含水率を低下させるため、加熱乾燥されることが好ましい。加熱乾燥法としては、熱風循環乾燥法、除湿熱風乾燥法、加熱真空乾燥法、マイクロ波乾燥法等の公知の方法があげられる。結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の加熱乾燥温度は、熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点-50℃以上熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点+50℃以下、好ましくは熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点-30℃以上熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点+30℃以下、より好ましくは熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点-20℃以上熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点+20℃以下が良い。また、加熱乾燥時間は、2時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上が良い。加熱乾燥時間の上限は、特に限定されるものではないが、24時間以下が妥当である。
成形材料1の調製方法としては、(1)結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを常温(0℃以上50℃以下程度の温度範囲)下で攪拌混合し、成形材料1を調製する方法、(2)結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを攪拌混合することなく、溶融した結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に溶融流動性を有するフッ素樹脂を添加し、これらを溶融混練して成形材料1を調製する方法があげられる。
(1)の調製方法について説明すると、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂との攪拌混合には、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、V型混合機、ナウタリーミキサー、リボンブレンダー、万能攪拌ミキサー等の公知の攪拌混合機が使用される。また、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂からなる成形材料1は、これらからなる攪拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、単軸押出成形機、多軸押出成形機(二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等)等からなる溶融混練機で溶融混練することにより調製することができる。
溶融混練機で成形材料1を溶融混練する場合、溶融混練機のベント孔に真空ポンプを接続し、この真空ポンプを駆動して成形材料1を減圧下で溶融混練することができる。減圧下で溶融混練すれば、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂や溶融流動性を有するフッ素樹脂中に含まれている分解ガスや水分等の揮発ガスを除去することができるので、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の含水率を低下させることができ、溶融流動性を有するフッ素樹脂との混練前における結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の加熱乾燥が不要となる。
また、溶融混練機で成形材料1を調製する場合、溶融混練機の原料投入口にヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス等の不活性ガスを必要に応じて流入させることができる。こうすれば、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂や溶融流動性を有するフッ素樹脂の酸化劣化、酸素架橋を有効に防止することができる。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを溶融混練する場合の温度は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点以上、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点以上結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度未満、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲が良い。
具体的には、280℃以上400℃未満、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは330℃以上360℃以下が良い。これは、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点未満、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の調製が困難となり、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度以上、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを攪拌混合する場合、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に溶融流動性を有するフッ素樹脂を所定量以上分散させ、マスターバッチ化することができる。また、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とからなる成形材料1は、ストランド状やシート状等に押し出された後、粉砕機や裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等の絶縁性樹脂フィルム2の成形加工に適した形態に加工して使用することができる。
次に、(2)の調製方法について説明すると、この調製方法の場合には、先ず、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出成形機、多軸押出成形機(二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等)等からなる溶融混練機で溶融混練し、その後、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に溶融流動性を有するフッ素樹脂を添加して溶融混練させることにより、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを含有した成形材料1を調製する。
溶融混練機で成形材料1を溶融混練する場合、上記同様、溶融混練機のベント孔に真空ポンプを接続し、この真空ポンプを駆動して減圧下で成形材料1を溶融混練しても良い。減圧下で溶融混練すれば、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂や溶融流動性を有するフッ素樹脂中に含まれている分解ガスや水分等の揮発ガスの除去を図ることができるので、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の含水率低下が期待でき、溶融流動性を有するフッ素樹脂との混練前における結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の加熱乾燥が不要となる。
溶融混練機で成形材料1を調製する場合、上記同様、溶融混練機の原料投入口に、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス等の不活性ガスを必要に応じて流入させることができる。この流入により、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂の酸化劣化や酸素架橋を有効に防止することができる。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを溶融混練する場合の温度は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点以上、溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点以上結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度未満、溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、280℃以上400℃未満、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは330℃以上360℃以下が良い。これは、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点未満、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の調製が困難となり、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度以上の場合、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂や溶融流動性を有するフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とを攪拌混合する場合、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に溶融流動性を有するフッ素樹脂を所定量以上分散させ、マスターバッチ化することができる。また、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂からなる成形材料1は、ストランド状やシート状等に押し出された後、粉砕機や裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等の絶縁性樹脂フィルム2の成形加工に適した形態に加工して使用することが可能である。
成形材料1の溶融押出成形機10に投入される前の含水率(水分率)は、熱風乾燥機等により、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下に調整される。これは、含水率が2000ppmを越える場合には、絶縁性樹脂フィルム2の発泡を招くおそれがあるからである。
結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂含有の成形材料1を用い、絶縁性樹脂フィルム2を製造する場合には、溶融押出成形法、カレンダー成形法、又はキャスティング成形法等の公知の製造方法を採用することができる。しかしながら、絶縁性樹脂フィルム2の厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上、設備の簡略化の観点から、絶縁性樹脂フィルム2を連続して帯形に押出成形する溶融押出成形法が最適である。ここで、溶融押出成形法とは図1に示すように、溶融押出成形機10を使用して成形材料1を溶融混練し、溶融押出成形機10のTダイス13からなるダイスで絶縁性樹脂フィルム2を連続的に押し出す成形方法である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料1を溶融混練するように機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料1用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、へリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料1の酸化劣化や酸素架橋の有効防止が期待できる。
溶融押出成形機10の溶融混練時の温度は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点以上、溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点以上結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度未満、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、280℃以上400℃未満、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは330℃以上360℃以下が良い。
これは、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点未満、溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形が困難となり、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂や溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形の絶縁性樹脂フィルム2を下方に位置する複数の圧着ロール16と冷却ロール17方向に連続的に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の融点、溶融流動性を有するフッ素樹脂の融点以上結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度、あるいは溶融流動性を有するフッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲である。
具体的には、280℃以上400℃以下、好ましくは300℃以上370℃以下、さらに好ましくは330℃以上360℃以下に調製される。これも上記同様、成形材料1の溶融押出成形に支障を来し、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂や溶融流動性を有するフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15とフィルタとがそれぞれ装着されることが好ましい。ギアポンプ15は、溶融押出成形機10により溶融混練された成形材料1を一定の流量で、かつ高精度に下流のフィルタに移送する。また、フィルタは、溶融状態の成形材料1のゲルや異物等を分離し、溶融状態の成形材料1を下流のTダイス13に移送する。
フィルタは、例えば多数の孔を同心円に備えた円形、多数の孔を有する焼結金属、あるいは金属性のメッシュからなり、絶縁性樹脂フィルム2の平均厚さの0.5倍以上6倍以下、好ましくは0.5倍以上4倍以下、より好ましくは0.5倍以上3.8倍以下の小さな開口を複数有する。フィルタの開口が0.5倍以上なのは、0.5倍未満の場合には、成形材料1の押出圧量が高くなるので、フィルタが破損するおそれがあり、しかも、生産性が著しく低下するからである。
複数(一対)の圧着ロール16は、Tダイス13の下方に回転可能に軸支され、横一列に並んだ複数の冷却ロール17を摺接可能に狭持する。複数の圧着ロール16のうち、下流の圧着ロール16のさらに下流には、絶縁性樹脂フィルム2を巻き取る巻取機18の巻取管19が回転可能に設置され、圧着ロール16と巻取機18の巻取管19との間には、絶縁性樹脂フィルム2の側部にスリットを形成するスリット刃20が昇降可能に配置されており、このスリット刃20と巻取機18の巻取管19との間には、絶縁性樹脂フィルム2にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール21が必要数軸支される。
各圧着ロール16の周面には、絶縁性樹脂フィルム2と冷却ロール17との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被膜形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール16は、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れる絶縁性樹脂フィルム2の成形が可能となる。この金属弾性ロールの製品例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製:製品名〕、UFロール〔日立造船社製:製品名〕が該当する。
このような圧着ロール16は、240℃以下、好ましくは50℃以上220℃以下、より好ましくは130℃以上200℃以上、さらに好ましくは160℃以上200℃以下の温度に調整され、絶縁性樹脂フィルム2に摺接してこれを冷却ロール17に圧接する。圧着ロール16の温度が係る範囲なのは、圧着ロール16の温度が240℃を越える場合には、製造中の絶縁性樹脂フィルム2が圧着ロール16に貼り付き、絶縁性樹脂フィルム2が破断するか、あるいは圧着ロール16に被覆形成されたゴム層が熱分解するおそれがあるという理由に基づく。
逆に、圧着ロール16の温度が50℃未満の場合には、圧着ロール16が結露するため、好ましくないという理由に基づく。圧着ロール16の温度調整や冷却方法としては、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーターや誘電加熱ロール等があげられる。
複数の冷却ロール17は、例えば圧着ロール16よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に配列軸支されて押し出された絶縁性樹脂フィルム2を隣接する圧着ロール16との間に狭持し、圧着ロール16と共に絶縁性樹脂フィルム2を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するように機能する。各冷却ロール17は、圧着ロール16と同様、240℃以下、好ましくは50℃以上220℃以下、より好ましくは130℃以上200℃以上、さらに好ましくは160℃以上200℃以下の温度に調整され、絶縁性樹脂フィルム2に摺接する。
冷却ロール17が50℃以上240℃以下の温度に調整されるのは、冷却ロール17の温度が240℃を越える場合には、製造中の絶縁性樹脂フィルム2が冷却ロール17に密着して絶縁性樹脂フィルム2の破断を招いたり、あるいは隣接するゴム層が被覆形成された圧着ロール16の場合、圧着ロール16のゴム層が熱分解するおそれがあるからである。これに対し、冷却ロール17の温度が50℃未満の場合には、冷却ロール17に結露が生じ、好ましくないからである。冷却ロール17の温度調整や冷却方法は、上記同様、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーターや誘導加熱等があげられる。
さて、絶縁性樹脂フィルム2を製造する場合には図1に示すように、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料1を不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料1を加熱・加圧状態で溶融混練し、Tダイス13から薄膜の絶縁性樹脂フィルム2を連続的に帯形に押し出す。こうして帯形の絶縁性樹脂フィルム2を押し出したら、一対の圧着ロール16、複数の冷却ロール17、テンションロール21、巻取機18の巻取管19に順次巻架し、絶縁性樹脂フィルム2を冷却ロール17により冷却した後、絶縁性樹脂フィルム2の両側部をスリット刃20でそれぞれカットするとともに、巻取管19に順次巻き取れば、絶縁性樹脂フィルム2を製造することができる。
絶縁性樹脂フィルム2製造の際、絶縁性樹脂フィルム2の表裏面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、絶縁性樹脂フィルム2両面の摩擦係数を低下させることができる。微細な凹凸を形成する方法としては、(1)微細な凹凸を備えた圧着ロール16と冷却ロール17とで絶縁性樹脂フィルム2を挟み、微細な凹凸を形成する方法、(2)絶縁性樹脂フィルム2に微小なジルコニア、ガラス、ステンレス等の無機化合物、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、あるいは植物の種等の有機化合物を吹き付けて微細な凹凸を形成する方法、(3)絶縁性樹脂フィルム2を微細な凹凸を備えた金型でプレス成形し、微細な凹凸を形成する方法があげられる。これらの方法の中では、設備の簡略化、凹凸サイズの精度、凹凸形成の均一化、あるいは凹凸形成の容易さ、連続的に凹凸の形成が可能な(1)の方法が最適である。
(1)の方法をさらに詳細に説明すると、(1-1)結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とからなる攪拌混合物を溶融押出成形機10で溶融混練して成形材料1を調製し、この成形材料1を溶融押出成形機10のTダイス13から微細な凹凸を周面に備えた冷却ロール17上に吐き出すとともに、この吐出物を微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール16と冷却ロール17とで挟み、絶縁性樹脂フィルム2の溶融押出成形と同時に成形する方法、(1-2)成形した絶縁性樹脂フィルム2を微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール16と冷却ロール17とで挟み、凹凸を形成する方法があげられる。これらの中では、設備の簡略化の観点から、(1-1)の方法が好ましい。
冷却後の絶縁性樹脂フィルム2の厚さは、1m以上1000μm以下、好ましくは5μm以上750μm以下、より好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは25μm以上300μm以下の範囲内が良い。これは、絶縁性樹脂フィルム2の厚さが1μm未満の場合には、絶縁性樹脂フィルム2の機械的強度が著しく低下するので、絶縁性樹脂フィルム2の成形が困難になるからである。
逆に、絶縁性樹脂フィルム2の厚さが1000μmを越える場合には、成形速度が著しく低下し、生産性が低下するからである。また、1000μmを越えると、絶縁性樹脂フィルム2をモータ用絶縁材として使用する場合、モータのコアスロット内の導電巻線の占有率が低下し、モータの小型化や高出力化に問題が生じるからである。この絶縁性樹脂フィルム2の厚さは、各種の接触式厚さ計により、測定することが可能である。
絶縁性樹脂フィルム2の相対結晶化度は、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%が良い。これは、絶縁性樹脂フィルム2の相対結晶化度が80%未満の場合には、絶縁性樹脂フィルム2の耐熱性に問題が生じるからである。また、相対結晶化度が80%以上であれば、絶縁性樹脂フィルム2として使用可能な機械的強度の確保が期待できるからである。絶縁性樹脂フィルム2の結晶化度は、相対結晶化度により表すことができる。この絶縁性樹脂フィルム2の相対結晶化度は、示差走査熱量計を用いて10℃/分の昇温速度で測定した熱分析結果に基づき、以下の式により算出される。
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:絶縁性樹脂フィルムの再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:絶縁性樹脂フィルムの融解ピークの熱量(J/g)
絶縁性樹脂フィルム2の絶縁性、滑り性、機械的特性、耐熱性等を満足させる観点から、絶縁性は、周波数1GHzにおける比誘電率を空洞共振器摂動法により測定した場合、2.8以下、好ましくは2.6以下、周波数28GHzにおける比誘電率をファブリペロー法により測定した場合、2.8以下、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.4以下が良い。周波数1GHzと28GHzにおける比誘電率の下限値は、特に制約されるものではないが、実用上1.1以上である。
これは、周波数1GHzと28GHzにおける比誘電率が2.8を越える場合には、絶縁破壊の初期現象である部分放電破壊電圧を充分に上げることができないため、サージ電圧による絶縁破壊を防止するのが困難になるからである。また、周波数800MHz以上30GHz以下の帯域で比誘電率を低下させることが困難になるからである。
絶縁性樹脂フィルム2の機械的特性は、23℃における引張最大強度、引張破断時伸び、及び引張弾性率で評価することができる。絶縁性樹脂フィルム2の引張最大強度は、JIS K 7127に準拠して測定した場合、50MPa以上であるが、好ましくは60MPa以上である。この引張最大強度の上限値は、特に制約されるものではないが、500MPa以下が良い。
絶縁性樹脂フィルム2の引張破断時伸びは、JIS K 7127に準拠して測定した場合、100%以上、好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上が良い。この引張破断時伸びの上限値は、特に制約されるものではないが、500%以下が良い。これは、引張最大強度が50MPa未満で破断時伸びが100%未満の場合、絶縁性樹脂フィルム2が充分な靭性を有していないので、絶縁性樹脂フィルム2を平角電線に巻き加工する際、破断や割れ等のトラブルが生じてしまうおそれがあり、巻き加工が困難になるからである。
絶縁性樹脂フィルム2の23℃における引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して測定した場合、1000MPa以上5000MPa以下、好ましくは1250MPa以上3000MPa以下、より好ましくは1500MPa以上2750MPa以下、さらに好ましくは1500MPa以上2500MPa以下の範囲が最適である。
これは、絶縁性樹脂フィルム2の引張弾性率が1000MPa未満の場合には、絶縁性樹脂フィルム2の剛性が劣るため、導電素線に絶縁性フィルムを巻き加工する際、ハンドリング性が低下したり、導電素線を曲げ加工したときに絶縁性樹脂フィルム2の積層状態のずれが大きくなるからである。また、絶縁性樹脂フィルム2を回転電気用絶縁材として使用する場合、回転電機コアスロット内に挿入するとき、回転電気用絶縁材が座屈してしまうという理由に基づく。逆に、5000N/mm2を越える場合には、曲げ加工時に剛性が高すぎるため、絶縁性樹脂フィルム2が導電素線から剥離してしまうという理由に基づく。さらに、絶縁性樹脂フィルム2を回転電気用絶縁材として使用する場合、折り曲げ加工時に割れてしまうという理由に基づく。
絶縁性樹脂フィルム2の摺動性は、静的摩擦係数(μs)と動的摩擦係数(μk)とで表すことができる。この摺動性の静的摩擦係数は、JIS K 7125‐1999に準拠して測定した場合、0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下とされる。動的摩擦係数もJIS K 7125‐1999に準拠して測定した場合、0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下とされる。これは、静的摩擦係数と動的摩擦係数とが0.5を越える場合には、充分な滑り性を得ることができず、絶縁性樹脂フィルム2の巻取時にシワの発生を防止することができないからである。これら静摩擦係数と動摩擦係数の下限値は、特に制約されるものではないが、0.01以上が良い。
絶縁性樹脂フィルム2の耐熱性に関しては、260℃における貯蔵弾性率(E´)で評価することができる。260℃における貯蔵弾性率(E´)は、1×106Pa以上、好ましくは5×106Pa以上、よりに好ましくは1×107Pa以上、さらに好ましくは5×07Pa以上が好ましい。これは、貯蔵弾性率が1×106Pa未満の場合には、絶縁性樹脂フィルム2の耐熱性が不充分になるからである。また、260℃における絶縁性樹脂フィルム2の貯蔵弾性率が1×106Pa以上の場合には、耐熱区分がH種の絶縁性樹脂フィルム2としても使用することが可能になるからである。絶縁性樹脂フィルム2の貯蔵弾性率の上限は、特に限定されるものではないが、1×1010Pa以下が良い。
絶縁性樹脂フィルム2の吸水率は、JIS K 7209 A法に準拠して測定した場合、温度23℃で1.0%未満であるが、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.6%以下が良い。これは、23℃における吸水率が1.0%未満の場合には、高温湿度環境下でも高い電気絶縁性を維持することができるからである。この絶縁性樹脂フィルム2の23℃における吸水率は、低い程好ましいが、実用上は0%以上である。
上記によれば、絶縁性樹脂フィルム2を溶融押出成形法により成形するので、製造工程の簡素化や製造設備の小型化を図ることができ、絶縁性樹脂フィルム2を安価に提供することができる。また、成形材料1に結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂を含有するので、強靭性、高耐熱性、高耐溶剤性、耐候性、難燃性等に優れる絶縁性樹脂フィルム2を安価に得ることができる。したがって、例え160℃以上のモータの絶縁用途に利用されても、絶縁性樹脂フィルム2が変形したり、破れることがない。
また、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂に分散性に優れる溶融流動性を有するフッ素樹脂を添加するので、比誘電率が低下し、良好な絶縁性を得ることが可能になる。したがって、周波数800MHz以上30GHz以下の帯域における比誘電率を低下させることが可能になる。さらに、フッ素樹脂の優れた分散性により、良好な滑り性を得ることができ、絶縁性樹脂フィルム2の巻き取り時に、シワの生じることが少ない。
次に、図2は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、絶縁性樹脂フィルム2の下面あるいは両面に、繊維シートである薄いフィルム形の不織布3を熱圧着により、直接積層するようにしている。
不織布3は、例えばポリアラミド繊維、ポリアリーレンエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリーレンスルフィド繊維、ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、フッ素樹脂繊維、カーボン繊維等により形成される。この不織布3は、単層でも良いし、多層でも良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、不織布3の採用により、優れた親油性、耐熱性、難燃性、濾過性、吸音性等を得ることができるのは明らかである。また、モータの絶縁用に絶縁性樹脂フィルム2が利用される場合、絶縁性油と馴染みやすくすることができる。
次に、図3は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、絶縁性樹脂フィルム2の下面あるいは両面に、繊維シートである薄いフィルム形の不織布3を接着剤からなる接着層4を介して積層するようにしている。
接着層4は、例えばアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤を印刷して乾燥硬化させることで形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、接着層4の採用により、絶縁性樹脂フィルム2と不織布3とを強固に接着して一体化することができるのは明らかである。
以下、本発明に係る絶縁性樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂として、市販の熱可塑性ポリイミド樹脂〔三菱瓦斯化学社製 製品名:サープリム TO65(以下、「TO65」と略称する)〕を用意し、この熱可塑性ポリイミド樹脂を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して溶融流動性を有するフッ素樹脂であるPFA樹脂〔ダイキン工業社製 製品名:ネオフロン PFA AP-201(以下、AP-201と略す)〕を3質量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂については、以後、結晶性TPI樹脂と略称する。
結晶性TPI樹脂の融点(融解温度とも言う)は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 製品名:高感度型示差走査熱量計 X-DSC7000〕を用い、JIS K7121に準拠し、昇温速度10℃/分の条件で測定した。測定したところ、結晶性TPI樹脂の融点は324℃であった。
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物をベント付き同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。同方向回転二軸押出機は、φ42mm、L/D=38のタイプを用いた。また、攪拌混合物は、シリンダー温度:300~350℃、ダイス温度350℃の条件下で同方向回転二軸押出機の原料投入口側のベントを開放した状態、ダイス側のベントを減圧下で脱気しながら溶融混練し、成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
結晶性TPI樹脂の見掛けの剪断粘度は、フローテスター〔島津製作所製 製品名:島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、樹脂1.5cm3をダイ(直径:1mm、長さ10mm)に装着した350℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に、面積が1.0cm2のプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が350℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、フッ素樹脂を溶融流出させてその剪断粘度を測定した。
次いで、調製した成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出機にセットし、この溶融混錬した成形材料を単軸押出機のTダイスから連続的に押し出して絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。この際、成形材料の含水率は、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名:CA-100〕を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。測定の結果、成形材料の含水率は300ppm以下であった。この成形材料の含水率については、以後、同様の方法により測定した。
単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。この単軸押出成形機のシリンダー温度は250~350℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管にはギアポンプを装着し、このギアポンプの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ352℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを成形したら、この連続した絶縁性樹脂フィルムを圧着ロールと冷却ロールに挟持させて冷却し、絶縁性樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m、幅620mmの絶縁性樹脂フィルムを製造した。
こうして絶縁性樹脂フィルムを製造したら、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表1にまとめた。絶縁性樹脂フィルムの絶縁性は周波数1GHzと28GHzの比誘電率、機械的特性は引張強度、引張破断時伸び、及び引張弾性率、滑り性は静摩擦係数(以下、「μs」と略称する)と動摩擦係数(以下、「μk」と略称する)、耐熱性は260℃における貯蔵弾性率(E´)でそれぞれ評価することとした。
・溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度
溶融流動性を有するフッ素樹脂の見かけの剪断粘度については、フローテスター〔島津製作所製 製品名:島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、樹脂1.5cm3をダイ(直径:1mm、長さ10mm)に装着した350℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に、面積が1.0cm2のプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が350℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、溶融流動性を有するフッ素樹脂を溶融流出させてその剪断粘度を測定した。
・絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚
絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC‐25PJ〕を使用して測定した。測定に際しては、絶縁性樹脂フィルムの幅方向〔押出方向の直角方向(以下、「TD」と略称する)〕の任意の10箇所を測定し、その平均値をフィルム厚とした。
・絶縁性樹脂フィルムの相対結晶化度
絶縁性樹脂フィルムの相対結晶化度については、絶縁性樹脂フィルムから測定試料約5mgを秤量し、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製 製品名:EXSTAR7000シリーズ X-DSC7000〕を使用して昇温速度10℃/分、測定温度範囲20℃から380℃まで測定した。このときに得られる融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から以下の式を用いて算出した。
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ここで、ΔHcは絶縁性樹脂フィルムの10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)を表し、ΔHmは絶縁性樹脂フィルムの10℃/分の昇温条件下での融解ピークの熱量(J/g)を表す。
・絶縁性樹脂フィルムの絶縁性
絶縁性樹脂フィルムの絶縁性は、周波数:1GHzと周波数:28GHzの比誘電率で評価した。
絶縁性樹脂フィルムの周波数:1GHzにおける比誘電率は、ベクトル・ネットワーク・アナライザー〔アンリツ社製 MS46122B+040+002〕を用い、空洞共振器摂動法により測定した。1GHzにおける誘電特性の測定は、空洞共振器を空洞共振器1GHz〔キーコム社製 型式;1GHz近辺用〕に変更した以外は、ASTMD2520に準拠して実施した。比誘電率の測定は、温度:23℃±1℃、湿度50%RH±5%RH環境下で実施した。
絶縁性樹脂フィルムの周波数:28GHzの比誘電率は、ベクトル・ネットワーク・アナライザーを用い、開放型共振器法の一種であるファブリペロー法により測定した。共振器は、開放型共振器〔キーコム社製:ファブリペロー共振器〕を使用した。比誘電率の測定は、温度:23℃±1℃、湿度50%RH±5%RH環境下で実施した。
・絶縁性樹脂フィルムの機械的特性
絶縁性樹脂フィルムの機械的特性は、引張強度、張破断伸び、引張弾性率で評価した。具体的には、23℃、50%RHの環境下でJIS K7127に準じ、引張速度50mm/minで押出方向である流れ方向(以下、「MD」と略称する)と、TDをそれぞれ測定し、引張強度として、最大強度を測定した。
・絶縁性樹脂フィルムの滑り性
絶縁性樹脂フィルムの滑り性については、μsとμkにより評価した。これらμsとμkは、JIS K7125‐1999に準じて測定した。具体的には、表面性測定機〔新東科学社製 製品名:HEDON-14〕を用い、23℃、50%RHの環境下で、試験速度100mm/min、荷重200g、接触面積MD:63.5mm×TD:63.5mmの条件で測定した。そして、係る条件で移動テーブル側に絶縁性樹脂フィルムの冷却ロール面側、平面圧子側に絶縁性樹脂フィルムの圧着ロール面側をそれぞれ固定し、200gの負荷を作用させ、試験速度:100mm/minでμsとμkを測定した。
・絶縁性樹脂フィルムの耐熱性
絶縁性樹脂フィルムの耐熱性は、260℃における貯蔵弾性率(E´)により評価した。この絶縁性樹脂フィルムの貯蔵弾性率は、絶縁性樹脂フィルムのMDとTDについて測定した。具体的には、絶縁性樹脂フィルムのMDの貯蔵弾性率を測定する場合には、MD:60mm×TD:6mm、絶縁性樹脂フィルムのTDの貯蔵弾性率を測定する場合には、MD:6mm×TD:60mmの大きさに切り出して測定した。
貯蔵弾性率の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ〔ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA-G2〕を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-60℃~360℃、チェック間21mmの条件で測定し、260℃の貯蔵弾性率を求めた。
・絶縁性樹脂フィルムの吸水率
絶縁性樹脂フィルムの吸水率は、JIS K7209 A法に準じて測定した。具体的には、絶縁性樹脂フィルムをMD:6.1cm×TD:6.1cmの大きさに切り出し、23℃の水中に14日間浸漬させ、浸漬前後の質量変化率により吸水率を求めた。
・絶縁性樹脂フィルムの製造時に巻き取る際のシワの発生
絶縁性樹脂フィルムの製造時に、絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生の有無については、100m巻き取った後、目視により観察して〇×表記した。〇はシワの発生無し、×はシワの発生有と表に表記した。
・絶縁性樹脂フィルムの製造時に発生するフィッシュアイ
絶縁性樹脂フィルムの製造時に発生するフィッシュアイは、絶縁性樹脂フィルムをMDに5m切り出し、透過光下で目視により観察して〇×表記した。
〇:10mm2以上の大きさを有するフィッシュアイが発生しなかった場合
×:10mm2以上の大きさを有するフィッシュアイが発生した場合
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂であるPFA樹脂をネオフロン PFA AP-201からネオフロン PFA AP-210〔ダイキン工業社製 製品名(以下、AP-210と略する)〕に変更し、PFA樹脂を結晶性TPI樹脂100質量部に対して5重量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ350あった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造したら、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表1にまとめた。
〔実施例3〕
基本的には実施例2と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂であるPFA樹脂を実施例2で使用したAP-210を用い、PFA樹脂を結晶性TPI樹脂100質量部に対して20重量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ352℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造したら、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表1にまとめた。
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂であるPFA樹脂をネオフロン PFA AP-201からネオフロン PFA AP-230〔ダイキン工業社製 製品名(以下、AP-230と略する)〕に変更し、PFA樹脂を結晶性TPI樹脂100質量部に対して10重量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ344℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ356℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造したら、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表1にまとめた。
〔実施例5〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂であるPFA樹脂をネオフロン PFA AP-201からネオフロン PFA粉体塗料ACX31〔ダイキン工業社製 製品名(以下、ACX31と略する)〕に変更した。
係る結晶性TPI樹脂100質量部を実施例1で使用したベント付き回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、ACX31を結晶性TPI樹脂100質量に対して15重量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。
また、攪拌混合物は、シリンダー温度:300~350℃、ダイス温度350℃の条件下で同方向回転二軸押出機の原料投入口側のベントを開放した状態、ダイス側のベントを減圧下で脱気しながら溶融混練し、成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ343℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表2に記載した。
〔実施例6〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂をPFA樹脂をネオフロン PFA AP-201からフルオンPFA P-63P〔AGC社製 製品名(以下、P-63Pと略する)〕に変更し、PFA樹脂を結晶性TPI樹脂100質量部に対して25重量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ344℃あった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表2に記載した。
〔実施例7〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂をPFA樹脂からFEP樹脂に変更した。FEP樹脂は、ネオフロン FEP NP-20〔ダイキン工業社製、製品名(以下、NP-20と略する)〕を用いた。FEP樹脂は結晶性TPI樹脂100質量部に対して10質量部となるように計量し、その後2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合物することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、PFA AP-201からネオフロン PFA AP-230〔ダイキン工業社製 製品名(以下、AP-230と略する)〕に変更し、PFA樹脂を結晶性TPI樹脂100質量部に対して10重量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ342℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表2に記載した。
〔実施例8〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、溶融流動性を有するフッ素樹脂をPFA樹脂から、市販されている接着性フッ素樹脂に変更した。接着性フッ素樹脂は、EA-2000〔AGC社製:製品名(以下、「EA-2000」と略す。)〕を用いた。接着性フッ素樹脂は結晶性TPI樹脂100質量部に対して10質量部となるように計量し、その後2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合物することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ360℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表2に記載した。
〔実施例9〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂として、実施例8のEA-2000を用いた。接着性フッ素樹脂は結晶性TPI樹脂100質量部に対して20質量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合物することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ360℃であった。また、溶融した成形材料の温度は、ダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ361℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表3に記載した。
〔実施例10〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂として、実施例8で使用したEA-2000を用いた。接着性フッ素樹脂は、結晶性TPI樹脂100質量部に対して40質量部となるように計量し、その後2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合物することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ360℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表3に記載した。
〔実施例11〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂と、溶融流動性を有するフッ素樹脂として、EA-2000〔AGC社製:製品名、(以下、「EA-2000」と略す。〕を用いた。接着性フッ素樹脂は結晶性TPI樹脂100質量部に対して90質量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合物することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ360℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造した後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表3に記載した。
〔比較例1〕
先ず、結晶性TPI樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とにより成形材料を調製した。成形材料は、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂を100質量部用意し、この結晶性TPI樹脂100質量部に対して溶融流動性を有するフッ素樹脂として実施例1で使用したAP-201を0.3質量部となるように計量した。その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ350℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
絶縁性樹脂フィルムの製造後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表4にまとめた。
〔比較例2〕
先ず、結晶性TPI樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とにより成形材料を調製した。成形材料は、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂を100質量部用意し、この結晶性TPI樹脂100質量部に対して溶融流動性を有するフッ素樹脂として実施例8で使用したEA-2000を0.3質量部となるように計量した。その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ349であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
絶縁性樹脂フィルムの製造後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表4にまとめた。
〔比較例3〕
先ず、結晶性TPI樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とにより成形材料を調製した。成形材料は、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂を100質量部用意し、この結晶性TPI樹脂100質量部に対して溶融流動性を有するフッ素樹脂として実施例2で使用したAP-210を120質量部となるように計量した。その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ347℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたΦ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して絶縁性フィルムの押出成形を試みた。しかしながら、成形材料が溶融押出成形機内で滑り、溶融押出成形機内に成形材料を供給することができず、その結果、絶縁性樹脂フィルムを製造することが出来なかった。したがって、絶縁性フィルムの評価も行わなかった。
〔比較例4〕
先ず、結晶性TPI樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂とにより成形材料を調製した。成形材料は、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂を100質量部用意し、この結晶性TPI樹脂100質量部に対して溶融流動性を有するフッ素樹脂として実施例8で使用したEA-2000を120質量部となるように計量した。その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ346℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
絶縁性樹脂フィルムの製造後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表4にまとめた。
〔比較例5〕
先ず、結晶性TPI樹脂と溶融流動性を有しないフッ素樹脂とにより成形材料を調製した。溶融流動性を有しないフッ素樹脂として市販されているPTFE樹脂を使用した。成形材料は、実施例1で使用した結晶性TPI樹脂を100質量部用意し、この結晶性TPI樹脂100質量部をベント付き同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、Fluon PTFE ルブリカント L1743JE〔AGC社製:製品名、(以下、「L173JE」と略する)〕を結晶性TPI樹脂100質量部に対して10質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。
以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ393℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
絶縁性樹脂フィルムの製造後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表5にまとめた。
〔比較例6〕
TPI樹脂を結晶性TPI樹脂から市販の非晶性熱可塑ポリイミド樹脂(以下、「非晶性TPI樹脂」と略する)であるポリエーテルイミド樹脂〔4,4’-[イソプロピリデンビス(P-フェニルオキシ)ジフタル酸二無水物とm-フェニレンジアミンとの重縮合物、SABIC社製、製品名:ULTEM 1010-1000-NB〔SABIC社製:製品名、(以下、「1010」と略す)〕に変更した。
係る1010を100質量部用意し、この1010を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間以上乾燥させた。1010の350℃における見掛けの剪断粘度は、実施例1の結晶性TPI樹脂と同様の方法で測定した。また、溶融流動性を有するフッ素樹脂としては、実施例2で使用したAP-210を10質量部用意した。これらを用意したら、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
撹拌混合物を調製したら、この撹拌混合物を実施例1で使用した同方向回転二軸押出機に撹拌混合物を投入し、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。混練温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ348℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1と同様にして絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ361℃であった。
絶縁性樹脂フィルムの製造後、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表5に記載した。
〔比較例7〕
熱可塑性ポリイミド樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂から市販の非晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂であるポリエーテルイミド樹脂〔4,4’-[イソプロピリデンビス(P-フェニルオキシ)ジフタル酸二無水物]とp-フェニレンジアミンとの重縮合物、SABIC社製、製品名:ULTEM CRS5001-1000-NB、(以下、「CRS5001」と略す)〕に変更した。
このCRS5001を100質量部用意し、この5001を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間乾燥させた。5001の350℃における見掛けのせん断粘度は、実施例1の結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と同様の方法で測定した。また、溶融流動性を有するフッ素樹脂としては、実施例8で使用したEA-2000を10質量部用意した。これらを用意したら、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
攪拌混合物を調製したら、この撹拌混合物を実施例1で使用した同方向回転二軸押出機に撹拌混合物を投入し、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。撹拌混合物は、シリンダー温度200~360℃、ダイス温度360℃の条件下で溶融混練し、成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ364℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1で使用した幅900mmのTダイス付きの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出して絶縁性樹脂フィルムを帯形に押出成形した。単軸押出成形機は、実施例1と同じ単軸押出機を使用した。この単軸押出成形機の温度は350~365℃、Tダイスの温度365℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管はそれぞれ365℃に調整した。また、溶融した成形材料の温度は、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ372℃であった。
絶縁性樹脂フィルムを製造したら、溶融流動性を有するフッ素樹脂の見掛けの剪断粘度、絶縁性樹脂フィルムのフィルム厚、相対結晶化度、絶縁性、機械的特性、滑り性、耐熱性、製造した絶縁性樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生、及びフィッシュアイ発生の有無を評価して表5に記載した。
〔評 価〕
各実施例の絶縁性樹脂フィルムは、比較例の絶縁性樹脂フィルムと比較した場合、1GHzにおける比誘電率が2.4以上2.8以下、28GHzにおける比誘電率が2.5以上2.8以下なので、充分な絶縁性が得られると推測される。また、引張弾性率が1200MPa以上2700MPa以下の範囲なので、絶縁物との密着性に優れると推測される。引張最大強度が56.4MPa以上で引張破断時伸びが127%なので、充分な耐久性が得られると推測される。
絶縁性樹脂フィルム1の吸水率は、温度23℃で1.0%未満が好ましいが、23℃における吸水率が0.8%以下であったので、高温湿度環境下でも高い絶縁性を維持することができると考えられる。絶縁性樹脂フィルムの260℃における貯蔵弾性率が1×107Pa以上であるため、高い耐熱性が期待できる。したがって、耐熱区分がH種の絶縁性樹脂フィルムとしても使用が可能である。
これに対し、比較例1と2の絶縁性樹脂フィルムは、流動性を有するフッ素樹脂を0.5質量部以下添加したので、比誘電率が2.8を越える高い値を示した。したがって、絶縁性樹脂フィルムの絶縁性に疑義が生じた。また、吸水率が1.0%であるため、高温湿度環境下の絶縁性の維持が困難であると推測される。比較例3は、流動性を有するフッ素樹脂としてPFA樹脂を110質量部添加したので、溶融した結晶性熱可塑性ポリイミド樹脂と溶融流動性を有するフッ素樹脂からなる成形材料が溶融押出成形機内で滑り、溶融押出成形機内に成形材料を供給することができず、その結果、絶縁性樹脂フィルムを成形することも、評価することもできなかった。
比較例4の絶縁性樹脂フィルムは、流動性を有するフッ素樹脂を120質量部添加したので、引張破断時伸びが100%未満となり、靭性に疑義が生じた。したがって、絶縁性樹脂フィルムを巻装する際、破断を招くおそれが高いと推測される。また、比較例5は、フッ素樹脂として流動性を有しないフッ素樹脂を使用したため、絶縁性樹脂フィルム中にフィッシュアイが発生し、絶縁性樹脂フィルムの外観不良を招いた。加えて、引張破断時伸びが100%未満となり、靭性に疑義が生じた。したがって、絶縁性樹脂フィルムを巻装する際、破断を招くおそれが高いと推測される。
比較例6と比較例7は、非晶性熱可塑性ポリイミド樹脂を使用したため、融解ピークが認められず、260℃における貯蔵弾性率が1×104Pa以下となり、耐熱性に問題が生じた。