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JP7765064B2 - ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を成分とする材料 - Google Patents
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JP7765064B2 - ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を成分とする材料 - Google Patents

ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を成分とする材料

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Description

本発明は、ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を組み合わせてなる材料に関するものである。
従来、ε-ポリリジンは、微生物、特に細菌に対して抗菌活性を有する一方で、動物に対してはほとんど毒性を示さないことが知られており、食品保存料として幅広く利用されている。また、ε-ポリリジンに限らず、カチオン性高分子は動物細胞の細胞膜と強く相互作用することが知られており、細胞観察用シャーレの表面修飾などに用いられている。ε-ポリリジンの他の利用例として、例えば特許文献1ではε-ポリリジンをエピクロロヒドリンなどの架橋剤で架橋したエンドトキシン吸着用の担体が記載されている。また、特許文献2ではε-ポリリジンとアルデヒド化α-グルカンから成る医療用の接着剤が記載されている。
しかし、これらの用途に用いる場合、ε-ポリリジンを水溶液、もしくは不定形の材料として用いたり、プラスチックまたはゴムなどの成形可能な材料にε-ポリリジンを添加またはコーティングして用いたりすることは広く知られていた。しかし、ε-ポリリジンをアニオン性高分子と複合化せずに、成形可能な材料として利用する試みはほとんど行われていなかった。これは、ε-ポリリジンが脆くて吸湿性の高い化合物であり、ε-ポリリジン単独での成形が困難であることに起因している。
非特許文献1ではε-ポリリジンとアニオン性界面活性剤を複合化することで、熱可塑性を有する成形可能な材料を報告している。しかしながら、当該材料は破断伸びが小さく、柔軟性の低い材料であり、破断強度も既存のプラスチック材料の数分の一と低いものであった。そのため、非特許文献1に記載されるε-ポリリジンとアニオン性界面活性剤の複合体は、抗菌用のコーティング剤や添加剤としての用途に限定されており、当該複合体からなる成形可能な材料を単独で用いて、成形体として利用することは開示されていなかった。
また、ε-ポリリジン自体を他の化合物との間で複合体形成させずに、成形可能な材料として利用するという試みはこれまでに行われていなかった。
特開平11-152330号公報 再表2006/080523号公報
Biomacromolecules;2017;18;1387-1392 Chemical Science;2015;6(11);6385-6391
ε-ポリリジンに成形性を付与することが出来れば、抗菌性や細胞親和性などの機能を有する高機能材料としての利用が期待される。また、ε-ポリリジンは微生物由来の天然化合物であるため、生分解性を有する成形可能な材料としての利用も期待される。しかし、現状ではε-ポリリジンは脆くて吸湿性の高い化合物であり、単独での成形が困難である。本発明はε-ポリリジンに成形性を付与すること、さらにそのような成形性を有する材料の柔軟性や弾性、強度、耐水性を優れたものとすることを課題とする。
本発明者らは、ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を水溶媒中で混合することによって、その混合溶液中に、多様な形状に成形でき、かつ弾性に富む材料が生成されることを見出した。
具体的には、本発明者らは、ε-ポリリジンとフルクトース、グルコースなどの還元性を示す糖類を混合して得られる溶液をシャーレなどの平板上で乾燥させることによって、シート状の材料が容易に得られること、および当該材料が引張試験において良好な弾性を示すこと、および当該材料が良好な柔軟性や強度、耐水性を有することを見出した。
本発明は、本発明者らによるこれらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、この出願は、以下の発明を提供するものである。
[1]成形性を有することを特徴とする、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を含む材料。
[2]弾性を有することを特徴とする、[1]に記載の材料。
[3]前記ε-ポリリジンが、重量平均分子量500~1,000,000である、[1]または[2]に記載の材料。
[4]前記還元性を示す糖類が、フルクトース、アラビノース、グルコース、ラクトース、マルトース、リボース、キシロース、マンノースまたはガラクトースである、[1]~[3]のいずれかに記載の材料。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の材料の製造方法であって、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を溶媒中で混合することにより高分子と糖類を反応させる工程と、混合した溶液または懸濁液から溶媒を除去する工程、を含む方法。
具体的には、ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を組み合わせることによって、成形が可能な材料を得ることができ、かつ優れた柔軟性や弾性、強度、耐水性を有する材料が得られることを確認した。
ε-ポリリジンとフルクトースから成るシート状試料と、同シート状試料を曲げた際の写真図を示す。 ε-ポリリジンとフルクトースから成るシート状試料と、同シート状試料をダンベル型試験片(8号、JIS K 6251)の形状に打ち抜いた試験片の写真図を示す。 ε-ポリリジンのみから成る試料の写真図を示す。 ε-ポリリジンとフルクトースから成る試料の弾性試験の写真図を示す。 ε-ポリリジンとフルクトースから成る試料の耐水性試験の結果の写真図を示す。
本発明は、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を含む成形性を有することを特徴とする材料である。
本発明に用いられるε-ポリリジンとしては、特に限定されることはないが、例えば、微生物が産生したもの、または化学合成により得られるものなどを用いることが出来る。
微生物を用いた産生法においては、ε-ポリリジンを産生することができる方法であれば特に限定されることはないが、例えばストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces alblus)やストレプトマイセス・ヌールセイ(Streptomyces noursei)に属するε-ポリリジン産生菌を使用する産生法を用いる事ができ、これらの細菌の培地からε-ポリリジンを単離精製することが可能である。化学合成法としては、例えば、非特許文献2に記載さ
れている化学合成法を用いる事ができ、この化学合成法によってε-ポリリジンを得ることが可能である。また、ε-ポリリジン産生菌に由来するε-ポリリジン合成酵素を用いて、ε-ポリリジンを得ることも可能である。
また、ε-ポリリジンはアミノ基やカルボキシル基の一部が共有結合などを介して化学的に修飾されていてもよい。
化学的に修飾された化合物とは、例えば、アミド結合を介し、ε-ポリリジンのアミノ基をカルボン酸やアミノ酸などのカルボキシル基含有化合物で修飾した化合物や、アミド結合を介し、ε-ポリリジン末端のカルボキシル基をアミンやアミノ酸などのアミノ基含有化合物、もしくはエステル結合を介し、アルコールなどのヒドロキシル基含有化合物で修飾した化合物が挙げられる。
また、ε-ポリリジンの誘導体とは、例えば、ε-ポリリジン同士を脱水縮合することによって高分子量化したε-ポリリジンが挙げられる。
また、本発明に用いられるε-ポリリジンは、水溶性の観点から、上述のε-ポリリジンの、塩酸塩などの無機酸塩、もしくは、酢酸塩などの有機酸塩でもよい。
ε-ポリリジンを形成するリジンの構造は特に限定されることはないが、L-リジンのみからなるもの、D-リジンのみからなるもの、両者を含むものの何れを用いることもできる。また、L-リジンとD-リジンの比率は特に限定されることはない。
ε-ポリリジンの重合度は、特に限定されることはないが、5量体以上であることが好ましく、重量平均分子量は500~1,000,000であることが好ましい。さらに好ましくは、重量平均分子量は1,000~10,000である。
本発明に用いられる還元性を示す糖類としては、例えば、フルクトース、アラビノース、グルコース、ラクトース、マルトース、リボース、キシロース、マンノース、ガラクトース、ジヒドロキシアセトン、リブロース、プシコース、エリトロースや、これらの糖を含むオリゴ糖や多糖類が挙げられる。好ましくは、フルクトース、アラビノース、グルコース、ラクトース、マルトース、リボース、キシロース、マンノースまたはガラクトースであり、より好ましくはフルクトース、アラビノース、グルコース、キシロース、ガラクトースまたはラクトースであり、特に好ましくはフルクトースまたはアラビノースである。本発明において、オリゴ糖とは、少糖類のことであり、限定されることはないが、2~10個の単糖がグリコシド結合によって結合したものであり、多糖類とは少なくとも2個の単糖がグリコシド結合によって結合したものである。オリゴ糖は多糖類に含まれる。
「ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を含む」とは、「ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類」以外のいかなる他の構成要素をもさらに包含することが可能である。また、「ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類」のみからなることも可能である。
本材料中における、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類との組成割合は、特に限定されることはないが、ε-ポリリジンの重量、またはε-ポリリジンの誘導体、ε-ポリリジンの塩もしくはε-ポリリジンの誘導体の塩のε-ポリリジン換算値の重量と、還元性を示す糖類の重量の重量比が好ましくは99:1~5:95、さらに好ましくは95:5~50:50、より好ましくは90:10~60:40である。
本材料中の水分含量は、材料全体の3~95重量%、好ましくは5~40重量%、さらに好ましくは10~30重量%である。この水分含量であることによって、本材料は弾性を有することができる。
水分含量の調整は、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を含有する、溶液または懸濁液を、大気中もしくは制御された湿度条件にて保持するこ
とで行われる。この際、恒温槽やホットプレートなどを用いて加熱することで水分の気化を促進してもよい。また、前述の溶液または懸濁液を、有機溶媒に滴下することで複合体の沈殿を得た後、得られた複合体を必要に応じて、大気中もしくは制御された湿度条件にて保持することで水分含量を調節してもよい。
本発明において、「成形性を有する」または「成形可能な」とは、目視で観察して均一なシート状の試料(厚さ0.5 mm以上)を調製し、当該シート状試料から打ち抜きによりダンベル型試験片(8号、JIS K 6251)を切り出した後に、引張試験を実施して力学物性の評価が可能である性質のことを言う。
本発明において、「弾性を有する」とは、材料からダンベル型試験片(8号、JIS K 6251)を切り出し、その試験片に張力を加え、そのダンベル型試験片に変形を生じさせたのち、その張力を完全に除去して1時間静置した際に、静置後の変形量が張力印加時の最大変形量の50%以下となる性質のことを言う。静置後の変形量が張力印加時の最大変形量の30%以下の変形量となることが好ましい。
本発明において、「柔軟性を有する」とは、例えば、試験片が破断することなく任意の角度以上折り曲げることができることであり、試験片を45°以上、90°以上、135°以上、または180°折り曲げることができることが好ましい。
本発明において、「優れた強度を有する」とは、例えば、シート状に成形した本発明の材料を用いて破損することなくダンベル型試験片を作成することができること、好ましくは作成したダンベル型試験片で引張試験を実施して破断強度を算出できることである。
本発明の材料は、例えばシート状に成型可能である。そのシートの厚さは、特に限定されることはないが、0.5~10mmであることが好ましい。
本発明の他の態様は、材料の製造方法である。具体的には、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を溶媒中で混合することにより高分子と糖類を反応させる工程と、混合した溶液または懸濁液から溶媒を除去する工程、を含む方法である。
ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を溶媒中で混合することにより高分子と糖類を反応させる工程では、特に限定されることはないが、例えば、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩から成る固体と、還元性を示す糖類の固体を溶媒中で混合することにより高分子と糖類を反応させる工程、またはε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩を含む溶液と、還元性を示す糖類を含む溶液を混合することにより高分子と糖類を反応させる工程である。
この工程において、著しく不均一な組成物を形成しない範囲であれば、各組成物を混合する順番や、温度、湿度または時間といった組成物の混合条件については特に限定されない。
また、溶媒を除去する工程とは、例えば、当該溶液または懸濁液から溶媒を揮発させることにより除去する工程、または、当該溶媒が水である場合は、当該水溶液または水懸濁液を有機溶媒中に投入することにより、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類の混合物を有機溶媒中で沈殿させ、溶媒を除去する工程であってよい。当該溶媒を揮発させることにより除去する工程は、材料中の溶媒量を所定の含有量まで減少させることができる限り特に限定されないが、例えば、温度は室温で行ってもよく、好ましくは20℃~40℃で行ってもよく;湿度は好ましくは40%~60%で行ってもよく;時間は好ましくは少なくとも1日以上であってよい。
本態様に用いられる溶媒としては、ε-ポリリジンや糖類を溶解できるものであれば特に
限定されないが、水、または、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどの水と混和する有機溶媒、または、水と前述の有機溶媒との混合溶媒が好ましく、特に水が好ましい。
得られた材料に対して引張試験を行うことで、最大応力、破断伸び、およびヤング率を測定することができる。
得られた材料に対して耐水性試験を行うことで、材料の耐水性のレベルを判断することが出来る。つまり、材料から任意の質量の試験片を切り出し、この試験片を純水に浸漬し、任意の時間、例えば、15分間、30分間、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、2日間、5日間、1週間またはそれ以上の時間振盪させる。任意時間経過後に純水中の試験片が、崩壊または溶解せずに形態を維持している程、純水への材料の溶解が少ないことを表し、すなわち材料の耐水性が高いことがわかる。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 ε-ポリリジンとフルクトースから成る材料の調製
表1に示す比率で純水にD-(-)-フルクトース(和光純薬工業株式会社、特級)を混合し、D-(-)-フルクトースが完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に表1に示す比率でε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)を加え、均一に混合した。この混合物をフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移して溶媒を揮発させることで、表1に記載のいずれの組成においても厚さ1mm以上のシート状の試料を得た(サンプル名:PL-1~PL-6)。表1においてサンプル名「PL-2」の組成で調製したシート状試料、および同シート状試料を手で曲げた際の写真を図1に示した。図1に示す通り、試料を手で180度近く曲げても試料に割れは生じず、本材料が柔軟性を有することが分かった。また、表1においてサンプル名「PL-3」と表記した組成で調製したシート状試料、および同シート状試料をダンベル型試験片(8号、JIS K 6251)の形状に打ち抜いた試験片の写真を図2に示す。
実施例2 ε-ポリリジンとアラビノースから成る材料の調製
純水4 mLにD-(-)-アラビノース(東京化成工業株式会社)1.0 gを混合し、D-(-)-アラビノースが完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に実施例1で用いたε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)16 mLを加え、均一に混合した。この混合物をフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移して溶媒を揮発させることで厚さ1mm以上のシート状の試料を得た。得られた試料の外見は実施例1
で得られた試料とほぼ同等であった。また、この得られた試料を手で180度近く曲げても試料に割れは生じず、本材料が柔軟性を有することが分かった。
実施例3 ε-ポリリジンとキシロースから成る材料の調製
純水4 mLにD-(+)-キシロース(和光純薬工業株式会社、特級)1.0 gを混合し、D-(+)-キシロースが完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に実施例1で用いたε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)16 mLを加え、均一に混合した。この混合物をフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移して溶媒を揮発させることで厚さ1mm以上のシート状の試料を得た。得られた試料の外見は実施例1で得られた試料とほぼ同等であった。また、この得られた試料を手で180度近く曲げても試料に割れは生じず、本材料が柔軟性を有することが分かった。
実施例4 ε-ポリリジンとガラクトースから成る材料の調製
純水4 mLにD-(+)-ガラクトース(和光純薬工業株式会社、特級)1.0 gを混合し、D-(+)-ガラクトースが完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に実施例1で用いたε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)16 mLを加え、均一に混合した。この混合物をフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移して溶媒を揮発させることで厚さ1mm以上のシート状の試料を得た。得られた試料の外見は実施例1で得られた試料とほぼ同等であった。また、この得られた試料を手で180度近く曲げても試料に割れは生じず、本材料が柔軟性を有することが分かった。
実施例5 ε-ポリリジンとグルコースから成る材料の調製
純水4 mLにD-(+)-グルコース(和光純薬工業株式会社、特級)1.0 gを混合し、D-(+)-ガラクトースが完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に実施例1で用いたε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)16 mLを加え、均一に混合した。この混合物をフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移して溶媒を揮発させることで厚さ1mm以上のシート状の試料を得た。得られた試料の外見は実施例1で得られた試料とほぼ同等であった。また、この得られた試料を手で180度近く曲げても試料に割れは生じず、本材料が柔軟性を有することが分かった。
比較例1 ε-ポリリジンのみから成る材料の調製
実施例1で用いたε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)20 mLをフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移し、実施例1と同様に溶媒を揮発させた。乾燥後の試料は、硬質で脆く、また多数のひび割れが生じており、ダンベル型試験片(8号、JIS K 6251)を打ち抜きで作成するのに十分な大きさを有する均一なシート状の試料は得られなかった(図3)。
比較例2 ε-ポリリジンとスクロース(非還元糖)から成る材料の調製
純水4 mLにスクロース(和光純薬工業株式会社、特級)1.0 gを混合し、スクロースが完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に実施例1で用いたε-ポリリジン(JNC株式会社、分子量約3,200~4,500、Lot番号2160204、25重量%水溶液)16 mLを加え、均一に混合した。この混合物をフッ素樹脂製シャーレ(サイズ:6cm×6cm)に移し、実施例1と同様に溶媒を揮発させた。乾燥後の試料は脆く、複数のひび割れが生じており、柔軟な試料は得られなかった。
実施例6 ε-ポリリジンとフルクトースから成る材料の引張試験
実施例1で調製したシート状の試料(サンプル名:PL-1~PL-6)を30℃、相対湿度50%の恒温恒湿器の中で5日間静置した後、ダンベル型試験片(8号、JIS K 6251)の形状に打ち抜き、評価用の試験片を作成した。これらの試験片を用いて引張試験(大気中、引張速度 50 mm/min)を行った結果を表2に示す(3~5回の試験の平均値)。
表2に示す通り、実施例1のいずれの試験片においてもダンベル型試験片に成形でき、および引張試験が可能な程度の成形性と強度を有していることが分かる。
一方で、比較例1、2においては試料が脆く、ダンベル型試験片の作成と試験が困難であった。
このことから、ε-ポリリジンと還元性を示す糖類を組み合わせることで、単独では成形が困難なε-ポリリジンに成形性と柔軟性を付与することが出来ることが分かる。
実施例7 ε-ポリリジンとフルクトースから成る材料の弾性試験
実施例6で引張試験を行った後のダンベル型試験片(表2、サンプル名「PL-3」)と試験に使用したダンベル型試験片と同一の形状に切り出したゴムシートを比較した写真を図4に示す。引張試験において約90%(31.5 mm)の変形を加えたにもかかわらず、試験後のダンベル型試験片の変形量は5 %以下であった。このことから、張力を完全に除去することで材料の変形が回復する、すなわち本材料が弾性を有することが分かる。
実施例8 ε-ポリリジンとフルクトースから成る材料の耐水性試験
実施例1で作成したシート状の試料から60 mgの試験片を切り出した。この試験片を1.2 mLの純水に浸漬し、30分間または24時間室温にて振盪させることにより、耐水性試験を行った。振盪後に純水中の試験片が、崩壊または溶解せずに形態を維持している程、純水への材料の溶解が少ないことを表し、すなわち材料の耐水性が高いことが示される。
表1のサンプル名「PL-3」を試験片として用いた耐水性試験の結果を図5に示す。試験片を純水に浸漬して24時間振盪を行った場合、試験片の崩壊や上清の着色は見られなかった。一方、比較例1で調製したε-ポリリジン単独から成る試料で同様の試験を行ったところ、30分後には試験片が完全に溶解していた。また、比較例2で調製したε-ポリリジンとスクロース(非還元糖)から成る試料で同様の試験を行ったところ、同様に30分後には試験片が完全に溶解していた。すなわち、ε-ポリリジンと還元性を示す糖類であるフルクトースを組み合わせることで、その材料は耐水性の点において顕著な効果を示すことがわかった。
本発明の材料は、多様な形状に成形でき、弾性に富み、耐水性を有すると共に、ε-ポリリジンの有する抗菌性や細胞親和性、生分解性などを生かした特性が必要とされる各種の用途の成形品の素材として利用可能である。

Claims (5)

  1. 成形性を有することを特徴とする、ε-ポリリジン、その誘導体、またはそれらの塩と、
    還元性を示す糖類を含む材料(ただし、液状形態の材料は除き、かつバインダ組成物として用いた材料及びその熱硬化物である材料は除く)。
  2. 弾性を有することを特徴とする、請求項1に記載の材料。
  3. 前記ε-ポリリジンが、重量平均分子量500~1,000,000である、請求項1または2に記載
    の材料。
  4. 前記還元性を示す糖類が、フルクトース、アラビノース、グルコース、ラクトース、マルトース、リボース、キシロース、マンノースまたはガラクトースである、請求項1~3のいずれかに記載の材料。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の材料の製造方法であって、ε-ポリリジン、その誘導体
    、またはそれらの塩と、還元性を示す糖類を溶媒中で混合することにより高分子と糖類を反応させる工程と、混合した溶液または懸濁液から溶媒を除去する工程、を含む方法。
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