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JP7770657B2 - AgCuカルコゲン化合物を主成分とする半導体ナノ粒子 - Google Patents
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JP7770657B2 - AgCuカルコゲン化合物を主成分とする半導体ナノ粒子 - Google Patents

AgCuカルコゲン化合物を主成分とする半導体ナノ粒子

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Description

本発明は、AgCuカルコゲン化合物を主成分とする半導体ナノ粒子に関する。詳しくは、必須のカルコゲン元素としてTeを含み、長波長領域において好適な光応答性を有するAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子に関する。
半導体は、ナノスケールの微小粒子とすることで量子閉じ込め効果を発現し、粒径に応じたバンドギャップを示す。そのため、半導体ナノ粒子の組成と粒径を制御してバンドギャップを調節することで、発光波長や吸収波長を任意に設定することができるようになる。この特性を利用した半導体ナノ粒子は、量子ドット(QD:Quantum Dot)とも称されており、様々な技術分野での活用が期待されている。半導体ナノ粒子の応用例としては、例えば、ディスプレイ装置や生体関連物質検出用マーカー物質等に利用される発光素子、蛍光物質への活用が検討されている。
半導体ナノ粒子は、前記した粒径調整による発光波長が制御可能であることに加えて、その発光ピーク幅が有機色素に比べて十分に狭く安定的であるためである。更に、半導体ナノ粒子は、吸収波長の制御が可能であることに加えて、高い量子効率を有し、吸光係数が高いという特性も有する。こうした特性により半導体ナノ粒子は、太陽電池や各種の光センサ等に搭載される光電変換素子や受光素子への利用も検討されている。
特に、半導体ナノ粒子は、近赤外線領域(NIR)や短波赤外線領域(SWIR)に対応する光センサの受光素子への応用が期待されている。これら長波長領域の光に対応できる光センサは、LIDAR(Light Detection and Ranging)やSWIRイメージセンサに搭載されている。LIDARは、自動車自動運転・ドローン・船舶等におけるリモートセンシングシステムであり、近年の自動運転技術の発展において重要なデバイスとなっている。最近では、LIDARは、スマートフォンやタブレット等における顔認証技術や拡張現実(AR)技術への応用もなされている。また、SWIRイメージセンサは、食品検査、農業分野、ドローン等の分野において、今後需要が高まることが予測されるデバイスである。
上記のような光学デバイスのセンサの受光素子には、これまではSi薄膜の適用例が多かった。しかし、Si薄膜によるセンサは、900nm以上の長波長域で感度が大きく低下するので、上記のアプリケーションには適合し難い。そこで、半導体ナノ粒子を利用した受光素子の開発が期待されている。
半導体ナノ粒子の構成に関しては、これまでいくつかの半導体化合物が検討されている。近赤外線領域(NIR)や短波赤外線領域(SWIR)の長波長領域において光応答性を有する半導体化合物として、PbS、PbSe、CdHgTe、AgS、AgSe、AgTe、AgInSe、AgInTe、CuInSe、CuInTe、InAs等の金属カルコゲナイド化合物が知られている(特許文献1~4)。本願出願人も、特許文献5においてAgAuS系化合物を主成分とする半導体ナノ粒子を開示している。
特開2004-243507号公報 特開2004-352594号公報 特開2017-014476号公報 国際公開WO2020/054764号公報 特許第7269591号
上記した半導体化合物は、所望の波長領域で光応答性を有するが、冒頭で述べたディスプレイ装置や生体関連物質検出用マーカー等の用途への適用を考慮すると、障害になる事由を有するものが多い。例えば、Pbは、欧州のRoHS指令(Restriction of the use of certain Hazardous Substances
in electrical and electronic equipment)により、環境負荷の観点から電気・電子機器への使用制限が規定されている。そのため、金属成分としてPbを含む化合物からなる半導体ナノ粒子は、電気・電子分野への広範な利用が期待し難い。また、生体関連分野への半導体ナノ粒子の利用を考慮すると、重金属であるCdやHg等を含む化合物の利用も難しい。
また、上記した半導体化合物は、長波長領域における光応答性を有するが、より長波長側の光応答性を発揮し得るものへの要請が高まっている。最近の自動車の自動運転技術の発展は目覚ましく、ドライバーによる運転を前提としない自動運転レベル(レベル4、5)に対応する必要がある。この場合、LIDARには太陽光・自然光の影響を受け難いより長波長域での応答性が重要となる。そのため、量子ドット技術はいまだ研究段階にあるといえる。そして、実用性を考慮しながら、より長波長域で応答性を発揮できる半導体ナノ粒子が必要である。
本発明は、以上のような背景の下になされたものであり、各種規制に対する実用性への配慮がなされると共に、好適な光応答性を有する新規な半導体化合物からなる半導体ナノ粒子を提案する。特に、本発明は、近赤外線領域(NIR)及び短波赤外線領域(SWIR)の長波長領域で好適な光吸収特性を示すと共に、発光も発現し得る半導体ナノ粒子を提示する。
上記課題の解決手段の検討に際し、本発明者等は、本願出願人による先行技術(特許文献5)に関連するAgAuS化合物からなる半導体ナノ粒子に着目した。Ag及びAuは、環境負荷や毒性等の規制対応の観点から好適に利用できる金属であり、AgAuS化合物は、光応答性を発揮し得る半導体化合物である。もっとも、従来のAgAuS化合物のナノ粒子は、赤外線領域(NIR)及び短波赤外線領域(SWIR)での光応答性に課題を残していた。上記の本願出願人の先行技術では、AgAuS化合物にIn等の金属を添加してAgAuS系の多元化合物を適用することで、半導体ナノ粒子の吸収波長を長波長側にシフトさせている。
本発明者等は、上記の従来技術であるAgAuS化合物という遷移金属カルコゲン化合物を参考にしつつ、2方向のアプローチに基づき遷移金属カルコゲン化合物への長波長領域での光応答性の付与を図ることとした。
第1のアプローチは、カルコゲン元素として、S(硫黄)よりも質量の大きい元素であるTe(テルル)を必須の構成として適用することである。これは、遷移金属と結合するカルコゲン元素の質量を増大させることで、化合物を形成したときに各遷移金属元素とカルコゲン元素との間の軌道エネルギー差が縮小し、これによって光応答性が長波長側にシフトすると推定されるからである。
そして、第2のアプローチとして、カルコゲン化合物の遷移金属成分の好適化であり、具体的には、AgとAuとの組み合わせに替えてAgとCuとの組み合わせを適用することである。Cuは、Auと同じ第11族元素であり、同様の電子構造を有することから、カルコゲン化合物としたときに好適な光半導体となる可能性を有する。そして、Cuは人体の必須元素の一つであるので生体適合性が良好である。
そこで本発明者等は、Teを必須のカルコゲン元素とするAgCuカルコゲン化合物のナノ粒子の合成の可否、及び、その光応答性について検討した(以下、カルコゲン元素をChと称することがある)。その結果、1200nm以上の長波長領域に吸収端を有する光吸収特性を有すると共に発光現象も発現し得るAgCuカルコゲン化合物を見出し、本発明に想到した。
即ち、本発明は、Ag、Cu、カルコゲン元素からなる下記式で示されるAgCuカルコゲン化合物を含む半導体ナノ粒子であって、前記カルコゲン元素は、必須のカルコゲン元素としてTeを含み、前記AgCuカルコゲン化合物を90原子%以上含む半導体ナノ粒子である。
(式中、Chはカルコゲン元素である。x、y、zは、Ag、Cu、カルコゲン元素の原子数であり、0.2≦z/(x+y)≦1.0である。また、1.0≦x/y≦10.0である。
以下、本発明に係るTeを必須のカルコゲン元素とするAgCuカルコゲン化合物を主成分とする半導体ナノ粒子の構成及びその製造方法について説明する。
A.本発明に係る半導体ナノ粒子の構成
A-1.半導体ナノ粒子の化学組成
上記のとおり、本発明に係る半導体ナノ粒子は、AgCuカルコゲン化合物を主成分とする。このAgCuカルコゲン化合物は、Ag、Cu、カルコゲン元素Chの原子数を、それぞれx、y、zとしたときにAgCuChで表すことができる。そして、AgCuCh化合物の組成に関し、Agの原子数xとCuの原子数yとの比(原子比)は、1.0≦x/y≦10.0とする。本発明者等が検討した範囲において、この組成範囲にあるAgCuカルコゲン化合物のナノ粒子は、1200nm以上の長波長領域における好適な光吸収特性を発揮する。また、この組成範囲のAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子は、発光も発現し得る。そして、AgとCuとの原子比x/yが変化することで、AgCuカルコゲン化合物ナノ粒子の光応答特性が変化する。AgとCuとの原子比x/yは、3.0以上5.0以下とするのがより好ましく、これにより、1200nm以上の長波長域で発光ピークが観察され得る。
本発明で適用されるAgCuカルコゲン化合物のカルコゲン元素(Ch)は、Teを必須とするカルコゲン元素である。上記したように、カルコゲン元素の中で比較的質量の大きいTeを適用することで、光応答性を示す波長を長波長側にシフトさせることができる。本発明のAgCuカルコゲン化合物において、カルコゲン元素は、遷移金属であるAg及びCuに対して電荷補償がなされるように結合している。そして、カルコゲン元素の原子数zと遷移金属成分(Ag及びCu)の原子数(x+y)との比は、0.2≦z/(x+y)≦1.0を満たす。この原子比z/(x+y)は、0.3以上0.7以下(0.3≦z/(x+y)≦0.7)が好ましく、0.5以上0.7以下(0.5≦z/(x+y)≦0.7)がより好ましい。
また、本発明のAgCuカルコゲン化合物中のカルコゲン元素は、Teを必須とするとあることから、Teのみでも良いがTe以外の他のカルコゲン元素を含んでいても良い。本発明のAgCuカルコゲン化合物において、Teに加えて他のカルコゲン元素が含まれるのは、合成過程で使用する保護剤や溶媒等にカルコゲン元素が含まれているとき、これがTeと共に遷移金属成分と結合することに起因する。こうした過程でTeと共に含まれ得る他のカルコゲン元素としては、S又はSeが好ましい。本発明のAgCuカルコゲン化合物にTe以外の他のカルコゲン元素が含まれており、Teの原子数zTeとしたとき、全カルコゲン元素の原子数(z)に対するTeの原子数(zTe)の比zTe/zは、0.2以上0.4以下であるものが好ましく、0.25以上0.35以下がより好ましい。後述するように、本発明者等の検討では、カルコゲン元素としてTeと共に他のカルコゲン元素が含まれるとき、Teの原子比によって光吸収特性が変化する。
尚、以上で説明したAgCuカルコゲン化合物の組成とは、半導体ナノ粒子中のAgCuカルコゲン化合物の全体の組成である。本発明に適用されるAgCuカルコゲン化合物は、単一相で構成されていても、複数相から構成されていても良い。例えば、カルコゲン元素がTeのみであるとき、AgCuカルコゲン化合物(AgCuTe)がとり得る具体的な化学組成は、Ag、Cu、Teの価数によっていくつか挙げられ、AgCuTe(x=1、y=1、z=1)やAgCuTe(x=1、y=1、z=2)等の量論組成のカルコゲン化合物がある。また、カルコゲン元素としてTeに加えてS及び/又はSeが含まれるときには、これらについての量論組成のカルコゲン化合物(AgCuS(x=1、y=1、z=1)やAgCuSe(x=1、y=1、z=1)等)がある。本発明の半導体ナノ粒子中のAgCuカルコゲン化合物は、これら量論組成の化合物が単相又は複数相混合の状態で構成される。また、上記のような量論組成にない化合物を含んでいても良い。半導体ナノ粒子中のAgCuカルコゲン化合物全体において、x、y、zが上記条件の範囲内にあれば良い。
本発明に係る半導体ナノ粒子は、AgCuカルコゲン化合物を主成分とし、90原子%以上のAgCuカルコゲン化合物で構成される。半導体ナノ粒子は、AgCuカルコゲン化合物のみからなっていても良い。半導体ナノ粒子は、AgCuカルコゲン化合物を95原子%以上含むものがより好ましい。本発明に係る半導体ナノ粒子は、AgCuカルコゲン化合物を構成するAg、Cu、Teを必須とするカルコゲン元素以外の元素を含むことがある。例えば、AgCuカルコゲン化合物を合成する際の溶媒の構成元素や、原料となるAg、Cu、Teのそれぞれの前駆物質に含まれる元素が半導体ナノ粒子に含まれることがある。必須構成元素であるAg、Cu、カルコゲン元素以外に含まれる可能性のある元素としては、C、P、Cl、Br、I等が挙げられ、これらの元素の半導体ナノ粒子中の含有量は、10質量%未満であれば許容される。尚、ここで示した化合物及び元素の組成値は、半導体ナノ粒子に関する値であって、後述する保護剤及びその構成元素の含有量は含まれない。
A-2.本発明に係る半導体ナノ粒子の構造
上記したように、本発明に適用されるAgCuカルコゲン化合物は、単一相又は複数相で構成される。複数相からなる半導体ナノ粒子の態様として、いわゆるコアシェル構造をとることができる。コアシェル構造の例としては、Ag、Cu、Teを含むAgCuカルコゲン化合物からなるコア(コア化合物)と、コア化合物とは組成が異なるAgCuカルコゲン化合物やAg、Cu、Teのいずれかを含まない化合物がシェル(シェル化合物)とからなり、シェル化合物がコア化合物の表面の少なくとも一部を被覆する構造がある。また、コアシェル構造のような複数相の規則的な組み合わせでなくとも、組成の異なる複数相がランダムに分布していても良い。尚、Cuリッチ、Ag及びTeリッチとは、当該相におけるCu、Ag及びTeの組成比が50原子%より大きいことを意味する。
本発明に係る半導体ナノ粒子の形状は、球形状の他、キューブ形状、ロッド形状のものであっても良い。球形状、キューブ形状の半導体ナノ粒子は、平均粒径が2nm以上20nm以下であるものが好ましい。半導体ナノ粒子の粒径は、量子閉じ込め効果によるバンドギャップの調整作用と関連する。バンドギャップの調整による好適な光吸収特性を発揮する上では、前記の平均粒径とするのが好ましい。半導体ナノ粒子の平均粒径は、複数(100個以上が好ましい)の半導体ナノ粒子をTEM等の電子顕微鏡により観察し、各粒子の粒径等を測定して粒子数平均を算出することで得ることができる。尚、粒径とは、長径(長軸)と短径(短軸)との平均値として測定きる。
また、本発明に係る半導体ナノ粒子の組成及び構造の解析においては、走査透過型電子顕微鏡(Scanning TEM)が好適に使用できる。特に、高角度散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(High Angle Annular Dark Field Scanning TEM:HAADF-STEM)によれば、ナノ粒子の組成情報を反映した散乱像を得ることができ、エネルギー分散型X線分光装置(EDS、EDX)等との組み合わせにより、Ag、Cu、Teの分布状態やナノ粒子全体の組成を把握することができる。
A-3.本発明に係る半導体ナノ粒子の光応答性
これまで述べたとおり、半導体ナノ粒子は、粒径に応じた量子閉じ込め効果によってバンドギャップが調整され、光応答性が変化する。本発明に係る半導体ナノ粒子の光吸収特性についてみると、吸収スペクトルの長波長側の吸収端波長が1200nm以上であるものが好ましい。これにより、半導体ナノ粒子は、可視光領域から近赤外領域の光に対する吸収性を発揮する。より好ましい態様として、本発明に係る半導体ナノ粒子は、長波長側の吸収端波長が1400nm以上とすることができる。
また、本発明に係る半導体ナノ粒子は、発光現象も発現し得る。このときの発光スペクトルには、1000nm以上の波長域に発光ピークがみられる。本発明に係る半導体ナノ粒子は、好ましい態様としては、1200nm以上、より好ましくは、1400nm以上の長波長領域で発光ピークを示すことができる。
A-4.本発明に係る半導体ナノ粒子の利用態様
本発明に係る半導体ナノ粒子を適宜の基材・担体に塗布・担持することで、上述した光センサ素子等の各種用途に応用することができる。この基材や担体の構成や形状・寸法には特に制限はない。板状又は箔・フィルム上の基材として、例えば、ガラス、石英、シリコン、セラミックスもしくは金属等が例示される。また、粒状・粉末状の担体として、ZnO、TiO、WO、SnO、In、Al等の無機酸化物が例示される。また、半導体ナノ粒子を前記無機酸化物担体に担持し、更に、基材に固定しても良い。
また、半導体ナノ粒子を基材・担体に塗布・担持する際には、上述したように、半導体ナノ粒子を適宜の分散媒に分散させた溶液・スラリー・インクが使用されることが多い。この溶液等の分散媒としては、クロロホルム、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等が適用できる。そして、半導体ナノ粒子の溶液等の塗布方法としては、ディッピング、スピンコート法、また担持の方法としては、滴下法、含浸法、吸着法等の各種方法が適用できる。
尚、本発明に係る半導体ナノ粒子は、その合成過程や上記のように分散媒に分散させたときの凝集を抑制するため保護剤を含んでいることが好ましい。この保護剤としては、アルキル鎖炭素数が4以上20以下のアルキルアミン、アルケニル鎖炭素数が4以上20以下のアルケニルアミン、アルキル鎖炭素数が3以上20以下のアルキルカルボン酸、アルケニル鎖炭素数が3以上20以下のアルケニルカルボン酸、アルキル鎖炭素数が4以上20以下のアルカンチオールの少なくともいずれかが好ましい。これらの保護剤は、半導体ナノ粒子の表面に結合して少なくとも一部を被覆し、分散液で半導体ナノ粒子の凝集を抑制して均一な溶液等とする。また、半導体ナノ粒子の合成工程で反応系に原料と共に保護剤を添加することで、好適な平均粒径のナノ粒子が合成される。尚、保護剤は、前記のアルキルアミン、アルケニルアミン、アルキルカルボン酸、アルケニルカルボン酸、アルカンチオールを単独又は複数組み合わせて適用することができる。
B.本発明に係る半導体ナノ粒子の製造方法
次に、本発明に係る半導体ナノ粒子の製造方法について説明する。本発明者等は、上記した組成のAgCuカルコゲン化合物の合成は、Ag、Cu、Teのそれぞれの構成元素を含む化合物を前駆体(Ag前駆体、Cu前駆体、Te前駆体)とし、それらを同一の反応系に導入して同時に加熱して反応させることが好ましいことを見出している。以下、このAgCuカルコゲン化合物の合成法を適用する半導体ナノ粒子の製造方法について説明する。
B-1.原料(Ag前駆体、Cu前駆体、Te前駆体)
原料となるAg前駆体、Cu前駆体、Te前駆体としては、それぞれ、Ag塩又はAg錯体と、Cu塩又はCu錯体と、Te化合物が適用される。Ag前駆体及びCu前駆体は、1価のAg、1価のCuを含む塩又は錯体が好ましい。
Ag前駆体としては、Ag塩又はAg錯体が適用される。Ag前駆体は1価のAgを含む塩又は錯体が好ましい。Ag前駆体の好適な具体例としては、酢酸銀(Ag(OAc))、硝酸銀、炭酸銀、酸化銀、シュウ酸銀、塩化銀、ヨウ化銀、シアン化銀(I)塩、ジエチルジチオカルバミン酸銀等が挙げられる。
Cu前駆体としては、Cu塩又はCu錯体が適用される。Cu前駆体は1価のCuを含む塩又は錯体が好ましい。但し、Cu前駆体については、2価のCuを含む塩又は錯体を用いることもできる。半導体ナノ粒子の合成過程で、溶媒や共存するTe前駆体等により2価Cuが還元されて1価のCuとなるからである。Cu前駆体の好適な具体例としては、酢酸銅、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅等が挙げられる。
Te前駆体となるTe化合物としては、酸化テルル(TeO)、テルル酸(Te(OH))、亜テルル酸ナトリウム(NaTeO)等のTe化合物が適用できる。
B-2.AgCuカルコゲン化合物の反応系の形成
AgCuカルコゲン化合物の合成に際しては、上記したAg前駆体とCu前駆体とTe前駆体とが混合されてなる単一の反応系を形成してから反応させる。このとき、別々に用意したAg前駆体、Cu前駆体、Te前駆体を順次混合しても良く、混合の順序については特に限定されない。また、AgCuカルコゲン化合物の遷移金属成分となるAg前駆体とCu前駆体との混合物を金属源前駆体として調整し、金属源前駆体とTe前駆体とを混合して反応系を形成しても良い。
合成されるAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)のAgとCuとの原子比(x/y)は、Ag前駆体とCu前駆体との仕込み量の比により調整可能である。AgとCuとの原子比(x/y)を所定範囲とする本発明のAgCuカルコゲン化合物の合成のための仕込み量の比は、Ag前駆体中のAg原子の原子数をa、Cu前駆体中のCu原子の原子数をbとしたとき、それらの比(a/b:以下、この比をAg仕込み比と称する)を1以上10以下となるように設定することが好ましく、2以上4以下とするのがより好ましい。
また、反応系中のTe前駆体の仕込み量は、合成されるAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)のカルコゲン元素中のTe原子数(zTe)に影響を及ぼし得る。本発明者等の検討によれば、Te前駆体中のTe原子の原子数をcとし、上記したCu前駆体中のCu原子の原子数bを基準としたとき、それらの比(c/b:以下、この比をTe仕込み比と称するときがある)を0.1以上2以下となるように設定することが好ましく、0.1以上1以下とするのがより好ましい。
また、上記したように、本発明の半導体ナノ粒子は、AgCuカルコゲン化合物に保護剤が結合していることが好ましい。また、この保護剤がカルコゲン元素を含んでいるとき、当該カルコゲン元素が本発明のAgCuカルコゲン化合物のカルコゲン元素の一部を形成し得る。そこで、上記した反応系には、Ag前駆体、Cu前駆体、Te前駆体と共に保護剤を添加することが好ましい。保護剤として、アルキル鎖炭素数が4以上20以下のアルキルアミン、アルケニル鎖炭素数が4以上20以下のアルケニルアミン、アルキル鎖炭素数が3以上20以下のアルキルカルボン酸、アルケニル鎖炭素数が3以上20以下のアルケニルカルボン酸、アルキル鎖炭素数が4以上20以下のアルカンチオールの少なくともいずれかを添加することが好ましい。
半導体ナノ粒子の合成における反応系は、無溶媒でナノ粒子を生成することも可能であるが、溶媒を使用することが好ましい。溶媒を使用する場合は、オクタデセン、テトラデカン、オレイン酸、オレイルアミン、ドデカンチオール、あるいはこれらの混合物等が適用できる。
B-3.AgCuカルコゲン化合物の合成条件
Ag前駆体、Cu前駆体、Te前駆体、及び保護剤で構成される反応系を加熱することでAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子が合成される。このときの加熱温度(反応温度)は、100℃以上200℃以下とする。100℃未満では合成反応が進行し難い。一方、200℃を超えると、粒子形状が不安定なナノ粒子が形成されることがある。より好適な反応温度は、100℃以上150℃以下である。
また、反応時間(加熱時間)は、原料の仕込み量等によって調整可能であるが、5分以上120分以下とするのが好ましい。反応時間は、より好ましくは、10分以上とし、更に好ましくは15分以上とする。尚、AgCuカルコゲン化合物ナノ粒子ナノ粒子の合成反応を進行させる間、反応系を攪拌することが好ましい。
AgCuカルコゲン化合物ナノ粒子の合成反応の終了後は、必要に応じて反応系を冷却し、半導体ナノ粒子として回収することができ。このとき、貧溶媒となるアルコール(エタノール、メタノール等)を添加してナノ粒子を沈殿させる、あるいは、遠心分離等により半導体ナノ粒子を沈殿させて回収し、更にアルコール(エタノール、メタノール等)等で一旦粒子を洗浄したのち、クロロホルムなどの良溶媒中に均一に分散させても良い。
以上説明したように、本発明は、Teを必須のカルコゲン元素とするAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)を主成分とする半導体ナノ粒子である。本発明に係る半導体ナノ粒子は、好適な光応答性を有し、使用規制等を考慮した実用性も有する。そして、本発明に係る半導体ナノ粒子は、近赤外線領域(NIR)及び短波赤外線領域(SWIR)の長波長領域における受光素子や発光素子等の用途に対応可能となっている
第1実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子のTEM像。 第1実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの測定結果。 第1実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の発光スペクトルの測定結果。 第2実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの測定結果。 第2実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の発光スペクトルの測定結果。 第3実施形態で加熱温度を変化させて合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子のTEM像。 第3実施形態で加熱温度を変化させて合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの測定結果。 第3実施形態で加熱温度を変化させて合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の発光スペクトルの測定結果。 第3実施形態で反応時間を変化させて合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子のTEM像。 第3実施形態で反応時間を変化させて合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの測定結果。 第3実施形態で反応時間を変化させて合成したAgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子の発光スペクトルの測定結果。
第1実施形態:以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、AgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)からなる半導体ナノ粒子を合成し、その外観等の確認を行うと共に、光応答性特性を評価した。尚、本実施形態では、AgとCuとの原子比(x/y)を変化させたAgCuカルコゲン化合物のナノ粒子を合成した。
本実施形態におけるAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子の合成は、遷移金属成分となるAg前駆体とCu前駆体との混合物を金属源前駆体として予め調整し、その後、金属源前駆体とTe前駆体とを混合・反応して半導体ナノ粒子を合成した。
Ag前駆体として酢酸銀(Ag(OAc))と、Cu前駆体として酢酸銅(Cu(OAc))とを溶媒・保護剤である1-ドデカンチオール(DDT)3mLに溶解・混合して金属源前駆体を調製した。このとき、溶液中のAgとCuとの合計含有量が金属換算で0.08mmolとなるように設定した。そして、Agの仕込み比(a/b)が、3/1、2.5/1.5、2/2、1.5/2.5となるようにして酢酸銀と酢酸銅を混合した。この金属源前駆体の準備する一方で、酸化テルル(TeO)0.2mmolを溶媒・保護剤であるDDT2mLに溶解し、窒素雰囲気下で100℃、5分加熱してTe前駆体の溶液を調整した。
AgCuカルコゲン化合物ナノ粒子の合成は、まず、金属源前駆体(Ag、Cu)の溶液を窒素雰囲気下、150℃で5分間加熱した。そして、ここに上記Te前駆体溶液をシリンジで注入した。その後、窒素雰囲気下で反応温度を150℃として15分間加熱しながら撹拌した。反応終了後は、放冷後に5分間4000rpmで遠心分離を行い上澄み液と沈殿とを分離した。そして、上澄み液に貧溶媒としてエタノール/トルエンを4cm加えて沈殿を生じさせた後、5分間4000rpmで遠心分離を行って沈殿を回収してAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子を得た。
以上の操作で得られたAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子をクロロホルム3cmに分散させてAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子の分散液を得た。この分散液をサンプル瓶に移し替えて窒素置換を行った後、遮光して冷蔵保管した。
[半導体ナノ粒子のTEM観察]
本実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子(Ag仕込み比:3/1、2.5/1.5、2/2、1.5/2.5)について、TEM観察を行った。図1に、本実施形態で製造した各半導体ナノ粒子のTEM像を示す(倍率は、各写真のスケールバーを参照)。図1を参照すると、Ag仕込み比を3/1として合成したAgCuカルコゲン化合物では、略球形のナノ粒子が多くみられておる。Ag仕込み比が低くなる(Cuの割合が大きくなる)と、それに従って、不定形のナノ粒子が増加する傾向にある。
[半導体ナノ粒子の組成分析]
本実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子(Ag仕込み比:3/1、2.5/1.5、2/2、1.5/2.5)について、SEM-EDS分析による組成分析を行った。各半導体ナノ粒子の組成の測定結果を表1に示す。組成分析の結果は、本実施形態及び以下の各実施形態において、ナノ粒子全体に対する原子%で表示する。表1には、組成分析結果に基づき算出されるAg原子数(x)とCu原子数(y)との比x/y及びカルコゲン元素の原子数(z)と遷移金属成分の原子数(x+y)との比z/(x+y)を併せて示した。
表1からわかるように、Ag仕込み比(a/b)の増大により、当然に、AgCuカルコゲン化合物のAg原子数(x)とCu原子数(y)との比(x/y)が大きくなる。また、カルコゲン元素の原子数(z)と遷移金属成分(Ag及びCu)の原子数(x+y)との比については、Ag仕込み比が変化しても大きく変動がないことが確認される。そして、本実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物は、カルコゲン元素としてTeを必須としつつ、他のカルコゲン元素としてSを含むことが確認される。更に、No.4を除き、Te原子数のカルコゲン元素全体に対する(zTe/z)は、Ag仕込み比が変化しても大きな変動はない。No.4のAgCuカルコゲン化合物は、Ag仕込み比が最小(a/b:1.5/2.5)であり、TEM観察の結果(図1)を参照すると、2相分離がみられており、これのみ傾向が異なっていると考えられる。
[吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定]
次に、各半導体ナノ粒子についての光応答性を評価するため、吸収スペクトル測定と発光スペクトル測定を行った。吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製、Agilent 8453製)を用いて、波長範囲を400nm~1600nmとして測定した。また、発光スペクトルは、浜松ホトニクス株式会社製ダイオードアレイ分光光度計(PMA-12、C10027-02)を用いた。サンプルをクロロホルム溶液(n=1.4429)で365nmでの吸光度が0.1となるように調整して測定を行った。
本実施形態で製造した各半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの測定結果を図2に示し、発光スペクトルの測定結果を図3に示す。また、これらに基づいて測定される各半導体ナノ粒子の長波長側の吸収端波長と発光スペクトルのピーク波長を表2に示す。
図2及び表2の吸収スペクトルの測定結果を参照すると、いずれの半導体ナノ粒子においても、1400nm以上の領域で吸収端を示す光吸収特性を有する。また、いずれにおいても、800nm~950nmの波長で励起子ピークと考えられる小さなピークを示しながら1400nm付近に吸収ピークが発現している。AgCuカルコゲン化合物(AgCuCh)の組成に関し、AgとCuとの原子比(x/y)による変化をみると、x/yが上昇しAgの原子比が高くなることで吸収端の長波長側へのシフトがみられる。
また、本実施形態の半導体ナノ粒子では、いずれも発光の発現が確認されている。図3及び表2の発光スペクトルの測定結果を参照すると、1000nm以上の波長域での発光ピークが確認された。特に、Agの原子比が高い半導体ナノ粒子(No.1)の発光ピーク波長が長波長側にある。この半導体ナノ粒子では、1200nm以上の領域での発光ピークが観察された。
以上の光応答性の評価結果から、本実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子は、吸収端が1200nm以上であり長波長領域での良好な光吸収性を発揮するといえる。特に、No.1のAg仕込み比3/1のAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子(x/y=4)は、長波長側吸収端波長が1500nm以上にあり、発光特性でも1200nm以上のピーク波長を示す良好なものであった。
第2実施形態:本実施形態では、Teの仕込み比を調整して各種組成のAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子を合成した。本実施形態で適用した半導体ナノ粒子の合成方法は、基本的には第1実施形態と同様であり、金属源前駆体の溶液にTe前駆体の溶液を添加して加熱・反応してAgCuカルコゲン化合物のナノ粒子を得た。本実施形態では、Te前駆体添加時の仕込み量を調整して、Te前駆体中のTe原子の原子数cと金属源前駆体中のCu原子の原子数bとの比であるTe仕込み比(c/b)が1/4、1/2、1/1、2/1となるようにして合成反応を行った。合成後は、第1実施形態と同様に分離・精製してAgCuカルコゲン化合物のナノ粒子を得た。尚、Ag仕込み比(a/b)は、3/1とし、他の反応条件は第1実施形態と同じとした。
[半導体ナノ粒子の組成分析]
本実施形態で合成したAgCuカルコゲン化合物からなる半導体ナノ粒子(Te仕込み比:1/4、1/2、1/1、2/1)について、SEM-EDS分析による組成分析を行った。各半導体ナノ粒子の組成の測定結果を表3に示す。
表3を参照すると、Te仕込み比(c/b)が増大しても、カルコゲン元素の原子数(z)と遷移金属成分(Ag、Cu)の原子数(x+y)との比(z/(x+y))に大きな変動はない。Te仕込み比の増大は、Te原子数のカルコゲン元素全体の原子数に対する割合(zTe/z)の増大に繋がっている。また、Te仕込み比の増大は、AgとCuとの原子比x/yの低下にも繋がる傾向も伺える。
[吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定]
次に、本実施形態で製造した各半導体ナノ粒子についての光応答性の評価として吸収スペクトル測定と発光スペクトル測定を行った。これらの測定方法は、第1実施形態と同様である。これらの測定結果を図4及び図5に示し、各半導体ナノ粒子の長波長側の吸収端波長と発光スペクトルのピーク波長を表4に示す。
図4及び表4の吸収スペクトルの測定結果を参照すると、Te仕込み比を変化させた半導体ナノ粒子のいずれにおいても、励起子ピークを示しながら1400nm付近に吸収ピークが発現している。そして、長波長側吸収端は、いずれも1500nm以上の領域にある。特に、Te仕込み比が低い(AgCuカルコゲン化合物中のTeの原子比が低い)半導体ナノ粒子(No.5)は、吸収端波長の更なる長波長化が観られた。
図5及び表4の発光スペクトルの測定結果を参照すると、No.5~No.7(c/b:1/4~1/1)の半導体ナノ粒子の発光スペクトル曲線は、同様の傾向を示し差異はさほどない。Te仕込み比が高い(c/b:2/1)No.8の半導体ナノ粒子は、明瞭なピークがみられなかった。
第3実施形態:本実施形態では、AgCuカルコゲン化合物ナノ粒子の合成条件を変化させたときに得られる半導体ナノ粒子の光応答性を検討した。
まず、反応系が形成される前後における温度の影響について検討した。ここでは、第1実施形態のAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子の合成工程において、金属源前駆体溶液にTe前駆体溶液を添加する前の金属源前駆体溶液の加熱温度(T1)と、Te前駆体溶液の添加後の加熱温度(反応温度:T2)を調整した。具体的には、(i)T1=T2=150℃、(ii)T1=150℃、T2=120℃、(iii)T1=T2=120℃の3条件でAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子を合成した。この検討におけるそれぞれの加熱時間は、第1実施形態と同じとした。
また、本実施形態では、金属源前駆体溶液へのTe前駆体溶液の添加後の加熱時間(反応時間)の影響も検討した。この検討では、反応時間を5min、10min、20min、40min、80minとしてAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子を合成した。この検討における加熱温度は、T1=T2=120℃とした。
尚、それぞれの検討において、上記した反応条件以外の合成方法・条件は、第1実施形態と同じとし、Ag仕込み比(a/b)は、3/1とした。
本実施形態の検討結果について、まず、反応系形成前後の温度について説明する。図6は、上記した(i)~(iii)の加熱条件により合成されたAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子のTEM像である。このTEM像から、反応系形成前後の加熱温度(T1及びT2)を共に120℃とする(iii)の条件において、安定した粒子形状のナノ粒子が合成されることが分かる。そして、ナノ粒子の形状は、150℃での加熱を含むことで不安定化する傾向にある。
そこで、反応系形成前後の加熱温度が同じ(i)の条件(T1=T2=150℃)と(iii)の条件(T1=T2=120℃)の半導体ナノ粒子について、EDSによる組成分析を行った。その結果を表5に示す。表5から、これらのAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子は、粒子形状に差異はあるものの、組成については大きな差異はないことが分かった。
また、これら2つの半導体ナノ粒子の吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図7、図8及び表6に示す。
図7、表6の吸収スペクトルの測定結果をみると、(i)、(iii)の加熱条件による半導体ナノ粒子の吸収特性は、全体的には類似した曲線となる。但し、反応系形成前後の加熱温度を120℃とする(iii)の半導体ナノ粒子では、吸収ピークの強度が明確に強くなっており、吸収端波長も長波長となっている。そして、図8、表6の発光スペクトルの測定結果を参照すると、反応系形成前後の加熱温度を120℃とする(iii)の半導体ナノ粒子における発光ピーク波長が大きく(200nm以上)長波長側にシフトしている。
次に、反応時間による影響の検討結果について説明する。図9は、反応時間を5min~40min(T1=T2=120℃)として合成したAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子のTEM像である。図9から、反応時間を長時間とすることで、粒子形状が球形に近づくことが分かる。また、これらの半導体ナノ粒子のEDSによる組成分析結果を表7に示す。表7を参照すると、反応時間が増大しても遷移金属成分(Ag、Cu)とカルコゲン元素との原子比(z/(x+y))に大きな差は生じない。また、遷移金属成分中のAgの原子比(x/y)も3.0~5.0の範囲内でさほど大きな差はない。
反応時間を5min~40min(T1=T2=120℃)として合成したAgCuカルコゲン化合物ナノ粒子について、吸収スペクトルの測定結果を図10に、発光スペクトルの測定結果を図11に示し、これらを纏めたものを表8に示す。
図10の吸収スペクトルについてみると、反応時間80minを除くと、各半導体ナノ粒子の吸収特性に大きな差はない。また、図11の発光スペクトルの測定結果をみると、吸収スペクトルの結果と同様に、発光スペクトル曲線に差異はなく、発光ピーク波長もほぼ同じであるといえる。
本実施形態で検討した合成条件に関する検討結果をまとめると、金属源前駆体の加熱温度及び反応温度に関しては、150℃(第1実施形態)に対して比較的低温の120℃とするのがより好ましいといえる。また、反応時間については、長時間とすることで粒子の球形化がみられて好ましいといえるが、粒子の外形以外の特性に差異は少ない。反応時間については、比較的自由に設定可能であると考えられる。半導体ナノ粒子の合成条件は、金属源前駆体及びTe前駆体における遷移金属・カルコゲン元素の濃度や反応系のスケールによって調整すべきであるが、本実施形態の結果を参照することができる。
以上説明したように、本発明に係るAgCuカルコゲン化合物よりなる半導体ナノ粒子は、良好な光応答性を発揮し得る。このAgCuカルコゲン化合物は、使用規制への対応や重金属の使用回避についても考慮されている。本発明に係る半導体ナノ粒子は、ディスプレイ装置や生体関連物質検出用マーカー物質等に利用される発光素子、蛍光物質や、太陽電池や光センサ等に搭載される光電変換素子や受光素子への応用が期待される。特に、本発明は、近赤外線領域(NIR)や短波赤外線領域(SWIR)の長波長領域における光吸収特性の向上が図られている。このことから、本発明は、上記した光素子の中でも近赤外領域での応答性が重視されるLIDAR、SWIRイメージセンサに適用される受光素子に特に有用である。

Claims (8)

  1. Ag、Cu、カルコゲン元素からなる下記式で示されるAgCuカルコゲン化合物を含む半導体ナノ粒子であって、
    前記カルコゲン元素は、必須のカルコゲン元素としてTeを含み、
    前記AgCuカルコゲン化合物を90原子%以上含む半導体ナノ粒子。
    (式中、Chはカルコゲン元素である。x、y、zは、Ag、Cu、カルコゲン元素の原子数であり、0.2≦z/(x+y)≦1である。また、1.93≦x/y≦10.0である。)
  2. 前記AgCuカルコゲン化合物を構成するカルコゲン元素は、Te以外の他のカルコゲン元素を含む、前記他のカルコゲン元素はS、Seである請求項1記載の半導体ナノ粒子。
  3. 前記AgCuカルコゲン化合物を構成するカルコゲン元素の原子数に対するTeの原子数の比が0.2以上0.4以下である請求項2記載の半導体ナノ粒子。
  4. 前記AgCuカルコゲン化合物を99原子%以上含む請求項1又は請求項2記載の半導体ナノ粒子。
  5. 平均粒径が2nm以上20nm以下である請求項1又は請求項2記載の半導体ナノ粒子。
  6. 保護剤として、アルキル鎖炭素数が4以上20以下のアルキルアミン、アルケニル鎖炭素数が4以上20以下のアルケニルアミン、アルキル鎖炭素数が3以上20以下のアルキルカルボン酸、アルケニル鎖炭素数が3以上20以下のアルケニルカルボン酸、アルキル鎖炭素数が4以上20以下のアルカンチオールの少なくともいずれかが、表面に結合された請求項1又は請求項2記載の半導体ナノ粒子。
  7. 吸収スペクトルの長波長側吸収端波長が1200nm以上である請求項1又は請求項2記載の半導体ナノ粒子。
  8. 発光スペクトルのピーク波長が1000nm以上である請求項1又は請求項2記載の半導体ナノ粒子。
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