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JP7770974B2 - カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法及び吸湿発熱性繊維構造物の製造方法 - Google Patents
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JP7770974B2 - カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法及び吸湿発熱性繊維構造物の製造方法 - Google Patents

カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法及び吸湿発熱性繊維構造物の製造方法

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Description

本発明は、カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法及び吸湿発熱性繊維構造物の製造方法に関する。
吸湿発熱は、乾燥した繊維が湿気(水分)を吸収する際に発熱する性質であり、例えば昼間天日に当てた布団を室内に取り込んで、数時間経過し室温と同じ温度になっていても、人体の皮膚を当てると暖かく感ずる現象として知られている。
本出願人は、セルロース系繊維に吸湿発熱特性を付与する方法として、セルロース系繊維に、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をグラフトして、セルロース系繊維に、前記化合物に由来のカルボキシル基(-COOH)またはそのNa塩を導入することを提案している(特許文献1)。
特開2021-127545号公報
しかし、セルロース系繊維に導入されたカルボキシル基のNa塩は、水分との親和性が高く、セルロース系繊維が水に濡れたときにべとつきを生じさせるという問題があった。
本発明は、上記問題を解決するため、スライバー状のセルロース系繊維に導入されたカルボキシル基が、水との親和性が高いNa塩等のアルカリ金属塩となることが抑制された、カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法を提供する。
また、本発明は、本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を用いた吸湿発熱性繊維構造物の製造方法を提供する。
本発明は、一態様において、
スライバー状のセルロース系繊維に、エチレン性不飽和二重結合を含むカルボキシル基含有化合物をグラフトしてカルボキシル基を導入するグラフト工程と、
グラフトされた前記セルロース系繊維を、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属イオンを含む処理液と接触させて、前記カルボキシル基をその金属塩とするブロック工程と、を含むカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法に関する。
本発明は、別の一態様において、
本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法によりカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を準備する工程と、
前記カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を含む繊維構造物を作製する工程と、
前記繊維構造物に対し吸湿発熱加工処理を行う吸湿発熱加工工程と、
を含む吸湿発熱性繊維構造物の製造方法に関する。
本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法では、スライバー状のセルロース系繊維に、エチレン性不飽和二重結合を含むカルボキシル基含有化合物をグラフトして、カルボキシル基を導入した後、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含む処理液を接触させることにより、カルボキシル基をその金属塩としている。
そのため、本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を含む吸湿発熱性繊維構造物の製造過程等で、カルボキシル基が水との親和性が高いNa塩等のアルカリ金属塩となることが防止でき、故に、水分接触によるべたつきの問題が低減される。
また、本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法では、本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を含むので、上記べたつきの問題が低減されるので、工程通過性を改善できる。
図1は、本発明の一態様のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法の工程の流れを示すフロー図である。 図2は、本発明の一態様の吸湿発熱性繊維構造物(生地)の製造方法の工程の流れを示すフロー図である。 図3は、本発明の別の一態様の吸湿発熱性繊維構造物(紡績糸)の製造方法の工程の流れを示すフロー図である。
[カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造]
本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法の一態様では、図1に示すように、スライバー状のセルロース系繊維を用意し、当該セルロース系繊維に、エチレン性不飽和二重結合を含むカルボキシル基含有化合物をグラフトして、カルボキシル基含有化合物に由来のカルボキシル基を導入する(グラフト工程)。次いで、カルボキシル基含有化合物がグラフトされて、カルボキシル基が導入されたセルロース系繊維を、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属イオンを含む処理液と接触させて、導入されたカルボキシル基の一部または全部をその金属塩とする(ブロック工程)。
<グラフト工程>
本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法の一態様では、例えば、スライバー(繊維束)状のコットンなどのセルロース系繊維に、エチレン性不飽和二重結合を含むカルボキシル基含有化合物(以下「カルボキシル基含有化合物」と略称する場合もある。)をグラフトして、前記カルボキシル基含有化合物に由来のカルボキシル基を導入する。
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、1つのエチレン性不飽和二重結合と、1または2つのカルボキシル基とを含む化合物が挙げられる。前記カルボキシル基含有化合物としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸が好ましい。これらの化合物をコットンなどのセルロース系繊維表面にグラフトさせると、吸湿発熱性繊維構造物の製造過程において、耐洗濯性のある吸湿発熱機能を付与できる。
セルロース系繊維へのカルボキシル基含有化合物のグラフトは常法にて行える。グラフト結合は、例えば、スライバー状態のセルロース系繊維に対して電子線を照射することにより、セルロース系繊維表面にラジカルを発生させる反応、発生したラジカルに前記カルボキシル基含有化合物を接触させることでセルロース系繊維の表面に前記カルボキシル基含有化合物に由来の化合物基としてカルボン酸基をグラフト鎖としてグラフトさせる反応等の様々な反応が関与して形成される。これにより、セルロース系繊維に、カルボキシル基が導入される。
カルボキシル基含有化合物の付与量は、セルロース系繊維に対して、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。カルボキシル基が導入されたセルロース系繊維のうち、グラフト鎖であるカルボン酸基の質量割合は、1~30質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。付与量が前記範囲であれば、例えば、グラフト化されていない未処理コットン等の未処理繊維と混紡しても、後述する吸湿発熱性繊維構造物の製造方法における吸湿発熱加工工程を経て、優れた吸湿発熱機能を発揮できる。
次に、セルロース系繊維としてコットン(天然セルロース繊維)を使った場合を例に、グラフト結合のための処理の一例を説明する。紡績用コットンスライバーに対して、連続法の場合は窒素雰囲気下で電子線を照射し、コットン繊維の表面に、ラジカルを発生させ、直後に連続的にエチレン性不飽和二重結合を含むカルボキシル基含有化合物を接触させる。電子線照射直後に前記カルボキシル基含有化合物をコットン繊維の表面に接触させるのは、電子線照射により発生したラジカルを減衰させないためである。ラジカルは時間とともに失活していくので、電子線照射直後に前記カルボキシル基含有化合物をコットン繊維の表面に接触させるのが好ましい。
また、電子線照射後、前記カルボキシル基含有化合物をコットン繊維の表面に接触させることを連続的に行うと、前記カルボキシル基含有化合物をコットン繊維の表面に発生したラジカルに効率的に接触できるため、好ましい。さらに、前記カルボキシル基含有化合物のコットン繊維の表面への接触を連続的に行うことは、長尺物の紡績用スライバーへのグラフト結合に好都合である。さらに、窒素雰囲気下で電子線を照射すると、発生したラジカルが失活しにくいので好ましい。なお、電子線照射法については、前記カルボキシル基含有化合物をコットン繊維の表面に接触させると同時に照射する、いわゆる同時照射法も可能である。
電子線が照射されるセルロース系繊維の形状は、連続加工の場合は、スライバーやラップのような連続したシート状が良いが、バッチ加工の場合は、そのような連続状には限らない。
前記カルボキシル基含有化合物をコットン等のセルロース系繊維の表面に接触させる方法は、浸漬法又はスプレー法などのいかなる方法でも良い。例えば、カルボキシル基含有化合物の水溶液を調製し、スライバーを当該水溶液に浸漬させる方法、または、スライバーに当該水溶液をスプレーする方法が好ましい。
上記の通りグラフト工程で、スライバー状のセルロース系繊維にカルボキシル基含有化合物をグラフト結合させた後、好ましくは、水洗し、次いで乾燥させることにより、カルボキシル基が導入されたセルロース系繊維が得られる。
<ブロック工程>
グラフトされ前記カルボキシル基が導入されたセルロース系繊維を、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含む処理液と接触させる。好ましくは、Ca、及びZnから選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含む処理液と接触させる。この処理により、セルロース系繊維に導入されたカルボキシル基をその金属塩とする。当該金属塩の金属は、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはCa、及びZnから選ばれる少なくとも1種である。これにより、前記カルボキシル基がNa塩等のアルカリ金属塩となることを防止できる。
セルロース系繊維上のカルボン酸基(グラフト鎖)に含まれる一つまたは複数のカルボキシル基の水素と、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属とが置き換わることにより得られる、カルボン酸Ca塩、カルボン酸Mg塩、およびカルボン酸Zn塩、特に、カルボン酸Ca塩およびカルボン酸Zn塩は、カルボン酸Na塩よりも、安定であり、水分と接触してもべとつきが出ず、吸湿発熱性繊維構造物の製造過程で行われる、精練処理、漂白処理、染色処理などの種々の処理及び加工において化学変化を起こし難い。
前記処理液は、好ましくは、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属の化合物を水に溶解して得られる水溶液であり、当該水溶液における前記金属化合物の濃度は、好ましくは0.01~50g/L、より好ましくは0.1~20g/L、さらに好ましくは0.5~20g/L、さらにより好ましくは5~20g/Lである。Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属イオンの供給源である前記金属化合物としては、例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の金属化合物が好ましく、より好ましくは、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛である。故に、前記処理液は、好ましくは、塩化カルシウム水溶液、酢酸カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、酢酸マグネシウム水溶液、塩化亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液、またはこれらの組み合わせである。より好ましくは、塩化カルシウム水溶液、酢酸カルシウム水溶液、酢酸亜鉛水溶液、またはこれらの組み合わせであり、さらに好ましくは、塩化カルシウム水溶液、酢酸カルシウム水溶液、またはこれらの組み合わせである。
前記Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含む処理液には、べとつき防止の観点から、実質的にアルカリ金属イオンが含まれず、アルカリ金属が含まれないことが好ましい。Na等のアルカリ金属イオンが含まれ、これが、カルボン酸Na塩等のアルカリ金属塩を生成すると、糸や生地等の吸湿発熱性繊維構造物の製造過程での水分との接触時に、べとつきがでる傾向となる。故に、前記処理液または処理液(水溶液)を調整するための水としてNaなどのアルカリ金属イオンを比較的多く含む水を使用することは好ましくない。
尚、ここで「実質的にアルカリ金属が含まれず」とは、生産性等の観点から、前記処理液に不可避的に少量のNaなどのアルカリ金属イオンが含まれることを許容する趣旨である。不可避的に含まれるアルカリ金属イオン濃度は、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは100mg/L以下、さらに好ましくは40mg/L以下、さらにより好ましくは10mg/L以下である。不可避的に含まれるアルカリ金属イオン濃度の下限について特に制限はないが、通常1mg/L以上である。
上記の通りブロック工程で、グラフトされたセルロース系繊維を前記処理液と接触させて、セルロース系繊維に導入されたカルボキシル基をその金属塩とした後、好ましくは、水洗し、次いで乾燥させることにより、カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維が得られる。
[吸湿発熱性繊維構造物の製造]
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法にて製造されたカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維(以下「処理繊維」とも呼ぶ。)を含む繊維構造物を作製する工程を含む。繊維構造物は、具体的には、糸または、編み物若しくは織物等の生地である。以下、繊維構造物が、生地である場合を例に挙げて説明する。
(吸湿発熱性生地の製造)
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、吸湿発熱性生地の製造方法である。本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、図2に示すように、本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法によりスライバー状の処理繊維を作製する工程と、上記処理繊維を含むスライバーを処理繊維含有紡績糸とする紡績工程と、少なくとも前記処理繊維含有紡績糸を用いて生地を作製する工程と、前記生地に対し吸湿発熱加工処理を行う吸湿発熱加工工程とを含む。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、未処理繊維の糸を準備する工程を含んでいてもよく、処理繊維含有紡績糸と未処理繊維の糸の両方を用いて生地を作製してもよい。
また、本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、繊維構造物(生地)に対して、精練処理、漂白処理、および染色処理から選ばれる1種の処理をする。これらの処理をする場合、好ましくは、いずれも、吸湿発熱加工工程の前に行う。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、前記処理繊維とそれ以外の未処理繊維とを混紡し精紡することにより、前記処理繊維を含む紡績糸(混紡糸)を製造する工程を含む。処理繊維と未処理繊維との混紡は、通常はダブリング工程の入る練条工程にて行うのが好ましい。しかし、梳綿工程(カード処理)、粗紡工程、精紡工程にて行うことも可能である。例えば、ウエブ、スライバー、フリース、または粗紡糸を、各々複数引き揃え、所定倍率引き伸ばすことにより行える。粗紡工程や精紡工程では、撚り掛けする際に構成繊維のマイグレーションにより混紡できる。前記処理繊維(紡績用スライバー)を、混打綿工程にてそれ以外の未処理繊維(スライバー)と所望の混紡割合とすることも可能である。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、前記処理繊維として、例えば処理コットンと、前記未処理繊維として、例えば未処理コットンとを混紡した後、常法にしたがい混紡紡績糸とする。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法では、一態様において、常法にしたがい生地を作製した後、好ましくは、吸湿発熱性生地の製造過程の最終段階で、前記生地に対して吸湿発熱加工工程をする。吸湿発熱加工工程を経ることにより、前記処理繊維に吸湿発熱特性が付与される。ここで、最終段階とは、精練処理、漂白処理、および染色処理から選ばれる1種の処理をする場合は、これらの処理のいずれよりも後の段階であり、吸水性柔軟剤を含む水溶液で仕上げ加工する場合は、当該仕上げ加工よりも前の段階を意味する。
前記吸湿発熱加工工程では、生地を、好ましくは、pH5以下で酸処理をした後、水洗する。次いで、pH7.5以上でアルカリ処理した後、水洗し、乾燥処理をする。これにより吸湿発熱機能を安定して発現させることができる。
前記酸処理は、クエン酸やリンゴ酸等を水に加えて得た水溶液に繊維構造物(生地)を浸漬する処理が好ましい。クエン酸は、上記水溶液において、1~10g/L程度、好ましくは2~8g/L程度となるように加える。前記水溶液のpHが5を超える場合は、5以下になるまでクエン酸を加えるのが好ましい。酸処理条件は、水溶液の温度が30~50℃、浸漬時間が10~30分であると好ましい。酸処理後の水洗は、常温(25℃)で5分間程度が好ましい。酸処理により、Ca,Mg,Zn等を除去できる。
アルカリ処理は、キレート剤(金属封鎖剤)と炭酸水素ナトリウム(重曹,NaHCO3)を水に加えて得た水溶液に繊維構造物(生地)を浸漬する処理である。キレート剤(金属封鎖剤)は、上記水溶液において、1.0g/L程度、特に0.3~1.5g/L程度となるように加えるのが好ましく、炭酸水素ナトリウム(重曹)は4g/L程度となるように加えるのが好ましい。なお、炭酸水素ナトリウム(重曹,NaHCO3)の代わりにソーダ灰(Na2CO3)も使用可能である。前記水溶液のpHが7.5未満の場合は、7.5以上になるまで重曹を加えるのが好ましい。アルカリ処理条件は、水溶液の温度が30~50℃、浸漬時間が10~30分であると好ましい。アルカリ処理後の水洗は、常温(25℃)で1回につき5分間程度、2回水洗するのが好ましい。
キレート剤(金属封鎖剤)としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテルが使用できる。
以上の様にして、酸処理をした後アルカリ処理をすれば、前記ブロック工程にて、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属にて金属塩とされたカルボキシル基から、Ca,Mg,Znを除去でき、グラフト鎖において、カルボキシル基(―COOH)またはそのNa塩(―COONa)を存在させることができ、吸湿発熱性を維持できる。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法において、精練、漂白、および染色のうちの少なくとも1種の処理をする場合、前記酸処理の前に、これらの処理をするのが好ましい。吸湿発熱性繊維構造物の製造過程で行われる処理および加工のうち特に精練、漂白、および染色のうちの少なくとも1種の処理において、カルボキシル基が化学変化を起こす可能性がある。そのため、従来、セルロース系繊維に付与された吸湿発熱特性が、その後に行われるこれらの処理によって劣化してしまう恐れがあった。吸湿発熱加工工程よりも前にこれらの処理を済ませておけば、吸湿発熱加工工程で導入されたカルボキシル基(-COOH)またはそのNa塩(-COONa)について、上記劣化の恐れの問題が解消され、良好な吸湿発熱性を有する吸湿発熱性繊維構造物を提供できる。
前記吸湿発熱性繊維構造物(生地)は、吸湿発熱加工されたセルロース系繊維、その他の繊維を含み、前記繊維構造物(生地)を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維の含有量は5~40質量%であると好ましい。これにより、繊維構造物(生地)において十分な吸湿発熱機能が得られるとともに、電子線によるグラフト処理の際に傷むセルロース系繊維の割合を減らして、全体として強力を維持した生地とすることができる。
前記その他の繊維は、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維及びポリウレタン弾性繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維が好ましい。生地の製造においてポリウレタン弾性繊維からなる弾性糸を使用すると、得られた生地は、シャツ、パンツなどのインナーウエアに好適である。
上記の通り、精練処理、漂白処理、染色処理は、いずれも、吸湿発熱加工工程の前に行うのが好ましい。精練処理、漂白処理、染色処理は、各々常法にて行える。精練処理および漂白処理をすることにより、セルロース系繊維は白色となる。特にコットンは、精練処理および漂白処理をしないと、吸水性が低下し、くすんだ色調であり、染色の有無にかかわらず製品的価値は落ちてしまう。精練処理および漂白処理は、例えば、過酸化水素(H22)と水酸化ナトリウム(NaOH)を水に加えて得た水溶液に繊維構造物(生地)を浸漬することで行える。
染色処理は、好ましくは、精練処理および漂白処理の後、必要に応じて行われる。繊維構造物(生地)が白物である場合、染色しなくてもよいし蛍光白色剤で加工してもよい。繊維構造物(生地)が色物である場合、上記未処理繊維の種類に応じて、染料の種類を選択すればよい。繊維構造物(生地)が、上記処理繊維(カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維)と未処理のセルロース系繊維とからなる場合は、反応染料により染色するのが好ましく、繊維構造物(生地)が、前記処理繊維(カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維)とポリウレタン繊維とからなる場合は、反応染料及び分散染料から選ばれる少なくとも1種の染料(併用も可能)が好ましい。染色後は、常法にしたがって中和し、ソーピングし、水洗する。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、前記吸湿発熱加工工程の後に、吸水性柔軟剤を含む水溶液で仕上げ加工するのが好ましい。吸水性柔軟剤を使用すると、吸湿発熱特性を低下させることなく柔軟性を付与できる。撥水性柔軟剤は、吸水性が低下し、吸湿発熱性が低下してしまい好ましくない。
吸湿発熱加工がなされたセルロース系繊維とその他の繊維とを含む吸湿発熱性繊維構造物(生地)において、前記吸湿発熱性繊維構造物(生地)の全質量を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工がなされたセルロース系繊維は5~40質量%であると好ましい。前記範囲であれば、繊維構造物(生地)について高い吸湿発熱特性を発揮できる。同様の理由から、吸湿発熱加工工程に供される繊維構造物(生地)における前記処理繊維の質量割合は、前記生地の全質量を100質量%としたとき、5~40質量%であると好ましい。
繊維構造物(生地)が、インナーとして好ましい編み物である場合、例えば、供給糸として3本の糸を使用し、3本の糸を使用するうちの1本を、前記処理繊維(カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維)を30質量%、通常の未処理のセルロース系繊維を70質量%含む混紡紡績糸とし、残りの2本を未処理のセルロース系紡績糸とする。繊維構造物(生地)の全質量を100質量%とすると、前記処理繊維を10質量%含む繊維構造物(生地)が得られる。当該繊維構造物(生地)に対して上記の吸湿発熱加工処理を行えば、吸湿発熱加工がなされたセルロース繊維を10質量%含む吸湿発熱性繊維構造物(生地)が得られる。尚、インナーとして好ましい編み物生地を製造するための供給糸には、更に、ポリウレタン繊維のような弾性繊維からなる弾性糸を含めるのが好ましい。
前記生地は編み物又は織物が好ましい。編み物及び織物はインナー衣料の生地として好適である。特に編み物は伸縮性があり、柔軟でインナー衣料の生地として好適である。生地を構成する糸3本に対して1~2本は前記混紡紡績糸であり、残りの糸は吸湿発熱加工していないコットン紡績糸であるのが好ましい。編み物は、丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編等を含み、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織、及びこれらを組み合わせた編み物等いずれでもよい。編地を作製するには種々の交編方法が用いられる。交編編地は、経編みでも緯編みでもよく、例えば、トリコット、ラッセル、丸編み等が挙げられる。また編組織は、ハーフ編み、逆ハーフ編み、ダブルアトラス編み、ダブルデンビー編み、及びこれらを組み合わせた編み物等いずれの編組織でもよい。織物組織としては、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織、またはこれらを組み合わせた組織が挙げられる。これらの中でも丸編みを含む緯編み生地、又は経編み生地が好ましい。
前記生地の単位面積当たりの質量は80~300g/m2が好ましく、より好ましくは90~250g/m2であり、さらに好ましくは100~200g/m2である。前記生地の単位面積当たりの質量が、前記範囲内の値であればインナー衣料として好適である。
(吸湿発熱性セルロース系紡績糸の製造)
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、吸湿発熱性セルロース系紡績糸の製造方法である。本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、図3に示すように、本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法により処理繊維を作製する工程と、上記処理繊維を含むスライバーを処理繊維含有紡績糸とする紡績工程と、前記処理繊維含有紡績糸に対し吸湿発熱加工処理を行う吸湿発熱加工工程とを含む。
本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、前記処理繊維含有紡績糸が、前記処理繊維(カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維)を100質量%含む紡績糸であってもよいし、前記処理繊維(カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維)と、未処理繊維との混紡紡績糸であってもよい。好ましい未処理繊維は、上記(吸湿発熱性生地の製造)にて説明した繊維と同じである。
また、本発明の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法は、一態様において、繊維構造物(紡績糸)に対して、精練処理、漂白処理、および染色処理から選ばれる1種の処理をする。これらの処理をする場合、好ましくは、いずれも、吸湿発熱加工工程の前に行う。これらの処理は、各々常法にて行える。吸湿発熱加工工程よりも前にこれらの処理を済ませておけば、良好な吸湿発熱性を有する吸湿発熱性繊維構造物(染色糸)を提供できる。
本発明の吸湿発熱性セルロース系紡績糸の製造方法における吸湿発熱加工工程は、吸湿発熱加工処理の対象を糸としたこと以外は上記(吸湿発熱性生地の製造)にて説明した方法と同じである。
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<吸湿発熱性>
(1)試料生地(編み物生地)を20cm×20cmに採取し、乾燥機において4時間処理し、シリカゲル入りのデシケーター内で一晩放置する。
(2)乾燥処理後の試料生地を二つ折りにし、その中心に熱電対温度センサーを取り付け、さらに二つ折りにし、試験体とする。
(3)恒温恒湿機を用いて試験体を20℃、40%RHの環境下で2時間処理した後、恒温恒湿機の設定を20℃、90%RHに変化させたときの温度変化を1分毎に15分間測定する。
(4)未処理コットンスライバーを使用した綿番手50番の糸からなる編み物生地(下記の比較例1)を基準生地とし、測定15分間における基準生地の最高温度と、同じく実施例1の生地の最高温度との差を、最大温度差(℃)として算出する。
(実施例1)
<スライバーの処理>
コットンスライバー(単位長さあたりの質量、単位ゲレン:25.0g/6yd(4.6g/m))に対し、エレクトロカーテン型電子線照射装置EC250/30/90L(岩崎電気社製)により、窒素雰囲気下で、電子線を、照射線量40kGy、加速電圧200kVで照射した。電子線が照射されたスライバーをその直後に0.5質量%の浸透剤を含有するアクリル酸(ナカライテスク株式会社製)の16質量%水溶液に浸漬し、マングルでスライバー重量に対して約100質量%のピックアップ率となるように絞った。アクリル酸の付与量は、カルボキシル基が導入されたコットンスライバーのうち、グラフト鎖であるアクリル酸基の質量割合が8質量%となる量とした。次に連続して未反応のアクリル酸を除去するために前記スライバーを水洗した後、塩化カルシウム水溶液(CaCl210g/L)に含浸させた。これにより、グラフト結合したアクリル酸のカルボキシル基をCa塩とした。その後、再度水洗し、ついで80℃で乾燥し、容器にコイリングして収納し、アクリル酸Ca塩グラフト化コットンを得た。このようにして得られたスライバーを“処理コットン”と呼ぶ。
<紡績糸の製造>
(1)処理コットンを含む混紡糸
前記処理コットンと未処理コットンとを混打綿工程で混紡し、綿番手50番の糸を紡績した。混紡糸中の処理コットンの割合は30質量%となるようにした。
(2)未処理コットン紡績糸
未処理コットンを使用して糸番手50番の糸を紡績した。
<編み物生地の製造>
前記処理コットンを含む混紡糸と未処理コットン紡績糸と弾性糸を用意し、未処理コットン紡績糸2本に対して処理コットンを含む混紡糸を1本の割合で供給し、弾性糸は生地の7質量%となるように挿入した。弾性糸には、市販のポリウレタン系弾性糸の22decitex品を用いた。なお、弾性糸は2.5倍に引き延ばされるようにテンションを加えた状態で、それぞれの糸に添え糸として挿入した。丸編機を使用して天竺編組織の編物を編成した。その後前記編物を200℃で90秒間加熱処理をした。
<精練・漂白、染色>
得られた編み物に対して常法にしたがい精練処理、漂白処理、および反応染料を使用した染色処理を行った。
<吸湿発熱性加工工程(カルシウム脱離工程)>
染色処理後、吸湿発熱性加工工程として、下記の(1)酸処理および(2)アルカリ処理を行った。
(1)酸処理
クエン酸2g/Lの水溶液(pH5以下)を用意した。この水溶液中に、浴比1:15で前記編み物生地を浸漬し、40℃で20分間、酸処理をした。その後、常温(25℃)で5分間水洗した。
(2)アルカリ処理
次に、重曹(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)4g/Lとキレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))1g/Lとを含み、pH7.5以上となるように、水溶液を調整した。この水溶液中に、浴比1:15で前記編み物生地を浸漬し、40℃で20分間、アルカリ処理をした。その後、常温(25℃)で5分間の水洗を2回繰り返した。
その後、水洗した編み物生地を乾燥させて実施例1の吸湿発熱性生地を得た。
実施例1の吸湿発熱性生地において、吸湿発熱性生地の全質量を100質量%としたとき、吸湿発熱加工されたコットンの含有量は9質量%、未処理コットン全体の含有量は84質量%であった。また、生地の質量は170g/m2であった。
実施例1の吸湿発熱性生地の製造に用いた前記の処理コットンを含む混紡糸は、上記吸湿発熱性加工工程(カルシウム脱離工程)を経ることにより吸湿発熱性セルロース系紡績糸となっているが、吸湿発熱性セルロース系紡績糸を100質量%とすると、それに含まれる吸湿発熱加工されたセルロース繊維の含有量は30質量%である。
(比較例1)
処理コットンを含む混紡糸に代えて、未処理コットン紡績糸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の生地を得た。
得られた実施例1の吸湿発熱性生地と比較例1の生地(基準生地)の各々について、上記<吸湿発熱性>に従って最高温度を測定し、実施例1の吸湿発熱性生地の吸湿発熱性を評価したところ、最大温度差(℃)は0.6℃であった。
染色処理の後に吸湿発熱加工を行うことで、吸湿発熱特性が安定しており、吸湿発熱特性の評価指標である最大温度差(℃)が0.6℃であり、良好な吸湿発熱性を有するセルロース系繊維生地が得られた。
スライバーの状態でセルロース繊維表面にグラフト結合されたアクリル酸のカルボキシル基をCa塩とすることにより、カルボキシル基がNa塩等のアルカリ金属塩となることを防いでいるので、吸湿発熱性生地の製造過程中で水分に接触してもべたつきがなく、工程通過性が良好であった。
実施例1の吸湿発熱性生地を使用してインナーシャツを縫製し、着用試験をしたところ、温かく、着心地の良さと共に、肌にやさしいシャツであることが確認できた。
本発明のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法により作製されるカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を含む吸湿発熱性生地や吸湿発熱性セルロース系紡績糸は、シャツ、パンツ、靴下などのインナー衣料に好適である。また、Tシャツなどにも好適である。

Claims (11)

  1. スライバー状のセルロース系繊維に、エチレン性不飽和二重結合を含むカルボキシル基含有化合物をグラフトしてカルボキシル基を導入するグラフト工程と、
    グラフトされた前記セルロース系繊維を、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも一つの金属イオンを含む処理液と接触させて、前記カルボキシル基をその金属塩とするブロック工程と、を含むカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法。
  2. 前記処理液は、実質的にアルカリ金属イオンを含まない、請求項1に記載のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法。
  3. 前記処理液は、塩化カルシウム水溶液、酢酸カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、酢酸マグネシウム水溶液、塩化亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液、またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかの項に記載のカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維の製造方法によりカルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を準備する工程と、
    前記カルボン酸金属塩グラフト化セルロース系繊維を含む繊維構造物を作製する工程と、
    前記繊維構造物に対し吸湿発熱加工処理を行う吸湿発熱加工工程と、
    を含む吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  5. 前記吸湿発熱加工工程の前に、
    前記繊維構造物に対して、精練・漂白処理をし、必要に応じて染色処理をする、請求項4に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  6. 前記吸湿発熱加工工程では、前記繊維構造物に対し、pH5以下で酸処理をした後、水洗し、次いでpH7.5以上でアルカリ処理した後、水洗し、乾燥処理をする、請求項4または5に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  7. 前記酸処理は、クエン酸を含む水溶液に前記繊維構造物を浸漬する処理であり、前記アルカリ処理は、キレート剤と炭酸水素ナトリウム(重曹)とを含む水溶液に前記繊維構造物を浸漬する処理である、請求項6に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  8. 前記酸処理及び前記アルカリ処理において、いずれも前記水溶液の温度は30~50℃、浸漬時間は10~30分である、請求項7に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  9. 前記吸湿発熱性繊維構造物は、吸湿発熱加工がなされたグラフト処理セルロース系繊維と、その他の繊維とを含み、前記吸湿発熱性繊維構造物の全質量を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工されたセルロース繊維の含有量は5~40質量%である、請求項4~8のいずれか1項に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  10. 前記その他の繊維は、吸湿発熱加工がなされていないセルロース系繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維及びポリウレタン弾性繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維である、請求項9に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
  11. 前記繊維構造物は、糸、編み物または織物である、請求項4~10のいずれか1項に記載の吸湿発熱性繊維構造物の製造方法。
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