以下、本発明のエンコーダーの故障診断方法、ロボット監視装置およびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係るロボットシステムについて説明する。
図1は、第1実施形態に係るロボットシステムを示す斜視図である。図2は、図1に示すロボットの概略図である。図3は、図1のロボットシステムの主要部を示すブロック図である。
図1に示すロボットシステム1は、例えば、各種ワーク(対象物)に対する作業で用いられる。作業の例としては、搬送、組立、検査等が挙げられる。
図1および図3に示すように、ロボットシステム1は、基台4、ロボットアーム10、駆動部401~406および駆動制御部301~306を備えるロボット2と、ロボット2の動作を制御するロボット制御装置8と、を有する。
図1および図2に示す基台4は、水平な床101に載置されている。なお、基台4は、床101ではなく、壁、天井、架台等に載置されていてもよい。
図1および図2に示すロボットアーム10は、第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15および第6アーム16を備えている。第6アーム16の先端には、図示しないエンドエフェクターを着脱可能に取り付けることができ、そのエンドエフェクターでワークを把持等することができる。エンドエフェクターで把持等するワークとしては、特に限定されず、例えば、電子部品、電子機器等が挙げられる。なお、本明細書では、第6アーム16を基準にしたときの基台4側を「基端側」とし、基台4を基準にしたときの第6アーム16側を「先端側」とする。
エンドエフェクターとしては、特に限定されないが、ワークを把持するハンド、ワークを吸着する吸着ヘッド等が挙げられる。
なお、第6アーム16とエンドエフェクターとの間には、図示しない力検出部が設けられていてもよい。力検出部は、エンドエフェクターに加わる力を検出する。力検出部としては、例えば、互いに直交する3軸のそれぞれの軸方向の力成分(並進力成分)と、その3軸のそれぞれの軸周りの力成分(回転力成分)と、を検出可能な6軸力覚センサー等が挙げられる。
さらに、ロボットシステム1は、上記の他に、例えば、画像センサー、深度センサー、慣性センサー、超音波センサー、ライトカーテン、ミリ波レーダー、レーザースキャナー等を備えていてもよい。
図3に示すロボット制御装置8は、ロボットコントローラー81と、ロボット監視装置82と、動力遮断部85と、動力遮断部85を介して交流電源9に接続されたコンバーター部86と、を備える。ロボット制御装置8は、後述するように、駆動制御部301~306の動作を制御して、ロボット2の動作を制御する。
1.1.ロボット
ロボット2は、基台4と、第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15および第6アーム16とが、基端側から先端側に向かってこの順に連結された単腕の6軸垂直多関節ロボットである。以下では、第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15および第6アーム16をそれぞれ「アーム」とも言う。アーム11~16の長さは、それぞれ、特に限定されず、適宜設定可能である。
1.1.1.ロボットアーム
図2に示すように、基台4と第1アーム11とは、第1関節部171を介して連結されている。第1アーム11は、基台4に対し、鉛直軸と平行な第1回動軸O1を回動中心として回動可能となっている。第1関節部171は、図3に示すように、モーター401Mおよび図示しない減速機を有する駆動部401と、角度センサー411と、を備えている。第1アーム11は、駆動部401の駆動により回動する。モーター401Mは、第1アーム11を回動させる駆動力を発生する。
第1アーム11と第2アーム12とは、第2関節部172を介して連結されている。第2アーム12は、第1アーム11に対し、水平面と平行な第2回動軸O2を回動中心として回動可能となっている。第2関節部172は、図3に示すように、モーター402Mおよび図示しない減速機を有する駆動部402と、角度センサー412と、を備えている。第2アーム12は、駆動部402の駆動により回動する。モーター402Mは、第2アーム12を回動させる駆動力を発生する。
第2アーム12と第3アーム13とは、第3関節部173を介して連結されている。第3アーム13は、第2アーム12に対し、水平面と平行な第3回動軸O3を回動中心として回動可能となっている。第3関節部173は、図3に示すように、モーター403Mおよび図示しない減速機を有する駆動部403と、角度センサー413と、を備えている。第3アーム13は、駆動部403の駆動により回動する。モーター403Mは、第3アーム13を回動させる駆動力を発生する。
第3アーム13と第4アーム14とは、第4関節部174を介して連結されている。第4アーム14は、第3アーム13に対し、第3アーム13の中心軸と平行な第4回動軸O4を回動中心として回動可能となっている。第4関節部174は、図3に示すように、モーター404Mおよび図示しない減速機を有する駆動部404と、角度センサー414と、を備えている。第4アーム14は、駆動部404の駆動により回動する。モーター404Mは、第4アーム14を回動させる駆動力を発生する。
第4アーム14と第5アーム15とは、第5関節部175を介して連結されている。第5アーム15は、第4アーム14に対し、第4アーム14の中心軸と直交する第5回動軸O5を回動中心として回動可能となっている。第5関節部175は、図3に示すように、モーター405Mおよび図示しない減速機を有する駆動部405と、角度センサー415と、を備えている。第5アーム15は、駆動部405の駆動により回動する。モーター405Mは、第5アーム15を回動させる駆動力を発生する。
第5アーム15と第6アーム16とは、第6関節部176を介して連結されている。第6アーム16は、第5アーム15に対し、第5アーム15の先端部の中心軸と平行な第6回動軸O6を回動中心として回動可能となっている。第6関節部176は、図3に示すように、モーター406Mおよび図示しない減速機を有する駆動部406と、角度センサー416と、を備えている。第6アーム16は、駆動部406の駆動により回動する。モーター406Mは、第6アーム16を回動させる駆動力を発生する。
角度センサー411~416としては、例えば、ロータリーエンコーダー等の各種エンコーダーが挙げられる。角度センサー411~416は、駆動部401~406のモーター401M~406Mの出力軸または減速機の出力軸の回動角度を検出する。なお、本明細書では、モーター401M~406Mの出力軸または減速機の出力軸の回転を検出することを、「モーターの回転軸の回転を検出する」という。
1.1.2.駆動部
駆動部401~406のモーター401M~406Mとしては、例えば、3相ブラシレスモーター等が挙げられる。
駆動部401~406の減速機としては、例えば、複数の歯車で構成された遊星ギア型の減速機、波動減速機等が挙げられる。
駆動部401~406および角度センサー411~416は、それぞれ、ロボット制御装置8と電気的に接続されている。
駆動制御部301~306は、例えばサーボドライバーであり、ロボット制御装置8から出力された動作指令値に基づいて、駆動部401~406の動作を制御する。
図4は、図3に示すブロック図の部分拡大図である。なお、図4では、いずれもアーム同士の間に位置する関節部である第1関節部171から第6関節部176のうち、第1関節部171のみを詳細に図示している。
第1関節部171には、モーター401Mおよび角度センサー411を含む駆動部401、ならびに、駆動制御部301が設けられている。以下、図4に基づき、駆動部401および駆動制御部301の動作について説明するが、以下の説明は、駆動部402~406および駆動制御部302~306についても同様である。
図4に示す角度センサー411は、エンコーダー421を含む。エンコーダー421は、例えばモーター401Mの回転軸に接続されている。なお、角度センサー411は、複数のエンコーダー421を備えていてもよい。これにより、モーター401Mの回転軸の角度位置の検出において冗長化を図ることができる。
図4に示すモーター401Mは、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wを有する。そして、駆動制御部301とU相コイル401uとがU相動力線L1uを介して接続され、駆動制御部301とV相コイル401vとがV相動力線L1vを介して接続され、駆動制御部301とW相コイル401wとがW相動力線L1wを介して接続されている。
エンコーダー421は、例えば、セーフティーエンコーダーであってもよいが、非セーフティーエンコーダーであってもよい。前者のセーフティーエンコーダーとは、例えば、ISO 10218-1:2011「ロボット及びロボティックデバイス-産業用ロボットのための安全要求事項-第1部」等のロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する認証済みのエンコーダーを指す。この安全要求事項では、エンコーダーの故障を検出することが求められている。なお、ロボット安全規格は、上記の規格に限定されない。
一方、後者の非セーフティーエンコーダーとは、このような安全要求事項に対応する認証を受けていないエンコーダーを指す。ただし、非セーフティーエンコーダーは、すでにロボットに用いられるサーボモーターのエンコーダーとして多くの実績があるため、品質が安定しており、かつ安価である。このため、非セーフティーエンコーダーを用いることにより、エンコーダー421を容易に調達することができ、かつ、ロボットシステム1を安定的に稼働させることができる。そして、本実施形態によれば、非セーフティーエンコーダーを用いた場合でも、後述するロボット監視装置82が有する機能によって、エンコーダー421の故障を検出することができるので、ロボットシステム1の安全性能を十分に高めることができる。
エンコーダー421は、アブソリュートエンコーダーであっても、インクリメンタルエンコーダーであってもよい。アブソリュートエンコーダーは、回転軸の回転角度の絶対位置を検出可能なエンコーダーである。インクリメンタルエンコーダーは、回転軸の回転角度の位置変位を検出可能なエンコーダーである。
エンコーダー421は、モーター401Mの回転軸の角度位置を表すエンコーダー値Eを位置フィードバックとして出力する。駆動制御部301およびロボットコントローラー81は、エンコーダー値Eを受信する。
ロボットコントローラー81は、例えば、モーター401Mの回転軸の目標角度位置を表す動作指令値Mを駆動制御部301に向けて出力する。なお、動作指令値Mは、モーター401Mの回転軸の目標角度位置を変化させない場合、つまり、モーター401Mに停止状態を保持させる場合も出力される。
1.1.3.駆動制御部
駆動制御部301は、動作指令値Mおよびエンコーダー値Eに基づいて、エンコーダー値Eが動作指令値Mで指定された目標角度位置に近づくように、モーター401Mの駆動を制御する駆動パルス電圧を生成する。そして、この駆動パルス電圧がモーター401Mに出力され、モーター401Mの駆動が制御される。これにより、第1関節部171が所望の角度に制御され、基台4に対する第1アーム11の姿勢が所望の姿勢に制御される。
図4に示す駆動制御部301は、インバーター部312と、制御回路314と、を備える。
インバーター部312は、6つのスイッチング素子313を有し、3並列のプッシュプル方式のインバーター回路である。6つのスイッチング素子313は、制御回路314から出力される制御信号により、オンとオフとが制御される。これにより、インバーター部312は、3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwをモーター401Mに向けて出力する。
制御回路314は、動作指令値Mおよびエンコーダー値Eに基づいて、各スイッチング素子313に制御信号を出力する。本実施形態では、インバーター部312をPWM制御(パルス幅変調制御)するためのPWM信号が制御信号となる。具体的には、3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwの位相が120°ずつずれた正弦波通電波形となるように、PWM信号の等価電圧の波形が設定されている。このようなPWM信号により、制御回路314は、スイッチング素子313のオンとオフのタイミングを制御する。その結果、スイッチング素子313によって、コンバーター部86から供給される電流が制御され、インバーター部312から3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwが出力される。
3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwの位相差と時間変化によって、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wにコイル電流が流れ、モーター401Mのローターが回転する。
また、本実施形態では、駆動制御部301がパルス幅検出部316u、316v、316wを備える。
パルス幅検出部316uは、U相分岐線L2uと、入力側抵抗R1と、シャント抵抗R2と、フォトカプラーPCと、アンプAMPと、パルス幅計測部PWCと、を有する。パルス幅検出部316uは、駆動パルス電圧Vuのパルス幅PWuを計測する機能を有する。
U相分岐線L2uは、モーター401MのU相動力線L1uとグランド電位GNDとを接続する信号線である。入力側抵抗R1およびシャント抵抗R2は、U相分岐線L2uにおいて、U相動力線L1u側からこの順で直列に接続されている抵抗素子である。
フォトカプラーPCの入力端子は、シャント抵抗R2と並列に接続されている。図4に示すフォトカプラーPCは、発光素子316Lおよび受光素子316Pを有する。U相分岐線L2uに供給される駆動パルス電圧Vuとグランド電位GNDとの電位差に基づいて、発光素子316Lが発光し、その光を受光した受光素子316Pが光電流を発生させる。アンプAMPは、光電流を電圧信号に変換する。これにより、フォトカプラーPCの入出力間を電気的に絶縁しつつ、駆動パルス電圧Vuのパルス幅PWuに対応したパルス状の電圧信号をパルス幅計測部PWCに入力することができる。
発光素子316Lとしては、例えば、発光ダイオードが挙げられる。受光素子316Pとしては、例えば、フォトダイオードやフォトトランジスターが挙げられる。なお、フォトカプラーPCには、図4に示すような2個の発光素子316Lを有する両極性対応型のフォトカプラーが好ましく用いられる。また、フォトカプラーPCに代えて、デジタルアイソレーターを用いるようにしてもよい。
パルス幅計測部PWCは、アンプAMPから出力されたパルス状の電圧信号を受け、パルス幅PWuを計測する。これにより、間接的に、駆動パルス電圧Vuのパルス幅PWuを計測することができる。パルス幅計測部PWCとしては、例えば、電圧信号のパルス幅を計測する機能を有するカウンター等が挙げられる。
パルス幅検出部316vは、V相分岐線L2vと、入力側抵抗R1と、シャント抵抗R2と、フォトカプラーPCと、アンプAMPと、パルス幅計測部PWCと、を有する。パルス幅検出部316vは、駆動パルス電圧Vvのパルス幅PWvを計測する機能を有する。
V相分岐線L2vは、モーター401MのV相動力線L1vとグランド電位GNDとを接続する信号線である。パルス幅検出部316vのV相分岐線L2v以外の要素については、パルス幅検出部316uと同様である。
パルス幅検出部316wは、W相分岐線L2wと、入力側抵抗R1と、シャント抵抗R2と、フォトカプラーPCと、アンプAMPと、パルス幅計測部PWCと、を有する。パルス幅検出部316wは、駆動パルス電圧Vwのパルス幅PWwを計測する機能を有する。
W相分岐線L2wは、モーター401MのW相動力線L1wとグランド電位GNDとを接続する信号線である。パルス幅検出部316wのW相分岐線L2w以外の要素については、パルス幅検出部316uと同様である。
以上のパルス幅検出部316u、316v、316wは、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwについて計測したパルス幅PWu、PWv、PWwをロボット監視装置82に出力する。
1.2.ロボット制御装置
ロボット制御装置8は、ロボットコントローラー81と、ロボット監視装置82と、動力遮断部85と、コンバーター部86と、を備えている。
1.2.1.ロボットコントローラー
図3に示すように、ロボットコントローラー81は、駆動制御部301~306の動作を制御して、ロボット2の動作を制御する。具体的には、ロボットコントローラー81は、角度センサー411~416や図示しない力検出部、画像センサー、深度センサー等の検出結果に基づいて、図4に示すように、駆動制御部301~306に動作指令値Mを出力する。そして、駆動制御部301~306を介して駆動部401~406の動作条件、例えば角速度や回転角度等をそれぞれ制御する。
ロボットコントローラー81のハードウェア構成は、特に限定されないが、図3では、プロセッサー912、メモリー914、および、外部インターフェース916を有している。これらは、内部バスを介して互いに通信可能に接続されている。
プロセッサー912としては、例えばCPU(Central Processing Unit)等が挙げられる。プロセッサー912は、メモリー914に記憶された各種プログラムを実行することにより、ロボットコントローラー81の機能を実現する。
なお、プロセッサー912は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。
メモリー914としては、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリーや、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリー等が挙げられる。なお、メモリー914は、非着脱式に限らず、着脱式であってもよい。
メモリー914は、各種プログラムの他、外部インターフェース916で受け付けた各種データやロボット2から出力された各種データを格納する。
外部インターフェース916としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、RS-232C、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN等が挙げられる。
1.2.2.ロボット監視装置
ロボット監視装置82のハードウェア構成は、特に限定されないが、図3では、プロセッサー922、メモリー924、および、外部インターフェース926を有している。これらは、内部バスを介して互いに通信可能に接続されている。
メモリー924および外部インターフェース926は、前述したメモリー914および外部インターフェース916と同様である。
プロセッサー922としては、例えばCPU等が挙げられる。プロセッサー922は、メモリー924に記憶された各種プログラムを実行することにより、ロボット監視装置82の機能を実現する。なお、プロセッサー922は、FPGA、ASIC等であってもよい。
ロボット監視装置82は、ロボットコントローラー81から独立してロボット2の動作を監視することにより、ロボットシステム1の機能安全における信頼性をより高めることができる。
1.2.3.動力遮断部
図5は、図3に示す第1関節部171の詳細ブロック図である。第1関節部171の構成は、第2関節部172、第3関節部173、第4関節部174、第5関節部175および第6関節部176の構成と同様である。したがって、以下の説明では、図4、図5等に基づいて第1関節部171を代表に説明し、その他の関節部の説明は省略する。
動力遮断部85は、交流電源9と第1関節部171との間を電気的に接続する電力供給路91に設けられる。駆動制御部301~306は、それぞれ電力供給路91から電力供給を受ける。このため、動力遮断部85が電力供給路91を遮断することにより、駆動制御部301~306への電力供給が遮断され、駆動部401~406の動作を停止させることができる。
図5に示す動力遮断部85は、遮断信号Bに基づいて電力供給路91を遮断する。このため、動力遮断部85が動作することにより、駆動制御部301~306の全てに対する電力供給が遮断される。
1.2.4.コンバーター部
コンバーター部86は、動力遮断部85と第1関節部171との間の電力供給路91に設けられる。図4に示すコンバーター部86は、ブリッジダイオード862および平滑コンデンサー864を有し、交流を直流に変換するAC-DCコンバーターである。そして、コンバーター部86は、直流電圧をインバーター部312に供給する。なお、電源の種類によっては、コンバーター部86が省略されていてもよいし、他のコンバーター部で置き換えられていてもよい。
1.3.ロボット監視装置の機能
図5に示すロボット監視装置82は、動力信号取得部822と、エンコーダー値取得部824と、モーター停止判断部826と、エンコーダー故障判断部828と、遮断信号出力部830と、を備える。
動力信号取得部822は、駆動制御部301から出力されたパルス幅PWu、PWv、PWwを動力信号として取得する。なお、動力信号は、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vw(パルス幅変調電圧)の計測値であれば、パルス幅PWu、PWv、PWwに限定されず、他の計測値であってもよい。
エンコーダー値取得部824は、エンコーダー421から出力されたエンコーダー値Eを取得する。
モーター停止判断部826は、パルス幅PWu、PWv、PWwに関する判断条件であって、モーター401Mが停止していると判断するための停止判断条件をあらかじめ保有している。動力信号取得部822が取得したパルス幅PWu、PWv、PWwが前述した停止判断条件を満たすとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止していると判断する。そして、モーター401Mが停止していると判断したとき、モーター停止判断部826は、モーター停止信号を出力する。
エンコーダー故障判断部828は、エンコーダー421から出力されたエンコーダー値Eに関する判断条件であって、モーター401Mの回転軸が回転していると判断するための判断条件をあらかじめ保有している。前述したモーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eからモーター401Mの回転軸が回転していると判断されるとき、エンコーダー故障判断部828は、エンコーダー421が故障していると判断する。
遮断信号出力部830は、エンコーダー故障判断部828が出力した判断結果に基づいて、遮断信号Bを出力する。
なお、上記の説明では、ロボット監視装置82が駆動制御部301から出力された動力信号およびエンコーダー421から出力されたエンコーダー値Eを取得することについてのみ説明したが、ロボット監視装置82は、他の駆動制御部302~306から出力された動力信号および他のエンコーダーから出力されたエンコーダー値も、同様に取得するよう構成されていてもよい。
1.4.エンコーダーの故障診断方法
次に、第1実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法について説明する。なお、以下の説明では、前述したロボット監視装置82の機能を用いた方法を例に説明する。また、以下の説明では、第1関節部171に設けられたエンコーダー421の故障診断方法を代表に説明するが、第2関節部172から第6関節部176に設けられたエンコーダーの故障診断方法も、以下と同様である。
図6は、第1実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法を説明するためのフローチャートである。
図6に示すエンコーダーの故障診断方法は、動力信号取得工程S102と、エンコーダー値取得工程S104と、モーター停止判断工程S106と、エンコーダー故障判断工程S108と、動力遮断工程S110と、を有する。
1.4.1.動力信号取得工程
動力信号取得工程S102では、動力信号取得部822が、動力信号として、駆動制御部301から出力された駆動パルス電圧Vu、Vv、Vw(パルス幅変調電圧)のパルス幅PWu、PWv、PWwを取得する。具体的には、動力信号取得部822は、パルス幅検出部316u、316v、316wが検出するパルス幅PWu、PWv、PWwを取得する。
1.4.2.エンコーダー値取得工程
エンコーダー値取得工程S104では、エンコーダー値取得部824が、エンコーダー421から出力されたエンコーダー値Eを取得する。エンコーダー値Eは、モーター401Mの回転軸の回転情報である。
1.4.3.モーター停止判断工程
モーター停止判断工程S106では、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwのパルス幅PWu、PWv、PWwが停止判断条件を満たすか否か、モーター停止判断部826が判断する。停止判断条件は、例えば、パルス幅PWu、PWv、PWwについての範囲であり、満たされることによってモーター401Mが停止しているとみなせる条件である。パルス幅PWu、PWv、PWwが停止判断条件を満たしているとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止していると判断する。モーター401Mが停止していると判断したとき、モーター停止判断部826は、モーター停止信号を出力する。一方、パルス幅PWu、PWv、PWwが停止判断条件を満たしていないとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止しておらず、回転していると判断する。この場合、フローを動力信号取得工程S102に戻す。また、この場合、本方法とは別の方法で、エンコーダー421の故障診断を行うようにしてもよい。
本実施形態では、停止判断条件として、(a)パルス幅PWu、PWv、PWwの相互関係、(b)パルス幅PWu、PWv、PWwの時間変化等が挙げられる。以下、(a)、(b)の停止判断条件について順次説明する。
(a)パルス幅PWu、PWv、PWwの相互関係
駆動制御部301では、制御回路314から出力されたPWM信号により、インバーター部312がPWM制御される。これにより、インバーター部312からは、互いに位相が異なる3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwが出力される。したがって、3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwは、同時刻でのデューティー比が互いに異なる。
図7は、3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwの波形、等価電圧EVu、EVv、EVwの波形、および、3相のコイル電流CCu、CCv、CCwの波形、の一例を示す図である。
図7に示す等価電圧EVu、EVv、EVwの波形は、図7に示す3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwからそれぞれのデューティー比を算出し、そのデューティー比から換算される等価電圧の時間変化を表す波形である。図7に示すように、3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwの波形は、それぞれ時間とともにデューティー比が変化するパルス波である。インバーター部312がPWM制御されることにより、この時間変化が等価的には正弦波状に変化するため、図7に示す等価電圧EVu、EVv、EVwの波形は、正弦波状の波形となる。これにより、モーター401Mのローターを滑らかに回転させることができる。
デューティー比は、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwのオン・オフ周期に対する、オン時間の比である。このため、デューティー比が大きいほど、等価電圧EVu、EVv、EVwの振幅が大きくなる。そして、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwの同時刻におけるデューティー比が少なくとも2つの間で異なっていれば、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wのいずれかにコイル電流が流れ、ローターを回転させることができる。
そこで、停止判断条件(a)では、パルス幅PWu、PWv、PWwを、駆動制御部301において同時刻に検出された駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwのデューティー比と定義する。そして、停止判断条件(a)は、パルス幅PWu、PWv、PWwに関する下記式(1)である。
50%-α<PWu<50%+α、かつ、50%-α<PWv<50%+α、かつ、50%-α<PWw<50%+α … (1)
上記式(1)は、パルス幅PWu、PWv、PWwがそれぞれ50%前後にあることを規定している。パルス幅PWu、PWv、PWwがそれぞれ50%前後にある場合、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wのいずれにもほとんどコイル電流が流れない。したがって、パルス幅PWu、PWv、PWwが上記式(1)を満たすとき、モーター401Mが停止していると判断することができる。上記式(1)では、停止判断条件に幅を持たせているので、パルス幅PWu、PWv、PWwの意図しない揺らぎによって故障診断プロセスが不安定化するのを防止することができる。
なお、上記式(1)中のαは、モーター401Mの構造や大きさ等、様々な因子によって変わる。これは、モーター401Mが停止しているとみなせるときでも、デューティー比が揺れることがあり、しかも、その揺れ幅はこれらの因子によって異なるためである。したがって、αは、実験やシミュレーション等を通じて見出すようにすればよい。一例として、αは、5%以下とされ、好ましくは1%以下とされる。
(b)パルス幅PWu、PWv、PWwの時間変化
3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwが所定の周波数で変化することにより、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wに流れるコイル電流が順次変化する。つまり、コイル電流が流れるコイルが変化することで、モーター401Mのローターが回転する。
そこで、パルス幅PWu、PWv、PWwの変化量をTPWu、TPWv、TPWwとする。そして、停止判断条件(b)は、この変化量TPWu、TPWv、TPWwに関する下記式(2)である。
-β<TPWu<+β、かつ、-β<TPWv<+β、かつ、-β<TPWw<+β … (2)
上記式(2)は、変化量TPWu、TPWv、TPWwが微小量であることを規定している。変化量TPWu、TPWv、TPWwが微小量であれば、コイル電流が流れるコイルがほとんど変化しないので、モーター401Mのローターがほとんど回転しない。したがって、変化量TPWu、TPWv、TPWwが上記式(2)を満たすとき、モーター401Mが停止していると判断することができる。上記式(2)では、停止判断条件に幅を持たせているので、変化量TPWu、TPWv、TPWwの意図しない揺らぎによって故障診断プロセスが不安定化するのを防止することができる。
なお、上記式(2)中のβは、コイル電流が変化するスイッチングシーケンスに応じて適宜設定される。したがって、βは、実験やシミュレーション等を通じて見出すようにすればよい。一例として、βは、スイッチングシーケンスの最小ステップ幅の半分未満とされる。例えば、3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwの変化周期を360°としたとき、最小ステップ幅は30°とされるため、βを15°未満とするのが好ましい。
図8は、インバーター部312におけるスイッチング素子313のスイッチングシーケンスが12個のステップNo.1~12に分けられている例において、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wに励磁される磁極を示す表である。図8に示すように、ステップが1つ遷移すると、磁極が変化する。これは、ローターが30°回転することに相当する。したがって、モーター401Mが停止しているとみなすための、変化量TPWu、TPWv、TPWwの振れ幅は、スイッチングシーケンスの最小ステップ幅未満であることが好ましい。
なお、モーター停止判断工程S106で用いる停止判断条件は、上記(a)と(b)の双方を含んでいてもよい。
また、上記停止判断条件は、モーター401Mに対して電力が供給されていることを前提にした条件になっており、モーター停止判断部826は、この停止判断条件を満たした場合に、モーター401Mが停止していると判断する。このため、モーター停止判断部826は、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合であっても、モーター401Mへの電力が遮断されていない状態でモーター401Mが停止していることを検出することができる。これにより、ロボット監視装置82では、欧州安全規格、EN ISO13849-1:2008カテゴリー3 PLdで定義されている安全機能のうち、SOS(Safely operating stop、停止監視)機能や、SS2(Safely stop 2、遮断しない制御停止)機能を実現することができる。
1.4.4.エンコーダー故障判断工程
エンコーダー故障判断工程S108では、エンコーダー値Eからモーター401Mの回転軸が回転していると判断されるか否か、エンコーダー故障判断部828が判断する。このときの判断条件としては、エンコーダー値Eが変化しないことが挙げられるが、判断条件は、エンコーダー値Eの揺れを見込んで適宜設定される。揺れ幅は、例えば、実験やシミュレーション等を通じて見出すことができる。
そして、前述したモーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eからモーター401Mの回転軸が回転していると判断されるとき、エンコーダー故障判断部828は、エンコーダー421が故障していると判断する。このように判断できる理由は、モーター停止信号が出力されているにも関わらず、エンコーダー値Eがそれを反映していないからである。モーター停止信号は、モーター401Mの回転軸の回転を担う駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwに基づいて出力された信号である。換言すれば、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwは、モーター401Mの回転状態を確実に反映している動力信号の1つである。よって、モーター停止信号が出力されているにも関わらず、エンコーダー値Eがモーター401Mの回転軸の停止を反映していない場合、エンコーダー421が故障している蓋然性が高いといえる。
一方、モーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eからもモーター401Mの回転軸が停止していると判断されるとき、エンコーダー故障判断部828は、エンコーダー421が正常であると判断する。この場合、フローを動力信号取得工程S102に戻す。また、この場合、本方法とは別の方法で、エンコーダー421の故障診断を行うようにしてもよい。
上記のようなプロセスでエンコーダー421の故障を判断することができれば、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、エンコーダー421の故障を検出することができる。また、このような故障診断機能を有するロボット監視装置82は、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合でも、ロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する安全機能を提供することができる。
エンコーダー421が故障していると判断した場合、エンコーダー故障判断部828は、必要に応じて、その判断結果をロボットコントローラー81に出力する。ロボットコントローラー81は、判断結果に基づいて、エンコーダー421が故障していることをユーザーに報知してもよい。
1.4.5.動力遮断工程
また、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法は、図6に示すように、任意の工程である動力遮断工程S110を有している。
動力遮断工程S110では、エンコーダー故障判断部828から出力された判断結果に基づいて、遮断信号出力部830が遮断信号Bを出力する。つまり、エンコーダー421が故障しているという判断結果が出力された場合に、遮断信号Bが出力される。
図5に示す動力遮断部85は、この遮断信号Bを受信して、電力供給路91を遮断する。これにより、駆動部401~406の動作を停止させることができる。その結果、エンコーダー421が故障していると判断された状態で、駆動部401~406が動作し続けるのを防止することができ、ロボットシステム1の安全性能を高めることができる。
1.5.第1実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法は、ロボットアーム10の第1関節部171に設けられるモーター401Mの回転軸の回転を検出し、エンコーダー値Eを出力する機能を有するエンコーダー421の故障を診断する方法であって、動力信号取得工程S102と、エンコーダー値取得工程S104と、モーター停止判断工程S106と、エンコーダー故障判断工程S108と、を有する。
動力信号取得工程S102では、モーター401Mに供給される駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwのパルス幅PWu、PWv、PWw(パルス幅変調信号に基づく動力信号)を取得する。エンコーダー値取得工程S104では、エンコーダー値Eを取得する。モーター停止判断工程S106では、パルス幅PWu、PWv、PWwが、モーター401Mが停止していると判断するための停止判断条件を満たすとき、モーター401Mが停止していると判断し、モーター停止信号を出力する。エンコーダー故障判断工程S108では、モーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eから、モーター401Mの回転軸が回転していると判断されるとき、エンコーダー421が故障していると判断する。
このような構成によれば、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、動作指令値Mに基づくことなく、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwに基づいてモーター401Mの停止を判断することができる。つまり、ロボット監視装置82は、動力信号からモーター401Mが停止していることの裏付けを取ることができ、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、エンコーダー421の故障を検出することができる。これにより、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合であっても、ロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する安全機能を提供可能なロボット監視装置82を実現することができる。その結果、ロボットシステム1において低コスト化と高い安全性能とを両立することができる。
また、モーター401Mは、特に、U相、V相およびW相で構成される3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwで駆動されるブラシレスモーターであることが好ましい。これにより、駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwのデューティー比を調整することによって、モーター401Mの駆動を容易に制御することができる。なお、モーター401M以外のモーターについても、同様にブラシレスモーターであることが好ましい。
また、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法では、動力信号取得工程S102で取得する動力信号が、U相に関する駆動パルス電圧Vuのパルス幅PWu、V相に関する駆動パルス電圧Vvのパルス幅PWv、および、W相に関する駆動パルス電圧Vwのパルス幅PWw、を含んでいる。
これにより、モーター停止判断工程S106では、モーター401Mの回転状態を確実に反映している動力信号に基づいて、モーター401Mが停止しているか否かを判断することができる。つまり、パルス幅PWu、PWv、PWwは、モーター401Mの回転状態を直接的に反映しているといえるため、これらを判断材料として用いることにより、動作指令値Mを参照することなく、モーター401Mが停止しているか否かを確実に判断することができる。これにより、エンコーダー故障判断工程S108では、エンコーダー421が故障しているか否かの判断の信頼性が高められる。
また、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法では、動力信号取得工程S102で取得する動力信号が、U相に関する駆動パルス電圧Vuのパルス幅PWuの変化量TPWu、V相に関する駆動パルス電圧Vvのパルス幅PWvの変化量TPWv、および、W相に関する駆動パルス電圧Vwのパルス幅PWwの変化量TPWw、を含んでいてもよい。
動力信号がパルス幅PWu、PWv、PWwを含む場合と同様、動力信号がこのようなパルス幅PWu、PWv、PWwの変化量TPWu、TPWv、TPWwを含むことにより、モーター停止判断工程S106では、モーター401Mの回転状態を確実に反映している動力信号に基づいて、モーター401Mが停止しているか否かを判断することができる。これにより、エンコーダー故障判断工程S108では、エンコーダー421が故障しているか否かの判断の信頼性が高められる。
また、本実施形態に係るロボット監視装置82は、ロボットアーム10の第1関節部171に設けられるモーター401Mと、モーター401Mの回転軸の回転を検出し、エンコーダー値Eを出力する機能を有するエンコーダー421と、を備えるロボット2の動作を監視する。ロボット監視装置82は、動力信号取得部822と、エンコーダー値取得部824と、モーター停止判断部826と、エンコーダー故障判断部828と、を備える。動力信号取得部822は、モーター401Mに供給される駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwのパルス幅PWu、PWv、PWw(パルス幅変調信号に基づく動力信号)を取得する。エンコーダー値取得部824は、エンコーダー値Eを取得する。また、パルス幅PWu、PWv、PWwが、モーター401Mが停止していると判断するための停止判断条件を満たすとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止していると判断し、モーター停止信号を出力する。さらに、モーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eから、モーター401Mの回転軸が回転していると判断されるとき、エンコーダー故障判断部828は、エンコーダー421が故障していると判断する。
このような構成によれば、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、動作指令値Mに基づくことなく、エンコーダー421の故障を検出可能なロボット監視装置82を実現することができる。これにより、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合であっても、ロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する安全機能を提供可能なロボット監視装置82を実現することができる。その結果、ロボットシステム1において低コスト化と高い安全性能とを両立することができる。
また、本実施形態に係るロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット2の動作を制御するロボットコントローラー81と、ロボット監視装置82と、を有する。
このようなロボットシステム1は、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合であっても、ロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する安全機能を提供可能なシステムとなる。また、この安全機能は、ロボットコントローラー81に依拠することなく、ロボット監視装置82において実現される。したがって、安全性能の高いロボットシステム1を実現することができる。
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法、ロボット監視装置およびロボットシステムについて説明する。
図9は、第2実施形態に係るロボットシステム1Aの主要部を示すブロック図の部分拡大図である。なお、図9では、いずれもアーム同士の間に位置する関節部である第1関節部171から第6関節部176のうち、第1関節部171のみを詳細に図示している。また、図9では、前記第1実施形態と同様の構成について、同一の符号を付している。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第2実施形態に係るロボットシステム1Aは、駆動制御部301Aが、モーター401Mに流れるコイル電流CCu、CCv、CCwに基づく動力信号を検出するように構成されていること以外、第1実施形態に係るロボットシステム1と同様である。
2.1.駆動制御部
図9に示す駆動制御部301Aは、電流値検出部317u、317v、317wを備える。
電流値検出部317uは、シャント抵抗R3と、U相電流検出線L3uと、絶縁型A/D変換部ADCと、を有する。電流値検出部317uは、U相動力線L1uに流れるコイル電流CCuの電流値Iuを計測する機能を有する。
シャント抵抗R3は、U相動力線L1uに挿入されている抵抗素子である。絶縁型A/D変換部ADCは、U相電流検出線L3uを介して、シャント抵抗R3と並列に接続されている。絶縁型A/D変換部ADCとしては、例えば、ΔΣ型モジュレーター、絶縁素子(フォトカプラー)、デジタルフィルター等の要素を内蔵したデバイスが挙げられる。
なお、シャント抵抗R3および絶縁型A/D変換部ADCに代えて、例えば、コア付電流センサー、コアレス電流センサーのような各種電流センサーを用いるようにしてもよい。
電流値検出部317vは、シャント抵抗R3と、V相電流検出線L3vと、絶縁型A/D変換部ADCと、を有する。電流値検出部317vは、V相動力線L1vに流れるコイル電流CCvの電流値Ivを計測する機能を有する。
電流値検出部317wは、シャント抵抗R3と、W相電流検出線L3wと、絶縁型A/D変換部ADCと、を有する。電流値検出部317wは、W相動力線L1wに流れるコイル電流CCwの電流値Iwを計測する機能を有する。
以上の電流値検出部317u、317v、317wは、コイル電流CCu、CCv、CCwの電流値Iu、Iv、Iwをロボット監視装置82に出力する。
2.2.エンコーダーの故障診断方法
次に、第2実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法について説明する。なお、以下の説明では、図6に基づいて、前述したロボット監視装置82の機能を用いた方法を例に説明する。また、以下の説明では、第1関節部171に設けられたエンコーダー421の故障診断方法を代表に説明するが、第2関節部172から第6関節部176に設けられたエンコーダーの故障診断方法も、以下と同様である。
2.2.1.動力信号取得工程
動力信号取得工程S102では、動力信号取得部822が、動力信号として、駆動制御部301Aから出力されたコイル電流CCu、CCv、CCwの電流値Iu、Iv、Iwを取得する。具体的には、動力信号取得部822は、電流値検出部317u、317v、317wが検出する電流値Iu、Iv、Iwを取得する。
2.2.2.エンコーダー値取得工程
エンコーダー値取得工程S104では、第1実施形態と同様、エンコーダー値取得部824が、エンコーダー421から出力されたエンコーダー値Eを取得する。
2.2.3.モーター停止判断工程
モーター停止判断工程S106では、コイル電流CCu、CCv、CCwの電流値Iu、Iv、Iwが停止判断条件を満たすか否か、モーター停止判断部826が判断する。停止判断条件は、例えば、電流値Iu、Iv、Iwについての範囲であり、満たされることによってモーター401Mが停止しているとみなせる条件である。電流値Iu、Iv、Iwが停止判断条件を満たしているとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止していると判断する。モーター401Mが停止していると判断したとき、モーター停止判断部826は、モーター停止信号を出力する。一方、電流値Iu、Iv、Iwが停止判断条件を満たしていないとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止していないと判断する。この場合、フローを動力信号取得工程S102に戻す。また、この場合、本方法とは別の方法で、エンコーダー421の故障診断を行うようにしてもよい。
本実施形態では、停止判断条件として、(c)電流値Iu、Iv、Iwの相互関係、(d)電流値Iu、Iv、Iwの時間変化等が挙げられる。以下、(c)、(d)の停止判断条件について順次説明する。
(c)電流値Iu、Iv、Iwの相互関係
駆動制御部301Aでは、制御回路314から出力されたPWM信号により、インバーター部312がPWM制御される。これにより、インバーター部312からは、互いに位相が異なる3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwが出力される。そして、U相動力線L1u、V相動力線L1vおよびW相動力線L1wには、互いに位相が異なるコイル電流CCu、CCv、CCwが流れる。したがって、3相のコイル電流CCu、CCv、CCwは、同時刻での電流値Iu、Iv、Iwが互いに異なる。
図7には、3相のコイル電流CCu、CCv、CCwの波形の一例を示している。図7に示すように、コイル電流CCu、CCv、CCwの波形は、等価電圧EVu、EVv、EVwと同様、正弦波状の波形である。そして、コイル電流CCu、CCv、CCwの同時刻における電流値Iu、Iv、Iwがいずれも微小量であれば、モーター401Mのローターを停止させることができる。
そこで、停止判断条件(c)は、同時刻に検出された電流値Iu、Iv、Iwに関する下記式(3)とできる。
|Iu|<γ、かつ、|Iv|<γ、かつ、|Iw|<γ … (3)
上記式(3)は、電流値Iu、Iv、Iwがそれぞれ微小量であることを規定している。電流値Iu、Iv、Iwがそれぞれ微小量であれば、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wのいずれにもほとんどコイル電流が流れない。したがって、電流値Iu、Iv、Iwが上記式(3)を満たすとき、モーター401Mが停止していると判断することができる。上記式(3)では、停止判断条件に幅を持たせているので、電流値Iu、Iv、Iwの意図しない揺らぎによって故障診断プロセスが不安定化するのを防止することができる。
なお、上記式(3)中のγは、モーター401Mの構造や大きさ等、様々な因子によって変わる。これは、モーター401Mが停止しているとみなせるときでも、デューティー比が揺れてコイル電流CCu、CCv、CCwが流れることがあり、しかも、その揺れ幅はこれらの因子によって異なるためである。したがって、γは、実験やシミュレーション等を通じて見出すようにすればよい。一例として、γは、電流値Iu、Iv、Iwの最大値の10%以下とされ、好ましくは5%以下とされる。
(d)電流値Iu、Iv、Iwの時間変化
3相の駆動パルス電圧Vu、Vv、Vwが所定の周波数で変化することにより、U相コイル401u、V相コイル401vおよびW相コイル401wに流れるコイル電流CCu、CCv、CCwが順次変化する。つまり、コイル電流CCu、CCv、CCwが流れるコイルが変化することで、モーター401Mのローターが回転する。
そこで、電流値Iu、Iv、Iwの変化量をTIu、TIv、TIwとする。そして、停止判断条件(d)は、この変化量TIu、TIv、TIwに関する下記式(4)とできる。
-δ<TIu<+δ、かつ、-δ<TIv<+δ、かつ、-δ<TIw<+δ … (4)
上記式(4)は、変化量TIu、TIv、TIwが微小量であることを規定している。変化量TIu、TIv、TIwが微小量であれば、コイル電流CCu、CCv、CCwが流れるコイルがほとんど変化しないので、モーター401Mのローターがほとんど回転しない。したがって、変化量TIu、TIv、TIwが上記式(4)を満たすとき、モーター401Mが停止していると判断することができる。上記式(4)では、停止判断条件に幅を持たせているので、変化量TIu、TIv、TIwの意図しない揺らぎによって故障診断プロセスが不安定化するのを防止することができる。
なお、上記式(4)中のδは、コイル電流CCu、CCv、CCwが変化するスイッチングシーケンスに応じて適宜設定される。したがって、δは、実験やシミュレーション等を通じて見出すようにすればよい。一例として、δは、スイッチングシーケンスの最小ステップ幅の半分未満とされる。例えば、3相のコイル電流CCu、CCv、CCwの変化周期を360°としたとき、最小ステップ幅は30°とされるため、δを15°未満とするのが好ましい。
なお、モーター停止判断工程S106で用いる停止判断条件は、上記(c)と(d)の双方を含んでいてもよい。
2.2.4.エンコーダー故障判断工程
エンコーダー故障判断工程S108では、第1実施形態と同様、エンコーダー値Eから、モーター401Mの回転軸が回転していると判断されるか否か、エンコーダー故障判断部828が判断する。
2.2.5.動力遮断工程
また、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法も、第1実施形態と同様、任意の工程である動力遮断工程S110を有している。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
2.3.第2実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法は、動力信号取得工程S102と、エンコーダー値取得工程S104と、モーター停止判断工程S106と、エンコーダー故障判断工程S108と、を有する。
動力信号取得工程S102では、モーター401Mに流れるコイル電流CCu、CCv、CCwの電流値Iu、Iv、Iw(コイル電流に基づく動力信号)を取得する。エンコーダー値取得工程S104では、エンコーダー値Eを取得する。モーター停止判断工程S106では、電流値Iu、Iv、Iwが、モーター401Mが停止していると判断するための停止判断条件を満たすとき、モーター401Mが停止していると判断し、モーター停止信号を出力する。エンコーダー故障判断工程S108では、モーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eから、モーター401Mの回転軸が回転していると判断されるとき、エンコーダー421が故障していると判断する。
このような構成によれば、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、動作指令値Mに基づくことなく、コイル電流CCu、CCv、CCwに基づいてモーター401Mの停止を判断することができる。このため、ロボット監視装置82は、動力信号からモーター401Mが停止していることの裏付けを取ることができ、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、エンコーダー421の故障を検出することができる。これにより、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合であっても、ロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する安全機能を提供可能なロボット監視装置82を実現することができる。その結果、ロボットシステム1において低コスト化と高い安全性能とを両立することができる。
また、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法では、動力信号取得工程S102で取得する動力信号が、U相に関するコイル電流CCuの電流値Iu、V相に関するコイル電流CCvの電流値Iv、および、W相に関するコイル電流CCwの電流値Iw、を含んでいてもよい。
これにより、モーター停止判断工程S106では、モーター401Mの回転状態を確実に反映している動力信号に基づいて、モーター401Mが停止しているか否かを判断することができる。つまり、電流値Iu、Iv、Iwは、モーター401Mの回転状態を直接的に反映しているといえるため、これらを判断材料として用いることにより、動作指令値Mを参照することなく、モーター401Mが停止しているか否かを確実に判断することができる。これにより、エンコーダー故障判断工程S108では、エンコーダー421が故障しているか否かの判断の信頼性が高められる。
また、本実施形態に係るエンコーダーの故障診断方法では、動力信号取得工程S102で取得する動力信号が、U相に関するコイル電流CCuの電流値Iuの変化量TIu、V相に関するコイル電流CCvの電流値Ivの変化量TIv、および、W相に関するコイル電流CCwの電流値Iwの変化量TIw、を含んでいる。
動力信号が電流値Iu、Iv、Iwを含む場合と同様、動力信号がこのような電流値Iu、Iv、Iwの変化量TIu、TIv、TIwを含むことにより、モーター停止判断工程S106では、モーター401Mの回転状態を確実に反映している動力信号に基づいて、モーター401Mが停止しているか否かを判断することができる。これにより、エンコーダー故障判断工程S108では、エンコーダー421が故障しているか否かの判断の信頼性が高められる。
また、本実施形態に係るロボット監視装置82は、モーター401Mと、エンコーダー421と、を備えるロボット2の動作を監視する。ロボット監視装置82は、動力信号取得部822と、エンコーダー値取得部824と、モーター停止判断部826と、エンコーダー故障判断部828と、を備える。動力信号取得部822は、モーター401Mに流れるコイル電流CCu、CCv、CCwの電流値Iu、Iv、Iw(コイル電流に基づく動力信号)を取得する。エンコーダー値取得部824は、エンコーダー値Eを取得する。また、電流値Iu、Iv、Iwが、モーター401Mが停止していると判断するための停止判断条件を満たすとき、モーター停止判断部826は、モーター401Mが停止していると判断し、モーター停止信号を出力する。さらに、モーター停止信号が出力されていて、かつ、エンコーダー値Eから、モーター401Mの回転軸が回転していると判断されるとき、エンコーダー故障判断部828は、エンコーダー421が故障していると判断する。
このような構成によれば、モーター401Mの回転軸が停止しているときでも、動作指令値Mに基づくことなく、エンコーダー421の故障を検出可能なロボット監視装置82を実現することができる。これにより、エンコーダー421として非セーフティーエンコーダーを用いた場合であっても、ロボット安全規格に規定されている安全要求事項に対応する安全機能を提供可能なロボット監視装置82を実現することができる。その結果、ロボットシステム1において低コスト化と高い安全性能とを両立することができる。
以上、本発明のエンコーダーの故障診断方法、ロボット監視装置およびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、これらの本発明は、前記実施形態に限定されない。
例えば、本発明のロボット監視装置およびロボットシステムは、前記実施形態の各部の構成を、同様の機能を有する任意の構成に置換したものであってもよく、前記実施形態に他の任意の構成物が付加されたものであってもよい。
また、本発明のエンコーダーの故障診断方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。