以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る撮像素子100の断面図である。撮像素子100は、入射光に対応した画素信号を出力する撮像チップ113と、画素信号を処理する信号処理チップ111と、画素信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有する接続部であるバンプ109により互いに電気的に接続される。
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面左方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。以降のいくつかの図においては、図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。PD層106は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、二次元的に配された複数のPD(フォトダイオード)104、および、PD104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、PD104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102の配列については後述する。カラーフィルタ102、PD104およびトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応するPD104へ向けて入射光を集光する。
配線層108は、PD層106からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子および能動素子が設けられてもよい。
配線層108の表面には接続部である複数のバンプ109が配される。当該複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされて接合されることにより、撮像チップ113と信号処理チップ111とが電気的に接続される。
同様に、信号処理チップ111およびメモリチップ112の互いに対向する面には、接続部である複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされて接合されることにより、信号処理チップ111とメモリチップ112とが電気的に接続される。
なお撮像素子100は、撮像チップ113、信号処理チップ111及びメモリチップ112がチップ化される前のウエハの状態で接合を行い、接合されたウエハをダイシングすることにより形成される。
ウエハ同士を接合する際、活性化装置によりウエハの表面にプラズマを照射して、ウエハの接合面を活性化する。表面が活性化されたウエハは、接触により生じる水素結合、ファンデルワールス結合、および、共有結合等により接合され、積層基板を形成する。二つのウエハが相互の接触により水素結合をしている場合は、積層基板を形成した後、アニール炉のような加熱装置に積層基板を搬入して加熱することにより、ウエハ間に共有結合を生じさせる。
尚、活性化とは、ウエハの接合面が他のウエハの接合面と接触した場合に、水素結合、ファンデルワールス結合、共有結合等を生じて、溶融することなく固相で接合される状態にすべく、少なくとも一方の基板の接合面を処理する場合を含む。すなわち、活性化とは、ウエハの表面にダングリングボンド(未結合手)を生じさせることによって、結合を形成しやすくすることを含む。
より具体的には、活性化装置では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスを励起してプラズマ化し、酸素イオンを二つの基板のそれぞれの接合面となる表面に照射する。例えば、ウエハがSi上にSiO膜を形成した基板である場合には、この酸素イオンの照射によって、積層時に接合面となるウエハ表面におけるSiOの結合が切断され、SiおよびOのダングリングボンドが形成される。ウエハの表面にこのようなダングリングボンドを形成することを活性化という場合がある。
ダングリングボンドが形成された状態の基板を、例えば大気に晒した場合、空気中の水分がダングリングボンドに結合して、基板表面が水酸基(OH基)で覆われる。基板の表面は、水分子と結合しやすい状態、すなわち親水化された状態となる。つまり、活性化により、結果として基板の表面が親水化された状態になる。また、固相の接合では、接合界面における、酸化物等の不純物の存在、接合界面の欠陥等が接合強度に影響する。よって、接合面の清浄化を活性化の一部と見做してもよい。
更に、ウエハの活性化は、図示しない装置を用いて、親水化されたウエハの接合面となる表面に純水等を塗布してもよい。これにより、ウエハの表面は、OH基が付着した状態、すなわちOH基で終端された状態となる。
積層基板を加熱処理することにより、二つのウエハの接合面のそれぞれに設けられたバンプ109が互いに一体化されて、ウエハ間で電気的接続が形成される。バンプ109を、例えば、インジウム、錫-銀合金のように低温で溶融する材料で形成することにより、200度以下の低い温度で積層基板をリフロー処理できる。または、バンプ109を銅のように導電性を有する金属で形成した場合、加熱処理によって膨張することによりウエハ間のバンプ109同士が圧接し、固相拡散により接合される。
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用しても良い。また、バンプ109は、例えば後述する一つの画素ブロックに対して一つ程度設ければ良い。したがって、バンプ109の大きさは、PD104のピッチよりも大きくても良い。また、画素が配列された画素領域以外の周辺領域において、画素領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けても良い。
信号処理チップ111は、表裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられることが好ましい。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域、メモリチップ112にも設けられて良い。また、TSV110は、メモリチップ112に設けられた回路と撮像チップ113に設けられた回路とを電気的に接続するために用いられてもよい。
このように、撮像チップ113および信号処理チップ111は、それぞれの対向する面およびバンプ109により接合される。また信号処理チップ111およびメモリチップ112は、それぞれの対向する面で互いに接合されると共に、バンプ109および信号処理チップ111に設けられたTSV110で互いに接続される。尚、信号処理チップ111およびメモリチップ112を、それぞれの対向する面で互いに接合すると共に、バンプ109およびTSV110の少なくとも一方で互いに接続してもよい。
図2は、撮像チップ113の画素配列およびブロック131を説明する図である。特に、撮像チップ113を裏面側から観察した様子を示す。画素領域には2000万個以上もの画素がマトリックス状に配列されている。これらの画素は、少なくとも二つの画素を含むブロックに分割される。本実施形態においては、隣接する4画素×4画素の16画素が一つのブロックを形成する。図の格子線は、隣接する画素が集合的にブロック131を形成する概念を示す。
画素領域の部分拡大図に示すように、ブロック131は、緑色画素Gb、Gr、青色画素Bおよび赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列を、上下左右に4つ内包する。緑色画素は、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有する画素であり、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。同様に、青色画素は、カラーフィルタ102として青色フィルタを有する画素であって青色波長帯の光を受光し、赤色画素は、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有する画素であって赤色波長帯の光を受光する。
図3は、撮像チップ113のブロック131に対応する回路図である。図において、代表的に点線で囲む矩形が、1画素に対応する回路を表す。なお、以下に説明する各トランジスタの少なくとも一部は、図1のトランジスタ105に対応する。
上述のように、ブロック131は、16画素から形成される。それぞれの画素に対応する16個のPD104は、それぞれ転送トランジスタ302に接続され、各転送トランジスタ302の各ゲートには、転送パルスが供給されるTX配線307に接続される。本実施形態において、TX配線307は、16個の転送トランジスタ302に対して共通接続される。
各転送トランジスタ302のドレインは、対応する各リセットトランジスタ303のソースに接続されると共に、転送トランジスタ302のドレインとリセットトランジスタ303のソース間のいわゆるフローティングディフュージョンFDが増幅トランジスタ304のゲートに接続される。リセットトランジスタ303のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続され、そのゲートはリセットパルスが供給されるリセット配線306に接続される。本実施形態において、リセット配線306は、16個のリセットトランジスタ303に対して共通接続される。
各々の増幅トランジスタ304のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続される。また、各々の増幅トランジスタ304のソースは、対応する各々の選択トランジスタ305のドレインに接続される。選択トランジスタの各ゲートには、選択パルスが供給されるデコーダ配線308に接続される。本実施形態において、デコーダ配線308は、16個の選択トランジスタ305に対してそれぞれ独立に設けられる。そして、各々の選択トランジスタ305のソースは、共通の出力配線309に接続される。負荷電流源311は、出力配線309に電流を供給する。すなわち、選択トランジスタ305に対する出力配線309は、ソースフォロアにより形成される。なお、負荷電流源311は、撮像チップ113側に設けても良いし、信号処理チップ111側に設けても良い。
ここで、画素の露光開始から露光終了後の画素信号出力までの流れを説明する。リセット配線306を通じてリセットパルスがリセットトランジスタ303に印加され、同時にTX配線307を通じて転送パルスが転送トランジスタ302に印加されると、PD104およびフローティングディフュージョンFDの電位はリセットされ、露光を開始する。
PD104は、転送パルスの印加が解除されると、受光する入射光を電荷に変換して蓄積する。その後、リセットパルスが印加されていない状態で再び転送パルスが印加されると、露光が終了する。露光終了までに蓄積された電荷はフローティングディフュージョンFDへ転送され、フローティングディフュージョンFDの電位は、リセット電位から露光終了後の信号電位になる。そして、デコーダ配線308を通じて選択パルスが選択トランジスタ305に印加されると、フローティングディフュージョンFDの信号電位の変動が、増幅トランジスタ304および選択トランジスタ305を介して出力配線309に伝わる。これにより、リセット電位と信号電位とに対応する画素信号は、単位画素から出力配線309に出力される。
図示するように、本実施形態においては、ブロック131を形成する16画素に対して、リセット配線306とTX配線307が共通である。すなわち、リセットパルスと転送パルスはそれぞれ、16画素全てに対して同時に印加される。したがって、ブロック131を形成する全ての画素は、同一のタイミングで露光を開始し、同一のタイミングで露光を終了する。ただし、蓄積された電荷に対応する画素信号は、それぞれの選択トランジスタ305に選択パルスが順次印加されて、選択的に出力配線309に出力される。
このようにブロック131を基準として回路を構成することにより、ブロック131ごとに露光時間を制御することができる。ブロックごとに露光時間を制御できるので、隣接するブロック131同士で、異なった露光時間による画素信号をそれぞれ出力させることができる。さらには、全てのブロック131について共通の露光時間を設定しておき、あるブロック131については、1回分の露光と画素信号出力を実行させ、隣接するブロック131については、2回分の露光と画素信号出力を繰り返させるといった制御もできる。後者のような、共通の単位時間による露光および画素信号出力の繰り返し制御を単位時間制御という。なお、単位時間制御を行う場合であって、露光の開始時点および終了時点を、全てのブロック131で同期させるのであれば、リセット配線306は、撮像チップ113上の全てのリセットトランジスタ303に対して共通接続されて良い。
図4は、撮像素子100の機能的構成を示すブロック図である。ここでは特に、画素信号の流れを説明する。
アナログのマルチプレクサ411は、ブロック131を形成する16個のPD104を順番に選択して、それぞれの画素信号を出力配線309へ出力させる。マルチプレクサ411は、PD104と共に、撮像チップ113に形成される。
マルチプレクサ411を介して出力された画素信号は、信号処理チップ111に形成された、相関二重サンプリング(CDS)・アナログ/デジタル(A/D)変換を行う信号処理回路412により、CDSおよびA/D変換が行われる。A/D変換は、入力されるアナログ画素信号を、12bitのデジタル画素信号に変換する。A/D変換された画素信号は、同じく信号処理チップ111に形成された、演算回路415に引き渡される。演算回路415は、受け取った画素信号に、後段の画像処理のために必要な演算処理を施して、デマルチプレクサ413へ引き渡す。
デマルチプレクサ413は、受け取った画素信号をそれぞれの画素に対応する画素メモリ414に格納する。画素メモリ414のそれぞれは、演算処理を実行した後の画素信号を格納できる容量を有する。デマルチプレクサ413および画素メモリ414は、メモリチップ112に形成される。
演算回路415は、演算処理に用いる画素信号を、デマルチプレクサ413を介して画素メモリ414から読み出す。あるいは、外部からの引渡要求に従って、デマルチプレクサ413を介して画素メモリ414から読み出した画素信号を、後段の画像処理部に引き渡す。なお、演算回路415は、メモリチップ112に設けられても良い。
また、図では1ブロック分の画素信号の流れを示すが、実際にはこれらがブロックごとに存在して、並列で動作する。ただし、演算回路415はブロックごとに存在しなくても良く、例えば、一つの演算回路415がそれぞれのブロックに対応する画素メモリ414の値を順に参照しながらシーケンシャルに処理しても良い。
図5は、撮像素子100の機能的構成を示すブロック図である。ここでは主に信号処理チップ111の具体的構成と、信号処理チップ111に設けられた設定部460について説明する。
信号処理チップ111は、分担化された制御機能としてのセンサ制御部441、同期制御部443、信号制御部444と、これらの各制御部を統括制御する駆動制御部420とを含む。駆動制御部420は、撮像装置全体の統合制御を担うシステム制御部501からの指示を、各制御部が実行可能な制御信号に変換してそれぞれに引き渡す制御回路である。
センサ制御部441は、撮像チップ113へ送出する、各画素の電荷蓄積、電荷読み出しに関わる制御パルスの送出制御を担う。具体的には、センサ制御部441は、対象画素に対してリセットパルスおよび転送パルスを送出することにより、露光の開始および終了を制御し、読み出し画素に対して選択パルスを送出することにより、画素信号を出力配線309へ出力させる。
同期制御部443は、同期信号を撮像チップ113へ送出する。各パルスは、同期信号に同期して撮像チップ113においてアクティブとなる。例えば、同期信号を調整することにより、同一のブロック131に属する画素の特定画素のみを制御対象とするランダム制御、間引き制御等を実現する。
信号制御部444は、主にA/D変換器412bに対するタイミング制御を担う。出力配線309を介して出力された画素信号は、マルチプレクサ411を経てCDS回路412aおよびA/D変換器412bに入力される。A/D変換器412bは、信号制御部444によって制御されて、入力された画素信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された画素信号は、演算回路415に引き渡され、演算処理が施される。演算処理が施された画素信号は、メモリチップ112のデマルチプレクサ413に引き渡され、そしてそれぞれの画素に対応する画素メモリ414にデジタルデータの画素値として格納される。
駆動制御部420は、ブロック131毎の露光条件に従って、センサ制御部441に制御信号を送出する。露光条件とは、取得する画像の明るさを変化させる条件で、例えば、露光時間、絞り値、ISO感度等である。駆動制御部420は、システム制御部501から取得したシーンの輝度分布に応じて、ブロック131毎に露光条件を設定してもよく、あるいは、システム制御部501からブロック131毎の露光条件を取得してもよい。
駆動制御部420は、システム制御部501からの引渡要求に従って、対象画素信号を演算回路415およびデマルチプレクサ413を介して画素メモリ414から読み出し、システム制御部501の画像処理部511へ引き渡す。画素メモリ414には、引渡要求に従って画素信号を伝送するデータ転送インタフェースが設けられている。データ転送インタフェースは、画像処理部511と繋がるデータ転送ラインと接続されている。データ転送ラインは例えばバスラインのうちのデータバスによって構成される。この場合、システム制御部501から駆動制御部420への引渡要求は、アドレスバスを利用したアドレス指定によって実行される。
データ転送インタフェースによる画素信号の伝送は、アドレス指定方式に限らず、さまざまな方式を採用しうる。例えば、データ転送を行うときに、各回路の同期に用いられるクロック信号の立ち上がり・立ち下がりの両方を利用して処理を行うダブルデータレート方式を採用し得る。また、アドレス指定などの手順を一部省略することによってデータを一気に転送し、高速化を図るバースト転送方式を採用し得る。また、制御部、メモリ部、入出力部を並列に接続している回線を用いたバス方式、直列にデータを1ビットずつ転送するシリアル方式などを組み合わせて採用することもできる。
このように構成することにより、画像処理部511は、必要な画素信号に限って受け取ることができるので、特に低解像度の画像を形成する場合などにおいて、高速に画像処理を完了させることができる。
信号処理チップ111は、ブロック131毎に露光条件を設定する設定部460を更に含む。設定部460は、システム制御部501からシーンの輝度分布を取得し、輝度分布に応じて、ブロック131毎に露光条件を設定する。露光条件とは、取得する画像の明るさを変化させる条件で、例えば、露光時間、絞り値、ISO感度等である。また設定部460は、それぞれのブロック131の露光時間に応じてシャッタの開閉タイミングを決定する。
設定部460が、各制御部を統括制御する駆動制御部420と同じ信号処理チップ111に設けられることにより、処理の高速化が実現される。また、設定部460を駆動制御部420と別個に設けるのではなく、駆動制御部420が設定部460の機能を担ってもよい。
また、設定部460は、信号処理チップ111ではなくメモリチップ112に設けられてもよい。設定部460がメモリチップ112に設けられた場合、バンプ109およびTSV110を介して伝送の高速化を図ることができる一方で、信号処理チップ111ではより広いスペースを確保することができる。
図6は、本実施形態に係る撮像装置500の構成を示すブロック図である。撮像装置500は、撮像素子100、撮影レンズ520、システム制御部501、測光部503、ワークメモリ504、記録部505、および表示部506を主に備える。
測光部503は、画像データを生成する一連の撮影シーケンスに先立ち、シーンの輝度分布を検出する。測光部503は、例えば100万画素程度のAEセンサを含む。
撮影レンズ520は、光軸Oに沿って入射する被写体光束を撮像素子100へ導く。撮影レンズ520は、光学系の一例である。撮影レンズ520は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。なお、図6では、撮影レンズ520を瞳近傍に配置された仮想的な1枚のレンズで代表して表している。撮影レンズ520は、撮像装置500に対して着脱できる交換式レンズであってもよい。
画像処理部511は、撮像素子100の駆動制御部420から画素信号を受け取る。画像処理部511は、ワークメモリ504をワークスペースとして種々の画像処理を施し、画像データを生成する。例えば、画像処理部511は、撮像された複数の画像から特徴点を検出し、特徴点に基づいて複数の画像を合成して最終的な画像データを生成する。また、画像処理部511は、JPEGファイル形式の画像データを生成する場合は、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に圧縮処理を実行する。生成された画像データは、記録部505に記録されるとともに、表示信号に変換されて予め設定された時間の間、表示部506に表示される。なお、画像処理部511は、輝度の変換関数を生成する信号処理部の一例であり、システム制御部501とは独立したASICとして構成されても良く、メモリチップ112に設けられてもよい。
システム制御部501は、撮像装置全体の統合制御を担う。システム制御部501は、ユーザからの指示を受けて、撮像素子100へ送信する撮像指示を生成する。また、システム制御部501の演算部512は、測光部503の出力を受けてシーンの領域ごとの輝度を算出する。演算部512は、上述した設定部460にシーンの輝度分布を出力する。また、演算部512は、撮像装置500を動作させるための各種演算も実行する。
演算部512は、上述した設定部460の機能を担ってもよい。この場合、演算部512は、シーンの輝度分布に応じて、ブロック131毎に露光条件を設定する。また、演算部512は、それぞれのブロック131に設定された露光条件に応じて、シャッタの開閉タイミングを決定する。
図7は、変換関数の例を示す図である。図7を説明する前に、実世界のシーンの輝度を画像用の輝度に変換するトーンマッピング処理において用いられる変換関数について説明する。
変換関数は、基準輝度を基準として、入力輝度をより小さい出力輝度に変換する増加関数である。変換関数G(x)は、シグモイド関数である。変換関数は、基準輝度と、画素が位置する領域における画素信号の平均輝度と、予め定められた明るさ調整パラメータとに基づいて、入力輝度を出力輝度に変換する。例えば、このような変換関数として、Reinhardの変換関数が知られている。
座標xにおける画素の基準輝度Lm(x)は、上記の式で表される。基準輝度は、入力輝度Lw(x)をスケーリングした輝度である。ここで、αは明るさ調整パラメータ、Lw,Globalは画像全体の平均輝度(全体平均輝度)である。明るさ調整パラメータαは、0<α<1の値であり、画像全体の明るさに応じて異なる値を設定することができる。例えば、画像を明るい階調で維持する場合には、明るさ調整パラメータαを0.18から0.36、0.72と変化させ、画像を暗い階調で維持する場合には、明るさ調整パラメータαを0.18から0.09、0.045と変化させる。
出力輝度Ld(x)は、以下の式で表される。
ここで、Lm,Local(x)は、画素が位置する領域における平均輝度(局所平均輝度)である。これらの式をまとめると、入力輝度を出力輝度に変換する変換関数は以下のとおりである。
ここで、G(x)は変換関数、X(x)はRGB値それぞれの入力輝度、X'(x)はRGB値それぞれの出力輝度である。なお、変換関数G(x)についてこれらの式をまとめると、以下のとおりである。
上記の式からわかるように、変換関数G(x)は、全体平均輝度Lw,Global、局所平均輝度および明るさ調整パラメータαによって決定される。ここで、全体平均輝度Lw,Globalおよび局所平均輝度は既定値であるため、変換結果の輝度帯域を調整するためのパラメータは、明るさ調整パラメータαのみであることがわかる。
次に、図7を参照し、入力輝度Lwを出力輝度Ldに変換する変換関数s1、s2、s3およびs123を説明する。横軸は入力輝度Lwの輝度、縦軸は出力輝度Ldの輝度を示す。変換関数s1、s2、s3は、それぞれ、1つの基準輝度を基準として用いた関数であり、立ち上がりの前後に2つの変曲点を有するS字カーブを描く。変換関数s2は全体平均輝度を基準輝度として用いている。変換関数s1およびs3は、それぞれ、全体平均輝度より低い輝度および高い輝度を基準輝度として用いており、全体平均輝度より暗い輝度帯域および明るい輝度帯域を重視している。
いずれの変換関数も、入力輝度Lwが基準輝度を中心とした一定の範囲にある場合は、出力輝度Ldが0~1の間で変化する増加関数として機能しているが、この範囲外では、出力輝度Ldは0または1のいずれかの値に圧縮され、実質的に入力輝度Lwが無視されている。図7に、変換関数s2において入力輝度Lwが無視される範囲を示す。
一方で、変換関数s123は、下記の式に従って変換関数s1、s2、s3を組み合わせた統合変換関数である。
Ld(x)は、N個の変換関数を組み合わせた統合変換関数によって得られる出力輝度である。Lm,n(x)はそれぞれの変換関数の基準輝度であり、n=1,…,N(ここでは変換関数s1、s2、s3の3つを組み合わせるのでN=3)である。Lm,Local,n(x)は、それぞれの変換関数の局所平均輝度であり、
である。knは、変換関数の組み合わせ比率であり、
である。
図7に示すように、変換関数s123は、基準輝度の異なる複数の変換関数を組み合わせていることから、3つ以上の変曲点を有する。このような変換関数s123によれば、より広い範囲の入力輝度Lwが圧縮されることなく変換され、実世界のシーンの輝度分布をより正確に再現することができる。
図8は、輝度変換の一例を示すフロー図である。なお、図8の説明において、画像処理部511が各ステップの動作主体であるものとして説明するが、これに限定されない。他の例では、撮像素子100の設定部460および演算回路415が各ステップの動作主体であってもよく、この場合、これらは一体的な機能ブロックとして信号処理部と称されてよい。
ここでは、N個の変換関数から統合変換関数を生成する例を説明する。ステップS102において、画像処理部511は、シーンの輝度分布に応じて、画像の全体平均輝度および局所平均輝度を算出する。ステップS104において、画像処理部511は、輝度ヒストグラムを取得する。輝度ヒストグラムは、対数ヒストグラムであってよい。
画像処理部511は、画素のブロック131毎に設定された露光条件に基づいて輝度ヒストグラムを取得してもよい。このように、ブロック131毎の露光条件を設定するために生成された輝度ヒストグラムを利用することにより、輝度の対数変換処理を省略することができる。
ステップS106において、画像処理部511は、N個の変換関数のそれぞれについて、基準輝度および帯域を決定する。N個の基準輝度は互いに異なり、例えば、輝度のヒストグラムから算出した全体平均輝度、全体平均輝度より高い輝度の平均輝度、全体平均輝度より低い輝度の平均輝度である。画像処理部511は、基準輝度の中間値が帯域の境界となるように、それぞれの帯域を決定してよい。
ステップS108において、画像処理部511は、N個の変換関数の組み合わせ比率を決定する。画像処理部511は、それぞれの変換関数の帯域幅に応じて、組み合わせ比率を決定してよい。
画像処理部511は、輝度のヒストグラムに応じて、N個の変換関数の組み合わせ比率を決定してもよい。 例えば、画像処理部511は、輝度の頻度に応じて重みづけ係数を算出し、帯域幅に応じて決定した組み合わせ比率に重みづけ係数を乗じて、組み合わせ比率を調整する。
ステップS110において、画像処理部511は、N個の変換関数を組み合わせて統合変換関数を生成する。統合変換関数を生成する式については図7に関連して説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
ステップS112において、演算回路415は、画像処理部511が生成した統合変換関数を用いて画素信号の輝度を変換する。
図9は、輝度のヒストグラムから基準輝度および帯域を決定するステップの一例を説明する図である。図9は、図8で説明した輝度変換フローのステップS104~S108に対応しており、3個の変換関数1~3から統合変換関数を生成する例(N=3)を説明する。
図9上段は、ステップS104で取得した輝度ヒストグラムを示す。ステップS106において、画像処理部511は、全体平均輝度、全体平均輝度より低い輝度の平均輝度および全体平均輝度より高い輝度の平均輝度を決定し、それぞれを変換関数1~3の基準輝度Lw,global,1、Lw,global,2およびLw,global,3に設定する。
次に、画像処理部511は、変換関数1の基準輝度Lw,global,1および変換関数2の基準輝度Lw,global,2の中間値Lw,med12、変換関数1の基準輝度Lw,global,1および変換関数3の基準輝度Lw,global,3の中間値Lw,med13を決定し、中間値Lw,med12から中間値Lw,med13の範囲を変換関数1の帯域1、最小入力輝度Lw,minから中間値Lw,med12の範囲を変換関数2の帯域2、中間値Lw,med13から最大入力輝度Lw,minの範囲を変換関数3の帯域3と決定する。
ステップS108において、画像処理部511は、帯域1~3の帯域幅の比率から、変換関数1~3の組み合わせ比率k1~k3を決定する。
図10Aおよび図10Bは、従来技術に係る変換関数を用いて輝度が変換された撮影画像の一例を示す図である。図10Cは、本実施形態に係る統合変換関数を用いて輝度が変換された撮影画像の一例を示す図である。いずれも、窓を通して室内から屋外の同じ景色を撮影した画像を示す。
図10Aおよび図10Bは、1つの基準輝度を基準として用いた変換関数で輝度が変換された画像を示す。図10Aは暗領域重視で基準輝度が設定されており、屋外に対応する画素が白飛びしている。一方、図10Bは明領域重視で基準輝度が設定されており、室内に対応する画素が黒潰れしている。
図10Cは、全体平均輝度、全体平均輝度より低い輝度の平均輝度および全体平均輝度より高い輝度の平均輝度をそれぞれ基準輝度とする3個の変換関数を組み合わせた統合変換関数で輝度が変換された画像を示す。図10Cに示すように、明領域の輝度が落ち、暗領域の輝度が持ち上がることによって、実際のシーンの輝度が局所的に損なわれることなく、画像全体において階調が良好に再現されている。
図11Aは、特徴点を考慮して輝度が変換された画像の一例を示す図である。図11Aは、夜間に高層ビルを室内から撮影した画像の画像処理結果を示す。人の視覚では、暗領域の中で、高層ビルを被写体の中心として認識する。画像処理部511は、画像の中から高層ビルに対応する画素を特徴点として抽出し、特徴点の輝度に応じて、変換関数の組み合わせ比率を決定する。画像処理部511は、統合変換関数の基礎となる複数の変換関数に、特徴点の輝度を基準輝度とする変換関数を含めてよい。あるいは、画像処理部511は、特徴点の輝度を含む帯域に対応する組み合わせ比率に高い重みづけ係数を乗じて、特徴点の輝度を重視した統合変換関数を生成してもよい。
図11Bは、サリエンシーマップの一例を示す図である。サリエンシーマップは、画像の輝度、色、方位、方向等の特徴量をマッピングしたものであり、画像の中で人の目を引く特徴点を抽出するために用いられる。図11Bは、図11Aのシーンに対応するサリエンシーマップを示す。
図11Bでは、被写体の中心である高層ビルの中で照明が点灯している窓および最上階の航空障害灯、ならびに画像に映り込んだ撮影者近傍の窓枠に対応する領域が明るい色で浮かび上がっており、シーンの中で人の目を引く特徴点であることが示されている。このように、輝度以外の要素をさらに考慮することにより、シーンの輝度を自然に再現することができる。
図12は、輝度のヒストグラムから基準輝度および帯域を決定するステップの他の例を説明する図である。図12は、図9と同様に、図8で説明した輝度変換フローのステップS104~S108に対応する。ここでは、図9と共通する部分については説明を省略する。
図12では、図9と同じ3個の変換関数1~3に加え、特異輝度を基準輝度とする変換関数4を含む4個の変換関数から統合変換関数を生成する(N=4)。ステップS106において、画像処理部511は、輝度ヒストグラムから、特異輝度を抽出する。特異輝度は、例えば、輝度分布から逸脱しているが、有意な頻度で検出された輝度である画像処理部511は、抽出した特異輝度を変換関数4の基準輝度Lw,global,4に設定する。帯域および組み合わせ比率の決定については説明を省略する。
次に、画像処理部511は、変換関数1の基準輝度Lw,global,1および変換関数2の基準輝度Lw,global,2の中間値Lw,med12、変換関数1の基準輝度Lw,global,1および変換関数3の基準輝度Lw,global,3の中間値Lw,med13を決定し、中間値Lw,med12から中間値Lw,med13の範囲を変換関数1の帯域1、最小入力輝度Lw,minから中間値Lw,med12の範囲を変換関数2の帯域2、中間値Lw,med13から最大入力輝度Lw,minの範囲を変換関数3の帯域3と決定する。画像処理部511は、統合変換関数の基礎となる複数の変換関数に、特異輝度を基準輝度とする変換関数を含む4個の変換関数から統合変換関数を生成する。
このように、例えば、図11Aのような高層ビルにおいて、最上階の航空障害灯のように、暗領域中心のシーンに顕著に高い輝度の点が含まれる場合であっても、特異輝度を考慮した統合変換関数を用いて輝度変換を行うことにより、シーンの輝度を正確に再現することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。