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JP7780702B2 - Ni基合金継目無管および溶接継手 - Google Patents
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JP7780702B2 - Ni基合金継目無管および溶接継手 - Google Patents

Ni基合金継目無管および溶接継手

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JP7780702B2 JP2021083314A JP2021083314A JP7780702B2 JP 7780702 B2 JP7780702 B2 JP 7780702B2 JP 2021083314 A JP2021083314 A JP 2021083314A JP 2021083314 A JP2021083314 A JP 2021083314A JP 7780702 B2 JP7780702 B2 JP 7780702B2
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Description

本発明は、Ni基合金管および溶接継手に関する。
化学プラントおよび発電プラントでは、排煙処理用機器、海水処理用機器等、様々なプラント機器が設置される。プラント内は、塩化物、硫化水素といった腐食を進行させる物質が多く存在する、過酷な腐食環境である。このため、プラント機器に使用される素材には、強度に加え、耐食性も要求される。そこで、特許文献1~8に開示されているように、プラント機器への使用を想定し、耐食性を高めたNi基合金が開発されている。
特開昭54-110918号公報 特開昭63-89637号公報 特開平2-156034号公報 特開平3-173732号公報 特開平5-271832号公報 特開平9-87786号公報 特開平10-30140号公報 特開2012-72446号公報
プラント機器の中には、溶接により部材同士を組み立てて製造するものがある。このような機器においては、溶接部のビードの形成状態が腐食の進行に影響を与えることがある。
例えば、熱交換器の中には、冷媒等の流路となる複数のNi基合金管を、突合せ溶接して、繋ぎ合わせることで、製造されるものがある。そして、熱交換器として使用される際には、管の内側を様々な腐食性の流体が流れる。この際、溶接により、管内部に形成されたビードの高さ、すなわち余盛高さが高すぎると、ビード表面と母材の面とが交差する止端部において、腐食性の流体が滞留、濃化する。この結果、止端部で、腐食が進行しやすくなるという問題がある。
その一方、余盛高さを低くしようとしすぎて、溶接時の入熱量を低減すると、管と管との突合せ面が完全に溶融せず、安定したビードが形成しにくくなる。この結果、溶接欠陥が発生するとともに、溶接欠陥に腐食性の流体が滞留、濃化して、腐食が進行しやすくなるという問題がある。しかしながら、これらの問題について、特許文献1~8では、何ら検討を行っていない。
したがって、耐食性の高いNi基合金を素材として、管を製造したとしても、突合せ溶接時に、腐食が進行しにくい、適切な形状のビードを、管に形成させることが難しい。つまり、溶接時に、内面側に安定してビードが形成するとともに、余盛高さが高すぎないNi基合金管を得ることが難しいという課題がある。
以上を踏まえ、本発明は、上記の課題を解決し、良好な溶接部の使用性能を有する内面側ビードを安定して形成しうるNi基合金管および溶接継手を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のNi基合金管および溶接継手を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.005~0.080%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.01~0.50%、
P:0.015%以下、
S:0.0001~0.0030%、
Cr:20.0~23.5%、
Mo:8.0~10.5%、
Ti:0.01~0.40%、
N:0.0010~0.0400%、
Al:0.01~0.40%、
O:0.0004~0.0100%と、
NbおよびTaから選択される一種以上とを含み、
Sn:0~0.010%、
残部がNiおよび不純物であり、
下記(i)および(ii)式を満足する、Ni基合金管。
0.0010≦S+2O+0.2Sn≦0.0180 ・・・(i)
2.50≦Nb+Ta≦4.60 ・・・(ii)
但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記Ni基合金管内面側において、管の長手方向の算術平均粗さRaが、7.0μm以下である、上記(1)に記載のNi基合金管。
(3)前記化学組成が、前記Niの一部に代えて、質量%で、
Fe:5.50%以下、を含有する、上記(1)または(2)に記載のNi基合金管。
(4)前記化学組成が、前記Niの一部に代えて、CuおよびCoから選択される一種以上を含み、下記(iii)式を満足する、上記(1)~(3)のいずれかに記載のNi基合金管。
0.01≦Cu+Co≦1.50 ・・・(iii)
但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(5)前記化学組成が、前記Niの一部に代えて、質量%で、
W:1.00%以下、
V:0.40%以下、
Ca:0.0030%以下、
Mg:0.0030%以下、
B:0.0100%以下、および
REM:0.0100%以下、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載のNi基合金管。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載のNi基合金管を用いた溶接継手。
本発明によれば、良好な溶接部の使用性能を有する内面側ビードを安定して形成しうるNi基合金管を得ることができる。
図1は、実施例における開先形状を示す図である。
本発明者らは、Ni基合金管のビードについて検討を行い、以下の(a)~(d)の知見を得た。
(a)突合せ溶接時に、形成される管の内面側ビードの形状は、Ni基合金管中に含有されるSおよびOの含有量に影響を受ける。そして、SおよびOの含有量が少ない場合、内面側ビードが安定して形成されず、一部、未溶融の突合せ面が残存することを本発明者らは明らかにした。
その一方、SおよびO含有量が過剰であると、上記ビードは安定して形成されるようになるものの、ビードの余盛高さが過剰に高くなる。このため、合金管として使用した際、腐食性流体がビード付近に滞留し、腐食が進行しやすくなる。そこで、安定してビードを形成させ、かつ余盛高さが過剰に高くなるのを防止するためには、S含有量とO含有量とを所定の範囲に調整する必要がある。
(b)SおよびOが、ビードの形成に影響を与える理由として、以下のものが考えられる。SおよびOは、表面活性元素であり、これにより、溶接の際、溶接池内において、内向きの対流を強くする。この結果、溶接熱が深さ方向に伝達しやすくなり、ビードを安定的に形成させることができる。その一方、SおよびOを過剰に含有させると、溶融金属の表面張力が過剰に低下し、溶融金属が垂れ下がりやすくなる。この結果、ビードの形状が過剰に盛り上がった、凸の形状(以下、単に「凸形状」と記載する。)となり、余盛高さが高くなる。
(c)加えて、管の内面側ビードの形状は、管内面の長手方向の表面粗さに影響を受ける。本発明者らは、上記表面粗さが大きい場合、余盛高さが高くなり、凸形状となりやすいことが明らかにした。このため、表面粗さを所定の範囲に制御することが望ましい。特に、管内面の長手方向の表面粗さが大きい場合、溶融金属の幅方向への広がりが抑制され、ビードの形状が、凸形状となり、余盛高さが高くなりやすくなる。
(d)さらに、本発明者らは、内面側ビードの形状は、Sn含有量にも影響されることも明らかにした。Snが含有されると、溶け込み深さが大きくなり、内面側ビードが安定して形成されやすくなる。その一方、過剰に含有されると、溶け込みが過剰となり、内面側ビードが凸形状となりやすい。この理由は、Snが溶接中の溶融池表面から蒸発し、アークの集中度を高めるためと考えられた。そのため、Snを含有させる場合、適切な形状の内面側ビードを得るために、Sn含有量を所定の範囲に制御するとともに、S含有量、O含有量、およびSn含有量の関係が所定の範囲を満たす必要がある。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.合金管の化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.005~0.080%
Cは、組織を安定させる効果を有する。このため、C含有量は、0.005%以上とする。C含有量は、0.008%以上とするのが好ましく、0.010%以上とするのがより好ましく、0.012%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Cを過剰に含有させると、溶接熱サイクルによりCrと結合して、溶接熱影響部において結晶粒界に炭化物を形成する。その結果、結晶粒界近傍にCr欠乏層を生じさせ、耐食性を低下させる。このため、C含有量は、0.080%以下とする。C含有量は、0.050%以下とするのが好ましく、0.030%以下とするのがより好ましく、0.025%以下とするのがより好ましい。
Si:0.01~0.50%
Siは、脱酸効果を有する。このため、Si含有量は、0.01%以上とする。Si含有量は、0.02%以上とするのが好ましく、0.03%以上とするのがより好ましい。Si含有量は、0.05%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Siを、過剰に含有させると、合金の組織安定性を低下させるとともに、溶接割れ感受性を高める。また、安定的に内面側のビードが形成しにくくなる場合がある。このため、Si含有量は、0.50%以下とする。Si含有量は、0.48%以下とするのが好ましく、0.45%以下とするのがより好ましい。Si含有量は、0.43%以下とするのがさらに好ましい。
Mn:0.01~0.50%
Mnは、Siと同様、脱酸効果を有する。また、組織安定性を高める効果を有するとともに、安定的に内面側のビードを形成するのに少なからず寄与する。このため、Mn含有量は、0.01%以上とする。Mn含有量は、0.03%以上とするのが好ましく、0.05%以上とするのがより好ましい。Mn含有量は、0.08%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Mnを、過剰に含有させると、熱間加工性を低下させる。このため、Mn含有量は、0.50%以下とする。Mn含有量は、0.48%以下とするのが好ましく、0.45%以下とするのがより好ましい。Mn含有量は、0.40%以下とするのがさらに好ましい。
P:0.015%以下
Pは、不純物として、Ni基合金中に含まれ、溶接割れ感受性を著しく高める。このため、P含有量は、0.015%以下とする。P含有量は、0.013%以下とするのが好ましく、0.012%以下とするのがより好ましい。P含有量は、可能な限り低減することが好ましいが、過度の低減により、製造コストが増加する。このため、P含有量は、0.001%以上とするのが好ましく、0.002%以上とするのがより好ましい。
S:0.0001~0.0030%
Sは、一般に不純物として、Ni基合金中に含まれるが、本発明の合金管においては、Oとともに、溶接時に内面側ビードの形成能を高める効果を有する。このため、S含有量は、0.0001%以上とする。S含有量は、0.0002%以上とするのが好ましく、0.0003%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Sを、過剰に含有させると、管内面側のビードが凸形状となるとともに、溶接割れ感受性を高める。このため、S含有量は、0.0030%以下とする。S含有量は、0.0025%以下とするのが好ましく、0.0020%以下とするのがより好ましい。なお、Sは、OおよびSnとの間で後述の(i)式を満足する必要がある。
Cr:20.0~23.5%
Crは、耐食性を確保するために必須の元素である。Crは、特に、表面に不動態皮膜を形成させ、酸化性の酸環境下において耐食性を向上させる。このため、Cr含有量は、20.0%以上とする。Cr含有量は、20.5%以上とするのが好ましく、21.0%以上とするのがより好ましく、21.2%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Crを、過剰に含有させると、組織安定性が低下する。このため、Cr含有量は、23.5%以下とする。Cr含有量は、23.3%以下とするのが好ましく、23.0%以下とするのがより好ましく、22.8%以下とするのがさらに好ましい。
Mo:8.0~10.5%
Moは、非酸化性の酸および塩化物が存在する環境下で、耐食性を向上させる。このため、Mo含有量は、8.0%以上とする。Mo含有量は、8.2%以上とするのが好ましく、8.5%以上とするのがより好ましく、8.7%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Moを、過剰に含有させると組織安定性が低下する。さらに、Moは、高価な元素であるため、製造コストが増加する。このため、Mo含有量は、10.5%以下とする。Mo含有量は、10.3%以下とするのが好ましく、10.0%以下とするのがより好ましく、9.8%以下とするのがさらに好ましい。
Ti:0.01~0.40%
Tiは、炭化物を形成し、強化に寄与するとともに、Cr炭化物の生成を抑制することで、粒界における耐食性の劣化を低減する。このため、Ti含有量は、0.01%以上とする。Ti含有量は、0.05%以上とするのが好ましく、0.08%以上とするのがより好ましく、0.10%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Tiを、過剰に含有させると、Tiの炭化物および炭窒化物が多量に析出し、延性が低下する。このため、Ti含有量は、0.40%以下とする。Ti含有量は、0.38%以下とするのが好ましく、0.35%以下とするのがより好ましく、0.32%以下とするのがさらに好ましい。
N:0.0010~0.0400%
Nは、組織安定性に寄与するとともに、耐孔食性を高める効果を有する。このため、N含有量は、0.0010%以上とする。N含有量は、0.0020%以上とするのが好ましく、0.0030%以上とするのがより好ましく、0.0040%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Nを、過剰に含有させると、窒化物が析出し、延性を低下させる。このため、N含有量は、0.0400%以下とする。N含有量は、0.0350%以下とするのが好ましく、0.0300%以下とするのがより好ましい。N含有量は、0.0250%以下とするのがさらに好ましい。
Al:0.01~0.40%
Alは、脱酸効果を有する。また、高温での耐酸化性の向上に寄与する。このため、Al含有量は、0.01%以上とする。Al含有量は、0.02%以上とするのが好ましく、0.03%以上とするのがより好ましい。Al含有量は、0.05%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、Alを、過剰に含有させると、Niと脆い化合物を生成し、熱間加工性を低下させる。また、安定的に内面側のビードが形成しにくくなる場合がある。このため、Al含有量は、0.40%以下とする。Al含有量は、0.35%以下とするのが好ましく、0.30%以下とするのがより好ましく、0.28%以下とするのがさらに好ましい。
O:0.0004~0.0100%
Oは、一般に、Ni基合金中に、不純物として含まれるが、本発明の合金管においては、Sとともに、溶接時に管内面側のビードの形成能を高める効果を有する。このため、O含有量は、0.0004%以上とする。O含有量は、0.0006%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Oを、過剰に含有させると、管の内面側ビードが凸形状になるとともに、熱間加工性が低下する。このため、O含有量は、0.0100%以下とする。O含有量は、0.0080%以下とするのが好ましく、0.0060%以下とするのがより好ましい。なお、Oは、SおよびSnとの間で後述の(i)式を満足する必要がある。
NbおよびTaから選択される一種以上を合計で、2.50%以上4.60%以下
NbとTaは、いずれもTiと同様、炭素と結合して炭化物を形成し、強化に寄与するとともに、Cr炭化物の生成を抑制し、粒界の耐食性劣化を低減する。このため、NbおよびTaから選択される一種以上を含み、かつこれら元素の合計含有量は下記(ii)式を満足する必要がある。
2.50≦Nb+Ta≦4.60 ・・・(ii)
但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
NbとTaの合計含有量である、(ii)式中辺値が2.50%未満であると、上述した強度を向上させ、粒界耐食性の劣化を低減する効果を得ることができない。このため、(ii)式中辺値は、2.50%以上とする。(ii)式中辺値は、2.70%以上とするのが好ましく、3.00%以上とするのがより好ましい。
一方、(ii)式中辺値が、4.60%を超えると、NbおよびTaの炭化物および炭窒化物が多量に析出し、延性が低下する。さらに、溶接割れ感受性も高める。このため、(ii)式中辺値は、4.60%以下とし、4.40%以下とするのが好ましく、4.20%以下とするのがより好ましい。
化学組成において、上記元素に加え、さらにSnを以下に示す範囲において、含有させてもよい。
Sn:0~0.010%
Snは、溶接時に溶け込み深さを増大させ、管の内面側ビードの形成能を高める効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snを、過剰に含有させると、熱間加工性を低下させるとともに、溶接割れ感受性を高める。加えて、内面側ビードが凸形状となりやすくなる。このため、Sn含有量は、0.010%以下とする。Sn含有量は、0.009%以下とするのが好ましく、0.008%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Sn含有量は、0.001%以上とするのが好ましく、0.002%以上とするのがより好ましく、0.003%以上とするのがさらに好ましい。なお、Snは、SおよびOとの間で後述の(i)式を満足する必要がある。
上述したように、S、O、およびSnは、管内面側のビードの形成に効果的に寄与することから、本発明に係るNi基合金管では、S含有量、O含有量、およびSn含有量との関係式である下記(i)式を満足する必要がある。
0.0010≦S+2O+0.2Sn≦0.0180 ・・・(i)
但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。また、上記式中で、Sn含有量が0.001%未満の場合は、Sn=0として扱う。
SおよびOは、界面活性元素であり、溶接中に溶融池内の内向きの対流を強くする作用を有する。また、Snはアーク通電経路の形成に寄与し、アークの集中度を高める効果を有する。そして、溶接熱を溶融池中央の深さ方向に輸送する。この結果、これらの元素は、内面側ビードを安定的に形成させる効果を有するが、(i)式中辺値が、0.0010%未満であると、この効果を得ることができない。このため、(i)式中辺値は、0.0010%以上とする。(i)式中辺値は、0.0012%以上とするのが好ましく、0.0015%以上とするのがより好ましい。
一方、(i)式中辺値が、0.0180%を超えると、溶融金属の表面張力が小さくなる、もしくは溶融池中央の溶融が促進され、垂れ下がりが生じる。この結果、ビードが凸形状となり、管の内面側においてビードを安定的に形成できなくなる。このため、(i)式中辺値は、0.0180%以下とする。(i)式中辺値は、0.0175%以下とするのが好ましく、0.0170%以下とするのがより好ましい。
化学組成において、上記元素に加え、さらにFeを以下に示す範囲において、含有させてもよい。
Fe:5.50%以下
Feは、熱間加工性を向上させるのに有効である。さらに、合金コストの低減にも寄与する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Feを、過剰に含有させると、組織安定性を低下させる。このため、Fe含有量は、5.50%以下とする。Fe含有量は、5.30%以下とするのが好ましく、5.00%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Fe含有量は、0.01%以上とするのが好ましく、0.50%以上とするのがより好ましく、1.50%以上とするのがさらに好ましい。
化学組成において、上記元素に加え、さらにCuおよびCoを以下に示す範囲において、含有させてもよい。
CuおよびCoから選択される一種以上を合計で、1.50%以下
CuおよびCoは、組織安定性を高めるとともに、非酸化性の酸および塩化物環境下での耐食性を向上させる効果を有する。このため、CuおよびCoから選択される一種以上を必要に応じて含有させてもよい。また、含有させる場合は、化学組成が、下記(iii)式を満足するのが好ましい。
0.01≦Cu+Co≦1.50 ・・・(iii)
但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
CuおよびCoの合計含有量である、(iii)式中辺値が、0.01%未満であると、上記効果を得ることができにくくなる。このため、(iii)式中辺値は、0.01%以上とするのが好ましく、0.02%以上とするのがより好ましく、0.03%以上とするのがさらに好ましい。しかしながら、(iii)式中辺値が、1.50%を超えると、熱間加工性を低下させるとともに、製造コストが増加する。このため、(iii)式中辺値は、1.50%以下とするのが好ましく、1.30%以下とするのがより好ましい。(iii)式中辺値は、1.00%以下とするのがさらに好ましい。
化学組成において、上記元素に加え、さらに、W、V、Ca、Mg、B、およびREMから選択される一種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。各元素の限定理由について説明する。
W:1.00%以下
Wは、非酸化性の酸および塩化物が存在する環境下での耐食性を向上させる。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、Wを、過剰に含有させると、組織安定性を低下させる。また、高価な元素であるため、製造コストが増加する。このため、W含有量は、1.00%以下とする。W含有量は、0.90%以下とするのが好ましく、0.80%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、W含有量は、0.01%以上とするのが好ましく、0.02%以上とするのがより好ましい。
V:0.40%以下
Vは、炭素と結合して炭化物を形成し、Cr炭化物の生成を抑制することで、粒界における耐食性の劣化を低減する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、Vを、過剰に含有させると、Vの炭化物および炭窒化物が多量に析出し、延性が低下する。そのため、V含有量は、0.40%以下とする。V含有量は、0.35%以下とするのが好ましく、0.30%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は、0.01%以上とするのが好ましく、0.02%以上とするのがより好ましい。
Ca:0.0030%以下
Caは、熱間加工性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caを、過剰に含有させると、酸素と結合し、清浄性を著しく低下させる。この結果、却って、熱間加工性が低下する。そのため、Ca含有量は、0.0030%以下とする。Ca含有量は、0.0020%以下とするのが好ましく、0.0010%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ca含有量は、0.0001%以上とするのが好ましく、0.0003%以上とするのがより好ましい。
Mg:0.0030%以下
Mgは、Caと同様、熱間加工性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mgを、過剰に含有させると、酸素と結合し、清浄性を著しく低下させる。この結果、却って、熱間加工性が低下する。そのため、Mg含有量は、0.0030%以下とする。Mg含有量は、0.0020%以下とするのが好ましく、0.0010%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は、0.0001%以上とするのが好ましく、0.0003%以上とするのがより好ましい。
B:0.0100%以下
Bは、高温で粒界に偏析して、粒界を強化し、熱間加工性を高める効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを、過剰に含有させると、溶接割れ感受性が高まる。そのため、B含有量は、0.0100%以下とする。B含有量は、0.0080%以下とするのが好ましく、0.0060%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は、0.0002%以上とするのが好ましく、0.0005%以上とするのがより好ましい。
REM:0.0100%以下
REMは、CaおよびMgと同様、製造時の熱間加工性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、REMを、過剰に含有させると、酸素と結合し、清浄性を著しく低下させる。この結果、却って、熱間加工性が低下する。そのため、REM含有量は、0.0100%以下とする。REM含有量は、0.0050%以下とするのが好ましく、0.0030%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、REM含有量は、0.0001%以上とするのが好ましく、0.0003%以上とするのがより好ましい。ここで、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドを示し、REM含有量はこれらの元素の含有量の総量を示す。
本発明に係るNi基合金の化学組成において、残部はNiおよび不純物である。ここで「不純物」とは、意図的に添加される元素でないものの、Ni基合金を工業的に製造する際に、原料、製造工程等、種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.合金管の表面粗さ
ビードは、合金管の端部を溶接する際に形成する。良好なビードを形成させる上で、合金管の内面側において、長手方向の算術平均粗さRaを制御するのが好ましい。ここで合金管の表面粗さとは、製造工程における最終工程後の表面粗さを指す。すなわち、合金管の表面粗さは製造の過程で変化するが、本発明の効果を得るためには、製造途中の表面粗さは関係なく、最終工程後の管の長手方向の表面粗さが、本発明の規定する範囲を満足すればよい。
Ni基合金管内面側において、管の長手方向の算術平均粗さRaが7.0μmを超えると、管内面において、溶接金属の濡れが阻害され、幅方向、すなわち管の周に沿って溶接金属が広がりにくくなる。この結果、ビードが凸形状となりやすく、余盛高さが高くなりやすくなる。このため、Ni基合金管内面側において、管の長手方向の算術平均粗さRaは、7.0μm以下とするのが好ましい。上記の算術平均粗さRaは、5.0μm以下とするのが好ましく、3.0μm以下とするのがより好ましい。なお、上記の算術平均粗さRaの下限値は、特に定めないが、後述する製造方法を用いた場合、通常、0.1~1.0μm以上となることが多い。
ここで、算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2001において規定されており、接触式の表面粗さ測定装置を用いることで、測定することができる。
3.溶接継手
上記のNi基合金管の管端同士を、所定の条件で突合せ溶接することで、Ni基合金管の溶接継手を得ることができる。Ni基合金管の溶接継手は、溶融金属が凝固し、接合部となった溶接金属と、母材部とを、有する。なお、母材部には、溶接により入熱の影響を受ける溶接熱影響部を含む。溶接熱影響部を除いた母材部は、上記の項目1および2で記載したNi基合金管の化学組成、表面粗さ、その他特性を受け継ぐ。また、溶接部とは、溶接金属と溶接熱影響部とを指す。
4.製造方法
本発明に係るNi基合金管の好ましい製造方法について説明する。本発明に係るNi基合金管は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、安定して製造することができる。
4-1.Ni基合金管
最初に、Ni基合金管の素材となるNi基合金インゴットを製造する。Ni基合金インゴットは、上述した化学組成を有する合金を電気炉等で溶製し、不純物を精錬により取り除いた後、鋳造により製造されるのが好ましい。続いて、得られたインゴットを、熱間鍛造することで、円柱状のビレットとするのが好ましい。その後、得られたビレットを加工することで、管の形状に成形する。
具体的には、ビレットを熱間押出しした後、冷間圧延または、冷間での引抜き加工を行うのが好ましい。加工の際には、必要に応じて、途中で、軟化熱処理、中間酸洗を行ってもよい。その後、熱処理として、合金管に固溶化処理を行うのが好ましい。固溶化処理の後、必要に応じて、酸洗または加工を行ってもよい。
ここで、管の長手方向の算術平均粗さRaを、7.0μm以下とするためには、以下の工程を行うことが好ましい。具体的には、固溶化処理を、950℃~1230℃の温度域で、1~15分加熱し、水冷する条件で、行うのが好ましい。また、管内面にグラインダー処理、研削等の機械加工、およびショットブラストまたはショットピーニング処理等のいずれかを施すのが好ましい。
なお、算術平均粗さRaは製造の過程で変化するが、本発明の効果は、途中の過程における表面粗さは関係なく、最終工程後の管の長手方向の表面粗さにのみ影響される。
4-2.Ni基合金管の溶接継手
本発明に係るNi基合金管を素材とし、合金管の端部を溶接することで、溶接継手を得ることができる。溶接方法は、特に、限定しないが、例えば、アーク溶接により溶接すればよい。また、アーク溶接する場合の条件は、例えば、入熱量を、4~20kJ/cmの範囲とするのが好ましい。また、溶接時には、Arガスをシールドガス、バックシールドガスとして使用するのが好ましい。溶接箇所に流すガスの流量は、適宜、調整するのが好ましい。
また、使用する溶接材料(溶加材)の化学組成についても特に限定しないが、次に示す組成であることが好ましい。すなわち、質量%で、C:0.150%以下、Si:1.00%以下、Mn:3.50%以下、P:0.030%以下、S:0.0001~0.0100%、Fe:38.0%以下、Cu:3.00%以下、Co:15.0%以下、Cr:14.0~26.0%、Mo:17.0%以下、W:4.5%以下、NbおよびTaの少なくとも一種を合計で4.20%以下、Ti:1.50%以下、V:0.35%以下、N:0.0500%以下、Al:1.50%以下、O:0.0004~0.0100%を含み、残部がNiおよび不純物であり、SとOの含有量の関係が、下記の(a)式を満足するのが好ましい。
0.0010≦S+2O≦0.0180 ・・・(a)
但し、上記式中の元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する合金を溶製し、インゴットを製造した。その後、熱間鍛造、および熱間圧延を行い、厚さを10mmに調整した。続いて、酸洗により表面に形成したスケールを除去した。この際、全ての鋼種で、算術平均粗さRaは、約10μmであった。その後、合金管の製造工程を想定し、途中、軟化熱処理、中間酸洗を行いながら、冷間圧延により、3mmの合金板を得た。
続いて、上記合金板に水素炉で、1150℃で、10分保持後、水冷する固溶化処理を行った。その後、合金板に、幅50mm、長さ100mmの板材を切り出した。そして、切り出した板材の一部について、表2に示すように、合金管の内面側を想定し、片面だけにショットピーニングを行った。ショットピーニングを行わなかった板材については、片面を研削、または、粒度が40番または60番の砥石を用いて、1~5回研磨した。表2においては、例えば、研磨(♯40×1回)は、粒度が40番の砥石で、1回研磨したことを示す。
それぞれの板材について、接触式粗さ計を用いて、算術平均粗さを測定した。また、作成した各合金種の板材を2枚用意し、圧延方向の端面に図1に示す開先加工を施した。これらの板材の開先加工を施した端面同士を突合せ、表3に示す化学組成を有する外径1.0mmの溶加材を用い、初層溶接を行い、溶接継手を得た。溶接の際の入熱は、約5kJ/cmとし、シールドガス、バックシールドガスにはArガスを用い、溶接箇所に、流量10L/分で流した。
得られた溶接継手について、溶接線全長にわたり、裏面側ビードが形成されたものは、合金管の内面側ビードの形成能に問題がないと判断し、「合格」とした。中でも、溶接線全長にわたり裏面側ビードの幅が2mm以上となるものを「優」、幅は2mmを下回るが、1mm以上の裏面側ビードが形成されたものを「可」とした。なお、本実施例において、裏面側ビードは、合金管の外側から溶接した際に形成する内面側ビードに相当する。
その後、溶接継手から横断面を3断面現出し、全ての断面において、裏面側ビード高さが、1.0mm以下となるものは、合金管の内面側ビードの形状が良好であると判断し、「合格」とした。中でも、全ての断面における裏面側ビード高さが0.8mm以下となるものを「優」、それ以外を「可」とした。以下、結果を纏めて表4に示す。
合金種A~HおよびL~Nを用いた試験体はいずれも本発明の規定を満たし、裏面側ビードの形成能および形状は良好であった。このうち、合金種Nを用いた試験体N1は、(i)式の規定の範囲を満足したため、裏面側ビードの形成能と高さを共に満足した。
一方、合金種IおよびKを用いた試験体I1およびK1は、いずれもS、OおよびSn含有量が(i)式を満足せず、規定の範囲より高かった。このため、溶融金属の垂れ下がりが著しく、裏面側ビードの高さが目標を満足しなかった。合金種Jを用いた試験体J1は、SとO含有量の関係が(i)式を満足せず、規定の範囲より低かった。そのため、板厚方向の溶融が十分ではなく、目標とする裏面側ビードの形成能が得られなかった。
合金種OおよびPを用いた試験体O1およびP1は、それぞれSn含有量が規定の範囲を超える、もしくはS、OおよびSnの含有量が(i)式に規定する範囲より高い。このため、溶融金属の垂れ下がりが大きく、目標とする裏面側ビード高さを満足しなかった。また、合金種Qを用いた試験体Q1は、S、OおよびSnの含有量が(i)式を満足しなかった。そのため、板厚方向の溶融が十分ではなく、裏面側ビードの形成能が目標を満足しなかった。
本発明によれば、突合せ溶接時に安定して内面側ビードが形成するとともに、その余盛り高さが過剰とならないNi基合金管を得ることができる。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.005~0.080%、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.01~0.50%、
    P:0.015%以下、
    S:0.0001~0.0030%、
    Cr:20.0~23.5%、
    Mo:8.0~10.5%、
    Ti:0.01~0.40%、
    N:0.0010~0.0400%、
    Al:0.01~0.40%、
    O:0.0004~0.0100%と、
    NbおよびTaから選択される一種以上とを含み、
    Sn:0~0.010%、
    残部がNiおよび不純物であり、
    下記(i)および(ii)式を満足するNi基合金継目無管であって、
    前記Ni基合金継目無管内面側において、管の長手方向の算術平均粗さRaが、7.0μm以下である、Ni基合金継目無管
    0.0010≦S+2O+0.2Sn≦0.0180 ・・・(i)
    2.50≦Nb+Ta≦4.60 ・・・(ii)
    但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、前記Niの一部に代えて、質量%で、
    Fe:5.50%以下、を含有する、請求項1に記載のNi基合金継目無管
  3. 前記化学組成が、前記Niの一部に代えて、CuおよびCoから選択される一種以上を
    含み、下記(iii)式を満足する、請求項1または2に記載のNi基合金継目無管
    0.01≦Cu+Co≦1.50 ・・・(iii)
    但し、上記式中の元素記号は、Ni基合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表
    し、含有されない場合はゼロとする。
  4. 前記化学組成が、前記Niの一部に代えて、質量%で、
    W:1.00%以下、
    V:0.40%以下、
    Ca:0.0030%以下、
    Mg:0.0030%以下、
    B:0.0100%以下、および
    REM:0.0100%以下、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1~3のいずれかに記載のNi基合金継目無管
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のNi基合金継目無管を用いた溶接継手。
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