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JP7785287B2 - グリセロールモノメタクリレートの製造方法 - Google Patents
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JP7785287B2 - グリセロールモノメタクリレートの製造方法 - Google Patents

グリセロールモノメタクリレートの製造方法

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Description

本発明は、グリセロールモノメタクリレートの製造方法に関する。さらに詳しくは歯科用材料の原料として好適に使用されるグリセロールモノメタクリレート化合物の製造方法に関する。
歯科治療において、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジ、インプラント上部構造体などの歯科用修復物(或いは歯科用補綴物)の作製においては、口腔内の撮影画像等から、コンピュータ支援設計(CAD:Computer Aided Design)及びコンピュータ支援製造(CAM:Computer Aided Manufacturing)技術によるCAD/CAM装置を用いて、歯科切削加工用ブランクに切削加工を施して歯科用修復物を成形するCAD/CAMシステムが多用されるようになってきている。ここで、歯科切削加工用ブランクとは、CAD/CAMシステムにおける切削加工機に取り付け可能にされた被切削体(ミルブランクとも呼ばれる。)を意味し、直方体や円柱の形状に成形された(ソリッド)ブロック又は板状若しくは盤状に形成された(ソリッド)ディスク等が一般的に知られている。なお、歯科切削加工用ブランクには、前記被切削体を切削加工機に固定するための保持ピンが接合されることも多く、このような形態においては保持ピンと一体化したものを歯科切削加工用ブランクと呼ぶこともある。
歯科切削加工用ブランクの被切削体を構成する歯科切削加工用材料としては、作業性(切削加工性)の高さ、高審美性、強度等の点から、シリカ等の無機充填材が、メタクリレート樹脂などの樹脂マトリックス中に分散した複合材料からなるハイブリッドレジン(HRとも呼ばれる。)が用いられることが多い。
このようなハイブリッドレジン系の歯科切削加工用材料は、主に歯冠部で適用されており、大臼歯冠やブリッジとして使用される場合、より高強度が求められる。このような要求に応え得る歯科切削加工用材料として、「架橋構造を有するポリウレタン樹脂と無機充填材との複合材料」である「ポリウレタン系複合材料」が提案されている。
たとえば、特許文献1には、1つ以上のラジカル重合性基を有するジオール化合物(a1)とジイソシアネート化合物(a2)とを重付加させて得られる、数平均分子量が1500~5000であり、かつ、ラジカル重合性基を有するポリウレタン成分(A)、ラジカル重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含む組成物を用い、前記(A)のラジカル重合性基と前記(B)とをラジカル重合させることにより前記組成物を硬化させて得られる硬化体は、樹脂マトリックス部が高強度なポリウレタン系樹脂からなるばかりでなく架橋構造を有するため上記「ポリウレタン系複合材料」に該当し、強度及び耐水性に優れることが記載されている。
国際公開第2021/153446号パンフレット 特公平04-10465号公報 国際公開第2015/168771号パンフレット
ところで、前記特許文献1では、ラジカル重合性ジオール化合物(a1)としては、ラジカル重合性として(メタ)アクリレート基を有し2つのOH間に介在する2価の有機残基の主鎖を構成する原子数が2~4である化合物を使用することが好ましいとされ、実施例においてはグリセロールモノメタクリレート(glycerol monomethacrylate :以下、「GLM」と略記することもある。)が使用されている。
そこで、本発明者らが、ラジカル重合性ジオール化合物として工業的に入手可能なグリセロールモノメタクリレートを用いて前記複合材料を製造してみたところ、微量ではあるが、人体に対して有害な物質が該複合材料から検出されることが明らかとなった。すなわち、発がん性や変異原性が指摘されているグリシジルメタクリレート(GMA)や生殖毒性や変異原性が指摘されている3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(CHPM)が抽出されることが判明した。また、これら化合物の混入経路を突き止めるため、本発明者らがグリセロールモノメタクリレート(GLM)について分析を行ったところ、GMA及びCHPMが不純物として含まれていることが判明した。GLMの合成方法の1つに、GMAを水和反応でエポキシを開環して合成する方法があり(特許文献2参照)、また、GMAは一般にエピクロロヒドリンとメタクリル酸を用いて合成されることから、上記方法で製造されたGLMに、GMA製造時に副生したCHPM及び未反応のGMAが残留したものと考えられる。
微量であってもGMAやCHPMを含む可能性のある材料を口腔内で使用する歯科用途に用いることには問題がある。そこで、本発明は、このような化合物を含むことのないグリセロールモノメタクリレート(GLM)の製造方法を提供し、延いては、GMAやCHPMを含むことのない前記ポリウレタン系複合材料を製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、グリセリンと、メタクリル酸と、を酸触媒の存在下で反応させて、反応目的物であるグリセロールモノメタクリレート(GLM)、グリセロールジメタクリレートを含む反応副生成物、未反応原料化合物であるグリセリン及びメタクリル酸、並びに酸触媒を含む反応液を得る反応工程;及び前記反応液からグリセロールモノメタクリレートを単離する単離工程;を含んでなるグリセロールモノメタクリレートの製造方法であって、
前記単離工程は、
前記反応液と塩基性水溶液とを混合して前記酸触媒を中和処理すると共に両液の混合水溶液からなる1次処理液を得る酸触媒処理工程;
非水溶性非極性有機溶媒を用いて、前記1次処理液から前記副生成物を前記非水溶性非極性有機溶媒中に選択的に抽出することにより除去して、前記副生成物が除去された水溶液からなる2次処理液を得る副生成物除去工程;
非水溶性極性有機溶媒を用いて、前記2次処理液からグリセロールモノメタクリレートを該非水溶性極性有機溶媒中に選択的に抽出して、グリセロールモノメタクリレート並びに不可避的に同時抽出されるグリセリン、メタクリル酸及び前記酸触媒を含み、且つ、グリセロールモノメタクリレート100質量部に対するグリセリン及びメタクリル酸の含有量が、夫々、メタクリル酸:8質量部以下、グリセリン:7質量部以下である有機溶媒溶液からなる3次処理液を得る目的物抽出工程;
前記3次処理液と炭酸イオンを担持したハイドロタルサイト(以下「CHT」と略記することもある。)とを接触させてから両者を分離することにより、前記3次処理液から前記酸触媒及びメタクリル酸を吸着除去して、これら成分が除去された有機溶媒溶液からなる4次処理液を得る吸着処理工程;並びに
前記4次処理液から溶媒を除去することにより精製グリセロールモノメタクリレートを得る溶媒除去工程;
を含むことを特徴とする前記グリセロールモノメタクリレートの製造方法である。
上記形態のグリセロールモノメタクリレートの製造方法(以下、「本発明のGLM製法」ともいう。)においては、前記反応工程における前記反応を、無溶媒、重合禁止剤の共存下で行うことが好ましい。また、前記溶媒除去工程において、高効率液体クロマトグラフィー分析により得られる検出ピークの総面積に占めるグリセロールモノメタクリレートのピーク面積の割合(面積%)で定義される純度が90(面積%)以上であり、前記酸触媒及びメタクリル酸の含有量が夫々、前記酸触媒:0.015質量部以下及びメタクリル酸:6質量%以下である、精製グリセロールモノメタクリレートを得ることが好ましい。さらに、歯科用ポリウレタン系樹脂原料用のグリセロールモノメタクリレートを製造する方法であることが好ましい。
本発明の第二の形態は、1つ以上のラジカル重合性基を有するジオール化合物(a1)であるグリセロールモノメタクリレートを本発明のGLM製法で製造して精製グリセロールモノメタクリレートを得る工程、
前記工程で得られた精製グリセロールモノメタクリレート;分子内に1つ以上のラジカル重合性基を有し、前記ジオール化合物(a1)およびジイソシアネート化合物の何れとも重付加反応を起こさない重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含む第1原料組成物を調製する第1原料組成物調製工程、
前記第1原料組成物とジイソシアネート化合物(a2)とを混合して前記精製グリセロールモノメタクリレートと該ジイソシアネート化合物(a2)とを重付加反応させることにより、数平均分子量が1500~5000であり、かつ、ラジカル重合性基を有するポリウレタン成分(A)を形成させて、該ポリウレタン成分(A)、前記重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含み、未反応の前記精製グリセロールモノメタクリレート及び/又は未反応の前記ジイソシアネート化合物(a2)を含んでいてもよい第2原料組成物を調製する第2原料組成物調製工程、および
前記第2原料組成物中の前記ポリウレタン成分(A)におけるラジカル重合性基と、前記重合性単量体(B)と、をラジカル重合させて前記第2原料組成物を硬化させてポリウレタン系複合材料を得る硬化工程、
を含むことを特徴とする前記ポリウレタン系複合材料の製造方法である。
上記形態のポリウレタン系複合材料の製造方法(以下、「本発明の複合材製法」ともいう。)は、歯科用ポリウレタン系樹脂原料用のグリセロールモノメタクリレートを製造する本発明のGLM製法で得られたグリセロールモノメタクリレートを使用して歯科用ポリウレタン系複合材料を製造する方法であることが好ましい。
本発明の第三の形態は、上記の好ましい態様の本発明のGLM製法を含む歯科切削加工用材料の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、生殖毒性や変異原性が懸念される、CHPMやGMAを含まないグリセロールモノメタクリレート(GLM)を高純度で且つ効率よく製造することが可能となる。
本図は、本発明のGLM製法のフローを示すフローチャートである。
グリシジルメタクリレート(GMA)を使用しないグリセロールモノメタクリレート(GLM)の合成方法としては、グリセリンとメタクリル酸とのエステル化反応が知られている(たとえば、特許文献3参照)。そこで、本発明者等は上記合成方法によるGLMの製造を行ってみた。その結果、(1)上記エステル化反応においてはグリセリン分子中の1つの水酸基のみを選択的にエステル化することは困難であり、目的とするモノエステル体だけでなく、ジエステル体、トリエステル体、さらにはヒドロキシル基を有する化合物同士の縮合物が副生成物として有意な量で生成すること、(2)これら副生成物はGLMとの親水性(あるいは極性)の違いを利用してトルエン等の非水溶性非極性有機溶媒を用いた抽出によりGLMと比較的容易に分離できるが、水層に残る未反応のグリセリン及びメタクリル酸や酸触媒、特にメタクリル酸及び酸触媒が、GLM中に微量であるが残存してしまうこと、(3)上記メタクリル酸や酸触媒を含むGLMを使用してポリウレタン系複合材料を製造すると着色が生じることが判明した。メタクリル酸及び酸触媒はGLMと親水性が近似しているため微量残存してしまうと思われる。
本発明は、上記の新たな課題を解決するものであり、前記水層について酢酸エチル等の非水溶性極性有機溶媒を用いて溶媒抽出を行って、目的物であるグリセロールモノメタクリレート(GLM)を有機層に選択的に抽出して、有機層中で共存するメタクリル酸の量を少なくするとともに共存するグリセリンの量を、目的物であるグリセロールモノメタクリレートに対して一定値以下にしてからCHTによる目的物の陰イオン吸着処理により、酸触媒及びメタクリル酸を除去する点に大きな特徴を有する。すなわち、吸着除去対象物となるメタクリル酸の量を減らしてCHTの使用量を低減し、更にグリセリンの吸着阻害効果を防止して吸着除去効率を向上させることが可能となる。なお、グリセリンが、CHTに対する酸触媒及びメタクリル酸の陰イオン吸着を阻害することは知られておらず、その機構も明らかではないが、恐らく、グリセリンがCHTを膨潤させて被吸着成分の脱離がし易くなることが原因であると考えられる。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書においては特に断らない限り、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。
1.本発明のGLM製法
本発明のGLM製法は、酸触媒を用いて特定の原料を反応させて、反応目的物、反応副生成物、未反応原料、及び酸触媒を含む反応液を得る反応工程と、前記反応液からグリセロールモノメタクリレートを単離するための特定の単離工程を含む。以下、これら工程について説明する。
(1)反応工程
反応工程では、グリセリンと、メタクリル酸と、を酸触媒の存在下でエステル化反応を行って、反応目的物であるグリセロールモノメタクリレート(GLM)、グリセロールジメタクリレートを含む反応副生成物、未反応原料化合物であるグリセリン及びメタクリル酸、並びに酸触媒を含む反応液を得る。
反応原料として用いるグリセリン及びメタクリル酸としては、何れについても、たとえば純度90質量%以上の高純度のものを使用することが好ましい。
酸触媒としてはエステル化反応、具体的にはグリセリンとメタクリル酸との脱水縮合反応を触媒する酸であれば特に限定されず、例えば硫酸、硝酸、p-トルエンスルホン酸などが好適に使用できる。
上記エステル化反応は、常法に準じ、グリセリン、メタクリル酸及び酸触媒を含む混合物を加熱することにより行うことができる。このとき、グリセリンとメタクリル酸の量比は、メタクリル酸基準の転化率(反応率)とジエステル体、トリエステル体、さらにはヒドロキシル基を有する化合物同士の縮合物などの副生成物の生成を抑制するという観点から、メタクリル酸1モルに対してグリセリンを1.1~10モル、特に1.5~5.0モルの範囲とすることが好ましい。また、酸触媒の量は、通常、メタクリル酸1.0モルに対し0.001モル~0.2モルであり、好ましくは、0.005~0.1モルである。反応は、無溶媒下で行うことが好ましく、50~100℃の反応温度で1.0~6.0時間程度反応させればよい。前記反応は、グリセリンとメタクリル酸を溶解することができる溶媒を添加し反応を行うこともできるが、無溶媒でも反応は進行する。ただし、溶媒を添加すると、反応系内に溶媒を含むことになるため、後述する1次処理液、2次処理液、の体積が増加することにより、使用する非水溶性非極性有機溶媒、非水溶性極性有機溶媒の使用量が増加する。そのため、単離工程で使用する有機溶媒使用量の観点から、無溶媒で行うことが好ましい。
また、使用する原料及び得られる目的物がメタクリル基を含むため、反応中の重合を防ぐ目的で重合禁止剤を追加して前記反応をおこなうことが好ましい。重合禁止剤としては、通常、ジブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等が用いられる。これらの重合禁止剤は、通常メタクリル酸100質量部に対して、0.001~1.0質量部、好ましくは、0.01~0.5質量部加えられる。
このようにして反応を行った場合のメタクリル酸基準の転化率(反応率)は通常、60~80%程度であり、反応目的物、反応副生成物、未反応原料化合物であるグリセリン及びメタクリル酸、並びに酸触媒を含む反応液が得られる。本発明者らが反応条件の検討を行った結果、メタクリル酸基準の転化率(反応率)が80%を超えてなお反応を進行させると目的物質であるGLMと他のヒドロキシル基を有する化合物同士の縮合物が生じることが判明した。そのため、縮合物の生成を抑制するという観点から、メタクリル酸基準の転化率(反応率)は、60~80%とすることが好ましい。なお、縮合物の生成を抑制した際にも反応副生成物は生じる。主たる成分はグリセロールジメタクリレートであり、その量は通常、GLM100質量部に対し0.1質量部~20質量部程度である。また、グリセロールトリメタクリレートが含まれることもあり、その量は、通常、GLM100質量部に対し0.01質量部~2質量部程度である。
たとえば、グリセリン2モルに対してメタクリル酸1モルを反応させてメタクリル酸基準の転化率(反応率)が約70%となるように反応を行った場合の反応液(以下、「標準反応液」ともいう。)は、GLM:100質量部に対して、グリセリン:100質量部程度、メタクリル酸:20質量部程度、グリセロールジメタクリレート等の副生物:2質量部程度を含むものとなる。
(2)各成分の分析方法
前記反応液及び後述する各処理液中の各成分の量は以下に示す分析方法により確認することができる。
すなわち、グリセリンは、例えば次のような条件でガスクロマトグラフィー(GC)測定を行い、検量線を用いて定量することができる。
[GC測定条件]
検出器:水素炎イオン化検出器 (FID)
カラム:Agilent J&W DB-5(アジレント・テクノロジー社製)
カラム温度:40~250℃。
また、メタクリル酸、グリセロールモノメタクリレート(GLM)及び副生成物は、例えば次のような条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定に基づき定量することができる。
[HPLC測定条件]
検出器:フォトダイオードアレイ検出器210nm (PDA検出器)
カラム:Inertsil ODS―2(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:40℃
展開溶媒:アセトニトリル/1wt%リン酸水溶液=50/50
流速:1ml/min.
さらに、酸触媒はp-トルエンスルホン酸のようなHPLC測定で測定できるものはHPLCで測定を行い、硫酸、硝酸などHPLC測定で測定することができず、イオンクロマトグラフで測定できるものは、例えば次のような条件でイオンクロマトグラフ測定に基づき定量することができる。
[イオンクロマトグラフ測定条件]
検出器:電気伝導度検出器
分離カラム:Dionex IonPac AS18-fast(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
溶離液:KOH水溶液
溶離液流量:1.0mL/min。
(3)単離工程
単離工程では、前記反応液からグリセロールモノメタクリレートを単離する。本発明のGLM製法は、単離工程として酸触媒処理工程;副生成物除去工程;目的物抽出工程;吸着処理工程;及び溶媒除去工程;の5つの工程を含む点が大きな特徴となっている。以下各工程について説明する。
(3―1)酸触媒処理工程
酸触媒処理工程では、前記反応液と塩基性水溶液を混合して、酸性物質である、前記酸触媒及びメタクリル酸を中和処理して塩として失活させるとともに両液の混合水溶液からなる1次処理液を得る。得られる1次処理液は、pH6~9になるように塩基性水溶液を添加することが好ましい。pHが9を超える塩基性水溶液を添加した際は1次処理液に含まれるGLMが加水分解してしまうため、9以下であることが好ましい。また、pHを6以上にすることで反応液に含まれるメタクリル酸、酸触媒の十分な量を中和することができる。メタクリル酸、酸触媒の中和及びGLMの分解を防ぐという観点から、pHは7~8がより好ましい。pHは一般的に使用されるpH試験紙を使用し測定すればよい。この時、酸触媒及びメタクリル酸は全てが中和され塩になることは無く、残存酸触媒及びメタクリル酸が1次処理液には含まれることとなる。塩基性水溶液は後述する量、濃度、体積を適宜添加すればよい。後述する目的物抽出工程で、メタクリル酸が多く確認された場合は追加洗浄をしてメタクリル酸を範囲内にすればよく、酸触媒に関しても、追加でCHTを添加すれば除去することが可能であるためである。
塩基性水溶液としては、塩基性化合物を用いた水溶液が特に制限なく使用できる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが好適に用いられる。塩基性水溶液の濃度は、中和処理による副生成物の生成を避けるという観点から0.1~30質量%、特に1.0~10質量%とすることが好ましい。使用する塩基性水溶液の量は、作業性、及び、目的物抽出工程におけるグリセリン、メタクリル酸の残存率の観点から、反応液の体積(容積)の1.0~5.0倍、特に2.5~3.5倍程度使用することが好ましい。反応液と塩基性水溶液の混合は、通常、室温下で、0.1~1.0時間程度、撹拌すればよい。なお、1次処理液は、反応液と塩基性水溶液を混合して得られる水溶液であるので、反応液に含まれる成分は、酸触媒及びメタクリル酸が中和処理されて塩等に変化する以外は、そのまま1次処理液に含まれることになる。そのため1次処理液にはメタクリル酸のみではなく、メタクリル酸塩も1次処理液には含まれるが、前記(2)各成分の分析方法でメタクリル酸は展開溶媒にリン酸を含む条件で測定を行っているため、HPLC測定ではメタクリル酸塩もメタクリル酸として換算している。そのため、1次処理液と、後述する2次処理液にはメタクリル酸及びメタクリル酸塩も含まれているものとなる。したがって、標準反応液を用いた場合に得られる1次処理液(以下、「標準1次処理液」ともいう。)のGLMに対する各成分の量も変わることは無い。
(3-2)副生成物除去工程
副生成物除去工程では、前記1次処理液と非水溶性非極性有機溶媒を混合して、1次処理液から副生成物を非水溶性非極性有機溶媒中に選択的に抽出することにより除去して、副生成物が除去された水溶液からなる2次処理液を得る。
非水溶性非極性有機溶媒としては、比誘電率(測定温度)が1.8(25℃)~2.4(25℃)であり、水層と分離する有機溶媒であれば特に制限されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系炭化水素類、n-へキサンやヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等の有機溶媒が使用できる。前記副生成物である、グリセロールジメタクリレート、グリセロールトリメタクリレートに対する溶解性が高く、且つ目的物であるグリセロールモノメタクリレートに対する溶解性が低く、また、水層(該水層は塩化ナトリウムを添加し、飽和食塩水溶液にしたものであってもよい)との分離性が良いという理由から、芳香族系炭化水素類を使用することが好適である。
抽出操作は、1次処理液と非水溶性非極性有機溶媒とを室温下で、0.01~1.0時間程度、撹拌してから分離し、水層を回収することにより好適に行うことができる。このとき使用する非水溶性非極性有機溶媒の1回で使用する量はGLMの残存率を高め、効率よく副生成物を除去するために1次処理液の体積(容量)の10倍以下であることが好ましい。これは、目的物であるGLMと副生成物であるグリセロールジメタクリレートの溶解性が似ており、使用する非水溶性非極性有機溶媒の量が1次処理液の体積(容量)の10倍を超えて使用するとグリセロールジメタクリレートのみならず、GLMも同時に除去されてしまうためである。そのため1次処理液の体積(容量)の0.1~10倍、特に0.1~5.0倍程度使用することが好ましい。また、抽出回数は、1回でも良いが副生成物の除去率を高めるために1回目の抽出操作で分離された水層にさらに非水溶性非極性有機溶媒を加えて抽出を行う操作を繰り返すことが好ましい。このような抽出操作を繰り返すことにより副生成物の除去率は向上するが、GLMの回収率は徐々に低下するので、抽出回数は、15回以下、特に10回以下とすることが好ましい。
例えば、前記標準1次処理液を用いて、1次処理液の体積(容量)の0.3倍の非水溶性非極性有機溶媒で5回程度抽出を行った場合、GLMの残存率(2次処理液に含まれる量の1次処理液に含まれる量に対する割合)は約90%程度であり、得られる2次処理液(以下、「標準2次処理液」ともいう。)に含まれる各成分の量比は、GLM100質量部に対して、グリセリン:100質量部、メタクリル酸:20質量部程度、グリセロールジメタクリレート等の副生物:0.1質量部、程度となる。
(3-3)目的物抽出工程
目的物抽出工程では、前記2次処理液と非水溶性極性有機溶媒を用いて、前記2次処理液からグリセロールモノメタクリレートを該非水溶性極性有機溶媒中に選択的に抽出して、グリセロールモノメタクリレート並びに不可避的に同時抽出されるグリセリン、メタクリル酸及び前記酸触媒を含み、且つ、グリセロールモノメタクリレート100質量部に対するグリセリン及びメタクリル酸の含量が、夫々、メタクリル酸:8質量部以下、グリセリン:7質量部以下である有機溶媒溶液からなる3次処理液を得る。
3次処理液中における、メタクリル酸及びグリセリンの量は、グリセロールモノメタクリレート(GLM)100質量部に対して、メタクリル酸:8質量部以下、グリセリン:7質量部以下とする必要がある。これら上限値よりも多い量を含む場合には、CHTの吸着効果が阻害されてしまう。グリセリンの量が7質量部以下であれば、吸着阻害の影響は無視できるほどになるが、グリセロールモノメタクリレートの純度向上の観点から3次処理液中に含まれる、上記基準のグリセリンの量は、4質量部以下、特に3質量部以下とすることが好ましい。一方、メタクリル酸は後段の吸着処理工程でも除去されるものであるが、CHTの使用量を抑えるという観点から、メタクリル酸の量は、上記基準で5質量部以下、特に4質量部以下とすることが好ましい。なお、これら成分の含有量の下限値は低ければ低いほど良いが、通常、グリセリン量は上記基準で4質量部程度であり、メタクリル酸は、5質量部程度である。また、得られた3次処理液に含まれる酸触媒は、グリセロールモノメタクリレート100質量部に対して、0.4質量部以下であることが好ましい。
前記3次処理液を得る目的物抽出工程で用いる非水溶性極性有機溶媒としては、比誘電率(測定温度)が3.8(25℃)~9.5(25℃)であり、水層と分離する有機溶媒であれば特に制限されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等の有機溶媒が使用できる。目的物であるグリセロールモノメタクリレートに対する溶解性が高く且つグリセリン及びメタクリル酸に対する溶解性が低く、水層(飽和食塩水溶液)との分離性が良いという理由から、エステル類を使用することが好適である。
抽出操作は、2次処理液と非水溶性極性有機溶媒とを、室温下で、0.01~1.0時間程度撹拌してから分離させ、有機層を回収することにより行うことができる。このとき、使用する非水溶性極性有機溶媒の1回の抽出で使用する量は特に制限はされないが、作業性及び、目的物抽出工程におけるグリセリン、メタクリル酸の残存率の観点から、2次処理液の体積(容量)の0.1~5.0倍、特に0.5倍~2.5倍使用することが好ましい。また、GLMの回収率を高くするために、抽出で分離された水層に再び新たな非水溶性極性有機溶媒を加えて抽出操作を行い、分離回収した有機層を抽出操作で分離回収した有機層を合わせるという操作を繰り返してもよい。ただし、複数回の抽出を行った場合、グリセリン及びメタクリル酸の抽出量が増加するため、抽出回数は、通常5回以下でよいが、3回以下、特に1回とすることが好ましい。
グリセリンはGLMよりも水に対する親和性が高いため、非水溶性極性有機溶媒を用いた抽出により抽出液中のこれらの量を減らすことができる。また、酸触媒及びメタクリル酸を中和し生成した酸触媒塩およびメタクリル酸塩も水溶性が高いものである場合には、大部分が水層に残り、除去されることになる。通常、上記のような条件で抽出を行うことにより、グリセリン及びメタクリル酸の含有量を目的とする範囲とすることができる。例えば、前記標準2次処理液を用いて3回程度抽出を行った場合、GLMの残存率(3次処理液に含まれる量の1次処理液に含まれる量に対する割合)は約80%程度であり、得られる3次処理液(以下、「標準3次処理液」ともいう。)に含まれる各成分の量比は、GLM100質量部に対してグリセリン:5質量部、メタクリル酸:6質量部程度、グリセロールジメタクリレート等の副生物:0.1質量部、程度となる。
しかし、反応原料の仕込み比によっては有機層に許容上限値を超える量のグリセリン及びメタクリル酸が含まれることもあるため、分析を行い、これらの量を確認してから次工程に進むことが好ましい。なお、分析の結果、グリセリン及びメタクリル酸の含有量を目的とする範囲となっていない場合には、回収された有機溶液に塩基性水溶液を加えてメタクリル酸を中和し、メタクリル酸塩としてグリセリンと共に水層に抽出し、有機層を分離回収して、これを3次処理液とすればよい。
(3-4)吸着処理工程
吸着処理工程では、前記3次処理液とCHTとを接触させてから両者を分離することにより、前記3次処理液から前記酸触媒及びメタクリル酸を吸着除去して、これら成分が除去された有機溶媒溶液からなる4次処理液を得る。
CHTとは、炭酸イオンを担持したハイドロタルサイトを意味し、Mg/Al系炭酸型層状複水酸化物で層間に陰イオン吸着することができるハイドロタルサイトを好適に使用できる。
使用するCHTの量は特に制限はないが、吸着効率や過剰使用防止の観点から、3次処理液に含まれるメタクリル酸、酸触媒の量を確認した後に、それぞれ量を基準として量を決めればよく、メタクリル酸:1.0質量部に対して1~50質量部及び酸触媒:1.0質量部に対して10~100質量部を合わせた質量部が好ましく、メタクリル酸:1.0質量部に対して1~20質量部及び酸触媒:1.0質量部に対して10~50質量部を合わせた質量部とすることがより好ましい。
3次処理液とCHTの吸着処理方法は特に限定されることなく、3次処理液にCHTを添加し、撹拌することにより、吸着処理は行うことができる。
容器にCHTを充填し、3次処理液をそこに流して吸着処理を行う際に使用するCHTの使用量はその限りではなく、3次処理液に含まれるメタクリル酸、酸触媒に対し過剰量充填し使用することが可能である。ただし、除去できるメタクリル酸、酸吸着剤の量には限りがあるため、3次処理液中に含まれるメタクリル酸、酸触媒の量を確認し、それぞれの質量部に対しCHTの除去可能の質量部に達した際は、あらためてCHTを充填し使用することが好ましい。CHTの分離方法も特に限定されず、ろ過などの公知の方法で分離を行うことができる。なお、吸着処理に際しては、脱水のために硫酸マグネシウム等の非水溶性極性有機溶媒に不溶な脱水剤を添加し、CHTと共に分離除去することが好ましい。
このような条件で吸着処理を行うことにより、酸触媒及びメタクリル酸を除去することができ、得られる4次処理液に含まれるメタクリル酸及び酸触媒の量をGLM100質量部に対して、夫々メタクリル酸:5質量部以下及び酸触媒:0.010質量部以下、より好ましくはメタクリル酸:4質量部以下及び酸触媒:0.012質量部以下とすることができる。例えば、前記標準3次処理液を用いて1回撹拌を行った場合、GLMの残存率(4次処理液に含まれる量の1次処理液に含まれる量に対する割合)は約80%程度であり、得られる4次処理液(以下、「標準4次処理液」ともいう。)に含まれる各成分の量比は、GLM100質量部に対してグリセリン:4質量部、メタクリル酸:4質量部程度、グリセロールジメタクリレート等の副生物:0.1質量部、酸触媒0.010質量部、程度となる。
しかし、前記標準3次処理液中の酸触媒の残存量によっては、GLM100質量部に対する酸触媒の量が0.015質量部以下とならないこともあるため、分析により酸触媒の量を確認してから溶媒除去工程を行うことが好ましい。分析により、GLM100質量部に対する酸触媒の量が0.015質量部以下で無い場合は、追加でCHTを添加し再度吸着処理工程を行うことにより、酸触媒を除去することが出来る。
メタクリル酸及び酸触媒が上記範囲以上含まれるGLMを特許文献1に記載された方法の原料:ジオール化合物(a1)として使用し歯科切削加工用材料を製造した場合には、着色の問題が発生する。詳細な機構は不明だが、おそらく酸性物質であるメタクリル酸及び酸触媒が、ポリウレタン成分を得る際の重付加反応に影響を与えることによって着色が生じているのではないかと推測している。
(3-5)溶媒除去工程
溶媒除去工程では、上記吸着処理工程で得られた4次処理液から溶媒を留去する。溶媒留去は、重合を防ぐため、20~100℃の範囲で行うことが好ましい。圧力は、温度によるが、0.1kPaから50kPaで行うことができる。また、溶媒留去の際には、事前に重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の添加量は、反応工程で使用したメタクリル酸100質量部に対して、0.001質量部から1.0質量部が好ましく、0.01質量部から0.5質量部がより好ましい。
このようにして、HPLCにより分析したときに得られる検出ピークの総面積に占めるグリセロールモノメタクリレートに由来するピーク面積の割合(面積%)で表される純度が90(面積%)以上、前記酸触媒及びメタクリル酸の含有量が夫々、前記酸触媒:0.015質量部以下及びメタクリル酸:6質量部以下である精製GLMを得ることができる。
そして、該GLMは、CHPMとGMAを含まないため、特許文献1に示される方法におけるジオール化合物(a1)として好適に使用することができる。
2.本発明の複合材製法
前記したように、本発明のGLM製法により得られた精製GLMは、特許文献1に示されるポリウレタン系複合材料の製造方法におけるジオール化合物(a1)として好適に使用することができる。そこで、上記ポリウレタン系複合材料の製造方法において前記精製GLMを用いた、本発明の複合材製法について説明する。
本発明の複合材製法は、下記第1原料組成物調製工程、第2原料組成物調製工程、及び硬化工程を含む。
1つ以上のラジカル重合性基を有するジオール化合物(a1)であるグリセロールモノメタクリレートを本発明のGLM製法で精製グリセロールモノメタクリレートを得る工程、
第1原料組成物調製工程:前記工程で得られた精製グリセロールモノメタクリレート;分子内に1つ以上のラジカル重合性基を有し、前記ジオール化合物(a1)およびジイソシアネート化合物の何れとも重付加反応を起こさない重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含む第1原料組成物を調製する工程
第2原料組成物調製工程: 前記第1原料組成物とジイソシアネート化合物(a2)とを混合して前記精製グリセロールモノメタクリレートと該ジイソシアネート化合物(a2)とを重付加反応させることにより、数平均分子量が1500~5000であり、かつ、ラジカル重合性基を有するポリウレタン成分(A)を形成させて、該ポリウレタン成分(A)、前記重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含み、未反応の前記精製グリセロールモノメタクリレート及び/又は未反応の前記ジイソシアネート化合物(a2)を含んでいてもよい第2原料組成物を調製する第2原料組成物調製工程、
硬化工程: 前記第2原料組成物中の前記ポリウレタン成分(A)におけるラジカル重合性基と、前記重合性単量体(B)と、をラジカル重合させて前記第2原料組成物を硬化させてポリウレタン系複合材料を得る工程。
そして、前記ジオール化合物(a1)として、本発明のGLM製法により得られた精製GLMを使用することを特徴とし、そのことにより、得られるポリウレタン系複合材料は、有害性が懸念されるCHPMとGMAを含まないものとなる、という効果を奏するものである。
本発明の複合材製法は、上記特徴点以外は特許文献1に示されるポリウレタン系複合材料の製造方法と特に変わる点はなく、重合性単量体(B)、ジイソシアネート化合物(a2)、ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)としては、特許文献1で使用できるとされているものが特に制限なく使用できる。例えば、重合性単量体(B)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が、ジイソシアネート化合物(a2)としては、m-キシリレンジイソシアナートが、ラジカル重合開始剤(C)としては、t-ブチルパーオキシラウレートが、充填材(D)としてはシリカ-ジルコニアが、好適に使用できる。
また、第1原料組成物調製工程、第2原料組成物調製工程及び硬化工程の各条件や手順等も特許文献1に開示されている条件や手順がそのまま採用でき、例えば、配合比に関しては、ラジカル重合性ジオール化合物(a1):GLMに対するジイソシアネート化合物(a2)のモル比:a2/a1モル比を1.0とし、(a1)、(a2)及び(B)の合計質量に対する(B)の質量の割合が20~80質量%程度とし、(a1)、(a2)、(B)、(C)及び(D)に占める(D)の割合を60~85質量%程度とするのが好適である。
そして、本発明の複合材製法で製造されるポリウレタン系複合材料は、歯科切削加工用材料用の歯科用ポリウレタン系複合材料として好適に使用することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
1.GLMの製造
実施例1
(1)反応工程: 冷却管、温度計、撹拌機を備えたナスフラスコに、グリセリン22.1g(0.24モル)、メタクリル酸10.3g(0.12モル)、酸触媒としてのp-トルエンスルホン酸一水和物0.47g(0.0048モル)、重合禁止剤としてのジブチルヒドロキシトルエン0.13g(0.00048モル)を仕込み、オイルバスで加熱し撹拌しながら90℃に昇温した。その後3時間反応を行った。反応終了後ナスフラスコをオイルバスから外し室温に冷却して反応液を得た。
(2)酸触媒処理工程: 上記反応液に塩基性水溶液である5質量%炭酸カリウム水溶液60mlを添加し、室温で10分間撹拌することで中和を行い、1次処理液を得た。1次処理液についての分析結果から、前記反応におけるメタクリル酸ベースの転化率は70%であることが確認された。また1次処理液(及び前記反応液)中には目的物であるグリセロールモノメタクリレート(GLM)の他に、GLM:100質量部に対して、100質量部のグリセリン、20質量部のメタリル酸及び2質量部の副生成物(具体的には、グリセロールジメタクリレート:1.5質量部及びグリセロールトリメタクリレート:0.5質量部)を含むことが確認された。なお、分析は、「1.本発明のGLM製法」の「(2)各成分の分析方法」の項で説明した分析方法及び条件を採用して行った。
(3)副生成物除去工程: 得られた1次処理液に、非水溶性非極性有機溶媒であるトルエンを30ml加え、撹拌した。その後、トルエンを捨て、水層を回収した。この操作を合計5回行い、2次処理液を得た。得られた2次処理液を分析したところ、GLMの他に、GLM:100質量部に対して、100質量部のグリセリン、20質量部のメタリル酸及び0.1質量部の副生成物を含むことが確認された。
(4)目的物抽出工程: 回収した2次処理液に非水溶性極性有機溶媒である酢酸エチル120ml加え撹拌した。その後、酢酸エチルを回収した。残った水層に再び酢酸エチルを120ml加え撹拌し、同様の操作を合計3回行い、3次処理液を得た。得られた3次処理液について分析を行ったところ、GLM100質量部に対して夫々、メタクリル酸:5質量部、グリセリン:4質量部及び副生成物:0.1質量部を含むことが確認された。
(5)吸着処理工程: 得られた3次処理液に重合禁止剤であるジブチルヒドロキシトルエンを0.01g添加してからCHTを3.5g添加し、室温で30分間撹拌を行った。その後、脱水剤としての硫酸マグネシウムを7.0g加え、室温で10分間撹拌した後に、CHTと硫酸マグネシウムをろ過することで、得られた4次処理液を得た。得られた4次処理液について分析を行ったところ、GLM100質量部に対して夫々、メタクリル酸:4質量部、グリセリン:4質量部、副生成物:0.1質量部及酸触媒:0.010質量部を含むことが確認された。なお、CHTとしては、キョーワード500(協和化学工業株式会社製:MgO含有量37.8質量%、Al含有量15.8質量%、化学組成:MgAl(OH)16CO)を使用した。
(6)溶媒除去工程: 得られた4次処理液を40℃、6kPaの減圧度で酢酸エチルを留去し、精製グリセロールモノメタクリレートを得た。HPLCでの分析の結果、精製グリセロールモノメタクリレートの純度は93%であり、得られた精製グリセロールモノメタクリレート100質量部に対して、メタクリル酸の含有量は4質量部、酸触媒の含有量は0.010質量部であった。これら分析結果を表1にまとめる。
実施例2
実施例1の(2)酸触媒処理工程において、塩基性水溶液を5wt%炭酸カリウム水溶液30mlに変更したこと以外は実施例1と同様に行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、4次処理液中のメタクリル酸、酸触媒、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
実施例3
実施例1の(4)目的物抽出工程において、酢酸エチルの添加、撹拌を1回のみしか行わなかったこと以外は実施例1と同様に行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、4次処理液中のメタクリル酸、酸触媒、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
実施例4
実施例1の(2)酸触媒処理工程において、塩基性水溶液を4wt%炭酸カリウム水溶液90mlに変更したこと以外は実施例1と同様に行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、4次処理液中のメタクリル酸、酸触媒、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
比較例1
実施例1の(1)反応工程と同様にして反応液を得、(2)酸触媒処理工程及び(3)副生成物除去工程を省略して反応液に酢酸エチル60mlを添加して希釈した後に、得られた希釈溶液にCHTを3.5g添加し、室温で10分間撹拌を行った。撹拌後、希釈溶液を確認するとCHTが膨潤しており、分離することが出来なかった。
比較例2
実施例1と同様にして(1)反応工程及び(2)酸触媒処理工程を行い、1次処理液を得た。その後、(2)酸触媒処理工程及び(3)副生成物除去工程を省略して1次処理液にジブチルヒドロキシトルエンを0.01g添加してからさらにCHTを3.5g添加し、室温で10分間撹拌を行った。撹拌後、中和処理水溶液を確認すると、CHTが膨潤しており、CHTを分離することが出来なかった。
比較例3
実施例1と同様にして(1)反応工程、(2)酸触媒処理工程、(3)副生成物除去工程及び(4)目的物抽出工程を行い、3次処理液を得た。その後、(5)吸着処理工程を省略し、(6)溶媒除去工程と同様に溶媒除去を行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
比較例4
実施例2と同様にして(1)反応工程、(2)酸触媒処理工程、(3)副生成物除去工程及び(4)目的物抽出工程を行い、3次処理液を得た。その後、(5)吸着処理工程を省略し、(6)溶媒除去工程と同様に溶媒除去を行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
比較例5
実施例3と同様にして(1)反応工程、(2)酸触媒処理工程、(3)副生成物除去工程及び(4)目的物抽出工程を行い、3次処理液を得た。その後、(5)吸着処理工程を省略し、(6)溶媒除去工程と同様に溶媒除去を行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
比較例6
実施例4と同様にして(1)反応工程、(2)酸触媒処理工程、(3)副生成物除去工程及び(4)目的物抽出工程を行い、3次処理液を得た。その後、(5)吸着処理工程を省略し、(6)溶媒除去工程と同様に溶媒除去を行った。3次処理液中のメタクリル酸、グリセリン、及び、精製グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
比較例7
温度計、撹拌器、還流管および滴下ロートを備え付けた500ml四つ口フラスコに水270g(15モル)、硫酸0.1g(0.001モル)およびヒドロキノン0.014gをとり、グリシジルメタクリレート142.2g(1モル)を滴下しながら70~80℃で5時間反応を行い、さらに1時間反応を続けた。次に30℃に温度を下げて水を加えた後にCHTを1.4g添加し、30分間撹拌を行った。その後CHTをろ過して取り除き、ヒドロキノン0.014gを添加した後、40℃,0.4KPaの減圧度で脱水した。得られた反応生成物は153.8gであった。グリセロールモノメタクリレートの純度、その含有するメタクリル酸、酸触媒の量は表1に示した。
2.GLMを用いたポリウレタン系複合材料の製造と評価
実施例5~8及び比較例8~12
夫々、実施例1~4及び比較例3~7で得られた精製GLMをジオール化合物(a1)として用いて以下に示すようにして、第1原料組成物調製工程、第2原料組成物調製工程、及び硬化工程を行い、ポリウレタン系複合材料を製造した。
まず、使用した各種材料と使用量以下に示す。
ジオール化合物(a1):GLM 10.63質量部
ジイソシアネート化合物(a2):m-キシリレンジイソシアネート:12.50質量部
重合性単量体(B):エチレングリコールジメタクリレート:5.79質量部
ラジカル重合開始剤(C):tert-ブチルパーオキシラウレート:0.08質量部
充填材(D):シリカ-ジルコニア(平均粒径:0.4μm、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル表面処理物):49.70質量部 及び シリカ-チタニア(平均粒径:0.08μm、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル表面処理物):21.30質量部。
次に製造方法を以下に示す。すなわち、先ず、上記(a1)、(B)、(C)及び(D)をそれぞれ前記した量比で混合して第1原料組成物を調製した。次に第1原料組成物に上記量の上記(a2)を加えて混練した後に、37℃で168時間インキュベーター内に静置して重付加反応を行い、第2原料組成物を得た。その後、得られた第2原料組成物を型枠(縦12mm×横18mm×厚さ14mm)内に注入し、120℃で15時間、窒素加圧下(0.35MPa)にてラジカル重合することにより、ポリウレタン系複合材料を得た。
なお、途中、一部サンプリングした第2原料組成物にTHFを加えて遠心分離した上澄み液を濾過してからGPC測定することにより求めたポリウレタン成分(A)のポリスチレン換算の数平均分子量を求めたところ、何れの例においても数平均分子量は3500であった。
このようにして得られたポリウレタン系複合材料について、次のようにして抽出液及び着色を評価した。結果を表2に示す。なお、表中の「↑」は「同上」を意味する。
[抽出液評価]
得られたポリウレタン系複合材料2.0gを粉砕し、アセトン50ml加え室温で攪拌を行った。その後抽出液をろ過し、ポリウレタン系複合材料を除去した後に、得られた抽出液を2.0mlまで濃縮した。得られた抽出液を下記に示す測定条件でGCMSにより測定を行い、GMA,CHPMの残存の確認を行った。
[GCMS測定条件]
測定装置:Agilent J&WGCMS(アジレントテクノロジー社製)
・カラム:DB―WAX
・インジェクション温度:260℃
・カラム温度:40℃から250℃まで10℃/minで昇温
・検出方法:SIMモード 指定分子量 GMA(69) CHPM(69)。
[着色評価]
得られたポリウレタン系複合材料の外観およびポリウレタン系複合材料を略2等分して得た切断面を目視で観察することにより、ポリウレタン系複合材料の着色を評価した。ここで、ポリウレタン系複合材料が着色を有するか否かは、ポリウレタン系複合材料の表面および切断面において、比較例12で得られたポリウレタン系複合材料と比較し、色の変化により判断し、色の変化が確認されない場合は〇とし、色の変化が確認された場合は×とした。

Claims (7)

  1. グリセリンと、メタクリル酸と、を酸触媒の存在下で反応させて、反応目的物であるグリセロールモノメタクリレート、グリセロールジメタクリレートを含む反応副生成物、未反応原料化合物であるグリセリン及びメタクリル酸、並びに酸触媒を含む反応液を得る反応工程;及び
    前記反応液からグリセロールモノメタクリレートを単離する単離工程;
    を含んでなるグリセロールモノメタクリレートの製造方法であって、
    前記単離工程は、
    前記反応液と塩基性水溶液とを混合して前記酸触媒を中和処理すると共に両液の混合水溶液からなる1次処理液を得る酸触媒処理工程;
    非水溶性非極性有機溶媒を用いて、前記1次処理液から前記副生成物を前記非水溶性非極性有機溶媒中に選択的に抽出することにより除去して、前記副生成物が除去された水溶液からなる2次処理液を得る副生成物除去工程;
    非水溶性極性有機溶媒を用いて、前記2次処理液からグリセロールモノメタクリレートを該非水溶性極性有機溶媒中に選択的に抽出して、グリセロールモノメタクリレート並びに不可避的に同時抽出されるグリセリン、メタクリル酸及び前記酸触媒を含み、且つ、グリセロールモノメタクリレート100質量部に対するグリセリン及びメタクリル酸の含有量が、夫々、メタクリル酸:8質量部以下、グリセリン:7質量部以下である有機溶媒溶液からなる3次処理液を得る目的物抽出工程;
    前記3次処理液と炭酸イオンを担持したハイドロタルサイトとを接触させてから両者を分離することにより、前記3次処理液から前記酸触媒及びメタクリル酸を吸着除去して、これら成分が除去された有機溶媒溶液からなる4次処理液を得る吸着処理工程;並びに
    前記4次処理液から溶媒を除去することにより精製グリセロールモノメタクリレートを得る溶媒除去工程;
    を含むことを特徴とする前記グリセロールモノメタクリレートの製造方法。
  2. 前記反応工程における前記反応を、無溶媒、重合禁止剤の共存下で行う、請求項1に記載のグリセロールモノメタクリレートの製造方法。
  3. 前記溶媒除去工程において、高効率液体クロマトグラフィー分析により得られる検出ピークの総面積に占めるグリセロールモノメタクリレートのピーク面積の割合(面積%)で定義される純度が90(面積%)以上であり、前記酸触媒及びメタクリル酸の含有量が夫々、前記酸触媒:0.015質量部以下及びメタクリル酸:6質量部以下である、精製グリセロールモノメタクリレートを得る、請求項1又は2に記載のグリセロールモノメタクリレートの製造方法。
  4. 歯科用ポリウレタン系樹脂原料用のグリセロールモノメタクリレートを製造する、請求項1~3の何れか1項に記載のグリセロールモノメタクリレートの製造方法。
  5. 1つ以上のラジカル重合性基を有するジオール化合物(a1)であるグリセロールモノメタクリレートを請求項1に記載の方法で製造して精製グリセロールモノメタクリレートを得る工程、
    前記工程で得られた精製グリセロールモノメタクリレート;分子内に1つ以上のラジカル重合性基を有し、前記ジオール化合物(a1)およびジイソシアネート化合物の何れとも重付加反応を起こさない重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含む第1原料組成物を調製する第1原料組成物調製工程、
    前記第1原料組成物とジイソシアネート化合物(a2)とを混合して前記精製グリセロールモノメタクリレートと該ジイソシアネート化合物(a2)とを重付加反応させることにより、数平均分子量が1500~5000であり、かつ、ラジカル重合性基を有するポリウレタン成分(A)を形成させて、該ポリウレタン成分(A)、前記重合性単量体(B);ラジカル重合開始剤(C);及び充填材(D)を含み、未反応の前記精製グリセロールモノメタクリレート及び/又は未反応の前記ジイソシアネート化合物(a2)を含んでいてもよい第2原料組成物を調製する第2原料組成物調製工程、および
    前記第2原料組成物中の前記ポリウレタン成分(A)におけるラジカル重合性基と、前記重合性単量体(B)と、をラジカル重合させて前記第2原料組成物を硬化させてポリウレタン系複合材料を得る硬化工程、
    を含むことを特徴とする前記ポリウレタン系複合材料の製造方法。
  6. 前記精製グリセロールモノメタクリレートが歯科用ポリウレタン系樹脂原料用であり、歯科用ポリウレタン系複合材料を製造する請求項5に記載のポリウレタン系複合材料の製造方法。
  7. 請求項6に記載の歯科用ポリウレタン系複合材料の製造方法を含む歯科切削加工用材料の製造方法。
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