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JP7787402B2 - パネル材及びパネル材の製造方法 - Google Patents
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JP7787402B2 - パネル材及びパネル材の製造方法 - Google Patents

パネル材及びパネル材の製造方法

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Description

本開示は、パネル材及びパネル材の製造方法に関する。
従来、外壁や床材等のパネル材に用いられるフレーム材としての低伝熱形鋼が知られている。低伝熱形鋼は、例えば外壁において熱橋となるスタッドの溝形鋼のウェブに、1個以上の孔を空けることによって作製できる。
開けられた孔によって、一対のフランジの間に位置するウェブを経由する熱の移動経路の長さが延長されると共に、移動経路の断面積が縮小する。結果、ウェブの熱伝導率が小さくなるので、有孔のウェブを有する溝形鋼が用いられた低伝熱形鋼の断熱性能が高まる。有孔のウェブを有する溝形鋼が用いられた低伝熱形鋼の断熱性能は、例えば同形状及び同寸法の溝形鋼で比較すると、無孔のウェブを有する溝形鋼が用いられた場合より向上する。
なお、本明細書では、以下、説明の便宜上、有孔のウェブを有するリップ溝形鋼を「低伝熱形鋼」と称すると共に、無孔のウェブを有するリップ溝形鋼を「通常形鋼」とも称する。
低伝熱形鋼に関する技術として、例えば特許文献1には、建物の壁材等のパネル材に用いられる、フレーム材としてのリップ溝形鋼が開示されている。特許文献1のリップ溝形鋼では、材軸方向に直交する面で切断した場合のウェブの断面積に関し、ウェブ高さ方向の中央位置の断面積を両端のフランジ近傍位置の断面積より小さくすることによって、ウェブの熱伝導率が低下する。特許文献1では、断面積を小さくする方法の例として、ウェブの板面に孔を空ける技術が開示されている。
また、特許文献2には、建築用金属板である溝形鋼のウェブの板面を側傍として切り起こすことによって、熱伝導率を小さくするための切れ目がウェブに形成された低伝熱形鋼が開示されている。
特開2000-87505号公報 特開2002-146936号公報
ここで、低伝熱形鋼の溝形鋼では、ウェブに開けられた孔が、ウェブの断面欠損として作用する。このため、パネル材の断熱性能が高められる。一方、構造性能の面では、有孔のウェブを有する溝形鋼の曲げ耐力は、無孔のウェブを有する溝形鋼の曲げ耐力より低くなる。リップ溝形鋼の低伝熱形鋼では、風圧等による曲げ荷重が、フランジに接合された面材からフランジに加わった際、低伝熱形鋼特有の歪み座屈、すなわち、ウェブの局所変形が発生し易いことが分かった。
この点、特許文献1には、溝形鋼に曲げ荷重が加えられた際、低伝熱形鋼に特有の座屈を抑制し、強度を向上させる技術に関して何ら開示されていない。このため、特許文献1の技術だけでは、リップ溝形鋼の低伝熱形鋼に特有の座屈に起因する強度低下の問題を解決できない。
また、特許文献2は、低伝熱形鋼に関する技術ではあるが、本発明者らが検討した結果、側傍が設けられた場合であっても、低伝熱形鋼のリップ溝形鋼に特有の座屈に起因する強度低下の問題を必ずしも十分に解決できない場合があることが分かった。このため、低伝熱形鋼のリップ溝形鋼において、座屈による耐力の低下を抑制可能な新規な技術が求められている。
本開示は、上記の問題に鑑み、低伝熱形鋼として有孔のウェブを有するリップ溝形鋼が用いられることによって断熱性能が高められたパネル材あって、低伝熱形鋼特有の座屈による耐力の低下を抑制できるパネル材及びパネル材の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係るパネル材は、ウェブと一対のフランジと一対のリップとを有し、溝形鋼の断熱性能を向上させる孔がウェブに設けられたリップ溝形鋼と、面材と、少なくとも一方のフランジと面材とを接合する複数の接合部材であって、面材の板面を正面から見て、千鳥配置された、又は、リップ溝形鋼の材軸方向に沿って直線状に複数配置された2つの列がフランジ幅方向に間を空けて並列配置された複数の接合部材と、を有する。
本発明者らの検討の結果、リップ溝形鋼を用いた低伝熱形鋼では、フランジと面材とを接合する複数の接合部材が千鳥配置された場合、接合部材が1列配置された場合と比べ、接合部材の個数が同じであっても、リップ溝形鋼の曲げ耐力が上昇することが分かった。
また、複数の接合部材が、リップ溝形鋼の材軸方向に沿って直線状に複数配置された2つの列がフランジ幅方向に間を空けて並列配置された場合、接合部材が1列配置された場合と比べ、リップ溝形鋼の曲げ耐力が上昇することが分かった。
このため、本開示の一態様に係るパネル材では、断熱性能が高められた低伝熱形鋼のリップ溝形鋼における、低伝熱形鋼特有の座屈による耐力の低下を抑制できる。
本開示の別の一態様に係るパネル材の製造方法は、ウェブと一対のフランジと一対のリップとを有し、溝形鋼の断熱性能を向上させる孔がウェブに設けられたリップ溝形鋼の少なくとも一方のフランジと、少なくとも一方のフランジの上に重ねられた面材とを、面材の板面を正面から見て、複数の接合部材が、千鳥配置された状態で、又は、リップ溝形鋼の材軸方向に沿って直線状に複数配置された2つの列がフランジ幅方向に間を空けて並列配置された状態で接合する。
本開示の別の一態様によれば、上記一態様に係るパネル材を製造できる。
よって、本開示によれば、低伝熱形鋼として有孔のウェブを有するリップ溝形鋼が用いられることによって断熱性能が高められたパネル材であって、低伝熱形鋼特有の座屈による耐力の低下を抑制できるパネル材及びパネル材の製造方法を提供できる。
本開示の実施形態に係るフレーム材を含むパネル材を説明する斜視図である。 図2(A)は、接合部材が2列並列配置である本実施形態に係るパネル材の平面図であり、図2(B)は、図2(A)中の2B-2B線断面図である。 図3(A)は、接合部材が千鳥配置である他の実施形態に係るパネル材の平面図であり、図3(B)は、図3(A)中の3B-3B線断面図である。 図4(A)は、本実施形態に係るフレーム部材のリップ溝形鋼のウェブの外面を正面から見た図であり、図4(B)は、リップ溝形鋼を側面から見た図である。 スリットの結合部が直列配置である場合のウェブの外面を正面側から見た図である。 スリット率と熱貫流低下率との関係を、スリットの配置パターンを異ならせて説明するグラフである。 実施例1に係る低伝熱形鋼のリップ溝形鋼の解析モデルの概要を説明する図である。 図8(A)は、接合部材が1列配置である比較例に係るパネル材の平面図であり、図8(B)は、図8(A)中の8B-8B線断面図である。 図9(A)は、実施例1に係る解析モデルの材軸方向中央部の断面変形を説明する図であり、図9(B)は、比較例に係る解析モデルの材軸方向中央部の断面変形を説明する図である。 実施例と比較例とのそれぞれの解析モデルの中央部における変位と荷重との関係を説明する図である。 図11(A)は、接合部材が2列並列配置である場合の解析モデルにおける接合部材の位置を説明する図であり、図11(B)は、接合部材が千鳥配置である場合の解析モデルにおける接合部材の位置を説明する図である。 図12(A)は、実施例に係る低伝熱形鋼のリップ溝形鋼の解析モデルの概要を説明する図であり、図12(B)は、低伝熱形鋼のリップ溝形鋼の基準モデルとしての解析モデルの概要を説明する図である。 接合部材の接合間隔と最大曲げ耐力との関係を説明するグラフである。 接合部材の列間隔と最大曲げ耐力との関係を説明するグラフである。 2列並列配置である接合部材の接合間隔と最大曲げ耐力との関係を、板厚を異ならせて説明するグラフである。 千鳥配置である接合部材の接合間隔と最大曲げ耐力との関係を、板厚を異ならせて説明するグラフである。 接合部材の接合間隔と最大曲げ耐力との関係を、パネル材のリップ長さを異ならせて説明するグラフである。 2列並列配置に補助位置が追加された配置パターンを有する接合部材の解析モデルにおける接合部材の位置を説明する図である。 接合部材の接合間隔と最大曲げ耐力との関係を、補助位置に接合部材が配置された場合と配置されない場合とに分けて説明するグラフである。
以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面における厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
<パネル材>
まず、本実施形態に係るパネル材10を、図1~図6を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係るパネル材10は、リップ溝形鋼12と、上側のフランジ12Bに接合された面材14と、下側のフランジ12Bに接合された面材22と、を有する。上側の面材14と下側の面材22との間には、充填部材24が配置されている。なお、図1中では、リップ溝形鋼12の見易さのため、面材14,22の一部が例示的に分断されている。
(リップ溝形鋼)
リップ溝形鋼12は、ウェブ12Aと一対のフランジ12Bと一対のリップ12Cとを有する。リップ溝形鋼12は、一枚の鋼板から、例えば折り曲げ成形によって作製できる。本開示では、鋼板の板厚は、2.3mm以下である。
本実施形態では、リップ溝形鋼12は、500MPa以上の高強度鋼板を用いて形成されてもよい。本明細書では、「高強度鋼板」とは、強度としてのF値が、500MPa以上、1000MPa以下である鋼板(鋼材)を意味する。また、「高強度鋼板」との対比において、F値が500MPa未満の鋼板を「通常鋼板」と称する場合がある。本実施形態では、例えば、通常鋼板としての400材のF値は、280MPaである鋼材を使用しても良いし、高強度鋼板のF値が、500MPaの鋼材を使用しても良い。
鋼板の強度としてのF値が1000MPaを超える場合、強度が高くなり過ぎるため、例えばロールフォーミング成形等、鋼板をリップ溝形鋼12へ成形する際の加工性が低下する。このため、本実施形態では、高強度鋼板の強度が1000MPa以下に特定されている。なお、本開示では、高強度鋼板の強度は、これに限定されず、適宜変更できる。
(リップ)
本実施形態では、一対のリップ12Cのリップ長さLは、互いに等しいが、本開示では、一対のリップのリップ長さが、互いに異なってもよい。「リップ長さL」は、図4(B)に示すように、リップ溝形鋼12の材軸方向Dに直交する断面中で測ったリップ12Cの最大長さである。また、図4(B)中の上下に位置する一対のフランジ12Bのフランジ幅についても、互いに異なってもよい。
ここで、本実施形態では、面材14と接合するフランジ12Bが、外部から、面材14の面外方向に沿った圧縮力、すなわち曲げを受けるものと仮定する。
(面材)
図2(A)に示すように、面材14は、板面を正面から見て、矩形状の建築部材である。面材14は、例えば、板状の下地部材や石膏ボード等である。本実施形態では、面材14は、外壁材であるが、本開示では、これに限定されず、例えば床材等の他のパネル材であってよい。また、本実施形態では、面材は、一対のフランジ12Bの両方に接合された場合が例示されたが、本開示では、これに限定されず、図1中の上側のフランジ12Bのみに接合されてもよいし、下側のフランジ12Bのみに接合されてもよい。
また、図1中の上側の面材14と下側の面材22とは、同様の機能を有する部材であってもよいし、異なる機能を有する部材であってもよい。面材14は、接合部材20によって、少なくとも一方の圧縮力が生じる側のフランジ12Bの板面に接合されればよい。
(充填部材)
本実施形態では、充填部材24は、例えばグラスウールやセルロースファイバー等の断熱材であるが、本開示では、これに限定されず、適宜変更できる。また、本開示では、充填部材は、必須ではない。
(接合部材)
接合部材20は、例えばビス等であって、フランジ12Bと面材14とを接合する建築部材である。図2(A)中には、面材14の板面を正面から見て、複数の接合部材20がリップ溝形鋼12の材軸方向(図2(A)中の上下方向に延びるZ方向)に沿って直線状に複数配置された2つの列がフランジ幅方向に間を空けて並列配置された状態が例示されている。なお、本開示では、列の個数は、2つ以上、任意に設定できる。
以下の説明では、説明の便宜上、材軸方向Dに沿って直線状に複数配置された2つの列がフランジ幅方向に間を空けて並列配置された状態を、単に「2列並列配置」とも称する。接合部材の配置パターンについては、後で具体的に説明する。
(ウェブ)
図4(A)に示すように、本実施形態では、ウェブ12Aに、材軸方向Dに沿ってほぼ等しい間隔Gで直線状に配置された複数のスリット16が含まれる列が設けられる。複数のスリット16は、溝形鋼の断熱性能を向上させる孔である。複数のスリット16が含まれる列は、図4(A)中の上下方向に沿ってほぼ等しい間隔Gで3列形成される。なお、「材軸方向D」は、リップ溝形鋼12のウェブ12Aとフランジ12Bとが、図4(A)中の左右方向に沿って延びる方向である。すなわち、材軸方向Dは、長手方向と等しい。
図4(B)に示すように、「ウェブ高さHW」は、一方のフランジ12B側の端部から他方のフランジ12B側の端部までの間の上下方向の直線距離である。また、「フランジ幅WF」は、図4(B)中で、ウェブ12A側の端部からリップ12C側の端部までの間の左右方向の直線距離である。また、「リップ長さL」は、図4(B)中のリップ12Cにおける一方のフランジ12B側の端部から他方のリップ12Cの端部までの間の上下方向の直線距離である。例えば、図4(B)中の上側のリップ12Cのリップ長さLは、上側のフランジ12Bの上面と同じ高さに位置する上端部の上面と、この上側のリップ12Cの下端部の下面との間の直線距離である。
また、本開示では、スリット16が含まれる列の個数は、3列に限定されず、1列であってもよいし、或いは5列等、2列以上の任意の複数列であってよい。なお、断熱性能の向上の観点から、3つ以上のスリット16の列が形成されることが望ましい。
また、本開示では、1つの列中で隣接するスリット16同士の材軸方向Dの間隔Gが等しい場合に限定されず、それぞれ異なってよい。また、ウェブ高さ方向で隣接する列と列との間隔Gも、等しい場合に限定されず、それぞれ異なってよい。また、スリット16の長手方向の端部の形状は、応力集中を避けるため、図1中に例示したように、円弧状が好ましい。
(結合部)
本実施形態では、ウェブ12Aにおいて、1つの列中で隣接する、一定の長さMを有する直線状のスリット16同士の材軸方向Dの間隔Gが形成される部分に、ウェブ12Aの板部材を高さ方向に結合する結合部18が構成される。
本開示では、ウェブ12Aに開けられる孔の形状及び寸法は、スリットに限定されず、適宜変更できる。また、本開示では、1つの列に含まれるスリットの個数は、2つ以上であれば任意である。本開示では、部材としての必要な強度が確保できる限り、少なくとも1つの結合部が形成されればよい。
本実施形態では、ウェブ12Aの板面を正面から見た平面視で、3つのスリット16の列に含まれる複数の結合部18の配置パターンは、千鳥配置である。具体的には、3つの列にそれぞれ含まれるスリット16は、ウェブ高さ方向に沿った直線上で重ならないようにずれて配置される。
換言すると、スリット16が千鳥配置である場合、ウェブ12Aの板面を正面から見て、一方のフランジ12B側から他方のフランジ12B側に向かって熱が移動する経路が、ウェブ高さHWと同じ最短距離である状態の形成が阻害される。なお、「スリット16が千鳥配置である」場合には、「結合部18が千鳥配置である」場合が生じ得る。
また、本開示では「スリットが千鳥配置である状態」とは、ウェブ12Aに形成されたスリット16の列のすべてにおいて、スリットが千鳥配置である場合に限定されない。本開示では、スリットが千鳥配置である状態が、材軸方向D及びウェブ高さ方向の少なくとも一方において部分的に形成された場合も「スリットが千鳥配置である状態」に含まれ得る。
なお、本開示では、複数のスリットの配置パターンは、千鳥配置に限定されない。図5に示すように、スリット16同士が、ウェブ高さ方向(図5中の上下方向)に沿った直線上で重なるように配置された直列配置であってもよい。
(スリット率)
本開示では、スリット率は、ウェブ12Aにおける材軸方向Dで隣接するスリット16の間隔Gの和をスリット16の長さMの和で除して定義される。なお、本開示では、「スリットの間隔」には、2つのスリットに挟まれた位置に形成される間隔と、材軸方向のウェブの端部で1つのスリットと端部との間に形成される間隔との両方が含まれる。
(熱貫流率低下率の解析試験)
図6中には、有限要素数値解析(FEM)を用いて異なるスリット率を有するリップ溝形鋼12の低伝熱形鋼を用いたパネル材の熱貫流率を解析した結果から算出された熱貫流率低下率が例示されている。具体的には、結合部18の配置パターンが直列配置であるリップ溝形鋼12の解析モデルの熱貫流率低下率と、結合部18の配置パターンが千鳥配置であるリップ溝形鋼12の解析モデルの熱貫流率低下率とが、それぞれ例示されている。
図6中の2つの解析モデルで用いられたリップ溝形鋼12は、結合部18の配置パターン以外は、互いに同形状及び同寸法である。また、図6中では、結合部18の配置パターンが千鳥配置である場合のデータ点が、5つの黒丸で例示されると共に、結合部18の配置パターンが直列配置である場合のデータ点が、7つの白丸で例示されている。
解析試験では、解析用モデルとして、スタッド材であるリップ溝形鋼12の低伝熱形鋼に、構造用の一方側の面材14、充填部材24としての断熱材、及び他方側の面材22としての石膏ボードが取り付けられた外壁部材を、スリット率を異ならせて5つ設定した。具体的には、図4(A)中に例示された3列のスリット16の列を有するリップ溝形鋼12の形状において、スリット16の長さMと間隔Gとを変更することによって、それぞれのスリット率を異ならせた。設定された5つの結合部18の配置パターンは、いずれも千鳥配置である。そして、設定された解析用モデルを対象として解析を実行することによって、それぞれの熱貫流率を解析した。
また、対比用の基準モデルとして、解析用モデルと同形状及び同寸法であって、無孔のウェブを有するリップ溝形鋼を設定した。そして、設定された基準モデルを対象として解析を実行することによって、基準モデルの熱貫流率を解析した。
図6中のグラフの縦軸の「熱貫流率低下率」は、スリット16を有する解析モデルの熱貫流率を、基準モデルの熱貫流率で除して得た値である。熱貫流率低下率の値が大きい、すなわち、熱貫流率低下率の値が1に近い程、低下の度合いが小さいため、断熱性能が改善されないことを意味する。一方、熱貫流率低下率の値が小さい程、低下の度合いが大きいため、断熱性能が改善されることを意味する。
図6中の黒丸のデータ点から分かるように、結合部18が千鳥配置であると、スリット率が20%以下の場合、熱貫流率低下率が85%以下になる。換言すると、断熱性能を15%以上改善できる。一方、スリット率が20%を超える場合、断熱性能の改善率が15%未満になる。
また、断熱性能の観点では、スリット率は小さい方が好ましいものの、スリット率が小さ過ぎると、リップ溝形鋼12の構造部材としての強度、すなわち、構造性能が不安定になる。このため、本実施形態では、構造性能と断熱性能とをバランスよく両立可能な範囲として、スリット率は、5%以上、20%以下の範囲で設定される。なお、本開示では、スリット率の範囲は、これに限定されず、リップ溝形鋼12の所望の仕様に応じて適宜変更できる。
また、図6中の白丸のデータ点から分かるように、結合部18が直列配置であっても、スリット率が、5%以上、20%以下の範囲内で設定される場合、断熱性能を有効に改善できる。ただし、同じスリット率であっても、結合部18が千鳥配置であるリップ溝形鋼12の解析モデルの方が、結合部18が直列配置であるリップ溝形鋼12の解析モデルより、熱貫流率低下率が小さいため、断熱性能がより改善される。
(接合部材の配置パターン)
次に、本実施形態に係る接合部材20の配置パターンについて具体的に説明する。図2(B)中には、フランジ幅方向の中心を通って垂直に伸びる中心線Cが例示されている。図2(B)に示すように、本実施形態では、2列並列配置された接合部材20は、フランジ幅方向の中心を挟み、中心には配置されない。なお、本開示では、接合部材20は、フランジ幅方向の中心に配置されてもよい。
ここで、2列並列配置とは、1つの列の中で材軸方向Dに沿って連続的に配置された接合部材20が、フランジ幅方向において隣接する列の中で材軸方向Dに沿って連続的に配置された接合部材20と、フランジ幅方向において重なる配置パターンである。
また、本開示では、複数の接合部材20の配置パターンは、2列並列配置に限定されない。例えば、図3(A)に示すように、面材14の板面を正面から見て、複数の接合部材20が千鳥配置されてもよい。図3(B)中には、千鳥配置された接合部材20は、フランジ幅方向の中心を挟み、中心には配置されない状態が例示されている。なお、本開示では、千鳥配置された接合部材は、フランジ幅方向の中心に配置されてもよい。
接合部材20の千鳥配置は、上記のスリット16間の結合部18の千鳥配置と同様に定義される。すなわち、1つの列の中で材軸方向Dに沿って連続的に配置された接合部材20が、フランジ幅方向において隣接する列の中で材軸方向Dに沿って連続的に配置された接合部材20と、フランジ幅方向に沿った直線上で重ならないようにずれて配置される。
換言すると、千鳥配置は、材軸方向Dに沿って連続的に配置された接合部材20によってそれぞれ形成された2つの列の中にも構成され得る。一方、千鳥配置は、例えば、材軸方向Dに沿って連続的に配置された2つの接合部材20によって形成された第1の列と、列を構成しない単独の1つの接合部材20とによっても構成され得る。単独の1つの接合部材20は、第1の列とフランジ幅方向に間隔を空けかつ第1の列の2つの接合部材20のいずれともフランジ幅方向において重ならないようにずれて配置される。
また、本開示では「接合部材20が千鳥配置である状態」とは、接合部材20の列のすべてにおいて、結合部が千鳥配置である場合に限定されない。本開示では、接合部材20が千鳥配置である状態が、接合部材20のすべての列の中で、部分的に形成された場合も「接合部材20が千鳥配置である状態」に含まれ得る。このため、本開示では、複数の接合部材20によって構成された2つの列の中には、例えば、部分的に千鳥配置である状態と部分的に2列並列配置である状態とが混在することも生じ得る。
(パネル材の製造方法)
本実施形態に係る接合部材20の配置パターンが形成されたパネル材の製造方法としては、リップ溝形鋼のフランジと、フランジの上に重ねられた面材14とを、面材14の板面を正面から見て、複数の接合部材20が、千鳥配置された状態で接合すればよい。或いは、複数の接合部材20が、リップ溝形鋼の材軸方向に沿って直線状に複数配置された2つの列がフランジ幅方向に間を空けて並列配置された状態で接合しても、本実施形態に係る接合部材20の配置パターンが形成されたパネル材を製造できる。
次に、本実施形態に係るパネル材10のリップ溝形鋼12について行われた実施例を、図7~図19を参照して説明する。
<実施例1:荷重と変位との関係>
実施例1では、FEMを用いて、リップ溝形鋼12の面外方向に沿って加えられた圧縮力を模擬するため強制変位を生じさせた解析を実行した。
具体的には、図7に示すように、解析モデルを設定した。解析モデルの材軸方向Dの長さは、3900mmであり、ウェブ高さHWは、100mmであり、フランジ幅WFは、50mmであり、リップ長さLは、20mmであり、板厚tは、1.6mmである。また、実施例1では、接合部材20の配置パターンは、2列並列配置である。
解析では、図7中の解析モデルのリップ溝形鋼の上フランジ側に面材14が接合されると仮定した。また、リップ溝形鋼を材軸方向Dに4等分し、両端側の2点の位置に、図7中で上側から下側に向かう鉛直方向の強制変位を設定することによって、中央側の2点間に挟まれた中央部に力を加える4点曲げ試験を実行した。また、横座屈が生じないように、中央部のフランジ幅方向の変位は拘束した。また、境界条件として、リップ溝形鋼の材軸方向Dの一端はピン支持であり、かつ、他端はローラー支持であるように設定した。
そして、設定された解析モデルのそれぞれに対して荷重を負荷し、材軸方向Dの中央部の変形状態を解析した。また、解析結果から、それぞれの曲げ耐力を解析した。以下、接合部材20が2列並列配置であるリップ溝形鋼12の解析結果を実施例1として説明する。解析では、実施例1の状態を表現するため、中央部のフランジ幅方向の回転および変位を拘束した。また、図8(A)に示すように、接合部材20が1列配置であるパネル材10Zのリップ溝形鋼12の解析結果を第1比較例として説明する。
解析では、第1比較例の状態を表現するため、中央部フランジ幅方向の回転は拘束せず、変位のみを拘束した。図8(B)に示すように、第1比較例では、1列配置された接合部材20は、フランジ幅方向の中心を通って垂直に伸びる中心線Cと重なる。第1比較例に係るパネル材10Zにおけるフレーム材の解析条件は、接合部材20の配置パターン以外、実施例1と同様である。
また、第2比較例として、無孔のウェブを有するリップ溝形鋼の通常形鋼の解析モデルを設定し、実施例1及び第1比較例と同様の解析を行った。なお、第2比較例は、接合部材20の配置パターンが1列配置である解析モデルと、接合部材20の配置パターンが2列並列配置である解析モデルとの2種類を用意した。配置パターンが1列配置である第2比較例の解析モデルの、孔以外の条件は、第1比較例と同様である。また、配置パターンが2列並列配置である第2比較例の解析モデルの、孔以外の条件は、実施例1と同様である。
図9(A)及び図9(B)中には、上側から圧縮力が作用する前のそれぞれのリップ溝形鋼における材軸方向Dの中央部の断面形状が破線で例示されている。また、図9(A)及び図9(B)中には、上側から圧縮力が作用した後の最大耐力時に、下側にたわみ、かつ、変形した中央部の断面形状の状態が、実線で例示されている。図9(A)中には実施例1に係る解析モデルの断面形状が、また、図9(B)中には第1比較例に係る解析モデルの断面形状が、それぞれ例示されている。
図9(A)及び図9(B)に示すように、実施例1の座屈変形は、第1比較例の場合より抑制された。なお、図示を省略するが、第2比較例に係る2種類の解析モデルでは、いずれも、材軸方向Dの中央部は下側にたわんでいるものの、全体の断面形状は大きく変形せず、結果、座屈変形は、ほとんど生じなかった。
また、図10中には、実施例1と、第1比較例と、第2比較例の2種類とのそれぞれの解析モデルについて、中央部の鉛直方向の変位δyと荷重Pとの関係を示すそれぞれの軌跡が例示されている。図10中の実施例1の軌跡は実線によって、第1比較例の軌跡は一点鎖線によって、1列配置の第2比較例の軌跡は破線によって、2列並列配置の第2比較例の軌跡は点線によって、それぞれ表示されている。
図10に示すように、第1比較例では、低伝熱形鋼特有の座屈が発生し、耐力低下に至っていることが分かる。第1比較例の最大耐力は、第2比較例と比較して、最大耐力が低い。一方、低伝熱形鋼であって2列並列配置の実施例1では、通常形鋼である2種類の第2比較例と同等の耐力を発揮することができることが分かった。実施例1は、低伝熱形鋼特有の座屈の発生を抑制し、ウェブの断面欠損による耐力低下を防止できることが分かった。
また、図示を省略するが、実施例1の接合部材20の異なる配置パターンとして、千鳥配置である解析モデルを設定した。千鳥配置の解析モデルでは、接合部材20の個数は、1列配置の第1比較例で用いられた接合部材の個数と同じである。接合部材20の配置パターン及び接合部材20の個数以外の解析条件は、2列並列配置である場合の解析条件と同様である。結果、千鳥配置の実施例1であっても、通常形鋼である2種類の第2比較例と同等の耐力を発揮することができることが分かった。
<実施例2:接合間隔と最大曲げ耐力上昇率との関係(2列並列配置)>
次に、実施例2では、接合部材20の材軸方向Dの接合間隔を変化させた場合のリップ溝形鋼12の最大曲げ耐力について、FEMを用いて解析した。
実施例2の解析モデルは、実施例1の場合と同様に、4点曲げのモデルとして設定した。実施例2では、図11(A)に示すように接合部材20が2列並列配置である場合と、図11(B)に示すように接合部材20が千鳥配置である場合との、2種類について設定した。
また、図12(A)に示すように、実施例2の解析モデルの断面形状については、ウェブ高さHWを100mm、フランジ幅WFを50mm、リップ長さLを12mm、板厚tを1.6mmと、それぞれ設定した。ウェブ12Aの断面欠損の形状、すなわち、スリットの形状は、実施例1の場合と同様である。また、2列の接合部材20のフランジ幅方向のそれぞれの位置の、フランジ幅方向の中心からの変位δxは、10mmに設定した。すなわち、2列の接合部材20の場合のフランジ幅方向の列間隔は、20mmである。
一方、図12(B)に示すように、最大曲げ耐力を対比するための基準モデルを設定した。基準モデルの断面形状については、実施例2と同様である。ただし、基準モデルの接合部材20の配置パターンは、1列配置であると共に、接合部材20は、フランジ幅方向の中心線Cに沿って配置された。
また、図示を省略するが、接合部材20が2列並列配置である場合の通常形鋼のリップ溝形鋼の解析モデルを、第3比較例として設定した。第3比較例の解析条件は、スリットを有さない条件と、フランジ幅方向中央部の拘束条件以外、2列並列配置である実施例2の場合と同様である。
そして、2種類の低伝熱形鋼の実施例2と基準モデルとのそれぞれについて、接合部材20の材軸方向Dに沿った接合間隔Dxを変化させて座屈耐力を測定した。そして、基準モデルの最大曲げ耐力に対する実施例2の最大曲げ耐力の比を、最大曲げ耐力上昇率として算出した。また、同様に、通常形鋼の第3比較例についても、接合部材20が1列配置である基準モデルを設定し、設定された通常形鋼の基準モデルを用いて、最大曲げ耐力上昇率を算出した。
図13に示すように、実線で描かれた2列並列配置である実施例2では、接合部材20の間隔が約530mm以下である場合、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。すなわち、破線で描かれた通常形鋼の第3比較例の最大曲げ耐力上昇率の最大値より大きな最大曲げ耐力上昇率を得ることができた。また、一点鎖線で描かれた千鳥配置である実施例2では、接合部材20の間隔が約200mm以下である場合、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。すなわち、接合部材20が千鳥配置である場合、接合部材20の個数が1列配置である場合の接合部材20と同じであっても、耐力が上昇した。
<実施例3:列間隔と最大曲げ耐力上昇率との関係(2列並列配置)>
実施例3では、接合部材20が2列並列配置である場合における、フランジ幅方向の列間隔をパラメータとした解析を行った。実施例3の解析モデルの断面形状は、実施例2と同様である。実施例3の材軸方向Dの接合間隔Dxは、150mmに設定した。なお、実施例3の材軸方向Dの接合間隔Dxは、図11中に例示した接合間隔Dxと同様に定義される。
実施例3では、接合部材20のフランジ幅方向の変位δxを変化させることによって、列間隔を変化させた。実施例3のフランジ幅方向の変位δxは、図11中に例示した変位δxと同様に定義される。また、実施例3では、実施例2の場合と同様に、接合部材20が材軸方向Dに沿って1列配置である基準モデルを設定し、設定された基準モデルを用いて、最大曲げ耐力上昇率を算出した。
図14に示すように、列間隔が30mmの場合、最大曲げ耐力上昇率は、ピーク値として約1.28であった。ただし、30mm以外の他の列間隔の場合であっても、最大曲げ耐力上昇率として約1.24以上を確保できた。このため、2列並列配置の場合、列間隔は、20mm以上、40mmであることが好ましいことが分かった。
また、図示を省略するが、接合部材20が千鳥配置である場合についても同様に解析を行い、結果、列間隔は、20mm以上、40mmであることが好ましいことが分かった。ただし、本開示では、列間隔は、これに限定されず、少なくとも、設計上の観点から接合に必要な最小値以上であればよい。
<実施例4:板厚と最大曲げ耐力上昇率との関係(2列並列配置)>
実施例4では、板厚tの影響を確認するため、板厚tをパラメータとしたFEAを実施した。具体的には、接合部材20が2列並列配置である実施例2と同様の解析モデルを設定し、板厚tを、1.2mm、1.6mm、2.3mmの場合の3種類を用意した。そして、実施例2と同様の基準モデルを用いて、それぞれの最大曲げ耐力上昇率を算出した。
図15に示すように、2列並列配置では、3種類の板厚tのいずれの場合でも、接合間隔が小さくなる程、最大曲げ耐力が上昇する傾向であることが分かる。ただし、破線で描かれた板厚tが2.3mmの最大曲げ耐力上昇率は、接合間隔を小さくしても、実線で描かれた板厚tが1.6mmの場合と、一点鎖線で描かれた1.2mmの場合より、同じ接合間隔では、低くなる。
板厚tが2.3mmの場合、他の板厚tの場合より最大曲げ耐力上昇率が低くなる結果は、板厚tの大きさによって、より小さい板厚tの場合より、ウェブ12Aの局所変形が生じ難くなることに起因する。換言すると、実施例4によれば、板厚tが1.2mm及び1.6mmのように比較的小さくても、接合部材20の接合間隔を調整することによって、リップ溝形鋼12の曲げ耐力を効果的に上昇させることが可能である。
また、図15に示すように、板厚tが1.6mmの場合、接合間隔が650mm以下であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。また、板厚tが1.2mmの場合、接合間隔が490mm以下であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。すなわち、実施例4では、板厚tが1.6mm以下の場合、接合間隔が490mm以下であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できることが分かった。
<実施例5:接合間隔と最大曲げ耐力上昇率との関係(千鳥配置)>
実施例5では、接合部材20の配置パターンが千鳥配置である場合の接合間隔と最大曲げ耐力上昇率との関係の解析を、板厚tを変化させて行った。具体的には、接合部材20が千鳥配置である実施例2と同様の解析モデルを設定し、板厚tを、1.2mm、1.6mm、2.3mmの場合の3種類を用意した。そして、実施例2と同様の基準モデルを用いて、それぞれの最大曲げ耐力上昇率を算出した。
図16に示すように、千鳥配置では、実施例4の2列並列配置と同様に、3種類の板厚tのいずれの場合でも最大曲げ耐力が上昇する傾向であることが分かる。また、板厚tが2.3mmの場合、他の板厚tの場合より最大曲げ耐力上昇率が低くなる結果についても、実施例4の場合と同様である。
また、図16に示すように、板厚tが1.6mmの場合、接合間隔が250mm以下であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。また、板厚tが1.2mmの場合、接合間隔が200mm以下であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。すなわち、実施例5では、板厚tが1.6mm以下の場合、接合間隔が200mm以下であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できることが分かった。
<実施例6:リップ長さと最大曲げ耐力上昇率との関係(2列並列配置及び千鳥配置)>
実施例6では、リップ溝形鋼12のリップ長さLが、必要リップ長さである場合と、有効リップ長さである場合とに分けて、それぞれの最大曲げ耐力上昇率を比較した。具体的には、実施例2と同様に、接合部材20が2列並列配置である場合と千鳥配置である場合との2種類の解析モデルとを設定した。そして、それぞれの種類において、リップ長さLが必要リップ長さである解析モデルと、有効リップ長さである解析モデルとを用意した。そして、実施例2と同様の基準モデルを用いて、それぞれの最大曲げ耐力上昇率を算出した。
(必要リップ長さ)
ここで、必要リップ長さは、「薄板軽量形鋼造建築物設計の手引き 第2版」(一般社団法人 日本鉄鋼連盟)P.83の記載に基づき、以下の計算式によって定義される。


min:必要リップ長さ[mm]
b:リップ溝形鋼等のフランジの板要素の幅[mm]
F: リップ溝形鋼のF値[N/mm
t:リップ溝形鋼の板厚[mm]
(有効リップ長さ)
また、有効リップ長さは、「薄板軽量形鋼造建築物設計の手引き 第2版」(一般社団法人 日本鉄鋼連盟)P.56の表3.4.4.中に記載の「リップの有効幅」と同じである。具体的には、下記の計算式によって定義される。

有効リップ長さ[mm]=(240/√F)×t
なお、板厚tは、「薄板軽量形鋼造建築物設計の手引き 第2版」P.52の有効断面の構造計算に関する「(1)鋼材の板厚」に記載された設計板厚に従って設定される。すなわち、原則として、公称板厚90%の板厚が用いられる。
また、曲げ材の有効断面の配置は、「薄板軽量形鋼造建築物設計の手引き 第2版」P.55の図5.4.5.中に記載の配置、及び、P.56の「(6)曲げ材の有効断面係数Ze」の記載に従って設定される。すなわち、曲げ材の許容応力度の算出では、強軸曲げを受けるリップ溝形鋼の圧縮側のフランジについて、圧縮側と同等の無効部分を設けて評価する場合と、板要素全体を有効とみなす場合とに応じて、曲げ材の有効断面の配置は異なる。
図17中には、接合部材20が2列並列配置である場合の解析モデルの結果が例示されている。図17に示すように、2列並列配置では、リップ長さLが必要リップ長さと有効リップ長さとのいずれの場合でも、接合間隔が小さくなる程、最大曲げ耐力が上昇する傾向であることが分かる。ただし、破線で描かれた有効リップ長さの場合の最大曲げ耐力上昇率は、接合間隔を小さくしても、実線で描かれた必要リップ長さの場合より、同じ接合間隔では、低くなる。
リップ長さLが有効リップ長さである場合、必要リップ長さである場合より最大曲げ耐力上昇率が低くなる結果は、リップ長さLの延長に伴ってリップ溝形鋼の断面積が大きくなることからウェブ12Aの局所変形が生じ難くなることに起因する。換言すると、実施例6によれば、リップ長さLが有効リップ長さ程の長さでなく、必要リップ長さ以上であれば、接合部材20の接合間隔を調整することによって、リップ溝形鋼12の曲げ耐力を効果的に上昇させることが可能である。
また、接合部材20が2列並列配置である場合、図17に示すように、リップの長さLが必要リップ長さ以上であり、かつ、接合部材20の接合間隔が約650mm以下であると、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。
また、図示を省略するが、接合部材20が千鳥配置の場合であっても、2列並列配置の場合と同様に、リップ長さLが必要リップ長さ以上であれば、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できた。
<変形例:補助位置に配置された接合部材(2列並列配置)>
図18に示すように、本実施形態の変形例に係るパネル材のリップ溝形鋼では、2列並列配置された接合部材20の2つの列の間に設定される補助位置に、接合部材20が、材軸方向Dに沿って複数配置されてもよい。補助位置は、フランジ幅方向(図18中の上下方向)の列間隔を2等分し、かつ、材軸方向D(図18中の左右方向)の接合間隔Dxを2等分する。
本開示では、設定される補助位置の個数は、1個であってもよいし、或いは、2個以上の任意の個数であってよい。また、補助位置は、3列以上で並列配置された接合部材20の列の間に設定されてよい。
<実施例7:補助位置の接合部材と最大曲げ耐力上昇率との関係>
実施例7では、図18中に例示された変形例に係るリップ溝形鋼の最大曲げ耐力上昇率について解析を行った。具体的には、実施例7の解析モデルでは、図11(A)中に例示された2列並列配置である実施例2の解析モデルと同様の解析モデルにおいて、並列配置された接合部材20の2列の間でフランジ12Bのフランジ幅方向の中央位置に、補助位置が追加で設定された。
実施例2及び実施例7の解析モデルにおける2つの列のフランジ幅方向の列間隔は、20mmである。また、実施例7では、フランジ幅方向に並列配置されたそれぞれの列における接合部材20の材軸方向Dの接合間隔を、600mmに設定した。そして、実施例2と同様に基準モデルを用いて、最大曲げ耐力上昇率を算出した。
図19に示すように、補助位置に接合部材20が配置された実施例7の場合、補助位置に接合部材20が配置されない実施例2の場合と比べ、最大曲げ耐力上昇率が大きくなることが分かった。
(作用効果)
本実施形態では、図10に示したように、複数の接合部材20が、2列並列配置である場合、接合部材20が1列配置された場合と比べ、リップ溝形鋼12の曲げ耐力が上昇することが分かった。また、複数の接合部材20が千鳥配置された場合、接合部材20が1列配置された場合と比べ、接合部材20の個数が同じであっても、リップ溝形鋼12の曲げ耐力が上昇することが分かった。
すなわち、接合部材20を2列並列配置又は千鳥配置とした場合、面材14による拘束効果を、接合部材20を1列配置する場合と比較して、高めることができるので、接合部の接合位置でのリップ溝形鋼12の回転を抑制できる。結果、低伝熱形鋼の座屈の発生を遅らせることができる。このため、本実施形態では、スタッドとして使用されるリップ溝形鋼12が、断熱性能が高められた有孔の低伝熱形鋼であっても、座屈による耐力の低下を抑制できる。
よって、本実施形態に係るパネル材10では、断熱性能が高められた低伝熱形鋼のリップ溝形鋼12における、低伝熱形鋼特有の座屈による耐力の低下を抑制できる。
また、本実施形態では、図15に示したように、板厚tが1.6mm以下であり、接合部材20が2列並列配置であり、接合間隔が490mm以下である場合、接合部材20が1列配置であるリップ溝形鋼と比べ、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できる。
また、本実施形態では、図17に示したように、接合部材20が2列並列配置である場合、接合部材20の接合間隔が650mm以下であり、リップ長さLが必要リップ長さ以上であれば、1列配置の場合と比べ、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できる。
また、本実施形態では、図19に示したように、リップ溝形鋼12のフランジ12Bにおけるフランジ幅方向の中央位置に設定された補助位置に接合部材20が配置される。このため、補助位置に接合部材20が配置されない場合と比べ、大きな最大曲げ耐力上昇率を実現できる。
また、図16に示したように、リップ溝形鋼12の板厚tが、1.6mm以下であり、接合部材20が千鳥配置であり、接合間隔が200mm以下である場合、接合部材20が1列配置である場合と比べ、最大曲げ耐力上昇率を1.10以上に実現できる。
また、本実施形態では、図6に示したように、ウェブ12Aの材軸方向におけるスリットの間隔の和をスリットの長さの和で除して定義されるスリット率が、5%以上、20%以下である場合、断熱性能が確保された低伝熱形鋼を実現できる。
また、本実施形態に係るパネル材の製造方法によれば、断熱性能が高められた低伝熱形鋼のリップ溝形鋼12における、低伝熱形鋼特有の座屈による耐力の低下を抑制できるパネル材10を提供できる。
<その他の実施形態>
本開示は、上記の実施形態によって説明されたが、この説明は、本開示を限定するものではない。本開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
例えば、本実施形態では、一方のフランジ12Bの板面上に1枚の面材14が接合された場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。例えば、一方のフランジ12Bの板面上に、フランジ幅方向に沿って2枚の面材14が、それぞれの端部の端面同士が接触又は近接した状態で接合されてもよい。2枚の面材14の端面同士の接触部分、又は、端面同士の隙間によって、リップ溝形鋼12の材軸方向Dに沿って延びる線状の継ぎ目部分が形成される。
そして、フランジ12Bの板面を正面から見て、面材14と面材14との継ぎ目部分を挟んで、複数の接合部材20が、2列並列配置又は千鳥配置されればよい。継ぎ目部分が形成された場合であっても、本実施形態と同様に、2枚の面材14によって拘束効果を高めることができるので、接合部の接合位置でのリップ溝形鋼12の回転を抑制できる効果が得られる。
また、本開示では、フランジ12Bの板面上における面材14との接合範囲は、材軸方向Dの全体に亘る必要はなく、接合範囲は、部分的であってもよい。また、本開示では、リップ溝形鋼12の材軸方向Dに沿って、1枚の面材14が接合された部分と、2枚の面材がフランジ幅方向に沿って接合された部分との両方が、パネル材に含まれてもよい。
その他、図1~図19中に示された構成を部分的に組み合わせて、本開示を構成することもできる。本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
10 パネル材
10Z パネル材
12 リップ溝形鋼(フレーム材)
12A ウェブ
12B フランジ
12C リップ
14 面材
16 スリット
18 結合部
20 接合部材
22 面材
24 充填部材
C 中心線
Dx 接合間隔
D 材軸方向
G 間隔
HW ウェブ高さ
L リップ長さ
M スリットの長さ
WF フランジ幅
t 板厚
δx 変位
δy 変位

Claims (4)

  1. ウェブと一対のフランジと一対のリップとを有し、溝形鋼の断熱性能を向上させ、かつ、前記フランジに加わる曲げ荷重に対し前記ウェブの局所変形を生じさせる孔が前記ウェブに設けられたリップ溝形鋼と、
    面材と、
    少なくとも一方の前記フランジの外面と前記面材とを接合する複数の接合部材であって、前記面材の板面を正面から見て、千鳥配置された複数の接合部材と、
    を有するパネル材。
  2. 前記リップ溝形鋼の板厚は、1.6mm以下であり、
    千鳥配置された前記複数の接合部材において、前記リップ溝形鋼の材軸方向に沿って隣接する前記接合部材の間隔は、200mm以下である、
    請求項1に記載のパネル材。
  3. 前記孔は、スリットであり、
    前記リップ溝形鋼の材軸方向における前記スリットの間隔の和を前記スリットの長さの和で除して定義されるスリット率は、5%以上、20%以下である、
    請求項1又は2に記載のパネル材。
  4. ウェブと一対のフランジと一対のリップとを有し、溝形鋼の断熱性能を向上させ、かつ、前記フランジに加わる曲げ荷重に対し前記ウェブの局所変形を生じさせる孔が前記ウェブに設けられたリップ溝形鋼の少なくとも一方の前記フランジと、少なくとも一方の前記フランジの外面上に重ねられた面材とを、前記面材の板面を正面から見て、複数の接合部材が、千鳥配置された状態で接合する、
    パネル材の製造方法。
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