JP7787658B2 - サブマージアーク溶接用溶融型フラックス - Google Patents
サブマージアーク溶接用溶融型フラックスInfo
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Description
サブマージアーク溶接における溶接作業性の改善目的として、様々な検討が行われている。例えば特許文献1~3には、フラックス粒子を発泡させて多孔質粒子とし、嵩密度を小さくすることで、スラグ剥離性やビード外観などの溶接作業性が良好になることが開示されている。
<1> フラックス全質量に対し、発泡フラックス粒子の質量比率をX%とし、前記発泡フラックス粒子以外のフラックス粒子の質量比率をY%とするとき、下記(1)式を満たすサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
<3> 嵩密度が0.6~1.3g/cm3である<1>又は<2>に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
なお、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されていない場合は、これらの数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これらの数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
含有量について、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
本開示に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスは、フラックス全質量に対し、発泡フラックス粒子の質量比率をX%とし、発泡フラックス粒子以外のフラックス粒子(非発泡フラックス粒子)の質量比率をY%とするとき、下記(1)式を満たすように構成されている。
発泡フラックス粒子の質量比(X/(X+Y))が0.01を下回ると、フラックス全体として発泡不足であり、安定したアーク空洞を形成することができないため、ビード形状の不良が生じやすい。一方、発泡フラックス粒子の質量比が0.40を超えると、吹上現象に抵抗することができずにオープンアークとなり、大気からの混入により溶接金属中のN量が増加し、ピット、ブローホールなどの気孔欠陥が発生しやすくなる。したがって、本開示に係る溶融フラックスは、発泡フラックス粒子の質量比を0.01~0.40とし、好ましくは0.01~0.30である。
発泡フラックス粒子と非発泡フラックス粒子が混合したフラックスについて、5~30倍程度に拡大できる虫眼鏡を使用し、粒子の外観に基づいて分別作業を行った。なお、後述する実施例の表1における発明例F5のフラックスを用いた。具体的には、全体が白みないし黄みを帯びた軽石状の粒子A、全体が黒みを帯びたガラス状の粒子B、白みないし黄みを帯びた部分と黒みを帯びた部分が混在した粒子Cに分別した。
このように虫眼鏡を用いて外観に基づいて分別した粒子A、B、Cについて、それぞれJIS K5101に準拠して嵩密度を測定したところ、粒子Aは約0.5g/cm3、粒子Bは約1.5g/cm3、粒子Cは約1.0g/cm3であった。この結果から、白みないし黄みを帯びた粒子Aは全体的に気泡を含むため嵩密度が小さく、黒みを帯びた粒子Bは全体的に気泡を含まないため嵩密度が大きく、白みないし黄みを帯びた部分と黒みを帯びた部分が混在した粒子Cは部分的に気泡を含むため、嵩密度は粒子Aと粒子Bのほぼ中間にあると考えることができる。
このような結果から、フラックス粒子の発泡の有無は、前述した画像解析によって精度良く判別することができる。すなわち、本開示に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスでは、前述した画像の二値化処理において白色粒子を発泡フラックス粒子とし、黒色粒子及び黒色と白色が混在した粒子を非発泡フラックス粒子として区別する。
そして、任意に50gのフラックスを採取し、前述した二値化処理により白色粒子と他の粒子(黒色粒子及び黒色と白色が混在した粒子)とを分別し、白色粒子の合計質量を測定することで、発泡フラックス粒子の質量比率X%と非発泡フラックス粒子の質量比率Y%を求めることができる。
珪砂、珪灰石等を原料とするSiO2は溶融スラグの粘性を調整してビード形状を良好にする。SiO2が30%以上であると、溶融スラグの粘性が不足してアンダーカットやスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生し難くなる。一方、SiO2が55%以下であると、スラグの粘度が高くなり過ぎず、ビード形状が良好となり易い。従って、SiO2は30~55%とすることが好ましい。より好ましくは35~50%である。
アルミナ等を原料とするAl2O3は、溶融スラグの粘性を調整するのに有効な成分である。Al2O3が6%以上であると、溶融スラグの粘性が低くなることが抑制され、アンダーカットが発生し難くなる。一方、Al2O3が20%以下であると、溶融スラグの粘性が高くなり過ぎず、ビードが凸状になることが抑制される。従って、Al2O3は6~20%とすることが好ましい。より好ましくは6~15%である。
[MgO:5~20%]
マグネシアクリンカ、酸化マグネシア等を原料とするMgOは、溶融スラグの粘性を調整してビード形状を良好にする。MgOが5%以上であると、溶融スラグの粘性が不足することが抑制され、ビードの蛇行やアンダーカットが発生し難い。一方、MgOが20%以下であると、ビード幅の広がりが不連続となり難い。従って、MgOは5~20%とすることが好ましい。より好ましくは10~20%である。
ミルスケール等を原料とするFeOは、溶融スラグの粘性及び融点を調整してビード形状を良好にする。また、耐ポックマーク性を高める効果がある。FeOが0.5%以上であると、ビードの蛇行や、ポックマークが発生し難くなる。一方、FeOが5%以下であると、スラグが焼き付きスラグ剥離性が悪くなることが抑制される。より好ましくは1~4%である。
酸化マンガン、焙焼マンガン等を原料とするMnOは、溶融スラグの粘性及びスラグ剥離性の調整に有効な成分である。この効果を得るためにMnOを18%以上含むことが好ましい。一方で、MnOの過剰の添加はビード形状を悪化させるため、その上限は28%とすることが好ましい。より好ましくは20~26%である。
ルチール、酸化チタン等を原料とするTiO2は、ビード表面の平滑性を得るのに効果がある。この効果を得るためにTiO2は2%以上含むことが好ましい。一方で、TiO2の過剰の添加はスラグ剥離性が悪くなるため、その上限を6%とすることが好ましい。より好ましくは3~5%である。
蛍石等を原料とするCaF2は、溶融スラグの流動性を調整してスラグ剥離性を良好にする効果がある。この効果を得るために5%以上含むことが好ましい。一方で、CaF2の過剰の添加はガス成分が増加してポックマークが発生するため、その上限を9%とすることが好ましい。より好ましくは5~8%である。
炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等を原料とするNa2O及びK2Oは、アークの安定性を良好する効果がある。その効果を得るために0.5%以上を添加することが好ましい。一方で、Na2O及び/又はK2Oの過剰の添加はビード形状を悪化させるため、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計の上限を2.0%とすることが好ましい。
酸化ビスマス等を原料とするBi2O3は、スラグ剥離性を良好にする効果がある。Bi2O3が0.05%以下であれば、溶接金属の靭性が劣化することが抑制される。従って、Bi2O3は0.05%以下とすることが好ましい。なお、Bi2O3は、微量の添加でスラグ剥離性を良好にする効果が得られるが、その効果を得るためには0.001%以上とすることが好ましい。
酸化ホウ素等を原料とするB2O3は、溶接金属のオーステナイト粒界に生成する初析フェライトの成長を抑制して靭性を向上させる効果がある。B2O3が1.5%以下であれば、溶接金属の高温割れが劣化することが抑制される。従って、B2O3は1.5%以下とすることが好ましい。なお、B2O3は、微量の添加で溶接金属の靭性を向上させる効果が得られるが、その効果を得るためには0.01%以上とすることが好ましい。
酸化カルシウム等を原料とするCaOは、溶接金属の靭性を向上させる効果がある。CaOが5.0%以下であれば、ビード形状が劣化することが抑制される。従って、CaOは5.0%以下とすることが好ましい。なお、CaOは、微量の添加で溶接金属の靭性を向上させる効果が得られるが、その効果を得るためには0.01%以上とすることが好ましい。
酸化バリウム等を原料とするBaOは、溶接金属の靭性を向上させる効果がある。BaOが5.0%以下であれば、ビード形状が劣化することが抑制される。従って、BaOは5.0%以下とすることが好ましい。なお、BaOは、微量の添加で溶接金属の靭性を向上させる効果が得られるが、その効果を得るためには0.01%以上とすることが好ましい。
次にフラックスの粒度について説明する。粒度に基づくフラックスの含有量についても本開示に係る溶融型フラックスの全質量に対する質量%で表し、単に%と記載する。
フラックスの嵩密度は、溶接時に溶融プールの大気とのシールド性および溶接ビードの広がりに作用する。フラックスの嵩密度が0.6g/cm3以上であれば、フラックスの吹上現象が起こり難く、シールド不足となってポックマークが発生することが抑制される。一方、フラックスの嵩密度が1.3g/cm3以下であれば、ビードが広がり難くなってアンダーカットが発生することが抑制される。したがって、本開示に係るフラックスの嵩密度は0.6~1.3g/cm3とすることが好ましい。より好ましい範囲は0.6~1.2g/cm3である。
フラックスの嵩密度の測定は、JIS K5101-12-1:2004に準拠して実施することができる。
嵩密度(g/cm3)=(試料の入った受器の質量(g)-受器の質量(g))/ 受器の内容積(cm3)
次に、本開示に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスの製造方法について説明する。本開示に係る溶融型フラックスの製造方法は、発泡フラックス粒子と非発泡フラックス粒子が式(1)を満たすように含まれれば特に限定されない。例えば、発泡フラックス粒子及び非発泡フラックス粒子の質量比率が異なる複数種のフラックスを製造し、発泡フラックス粒子と非発泡フラックス粒子の質量比(X/(X+Y))が式(1)を満たすように配合してもよい。製造容易性の観点からは、原料、製造条件を調整して、発泡フラックス粒子と非発泡フラックス粒子が式(1)を満たす質量比で形成されるようにフラックスを製造する方法が好ましい。
表1に示す各成分組成、質量比率、嵩密度の溶融フラックスを試作した。なお、表1において下線は、本開示の範囲外であることを示す。また、「0」、「0.0」、又は「0.00」は、その成分を含まない(添加していない)ことを意味する。
表1のフラックス記号F1に示す成分となるように原料を配合、混合し、電気炉で1350℃に加熱して溶融状態のフラックス(メルト)とした後、大量の水中に投入して冷却した。溶融状態のフラックスを投入する前の冷却水の温度を20℃に設定した。
それぞれ表1に示す成分となるように原料の配合を変更したこと以外は溶融フラックスF1と同様の方法により溶融フラックスF2~F17を製造した。
それぞれ表1に示す成分となるように原料の配合を変更したこと以外は溶融フラックスF1と同様の方法により溶融フラックスF21~F22を製造した。
上記のようにして製造した各フラックスを任意に50g採取し、前述した画像解析によって発泡フラックス粒子とその他の粒子(非発泡フラックス粒子)に分別して各粒子の質量比率(%)X、Yを計測した。
また、各フラックスの嵩密度を前述したJIS K5101-12-1:2004に準拠した方法によって測定した。
さらに、各フラックスの粒度について、ロータップ型 ふるい振とう機(伊藤製作所社製、商品名:ロータップ型ふるい振とう機S型)を用い、前述したJIS Z8815:1994「ふるい分け試験方法通則」に準拠した方法により、粒径が0.3mm超~1.4mmのフラックス粒子の質量比率(%)を測定した。
試作した溶融フラックスを用いてサブマージアーク溶接を行った。具体的には、表2に示す溶接条件で表4に示すJIS Z3351:2012 YS-S6のワイヤ径4.8mmのソリッドワイヤと、表3に示すJIS G3136:2012 SN490Bの板厚16mmの鋼板を用いてビードオンプレート溶接を行った。なお、表3及び表4に示す各成分以外はFe及び不純物である。
アークの安定性は、溶接時の溶接電圧変動が±5V以内であれば「安定」とした。
スラグ剥離性は、溶接後のスラグは自然剥離するため、刷毛でスラグを除去し、目視で確認できる残存スラグの面積を推定し、スラグ剥離率95%以上を「良好」、98%以上を「非常に良好」とした。
ビード表面の不整は、溶接長長さ150mmの範囲でビード幅の最小値と最大値の差が7mm以下を「良好」、5mm以下を「非常に良好」とした。また、ビード幅の最小値と最大値の差が7mmを超える場合は「不良」とし、ビード形状の欠陥が生じた場合はその欠陥を記載した。
ブローホールは、JIS Z3104:1995に示す鋼溶接継手の放射線透過試験法に基づいて試験を行い、一つも疵が発生しない場合に無欠陥とした。
それらの評価結果を表5にまとめて示す。
本発明例であるフラックス記号F1~F17は、発泡フラックス粒子の質量比が本開示の範囲内にあり、これらのフラックスを用いたビードオンプレート溶接において、アークが安定してアンダーカット、ピット等が生じずビード形状が良好で、スラグ剥離性も良好であり、ピットやブローホールも生じず、溶接作業性が良好であった。
比較例中フラックス記号F22は、発泡フラックス粒子の質量比が大きいので、オープンアークとなり、アークが安定せず、ビード形状が不良となった。また、ピットやブローホールが生じた。
2 発泡していないフラックス粒子(非発泡フラックス粒子)
Claims (3)
- フラックス全質量に対し、SiO2:32~55%、Al2O3:6~20%、及びMgO:5~20%を含み、CaO:0.0~5.0%であり、
前記フラックス全質量に対し、発泡フラックス粒子の質量比率をX%とし、前記発泡フラックス粒子以外のフラックス粒子の質量比率をY%とするとき、下記(1)式を満たすサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
- 前記フラックス全質量に対し、粒径が0.3mm超~1.4mmの範囲にあるフラックス粒子が90質量%以上である請求項1に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
- 嵩密度が0.6~1.3g/cm3である請求項1又は請求項2に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
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