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JP7790056B2 - 磁気センサ - Google Patents
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JP7790056B2 - 磁気センサ - Google Patents

磁気センサ

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Description

本発明は、磁気センサに関する。
特許文献1には、非磁性基板上に形成された硬磁性体膜からなる薄膜磁石と、前記薄膜磁石の上を覆う絶縁層と、前記絶縁層上に形成された一軸異方性を付与された一個または複数個の長方形状の軟磁性体膜からなる感磁部とを備えた磁気インピーダンス効果素子が記載されている。
非特許文献1には、Ni-Pめっき膜は、高P濃度側でアモルファス構造をとるとともに非磁性となることが記載されている。
特開2008-249406号公報
伊藤、王、渡辺、"電析Ni-P合金めっき膜の微細構造と磁性"、東京都立産業技術研究所研究報告、2001、第4号、p.1-4
軟磁性体層を有する感受素子を磁気インピーダンス効果素子として用いた磁気センサでは、感受素子の構造によっては、磁気センサからの出力における信号(Signal)と雑音(Noise)との比であるS/Nが低下してしまうことがあった。
本発明は、磁気インピーダンス効果を利用した磁気センサの出力におけるS/Nの低下を抑制することを目的とする。
本発明が適用される磁気センサは、複数の軟磁性体層と、複数の軟磁性体層の間に設けられる非磁性アモルファス金属層と、を有し、非磁性アモルファス金属層を挟んで対向する軟磁性体層が反強磁性結合し、磁気インピーダンス効果により磁界を感受する感受素子を備える。
このような磁気センサにおいて、感受素子は、軟磁性体層より導電性が高い導電体層を、さらに備え、導電体層は、一対の軟磁性体層が非磁性アモルファス金属層を挟んで対向するように積層された積層体の複数の間に設けられていることを特徴とすることができる。
そして、非磁性アモルファス金属層は、Tiを含むアモルファス金属で構成されていることを特徴とすることができる。
ここで、非磁性アモルファス金属層は、CrTi及びAlTiのいずれかであることを特徴とすることができる。
さらに、非磁性アモルファス金属層がCrTiである場合、厚さが15nm以上且つ50nm以下の範囲であることを特徴とすることができる。
また、非磁性アモルファス金属層は、Ni及びPを含むアモルファス金属で構成されていることを特徴とすることができる。
そして、非磁性アモルファス金属層は、NiとPとを主としたアモルファス金属で構成され、Pの原子%が19%以上且つ31%以下であることを特徴とすることができる。
このような磁気センサにおいて、非磁性アモルファス金属層は、厚さが30nm以上のAlTiで構成されており、感受素子は、軟磁性体層を軟磁性体層の厚さ方向から見た場合に、還流磁区が形成されていないことを特徴とすることができる。
また、非磁性アモルファス金属層が、厚さが15nm以上且つ50nm以下の範囲のCrTiであり、感受素子は、軟磁性体層を軟磁性体層の厚さ方向から見た場合に、還流磁区が形成されていないことを特徴とすることができる。
さらに、非磁性アモルファス金属層は、NiとPとを主としたアモルファス金属で構成され、Pの原子%が19%以上且つ31%以下であり、感受素子は、軟磁性体層を軟磁性体層の厚さ方向から見た場合に、還流磁区が形成されていないことを特徴とすることができる。
また、このような磁気センサにおいて、非磁性の基板と、基板と感受素子との間に、硬磁性体で構成され面内方向に磁気異方性を有する薄膜磁石と、をさらに備え、感受素子は、長手方向と短手方向とを有し、長手方向が薄膜磁石の発生する磁界の方向に向いていることを特徴とすることができる。
さらに、このような磁気センサにおいて、感受素子の長手方向の端部に対向するように薄膜磁石上に積層され、薄膜磁石の発生する磁束が感受素子を長手方向に透過するように誘導する一対のヨークを、さらに備え、ヨークは、複数の軟磁性体層と、軟磁性体層の間に積層される非磁性アモルファス金属層とを備えることを特徴とすることができる。
本発明によれば、磁気インピーダンス効果を利用した磁気センサの出力におけるS/Nの低下を抑制することができる。
(a)~(b)は、本実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。 (a)~(b)は、本実施の形態が適用される感受部のそれぞれの感受素子の構成を説明する図である。 磁気センサの感受部における感受素子の長手方向に印加された磁界と感受部のインピーダンスとの関係を説明する図である。 (a)~(d)は、従来の磁気センサにおいて、感受素子に印加される磁界の強さと、感受素子における磁区の変化との関係を説明するための図である。 感受素子に印加される磁界の強さと、感受素子における磁化の強さとの関係を説明するための図である。 (a)~(d)は、図2に示した構造を有する本実施の形態が適用される感受素子の磁区の状態を撮影して得た写真である。 感受素子のS/Nを示す図である。 感受素子の異方性磁界を示す図である。 (a)~(b)は、本実施の形態における感受部のそれぞれの感受素子の変形例の構成を説明する図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態(本実施の形態)について説明する。
図1(a)~(b)は、本実施の形態が適用される磁気センサ1の一例を説明する図である。図1(a)は、磁気センサ1の平面図、図1(b)は、図1(a)におけるIB-IB線での断面図である。
図1(b)に示すように、本実施の形態が適用される磁気センサ1は、非磁性の基板10上に設けられた硬磁性体(硬磁性体層103)で構成された薄膜磁石20と、薄膜磁石20に対向して設けられた磁界を感受する感受部30とを備える。なお、磁界を磁場と表記することがある。
磁気センサ1の断面構造については、後に詳述する。
ここで硬磁性体とは、外部磁界によって磁化されると、外部磁界を取り除いても磁化された状態が保持される、いわゆる保磁力の大きい材料である。一方、軟磁性体とは、外部磁界によって容易に磁化されるが、外部磁界を取り除くと速やかに磁化がないか又は磁化が小さい状態に戻る、いわゆる保磁力の小さい材料である。
なお、本明細書においては、磁気センサ1を構成する要素(薄膜磁石20など)を二桁の数字で表し、要素に加工される層(硬磁性体層103など)を100番台の数字で表す。そして、要素に対して、要素に加工される層を( )内に表記する場合がある。例えば薄膜磁石20の場合、薄膜磁石20(硬磁性体層103)と表記する。図においては、20(103)と表記する。他の場合も同様である。
図1(a)により、磁気センサ1の平面構造を説明する。磁気センサ1は、一例として四角形の平面形状を有する。ここでは、磁気センサ1の最上部に形成された感受部30及びヨーク40を説明する。
感受部30は、複数の感受素子31と、隣接する感受素子31をつづら折りに直列接続する接続部32と、電流供給のための電線が接続される端子部33a、33bとを備える。図1(a)に示す磁気センサ1の感受部30では、4個の感受素子31が、長手方向が並列するように配置されている。この感受素子31が、磁気インピーダンス効果によって磁界を感受する磁気インピーダンス効果素子である。感受素子31は、例えば、長手方向の長さが1mm~2mm、短手方向の幅が50μm~150μmである。また、隣接する感受素子31同士の間隔は、50μm~150μmである。
接続部32は、隣接する感受素子31の端部間に設けられ、隣接する感受素子31をつづら折りに直列接続する。図1(a)に示す磁気センサ1では、4個の感受素子31が並列に配置されているため、接続部32は3個ある。接続部32の数は、感受素子31の数によって異なる。例えば、感受素子31が3個であれば、接続部32は2個である。また、感受素子31が1個であれば、接続部32を備えない。なお、接続部32の幅は、感受部30に印加するパルス電圧の大きさ等によって設定すればよい。例えば、接続部32の幅は、感受素子31と同じであってもよい。
端子部33a、33bは、接続部32で接続されていない感受素子31の端部(2個)にそれぞれ設けられている。端子部33a、33bをそれぞれ区別しないときは、端子部33と表記する。端子部33は、電線を接続しうる大きさであればよい。なお、本実施の形態の感受部30は、感受素子31が4個であるため、2個の端子部33は、図1(a)において左側に設けられている。感受素子31の数が奇数の場合には、2個の端子部33を左右に分けて設ければよい。
さらに、磁気センサ1は、感受素子31の長手方向の端部に対向して設けられたヨーク40を備える。ここでは、感受素子31の長手方向の両端部に対向してそれぞれ設けられた2個のヨーク40a、40bを備える。なお、ヨーク40a、40bをそれぞれ区別しない場合は、ヨーク40と表記する。ヨーク40は、感受素子31の長手方向の端部に磁力線を誘導する。このため、ヨーク40は、磁力線が透過しやすい軟磁性体層109で構成されている。
なお、感受素子31の長手方向に磁力線が十分透過する場合には、ヨーク40を備えなくてもよい。
磁気センサ1の大きさは、平面形状において数mm角である。なお、磁気センサ1の大きさは、他の値であってもよい。
次に、図1(b)により、磁気センサ1の断面構造を説明する。磁気センサ1は、非磁性の基板10上に、密着層101、制御層102、薄膜磁石20を構成する硬磁性体層103、及び誘電体層104がこの順に積層(配置)され、誘電体層104上に感受部30とヨーク40とが設けられて構成されている。
基板10は、非磁性体からなる基板であって、例えばガラス、サファイアといった酸化物基板やシリコン等の半導体基板、あるいは、アルミニウム、ステンレススティール、ニッケルリンメッキを施した金属等の金属基板等が挙げられる。
密着層101は、基板10に対する制御層102の密着性を向上させるための層である。密着層101としては、Cr又はNiを含む合金を用いるのがよい。Cr又はNiを含む合金としては、CrTi、CrTa、NiTa等が挙げられる。密着層101の厚さは、例えば5nm~50nmである。なお、基板10に対する制御層102の密着性に問題がなければ、密着層101を設けることを要しない。なお、本明細書においては、Cr又はNiを含む合金の組成比を示さない。以下、組成比を明示する場合を除き、同様である。
制御層102は、硬磁性体層103で構成される薄膜磁石20の磁気異方性が膜の面内方向に発現しやすいように制御する層である。制御層102としては、Cr、Mo若しくはW又はそれらを含む合金(以下では、制御層102を構成するCr等を含む合金と表記する。)を用いるのがよい。制御層102を構成するCr等を含む合金としては、CrTi、CrMo、CrV、CrW等が挙げられる。制御層102の厚さは、例えば10nm~300nmである。
薄膜磁石20を構成する硬磁性体層103は、Coを主成分とし、Cr又はPtのいずれか一方又は両方を含む合金(以下では、薄膜磁石20を構成するCo合金と表記する。)を用いることがよい。薄膜磁石20を構成するCo合金としては、CoCrPt、CoCrTa、CoNiCr、CoCrPtB等が挙げられる。なお、Feが含まれていてもよい。硬磁性体層103の厚さは、例えば1μm~3μmである。
制御層102を構成するCr等を含む合金は、bcc(body-centered cubic(体心立方格子))構造を有する。よって、薄膜磁石20を構成する硬磁性体(硬磁性体層103)は、bcc構造のCr等を含む合金で構成された制御層102上において結晶成長しやすいhcp(hexagonal close-packed(六方最密充填))構造であるとよい。bcc構造上にhcp構造の硬磁性体層103を結晶成長させると、hcp構造のc軸が面内に向くように配向しやすい。よって、硬磁性体層103によって構成される薄膜磁石20が面内方向に磁気異方性を有するようになりやすい。なお、硬磁性体層103は結晶方位の異なる集合からなる多結晶であり、各結晶が面内方向に磁気異方性を有する。この磁気異方性は結晶磁気異方性に由来するものである。
なお、制御層102を構成するCr等を含む合金及び薄膜磁石20を構成するCo合金の結晶成長を促進するために、基板10を100℃~600℃に加熱するとよい。この加熱により、制御層102を構成するCr等を含む合金が結晶成長しやすくなり、hcp構造を持つ硬磁性体層103が面内に磁化容易軸を持つように結晶配向されやすくなる。つまり、硬磁性体層103の面内に磁気異方性が付与されやすくなる。
誘電体層104は、非磁性の誘電体で構成され、薄膜磁石20と感受部30との間を電気的に絶縁する。誘電体層104を構成する誘電体としては、SiO、Al、TiO等の酸化物、又はSi、AlN等の窒化物等が挙げられる。また、誘電体層104の厚さは、例えば0.1μm~30μmである。
次に、感受部30のそれぞれの感受素子31の構造を説明する。
図2(a)~(b)は、本実施の形態が適用される感受部30のそれぞれの感受素子31の構成を説明する図である。図2(a)は、図1(b)に示した磁気センサ1における感受素子31の拡大断面図、図2(b)は、感受素子31における磁化方向を示す図である。なお、図2(b)における矢印は、磁化方向を示す。なお、図2(a)~(b)は、感受素子31の短手方向の断面図である。
図2(a)に示すように、感受部30のそれぞれの感受素子31は、誘電体層104(図1(b)参照)側から、軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106a、軟磁性体層105b、導電体層107、軟磁性体層105c、非磁性アモルファス金属層106b、及び軟磁性体層105dが順に積層されて構成されている。なお、軟磁性体層105a~105d、及び非磁性アモルファス金属層106a、106bをそれぞれ区別しない場合は、軟磁性体層105、及び非磁性アモルファス金属層106と表記する。また、軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106a、及び軟磁性体層105bを積層体108a、軟磁性体層105c、非磁性アモルファス金属層106b、及び軟磁性体層105dを積層体108bと表記する。なお、積層体108a、108bをそれぞれ区別しない場合は積層体108と表記する。
言い換えると、図2に示すように、本実施の形態が適用される感受素子31は、一対の軟磁性体層105が非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向するように積層された(設けられた)積層体108(図2では、積層体108a、108bと表記する。)の複数(ここでは、二個)が、導電体層107を挟んで積層されて(設けられて)いる。なお、積層体108は、二個であることを要せず、三個以上がそれぞれ導電体層107を介して積層されていてもよい。
ここで、導電体層107は、感受素子31の抵抗を低減するために設けられている。例えば、導電体層107は、軟磁性体層105に比べて導電性が高い層である。なお、導電性が高いとは、例えばシート抵抗が小さいことをいう。
図2(b)に示すように、感受素子31では、非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向する軟磁性体層105同士が、非磁性アモルファス金属層106の作用により反強磁性結合(AFC:Anti-Ferro-Coupling)している。より具体的には、感受素子31では、非磁性アモルファス金属層106aを挟んで対向する軟磁性体層105aと軟磁性体層105bとが反強磁性結合し、非磁性アモルファス金属層106bを挟んで対向する軟磁性体層105cと軟磁性体層105dとが反強磁性結合する。なお、導電体層107を挟んで対向する軟磁性体層105bと軟磁性体層105cとが反強磁性結合している。
軟磁性体層105としては、Coを主成分とした合金に高融点金属Nb、Ta、W等を添加したアモルファス合金(以下では、軟磁性体層105を構成するCo合金と表記する。)を用いるのがよい。軟磁性体層105を構成するCo合金としては、CoNbZr、CoFeTa、CoWZr等が挙げられる。
また、図2(a)において軟磁性体層105a、105b、105c、105dとして示すそれぞれの軟磁性体層105の厚さは、10nm以上且つ2000nm以下の範囲とすることができ、100nm以上且つ1000nm以下の範囲とすることが好ましい。
非磁性アモルファス金属層106としては、非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向する軟磁性体層105を反強磁性結合させる作用を有する非磁性のアモルファス金属を用いることができ、具体的には、CrTi、AlTi、NiP、CrB、CrTa、CoW等が挙げられる。
また、非磁性アモルファス金属層106の厚さは、非磁性アモルファス金属層106を構成する材料によっても異なる。後述するが、薄すぎる場合は、感受素子31のS/Nが小さくなり、厚すぎる場合は、非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向する軟磁性体層105同士の反強磁性結合エネルギーが弱くなるおそれがある。
なお、アモルファス合金、アモルファス金属とは、結晶のような原子の規則的な配列を有しない構造を有し、スパッタリング法などで形成されるものをいう。
導電体層107は、感受素子31の抵抗を低減する層であればよく、例えば軟磁性体層105に比べて導電性が高い層である。導電体層107としては、導電性が高い金属又は合金を用いることが好ましく、導電性が高く且つ非磁性の金属又は合金を用いることがより好ましい。具体的には、導電体層107として、Ag、Al、Cu等の金属を用いるのがよい。導電体層107の厚さは、例えば、10nm~500nmである。なお、導電体層107の厚さは、後述する感受素子31の抵抗Rや感受する磁界の値等が所望の値となるよう、軟磁性体層105として用いる感受素子31を構成するCo合金や導電体層107として用いる導電体の種類等によって変更できる。
導電体層107を用いることについては、後に詳述する。
感受素子31は、長手方向に交差する方向、例えば長手方向に直交する短手方向(すなわち、感受素子31の幅方向)に、一軸磁気異方性が付与されている。つまり、短手方向が磁化方向になっている。なお、長手方向に交差する方向とは、長手方向に対して45°を超えた角度を有すればよい。
図1(a)~(b)に戻って、接続部32、端子部33及びヨーク40を説明する。
接続部32及び端子部33を構成する導電体層110は、導電性に優れた導電体であればよく、例えば、Ag、Cu、Au、Al等が用いられるが特に限定されるものではない。また、接続部32及び端子部33を、感受素子31と一体に形成してもよい。このようにすることで、接続部32及び端子部33を、別途形成することを要しない。
ヨーク40は、感受素子31の長手方向の端部に磁力線を誘導する。このため、ヨーク40は、磁力線が透過しやすい軟磁性体層109で構成されていることがよい。前述したように、感受素子31は、軟磁性体層105を含んで構成されているので、ヨーク40を感受素子31と同じ構造としてもよい。このようにすれば、ヨーク40を別途形成することを要しない。
本実施の形態の磁気センサ1では、密着層101、制御層102、硬磁性体層103、及び誘電体層104は、平面形状が四角形(図1参照)になるように加工されている。そして、露出した側面のうち、対向する2つの側面において、薄膜磁石20がN極(図1(b)における(N))及びS極(図1(b)における(S))となっている。なお、薄膜磁石20のN極とS極とを結ぶ線が、感受部30の感受素子31の長手方向に向くようになっている。ここで、長手方向を向くとは、N極とS極とを結ぶ線と長手方向とがなす角度が45°未満であることをいう。なお、N極とS極とを結ぶ線と長手方向とがなす角度は、小さいほどよい。
磁気センサ1において、薄膜磁石20のN極から出た磁力線は、一旦磁気センサ1の外部に出る。そして、一部の磁力線が、ヨーク40aを介して感受素子31を透過し、ヨーク40bを介して再び外部に出る。そして、感受素子31を透過した磁力線が感受素子31を透過しない磁力線とともに薄膜磁石20のS極に戻る。つまり、薄膜磁石20は、感受素子31の長手方向に磁界(後述するバイアス磁界Hb)を印加する。
なお、薄膜磁石20のN極とS極とをまとめて両磁極と表記し、N極とS極とを区別しない場合は磁極と表記する。
なお、図1(a)に示すように、ヨーク40(ヨーク40a、40b)は、基板10の表面側から見た形状が、感受部30に近づくにつれて狭くなっていくように構成されている。これは、感受部30に磁界を集中させる(磁力線を集める)ためである。つまり、感受部30における磁界を強くして感度のさらなる向上を図っている。なお、ヨーク40(ヨーク40a、40b)の感受部30に対向する部分の幅を狭くしなくてもよい。
ここで、ヨーク40(ヨーク40a、40b)と感受部30との間隔は、例えば1μm~100μmであればよい。
(磁気センサ1の作用)
続いて、磁気センサ1の作用について説明する。
図3は、磁気センサ1の感受部30における感受素子31の長手方向に印加された磁界Hと感受部30のインピーダンスZとの関係を説明する図である。図3において、横軸が磁界H、縦軸がインピーダンスZである。感受部30のインピーダンスZは、2個の端子部33間に高周波電流を供給して(流して)測定される。
図3に示すように、感受部30のインピーダンスZは、感受素子31の長手方向に印加する磁界Hが大きくなるにしたがい大きくなる。そして、印加する磁界Hが感受素子31の異方性磁界Hkより小さい範囲において、磁界Hの変化量ΔHに対してインピーダンスZの変化量ΔZが急峻な部分(ΔZ/ΔHが大きい)を用いると、磁界Hの微弱な変化をインピーダンスZの変化量ΔZとして取り出すことができる。図3では、ΔZ/ΔHが大きい磁界Hの中心を磁界Hbとして示している。つまり、磁界Hbの近傍(図3で矢印で示す範囲)における磁界Hの変化量(ΔH)が高精度に測定できる。磁界Hbは、バイアス磁界と呼ばれることがある。以下では、磁界Hbをバイアス磁界Hbと表記する。
磁気インピーダンス効果素子として、導電体層107を含まない感受素子31を用いた磁気センサ1では、供給する電流の周波数が高いと、磁界Hの変化量ΔHに対するインピーダンスZの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が低下する場合がある。例えば、供給する電流の周波数が100MHz未満においては、インピーダンスZの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が増加するが、供給する電流の周波数が100MHz以上において、インピーダンスZの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が低下する場合がある。言い換えると、導電体層107を含まない感受素子31を用いた磁気センサ1では、供給する電流の周波数が高いと、磁界Hの変化に対する感度が低下する場合がある。
周波数の高い電流を供給した場合の磁気センサ1の感度の低下は、並列する感受素子31同士の間隙や、感受素子31(感受部30)とヨーク40との間隙で生じる浮遊容量の影響によるものと推測される。付言すると、磁気センサ1におけるインピーダンスZのうち、虚部の容量性成分(容量性リアクタンス)が大きくなることの影響によるものと推測される。
そして、磁気センサ1において、感受素子31の長さを長くしたり、並列させる感受素子31の個数を多くしたりすると、感受素子31同士の間隙や感受素子31(感受部30)とヨーク40との間隙が多くなるため、浮遊容量の影響が大きくなりやすい。この結果、磁気センサ1の感度の低下が顕著になるものと考えられる。
磁気センサ1において感受素子31の抵抗をR、浮遊容量をCとし、感受素子31が抵抗Rと浮遊容量Cとの並列回路で構成されているとする。すると、この磁気センサ1の緩和周波数fは、抵抗Rが小さいほど、又は浮遊容量Cが小さいほど高くなる。つまり、抵抗Rが小さいほど、又は浮遊容量Cが小さいほど、周波数が高い電流を供給した場合の磁気センサ1の感度が向上する。そこで、本実施の形態が適用される磁気センサ1では、感受素子31に導電体層107を設け、供給する電流の周波数が高い場合でも、インピーダンスZの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が低下することを抑制している。
(従来の磁気センサにおいて生じうる課題)
ところで、磁気インピーダンス効果素子として感受素子31を備える従来の磁気センサでは、感受素子31の構造によっては、磁気センサからの出力における信号(Signal)と雑音(Noise)との比であるS/Nが低下してしまう場合がある。例えば、感受素子31が1層の軟磁性体層から構成される場合、S/Nが低下してしまう場合がある。これは、感受素子31に磁化の向きが環状を呈する還流磁区(詳細については後述する。)が形成され、バイアス磁界Hbの近傍において、磁界Hの変化に伴って還流磁区を構成する磁壁が移動することによるものと推測される。
以下、感受素子31に形成される還流磁区によって磁気センサのS/Nが低下する現象について、具体的に説明する。
図4(a)~(d)は、従来の磁気センサにおいて、感受素子31に印加される磁界Hの強さと、感受素子31における磁区の変化との関係を説明するための図である。なお、ここでは、磁界Hが0である初期状態において、既に、感受素子31の短手方向に一軸磁気異方性が付与されているものとする。
図4(a)は、磁界Hが0に近い非常に弱い状態(「初透磁率範囲」と称する、詳細は後述する)における、感受素子31の磁区構造の一例を示している。図4(b)は、図4(a)に示す状態よりも磁界Hを強くした状態(「不可逆磁壁移動範囲」と称する、詳細は後述する)における、感受素子31の磁区構造の一例を示している。図4(c)は、図4(b)に示す状態よりも磁界Hを強くした状態(「回転磁化範囲」と称する、詳細は後述する)における、感受素子31の磁区構造の一例を示している。図4(d)は、図4(c)に示す状態よりも磁界Hを強くした状態(「飽和」と称する、詳細は後述する)における、感受素子31の磁区構造の一例を示している。
図5は、感受素子31に印加される磁界Hの強さと、感受素子31における磁化Mの強さとの関係を説明するための図である。図5において、横軸は磁界H(Oe)であり、縦軸は磁化M(a.u.)である。なお、図5には、磁界H及び磁化Mと、上記「初透磁率範囲」、「不可逆磁壁移動範囲」、「回転磁化範囲」及び「飽和」との関係も示されている。
図5において、外部から感受素子31に印加される磁界Hが、0から磁壁移動磁界Hw(詳細は後述する)に至るまでの範囲が「初透磁率範囲」である。
初透磁率範囲において、感受素子31には、それぞれの磁化Mの向きが異なる複数の磁区が形成されている。図4(a)を参照してより具体的に説明すると、感受素子31は、磁化Mの向きが磁化容易軸方向(短手方向)を向く第1の磁区D1及び第2の磁区D2と、磁化Mの向きが磁化困難軸方向(長手方向)を向く第3の磁区D3及び第4の磁区D4とを有している。このとき、第1の磁区D1及び第2の磁区D2は互いに逆向きであり、第3の磁区D3及び第4の磁区D4も互いに逆向きである。そして、これら4つの磁区は、図中時計回り方向に、「第1の磁区D1」→「第3の磁区D3」→「第2の磁区D2」→「第4の磁区D4」→「第1の磁区D1」となるように循環して配置される。その結果、これら4つの磁区は、全体としてみたときに、磁化Mの向きが環状を呈する還流磁区を形成している。
また、マクロ的にみれば、感受素子31では、複数の還流磁区が長手方向に沿って並べて配置されている。そして、各還流磁区では、上述した磁化容易軸と磁化困難軸との関係に基づき、磁化容易軸に沿う第1の磁区D1及び第2の磁区D2の各面積が、磁化困難軸に沿う第3の磁区D3及び第4の磁区D4の各面積よりも大きくなっている。
そして、初透磁率範囲では、磁界Hの変化に対して各還流磁区を構成する各磁区がそのままの状態に維持される。換言すれば、磁界Hが0~磁壁移動磁界Hwにある場合、磁界Hが増加したとしても、図4(a)に示す磁区構造は変化しないままである。
図5において、外部から感受素子31に印加される磁界Hが、磁壁移動磁界Hwから磁化回転磁界Hr(詳細は後述する)に至るまでの範囲を、「不可逆磁壁移動範囲」という。
磁界Hが、感受素子31を構成する軟磁性体層105の特性(材料、構造、寸法など)に基づいて定まる磁壁移動磁界Hwを超えると、各還流磁区では、隣接する磁区同士の間に存在する磁壁の位置が磁界Hの作用に伴って移動する、磁壁移動が生じる。図4(b)を参照してより具体的に説明すると、各還流磁区では、磁界Hと磁化Mの向きとが同じ第4の磁区D4と、第4の磁区D4に隣接する第1、第2の磁区D1、D2との間に存在する磁壁が、第4の磁区D4の面積を増加させる側に移動する。また、磁界Hと磁化Mの向きとが逆の第3の磁区D3と、第3の磁区D3に隣接する第1、第2の磁区D1、D2との間に存在する磁壁が、第3の磁区D3の面積を減少させる側に移動する。その結果、第4の磁区D4の面積は、図4(a)に示す初透磁率範囲のときよりも増加し、残りの第1の磁区D1~第3の磁区D3の各面積は、初透磁率範囲のときよりも減少する。
また、不可逆磁壁移動範囲における磁壁の移動は、磁界Hの増加に伴って不連続に生じる。その結果、磁界Hに対する感受素子31全体での磁化Mの変化は、図5に要部を拡大して示すように、直線状や曲線状ではなく、階段状(ギザギザ状)となる。なお、このような磁界Hと磁化Mとの関係は、バルクハウゼン効果と呼ばれている。
そして、不可逆磁壁移動範囲では、磁界Hの変化に対して各還流磁区を構成する各磁区の面積比が徐々に変化していく状態が続く。より具体的に説明すると、磁界Hが磁壁移動磁界Hw~磁化回転磁界Hrにある場合、磁界Hの増加に伴って、第4の磁区D4の面積は漸次増加していき、第1の磁区D1~第3の磁区D3の各面積は漸次減少していく。
図5において、外部から印加される磁界Hが、磁化回転磁界Hrから異方性磁界Hkに至るまでの範囲を、「回転磁化範囲」という。
磁界Hが、感受素子31を構成する軟磁性体層105の特性(材料、構造、寸法など)に基づいて定まる磁化回転磁界Hrを超えると、各還流磁区では、隣接する磁区同士の間に存在する磁壁の位置が略固定された状態で、磁化Mの向きが磁界Hの向きとは異なる磁区において、磁化Mの向きが磁界Hの向きと同じ側を向くように磁化回転が生じる。図4(c)を参照してより具体的に説明すると、磁化Mの向きが磁界Hの向きとは異なる第1~第3の磁区D1~D3のそれぞれにおいて、磁化Mの向きが磁界Hの向きと同じ側を向くように徐々に回転していく、磁化回転が生じる。このとき、第4の磁区D4は、自身の磁化の向きが既に磁界Hの向きと一致していることから、そのままの状態を維持する。
そして、回転磁化範囲では、磁界Hの変化に対して各還流磁区を構成する各磁区の面積比はほぼ変わらない一方、第1~第3の磁区D1~D3の磁化Mの向きが徐々に変化していく状態が続く。つまり、磁界Hが磁化回転磁界Hr~異方性磁界Hkにある場合、磁界Hの増加に伴って、第4の磁区D4の磁化Mの向きは変わらないものの、他の第1~第3の磁区D1~D3の各磁化Mの向きは磁界Hの向きと一致する側に向かって徐々に回転していく。
ただし、回転磁化範囲では、第1~第3の磁区D1~D3における各磁化Mの向きの回転が連続的に生じる。したがって、回転磁化範囲では、磁界Hに対する感受素子31全体での磁化Mの変化は、図5に示したように曲線状となる。そして、回転磁化範囲では、磁界Hの増加に対する感受素子31全体での磁化Mの増加は、磁界Hの増加に伴って鈍化し、最大値となる異方性磁界Hkの近傍において略平坦となる。
図5において、外部から印加される磁界Hが、異方性磁界Hkを超えた領域を、「飽和」という。
磁界Hが、上記異方性磁界Hkを超えると、各還流磁区における磁化Mの向きが、磁界Hの向きに揃う。図4(d)を参照してより具体的に説明すると、第1~第3の磁区D1~D3における磁化Mの向きが、第4の磁区D4における磁化Mの向きに揃う。その結果として、隣接する磁区同士の間に存在していた磁壁が消滅し、感受素子31が1つの磁区(単磁区)で形成されることになる。
また、飽和では、複数の還流磁区を備えた構成から単磁区を備えた構成へと磁区構造が変化したことに伴い、磁界Hの変化に対して感受素子31全体の磁化Mが変化しなくなって、略一定の値をとるようになる。
通常、磁気センサでは、バイアス磁界Hbの大きさを、磁界Hの変化量ΔHに対する磁化Mの変化量ΔMが大きい(すなわち、磁界Hの変化量ΔHに対するインピーダンスZの変化量ΔZが大きい)不可逆磁壁移動範囲に設定する。そして、不可逆磁壁移動範囲では、感受素子31に還流磁区が形成されていると、磁界Hの変化に伴って、還流磁区を構成する磁壁が階段状に不連続に移動するバルクハウゼン効果が生じる。この感受素子31における磁壁の不連続な移動がノイズとなり、磁気センサから得られる出力におけるS/Nが低下するものと推測される。
したがって、磁壁の不連続な移動に伴うノイズを低減し、磁気センサから得られる出力におけるS/Nの低下を抑制するためには、感受素子31に形成される磁区を大きくし、感受素子31に還流磁区が形成されないようにすることが好ましい。
(本実施の形態の感受素子31の磁区構造)
これに対し、本実施の形態の磁気センサ1における感受素子31は、二つの軟磁性体層105が非磁性アモルファス金属層106を介して対向するように構成されている。このようにすることで、感受素子31に還流磁区が形成されにくくしている。なお、図2(a)に示したように、本実施の形態の磁気センサ1における感受素子31では、誘電体層104(図1(b)参照)上に、軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106a、軟磁性体層105b、導電体層107、軟磁性体層105c、非磁性アモルファス金属層106b、軟磁性体層105dが順に積層されて構成されている。
本実施の形態の磁気センサ1は、磁界Hの変化量ΔHに対して磁化Mが変化するのではなく、透磁率μが変化する。透磁率μの変化によって表皮深さ(δ=√(2ρ/ωμ))が変化し、その結果、インピーダンスZが変化する。
以下、本実施の形態が適用される感受素子31の磁区構造を、非磁性アモルファス金属層106の厚さとの関係において説明する。
図6(a)~(d)は、図2に示した構造を有する本実施の形態が適用される感受素子31の磁区の状態を撮影して得た写真である。
感受素子31は、図2(a)に示したように、軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106a、軟磁性体層105b、導電体層107、軟磁性体層105c、非磁性アモルファス金属層106b、軟磁性体層105dが順に積層されて構成されている。そして、軟磁性体層105(軟磁性体層105a、105b、105c、105d)は、厚さ250nmのCo80Nb17Zr(数字は、原子%)である。非磁性アモルファス金属層106a、106bは、CrTi(原子%は共に50%)である。導電体層107は、厚さ300nmのAgである。
ただし、図6(a)は、非磁性アモルファス金属層106a、106bを含まない場合(CrTi=0nmと表記)であって、軟磁性体層105aと軟磁性体層105bとが一体となった500nmのCo80Nb17Zrの軟磁性体層と、軟磁性体層105cと軟磁性体層105dとが一体となった500nmのCo80Nb17Zrの軟磁性体層とが、Agの導電体層を挟んで積層されている。
図6(b)は、CrTiの非磁性アモルファス金属層106a、106bの厚さが15nmの場合(CrTi=15nmと表記)、図6(c)は、CrTiの非磁性アモルファス金属層106a、106bの厚さが30nmの場合(CrTi=30nmと表記)、図6(d)は、CrTiの非磁性アモルファス金属層106a、106bの厚さが50nmの場合(CrTi=50nmと表記)である。なお、図6(a)~(d)は、外部磁界を印加していない状態(0Oe)において、ネオアーク社製のNeomagnesia Liteを用いて撮影した。
図6(a)に示すように、非磁性アモルファス金属層106a、106bを含まない場合(CrTi=0nm)では、感受素子31の長手方向に並んだ複数の磁区が観察された。この状態は、図4(a)に示した磁区構造と同様である。
これに対して、図6(b)~(d)に示すように、CrTiの非磁性アモルファス金属層106a、106bの厚さが15nm以上において、感受素子31に、磁区(還流磁区)が観察されない。つまり、Co80Nb17Zrを軟磁性体層105とし、非磁性アモルファス金属層106がCrTiである場合、CrTiの非磁性アモルファス金属層106の厚さが15nm以上であれば、磁区が観察されない。つまり、CrTiの非磁性アモルファス金属層106は、軟磁性体層105における磁区の発生を抑制する層として機能する。
図6(b)~(d)には、磁区の発生を抑制する層である非磁性アモルファス金属層106としてCrTiを用いた場合を示したが、非磁性アモルファス金属層106として、AlTi、NiP、CrB、CrTa、CoWなどであってもよい。
なお、非磁性アモルファス金属層106の代わりに、Ru又はSiOの非磁性体層を用いても、磁区の発生が抑制される場合がある。
よって、これらの磁区の発生を抑制しうる層を、磁区抑制層と表記する。
図7は、感受素子31のS/Nを示す図である。ここでは、磁区抑制層として、非磁性アモルファス金属層106であるCrTi、AlTi及びNiPを用いた場合(それぞれCrTi、AlTi、NiPと表記)、及び非磁性体層であるSiOを用いた場合(SiOと表記)を示す。図7において、横軸が磁区抑制層の厚さ(nm)、縦軸がS/Nである。なお、磁区抑制層の厚さ0は、磁区抑制層を用いていない場合である。
S/Nは、AM変調ブリッジ回路を使って、磁気センサ1の信号(Signal)と雑音(Noise)とから評価した。具体的な評価方法は、磁気センサ1をAM変調ブリッジ回路に設置し、ソレノイドコイルから1Hzの正弦波信号磁界を磁気センサ1に入れ、その信号磁界によって発生するAM変調ブリッジ回路の出力を信号(Signal)とし、信号磁界を入れていない時の出力をノイズ(Noise)とする。そして、高速フーリエ変換(FFT)を行い、1Hzにおける信号(Signal)と雑音(Noise)との比をS/Nとした。
図7において、磁区抑制層を非磁性アモルファス金属層106のCrTiとした場合(CrTi)の感受素子31の構成は、図6に示した感受素子31と同じである。磁区抑制層を非磁性アモルファス金属層106のAlTiとした場合(AlTi)の感受素子31においてAlとTiとの原子%は、共に50%であり、感受素子31の各層の厚さは、CrTiを用いた場合と同じである。さらに、磁区抑制層を非磁性アモルファス金属層106のNiPとした場合(NiP)の感受素子31においてNiとPとの原子%は、80%と20%であり、感受素子31の各層の厚さは、CrTiを用いた場合と同じである。また、磁区抑制層を非磁性体層であるSiOとした場合(SiO)の感受素子31の構成における各層の厚さは、CrTiを用いた場合と同じである。
まず、図7において、磁区抑制層として非磁性アモルファス金属層106のCrTiを用いた場合(CrTi)を説明する。
CrTiの厚さが0nmの場合、つまり磁区抑制層を有しない場合のS/Nは、4.0である。そして、磁区抑制層としてCrTiを用いることで、S/Nは、磁区抑制層を有しない場合より大きくなる。そして、CrTiが厚くなるにしたがいS/Nが向上する。つまり、CrTiの厚さが10nmの場合のS/Nは17.2で、磁区抑制層を有しない場合の4倍である。そして、CrTiの厚さが15nmの場合のS/Nは36.5で、磁区抑制層を有しない場合の9倍である。また、CrTiの厚さが25nm以上且つ50nm以下の場合のS/Nは40で、磁区抑制層を有しない場合の10倍である。言い換えれば、非磁性アモルファス金属であるCrTiを軟磁性体層105の間に磁区抑制層として挟むことにより、S/Nが向上することが分かる。特に、厚さが15nm以上且つ50nm以下のCrTiにおいて、S/Nがほぼ同じであって、厚さ15nmでS/Nの向上が飽和する傾向にある。
これは、図6(b)~(d)に示したように、厚さが15nm以上のCrTiが磁区の発生を抑制する磁区抑制層として機能することによる。つまり、磁区の発生が抑制されることにより、還流磁区を構成する磁壁の不連続な移動に伴うノイズ、つまりバルクハウゼン効果によるノイズが抑制され、磁気センサ1から得られるS/Nの低下が抑制されるためと考えられる。
なお、CrTiの厚さが50nm超となると、CrTiの非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向する軟磁性体層105同士の反強磁性結合エネルギーが弱くなるおそれがある。このため、CrTiは、厚さが15nm以上且つ50nm以下であることが好ましい。
次に、図7において、磁区抑制層を非磁性アモルファス金属層106のAlTiとした場合(AlTi)を説明する。
この場合も、AlTiが厚くなるにしたがいS/Nが大きくなる。つまり、AlTiの厚さが15nmの場合のS/Nは5.6であり、磁区抑制層を有しない場合(CrTiの0nmにおける4.0)の1.4倍である。AlTiの厚さが30nmの場合のS/Nは36.1になり、磁区抑制層を有しない場合の9倍である。そして、AlTiの厚さが35nmの場合のS/Nは32.5、AlTiの厚さが40nmの場合のS/Nは35.1である。つまり、AlTiの厚さが30nm以上において、S/Nは、ほぼ35である。このS/Nは、磁区抑制層を有しない場合の8.8倍である。
AlTiにおけるS/N向上の傾向は、CrTiの場合と同様で、厚くなるとS/Nが向上するが、ある厚さで飽和する。しかし、AlTiにおいてS/Nが飽和に達する厚さ(30nm)は、CrTiの場合(15nm)に比べて大きい。また、AlTiにおいて飽和に達したS/N(35)は、CrTiにおいて飽和に達したS/N(40)に比べて小さい。
そして、図7において、磁区抑制層を非磁性アモルファス金属層106のNiPとした場合(NiP)を説明する。
この場合も、NiPが厚くなるにしたがいS/Nが大きくなる。つまり、NiPの厚さが15nmの場合のS/Nは20.2であり、磁区抑制層を有しない場合(CrTiの0nmにおける4.0)の5.1倍である。NiPの厚さが20nmの場合のS/Nは21.6になり、NiPの厚さが25nmの場合のS/Nは37.9になる。そして、NiPの厚さが30nmの場合のS/Nは41になり、磁区抑制層を有しない場合の10倍である。
NiPにおけるS/N向上の傾向は、CrTiの場合と同様で、厚くなるとS/Nが向上するが、厚さが25nm以上で飽和する傾向がある。しかし、NiPにおいてS/Nが飽和に達する厚さ(25nm)は、CrTiの場合(15nm)に比べて大きい。また、NiPにおいて飽和に達したS/N(41)は、CrTiにおいて飽和に達したS/N(40)とほぼ同じである。NiPは、厚さが25nm以上であることが好ましい。
非特許文献1には、NiPは、めっき膜において、Pの原子%が19%以上においてアモルファス構造をとることが記載され、Pの原子%が少なくとも31.0%までアモルファス構造をとることが記載されている。さらに、Pの原子%が18%以上において、保磁力、残留磁化、飽和磁化がともに0になり、非磁性となることが記載されている。スパッタリング法で形成された膜は、めっき法で形成された膜よりアモルファス構造をとりやすいと考えられる。よって、少なくともめっき膜がアモルファス構造や非磁性となるPの原子%の範囲においては、スパッタリング法で形成されたNiとPとを主とするNiPにおいても、アモルファス構造や非磁性となると考えられる。よって、磁区抑制層を非磁性アモルファス金属層106のNiPとした場合でも、Pの原子%を19%以上且つ31%以下とするのが好ましい。
次に、図7において、SiOと表記する、磁区抑制層を非磁性体層SiOとした場合(SiO)を説明する。
この場合も、SiOが厚くなるにしたがいS/Nが大きくなる。つまり、SiOの厚さが30nmの場合、S/Nは9.3であり、磁区抑制層を有しない場合(CrTiの0nmにおける4.0)の2.3倍となる。そして、SiOの厚さが50nmの場合のS/Nは15.9であり、磁区抑制層を有しない場合の4.0倍となる。しかし、このS/N(15.9)は、磁区抑制層としてCrTi、AlTi又はNiPを用いた場合に飽和に達したS/N(40、35、41)に比べて小さい。
以上説明したように、SiOの非磁性体層を磁区抑制層として用いた場合であっても、S/Nの向上が見られる。しかし、CrTi、AlTi、NiPなどの非磁性アモルファス金属を磁区抑制層として用いた方が、SiOの非磁性体層を磁区抑制層として用いた場合に比べ、S/Nの向上効果が大きい。
なお、上述したS/Nの向上は、CrTi、AlTi又はNiPの非磁性アモルファス金属層106や、SiOの非磁性体層を軟磁性体層105の間に挟むことにより、これらが磁区の発生を抑制する磁区抑制層として機能して、バルクハウゼン効果によるノイズの発生が抑制されるためと考えられる。
図8は、感受素子31の異方性磁界Hkを示す図である。ここでは、磁区抑制層として、非磁性アモルファス金属層106であるCrTiを用いた場合(CrTiと表記)、及び非磁性体層であるRuを用いた場合(Ruと表記)を示す。図8において、横軸が磁区抑制層の厚さ(nm)、縦軸が異方性磁界Hk(Oe)である。なお、磁区抑制層の厚さ0は、磁区抑制層を用いていない場合である。
磁気センサ1においては、図3に示したように、印加する磁界Hが感受素子31の異方性磁界Hkより小さい範囲において、磁界Hの変化量ΔHに対してインピーダンスZの変化量ΔZが急峻な部分(ΔZ/ΔHが大きい)が用いられる。このため、異方性磁界Hkが小さいほど、磁界Hの変化量ΔHに対するインピーダンスZの変化が急峻になるとともに、印加するバイアス磁界Hbが小さくてよい。
図8において、磁区抑制層として非磁性アモルファス金属層106のCrTiを用いた場合(CrTi)を説明する。
感受素子31は、前述した構成と同じである。
CrTiの厚さが0nmの場合、つまり磁区抑制層を有しない場合の異方性磁界Hkは、7.5Oeである。そして、磁区抑制層として厚さが5nm~30nmの範囲におけるCrTiを用いた場合の異方性磁界Hkは、約7.9である。この範囲において、異方性磁界Hkは、厚さによる差が小さい。つまり、磁区抑制層としてCrTiを用いた場合、異方性磁界Hkは、厚さ依存性がほとんど見られない。さらに、磁区抑制層を有しない場合と、磁区抑制層としてCrTiを用いた場合とで、異方性磁界Hkの差が小さい。つまり、磁区抑制層として非磁性アモルファス金属層106としてCrTiを用いても、異方性磁界Hkに変化を生じさせにくい。
一方、図8において、磁区抑制層として非磁性体層のRuを用いた場合(Ru)を説明する。なお、Ruの非磁性体層を非磁性体層(Ru)と表記する。
感受素子31は、軟磁性体層、非磁性体層(Ru)、及び軟磁性体層が順に積層して構成されている。軟磁性体層は、500nmのCo85Nb12Zrで構成され、非磁性体層(Ru)は、厚さ1.8nmのRuで構成されている。なお、磁区抑制層が0nmとは、非磁性体層(Ru)を有しない場合である。つまり、磁区抑制層が0nmでは、感受素子31が、厚さ1000nmのCo85Nb12Zrの単層で構成されている。
磁区抑制層を有しない場合(0nm)の異方性磁界Hkは、9.3Oeである。そして、磁区抑制層として厚さが1.8nmのRuを用いる場合の異方性磁界Hkは、約10.8である。つまり、Ruの非磁性層を用いた磁区抑制層を有すると、磁区抑制層を有しない場合に比べて、異方性磁界Hkが増大する。
また、感受素子31を、軟磁性体層、非磁性体層(Ru)、軟磁性体層、非磁性体層(Ru)、軟磁性体層、非磁性体層(Ru)、及び軟磁性体層を順に積層して構成した場合であっても、異方性磁界Hkは、12.5Oeであった。この場合、軟磁性体層は、厚さ250nmのCo85Nb12Zrで構成され、非磁性体層(Ru)は、厚さ1.8nmである。つまり、軟磁性体層の厚さを1/2にして、磁区抑制層として機能する非磁性体層(Ru)の数を増やしても、異方性磁界Hkは、磁区抑制層を有しない場合より増大する。
なお、図8において、磁区抑制層を有しない場合(厚さが0nm)の異方性磁界Hkが、CrTiの場合とRuの場合とで異なるのは、軟磁性体層105の組成が異なるためである。軟磁性体層105の組成が異なっても、磁区抑制層としてCrTiを用いた場合とRuを用いた場合とにおける異方性磁界Hkに与える傾向は、上記の結果と同様であると考えられる。
以上説明したように、磁区抑制層としてRuを用いると、異方性磁界Hkは、磁区抑制層を用いない場合から増大する。一方、磁区抑制層としてCrTiを用いれば、異方性磁界Hkは、磁区抑制層を用いない場合と同程度であって、且つ厚さに対する依存性が少ない。
磁区抑制層として、CrTiと同様に非磁性アモルファス金属であるAlTi、NiP、CrB、CrTa、CoWを用いた場合も同様である。
(磁気センサ1の製造方法について)
次に、磁気センサ1の製造方法の一例を説明する。
基板10は、上述したように、非磁性材料からなる基板であって、例えばガラス、サファイアといった酸化物基板やシリコン等の半導体基板、あるいは、アルミニウム、ステンレススティール、ニッケルリンメッキなどを施した金属等の金属基板である。基板10には、研磨機などを用いて、例えば曲率半径Raが0.1nm~100nmの筋状の溝又は筋状の凹凸が設けられていてもよい。なお、この筋状の溝又は筋状の凹凸の筋の方向は、硬磁性体層103によって構成される薄膜磁石20のN極とS極とを結ぶ方向に設けられているとよい。このようにすることで、硬磁性体層103における結晶成長が、溝の方向へ促進される。よって、硬磁性体層103により構成される薄膜磁石20の磁化容易軸がより溝方向(薄膜磁石20のN極とS極とを結ぶ方向)に向きやすい。つまり、薄膜磁石20の着磁をより容易にする。
ここでは、基板10は、一例として直径約95mm、厚さ約0.5mmのガラスとして説明する。磁気センサ1の平面形状が数mm角である場合、基板10上には、複数の磁気センサ1が一括して製造され、後に個々の磁気センサ1に分割(切断)される。
基板10を洗浄した後、基板10の一方の面(以下、表面と表記する。)上に、密着層101、制御層102、硬磁性体層103及び誘電体層104を順に成膜(堆積)する。
まず、Cr又はNiを含む合金である密着層101、Cr等を含む合金である制御層102、及び、薄膜磁石20を構成するCo合金である硬磁性体層103を順に連続して成膜(堆積)する。この成膜は、スパッタリング法などにより行える。それぞれの材料で形成された複数のターゲットに順に対面するように、基板10を移動させることで密着層101、制御層102及び硬磁性体層103が基板10上に順に積層される。前述したように、制御層102及び硬磁性体層103の形成では、結晶成長を促進するために、基板10を例えば100℃~600℃に加熱するとよい。
なお、密着層101の成膜では、基板10の加熱を行ってもよく、行わなくてもよい。基板10の表面に吸着している水分などを除去するために、密着層101を成膜する前に、基板10を加熱してもよい。
次に、SiO、Al、TiO等の酸化物、又は、Si、AlN等の窒化物等である誘電体層104を成膜(堆積)する。誘電体層104の成膜は、プラズマCVD法、反応性スパッタリング法などにより行える。
そして、感受部30の感受素子31が形成される部分を開口とするフォトレジストによるパターン(レジストパターン)を、公知のフォトリソグラフィ技術により形成する。
続いて、感受素子31の軟磁性体層105aを構成するCo合金、非磁性アモルファス金属層106a、軟磁性体層105bを構成するCo合金、導電体層107、軟磁性体層105cを構成するCo合金、非磁性アモルファス金属層106b、及び軟磁性体層105dを構成するCo合金を順に成膜(堆積)する。軟磁性体層105、非磁性アモルファス金属層106、及び導電体層107の成膜は、例えばスパッタリング法を用いて行える。
その後、レジストパターンを除去するとともに、レジストパターン上の軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106a、軟磁性体層105b、導電体層107、軟磁性体層105c、非磁性アモルファス金属層106b、及び軟磁性体層105dを除去(リフトオフ)する。これにより、感受素子31が形成される。
次に、ヨーク40が形成される部分を開口とするフォトレジストによるレジストパターンを、公知のフォトリソグラフィ技術により形成する。
そして、軟磁性体層109を構成するCo合金を成膜(堆積)する。
その後、レジストパターンを除去するとともに、レジストパターン上の軟磁性体層109を除去(リフトオフ)する。これにより、軟磁性体層109によるヨーク40が形成される。
次に、感受部30の接続部32及び端子部33を形成する。接続部32及び端子部33は、例えば、メタルマスクを用いて、スパッタリング法又は真空蒸着法にて導電体層110を成膜することにより形成する。
この後、感受素子31を構成する軟磁性体層105には、感受部30の感受素子31(図1(a)参照)の幅方向(短手方向)に一軸磁気異方性を付与する。この軟磁性体層105への一軸磁気異方性の付与は、例えば3kG(0.3T)の回転磁場中における400℃での熱処理(回転磁場中熱処理)と、それに引き続く3kG(0.3T)の静磁場中における400℃での熱処理(静磁場中熱処理)とで行える。この時、ヨーク40を構成する軟磁性体層109にも同様の一軸磁気異方性が付与される。しかし、ヨーク40は、磁気回路としての役割を果たせばよく、一軸磁気異方性が付与されなくてもよい。
次に、薄膜磁石20を構成する硬磁性体層103を着磁する。硬磁性体層103に対する着磁は、静磁場中又はパルス状の磁場中において、硬磁性体層103の保磁力より大きい磁界を、硬磁性体層103の磁化が飽和するまで印加することで行える。
この後、基板10上に形成された複数の磁気センサ1を個々の磁気センサ1に分割(切断)する。つまり、図1(a)の平面図に示したように、平面形状が四角形になるように、基板10、密着層101、制御層102、硬磁性体層103、誘電体層104及び軟磁性体層109を切断する。すると、分割(切断)された硬磁性体層103の側面に薄膜磁石20の磁極(N極及びS極)が露出する。こうして、着磁された硬磁性体層103は、薄膜磁石20になる。この分割(切断)は、ダイシング法やレーザカッティング法などにより行える。
なお、複数の磁気センサ1を個々の磁気センサ1に分割する工程の前に、基板10上において隣接する磁気センサ1の間の密着層101、制御層102、硬磁性体層103、誘電体層104及び軟磁性体層105を、平面形状が四角形(図1(a)に示した磁気センサ1の平面形状)になるようにエッチング除去してもよい。そして、露出した基板10を分割(切断)してもよい。
また、密着層101、制御層102、硬磁性体層103及び誘電体層104を形成する工程の後に、密着層101、制御層102、硬磁性体層103、誘電体層104を、平面形状が四角形(図1(a)に示した磁気センサ1の平面形状)になるように加工してもよい。
なお、ここで説明した製造方法は、これらの製造方法に比べ、工程が簡略化される。
このようにして、磁気センサ1が製造される。なお、軟磁性体層105への一軸磁気異方性の付与及び/又は薄膜磁石20の着磁は、磁気センサ1を個々の磁気センサ1に分割する工程の後に、磁気センサ1毎又は複数の磁気センサ1に対して行ってもよい。
なお、制御層102を備えない場合には、硬磁性体層103を成膜後、800℃以上に加熱して結晶成長させることで、面内に磁気異方性を付与することが必要となる。しかし、本実施の形態が適用される磁気センサ1のように、制御層102を備える場合には、制御層102により結晶成長が促進されるため、800℃以上のような高温による結晶成長を要しない。
また、感受素子31への一軸磁気異方性の付与は、上記の回転磁場中熱処理及び静磁場中熱処理で行う代わりに、軟磁性体層105の堆積時にマグネトロンスパッタリング法を用いて行ってもよい。マグネトロンスパッタリング法では、磁石(マグネット)を用いて磁界を形成し、放電によって発生した電子をターゲットの表面に閉じ込める。これにより、電子とガスとの衝突確率を増加させてガスの電離を促進し、膜の堆積速度を向上させる。このマグネトロンスパッタリング法に用いられる磁石(マグネット)が形成する磁界により、軟磁性体層105の堆積と同時に、軟磁性体層105に一軸磁気異方性が付与される。このようにすることで、回転磁場中熱処理及び静磁場中熱処理で行う一軸磁気異方性を付与する工程が省略できる。
(変形例)
図9(a)~(b)は、本実施の形態における感受部30のそれぞれの感受素子31の変形例の構成を説明する図である。なお、図9(a)~(b)では、図2(a)に示したものと同様な部材については、同じ符号を付している。
図2に示した本実施の形態が適用される感受素子31は、導電体層107を備えていた。導電体層107は、前述したように、供給する電流の周波数が高い場合における磁界Hの変化量ΔHに対するインピーダンスZの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が低下することを抑制するために設けられている。よって、導電体層107は、インピーダンスZの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が低下することを抑制することを要しない場合には、設けることを要しない。
図9(a)は、第1の変形例である感受素子31′の構成である。感受素子31′は、誘電体層104(図1(b)参照)側から、軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106、及び軟磁性体層105bが順に積層されて構成されている。つまり、感受素子31′は、図2に示した感受素子31において、積層体108aを取り出した構成である。
非磁性アモルファス金属層106としては、非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向する軟磁性体層105を反強磁性結合させる作用を有する非磁性のアモルファス金属を用いることができ、具体的には、CrTi、AlTi、NiP、CrB、CrTa、CoW等が挙げられる。
感受素子31′であっても、磁区の発生が抑制されて、S/Nが向上する。
図9(b)は、第2の変形例の感受素子31″の構成である。感受素子31″は、誘電体層104(図1(b)参照)側から、軟磁性体層105a、非磁性アモルファス金属層106a、軟磁性体層105b、非磁性アモルファス金属層106b、及び軟磁性体層105cが順に積層されて構成されている。つまり、誘電体層104側及び誘電体層104と反対側が、軟磁性体層105となるように、軟磁性体層105と非磁性アモルファス金属層106とが交互に積層されている。なお、層数は、図9(b)に示したものに限定されない。
非磁性アモルファス金属層106としては、非磁性アモルファス金属層106を挟んで対向する軟磁性体層105を反強磁性結合させる作用を有する非磁性のアモルファス金属を用いることができ、具体的には、CrTi、AlTi、NiP、CrB、CrTa、CoW等が挙げられる。
感受素子31″であっても、磁区の発生が抑制されて、S/Nが向上する。
以上に説明した本実施の形態では、磁気センサ1は、薄膜磁石20を備えるとして説明したが、磁気センサ1は、薄膜磁石20を備えなくともよい。この場合、バイアス磁界は、磁気センサ1の外部から与えられればよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても構わない。
1…磁気センサ、10…基板、20…薄膜磁石、30…感受部、31、31′、31″…感受素子、32…接続部、33、33a、33b…端子部、40、40a、40b…ヨーク、101…密着層、102…制御層、103…硬磁性体層、104…誘電体層、105、105a、105b、105c、105d、109…軟磁性体層、106、106a、106b…非磁性アモルファス金属層、107、110…導電体層、Hb…バイアス磁界、Hk…異方性磁界、Hr…磁化回転磁界、Hw…磁壁移動磁界、R…抵抗、Z…インピーダンス

Claims (12)

  1. 複数の軟磁性体層と、
    複数の前記軟磁性体層の間に設けられる非磁性アモルファス金属層と、を有し、
    前記非磁性アモルファス金属層を挟んで対向する前記軟磁性体層が反強磁性結合し、磁気インピーダンス効果により磁界を感受する感受素子を備える磁気センサ。
  2. 前記感受素子は、
    前記軟磁性体層より導電性が高い導電体層を、さらに備え、
    前記導電体層は、
    一対の前記軟磁性体層が前記非磁性アモルファス金属層を挟んで対向するように積層された積層体の複数の間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
  3. 前記非磁性アモルファス金属層は、Tiを含むアモルファス金属で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気センサ。
  4. 前記非磁性アモルファス金属層は、CrTi及びAlTiのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の磁気センサ。
  5. 前記非磁性アモルファス金属層がCrTiである場合、厚さが15nm以上且つ50nm以下の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の磁気センサ。
  6. 前記非磁性アモルファス金属層は、Ni及びPを含むアモルファス金属で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気センサ。
  7. 前記非磁性アモルファス金属層は、NiとPとを主としたアモルファス金属で構成され、Pの原子%が19%以上且つ31%以下であることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ。
  8. 前記非磁性アモルファス金属層は、厚さが30nm以上のAlTiで構成されており、
    前記感受素子は、前記軟磁性体層を当該軟磁性体層の厚さ方向から見た場合に、還流磁区が形成されていないことを特徴とする請求項に記載の磁気センサ。
  9. 前記感受素子は、前記軟磁性体層を当該軟磁性体層の厚さ方向から見た場合に、還流磁区が形成されていないことを特徴とする請求項5に記載の磁気センサ。
  10. 前記非磁性アモルファス金属層の厚さは30nm以上であり、
    前記感受素子は、前記軟磁性体層を当該軟磁性体層の厚さ方向から見た場合に、還流磁区が形成されていないことを特徴とする請求項7に記載の磁気センサ。
  11. 非磁性の基板と、
    前記基板と前記感受素子との間に、硬磁性体で構成され面内方向に磁気異方性を有する薄膜磁石と、をさらに備え、
    前記感受素子は、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が前記薄膜磁石の発生する磁界の方向に向いていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気センサ。
  12. 前記感受素子の前記長手方向の端部に対向するように前記薄膜磁石上に積層され、当該薄膜磁石の発生する磁束が当該感受素子を当該長手方向に透過するように誘導する一対のヨークを、さらに備え、
    前記ヨークは、複数の前記軟磁性体層と、当該軟磁性体層の間に積層される非磁性アモルファス金属層とを備えることを特徴とする請求項11に記載の磁気センサ。
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