以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。また、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については他の箇所に記載の説明を適用することができる。
本開示での「平行」とは完全な平行状態に限定されない。「平行」な状態には、数度から15度程度傾いている状態も含まれる。つまり「平行」との表現には、概ね平行である状態(いわゆる略平行な状態)を含みうる。本開示における「垂直」という表現についても、完全に垂直な状態に限らず、数度~15度程度傾いている態様も含まれる。本開示において対向とは、所定の間隔を有して向き合っている状態を示す。対向状態には、部材同士が15°程度傾いて向き合っている態様など、部材同士が概ね向き合っている状態も含まれる。
本開示のアンテナ装置1は、例えば、車両などの移動体に取り付けられて用いられる。アンテナ装置1は、車両の屋根部や、フロントガラスの上端部、ダッシュボード、ピラー、ドアパネル、バンパなどに取り付けられてよい。アンテナ装置1は、車両に搭載されている通信用のECU(Electronic Control Unit)と接続されて使用されうる。当該ECUは、アンテナ装置1が受信した信号を利用するとともに、当該アンテナ装置1に対して送信信号を入力しうる。
アンテナ装置1と通信用ECUとは、同軸ケーブルやフィーダ線などで接続されうる。アンテナ装置1と通信用ECUとは、1つ又は複数のAV線で接続されていてもよい。AV線は、自動車用低圧電線であって、軟銅より線を例えば塩化ビニルなどの絶縁材料で被覆することによって実現されている。AV線の「A」は自動車用低圧電線を指し、「V」はビニルを指す。
アンテナ装置1は、互いに500MHz以上離れた2つの周波数帯、すなわち第1周波数帯と第2周波数帯で動作するように構成されている。第1周波数帯は、第2周波数帯よりも高い周波数帯である。第1周波数帯及び第2周波数帯はともに、Wi-Fi(登録商標)で使用される周波数帯であってよい。アンテナ装置1は、送信と受信の何れか一方のみに利用されても良い。電波の送受信には可逆性があるため、或る周波数の電波を送信可能な構成は、当該周波数の電波を受信可能な構成でもある。以下における送受信との記載は送信と受信の少なくとも何れか一方を意味する。
以下では一例として、アンテナ装置1は、Wi-Fiの2.4GHz帯と、5GHzをサポートするように構成されている場合について述べる。本実施形態における第1周波数帯は5150MHzからの5730MHzまでの5GHz帯を意味し、第2周波数帯は2400MHzから2497MHzまでの2.4GHz帯を意味する。第1周波数帯は、第2周波数帯に比べて帯域幅が大きい。具体的には第1周波数帯は、500MHz以上の帯域幅を有する。
もちろん、第1周波数帯及び第2周波数帯の具体的な値は、用途に応じて適宜変更されてよい。第1周波数帯と第2周波数帯は、互いに異なる種類の通信で使用される周波数帯であってもよい。第1周波数帯は、IEEE802.15.4zで規定されるUWB(Ultra Wide Band)の第3チャネル、第5チャネル、第7チャネル、又は第9チャネルに対応する周波数帯であってよい。第3チャネルは中心周波数が4492MHzのチャネルであり、第5チャネルは中心周波数が6489.6MHzのチャネルである。第9チャネルは中心周波数が7987.2MHzのチャネルである。各チャネルの帯域幅は500MHzである。
第2周波数帯は、Bluetooth(登録商標)で使用される2.4GHz帯(2402MHz~2480MHz)であっても良い。また、第2周波数帯は、セルラー通信(4G/5G)で使用される700MHz帯、800MHz帯、900MHz帯、1.5GHz帯、1.7GHz帯、2GHz帯、2.5GHz帯、3.4GHz帯、3.7GHz帯、4.5GHz帯などであってもよい。第2周波数帯は、その他、GNSS(Global Navigation Satellite System)や路車間通信で使用される周波数帯に対応していてもよい。
第1周波数帯に属する任意の周波数が第1周波数に相当する。例えば第1周波数帯の中心周波数が第1周波数に相当する。なお、第1周波数は、第1周波数帯の最低周波数や最高周波数、その他の周波数であってもよい。第1周波数帯は、狙いとする第1周波数を基準として定まる周波数範囲と解されて良い。同様に、第2周波数帯に属する任意の周波数が第2周波数に相当する。例えば第2周波数帯の中心周波数が第2周波数に相当する。第2周波数は、第2周波数帯の最低周波数や最高周波数、その他の周波数であってもよい。第2周波数帯は、狙いとする第2周波数を基準として定まる周波数範囲と解されて良い。各周波数帯は500MHz以上離れているため、第2周波数は第1周波数よりも500MHz以上低い周波数となりうる。
以降における「λ1L」は、第1周波数帯の最低周波数の電波の波長である第1最低波長を表す。以降における「λ1L/2」及び「0.5λ1L」は、第1最低波長の半分の長さを指し、「λ1L/4」及び「0.25λ1L」は第1最低波長の4分の1の長さを指す。なお、本実施形態における第1周波数帯の最低周波数は5150MHzである。真空中及び空気中における5150MHzの電波の波長(つまりλ1L)は58.2mmである。よって、λ1L/4は、約14.6mmである。
また、以降では、第1周波数帯の中心周波数の電波の波長である第1中心波長を、「λ1M」とも記載する。以降における「λ1M/2」及び「0.5λ1M」は、第1中心波長の半分の長さを指し、「λ1M/4」及び「0.25λ1M」は第1中心波長の4分の1の長さを指す。
さらに、以降では第2周波数帯の中心周波数の電波の波長である第2中心波長を、「λ2M」とも記載する。以降における「λ2M/2」及び「0.5λ2M」は、第2中心波長の半分の長さを指し、「λ2M/4」及び「0.25λ2M」は第2中心波長の4分の1の長さを指す。本実施形態における第2周波数帯の中心周波数は約2450MHzである。真空中及び空気中における2450MHzの電波の波長(つまりλ2M)は122.4mmである。よって、λ2M/4は、約30.6mmである。
本開示では「λ1L」や「λ1M」、「λ2M」といった、波長(λ)を用いた表現は、各種部材の寸法を説明するために使用される。アンテナ装置1を構成する部材の寸法の説明における波長(λ)は、電気的な長さと解する事ができる。ここでの電気的な長さとは、フリンジング電界や、誘電体による波長短縮効果などを考慮した、実効的な長さである。電気的な長さは実効長と呼ばれることもある。
<アンテナ装置1の具体的な構成について>
アンテナ装置1は、図1~図4に示すように、地板11、給電アンテナ20、及び無給電アンテナ30を備える。給電アンテナ20と無給電アンテナ30は、所定の間隔をおいて所定の並列方向に沿って地板11の上側に配置されている。本実施形態ではY軸方向が並列方向に相当する。
地板11は、銅などの導体を素材とする板状の導体部材である。ここでの板状には金属箔のような薄膜状も含まれる。つまり、地板11は、プリント配線板等の樹脂製の板の表面に電気メッキ等によって積層(付与)された導体層でもよい。また、地板11は、複数の導体層及び絶縁層を含む多層基板の内部に配置された導体層を用いて実現されていても良い。地板11は、例えば電源回路などを介して接地用のケーブルと電気的に接続され、アンテナ装置1におけるグランド電位(換言すれば接地電位)を提供する。
地板11は、第1面と第2面を備える。第1面は、無給電アンテナ30が取り付けられる方の面である。第1面は上面と言い換えられてよい。第2面は第1面とは反対側の面である。第2面は、裏面あるいは下面と言い換えられて良い。地板11に直交する方向が、アンテナ装置1にとっての上下方向である。上方向は、地板11が備える2つの面のうち、第2面から第1面に向かう方向である。
地板11は、長方形状に形成されている。以下ではアンテナ装置1の構成について、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を有する右手系の三次元座標系の概念を導入して説明する。図1等の種々の図に示すX軸は地板11の長手方向に平行であり、Y軸は地板11の短手方向に平行である。Z軸は上下方向に平行である。他の態様として地板11が正方形状である場合には、任意の1辺に沿う方向をX軸とすることができる。
地板11は、図2に示すように、上面視において給電アンテナ20及び無給電アンテナ30などを内包する大きさを有する。地板11の短辺の長さは、例えば、25mmや30mmなど、40mm以下の値に設定されている。また、地板11の長辺の長さは、35mmや40mm、50mmなど、60mm以下に設定されている。地板11の短辺及び長辺の長さは、λ2Mを基準に設計されて良い。地板11の短辺の長さは、0.3λ2Mに相当する値に設定されていてよい。地板11の長辺の長さは、0.6λ2Mに相当する値に設定されていてよい。地板11は、短手方向の長さが第2中心波長(λ2M)よりも短く、かつ、長手方向の長さは短手方向の2倍以上に設定されていてよい。もちろん、地板11の短辺の長さは、0.6λ2Mや、0.8λ2Mなどであってもよい。地板11の長手方向の長さは、0.8λ2Mや、1.2λ2Mなどであってもよい。
上記のように、地板11の寸法は適宜変更可能である。また、地板11を上側から見た形状もまた、適宜変更可能である。地板11は、円形や、正方形状であってもよい。また、六角形や、八角形など、その他の多角形状であってもよい。地板11は、正方形や正六角形などの線対称な形状であってよいし、平行四辺形などの回転対称性を有する形状であってもよい。矩形状との表現には、長方形と正方形とが含まれる。円形との表現には真円だけでなく楕円形も含めることができる。
なお、地板11の上側には、図5に示すように支持部12が形成されていてよい。支持部12は、地板11の上面に付与された、板状の絶縁体である。支持部12は、ガラスやカーボンなどの繊維に樹脂を含浸させて硬化させたプリプレグやソルダーレジストなど、任意の絶縁材料を用いて実現されている。前述の通り板状には薄膜状(シート状)も含まれる。支持部12の上には、送受信回路13や給電線路14が形成されていてよい。送受信回路13は、送信信号や受信信号に対する信号処理を施すための回路モジュールである。送受信回路13は、ケーブルが接続されるコネクタや、ICチップ(Integrated Circuit)、メモリなどを含みうる。送受信回路13は、例えば、変調、復調、周波数変換、増幅等を行う。給電線路14は、送受信回路13と給電アンテナ20とを電気的に接続するマイクロストリップ線路/配線パターンである。地板11と支持部12を含む構成を本開示では基板10とも称する。
給電アンテナ20は、第1周波数帯の電波を送受信するための導体部材である。給電アンテナ20は、λ1L/4の長さを有する立体的な板状モノポールアンテナとして構成されている。給電アンテナ20は第1アンテナと呼ぶこともできる。給電アンテナ20は、給電側対向部21と、延設部22を備える。
給電側対向部21は、銅などの導体を素材とする板状の導体部材である。給電側対向部21は、Y軸方向に長い矩形状を有する。給電側対向部は、給電側第1縁部E11、給電側第2縁部E12、給電側第3縁部E13、及び、給電側第4縁部を備える。給電側第1縁部E11及び給電側第2縁部E12はそれぞれY軸に平行な縁部(換言すれば長辺)であり、給電側第3縁部E13及び給電側第4縁部はそれぞれX軸に平行な縁部(つまり短辺)である。給電側第1縁部E11は、給電側第2縁部E12よりもX軸負方向に位置する縁部である。給電側第3縁部E13は、給電側第4縁部よりもY軸負方向に位置する縁部である。
給電側対向部21は、所定の第1距離(D1)をおいて地板11と対向するように配置されている。給電側対向部21は、延設部22によって支持されている。なお、給電側対向部21は、地板11又は支持部12の上に付加された樹脂ブロックによって支持されてもよい。図3に示すD1は、給電側対向部21と地板11との距離である第1距離を示している。第1距離(D1)は例えば5mmに設定されている。もちろん第1距離(D1)は、3mm、4mm、6mmなどに設定されてもよい。
図2のL1xは給電側対向部21のX軸方向の長さを表しており、L1yは給電側対向部21のY軸方向の長さを表している。給電側対向部21のX軸方向の長さ(L1x)は、2mmや3mm、5mm、10mmなど、多様な値に設定されていてよい。給電側対向部21のY軸方向の長さ(L1y)は、15mや17mm、20mmに設定されていて良い。
延設部22は、給電側対向部21の縁部から地板11に向かって伸びる導体部材である。延設部22は、地板11に対して垂直な姿勢を有しており、その上端部は給電側対向部21の第1縁部に連なっている。延設部22と給電側対向部21は直角であってよい。延設部22の下端に給電点が形成されている。給電点は、送受信回路13と給電アンテナ20とが給電線路14を介して電気的に接続される部分である。
延設部22もまた板状である。延設部22のY軸方向の長さは給電側対向部21のY軸方向の長さと同じに設定されている。延設部22の高さ(L1z)は、第1距離(D1)に略一致していてよい。なお、延設部22のY軸方向の長さは、給電側対向部21のY軸方向の長さよりも短くとも良い。
給電側対向部21のX軸方向の長さ(L1x)と延設部22の高さ(L1z)の合計値は、給電アンテナ20が第1周波数帯の電波を送受信可能なように、シミュレーション等に基づいて設計されている。例えばL1xとL1zの合算値は、λ1L/4に相当する長さに設定されている。つまり、給電点から給電側第2縁部E12までの距離がλ1L/4となるように各部位の寸法は設計されている。
延設部22は、図4に示すように上部221と脚部222とに仮想的に区分されてよい。上部221は脚部222の上側にあって、給電側対向部21のY軸方向の長さと同じ幅を有する領域を指す。
脚部222は、上部221の下側にあって、上部221よりも幅が縮小されている部分を指す。脚部222の幅は、1mmや3mmなどに設定されてよい。脚部222の高さは2mmや3mmなどに設定されていて良い。高さ方向における上部221の長さは、3mmや4mmであってよい。脚部222の下端に給電点が設けられている。脚部222は、給電側対向部21のY軸方向の長さ(L1y)に比べて十分に細い、ピン状/棒状/線状であってよい。
脚部222は、延設部22の下端部全体が地板11と電磁界結合することを抑制するための構成である。仮に脚部222を設けない場合、延設部22と地板11とが近接する部分が多くなり、モノポールアンテナとして動作しにくくなってしまう。脚部222の幅及び高さは、給電点から供給された電流が給電側対向部21に向かって流れるように設計されればよい。高さ方向における上部221の長さは、給電側対向部21と地板11との離隔が第1距離となるように調整されてよい。上部221及び給電側対向部21は、脚部222に連なる板状の部材である。ここでの板状とは、線状ではないこと、脚部222に対して十分に幅が大きいことを意味するものであって、例えば脚部222の3倍又は5倍以上の幅を有する形状を指す。具体的には幅が5mm以上或いは10mm以上の形状が、脚部222からみた板状部材に相当する。このような給電アンテナ20は、放射素子において給電点から所定距離(例えば3mm)以上離れている部分が板状に形成されている、板状モノポールアンテナに相当する。
なお、上述の通り、電波の波長は誘電体の短縮効果を受ける。また、給電アンテナ20は板状であるため、多様な電流経路を取りうる。よって、L1xとL1zの合算値が7mm~10mm程度であっても、給電アンテナ20は、第1周波数帯用のモノポールアンテナとして動作しうる。延設部22は、地板11と電気的に接続しないよう、支持部12の上にはんだ付け等で固定されている。給電アンテナ20は、地板11の上に付加された樹脂製の立体物(例えばブロック)によって支持されていてもよい。
上記の給電アンテナ20は、例えば図6に示す板金20Bを破線に沿って直角に折り曲げることによって実現されてもよい。上記給電アンテナ20は、厚みが第1距離の樹脂ブロックの表面にメッキ等で付加された金属薄膜によって実現されていても良い。延設部22は、下垂部や屈曲部などと言い換えられても良い。また、延設部22は、基板10に対して立設された構成と解することができる。そのため、延設部22は、立設部と呼ぶことができる。また、給電側対向部21は立設部の上端から延設された構成と解する事もできる。上記給電アンテナ20は、第1アンテナや、給電素子などと呼ぶことができる。また、給電側対向部21は第1対向部などと呼ぶことができる。
無給電アンテナ30は、第2周波数帯の電波を送受信するための導電性の構造体である。無給電アンテナ30は、給電アンテナ20のX軸正方向側に隣接配置されている。無給電アンテナ30自体には、給電点が設けられていない。無給電アンテナ30は、第2周波数帯にて給電アンテナ20と電磁界的に結合することにより、給電アンテナ20から供給される電力にて動作する。
無給電アンテナ30は、無給電側対向部31と、短絡部32とを備える。次に説明するように、無給電側対向部31は、その中央部に設けられた短絡部32によって地板11と電気的に接続されている。このような構造は、メタマテリアルの基本構造であるマッシュルーム構造に相当する。無給電アンテナ30は、第2周波数帯にて、地板11との協働によりメタマテリアルアンテナとして動作するサイズを有するように設計されている。無給電アンテナ30は、第2アンテナや共振構造体と呼ぶこともできる。無給電側対向部31は第2対向部と呼ぶこともできる。
無給電側対向部31は、銅などの導体を素材とする板状の導体部材である。無給電側対向部31は、給電側対向部21と同様に、地板11と第1距離をおいて対向するように配置されている。無給電側対向部31は、地板11と対向配置されることで、無給電側対向部31の面積、及び、無給電側対向部31と地板11との間隔(つまり第1距離)に応じた静電容量を形成する。
無給電側対向部31は、短絡部32が備えるインダクタンスと第2周波数帯において並列共振する静電容量を形成する大きさを有する。無給電側対向部31の面積は、所望の静電容量を提供するように適宜設計されればよい。所望の静電容量とは、短絡部32が備えるインダクタンスとの協働により、第2周波数帯で動作する静電容量である。なお、動作周波数をf、短絡部32が備えるインダクタンスをLs、無給電側対向部31が地板11との間に形成する静電容量をCとすると、f≒1/{2π√(Ls・C)}の関係が成り立つ。動作周波数(f)は、第2周波数帯の中心周波数であってよい。当業者であれば、当該関係式をもとに、適正な無給電側対向部31の面積を決定することができる。
例えば無給電側対向部31は、一辺の長さが給電側対向部21のY軸方向の長さ(L1y)と等しい正方形状に形成されている。もちろん、無給電側対向部31は、一辺の長さがL1yよりも短い/長い正方形状であってもよい。無給電側対向部31のX軸方向の長さ(L2x)とY軸方向の長さ(L2y)は、15mmや17mm、20mmなどに設定されていて良い。無給電側対向部31の一辺の長さは適宜変更可能であり、20mmや、25mmなどであっても良い。無給電側対向部31が大きいほど、形成される静電容量が大きくなり、無給電アンテナ30の動作周波数は低くなりうる。無給電側対向部31の寸法は、第2周波数の値や周辺部材による波長短縮効果などを鑑みて決定されうる。
無給電側対向部31のX軸方向の長さは、0.02λ2Mや0.15λ2Mなど、波長を用いて表現されて良い。Y軸方向の長さも同様である。無給電側対向部31は、円形や六角形、多角形などであってもよい。無給電側対向部31は、正方形や正六角形などの線対称な形状であってよいし、平行四辺形などの回転対称性を有する形状であってもよい。
無給電側対向部31は、何れの辺の長さも0.25λ2Mよりも短く設定された矩形状、又は、直径が0.25λ2Mの円の内部に収まる大きさに設定されていてよい。無給電アンテナ30は0次共振を利用するアンテナであるため、無給電側対向部31は、半波長の大きさを必要とするパッチアンテナに比べて十分に小さく設定可能である。
無給電側対向部31は、地板11を基準として給電側対向部21と同じ高さ(平面)に配置されている。無給電側対向部31は、短絡部32にて支持されうる。無給電側対向部31は、地板11又は支持部12の上に付加された樹脂製のブロック(段差)や柱によって支持されてもよい。
矩形状の無給電側対向部31は、4つの縁部(辺)を備える。無給電側対向部31は、1つの辺がX軸に平行となる姿勢で配置されている。無給電側対向部31が備える4つの縁部を、以降では無給電側第1縁部E21、無給電側第2縁部E22、無給電側第3縁部E23、及び、無給電側第4縁部E24とも称する。無給電側第1縁部E21及び無給電側第2縁部E22がY軸に平行な1組の対辺に相当し、無給電側第3縁部E23及び無給電側第4縁部E24がX軸に平行な1組の対辺に相当する。
無給電側対向部31と給電側対向部21は、所定の間隔をおいてX軸方向に並んで配置されている。具体的には、無給電側第1縁部E21が、給電側第2縁部E12と対向し且つ近接するように配置されている。無給電側対向部31と給電側対向部21の間隔が、無給電アンテナ30と給電アンテナ20との間隔であるアンテナ間隔に対応する。本開示では無給電側対向部31において給電側対向部21と近接している縁部を近接縁部とも称する。
ここでの「近接」とは、実質的に第2周波数帯の高周波信号が伝搬しうる程度の離隔、換言すれば、電磁界結合しうる程度の離隔を有する状態を指す。第2周波数帯において電磁界結合する距離の上限値である結合限界値は、例えば2.75mmである。結合限界値は、各部のサイズや、後述する突出部の有無等によって異なりうる。また、第2周波数帯の電波に対する要求性能によっても、結合限界値は異なりうる。
結合限界値は、シミュレーション及び要求性能によって決定されて良い。第2周波数帯における電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)が4程度まで許容される場合、結合限界値は3.0mmに設定されても良い。結合限界値は、0.025λ2Mや0.02λ2Mなど、波長を用いて表現されて良い。また、結合限界値は、L2xを基準として規定されても良い。結合限界値は、例えばL2xの6分の1などであってよい。
図中のD2は、アンテナ間隔を示している。アンテナ間隔(D2)は、結合限界値よりも小さい値に設定されていればよい。アンテナ間隔(D2)は、3.0mm以下の任意の値に設定されていてよい。例えばアンテナ間隔(D2)は、1.0mmに設定されている。アンテナ間隔(D2)は、0.5mmや、0.75mm、1.5mmなどに設定されてもよい。アンテナ間隔(D2)は、L2xの6分の1よりも小さく、L2xの50分の1よりも大きい値に設定されていてよい。
短絡部32は、地板11と無給電側対向部31とを電気的に接続する導電性の部材である。短絡部32は、導電性のピン(以降、ショートピン)や、板金を加工した部材であって良い。短絡部32の径や長さを調整することによって、短絡部32が備えるインダクタンスを調整することができる。短絡部32の長さは、第1距離(D1)である。短絡部32の直径は、例えば2mmに設定されている。もちろん、短絡部32の直径は1.0mmや1.5mm、3.0mmであってもよい。なお、短絡部32は、断面が矩形状又は六角形などの多角柱として構成されていてもよい。例えば短絡部32の断面形状は、X軸方向の長さが1.5mm、Y軸方向の長さが0.5mmの矩形状であってもよい。
なお、短絡部32は、一端が地板11と電気的に接続され、他端が無給電側対向部31と電気的に接続された導電部材であればよい。仮にアンテナ装置1がプリント配線板を基材として用いて実現される場合には、プリント配線板に設けられたビアを短絡部32として利用することができる。
短絡部32は、無給電側対向部31の中心である対向板中心に設けられている。無給電側対向部31の中心とは、無給電側対向部31が正方形状や長方形状である場合には、対角線の交点に相当する。無給電側対向部31が三角形である場合には、その内心を中心として採用することができる。三角形の無給電側対向部31の中心は、垂心や外心であってもよい。無給電側対向部31の中心は幾何的に決定される。
なお、短絡部32の形成位置は、厳密に対向板中心と一致している必要はない。短絡部32は対向板中心から数mm程度ずれていてもよい。短絡部32は、無給電側対向部31の中央部に形成されていれば良い。無給電側対向部31の中央部とは、対向板中心から縁部までを1:5に内分する点を結ぶ線よりも内側の領域を指す。中央部は、別の観点によれば、無給電側対向部31を6分の1程度に相似縮小した同心図形が重なる領域に相当する。
<メタマテリアルアンテナの基本構成とその作動について>
アンテナ装置1の作動を説明する前に、ここでは図7を用いてメタマテリアルアンテナの基本構成200とその動作原理について説明する。図7はメタマテリアルアンテナの基本構成200を示したものであって、地板11x、対向部31x、及び短絡部32xを備える。
給電点は、対向部31xにおいてインピーダンス整合を取ることができる位置に配置される。ここでのインピーダンス整合とは、信号を送り出す側のインピーダンス値と信号を受け取る側のインピーダンス値を略同一とすることを指す。なお、インピーダンスが整合していない場合、反射等による利得の低下、ひいてはアンテナとしての実用性の低下が生じうる。
メタマテリアルアンテナは、メタマテリアルの分散特性のうち、位相定数βがゼロとなる周波数で共振する現象である0次共振を利用したアンテナである。メタマテリアルアンテナにおいては、地板11xと対向部31xとの間に形成される静電容量(C)と、短絡部32xが備えるインダクタンス(L)とのLC並列共振によって動作することを特徴とする。共振周波数がアンテナとしての動作周波数に対応する。
メタマテリアルアンテナでは、給電点から対向部31xに動作周波数の電力が給電されると、インダクタとキャパシタとの間のエネルギー交換によって並列共振が生じ、地板11xと対向部31xとの間に、地板11xに対して垂直な電界が発生する。すなわち、Z軸方向の電界が発生する。この垂直電界は、短絡部32xから対向部31xの縁部に向かって伝搬していく。当該垂直電界は、対向部31xの縁部において垂直偏波となって空間へと放射される。なお、本開示における垂直偏波とは、電界の振動方向が地板11xや対向部31xに対して垂直な電波を指し、地板垂直偏波あるいは単に、垂直偏波と呼ぶこともできる。
上記のLC並列共振(換言すれば0次共振)によって生じる垂直電界の伝搬方向は、短絡部32xを中心として対称であるため、アンテナ水平面における全方位に対して同程度の利得を有する。換言すれば、1つのメタマテリアルアンテナは、対向部31xの中心から縁部に向かう全方向(360°)に指向性を有する。本開示におけるアンテナ水平面とは、地板11x及び対向部31xに平行な平面を指す。本開示では、対向部31xの中心からその縁部に向かう方向を、アンテナ水平方向とも称する。アンテナ水平方向は、別の観点によれば、Z軸方向に対して直交する方向であって、X軸方向やY軸方向を含む。アンテナ水平方向は、端的に言えば、アンテナ装置1にとっての横方向(換言すれば側方)に相当する。
また、アンテナが電波を送信(放射)する際の作動と、電波を受信する際の作動は、互いに可逆性を有する。以上では電波を放射する際を例にとって説明したが、上記構成によれば、アンテナ水平方向から到来する垂直偏波を受信できる。
上述した地板11x、対向部31x、及び短絡部32は、この順に、アンテナ装置1の地板11、無給電側対向部31、及び短絡部32に対応する構成である。上記基本構成200の作動にかかる説明は、無給電アンテナ30の説明として援用されてよい。なお、アンテナ装置1においては、近接縁が無給電アンテナ30にとっての給電点と解されてよい。
ところで、メタマテリアルアンテナの他に、地板に対向する金属板を用いたアンテナとしては、パッチアンテナがある。パッチアンテナは電流の経路長がλ/2となることで生じる共振現象を利用するアンテナであって、メタマテリアルアンテナとは動作原理からして異質なものである。また、パッチアンテナは動作原理上、放射素子がλ/2となる寸法を有する必要がある一方、メタマテリアルアンテナは対向部31xがλ/2の長さを有することを必要としない。さらに、指向性の観点においてもメタマテリアルアンテナは、パッチアンテナとは異質である。すなわち、パッチアンテナや板状逆Fアンテナは地板に対して垂直な方向(つまり上方向)にビームを形成するのに対し、メタマテリアルアンテナは、基本的にアンテナ上方向ではなくアンテナ水平方向にビームを形成する。また、パッチアンテナは短絡部を必要としないアンテナであるのに対し、メタマテリアルアンテナは短絡部を必須とする。このように動作原理及び指向性、構成などの観点から、メタマテリアルアンテナは、パッチアンテナとは異質なものである。
<アンテナ装置1の動作について>
ここではアンテナ装置1の作動に付いて説明する。まず、給電アンテナ20は給電点を備える。また、給電アンテナ20は、電気的にλ1L/4の長さを有し、かつ、開放端側が板状に形成されたモノポールアンテナとして構成されている。故に、アンテナ装置1は、第1周波数帯においては給電アンテナ20が作動する。なお、開放端側とはモノポールアンテナにおいて給電点が設けられていない方の端部を指す。
また、無給電アンテナ30は、給電アンテナ20と第2周波数帯において電磁界結合する間隔で配置されているとともに、第2周波数帯でメタマテリアルアンテナとして動作するマッシュルーム構造を有している。そのため、アンテナ装置1は、第2周波数帯においては無給電アンテナ30が作動する。メタマテリアルアンテナとしての作動原理は、基本構成200を用いて説明した通りである。
このようにアンテナ装置1は動作モードとして、給電アンテナ20が主体的に動作する第1モードと、給電アンテナ20との電磁結合によって無給電アンテナ30が主体的に動作する第2モードとを有する。
図8は、アンテナ間隔(D2)を1.0mmに設定したアンテナ装置1の周波数毎のVSWRの測定結果を示すグラフである。図8に示すグラフの横軸は周波数を表しており、縦軸はVSWRを表している。図8に示すようにアンテナ装置1は、第1周波数帯を包含する5.07GHz~6.88GHzと、第2周波数帯を包含する2.37GHz~2.53GHzにおいて、VSWRが3.5以下となることが確認できている。また第1周波数帯と第2周波数帯においては概ねVSWRが3.0以下となる。
VSWRはインピーダンス整合の程度を表す指標であって、1に近いほど伝送線路のインピーダンスが整合していることを示す。通信用のアンテナの技術分野では一般的に、VSWRが3.0或いは3.5以下となる範囲が実用可能な周波数と見なされる事がある。そのような当技術分野において慣用されている基準と照らし合わせても、本開示のアンテナ装置1は、2つの周波数帯で動作可能であることがわかる。
また、本実施形態のアンテナ装置1によれば高周波側においては5.07GHzから6.88GHzの帯域でVSWRが3.5以下となる。つまり1.5GHzを超える(1.8Hz近い)動作帯域を実現できる。ここでの動作帯域とは、信号の送受信に使用可能な周波数帯である。本開示ではVSWRが3.5以下となる周波数の範囲を指すものとするが、要求性能や用途によってはVSWRが3以下の周波数範囲を動作帯域とみなしてよい。VSWRが3以下の周波数範囲を動作帯域とみなす場合であっても本開示の構成によれば6GHz付近において1GHzの動作帯域を有しうることは図8からも明らかである。
なお、実用上のVSWRの上限値は、アンテナの用途等に応じて異なりうる。送信電力が小さいほどVSWRにかかる要件は緩和され、相対的に大きい値が許容されうる。また、受信専用である場合もまた相対的に大きいVSWRが許容されうる。よって、用途等によっては、VSWRが3.5や4となる周波数範囲もアンテナの動作帯域とみなせる場合もある。
また、本開示の構成では、第1周波数帯を狙った給電アンテナ20が板状モノポールアンテナとして形成されているため、オーソドックスな(線状の)モノポールアンテナに比べて広帯域化できる。仮に給電アンテナ20を線状モノポールアンテナとした構成では、高周波側の動作帯域が狭く、例えば1GHz近い動作帯域を実現することは難しい。つまり、線状モノポールアンテナでは広い第1周波数帯を形成しづらい。そのような課題に対し、本アンテナ装置1によれば比較的簡素な構成で高周波側の動作周波数を広帯域化できるといった利点を有する。
また、図9及び図10は、第1周波数帯(具体的には5.2GHz)におけるアンテナ装置1の指向性を示した図である。図9はXY平面、換言すればアンテナ水平方向に対する指向性を示している。また図10は、XZ平面における指向性を示している。図9、図10に示されている通り、給電アンテナ20はアンテナ水平方向にも上方向にも指向性を有する。これは、給電アンテナ20が側面視においてL字型、つまり地板に対して立設する延設部22と、地板11に対して平行な給電側対向部21を有するためである。なお、アンテナ装置1は5.2GHzに限らず、6GHzや7GHzにおいても同様の指向性を有することはシミュレーションにより確認できている。
図11及び図12は、第2周波数帯(具体的には2.4GHz)におけるアンテナ装置1の指向性を示した図である。図11はXY平面、換言すればアンテナ水平方向に対する指向性を示している。また図12は、XZ平面における指向性を示している。図11に示されている通り、給電アンテナ20はアンテナ水平方向全方位に対して指向性を有する。当該指向性は、メタマテリアルアンテナの特性と一致するものである。このことからも第2周波数帯においては無給電アンテナ30が作動していることがわかる。
図13は、給電アンテナ20及び無給電アンテナ30の構成(例えば寸法など)を一定としつつ、アンテナ間隔(D2)を変化させた際の周波数ごとのVSWRを測定した結果を示すグラフである。図13中の破線はD2=0.6mmのときのVSWRを、実線はD2=1.0mmのときの周波数毎のVSWRを、一点鎖線はD2=1.4mmのときの周波数毎のVSWRを、それぞれ示している。
図13に示すように、上記の3つの試験パターンにおいてはアンテナ間隔(D2)が小さくなるにつれて第1周波数帯及び第2周波数帯は低周波側にシフトしうる。ただし、何れのパターンにおいても互いに500MHz以上離れた2つの動作帯域が実現される。アンテナ装置1によれば、アンテナ間隔(D2)を調整することにより、所望の2つの動作周波数が得られうる。
図14は、アンテナ間隔を変化させた際の、周波数帯ごとのVSWRの最低値のシミュレーション結果を示すグラフである。図14中の実線は2GHz~2.7GHzまでの周波数毎のVSWRの最低値の推移を表しており、図14中の破線は5GHz~7.2GHzまでの周波数毎のVSWRの最低値の推移を表している。図14にて破線で示される高周波側の動作帯域は給電アンテナ20に由来するため、あまりアンテナ間隔の影響を受けない。一方、図14にて実線で示される低周波側の動作帯域は、アンテナ間隔による変動が大きい。アンテナ間隔によって電磁結合のしやすさ、換言すれば、伝送路と無給電アンテナ30とインピーダンスの整合度合いが変化するためである。図14に示されるように、第2周波数帯の利得を確保するために、アンテナ間隔は0.35mmから2.74mmまでの値に設定されることが好ましい。また、より好ましくは、アンテナ間隔は0.4mmから2.5mmまでの値に設定されて良い。
ところで、本実施形態のアンテナ装置1は、第1周波数付近で広帯域に動作する板状のモノポールアンテナを給電素子として設けるとともに、その隣に、第2周波数用のメタマテリアルアンテナを配置した構成に相当する。一般的に、メタマテリアルアンテナは、λ/4以下の寸法で(つまり小型に)実現可能といった利点を有するが、動作帯域が狭いといった欠点を有する。そのような事情から、本実施形態では、メタマテリアルアンテナとしての無給電アンテナ30が相対的に帯域の狭い方の周波数帯をサポートし、帯域が広い方の周波数帯は給電アンテナ20がサポートする。本実施形態の構成によれば、Wi-Fiや4G、5Gのように、複数の周波数帯を使用する通信方式であって、周波数帯ごとに帯域幅が異なるような通信方式をサポートしやすくなる。また、本開示のアンテナ装置1によれば、多共振可能であってかつ、低背かつ水平方向の全方位に垂直偏波を送信可能となる。さらに、本開示のアンテナ装置1によれば給電点は1つでよいため、回路を簡素化できる。本開示のアンテナ装置1は、ターゲットとする2つの周波数帯のうち、低周波側が相対的に狭帯域であって高周波側が広帯域であることが求められる通信方式に好適である。
<変形例(1)>
アンテナ装置1は、無給電アンテナ30を複数備えていても良い。例えばアンテナ装置1は、図15に示すように無給電アンテナ30としての第1無給電アンテナ30の隣に、第2無給電アンテナ40が配置された構成を有していても良い。図15に示す構成において、給電アンテナ20、第1無給電アンテナ30、第2無給電アンテナ40はこの順でX軸正方向に並んでいる。第2無給電アンテナ40は、第1無給電アンテナ30と同様に、マッシュルーム構造を有する。つまり、第2無給電アンテナ40は、対向導体板41と短絡部42を備える。
対向導体板41は、無給電側対向部31と同じ平面において、第3周波数において無給電側対向部31と電磁界結合する間隔で隣接配置されている。対向導体板41と無給電側対向部31の離隔である第3距離(D3)もまた、0.5mmや1.0mm、1.5mmなどに設定されて良い。対向導体板41は、短絡部42が備えるインダクタンスと第3周波数で並列共振する静電容量を形成する面積を有している。対向導体板41は第3対向部、短絡部42は第3短絡部と言い換えられてよい。
第3周波数は、任意の周波数であってよく、例えば3GHzなどであってよい。対向導体板41が大きいほど動作周波数は低くなるため、第3周波数が第2周波数よりも高い場合、対向導体板41は無給電側対向部31よりも小さくなりうる。例えば対向導体板41は1つの辺が12mm~14mm程度の正方形であって良い。
図16は、対向導体板41を13mm四方の正方形状とした際のアンテナ装置1全体周波数ごとのVSWRをシミュレーションした結果を示すグラフである。図16と図8を比較すれば明らかなように、第2無給電アンテナ40の追加により、アンテナ装置1は2.9GHzでも動作可能となる。前述の通り、第2無給電アンテナ40の追加に伴って追加される動作周波数は、第2無給電アンテナ40の大きさ等によって調整可能である。
なお、第2無給電アンテナ40の設置位置は、第1無給電アンテナ30からみて給電アンテナ20の反対側に限定されない。図17に示すように第2無給電アンテナ40は、給電アンテナ20から見て第1無給電アンテナ30とは反対側に配置されていても良い。換言すれば第2無給電アンテナ40は給電アンテナ20のX軸負方向に配置されていてもよい。対向導体板41と給電側対向部21との離隔は、第3周波数で電磁結合する値に設定されていれば良い。
また、第2無給電アンテナ40は図18に示すように、第1無給電アンテナ30のY軸負方向側に配置されていてもよい。また、第2無給電アンテナ40は図18に例示する位置よりもX軸負方向側にずらした位置、例えば給電側第3縁部E13と無給電側第3縁部E23の両方と対向する位置に配置されていてもよい。第2無給電アンテナ40は給電側第3縁部E13又は給電側第4縁部に対して近接(隣接)配置されていてもよい。無給電素子を複数備えることにより、さらなる多共振化を図る事ができる。
<変形例(2)>
給電アンテナ20は、図19、図20に示すように給電側対向部21と地板11とを電気的に接続する導体部材である給電側短絡部23を備えていても良い。給電側短絡部23は、導電性のピン(以降、ショートピン)や、板金を加工した部材であって良い。給電側短絡部23の長さは第1距離(D1)となる。給電側短絡部23の直径は、例えば1mmに設定されている。もちろん、給電側短絡部23の直径は、0.5mmや1.5mmであってもよい。給電側短絡部23は、無給電側短絡部32と同様に、断面が矩形状又は六角形などの多角柱として構成されていてもよい。
給電側短絡部23は、例えば、給電側第2縁部E12と給電側第3縁部E13とが接続する角部に配置されている。もちろん、給電側短絡部23の位置は適宜変更されて良い。例えば給電側短絡部23は、給電側第2縁部E12と給電側第4縁部とが接続する角部に配置されていても良いし、給電側第2縁部E12の中央部や角部から所定距離離れた位置に配置されていても良い。給電側短絡部23は、給電側第3縁部E13において延設部22から所定距離(例えば5mm)離れた位置に設けられていても良い。
給電側短絡部23を備える構成においては、インピーダンス調整が容易となる。ひいては、アンテナ装置1としての利得を高めることができる。なお、給電側短絡部23を備える給電アンテナ20は、板状逆Fアンテナに相当する。逆説的に実施形態の給電アンテナ20は、板状逆Fアンテナから短絡部を除去した構成と解することもできる。給電アンテナ20は、板状モノポールアンテナの他、板状逆Fアンテナであってもよい。
以降では、給電側短絡部23との区別のため、無給電アンテナ30が備える短絡部32を無給電側短絡部32とも記載する。
<変形例(3)>
延設部22の脚部222は図21に示すように多段階に構成されていてもよい。すなわち、脚部222は、Y軸方向の長さ(つまり幅)が異なる一次脚部222aと二次脚部222bを備えていても良い。一次脚部222aは、二次脚部222bよりも下側に位置する部位であって、二次脚部222bよりも細く形成されている。一次脚部222aは給電線路14と電気的に接続する部位でもある。二次脚部222bは、一次脚部222aと上部221との間に位置する部位であって、一次脚部222aよりも太く形成されている。二次脚部222bの幅は、一次脚部222aの幅と、上部221の幅の間の値であってよい。このように延設部22は下から上に向かって段階的に幅が大きくなる形状を有していてもよい。当該構成によれば延設部22と地板11とが結合する恐れをより一層低減できる。
同様の理由から、延設部22(主として上部221)は、図22に示すように下向き二等辺三角形の形状を有していても良い。また、延設部22は、図23に示すように、下向き二等辺三角形の上に矩形が接続した五角形状、すなわち下向きのホームベース型であってもよい。ホームベース型は、連続する2つの角が直角である五角形であって、直角五角形の一種である。
図23に示す形を有する延設部22によれば、給電アンテナ20において電流は延設部22の縁部に沿って給電側対向部21へ流れやすくなる。その結果、高周波側での動作帯域がより一層広くなりうる。
図24は、実施形態の延設部22を図23に示す下向きのホームベース型にした構成における周波数とVSWRの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。図18と図24を比較すればわかるように延設部22の形状を変更する事により、より一層の広帯域化が実現できる。具体的には高周波側での動作帯域を1.8GHzから3.14GHzまで拡張できる。なお、延設部22の形状変更は、無給電アンテナ30の動作に影響を与えないことも上記シミュレーション結果から明らかである。
<変形例(4)>
無給電側対向部31には縁部から対向板中心に向かうようにスリット33が形成されていてよい。例えば無給電側対向部31には、図25に示すように無給電側第3縁部E23の中央から対向板中心に向かって延びるスリット33が形成されていても良い。図25に示すアンテナ装置1aは、変形例(2)、(3)として開示の構成を組み合わせてなる構成において、さらに無給電側対向部31にスリット33を設けたものである。すなわち図25に示すアンテナ装置1は、図27、図28に示すように給電アンテナ20は給電側短絡部23を備えるとともに、延設部22は下向きのホームベース型に形成されている。また、無給電側対向部31には図26に示すようにスリット33が形成されている。図25~図28に示すアンテナ装置1aは実施形態として開示のアンテナ装置1の改良型に相当する。
当該スリット33は、Y軸に平行である。スリット33の幅(Ws)は例えば3mmや5mmなどであってよい。スリット33の長さ(Ls)は例えば無給電側対向部31のY軸方向の長さ(L2y)の40%や45%などに設定されて良い。具体的には、仮にL2y=18mmである場合には、Ls=8mmなどに設定されて良い。スリット33は、対向板中心又はその1mm手前で終端するように形成されていてよい。スリット33は、短絡部32の直前まで形成されていても良い。
上記構成によれば、板金を用いて無給電アンテナ30を実現する場合、スリット33として切り取る部分を用いて無給電側短絡部32を実現できる。すなわち、1枚の板金に対して切除工程と折曲工程とを含む処理を施すことで無給電アンテナ30としての立体モジュールを製造可能である。切除工程は、スリット33に相当する部分のうち無給電側短絡部32として利用する部分以外を切除する工程であり、折曲工程は、残った無給電側短絡部32相当の部分を直角に折り曲げる工程である。無給電側対向部31にスリット33を形成する構成によれば、スリット33として除去する部分の一部を無給電側短絡部32として援用可能となるため、アンテナ装置1の製造コストを低減できる。
また、本開示の開発者らは、スリット33を設けていないアンテナ装置1の作動を検証したところ、6GHz付近では電流の一部が給電アンテナ20から無給電側対向部31に流入し、無給電側対向部31がパッチアンテナとして作動していることがわかった。電流の分布を解析したところ、パッチアンテナとして作動する際の電流経路はX軸に平行であることもわかった。これは、無給電側対向部31のX軸方向の長さ(L2x)が、意図せず電気的に6GHzの電波の半波長になっているためと推測される。アンテナ上方向の放射が不要である場合、上記の作動は不要な作動である。
そのような課題に対し、本変形例のアンテナ装置1によれば、無給電側対向部31においてパッチアンテナとして動作する際の電流経路を阻害するようにスリット33が形成されている。そのため、本変形例によれば、無給電側対向部31がパッチアンテナとして誤作動することを抑制する効果が期待できる。
図29は、スリット33の有無による周波数毎の水平面平均利得の変化を示すグラフである。水平面平均利得はアンテナ水平方向における方位ごとの利得の平均値である。図29の実線は、アンテナ装置1aでの周波数と水平面平均利得の関係を示している。点線はアンテナ装置1aからスリット33を除去した構成における周波数と水平面平均利得の関係を示している。
図29に示されるように、無給電側対向部31がスリット33を備える構成によれば、スリット33を備えない構成に比べて、6GHz付近での水平面平均利得が4dBほど改善している。これはスリット33の付与により無給電側対向部31がパッチアンテナとして動作しにくくなり、アンテナ上方向への放射に寄与していた電力が水平方向への放射に寄与するようになったことを示している。つまり、図25に構成によれば、無給電側対向部31がパッチアンテナとして動作することを抑制する効果を奏する。
なお、無給電側対向部31がパッチアンテナとして動作する周波数は、無給電側対向部31のX軸方向の長さ(L2x)と周辺の誘電体によって変化しうる。パッチアンテナは半波長の電流経路を必要とするため、無給電側対向部31がパッチアンテナとして動作する周波数はL2xを短くするほど高周波化するものと予見される。
ところで、スリット33の位置や延設方向等は適宜変更されて良い。他の構成としてスリット33は、無給電側短絡部32が存在しない方向に向けて形成されていてよい。スリット33は、図26に示す位置からX軸方向に所定量ずれた位置に形成されていても良い。また、スリット33の延設方向は必ずしもY軸に平行である必要はない。スリット33は無給電側第1縁部E21又は無給電側第2縁部E22の任意の位置からX軸に平行に形成されていてもよい。
<変形例(5)>
アンテナ装置1は、図30に示すように給電アンテナ20等を保護するための樹脂ケース90を備えていても良い。樹脂ケース90は、例えばポリカーボネート(PC:polycarbonate)樹脂を用いて実現されている。なお、樹脂ケース90の材料としては、PC樹脂にアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(いわゆるABS)を混ぜた合成樹脂や、ポリプロピレン(PP:polypropylene)など、多様な樹脂を採用できる。
樹脂ケース90は、実体的又は仮想的に側壁部91と天板部92とに分けて取り扱うことができる。側壁部91は、樹脂ケース90の側面を提供する構成であって、地板11の縁部から上方に向かって立設されている。天板部92は、樹脂ケース90の上面部を提供する構成である。天板部92は例えば平板状に形成されていてよい。なお、天板部92の外側表面はドーム型など任意の形状を有していてよい。天板部92の内側面(裏面)である内部天井面92aは、地板11/無給電側対向部31等と対向するように平坦に形成されていてよい。
樹脂ケース90は、内部天井面92aが給電側対向部21及び無給電側対向部31と当接するように構成されていてよい。当該構成は側壁部91の高さの調整により実現可能である。内部天井面92aが給電側対向部21及び無給電側対向部31と当接することにより、樹脂ケース90の波長短縮効果により、給電側対向部21及び無給電側対向部31をより一層小型化できる。
また、給電側対向部21及び無給電側対向部31は内部天井面92aに固定されていても良い。例えば給電アンテナ20及び無給電アンテナ30が固定された樹脂ケース90を地板11に組み付けることでアンテナ装置1は製造されても良い。当該構成によれば、立体構造を有する給電アンテナ20や無給電アンテナ30を支持するための部材(例えば樹脂ブロックなど)を省略することができる。
なお、側壁部91が地板11に対してネジや接着剤等を用いて固定されることにより、樹脂ケース90は地板11と一体的に固定されてよい。他の態様としてアンテナ装置1は、ロアケースを備えていても良い。ロアケースは、地板11等を下側から収容するケースである。樹脂ケース90は例えば上下方向に分離可能に構成されているアッパーケースとロアケースとが組み合わさることで構成されていてもよい。
また、給電側対向部21と無給電側対向部31の離隔(つまりアンテナ間隔)が設計値からずれてしまうと、アンテナ性能が変化しうる。アンテナ間隔の変動量が同じであっても、アンテナ間隔が設計値よりも小さくなる場合は、アンテナ間隔が設計値よりも大きく場合よりも、周波数特性の変動量が大きい。
そのような事情から、内部天井面92aには図31に示すように突起部93が形成されていても良い。突起部93は、給電アンテナ20と無給電アンテナ30が接近することを抑制するための構成である。突起部93は、内部天井面92aにおいて給電アンテナ20と無給電アンテナ30の間となる部分に、下向きに突出している。突起部93は、給電アンテナ20と無給電アンテナ30の位置を規制する役割を果たせればよく、そのZ軸方向の長さは数ミリ程度であってよい。突起部93は隔壁部あるいは位置規制部などと呼ぶことができる。
突起部93は、例えば図32に示すように隙間部の両端に設けられていてよい。ここでの隙間部とは、内部天井面92aにおいて給電側対向部21と無給電側対向部31の間に位置する領域を指す。或いは突起部93は、図33に示すように隙間部の中央部に設けられていても良い。さらに、突起部93は、隙間部の全域に渡って形成されていてもよい。
ただし、突起部93は樹脂であって波長短縮効果を奏する構成である。隙間部において突起部93が存在する比率が高くなるにつれて、第2周波数の信号にとっての実質的なアンテナ間隔が長くなりうる。またそれに伴い、給電アンテナ20から見たときの無給電アンテナ30のインピーダンスが変化しうる。もちろん、突起部93の影響を加味した寸法等を設計すれば、突起部93による性能劣化は低減できるが、設計工数の増大を招きうる。そのような事情から隙間部に設ける突起部93は少ないことが好ましい。
なお図34は、隙間部に配置する突起部の量による、周波数特性への影響を試験した結果を示すグラフである。図中の実線は突起部93を隙間部に設けていない場合を表しており、破線は図32に示すように隙間部の両端にのみ突起部93を設けた場合(パターンA)を表している。一点鎖線は隙間部の全領域に突起部93を設けた場合(パターンB)を表している。図34からも、隙間部を占める突起部93が多いほど無給電アンテナ30が動作しにくくなることがわかる。
なお、突起部93は、各アンテナの位置を規制する役割を果たせればよく、その位置及び形状は適宜変更可能である。例えば図35及び図36に示すように複数の突起部93が、無給電側対向部31に設けられた穴34が嵌合するように形成されていても良い。同様に突起部93は、給電側対向部21に設けられた穴24が嵌合するように形成されていても良い。穴24、34の直径は数ミリ程度であってよい。突起部93の直径は穴24、34の直径に応じた値に設定されればよい。図35では無給電側対向部31の四隅に穴34が形成されている場合を例示しているが、穴34の形成位置や数は適宜変更されて良い。無給電側対向部31を係止するための穴34は、1組の対角にのみ形成されていてもよい。係止箇所は3箇所や5箇所以上であっても良い。
なお、送受信回路13は任意の要素であって省略されても良い。送受信回路13を備えるアンテナ装置1は、1つの局面において通信装置と解することができる。本開示のアンテナ装置1は通信装置や、通信システムの形態にて実施されてもよい。