JP7791072B2 - アルミニウム材の抵抗スポット溶接方法 - Google Patents
アルミニウム材の抵抗スポット溶接方法Info
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アルミニウム材の抵抗スポット溶接方法の一例として、電極の加圧力を2段階に変化させ、この加圧力に合わせて電流値を2段階(大電流から小電流)に変化させる技術が開示されている(特許文献1)。
また、溶接の本通電後に冷却時間を設けて、冷却時間経過後に本通電の電流値よりも低い電流値によるテンパー通電を行う技術が開示されている(特許文献2)。
また、予備通電にて第1ナゲットを形成し、冷却工程後の本通電工程により、第1ナゲットをアルミニウム材の重ね方向に直交する厚さ方向へ優先的に成長させる技術が示されている(特許文献3)。
上記した先行文献1、2に記載の方法では、ナゲット径を大径化することができても、同時にナゲットの厚さ方向の成長を抑制することは困難である。また、先行文献3では、厚板においてナゲット厚さを抑制する効果が認められるものの、薄板では同様の効果を得ることができなかった。
複数のアルミニウム材を重ね合わせて電極間に挟み込み、前記電極間に挟まれた前記アルミニウム材同士の接触部を、前記アルミニウム材の融点未満の温度に加温する第一の通電を行う予備通電工程と、
前記予備通電工程後に、前記アルミニウム材同士の間にナゲットを形成する第二の通電を行う本通電工程と、
を含むアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。
<スポット溶接機>
図1は、アルミニウム材を溶接するスポット溶接機の概略構成図である。
スポット溶接機11は、一対の電極13,15と、一対の電極13,15に接続された溶接トランス部17と、溶接トランス部17に電源部18からの溶接電力を供給する制御部19と、一対の電極13,15を軸方向に移動させる電極駆動部20とを備える。制御部19は、スポット溶接における電流値、通電時間、電極の加圧力、通電タイミング、加圧タイミングを統合的に制御する。
第1アルミニウム板21及び第2アルミニウム板23のアルミニウム材、及び3枚以上用いる場合の各アルミニウム板を構成するアルミニウム材は、任意の材質のアルミニウム、又はアルミニウム合金とすることができる。具体的には、5000系、6000系、7000系、2000系、4000系のアルミニウム合金のほか、3000系、8000系のアルミニウム合金や1000系のアルミニウムを採用することができる。各アルミニウム板は、同一の材質であってもよく、上記した材質を組み合わせたものであってもよい。
制御部19は、所定のタイミングで溶接トランス部17から一対の電極13,15間にて通電させる。図2は、溶接電流の波形の一例を示すタイミングチャートである。
図示例の溶接電流の波形は、第一の通電を行う予備通電工程(通電時間T1)に対応する区間と、冷却工程(冷却時間Tc)に対応する区間と、第二の通電を行う本通電工程(通電時間T2)に対応する区間とを有する。予備通電工程と本通電工程のパルス波形は、通電オン/オフの二値で構成される矩形状であるが、三角波や正弦波等の他の波形や、ダウンスロープ、アップスロープ制御された波形であってもよい。
予備通電開始から本通電終了までの間は、電極13,15により第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23に付与する加圧力を一定にすることが好ましい。加圧力を一定にすることで、予備通電後の冷却期間における第1アルミニウム板21と電極13との密着性、及び第2アルミニウム板23と電極15との密着性がそれぞれ均一となり、電流値や通電タイミングを変更する等の複雑な制御が不要となる。この加圧力は、2kN~10kNの範囲がナゲットの形成を良好にできるため好ましい。
以降の説明では、第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23との重ね方向を、板厚方向、ナゲットの厚さ方向(溶け込み深さの深さ方向)とも呼称する。ナゲットについては、上記の重ね方向に直交してナゲット中心から放射状に延びる方向をナゲット径方向とし、ナゲットの厚さ方向に直交する方向の最大径をナゲット径とする。なお、ナゲットの厚さ方向は、アルミニウム板の板厚方向と同じであるため、適宜、板厚方向とも呼称する。
前工程として、第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23の表面に対し、酸洗処理、又は酸化物被膜又はフッ化物被膜を形成する表面処理としてTi/Zr処理が行われる。これらの表面処理によれば、電極13,15と接触する領域に酸化物被膜が付着しにくくなり、電極13,15のドレッシング頻度を低減できる。
図3Aに示すように、一対の電極13,15の間に、溶接する第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23とを重ね合わせて、電極13,15を介して電流値I1の予備通電を行う。このとき、第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23との重ね合わせ面は、溶融を抑制して加温される。すなわち、予備通電では第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23との間に板間溶融は生じない。
その後、所定のインターバル期間にわたって、一対の電極13,15間の通電を中断することにより、第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23の予備通電が行われた部位を冷却する冷却工程を実行する。なお、冷却工程は必ずしも必要ではなく、予備通電から本通電まで連続して通電を行ってもよい。
図3B,図3Cは、冷却工程後の本通電工程の様子を模式的に示す工程説明図であり、第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23の断面を示している。
上記した冷却工程の終了時から本通電工程を開始する。本通電工程においては、図3Bに示すように、電極13,15間で電流値I2により通電する。電流値I2で通電したとき、第1アルミニウム板21と第2アルミニウム板23との間を電流が通過する際に形成される第1ナゲット35の領域よりも、ナゲット外縁から更にナゲット径方向の外側の領域34の方が、電気抵抗が大きくなる。
図4はアルミニウム材の抵抗スポット溶接後における溶融凝固した第2ナゲット39を模式的に示すアルミニウム溶接継手27の断面図である。
ここで、第2ナゲット39の直径をナゲット径D、第2ナゲット39の厚さ(溶け込み深さ)をh、第1アルミニウム板21の板厚をt1、第2アルミニウム板23の板厚をt2とする。
上記のように通電タイミングを予備通電と本通電とに分割し、予備通電で板間を融点未満の温度まで加温すると、薄板の場合でも、ナゲットの板厚方向への成長が抑制される。これは、予備通電により新生面を形成することで、本通電時において電気抵抗の高い領域、つまり、新生面の最外縁よりも外側の領域における抵抗発熱が、板厚方向の抵抗発熱よりも大きくなるためと推認される。その結果、第1ナゲット35は、ナゲット外縁よりナゲット径方向外側への成長が、板厚方向への成長よりも優先的になる。
重ね合わせた複数枚のアルミニウム板の、互いの板面同士の重ね合わせ面が、酸化膜等の絶縁層で覆われている場合、予備通電を実施することで、アルミニウム板表面の絶縁層が破壊され、板表面に多数の新生面(絶縁層のない面)同士の接合部が一定領域に形成される。
(供試材)
材質:A5182材(Al-Mg系アルミニウム合金)
板厚t:1.0mm(試験例1~8,11~13)、1.2mm(試験例9,10,14)
表面処理:酸洗(試験例1~9、11~14)、Ti/Zr処理(試験例10)
種別:クロム銅 R形電極
先端の曲率半径r1:100mm(試験例1~7,9~14)、300mm(試験例8)
電極直径(元径):19mm
電極間加圧力:3kN,3.5kN
試験例1~14の試験結果を表1~表5に纏めて示した。
(試験例1)
試験例1は、電流値8kA、20msの予備通電を行った後、さらに連続して電流値24kA、40msの本通電を行う条件とした。
この試験例1では、表2に示すようにスポット溶接を20回連続して行い、打点数が1~5と、10、13,15,20の打点において形成されたナゲットを代表データとして評価した。各ナゲットの切断面を顕微鏡観察してナゲット寸法を計測した結果、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、3.32~4.40であった。15打点と20打点で、扁平率D/hが3.5未満であったが、他の打点数では3.5~5.0の範囲に収まった。ナゲットの評価方法は、以下の試験例についても同様である。なお、予備通電後において、板間溶融は認められなかった。板厚比h/(2t)は、0.56~0.84となり、15打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
試験例2は、試験例1の条件の予備通電後に、通電を停止するインターバル期間を20msで設けた。その他の条件は試験例1と同様である。
試験例2では、表3に示すようにスポット溶接を15回連続して行い、打点数が1,5,10,15の打点において形成されたナゲットを代表データとして評価した。その結果、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、3.26~3.98であった。15打点目で扁平率D/hが3.5未満となったが、他の打点数では3.5~5.0の範囲に収まった。板厚比h/(2t)は、0.59~0.76となり、0.4~0.8の範囲に収まった。
表3に示すように、試験例3では、スポット溶接を15回連続して行った結果、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、3.54~4.68であった。板厚比h/(2t)は、0.48~0.77となり、0.4~0.8の範囲に収まった。
また、試験例4では、スポット溶接を15回連続して行った結果、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、10打点に達するまでは5.0以上となり、10打点以上では3.5未満となった。板厚比h/(2t)は、0.41~0.81となり、10打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
試験例2~4のいずれも予備通電後の板間溶融は認められなかった。
インターバル期間は、40msまでは扁平率D/hを3.5~5.0の範囲に略収められるが、80msでは上記範囲から外れた。
試験例5は、試験例1の予備通電の電流値を5kAに低下させた以外は、試験例1と同じ条件である。
試験例5では、表3に示すように本通電後のナゲットの扁平率D/hは、15打点に達すると3.40となったが、それまでは3.5~5.0の範囲に収まった。また、予備通電後の板間溶融は認められなかった。板厚比h/(2t)は、0.70~0.84となり、10打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
試験例6は、試験例1の予備通電の通電時間を40msに延ばし、試験例7は、試験例1の予備通電の通電時間を80msに延ばした以外は、試験例1と同じ条件である。
試験例6では、表4に示すようにスポット溶接を15回連続して行った結果、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、10打点目で3.67となった以外は、3.5~5.0の範囲から外れた。板厚比h/(2t)は、0.43~0.91となり、10打点までは0.4~0.8の範囲に収まった。
試験例7では、1打点目で4.22となった以外は、3.5~5.0の範囲から外れた。
また、試験例6,7には、予備通電後の板間溶融は認められなかった。このように、予備通電の通電時間の増加は、ナゲットの扁平率D/hのバラつきを生じさせた。板厚比h/(2t)は、0.58~0.92となり、5打点以降は0.8を超えた。
試験例8は、試験例1の電極をR300に変更した以外は、試験例1と同様である。
試験例8では、表4に示すようにスポット溶接を15回連続して行った結果、予備通電後の板間溶融は認められず、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、15打点目で3.08となった以外は、3.5~5.0の範囲に収まった。このように電極先端の曲率半径が大きくなっても、本通電後のナゲットの扁平率D/hを略適正に維持できた。板厚比h/(2t)は、0.56~0.90となり、10打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
試験例9は、供試片の板厚を1.2mmとすることに伴い、予備通電の電流値を12kA、通電時間を60msに増加させ、本通電の通電時間を80msに増加させている。その他の条件は、試験例2と同様である。また、試験例10は、試験例9の表面処理の酸洗処理に代えて、Ti/Zr処理を施した以外は、試験例9と同様の条件である。
試験例10では、Ti/Zr膜の被膜量は3.5mg/m2となり、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、29打点目までは3.5以上であったが、43打点目以降は更に減少して3.5~5.0の範囲から外れた。板厚比h/(2t)は、0.49~0.95となり、57打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
また、試験例9,10には、予備通電後の板間溶融は認められなかった。
試験例11は、ISOに準拠したスポット溶接条件であり、予備通電を行わずに本通電を行った。試験例12は、試験例11の本通電における通電時間を40msに短縮した。
試験例11では、表2に示すようにスポット溶接を20回連続して行い、打点数が1,5,10,15の打点において形成されたナゲットを代表データとして評価した。その結果、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、いずれも3.5未満となり、3.5~5.0の範囲から外れた。板厚比h/(2t)は、0.79~0.99となり、3打点以外は0.8を超えた。
また、試験例12では、本通電後のナゲットの扁平率D/hは、1打点目が3.70であった以外は、いずれも3.5未満となり、3.5~5.0の範囲から外れた。板厚比h/(2t)は、0.66~0.95となり、5打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
試験例13は、試験例1の予備通電の電流値を10kAに増加させた以外は、試験例1の条件と同様である。
試験例13では、表2に示すように本通電後のナゲットの扁平率D/hは、20打点目が3.80であった以外は、いずれも3.5未満となり、3.5~5.0の範囲から外れた。また、予備通電後の板間溶融が認められた。板厚比h/(2t)は、0.72~0.95となり、2打点と20打点では0.4~0.8の範囲に収まったが、それ以外は0.8を超えた。
試験例14は、試験例11と同様のISOに準拠したスポット溶接条件であり、板厚を1.2mmとして本通電の通電時間を80msとした。
試験例14では、表5に示すように本通電後のナゲットの扁平率D/hが全て3.5未満であり、3.5~5.0の範囲から外れた。板厚比h/(2t)は、0.68~0.92となり、43打点以降は0.8を超えたが、それまでは0.4~0.8の範囲に収まった。
(1) 複数のアルミニウム材を重ね合わせて電極間に挟み込み、前記電極間に挟まれた前記アルミニウム材同士の接触部を、前記アルミニウム材の融点未満の温度に加温する第一の通電を行う予備通電工程と、
前記予備通電工程後に、前記アルミニウム材同士の間にナゲットを形成する第二の通電を行う本通電工程と、
を含むアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。
このアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法によれば、ナゲットの板厚方向への成長を抑制しつつナゲット径を大きくできるため、継手強度を高められる。また、ナゲットの外縁が、重ねられたアルミニウム材の外側の板面(電極側)に到達し難くなるため、電極表面への溶融アルミニウムの付着を抑制できる。これにより、電極のドレッシング頻度を低減でき、もって、スポット溶接のタクトタイムを短縮し、生産性を向上できる。
このアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法によれば、本通電におけるナゲットのナゲット径方向への成長が、板厚方向への成長と比較して大きくなる。
このアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法によれば、アルミニウム材同士の接合強度を十分に高められる。
このアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法によれば、インターバル期間によりアルミニウム材同士の接触部が冷却されるため、本通電時に過剰な溶込みを抑制できる。
このアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法によれば、予備通電により加温された状態を保持しつつ本通電を行える。
このアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法によれば、電極と接触する領域に酸化物被膜が付着しにくくなり、電極のドレッシング頻度を低減できる。
21 第1アルミニウム板(アルミニウム材)
23 第2アルミニウム板(アルミニウム材)
25 ナゲット
27 アルミニウム溶接継手(接合体)
35 第1ナゲット
39 第2ナゲット
Claims (5)
- 複数のアルミニウム材を重ね合わせて電極間に挟み込み、前記電極間に挟まれた前記アルミニウム材同士の接触部を、前記アルミニウム材の融点未満の温度に加温する第一の通電を行う予備通電工程と、
前記予備通電工程後に、前記アルミニウム材同士の間にナゲットを形成する第二の通電を行う本通電工程と、を含み、
前記本通電工程により形成されたナゲットは、前記アルミニウム材の重ね方向に直交する方向のナゲット径D(mm)と、前記ナゲットの厚さh(mm)との寸法比D/hが3.5~5.0であるアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。 - 前記本通電工程により形成されたナゲットは、前記ナゲットの厚さh(mm)と、前記アルミニウム材の合計厚さ2t(mm)との板厚比h/(2t)が0.4~0.8である請求項1に記載のアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。
- 前記予備通電工程と前記本通電工程との間に、通電を停止するインターバル期間を設ける、
請求項1に記載のアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。 - 前記インターバル期間は、80ms以下である、
請求項3に記載のアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。 - 前記アルミニウム材の表面に、酸化物被膜又はフッ化物被膜を形成する表面処理を施す、
請求項1から4のいずれか1項に記載のアルミニウム材の抵抗スポット溶接方法。
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