JP7794582B2 - 食品素材剪断物の製造方法 - Google Patents
食品素材剪断物の製造方法Info
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Description
冷菓中の果実の見た目によるイメージ認識を強化するために、穀粉等の可食材料からなる被覆材中に、果実を内包したアイスクリーム等の冷菓を詰めた被覆冷菓において、被覆材を冷菓中に入れた果実の実物の形状を模して成型する技術を開発することで、食する者が果実の冷菓を食している意識を持ち易くさせるという試みがなされていた(特許文献1)。
一方、生の果実を冷菓に使用することで、果実の本来の生の味を味わうことができるというだけでなく、さらに、さじ通りも良い冷菓の開発はあまりなされていなかった。
また、本発明の目的は、特に、果実の剪断物を冷菓に用いることで、果実の本来の生の味を味わうことができるというだけでなく、さらに、さじ通りも良い冷菓を提供することである。
〔1〕果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材と、融点が55℃以上の油脂粉末との混合物を剪断処理する食品素材剪断物の製造方法であって、前記油脂粉末の平均粒径が0.5~200μmであり、該食品素材100質量部に対して、該油脂粉末の量が20~150質量部であることを特徴とする食品素材剪断物の製造方法。
〔2〕前記食品素材と前記油脂粉末に、乳化剤、複合食物繊維素材及び糖類からなる群から選ばれる1種又は2種以上を加えて剪断処理する、〔1〕に記載の食品素材剪断物の製造方法。
〔3〕前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、前記炭素数xは16~20から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記油脂粉末の粒子は板状形状を有する油脂粉末である、〔1〕又は〔2〕に記載の食品素材剪断物の製造方法。
また、本発明の食品素材剪断物によれば、果実の本来の生の味を味わうことができるというだけでなく、さらに、さじ通りも良い冷菓を提供することができる。
まず、本発明に使用する食品素材について説明をする。
本発明に使用する食品素材は、果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材である。
果実としては、例えば、イチゴ、パイナップル、マンゴー、ミックスベリー、みかん、オレンジ、リンゴや、ピーナッツ、アーモンド等の木の実類が挙げられる。
また、野菜としては、例えば、ネギ、枝豆等が挙げられる。
次に、本発明に使用する油脂粉末について説明をする。
融点55℃以上の油脂粉末の原料となる油脂は、食用油脂である限り、特に限定されない。
ここで、油脂粉末とは、実質的に油脂よりなる粉末のことである。「実質的に」とは、油脂粉末の全体を100質量%とした場合、油脂以外の成分は5質量%未満しか含まないことを意味する。
また、使用する油脂粉末は、その融点が55℃以上と高いので、水分を多く含む果実や野菜とよく混ざり合い、その結果、本発明の食品素材剪断物を得ることができると考えられる。
なお、本発明の油脂粉末は、油脂と賦形剤、乳化剤等を含む水溶液を乳化したものを噴霧乾燥して得られる粉末油脂とは異なる。
本発明に使用する油脂粉末としては、例えば、油脂を構成する脂肪酸の80質量%以上が炭素数16以上の飽和脂肪酸からなる、パームステアリン、極度硬化パーム油、極度硬化菜種油、極度硬化高エルシン酸菜種油、極度硬化大豆油、極度硬化ひまわり油、極度硬化紅花油等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
油脂粉末の融点は、55℃以上であり、好ましくは58℃以上であり、さらに好ましくは61℃以上で、融点の上限は、好ましくは90℃以下であり、より好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは75℃以下である。
具体的には、図1に示すように、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの交点の温度を融点とする。
特に、油脂粉末の平均粒径が、1~20μmであると、ペースト状だけでなく、粉末状の食品素材剪断物を得ることができる。
ここで、当該平均粒径(有効径)は、体積平均径〔MV〕を言い、粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、装置名:SALD-2300)でレーザ回折散乱法(ISO13320,JIS Z 8825-1)に基づいて、乾式測定により体積基準粒度分布を測定して体積平均径〔MV〕を求め、得られた体積平均径〔MV〕を平均粒径とした。体積平均径〔MV〕は、粒子の粒径、粒子の体積、及び粒子の体積の総和の各値を使って以下の式から求めることができる。
体積平均径〔MV〕=(粒径×その粒子の体積)の総和/粒子の体積の総和
なお、有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザ回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状形状であっても球状形状であっても同じ原理で測定することができる。
ここで、当該その他の成分としての乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を挙げることができ、香料としては、例えば、リモネン、バニリン、オレンジ、バニラ、ジャスミン等を挙げることができ、着色料としては、例えばウコン色素、クチナシ色素、ベニバナ色素、パプリカ色素、赤キャベツ色素等の天然着色料や、タール系色素等の合成着色料等を挙げることができる。
これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂粉末の全質量を100質量%とした場合、例えば、0~30質量%、好ましくは1~18質量%、より好ましくは2~15質量%、更に好ましくは3~8質量%である。その他の成分は、その90質量%以上が、平均粒径が1000μm以下である粉体であることが好ましく、平均粒径が500μm以下の粉体であることがより好ましい。さらに、20μm以下の細かい粒子は人間の感覚では感じとることが困難であるので、平均粒径が例えば20μm以下、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは1~18μmの粉体であれば、口に含んだ際の粉体の粗いざらついた感触がなくなるので好ましい。
本発明に使用する油脂粉末には、市販の油脂粉末を使用することができる。市販の油脂粉末としては、例えば、フロイント産業(株)販売の商品「ラブリワックス-102H」、日油(株)販売の商品「TP-9」、理研ビタミン(株)販売の商品「スプレーファットNR-100」等が挙げられる。
また、本発明に使用する油脂粉末には、後述する製造品(油脂粉末A)を使用することができる。
本発明に使用する油脂粉末には、次に説明をする油脂粉末Aを使用することができる。
油脂粉末Aは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、該炭素数xは16~20から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該油脂粉末の粒子の形状は板状形状である。
以下、油脂粉末Aについて詳細に説明をする。
上記油脂成分はβ型油脂を含む。ここで、β型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ型の結晶のみからなる油脂である。その他の結晶多形の油脂としては、β’型油脂及びα型油脂があり、β’型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ’型の結晶のみからなる油脂である。α型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるα型の結晶のみからなる油脂である。油脂の結晶には、同一組成でありながら、異なる副格子構造(結晶構造)を持つものがあり、結晶多形と呼ばれている。代表的には、六方晶型、斜方晶垂直型及び三斜晶平行型があり、それぞれα型、β’型及びβ型と呼ばれている。また、各多形の融点はα、β’、βの順に融点が高くなり、各多形の融点は、炭素数xの脂肪酸残基Xの種類により異なるので、以下、表1にそれぞれ、トリパルミチン、トリステアリン、トリアラキジンである場合の各多形の融点(℃)を示す。なお、表1は、Nissim Garti et al.、”Crystallization and Polymorphism of Fats and Fatty Acids”、Marcel Dekker Inc.、1988、pp.32-33に基づいて作成した。そして、表1の作成にあたり、融点の温度(℃)は小数点第1位を四捨五入した。また、油脂の組成とその各多形の融点がわかれば、少なくとも当該油脂中にβ型油脂が存在するか否かを検出することができる。
2dsinθ=nλ(n=1,2,3・・・)
この式を満たす位置に回折ピークが現れる。ここでdは格子定数、θは回折(入射)角、λはX線の波長、nは自然数である。短面間隔に対応する回折ピークの2θ=16~27°からは、結晶中の側面のパッキング(副格子)に関する情報が得られ、多形の同定を行なうことができる。特にトリアシルグリセロールの場合、2θ=19、23、24°(4.6Å付近、3.9Å付近、3.8Å付近)にβ型の特徴的ピークが、21°(4.2Å)付近にα型の特徴的なピークが出現する。なお、X線回折測定は、例えば、20℃に維持したX線回折装置((株)リガク、全自動多目的X線回折装置Smart Lab 9 kW)を用いて測定される。X線の光源としてはCuKα線(1.54Å)が最もよく利用される。
油脂成分の好ましい態様としては、上記油脂成分がβ型油脂から実質的になるものであり、より好ましい態様は上記油脂成分がβ型油脂からなるものであり、特に好ましい態様は、上記油脂成分がβ型油脂のみからなるものである。上記油脂成分のすべてがβ型油脂である場合とは、示差走査熱量測定法によってα型油脂及び/又はβ’型油脂が検出されない場合である。
更なる態様として、上記油脂成分が全てβ型油脂であることが好ましいが、その他のα型油脂やβ’型油脂が含まれていてもよい。
つまり、このピーク強度比が0であった場合、すべてがα型油脂であるとわかり、ピーク強度比が1であった場合、すべてがβ型油脂であるとわかり、また、ピーク強度比が1に近い数字であると、β型油脂が多いということがわかる。
油脂成分中のβ型油脂がより多い方が好ましいので、ピーク強度比は、1に近い値であることが好ましい。
したがって、ピーク強度比は、好ましくは0.6~1であり、より好ましくは0.7~1であり、さらに好ましくは0.8~1であり、さらにより好ましくは0.9~1であり、特に好ましくは0.95~1である。
油脂粉末A中の油脂成分の含量は、例えば50~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、85~100質量%、92~100質量%、95~100質量%程度であってもよい。
脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、パルミチン酸及びステアリン酸であり、さらに好ましくは、ステアリン酸である。
当該XXX型トリグリセリドの含有量は、油脂粉末A又は油脂成分の全質量を100質量%とした場合、例えば、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上を下限とし、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、95質量%以下を上限とする範囲である。XXX型トリグリセリドは1種類又は2種類以上用いることができ、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類が用いられる。XXX型トリグリセリドが2種類以上の場合は、その合計値がXXX型トリグリセリドの含有量となる。
ここで、油脂粉末の粒子が板状形状であるかどうかは、アスペクト比で判定することができる。
板状形状は、アスペクト比が1.1以上であることが好ましく、より好ましくは、1.2以上のアスペクト比であり、さらに好ましくは1.2~3.0、特に好ましくは、1.3~2.5、殊更好ましくは1.4~2.0である。
本発明におけるアスペクト比は、粒子図形に対して、面積が最小となるように外接する長方形で囲み、その長方形の長辺の長さと短辺の長さの比と定義される。また、粒子が球状形状の場合は、アスペクト比は1.1より小さくなる。極度硬化油等を常温で固体脂含量の高い油脂を溶解し直接噴霧する方法では、油脂粉末Aの粒子が表面張力によって、球状形状となり、アスペクト比は1.1未満となる。そして、前記アスペクト比は、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などによる直接観察により、任意に選択した粒子について、その長軸方向の長さおよび短軸方向の長さを計測することによって、計測した個数の平均値として求めることができる。
油脂粉末Aは、ゆるめ嵩密度が、好ましくは0.05~0.6g/cm3であり、より好ましくは0.1~0.4g/cm3であり、さらにより好ましくは0.1~0.3g/cm3である。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、粉体の質量を、その粉体の占める嵩体積で割った値、すなわち、単位嵩体積当たりの粉体質量である。
ゆるめ嵩密度の測定は、パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を使用して行うことができる。パウダテスタPT-Xによる測定では、注入法を採用し、正弦波の振動により容器へ空気を含んだ粉粒体を自由落下させることにより測定を行う。
具体的には、直径7.5cmの目開き1.7mmの円形の篩に粉末サンプルを200~300cm3供し、振幅1.5mmで振動させ、篩から落下させる(正弦波の振動による自由落下)。27cmの高さから自由落下した粉末サンプルは、篩の下に設置してあるステンレス製100cm3カップ(内径約5cm×高さ約5cm)に注入され、粉末サンプルが当該カップから溢れるまで注入された後、篩の振動を止める。その後、長方形のブレードでカップ上の余分な粉体サンプルをカップの上面に沿ってすり切り、カップ中の粉体サンプルの質量(A(g))を測定することでゆるめ嵩密度を下記式(V)から算出する。
ゆるめ嵩密度は、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値をそのサンプルのゆるめ嵩密度の値とする。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3) (V)
油脂粉末Aは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を溶融状態とし、特定の冷却温度に保ち、冷却固化することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、油脂粉末Aを得ることができる。より具体的には、(a)上記XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を準備し、任意に工程(b)として、工程(a)で得られた油脂粉末Aの原料を加熱し、前記油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂粉末Aの原料を得、さらに(d)前記油脂粉末Aの原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子の形状が板状である油脂粉末Aを得る。なお、冷却後に得られる固形物に対して、ハンマーミル、カッターミル、微粉砕機等、公知の粉砕加工手段を適用して、該油脂粉末Aを製造することもできる。
油脂粉末Aは、以下の工程、
(a)XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を準備する工程、
(b)工程(a)で得られた油脂粉末Aの原料を任意に加熱等し、前記油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂粉末Aの原料を得る任意の工程、
(d)前記油脂粉末Aの原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である油脂粉末Aを得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。
さらに、上記工程(d)では、冷却後に得られる空隙を有する固形物に衝撃(粉砕する、ほぐす、振動させる、篩にかける等)を加えることにより、油脂粉末Aを得ることもできる。
以下、上記工程(a)~(d)について説明する。
工程(a)で準備されるXXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む通常のXXX型トリグリセリド等の油脂の製造方法に基づいて製造され、もしくは容易に市場から入手され得る。ここで、上記炭素数x及び飽和脂肪酸残基Xで特定されるXXX型トリグリセリドは、最終的に得られる目的の油脂成分のものと結晶多形以外の点で同じである。当該原料にはβ型油脂が含まれていてもよく、例えば、β型油脂の含有量が0.1質量%以下、0.05質量%以下、又は0.01質量%以下含んでいてもよい。但し、β型油脂は、当該原料を加熱等により溶融状態にすることにより消失するので、当該原料は溶融状態の原料であってもよい。当該原料が、例えば溶融状態である場合に、β型油脂を実質的に含まないことは、XXX型トリグリセリドに限らず、実質的に全ての油脂成分がβ型油脂ではない場合も意味し、β型油脂の存在は、上述したX線回折測定によりβ型油脂に起因する回折ピーク、示差走査熱量測定法によるβ型油脂の確認等によって確認することができる。「β型油脂を実質的に含まない」場合のβ型油脂の存在量は、X線回折ピークのうち、β型の特徴的ピークとα型の特徴的ピークとの強度比率[β型の特徴的ピークの強度/(α型の特徴的ピークの強度+β型の特徴的ピークの強度)](ピーク強度比)から想定できる。上記油脂粉末Aの原料の当該ピーク強度比は、例えば0.2以下であり、好ましくは、0.15以下であり、より好ましくは、0.10以下である。油脂粉末Aの原料には、上述したとおりのXXX型トリグリセリドを1種類又は2種以上含んでいてもよく、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類である。
具体的には、例えば、上記XXX型トリグリセリドは、脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によって製造することができる。XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリドは前述の(i)~(iii)のいずれの方法によっても製造できるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(i)直接エステル合成がより好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成における反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃~300℃が好ましく、150℃~270℃がより好ましく、180℃~250℃がさらに好ましい。反応を180~250℃で行うことで、特に効率的にXXX型トリグリセリドを製造することができる。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物をさらに精製することができる。
XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料となるその他のトリグリセリドとしては、上記XXX型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、各種トリグリセリドを含めてもよい。その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
上記その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~100質量%、好ましくは0~70質量%、より好ましくは1~40質量%である。
その他、パーム極度硬化油は、XXX型トリグリセリドの含量が少ないので、トリグリセリドの希釈成分として使用できる。
油脂粉末Aの原料としては、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、脂肪酸、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~5質量%、好ましくは0~2質量%、より好ましくは0~1質量%である。
当該混合は、必要に応じて加熱下で混合してもよい。加熱は、後述の工程(b)における加熱温度と同程度であることが好ましく、例えば、50~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、さらに好ましくは80℃で行われる。
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で準備された油脂粉末Aの原料は、準備された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、準備された時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂粉末Aの原料を得る。
ここで、油脂粉末Aの原料の加熱は、上記油脂粉末Aの原料中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70~200℃、好ましくは、75~150℃、より好ましくは80~100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.1~3時間、好ましくは、0.3~2時間、より好ましくは0.5~1時間継続することが適当である。
上記工程(a)又は(b)で準備された溶融状態の油脂粉末Aの原料は、さらに冷却固化されて、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である油脂粉末Aを形成する。
ここで、「溶融状態の油脂粉末Aの原料を冷却固化」するためには、冷却温度の上限値として、溶融状態の油脂粉末Aの原料を、当該油脂粉末Aの原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度に保つことが必要である。「油脂粉末Aの原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度」とは、例えば、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、β型油脂の融点は74℃であるので(表1)、当該融点より1~30℃低い温度(即ち44~73℃)、好ましくは当該融点より1~20℃低い温度(即ち54~73℃)、より好ましくは当該融点より1~15℃低い温度(即ち59~73℃)、特に好ましくは、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃低い温度である。
このような冷却温度以上とするのは、XXX型トリグリセリドを含有するβ型油脂を得るために、当該油脂の結晶化の際、冷却温度をβ型油脂以外のα型油脂やβ’型油脂が結晶化しない温度に設定する必要があるためである。冷却温度は、主にXXX型トリグリセリドの分子の大きさに依存するので、炭素数xと最適な冷却温度の下限値との間には一定の相関関係があることが理解できる。
例えば、油脂粉末Aの原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、冷却温度の下限値は50.8℃以上となる。従って、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、「溶融状態の油脂粉末Aの原料を冷却固化」する温度は、50.8℃以上72℃以下がより好ましいこととなる。
また、XXX型トリグリセリドが2種以上の混合物である場合は、炭素数xが小さい方の冷却温度に合わせてその下限値を決定することができる。例えば、油脂粉末Aの原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が16のパルミチン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドと炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドとの混合物である場合、冷却温度の下限値は小さい方の炭素数16に合わせて37.6℃以上となる。
さらに、工程(d)の前、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂粉末Aの組成物原料に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。これらの任意工程(c1)~(c3)は、いずれか単独で行ってもよいし、複数の工程を組み合わせて行ってもよい。ここで、工程(a)又は(b)と工程(d)との間とは、工程(a)又は(b)中、工程(a)又は(b)の後であって工程(d)の前、工程(d)中を含む意味である。
シーディング法(c1)及びテンパリング法(c2)は、油脂粉末Aの製造において、溶融状態にある油脂粉末Aの原料をより確実に粉末状とするために、最終温度まで冷却する前に、溶融状態にある油脂粉末Aの原料を処置する粉末生成促進方法である。
ここで、シーディング法(c1)とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂粉末Aの物原料に、当該油脂粉末Aの原料中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却時、当該油脂粉末Aの原料の温度が、例えば、最終冷却温度±0~+10℃、好ましくは+5~+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂粉末Aの原料100質量部に対して0.1~1質量部、好ましくは0.2~0.8質量部添加することにより、油脂の粉末化を促進する方法である。
また、テンパリング法(c2)とは、溶融状態にある油脂粉末Aの原料の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5~20℃低い温度、好ましくは7~15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10~120分間、より好ましくは30~90分間程度冷却することにより、油脂の粉末化を促進する方法である。
さらに、予備冷却法(c3)とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂粉末Aの原料を、工程(d)にて冷却する前に、前記XXX型トリグリセリドを含む油脂粉末Aの原料を準備した時の温度と前記油脂粉末Aの原料の冷却時の冷却温度との間の温度で一旦冷却する方法、言い換えれば、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。(c3)予備冷却法に続いて、工程(d)の油脂粉末Aの原料の冷却時の冷却温度で冷却することが行われる。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2~40℃高い温度、好ましくは3~30℃高い温度、より好ましくは4~30℃高い温度、さらに好ましくは5~10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
工程(d)の冷却後に得られる空隙を有する固形物は、溶融状態の油脂よりも体積が増加した空隙を有する固体物であるが、この空隙を有する固体物は容易に崩壊して粉末状の物質になるため、特に粉末化工程を設けなくても、容器に充填する充填工程や運搬工程で、空隙が崩壊して粉末状の物質にすることができる。
また、(d)工程で得られた空隙を有する固体物に、衝撃を与えて粉末化することもできる。衝撃を与える方法は特に限定されないが、例えば、通常の粉砕機(ハンマーミル、カッターミル、微粉砕機等)を用いて空隙を有する固体物を粉砕する方法、空隙を有する固体物をスパチュラ、ゴムベラ、スコップ等でほぐす方法、容器に入れた空隙を有する固体物を振動させる方法、空隙を有する固体物を篩に掛けて衝撃を加える方法等が挙げられる。
また、これらの粉砕をする前に、空隙を有する固形物を解砕機で解砕しても良い。
このようにして、油脂粉末Aを製造することができる。
果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材と、融点が55℃以上の油脂粉末との混合物の剪断処理は、剪断能力を有する機械で剪断処理をすれば良い。
果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材はそのままでも良いが、後述する機械で剪断処理しやすくするため、適宜の大きさに切り分けても良い。切り分ける方法は従来技術の通りでよく、任意である。
融点が55℃以上の油脂粉末は、上述のとおり、市販品もしくは製造品を使用することができ、粉末状態のまま使用される。
果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材と、融点が55℃以上の油脂粉末は、剪断能力を有する機械に投入され剪断処理されるのが一般的である。剪断処理されるまでにかき混ぜて、混合物を形成してもよいし、剪断処理と一緒に混合物としてもよい。
高速流動混合機として、例えば、卓上ブレンドタイプの高速流動混合機((株)カワタ製、装置名「スーパーミキサーピッコロSMP-2」)、卓上タイプの粉砕機(大阪ケミカル(株)装置名「ラボミル2」)等が挙げられる。
剪断処理条件は、使用する機械や原料の仕込み量によって異なってくるので、適宜調整すれば良い。
例えば、剪断機械として、上述した「スーパーミキサーピッコロSMP-2」を用い、仕込み量が約300gの場合、回転数は、1000~5000rpmであることが好ましく、2000~5000rpmであることがより好ましく、2000~4000rpmであることがさらに好ましい。この場合の剪断処理時間は、5~60秒であることが好ましく、10~40秒であることがより好ましく、20~40秒であることがさらにより好ましい。
また、剪断機械として、上述した「ラボミル2」を用い、仕込み量が約50gの場合、回転数は、3000~20000rpmであることが好ましく、5000~15000rpmであることがより好ましく、8000~12000rpmであることがさらに好ましい。この場合の剪断処理時間は、5~30秒であることが好ましく、5~20秒であることがより好ましく、5~10秒であることがさらにより好ましい。
なお、剪断処理は、数回に分けて行っても良く、数回に分けて剪断処理をした場合、上記剪断時間は、全ての剪断処理の合計時間のことである。
剪断時における油脂粉末の量は、食品素材100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、20~150質量部であることがより好ましく、30~100質量部であることがさらに好ましく、40~90質量部であることが最も好ましい。
本発明の食品素材剪断物は、果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材と、融点が55℃以上の油脂粉末との混合物を剪断処理することにより得られる食品素材剪断物であって、該食品素材100質量部に対して、該油脂粉末の量が5~200質量部であることを特徴とする。
本発明の食品素材剪断物の外観は、例えば、ペースト状、又は粉末状であり、これらに限られない。
実施例で示すように、使用する油脂粉末の種類、油脂粉末の添加量、及び他の添加物を調整することで、得られる食品素材剪断物を、例えば、ペースト状にしたり、粉末状にしたりすることができる。
乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を挙げることができる。
複合食物繊維素材は、市販品を使用することができ、例えば、旭化成(株)販売の商品「セオラスファイバーDF-17」が挙げられる。
糖類としては、例えば、砂糖、乳糖、トレハロース、でん粉等を挙げることができる。
本発明の食品素材剪断物は、各種分野で利用することができる。
例えば、果実のペースト状又は粉末状の剪断物は、アイスクリームの果実材料として使用することができる。
果実の粉末状の剪断物はサラダにかけても良い。また、ネギのペースト状の剪断物は、ネギの風味のする練り薬味として、納豆等に入れて食することができる。
食品中の食品素材剪断物の含有量は、対象とする食品の種類によって異なるが、例えば、ペースト状又は粉末状の果実剪断物をアイスクリームの果実材料として使用する場合、アイスクリーム全体を100質量%とした場合、5~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。
本発明の食品は、原料として食品素材剪断物を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
・油脂粉末の融点
DSC(メトラー・トレド社製 DSC1)を使用して、試料(ex.油脂粉末)を、2℃/分の昇温速度で加熱し、吸熱曲線を測定した。融点は、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの、交点の温度として求めた。
平均粒径は、粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、装置名:SALD-2300)でレーザ回折散乱法(ISO13320、JIS Z 8825-1)に基づいて、乾式測定により体積基準粒度分布を測定して体積平均径〔MV〕を求め、得られた体積平均径〔MV〕を平均粒径とした。体積平均径〔MV〕は、粒子の粒径、粒子の体積、及び粒子の体積の総和の各値を使って以下の式から求めた。
体積平均径〔MV〕=(粒径×その粒子の体積)の総和/粒子の体積の総和
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
X線回折装置((株)リガク、全自動多目的X線回折装置Smart Lab 9 kW)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力9.0kW、操作角0.96~30.0°、測定速度20°/分の条件で測定した。この測定により、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分におけるα型油脂、β’型油脂、及びβ型油脂の存在を確認した。4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断できる。
したがって、上記X線回析測定の結果から、ピーク強度比=[β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å))/(α型の特徴的ピークの強度(2θ=21°(4.2Å))+β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å)))]を算出し、その値をβ型油脂の存在量を表す指標として判断した。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、粉体の質量を、その粉体の占める嵩体積で割った値、すなわち、単位嵩体積当たりの粉体質量として求めた。
ゆるめ嵩密度の測定は、パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を使用して測定した。パウダテスタPT-Xは注入法を採用しており、正弦波の振動により容器へ空気を含んだ粉粒体を自由落下させることにより測定を行った。
具体的には、直径7.5cmの目開き1.7mmの円形の篩に粉末サンプルを200~300cm3供し、振幅1.5mmで振動させ、篩から落下させた(正弦波の振動による自由落下)。27cmの高さから自由落下した粉末サンプルは、篩の下に設置してあるステンレス製100cm3カップ(内径約5cm×高さ約5cm)に注入され、粉末サンプルがカップから溢れるまで注入された後、篩の振動を止めた。その後、長方形のブレードでカップ上の余分な粉末サンプルをカップの上面に沿ってすり切り、カップ中の粉体サンプルの質量(A(g))を測定することでゆるめ嵩密度を下記式(V)から算出した。なお、ゆるめ嵩密度は、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値をそのサンプルのゆるめ嵩密度の値とした。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3) (V)
得られた各種油脂粉末の外観を目視で観察した。
また、後述する製造例1の油脂粉末(a)の粒子の形状を、電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM-7500F」)を用いて、倍率10000倍で観察した。
電子顕微鏡で観察するサンプルの蒸着方法を以下に記載する。
まず、銅板上に導電テープを張り試料粉を上に載せた後、余剰試料を飛ばす目的で窒素ガスによるブロワー処理をした。その後、蒸着処置は、Osmium plasma coator(Nippon Laser&Electronics Lab.社製、「OPC-80」)を用いて、オスミウム蒸着処理(30nm)を行った。
食品素材、及び食品素材剪断物の水分は、(株)エー・アンド・デイ社製の水分計「加熱乾燥式水分計MS-70」を用いて測定した。
具体的には、測定するサンプル(食品素材又は食品素材剪断物)2gを測定容器に入れ、140℃で加熱し、水分含量を測定した。
園芸学会雑誌の62巻3号(著者:トウ、紅 上田、悦範、1993年12月発行、「凍結方法、凍結貯蔵温度が冷凍イチゴの風味とエステル含量に及ぼす影響」」)の636頁の右欄の6~8行目に、「イチゴの香気成分のほとんどがエステル類で占められているといわれている(Dirinckら、1981)」と記載されているので、今回、ダイナミックヘッドスペース法(DHS)により、エステル類の面積値、具体的には、メチルブチレート、メチルヘキサネート、エチルブチレートの合計の面積値を測定し、得られた面積値について、基準サンプル(イチゴ)の面積値を1とした時の相対面積値を算出し、その値を匂いの成分の分析値とした。
〔Dirinckら、1981〕Dirinck,P.J.,H.L/Pooter,G.A.Willaert and N.M.Schamp.1981.Flavor quality of cultivated strawberries,The role of the sulfur compounds.J.Agric.Food Chem.29:316-321
10mLバイアル瓶にイチゴの重量として0.4gとなるように各サンプルを測り取った。
その後、以下に示す条件で分析を行った。
(ダイナミックヘッドスペース法(DHS)の条件)
Sample incubation:80℃、0.1分
Sample Trapping:パージ量60mL(10mL/min)、トラップ温度25℃、サンプル加温80℃
Drying Purge:パージ量1000mL(50mL/min)トラップ温度40度
吸着剤:TENAX TA(GESTEL社)
(GCMS分析の条件)
カラム:Agilent社製DB-WAX (60m×0.25mm×0.50μm)
脱着温度:240℃
オーブン温度:40℃(10min hold)→8℃/min→240℃(5min hold)
表2に、後述する食品素材剪断物の製造に使用した原料を示す。
油脂粉末の原料として、横関油脂工業株式会社製のフレーク状の菜種極度硬化油(α型油脂、ピーク強度比:0.03、融点67℃、菜種極度硬化油の全質量を100質量%とした場合のグリセリンの1位~3位に炭素数18の脂肪酸残基X(ステアリン酸残基)を有するXXX型トリグリセリドの含有量は79.6質量%)を使用した。
フレーク状の菜種極度硬化油2kgを、ステンレス容器(横幅:530mm×奥行:325mm×高さ:100mm)に拡げて敷き詰め、計3個のステンレス容器を恒温室(横幅:5100mm×高さ:2100mm×奥行:4050mm、エスペック株式会社製、装置名「TBUU」)内のスチールラック(横幅:760mm×奥行:460mm×高さ:1795mm)に静置し、融点を超える80℃にて10時間維持して完全に融解した後、60℃で16時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却し、油脂固形物を得た。
得られた油脂固形物6.0kgを解砕機で解砕し、油脂解砕物を得た。
次に、微粉砕機を用いて、得られた解砕物を室温(25℃)の環境下で粉砕し、粉砕品を得た。得られた粉砕品を篩(30mesh)で処理をし、篩を通過した粉末を回収することで、β型油脂を含有する油脂粉末(a)(融点:67.4℃、平均粒径16.6μm、ゆるめ嵩密度:0.21g/cm3、アスペクト比1.6、比表面積2.1(m2/g)、ピーク強度比:0.98、油脂粉末の全質量を100質量%とした場合のグリセリンの1位~3位に炭素数18の脂肪酸残基X(ステアリン酸残基)を有するXXX型トリグリセリドの含有量は79.4質量%)を得た。
X線回折分析により、得られた油脂粉末(a)中の油脂の結晶多形は、β型であることを確認した。
油脂粉末(a)の粒子を上記外観観察に基づいて電子顕微鏡にて観察した結果、板状形状であった。電子顕微鏡写真を図2に示す。
表3及び4に示す配合(総仕込み量50g)で、イチゴ剪断物の製造を行った。
製造には、卓上タイプの粉砕機(大阪ケミカル(株)装置名「ラボミル2」)を用いた。
まず、油脂粉末とイチゴを粉砕機の容器に入れ、上蓋をした後、10,000rpmで8秒間攪拌することにより剪断し、イチゴ剪断物を得た(実施例1~4)。
匂い評価の基準サンプルとして、イチゴのみを粉砕機の容器に入れ、上蓋をした後、10,000rpmで8秒間攪拌することにより剪断し、イチゴ剪断物を得た(基準サンプル)。
また、比較例として、市販のイチゴパウダー(スプレードライ品)を準備した(比較例1)。なお、スプレードライ品は、その製造工程において加熱乾燥工程が含まれている。
(1)外観
イチゴ剪断物、及びイチゴパウダー(スプレードライ品)の外観を目視で観察した。外観を表3及び4の配合の下に示す。
(2)分析
・水分含量の分析
イチゴ剪断物の水分含量を測定した。測定結果を表3及び表4の配合の下に示す。
(3)官能評価
イチゴ剪断物、及びイチゴパウダー(スプレードライ品)について、匂いを評価した。評価結果を表3及び表4の配合の下に示す。
このような結果になったのは、比較例1のイチゴパウダー(スプレードライ品)は、その製造工程において加熱乾燥工程が含まれているため、加熱乾燥時にイチゴの匂い成分は揮発してしまったためと考えられる。
このように実施例1~4のイチゴ剪断物は、基準サンプル、すなわち、生のイチゴと同程度のフレッシュな香りを維持することができる。また、特に実施例1~3のイチゴ剪断物は粉末状であるため、生のイチゴよりも取扱いや作業性は良好である。
上記の油脂粉末(a)を用いたイチゴ剪断物の配合で、イチゴの含量が40質量%と最も少ない実施例1の配合を参考にして、表5に示す配合(総仕込み量300g)で、油脂粉末を他のものに換えて、イチゴ剪断物の製造を行った。
製造は、卓上ブレンドタイプの高速流動混合機((株)カワタ製、装置名「スーパーミキサーピッコロSMP-2」)を用いて行った。
まず、種々の油脂粉末を高速流動混合機設置の容器に入れ、上蓋をした後、フィーダーからイチゴを入れた。3000rpmで10秒間攪拌することにより剪断し、一度上蓋を開けて中身を均一になるよう薬さじで混ぜ、さらに3000rpmで10秒間攪拌することにより剪断し(合計剪断時間20秒)、イチゴ剪断物を得た(実施例5~7)。
(1)外観
得られたイチゴ剪断物の外観を目視で観察した。外観を表5の配合の下に示す。
表6及び表7に示す配合(総仕込み量50g)で、イチゴ剪断物の製造を行った。製造には、卓上タイプの粉砕機(大阪ケミカル(株)装置名「ラボミル2」)を用いた。
まず、油脂粉末とイチゴを粉砕機の容器に入れ、上蓋をした後、10,000rpmで8秒間攪拌することにより剪断し、アイスクリーム用イチゴ剪断物を得た(実施例8~12)。
匂い評価の基準サンプルとして、イチゴのみを粉砕機の容器に入れ、上蓋をした後、10,000rpmで8秒間攪拌することにより剪断し、イチゴ剪断物を得た(基準サンプル)。
また、比較として、市販のイチゴジャムを準備した(比較例2)。
(1)イチゴ剪断物、アイスクリーム用イチゴ剪断物、及びイチゴジャムの外観
イチゴ剪断物、アイスクリーム用イチゴ剪断物、及びイチゴジャムの外観を目視で観察した。外観を表6及び表7の配合の下に示す。
・水分含量
イチゴ剪断物(基準サンプル)、及び実施例8のアイスクリーム用イチゴ剪断物の水分含量を測定した。測定結果を表6の配合の下に示す。
・匂いの成分(エステル類)の分析
得られたイチゴ剪断物について、イチゴのにおい成分であるエステル類の分析を行った。 具体的には、メチルブチレート、メチルヘキサネート、エチルブチレートの合計の面積値を測定し、得られた面積値について、基準サンプル(イチゴのみの剪断物)の面積値を1とした時の各サンプルの相対面積値を算出し、その値を匂いの成分の分析値とした。
分析結果(相対面積値)を表6及び表7の配合の下に示した。また、図3に匂いの分析結果を棒グラフで表した。
得られたアイスクリーム用イチゴ剪断物、及びイチゴジャムを専門パネルが食し、その風味及び食感を評価した。官能評価結果を表6及び表7の配合の下に示す。
(4)イチゴ剪断物凍結品の物性評価(さじ通り)
一般に、凍結させた果実は硬さが硬いため、さじ通りが悪く食べにくい。そして、今回得られたイチゴ剪断物を凍結した凍結品が硬くならなければ、さじ通りが良く食べやすいアイスクリームを作ることができると予想した。
そこで、今回得られたイチゴ剪断物を凍結した凍結品について、凍結した基準サンプルと比べてさじ通りが良くなるかどうかを調べた。さじ通りの結果を表6及び表7の配合の下に示す。
また、生のイチゴのフレッシュな香りがする実施例8~11のアイスクリーム用イチゴ剪断物の匂いの成分(エステル類)の分析結果は、基準サンプル(イチゴのみの剪断物)の面積値を1としたとき、0.84~1.28とほぼ基準サンプルと同等の値であった。
一方、生のイチゴのフレッシュな香りはしないかったイチゴジャム(比較例2)の匂い成分(エステル類)の分析結果は、0.22と低い値であった。
また、特に実施例8のアイスクリーム用イチゴ剪断物は、なめらかでザラツキがなく、他の実施例のアイスクリーム用イチゴ剪断物とは違って、軽い食感でベタつきが少ないものであった。
実施例8~11のアイスクリーム用ペースト状イチゴ剪断物を用いて、表9及び表10に示す配合で、イチゴ剪断物含有アイスクリームを製造した。
具体的には、まず、表8に示す配合の原料を、撹拌機器(新東科学(株)製、装置名「TYPE HEIDON 1200G」を用いて、攪拌混合(500rpm)し、80℃で5分保持し殺菌し、アイスクリームミックスを製造した。
得られたアイスクリームミックスをホモミキサー(TK.HOMO MIXER HV-M/プライミクス社製)で予備乳化を行った(7,500rpm、3分)。さらに高圧ホモゲナイザー(ホモゲナイザーH3-1DA/三丸機械工業社製)にて本乳化を行った(15MPa)。乳化が終了したアイスクリームミックスを氷水で冷却し、5℃の冷蔵庫で1晩エージングを行った。エージング後のアイスクリームミックスをフリーザー(TAYLOR FREEZER M702/TAYLOR社製)に投入し冷却・攪拌を開始した。-6.0℃までアイスクリームが冷却したことを確認した後、カップ(口径70×高さ28×底径58.8mm)へ約50g分注し、続いて各種イチゴ剪断物を6g充填し―27℃で冷凍しペースト状イチゴ剪断物含有アイスクリームを得た。
得られたアイスクリームの外観を目視で観察した。外観を表9及び10の配合の下に示す。
(2)官能評価
得られたアイスクリームを専門パネルが食し、その風味及び食感を評価した。官能評価結果を表9及び10の配合の下に示す。
(3)アイスクリームの物性評価(さじ通り)
今回得られたアイスクリームについて、果実部分のさじ通りが良いかどうかを調べた。さじ通りの結果を表9及び10の配合の下に示す。
特に、実施例8のアイスクリーム用イチゴ剪断物を使用した実施例12のアイスクリームは、なめらかでザラツキがなく、果実部分は、他の実施例のアイスクリームとは違って、軽い食感でベタつきが少ないものであった。
表11に示す配合(総仕込み量300g)で、万能ネギ剪断物の製造を行った。製造は、卓上ブレンドタイプの高速流動混合機((株)カワタ製、装置名「スーパーミキサーピッコロSMP-2」)を用いて行った。
まず、油脂粉末(a)を高速流動混合機設置の容器に入れ、上蓋をした後、フィーダーから約4cmの長さに切った万能ネギを入れた。3000rpmで10秒間攪拌することにより剪断し、一度上蓋を開けて中身を均一になるよう薬さじで混ぜ、さらに3000rpmで10秒間攪拌することにより剪断し(合計剪断時間20秒)、万能ネギ剪断物を得た(実施例16)。
得られた万能ネギ剪断物の外観を目視で観察した。外観を表11の配合の下に示す。
(2)官能評価
得られた万能ネギ剪断物を専門パネルが食し、その風味及び食感を評価した。官能評価結果を表11の配合の下に示す。
Claims (3)
- 果実及び野菜から選ばれる1種又は2種以上の食品素材と、融点が55℃以上の油脂粉末との混合物を剪断処理する食品素材剪断物の製造方法であって、前記油脂粉末の平均粒径が0.5~200μmであり、該食品素材100質量部に対して、該油脂粉末の量が20~150質量部であることを特徴とする食品素材剪断物の製造方法。
- 前記食品素材と前記油脂粉末に、乳化剤、複合食物繊維素材及び糖類からなる群から選ばれる1種又は2種以上を加えて剪断処理する、請求項1に記載の食品素材剪断物の製造方法。
- 前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する油脂粉末であって、前記炭素数xは16~20から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記油脂粉末の粒子は板状形状を有する油脂粉末である、請求項1又は2に記載の食品素材剪断物の製造方法。
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