生物学的配列の説明
配列番号1は、「Ace3-LC」と命名したAce3タンパク質(配列番号2)をコードする遺伝子を含む野生型トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ポリヌクレオチド配列である。
配列番号2は、配列番号1によりコードされるAce3-LCタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号3は、「Ace3-S」と命名したAce3タンパク質(配列番号4)をコードする遺伝子を含むT.リーゼイ(T.reesei)ポリヌクレオチド配列である。
配列番号4は、配列番号3によりコードされるAce3-Sタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号5は、「Ace3-L」と命名したAce3タンパク質(配列番号6)をコードする遺伝子を含むT.リーゼイ(T.reesei)ポリヌクレオチド配列である。
配列番号6は、配列番号5によりコードされるAce3-Lタンパク質のアミノ酸配列である。5の範囲であり得る。
配列番号7は、「C-term-5」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号8は、「C-term-6」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号9は、「C-term-7」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号10は、「C-term-8」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号11は、「C-term-9」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号12は、「C-term-10」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号13は、「C-term-12」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号14は、「C-term-13」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号15は、「C-term-14」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号16は、「C-term-15」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号17は、「C-term-16」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号18は、「C-term-17」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号19は、「C-term-18」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号20は、「C-term-19」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号21は、「C-term-20」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号22は、「C-term-25」と命名したバリアントAce3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号23は、核酸プライマー配列(TP218)である。
配列番号24は、核酸プライマー配列(TP220)である。
配列番号25は、核酸プライマー配列(TP125)である。
配列番号26は、核酸プライマー配列(TP123)である。
配列番号27は、核酸プライマー配列(TP221)である。
配列番号28は、核酸プライマー配列(TP222)である。
配列番号29は、Ace3二核(Zn2Cys6)亜鉛DNA結合ドメインのアミノ酸配列である。
配列番号30は、「Ace3-LC C末端」を定義するアミノ酸残基位置641~689を含む。
配列番号31は、配列番号30のAce3-LC C末端をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号32は、「Ace3-LC C末端mut_673」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号33は、「Ace3-LC C末端mut_674」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号34は、「Ace3-LC C末端mut_675」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号35は、「Ace3-LC C末端mut_676」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号36は、「Ace3-LC C末端mut_677」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号37は、「Ace3-LC C末端mut_678」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号38は、「Ace3-LC C末端mut_679」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号39は、「Ace3-LC C末端mut_680」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号40は、「Ace3-LC C末端mut_681」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号41は、「Ace3-LC C末端mut_682」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号42は、「Ace3-LC C末端mut_683」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号43は、「Ace3-LC C末端ins_672」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号44は、「Ace3-LC C末端ins_673」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号45は、「Ace3-LC C末端ins_674」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号46は、「Ace3-LC C末端ins_675」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号47は、「Ace3-LC C末端ins_676」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号48は、「Ace3-LC C末端ins_677」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号49は、「Ace3-LC C末端ins_678」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号50は、「Ace3-LC C末端ins_679」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号51は、「Ace3-LC C末端ins_680」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号52は、「Ace3-LC C末端ins_681」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号53は、「Ace3-LC C末端ins_682」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号54は、「Ace3-LC C末端ins_683」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号55は、「Ace3-LC C末端del_673-675」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号56は、「Ace3-LC C末端del_674-676」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号57は、「Ace3-LC C末端del_675-677」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号58は、「Ace3-LC C末端del_676-678」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号59は、「Ace3-LC C末端del_677-679」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号60は、「Ace3-LC C末端del_678-680」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号61は、「Ace3-LC C末端del_679-681」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号62は、「Ace3-LC C末端del_680-682」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号63は、「Ace3-LC C末端del_681-683」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号64は、「Ace3-LC C末端del_682-684」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号65は、「Ace3-LC C末端del_683-685」と命名したAce3-LC C末端バリアントをコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号66は、配列番号67のアミノ酸配列を含むAce3-LC C末端V5置換をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号67は、「Ace3-LC C末端V5置換」バリアントのアミノ酸配列である。
配列番号68は、配列番号69のアミノ酸配列を含むAce3-LC C末端V5-(6×His)置換をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号69は、「Ace3-LC C末端V5-(6×His)置換」バリアントのアミノ酸配列である。
配列番号70は、gla1遺伝子座を標的とするsgRNAである。
詳細な説明
I.概説
本明細書に記載するように、本開示の特定の実施形態は、目的タンパク質の商業規模での生産に使用するための、変異型及び/又は遺伝子改変されたトリコデルマ属(Trichoderma)の真菌細胞に関する。より詳細には、本開示の特定の実施形態は、リグノセルロース分解酵素をコードする1つ又は複数の遺伝子の発現をアップレギュレートすることができる新規Ace3(バリアント)転写因子(TF)タンパク質に関する。したがって、特定の実施形態は、本明細書に開示される新規(バリアント)Ace3 TFタンパク質をコードするポリヌクレオチド(核酸配列)を対象とする。例えば、本開示の特定の実施形態は、バリアントAce3 TFタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ、配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変を含むポリヌクレオチドを対象としている。
したがって、特定の実施形態は、本開示のバリアントAce3TFタンパク質をコードするace3遺伝子を含む遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に関し、改変細胞は、誘導基質の非存在下で目的タンパク質を産生することができる。特定の他の実施形態は、本開示のバリアントAce3TFタンパク質をコードするace3遺伝子を含む遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に関し、改変細胞は、誘導基質の存在下で産生される目的タンパク質の量を増加させることができる(すなわち、野生型Ace3タンパク質(例えば、配列番号2)をコードする野生型ace3遺伝子を含む対照トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞によって産生される同じ目的タンパク質の量と比較して(改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞と対照トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞が、POIの産生のために、誘導基質の存在下、同じ条件で培養/発酵された場合))。したがって、本開示の特定の他の実施形態は、本開示のバリアントAce3転写因子(TF)タンパク質を含み、発現する改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞(株)を構築し、改変し、試験し、スクリーニングし、単離するなどのための組成物及び方法に関する。
II.定義
本組成物及び方法をさらに詳細に説明する前に、以下の用語及び語句を定義する。定義されない用語は、使用され、且つ当業者に知られている通常の意味と一致すべきである。
本明細書に引用されている全ての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
ある範囲の値が示されている場合、文脈上別段の明確な指示がなければ、その範囲の上限と下限の間にある下限値の単位の10分の1までの各介在値、及びその範囲内の任意の他の記載された値又は介在値は、本組成物及び方法の範囲内に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれ、また、記載された範囲における任意の具体的に除外された限界に従うことを条件として、本発明の組成物及び方法に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれた限界の一方又は両方を除く範囲もまた、本発明の組成物及び方法に含まれる。
本明細書において、いくつかの範囲は、「約」という用語が先行する数値で示される。本明細書においては、「約」という用語は、これが先行する正確な数、及び、この用語が先行する数に近い数又は近似する数に対するリテラルサポートを提供するために使用される。数字が具体的に挙げられた数に近い又は近似するかを決定する際に、挙げられていない近い又は近似する数は、それが提示される文脈において、具体的に挙げられた数の実質的に等価な数を提供する数であり得る。例えば、数値に関連して「約」という用語は、その用語が文脈において特に明確に定義されていない限り、その数値の-10%~+10%の範囲を指す。別の例では、語句「約6のpH値」は、pH値が特に明確に定義されていない限り、5.4~6.6のpH値を指す。
本明細書に示した見出しは、本明細書全体を参照することによって得ることができる本組成物及び方法の様々な態様又は実施形態を限定するものではない。したがって、すぐ下で定義する用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
この詳細な説明によると、以下の略語及び定義が適用される。文脈が明白に他のことを指示していない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、複数の対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酵素(an enzyme)」という言及は、複数のそのような酵素を含み、「用量(the dosage)」という言及は、1つ又は複数の用量及び当業者には既知のその同等物を含むなどである。
特許請求の範囲が任意選択的な要素を排除するように記載され得ることにもさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の構成要素の列挙に関連して「唯一の」、「ただ~のみ」、「~を除いて」、「~を含まない」などの排他的な用語の使用、又はその「否定的な」限定若しくは「条件」の使用のための先行文として機能することを意図している。
さらに、「~を含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用されるとき、「~を含む(comprising)」という用語の後の成分を「含むが、それに限定されない(including,but not limited to)」ことを意味することに留意されたい。用語「~を含む(comprising)」の後の成分は必要とされ、又は必須であるが、この成分を含む組成物は、その他の非必須又は任意選択の成分をさらに含み得る。
また、「~から構成される(consisting of)」という用語は、本明細書で使用されるとき、「~から構成される(consisting of)という用語の後の成分を「含み、且つそれに限定される(including and limited to)」ことを意味することにも留意されたい。したがって、用語「~から構成される(consisting of)」の後の成分は必要とされ、又は必須であり、且つその他の成分はその組成物中に存在しない。
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載及び例示する個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載する本組成物及び方法の範囲又は精神から逸脱することなく、他の一部の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載した方法はいずれも、記載した事象の順序で、又は論理的に可能な他の任意の順序で実施することができる。
本明細書で使用される場合、「子嚢菌真菌細胞」という用語は、菌界における子嚢菌門(Ascomycota)の任意の生物を指す。子嚢菌真菌細胞の例としては、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)の菌種、アスペルギルス属(Aspergillus)の菌種、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)の菌種及びペニシリウム属(Penicillium)の菌種などのチャワンタケ亜門(Pezizomycotina)内の糸状菌が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書で使用される場合、用語「糸状菌」は、真菌類(Eumycota)亜界及び卵菌類(Oomycota)亜界の全ての糸状菌形を指す。例えば、糸状菌としては、限定されないが、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、エメリセラ属(Emericella)、フザリウム属(Fusarium)、フミコーラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、スキタリジウム属(Scytalidium)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、及びトリコデルマ属(Trichoderma)の種が挙げられる。
いくつかの実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞(株)であり、例えば、トリコデルマ・ハルチアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンジブラチアトウム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)が挙げられるがこれらに限定されない。
いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)などのアスペルギルス属(Aspergillus)菌細胞(株)であり得る。
いくつかの実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ATCC寄託番号56765としてAmerican Type Culture Collectionから入手可能な、T.リーゼイ(T.reesei)株「Rut-C30」由来のT.リーゼイ(T.reesei)細胞である。他の実施形態では、糸状菌は、US Department of Agriculture、Northern Regional Research Laboratoryの培養物コレクションからNRRL番号15709として入手可能な、T.リーゼイ(T.reesei)株「RL-P37」由来のT.リーゼイ(T.reesei)細胞である。
本明細書で使用される場合、「変異トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞」などの語句で使用される場合の「変異細胞」、用語「変異細胞」は、特に、本開示の変異Ace3 TFをコードする変異ace3遺伝子を含む任意の天然に存在するトリコデルマ属(Trichoderma)菌(変異)細胞を指す。例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞の集団を本明細書に記載の方法に従ってスクリーニングして、誘導基質の非存在下で目的タンパク質を産生することができる天然に存在する変異トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を確認することができる。例えば、特定の実施形態では、上記のように確認された変異トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞の集団から単離され、誘導基質の非存在下で目的タンパク質を産生するための好適な条件下で培養/発酵される。
本明細書で使用される場合、「バリアント糸状菌細胞」、「改変糸状菌細胞」、「バリアント真菌細胞」、「改変真菌細胞」などという語句は、チャワンタケ(Pezizomycotina)亜門に属する親糸状菌細胞に由来する(すなわち、得られる)糸状菌細胞を指す。したがって、本明細書で使用される「改変」又は「バリアント」糸状菌細胞は、「親」糸状菌細胞に由来し、「変異」細胞は、「親」細胞にはない少なくとも1つの遺伝子改変を含む。例えば、本開示の「改変細胞」と「親細胞」を比較する場合、「親」細胞は、少なくとも1つの遺伝子改変を含む「改変」細胞に対して、改変されていない「対照」細胞としての役割を果たす。
本明細書で使用される場合、用語「改変」及び「遺伝子改変」は互換的に使用され、以下を含む:(a)遺伝子(若しくはそのORF)における1つ又は複数のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳に必要な調節エレメントにおける1つ若しくは複数のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)特異的変異誘発、及び/或いは(g)本明細書に開示される任意の1つ若しくは複数の遺伝子のランダム変異誘発。
本明細書で使用される場合、「遺伝子の破壊」、「遺伝子破壊」、「遺伝子の不活性化」及び「遺伝子不活性化」は、互換的に使用され、宿主細胞の機能的遺伝子産物(例えば、タンパク質)の産生を実質的に妨げる任意の遺伝子改変を広く指す。例示的な遺伝子破壊方法としては、ポリペプチドをコードする配列、プロモーター、エンハンサー又はまた別の調節エレメントを含む遺伝子の任意の部分の完全若しくは部分的な消失又はその変異誘発が挙げられる(ここで、変異誘発は、標的遺伝子を破壊/不活性化し、機能的遺伝子産物(すなわち、タンパク質)の産生を実質的に減少若しくは妨げる、置換、挿入、欠失、逆位、並びにこれらの任意の組み合わせ及び変形形態を包含する)。
本明細書で使用される場合、遺伝子発現の「ダウンレギュレーション」及び遺伝子発現の「アップレグレーション」という用語には、遺伝子発現の低下(ダウンレギュレーション)又は上昇(アップレグレーション)をもたらす任意の方法が含まれる。例えば、遺伝子のダウンレギュレーションは、RNA誘導遺伝子サイレンシング、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)/シャイン・ダルガーノ配列、未翻訳領域(UTR)、コドン変化などの制御エレメントの遺伝子改変によって達成され得る。
本明細書で使用される場合、「ターゲティングベクター」は、ターゲティングベクターが形質転換される宿主細胞の染色体内の領域に相同なポリヌクレオチド配列を含み、その領域で相同組換えを駆動できるベクターである。例えば、ターゲティングベクターは、相同組換えによって宿主細胞の染色体に変異を導入する際に使用される。いくつかの実施形態では、ターゲティングベクターは、例えば末端に付加された他の非相同配列(すなわち、スタッファー配列又はフランキング配列)を含む。末端は、例えば、ベクターへの挿入などのように、ターゲティングベクターが閉環を形成するように閉じることができる。例えば、特定の実施形態では、親トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、トランケート型(非機能性)N末端亜鉛二核クラスターDNA結合ドメインを含むバリアントAce3タンパク質(例えば、Ace3-S;配列番号4)をコードするace3を含む。
したがって、本明細書に記載され企図されるように、特定の実施形態では、バリアントAce3タンパク質(例えば、Ace3-S;配列番号:4)をコードするace3遺伝子は、Ace3タンパク質の天然DNA結合ドメインを元に戻すように設計された1つ又は複数の「ターゲティングベクター」を親細胞に導入することによって、遺伝子改変(例えば、形質転換)される。例えば、天然のAce3 DNA結合ドメインは、配列番号29に記載のアミノ酸配列を含む。(例えば、ace3遺伝子内の天然Ace3 DNA結合を元に戻すための)適切なベクターの選択及び/又は構築は、当業者の知識の範囲内に明確に含まれる。同様に、他の実施形態では、1つ又は複数のターゲティングベクターは、本明細書に記載されるように、コードされるAce3タンパク質が改変C末端を含むように、ace3遺伝子に対し、1つ又は複数のヌクレオチドを欠失、導入(挿入)及び/又は置換するように設計/構築される。
本明細書で使用される場合、「フランキング配列」は、考察対象の配列の上流又は下流にある任意の配列を指す(例えば、遺伝子A-B-Cでは、遺伝子BがA及びCの遺伝子配列にフランキングされている)。特定の実施形態では、入来配列は、両側でホモロジーボックスにフランキングされている。別の実施形態においては、入来配列及びホモロジーボックスは、両側でスタッファー配列によってフランキングされている単位を含む。いくつかの実施形態では、フランキング配列は、一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、好ましい実施形態では、フランキングされている配列の両側に存在する。各相同ボックスの配列は、トリコデルマ属(Trichoderma)菌の染色体の配列に相同である。これらの配列は、トリコデルマ属(Trichoderma)菌の染色体のどこに新規なコンストラクトが組み込まれ、トリコデルマ属(Trichoderma)菌の染色体のどの部分が入来配列により置換されるかを指示する。他の実施形態では、選択マーカーの5’側及び3’側末端は、不活化染色体セグメントの一部を含むポリヌクレオチド配列によってフランキングされている。
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」は、タンパク質又はRNAの発現をコードし、且つ指示する核酸を指すという点で、用語「対立遺伝子」と同義である。糸状菌の栄養型は一般に一倍体であり、このため特定の表現型を付与するには、特定の遺伝子の単一コピー(すなわち、単一の対立遺伝子)で十分である。
本明細書中で使用される場合、「野生型」及び「天然」という用語は、互換的に使用され、そして天然に見出されるような遺伝子、タンパク質、真菌細胞又は菌株を指す。
本明細書で使用される場合、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)「QM6a株」は、「Ace3-S」と命名したAce3タンパク質(配列番号4)をコードするAce3遺伝子を含む。4を参照)。
本明細書で使用される場合、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)「RL-P37株」は、「Ace3-L」と命名したAce3タンパク質(配列番号6)をコードするAce3遺伝子を含む。
本明細書で使用される場合、「Ace3-LC」タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。図1に示すように、Ace3-LCタンパク質は、インタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン(図1A;6個の太字で且つ灰色のシステイン(C)残基によって示される)、及び689位のグリシン(G)残基で終わる完全長(野生型;非トランケート型)C末端(図1B)を含むN末端アミノ酸配列を有する689個のアミノ酸残基を含む。本明細書で使用される場合、天然Ace3-LCタンパク質の最後の49のアミノ酸残基位置(配列番号:2;すなわち、残基位置641~689)を配列番号30(例えば、図15を参照)として記載する。したがって、特定の実施形態では、バリアントAce3タンパク質は改変C末端を含み、この改変C末端は配列番号30の641~689の天然Ace3-LC C末端アミノ酸位置と比較される。
本明細書で使用される場合、「Ace3-LC」タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。図1に示すように、Ace3-Lタンパク質は、インタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン(6個の太字で且つ灰色のシステイン(C)残基によって示される;図1A)を含むN末端アミノ酸配列を含み、アスパラギン酸(D)残基で終わるトランケートされたC末端(図1B、例えば、Ace3-LCタンパク質C末端と比較して;配列番号2)を含む。
本明細書で使用される場合、「Ace3-S」タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。図1Aに示すように、Ace3-Sタンパク質は、Ace3-LC(図1A;配列番号2)及び/又はAce3-L(図1A;配列番号6)と比較してより短い(トランケートされた)N末端アミノ酸配列を含む。したがって、図1Aに示すように、Ace3-Sタンパク質は、インタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメインを含まない(すなわち、Ace3-LC及びAce3-LのN末端配列と比較して)。
本明細書で使用される場合、語句「Ace3 DNA結合ドメイン」及び「Ace3亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNAドメイン」は、互換的に使用され得、配列番号29のAce3 DNA結合ドメインとの相同性を含むアミノ酸配列を指す。例えば、配列番号29のAce3 DNA結合ドメイン(図3)は、Ace3-LC(配列番号:2)及びAce3-L(配列番号6)タンパク質のアミノ酸位置73~109に位置する。
本明細書で使用される場合、「アップレギュレートする」という用語は、「Ace3 TFタンパク質は、リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現を「アップレギュレートする」などの語句で述べる場合、この用語は、誘導基質の非存在下で、リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートすることができるAce3 TFタンパク質を具体的に指す。例えば、リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするAce3 TFタンパク質を含む本開示の改変糸状菌細胞は、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素を産生することができる。対照的に、野生型Ace3 TFタンパク質をコードする野生型ace3遺伝子を含む糸状菌(対照)細胞は、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートしない。
本明細書で使用される場合、「リグノセルロース分解酵素」という用語は、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「増加した量」という用語は、「改変細胞は誘導基質の存在下でリグノセルロース分解酵素を「増加した量」産生する」などの語句で使用される場合、産生されるリグノセルロース分解酵素の「増加した量」は、改変細胞及び親細胞が同じ誘導基質の存在下でPOIの産生のための同じ条件下で培養/発酵された場合に、親細胞によって産生される同じリグノセルロース分解酵素の量と比較してである。
以下の実施例の項に記載され、且つ以下で説明されるように、本開示の特定の実施形態は、配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を含むAce3転写因子(TF)タンパク質をコードするace3遺伝子を含む親トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞(株)に由来する遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞(株)を対象とし、この遺伝子改変細胞は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードし、且つ、配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変を含む、バリアントAce3遺伝子を含む。例えば、特定の実施形態では、本開示の改変トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞は、目的タンパク質(POI)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の発現を、ORFがリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列に作動可能に連結されている場合、アップレギュレートすることができるバリアントAce3 TFタンパク質を含む。
したがって、本明細書で使用される場合、「アップレギュレートする」という用語は、「目的タンパク質(POI)をコードするORFの発現をアップレギュレートすることができるバリアントAce3 TFタンパク質(ここで、ORFがリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列に作動可能に連結されている)」などの語句で述べられる場合、この用語は、誘導基質の非存在下で、POIをコードするORFの発現をアップレギュレートすることができるAce 3TFタンパク質を具体的に指す。
本明細書で使用される場合、「リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列」は、セロビオヒドロラーゼプロモーター配列、エンドグルカナーゼプロモーター配列、β-グルコシダーゼプロモーター配列、及びキシラナーゼプロモーター配列を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「増加した量」という用語は、「改変細胞は誘導基質の存在下で目的タンパク質(POI)を「増加した量」を産生する」などの語句で使用される場合、産生されるPOIの「増加した量」は、親細胞又は対照細胞によって産生される同じPOIの量と比較してである。例えば、POIをコードするORFの発現をアップレギュレートすることができるAce3 TFタンパク質を含む本開示の改変糸状菌細胞(すなわち、ORFがリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する5’プロモーター配列に作動可能に連結されている場合)は、同じ誘導基質の存在下で培養/発酵された場合、野生型Ace3 TFタンパク質(例えば、配列番号2)をコードする野生型ace3遺伝子を含む対照細胞によって産生される同じPOIの量と比較して、誘導基質の存在下で培養/発酵された場合、増加した量のPOIを産生する。
本明細書で使用される場合、野生型Ace3 C末端の特定のアミノ酸欠失(トランケーション)は、「C-term」と略され、その後に数字表示が続き(例えば、「C-term-5」~「C-term-20」及び「C-term-25」)、ここで、数字表示はAce3 C末端から(すなわち、689位のグリシン(G)で終わる野生型Ace3 C末端に対して;配列番号2)欠失したアミノ酸残基の数を表す。例えば、図4に示す野生型Ace3 C末端(すなわち、これは689位のグリシン(G)で終わる)を参照することにより、「C-term-7」タンパク質は最後の7個のC末端アミノ酸(すなわち、「TSTTVVG」)の7アミノ酸欠失(トランケーション)を含み、「C-term-17」タンパク質は最後の17個のC末端アミノ酸(すなわち、「DSKASDQLRNTSTTVVG」)の17アミノ酸欠失(トランケーション)を含む。
特定の実施形態では、野生型(Ace3)C末端アミノ酸残基を参照し、視覚的明瞭性のために負の数を割り当てる。例えば、図4に示すように。Ace3-LCタンパク質の最もC末端のアミノ酸位置(すなわち、689位のグリシン(G))には負の1(-1)が割り当てられ、685位のトレオニン(T)には負の5(-5)が割り当てられ、680位のロイシン(L)には負の10(-10)が割り当てられ、675位のリシン(K)には負の15(-15)が割り当てられるなど。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-5」タンパク質(図2A;配列番号7)は、684位のセリン(S)で終わる、C末端の5個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する684個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-6」タンパク質(図2A;配列番号8)は、683位のトレオニン(T)で終わる、683個のアミノ酸残基、及びC末端の6個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-7」タンパク質(図2B;配列番号9)は、682位のアスパラギン(N)で終わる、C末端の7個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する682個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-8」タンパク質(図2B;配列番号10)は、681位のアルギニン(R)で終わる、C末端の8個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する681個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-9」タンパク質(図2B;配列番号11)は、680位のロイシン(L)で終わる、C末端の9個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する680個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-10」タンパク質(図2C;配列番号12)は、679位のグルタミン(Q)で終わる、C末端の10個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する679個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-12」タンパク質(図2C;配列番号13)は、677位のセリン(S)で終わる、C末端の12個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する677個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-13」タンパク質(図2C;配列番号14)は、676位のアラニン(A)で終わる、C末端の13個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する676個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-14」タンパク質(図2D;配列番号15)は、675位のリシン(K)で終わる、C末端の14個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する675個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-15」タンパク質(図2D;配列番号16)は、674位のセリン(S)で終わる、C末端の15個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する674個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-6」タンパク質(図2D;配列番号17)は、673位のアスパラギン酸(D)で終わる、C末端の16個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する673個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-17」タンパク質(図2E;配列番号18)は、672位のロイシン(L)で終わる、C末端での17個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する672個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-18」タンパク質(図2E;配列番号19)は、671位のアルギニン(R)で終わる、C末端での18個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する671個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-19」タンパク質(図2E;配列番号20)は、670位のトレオニン(T)で終わるC末端での19個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する670個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-20」タンパク質(図2F;配列番号21)は、669位のロイシン(L)で終わるC末端の20個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する669個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、Ace3「C-term-25」タンパク質(図2F;配列番号22)は、664位のバリン(V)で終わるC末端での25個のアミノ酸トランケーション(WT Ace3 C末端に対して;配列番号2)を有する664個のアミノ酸残基を含む。
本明細書で使用される場合、「Ace3「C-term」タンパク質をコードする遺伝子を発現する遺伝子改変を含む」改変又はバリアント細胞という語句は、本開示のAce3「C-term」タンパク質(例えば、C-term-7;配列番号9~C-term-17;配列番号18)をコードする遺伝子(又はORF)の少なくとも1つのコピーの導入を含むがこれらに限定されない。特定の実施形態では、Ace3 C-termタンパク質をコードする遺伝子(又はORF)は、上流(5’)異種プロモーター配列に作動可能に連結され(すなわち、ace3遺伝子はその天然ace3プロモーター配列に連結されない)、且つ/又はAce3 C-termタンパク質をコードする遺伝子(又はORF)は、下流(3’)異種ターミネーター配列に作動可能に連結される。
特定の実施形態では、本開示のAce3「C-term」タンパク質をコードする遺伝子を発現する遺伝子改変を含む改変細胞(例えば、C-term-7;配列番号9~C-term-17;配列番号18)をコードする遺伝子を発現する遺伝子改変を含む改変細胞は、CRISPR/Cas9編集により内因性ace3遺伝子の改変を含み、CRISPR/Cas9改変ace3遺伝子は、本開示のAce3「C-term」タンパク質をコードする。
特定の実施形態では、本開示の真菌細胞は、トランケートされたN末端亜鉛二核クラスターDNA結合ドメインをコードする内因性ace3遺伝子の存在についてスクリーニングされ得る。例えば、図3(配列番号29)は、Ace3-L(配列番号:6)及びAce3-LC(配列番号2)タンパク質に見られるようなインタクトなDNA結合ドメインを示す。したがって、特定の実施形態では、(内因性の)トランケートされたN末端を含むものとしてスクリーニングされ確認された親真菌細胞は、完全長(野生型)N末端(配列番号29)を復帰するように、本明細書において遺伝子改変される。
同様に、本開示の真菌細胞は、完全長(野生型)Ace3 C末端(例えば、Ace3-LC;配列番号:2)をコードする内因性ace3遺伝子の存在をスクリーニングされ得る。例えば、図4は、Ace3-LCタンパク質の完全長(野生型)C末端を示す(配列番号:2)。したがって、特定の実施形態では、完全長(野生型)C末端をコードする内因性ace3遺伝子を含むものとしてスクリーニングされ確認された親真菌細胞は、完全長(野生型)C末端の少なくとも7個、17個以下のアミノ酸を欠失(トランケート)するように、本明細書において遺伝子改変される。したがって、図4に示すように、灰色の陰影(すなわち、-7位(T)~-17位(D))で示されるAce3 C末端アミノ酸残基位置は、以下にさらに記載されるように、Ace3 C末端で許容されるアミノ酸の欠失(トランケーション)の最小(少なくとも7)及び最大数(17以下)を示す。
他の実施形態では、本開示の改変糸状菌細胞は、さらなる遺伝子改変を含むであろう。例えば、特定の実施形態では、このようなバリアント糸状菌細胞は、炭素カタボライト抑制タンパク質「Cre1」又は「Ace1」抑制タンパク質をコードする遺伝子の発現及び/又は活性を低下させる遺伝子改変をさらに含み得る。他の実施形態では、このような改変糸状菌細胞は、キシラナーゼ調節因子1(Xyr1)の少なくとも1つのコピーを導入する遺伝子改変をさらに含む。
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載されているように、入来配列(すなわち、細胞に導入されるポリヌクレオチド配列)のための、宿主及び発現ビヒクルとして作用する能力を有する糸状菌細胞を指す。
「異種」核酸コンストラクト又は配列は、それが発現される細胞に対して天然でないか、又は天然の形態で存在しない配列の一部を有する。制御配列に関して、異種とは、現在発現を調節している同じ遺伝子に対して天然においては調節作用をしない制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)を指す。一般に、異種核酸配列は、それらが存在する細胞又はゲノムの一部に対して内因性ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に加えられたものである。「異種」核酸コンストラクトは、天然細胞に見出される制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同一であるか、又は異なる制御配列/DNAコード配列の組み合わせを含み得る。同様に、異種タンパク質は、天然において互いに同じ関係で見出されない2つ以上のサブ配列(例えば、融合タンパク質)を指すことが多い。
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、下流の遺伝子又はそのオープンリーディングフレーム(ORF)の転写を指示するように機能する核酸配列を指す。プロモーターは一般に、標的遺伝子が発現している宿主細胞に適切である。プロモーターは他の転写及び翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)と共に、所与の遺伝子を発現させるために必要である。一般に、転写及び翻訳調節配列には、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び転写停止配列、翻訳開始及び翻訳停止配列、並びにエンハンサー又は活性化因子の配列が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。他の実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。
本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」は、発現目的のために特定の糸状菌によって認識されるDNA配列である。「プロモーター」は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイと定義される。本明細書で使用される場合、プロモーターには、転写開始部位近傍の必要な核酸配列を、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメントを、含む。「構成的」プロモーターは、殆どの環境及び発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、特定の環境又は発生の調節下で活性なプロモーターである。
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、又は転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列との機能的な連結を指し、発現制御配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。したがって、核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に配置されたとき、「作動可能に連結されて」いる。例えば、分泌リーダー(すなわち、シグナルペプチド)をコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されており;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結されており;又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されるDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には、隣接し、且つリーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、便宜的な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。他の実施形態では、連結は、DNAを配列に依存せず瘢痕を残さない方法で結合するシームレスクローニング法によって行われる。シームレスクローニングは、通常、Gibson Assembly(NEB)、NEBuilder HiFi DNA Assembly(NEB)、Golden Gate Assembly(NEB)、及びGeneArt Seamless cloning and Assembly system(ThermoFisher Scientific)などの商業的に入手可能なシステムを用いて実行されるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「異種「プロモーター」又は「異種プロモーター配列」は、「上流(5’)異種プロモーター配列に作動可能に連結されたace3遺伝子(又はそのORF)」などの語句で使用される場合、「異種プロモーター」という語句は、天然ace3プロモーター配と区別することを意味し、ace3遺伝子に作動可能に連結された異種プロモーター配列は、本開示の糸状菌細胞において機能する任意のプロモーター配列であり得る(すなわち、天然ace3遺伝子プロモーターを除く)。
同様に、「異種プロモーター配列」は、「目的タンパク質(POI)をコードする目的の遺伝子(GOI)が、上流(5’)異種プロモーター配列に作動可能に連結されている」などの語句で使用される場合、語句「異種プロモーター」は目的の遺伝子の天然プロモーター配列と区別することを意味し、POIをコードするGOIに作動可能に連結された異種プロモーター配列は、本開示の糸状菌細胞において機能する任意のプロモーター配列であり得る(すなわち、GOIの天然プロモーターを除く)。
本明細書で使用される場合、「DNAコンストラクト」又は「発現コンストラクト」という用語は、少なくとも2つのDNAポリヌクレオチドフラグメントを含む核酸配列を指す。DNA又は発現コンストラクトを用いて、核酸配列を真菌宿主細胞に導入することができる。このDNAはインビトロで(例えば、PCRで)又は任意の他の好適な手法によって生成し得る。いくつかの好ましい実施形態では、DNAコンストラクトは目的配列(例えば、Ace3-Lタンパク質をコードする)を含む。特定の実施形態では、目的ポリヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、DNAコンストラクトは少なくとも1つの選択マーカーをさらに含む。さらなる実施形態では、DNAコンストラクトは、宿主細胞染色体に相同な配列を含む。他の実施形態では、DNAコンストラクトは、宿主細胞染色体とは非相同な配列を含む。
本明細書で使用される場合、「リグノセルロース分解」酵素という語句には、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼが含まれる。
本明細書で使用される場合、「セルラーゼ」、「セルロース分解酵素」又は「セルラーゼ酵素」という用語は、エキソグルカナーゼ、エキソセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及び/又はβ-グルコシダーゼなどの細菌酵素又は真菌酵素を意味する。これらの異なるタイプのセルラーゼ酵素は、セルロース及びその誘導体をグルコースに変換するのに相乗的に働く。例えば、多くの微生物、例えば、木材腐朽菌のトリコデルマ属(Trichoderma)、堆肥化細菌のテルモモノスポラ属(Thermomonospora)(現在は、テルモビフィダ属(Thermobifida))、バチルス属(Bacillus)、及びセルロモナス属(Cellulomonas);ストレプトミケス属(Streptomyces);並びに真菌フミコーラ属(Humicola)、アスペルギルス属(Aspergillus)、及びフザリウム属(Fusarium)は、セルロースを加水分解する酵素を産生する。これらの微生物が産生する酵素は、セルロースのグルコースへの変換に有用な3種類の作用を有するタンパク質の混合物、すなわちエンドグルカナーゼ(EG)、セロビオヒドロラーゼ(CBH)、及びβ-グルコシダーゼ(BG)の混合物である。本明細書の定義では、「エンドグルカナーゼ」(EG)、「セロビオヒドロラーゼ」(CBH)及び「β-グルコシダーゼ」(BG)という用語は、それぞれ、それらの略語「EG」、「CBH」及び「BG」と互換的に使用される。
本明細書で使用される場合、用語「コード配列」は、その(コードされた)タンパク質産物のアミノ酸配列を直接的に指定するヌクレオチド配列を指す。コード配列の境界は、一般に、通常ATG開始コドンで始まるオープンリーディングフレームによって決まる。コード配列には、通常、DNA、cDNA、及び組換えヌクレオチド配列が含まれる。
本明細書の定義では、「オープンリーディングフレーム」(以下「ORF」)は、(i)開始コドン、(ii)アミノ酸を示す一連のコドン、及び(iii)終止コドンからなる連続するリーディングフレームを含む核酸又は核酸配列(天然に存在するか、天然に存在しないか、又は合成であるかにかかわらず)を意味し、ORFは、5’から3’の方向に読み取られる(又は翻訳される)。
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味し、これは、コード領域の前後の領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列又は「リーダー」配列、及び3’UTR配列又は「トレーラー」配列、並びに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでいても含んでいなくてもよい。遺伝子は、酵素(例えば、プロテアーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ、リパーゼなど)などの商業的に重要な工業用タンパク質又はペプチドをコードし得る。目的遺伝子は、天然に存在する遺伝子、変異遺伝子又は合成遺伝子であり得る。
細胞、核酸、タンパク質、又はベクターに関して使用する場合の「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、異種核酸又は異種タンパク質の導入によって、又は天然の核酸又はタンパク質の改変によって改変されていること、又は細胞がそのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内には見出されない遺伝子を発現するか、又はさもなければ異常に発現する、過少発現する、若しくは全く発現しない天然遺伝子を発現する。
「ベクター」という用語は、本明細書では、1つ以上の細胞型に導入する核酸配列を保有するように設計されたポリヌクレオチドと定義される。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ又はウイルス粒子、DNAコンストラクト、カセットなどが含まれる。発現ベクターには、プロモーター、シグナル配列、コード配列及び転写ターミネーターなどの調節配列が含まれ得る。
本明細書で使用される「発現ベクター」は、好適な宿主中でタンパク質を発現させることができる好適な制御配列に、作動可能に連結されたコード配列を含むDNAコンストラクトを意味する。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、転写を制御する任意選択的なオペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列が含まれ得る。
本明細書で使用される場合、「分泌シグナル配列」という用語は、より大きなポリペプチドの成分として、そのより大きなポリペプチドに、それが合成された細胞の分泌経路を通過させるポリペプチド(すなわち、「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を意味する。より大きなポリペプチドは、通常、分泌経路を通る過程で切断され、分泌ペプチドが除去される。
本明細書で使用される場合、「誘導」という用語は、「インデューサー」(すなわち、誘導基質)の存在に応じて、極めて大きい速度で糸状菌細胞中での目的タンパク質(POI)の合成をもたらす遺伝子の転写の増加を指す。POIをコードする「目的遺伝子」(GOI)又は「目的ORF」の「誘導」を測定するために、バリアント糸状菌(宿主)細胞を候補誘導基質(インデューサー)で処理し、誘導基質(インデューサー)で処理していない親糸状菌(対照、非改変)細胞と比較する。したがって、(未処理の)親(対照)細胞に100%の相対タンパク質活性値を割り当てると、バリアント(改変)宿主細胞においてPOIをコードするGOIの誘導は、活性値(すなわち、対照細胞に対して)が100%より大きい、105%より大きい、110%より大きい、150%より大きい、200~500%より大きい(すなわち、対照に対して)、又はそれより高い場合に達成される。
本明細書で使用される場合、「インデューサー(inducer)」、「インデューサー(inducers)」、「誘導基質(inducing substrate)」又は「誘導基質(inducing substrates)」は互換的に使用され、糸状菌細胞に「増加した量」のポリペプチド(例えば、酵素、レセプター、抗体など)を産生させる、又は誘導基質が存在しない場合に産生するもの以外の化合物/物質を産生させる任意の化合物を指す。誘導基質の例には、ソホロース、ラクトース、ゲンチビオース及びセルロースが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、用語「誘導供給材料」は、少なくとも糸状菌細胞に供給される「誘導基質」(ソホロース、ラクトース、ゲンチビオース、セルロース)を含む組成物を指す。
本明細書で使用される場合、「単離(された)」又は「精製(された)」という用語は、それが天然に結合している少なくとも1つの成分から取り出された糸状菌細胞、核酸又はポリペプチドを指す。
本明細書の定義では、「目的タンパク質」又は「POI」という用語は、糸状菌細胞において発現することが所望されるポリペプチドを指す。そのようなタンパク質は、酵素、基質結合タンパク質、表面活性タンパク質、構造タンパク質などであり得、高レベルで発現させることができ、商業化を目的とすることができる。目的タンパク質は、内因性遺伝子又は異種遺伝子によってコードされ得る。目的タンパク質は、細胞内で、又は分泌(細胞外)タンパク質として発現させることができる。
特定の実施形態では、本開示の糸状菌細胞において発現/産生させるPOIをコードする遺伝子(又はORF)は、POIをコードする遺伝子又はORFに作動可能に連結された上流(5’)セルラーゼ遺伝子プロモーター(例えば、cbh1)を含む。したがって、セルラーゼプロモーター(例えば、cbh1)の制御下でのPOIをコードする遺伝子又はORFの発現は、本明細書に記載の改変Ace3 TFタンパク質の1つ又は複数の存在下でアップレギュレートされる。
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」(並びに/又はそれらのそれぞれの複数形)は、互換的に使用され、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む任意の長さのポリマーを指す。本明細書では、アミノ酸残基に対する従来の1文字コード又は3文字コードを使用する。ポリマーは直鎖状であっても分枝状であってもよく、改変アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語はまた、天然に又は介入によって修飾(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分との結合などの他の任意の操作若しくは修飾)されているアミノ酸ポリマーを包含する。また、例えば、アミノ酸の1つ又は複数のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、及び当該技術分野で知られている他の修飾を含むポリペプチドも、この定義内に含まれる。
本明細書で使用される場合、機能的及び/又は構造的に類似するタンパク質は、「関連タンパク質」であると見なされる。そのようなタンパク質は、属及び/若しくは種が異なる生物、又は分類の異なる生物(例えば、細菌及び真菌)に由来し得る。関連タンパク質はまた、一次配列分析によって決定されるか、二次若しくは三次構造分析によって決定されるか、又は免疫学的交差反応性によって決定される相同体を包含する。
本明細書で使用される場合、「実質的に活性を有しない」という語句、又は類似の語句は、特定の活性が混合物中で検出できないか、又は混合物の意図する目的を妨害しない量で存在することを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「誘導ポリペプチド」は、N末端及びC末端の一方又は両方への1つ又は複数のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の1つ又は複数の異なる部位での1つ又は複数のアミノ酸の置換、タンパク質の一方若しくは両方の末端での、又はアミノ酸配列中の1つ若しくは複数の部位での1つ若しくは複数のアミノ酸の欠失、及び/或いはアミノ酸配列中の1つ又は複数の部位での1つ又は複数のアミノ酸の挿入によって、タンパク質から得られるか、又は得ることができるタンパク質を指す。タンパク質誘導体の調製は、天然のタンパク質をコードするDNA配列を改変し、そのDNA配列を好適な宿主に形質転換し、その改変DNA配列を発現させて誘導タンパク質を形成することによって達成することができる。
関連(及び誘導)タンパク質には、「バリアントタンパク質」が含まれる。バリアントタンパク質は、少数のアミノ酸残基における置換、欠失及び/又は挿入によって、参照/親タンパク質(例えば、野生型タンパク質)とは異なる。バリアントタンパク質と親タンパク質との間の異なるアミノ酸残基の数は、1個以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50個又はそれ以上のアミノ酸残基であり得る。バリアントタンパク質は、参照タンパク質と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%、又はそれ以上のアミノ酸配列同一性を共有し得る。バリアントタンパク質はまた、選択されたモチーフ、ドメイン、エピトープ、保存領域などにおいて、参照タンパク質と異なっていてもよい。
本明細書で使用される場合、用語「相同タンパク質」は、参照タンパク質と類似した活性及び/又は構造を有するタンパク質を指す。相同体が必ずしも進化的に関連しているということではない。したがって、この用語は異なる生物から得られる、同一の、類似の、又は対応するタンパク質(すなわち、構造及び機能に関して)を包含することが意図されている。いくつかの実施形態では、参照タンパク質に類似の四次、三次及び/又は一次構造を有する相同体を特定することが望ましい。いくつかの実施形態では、相同タンパク質は、参照タンパク質と類似の免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、相同タンパク質は、所望の活性を有する酵素を産生するように遺伝子操作される。
配列間の相同性の程度は、当該技術分野で周知の任意の好適な方法を使用して決定し得る(例えば、Smith and Waterman,1981;Needleman and Wunsch,1970;Pearson and Lipman,1988;Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison,WI)のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTAなどのプログラム;並びにDevereux et al.,1984を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、「実質的に類似」及び「実質的に同一」という語句は、少なくとも2つの核酸又はポリペプチドとの関連では、通常、ポリヌクレオチド又はポリペプチドが参照(すなわち、野生型)配列と比較して少なくとも約70%の同一性、少なくとも約75%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、又は少なくとも約99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含むことを意味する。配列同一性は、標準的なパラメーターを用いて、BLAST、ALIGN及びCLUSTAL等の公知のプログラムを使用して決定することができる
本明細書で使用される場合、「遺伝子の欠失」は、宿主細胞のゲノムからの遺伝子の除去を指す。遺伝子が遺伝子のコード配列に直接隣接して位置していない制御エレメント(例えば、エンハンサーエレメント)を含む場合、遺伝子の欠失は、コード配列の欠失を指し、また任意選択的に、例えば、プロモーター配列及び/又はターミネーター配列を含むがこれらに限定されない隣接エンハンサーエレメントの欠失を指す。
本明細書で使用される場合、「遺伝子の破壊」は、広くは、細胞が宿主細胞内で機能的遺伝子産物、例えば、タンパク質を産生するのを実質的に妨げる任意の遺伝子操作又は化学的操作、すなわち、変異を指す。例示的な破壊方法としては、ポリペプチドコード配列、プロモーター、エンハンサー、若しくは別の調節エレメントを含む、遺伝子の任意の部分の完全若しくは部分的な欠失、又はその変異誘発が挙げられ、変異誘発は、置換、挿入、欠失、逆位、並びにそれらの組み合わせ及び変形形態を包含し、その変異はいずれも機能的遺伝子産物の産生を実質的に妨げる。遺伝子の発現はまた、RNAi、CRISPR/Cas9、又は遺伝子発現を消失、減少又は低減する任意の他の方法を使用して破壊することができる。
本明細書で使用される場合、「好気性発酵」は、酸素の存在下における増殖を指す。
本明細書で使用される場合、「細胞ブロス」という用語は、液体培養/浸漬培養における培地及び細胞を集合的に指す。
本明細書で使用される場合、「細胞集団」という用語は、液体培養/浸漬培養中に存在する細胞成分(インタクト細胞及び溶解細胞を含む)を指す。細胞集団は、乾燥重量又は湿潤重量で表すことができる。
本明細書で使用される場合、「機能性タンパク質」は、酵素活性、結合活性、表面活性特性などの活性を有し、且つ、その活性を消失又は減少させるために、変異誘発されたり、トランケートされたり、又はその他の改変がなされていないタンパク質である。
本明細書で使用される場合、「機能性遺伝子」は、活性な遺伝子産物、一般的にはタンパク質を産生するために、細胞成分が使用し得る遺伝子である。機能性遺伝子は、細胞成分が活性遺伝子産物を産生するために使用することができないか、又は細胞成分が活性遺伝子産物を産生するために使用する能力が低下するように改変された破壊された遺伝子とは正反対のものである。
本明細書で使用される場合、「目的タンパク質」は、糸状菌細胞の浸漬培養において産生が所望されるタンパク質である。一般に、目的タンパク質は、工業、医薬、動物の健康、並びに食品及び飲料の用途において商業的に重要なものであり、大量に生産することが望ましい。目的タンパク質は、糸状菌細胞によって発現される、数え切れないほどの他のタンパク質(これらは一般に産物として関心がもたれるものではなく、主にバックグラウンドのタンパク質混入物と考えられる)と区別されるべきものである。
III.セルラーゼ発現の活性化因子3(Ace3)
Hakkinen et al.(2014)の概説されているように、「セルラーゼ発現の活性化因子3」(ace3)と命名されたT.リーゼイ(T.reesei)遺伝子は、「Ace3」と命名された転写因子(TF)タンパク質をコードし、Ace3 TFはセルラーゼ及びヘミセルラーゼの遺伝子発現を調節する。さらに、出願人の国際公開第2018/067599号パンフレットでは、誘導基質(例えば、ラクトース、ソホロープス)の非存在下でのT.リーゼイ(T.reesei)株におけるセルラーゼ/ヘミセルラーゼの発現/産生をアップレギュレートすることができるAce3 TFタンパク質の特定のバリアント形態が特定されている。例えば、国際公開第2018/067599号パンフレットは、Hakkinen et al.(2014)に記載のクローン化されたace3 ORF(すなわち、ace3のT.リーゼイ(T.reesei)「QM6a株」(注釈)に基づく)を、Treesei「RUT-C30株」(注釈)に基づくace3 ORFと比較して評価した際の驚くべき且つ予期しなかった結果を記載している。
より詳細には、国際公開第2018/067599号パンフレットでは、誘導基質の非存在下でのT.リーゼイ(T.reesei)株におけるセルラーゼ/ヘミセルラーゼ遺伝子発現をアップレギュレートすることができるバリアントAce3 TFをコードする変異ace3遺伝子が特定された。国際公開第2018/067599号パンフレットに記載されているように、RL-P37及びRUT-C30などのT.リーゼイ(T.reesei)株における変異ace3遺伝子は、バリアントAce3 TFのC末端に(すなわち、コードされた野生型Ace3 TFタンパク質のC末端と比較して)、11個のアミノ酸のトランケーションをもたらす早期終止コドンを含んでいた。例えば、本開示の図1Aに示すように。「Ace3-S」(配列番号4)と命名したバリアントAce3タンパク質は、亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン(すなわち、野生型Ace3 TF亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン;配列番号29に見られるような)の6つのシステイン残基のうちの2つが欠失している、より短い(トランケートされた)N末端配列を有し、且つ図1Bに示すように、バリアントAce3-S TFタンパク質(配列番号4)は、グリシン(G)で終わる完全長(野生型)C末端を含む。さらに、国際公開第2018/067599号パンフレットに記載され、本開示の図1Aに示すように、「Ace3-LC」と命名した野生型Ace3タンパク質(配列番号2)は、インタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン(配列番号29)を含む完全長N末端を含み、且つ図1Bに示すように、野生型Ace3-LCタンパク質(配列番号2)は、グリシン(G)で終わる完全長(野生型)C末端を含む。対照的に、本開示の図1Aに示すように「Ace3-L」(配列番号6)と命名したバリアントAce3タンパク質は、は、インタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン(配列番号29)を含む完全長(野生型)N末端を含み、且つ図1Bに示すように、Ace3-Lタンパク質(配列番号6)は、アスパラギン酸(D)で終わる11個のアミノ酸がトランケートされたC末端を含む。Zhang et al.(2019)による最近の刊行物は、完全長亜鉛クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメインを有するAce3バリアントがDNAに結合することができるという本出願人の実験的観察をさらに実証した。
したがって、国際公開第2018/067599号パンフレットに概説されているように、バリアントAce3-Lタンパク質(すなわち、C末端に11個のアミノ酸のトランケーションを含む;配列番号6)をコードするace3遺伝子(又はそのオープンリーディングフレーム)を含むトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、バリアントAce3-Sタンパク質(配列番号4)又は野生型Ace3-LCタンパク質(配列番号2)をコードするace3遺伝子(又はそのオープンリーディングフレーム)を含むトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞と比較して、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素を産生することができた(すなわち、同一条件下で発酵/培養した場合)。より最近では、Chen et al.(2020)による刊行物は、天然のace3遺伝子座における最後の11個のC末端アミノ酸残基のトランケーション(欠失)(すなわち、完全長(野生型)Ace3 C末端と比較して)を有するバリアントAce3 TFタンパク質をコードする変異ace3遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞が、誘導条件下で野生型Ace3タンパク質をコードする野生型ace3遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞と比較して、そのようなトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞が増加した量のリグノセルロース分解酵素(例えば、セルラーゼ/ヘミセルラーゼ)を産生することを可能にするという本出願人の実験的観察をさらに実証した。
したがって、本開示の結果を他の著者の刊行物(例えば、Zhang et al.2019;Chen et al.2020)の結果/観察と比較した場合、本出願人はこれらの観察の間に以下の差異があることを強調し注記する。例えば、本明細書に一般的に記載し、以下の実施例の項に示すように、本出願人は、(非改変)親株として天然の遺伝子座にトランケート型Ace3 TFタンパク質をコードするace3遺伝子を有する株を使用し、(改変)娘株の異所性遺伝子座のバリアントAce3 TFタンパク質をコードするバリアントace3遺伝子を過剰発現させる。したがって、本開示の(改変)娘細胞は、トランケートされたC末端を有する天然Ace3 TFタンパク質に加えて、過剰発現したバリアントAce3 TFタンパク質の混合物を産生する。対照的に、Chen et al.(2020)の刊行物は、その天然遺伝子座にace3のトランケーションのみを導入している。同様に、Zhang et al.(2019)の刊行物は、T.リーゼイ(T.reesei)株QM6aのace3遺伝子座において、2つのバリアントAce3 TFタンパク質(ここで、第1のバリアントAce3 TFは、N末端に不完全な亜鉛クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメインを含み、且つ野生型C末端を含み、第2のバリアントAce3 TFは、N末端に完全な/インタクトな亜鉛クラスター(Zn2Cys6)DNAを含み、野生型C末端を含む、野生型Ace3 TFと類似しているが同一ではない)をその天然Ace3 TFの非存在下で過剰発現させるプロモータースワップ戦略を記載している。したがって、上記のZang et al.(2019)及びChen et al.(2020)らによる2つの研究は、概して、誘導条件下(すなわち、誘導基質の存在下で培養/発酵された場合)でのタンパク質産生の特定の改善を実証するが、いずれの刊行物も、非誘導条件下(すなわち、誘導基質の非存在下で培養/発酵された場合)でのタンパク質産生の改善を実証又は記載していない。
本開示において、本出願人は、Ace3-LC TFタンパク質(配列番号2;この野生型Ace3-LCタンパク質は、リグノセルロース分解酵素を発現/産生するために誘導基質を必要とする)の野生型C末端を、Ace3-L TFタンパク質(配列番号6;このAce3-Lタンパク質は、リグノセルロース分解酵素を発現/産生するために誘導基質を必要としない)のトランケートされたC末端と比較してさらに評価し分析した。より詳細には、以下の実施例1に記載するように、本出願人は、C末端に連続したアミノ酸欠失(トランケーション)を含むバリアントAce3タンパク質をコードする複数のace3発現ベクターを構築した。
例えば、5アミノ酸欠失増分を用いて、0アミノ酸欠失から25アミノ酸欠失までの範囲のC末端欠失を含む6つのベクターからなる第1のセットを構築した(例えば、表1;セット1を参照)。同様に、1アミノ酸欠失増分を用いて、6アミノ酸欠失から19アミノ酸欠失までの範囲のC末端欠失を含む12のベクターからなる第2のセットを構築した(表1;セット2)。したがって、実施例1で構築された18個のAce3 C末端バリアントタンパク質(表3に列挙)は、Ace3-LCタンパク質配列(配列番号2)に基づいており、それは689位のグリシン(G)で終わる完全長(野生型)Ace3 C末端を含む。
本出願人は、続いて、構築されたT.リーゼイ(T.reesei)株(表3)を、「非誘導」条件(グルコース)及び「誘導」条件(グルコース/ソホロース、又はラクトース)下でのタンパク質産生について試験/スクリーニングした。例えば、図7に示すように。本出願人は、(Ace3-LC)C末端バリアントを発現する6菌株からなる第1のセットを用いて総タンパク質産生を評価した。親対照株(RL-P37)は、単に、ラクトース上で(すなわち、「誘導」条件下で)大量のタンパク質を産生することができ、グルコース上で(すなわち、「非誘導」条件下で)は最低基礎レベルのタンパク質を産生した。同様に、図7に示すように、10アミノ酸欠失(Cterm-10)、11アミノ酸欠失(Cterm-11)、又は15アミノ酸欠失(Cterm-15)を有する(Ace3-LC)C末端バリアントを発現する娘細胞は、ラクトース(「誘導」条件)及びグルコース(「非誘導」条件)の両方の下でタンパク質産生の増加を示した。例えば、図7に示すように。倍率変化の増加は、ラクトース上の親株(RL-P37)によって産生されるタンパク質レベルと比較して、グルコース上で約1.8倍、ラクトース上の親株(RL-P37)によって産生されるタンパク質レベルと比較して、ラクトース上で約3倍である。
対照的に、図7に示すように、野生型(Ace3-LC)C末端(すなわち、0個のアミノ酸欠失を含む;配列番号2)、及び20個のアミノ酸欠失(配列番号21)、又は25個のアミノ酸欠失(配列番号22)を含む(Ace3-LC)C末端バリアントは、ラクトース上及びグルコース上の両方で、総タンパク質の産生が大きく減少した。これらの結果は、野生型(Ace3-LC)C末端のトランケーションがタンパク質産生をアップレギュレートする機能に必須であり、且つAce3 C末端で許容されるアミノ酸とトランケーションの数に上限及び下限があることを示している。
野生型(Ace3-LC)C末端における許容されるアミノ酸欠失の上限及び下限をさらに探索するために、本出願人は、1アミノ酸欠失増分を使用して、6アミノ酸欠失から19アミノ酸欠失までの範囲のC末端欠失を含むT.リーゼイ(T.reesei)株をスクリーニングした(例えば、表1、セット2;及び表3を参照)。例えば、図8に示すように。5又は6個のC末端アミノ酸のトランケーションは、親株と同様の結果を示した(すなわち、グルコース上での基礎タンパク質産生、及びラクトース上でのより高い産生)。対照的に、C末端の少なくとも最後の7個のアミノ酸の欠失(トランケーション)(図5)。及び17個まで(17個を含む)のアミノ酸の欠失(トランケーション)(図5)。は、図8に示すように、グルコース(非誘導)条件及びラクトース(誘導)条件の両方の下で、産生の改善を示した。
例えば、(Ace3-LC)C末端バリアントのC-term-7(配列番号:9)、C-term-8(配列番号10)、C-term-9(配列番号11)、C-term-10(配列番号12)、C-term-12(配列番号13)、C-term-13(配列番号14)、C-term-14(配列番号15)、C-term-15(配列番号16)、C-term-16(配列番号17)及びC-term-17(配列番号18)を発現するT.リーゼイ(T.reesei)株は、総タンパク質産生が、ラクトース上の親株RL-P37と比較して、グルコース(非誘導性)条件下で約2倍の増加、及びラクトース上の親株RL-P37と比較して、ラクトース(誘導性)条件下で約3倍の増加を示した。対照的に、野生型Ace3-LCタンパク質(すなわち、野生型Ace3 C末端を含む;配列番号2)を発現するT.リーゼイ(T.reesei)株のラクトース上のタンパク質の産生量は、ラクトース上の親株RL-P37よりも減少し、グルコース上の産生量は最小であった(図8)。C末端に7個未満のアミノ酸欠失を有する(Ace3-LC)C末端バリアントを発現するT.リーゼイ(T.reesei)株は、グルコース上及びラクトース上で、同じ条件下の親株RL-P37と同等の量のタンパク質を産生した。C末端に17個を超えるアミノ酸欠失を含む(Ace3-LC)C末端バリアントを発現するT.リーゼイ(T.reesei)株は、タンパク質の産生量がグルコース条件下又はラクトース条件下で最小であった(図8)。
以下の実施例2に記載するように、本出願人は、ace3遺伝子座におけるC末端トランケーション点変異(すなわち、Ace3-Lをコードする;配列番号6)を(G)グリシンで終わるQM6a(すなわち、Ace3-LCをコードする)の野生型(Ace3)C末端配列に分子的に復帰させた(図1B;配列番号2)。より具体的には、実施例2に記載され、図9に示すように、本出願人は、3つの株のタンパク質産生を振盪フラスコ発酵において評価した。3つの株には、「T4abc」株(Ace3-Lをコードするace3トランケーション対立遺伝子を含む;配列番号6)、「T4abc ace3_rev」株(Ace3-LCをコードするace3完全長対立遺伝子を含む;配列番号:2)、及び「T4abc del-cbh1」株(その内因性セロビオヒドロラーゼ(cbh1)遺伝子の欠失を含む)が含まれた。図9に示すように、ace3変異(Ace3-L;配列番号6)を野生型(完全長)Ace3C末端(グリシン(G)で終わるAce3-LC;配列番号2)をコードするように、T4abcバックグラウンドで復帰させた場合、総分泌タンパク質力価は約73%減少した。比較のために、最も顕著な分泌タンパク質(Cbh1)をコードする遺伝子(cbh1)の欠失は、総分泌タンパク質力価を47%だけ減少させた。
上記の天然Ace3 C末端トランケーション(欠失)に加えて、本出願人は、本明細書に記載の特定の他のAce3 C末端改変を企図し、構築し、試験し、検証した。より具体的には、そのいずれかの特定の機構又は操作方法に拘束されることを望むものではないが、本出願人は、Ace3 C末端の他の遺伝子改変(例えば、置換、挿入、内部(C末端)欠失、及びこれらの組み合わせ)が、本明細書に記載されるように、タンパク質産生の改善に等しく好適な遺伝子改変であると考える。例えば、以下の実施例3に示すように、本出願人は、Ace3 TF C末端バリアントライブラリーを構築し、そのようなライブラリーをスクリーニングして、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞におけるタンパク質の生産性を改善するための組成物及び方法を記載する。Ace3のC末端バリアントライブラリーは、配列番号2のアミノ酸位置641~689をコードする完全長(野生型)Ace3-LC C末端のコード配列の改変によって生成される。例えば、図15(配列番号30)は、アミノ酸位置S641~G689をコードする完全長(野生型)Ace3-LC C末端を示す。より具体的には、本出願人は、部位置換ライブラリー(ライブラリー1)、走査挿入ライブラリー(ライブラリー2)及び走査欠失ライブラリー(ライブラリー3)を含む3つの異なるAce3 C末端ライブラリーを記載する。
本開示の実施例4は、Ace3-LCタンパク質のC末端の最後の11個のアミノ酸残基の、V5エピトープタグ又はV5-(6×His)タンデムタグによる分子置換を記載しており、C末端V5タグ置換を有するAce3-LCタンパク質(すなわち、Ace3-LC-V5)を発現するか、又はC末端V5-(6×His)タンデムタグ置換を有するAce3-LCタンパク質(すなわち、Ace3 LC-V5-(6×His))を発現するトリコデルマ属(Trichoderma)の菌株を、「非誘導」(Glu)及び「誘導」(Glu/Sop)の両条件下で試験した(発酵させた)。
例えば、11アミノ酸トランケーションを含むバリアントAce3-L TFタンパク質(配列番号6)を含み、発現する改変(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、誘導(Glu/Sop)及び非誘導(Glu)の両条件下で、大量の分泌タンパク質を産生した。さらに、Ace3-LC-V5(すなわち、最後の11個のアミノ酸の14アミノ酸置換を含む)を含み、発現する改変(娘)Treesei細胞、及びAce3-LC-V5-(6×His)(すなわち、最後の11個のアミノ酸の23アミノ酸置換を含む)を含み、発現するバリアント(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞もまた、誘導(Glu/Sop)及び非誘導(Glu)の両条件下で、Ace3-Lバリアントよりも約10%低いものの、高いタンパク質生産性を示した(図14を参照)。したがって、これらの結果は、以下に限定されないが、置換、挿入、内部(C末端)欠失、及びこれらの組み合わせを含むAce3 C末端の遺伝子改変が、本明細書に記載されるように、タンパク質の生産性の改善に等しく好適な遺伝子改変であることを示している。
IV.組換え核酸及び分子生物学
特定の実施形態において、本開示は、バリアントAce3 TFタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド(核酸配列)を対象としている。特定の実施形態では、バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変を含む。したがって、特定の他の実施形態は、本開示のバリアントAce3 TFタンパク質をコードするace3遺伝子を含む遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に関し、この改変細胞は、誘導基質の非存在下で目的タンパク質(POI)を産生することができ、且つ/又はこの改変細胞は、誘導基質の存在下で増加した量のPOIを産生することができる。特定の実施形態では、「改変」又は「遺伝子改変」に以下が含まれる:(a)遺伝子(若しくはそのORF)における1つ又は複数のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳に必要な調節エレメントにおける1つ若しくは複数のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)特異的変異誘発、及び/或いは(g)本明細書に開示される任意の1つ若しくは複数の遺伝子のランダム変異誘発。
したがって、特定の実施形態では、本開示は、Ace3タンパク質をコードする遺伝子又はORF含む組換え核酸に対象とする。特定の実施形態では、組換え核酸は、糸状菌宿主細胞内でAce3バリアントタンパク質を産生するためのポリヌクレオチド発現カセットを含む。他の実施形態では、ポリヌクレオチド発現カセットは、発現ベクター内に含まれる。特定の実施形態では、発現ベクターはプラスミドである。
他の特定の実施形態では、組換え核酸(又はそのポリヌクレオチド発現カセット若しくはその発現ベクター)は、1つ又は複数の選択マーカーをさらに含む。糸状菌に使用するための選択マーカーとしては、以下に限定されないが、alsl、amdS、hygR、pyr2、pyr4、pyrG、sucA、ブレオマイシン耐性マーカー、ブラストサイジン耐性マーカー、ピリチアミン耐性マーカー、クロリムロンエチル耐性マーカー、ネオマイシン耐性マーカー、アデニン経路遺伝子、トリプトファン経路遺伝子、チミジンキナーゼマーカーなどが挙げられる。特定の実施形態では、選択マーカーはpyr2であり、その成分及び使用方法は、国際公開第2011/153449号パンフレットに一般的に記載されている。したがって、特定の実施形態では、本開示のAce3タンパク質をコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、それに作動可能に連結された、選択マーカーをコードする核酸配列を含む。
別の実施形態では、組換え核酸、ポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセット又はその発現ベクターは、バリアントAce3タンパク質をコードする遺伝子(又はORF)の発現を駆動する異種プロモーターを含む。より詳しくは、特定の実施形態では、異種プロモーターは構成的プロモーター又は誘導性プロモーターである。特定の実施形態では、異種プロモーターは、rev3プロモーター、bxlプロモーター、tkl1プロモーター、PID104295プロモーター、dld1プロモーター、xyn4プロモーター、PID72526プロモーター、axe1プロモーター、hxk1プロモーター、dic1プロモーター、optプロモーター、gut1プロモーター及びpki1プロモーターからなる群から選択される。したがって、特定の実施形態では、組換え核酸(又はポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセット若しくはその発現ベクター)は、バリアントAce3タンパク質をコードする核酸配列の5’に作動可能に連結したプロモーター配列を含む。
別の実施形態では、組換え核酸(又はポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセット、若しくはその発現ベクター)は、天然ace3ターミネーター配列をコードする核酸配列をさらに含む。したがって、特定の実施形態では、組換え核酸(又はポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセット、若しくはその発現ベクター)は、Ace3タンパク質をコードする核酸配列の5’に作動可能に連結した異種プロモーターを含み、またバリアントAce3タンパク質をコードする核酸配列の3’に作動可能に連結した天然ace3ターミネーター配列を含む(例えば、5’-Pro-ORF-Term-3’(ここで「Pro」は構成的プロモーターであり、「ORF」はAce3をコードし、「Term」は天然ace3ターミネーター配列である))。
調節配列又は制御配列の例は、プロモーター配列又はその機能的部分(すなわち、核酸配列の発現に十分に影響を及ぼす部分)であり得る。改変のための他の制御配列としては、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子などが挙げられるがこれらに限定されない。
特定の他の実施形態では、目的タンパク質をコードする目的遺伝子(又はORF)は、リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来するプロモーター配列の制御下に置かれる。例えば、特定の実施形態では、目的タンパク質をコードする目的遺伝子(又はORF)は、GOIの発現が本開示のバリアントAce3 TFタンパク質の存在下でアップレギュレートされるように、cbh1プロモーターの制御下に置かれる。したがって、特定の実施形態では、リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来するプロモーター配列は、セロビオヒドロラーゼプロモーター配列、エンドグルカナーゼプロモーター配列、β-グルコシダーゼプロモーター配列、又はキシラナーゼプロモーター配列である。
所定の実施形態では、本開示の改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、当該技術分野においてよく知られた方法、例えば、挿入、破壊、置換又は欠失を使用して、目的遺伝子(GOI)の発現を減少させる、又は排除することによって構築される。改変又は不活化対象の遺伝子部分は、例えば、コード領域、又はコード領域を発現させるために必要とされる調節エレメントであり得る。
特定の他の実施形態では、改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、少なくとも1つのGOIの発現を消失又は減少させる遺伝子欠失によって構築される。遺伝子欠失技術は、遺伝子の部分的又は完全な除去を可能にし、それによりそれらの発現を排除する、又は非機能的(若しくは活性が減少した)タンパク質産物を発現させる。そのような方法では、遺伝子の欠失は、遺伝子にフランキングする5’及び3’領域を隣接して含有するように構築されているプラスミドを用い、相同組換えによって遂行され得る。
他の実施形態では、本開示の改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、それらの転写又は翻訳に必要とされる遺伝子又は調節エレメント内の1つ又は複数のヌクレオチドを導入するか、置換するか、又は除去することによって構築される。例えば、終止コドンの導入、開始コドンの除去、又はオープンリーディングフレームのフレームシフトを生じさせるように、ヌクレオチドを挿入又は除去し得る。このような改変は、当該技術分野で知られた方法に従って、部位特異的変異誘発又はPCR生成変異誘発によって達成され得る。
別の実施形態では、改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、遺伝子変換プロセスによって構築される。例えば、遺伝子変換法では、遺伝子に対応する核酸配列をインビトロで変異させて欠陥のある核酸配列を生成し、次いで、この核酸配列を親トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に形質転換して欠陥のある遺伝子を生成する。相同組換えによって、欠陥のある核酸配列が内在性遺伝子に取って代わる。欠陥のある遺伝子又は遺伝子断片は又、欠陥のある遺伝子を含有する形質転換体の選択に使用され得るマーカーをコードすることが望ましい場合がある。例えば、欠陥のある遺伝子は、選択マーカーと会合している非複製プラスミド又は感温性プラスミドに導入され得る。プラスミドを組み込むための選択は、プラスミド複製を許容しない条件下でそのマーカーを選択することによって実施される。遺伝子置換をもたらす第2の組換え事象の選択は、選択マーカーの消失及び変異遺伝子の獲得についてコロニーを調査することによって実施される(Perego,1993)。或いは、欠陥のある核酸配列は、以下に記載するように、遺伝子の1つ又は複数のヌクレオチドの挿入、置換又は欠失を含有し得る。
他の実施形態では、改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、遺伝子の核酸配列と相補的であるヌクレオチド配列を使用する確立されたアンチセンス技術によって構築される(Parish and Stoker,1997)。より具体的には、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞による遺伝子の発現は、この遺伝子の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を導入することにより低減(ダウンレギュレート)又は消失させることができ、それは細胞内で転写され得、細胞内で産生されるmRNAにハイブリダイズすることができる。したがって、相補的アンチセンスヌクレオチド配列がmRNAにハイブリダイズできる条件下では、翻訳されるタンパク質量は低減又は排除される。そのようなアンチセンス法としては、以下に限定されないが、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられ、これらの全てが当業者によく知られている。
他の実施形態では、改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、CRISPR-Cas9編集によって作製/構築される。例えば、目的の遺伝子は、DNA上の標的配列にエンドヌクレアーゼを動員するガイドRNA(例えば、Cas9)及びCpf1又はガイドDNA(例えば、NgAgo)に結合することによってそれらの標的DNAを見出す核酸誘導型エンドヌクレアーゼによって破壊(又は欠失又はダウンレギュレート)されてもよく、ここで、エンドヌクレアーゼは、DNAにおいて一本鎖又は二本鎖切断を生成することができる。この標的化DNA切断は、DNA修復のための基質となり、遺伝子を破壊又は欠失させるために提供された編集鋳型と再結合し得る。例えば、核酸誘導型エンドヌクレアーゼ(この目的のためには、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9)をコードする遺伝子、又はCas9ヌクレアーゼをコードするコドン最適化遺伝子は、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞内で活性なプロモーター及びトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞内で活性なターミネーターに作動可能に連結されており、これによりトリコデルマ属(Trichoderma)Cas9発現カセットを生成する。同様に、目的遺伝子に固有の1つ又は複数の標的部位は、当業者により容易に同定される。例えば、目的の遺伝子内の標的部位に向けられたgRNAをコードするDNAコンストラクトを構築するためには、可変ターゲティングドメイン(VT)は、そのヌクレオチドが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9(CER)に対するCas9エンドヌクレアーゼ認識ドメインをコードするDNAに融合している、(PAM)プロトスペーサー隣接モチーフ(TGG)の5’側である標的部位のヌクレオチドを含むであろう。VTドメインをコードするDNAとCERドメインをコードするDNAとの組み合わせは、それによりgRNAをコードするDNAを生成する。したがって、gRNAのためのトリコデルマ属(Trichoderma)菌発現カセットは、トリコデルマ属(Trichoderma)細胞内で活性なプロモーター及びトリコデルマ属(Trichoderma)細胞内で活性なターミネーターにgRNAをコードするDNAを作動可能に連結させることによって作製される。
特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼによって誘導されたDNA切断は、入来配列を用いて修復/置換される。例えば、上述したCas9発現カセット及びgRNA発現カセットによって生成されたDNA切断を精密に修復するためには、細胞のDNA修復機構が編集鋳型を利用できるように、ヌクレオチド編集鋳型が提供される。例えば、標的化遺伝子の約500bpの5’は、編集鋳型を生成するために標的化遺伝子の約500bpの3’に融合させることができ、その鋳型は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)によって生成されたDNA切断を修復するためにトリコデルマ属(Trichoderma)宿主の機構によって使用される。
Cas9発現カセット、gRNA発現カセット及び編集鋳型は、多数の様々な方法(例えば、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、天然コンピテンス又は誘導コンピテンス)を使用して糸状菌細胞に共送達することができる。形質転換細胞は、遺伝子座をフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて増幅させることによる、標的遺伝子座をPCR増幅させることによってスクリーニングされる。これらのプライマーは、野生型遺伝子座又はRGENによって編集されている改変遺伝子座を増幅させることができる。
さらに他の実施形態では、改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、化学的変異誘発及び転座を含むがそれらに限定されない当該技術分野においてよく知られる方法を使用して、ランダム変異誘発又は特異的変異誘発によって構築される。遺伝子の改変は、親細胞に変異誘発を受けさせること、及びその中で遺伝子の発現が低減又は消失されている変異細胞をスクリーニングすることによって実施され得る。変異誘発は、特異的であってもランダムであってもよいが、例えば、好適な物理的若しくは化学的変異誘発剤の使用によって、好適なオリゴヌクレオチドの使用によって、又はDNA配列をPCR生成変異誘発に供することによって実施され得る。さらに、変異誘発は、これらの変異誘発法を任意に組み合わせることにより実施され得る。本発明の目的に好適な物理的又は化学的な変異誘発剤の例としては、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、N-メチル-N’-ニトロソグアニジン(NTG)、O-メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチドアナログが挙げられる。このような薬剤を使用する場合、変異誘発は、一般的には、好適な条件の下、最適な変異誘発剤の存在下で変異誘発対象の親細胞をインキュベートする工程、及び遺伝子発現の減少、又は遺伝子発現を示さない変異細胞を選択する工程によって実施される。
したがって、特定の実施形態では、本開示の真菌宿主細胞を形質転換するために、糸状菌の形質転換及び真菌の培養のための標準的な手法(これは、当業者によく知られている)が使用される。したがって、真菌宿主細胞へのDNAコンストラクト又はベクターの導入法には、形質転換、エレクトロポレーション、核マイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション(例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介トランスフェクション)、リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション、DNA被覆微粒子を用いる高速銃、遺伝子銃又はバイオリスティック形質転換、プロトプラスト融合などの手法が含まれる。一般的な形質転換技術は当該技術分野で知られている(例えば、Ausubel et al.,1987、Sambrook et al.,2001及び2012、並びにCampbell et al.,1989を参照されたい)。トリコデルマ属(Trichoderma)内での異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号明細書;同第6,268,328号明細書;Harkki et al.,1991及びHarkki et al.,1989に記載されている。アスペルギルス属(Aspergillus)の株の形質転換については、Cao et al.(2000)も参照されたい。
一般に、トリコデルマ属(Trichoderma)菌の形質転換は、通常、105~107/mL、特に2×106/mLの密度で透過性処理を施したプロトプラスト又は細胞を使用する。適切な溶液中(例えば、1.2Mソルビトール及び50mM CaCl2)の100μLの容量のこれらのプロトプラスト又は細胞を、所望のDNAと混合する。一般に、高濃度のポリエチレングリコール(PEG)が取り込み溶液に添加される。ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウムなどの添加剤もまた、形質転換を促進するために取り込み溶液に添加し得る。同様の手順は、他の真菌宿主細胞についても利用可能である。例えば、米国特許第6,022,725号明細書及び同第6,268,328号明細書を参照されたい(これらは両者とも参照により組み込まれる)。
特定の実施形態では、本開示は、糸状菌宿主細胞に対して内因性である1種又は複数の目的タンパク質の発現及び産生を対象としている(すなわち、バリアントAce3タンパク質を発現する遺伝子改変を含む、本開示のバリアント真菌宿主細胞によって、内因性タンパク質が産生される)。他の実施形態では、本開示は、糸状菌宿主細胞に対して異種である1つ又は複数の目的タンパク質の発現及び産生を対象としている。したがって、本開示は一般に、組換え遺伝学の分野におけるルーチンの手法に頼っている。本開示で使用する一般的な方法を開示する基本的なテキストとしては、Sambrook et al.,(2ndEdition,1989);Kriegler(1990)及びAusubel et al.,(1994)が挙げられる。
したがって、特定の実施形態では、目的タンパク質をコードする異種遺伝子又はORFが糸状菌(宿主)細胞に導入される。特定の実施形態では、異種遺伝子又はORFは、典型的には、複製及び/又は発現のために糸状菌(宿主)細胞に形質転換される前に、中間ベクターにクローニングされる。これらの中間ベクターは、例えば、プラスミド又はシャトルベクターなどの原核生物ベクターであり得る。特定の実施形態では、異種遺伝子又はORFの発現は、その天然のプロモーターの制御下にある。他の実施形態では、異種遺伝子又はORFの発現は、異種構成的プロモーター又は異種誘導性プロモーターであり得る異種プロモーターの制御下に置かれる。
当業者は、自然(天然)のプロモーターが、その機能を変化させることなく、1つ又は複数ヌクレオチドの取換え、置換、付加又は削除によって改変され得ることを知っている。本発明の実施は、プロモーターに対するそのような改変を包含するが、それらを強いるものではない。
発現ベクター/コンストラクトは、通常、異種配列の発現に必要な全ての追加のエレメントを含む転写ユニット又は発現カセットを含有する。例えば、典型的な発現カセットは、目的タンパク質をコードする異種核酸配列に作動可能に連結した5’プロモーターを含有し、転写物、リボソーム結合部位、及び翻訳終結の効率的なポリアデニル化に必要な配列シグナルをさらに含み得る。カセットの追加のエレメントには、エンハンサーと、ゲノムDNAが構造遺伝子として使用される場合には、機能性スプライスドナー部位及びアクセプター部位を有するイントロンが含まれ得る。
プロモーター配列に加えて、発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含み得る。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得てもよく、又は異なる遺伝子から得てもよい。本発明においては、任意の真菌ターミネーターが機能的である可能性が高いが、好ましいターミネーターには、トリコデルマ属(Trichoderma)cbhI遺伝子由来のターミネーター、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)trpC遺伝子由来のターミネーター(Yelton et al.,1984;Mullaney et al.,1985)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)若しくはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ遺伝子(Nunberg et al.,1984;Boel et al.,1984)、及び/又はムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)カルボキシルプロテアーゼ遺伝子(欧州特許第0215594号明細書)が含まれる。
遺伝子情報を細胞に輸送するために使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核細胞又は原核細胞における発現に使用される、従来のベクターのいずれも使用し得る。標準的な細菌発現ベクターには、バクテリオファージλ及びM13、並びにpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、MBP、GST及びLacZなどの融合発現系が含まれる。便宜的な単離方法を提供するために、組換えタンパク質にエピトープタグ、例えば、c-mycを添加することもできる。
発現ベクター中に含むことができるエレメントには、また、レプリコン、組換えプラスミドを保有する細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコードする遺伝子、又は異種配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域における固有の制限部位があり得る。当該技術分野で知られている多くの耐性遺伝子のいずれもが好適であり得るため、選択された特定の抗生物質耐性遺伝子は確定的ではない。原核生物配列は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)におけるDNAの複製又は組み込みを妨害しないように選択することが好ましい。
本発明の形質転換方法は、形質転換ベクターの全部又は一部の、糸状菌ゲノムへの安定な組み込みをもたらし得る。しかしながら、自己複製する染色体外形質転換ベクターの維持をもたらす形質転換も考えられる。
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入する既知の手順はいずれも使用し得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション法、ポリブレン法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、バイオリスティックス法、リポソーム法、マイクロインジェクション法、血漿ベクター法、ウイルスベクター法、及び宿主細胞にクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNA又は他の外来遺伝子物質を導入する方法として知られる他の任意の方法の使用が含まれる(例えば、上記のSambrook et al.を参照されたい)。米国特許第6,255,115号明細書に記載されているような、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介トランスフェクション法も有用である。使用する特定の遺伝子工学の手順が、異種遺伝子を発現し得る宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾よく導入し得ることのみが必要である。
発現ベクターが細胞に導入された後、トランスフェクトされた細胞は、セルラーゼ遺伝子プロモーター配列の制御下で遺伝子の発現に有利な条件下で培養される。形質転換細胞の大きなバッチは、本明細書に記載のようにして培養することができる。最後に、標準的な手法を用いて培養物から生成物を回収する。
このように、本明細書における開示は、その発現が天然に存在するセルラーゼ遺伝子、融合DNA配列、及び種々の異種コンストラクトを含む、セルラーゼ遺伝子プロモーター配列の制御下にある、所望のポリペプチドの発現及び増強された分泌を提供する。本発明はまた、このような所望産物を高レベルで発現及び分泌させる方法を提供する。
V.目的タンパク質
上記のように、本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のバリアントAce3タンパク質をコードする遺伝子又はORFを発現する遺伝子改変を含む遺伝子改変糸状菌細胞に関する。より詳細には、特定の実施形態は、誘導基質の非存在下で、バリアントAce3タンパク質をコードするそのような改変された真菌細胞において、目的タンパク質(POI)を発現/産生させるための組成物及び方法に関する。特定の他の実施形態は、誘導基質の存在下での、そのような改変された真菌細胞におけるPOIの産生を増加させるための組成物及び方法に関する。
本明細書に記載されるように、目的タンパク質(POI)としては、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、β-グルカナーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ類、アラビナーゼ、アラビノシダーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンライザーゼ、エンド-β-グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、インバーターゼ、イソメラーゼなどが挙げられるがこれらに限定されない。
したがって、特定の実施形態では、POIは、EC1、EC2、EC3、EC4、EC5又はEC6から成る群から選択される酵素委員会(EC)番号から選択される。
例えば、特定の実施形態では、POIは、EC1.10.3.2(例えば、ラッカーゼ)、EC1.10.3.3(例えば、L-アスコルビン酸オキシダーゼ)、EC1.1.1.1(例えば、アルコール脱水素酵素)、EC1.11.1.10(例えば、塩化物ペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.17(例えば、ペルオキシダーゼ)、EC1.1.1.27(例えば、L-乳酸脱水素酵素)、EC1.1.1.47(例えば、グルコース1-脱水素酵素)、EC1.1.3.X(例えば、グルコースオキシダーゼ)、EC1.1.3.10(例えば、ピラノースオキシダーゼ)、EC1.13.11.X(例えば、ジオキシゲナーゼ)、EC1.13.11.12(例えば、リノール酸l3S-リポキシゲナーゼ)、EC1.1.3.13(例えば、アルコールオキシダーゼ)、EC1.14.14.1(例えば、モノオキシゲナーゼ)、EC1.14.18.1(例えば、モノフェノールモノオキシゲナーゼ)、EC1.15.1.1(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ)、EC1.1.5.9(以前のEC1.1.99.10、例えば、グルコース脱水素酵素)、EC1.1.99.18(例えば、セロビオース脱水素酵素)、EC1.1.99.29(例えば、ピラノース脱水素酵素)、EC1.2.1.X(例えば、脂肪酸還元酵素)、EC1.2.1.10(例えば、アセトアルデヒド脱水素酵素)、EC1.5.3.X(例えば、フルクトシルアミン還元酵素)、EC1.8.1.X(例えば、ジスルフィド還元酵素)及びEC1.8.3.2(例えば、チオールオキシダーゼ)から選択されるEC1酵素(酸化還元酵素)を含むがそれらに限定されない酸化還元酵素である。
特定の実施形態では、POIは、EC2.3.2.13(例えば、トランスグルタミナーゼ)、EC2.4.1.X(例えば、ヘキソシルトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.40(例えば、アルテルナスクラーゼ)、EC2.4.1.18(例えば、1,4α-グルカン分枝酵素)、EC2.4.1.19(例えば、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.2(例えば、デキストリンデキストラナーゼ)、EC2.4.1.20(例えば、セロビオースホスホリラーゼ)、EC2.4.1.25(例えば、4-α-グルカノトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.333(例えば、1,2-β-オリゴグルカンリントランスフェラーゼ)、EC2.4.1.4(例えば、アミロスクラーゼ)、EC2.4.1.5(例えば、デキストランスクラーゼ)、EC2.4.1.69(例えば、ガラクトシド2-α-L-フコシルトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.9(例えば、イヌロスクラーゼ)、EC2.7.1.17(例えば、キシルロキナーゼ)、EC2.7.7.89(以前のEC3.1.4.15、例えば、[グルタミンシンテターゼ]-アデニリル-L-チロシンホスホリラーゼ)、EC2.7.9.4(例えば、αグルカンキナーゼ)及びEC2.7.9.5(例えば、ホスホグルカンキナーゼ)から選択されるEC2(トランスフェラーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないトランスフェラーゼ酵素である。
他の実施形態では、POIは、EC3.1.X.X(例えば、エステラーゼ)、EC3.1.1.1(例えば、ペクチナーゼ)、EC3.1.1.14(例えば、クロロフィラーゼ)、EC3.1.1.20(例えば、タンナーゼ)、EC3.1.1.23(例えば、グリセロール-エステルアシルヒドラーゼ)、EC3.1.1.26(例えば、ガラクトリパーゼ)、EC3.1.1.32(例えば、ホスホリパーゼA1)、EC3.1.1.4(例えば、ホスホリパーゼA2)、EC3.1.1.6(例えば、アセチルエステラーゼ)、EC3.1.1.72(例えば、アセチルキシランエステラーゼ)、EC3.1.1.73(例えば、フェルロイルエステラーゼ)、EC3.1.1.74(例えば、クチナーゼ)、EC3.1.1.86(例えば、ラムノガラクツロナンアセチルエステラーゼ)、EC3.1.1.87(例えば、フモシンB1エステラーゼ)、EC3.1.26.5(例えば、リボヌクレアーゼP)、EC3.1.3.X(例えば、リン酸物エステルヒドラーゼ)、EC3.1.30.1(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)ヌクレアーゼS1)、EC3.1.30.2(例えば、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)ヌクレアーゼ)、EC3.1.3.1(例えば、アルカリホスファターゼ)、EC3.1.3.2(例えば、酸性ホスファターゼ)、EC3.1.3.8(例えば、3-フィターゼ)、EC3.1.4.1(例えば、ホスホジエステラーゼI)、EC3.1.4.11(例えば、ホスホイノシチドホスホリパーゼC)、EC3.1.4.3(例えば、ホスホリパーゼC)、EC3.1.4.4(例えば、ホスホリパーゼD)、EC3.1.6.1(例えば、アリールスルファターゼ)、EC3.1.8.2(例えば、ジイソプロピル-フルオロホスファターゼ)、EC3.2.1.10(例えば、オリゴ-1,6-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.101(例えば、マンナンエンド-1,6-α-マンノシダーゼ)、EC3.2.1.11(例えば、α-1,6-グルカン-6-グルカノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.131(例えば、キシランα-1,2-グルクロノシダーゼ)、EC3.2.1.132(例えば、キトサンN-アセチルグルコサミノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.139(例えば、α-グルクロニダーゼ)、EC3.2.1.14(例えば、キチナーゼ)、EC3.2.1.151(例えば、キシログルカン-特異的エンド-β-1,4-グルカナーゼ)、EC3.2.1.155(例えば、キシログルカン-特異的エキソ-β-1,4-グルカナーゼ)、EC3.2.1.164(例えば、ガラクタンエンド-1,6-β-ガラクトシダーゼ)、EC3.2.1.17(例えば、リゾチーム)、EC3.2.1.171(例えば、ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ)、EC3.2.1.174(例えば、ラムノガラクツロナンラムノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.2(例えば、β-アミラーゼ)、EC3.2.1.20(例えば、α-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.22(例えば、α-ガラクトシダーゼ)、EC3.2.1.25(例えば、β-マンノシダーゼ)、EC3.2.1.26(例えば、β-フルクトフラノシダーゼ)、EC3.2.1.37(例えば、キシラン1,4-β-キシロシダーゼ)、EC3.2.1.39(例えば、グルカンエンド-1,3-β-D-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.40(例えば、α-L-ラムノシダーゼ)、EC3.2.1.51(例えば、α-L-フコシダーゼ)、EC3.2.1.52(例えば、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ)、EC3.2.1.55(例えば、α-N-アラビノフラノシダーゼ)、EC3.2.1.58(例えば、グルカン1,3-β-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.59(例えば、グルカンエンド-1,3-α-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.67(例えば、ガラクツラン1,4-α-ガラクツロニダーゼ)、EC3.2.1.68(例えば、イソアミラーゼ)、EC3.2.1.7(例えば、1-β-D-フルクタンフルクタノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.74(例えば、グルカン1,4-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.75(例えば、グルカンエンド-1,6-β-グルコシダーゼ)、EC3.2.1.77(例えば、マンナン1,2-(1,3)-α-マンノシダーゼ)、EC3.2.1.80(例えば、フルクタンβ-フルクトシダーゼ)、EC3.2.1.82(例えば、エキソ-ポリ-α-ガラクツロノシダーゼ)、EC3.2.1.83(例えば、κ-カラギナーゼ)、EC3.2.1.89(例えば、アラビノガラクタンエンド-1,4-β-ガラクトシダーゼ)、EC3.2.1.91(例えば、セルロース1,4-β-セロビオシダーゼ)、EC3.2.1.96(例えば、マンノシル-グリコプロテインエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ)、EC3.2.1.99(例えば、アラビナンエンド-1,5-α-L-アラビナナーゼ)、EC3.4.X.X(例えば、ペプチダーゼ)、EC3.4.11.X(例えば、アミノペプチダーゼ)、EC3.4.11.1(例えば、ロイシルアミノペプチダーゼ)、EC3.4.11.18(例えば、メチオニルアミノペプチダーゼ)、EC3.4.13.9(例えば、Xaa-Proジペプチダーゼ)、EC3.4.14.5(例えば、ジペプチジル-ペプチダーゼIV)、EC3.4.16.X(例えば、セリンタイプカルボキシペプチダーゼ)、EC3.4.16.5(例えば、カルボキシペプチダーゼC)、EC3.4.19.3(例えば、ピログルタミル-ペプチダーゼI)、EC3.4.21.X(例えば、セリンエンドペプチダーゼ)、EC3.4.21.1(例えば、キモトリプシン)、EC3.4.21.19(例えば、グルタミルエンドペプチダーゼ)、EC3.4.21.26(例えば、プロリルオリゴペプチダーゼ)、EC3.4.21.4(例えば、トリプシン)、EC3.4.21.5(例えば、トロンビン)、EC3.4.21.63(例えば、オリジン)、EC3.4.21.65(例えば、テルモミコリン)、EC3.4.21.80(例えば、ストレプトグリシンA)、EC3.4.22.X(例えば、システインエンドペプチダーゼ)、EC3.4.22.14(例えば、アクチニジン)、EC3.4.22.2(例えば、パパイン)、EC3.4.22.3(例えば、フィカイン)、EC3.4.22.32(例えば、ステムブロメライン)、EC3.4.22.33(例えば、フルーツブロメライン)、EC3.4.22.6(例えば、キモパパイン)、EC3.4.23.1(例えば、ペプシンA)、EC3.4.23.2(例えば、ペプシンB)、EC3.4.23.22(例えば、エンドチアペプシン)、EC3.4.23.23(例えば、ケカビペプシン)、EC3.4.23.3(例えば、ガストリシン)、EC3.4.24.X(例えば、メタロエンドペプチダーゼ)、EC3.4.24.39(例えば、デューテロリシン)、EC3.4.24.40(例えば、セラリシン)、EC3.5.1.1(例えば、アスパラギナーゼ)、EC3.5.1.11(例えば、ペニシリンアミダーゼ)、EC3.5.1.14(例えば、N-アシル-脂肪族-L-アミノ酸アミドヒドロラーゼ)、EC3.5.1.2(例えば、L-グルタミンアミドヒドロラーゼ)、EC3.5.1.28(例えば、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ)、EC3.5.1.4(例えば、アミダーゼ)、EC3.5.1.44(例えば、プロテイン-L-グルタミンアミドヒドロラーゼ)、EC3.5.1.5(例えば、ウレアーゼ)、EC3.5.1.52(例えば、ペプチド-N(4)-(N-アセチル-β-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼ)、EC3.5.1.81(例えば、N-アシル-D-アミノ酸デアシラーゼ)、EC3.5.4.6(例えば、AMPデアミナーゼ)及びEC3.5.5.1(例えば、ニトリラーゼ)から選択されるEC3(ヒドロラーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないヒドロラーゼ酵素である。
他の実施形態では、POIは、EC4.1.2.10(例えば、マンデロニトリルリアーゼ)、EC4.1.3.3(例えば、N-アセチルノイラミン酸リアーゼ)、EC4.2.1.1(例えば、炭酸脱水酵素)、EC4.2.2.-(例えば、ラムノガラクツロナンリアーゼ)、EC4.2.2.10(例えば、ペクチンリアーゼ)、EC4.2.2.22(例えば、ペクチン酸三糖リアーゼ)、EC4.2.2.23(例えば、ラムノガラクツロナンエンドリアーゼ)及びEC4.2.2.3(例えば、マンヌロン酸特異的アルギン酸リアーゼ)から選択されるEC4(リアーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないリアーゼ酵素である。
特定の他の実施形態では、POIは、EC5.1.3.3(例えば、アルドース1-エピメラーゼ)、EC5.1.3.30(例えば、D-プシコース3-エピメラーゼ)、EC5.4.99.11(例えば、イソマルツロースシンターゼ)及びEC5.4.99.15(例えば、(1 4)-α-D-グルカン1-α-D-グルコシルムターゼ)から選択されるEC5(イソメラーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないイソメラーゼ酵素である。
さらに他の実施形態では、POIは、EC6.2.1.12(例えば、4-クマリン酸塩:補酵素Aリガーゼ)及びEC6.3.2.28(例えば、L-アミノ酸α-リガーゼ)から選択されるEC6(リガーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないリガーゼ酵素である。
タンパク質の産生の最適条件は、宿主細胞の選択及び発現されるタンパク質の選択によって変化する。そのような条件は、ルーチンの実験及び/又は最適化によって、当業者には容易に確かめ得る。
目的タンパク質は、発現後に精製又は単離することができる。目的タンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかによって、当業者に知られた様々な方法で単離又は精製し得る。標準的な精製方法としては、電気泳動手法、分子的手法、免疫学的手法、クロマトグラフィー手法、例えば、イオン交換、疎水性、親和性、及び逆相HPLCクロマトグラフィー、並びにクロマトフォーカシングが挙げられる。例えば、目的タンパク質は、標準的な抗目的タンパク質抗体カラムを用いて精製し得る。タンパク質濃度と関連して、限外ろ過及びダイアフィルトレーション手法もまた有用である。必要な精製の程度は、目的タンパク質の使用目的により異なる。場合によっては、タンパク質の精製は不要である。
特定の他の実施形態では、本開示の遺伝子改変真菌細胞が目的タンパク質のレベルの増加をもたらすことを確認するために、様々なスクリーニング方法を実施することができる。発現ベクターは、検出可能な標識として機能する標的タンパク質へのポリペプチド融合物をコードし得る、又は標的タンパク質自体が選択可能な若しくはスクリーニング可能なマーカーとして機能し得る。標識タンパク質は、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング(Cold Spring Harbor Protocolsウェブサイトで入手可能な方法)、ELISA、又は標識がGFPである場合、全細胞蛍光法若しくはFACSによって検出し得る。例えば、6-ヒスチジンタグは標的タンパク質への融合体として含まれ、そしてこのタグはウェスタンブロッティングによって検出される。標的タンパク質が十分に高いレベルで発現する場合、クマシー/銀染色と組み合わされたSDS-PAGEを、バリアント宿主細胞において親(対照)細胞を越える発現の増加を検出するために実施することができ、この場合は標識を必要としない。さらに、細胞1個あたりのタンパク質の活性又は量、培地1ミリリットルあたりのタンパク質の活性又は量の増加を検出するなどの他の方法を使用して、目的タンパク質の改善されたレベルを確認することができ、これにより、又はこれらの方法の組み合わせにより、より長時間、培養又は発酵を効率的に継続することが可能になる。
比生産性の検出は、タンパク質の産生を評価する別の方法である。比生産性(Qp)は、次式により求めることができる:
Qp=gP/gDCW・hr
(式中、「gP」はタンク内で生成されたタンパク質のグラム数であり、「gDCW」はタンク内の乾燥細胞重量(DCW)のグラム数であり、「hr」は、生成時間及び増殖時間を含む接種時点からの発酵時間(時間)である)。
VI.発酵
特定の実施形態では、本開示は、改変真菌細胞の発酵を含む、目的タンパク質を産生する方法(ここで、バリアント真菌細胞は、目的タンパク質を分泌する)を提供する。一般に、当該技術分野でよく知られた発酵方法が、バリアント真菌細胞を発酵させるために使用される。いくつかの実施形態では、真菌細胞は、バッチ又は連続発酵条件下で増殖させる。古典的なバッチ発酵は、クローズドシステムであり、培地の組成は発酵の開始時に設定され、発酵中に変更されない。発酵の開始時に、培地に所望の生物を接種する。この方法では、系にいかなる成分も添加することなく醗酵を行わせる。一般に、バッチ発酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、pH及び酸素濃度などの因子を制御することは頻繁に行われる。バッチ系の代謝物及びバイオマス組成物は、発酵が停止される時点まで絶えず変化する。バッチ培養内で、細胞は静的誘導期を経て高増殖対数期に進み、最終的に増殖速度が低下又は停止する静止期に進む。未処理のまま放置すると、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期の細胞は、生成物の大部分の産生を担っている。
標準バッチ系に対する好適な変形形態は、「フェドバッチ発酵」系である。一般的なバッチ系のこの変形形態では、発酵の進行に伴い基質が徐々に加えられる。フェドバッチ系は、カタボライト抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、及び培地中の基質量が限られた量であることが望ましい場合に有用である。フェドバッチ系では、実際の基質濃度の測定は困難であり、したがって、pH、溶存酸素、及びCO2などの廃ガスの分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ発酵及びフェドバッチ発酵は、当該技術分野において一般的であり、よく知られている。
連続発酵は、規定の発酵培地をバイオリアクターに連続的に添加し、処理のために等量の馴化培地を同時に除去するオープンシステムである。連続発酵は、一般に、培養物を一定の高密度に維持し、細胞は主として対数増殖期にある。連続発酵は、細胞の増殖及び/又は産生物の濃度に影響する1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、一実施形態では、炭素源又は窒素源などの制限栄養素は一定比率で維持され、他の全てのパラメーターは調節することができる。他の系では、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼす多数の因子は連続的に変化させることができる。連続系は、定常状態の増殖条件を維持しようとする。したがって、培地を取り出すことによる細胞損失は、発酵中の細胞増殖速度に対して平衡が保たれなければならない。連続発酵プロセスで栄養素及び増殖因子を調節する方法、並びに産生物形成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の技術分野においてはよく知られている。
本開示の特定の実施形態は、真菌を培養するための発酵手順に関する。セルラーゼ酵素の産生のための発酵手順は、当該技術分野で知られている。例えば、セルラーゼ酵素は、バッチ、フェドバッチ及び連続フロープロセスなどの、固体又は浸漬培養によって産生することができる。培養は一般に、水性無機塩培地、有機増殖因子、炭素及びエネルギー源物質、分子状酸素、及び、当然に、使用される糸状菌宿主の出発接種材料を含む増殖培地中で行われる。
適切な微生物増殖を確実にし、微生物変換プロセスで細胞による炭素及びエネルギー源の吸収を最大にし、発酵培地において最大細胞密度で最大細胞収率を達成するには、炭素及びエネルギー源、酸素、吸収可能な窒素、並びに微生物接種材料に加えて、好適な量の無機栄養素を適切な割合で供給する必要がある。
水性無機培地の組成は、当該技術分野で知られているように、使用する微生物及び基質に部分的に依存して、広範囲にわたって変えることができる。無機培地には、窒素に加えて、好適な量のリン、マグネシウム、カルシウム、カリウム、硫黄、及びナトリウムが、好適な可溶性の吸収可能なイオン性の複合形態で含まれ、また、好ましくは、銅、マンガン、モリブデン、亜鉛、鉄、ホウ素、及びヨウ素などのいくつかの微量元素も、これもまた好適な可溶性の吸収可能な形態で含まれるが、これらは全て当該技術分野で知られていることである。
発酵反応は、微生物種が盛んに増殖するのを助けるのに有効な好適な酸素分圧で、発酵槽の内容物を維持するために提供される、空気、酸素富化空気、又は実質的に純粋な分子状酸素などの分子状酸素含有ガスによって必要な分子状酸素が供給される好気的プロセスである。
発酵温度はいくらか変えることができるが、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などの糸状菌の場合、温度は一般に約20℃~40℃の範囲内、一般に好ましくは約25℃~34℃の範囲内である。
微生物はまた、吸収可能な窒素源を必要とする。吸収可能な窒素源は、任意の窒素含有化合物、又は微生物による代謝利用に好適な形態で窒素を放出することができる任意の化合物であり得る。タンパク質加水分解物などの、様々な有機窒素源化合物を使用することができるが、通常、アンモニア、水酸化アンモニウム、尿素などの安価な窒素含有化合物、及びリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は他の様々なアンモニウム化合物などの各種アンモニウム塩を利用することができる。アンモニアガス自体は、大規模な操作に便利であり、好適な量で水性発酵物(発酵培地)をバブリングして使用することができる。同時に、そのようなアンモニアは、pH制御を助けるために用いることもできる。
水性微生物発酵物(発酵混合物)のpH範囲は、約2.0~8.0の例示的な範囲であるべきである。糸状菌では、pHは、通常、約2.5~8.0の範囲であり、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)では、pHは、通常、約3.0~7.0の範囲である。微生物の好ましいpH範囲は、使用する培地及び特定の微生物にある程度まで依存し、したがって、当業者ならば容易に決定できることであるが、培地の変化と共にいくらか変化する。
制限因子として炭素含有基質を制御することができるようなやり方で醗酵を行うことが好ましく、それによって炭素含有基質の細胞への良好な転換が提供され、相当量の未転換基質による細胞の汚染が回避される。後者は、水溶性基質では、微量の残存物は容易に洗い流せるので、問題にならない。しかしながら、非水溶性基質の場合には問題となる可能性があり、好適な洗浄工程などの追加の生成物処理工程が必要になる。
上記のように、このレベルに到達する時間は重要ではなく、特定の微生物及び実施する発酵プロセスによって変化し得る。しかしながら、発酵培地中の炭素源濃度の決定方法、及び所望の炭素源レベルが達成されているか否かの決定方法は、当該技術分野ではよく知られている。
発酵はバッチ又は連続操作として行うことができ、フェドバッチ操作は、制御の容易さ、均一な量の生成物の生産、及び全ての装置の最も経済的な使用という点で非常に好ましい。
必要ならば、水性無機培地を発酵槽に供給する前に、炭素及びエネルギー源物質の一部又は全部及び/又はアンモニアなどの吸収可能な窒素源の一部を水性無機培地に加えることができる。
反応器に導入される流れの各々は、所定の速度に制御するか、炭素及びエネルギー基質の濃度、pH、溶存酸素、発酵槽排ガス中の酸素又は二酸化炭素、乾燥細胞重量により測定可能な細胞密度、透光度などの、モニタリングによって決定可能な必要性に応じて制御することが好ましい。炭素及びエネルギー源の効率的な利用と一致して、可能な限り迅速な細胞増殖速度を得、基質の供給に対して可能な限り高い微生物細胞の収率を得るために、各種材料の供給速度は変化させることができる。
バッチ又は好ましいフェドバッチ操作においては、全ての装置、反応器、又は発酵手段、槽又は容器、配管、付随する循環又は冷却装置などは、最初に、通常、蒸気を使用して、例えば、約121℃で少なくとも約15分間、滅菌する。次いで、酸素を含む必要な栄養素の全て、及び炭素含有基質を存在下で、滅菌した反応器に選択された微生物の培養物を接種する。使用する発酵槽の種類は重要ではない。
発酵ブロスからの酵素(例えば、セルラーゼ)の回収及び精製もまた、当業者に知られた手順によって行うことができる。発酵ブロスは、一般に、細胞残屑、例えば、細胞、種々の懸濁固体及び他のバイオマス混入物質、並びに所望のセルラーゼ酵素産物を含み、これらは、当該技術分野で知られた手段によって発酵ブロスから除去することが好ましい。
そのような除去に好適なプロセスとしては、無細胞ろ液を生成するための、例えば、遠心分離、ろ過、透析、精密ろ過、回転真空ろ過、又は他の知られたプロセスなどの従来の固液分離手法が挙げられる。結晶化の前に、限外ろ過、蒸発又は沈殿などの手法を使用して、発酵ブロス、又は細胞を含まないろ液をさらに濃縮することが好ましい。
上清又はろ液のタンパク質成分の沈澱が、塩、例えば硫酸アンモニウムによって行われ、続いて、各種のクロマトグラフィー法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、又は類似の分野で認められている方法によって精製が行われ得る。
VII.例示的な実施形態
特定の例示的な実施形態には、以下が含まれる。
1.バリアントAce3転写因子(TF)タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ、配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変を含む、ポリヌクレオチド。
2.バリアントAce3 TFは、配列番号29に対して少なくとも95%の配列同一性を含む機能的N末端亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメインを含む、実施形態1のポリヌクレオチド。
3.配列番号2の673~689の位置から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、又はこれらの組み合わせである、実施形態1のポリヌクレオチド。
4.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の7個のC末端アミノ酸位置683~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
5.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の8個のC末端アミノ酸位置682~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
6.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の9個のC末端アミノ酸位置681~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
7.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の10個のC末端アミノ酸位置680~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
8.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の11個のC末端アミノ酸位置679~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
9.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の12個のC末端アミノ酸位置678~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
10.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の13個のC末端アミノ酸位置677~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
11.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の14個のC末端アミノ酸位置676~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
12.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の15個のC末端アミノ酸位置675~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
13.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の16個のC末端アミノ酸位置674~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
14.1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、少なくとも配列番号2の最後の17個のC末端アミノ酸位置673~689の欠失を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
15.バリアントAce3 TFは、配列番号9~配列番号18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
16.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失である、実施形態3のポリヌクレオチド。
17.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~674位、配列番号2の674~675位、配列番号2の675~676位、配列番号2の676~677位、配列番号2の677~678位、配列番号2の678~679位、配列番号2の679~680位、配列番号2の680~681位、配列番号2の681~682位、配列番号2の682~683位、及び配列番号2の683~684位から選択される2つの連続するアミノ酸残基の欠失である、実施形態3のポリヌクレオチド。
18.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~675位、配列番号2の674~676位、配列番号2の675~677位、配列番号2の676~678位、配列番号2の677~679位、配列番号2の678~680位、配列番号2の679~681位、配列番号2の680~682位、配列番号2の681~683位、配列番号2の682~684位、及び配列番号2の683~685位から選択される3つの連続するアミノ酸残基の欠失である、実施形態3のポリヌクレオチド。
19.バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置672~683から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の置換を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
20.バリアントAce3 TFは、少なくとも配列番号2の最後の7個のC末端アミノ酸位置683~689の欠失さらに含む、実施形態19のポリヌクレオチド。
21.バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置673~683から選択されるC末端アミノ酸位置に1つ又は複数のアミノ酸残基の挿入を含む、実施形態3のポリヌクレオチド。
22.バリアントAce3転写因子(TF)タンパク質をコードする変異ace3遺伝子を含む単離されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌変異細胞であって、バリアントAce3 TFタンパク質は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ、配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異したC末端アミノ酸残基を含む変異細胞。
23.変異細胞がリグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で発酵される場合、バリアントAce3 TFタンパク質は、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、実施形態22の変異細胞。
24.リグノセルロース分解酵素が、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼからなる群から選択される、実施形態23の変異細胞。
25.バリアントAce3 TFタンパク質は、配列番号29に対して少なくとも95%の配列同一性を含む機能的N末端亜鉛二核クラスターDNA結合ドメインを含む、実施形態22の変異細胞。
26.目的タンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含み、導入されたカセットは、POIをコードする下流(3’)オープンリーディングフレーム(ORF)配列に作動可能に連結されたリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列を含む、実施形態22の変異細胞。
27.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態22の変異細胞。
28.変異細胞は、POIの産生に好適な条件下で発酵させた場合、誘導基質の非存在下でPOIを産生することができる、実施形態26に記載の変異細胞。
29.実施形態22~28のいずれか一つの変異菌株によって産生される目的タンパク質(POI)。
30.配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を含むAce3転写因子(TF)タンパク質をコードするace3遺伝子を含む、親トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に由来する遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞であって、遺伝子改変細胞は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3TFタンパク質をコードし、且つ、配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変を含む改変ace3遺伝子を含む改変細胞。
31.Ace3 TFタンパク質は、配列番号29に対して少なくとも95%の配列同一性を含む機能的N末端亜鉛二核クラスターDNA結合ドメインを含む、実施形態30の改変細胞。
32.リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で発酵させた場合、バリアントAce3 TFタンパク質は、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、実施形態30の改変細胞。
33.リグノセルロース分解酵素は、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼからなる群から選択される、実施形態32の改変細胞。
34.目的タンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含み、導入されたカセットは、POIをコードする下流(3’)オープンリーディングフレーム(ORF)配列に作動可能に連結されたリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列を含む、実施形態30の改変細胞。
35.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態30の改変細胞。
36.改変細胞は、POIの産生に好適な条件下で発酵させた場合、誘導基質の非存在下でPOIを産生する、実施形態34の改変細胞。
37.改変細胞は、誘導基質の存在下、POIを産生するための同じ条件下で発酵させた場合、親細胞によって産生される同じPOIの量と比較して、誘導基質の存在下で増加した量のPOIを産生する、実施形態34の改変細胞。
38.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の7個のC末端アミノ酸位置683~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
39.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の8個のC末端アミノ酸位置682~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
40.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の9個のC末端アミノ酸位置681~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
41.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の10個のC末端アミノ酸位置680~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
42.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の11個のC末端アミノ酸位置679~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
43.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の12個のC末端アミノ酸位置678~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
44.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の13個のC末端アミノ酸位置677~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
45.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の14個のC末端アミノ酸位置676~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
46.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の15個のC末端アミノ酸位置675~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
47.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の16個のC末端アミノ酸位置674~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
48.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の17個のC末端アミノ酸位置673~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
49.バリアントAce3 TFは、配列番号9~配列番号18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態35の改変細胞。
50.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失である、実施形態35の改変細胞。
51.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~674位、配列番号2の674~675位、配列番号2の675~676位、配列番号2の676~677位、配列番号2の677~678位、配列番号2の678~679位、配列番号2の679~680位、配列番号2の680~681位、配列番号2の681~682位、配列番号2の682~683位、及び配列番号2の683~684位から選択される2つの連続するアミノ酸残基の欠失である、実施形態35の改変細胞。
52.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~675位、配列番号2の674~676位、配列番号2の675~677位、配列番号2の676~678位、配列番号2の677~679位、配列番号2の678~680位、配列番号2の679~681位、配列番号2の680~682位、配列番号2の681~683位、配列番号2の682~684位、及び配列番号2の683~685位から選択される3つの連続するアミノ酸残基の欠失である、実施形態35の改変細胞。
53.バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置672~683から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の置換を含む、実施形態35の改変細胞。
54.バリアントAce3 TFは、少なくとも配列番号2の最後の7個のC末端アミノ酸位置683~689の欠失をさらに含む、実施形態53の改変細胞。
55.バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置673~683から選択されるC末端アミノ酸位置に1つ又は複数のアミノ酸残基の挿入を含む、実施形態35の改変細胞。
56.誘導基質は、ラクトース、ソホロース、ゲンチビオース及びセルロースから選択される、実施形態32、36及び37のいずれか一つの改変細胞。
57.実施形態32の改変細胞によって産生されるリグノセルロース分解酵素。
58.実施形態34の改変細胞により産生される目的タンパク質(POI)。
59.配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3転写因子(TF)タンパク質をコードする変異ace3遺伝子を含む、親トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に由来する遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞であって、配列番号4のN末端は、配列番号29に記載のインタクトな亜鉛二核(Zn2Cys6)DNA結合を含まず、遺伝子改変細胞は、配列番号2の1~672位に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードする改変ace3遺伝子を含み、配列番号2のN末端は、配列番号29に記載のインタクトな亜鉛二核(Zn2Cys6)DNA結合を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変を含む改変細胞。
60.リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で発酵させた場合、バリアントAce3 TFタンパク質は、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、実施形態59の改変細胞。
61.バリアントAce3 TFタンパク質は、改変細胞及び親細胞がリグノセルロース分解酵素の産生のための同じ条件下で発酵される場合、改変細胞が同じ誘導基質の存在下で親細胞によって産生される同じリグノセルロース分解酵素の量と比較して増加した量のリグノセルロース分解酵素を産生するように、誘導基質の存在下でリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、実施形態59の改変細胞。
62.目的タンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含み、導入されたカセットは、POIをコードする下流(3’)オープンリーディングフレーム(ORF)配列に作動可能に連結されたリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列を含む、実施形態59の改変細胞。
63.改変細胞は、POIの産生に好適な条件下で発酵させた場合、誘導基質の非存在下でPOIを産生する、実施形態62の改変細胞。
64.改変細胞及び親細胞を誘導基質の存在下、POIの産生のための同じ条件下で発酵させた場合、同じPOIをコードする同じ導入された発現カセットを含む親細胞と比較して、改変細胞は、誘導基質の存在下で増加した量のPOIを産生する、実施形態62の改変細胞。
65.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態59の改変細胞。
66.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の7個のC末端アミノ酸位置683~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
67.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の8個のC末端アミノ酸位置682~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
68.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の9個のC末端アミノ酸位置681~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
69.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の10個のC末端アミノ酸位置680~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
70.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の11個のC末端アミノ酸位置679~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
71.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の12個のC末端アミノ酸位置678~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
72.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の13個のC末端アミノ酸位置677~689の欠失を含む、実施形態35の改変細胞。
73.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の14個のC末端アミノ酸位置676~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
74.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の15個のC末端アミノ酸位置675~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
75.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の16個のC末端アミノ酸位置674~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
76.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異C末端アミノ酸残基は、少なくとも配列番号2の最後の17個のC末端アミノ酸位置673~689の欠失を含む、実施形態59の改変細胞。
77.バリアントAce3 TFは、配列番号9~配列番号18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態59の改変細胞。
78.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失である、実施形態59の改変細胞。
79.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~674位、配列番号2の674~675位、配列番号2の675~676位、配列番号2の676~677位、配列番号2の677~678位、配列番号2の678~679位、配列番号2の679~680位、配列番号2の680~681位、配列番号2の681~682位、配列番号2の682~683位、及び配列番号2の683~684位から選択される2つの連続するアミノ酸残基の欠失である、実施形態59の改変細胞。
80.配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の遺伝子改変は、配列番号2の673~675位、配列番号2の674~676位、配列番号2の675~677位、配列番号2の676~678位、配列番号2の677~679位、配列番号2の678~680位、配列番号2の679~681位、配列番号2の680~682位、配列番号2の681~683位、配列番号2の682~684位、及び配列番号2の683~685位から選択される3つの連続するアミノ酸残基の欠失である、実施形態59の改変細胞。
81.バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置672~683から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸残基の置換を含む、実施形態59の改変細胞。
82.バリアントAce3 TFは、少なくとも配列番号2の最後の7個のC末端アミノ酸位置683~689の欠失をさらに含む、実施形態81の改変細胞。
83.バリアントAce3 TFは、配列番号2のアミノ酸位置673~683から選択されるC末端アミノ酸位置に1つ又は複数のアミノ酸残基の挿入を含む、実施形態59の改変細胞。
84.誘導基質は、ラクトース、ソホロース、ゲンチビオース及びセルロースから選択される、請求項61、64又は65のいずれか一項に記載の改変細胞。
85.実施形態61の改変細胞によって産生されるリグノセルロース分解酵素。
86.実施形態63の改変細胞により産生される目的タンパク質(POI)。
87.誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現を誘導するバリアントAce3 TFタンパク質のスクリーニング方法であって、(a)配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸位置に改変アミノ酸残基を含む複数のバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリーを構築する工程、(b)工程(a)のDNAライブラリーからのDNA配列で複数のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を形質転換する工程、並びに(c)複数の形質転換されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を、誘導基質の非存在下、リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で培養及びスクリーニングする工程を含み、リグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子を発現するスクリーニングされたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素遺伝子の発現を誘導するバリアントAce3 TFタンパク質をコードするその中のDNAライブラリー配列を同定する、方法。
88.誘導基質の非存在下でリグノセルロース分解酵素の発現を誘導するバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリー配列を含む形質転換トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を単離する工程をさらに含む、実施形態87の方法。
89.バリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNA配列を単離する工程をさらに含む、実施形態88の方法。
90.誘導基質の存在下でのリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子の発現を、同じ誘導基質の存在下での配列番号2の野生型C末端を有するAce3 TFタンパク質によって調節される同じリグノセルロース分解酵素をコードする同じ遺伝子の発現と比較してアップレギュレートするバリアントAce3 TFタンパク質をスクリーニングする方法であって、(a)配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸位置に改変アミノ酸残基を含む複数のバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリーを構築する工程、(b)工程(a)のDNAライブラリーからのDNA配列で複数のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を形質転換する工程、並びに(c)複数の形質転換されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を、誘導基質の存在下、リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で培養及びスクリーニングする工程を含み、配列番号2の野生型C末端を有するAce3 TFタンパク質をコードする遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)菌対照細胞によって産生される同じリグノセルロース分解酵素の量と比較して、増加した量のリグノセルロース分解酵素を産生するスクリーニングされたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、誘導基質の存在下でリグノセルロース分解酵素遺伝子の発現をアップレギュレートするバリアントAce3 TFタンパク質をコードするその中のDNAライブラリー配列を同定する、方法。
91.誘導基質の存在下でリグノセルロース分解酵素の発現をアップレギュレートするバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリー配列を含む形質転換トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を単離する工程をさらに含む、実施形態90の方法。
92.バリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNA配列を単離する工程をさらに含む、実施形態91の方法。
93.誘導基質の非存在下でレポータータンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導するバリアントAce3 TFタンパク質をスクリーニングする方法であって、(a)配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸位置に改変アミノ酸残基を含む複数のバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリーを構築する工程、(b)工程(a)のDNAライブラリーからのDNA配列で複数のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を形質転換する工程であって、形質転換されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、レポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)に作動可能に連結された上流(5’)セルラーゼプロモーターを含む導入された発現カセットを含む工程、並びに(c)誘導基質の非存在下でレポータータンパク質をコードするORFの発現について複数の形質転換されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を培養及びスクリーニングする工程であって、レポータータンパク質をコードするORFを発現するスクリーニングされたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、誘導基質の非存在下でレポータータンパク質をコードするORFの発現を誘導するバリアントAce3 TFタンパク質をコードするその中のDNAライブラリー配列を同定する工程、を含む方法。
94.誘導基質の非存在下でレポータータンパク質をコードするORFの発現を誘導するバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリー配列を含む形質転換トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を単離する工程をさらに含む、実施形態93の方法。
95.バリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNA配列を単離する工程をさらに含む、実施形態93の方法。
96.誘導基質の存在下でレポータータンパク質をコードする遺伝子の発現を、同じ誘導基質の存在下での配列番号2の野生型C末端を有するAce3 TFタンパク質によって調節される同じレポータータンパク質をコードする同じ遺伝子の発現と比較してアップレギュレートするバリアントAce3 TFタンパク質をスクリーニングする方法であって、(a)配列番号2の673~683位から選択される1つ又は複数のC末端アミノ酸位置に改変アミノ酸残基を含む複数のバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリーを構築する工程、(b)工程(a)のDNAライブラリーからのDNA配列で複数のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を形質転換する工程であって、形質転換されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、レポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)に作動可能に連結された上流(5’)セルラーゼプロモーターを含む導入された発現カセットを含み、且つ任意選択により、トリコデルマ属(Trichoderma)菌において作動可能な下流(3’)ターミネーター配列を含む工程、並びに(c)誘導基質の存在下でレポータータンパク質をコードするORFの発現について複数の形質転換されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を培養及びスクリーニングする工程を含み、配列番号2の野生型C末端を有するAce3 TFタンパク質をコードする遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)菌対照細胞によって産生される同じレポータータンパク質の量と比較して、増加した量のレポータータンパク質を産生し、且つ工程(b)の発現カセットを含むスクリーニングされたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞は、誘導基質の存在下でレポータータンパク質をコードするORFの発現をアップレギュレートするバリアントAce3 TFタンパク質をコードするその中のDNAライブラリー配列を同定する、方法。
97.誘導基質の存在下でレポータータンパク質をコードするORFの発現をアップレギュレートするバリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNAライブラリー配列を含む形質転換トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を単離する工程をさらに含む、実施形態96の方法。
98.バリアントAce3 TFタンパク質をコードするDNA配列を単離する工程をさらに含む、実施形態97の方法。
99.リグノセルロース分解酵素は、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼからなる群から選択される、実施形態87又は実施形態90の方法。
100.セルラーゼプロモーターは、セロビオヒドロラーゼプロモーター配列、エンドグルカナーゼプロモーター配列、β-グルコシダーゼプロモーター配列及びキシラナーゼプロモーター配列からなる群から選択される、実施形態93又は実施形態96の方法。
101.誘導基質は、ラクトース、ソホロース、ゲンチビオース及びセルロースから選択される、実施形態87、90、93及び96のいずれか一つの方法。
102.誘導基質の非存在下、トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞中で、リグノセルロース分解酵素を産生する方法であって、(a)バリアントAce3転写因子(TF)タンパク質をコードする変異ace3遺伝子を含むT.リーゼイ(T.reesei)変異細胞を単離する工程であって、バリアントAce3 TFタンパク質は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異したC末端アミノ酸残基を含む工程、及び(b)リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で単離された変異体細胞を発酵させる工程であって、好適な発酵条件は誘導基質を含まない工程、を含む方法。
104.リグノセルロース分解酵素は、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼからなる群から選択される、実施形態103の方法。
105.誘導基質の非存在下、遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞中で、リグノセルロース分解酵素を産生する方法であって、(a)配列番号2のアミノ酸位置1~689に対して少なくとも90%の配列同一性を含む野生型Ace3転写因子(TF)タンパク質をコードするace3遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞を得る工程、
(b)工程(a)のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞のace3遺伝子を遺伝子改変する工程であって、改変されたace3遺伝子は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異したC末端アミノ酸残基を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードする工程、及び(c)リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で工程(b)の改変されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を発酵させる工程を含み、好適な発酵条件は誘導基質を含まない、方法。
106.野生型Ace3 TFタンパク質のC末端は、配列番号2のアミノ酸位置673~689に対して少なくとも95%の配列同一性を含む、実施形態105の方法。
107.誘導基質の非存在下、遺伝子改変トリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞中で、リグノセルロース分解酵素を産生する方法であって、(a)配列番号4のAce3-S TFタンパク質と少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードするace3遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞を得る工程、(b)工程(a)のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞のace3遺伝子を遺伝子改変する工程であって、改変されたace3遺伝子は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異したC末端アミノ酸残基を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードする工程、及び(c)リグノセルロース分解酵素の産生に好適な条件下で工程(b)の改変されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を発酵させる工程を含み、好適な発酵条件は誘導基質を含まない、方法。
108.配列番号4のAce3-S TFタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3TFタンパク質は、配列番号29に記載のインタクトな亜鉛二核(Zn2Cys6)DNA結合を含まない、実施形態107の方法。
109.配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードする遺伝子改変ace3遺伝子は、配列番号29に記載のインタクトな亜鉛二核(Zn2Cys6)DNA結合を含む、実施形態107の方法。
110.誘導基質の非存在下、改変されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞中で、目的タンパク質(POI)を産生する方法であって、(a)配列番号2のアミノ酸位置1~689に対して少なくとも90%の配列同一性を含む野生型Ace3転写因子(TF)タンパク質をコードするace3遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞を得る工程、(b)工程(a)のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞のace3遺伝子を遺伝子改変する工程であって、改変されたace3遺伝子は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異したC末端アミノ酸残基を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードする、工程、(c)POIをコードする発現カセットを、工程(b)の改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に導入する工程であって、発現カセットは、POIをコードする下流(3’)オープンリーディングフレーム(ORF)配列に作動可能に連結されたリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列を含む、工程、及び(d)工程(c)の改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を、POIの産生に好適な条件下で発酵させる工程を含み、好適な発酵条件は誘導基質を含まない、方法。
111.工程(b)及び(c)は、同時に又はいずれの順序でも実施される、実施形態110の方法。
112.誘導基質の非存在下、改変されたトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞中で、目的タンパク質(POI)を産生する方法であって、(a)配列番号4のAce3-S TFタンパク質と少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードするace3遺伝子を含むトリコデルマ属(Trichoderma)真菌細胞を得る工程、(b)工程(a)のトリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞のace3遺伝子を遺伝子改変する工程であって、改変されたace3遺伝子は、配列番号2のアミノ酸位置1~672に対して少なくとも90%の配列同一性を含み、且つ配列番号2の673~689位から選択される1つ又は複数の変異したC末端アミノ酸残基を含むバリアントAce3 TFタンパク質をコードする、工程、(c)POIをコードする発現カセットを、工程(b)の改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞に導入する工程であって、発現カセットは、POIをコードする下流(3’)オープンリーディングフレーム(ORF)配列に作動可能に連結されたリグノセルロース分解酵素をコードする遺伝子に由来する上流(5’)プロモーター配列を含む、工程、及び(d)工程(c)の改変トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞を、POIの産生に好適な条件下で発酵させる工程を含み、好適な発酵条件は誘導基質を含まない、方法。
113.工程(b)及び(c)は、同時に又はいずれの順序でも実施される、実施形態110の方法。
以下の実施例は本開示の実施形態を示しているが、それらは例示としてのみ与えられていることを理解されたい。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は種々の使用及び条件に適合させるために、本開示の種々の変更及び修正を行うことができる。このような修正もまた、特許請求の範囲に記載された発明の範囲に含まれるものとする。
実施例1
C末端のトランケーションを含むACE3-Lタンパク質
A.概説
Ace3は、誘導条件下(例えば、ラクトースの存在下)でセルラーゼ及びヘミセルラーゼ産生を調節するT.リーゼイ(T.reesei)転写因子である。同様に、「Ace3L」と名付けられたAce3転写因子の高機能形態が同定され、国際公開第2018/067599号パンフレットに記載されている。例えば、国際公開第2018/067599号パンフレットに記載されているように、Ace3L転写因子(例えば、配列番号6)を発現するT.リーゼイ(T.reesei)株は、インデューサー(例えば、ラクトース、ソホロース)の存在下でタンパク質産生の増強(増加)を示しただけでなく、インデューサーの非存在下でもタンパク質産生の有意な増加を示した。
Ace3転写因子は、そのC末端に2つの知られたバリアントを有する。例えば、T.リーゼイ(T.reesei)株QM6aにおけるace3遺伝子は、ace3遺伝子によってコードされる完全長(野生型)C末端を含むAce3-Sタンパク質(図1)をコードし、一方、RL-P37及びRUT-C30のT.リーゼイ(T.reesei)株における同じace3遺伝子は、コードされるタンパク質の11個のアミノ酸のトランケーションをもたらす早期終止コドンを含む(図1;配列番号6)。さらに、図1に示すように、Ace3Lタンパク質は、Ace3-Sタンパク質配列番号4)と比較して、N末端にインタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメイン(図3;配列番号6)を含む。4を参照)。Ace3-LC変異体は、早期終止コドンをグルタミンコドンに戻すことによって生成され、したがって、N末端にインタクトな亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメインを含み、C末端に完全長(野生型)配列を含む。
本明細書に記載され、例示されるように、Ace3タンパク質のトランケートされたC末端及びAce3タンパク質のインタクトなN末端亜鉛二核クラスター(Zn2Cys6)DNA結合ドメインはいずれも、インデューサーの非存在下及び存在下の両方でタンパク質産生を増加させる機能に必須の特徴である。本実施例においては、本出願人は、以下に記載するように、C末端アミノ酸残基を選択的にトランケートすることによって、Ace3タンパク質のC末端アミノ酸領域をさらに評価した。以下の実施例に示すT.リーゼイ(T.reesei)親細胞は、Sheir-Neiss and Montenecourt,1984により一般的に記述されているように、T.リーゼイ(T.reesei)pyr4遺伝子が欠失したT.リーゼイ(T.reesei)株RL-P37(NRRL寄託番号15709)に由来した。
B.発現ベクター及び菌株の構築
Ace3 C末端トランケーションを有する2セットの発現ベクターを構築した。第1のセットの6つのベクターは、5アミノ酸増分で0アミノ酸~25アミノ酸の範囲のC末端トランケーションを含む(表1;セット1を参照)。第2のセットの12個のベクターは、1アミノ酸増分で6アミノ酸~19アミノ酸の範囲のトランケーションを含む(表1;セット2を参照)。
これらの18個のAce3-LC_C-termバリアント発現ベクターを、標準的な分子生物学的手法を用いて構築した。これらのベクターは、T.リーゼイ(T.reesei)のグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座にace3発現カセットの標的組み込みを可能にするように設計された。それらは、標的組み込みに必要なT.リーゼイ(T.reesei)gla1遺伝子座の5’フランク及び3’フランクを有している。5’フランク配列は、scaffold_1:1489226-1490662に対応するDNA配列に相同な1.5Kbホモロジーボックスを含む。3’フランク配列は、scaffold_1:1492835-1494335に対応するDNA配列に相同な1.5Kbホモロジーボックスを含む。これらの配列は、gla1遺伝子(JGI protein ID Trire2_1885)を標的化し、5’フランクと3’フランクとの間のゲノムのヌクレオチド(scaffold_1:1490663-1492834)を介在カセット配列で置換するように設計された。発現ベクターはまた、天然ace3遺伝子ターミネーターを有するace3 ORFコード配列に作動可能に連結された異種T.リーゼイ(T.reesei)dic1プロモーター配列(scaffold_8:1376871-1378833、例えば、国際公開第2018/067599号パンフレットを参照)を含む。さらに、これらのベクターは、T.リーゼイ(T.reesei)形質転換体の選択のために、pyr4マーカーをその天然のプロモーター及びターミネーターと共に含む。gla1遺伝子座に組み込んだ後のpyr4遺伝子の切除を可能にするために、pyr4プロモーターのリピートが含まれた。ベクターはまた、E.コリ(E.coli)における複製及び選択のための細菌ColE1 ori及びAmpR遺伝子と共に、S.セレビシエ(S.cerevisiae)における複製及び選択のための酵母2μ ori及びura3遺伝子を含む。代表的なベクターマップを図2に示すが、それにはAce3-LCタンパク質(配列番号2;すなわち、完全長の野生型C末端を含む)をコードするORFを含むベクターpYL72が記載されている。他のベクター(例えば、pYL73、pYL74など)は、様々なC末端がトランケートされたAce3タンパク質をコードするORF配列を含む(表1)。
表1に示した発現ベクターをPmeIで消化して、標的組み込みのために断片を放出させ、アガロースゲル電気泳動で分離した。ゲル抽出キット(Qiagen)を用い、製造業者のプロトコルに従って、ゲルから正しい断片を単離した。gla1遺伝子内の23bp配列を標的とするCas9ヌクレアーゼ及び合成シングルガイドRNA(sgRNA)(配列番号:70)を、国際公開第2016/100568号パンフレットに一般的に記載されているように、製造業者(Synthego)のプロトコルに従ってインビトロで構築した。約10μgの精製断片及び構築したCas9-sgRNA複合体を使用して、T.リーゼイ(T.reesei)(RL-P37)株のpyr4-変異体のプロトプラストを形質転換した。形質転換は、ポリエチレングリコール(PEG)媒介プロトプラスト形質転換プロトコル(Ouedraogo et al.,2015;Penttila et al,1987)を用いて行った。
形質転換体をVogel最小培地寒天プレート上で増殖させ、pyr4マーカーによって獲得したウリジン原栄養性について選択した。増殖クローンを、表2に列挙したプライマーを用い、正確な組み込みについてPCRによりスクリーニングした。予想されたシグナルを与えるクローンを単細胞クローンに精製し、表2に列挙したプライマーを用いるPCRにより、正確な組み込み及びクローン純度について再スクリーニングした。PCR産物をサンガーシーケンス法により配列決定して、指定されたace3 C末端トランケーションバリアントの存在を確認した。精製され、配列が確認されたAce3 C末端トランケーションバリアントを表3に列挙する。
C.種々のace3形質転換体の培養
上記の親(LT338)及び形質転換された(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞(表3)を、「非誘導」(グルコース)及び「誘導」(グルコース/ソホロース又はラクトース)の両条件下で試験した。例えば、「非誘導」条件で、標準の24ウェルマイクロタイタープレート(MTP)中、2%グルコース(重量/体積)を補充した規定培地の1.25ml液体ブロス中で細胞を増殖させた。「誘導」条件では、24ウェルMTP中、2%ラクトース又は2%グルコース/ソホロース(重量/体積)を補充した規定培地の1.25ml液体ブロス(ここで、ラクトース又はソホロースはセルラーゼ酵素発現の強力なインデューサーとして働く)中で細胞を増殖させた。
MTP培養物を28℃、250rpm、85%湿度で5日間インキュベートした。インキュベーションに続いて、全培養物から上清を回収し、製造業者のプロトコルに従って、Bio-Rad試薬(Thermo Scientific(登録商標);カタログ番号23236)及び標準として牛血清アルブミン(BSA)の5倍希釈を使用し、595nmでBradford色素結合アッセイにより総分泌タンパク質を測定した。
D.10~15アミノ酸C末端トランケーションを有するAce3-LCバリアントは機能的である
図7に示すように、本出願人は、C末端に5、10、15、20及び25個のアミノ酸のトランケーションを有するAce3-LCバリアントを発現する第1のセットの菌株(表1;セット1及び表3)による総タンパク質産生を評価した(例えば、表1;セット1;表3及び図7を参照)。図7に示すように、親対照株RL-P37はラクトース上で(すなわち、誘導条件下で)のみ多量のタンパク質を産生することができ、グルコース上で(すなわち、非誘導条件下で)は、最小の基礎レベルのタンパク質を産生した。10アミノ酸トランケーション(配列番号12)、又は15アミノ酸トランケーション(配列番号16)を有するAce3-Lを発現する娘細胞は、ラクトース(誘導)及びグルコース(非誘導)の両条件下で、タンパク質産生の増加を示した。したがって、図7に示すように、増加の倍率変化は、ラクトースで親株(RL-P37)によって産生されるタンパク質レベルと比較して、グルコースで約1.8倍、ラクトースで約3倍である。
例えば、総タンパク質産生におけるこの改善は、国際公開第2018/067599号パンフレットに記載された11アミノ酸トランケーションを含むAce3-Lタンパク質(配列番号6)で観察されたタンパク質産生の改善と類似している。5個のアミノ酸のトランケーション(配列番号:7)は、ラクトースとグルコースの両方で親株と同様のタンパク質発現レベルを示した。0個のアミノ酸のトランケーション(すなわち、Ace3-LC;WT C末端;配列番号2)、20個のアミノ酸のトランケーション(配列番号:21)、又は25個のアミノ酸のトランケーション(配列番号22は、ラクトース上及びグルコース上の両方で、総タンパク質の産生が大きく減少した。これらの結果は、Ace3タンパク質のC末端のトランケーションがタンパク質産生をアップレギュレートする機能に必須であることを示している。同様に、図7に示すように。Ace3 C末端で許容されるアミノ酸トランケーションの数には上限及び下限がある。
E.7~17アミノ酸C末端トランケーションを有するAce3-LCバリアントは機能的である
許容されるAce3 C末端アミノ酸トランケーションの上限及び下限をさらに調べるために、本出願人は、5~20個のアミノ酸のC末端トランケーションを有するAce3-LCを含むT.リーゼイ(T.reesei)株を構築し、試験した(すなわち、1アミノ酸増分のトランケーションを用いる;例えば、表1、表3及び図8を参照)。例えば、5個又は6個のアミノ酸のトランケーション(図8)は、親株と同様の結果を示した(すなわち、グルコース上で基礎レベルのタンパク質産生、及びラクトース上で高レベルの産生)。対照的に、少なくとも7~17個のアミノ酸のトランケーションは、グルコース及びラクトースの両方で改善された産生を示し、これは、Ace3-Lタンパク質における11アミノ酸トランケーションによる以前の観察と同様である(図8)。さらに、18個以上のC末端アミノ酸のトランケーションは、ラクトース及びグルコースの両方で、タンパク質産生を基礎レベルまで有意に減少させた(図8)。
したがって、上記のように、(Ace3)C末端は、インデューサーの存在下及びインデューサーの非存在下の両方において、Ace3タンパク質の機能(すなわち、タンパク質産生の調節)に必須の役割を果たす。例えば、7~17個のアミノ酸のトランケーションを有するAce3-LCタンパク質を発現する菌株は、ラクトース(誘導)条件下の親株RL-P37と比較して、グルコース(非誘導)条件下の総タンパク質産生において約2倍の改善を示し、また、ラクトース(誘導)条件下の親株RL-P37と比較して、ラクトース(誘導)条件下の総タンパク質産生において約3倍の改善を示した。対照的に、野生型C末端、又は5、6、18若しくはそれ以上のアミノ酸のトランケーションを有するC末端を有するAce3-LCを発現する菌株は、グルコース(非誘導)条件下で最小量のタンパク質を産生し、また、ラクトース(誘導)条件下では、産生したタンパク質の量は、ラクトース(誘導)条件下の親株と比較して、同程度か又は減少した。したがって、本明細書で示すように、少なくとも7アミノ酸トランケーション(配列番号9)、最大で17アミノ酸トランケーション(配列番号:18)を有するAce3-LCタンパク質を含むT.リーゼイ(T.reesei)株は、(試験した他の株と比較して)増強されたタンパク質産生表現型を含み、増強されたタンパク質産生表現型は、インデューサーの存在下及びインデューサーの非存在下の両方で観察された。
実施例2
ACE3トランケーションの復帰
A.概説
工業的に重要なトリコデルマ属(Trichoderma)株のRut-C30及びRL-P37は、トリコデルマ属(Trichoderma)天然単離物QM6aの変異誘発誘導体であり(Le Crom et al.,2009;Sheir-Neiss and Montenecourt,1984)、NG14株が最後の共通祖先である。NG14とQM6Aとのゲノム比較により、原株QM6A(PMID:19805272)との間で126個の一塩基多型(SNP)及び22個の挿入及び欠失(indel)が確認された。
これらのうち、転写因子をコードする遺伝子の点変異は、その時点で利用可能な計算的に予測される遺伝子構造に基づいて11アミノ酸C末端トランケーションをもたらすと予測された。後に、この転写因子は、遺伝子のノックアウトの結果、誘導条件下(例えば、ラクトースの存在下;Hakkinen et al.,2014)でセルラーゼ及びヘミセルラーゼ産生の有意な喪失をもたらした後、Ace3と命名される。以前に、出願人は、11アミノ酸トランケーションが過剰に発現されると、それは、インデューサーの存在下及び非存在下の両方でのタンパク質産生の改善におけるAce3-L(Ace3の特定の変異体)の機能に必須であることを示した(例えば、国際公開第2018/067599号パンフレットを参照されたい)。
上記の実施例1に記載されるように、本出願人は、タンパク質産生の改善に必要なC末端(アミノ酸)トランケーションの正確な数(すなわち、7~17個のアミノ酸)を決定した。本実施例においては、本出願人は、ace3遺伝子座におけるC末端トランケーション点変異を、野生型N末端(図1A;配列番号2)及びグリシン(G)で終わる野生型C末端(図1B;配列番号2)を含む完全長Ace3タンパク質をコードするQM6aの「野生型」(C末端)配列に分子的に戻した。以下に記載するように、完全長Ace3転写因子(配列番号2)を発現する菌株は、蛋白質産生の減少を示した。
B.T.リーゼイ(T.reesei)宿主株
本実施例に記載されるT.リーゼイ(T.reesei)親株は、Sheir-Neiss and Montenecourt(1984)によって記載されるように、T.リーゼイ(T.reesei)株RL-P37(NRRL寄託番号15709)に由来した。本明細書で「T4abc pyr2」と名付けた菌株は、RL-P37の変異誘発誘導体であり、pyr2に菌株が成長のためにウリジンを必要とするような顕著な変異を有し、総タンパク質産生を増加させるnik1(M743T)変異を有する(例えば、米国特許公開第2018/0037919号明細書を参照)。
C.発現ベクター及び菌株の構築
当業者であれば、本明細書に開示した関連DNA部品からこのプラスミドを容易に再作製できるように、標準の分子生物学的手順を用いて、トリコデルマ属(Trichoderma)ace3復帰カセットプラスミド、pRATT346を調製した。このpRATT34プラスミドは、Scaffold 8、422475~424516(左フランク)に対応するDNA配列と相同である2.0Kbのホモロジーボックスを有するDNA配列を含んだ。この左フランク内のScaffold 8、424132に対応するヌクレオチドは、NG14及びT4abcを含む誘導体のゲノムにおけるようなチミン(T)とは対照的に、QM6aのゲノムにおけるようなシトシン(C)であった。また、このプラスミド内には、Scaffold 8、424588~426381(右フランク)に対応するDNA配列と相同な1.8Kbのホモロジーボックスを有するDNA配列も含まれた。これらの配列は、ace3遺伝子を標的とし、左フランクと右フランクとの間のゲノムの領域(Scaffold 8、424517~424587)を介在カセット配列で置換するために設計された。
これらの介在カセット配列は、形質転換すべき菌株のゲノム内の内因性T.リーゼイ(T.reesei)pyr2との相同性を最小限に抑えることが意図されたトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)由来のpyr2選択マーカーを含んだ。pyr2選択マーカーの直ぐ上流には、その後のマーカーの消失及び形質転換体/破壊株の有用なpyr2変異誘導体の単離を促進する、このマーカーの3’末端の直接繰返し重複(リピート)があった。正確に標的化された介在カセット配列を備える形質転換体のサブセットでは、左フランクのシトシン(C)ヌクレオチドもまた変異チミン(T)ヌクレオチド(Scaffold 8、424132)に代わってゲノム内に組み込まれるであろう。本明細書に記載したace3復帰対立遺伝子(完全長Ace3をコードする;配列番号2)は、Scaffold 8、424132でのヌクレオチドの復帰及びScaffold 8、424517~424587の間での繰返し隣接pyr2マーカーの挿入の両方を含有する。
したがって、菌株T4abc pyr2は、PEG媒介性形質転換法を使用して、pRATT346由来のace3復帰カセットを用いて形質転換させ、pyr2マーカーによって獲得されたウリジン原栄養性に基づいて候補について選択するために1.2Mのソルビトールを含有するフォーゲル最少培地(Vogel,1956)でプレーティングした。トリコデルマ(Trichoderma)形質転換法は、当該技術分野においてよく知られており、記載されている(例えば、米国特許第5,246,853号明細書を参照されたい)。個々の形質転換体を単離し、フォーゲル最少培地に移動させて増殖させた。PCR分析を使用し、下記のガイダンスによって当業者に知られた方法を使用して、ace3復帰カセットがace3遺伝子座で相同組換えによって組み込まれた形質転換体を同定した。
目的遺伝子の破壊を正確に標的化するには、組換え細胞のサブセットしか相同フランクを首尾よく利用することができないので、所望の事象を備える形質転換体を同定するためには、多数の形質転換体をスクリーニングする必要があり得る。PCRを使用すると、どの組換え細胞が所望の標的化破壊を有するかを試験することができる。ホモロジーボックス領域のそれぞれにわたって増幅するプライマーが設計されなければならないが、ここで、1つのプライマーは最も近い末端から100bp超の選択マーカー内の1つの場所でプライミングし、他方のプライマーは、隣接ゲノム配列内のホモロジーボックス領域の末端を100bp超える場所でプライミングする。正確な標的化破壊を含有する可能性が高い細胞は、破壊カセットの左フランクと右フランクに及ぶPCR産物を作製することに成功するであろうが、他方不成功に終わる形質転換事象は予想されるサイズの産物を生成しないであろう。この段階では、培養は形質転換細胞と未形質転換細胞の混合であるので、精製のステップが必要になる可能性がある。培養の精製は、破壊部位に渡る短いPCR産物の消失についてPCRによって試験することができる。
胞子の精製後、組み込みが正確に発生したこと、及び形質転換体が同核状態であることを確認するために、さらなるPCR分析を実施した。次に、組み込み事象中に左フランク内にこの突然変異が組み込まれたかどうかを決定するために、復帰変異に及ぶace3遺伝子の一部をPCR増幅させてシーケンシングした。ace3復帰カセットの確証された相同組み込みを有する生成された菌株を、「T4abc ace3_rev」と命名した。
D.ace3復帰形質転換体の発酵
3菌株を、振盪フラスコ発酵において、それらのタンパク質産生について評価した。これには、「T4abc」株(ace3トランケーション対立遺伝子を含有する)、「T4abc ace3_rev」株(ace3完全長対立遺伝子を含有する)、及び「T4abc del-cbh1」株(cbh1セロビオヒドロラーゼ遺伝子の欠失を含有する)が含まれた。各菌株を2つの独立した振盪フラスコ(例えば、フラスコA及びフラスコB)で評価した。
液体規定(LD)培養培地(例えば、米国特許第8,455,631号明細書を参照)は、以下の成分を含有した。カザミノ酸、9g/L;(NH4)2SO4、5g/L;MgSO4・7H2O、1g/L;KH2PO4、4.5g/L;CaCl2・2H2O、1g/L;PIPPS、33g/L;400×T.リーゼイ(T.reesei)微量元素、2.5mL/L;pH、NaOHを用いて5.5に調整。滅菌後、ラクトース又はグルコース/ソホロース混合液を1.6w/v%の最終濃度に添加した。
種培養を創出するために、250mLフラスコ内の50mLのYEG(5g/Lの酵母抽出物、22g/Lのグルコース、H2O)に各菌株の芽胞を個別に加えた。培養は、振盪インキュベーター内で36~48時間にわたって28℃及び200rpmで増殖させた。インキュベーション後、0.3mLの種培養をバッフル付き振盪フラスコ内で50mLのLD培地中に加えた。この生産培養を5日間にわたり28℃及び180rpmで増殖させた。分泌されたタンパク質を、細胞をペレット化し、次に上清を収集するために、遠心分離によって収穫した。タンパク質を、当量のトリクロロ酢酸(TCA)を用いて上清から沈降させ、その後に0.1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)中で溶解させた。次に総タンパク質を、製造業者のプロトコルに従ってBCAタンパク質アッセイを用いて測定した(ThermoFisher Scientific、Grand Island、N.Y.、USA)。BCAアッセイ数は、総タンパク質生産効率におけるいずれかの週毎の変化が及ぼす影響を最小限に抑えるために並行して実施されたT4abc培養物の平均値に正規化した。
図9に示すように、ace3変異が完全長Ace3(例えば、配列番号2)をコードするようにT4abcバックグラウンドで復帰した場合、Ace3 C末端のトランケート型(例えば、配列番号6)をコードするT4abc親株と比較して、総分泌タンパク質力価は73%減少した。これに対し、最も顕著な分泌タンパク質(Cbh1)をコードする遺伝子の欠失は、総分泌タンパク質力価を47%減少させただけであった。
実施例3
ACE3 C末端アミノ酸バリアント
上記の実施例1及び2に記載したように、本出願人は、Ace3LC C末端における規定数のアミノ酸トランケーション(例えば、7~17)が、タンパク質の生産性を改善するために必要であることを示した。さらに、詳細な説明において簡単に上述したように、本出願人は、Ace3 C末端の他の遺伝子改変(例えば、置換、挿入、内部(C末端)欠失、これらの組み合わせなど)が、タンパク質の生産性を改善するために等しく好適な遺伝子改変であることを企図する。
本実施例では、タンパク質の生産性を改善するために、Ace3 C末端バリアントライブラリーを構築し、そのようなライブラリーをスクリーニングするための組成物及び方法を記載する。例えば、Ace3についてのC末端バリアントライブラリーは、当業者によって、プラスミドpYL72(図6)からの配列番号2の641~689のアミノ酸をコードするAce3-LCのコード配列を置換することにより、そして、各ライブラリーについて提供される配列識別番号(配列番号)及び配列番号32のための例示的なプラスミドpA3L02(図11)を参照することにより生成することができる。したがって、本出願人は、部位置換ライブラリー(ライブラリー1)、走査挿入ライブラリー(ライブラリー2)及び走査欠失ライブラリー(ライブラリー3)を含む、3つの異なるAce3 C末端ライブラリーを構築し、スクリーニングする方法を本明細書に記載する。したがって、本明細書に記載の3つのライブラリーの例は、限定することを意図するものではなく、むしろ全体的なアプローチを例示するものであり、他のAce3 C末端バリアントライブラリーを設計/構築し、タンパク質の生産性を改善するためにそれをスクリーニングするために、当業者によって容易に適合され得る。
ライブラリー1は部位置換ライブラリーであり、配列番号2のアミノ酸位置673~683に対応する各アミノ酸に対するコドンは、「NNK」コドンで置換される(mut)(ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「K」は「G」又は「T」ヌクレオチドである)。配列番号2の641~689のアミノ酸に対応する各コードされたアミノ酸位置についてのライブラリー1の縮重DNA配列をそれぞれ配列番号32~42として記載し、以下の表4に示す。比較のために、配列番号31は、配列番号2の641~689のアミノ酸(例えば、配列番号30、配列番号2のアミノ酸位置641~689を含む)に対応する各コードされたアミノ酸位置についての天然DNA配列に対応する。
ライブラリー2は走査挿入ライブラリーであり、3つのコドン配列「NDT」(コドン1)-「NDT」(コドン2)-「NNK」(コドン3)は、配列番号2の672~683のアミノ酸に対応する(3’)各コドンの後に挿入される(ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「D」は「A」、「G」又は「T」ヌクレオチドであり、「K」は「G」又は「T」ヌクレオチドである)。配列番号2の641~689のアミノ酸に対応する各コードされたアミノ酸位置についてのライブラリー2の縮重DNA配列をそれぞれ配列番号43~54として記載し、以下の表5に示す。
ライブラリー3は走査欠失ライブラリーであり、配列番号2のアミノ酸位置673~683に対応する各コドンは、以下のように改変される:配列番号2のアミノ酸位置673に対応するコドンで開始し、673位のコドン及び次の2つの隣接する下流(3’)コドン(すなわち、全部で9個のヌクレオチド)はAce3コード配列から欠失している。配列番号2の641~689のアミノ酸に対応する各コードされたアミノ酸位置についてのライブラリー3のDNA配列を配列番号55~65として記載し、以下の表6に示す。
(例えば、ライブラリー1からの)変異アミノ酸位置を含む縮重ライブラリープラスミドクローンをプールすることによって、当業者は、必要とされるトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の形質転換の数を減少させることができる。例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)形質転換のために、ライブラリー3全体を合理的にプールすることができる。したがって、プールは個々のプラスミドクローンの単離及び配列決定の後に、又はプラスミド抽出の前にランダムなE.コリ(E.coli)形質転換体をプールすることによって行うことができ、この場合、E.コリ(E.coli)形質転換体の90%超においてpYL72プラスミドの正しい改変に高い信頼性があり、プールについて100個超のE.コリ(E.coli)形質転換体が存在する。
したがって、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞(例えば、RL-P37)は上記の実施例1に記載されるように形質転換されるが、上記に記載のプールされたコンストラクトライブラリーを用いて、Ace3バリアントをgla1遺伝子座に標的化する。各形質転換ライブラリーについて、60個超の形質転換体を培養し、実施例1に記載のようにタンパク質産生についてアッセイする。細胞培養物は、目的の形質転換体の分子特性の解析を可能にするために保存することができる。プラスミドpYL72(Ace3-LC)及びpYL88(Ace3-LC C-term-11)の組み込みによる形質転換体は、陰性及び陽性対照として、1つの24ウェルプレートあたり少なくとも3連で含まれる。例えば、ライブラリー1における「NNK」縮重から、1/32クローンが終止コドンを有し、それによって、実施例1に記載されるトランケート型Ace3バリアントの1つをコードすることが予想され、これらのクローン(トランケート型Ace3バリアント)は、内部陽性対照及び実施される方法の検証として役立つ。
同様に、Ace3バリアントを保有するいくつかのトリコデルマ(Trichoderma)形質転換体(例えば、pYL88(Ace3-LC C-term-11)形質転換体など))は、インデューサーの非存在下で、pYL72(Ace3-LC)形質転換体と比較して、発酵中に分泌セルラーゼ及びヘミセルラーゼをより多く産生することができる。これらの形質転換体中のgla1遺伝子座に組み込まれたAce3バリアントの配列を決定するために、バリアントは、以下のように、当該技術分野で知られた方法によって分子的に特徴付けることができる。
ゲノムDNAは個々の形質転換体から抽出され、gla1遺伝子座におけるAce3バリアントのC末端部分は、各形質転換体から個々に、配列番号2のアミノ酸位置670をコードするコドンの約500bp上流(5’)にプライミングするフォワードプライマー(配列番号23、表2)及びAce3バリアントの終止コドンのpyr4遺伝子及び約900bp下流(3’)で特異的にプライミングするリバースプライマー(配列番号24、TABLE2)を用いて、PCR増幅される。次いで、精製されたPCR産物を、さらなるネステッドプライマーを用いて、又は当業者に知られた他の配列決定法によって配列決定する。続いて、配列決定結果の分析により、インデューサーの非存在下でタンパク質産生の増強を示すAce3バリアントを容易に決定する。
当業者に理解されるように、いくつかの偽陽性がスクリーニングにおいて得られる可能性がある。したがって、当業者は同定された特定のAce3バリアントを含有するpYL72の誘導体を生成し、プールについて上述したように、特定のAce3バリアントを有するさらなる形質転換体を評価することができる。
様々なAce3バリアントを有する形質転換体が、pYL72(Ace3-LC)とpYL88(Ace3-LC C-term-11)対照形質転換体との間のインデューサー非依存性表現型中間体を示す場合(実際に可能であれば)、これらのバリアントの個々の変異を組み合わせて、上記のように同様に評価することができる。
同様に、上記のようなスクリーニングされたライブラリープールから(例えば、ライブラリー1、ライブラリー2及び/又はライブラリー3から)から同定された任意のAce3バリアントの最適アミノ酸配列を組み合わせ、その後のラウンド焦点ライブラリースクリーニングにさらに供し、上記のように評価することができる。例えば、スクリーニングされた形質転換体のサンプルサイズに応じて、所与の位置でのいくつかのアミノ酸置換は、部位置換ライブラリー(ライブラリー1)に表されない場合がある。最も有用な位置についてのバリアントを有する個々のプラスミドクローンを単離又は生成するインセンティブが存在し得、全ての可能な置換が個々に評価され得る(例えば、ライブラリー1に最初に使用されたプールとは対照的に)。さらに、走査挿入ライブラリー(ライブラリー2)から同定された有用なAce3バリアントについて、例えば、挿入長を6個、9個又はそれ以上のアミノ酸残基に増加させ、及び/又は挿入を2個又は1個のアミノ酸残基に挿入を減少させることによって、最も有用な位置でさらなるバリアントを試験するインセンティブがあり得る。さらに、走査欠失ライブラリー(ライブラリー3)から同定された有用なバリアントについて、例えば、実際には隣接する欠失残基の数を4個、6個、8個などのアミノ酸残基に増加させる、及び/又は欠失サイズを2個又は1個のアミノ酸残基に減少させることによって、最も有用な位置でさらなるバリアントを生成及び試験するインセンティブがあり得る。
実施例4
C末端置換を有するACE3
A.概説
本実施例では、本出願人は、Ace3-LC(配列番号:2)C末端の最後の11個のアミノ酸残基を、V5エピトープタグ又はV5-(6×His)タンデムタグで分子的に置換した(図12)。以下に記載するように、C末端V5タグ置換を有するAce3-LC(すなわち、Ace3-LC-V5)、及びC末端V5-(6×His)タンデムタグを有するAce3-LC(すなわち、Ace3-LC-V5-(6×His))置換を発現するトリコデルマ属(Trichoderma)株は、誘導基質の存在下及び非存在下の両方でタンパク質産生の増加を示した。
B.宿主株、発現ベクター及び株構築。
T.リーゼイ(T.reesei)株T4abc(例えば、上記実施例2に記載)を、本実施例における親株として使用した。トリコデルマ(Trichoderma)ace3 C末端置換カセットプラスミドpYL18(Ace3-LC-V5)及びpYL19(Ace3-LC-V5-(6×His))を、当業者が開示された関連DNA部分からこのプラスミドを容易に再作製できるように、標準的な分子生物学的手順を用いて調製した。より詳細には、配列番号2の641のアミノ酸残基に対応するコドンから始まるAce3 C末端置換バリアントのコード配列のDNA配列を、Ace3-LC-V5に対しては配列番号67として、Ace3-LC-V5-(6×His)に対しては配列番号69として記載する。
発現ベクターは、E.コリ(E.coli)の複製及び選択のための細菌ColE1 ori及びAmpR遺伝子、並びにサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の複製及び選択のための2μ ori及びURA3遺伝子を有するベクター骨格を含む。さらに、T.リーゼイ(T.reesei)テロメア配列(「TrTEL」)、T.リーゼイ(T.reesei)pyr2選択マーカー、遺伝子dic1のT.リーゼイ(T.reesei)プロモーター配列、及びその天然ターミネーター配列を有するAce3-LCバリアントが存在する。代表的なベクターマップを図13に示すが、それには14アミノ酸V5タグ配列で最後の11個のアミノ酸が置換されたAce3-LCバリアントを含有するベクターpYL18が記載されている。
この発現ベクターを、ポリエチレングリコール(PEG)媒介プロトプラスト形質転換によってT.リーゼイ(T.reesei)親宿主株(非機能性pyr2遺伝子を含む)に挿入(形質転換)した(Ouedraogo et al.,2015;Penttila et al.,1987)。形質転換体をフォーゲル最少培地最小培地寒天プレート上で増殖させ、pyr2マーカーによって獲得したウリジン原栄養性について選択した。フォーゲル寒天プレート上で2回連続してトランスファーすることによって安定な形質転換体を得、続いて非選択的PDAプレート上で2回連続して増殖させ、フォーゲル寒天プレート上で1回増殖させ、その後、胞子懸濁液を平板希釈することによって単一コロニーを得た。
C.Ace3C末端置換形質転換体の発酵
上記の実施例1に記載されるように、「非誘導」及び「誘導」の両条件で、上記の親及び形質転換した(娘)T.リーゼイ(T.reesei)宿主細胞を試験した。例えば、図14に示すように。親T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、ソホロースインデューサーの存在下でのみ、高レベルの分泌タンパク質を産生した。対照的に、Ace3-L(すなわち、11アミノ酸トランケーションを含む)を含み、且つ発現させる、バリアント(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、誘導(Glu/Sop)及び非誘導(Glu)の両条件下で大量の分泌タンパク質を産生した。さらに、Ace3-LC-V5タグ(すなわち、最後の11個のアミノ酸の14アミノ酸置換を含む)を含み、発現するバリアント(娘)Treesei細胞、及びAce3-LC-V5-(6×His)デュアルタグ(すなわち、最後の11個のアミノ酸の23アミノ酸置換を含む)を含み、発現するT.リーゼイ(T.reesei)細胞もまた、誘導(Glu/Sop)及び非誘導(Glu)の両条件下で、Ace3-Lバリアントよりも約10%低いものの、高いタンパク質生産性を示した(図14)。
上記に基づき、これらの結果は、以下に限定されないが、置換、挿入、内部(C末端)欠失、及びこれらの組み合わせを含むAce3 C末端のさらなる遺伝子改変が、誘導(Glu/Sop)基質及び非誘導(Glu)基質の両条件下で、トリコデルマ属(Trichoderma)菌細胞におけるタンパク質生産性の改善に等しく好適な遺伝子改変であることを示している。
参考文献
国際公開第1992/06183号パンフレット
国際公開第1992/06209号パンフレット
国際公開第1992/06221号パンフレット
国際公開第1992/10581号パンフレット
国際公開第1998/15619号パンフレット
国際公開第2002/12465号パンフレット
国際公開第2005/028636号パンフレット
国際公開第2006/074005号パンフレット
国際公開第2006/74005号パンフレット
国際公開第2016/100568号パンフレット
米国特許第6,022,725号明細書
米国特許第6,268,328号明細書
Deuschle et al.,EMBO J.3:1581-1585,1984.
Cao et al.,Science,9:991-1001,2000.
Campbell et al.,Curr.Genet.,16:53-56,1989.
Chen et al.,“Engineering ofTrichoderma reesei forenhanced degradation oflignocellulosic biomass bytruncation ofthecellulase activator ACE3”,Biotechnol Biofuels 13:62,2020.
Colot et al.,PNAS 103(27):10352-10357,2006.
Devereux et al.,Nucleic Acids Res.12:387-395,1984.
Hakkinen,M.,Valkonen,M.J.,Westerholm-Parvinen,A.,Aro,N.,Arvas,M.,Vitikainen,M.,Penttila,M.,Saloheimo,M.,and Pakula,T.M.,“Screening of candidate regulators for cellulase and hemicellulase production in Trichoderma reesei and identification of a factor essential for cellulase production”,Biotechnol Biofuels 7,14,2014.
Harkki et al.,BioTechnol.,7:596-603,1989.
Harkki et al.,Enzyme Microb.Technol.,13:227-233,1991.
Ilmen et al.,“Regulation of cellulase gene expression in the filamentous fungus Trichoderma reesei”,Applied and Environmental Microbiology,63(4)-1298-1306,1997.
Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual,1990.
Le Crom et al.,“Tracking the roots of cellulase hyperproduction by the fungus Trichoderma reesei using massively parallel DNA sequencing”,PNAS 106(38):16151-16156,2009.
Mullaney et al.,MGG 199:3745,1985.
Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443,1970.
Nunberg et al.,Mol.Cell Biol.4:2306,1984.
Ouedraogo,J.P.,Arentshorst,M.,Nikolaev,I.,Barends,S.,and Ram,A.F.,“I-SceI-mediated double-strand DNA breaks stimulate efficient gene targeting in the industrial fungus Trichoderma reesei” Applied microbiology and biotechnology 99,10083-10095,2015.
Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988.
Penttila,M.,Nevalainen,H.,Ratto,M.,Salminen,E.,and Knowles,J.,“A versatile transformation system for the cellulolytic filamentous fungus Trichoderma reesei”,Gene 61,155-164,1987.
Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring,New York,1989.
Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,4th Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring,New York,2012.
Sheir-Neiss and Montenecourt,“Characterization of the secreted cellulases of Trichoderma reesei wild type and mutants during controlled fermentations”,Applied Microbiology and Biotechnology,20(1):46-53,1984.
Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981.
Yelton et al.,PNAS USA 81:1470-1474,1984.
Zhang et al.,“The transcription factor ACE3 controls cellulase activities and lactose metabolism via two additional regulators in the fungus Trichoderma reesei”,J.Biol.Chem.,294(48):18435-18450,2019.