<ポリエステル樹脂(A)>
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)を主成分とする。ここで「主成分」とは、ポリエステル樹脂組成物100重量%中に、ポリエステル樹脂(A)が30重量%以上である場合をいう。本発明で用いるポリエステル樹脂(A)とは、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、および(ハ)ラクトンから選択された一種以上を主構造単位とする重合体または共重合体である。
上記ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2~20の脂肪族グリコール、すなわちエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200~100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノール-Cおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5-ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5-ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5-ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペートなどの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。中でも、芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートから選択されるいずれかまたはその共重合体がより好ましく、ポリブチレンテレフタレートまたはその共重合体がさらに好ましい。
また、(ロ)上記ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β-ヒドロキシ酪酸/β-ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
また、上記(ハ)ラクトンとしてはε-カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5-オキセパン-2-オン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリ-γ-ブチロラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトンなどが挙げられる。
これらの中で、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がより好ましく、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がさらに好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
本発明において、上記(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体中の全ジカルボン酸に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、成形性の点で、o-クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36~1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50~1.50dl/gの範囲であることがより好ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の融点は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、耐熱性や機械強度の点で、200℃以上であることが好ましく、溶融加工性に優れる点で、215℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましい。融点の上限は特に限定されないが、溶融加工性に優れる点で、280℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましい。融点が210℃未満であると耐熱性低下の問題があり、一方、融点が280℃を超えると極めて結晶化度、結晶サイズが大きくなるため、溶融加工時の過度な加熱が必要となり、ポリエステル樹脂の分解を併発する可能性がある。なお、ここでいう融点とは、示差走査型熱量計(DSC)を用い、昇温速度20℃/分で30℃から280℃まで昇温し、280℃で3分間保持した後、降温速度20℃/分で280℃から30℃まで降温した後、昇温速度20℃/分で30℃から280℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークのピークトップ温度である。
また、本発明においては、前記示差走査型熱量計(DSC)を用いて前記の条件で測定した吸熱ピークの面積で表される結晶融解熱量は、耐熱性に優れる点で、20J/g以上であることが好ましく、30J/g以上であることがより好ましく、40J/g以上がさらに好ましい。結晶融解熱量の上限は特に限定されないが、溶融加工性に優れる点で、60J/g以下であることが好ましく、50J/g以下であることがより好ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および重縮合反応を経る方法、ならびに直接重合による反応のいずれでも適用することができるが、末端カルボキシル基量を少なくすることができ、かつ、レーザー透過性に優れる点で、連続重合が好ましく、コストの点で、直接重合が好ましい。
本発明で用いる(A)ポリエステル樹脂が、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体または共重合体である場合には、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましく、重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ-n-プロピルエステル、テトラ-n-ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ-tert-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられるが、これらの内でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、さらに、チタン酸のテトラ-n-プロピルエステル、テトラ-n-ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ-n-ブチルエステルが特に好ましい。これらの重合反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.005~0.5質量部の範囲が好ましく、0.01~0.2質量部の範囲がより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂(A)は、それぞれ単独で使用することもできるし、複数併用して使用することも可能である。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の末端基は、特に限定されるものではなく、末端カルボキシル基、末端ヒドロキシル基、またはそれ以外の末端基を有することができるが、レーザー透過性および寸法特性に優れる点で、ポリエステル樹脂(A)を主成分とし、金属成分を含有するポリエステル樹脂組成物は、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比が0.50以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましく、0.80以上であることがさらに好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。また、金属成分量/末端カルボキシル基量の値は、レーザー透過性および機械特性の観点から2.00以下が好ましい。ポリエステル樹脂中において、金属成分の状態は特に限定されず、単体やイオンの状態で存在していてもいいし、その他化合物と金属塩構造や配位構造を形成していてもよいが、レーザー透過性および寸法特性に優れる点で、ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基と金属塩構造を形成していることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基と金属成分の量比を上記範囲とすることで、ポリエステル樹脂の結晶核生成効率が向上し、射出成形品の結晶構造が微細化するため、レーザー透過性が向上する。また、結晶化速度が上昇するため、射出成形時に、成形品の各部位において冷却のされ方にムラがあっても、成形品の各部位において結晶化度の差が小さくなり、収縮率差が低減するため、得られた成形品の面反りや内反りが発生しにくい。ポリエステル樹脂組成物に、金属成分を、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比が0.50以上となるように含有させる方法は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂(A)に対して、金属塩化合物(B)を配合する方法や、溶融混練条件、射出成形条件を調整する方法が挙げられる。ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基量の定量方法としては、特に限定されないが、電位差滴定法などが挙げられ、ポリエステル樹脂(A)の重量に対するモル数として表される。金属成分の定量方法としては、特に限定されないが、原子吸光度測定などが挙げられ、ポリエステル樹脂(A)の重量に対するモル数として表した値を樹脂組成物中の金属成分量として用いる。
<金属成分>
本発明において、金属成分の金属種は特に制限されず、いずれの金属種でもよく、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、またはバリウムなどから選択される金属成分を挙げることができる。結晶化特性に優れ、良好なレーザー透過性を示し、機械特性および寸法特性にも優れる点で、アルカリ金属であることが好ましく、結晶化促進効果が特に優れる点でナトリウム、カリウム、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ナトリウムであることがさらに好ましい。金属成分の定量方法としては、特に限定されないが、原子吸光度測定などが挙げられ、ポリエステル樹脂(A)の重量に対するモル数として表される。
<金属塩化合物(B)>
本発明において、金属塩化合物(B)をポリエステル樹脂の重量に対して、金属成分が50~150eq/tの濃度となるように含むことが、良結晶核生成の点で好ましい。すなわち、ポリエステル樹脂組成物中の金属成分は、金属塩化合物(B)に由来するものであることが好ましい。
本発明において、金属塩化合物(B)は、脂肪族カルボン酸塩金属塩、脂環族カルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸金属塩、スルホン酸金属塩、アミドスルホン酸金属塩、リン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、ホウ酸金属塩などのいずれでもよく、また、それらの混合物であってもよい。結晶化特性に優れる点で、炭素数2~50の脂肪族カルボン酸金属塩、炭素数7~60の脂環族カルボン酸金属塩、炭素数7~60の芳香族カルボン酸金属塩、炭素数1~50の脂肪族スルホン酸金属塩、炭素数6~60の脂環族スルホン酸金属塩、炭素数6~60の芳香族スルホン酸金属塩、炭素数1~50の脂肪族リン酸エステル金属塩、炭素数6~60の脂環族リン酸エステル金属塩、炭素数6~60の芳香族リン酸エステル金属塩から選ばれる1種または2種以上の混合物を挙げることができる。また、結晶化特性に優れ、良好な射出成形性やレーザー透過性を示す点で、炭素数2~40の脂肪族カルボン酸塩金属塩、炭素数7~40の脂環族カルボン酸金属塩、炭素数7~40の芳香族カルボン酸金属塩から選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましく、炭素数2~30の脂肪族カルボン酸金属塩、炭素数7~30の芳香族カルボン酸金属塩から選ばれる1種または2種以上の混合物であることがより好ましく、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸金属塩が特に好ましい。
脂肪族カルボン酸とは、直鎖または分岐した脂肪族基にカルボン酸基が付加した化合物であり、結合の一部に、不飽和基、脂環族基あるいは水酸基、リン酸エステル基等のその他の置換基を有していてもよい。
脂肪族カルボン酸として、好ましくは、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、モンタン酸等が挙げられる。
さらに本発明において、ポリエステル樹脂(A)との親和性が良好である点で、炭素数3~20の脂肪族カルボン酸金属塩であることが好ましく、炭素数3~10の脂肪族カルボン酸金属塩であることがより好ましく、炭素数3~5の脂肪族カルボン酸金属塩であることが特に好ましい。
本発明において、金属塩化合物(B)の金属種は特に制限されず、いずれの金属種でもよく、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、またはバリウムなどから選択される金属塩を挙げることができる。結晶化特性に優れ、良好なレーザー透過性を示し、機械特性および寸法特性にも優れる点で、アルカリ金属塩であることが好ましく、結晶化促進効果が特に優れる点でナトリウム、カリウム、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ナトリウムであることがさらに好ましい。
本発明における金属塩化合物(B)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)1kgに対して金属成分が50~150ミリモルの濃度で含むことが好ましい。すなわち、ポリエステル樹脂の重量に対して、金属成分が50~150eq/tの濃度で含むことが好ましい。50eq/t以上の場合、ポリエステル樹脂組成物からなる成形品のレーザー透過性を維持することができ、成形品の部位間での透過率のばらつきを抑制することができる。また、150eq/t以下の場合、金属塩化合物の触媒作用によりポリエステル樹脂(A)が分解されることによる分子量低下や成形品の機械的強度の低下を抑制できる。金属塩化合物(B)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)の重量に対して50~150eq/tの濃度で含むことが好ましく、50~120eq/tの濃度で含むことがより好ましく、50~100eq/tの濃度で含むことがさらに好ましい。
本発明においては、金属塩化合物(B)として、プロピオン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種である脂肪族カルボン酸ナトリウム塩を用いることが好ましい。これらのナトリウムを含有する化合物を用いることで、高いレーザー透過性向上効果を得ることができる。
<無機充填剤>
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、無機充填材を配合することができる。成分としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミックス繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維等の繊維状強化材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィラメント、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナリケート等の珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物、炭化カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックスビーズ、窒化硼素、炭化珪素、硼酸亜鉛及びシリカ等の非繊維状強化材等が挙げられ、これらは1種、または2種以上使用することができる。本発明における好ましい例としてはガラス繊維が挙げられる。さらに、これら充填材をシラン系、エポキシ系あるいはチタネート系などのカップリング剤で予備処理して使用することは、機械的強度などの面からより好ましい。
ガラス繊維は、断面が円形状でも、扁平形状でもいずれでもよいが、変形の抑制や反りの低減、安定したレーザー透過性等の点で、その断面形状が扁平であることが好ましい。一般に、ガラス繊維が配合された組成物は成形時流動方向に繊維が配向するので、成形収縮率(樹脂成形品と金型との寸法差の百分率)の異方性が大きくなり、変形や反りが大きくなる。ところが、断面形状が扁平の場合、成形収縮率の異方性が小さくなり、変形、反りが改善されやすい。
断面形状が扁平であるガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面において、長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比で表される扁平率が1以上10以下であることが好ましい。扁平率の下限値は、1を超えることが好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましい。また、上限値は、5以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下が最も好ましい。具体的な形状は、まゆ形、長円形、楕円形、半円、円弧形、矩形またはこれらの類似形状のいずれでもよいが、流動性、低反り性の点で、特に長円形が好ましい。
上記扁平率が1を超えることで、成形時における変形や反りを抑制し、また10以下とするのは現実的にそのようなガラス繊維の製造自体が困難である。また、ガラス繊維は、比重を小さくする等の目的の為には中空繊維の使用も可能である。ガラス繊維の断面積は、大きくなるに伴い、十分な補強効果が得られなくなる。一方、あまりに過小になるとそれ自体の製造が困難になり、取り扱いにくくなる課題もある。本発明におけるガラス繊維の断面積は、2×10-5~8×10-3mm2が好ましく、8×10-5~8×10-3mm2がより好ましく、8×10-5~8×10-4mm2がさらに好ましい。ガラス繊維の長さは特に限定されないが、成形品の機械特性と変形抑制との兼ね合いにより、成形品の変形量を小さくするために短い方が好ましいが、機械特性の点で繊維長が30μm以上であることが好ましく、要求される性能に応じて、50~1000μmが好ましい。本発明で用いるガラス繊維において、必要に応じて、収束剤または表面処理剤を使用することが好ましい。収束剤または表面処理剤としては、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物である。これらの化合物はあらかじめ表面処理または収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際に同時添加してもよい。本発明で用いるガラス繊維が扁平である場合、溶融ガラスを吐出するために使用するブッシングとして、長円形、楕円形、矩形、スリット状等の適当な孔形状を有するノズルを用いて紡糸することにより調製される。又、各種の断面形状(円形断面を含む)を有する近接して設けられた複数のノズルから溶融ガラスを紡出し、紡出された溶融ガラスを互いに接合して単一のフィラメントとすることにより調製できる。
本発明において用いられるガラス繊維の配合量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0を超え100質量部以下であることが好ましく、10~80質量部がより好ましく、20~50質量部がさらに好ましい。機械強度、低反り性を発現させるためには、ガラス繊維を配合することが好ましい。また、100質量部以下とすることで成形時の流動性も維持することができる。
<その他添加剤>
本発明の樹脂組成物においては、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分、例えばエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ノボラック型、グリシジルエステル型等)、リン系安定剤(リン酸エステル系等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、滑剤(モンタン酸及びそのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、リレン、ぺリレン、ナフタトシアニン、キナクリドン、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、アゾ系、モノアゾ系等)、染料(アジン系、アゾ系、ぺリレン、アンスラキノン等)、結晶核剤(タルク、ポリエーテルエーテルケトン等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、着色防止剤(リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリフェニル等のリン酸化合物等)、他の重合体などを含有することができる。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(A)、金属塩化合物(B)、必要に応じてその他の成分を単軸またはニ軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、流動性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL、スクリュー直径をDとすると、L/D>30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法が特に好ましい。ここで言うスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置から、スクリュー先端部までの長さを指す。二軸押出機のL/Dの上限は150であり、好ましくはL/Dが30を超え、100以下のものが使用できる。
また、本発明において二軸押出機で用いる場合のスクリュー構成としては、フルフライトおよびニーディングディスクを組み合わせて用いられるが、本発明の組成物を得るためにはスクリューによる均一的な混練が必要である。そのため、スクリュー全長に対するニーディングディスクの合計長さ(ニーディングゾーン)の割合は、5~50%の範囲が好ましく、10~40%の範囲であればさらに好ましい。
本発明において溶融混練する場合に、各成分を投入する方法は、例えば、投入口を2カ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口からポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維、金属成分および必要に応じてその他成分を供給する方法や、主投入口からポリエステル樹脂(A)、金属成分およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口からガラス繊維を供給し溶融混合する方法などが挙げられる。
また、本発明において溶融混錬する場合に、押出機から吐出される樹脂の温度は、レーザー透過性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られる点で、310℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、290℃以下であることがさらに好ましく、280℃以下であることが特に好ましい。また、加工性の点で200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましく、230℃以上であることが特に好ましい。押出機から吐出される樹脂の温度は、シリンダー温度やスクリュウ回転数、吐出量の設定によって調整できるが、その手法は特に限定されない。
本発明の樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができるが、コストと量産性に優れる点で射出成形が好ましい。成形条件については特に限定されないが、成形前にポリエステル樹脂組成物を、100℃以上の温度で3時間以上乾燥することが好ましい。成形機のシリンダー温度は、270℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。また、下限については、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましい。また、成形機の内部に、ポリエステル樹脂組成物が滞留する時間が15分未満となるように成形することが好ましい。上記のように、成形することで、成形工程中のポリエステル樹脂組成物の加水分解による末端カルボキシル基量の増加が抑制され、レーザー透過性、機械特性および寸法特性に優れる成形品を得ることができる。金型温度は特に限定されないが、成形品部位間の透過率を制御しやすい点で、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることが好ましい、上限としては加工時間を短くしやすい点で100℃以下が好ましい。射出速度は特に限定されないが、成形中のせん断発熱による樹脂の分解を抑えつつ、成形品部位間の透過率を制御しやすい点で、10mm/sec~300mm/secの範囲で設定することが好ましく、50mm/sec~200mm/secの範囲で設定することがより好ましい。
成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などとして利用でき、フィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、特にレーザー溶着が可能であることから、レーザー溶着をする自動車用部品、電気・電子部品として好適である。
本発明の樹脂組成物は、下記の具体的な用途に使用することができる。具体例としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、電気用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジング、および内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。
更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。
また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。本発明の樹脂組成物は、高いレーザー透過性、レーザー溶着性だけでなく、良好な機械特性と射出成形性を併せ持つことから、上記の中でも特にレーザー溶着を行う各種自動車用部品、電気・電子部品に特に有用である。
レーザー溶着の用途において、レーザー透過性を有し、レーザー透過部材として用いられる樹脂組成物からなる成形品には、成形品の各部位で高いレーザー透過性が高度に制御されることが要求される。高い透過性を有することで、効率よくエネルギーを溶着面に伝えることができるため、レーザー溶着の生産性を向上させることができる。レーザー透過性は、例えば、分光光度計などを用いて測定されるレーザー透過率として表され、特定波長の光を成形品に入射させた場合の、入射光量と透過光量の比として算出される。レーザー透過率は例えば2mm厚の成形品の場合、940nmの波長において、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。さらに、成形品の各部位でレーザー透過性が高度に制御されることで、溶着不良を起こしにくくなり、安定したレーザー溶着性が得られる。これは、レーザー透過性の安定性により評価できる。具体的には、レーザー透過性のばらつきとして、例えば、成形品の異なる複数の部位で透過率を測定した場合に、その透過率の最大値と最小値の差を透過率の平均値で除したばらつき割合として評価される。ばらつき割合は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
また、レーザー溶着に用いられる成形品には寸法特性を制御することが要求される。特に成形品の反り量が大きいと、溶着部においてレーザー光線透過側の成形品と吸収側の成形品の間に隙間や、位置ずれが発生しやすく、安定したレーザー溶着性が得られにくい。成形品の反り量は、例えば、箱型の成形品のある面において、内側への面の倒れ量、すなわち本来の平面からの最大引込み寸法として表される内反り量により評価できる。底面が30mm角の正方形で、高さが30mmの箱型の成形品を用いて評価した場合、0.60mm以下であることが好ましく、0.50mm以下であることがより好ましく、0.45mm以下であることが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形品は、安定したレーザー透過性を得ることができることから、当該成形品と他の成形品とをレーザー溶着した複合成形品として好適に用いることができる。複合成形品を構成する材料として、本発明の成形品はレーザー透過側にもレーザー吸収側にも用いることができるが、安定したレーザー透過性を有することから、特にレーザー透過側に用いるとよい。レーザー吸収側に用いる材料は特に限定されないが、レーザー透過側材料とより強固に溶着しやすい点で、レーザー透過側と同組成の樹脂組成物、または同種の樹脂を含有する樹脂組成物であることが好ましい。加えて、レーザー光を効率的に吸収し、熱エネルギーに変換できる点で、レーザー光吸収剤としてカーボンブラックやレーザー光波長に吸収帯を有する顔料や染料を含有することが好ましい。レーザー光吸収剤の含有量としては、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~1.0質量部含有させることが好ましい。
レーザー溶着部の形状は特に限定されないが、透過側と吸収側を面合わせに接触させる形状や、透過側を凹形状のレール、吸収側を凸形状のリブとする、はめこみ形状が挙げられる。特に、溶着部を凹凸のはめ込み形状とすることで、位置合わせが容易になることに加え、レーザー溶着中に凸形状のリブが溶融し押しつぶされることから、レーザー溶着中の樹脂の溶融具合を、成形品全体が沈み込んだ量で管理でき、品質管理の点で好ましい。
レーザー溶着に用いる光源の種類は特に限定されないが、ダイオードレーザーやファイバーレーザーが挙げられ、波長としては、800nm~1200nmが好ましい。
レーザー溶着の条件は任意の条件で実施することができ、例えば、レーザー出力、レーザー走査速度、レーザー照射直径、レーザー照射回数、透過側材料と吸収側材料の抑え荷重、保圧時間等の条件を、溶着強度や密閉性、製造タクトタイム等とのバランスで調整することができる。レーザー出力は特に限定されないが、樹脂の過加熱・熱分解による劣化が抑えられる点で200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下がさらに好ましい。レーザー走査速度は特に限定されないが、樹脂の過加熱・熱分解による劣化が抑えられる点で10mm/sec以上が好ましく、レーザーから照射されるエネルギーを効率的に樹脂へ伝えることができる点で5000mm/sec以下が好ましい。レーザー照射直径は特に限定されないが、効率的に溶着部を加熱できる点で、溶着部の厚みに対して、照射直径が0.5倍~1.5倍になるように設定するのが好ましく、0.7倍~1.3倍になるように設定するのがより好ましい。レーザー照射回数は特に限定されず、1回走査させる方法や2回以上走査させる方法が挙げられるが、溶着部の温度を段階的に昇温することができ、溶着不良を起こしにくい点で、2回以上走査させる方法が好ましい。透過側材料と吸収側材料の抑え荷重は特に限定されないが、成形品へかかる応力が抑えられる点で2000N以下が好ましく、1750N以下がより好ましく、1500N以下がさらに好ましい。下限値は、透過側材料と吸収側材料を密着させやすい点で、50N以上が好ましく、75N以上がより好ましく、100N以上がさらに好ましい。また、透過側材料と吸収側材料を抑える方法は特に限定されないが、レーザー光を透過しやすいガラスで溶着部を直接抑える方法や、レーザー溶着部近傍の内側または外側を専用の治具等で抑える方法が挙げられる。保圧時間は特に限定されないが、製造タクトタイムを短縮できる点で、0sec~20secの範囲で設定することが好ましい。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例で使用する主要原料の略号およびその内容を以下にまとめて示す。
(A)ポリエステル樹脂
A-1:ポリブチレンテレフタレート(末端カルボキシル基量50eq/t)。
A-2:ポリブチレンテレフタレート(末端カルボキシル基量30eq/t)。
A-3:ポリブチレンテレフタレート(末端カルボキシル基量15eq/t)。
A-4:ポリブチレンテレフタレート(末端カルボキシル基量9eq/t)。
(B)金属塩化合物
B-1:プロピオン酸ナトリウム(炭素数3、分子量96)
B-2:カプリル酸ナトリウム(炭素数8、分子量166)
B-3:ステアリン酸ナトリウム(炭素数18、分子量306)
B-4:ギ酸ナトリウム(炭素数1、分子量68)
B-5:ポリアクリル酸ナトリウム(繰り返し単位の炭素数3、繰り返し単位の分子量94)
B-6:ステアリン酸カリウム(炭素数18、分子量326)
B-7:ステアリン酸マグネシウム(炭素数36、分子量591)。
(C)ガラス繊維
C-1:チョップドストランドタイプガラス繊維(繊維径13μm)
また、実施例および比較例に用いた評価方法を以下にまとめて示す。
(1)レーザー光線透過性
図1に示したL1が80mmの正方形で、厚みD1が2mmのレーザー光線透過性評価試験片を成形した。成形条件はシリンダー温度260℃、金型温度80℃である。図1に示した成形片のスプルー1およびランナー2の部分をゲート3で切断し、残った部位をレーザー光線透過性評価試験片4とした。試験機は(株)島津製作所製の紫外近赤外分光光度計(UV-3150)を用い、また検出器には積分球を用いた。透過率は透過光量と入射光量の比を百分率で表す。測定箇所は図1に示す、[1]~[3]の3箇所で、[1]および[3]は成形片の端部から内側に13mmの部分、[2]は成形品の中心部分である。実施例、比較例を示した表中には、レーザー透過性として3箇所で測定した近赤外線940nm波長領域の光線透過率の平均値と、レーザー透過性のばらつきとして下記の式で示される透過率のばらつき割合を記載した。
透過率のばらつき割合=(透過率の最大値-透過率の最小値)/透過率の平均値×100。
(2)ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基量
(1)に記載のレーザー光線透過性評価試験片を1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール溶解させ、遠心分離を行い、不溶成分を除去し、樹脂成分を抽出した。本樹脂成分約0.4gをベンジルアルコール20mLに、100℃の油浴上で加温溶解させた後、クロロホルム60mL、ベンジルアルコール20mLを徐々に加えて急冷させた。その後、0.01mol/L水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液で、京都電子工業(株)製の電位差滴定装置(AT-500N)を用いて電位差滴定を行い、得られた変曲点を終点とした。同様の方法で、空試験も行い、ポリエステル樹脂(A)の重量に対するモル数として末端カルボキシル基量(単位:eq/t)を算出した。
(3)ポリエステル樹脂組成物の金属成分量
(1)に記載のレーザー光線透過性評価試験片を1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール溶解させ、遠心分離を行い、不溶成分を除去し、樹脂成分を抽出した。本樹脂成分を灰化し、その灰化物を6N塩酸で溶解させた溶液を調製した。この溶液を用いて(株)日立ハイテクサイエンス製原子吸光光度計(ZA3300)を用いて、原子吸光度測定を行い、ポリエステル樹脂(A)の重量に対するモル数として、金属成分量(単位:eq/t)を算出した。
(4)引張強度
ISO527-1,2に従い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で成形したISO1Aダンベル試験片について、(株)島津製作所製の引張試験機(オートグラフAG-50kNXPlus)を用い、試験速度5mm/minの条件で、引張強度を測定した。
(5)内反り量
図2に示した底面(正方形)の辺の長さL2が30mm、高さH2が30mm、厚みD2が1.5mmである箱型形状の内反り評価試験片を成形した。成形条件は、シリンダー温度260℃、金型温度80℃である。ピンゲート5の部分でスプルーおよびランナーを切断し残った部位を内反り評価試験片8とした。図2(a)は上記箱型成形品の平面図であり、図2(b)は同成形品の側面図であり、図2(c)は上記箱型成形品の平面図の詳細図である。得られた成形品を23%、50%RH環境下で24時間放置後、成形品のピンゲート5を有する側面から最も遠い側面6の内側への面の倒れ量、すなわち本来の平面からの最大引込み寸法を(株)ミツトヨ製の三次元寸法測定器(CRYSTA-Apex S776)で5回測定し、その平均を内反り量7とした。
[実施例1~11、比較例1~4]
表1および表2に記載した配合比率でポリエステル樹脂(A)、金属塩化合物(B)その他の原料を一括配合し、ガラス繊維(D)をサイドフィーダから供給し、L/D=45の二軸押出機を用い、シリンダー温度260℃、回転数250rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、130℃で3時間熱風乾燥した後、住友重機械工業製射出成形機SE100DUを用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で、射出成形機の内部に樹脂組成物が滞留する時間が15分未満となるように、各種評価用成形品を射出成形した。各評価用成形品を用いて上記評価を行った。ただし、比較例2は樹脂組成物の乾燥工程を省略して射出成形を行い、比較例3は射出成形工程の計量後に15分間樹脂組成物を成形機内に滞留させてから、射出成形した。
評価結果を表1および2に示す。表1に実施例1~11、表2に比較例1~4を表す。
表1および2の結果より以下のことが明らかとなった。
実施例1~11は比較例1~4と比較して、ポリエステル樹脂中の、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比を特定の値とすることにより、高いレーザー透過性が成形品中の異なる部位で高度に制御され、かつ寸法特性に優れた、ポリエステル樹脂組成物を得ることができた。また、ポリエステル樹脂(A)、金属塩化合物(B)、ガラス繊維(C)を特定量含有することにより、レーザー透過性、機械特性および寸法特性に優れる成形品を得ることができた。より詳細に説明すると、実施例1は比較例1と比較して、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比が好ましい範囲であり、ポリエステル樹脂(A)の重量に対して、金属成分を好ましい範囲で含有するため、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性および寸法特性に優れる成形品を得ることができた。また、実施例1は比較例2および3と比較して、好ましい条件で成形を行い、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比がより好ましい範囲であるため、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性、機械特性および寸法特性に優れる成形品を得ることができた。実施例11は比較例4と比較して、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比が好ましい範囲であるため、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性に優れる成形品を得ることができた。実施例2,3および4は、実施例1と比較して、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比がより好ましい範囲であるため、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性および寸法特性に優れる成形品を得ることができた。実施例4は実施例2および3と比較して、金属成分量/末端カルボキシル基量で表される比が特に好ましい範囲であるため、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性および寸法特性により優れる成形品を得ることができた。実施例3,5および6は実施例7および8と比較して、ポリエステル樹脂(A)との親和性に優れる点で、より好ましい炭素数の金属塩化合物(B)を含有することにより、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性および寸法特性により優れる成形品を得ることができた。実施例3は実施例5および実施例6と比較して、ポリエステル樹脂(A)との親和性に優れる点で、より好ましい炭素数の金属塩化合物(B)を含有することにより、結晶核生成効率に優れ、その結果として、機械特性により優れる成形品を得ることができた。実施例3,5および6は実施例9および実施例10と比較して、より好ましい金属種の金属塩化合物(B)を配合しているため、結晶核生成効率に優れ、その結果として、レーザー透過性、機械特性および寸法特性により優れる成形品を得ることができた。