JP7803519B2 - 固形墨 - Google Patents
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Description
このように製造された従来の固形墨は、上述のごとく硯の上ですられて墨液となり、例えば書道や水墨画の用途で使用される。このとき、固形墨の固形分濃度が低くなるように調製された墨液を紙に塗布することで、薄めの黒色を表現できる。しかも、墨液の水分量が多いことから、滲み(にじみ)が生じ、文字や画において独特の表現が可能である。
これに対して、例えば、貫通孔が形成されたり、窪んだ孔が表面部分に形成されたりした固形墨が知られている(特許文献1を参照)。
特許文献1に記載の固形墨は、煤と膠との混合中間体に上記のごとき孔を形成し、さらに乾燥処理を施して製造されている。特許文献1に記載の固形墨は、形成された孔によって表面積が増やされていることから、比較的短い乾燥時間で製造できる。このように製造された特許文献1に記載の固形墨は、上述した従来の固形墨を使用して描かれた文字や画に類似する色や滲みを表現できる。
上記の固形墨では、前記黒鉛が少なくとも鱗片状黒鉛を含有してもよい。
詳しくは、本実施形態の固形墨の一部は、例えば硯のうえで水と共にすられて調製された墨液中に含まれる。調製された墨液が筆先などを介して紙などに塗布されたときに、滲みを抑制しつつ灰色を表現することができる。特に、固形墨の濃度がより高くなるように墨液を調製することによって、滲みをより一層抑制しつつ灰色を表現することができる。
一方、炭素粒子として煤又はカーボンブラックを主に含む従来の固形墨は、墨液中の濃度が比較的低くなるようにすられた場合には、灰色に類似した薄い黒色を表現できるが、決して灰色ではなく、しかも滲みを発生してしまう。反対に、墨液中の濃度が比較的高くなるように固形墨をすった場合には、滲みを防げるものの濃い黒色が発現され灰色を表現できない。
上記の黒鉛としては、市販品を用いることができる。例えば、伊藤黒鉛工業社製の製品、又は、中越黒鉛工業所の製品などを採用できる。
上記の膠(ニカワ)としては、市販品を用いることができる。
ポリビニルアルコールと比べて、膠は、墨液が紙などに塗布されたときにおける透明性がより高く、また、固形墨の水への溶解性がより高い。膠は、以下のような複数の性能をバランス良く有する。例えば、掛軸(かけじく)、屏風(びょうぶ)、衝立(ついたて)、額(がく)などを仕立てる表具(又は表装)のために、書作品の裏側に糊で表具紙を貼り付けたときに、膠を採用していることによって、書作品を波打たせず平滑に奇麗に仕上げることができる。また、膠は、製造中の固形墨の中間体を適度にゲル化させることができ、よって、比較的簡便に型に入れることができるという良好な成形性を付与できる。
例えば、滲みを表現するために水で薄めた墨汁を使って筆先で線を描くと、良好な滲みがあまり表現できない。具体的には、筆先が通った基線と、基線の外側(滲む部分)とが同様の濃さとなり、美麗性の低い線となってしまう。この原因は、炭素粒子があまり凝集せずに墨汁中で分散し、炭素粒子の凝集体のサイズ分布のバラツキが少ないためであると考えられる。
また、本実施形態の固形墨で調製された墨液における固形分濃度がかなり低い場合、独特の滲みを表現することができ、良好な美麗性を発揮できる。具体的には、墨液を含む筆先が通った基線と、基線の外側(滲む部分)との境界が明確となり、美麗性の高い線を描くことができる。
また、本実施形態の固形墨は、墨液における固形分濃度を随時調節できる。具体的には、いったん固形分濃度が低くなるように硯の上で墨液を調製しても、固形墨をさらに硯の上ですることによって、墨液の固形分濃度を上げることができる。反対に、墨液を水で希釈することによって、固形分濃度を下げることもできる。従って、固形分濃度の高い墨液で灰色の線などを表現すること、及び、固形分濃度の低い墨液で美麗性のある線などを表現することの両方を比較的容易に実施できる。
具体的には、まず、粒子状の黒鉛と、膠の水溶液とを混合する。混合は、一般的な撹拌混合機を用いて実施できる。混合物(以下、固形墨の中間体ともいう)が適度な硬さとなるように、水を添加してもよい。
次に、固形墨の中間体を板の上でさらに混錬した後、固形墨の中間体を棒状に引き伸ばす。棒状の固形墨の中間体を型の内部に入れ、成形する。成形された固形墨の中間体を型から取り出し、乾燥処理を施す。乾燥処理において、具体的には、型から取り出した固形墨の中間体を新聞紙に挟み、その新聞紙ごと木灰に埋め、木灰内で固形墨を徐々に乾燥させ、例えば14日経過させる。その後、空気中で乾燥する。乾燥処理の温度や継続時間は、適宜調整される。
以上のようにして本実施形態の固形墨を製造できる。
塗布対象物に墨液を塗布するための道具は、特に限定されないが、例えば筆である。
[粒子状の黒鉛]
・鱗片状黒鉛
製品名「Z-5F」伊藤黒鉛工業社製 平均粒子径4.0μm
製品名「W-5」伊藤黒鉛工業社製 平均粒子径4.0μm
・人造黒鉛
製品名「ABG-5」伊藤黒鉛工業社製 平均粒子径5.0μm
・土状黒鉛
製品名「CP-2000」伊藤黒鉛工業社製 平均粒子径4.5μm
製品名「APR」中越黒鉛工業所社製 平均粒子径25μm
[膠]
製品名「はりま-2(TS-201)」 寺脇産業社製、又は、
製品名「飛鳥」 旭陽化学工業社製
調製した墨液を水で50倍に希釈し、希釈液を光学顕微鏡によって観察した。いずれの黒鉛を採用しても、より大きい凝集体とより小さい凝集体とが混在し、両者のサイズ差が比較的大きい様子が観察された。代表例として、上記の「Z-5F」を黒鉛として用い、上記の「はりま-2(TS-201)」を膠として用いたときの顕微鏡観察像を図1に示す。
上記のごとくサイズが異なる凝集体が混在した状態の墨液は、ポリビニルアルコールではなく膠(ニカワ)を使って製造した固形墨を用いることによって調製されると考えられる。よって、黒鉛と膠とを含む固形墨から調製した墨液によれば、後の図3(a)で示すような美麗性を発揮できると考えられる。
上記の「Z-5F」を黒鉛として用い、上記の「はりま-2(TS-201)」を膠として用いた固形墨を使って調製した墨液(固形分濃度が比較的高い墨液)を含んだ筆先で線を描いた。紙としては、コピー紙を使用した(図2の(a)を参照)。
また、上記の「ABG-5」を黒鉛として用い、上記の「はりま-2(TS-201)」を膠として用いた固形墨を使って調製した墨液(固形分濃度がかなり低い墨液)を含んだ筆先で線を描いた。紙としては、画仙紙を使用した(図3(a)を参照)。
比較例として、黒鉛を含まない従来の固形墨を使って調製した墨液を含んだ筆先でも、上記と同様にして線を描いた(図2及び図3の(b)を参照)。
なお、墨液中における固形墨の固形分濃度をより高くすることによって、滲みをより十分に抑制することができた。
一方、墨液中における固形墨の固形分濃度をかなり低くした墨液で線を描いた場合にも、美麗性を発揮することができ、線の独特な表現が可能となった(図3の(a)を参照)。
また、本発明の固形墨は、例えば、上記のごとき墨液の調製で用いられたうえで、さらに着色顔料又は着色染料と組み合わされて使用される。具体的には、上記の墨液と、着色顔料又は着色染料とを混合して調製した着色用組成物によって、従来にない色合いを絵画などにおいて表現できる。
Claims (3)
- 粒子状の黒鉛と膠とを含む固形墨であって、
前記固形墨に含まれる炭素粒子のうち前記黒鉛の占める割合が80質量%以上である、固形墨。 - 前記黒鉛の粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内である、請求項1に記載の固形墨。
- 前記黒鉛が少なくとも鱗片状黒鉛を含有する、請求項1又は2に記載の固形墨。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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| JP2022022983A JP7803519B2 (ja) | 2022-02-17 | 2022-02-17 | 固形墨 |
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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| JP2022022983A JP7803519B2 (ja) | 2022-02-17 | 2022-02-17 | 固形墨 |
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| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2023119876A JP2023119876A (ja) | 2023-08-29 |
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| Country | Link |
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Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2003202556A (ja) | 2002-11-18 | 2003-07-18 | Seiko Epson Corp | カラーフィルタ基板、その製造方法、液晶表示パネルおよび電子機器 |
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- 2022-02-17 JP JP2022022983A patent/JP7803519B2/ja active Active
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| JP2023119876A (ja) | 2023-08-29 |
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