本発明は、ここでより完全に以下に記載される。しかしながら、本発明は、様々な形態で具体化されうるものであり、本明細書に記載される実施態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろこれらの実施態様は、本開示が徹底的且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
本明細書における本発明の説明に使用される用語は、単に特定の実施態様を説明することを目的としており、本発明を制限することを企図されない。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、本発明の説明及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈によって別段明らかに示されない限り、複数形態も同様に含むことを企図される。
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。語、例えば一般に使用される辞書において定義されている語、は、本願及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書にそのように明確に定義されない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことを、更に理解されよう。本明細書の本発明の説明において使用される用語は、単に特定の実施態様を説明することを目的としており、本発明を制限することを企図されない。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許文書及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。用語に矛盾が生じる場合、本明細書が優先する。
また本明細書において使用される場合、「及び/又は」は、列挙される関連項目の1以上のありとあらゆる可能な組合せを云い、且つそれを包含し、代替と解釈される場合(「又は」)には組合せを含まないことを云い、且つそれを包含する。
構成成分の重量パーセント(重量%)は、特に断りがない限り、該構成成分が含まれている配合物又は組成物の総重量に基づく。
構成成分のモルパーセント(モル%)は、特に断りがない限り、該構成成分が含まれている配合物又は組成物の各単位の総モル数に基づく。
本明細書において使用される場合、「分子量」は、別段明確に示されない限り、1H NMR分光法又は他の分析方法、例えばゲル浸透クロマトグラフィー、によって場合によって測定される数平均分子量を云う。
本明細書において使用される場合、「コポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーと2以上の種類の単位の反応から製造されたポリマーである。
本明細書において使用される場合、「マルチブロックポリマー」(又はセグメントブロックコポリマー)は、互いに共有結合によって結合している少なくとも2つの異なるモノマーの、交互の均質なセグメント(即ち、ブロック)からなるコポリマーである。これらのモノマーは、化学的に異なっている場合、それぞれのランダムコポリマー又はホモポリマーのブレンドとは著しく異なる。「ブロック」のセグメントは、各ブロックに存在するモノマーの数に応じて、サイズ及び分子量も異なることができる。マルチブロックコポリマーの各ブロックは、同じ分子長でなくてよい。例えば、テトラブロックコポリマーにおける各ブロックのブロック長は、固有の値を有することができる。
語「水和数」は、本明細書において使用される場合、所与の濃度の水性溶液中でイオンと組み合わせることができる水分子の数を云う。
語「水の取り込み(WU)パーセンテージ」は、ポリマーによって吸着される、パーセンテージとして表される水の量である。即ち、ポリマーが水を含有する場合、ポリマーにおける水の重量をポリマーの総重量によって割ったものである。
語「膨潤率」は、本明細書において使用される場合、コポリマーによって吸収されることができる液体物質の量を云う。
語「イオン交換能」は、ポリマーの質量当たりの電荷当量である。イオン交換能は、ポリマー1グラム当たりのミリ電荷当量、meq./gで表されることができる。ポリマー内の二価イオンは、一価イオンと比較して2倍の電荷当量を有する。
語「水酸化物イオン伝導率」語は、当業者に既知の伝導率又はインピーダンス測定によって測定されることができる通り、ポリマー内の水酸化物イオンのイオン伝導である。イオン伝導率の単位は、ジーメンス/cm(S/cm)又は1/(オームcm)である。ジーメンスは逆オームである。
語「モノマー」は、本明細書において使用される場合、ポリマーを合成する為に使用される構成単位の1つを云う。
語「架橋剤」は、本明細書において使用される場合、同じポリマー鎖の2つの部分又は2つの異なるポリマー鎖を連結する化学的単位を形成することができる、分子、イオン又は他の化学的単位を云う。
語「アルキル」は、本明細書において使用される場合、1~20個の炭素原子の分岐状又は非分岐状の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル、等である。アルキル基はまた、置換又は非置換にされることができる。
語「第四級アンモニウム」は、本明細書において使用される場合、式NA4
+(Aは、水素又は炭化水素となることができる)によって表される。
アニオン交換膜(AEM)は、幾つかの電気化学的デバイス(即ち、燃料電池、電解槽、レドックスフロー電池)にとって関心の対象である(Mekhilef, S. et al., Renewable Sustainable Energy Rev. 2012, 16, 981-989;Carrette, L. et al., Fuel Cells 2001, 1, 5-39)。長期的アルカリ安定性及び高水酸化物イオン伝導率を有するAEMの開発は、現在、関心の対象となっている(Winter, M. et al., Chem. Rev. 2004, 104, 4245-4269;Steele, B. C. et al., Nature 2001, 414, 345-352;Varcoe, J. R. et al., Energy Environ. Sci. 2014, 7, 3135-3191' Lu, S.;Pan, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008, 105, 20611-20614)。高pHでの燃料電池及び電解槽の操作は、特に酸素の還元及び発生の為の非貴金属触媒の使用、並びにプロトン交換膜(PEM:proton-exchange membranes)デバイスと比較した燃料クロスオーバーの低減を可能にする(Yu, E. H. et al., Energy Environ. Sci. 2012, 5, 5668-5680;Hickner, M. A. et al., J. Polym. Sci. Part B: Polym. Phys. 2013, 51, 1727-1735;Zhou, J. et al., J. Electrochem. Soc. 2013, 160, F573-F578;Mohanty, A. D. et al., J. Mater. Chem. A 2014, 2, 17314-17320;Liu, L. et al., J. Mater. Chem. A 2016, 4, 16233-16244)。初期のAEMは、低イオン伝導率、高pHでの低い安定性、及び高い水の取り込みを有していた(Mandal, M. et al., J. Membr. Sci. 2019, 570-571, 394-402;Mohanty, A. D. et al., J. Electrochem. Soc. 2017, 164, F1279-F1285;Arges, C. G. et al., ACS Appl. Energy Mater. 2018, 1, 2991-3012)。しかしながら、近年の研究は、繋ぎ止められた長鎖トリメチルアンモニウム(TMA)カチオンが、高められた温度でのアルカリ環境において安定であることを示している(Zhang, X. et al., Polym. Chem. 2018, 9, 699-711;Shi, Q. et al., Polymer 2017, 121, 137-148;Weiber, E. A. et al., Polym. Chem. 2015, 6, 1986-1996;Akiyama, R. et al., Macromolecules 2016, 49, 4480-4489)。高い水酸化物イオン伝導率は、燃料電池、バッテリー及び電解槽の為の膜において非常に重要である。マルチブロックコポリマーの使用は、ランダムコポリマーと比較して水酸化物イオンの移動度を改善することができる(Shimada, M. et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2016, 54, 935-944)。このことは、ランダムコポリマーと比較して、ブロックコポリマーにおける相分離の度合いが高く、これにより効率的なイオンチャネルが形成されることに起因する。更に、膜中の水の管理は、機械的変形(即ち、水膨張)及びイオン伝導率の制御において重要な役割を果たすことができる。水は、可動水酸化物イオン及び固定カチオンの為のイオン性水和シェルを形成する為に、膜に必要である。しかしながら、過度の水の取り込みは、イオン伝導チャネルを膨張させて、イオン伝導率を低減し(即ち、イオン移動度を低減し)、膜を軟化するおそれがある。従って、遊離した非結合(非生産的)水の量が最小化されるように、イオン伝導性チャネルサイズを最適化する必要がある。
AEMの長期的安定性は、ポリマー骨格の化学的性質、ポリマー構造内のカチオンの位置、及び固定カチオンの化学的性質に応じて大きく変わる。過去にAEMとして、ポリ(アリーレンエーテルスルホン)に基づくポリマー(Fujimoto, C. et al., J. Membr. Sci. 2012, 423-424, 438-449;Nunez, S. A. et al., ACS Macro Lett. 2013, 2, 49-52;Arges, C. G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2013, 110, 2490-2495)及びポリ(アリーレンエーテルケトン)(Long, H. et al., J. Phys. Chem. C 2012, 116, 9419-9426;Lee, W. H. et al., ACS Macro Lett. 2015, 4, 453-457)が研究された。高pHでは著しい分解が観察された。ポリマー骨格におけるポリスルホン及びポリケトン基は、水酸化物イオンによる求核性攻撃を受けやすかった。ポリ(アリールエーテル)骨格は、高pHでC-O結合の切断を受け、それによって長時間の使用を制限する(Ono, H. et al., J. Mater. Chem. A 2017, 5, 24804-24812;Lee, W. H et al., ACS Macro Lett. 2015, 4, 814-818;Park, D. Y. et al., J. Phys. Chem. C 2013, 117, 15468-15477)。
ポリマー骨格に加えて、固定カチオン性ヘッド基の求核性攻撃も、分解をもたらす。第四級アンモニウムヘッド基の分解機序は、β-水素ホフマン脱離、直接求核置換(SN2)及びイリド形成による脱離を包含する(Chen, X. C. et al., Nano Lett. 2014, 14, 4058-4064;Inceoglu, S. et al., ACS Macro Lett. 2014, 3, 510-514)。Hibbs等は、トリメチルアンモニウム(TMA)カチオンとポリマー骨格との間のヘキサメチレンスペーサーが、4MのKOH中80℃において、トリメチルベンジルアンモニウム(BTMA)カチオンよりも良好な安定性をもたらすことを見出した(Sun, J. et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 14990-14997)。Miyatake等は、ペンダント鎖の長さを最適化し、3つの炭素原子を有する側鎖が、AMEの高伝導率と低い水の取り込みとの間のバランスをもたらすことを見出した(Ahmad Mahmoud, et al., J. Mater. Chem. 2018, 6, 1440-14409)。後にMohanty等は、小分子の安定性を比較することによって、長いアルキル鎖によって骨格に繋ぎ止められた第四級アンモニウムヘッド基が最良のアルカリ安定性を有すると報告した。長いアルキル鎖に結合したカチオンは、ホフマン脱離反応に対してバリアを増大し、分解のリスクを最小限にする(Sun, J. et al., Macromolecules 2016, 49, 3083-3090)。全てが炭化水素の骨格及び長いアルキル鎖上に繋ぎ止められた第四級アンモニウム基の組合せを有するポリマーは、最良の長期的アルカリ安定性を有することが観察された(Price, S. C. et al., Macromolecules 2013, 46, 7332-7340;Meek, K. M. et al., Macromolecules 2015, 48, 4850-4862;He, X. et al., RSC Adv. 2015, 5, 63215-63225)。
Price等は、開環メタセシス重合(ROMP)によって、80℃で177mS/cmの高いイオン伝導率を有する水素化ポリ(ノルボルネン)をアニオン交換膜として合成した。その膜は、伝導率は高いが、機械的に弱く、アルカリ条件下で不安定であった(Kim, D.-G. et al., Chem. Mat. 2015, 27, 6791-6801)。Register等は、リビング重合における置換ノルボルネンのビニル付加重合によるブロックコポリマーの合成、及び浸透気化膜としてのそれらの使用を記載した(He, S. Q. et al., J. Membr. Sci. 2016, 509, 48-56;Xu, W. et al., Adv. Funct. Mater. 2015, 25, 2583-2589;Wang, J. et al., J. Membr. Sci. 2012, 415-416, 205-212)。過去の研究では、高いTg(385℃)のポリノルボルネンは、優れた安定性を有することが示された(Tibbits, A. C. et al., J. Electrochem. Soc. 2015, 162, F1206-F1211)。
本開示では、スキーム1の通り、ノルボルネンのビニル付加重合に基づいて一連のテトラブロックAEMコポリマーを調製する為に、容易な合成戦略が使用された。
AEMは、溶液から流延され、伝導率に対する結合水及び非結合水の影響が評価された。驚くべきことに、軽度の架橋を含むテトラブロックAEMコポリマーは、高いIECを示すと同時に、良好な水酸化物イオン移動度を維持した。更に、高い熱安定性、優れた機械的特性及び高pH(80℃の1MのNaOH溶液)での長期間における無視できるほどの分解が実証された。そのAEMは、全アルカリ燃料電池において膜として使用された。
従って、本発明の一観点は、ノルボルネンに基づく1以上の親水性ブロック、及び1以上の疎水性ブロックを含む、マルチブロックコポリマーに関する。幾つかの実施態様において、1以上の疎水性ブロックは、ノルボルネンに基づく疎水性ブロックである。ノルボルネンに基づく疎水性ブロックは、分岐状又は非分岐状の飽和C1~C20アルキル鎖(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、又はC20アルキル鎖)で置換されているノルボルネン構造を有する疎水性モノマーを含む。幾つかの実施態様において、アルキル鎖は、ハロゲン化されうる(即ち、アルキル鎖にわたって位置する1以上のハロゲン(例えば、Cl、Br、F、又はI)を含む)。例えば幾つかの実施態様において、アルキル鎖は、臭素、塩素又はフッ素でハロゲン化される。幾つかの実施態様において、ハロゲンは、疎水性モノマーのハロゲン化アルキル鎖の末端位置に位置される。幾つかの実施態様において、アルキル鎖は、ハロゲン化されない。幾つかの実施態様において、アルキル鎖は、C3~C6アルキル鎖である。1以上のノルボルネンに基づく疎水性モノマーが組み合わされる場合、「ノルボルネンに基づく疎水性ブロック」が形成され、ここでノルボルネンに基づく疎水性モノマーの数(n)は変わることができる。幾つかの実施態様において、ノルボルネンに基づく疎水性モノマーの数(n)は、約10~約1,000、約100~約1,000、又は約500~約1,000である。例えば、本発明のマルチブロックコポリマーに存在するノルボルネンに基づく疎水性ブロックは、式(I)によって表される構造を含む
ここで、
R1は、分岐状若しくは非分岐状の飽和C1~C20アルキル鎖又はハロゲン化アルキル鎖であり、
nは、1~約1,000の整数である。
幾つかの実施態様において、1以上の疎水性ブロックは、アルケンに基づく疎水性ブロックである。アルケンに基づく疎水性ブロックは、式(II)によって表される構造を有する1以上の疎水性モノマーを含む
ここで、
R2及びR3は、独立して、H及び分岐状若しくは非分岐状の飽和C1~C20アルキル又はハロゲン化アルキル鎖から選択され、
xは、約10~1,000の整数である。
ノルボルネンに基づく親水性ブロックは、カチオン性ヘッド基を有する分岐状又は非分岐状の飽和C2~C20アルキル鎖(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、又はC20アルキル鎖)(例えば、分岐状若しくは非分岐状のC2~C20、C2~C10、又はC4~C6アルキル鎖)で置換されているノルボルネン構造を有する親水性モノマーを含む。カチオン性ヘッド基は、正電荷を担持する任意の基、例えば第四級アンモニウム基、-+NR3(Rは、H又はアルキル基である(例えば、Rは、メチル、エチル等である))、とすることができる。カチオン性ヘッド基は、末端又は非末端でありうる。幾つかの実施態様において、2以上のカチオン性ヘッド基が、ノルボルネンに基づく親水性モノマーに存在する。幾つかの実施態様において、ノルボルネンに基づく親水性モノマーは、正電荷の第四級アンモニウムカチオン性ヘッド基で終端している飽和C4~C10アルキル鎖で置換されているノルボルネン構造を含む。1以上のノルボルネンに基づく親水性モノマーが組み合わされる場合、「ノルボルネンに基づく親水性ブロック」が形成され、ここでノルボルネンに基づく親水性モノマーの数(m)は変わることができる。幾つかの実施態様において、ノルボルネンに基づく親水性モノマーの数(m)は、約10~約1,000、約100~約1,000、又は約500~約1,000である。
例えば、本発明のマルチブロックコポリマーに存在する、ノルボルネンに基づく親水性ブロックは、式(III)によって表される構造を含む
ここで、
R4は、1以上のカチオン性ヘッド基を有する分岐状又は非分岐状の飽和C2~C20アルキル鎖であり、
mは、約10~1,000の整数である。
幾つかの実施態様において、カチオン性ヘッド基は、第四級アンモニウムヘッド基であり(例えば、-+N(R)3)であり、ここで、Rは、分岐状又は非分岐状の飽和C1~C10アルキル鎖(例えば、-CH3)である。幾つかの実施態様において、カチオン性ヘッド基は、末端第四級アンモニウムヘッド基(例えば、-N(CH3)3
+)である。幾つかの実施態様において、R4は、飽和のC3(即ち、プロピル)又はC4(即ち、ブチル)アルキル鎖である。幾つかの実施態様において、R4は、末端カチオン性ヘッド基(例えば、-N(CH3)3
+)を有するC3又はC4-アルキル鎖(例えば、プロピル又はブチル)である。
幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれよりも多いブロックを含み、これらのブロックは、親水性及び/又は疎水性である(例えば、ノルボルネンに基づく親水性ブロック、ノルボルネンに基づく疎水性ブロック、及び/又はアルケンに基づく疎水性ブロック)。幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーは、ノルボルネンに基づく1以上の親水性ブロック、及び1以上のノルボルネンに基づく疎水性ブロックを含む。幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーは、ノルボルネンに基づく1以上の親水性ブロック、及び1以上のアルケンに基づく疎水性ブロックを含む。幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーは、2~8個のブロックを含む。幾つかの実施態様において、親水性及び/又は疎水性ブロックは、マルチブロックコポリマー中で交互に存在する。幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーは、全てが炭化水素の骨格を含む。
幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーに存在する疎水性ブロックの量は、変わることができる。例えば幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーは、約30%~約40%(又は約30%から、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、又は約40%)のモルパーセントの1以上の疎水性ブロックを含む。例えば幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーは、約10%~約30%(又は約10%から、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、又は約30%)の重量パーセントの1以上の疎水性ブロックを含む。
幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーに存在する親水性ブロックの量は、変わることができる。例えば幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーは、約60%~約70%(又は約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、65%、66%、67%、68%、69%、又は70%)のモルパーセントの1以上の親水性ブロックを含む。例えば幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーは、約70%~約90%(又は約70%から、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、又は約90%)の重量パーセントの1以上の疎水性ブロックを含む。
幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーは、約1:250~約250:1の、ノルボルネンに基づく親水性モノマーと疎水性モノマーとの比を有する。例えば、ノルボルネンに基づく親水性モノマーと疎水性モノマーとの比は、約1:250、1:200、1:100、1:75、1:50、1:25、1:20、1:15、1:10、1:5、1:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、50:1、75:1、100:1、200:1、又は250:1である。
幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーに存在する各ノルボルネンに基づく親水性ブロック及び/又は疎水性ブロックは、約5~約20kDa又は約5~約15kDaの分子量を含む。
幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーは、約10~約75kDa又は約20~約45kDaの分子量を含む。
幾つかの実施態様において、本発明のマルチブロックコポリマーは、架橋剤で架橋される。架橋は、1個のポリマー鎖を別のポリマー鎖に化学的に結合させるか、又は代替として、化学的な鎖の一部を同じ鎖の別の部分に化学的に結合させる作用である。ポリマーの架橋は、ポリマーが機械的応力下でどのように挙動するかを変える新しい結合を作り出すことによって、機械的特性を調節することができる。変数、例えば架橋密度及び架橋の化学的性質、は、ポリマーの最終的な特性を更に変えることができる。開示されるマルチブロックコポリマーは、マルチブロックコポリマー上の化学的部位と反応することができる少なくとも2個の官能基を含む架橋剤で架橋される。最終結果は、架橋剤を組み込む化学的架橋を作り出すことである。
幾つかの例において、該架橋剤は、2個以上(例えば、3個以上、4個以上、又は5個以上)の反応基を含むことができる。幾つかの例において、該架橋剤は、6個以下(例えば、5個以下、4個以下、又は3個以下)の反応基を含むことができる。該架橋剤の反応基の数は、上述の最小値のいずれかから上述の最大値のいずれかまで、例えば2~6個(例えば、2~4個、4~6個、3~5個、2~3個、3~4個、4~5個、又は5~6個)の範囲とすることができる。該架橋剤の好適な反応基は、それに限定されるものでないが、求核性基、例えばアミン、を包含する。幾つかの実施態様において、該架橋剤は、少なくとも2個のアミン官能基(即ち、反応基)を有する分岐状又は非分岐状の飽和C2~C10アルキル鎖を含むマルチアミンである。幾つかの実施態様において、該架橋剤は、分岐状又は非分岐状のC2~C10アルキル鎖を含むアルキルジアミンである。例示的な架橋剤は、それに限定されるものでないが、エチレンジアミン、プロピルジアミン、ブチルジアミン、1,5-ペンタンジアミン及び/又は1,6-ヘキサンジアミンを包含する。幾つかの実施態様において、該架橋剤は、C6アルキルジアミン(例えば、1,6-ヘキサンジアミン)である。
コポリマーに組み込まれる架橋に好適な官能基は、求電子性官能基、例えばそれに限定されるものでないが求電子性炭素原子、例えば脱離基、例えばハロゲン(例えば、Cl、Br、F、I)又はスルホネート(例えば、メシレート、トリフレート、トシレート)、に結合している炭素原子を包含する。従って、求核性官能基(例えば、-NR2基(RはH又はアルキルである))を含む架橋剤を用いる、求電子性官能基、例えば脱離基に結合した炭素、を含む本発明のコポリマーの架橋は、架橋コポリマーを得る為の求核置換反応(SN2反応)によって生じる。
架橋の量、従って反応に関与するコポリマーの反応基の数は、所望の量の架橋剤を選択することによって制御されることができる。即ち、架橋の程度を決める為に、試薬の化学量論量が使用されることができる。架橋の量は、様々な分析技術、例えば薄層クロマトグラフィー、赤外分光法、ゲル浸透クロマトグラフィー、及びNMR、によってモニタリングされることができる。架橋反応において使用される架橋剤のモルパーセントは、架橋に利用可能なポリマー上の部位の総モルに対して約1%以上のモルパーセントとすることができる。本明細書において、パーセンテージは、モルパーセントを云い、場合によってモル%として表される。(例えば、約1%以上、約3%又はそれよりも多い、約5%又はそれよりも多い、約10%又はそれよりも多い、約15%又はそれよりも多い、約20%又はそれよりも多い、約25%又はそれよりも多い、約30%又はそれよりも多い、約35%又はそれよりも多い、約40%又はそれよりも多い、又は約45%又はそれよりも多い)。幾つかの例において、使用される架橋剤の量は、架橋に利用可能なポリマー内の部位の総数に対して約10%以下(例えば、約9%以下、約8%若しくはそれ未満、約7%若しくはそれ未満、約6%若しくはそれ未満、約5%若しくはそれ未満、約4%若しくはそれ未満、約3%若しくはそれ未満、約2%若しくはそれ未満、又は約1%若しくはそれ未満)とすることができる。使用される架橋剤の量は、上述の最小値のいずれかから上述の最大値のいずれかまでの範囲とすることができる。例えば、使用される架橋剤の量は、重合化されるモノマーの総量に対して約1%~約50%(例えば、約1%~約50%、約5%~約50%、約10%~約40%、約20%~約30%)とすることができる。
従って、本発明の幾つかの実施態様は、本発明のマルチブロックコポリマーの1以上の親水性ブロックを、上述の通りの1以上の架橋剤で架橋することを含む、架橋マルチブロックコポリマーを製造する方法に関する。幾つかの実施態様において、該架橋剤は、少なくとも2個のアミン官能基を有する分岐状又は非分岐状の飽和C2~C10アルキル鎖を含むマルチアミンアルキル鎖である。マルチブロックコポリマーの1以上の親水性ブロックは、飽和C1~C20ハロゲン化アルキル鎖を含む。当業者であれば、飽和C1~C20ハロゲン化アルキル鎖が、上述の通りの少なくとも1つの以上の求電子性炭素原子(即ち、脱離基、例えばハロゲン、と結合した炭素原子)を含有することを認識するはずである。
幾つかの実施態様において、架橋コポリマーは、1以上のノルボルネンに基づく親水性モノマーの1以上のカチオン性ヘッド基(例えば、-+NR3(ここで、Rは、H又はアルキルである))に結合した、分岐状又は非分岐状の1以上の飽和C2~C20アルキル鎖を有する架橋剤を含む。例えば幾つかの実施態様において、架橋コポリマーは、C4~C6アルキル鎖を有する架橋剤を含む。幾つかの実施態様において、1以上のノルボルネンに基づく親水性モノマーのカチオン性ヘッド基は、アルキル鎖架橋剤を介して互いに架橋される。
例えば幾つかの実施態様において、本発明のコポリマーは、下記の式(IV)によって表される構造を含む
ここで、
R4は、分岐状又は非分岐状の飽和C1~C20アルキル鎖であり、
R1は、分岐状又は非分岐状の飽和C2~C20アルキル鎖であり、
Xは、カチオン荷電のヘテロ原子を含むカチオン性ヘッド基(例えば、+N(R)2)であり、ここで、Rは、分岐状又は非分岐状のC1~C10アルキル鎖(例えば、-CH3)である、
R5は、分岐状又は非分岐状の飽和C2~C10アルキル鎖を含む架橋剤であり、
n、m、o、及びpは、約1~約1,000から独立して選択される整数である。
コポリマーに存在する架橋剤の濃度は、変わることができる。例えば幾つかの実施態様において、該架橋剤の濃度は、約5~約50%、約10%~約40%、約20~約30%(又は少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、又は少なくとも約50%)である。これらは全てモル%とされる。
本発明の別の観点は、本発明のマルチブロックコポリマー組成物を含むアニオン交換膜に向けられている。幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、上述の通りの1以上の架橋マルチブロックコポリマーを含む。幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、上述の通りの1以上の非架橋マルチブロックコポリマーを含む。幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、マルチブロックポリマー内に、且つ/又はブロックコポリマー内の相分離に起因して形成するAEM内に、疎水性及び親水性領域を含む。コポリマー中の1以上のアニオン伝導チャネルの存在は、AEMの伝導特性を促進する。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約1.5~約4.5meq./g、約1.75meq./g~約4.25meq./g、約2.0meq./g~約4.00meq./g、約2.25meq./g~約3.75meq./g、約2.50meq./g~約3.75meq./g、約2.75meq./g~約3.75meq./g、約3.00meq./g~約3.50meq./g、又は約3.25meq./g~約3.50meq./g(又は少なくとも約1.5meq./g、約2meq./g、約2.5meq./g、約3meq./g、約3.5meq./g、又は少なくとも約4meq./g)のイオン交換能を有する。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約25~約275mS/cm、約35~約250mS/cm、約50mS/cm~約225mS/cm、約75mS/cm~約200mS/cm、約100mS/cm~約175mS/cm、又は約125mS/cm~約175mS/cm (又は少なくとも約25mS/cm、約50mS/cm、約75mS/cm、約100mS/cm、約125mS/cm、約150mS/cm、約175mS/cm、約200mS/cm、約225mS/cm、又は少なくとも約250mS/cm)の水酸化物イオン伝導率を含む。水酸化物イオン伝導率は、様々な温度で測定されることができる。例えば幾つかの実施態様において、水酸化物イオン伝導率は、約20℃~約100℃、約25℃~約80℃、又は約25℃~約65℃(又は少なくとも約25℃、約35℃、約45℃、約55℃、約65℃、約75℃、約85℃、又は少なくとも約95℃)の温度で測定される。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約10%~約80%、約15%~約75%、約25%~約65%、又は約40%~約60%(又は少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は少なくとも90%)の水の取り込みパーセンテージを有する。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約5~約30、約5~約25、約5~約20、又は約5~約15(又は少なくとも約5、約10、約15、約20、又は少なくとも約25)の水和数を有する。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約15%~約50%、約20%~約40%(又は少なくとも約10%、約20%、約30%、又は約40%)の膨張比を有する。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、イオン対1個当たり約1個~約10個又は約3個~約6個(又は少なくとも約1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個、約7個、約8個、又は少なくとも約9個)の幾つかの凍結可能な水分子を含む。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、イオン対1個当たり約1個~約50個又は約10個~約25個(又は少なくとも約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、又は少なくとも約45個)の幾つかの結合水分子を含む。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、安定剤で安定化され、且つ/又は強化される。該安定剤は、コポリマーの物理的特性を調節して、外部ストレッサーに対してコポリマーの安定性及び耐久性を増大する為の、当技術分野で既知の任意の薬剤とすることができる。安定化剤の例は、それに限定されるものでないが、パーフッ素化されたテトラフルオロエチレン(PFTE:perfluorinated tetrafluoroethylene)又はポリオレフィン(PO)を包含する。該安定剤は、織布若しくは不織布、又は個々の繊維の形態をとることができる。該安定剤の個々のストランドのサイズは、0.01~1.0mm又はそれよりも大きい寸法を有する、分子サイズのストランドからマクロストランドとすることができる。AEMの物理的特性、例えば引張強度、破断点伸び、及びヤング弾性率、は、安定化剤を用いて調整されることができる。
AEMに存在する安定剤の量は変わり、使用される安定剤の種類及び得られる所望の物理的特性に依存する。例えば幾つかの実施態様において、該安定剤の量は、約2重量%~80重量%である。ある場合には、該安定剤の量は、10重量%~50重量%である。該安定剤の量が多いほど、複合フィルムは強力になりうるが、該安定剤は、イオン伝導率に対してあまり又は全く貢献しうることはないので、イオン伝導率が代償になる。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約10~約500MPa、約10~約250MPa、約12~約175MPa、約12~約150MPa、又は約14~約45MPa(又は少なくとも約10mPa、約25MPa、約50MPa、約75MPa、約100MPa、約125MPa、約150MPa、約175MPa、約200MPa、約250MPa、約300MPa、約325MPa、約350MPa、約375MPa、約400MPa、約425MPa、約450MPa、又は少なくとも約475MPa)の引張強度を示す。語「引張強度」は、張力の下での破断に対する材料(即ち、本発明のAEM)の抵抗を説明する。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約10%~約200%、約25%~約175%、又は約45%~約155%(又は少なくとも約10%、約20%、約30% 約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約110%、約120%、約130%、約140%、約150%、約160%、又は少なくとも170%)の破断伸びを示す。語「破断伸び」は、標準化試験片(即ち、本発明のAEM)の断裂の瞬間に存在している伸びを説明する。破断点伸びは、伸びる前の初期の長さに対するパーセンテージとして表される。
幾つかの実施態様において、本発明のAEMは、約0.0010~約1GPa、0.0050~約1GPa、約0.0050~約0.0200GPa、約0.0050GPa~約0.0175GPa、又は約0.0075GPa~約0.0150GPa(又は少なくとも約0.0010GPa、約0.0050GPa、約0.0100GPa、約0.1GPa、約0.2GPa、約0.3GPa、約0.4GPa、約0.5GPa、約0.6GPa、約0.7GPa、約0.8GPa、又は少なくとも約0.9GPaのヤング弾性率(即ち、弾性率)を示す。語「ヤング率」は、弾性率としても既知であり、線形弾性固体材料(例えば、本発明のAEM)の機械的特性を説明し、従って、材料における応力(単位面積当たりにかかる力)と歪み(比例変形)の関係を定義する。
本発明の別の観点は、当技術分野における既知の方法に従って、本発明のAEM及び/又はマルチブロックコポリマーを製造する方法に関する。例示的な方法は、それに限定されるものでないが、本発明のコポリマーを得る為の、ビニル付加重合又は開環メタセシス重合(ROMP)を介するノルボルネンの重合を包含する。例えば、金属触媒(例えば、Pdに基づく触媒)及び溶媒の存在下での置換ノルボルネン分子の重合は、重合化ノルボルネン及び/又はアルケンに基づく分子の疎水性及び/又は親水性ポリマーブロックをもたらし、そのポリマーは、全てが炭化水素の骨格を有する。使用されるモノマーと触媒との全体的な比は、約1500:1~約1:1の範囲とすることができる。例えば、ノルボルネンモノマーと触媒との比は、約1200:1、約1100:1、約1000:1、約750:1、約500:1、約100:1、約50:1、約10:1、又は約1:1とすることができる。親水性及び/又は疎水性モノマーを、成長ポリマーに逐次的且つ交互に付加することにより、本発明のマルチブロックコポリマーが得られる。幾つかの実施態様において、溶媒は、非極性溶媒、例えばトルエンを含む。反応混合物は、周囲温度又は高められた温度で静置されることができる。
本発明の別の観点は、本発明のマルチブロックコポリマーにおける1以上の親水性ブロックを、1以上の架橋剤で架橋することを含む、架橋マルチブロックコポリマーを製造する方法に関する。幾つかの実施態様において、該架橋剤は、少なくとも2個のアミン官能基を有する分岐状又は非分岐状の飽和C2~C10アルキル鎖を含むマルチアミンアルキル鎖である。例えば幾つかの実施態様において、該架橋剤は、分岐状又は非分岐状の飽和C2~C10アルキル鎖を含むアルキルジアミンである。幾つかの実施態様において、マルチブロックコポリマーの1以上の親水性ブロックは、飽和C1~C20ハロゲン化アルキル鎖を含む。
本発明の別の観点は、本発明のコポリマー及び/又は本発明のAEMを含むデバイスに関する。幾つかの実施態様において、デバイスは、電気化学的デバイスである。幾つかの実施態様において、電気化学的デバイスは、燃料電池、電解槽、及びレドックスフロー電池から選択される。幾つかの実施態様において、電気化学的デバイスは、燃料電池である。幾つかの実施態様において、燃料電池は、固定発電機及び/又は携帯式電子デバイスの一部である。
実施例
以下の実施例は、本明細書において特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス及び/又は方法がどのように製造され、評価されるかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するように記載され、本発明を純粋に例示することを企図され、本発明者等が本発明者等の本発明とみなすものの範囲を制限することを企図されない。しかしながら当業者は、開示される具体的な実施態様に多くの変更が加えられることを、本開示に照らして理解するはずであり、その上で、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様の又は類似の結果を得ることができる。
数値(例えば、量、温度等)に関して精度を確保するよう努力されているが、いくらかの誤差及び偏差は考慮に入れられるべきである。別段の指定がない限り、部は、重量部であり、温度は℃で表され、又は温度は周囲温度であり、圧力は、大気圧であり又は大気圧に近い。
実施例1
ノルボルネンのビニル付加重合に基づくアニオン性マルチブロックコポリマー膜:アニオン交換膜燃料電池における適用
材料:1-ヘキセン、5-ブロモ-1-ペンテン及びジシクロペンタジエンは、Alfa Aesarから購入され、受け取ったまま使用された。モノマーであるブチルノルボルネン(BuNB)及びブロモプロピルノルボルネン(BPNB)は、公開手順に従って、高温でディールス-アルダー反応によって合成された(Martinez-Arranz, S. et al., Macromolecules 43 (2010) 7482-7487)。重合の前に、モノマーは、ナトリウム上で蒸留することによって精製され、3回の凍結脱気サイクルによって脱気された。全ての重合反応は、グローブボックス内で、乾燥アルゴン雰囲気下で湿気及び空気が入らないように厳重に注意しながら実施された。トルエンは、ナトリウム及びベンゾフェノン上で6時間加熱還流させることによって乾燥させられた。トルエンは、使用前に新しく蒸留された。トリイソプロピルホスフィン及び[(η3-アリル)Pd(Cl)]2は、Sigma-Aldrichから購入され、受け取ったまま使用された。触媒である(アリル)パラジウム(トリイソプロピルホスフィン)クロリド((η3-アリル)Pd(iPr3P)Cl)は、既に公開されている報告に従って調製された(Lipian, J. et al., Macromolecules 35 (2002) 8969-8977)。リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)-ボレート・(2.5Et2O)(Li[FABA])は、Boulder Scientific Co.から購入され、受け取ったまま使用された。α,α,α-トリフルオロトルエン(TFT)、無水、≧99%及びテトラヒドロフラン(THF)は、Sigma-Aldrichから購入され、受け取ったまま使用された。
テトラブロックコポリマー[ポリ(BuNB-b-BPNB-b-BuNB-b-BPNB)]の合成:交互のブチルノルボルネン(BuNB)及びブロモプロピルノルボルネン(BPNB)ブロック(それぞれ2つのブロック)からなるテトラブロックコポリマーは、不活性雰囲気のグローブボックス内で室温においてモノマーを逐次的に付加する(一方を付加した後、他方を付加する)ことによって合成された。モノマーは、4つの丸底フラスコ(モノマーごとに2つ)に分けられ、各フラスコ中5重量%溶液を製造する為にトルエンが添加された。触媒溶液は、(η3-アリル)Pd(iPr3P)Cl(12mg、0.03mモル)及びLi[FABA](28mg、0.03mモル)をトルエン0.5g及びTFT0.5gから構成された溶液に溶解させることによって、バイアルに別個に調製された。触媒溶液は、20分間撹拌された。BuNB(0.45g、3.00mモル)及びトルエン(10mL)が、磁気撹拌棒を備えた100mLの丸底フラスコに添加された。触媒溶液が、激しく撹拌しながらフラスコに注入された。20分後、BuNB重合が完了した。少量の一定分量が除去され、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析の為にCH3CNでクエンチされた。次に、まだ触媒を含有している反応フラスコに、BPNB(0.64g、3.00mモル)及びトルエン(12mL)の混合物が添加され、3時間撹拌されて、BuNBポリマー上にBPNBブロックが組み込まれた。3時間の反応時間が経過した(BPNBが完全に消費された)後、少量の一定分量が取り出され、GPC分析の為にCH3CNでクエンチされた。次に、BuNB(0.45g、3.00mモル)及びトルエン(10mL)が反応フラスコに添加され、第3のブロックを組み込む為に20分間反応させられた。少量の一定分量が再び取り出され、GPC分析の為にCH3CNでクエンチされた。最後に、BPNB(0.64g、3.00mモル)及びトルエン(12mL)の混合物がフラスコに添加され、3時間撹拌されて、第4のブロックがポリマー上に組み込まれた。それが完了した後、反応混合物はクエンチされ、メタノールを添加することによってポリマーが沈殿した。得られたポリマーは、THFに溶解させられ、活性炭上で撹拌された。溶液は、任意のパラジウム残留物を除去する為に、アルミナフィルターに通過させられた。得られた生成物は、メタノールを添加することによってTHFから沈殿させられた。ポリマー生成物は、60℃において真空下で乾燥させられた。モノマーと触媒との供給比を変えることによって、異なる長さの疎水性及び親水性鎖を有するテトラブロックコポリマーが合成された。
核磁気共鳴(NMR)スペクトル及びGPC:ポリマー試料は、1H NMRによって、Bruker Avance 400MHz NMR機器を使用し、CDCl3を溶媒として使用して分析された。ポリマー試料の数平均分子量(Mn)及び多分散指数(Mw/Mn)は、LC-20AD HPLCポンプ及び屈折率検出器(RID-20A、120V)を備えたGPC(島津)によって決定された。測定は、THF中、溶出剤を1.0mL/分の流速で用いて30℃で実施された。標準ポリスチレンが使用された。
膜流延及びイオン交換:テトラブロックコポリマー(0.20g)が、クロロホルム5mLに溶解させられ、得られた溶液は、0.2μmのポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)膜シリンジフィルターを介して濾過されて直径4cmのアルミニウム皿に入れられた。溶媒は、窒素ガスストリーム中、室温で蒸発させられた。膜は、真空下で一晩乾燥させられた。膜は、無色であり、可撓性であり、約50μmの厚さで自立した。次に、膜を45重量%トリメチルアミン水性溶液に室温で48時間浸漬させることによって、ブロモブチルヘッド基が四級化された。臭化物対イオンを有する四級化された膜が、溶液から除去され、DI水で十分に洗浄された。次に、膜は、臭化物イオンを水酸化物イオンに変換する為に、1MのNaOH溶液に窒素中で24時間浸された。膜は、DI水で3回洗浄された後、DI水中で保管された。
形態学的特徴付け:AEMの形態を分析する為に、X線小角散乱(SAXS)が使用された。臭化物イオン形態での水和膜が、Center for Functional Nanomaterial(Brookhaven National Laboratory、Upton、NY)において、Pixel 3D検出器を備えたMalvern Panalytical Empyrean XRD(Netherlands)機器又はNSLS-IIビームラインのいずれかを使用して空気中で試験された。波数ベクトル(q)は、下記の式1(式中、2θは散乱角である)を使用して計算された。
特徴的な分離長又はドメイン間距離(d)(即ち、ブラッグ間隔)は、下記の式2を使用して計算された。
透過型電子顕微鏡(TEM)は、膜の形態を分析する為にも使用された。TEMは、JEOL JEM-1400透過電子顕微鏡を用いて実施された。臭化物対イオンを有する乾燥膜は、TEM検査の前に、室温においてオスミウム四酸化物で燻されることによって染色された。染色された膜は、エポキシ樹脂に包埋され、Leica UC6rt Ultramicrotomeを用いて厚さ約50nmの試料の薄片にされ、観察の為に銅製グリッド上に置かれた。
水酸化物イオン伝導率及びアルカリ安定性:膜のイオン抵抗性は、PAR2273ポテンショスタットを用いて四点面内端子及び電気化学的インピーダンス分光法(1Hz~1MHz)を使用して測定された。全ての試料が、CO2の有害作用を最小限にする為に窒素パージ下で、HPLCグレードの水中で試験された。試料は、各測定の前に30分間平衡化された。面内イオン伝導率は、下記の式3を使用して計算された。
式3では、σは、イオン伝導率(S/cm)であり、Lは、検出電極間の長さ(cm)であり、W及びTは、それぞれ膜の幅及び厚さ(cm)であり、Rは、オームで測定される抵抗である。長期間(1200時間まで)のアルカリ安定性試験は、テフロン(登録商標)加工のParr反応器内で80℃において、膜を1MのNaOH溶液中で保管することによって実施された。イオン伝導率は、膜を溶液から取り出すことによって定期的に測定され、膜は、伝導率を測定する前にDI水で十分に洗浄された。各測定の後、膜は、新しく調製されたNaOH溶液を入れた反応器に戻し入れられた。
イオン交換能(IEC:Ion exchange capacity)、水の取り込み(WU)、水和数(λ)、凍結可能な水分子の数(Nfree)及び結合した凍結不可能な水分子の数(Nbound):イオン交換能は、次の節に詳細に論じられるNMRデータを使用して計算された。更に、膜IECも、滴定によって測定された(Wang, C. et al., J. Membr. Sci. 556 (2018) 118-125)。Br-形態での膜は、最初に、臭化物イオンを塩化物イオンに交換する為に、0.1MのNaCl溶液に24時間浸漬させられた。次に、塩化物イオン形態での膜は、DI水で十分に洗浄され、乾燥重量を得る為に真空下で24時間乾燥させられた。乾燥膜は、固定体積の0.5MのNaNO3水性溶液に24時間浸漬させられた。膜から放出されたCl-イオンは、K2CrO4(10重量%)を指示薬として使用して、0.05MのAgNO3で滴定された。IECは、下記の式4を使用して計算された。
式4では、VAgNO3(mL)は、AgNO3溶液の体積であり、CAgNO3(0.05mol・L-1)は、AgNO3溶液の濃度であり、Md(g)は、乾燥膜試料の重量である。
膜の水の取り込みは、下記の式5を使用して計算された。
式5では、Mdは、膜の乾燥質量であり、Mwは、表面の過剰水を除去した後の膜の湿潤質量である。膜は、OH-形態であり、室温で測定された。イオン基1個当たりの水分子の数である水和数(λ)は、下記の式6を使用して計算された。
凍結可能な水の数(Nfree)及び結合水(又は凍結不可能な水)の数(Nbound)は、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)によって決定された。DSC測定は、Discovery DSCで、オートサンプラー(TA Instruments)を用いて行われた。膜試料は、脱イオン水に週1回浸されることによって完全に水和された。膜表面上の水が拭い去られた後、試料5~10mgが、アルミニウム鍋に入れられて迅速に封止された。試料は-50℃に冷却され、次にN2(20mL/分)の下で5℃/分の速度で30℃に加熱された。凍結可能な水及び凍結不可能な水の量は、下記の式7~式9によって決定された(Lue, S.J. et al., J. Macromol. Sci. Part B: Phys. 48 (2009) 114-127;Mecheri, B. et al., J. Phys. Chem. C 116 (2012) 20820-20829;Moster, A.L. et al., J. Appl. Polym. Sci. 113 (2009) 243-250)。
Mfreeは、凍結可能な水の質量であり、Mtotは、膜に吸収された水の全質量である。凍結可能な水の重量分率は、下記の式8を使用して計算された。
Hfは、DSC凍結ピークの積分によって得られたエンタルピーであり、Hiceは、下記の式9に従って零度を下回る凝固点に補正された水の融解エンタルピーである。
ΔCpは、液体水の比熱容量と氷の比熱容量との差である。ΔTfは、凝固点降下である。
臭化物イオン形態での乾燥膜の熱安定性は、熱重量分析(TGA:thermogravimetric analysis)を使用し、TA Instruments Q50分析器で研究された。温度は、窒素雰囲気中、10℃/分で800℃に上昇させられた。
膜電極アセンブリ(MEA)の製造及び単電池の試験:この研究で最良の性能を有する膜の1つ(PNB-X62-Y38)が、アルカリ交換膜燃料電池(AEMFC:alkaline exchange membrane fuel cell)で試験する為に選択された。AEMアノード及びカソードは、スラリー法によって製造され、同一のものであった。最初に、より低い分子量(20.5kg/モル)型のポリ(BuNB-b-BPNB-b-BuNB-b-BPNB)テトラブロックコポリマーのアニオン交換イオノマー粉末が、本開示において論じられる膜として、同じ方法を使用して合成された。低分子量イオノマー材料は、燃料電池及び電解槽電極の製造におけるポリマーバインダーとして使用するのに有利であることが既に見出されている(Ahlfield, J. et al., J. Electrochem. Soc. 164 (2017) F1648-F1653)。乾燥イオノマー粉末及びVulcan XC-72(炭素)担持50%白金触媒は、より細かい粒子を生成する為に、イソプロピルアルコール(IPA)1.5mL中、乳鉢及び乳棒を用いて10分間一緒に粉砕された。スプレーするのに適したスラリー粘度を達成する為に、追加のIPA2mLが添加され、混合物が更に5分間粉砕された。均一な分散を確保する為に、触媒及びイオノマースラリーが、水浴中、室温で30分間、更に超音波処理された。ホモジナイズされた触媒及びイオノマースラリーは、1%防水Toray TGPH-060カーボンペーパー上にスプレーされ、室温で24時間乾燥させられた。白金添加量はおよそ2.1mg/cm2であり、40%のイオノマー/炭素比が使用された。最適化されていない触媒によって引き起こされる任意の動態喪失を最小限にする為に、高い金属添加量が意図的に選択された。
MEAを試験する前に、電極及び膜は、膜及びイオノマーを水酸化物イオン形態に変換する為に、窒素雰囲気中、1MのNaOHに1時間浸された(溶液は20分ごとに置き換えられた)。MEAは、Fuel Cell Technologiesハードウェアの6ミルのPTFEガスケットを有する単一路の蛇行黒鉛プレートの間に入れられた。MEAは、Scribner 850e燃料電池試験ステーション中、60℃の電池温度で試験された。加湿H2及びO2供給ガスが、それぞれアノード及びカソードに0.5L/分で供給された。アノード及びカソードストリームの露点は、AEMFC内の水分バランスを最適化する為に、試験の工程中ずっと調整された。
テトラブロックコポリマーの合成及び特徴付け:モノマー(BuNB及びBPNB)は、既に記載されている手順によって合成された(Martinez-Arranz, S. et al., Macromolecules 43 (2010) 7482-7487)。触媒である(η3-アリル)Pd(iPr3P)Clは、過去の報告に従って、高収量及び高純度で調製された(Lipian, J. et al., Macromolecules 35 (2002) 8969-8977)。BuNBモノマーの反応性([M]0/[Pd]=100:1)は、BPNBモノマーの反応性よりも高かった。ブロックごとに完全な変換を達成する為に、ブロックごとの反応時間は変えられた(BuNBについては20分及びBPNBについては3時間)。重合を開始する為のカチオン性Pd複合体を生成するのに、1対1のモル比のLi[FABA]と触媒で十分であった。生成されたポリマーの1H NMRスペクトルにオレフィンプロトンが存在しないことは、図1Aの通り、その重合反応が、ビニル付加経路を介して進行し、開環メタセシス重合(ROMP)の発生を排除することを示している。その他の材料の1H NMRスペクトルは、図2~6に示されている。分岐副反応を回避する為に、様々なモノマーと開始剤との供給比([M]0/[Pd])について、個々のモノマーの重合時間が最適化された(Kim, D.G. et al., Chem. Mater. 27 (2015) 6791-6801)。ポリマーからモノマーへの不完全な変換は、様々なモノマーの逐次的付加によるブロックコポリマーの合成にも問題を生じるはずである(Kim, D.G. et al., ACS Macro Lett. 4 (2015) 327-330)。
一連のテトラブロックコポリマー(PNB-Xa-Yb;PNBは、ポリノルボルネンであり、aは、組み合わされた疎水性ブロックXのモルパーセントであり、bは、組み合わされた親水性ブロックYのモルパーセントである)は、疎水性ブロック(BuNB)及び親水性ブロック(BPNB)の長さを変えることによって合成された。ブロックサイズは、スキーム1の通り、重合中、トルエン中のモノマーと開始剤との供給比([M]0/[Pd])を調整することによって変更された。PNB-X67-Y33の代表的なGPCトレースは、図7に示されており、この図は、テトラブロックコポリマーの形成における各ブロックの逐次的成長を実証している。第1のブロック(BuNB)の数平均分子量(Mn)は、GPC分析によって決定された。Mnは、図7の通り12.32kDaであることが見出された。次に、第2のモノマーが反応混合物に添加され、3時間反応させられた。組み合わされた第1及び第2のブロックのMnは、19.80kDaであり、第2のブロックのMnは、7.48kDaであった。同様に、第3及び第4のブロックのMnは、それぞれ9.25kDa及び9.81kDaであることが見出された。様々な膜の特性は、表1に示されている。合成されたポリマーのMnは、38~114.9kDaの範囲であり、1.28~1.55の多分散性を有していた。IEC値は、1H NMR分光法によって決定され、後に論じられる通り1.55~2.60meq/gであることが見出された。親水性ブロックのメチルプロトンは0.89ppmで共鳴する。親水性ブロックの臭素原子に隣接するメチレンプロトンは、3.41ppmに出現する。ポリ(BuNB-b-BPNB-b-BuNB-b-BPNB)内のX及びY値は、NMRによって、図1Aの通りHa及びHbの積分比を比較することによって分析された。テトラブロックコポリマー中の組み合わされた親水性ブロック及び疎水性ブロックのモル%及び重量%は、NMRスペクトルによって計算された。
a標準ポリスチレンに対して、THF中、室温でゲル浸透クロマトグラフィーによってブロモプロピル形態で測定された。
bIEC(イオン交換能)は、ブロモプロピル形態で、
1H NMRの結果によって計算された。
cOH
-伝導率は、四端子伝導率電池によって測定された。
d80℃でのイオン伝導率/IEC。
e水の取り込みは室温で測定された。
fドメイン間距離は、臭化物イオン形態でX線小角散乱(SAXS)を使用して測定された。ND=決定されず。PNB=ポリノルボルネン、X=疎水性ブロック、Y=親水性ブロック。下付き数字は、各ブロックのモル比を示す。
形態学的特徴付け:ここで合成されたポリノルボルネン膜の微細構造を研究する為に、SAXS及び/又はTEMが使用された。ドメイン間距離(d)又は膜中の不均質間の平均分離長は、図8に示される通り、SAXSスペクトルの第1の散乱ピークのブラッグ間隔から決定された。ドメイン間距離の値は、表1に列挙されている。ドメインサイズの範囲は、37.2~86.4nmであり、これは水の取り込みと直接的な相関があった。より具体的には、非結合水の数は、ドメインサイズに追従することが分かる。より大きいドメインは、遊離(非結合)水が存在できる領域を提供する。例えば、PNB-X54-Y46は、133.6%の非常に高い水の取り込み及び86.4nmのd-間隔を示した。比較すると、これらの値は、68.8%の水の取り込み及び44.2nmのd-間隔を有していたPNB-X67-Y33の値の約2倍の大きさである。
PNB-X74-Y26は、X線散乱が他の試料の場合ほど信頼できないので、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して研究された。TEM分析は、乾燥膜中に水酸化物イオンが濃縮されることに起因する膜の偶発的な分解を回避する為に、水酸化物イオン形態ではなく臭化物イオン形態で実施された。相のサイズは、膜の親水性と共に増大したことが観察された。このことは、SAXSによって観察されたドメイン間距離の増大と合致する。またイオンチャネルは、チャネルサイズがより大きくなるにつれて、それらの明確さ及び十分に画定された構造を喪失すると思われる。図9は、膜の5つのTEM顕微鏡写真を示す。暗い領域は、臭化物対イオンを有する親水性ドメインに対応し、明るい領域は、疎水性ドメインに対応する。また、より高い親水性を有する膜は、TEM顕微鏡写真ではより暗い領域を含有する。乾燥状態のTEMを使用して観察された傾向は、SAXS測定値に見られるように、膜が水で膨張していると観察されることができた場合に、より顕著になる可能性が高いことに留意されたい。表2は、自立するAEMフィルム、及びパーフッ素化されたテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリオレフィン(PO)で強化されたフィルムの特性の比較を示す。図1Bは、文字が書かれた背景上の2つの膜の画像を示している。膜は、透明且つ無色である。
イオン交換能(IEC)、水酸化物イオン伝導率:IECは、膜のイオン伝導率及び水の取り込みを決定する重要なパラメーターである。IECは、1H NMR分光法から評価され、1.55~2.60meq/gであることが見出された。PNB-X54-Y46を代表的な試料として、IECが、3.41ppmの親水性ブロックの臭素原子に隣接するメチレンプロトンと、0.89ppmの疎水性ブロックのメチルプロトンとの積分比を比較することによって計算された。図1Aから、HaとHbとの積分比は3.46:2であったが、これは1.153:1(1個のプロトンについて)に等しい。四級化反応の程度を更に確認する為に、IECが滴定によって測定された。滴定手順は、実験の節に記載されている通り、膜中の対アニオンを塩化物イオンに変換し、その後、膜に存在する塩化物イオンの量を滴定することを含んでいた。IECについて、滴定及びNMRの2つの方法の間で優れた相関が見出された。PNB-X67-Y33では、滴定及びNMRによって測定されたIECは、それぞれ1.90meq/g及び1.92meq/gであることが見出された。
高い水酸化物イオン伝導率(σ)は、電気化学的デバイスで使用される膜において望ましい(Wang, Y.J. et al., Chem. Soc. Rev. 42 (2013) 5768-5787)。図10は、水酸化物イオン伝導率が、25℃~80℃の温度で増大し、アレニウス関係式に従ったことを示す。PNB-X68-Y32の場合、伝導率は80℃で122.7mS/cmであった。膜(PNB-X54-Y46)は、PNB-X68-Y32(IEC=1.88meq/g)と比較して、80℃で2.60meq/gの最も高いIECを有していたが、伝導率は80mS/cmで中程度であった。図11は、全ての膜についてのlnσ対1000/Tのプロットを示す。水酸化物イオン輸送活性化エネルギー(Ea)は、図11の勾配から算出され、9.33~15.28kJ モル-1であることが見出された。これらのEa値は、Nafion-117の値12.75kJ モル-1に近い(Lin, B. et al., Chem. Mater. 22 (2010) 6718-6725)。
σ/IEC比は、水酸化物イオン移動度の尺度である。この測定基準によって、PNB-X68-Y32は、より穏やかなIECを有するにもかかわらず、最も高い水酸化物イオン移動度を有していた(表1)。それとは逆に、PNB-X54-Y46の水酸化物イオン移動度は、IECが最も高かったものの、膜の中では最も低かった(表1)。IECが高いほど、相分離傾向が増大するはずなので、より高い移動度を有すると予測されうる。PNB-X68-Y32による高いアニオン移動度について考えられる説明は、その分子量である。PNB-X68-Y32の分子量がその他の試料と比較してより高いことは、PNB-X68-Y32がその他の試料と比較して水の取り込みがより低く、鎖の絡み合い度がより高いことに寄与していた。分子量の効果は、特に、PNB-X68-Y32(表1の最下列)を第3及び第4列目(それぞれ-Y33及び-Y38)と比較すると明らかである。ブロックの数は同じであり、IEC値は近い(約1.88と2.21)。しかしながら、PNB-X68-Y32については、そのブロック長がより長く、それがより良好なイオンチャネル形成を可能にするので、σ/IECはほぼ2倍である。分子量の効果については、更なる研究が行われている。
水の取り込み(WU)、水和数(λ)、凍結可能な水分子の数(Nfree)及び結合した凍結不可能な水分子の数(Nbound):水の取り込みは、AEMの伝導率及び機械的安定性を決定する非常に重要なパラメーターである。イオンの水和及び伝導には、適量の水が必要である。しかしながら、遊離水の形態での過剰の水は、膜が軟化し、チャネルが溢れることに起因して、膜電極アセンブリ(MEA)を膨張させ、性能を低下させるおそれがある。従って、イオン溶媒シェルを形成する為には、膜中に最適な量の結合水が必要とされる(Liu, L. et. al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 56 (2018) 1395-1403;Liu, L. et. al., J. Mater. Chem. A 4 (2016) 16233-16244;Liu, L. et. al., J. Mater. Chem. A 6 (2018) 9000-9008)。表1に示される通り、膜の水の取り込みは、IECの増大と共に増大し、最大133.6%に達した。最良の性能を有する膜であるPNB-X68-Y32は、80℃で63%のWU及び122.7mS/cmの伝導率を有していた。PNB-X54-Y46は、最も高いIECを有しており、従って133.6%の最も高いWUを有していたが、PNB-X68-Y32と比較してイオン伝導率は低かった(80℃で80mS/cm)。水和数(λ)は、イオン性ヘッド基1個当たりの水分子の数である。PNB-X54-Y46の高い水和数は、非生産的な水が存在し、チャネルサイズがより大きい結果であった。ドメイン間距離は、SAXSによって測定される通り、86.4nmであった。遊離水の取り込み量は、表1に示される通り、ドメインサイズと共に増大した。より具体的には、非結合水の数は、ドメインサイズに追従することが分かる。このことは、イオンチャネルが最適なサイズよりも大きい場合、非生産的な遊離水がイオンチャネルに存在できることを示している(Park, D. Y. et al., J. Phys. Chem. C 117 (2013) 15468-15477)。小さ過ぎるイオンチャネルは水の取り込みが低く、その結果、イオン移動度及び伝導率が低減したことが既に示されている。
膜中の凍結可能な水分子の数(Nfree)及び結合した凍結不可能な水分子の数(Nbound)を測定する為に、示差走査熱量測定が使用された。DSCサーモグラムでは、遊離水は、0℃直下で凍結する。遊離水の数Nfreeは、水和数を使用して、結合水の数を引くことによって得られることができる。全ての膜の結果が、表1に示されている。PNB-X68-Y32の場合、膜中のNfree及びNboundの量は、それぞれ6.7及び11.9であった。これは、既に報告されている通り、最適な数の結合水に近かった(イオン対1個当たり9~10個)。結果的に、この膜はまた、80℃で122.7mS/cmの最も高い伝導率を示した。PNB-X54-Y46では、遊離水(10.6)及び結合水(17.9)がより多く存在することによって、伝導率が低減して80℃で80mS/cmになったが、IECはPNB-X68-Y32よりも高かった(2.60対1.88)。このことは、過度に大きいイオン伝導性チャネルが形成され、それが非生産的な水で溢れたことに起因することができる。PNB-X74-Y26では、遊離水の取り込み量がより低く(0.9)、有効なイオン輸送を支えるのに十分ではなかった。従って、伝導率はより低かった(80℃で61.3mS/cm)。PNB-X67-Y33の場合、遊離水(7.8)は許容されたが、水和水の数がより大きいことに起因して、より高い結合水(12.1)によって伝導率がより低減した。PNB-X70-Y30のより低い遊離水(5.4)及びより高い結合水(13.3)は、膜中のイオン伝導率がより低い理由となった。
アルカリ及び熱安定性:膜耐久性は、電気化学的デバイスの長い操作寿命に必須である。現在のAEMのアルカリ安定性のアセスメントは、膜を1MのNaOH溶液に80℃で浸すことによって実施された。イオン伝導率の喪失が、1200時間にわたって時間に対して測定された。図12の通り、1200時間にわたってイオン伝導率に検出可能な喪失は観察されなかった(<1%)。従って、長い側鎖によってカチオンが繋ぎ止められている非加水分解性ポリマー骨格は、加水分解性ポリマー骨格(例えば、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテル)及びポリマー鎖へのカチオンのベンジル結合と比較して適切なアルカリ安定性を示すと結論付けることができる。
膜の熱安定性は、図13の通り熱重量分析(TGA)によって研究された。4つの分解段階が観察された。100℃未満での分解の第1段階は、膜からの水の喪失に起因していた。およそ250℃の第2段階は、第四級アンモニウム基の分解に起因していた。300℃~400℃の第3段階は、ポリマー中のアルキル側鎖の分解から生じた。400℃超の第4段階は、ポリマー骨格の分解に起因していた(Price, S.C. et al., Polym. Chem. 8 (2017) 5708-5717)。これらの結果は、典型的に80℃未満で操作される低温AEM燃料電池又は電解槽の操作条件で、膜が十分に安定であったことを示唆している。
燃料電池試験:PNB-X62-Y38が、その高いイオン伝導率及び優れたアルカリ安定性により、単電池アルカリ交換膜燃料電池試験の為に選択された。自立膜は、機械的にも堅牢であり、燃料電池ハードウェア内の圧縮にも損傷することなく耐えた。
燃料電池は、文献に見出される他の多くのAEMFCと同等の60℃で操作された。MEAは、ブレイクインの開始手順を受け、電池は、0.5Vで1時間放電された後、0.2Vで更に1時間放電された。アノード及びカソードの露点は、触媒層が溢れるのを回避する為に、50℃(69.51%RH)に設定された。開路電圧(OCV)は、ブレイクイン後に1.028Vであることが見出された。
初期のコンディショニング期間の後、一定の電池電圧0.2Vで加湿H2及びO2ストリームの露点を調整することによって、電池内の水分バランスが最適化された。各露点の調整後、開路から0.2Vへの放電曲線が記録された。Omasta等は、AEMFCの安定性及び性能の両方にとって、適切な水の管理が重要であることを既に見出している(Omasta, T.J. et al., J. Power Sources 375 (2018) 205-213)。アノードにおける水素酸化反応は、水を生成し、そのいくらかがAEMを介して拡散してカソードを水和するので、H2注入ストリームにおける過剰の水の取り込み量(<100%RH)は、回避されるべきである。アノード及びカソードの露点を調整した後、46℃のアノード及びカソードの露点(59.83%RH)の両方が、最適な安定性及び出力をもたらしたことが見出された。図14で分かる通り、542.57mW/cm2のピーク出力密度が、0.43V及び1.26A/cm2で得られた。膜にわたるiR喪失について補正した場合(HFR=123mΩcm2)、AEMFCのiR補正ピーク出力密度は、713.04mW/cm2であった。このオーム抵抗は、Omasta等によって報告された値よりも高く(HFR=約50mΩcm2)、最適化されていないイオノマー及び触媒層に起因して、他の因子、例えば膜の厚さ(t=115μm)及び界面接触抵抗性、に起因することもできる。それにもかかわらず、これらの結果は有望であり、MEAの洗練は、更により高い性能をもたらすことができた。
結論として、ノルボルネンのビニル付加重合に基づく、全てが炭化水素の骨格を含有する一連のテトラブロックコポリマーが、アニオン交換膜の為に合成された。本発明者等の知識では、これは、ビニル付加型ポリノルボルネンに基づく最初のアニオン交換膜である。これらの膜は、最大400℃の高い熱安定性を示した。PNB-X68-Y32では、イオン伝導率は、80℃で122.7mS/cmであり、IEC(1.88meq/g)はPNB-X54-Y46(2.6meq/g)よりも低かった。このことは、膜中の結合水及び非結合水の含量を最適化することの重要性を示している。PNB-X68-Y32における水の取り込み量は、DSC分析によって測定され、膜中、非結合水分子6.7及び結合水分子11.9が、合成された試料の中で最良のイオン伝導率をもたらすことが見出された。1MのNaOH溶液中、80℃での長期的アルカリ安定性試験は、1200時間にわたって検出可能な分解がない(<1%)、並外れた化学的安定性を示した。PNB-X62-Y38は、アルカリ燃料電池試験の為のMEAを製造する為に使用され、0.43V及び1.26A/cm2で542.57mW/cm2のピーク出力密度と共に優れた性能を達成した。
実施例2
架橋ポリ(ノルボルネン)に基づく高伝導性アニオン交換膜:ビニル付加重合
燃料電池は、化石燃料の使用を低減する潜在可能性を有する、クリーンなエネルギー変換技術である(Mekhilef, S. et al., Renewable Sustainable Energy Rev. 2012, 16, 981-989)。燃料電池は、固定発電、携帯式電子機器、及び輸送に使用されることができる(Carrette, L. et al., Fuel Cells 2001, 1, 5-39;Winter, M. et al., Chem. Rev. 2004, 104, 4245-4269)。更に、燃料電池は、環境に優しく、燃料補給されやすく、高エネルギー変換効率を有することができる(Steele, B. C. et al., Nature 2001, 414, 345-352)。固体高分子電解質膜、例えばアニオン交換膜(AEM)及びプロトン交換膜(PEM)、は、液体電解質デバイスのように液体/気体圧のバランスが保たれる必要がないので、三相境界を有する電極の製造を簡素化する。高pHのAEMは、酸伝導PEMと比較して容易な酸素反応動態を有し、非貴金属触媒の使用機会を提供し、燃料クロスオーバーを低減する(Varcoe, J. R. et al., Energy Environ. Sci. 2014, 7, 3135-3191;Lu, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008, 105, 20611-20614;Yu, E. H. et al., Energy Environ. Sci. 2012, 5, 5668-5680;Hickner, M. A. et al., J. Polym. Sci. Part B: Polym. Phys. 2013, 51, 1727-1735;Zhou, J. et al., J. Electrochem. Soc. 2013, 160, F573-F578)。しかしながら、初期の膜は、低いイオン伝導率、高pHでの低い化学的安定性、及び高い水の取り込みに悩まされた(Mohanty, A. D. et al., J. Mater. Chem. A 2014, 2, 17314-17320;Liu, L. et al., J. Mater. Chem. A 2016, 4, 16233-16244;Mandal, M. et al., J. Membr. Sci. 2019, 570-571, 394-402;Mohanty, A. D. et al., J. Electrochem. Soc. 2017, 164, F1279-F1285)。より最近になって、Argesによって総説される通り、数人の研究者によってより高い伝導率(例えば、80℃で100mS/cm)及び化学的安定性(1MのNaOH中、80℃における)が達成された(Arges, C. G. et al. ACS Appl. Energy Mater. 2018, 1, 2991-3012)。この著しい進歩は、過去のAEMの欠陥に対処する為に、ある特定の構造部分が使用されることができるということを示している。
ポリマー骨格の構造、ポリマー構造におけるカチオンの位置、及びカチオンの性質は、AEMの伝導率及び長期的アルカリ安定性を決定する。ポリスルホン、ポリケトン及びポリ(アリールエーテル)部分を含有するポリマー骨格は、水酸化物イオン攻撃及びポリマー骨格分解を受けやすい(Zhang, X. et al., Polym. Chem. 2018, 9, 699-711;Shi, Q. et al., Polymer 2017, 121, 137-148;Weiber, E. A. et al., Polym. Chem. 2015, 6, 1986-1996;Akiyama, R. et al., Macromolecules 2016, 49, 4480-4489;Shimada, M. et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2016, 54, 935-944;Fujimoto, C. et al., J. Membr. Sci. 2012, 423-424, 438-449;Nunez, S. A. et al., ACS Macro Lett. 2013, 2, 49-52;Arges, C. G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2013, 110, 2490-2495)。骨格分解の問題は、全てが炭化水素の骨格及びヘッド基テザーを有するポリマーを使用することによって軽減される。カチオン分解は、長いアルキル鎖テザー、典型的に4~6個の炭素長の末端にヘッド基を配置することによって軽減されることができる(Long, H. et al., J. Phys. Chem. C 2012, 116, 9419-9426)。更に、アルキルテザーは、テザー又はポリマー骨格における芳香族基(芳香族基が存在する場合)の電子求引性誘導効果からカチオン性ヘッド基を単離することができる。従って、現実的な操作条件(例えば、80℃及び1MのKOH)下で安定なAEMは、全てが炭化水素の骨格を、長いアルキル鎖上に繋ぎ止められたカチオンと組み合わせることによって、合成されることができる(Lee, W. H. et al., ACS Macro Lett. 2015, 4, 453-457;Ono, H. et al., J. Mater. Chem. A 2017, 5, 24804-24812;Lee, W. H. et al., ACS Macro Lett. 2015, 4, 814-818)。
電気化学的デバイスは、アルカリ安定性に加えて、オーム抵抗の喪失を少なくする為に高い伝導率を有するAEMを必要とする。水酸化物イオン伝導率は、イオン移動度及びイオン交換能(IEC)の関数である。AEMのIECは、膜の膨張及びイオン移動度の低減をもたらすおそれがある高い水の取り込みを回避しようとして、しばしば穏やかな値に維持される。移動度は、効率的なイオン伝導性チャネルを形成することによって(例えば、ブロックコポリマーを使用することによって)、及び膜中の過剰の水の取り込みを防止することによって改善されることができる(Park, D. Y. et al., J. Phys. Chem. C 2013, 117, 15468-15477)。従って、膜は、高IECを達成しようとするが、イオンが引き付ける水から生じる結果に悩まされるという難問に直面する。架橋は、過剰の水の取り込みに対処する為に使用されることができるが、イオン移動度が低減するという代償をしばしば伴う。
ブロックコポリマー内の相分離は、ポリマー内の疎水性領域及び親水性領域の形成の一助になる。親水性相内の第四級アンモニウムヘッド基は、水酸化物イオンの輸送が生じる所である。周囲空気から二酸化炭素が取り込まれるので、今や炭酸イオン伝導率は、AEMにおいて非常に重要である(水酸化物イオン伝導率に対して)ことが明らかになっている。燃料電池において、空気カソードにおける二酸化炭素は、容易に吸収され、そのカソードで生成された水酸化物イオンを炭酸水素イオン又は炭酸イオンに変換する。炭酸水素イオン又は炭酸イオンが、燃料電池の水素アノードに輸送されると、発生した二酸化炭素は、アノードで生成された水と共にリサイクル水素燃料内に蓄積する。二酸化炭素及び水は共に、膜を介して拡散して戻り、水酸化物イオンの中和及び炭酸イオンの遊走プロセスを続けることができる。新しい水素供給を使用する燃料電池試験は、二酸化炭素の蓄積及び炭酸イオンの伝導という、この非常に重要な問題に直面するのを回避する。従って、IEC及びイオン移動度は、効率的な炭酸イオンの伝導の為に、可能な限り高いことが必須である。炭酸イオンの移動度は、水酸化物イオンの移動度よりもかなり低い。
安定な高伝導率のAEMの設計において残っている困難の1つが、水の取り込みである。過度の水の取り込みは、高IECで生じてチャネルを溢れさせ、膜を膨張させるおそれがある。これは、膜の機械的歪み及び軟化をもたらす。高IECを有する物質は、多量の水を吸着する傾向を有する。一部の水は、イオン溶媒シェルを形成し、膜中の水酸化物塩を希釈する為に必要とされる。吸収された水は、イオン溶媒和に適していなければならないが、過剰の遊離水は、生産性がなく、又は望ましくない。従って、水の取り込み量は、結合水(溶媒シェルを形成する為)及び遊離水に分けられることができる。従って、最大限のイオン移動度(即ち、伝導率)を得ると同時にAEMの機械的特性を維持する為には、膜中の遊離水の量及び結合水の量のバランスを保つIECを選択することが必要である。この研究は、様々な数のブロックを有するポリマーには取り組んでいないが、伝導率に対する影響は確かに有している(Chen, X. C. et al., Nano Lett. 2014, 14, 4058-4064;Inceoglu, S. et al., ACS Macro Lett. 2014, 3, 510-514;Sun, J. et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 14990-14997;Sun, J. et al., Macromolecules 2016, 49, 3083-3090;Price, S. C. et al., Macromolecules 2013, 46, 7332-7340;Meek, K. M. et al., Macromolecules 2015, 48, 4850-4862)。
AEMにおいてビニル付加ポリ(ノルボルネン)を使用した過去の報告は、非常に低い伝導率(80℃で4mS/cm)しかもたらさず、6MのNaOHに室温で浸した後、伝導率が穏やかに低減することを示した(He, X. et al., RSC Adv. 2015, 5, 63215-63225)。イオン交換能(1.83meq/g)は、この文献に報告されているものよりも著しく低く、その骨格はブロックコポリマーではなく、ヘッド基テザーは、水酸化物イオン攻撃を受けやすいことが知られているエーテル連結を含有していたことに留意されたい。別の報告では、ポリ(ノルボルネン)のブロックコポリマー形態は、浸透気化(pervaporization)膜として使用する為に、ビニル付加重合によって合成された(Kim, D.-G. et al., Chem. Mat. 2015, 27, 6791-6801)。その形態は、イオン伝導性ではなく、繋ぎ止められたカチオン性ヘッド基を有しておらず、イオン伝導率、水の取り込み及び塩基における化学的安定性のバランスを保つという同じ困難には直面していなかった。
望ましくない水膨張の問題を回避する為の戦略は、機械的安定性を増大する為に架橋を利用することである。既に幾つかの研究グループが、改善されたアルカリ安定性、寸法安定性及び膨張抵抗性を有する架橋AEMの合成について報告している(He, S. Q. et al., J. Membr. Sci. 2016, 509, 48-56;Xu, W. et al., Adv. Funct. Mater. 2015, 25, 2583-2589;Wang, J. et al., J. Membr. Sci. 2012, 415-416, 205-212;Tibbits, A. C. et al., J. Electrochem. Soc. 2015, 162, F1206-F1211;Gu, S. et al., Chem. Commun. 2011, 47, 2856-2858;Zhu, L. et al., Polym. Chem. 2016, 7, 2464-2475;Cheng, J. et al., J. Membr. Sci. 2016, 501, 100-108;Hu, E. N. et al., ACS Appl. Energy Mater. 2018, 1, 3479-3487)。これらの場合の多くは、高い水酸化物イオン伝導率を示したが、報告されたAEMは、適切な長期的アルカリ安定性を有していなかった。Zhang等は、80℃で約200mS/cmの水酸化物イオン伝導率を有する架橋AEMを合成したが、長期的アルカリ安定性は測定されなかった(Zhang, W. et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2018, 56, 618-625)。近年、Zhu等は、高いイオン伝導率(80℃で200mS/cm)を有する架橋AEMを報告したが、膜が1MのNaOH溶液中80℃で500時間エイジングさせられた場合、27%分解した(Zhu, L. et al., Polym. Chem. 2016, 7, 2464-2475)。近年、Wang等は、高伝導性(80℃で>200mS/cm)のAEMを合成したが、1Mの水酸化物イオン溶液中80℃で500時間経過した後、伝導率が6.2%喪失した(Wang, L. et al., J. Mater. Chem. A 2018, 6, 15404-15412)。
燃料電池膜の伝導率を非常に高くするには、更なる考慮が必要とされる。伝導率試験は、しばしば、水酸化物イオン伝導性のイオンだけを用いて実施される。水酸化物イオンは、定常状態の操作条件下、アルカリ燃料電池カソードにおいて生成されうるが、アノードでリサイクルされた水素における二酸化炭素の蓄積に起因して、炭酸イオンを急速に形成する。二酸化炭素を除去する為の唯一の手段は、未使用の水素をベントすること(非常に望ましくないプロセス)、又は二酸化炭素を拡散させて膜に戻し、それによって水酸化物イオンを炭酸イオンに変換することである。従って、定常状態条件下では、炭酸イオン伝導率が優勢になる。炭酸イオン移動度は、水酸化物イオン移動度よりもかなり低い。従って、余計な伝導率が必要とされる。
この研究では、非常に高いIECを有するポリマーを実装した上で、過度の水の取り込み又は膜の膨張なしに高い水酸化物イオン移動度を維持する(証明された安定性を伴う)手段として、軽度のポリマー架橋の利益が研究される。ポリ(ノルボルネン)は、その全てが炭化水素の骨格であり、出発材料であるジシクロペンタジエンが低価格なので、低価格のAEMに好ましいポリマー骨格である。この研究は、軽度の架橋によって記録的な水酸化物イオン伝導率を達成する為に、非常に高いIECのポリマーが得られ(ノルボルネンモノマーについては低分子量の使用により)、使用されることができることを示す。ポリ(ノルボルネン)は、幾つかの異なる合成経路を介して重合化されることができる。この研究では、ノルボルネンのビニル付加重合の結果が検討される。ノルボルネンの開環メタセシス重合(ROMP:ring opening metathesis polymerization)から得られた結果が、本明細書に開示される(Chen, W. et al., ACS Appl. Energy Mater. 2019)。ROMP及びビニル付加ポリマーの合成方法及び得られる特性は、様々である。特筆すべきは、ガラス転移温度(Tg)である。本発明者等は、幾つかのタイプのイオン伝導性ポリマーが、電気化学的デバイス(例えば、燃料電池、電解槽、フローバッテリー)において有用となることができることに留意する。2つの電極を分離する膜は、可能な限り最も高いイオン伝導率及び低い燃料クロスオーバーを有するべきである。電極を製造する為に使用されるイオノマーは、触媒及び電極の製造方法と適合性があるべきである。電極と膜との間には、イオン伝導性接着層も必要である。従って、異なる特性を有するイオン伝導性ポリマーは興味深い。ビニル付加重合化ノルボルネンは、高いガラス転移温度を有している(Grove, N. R. et al., J. Polym. Sci., Part B: Polym. Phys. 1999, 37, 3003-3010;Shin, B.-G. et al., Macromol. Res. 2007, 15, 185-190;Tetsuka, H. et al., Polym. J. 2009, 41, 643-649;Dorkenoo, K. D. et al., J. Polym. Sci., Part B: Polym. Phys. 1998, 36, 797-803)。ビニル付加ポリ(ノルボルネン)自体は、390℃のTgを有しており、一方、ポリ(ヘキシルノルボルネン)は265℃のTgを有している。様々なノルボルネンコポリマーが、340℃~355℃、47203℃~331℃、48293℃~360℃のTgを有し、ポリ(メチルノルボルネン)については380℃を超えるTgを有することが示された。
ビニル付加重合経路は、高い水酸化物イオン伝導率(123mS/cm)及び優れたアルカリ安定性(1M NaOH中80℃において1,200時間で<1%の伝導率喪失)を有するAEMを生成することが既に示されていた。AEMについては、ブロックの多分散性と、ポリマーの全体的な分子量と、生成物収量の間に妥協はない。テトラブロックコポリマーは、十分に高い分子量及び良好な収量を有するので、研究の為に選択された。この研究では、重合化後のノルボルネンの軽度の架橋が、望ましくない水の取り込み又は膨張なしに、使用可能なIEC範囲を非常に高い値に拡大したことが見出された。本発明者等の知識の限りでは、ここで報告された水酸化物イオン伝導率(80℃で198mS/cm)は、化学的に安定なポリマーについて報告された中で最高値である(1MのNaOH中、80℃における)。
材料:この研究で使用された化学物質は以下の通りである。1-ヘキセン、5-ブロモ-1-ペンテン及びジシクロペンタジエンは、Alfa Aesarから得られた(受け取ったまま使用された)。ブチルノルボルネン(BuNB)及びブロモプロピルノルボルネン(BPNB)モノマーは、既に公開されている手順に従って、ディールス-アルダー反応によって調製された(Martinez-Arranz, S. et al., Macromolecules 2010, 43, 7482-7487)。モノマーは、ナトリウム上で蒸留することによって、3回の凍結脱気サイクルで精製された。合成反応は、乾燥アルゴングローブボックス内で、空気及び湿気への曝露を制限するように注意しながら行われた。トルエンは、水を除去する為に、ナトリウム及びベンゾフェノン上で6時間加熱還流させられた。新しく蒸留されたトルエンが、合成において使用された。トリイソプロピルホスフィン及び[(η3-アリル)Pd(Cl)]2(Sigma-Aldrich)は、受け取ったまま使用された。(アリル)パラジウム(トリイソプロピルホスフィン)クロリド((η3-アリル)Pd(iPr3P)Cl)は、触媒として使用され、既に記載されている通りに調製された(Lipian, J. et al., Macromolecules 2002, 35, 8969-8977)。リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)-ボレート・(2.5Et2O)(Li[FABA])(Boulder Scientific Co.)は、受け取ったまま使用された。N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)、α,α,α-トリフルオロトルエン(TFT)、無水、≧99%及びテトラヒドロフラン(THF)(Sigma-Aldrich)は、受け取ったまま使用された。
テトラブロックコポリマー[ポリ(BuNB-b-BPNB-b-BuNB-b-BPNB)]の合成:テトラブロックPNB-X34-Y66(PNB=ポリノルボルネン、X34=組み合わされた疎水性ブロックのモルパーセント、Y66=組み合わされたハロゲン化ブロックのモルパーセント)は、実施例1に記載される通りに調製された。触媒は、(η3-アリル)Pd(iPr3P)Cl(26mg、0.074mモル)及びLi[FABA](65mg、0.074mモル)をTFT0.5g及びトルエン0.5gに溶解させることによって製造された。次に、BuNB(0.28g、1.86mモル)及びトルエン(6mL)が添加され、撹拌された。触媒は、激しく撹拌しながら添加された。BuNBの重合反応は10分で完了した。生成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってチェックされた。BPNB(1.6g、7.44mモル)及びトルエン(32mL)が、触媒含有溶液に添加され、3時間撹拌されて、BPNBブロックがBuNBブロックに付加された。BPNBが消費された後、生成物はGPC分析によってチェックされた。第3のブロックは、BuNB(0.28g、1.86mモル)及びトルエン(6mL)が添加され、10分間反応させられることによって形成された。最後に、BPNB(1.6g、7.44mモル)及びトルエン(32mL)が添加され、3時間撹拌されて、第4のブロックがポリマー上に形成された。反応生成物は、メタノール中で沈殿させることによってクエンチされた。ポリマーは、活性炭上で精製され、触媒残留物を除去する為に濾過された。ポリマー生成物は、メタノール中で2回沈殿させられ、60℃で真空乾燥させられた。
核磁気共鳴(NMR)及びGPC:ポリマーは、1H NMR(Bruker Avance 400MHz機器)を使用し、CDCl3中で研究された。PNB-X34-Y66の数平均分子量(Mn)及び多分散指数(Mw/Mn)は、GPC(島津製、LC-20AD HPLCポンプ及び屈折率検出器、RID-20A、120Vを備える)によって見出された。GPC試料は、標準ポリスチレンと共に30℃において溶出剤流速1.0mL/分でTHFに入れられた。
膜流延及びイオン交換:テトラブロックコポリマーであるPNB-X34-Y66(0.1g)が、クロロホルム5mLに溶かされた。膜が流延され、流延後に反応させられる場合、ポリマー/溶媒混合物に架橋剤を添加することによって、その場での架橋が実施された。架橋剤であるTMHDAが、ポリマーにおける臭素化モノマー(即ち、第四級アンモニウムヘッド基を形成することができるモノマー)のモルに対して4モル%、5モル%、7モル%、10モル%、20モル%及び50モル%の異なるモル比で溶液に添加された。本出願の架橋剤濃度は、ポリマーに添加されたTMHDA架橋剤のモル%に関して記載される。例えば、5モル%のTMHDAは、利用可能なヘッド基の最大10%が、TMHDA架橋剤によって消費されることを意味する。全ての架橋剤が反応するとしても、分子内架橋対分子間架橋の画分は、評価することが困難なはずであることが注目される。溶液は、0.45μmのポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)膜シリンジフィルターを介して濾過され、フィルムは、60℃で24時間流延され、乾燥させられた。フィルムは、無色であり、透明であり、可撓性であった。膜は、50重量%トリメチルアミン水性溶液に浸漬させられることによってアミノ化された(室温で48時間)。四級化された膜は、DI水で洗浄された。臭化物イオンは、膜を1MのNaOH溶液に窒素中で24時間浸すことによって、水酸化物イオンに変換された。
水酸化物イオン伝導率:膜伝導率は、PAR2273ポテンショスタットを用いて四点端子電気化学的インピーダンス分光法を使用して測定された。膜の伝導率は、窒素雰囲気中、HPLCグレードの水中で測定された。膜は、各測定の前に30分間静置された。面内イオン伝導率は、下記の式1を使用して計算された。
式1では、σは、イオン伝導率(S/cm)であり、Lは、検出電極間の長さ(cm)であり、W及びTはそれぞれ、膜の幅及び厚さ(cm)であり、Rは、オームで測定される抵抗である。長期間(>1000時間)のアルカリ安定性試験は、テフロン(登録商標)加工のParr反応器内で80℃において、膜を1MのNaOH溶液に浸漬させることによって実施された。各測定の前に、膜が溶液から取り出され、DI水で十分に洗浄された。各測定の後に、膜が、新しく調製されたNaOH溶液を入れた反応器で保管された。長期的アルカリ安定性を評価する為に、イオン伝導率の変化が使用された。測定中、各データ点が三通りに測定され、平均値が報告された。各データ点の測定値の偏差は<1%であった。更に、アルカリ安定性は、Nicolet 6700FT-IR分光計を使用して化学的構造を特徴付けることによって、更に分析された。
イオン交換能(IEC)、水の取り込み(WU)、凍結可能な水分子の数(Nfree)及び結合した凍結不可能な水分子の数(Nbound)、並びに水和数(λ):1H NMRは、膜のIECを決定する為に事前にアミノ化された試料で実施された。更に、四級化反応が定量的であったことを示す為に、滴定が使用された。滴定は、対アニオンを塩化物イオンに変換し、その後、膜に存在する塩化物イオンを滴定することを含んでいた。1H NMR(事前にアミノ化された試料)及び滴定(事後にアミノ化された試料)によって得られたIEC測定値は、同じであった(実験誤差内)ことが既に見出されている。例えば、PNB-X67-Y33のIECは、滴定及びNMRによって見出され、その結果はそれぞれ1.90meq/g及び1.92meq/gであった。それらが一致するということは、各ブロモアルキル基が第四級アンモニウムヘッド基に定量的に変換されたことを示している。即ち、それぞれ利用可能なブロモアルキル基が、トリメチルアミンと反応させられた。1H NMRは、より信頼できる方法であることが見出され、ここで材料について報告される。膜の水の取り込みは、下記の式2を使用して計算された。
式2では、Mdは、膜の乾燥質量であり、Mwは、表面の水を除去した後の膜の湿潤質量である。膜は、室温においてOH-形態で測定された。イオン基1個当たりの水分子の数(λ)は、下記の式3を使用して計算された。
膜中のイオン対1個当たりの凍結可能な水の数(Nfree)及び結合水の数(Nbound)は、示差走査熱量測定(DSC)によって見出された。DSC測定は、Discovery DSCでオートサンプラー(TA Instruments)を用いて実施された。膜が水和され、表面から過剰の水が除去された。試料5~10mgが、DSC鍋に入れられて封止された。試料は-50℃に冷却され、次にN2(20mL/分)の下で5℃/分の速度で30℃に加熱された。凍結可能な水及び凍結不可能な水の量は、下記の式4~式6によって計算された(Lue, S. J. et al., J. Macromol. Sci. Part B: Phys. 2009, 48, 114-127;Mecheri, B. et al., J. Phys. Chem. C 2012, 116, 20820-20829;Moster, A. L. et al., J. Appl. Polym. Sci. 2009, 113, 243-250)。
Mfreeは、凍結可能な水の質量であり、Mtotは、膜中の水の全質量である。凍結可能な水の重量分率は、下記の式5を使用して計算された。
Mwは、湿潤膜の質量であり、Mdは、膜の乾燥質量である。Hfは、DSC凍結ピークの積分によって見出されたエンタルピーであり、Hiceは、下記の式6によって零度を下回る凝固点に補正された水の融解エンタルピーである。
ΔCpは、液体水と氷の比熱容量の差である。ΔTfは、凝固点降下である。
X線小角拡散(SAXS):ブロックコポリマーのAEMの相分離を分析する為に、SAXSが使用された。臭化物イオン形態での水和膜が、Center for Functional Nanomaterial(Brookhaven National Laboratory、Upton、NY)において、NSLS-IIビームラインを使用して空気中で試験された。波数ベクトル(q)は、下記の式7(式中、2θは散乱角である)を使用して計算された。
特徴的な分離長又はドメイン間距離(d)(即ち、ブラッグ間隔)は、下記の式8によって計算された。
燃料電池試験:XL5-PNB-X34-Y66膜が、アルカリ燃料電池(AEMFC)における電気化学的試験の為に選択された。アノード及びカソードは、既に記載されている通り、スラリー法を使用して製造された。ポリ(BuNB-b-BPNB-b-BuNB)ポリマーの低分子量形態(20.5kDa)が、過去の研究から得られた結果に基づいて、イオノマーとして使用された(Ahlfield, J. et al., J. Electrochem. Soc. 2017, 164, F1648-F1653)。イオノマー及びVulcan XC-72担持50%白金触媒が、イソプロパノール中で一緒に粉砕された。次に、均一な混合を確保する為に、触媒/イオノマースラリーが室温で超音波処理された。スラリーは、1%防水Toray TGPH-060カーボンペーパー上にスプレーコーティングされ、周囲温度で乾燥させられた。白金添加量は2.1mg/cm2であり、イオノマーと炭素との比は40%であった。最適化されていない電極における動態喪失を回避する為に、この金属添加量が意図的に使用された。
電極膜アセンブリは、臭化物イオンを水酸化物イオンに変換する為に、1MのNaOHに1.5時間浸された。単一路の蛇行黒鉛プレート及びPTFEガスケットを有するFuel Cell Technologies試験ステーションを使用した。試験は、Scribner 850e燃料電池試験ステーションを60℃で操作して、加湿H2及びO2ガスをそれぞれ0.5L/分で使用して実施された。アノード及びカソードガスストリームの露点は、実験中に調整された。
結果:触媒である(η3-アリル)Pd(iPr3P)Cl、及び2つのモノマー(ブチルノルボルネン(BuNB)及びブロモプロピルノルボルネン(BPNB))を調製した。重合を開始する為にカチオン性Pdを製造するのに十分な1対1比の(η3-アリル)Pd(iPr3P)Cl及びLi[FABA]を使用して、触媒が合成された。BuNB対触媒比は、25:1([M]0/[Pd]=25)であった。反応は10分間進行させられた。テトラブロックポリマーの第2のブロックは、100対1のモノマー対触媒比([M]0/[Pd]=100)でBPNBを付加することによって形成され、3時間反応させられた。テトラブロックポリマーの最終的な2つのブロックは、上述の2つの工程を反復することによって合成された。
PNB-X34-Y66の第1、第2、第3及び第4のブロックの数平均分子量(Mn)は、図15による合成中に抽出されたポリマー試料のGPC分析に基づいて、それぞれ5.17kDa、11.16kDa、5.34kDa及び10.68kDaであった。テトラブロックコポリマーのMnは32.35kDaであり、多分散指数(PDI)は2.04であった。
IECは、0.89ppmで共鳴する疎水性ブロックの末端メチルプロトン(Ha)及び3.42ppmで現れるハロゲン化ブロックの臭素原子に隣接するメチレンプロトン(Hb)の積分によって、1H NMR分析によって評価された。溶液のNMRは定量的性質を有するので、1H NMRは、IECのより正確な決定手段である。Ha及びHbの積分比は、IECを算出する為に使用された(図16)。Ha:Hb比は、図16に示される通り1.55:2であった。この値は、疎水性ブロックが3つのメチルプロトンを有し、ハロゲン化ブロックが2つのメチレンプロトンを有するという事実の認識によって、疎水性ブロックとハロゲン化ブロックのモル比を算出する為に使用された。1H NMR分光法を使用すると、疎水性ブロック及びハロゲン化ブロックの組み合わされた画分は、それぞれ34モル%及び66モル%であった。次に、IECが、2つのタイプのブロックの質量比から計算された。IECは、架橋なしの水酸化物イオン形態でのブロックコポリマーPNB-X34-Y66については、3.46meq/gであった。このIECは、表2に示される通り、架橋剤を添加した場合にはわずかにより低い。滴定及びNMRによって得られたIEC値は、同じであることが既に見出されており、上述の通り、ブロモアルキル末端基から第四級アンモニウム形態への定量的変換を示す。
前駆体ポリマーであるPNB-X34-Y66は、テトラブロックポリマーにおけるハロゲン化モノマーの総モルに対して特定のモル%のTMHDAを添加することによって、異なる架橋剤濃度(4~50モル%)のN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)で架橋された(スキーム2)。軽度の架橋なしの膜は、軟質であり、破断なしに膜形態で取り扱われることができなかった。この結果は、非架橋ポリマーのIECが穏やかな値に維持されなくてはならない1つの理由を示している。高いIEC値は、使用できる膜をもたらさない。任意の架橋なしに膜を形成し、取り扱う試みは、膜が弱くなり過ぎたので成功しなかった。従って、軽度の架橋の直接的な1つの利益は、使用できる高IEC膜が製造され、試験されることができたことであった。表3は、膜特性の概要を含む。
aOH
-伝導率は、四端子伝導電池によって測定された。
bIECは、
1H NMRによって決定された。
c80℃でのイオン伝導率/IEC。
dイオンASRは、下記の式を使用して計算された:ASR=L/σ(式中、L=フィルムの厚さ(cm)であり、且つσ=イオン伝導率(S/cm)(80℃における)である)。
e水の取り込みは室温で測定された。XL=架橋されている、PNB=ポリノルボルネン、
*d-間隔は、線形補間によって推定された。X=疎水性ブロック、Y=ハロゲン化ブロック。下付き数字は、各ブロックのモル比を示す。
ガラス転移温度(Tg):ビニル付加ポリ(ノルボルネン)コポリマーは、高いTg(250℃~400℃)を有することが知られている。可撓性アルキル側鎖の付加は、ポリマーのT
g を低減する傾向がある。DSC実験は、この研究で使用したテトラブロックコポリマーで実施された。AEM試料は、25℃から400℃に加熱された。しかしながら、ポリマーの分解温度未満(<300℃)ではTgが検出されなかった。第四級アンモニウムヘッド基は、250℃以下で分解することが知られている12。イオン性ヘッド基の形成及び水の吸収は、最終的なポリマーのTgに影響を及ぼすので、他の形態(例えば、非四級化形態)のポリマーのTgは重要ではない。
水酸化物イオン伝導率(σ)及びイオン領域の比抵抗(ASR:area specific resistance):高い水酸化物イオン伝導率は、電気化学的デバイスに使用される膜に必要である。図17は、25℃~80℃の温度での伝導率の増大を示す。この現象は、高められた温度でイオンの熱運動がより増大することに起因する(Li, Q. et al., Chem. Commun. 2014, 50, 2791-2793)。見掛けの活性化エネルギー(Ea)は、ln(σ)対1/Tの勾配から推定され、11.7~14.9kJ/モルであることが見出された。Ea値は、既に報告されている高性能のAEM及びPEM、例えばNafion-117、と同等である(Dang, H.-S. et al., Macromolecules 2015, 48, 5742-5751;Pan, J. et al., Adv. Funct. Mater. 2010, 20, 312-319;Lin, B. et al., Chem. Mater. 2010, 22, 6718-6725)。
図18は、イオン伝導率に対する架橋剤濃度の効果を示す。高い架橋度は、ポリマー膜を安定化し、過剰な水膨張を阻害することができるが、しばしばイオン移動度が代償になる。イオン伝導率は、架橋剤濃度5モル%の軽度の架橋でわずかに増大し、次に架橋度がより高くなると低減したことが観察された。XL5-PNB-X34-Y66(架橋剤濃度5モル%)では、水酸化物イオン伝導率は、25℃及び80℃においてそれぞれ95.2mS/cm及び198mS/cmであった。XL50-PNB-X34-Y66(架橋剤濃度50モル%)は、より低いイオン伝導率を有し、25℃及び80℃においてそれぞれ29mS/cm及び74mS/cmであった。架橋なしでは、水の取り込みは、過度の膨張により安定なフィルムが製造されることができないほど高かった。4%架橋剤の試料ではわずかにより低い伝導率及びより高い水の取り込みになる傾向を見ることができるが、4%及び5%試料では、水の取り込みの値はほぼ同じである。高い架橋剤濃度では、膜は、密に架橋され過ぎて、機械的変形を制限し、イオン移動度を阻害する。
IECによって正規化された水酸化物イオンの伝導率(σ/IEC)は、膜における水酸化物イオンの移動度を表す。水酸化物イオンの伝導率は、水酸化物イオン伝導に寄与する、膜中のカチオンの平均的な有効性を測定する。各膜のIEC値はほぼ同じなので(質量変化は、添加された架橋剤だけに起因する)、水酸化物イオン移動度は、伝導率の軌道に沿う。表3のデータは、XL5-PNB-X34-Y66が最も高い効率を有していた一方で、XL50-PNB-X34-Y66が最も低い効率を示したことを示している。
最後に、イオンASRは、非常に重要な膜測定基準である。80℃におけるポリマー伝導率及び膜の厚さに基づいて、下記の式:ASR=L/σ(式中、Lはフィルムの厚さであり、且つσはイオン伝導率である)を使用して、イオンASRが計算された。XL5-PNB-X34-Y66膜のASRは、0.032オーム-cm2であり、これは≦0.04オーム-cm2のARPA-E IONICS(エネルギー省、USA)標的を満たす。その他の膜試料のイオンASR値は、表3に見出されることができる。
水の取り込み(WU)、水和数(λ)、凍結可能な水分子の数(Nfree)及び結合した凍結不可能な水分子の数(Nbound):ポリマーごとに、イオン水和及び効率的なチャネル伝導に必要な水の取り込み量の最適な量が存在する。遊離水の形態での過剰水は、膜が軟化し、チャネルが溢れることに起因して、イオン伝導チャネルの過度な膨張及び性能低下をもたらすおそれがある。表3に示される通り、膜のWUは、架橋剤濃度とべき乗則関係を有していた。最良の性能を有する膜であるXL5-PNB-X34-Y66は、69.1%のWUであり、80℃で198mS/cmの伝導率を有していた。XL4-PNB-X34-Y66膜は、わずかにより低い架橋剤濃度では、わずかにより高いWU(73.7%)を有しており、やはりより低い伝導率を有していた(80℃で184mS/cm)。最も高い架橋剤濃度を有する膜であるXL50-PNB-X34-Y66は、イオン移動度が低いことに起因して、最も低いWU(42%)を有しており、やはり最も低い伝導率を有していた(80℃で74mS/cm)。
イオン対1個当たりの水分子の数(ヘッド基及び可動対イオン)及び水和数(λ)は、結合又は凍結不可能な(Nbound)水、及び非結合又は凍結可能な(Nfree)水に更に解析されることができる。それぞれの量は、DSC凝固点測定で決定されることができる。表3に示される通り、試験した試料の水和数は、WUと同様に、架橋剤濃度の低減と共に増大した。結合水は、水和数から遊離水を引くことによって計算された。全ての膜の結果は、表3に示されている。膜試料の全ては、それらの伝導率に関わらず、イオン対1個当たり6~7個の結合水分子を有していた一方で、遊離水分子の数は、イオン対1個当たり0~6.20個の範囲であった。最も高い伝導率を有する膜(XL5-PNB-X34-Y66、80℃で198mS/cm)は、イオン対1個当たり5.21Nfreeの水分子及び6.00Nboundの水分子を有していた。他方では、最も低い性能を有する膜(XL50-PNB-X34-Y66、80℃で70.4mS/cm)は、膜においてイオン対1個当たり0.00Nfree及び7.40Nboundの水分子を有していた。高い架橋濃度及び低い架橋濃度を有する試料についての代表的なDSC曲線が、裏付け情報に示されている(図42~43)。冷却曲線におけるピークのエンタルピー積分は、図42~43に注釈で示されている。これらのピークは、凍結可能な水の数を算出する為に使用された。
PNB-X54-Y46に関する過去の報告に示されている通り、水は、架橋なしの高IEC膜に自由に存在することができ、水分子の数Nfree及びNboundは、それぞれ10.6及び17.9もの高さになることができる。高い架橋密度では、密に架橋された膜には可撓性が欠如するので、水分子、特に遊離水が膜に存在することがますます困難になる。イオン対1個当たり6個未満の遊離水分子を有していた非架橋膜では、伝導率は70mS/cm未満であった。XL50-PNB-X34-Y66の伝導率は、遊離水の欠如に起因して低かった。このことは、いくらかの遊離水が、チャネルの水和及び高いイオン移動度に必須であることを示している。また遊離水の数は、より高い架橋密度と共に低減するが、これは、親水性ドメイン間の接続性が制限されることに起因している可能性が高いことが分かる。またドメイン距離は、異なる架橋密度を有する試料についてほとんど変化しなかったことが分かる。従って、膜における遊離水及び結合水分子の最適化は、最大効率を得るのに必要である(Liu, L. et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2018, 56, 1395-1403;Liu, L.et al., J. Mater. Chem. A 2018, 6, 9000-9008)。
アルカリ安定性:AEMの長期間アルカリ抵抗性は、特に、高pH及び高温で数千時間操作される電気化学的デバイスにとって関心が高い。安定性の測定は、膜を、新しく調製された1MのNaOH溶液に80℃で1000時間を超えて浸すことによって実施された。伝導率は、エイジングプロセス中に定期的に測定された。図19(左側)に示される通り、AEMは、>1000時間のエイジング期間にわたって1.22%~1.40%喪失したことが見出された。図19の各データ点は、3つの個々の測定値の平均である。各データ点の個々の測定値間には<1%の偏差があった。3つの測定値は、有効数字3桁目だけが異なっていた。この伝導率の喪失値は低く、ARPA-E IONICS標的にとって許容される。架橋なしのPNB-X68-Y32についての伝導率の喪失は、ここで10モル%架橋剤を含むXL10-PNB-X34-Y66の1.22%の喪失と比較して、0.81%であった。伝導率の喪失は、架橋なしのポリ(ノルボルネン)AEMで既に報告されている値と比較して、ここで試験された試料の方がわずかに高いが、この研究における架橋AEMは、イオン対1個当たり著しくより高いIEC及びより低い水の取り込みを有しており、膜中pHは非架橋試料よりも高くなる。即ち全ての試料が1MのNaOHに浸されたが、膜中の局所的な水酸化物イオン濃度は異なる。膜中の水酸化物イオン濃度は、水分子1個当たりの水酸化物イオンの数であるλ-1によって、より良好に説明される。この比較は、水酸化物イオンが、過去の非架橋AEMよりも、架橋AEMにおいて68%より濃縮されることを示している。イオン対1個当たりより低いWUが、膜中により高いアルカリ環境を作り出し、それによって分解を加速することができる。水酸化物イオンの分解についてAEMを分析する為に、更なる試みが行われた。アルカリエイジング前及び後の化学的構造のFTIR分析は、図19(右側)の通り、新しいピークを示さなかった。838cm-1、913cm-1、968cm-1及び1060cm-1におけるC-N伸縮振動数は、膜の化学的構造が、実際に無傷であることを示している(Amel, A. et al., J. Electrochem. Soc. 2018, 165, F1133-F1138;Amel, A. et al., J. Electrochem. Soc. 2015, 162, F1047-F1055)。しかしながら、FTIRは、ごく半定量的であり、1%レベルの構造的変化は、この方法によって分析するのは困難であることが分かる。また試料は、架橋に起因してもはや可溶性ではなくなっているので、定量的な溶液のNMR分析は不可能であることが分かる。
形態学的特徴付け:架橋ポリ(ノルボルネン)膜の相分離及び微細構造を研究する為に、SAXSが使用された。流延中、ポリ(ノルボルネン)ブロックコポリマー相は、ハロゲン化ブロックと疎水性ブロックとの間の熱力学的相違点に基づいて、イオン伝導チャネルに分離する。架橋が生じ始めたら、該架橋剤は、自己集合を更に制限し、それによって硬化時に膜の微細構造を固定する。ドメイン間距離(d-間隔)又は膜中の不均質性間の平均分離長は、図20に示される通り、SAXSスペクトルの第1の拡散ピークのブラッグ間隔から決定された。ドメイン間距離の値は、ローレンツ曲線フィッティング関数によって決定され、表3に列挙されている。異なる架橋密度を有するポリマーのドメイン距離は、全て類似しており、わずか48.6~51.8nmの範囲であることが見出された。このことは、障害がなく37.2~86.4nmの範囲になることができる架橋なしの膜のドメイン距離とは異なっている。
燃料電池試験:XL5-PNB-X34-Y66は、高いイオン伝導率を有しており、化学的に安定であったことから、アルカリ燃料電池として実証する為に選択された。膜は、機械的に堅牢であり、燃料電池ハードウェアに容易に組み入れられた。燃料電池試験は、一般的な操作温度である60℃で実施された。燃料電池は、最初に0.5Vの電池電圧で1時間コンディショニングされた後、0.2Vで1時間コンディショニングされた。コンディショニングされた後、開路電圧(OCV)は1.042Vであった。0.4Vにおける電流-電圧ボルタモグラム及びインピーダンススペクトルが、定期的に記録された。アノード及びカソード供給ガスの露点は、それぞれ52℃(即ち、74.8%RH)及び56℃(即ち、86.6%RH)に設定された。
図21は、電流密度の関数としての電池電圧及び出力を示す。ピーク出力密度は、0.534V及び954mA/cm2において510mW/cm2であった。図21はまた、膜にわたってiR低下について補正した後、電流密度の関数としての電圧を示している。膜抵抗は、インピーダンスプロットの高周波側切片から得られる通り、95mΩcm2であった。iR補正電池出力は573mW/cm2であった。出力は、Wang等によって報告された2W/cm2の電池と比較して穏やかであるが、ここで使用された膜電極アセンブリは、イオノマー及び触媒層含量について最適化されていなかったので、操作温度はより低く(Wang等による80℃に対して、ここでは60℃)、膜は、必要な厚さよりも厚く64μmであった(Wang, L. et al., J. Mater. Chem. A 2018, 6, 15404-15412)。これらの燃料電池の結果は、膜が、作用電気化学的デバイスに上手く統合されることができることを示している。
要約すると、ノルボルネンのビニル付加重合によって合成された架橋アニオン伝導性ポリマーが研究された。膜は、80℃で最大198mS/cmの非常に高いイオン伝導率を有していた。他の高IECのAEMを悩ませていた水膨張の問題を軽減するには、ごく軽度の架橋が必要とされたことが見出された。高度に架橋されたAEMが遭遇する問題を引き起こさないようにするには、架橋は軽度で十分であった。寸法安定性は、架橋密度に起因していたが、架橋密度は、膜中の遊離水及び結合水の含量のバランスを保つように調整されることができる。最適化された膜中、イオン対1個当たり5.21個の遊離水分子及び6.00個の結合水分子が存在していた。80℃で1MのNaOH溶液における優れたアルカリ安定性が実証された(80℃において>1000時間で<1.5%の伝導率喪失)。60℃での水素/酸素燃料電池試験は、0.534V及び954mA/cm2において510mW/cm2のピーク出力密度を有していた。非常に高いイオン伝導率及びアルカリ回復力を有するこれらのテトラブロックコポリマーは、高性能電気化学的デバイスの優れた候補である。
実施例3
架橋ポリ(ノルボルネン)に基づく高伝導性アニオン交換膜:開環メタセシス重合
様々なモノマーがディールス-アルダー反応によって合成されることができるので、ポリ(ノルボルネン)は、AEMの魅力的なポリマー骨格である(Yang, Z. et al., Polymer 2008, 49, 5128-5136)。ノルボルネンモノマーの低分子量は、高IECを可能にする。ノルボルネンは、ビニル付加重合又は開環メタセシス重合(ROMP)によって重合化されることができる。Coates等は、20℃で18mS/cmの水酸化物イオン伝導率及び1.4meq/gのIECを有するAEMを合成する為に、ジシクロペンタジエン及びテトラアルキルアンモニウム官能化ノルボルネンのROMPを行った(Clark, T. J. et al., J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 12888-12889)。ポリマーは、ビス(ターピリジン)Ru(II)複合体を使用して、金属カチオンに基づく経路を介して架橋された。得られた水酸化物イオン伝導率は、30℃で28.6mS/cmであり、IECは1.4meq/gであった(Zha, Y. et al., J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 4493-4496;Wang, C. et al., J. Membr. Sci. 2018, 556, 118-125)。伝導率を増大する研究では、IECが増大され、その特性を増強する為に架橋が導入された。Wang等は、2.89meq/gのIECを有し、その結果25℃で64.79mS/cmの水酸化物イオン伝導率を有するアルキル架橋AEMを報告したが、長期的アルカリ安定性は示されなかった。2.79meq/gのIEC及び30℃で40mS/cmのOH-伝導率を有するジフェニルオキシド架橋AEMは、材料の脆さと共に、低いアルカリ安定性を有していた(2MのNaOHに50℃で16日間浸漬させた後、34%の伝導率喪失)(Wang, C. et al., Macromol. Mater. Eng. 2018, 303, 1700462)。エーテル連結及び可撓性テザーを有する別の水素化ポリ(ノルボルネン)膜が、Price等によって調製された(Price, S. C. et al., Polym. Chem. 2017, 8, 5708-5717)。得られた伝導率は、20℃で69mS/cmであり、80℃で133mS/cmであった。しかしながら、0.1MのNaOHに90℃で239時間浸した後、伝導率は約50%低減した。要約すると、ROMPによって調製されたポリ(ノルボルネン)に基づく最先端のAEMは、一般に伝導率が低く、且つ/又は長期的アルカリ安定性が低かった。
この研究において、ブロモプロピルノルボルネン(BPNB)及びブチルノルボルネン(BuNB)を使用する、全てが炭化水素の骨格を有するAEMが、2つの異なる合成経路によって作り出された。ビニル付加重合及びROMP経路の両方が検討された。この研究では、ノルボルネンホモポリマー及びジブロックコポリマーのROMP、並びに可撓性アルキルテザー及びトリメチルアンモニウムカチオンが開示され、それが使用された。炭化水素ポリ(ノルボルネン)骨格及び繋ぎ止められた第四級アンモニウムヘッド基の組合せは、優れたアルカリ安定性及び高いイオン伝導率をもたらすことが示されている。この研究では、架橋剤としてのN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)を使用して、最大4.73meq/gの高いIECを有するポリマーが合成され、膜に流延された。結果的に、1MのNaOH中80℃で792時間経過した後、伝導率の喪失なしに、25℃で99mS/cm及び80℃で195mS/cmの伝導率が達成された。これは80℃において、化学的に安定なAEMについて既に報告された水酸化物イオン伝導率の膜よりも高い。
材料:ジシクロペンタジエン、5-ブロモ-1-ペンテン及び1-ヘキセンは、Alfa Aesarから購入され、受け取ったまま使用された。官能化モノマー、即ちブロモプロピルノルボルネン(BPNB)及びブチルノルボルネン(BuNB)は、既に記載されている通り合成された(Martinez-Arranz, S. et al., Macromolecules 2010, 43, 7482-7487;Mandal, M. et al., J. Membr. Sci. 2019, 570-571, 394-402)。重合は、湿気及び空気を回避する為に、グローブボックス(乾燥窒素雰囲気)内で実施された。重合の前に、モノマーは、ナトリウム上で蒸留することによって精製され、3回の凍結脱気サイクルによって脱気された。テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(無水、DCM)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、メタノール、トシルヒドラジド、水酸化ナトリウム、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)、エチルビニルエーテル、トリメチルアミン溶液(TMA、50重量%)及びトルエンは、Sigma-Aldrichから購入され、受け取ったまま使用された。グラブス第3世代触媒(グラブス第3世代、G3)は、グラブス第2世代触媒(Sigma-Aldrichから購入された)及びピリジンから合成された(Bates, C. M. et al., Macromolecules 2015, 48, 4967-4973)。
ジブロックコポリマー及びポリ(BPNB)ホモポリマーの合成:ポリ(BuNB-b-BPNB)ジブロックコポリマーは、スキーム3に示される通り、グローブボックス内で室温において、モノマーの逐次的付加によって合成された。材料は、rPNB-Xm-Ynと指定された(rPNBは、ROMPによるノルボルネンを表し、X及びYは、それぞれポリマーにおける疎水性BuNBモノマー及び親水性BPNBモノマーであり、m及びnは、それぞれ1H NMRによって算出される通りBuNBモノマー及びBPNBモノマーのモル%である)。ホモポリマーは、rPNBY100及びrPNB-LY100と指定される(Y100は、BPNBのホモポリマーを表し、LY100は、より高い分子量を有するBPNBのホモポリマーを表す)。
全てのモノマーが、重合の前に蒸留され、3つの凍結脱気サイクルによって脱気されることによって精製された。0.01g/mlの溶液を製造する為に、グラブス第3世代がDCMに溶解させられ、次に10分間撹拌された。BuNB又はBPNBをDCMに溶解させ、10分間撹拌することによって、モノマー溶液(0.01M)が得られた。第1のブロックであるポリ(BPNB)を調製する為に、触媒溶液は、BPNBモノマー溶液に激しく撹拌しながら注入された。10分間の反応時間が経過した後、BPNB重合が完了した。少量の一定分量が除去され、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析の為にエチルビニルエーテルでクエンチされた。次に、BuNBブロックをポリ(BPNB)上に付加する為に、BuNB溶液が反応溶液に添加され、5分間撹拌された。反応が完了した後、重合をクエンチする為に、エチルビニルエーテルが反応混合物に添加された。混合物が30分間撹拌された。過剰の溶媒が空気中で蒸発させられ、濃縮されたポリマー溶液が、メタノール中で沈殿させられた。得られた生成物は、メタノール中で2回沈殿させられ、室温で一晩乾燥させられた。ポリ(BPNB)ホモポリマーの為の手順は、第2のBuNBブロックを付加すること以外は、ジブロックポリマーの為の手順に類似していた。
二重結合の水素化:ROMPによる不飽和ポリマー(0.4g)が、還流冷却器を有する2つ口丸底フラスコ中、トルエン(50ml)に室温で溶解させられた(Hayes, C. O. M. Directly-Patternable Benzocyclobutene Dielectric Materials. Ph.D. Thesis, The University of Texas at Austin, Texas, USA, 2016;Yoon, K.-H. et al., Polymer 2012, 53, 2290-229)。化学量論量のトシルヒドラジド(1:6比の二重結合とヒドラジド)が、ポリマー溶液に添加された。溶解した酸素を除去する為に、溶液が窒素ガスで30分間パージされた。混合物が、窒素ガス中、110℃で24時間撹拌された。次に、溶液が室温に冷却され、反応溶液が透明になるまで飽和NaHCO3溶液で3回洗浄された(各回500mL)。トルエンを除去することによって、ポリマー溶液が室温で一晩濃縮され、生成物がメタノール中で沈殿させられた。
架橋AEMの調製:水素化ポリマー(0.15g)が、トルエン6mLに溶解させられた。架橋試薬であるTMHDAが、トルエン1.5mlに溶解させられ、ポリマー溶液に添加された。混合物が室温で30分間撹拌され、次に0.45μmのポリ(テトラフルオロエチレン)膜シリンジフィルターを介して濾過され、アルミニウム皿に入れられた。溶液が60℃で24時間乾燥させられ、それまでに架橋反応が完了した。語「架橋剤濃度」は、ポリマー内の架橋可能部位の数に対する、ポリマー混合物に添加される架橋化合物(即ち、TMHDA)のモル%である。架橋剤は、ポリマー上の部位と完全に反応しうることが分かっているが、分子内部位対分子間部位の間で、どのくらいの画分の架橋反応が生じたかは決定されなかった。膜は、アルミニウム皿から剥離され、ブロモプロピルヘッド基を四級化する為に、TMAに室温で48時間浸漬させられた。臭化物イオン形態での四級化された膜は、DI水で十分に洗浄され、Br-イオンをOH-イオンに変換する為に、1MのNaOHに窒素中で24時間浸された。架橋AEMは、ジブロック及びホモポリマー膜について、それぞれXLp-rPNB-Xm-Yn及びXLp-rPNB-Y100と示される(XLは架橋を意味し、pは架橋剤濃度である)。
材料の特徴付け:1H NMR分光法は、Bruker Avance 400MHz NMR分光計、内部標準としてのテトラメチルシラン及び溶媒としてのCDCl3を使用して実施された。ポリマーの数平均分子量(Mn)及び多分散指数(Mw/Mn)は、LC-20CE HPLCポンプ及び屈折率検出器(RID-20A、120V)を備えたGPC分析(島津)によって得られた。全ての測定は、THF中、溶出剤を1.0mL 分-1の流速で用いて30℃で実施された。標準ポリスチレンが使用された。面内水酸化物イオン伝導率は、PAR2273ポテンショスタットを用いて四電極端子及び電気化学的インピーダンス分光法(1Hz~1MHz)を使用して測定された。HPLCグレードの水と共に窒素パージが使用された。水の取り込み(WU:water uptake)、膨潤率(SR:swelling ratio)及び水和数(λ)は、添付文書に記載される通り決定された。結合水の数(凍結不可能、Nbound)及び凍結可能な水の数(Nfree)は、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)によって決定された。DSC測定は、Discovery DSCで、オートサンプラー(TA Instruments)を用いて行われた。Nbound及びNfreeを決定する為に、表面水がない完全に水和した膜(5~10mg)が、アルミニウム鍋に入れられて封止され、-50℃に冷却され、次に20mL/分のN2流の下で5℃/分の速度で30℃に加熱された。20℃/分の加熱速度でAEMのガラス転移温度(Tg)を測定する為にも、DSCが使用された。各膜は、Tgを得る為に20℃~200℃の温度サイクルにかけられた。
熱重量分析(TGA:thermogravimetric analysis)は、TA Instruments Q50分析器で、臭化物イオン形態での乾燥膜5~10mgを用いて実施された。温度は、窒素雰囲気中10℃/分の加熱速度で室温から800℃に上昇させられた。完全に水和した膜及び乾燥膜の機械的特性は、SANS CMT8102延伸試験機(Xinsansi Co.、China)を用いて5mm/分の延伸速度で測定された。アルカリ安定性は、テフロン(登録商標)加工のParr反応器内で、AEMを80℃で1MのNaOH溶液に浸すことによって試験された。処理されたAEMの伝導率は、残留NaOHの完全な除去後に、時間に対して25℃で測定された。更に、化学構造を更に確認する為に、AEMも、アルカリ処理前及び処理後にFTIRによって研究された。
透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscopy):TEMは、膜の相分離微細構造を質的に観察する為に、Br-形態での乾燥AEM試料で実施された。各膜がエポキシに包埋され、マイクロトーン(Microtone)によって薄片にされた。膜は、NaI溶液(2.0M)に80℃で2日間浸漬させることによってI-で染色され、JEOL JEM-2000EX顕微鏡によって測定された(Lee, K. H. et al., Energy Environ. Sci. 2017, 10, 275-285)。
X線小角拡散(SAXS:Small angle X-ray scattering):ブロックコポリマーのAEMの相分離を分析する為に、SAXSも使用された。臭化物イオン形態での水和膜が、the Center for Functional Nanomaterials(Brookhaven National Laboratory、Upton、NY)において、NSLS-IIビームラインを使用して空気中で試験された。波数ベクトル(q)は、下記の式1(式中、2θは散乱角である)を使用して計算された。
特徴的な分離長又はドメイン間距離(d)(即ち、ブラッグ間隔)は、下記の式2を使用して計算された。
H2/O2燃料電池測定:AEMアノード及びカソードは、既に使用されたスラリー法によって製造され、同一組成であった(Ahlfield, J. et al., J. Electrochem. Soc. 2017, 164, F1648-F1653)。最初に、より低い分子量(20.5kDa)のポリ(ノルボルネン)イオノマー粉末が、過去の研究に従って合成された。乾燥イオノマー粉末及びVulcan XC-72(炭素)担持50%白金触媒が、スプレーするのに適したスラリーを達成する為に、乳鉢及び乳棒を用いてイソプロピルアルコール(IPA)中で一緒に粉砕された。30分間超音波処理した後、ホモジナイズされた触媒及びイオノマースラリーが、1%防水Toray TGPH-060カーボンペーパー上にスプレーされ、室温で24時間乾燥させられた。電極上の金属添加量は約2.1mg/cm2であり、40%のイオノマー/炭素比が使用された。電極は、N2パージを用いて1MのNaOHに2時間浸すことによってOH-形態に変換された。NaOH溶液は、20分ごとに新しくされた。電極及びROMPによるポリ(ノルボルネン)ジブロックのAEMは、Scribner 850e燃料電池試験ステーションにおいて60℃で試験する為にFuel Cell Technologiesハードウェアに入れられた。H2及びO2供給ガス(0.5L 分-1)の露点は、燃料電池内の水分バランスを最適化する為に試験にわたって調整された。
実験結果:rPNB-Xm-Ynジブロックコポリマー及びrPNB-Y100/rPNB-LY100(ポリ(BPNB))親水性ホモポリマーが、この研究で合成された。モノマー(BuNB及びBPNB)は、過去の研究に従って調製された。グラブス第3世代触媒(G3)は、グラブス第2世代触媒及びピリジンから合成された。ジブロックコポリマーを成長させる為に、BPNB([M]0/[G3]=100:1)は10分間反応させられ、BuNB([M]0/[G3]=20:1)は5分間反応させられた。重合時間は、個々のモノマー付加及びそれらの供給比に合わせて最適化された。ジブロックコポリマーの形成中の各ブロックの逐次的な成長を実証する為に、図22にrPNB-X60-Y40の代表的なGPCトレースが示されている。第1のブロックの完了後、Mnは18.34kDaであり、Mn/Mwは1.82であった。第2のモノマーの付加は、24.68kg/モルのより高いMn及び2.19のMn/Mwをもたらし、第2のブロックの付加の成功を示した。水素化前及び水素化後のジブロックコポリマーのGPCトレースは、類似の傾向及びMnを有していた(24.68対25.96kg/モル)。このことは、水素化中に副反応が生じなかったことを示している。合成されたポリマーのMn値は、異なるコポリマー間の関係を研究する為に、一定に保たれた。ホモポリマー(rPNB-Y100)の機械的特性は低かった。従って、表4に示される通り、より高いMnのホモポリマー(rPNB-LY100)も合成された。[BPNB]/[G3]=200:1について、長さは、129の繰り返し単位からなっていた(反応時間25分)。より高い分子量のホモポリマーは、より高いBPNBとG3との比(即ち、500:1)を使用し、反応時間を2時間に延長することによって生成された。得られたホモポリマーは、198の繰り返し単位を有していた。
aモノマー供給比から算出した。
bGPCの結果。
cモル%及びIECは
1H NMRによって決定した。
dTHF対標準ポリスチレン中GPCデータ。
水素化前及び水素化後のジブロックコポリマーの1H NMRスペクトルは、図23に示されている。5.33ppm(Ha)におけるシグナルは、ポリマー骨格上の二重結合におけるプロトンから生じる。ブチル側鎖の末端メチル基におけるプロトンの特徴的シグナルは、0.89ppm(Hc)において生じ、ブロモプロピル側鎖における臭素元素に隣接しているメチレンプロトン(-CH2Br)は、3.40ppm(Hb)において生じる。BuNBブロック対BPNBブロックのモル比(R)は、Hc及びHbプロトンのNMR積分比(R=2I(Hc)/3I(Hb))を比較することによって計算された。OH-形態でのポリマーのIEC値は、IECNMR=1000/(150R+213)によって決定され、ここで150及び213は、それぞれBuNB及び四級化BPNB(OH-形態)繰り返し単位の分子量である。合成されたポリマーのIECNMRは、2.31~4.73meq/gの範囲であった(表4)。
ポリ(ノルボルネン)骨格における炭素-炭素二重結合は、ポリマーの化学的安定性を改善する為に水素化された(Zhu, T. et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2018, 57, 2388-2392)。水素化の後、二重結合におけるプロトンに対応するNMRピーク(Ha)は存在しなかったが、これは二重結合の完全な水素化を示す。
ミクロ相分離:架橋ポリマーの親水性領域及び疎水性領域の分離は、SAXS及びTEMによって研究された(それぞれ図24及び25)。ドメイン間距離(d)は、2π/qであることが確立され、表5に列挙された。架橋ジブロックrPNB-X60-Y40膜に、十分に分解されたピークが観察された。架橋剤濃度が10モル%から45モル%に変化する場合、SAXSピークは、0.08nm-1から0.10nm-1にシフトした。これは、78.64nmから62.71nmへのドメインサイズ(d)の低減に対応する(表5)。このことは、より高い架橋剤濃度が、イオンチャネルのサイズをわずかに狭めることを示唆している。XL35-rPNB-X60-Y40の厳密な検査は、2つのピークが存在し、qベクター比が1:2であることを示しており、これは層状ポリマー形態を示している。XL-rPNB-X22-Y78膜は、より高いq値においてピークを1つだけ有していたが(約0.30nm-1)これは、ドメインサイズがより小さく(約21nm)、ミクロ相分離がより少ないことに対応している。これらの結果は、図25に示されるTEM画像と合致する。図25では、暗い領域は、親水性ドメインに対応し、より明るい領域は、疎水性ドメインに対応する。
XLは、架橋剤濃度である。IECは、
1H NMRに基づいて計算された(TMHDAの質量を含む)。λは、水和数である。N
freeは、凍結可能な水分子の数である。N
boundは、結合した凍結不可能な水分子の数である。SRは、膨潤率である。d-間隔(nm)は、SAXSデータから計算された。
予想通り、ホモポリマーであるXL-rPNB-LY100は、ごくわずかな相分離の徴候を示した。弱いピーク(SAXSでショルダーを形成する)が1つだけ観察された。これらの小さいピークは、図24に示される通り、単離されたイオンクラスターに起因している。この明白な相分離の欠如は、相分離された高移動度イオン伝導チャネルを作り出すのに非常に有効になることができるブロックコポリマーの結果とは対照的である。このことは、ビニル付加ポリ(ノルボルネン)に関する添付文書にも結論付けられていた。架橋剤濃度が15モル%から25モル%に増大されると、イオンクラスターのサイズは、25.68nmから23.05nmに低減したが、これは低IEC値を有するAEMのものよりも大きい(Chen, W. et al., J. Membr. Sci. 2016, 514, 613-621;Wu, X. et al., J. Mater. Chem. A 2014, 2, 12222-12231)。
3.1.9.イオン交換能(IEC)及び水の取り込み(WU):高IECは、膜中の高アニオン伝導率に寄与することができ、これにより、アニオン-カチオン対がイオン化され、アニオンが高移動度を有すると想定される。残念ながら、高IECは、水の取り込みを高く許容されないものにし、イオンチャネルを溢れさせるおそれもあり、それによって水酸化物イオン移動度を低減する。この研究におけるポリマーのIECは、表4の通り2.31~4.73meq/gで変わった。相対的に低分子量のブロモプロピルノルボルネンは、非常に高いIECを有する全てが炭化水素のポリマー骨格の合成を可能にした。より低い架橋度では、全般的により高いWUになる傾向がある。高IEC及び低架橋剤濃度を有するポリマーは、アミノ化中、TMA水性溶液に可溶性であった。従って、この研究の重点は、架橋ポリマーに置かれる。
WUは、イオン溶媒和及び伝導に必要である。図26に示される通り、比架橋剤濃度の特定のポリマー骨格に関するWUと膨潤率の間には、全般的な相関がある。WUは、架橋とより高い逆相関関係がある。WUは、IECとも相関するが(同じ架橋剤濃度において)、その程度は架橋よりも小さい。AEMのシリーズごとに、WU値は、同じ架橋剤濃度について類似していた。例えば、20モル%の架橋剤濃度では、最も高い水の取り込みは、XL20-rPNB-X22-Y78(3.78meq/g)の157%であり、最も低い値は、XL20-rPNB-LY100(4.51meq/g)の115%であった。しかしながら、同じポリマーに基づくAEMでは、WUは、架橋剤濃度と共に劇的に変化した。例えば、XL-rPNB-LY100は、25モル%の架橋剤濃度で最も低い79%のWUを示したが、最も高いWUは、15モル%の架橋剤濃度で224%であった。調製した全てのAEMについて、WUは40%~400%で変わり、膨潤率は室温において18%~53%で変わった。膜が脆いことに起因して、XL-rPNB-Y100のAEMの膨張比を試験することは不可能であった。
ポリマーごとのイオン対1個当たりの水分子の平均数である水和数(λ)は、表5に記載されている。図26は、ポリマー対架橋剤濃度内での各イオン対の溶媒和度を示している。類似の分子量及び架橋剤濃度で、異なるAEM(即ち、XL-rPNB-X60-Y40、XL-rPNB-X22-Y78及びXL-rPNB-Y100)のλ値が分析される。最も低いIECを有するジブロックであるXL-rPNB-X60-Y40のAEMは、その他の2つのAEMと比較して最も高いλ値を有していたが、これはXL-rPNB-X60-Y40の十分に整列した親水性層状ドメインが水の取り込みを助けたことを示している。最も高いIECのポリマーであるXL-rPNB-Y100は、最も低いλを有していたが、これはイオンチャネルがその他のものほど容易に膨張しなかったことを示している。
水和数は、DSC凝固点測定によって、凍結可能な(又は遊離)水の数(Nfree)及び結合水分子の数(Nbound)に更に解析された。より高い架橋度は、Nfree及びNbound水の両方を低減させたが、これは確立されている傾向と合致する。ポリマーごとに、最も高い移動度を達成するのに最適な架橋剤濃度が存在する。不十分なWU(即ち、高い架橋剤濃度)は、低い移動度をもたらすが、過度のWU(低い架橋剤濃度)は、イオンチャネルを溢れさせることができる(Liu, L. et al., J. Mater. Chem. A 2018, 6, 9000-9008)。例えば、XL15-rPNB-LY100(15モル%の架橋剤濃度)は、4.98のNfree及び22.31のNbound水を有していた。高いWUは、イオンチャネルを溢れさせ、水酸化物イオンを希釈して、わずか75mS/cmの伝導率及びσ/IEC=31.14によって測定される通り相対的に低いイオン移動度をもたらした。架橋剤濃度を15モル%から20モル%に増大することは、ほぼ同じNfree(5.68)を結果としてもたらしたが、Nboundはより低く(8.48)、それによって25℃で99mS/cmのより高い伝導率をもたらした。伝導率の増大は、σ/IEC=43.24のより高いイオン移動度に起因する。架橋剤濃度を25モル%に更に増大することは、Nfree=3.72及びNbound=6.14と共に不十分なWUを結果としてもたらした。このレベルのWUは、移動度に関してあまり有効でなく、σ/IECは33.71に低減した。結果は、15モル%の架橋剤濃度の試料の結果と類似している。
最も高い伝導率を有するジブロックのAEMであるXL35-rPNB-X60-Y40及びXL20-rPNB-X22-Y78は、類似のNfree(それぞれ5.76及び6.59)及びNbound(それぞれ19.49及び16.48)を有していた。しかしながら、最も低いNfree(5.68)及びNbound(8.48)を有するホモポリマー(XL20-rPNB-LY100)は、全てのAEMの中で最も高い伝導率を有していた。移動度は、σ/IEC=43.24によって証拠付けられる通り高かった。このことは、20モル%の架橋剤濃度のROMPによるホモポリマーが、高い移動度に適した水を用いて、チャネルを溢れさせずにWUを有効に使用したことを示している。
伝導率対架橋剤濃度データは、図27にまとめられている。水酸化物イオン移動度(及び水酸化物イオン伝導率)は、架橋剤の量によって高度に影響を受ける。試料中の架橋剤の量が増大するので、伝導率は、XL20-rPNB-Y100については20モル%の架橋剤濃度で103mS/cm(25℃における)のピークを示した。XL20-rPNB-Y100は、この研究で報告された全てのAEMの中で最も高い伝導率を有していたが、その機械的特性は低かった。機械的特性は、ポリマーであるXL20-rPNB-LY100の分子量を増大することによって改善され、そのポリマーは優れた伝導率を有していた(25℃で99mS/cm及び80℃で195mS/cm)。ここで報告された伝導率は、文献で報告されたROMPによるAEMよりも高く、これはポリ(ノルボルネン)のIEC値が高いことに大きく起因する(Zhao, Y. et al., Int. J. Hydrogen Energy 2016, 41, 16264-16274)。
水酸化物イオン輸送活性化エネルギー(Ea)(Li, X. et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2014, 6, 7585-95;Chen, W. et al., J. Mater. Chem. A 2017, 5, 15038-15047)が算出され、図27に示されている。XL-rPNB-X60-Y40では、架橋剤濃度が10モル%から45モル%に増大するにつれて、Eaは9.46kJ/モルから13.25kJ/モルに増大した。高IECのAEM(即ち、XL20-rPNB-LY100及びXL20-rPNB-X22-Y78)では、それらのEa値はほぼ同じであり(それぞれ10.94kJ/モル及び10.40kJ/モル)、これはAEMの水酸化物イオン環境が類似していることを示している。
データを調査する為の異なるやり方は、図28の通り25℃におけるλの関数として伝導率をプロットすることである。図28は、水が不十分な領域(低λ)及び過剰の膨張領域(高λ)を示している。高λ値は、イオンチャネルを溢れさせ、伝導率を低減する。λ<20では、ホモポリマーのAEMは、ジブロックのAEM(XL-rPNB-X22-Y78及びXL-rPNB-X60-Y40)と比較して相対的に高い伝導率を有していた。例えば、XL20-rPNB-LY100(λ=14)は、99mS/cmの水酸化物イオン伝導率を有しており、XL40-rPNB-X22-Y78は、77mS/cmの伝導率を有していた。文献には他のAEMとの比較が報告されており(Liu, L. et al., J. Mater. Chem. A 2016, 4, 16233-16244;Zhu, M. et al., J. Membr. Sci. 2018, 554, 264-273;Zhang, M., et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2016, 8, 23321-23330;Abouzari-lotf, E. et al., J. Mater. Chem. A 2017, 5, 15326-15341;Olsson, J. S. et al., Adv. Funct. Mater. 2018, 28, 1702758;He, G. et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2017, 9, 28346-28354;Zhang, X. et al., Polym. Chem. 2018, 9, 699-711;Olsson, J. S. et al., Macromolecules 2017, 50, 2784-2793;Ge, Q. et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2015, 7, 28545-53)、XL-rPNBのAEMは、中程度のλ(10~30)でより高い伝導率を有していたが、これは、XL-rPNBのAEMが電気化学的適用の有望な候補であることを示唆している。
熱安定性:ROMPによるAEMの熱安定性が、図29Aの通り熱重量分析(TGA)を使用して評価された。TGAでは3つの質量喪失工程がある。第1工程は、100℃未満での喪失であり、これは膜中の水及び残りの任意の有機溶媒の喪失に対応する。約200℃における第2工程は、重量減少がAEMのQA質量に近いことから、第四級アンモニウム基(N+(CH3)3、QA(quaternary ammonium))の喪失に対応する。例えばXL35-X60-Y40の重量減少は、第2工程で約12重量%であり、QA基は約13重量%を有している。第3の質量喪失は、ポリマー骨格の分解である可能性が最も高い。従って、ROMPによるポリ(ノルボルネン)骨格は、電気化学的デバイス、例えば燃料電池、にとって80℃で十分な安定性を有している。更に、図29Bは、XL35-rPNB-X60-Y40、XL20-rPNB-X22-Y78及びXL20-rPNB-LY100材料のTgが、それぞれ145℃、165℃及び170℃であることを示している。イオン繰り返し単位数が多いほど、より高いTgに対応する。
機械的安定性:完全に水和した及び乾燥XL-rPNB-X60-Y40、XL-rPNB-X22-Y78及びXL-rPNB-LY100膜の機械的特性は、図30に示されている。水和AEMの破断伸び値は、14.0%を超えるが、それぞれの引張強度は相対的に低く、<2.6MPaである。水和XL-rPNB-X60-Y40(引張応力=2.5MPa、歪み=51.7%)の破断伸びは、得られた値の中で最も高い値であった。その値は、水和XL-rPNB-X22-Y78(1.5MPa、14.0%)と比較しても高い。このことは、AEM内のより高いイオン含量が、機械的特性を低減することを示唆している。XL20-rPNB-LY100(1.9MPa、24.5%)は、その分子量がより高いことに起因して、XL20-rPNB-Y100よりも良好な機械的特性を有していた。乾燥AEMは、水和膜よりも高い引張強度(>10MPa)を有していたが、これは、吸収された水の存在が機械的強度を低減することを示している。
アルカリ安定性:XL20-rPNB-LY100(4.51meq/g)、XL20-rPNB-X22-Y78(3.78meq/g)及びXL35-rPNB-X60-Y40(2.20meq/g)膜のアルカリ安定性は、図31Aの通り、それらを1MのNaOHに80℃で500時間にわたって浸すことによって評価された。試験された全てのAEMは、NaOHに浸した後、それらの機械的特性、可撓性及び強度を維持していた。24時間後に伝導率がわずかに増大したが、これは、臭化物イオン又は炭酸イオンのいずれかから水酸化物イオン形態への変換がより完全に生じたことに起因しうる。ほとんどの膜では、伝導率の初期値からの低減はほとんど又は全くなかった。高IEC(4.51meq/g)を有していたXL20-rPNB-LY100でも、1MのNaOH中80℃で792時間経過した後にその初期の伝導率値を保持しており(実験誤差内)、優れた化学的安定性が確認された。ジブロックポリマー(例えば、より低いIECを有していたXL35-rPNB-X60-Y40)では、伝導率は、576時間後に1.44%低下した。XL20-rPNB-X22-Y78膜は、672時間後に4.77%の低減を示した。図31Bに示される通り、FT-IR分析は、アルカリ処理後、1490cm-1、1260cm-1及び1142cm-1におけるC-N延伸に変化を示さなかった(Mohanty, A. D et al., Macromolecules 2015, 48, 7085-7095;Chen, D et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2012, 4, 5775-5781)。このことは、AEM化学構造が無傷のままであり、伝導率の喪失が、AEM端部に沿った亀裂によって引き起こされうることを示唆している。
燃料電池試験:膜が、膜電極アセンブリ(MEA)及び電気化学的デバイスに使用されることができるように十分に堅牢であり、伝導性であり、安定であるようにする為に、ROMPによるAEMがAEM燃料電池で試験された。MEAは、XL20-rPNB-LY100、XL20-rPNB-X22-Y78及びXL35-rPNB-X60-Y40膜のそれぞれから構築され、図32の通りH2/O2燃料電池で60℃において操作された。XL20-rPNB-X22-Y78膜を有する電池の開路電圧は、穏やかな0.60Vであった。膜の機械的特性の低さは、小さな亀裂を引き起こして、燃料クロスオーバー及び/又は電池短絡をもたらした。自立するXL20-rPNB-LY100膜はより堅牢であったが、その開放蓄電池電圧はまだいくらか低く(0.70V)、これは、高い水の取り込みから生じる高いガスクロスオーバーに起因している可能性が最も高かった。XL35-rPNB-X60-Y40は、より低いIEC及び最良の機械的特性を有していた。開路電圧は0.83Vであった。XL20-rPNB-LY100及びXL35-rPNB-X60-Y40燃料電池の最大出力密度は、それぞれ333mA/cm2で126mW/cm2及び401mA/cm2で172mW/cm2であった。これらの試験は、伝導率及び機械的特性が、膜の企図された適用に合わせて最適化されなければならないことを示している。考慮されるべき変数は、操作温度及び膜間差圧を包含する。これらの材料の最適化及び更なる試験は、将来的な報告の対象となりうる。
要約すると、ROMPで架橋された一連のポリ(ノルボルネン)が合成され、電気化学的デバイスにおいて可能な使用について評価された。ポリマーは、全てが炭化水素の骨格及び第四級アンモニウムヘッド基を有する可撓性アルキル側鎖から構成された。G3に対して疎水性モノマーとハロゲン化モノマーの適切な比を選択することによって、非常に高いIEC(4.73meq/g)を有するポリマーが合成された。既に報告されているROMPによるAEMよりも高い、25℃で99mS/cm及び80℃で195mS/cmの高い水酸化物イオン伝導率を達成する為に、穏やかな架橋(20モル%の架橋剤濃度)が使用された(XL20-rPNB-LY100)。更に、XL20-rPNB-LY100膜は、優れたアルカリ安定性を有していた。膜の特性の更なる最適化及び強化は、より高い燃料電池性能をもたらしうる。
実施例4
3.4W/cm2のアルカリポリマー燃料電池の達成:高い出力、耐久性及び水の管理の為の複合架橋ポリ(ノルボルネン)アニオン伝導性膜
固体ポリマー電解質を使用するエネルギー変換デバイス、例えば燃料電池及び電解槽、は、高い熱力学的効率を有し、固体状態で設計されるので、クリーンエネルギーの生成及び保管に有望な選択肢である(Steele, B. C. et al., Nature 2001, 414, 345)。これらのデバイスは、拡張可能でもあり、電力の輸送、遠隔及び分散、並びに電気及び水素生成の為の大規模施設の為に使用されることができる。
燃料電池及び電解槽の為のポリマー電解質膜は、優勢な電荷担持イオンに基づいて、プロトン交換膜(PEM)及びアニオン交換膜(AEM)の大まかに2つの分類に分けられる。PEM膜に基づいて既に商業化されている燃料電池車両及び固定発電機が存在するが、白金に基づく電解触媒及び全フッ素化膜と関連して著しい費用がかかる。高pH環境は、燃料電池の酸素還元反応(ORR:oxygen reduction reaction)動態(及び電解槽における水の酸化動態)にとって有利であり、非Pt触媒の使用を可能にするので、AEMに基づくデバイスは、PEMに基づくデバイスと比較して所有費用が抑えられる潜在可能性を有する(McLean, G. F. et al., International Journal of Hydrogen Energy 2002, 27 (5), 507-526;Dekel, D. R., et al., Journal of Power Sources 2018, 375, 158-169)。また、PEMに基づく電気化学的デバイスに必要な全フッ素化ポリマーと比較して、アルカリ条件で安定な炭化水素に基づく水酸化物イオン伝導性ポリマーを合成する為に、様々な低費用モノマーが使用されることができる(Varcoe, J. R. et al., The Journal of Physical Chemistry B 2006, 110 (42), 21041-21049;Varcoe, J. R. et al., Energy & Environmental Science 2014, 7 (10), 3135-3191)。全フッ素化ポリマーは、高価であり、合成するには危険である。
AEMの非常に重要な測定基準は、(i)高いアニオン(例えば水酸化物イオン)伝導率、(ii)操作温度での長期的アルカリ安定性、(iii)使用中の圧力差に耐える為の堅牢な機械的特性、並びに(iv)電極及び膜内のイオン輸送を妨害するおそれがある過度の水の取り込みの制御を包含する(Gottesfeld, S. et al., Journal of Power Sources 2018, 375, 170-184)。100mS/cmを超える水酸化物イオン伝導率(60℃~80℃における)を有するAEMについて幾つかの報告が存在している(Mandal, M. et al., Journal of Membrane Science 2019, 570-571, 394-402;Dang, H.-S. et al., Journal of Materials Chemistry A 2016, 4 (30), 11924-11938;Liu, L. et al., Journal of Materials Chemistry A 2018, 6 (19), 9000-9008;Liu, L. et al., Journal of Materials Chemistry A 2016, 4 (41), 16233-16244))。より最近のAEMの報告は、200mS/cm又はそれに近い伝導率(80℃における)を示している(Mamlouk, M. et al., International Journal of Hydrogen Energy 2012, 37 (16), 11912-11920;Zhu, L.;Zimudzi, T. J. et al., Polymer Chemistry 2016, 7 (14), 2464-2475)。高伝導率のAEMは、>1W/cm2を有するAEMに基づく燃料電池を得る為に最適化された電極(Pt又は非Pt触媒のいずれかを用いる)と組み合わされている(Wang, L. et al., Chemical Communications 2017, 53 (86), 11771-11773;Omasta, T. J. et al., Journal of Power Sources 2018, 375, 205-213;Omasta, T. J.;Peng, X. et al., J Electrochem Soc 2018, 165 (15), J3039-J3044;Wang, L. et al., Green Chemistry 2017, 19 (3), 831-843)。AEM燃料電池の出力についての最新の記録は、2W/cm2である(Omasta, T. et al., Energy & Environmental Science 2018, 11 (3), 551-558;Wang, L. et al., Journal of Materials Chemistry A 2018, 6 (31), 15404-15412))。AEM燃料電池は、燃料及びオキシダントストリームにおける相対湿度、並びにAEM膜及びイオノマーにおける水の取り込みに対して敏感であることが知られている。膜及び電極における適切な水の管理は、高い出力密度を達成する為に非常に重要である。水は、水素酸化反応(HOR:hydrogen oxidation reaction)中にアノードで電気化学的に生じさせられ、AEM燃料電池のORRによってカソードで消費される。水は、電気浸透抗力によってカソードからアノードに、伝導アニオンの為の水和水として輸送される。水はまた、アノードからカソードに拡散して戻る。膜及び電極内に適切な水の取り込み量がなければ、イオン伝導率が損なわれ、AEM内のより高い有効水酸化物イオン濃度に起因してポリマーの分解が加速する。他方では、水が多過ぎると、薄い触媒層が容易に溢れさせられるおそれがあり、電極及び膜内の効率的なイオン流が妨害されるおそれがある。AEM内のより高い内部応力及び膨張に起因して、膜の機械的分解が生じるおそれもある。
大気の二酸化炭素は、水酸化物に基づくAEMデバイスの性能を妨害する。この問題は、本明細書では直接的に研究されていないが、炭酸イオン又は炭酸水素イオンが、CO2と水酸化物イオンとの反応によって形成されることができることは注目に値する。炭酸イオン及び炭酸水素イオンの移動度は、水酸化物イオンの移動度よりも低く、表面上は高い伝導率のAEMの伝導率を下げる(Pandey, T. P. et al., Physical Chemistry Chemical Physics 2015, 17 (6), 4367-4378)。PEMデバイスとは対照的に、AEM燃料電池についての伝導率及びピーク出力密度は、性能を比較する為に対等にされることができるように、CO2を含まない条件下でしばしば報告される。二酸化炭素の存在下で操作される場合には値が低下するので、非常に高い水酸化物イオン伝導率のAEMが必要とされることも明らかである。
イオンの数は独立に増大されることができないことから、高い伝導率を達成する為には、過度の水の取り込みに起因する不利益を被るので、AEMにおいて効率的なイオンチャネル(即ち、より高いイオン交換能(IEC))が必要とされる。高い移動度のイオンチャネルは、ブロックコポリマー(BCP)の使用によって得られる相分離を介して形成されることができることが示されている(Huang, G. et al., J Electrochem Soc 2017, 164 (14), F1648-F1653;Pan, J. et al., Energy & Environmental Science 2014, 7 (1), 354-360;Wang, J. et al., ChemSusChem 2015, 8 (24), 4229-4234)。ナノチャネルは、BCPの疎水性ブロックと親水性ブロックとの間のナノ相分離によって作り出された(Park, D.-Y. et al. The Journal of Physical Chemistry C 2013, 117 (30), 15468-15477;Wang, L. et al. Soft Matter 2016, 12 (24), 5359-5371;Li, Y. et al. Macromolecules 2015, 48 (18), 6523-6533)。またチャネルは、効率的なイオン伝導の為に相互接続されなければならないので、全てのBCPの形態が高い伝導率をもたらすというわけではないことに留意することが重要である(Chen, C. et al. Journal of Materials Chemistry A 2016, 4 (11), 4071-4081)。ポリマー骨格の性質及びポリマー内の親水性基のタイプ/位置は、高pHでの長期AEM安定性にとって重要である。ポリマー又は側鎖基内の極性部分、例えばエーテル、ケトン又はエステル連結、は、求核性攻撃及び骨格分解を受けやすいことが、実験的に示されている(Mohanty, A. D. et al. Macromolecules 2016, 49 (9), 3361-3372;Mohanty, A. D. et al. Journal of Materials Chemistry A 2014, 2 (41), 17314-17320;Arges, C. G. et al. ACS Applied Energy Materials 2018, 1 (7), 2991-3012)。長いペンダントアルキルテザー(C4~C6)の末端にカチオン性ヘッド基を置くことは、ポリマー分解を軽減する為の有効な戦略であることも見出されている(Pan, J. et al., Energy & Environmental Science 2013, 6 (10), 2912-2915)。第四級アンモニウムヘッド基、特にトリメチルアンモニウムカチオンは、伝導率及び安定性の優れたバランスを保つことが見出されているが、他の伝導基も利点を示す(Hibbs, M. R. et al., Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics 2013, 51 (24), 1736-1742;Liu, L. et al. Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2018, 56 (13), 1395-1403)。
この実施例において、ビニル付加重合によって合成されたポリ(ノルボルネン)(PNB)のBCPが、AEMとして使用されている。PNBは、低価格の前駆体材料(ジシクロペンタジエン)から合成され、高いガラス転移温度(Tg)を有する。またPNBは、コンパクトなモノマーサイズを有しており、非常に高いIECのAEMを作り出すことを可能にする、全てが炭化水素の骨格である(Martinez-Arranz, S. et al. Macromolecules 2010, 43 (18), 7482-7487)。この材料は、4meq/gに近いより高いIEC値を有する、極めて安定なポリマーを形成することが既に示されている(J.A. Kaitz, et al., Macromolecules. 46 (2013) 608-612)。高架橋密度の問題に遭遇することなく水の取り込みを制御し、更なる機械的強度を提供する為に、軽度の架橋が使用された。AEMにおけるオームの喪失を最小限に抑える為には、薄い膜が望ましい。膜を流延して、それらを機械的に強靱にする、薄いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)強化物が使用された(Merle, G. et al. Journal of Membrane Science 2011, 377 (1), 1-35;Quartarone, E. et al., Materials (Basel, Switzerland) 2017, 10 (7), 687)。過去には、類似の手法が使用されて燃料電池の為の複合AEMが製造され、<350mW/cm2の穏やかなピーク出力密度を達成した(Zhang, F. et al. Journal of Materials Chemistry 2010, 20 (37), 8139-8146;Zhao, Y. et al. Journal of Power Sources 2013, 221, 247-251)。この研究で使用された膜は、H2/O2を使用して80℃で最大3.4W/cm2のピーク出力密度を有する燃料電池を生成するように、伝導率、水の取り込み及び靱性のバランスを保っている。この値は、現在までに報告された最も高い値のAEM燃料電池よりもかなり高い。またその膜は、545時間のランタイムで安定であることが示され、このランタイムは、やはり現在までに報告されたAEM燃料電池の中で最も長い。
ブロックコポリマーの合成及び膜の形成:64モル%の親水性モノマーを有するテトラブロックPNBコポリマーGT64の合成が、本明細書に既に記載されている実施例に従って実施された。ポリマーのIECは、本明細書の実施例に記載される通り、1H NMR分析に基づいて、Bruker Avance 400MHz NMR機器を使用し、CDCl3を溶媒として使用して計算された。テトラブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)及び多分散指数(Mw/Mn)は、LC-20 AD HPLCポンプ及び屈折率検出器(RID-20A、120V)を備えたGPC(島津)によって決定された。GPC測定は、先の実施例において本明細書で既に記載されている通り、THF中、溶出剤を1.0mL/分の流速で用いて30℃で実施され、標準ポリスチレンに対して較正された。
軽度の架橋は、架橋剤であるN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)をポリマー/溶媒溶液に添加することによって行われた。利用可能なヘッド基部位に対する架橋剤のモルパーセントは、2.5モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%及び25モル%であった。例えば、GT64-5は、BCP内のヘッド基のモルに対して5モル%のTMHDAを有している。次に、ポリマー溶液は、複合フィルムを形成する為に、Xergy,Inc.(Harrington、DE、United States)によってPTFE強化層上に溶媒流延させられた。複合膜は、ブロモアルキルテザーを第四級アンモニウムヘッド基に変換する為に、室温で少なくとも48時間、50wt%トリメチルアミン水性溶液に浸漬させられた。四級化された膜は、DI水で十分に洗浄され、使用される状態になるまでDI水中で保管された。
水の取り込み、寸法膨潤率、水和数(λ):膜の水の取り込みは、下記の式1(式中、Mdは膜の乾燥質量であり、且つMwは、表面の過剰水を除去した後に完全に水和した膜の質量である)に従って計算された。
膨潤率は、下記の式2(式中、Vdは、膜の乾燥体積であり、且つVwは、表面の過剰水を除去した後に完全に水和した膜の体積である)によって計算された。
機械的特性:強化された複合膜の貯蔵弾性率は、動的機械分析(DMA:dynamic mechanical analysis)によって、空気中30℃でTA Instruments Q800を1Hz単一周波数歪みモードで使用して測定された。完全に水和した矩形試料が、表面水を除去した後、テンションクランプを用いてDMAに搭載された。DMAの実験パラメーターは、125%の力追従で0.1%歪み及び前負荷力0.01Nに設定された。
膜電極アセンブリ(MEA:membrane electrode assembly)の製造:ガス拡散電極(GDE:Gas diffusion electrodes)は、Omasta等(Omasta, T. J. et al. Energy & Environmental Science 2018, 11 (3), 551-558)に記載されている方法に類似の方法を使用して、触媒層をガス拡散層(GDL(gas diffusion layer)、5%又は20%PTFE濡れ防止を伴うToray TGP-H-060)上に手作業でスプレーすることによって調製された。ETFE-[ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)]に基づく放射線グラフト化AEIイオノマーは、Varcoe及びPoynton等(Poynton, S. D. et al. Journal of Materials Chemistry A 2014, 2 (14), 5124-5130)によって提供された。カソード触媒インク混合物(20重量%イオノマー)を形成する為に、ETFE AEI固体イオノマーが、乳鉢及び乳棒を用いて微粉砕され、次にVulcan炭素担持Pt(Alfa Aesar HiSPEC 4000)と混合された。次に、少量のDI水(1ml)が固体混合物に添加され、その混合物は、粒子の凝集を回避する為に更に10分間粉砕され、次にバイアルに移された。残留粉末をすすぐ為に2-プロパノールが乳鉢に添加され(合計9ml)、次に混合物に移された。インク混合物の大部分が確実に収集されるように、乳鉢が2-プロパノールで更に2~3回すすがれた。粉砕された最終的なインク混合物が、音波プローブを用いて20秒間超音波処理された後、氷浴中で更に20分間超音波処理され、その後、25cm2のGDE1枚を生成する為にToray GDL上に手作業でスプレーされた。このプロセスは、アノード触媒インク混合物の為に、Vulcan炭素担持PtRu触媒を使用し、8%PTFE(20重量%イオノマー)を用いて反復された。これらのGDEの白金及び白金ルテニウム金属添加量は、蛍光X線(XRF:X-ray fluorescence)によって決定され、表6に示された。MEAを製造する為の特大の5cm2のPNBの複合AEMを用いて組み立てる為に、25cm2のGDEから5cm2のGDE2枚(アノード及びカソード)が切り出された。
MEAアセンブリ及び燃料電池試験:アノード及びカソードGDE及び膜は、電池を組み立てる前に合計60分間(ベース溶液を20分ごとに新しくする)、1MのKOH溶液中でイオン交換された。膜は、2枚のGDEの間に挟まれ、一緒に圧縮され、5cm2のFuel Cell Technologiesハードウェアの2枚の単一路の蛇行流黒鉛プレート及びPTFEガスケットの間に固定された。電池に印加された全トルクは、圧縮比25%で40in-lbであった。
燃料電池は、電池温度を60℃又は80℃に設定して、試験ステーション内に設置された。所望の温度が達成されるまで、H2及びN2が、それぞれアノード及びカソードを介して流された。望ましい温度に達したら、N2はO2に切り替えられ、電池をブレイクインさせる為に定電圧0.5Vが印加された。安定な交換電流密度が確立された後、電池の両側の入口ガスの相対湿度(RH)を最適化する為に、アノード及びカソードの露点が増大又は低減させられた。電池が、両方の電極について企図されたRHで平衡化された後、OCVから0.1Vに電圧を掃引することによって電圧分極曲線が測定された。様々なRHにおける初期性能の全てが備わったら、電池は、電池耐久性試験の為に、O2又はCO2を含まない空気中、600mA/cm2の一定の電流密度で保持された。電池性能は、最短24時間にわたって経時的にモニタリングされた。
電気化学的特性:高周波抵抗(HFR:High frequency resistance)は、電気化学的インピーダンス分光法(EIS:electrochemical impedance spectroscopy)によって、Metrohm Autolabポテンショスタット/ガルバノスタットと共にブースターを使用して分析された。膜の面積比抵抗(ASR:Area specific resistance)は、HFRを使用して計算された。水素クロスオーバー量は、同じ機器を使用して測定され、H2及びN2は、それぞれアノード及びカソードに流された。
結果:この研究で使用されたAEMは、Xergy,Inc.製の薄いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)強化層を用いて高IECのビニル付加ポリ(ノルボルネン)BCP溶媒流延から製造された複合フィルムである。PTFE強化は、機械的強度をもたらし、従って薄膜(<20μm)が使用されることができる。全ての複合膜を製造する為に、同じベースポリマーが使用された。このポリマーは、過去の報告に従って合成され、分子量(Mn)51.0kDaを有し、多分散指数(PDI)は2.02であった。分子量及び多分散性のこの範囲は、伝導率及び機械的強度を有する流延膜をもたらすことが既に見出されている。過去の報告では、軽度の架橋は、特に高IEC材料の為の膜のイオン伝導率にとって有益であることが見出された。高い架橋度は、イオン移動度を阻害し、脆性を引き起こすおそれがある。膜の架橋剤(TMHDA)濃度は、0モル%、2.5モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%及び25モル%の架橋剤(即ち、ポリマー内の臭素イオンヘッド基に対するモル%)を用いて複合AEMを調製することによって研究された。最終ポリマーのIECは、添加された架橋剤の質量に起因して、架橋剤濃度と共にわずかに低減したが(3.37meq/gから3.28meq/g)、モノマー1個当たりのカチオン性ヘッド基の数は変化しなかった。膜の特性は、表6にまとめられている。
膜の機械的特性は、表6の通り架橋度によって影響を受けた。膜の貯蔵弾性率及び生じる堅さは、架橋によって改善された。非架橋膜(GT64-0)は、わずか66.8MPaの貯蔵弾性率を有していたが、これはPTFE自体の貯蔵弾性率と類似している。非常に軽度の架橋(2.5モル%)は、弾性率を75.4MPaに少し増大した。最も高い架橋剤濃度(25モル%)の膜の貯蔵弾性率は、非架橋試料と比較して8倍高く、553.5MPaであった。架橋された膜のより高い弾性率は、必要な強剛性及び靱性をもたらし、従って、非常に薄い形態で取り扱い、使用することができ、その結果、デバイス操作中のオーム喪失が最小限に抑えられることができる。
aGPCによって決定された前駆体ポリマーのM
n。
bGPCによって決定された前駆体ポリマーのM
w/M
n。
cTMHDAの分子量を加算した後に計算されたIEC。
dEISによって60℃で測定された面積比抵抗。
eDMAによって決定された貯蔵弾性率。
複合フィルムの水の取り込み及び膨張比は、表6の通り架橋剤濃度と共に低減した。水の取り込みは、非架橋膜の方が相対的に高く(88%)、膨潤率は68%であった。非常に小さい架橋剤濃度(2.5モル%)でも、架橋ポリマーネットワーク内のより密に結合した構造に起因して、膨潤率を著しく低減した。≧10%のより高い架橋剤濃度では、水の取り込み及び膨潤率は共に50%を十分に下回ったが、これは膜電極アセンブリに統合されるときの物理的変形を低減するのに有利である。複合フィルムの水の取り込みの値は、既に報告されている通り、PTFE支持なしに自立するフィルムの値未満であることが分かっている。例えば、10モル%架橋剤は、非強化ポリマーでは53%の水の取り込みを有し、GT64-10ではわずか35%の水の取り込みを有していた。20モル%の架橋では、効果は更により劇的である。水の取り込みは、非強化ポリマーでは51%であったのに対して、強化ポリマーでは24%であった。このことは、疎水性PTFEの強化が、これらの膜における水の取り込みの制限に寄与することを示している。
高周波抵抗(HFR:high frequency resistance)及び面積比抵抗(ASR:area specific resistance)は、電気化学的インピーダンス分光法(EIS:electrochemical impedance spectroscopy)を使用して評価された。60℃におけるMEAのEIS測定値から得られたナイキストプロットが、図33に示されている。プロットの高周波側切片(HFR)は、膜の全直列オーム抵抗、並びに任意の他の直列抵抗、例えば接触抵抗及びハードウェア抵抗、を表す。ここで使用された膜の厚さは、HFR全体を低減し、それによって燃料電池の出力を最大限にする一助になる。
ASRは、EISによって測定される通り、MEAのHFRを使用して計算された。この値は、支持材料がイオン伝導率に寄与しないので、特に複合膜にとって重要な膜の面方向面積抵抗を表す。面方向の水酸化物イオン移動度は、強化層及び充填膜の細孔の配向に応じて決まる。この研究における膜のASR値は、表6に列挙されている。GT64-2.5を除く膜の全てが、≦0.04Ω-cm2のASRを有しており、これはARPA-E IONICS(米国エネルギー省)プログラムによって設定された燃料電池統合の指針を超えている。表6はまた、これらのポリマーの穏やかな架橋が、どのように水の取り込みを大幅に低減したかについて示している。膨潤率はわずか7%に低減し、WU/ASRの値の低減によって示される通り、過度の水を伴わずに高伝導率が達成された。WUを増大することによって高伝導率を達成することは、膜及びそれらの膜から製造されたデバイスの機械的安定性が低下することをもたらすことが分かっている。
2組の燃料電池が、表6の強化膜を使用して構築された。燃料電池は、表7にまとめられている通り、電池温度60℃で加湿H2及びO2、並びに5%濡れ防止Toray-H-60GDLを用いて操作された。アノード及びカソードのRHが最適化される短いブレイクイン期間が経過した後、ピーク出力密度を決定する為に、各電池に対して順分極及び逆分極走査が行われた。最適化されたアノード及びカソードの露点は、(A/C)の表記を使用して表7に列挙されており、ここでAの値はアノードの露点(摂氏)を表し、Cの値はカソードの露点(摂氏)を表す。この表記は、本明細書を通して使用される。架橋剤濃度に基づく性能は、図34に示されている。全ての試料についての60℃でのピーク出力における電池電圧は、およそ0.55Vであった。比出力及び比電流は、電極のピーク出力密度、ピーク出力で生成された電流、及び金属添加量に基づいて計算された。
表7において、電流密度の3つの明確な出力階層を見ることができ、ピーク出力は架橋剤濃度と共に増大している。試験した膜の中で、最も低い性能を有する電池は、0モル%及び2.5モル%の架橋剤濃度を有する膜を含有しており、それらはそれぞれわずか1241~1386mW/cm2のピーク出力を有していた。5モル%及び10モル%の架橋剤濃度を有する膜では、それぞれ1894mW/cm2及び1902mW/cm2の中間出力レベルが観察された。GT64-15膜を含有する電池については、最高出力密度が観察され、40℃(47.54%RH)においてアノード及びカソードの露点の両方で2200mW/cm2のピーク出力密度が達成された。この電池は、60℃でも、Wang等によって報告された80℃で2.02W/cm2の過去の最高出力のAEM燃料電池を上回った(Wang, L. et al., Journal of Materials Chemistry A 2018, 6 (31), 15404-15412)。
a EISによって測定された寿命初期(beginning of life)のクロスオーバー。
bEISによって測定された高周波抵抗。
cXRFによって決定された比出力及び電流についての金属添加量。測定又は計算された他の全ての値は、試験ステーションデータに基づく。XL=架橋。A/C=それぞれアノード(A)及びカソード(C)の露点(摂氏)を示す。CD(current density)=電流密度。PPD(peak power density)=ピーク出力密度。
表8にまとめられている通り、80℃における燃料電池の性能は、著しく増大した。より高い架橋剤濃度の試料は、より低温でそれらの性能を有していたので、80℃における試験の為に選択された。これらの試験で使用されたGDEは、更に最適化され(20%濡れ防止Toray-H-60)、アノード及びカソード供給物の相対湿度を最適化する為に更に注意が払われた。図35に示される通り、試験した4つの電池の中で、出力密度分離は少ない。全ての電池が、約0.53Vのピーク出力を達成した。GT64-10及びGT64-20は、共に約3W/cm2のピーク出力を達成し、類似のアノード及びカソードの露点を有していた。GT64-25のピーク出力は3.265W/cm2であり、これは水膨張による物理的変形をより厳しく制御したことに起因しうるが、その水酸化物イオン伝導率は、その他の膜よりも低かった。GT64-15は、60℃において得られた結果と類似して、試験した全ての膜の中で再び最も高い性能を示し、ピーク出力密度3.368W/cm2を有していた。GT64-15の個々の分極曲線は、図36に示されている。本発明者等の知識では、これは、AEM燃料電池について報告された中で最も高い性能であり、過去に報告された最高値を70%凌いでいた。もたらされる出力密度は、相対的に広範囲の架橋剤濃度にわたって相対的に類似することが分かっている。これは、共により低いWUによって引き起こされる機械的安定性(架橋剤濃度が高いほど良好である)及びより低い伝導率の相殺傾向の結果であると思われる。
aEISによって測定された寿命初期のクロスオーバー。測定又は計算された他の全ての値は、試験ステーションデータに基づく。XL=架橋。A/C=それぞれアノード(A)及びカソード(C)の露点(摂氏)を示す。CD=電流密度。PPD=ピーク出力密度。
類似のIECを有する強化膜の過去のex-situ試験は、最も高い水酸化物イオン伝導率が5モル%の架橋剤濃度で生じたことを示した。これは、60℃及び80℃の両方において15モル%の架橋剤濃度が最高出力密度をもたらしたこの研究結果とは対照的である。表6では、水の取り込みはASRによって正規化され(WU/ASR)、IECはASRによって正規化された(IEC/ASR)。これらの量は、ある特定の架橋剤濃度が、なぜ他の濃度よりも良好であるかについてのいくらかの洞察を与える。IEC/ASRは、IEC当たりの伝導率(σ/IEC)に類似しており、これは過去に、伝導基が水酸化物イオンをどのように効率的に輸送するかについて測定する為に使用されてきた。この研究の膜では、イオン伝導効率は全て非常に類似しており、わずか3.20~3.33の範囲である。これは、試験した試料の中でASR及びIECの変動がごくわずかだからである。調査する為の更なるパラメーターは、WU/ASRであり、これは水酸化物イオン伝導率が架橋剤濃度と共に低減したが、最小WU(及び生じる膨張)が著しい利益をもたらしたので、電池性能がそれほど損なわれなかったことを示している。
薄い複合膜を使用する1つの欠点は、特に低温でのより高い水素クロスオーバーである。ブレイクイン手順の前に、アノードにH2及びカソードにN2を適用することによって、水素クロスオーバー試験が実施された。0.5Vの電池電圧で測定されたカソード電流は、カソードからアノードへの水素クロスオーバーに相当する。水素クロスオーバーの値は、表6及び7に列挙されている。クロスオーバーは、膜の厚さ又は架橋剤濃度の関数であるとは思われず、GT64-10については54mA/cm2もの高さであった。クロスオーバーは、主に膜の不測の弱点又は薄い点で生じていたと疑われるが、明らかな領域は分からなかった。GT64-10の高められたクロスオーバー効果は、より低い開路電圧(OCV)値に見ることができる。OCVは、0.881V~0.950Vの範囲であった。同じ電極配合物を使用した他の燃料電池は、約1.1VのOCV値を有していた。
アノード及びカソード入口における相対湿度は、アルカリ交換膜燃料電池の性能において非常に重要な役割を果たしていることが知られている。水素及び酸素注入ストリームにおける水の取り込み量は、アノードにおける水の生成、膜を介した水の拡散、及びカソードにおける水の消費と、注意深くバランスを保たれなければならない。因子、例えば触媒活性及び添加量、は、個々の各電極に異なる影響を及ぼすことができ、それによって全体的な電池性能に影響を及ぼす。既に言及した通り、各膜における架橋剤の量に対して、出力の3つの階層を、図34に見ることができる。しかしながらこのデータには、更なる傾向を見ることができる。架橋剤濃度と共に性能が実際に増大するだけでなく、必要な湿度の量も低減する。既に報告されている通り、水の取り込みは、ポリマーネットワークにおける架橋剤濃度の増大と共に低減する。(J.M. Schwartz, et al., J. Polym. Sci. Part A Polym. Chem. 56 (2018) 221-228)。表6における水の取り込みデータに見られる通り、架橋剤濃度が高いほど、WUを低減する。しかしながら、より密な且つより剛性のポリマーネットワークも、膜内に水を閉じ込めると思われ、ドライアウト速度を制限する。ドライアウトは特に、この研究の薄膜に関する問題であり、適切な水和を維持する為に臨界架橋剤濃度が必要とされることを示していると思われる。
60℃で操作された≧10%の架橋剤濃度を有する電池は、40℃又は47.5%RHのアノード及びカソードの露点でピーク出力密度を有していた。図37は、GT64-15膜についてのRH最適化を示す。50/50のアノード及びカソードの露点では、システムに水が多過ぎることが明らかであり、これが電極を溢れさせ、出力を低減させる。性能は、湿度が40/40に低減されると着実に増大する。
この傾向は、中程度の量の架橋剤(5モル%)で継続し、その場合に必要なRHは、アノード及びカソードについてそれぞれ64.5%RH及び74.8%であった。≦2.5モル%の架橋剤濃度では、アノード及びカソードのRHは、最も高いピーク出力を達成するには69.5%RHである必要があった。GT64-2.5のRH最適化は、図37に示されている。100%RHでは、電池が溢れることに起因して、より低い出力が観察された。スペクトルの反対端では(露点50/50)、膜は乾燥し過ぎ、低出力も観察される。55/55の露点では、注入水及び生成水の最適なバランスが保たれることに起因して、著しくより高い出力が達成されることができる。
図38は、任意の架橋剤を含まない膜のRH最適化挙動を示す。データの分離は明らかではないが、この電池の最適な露点は、50/50~55/55である。露点が45/45に設定される場合、水和の欠如に起因してより低い出力が観察された。
ここで試験した電池の長期的安定性は、5%濡れ防止GDLを使用して研究された。GT64-15の耐久性は、CO2を含まない空気を使用して80℃で試験された。CO2を含まない空気に切り替える前に、この電池は、図40に示される通り、H2/O2中80℃で2.3W/cm2を達成した。図41は、一定の電流密度600mA/cm2における電池電圧の時間ごとのデータを経時的に示す。全体的に、電池は、膜の検出可能な分解なしに545時間稼働した。本発明者等の知識では、545時間は、AEM燃料電池の現在までの耐久性試験で最長でもある。最初の300時間の間、電池性能は、この時間にわたって約17%低下したことが観察された。しかしながら、分解の起源は、電極の放射線-グラフト化ETFE AEIイオノマーに起因しうるものであり、500時間後に約6.2%分解することが報告された。この性能の変化は、電極における水動態を経時的に変化させた可能性が高い。従って、湿度は300時間後に78/78に調整され、性能の初期レベルが修復された。次の150時間が経過した後、アノード及びカソードの露点は、耐久性試験の最後の95時間は79/79に増大させられた。水の取り込み量の調整後、電池電圧及びHFRも、その初期値に戻されたが、これは適切な水和レベルが達成されたことを示す。実際、初期HFR(0.043Ω-cm2)と最終HFR(0.042Ω-cm2)との比較は、性能が変化しなかったことを示している。このことは、AEM膜及び電極に、より長いブレイクイン(break-in)期間が必要であることを示している。
先に開示したものの変形、並びに他の特色及び機能、又はそれらの代替は、多くの他の異なるシステム又は適用に組み合わせられうることを理解されよう。現在予見できない又は予期されないその様々な代替、改変、変更、又は改善は、その後当業者によって加えられうるものであり、それらは以下の特許請求の範囲によって包含されることが企図される。