以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のイミド構造含有アクリル系樹脂の製造方法は、(メタ)アクリル系重合体と、イミド化剤と、イミド化促進剤を含有する原料組成物を加熱する工程を含む。
(i)(メタ)アクリル系重合体
(メタ)アクリル系重合体は、主に、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を重合して得られる重合体であり、本発明の効果を損なわない限り特には限定されず、公知の(メタ)アクリル系重合体を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含有する単量体組成物を重合することにより製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸nーブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの炭素数が6~12の(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸アルキルアリール、(メタ)アクリル酸脂環式アルキルエステルなどがあげられる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
得られるイミド構造含有アクリル系樹脂の耐熱性が向上する観点から、(メタ)アクリル系重合体が、メタクリル酸アルキルエステル単位を含むことが好ましい。
また、効率よくイミド構造含有アクリル系重合体を製造できることから、(メタ)アクリル系重合体が、炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むことが好ましく、中でも、(メタ)アクリル酸メチル単位、(メタ)アクリル酸エチル単位、(メタ)アクリル酸n-プロピル単位、(メタ)アクリル酸n-ブチル単位がより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル単位が特に好ましい。
(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量に特に制限はないが、耐熱性の観点から、50重量%以上が好ましく、75重量%以上がより好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
得られるイミド構造含有アクリル系樹脂の耐熱性をさらに向上させる観点から、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を用いても良い。環構造としては、例えば、ラクトン環構造、無水マレイン酸構造、無水グルタル酸構造、マレイミド構造、下記式(1)で表されるグルタルイミド構造などが挙げられる。
(前記式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、または炭素数3~12のシクロアルキル基である。)
(メタ)アクリル系重合体の主鎖に環構造を導入する方法としては、公知の方法が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系重合体としては特開2004-168882号公報、特開2006-171464号公報などの各公報に記載のものが挙げられ、マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系重合体としては特開2007-31537号公報に示されるようなN-置換マレイミド単位を有する(メタ)アクリル系重合体が例示され、グルタル酸無水物構造含有(メタ)アクリル系重合体としては特開2004-70296号公報、特開2004-307834号公報、特開2008-74918号公報、国際公開第2007/26659号等に記載のものが例示される。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は特に限定されるものではないが、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。この範囲を下回ると、成形体にした場合の耐熱性が劣るため、高温時の物性変化が大きくなり、適用範囲が狭くなる場合がある。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂中の環構造の含有量は特に制限されないが、耐熱性、物性のバランスを考えると2重量%以上であれば特に制限されないが、2.5重量%以上がさらに好ましい。上限は、成形が可能であれば特に制限されず、物性とのバランスで適宜選択することができるが、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がさらに好ましく、30重量%以下が特に好ましい。
また、上記したモノマー以外にも、スチレン、メチルスチレン等の芳香族単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を含むことも可能である。
上記、(メタ)アクリル系重合体の構造は、特に限定されるものではなく、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。ブロックポリマーの場合、A-B型、A-B-C型、A-B-A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
(ii)イミド化剤
イミド化剤は、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できる、芳香族アミン化合物であれば特に制限されない。ここで芳香族アミン化合物とは、芳香環の水素をアミノ基で置き換えた有機化合物を表し、芳香環は炭素以外の原子を含む複素芳香環であってもよい。具体的には、例えば、アニリン、トルイジン、アニシジン、キシリジン、トリメチルアニリン、トリクロロアニリン、アミノピリジン、アミノビフェニル、アミノナフタレン、アミノアントラセン、アミノテトラセン等を挙げることができる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応効率が良好であり、得られるイミド構造含有アクリル系樹脂の物性が良好であることから芳香族アミン化合物の芳香環を構成する原子数は5~18が好ましく、5~10がさらに好ましい。
上記例示したイミド化剤のうち、(メタ)アクリル系重合体との反応性や得られるイミド構造含有アクリル系樹脂の耐熱性が良いことから、アニリン、トルイジン、アニシジン、キシリジン、アミノピリジン、アミノビフェニルおよびアミノナフタレンから選択される1種以上が好ましく、アニリン、トルイジン、アニシジンおよびキシリジンから選択される1種以上がより好ましく、コスト、物性のバランスが優れていることからアニリンが特に好ましい。
このイミド化の工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるイミド構造含有アクリル系樹脂におけるグルタルイミド単位の割合を調整することができる。
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるイミド構造含有アクリル系樹脂の物性や、イミド構造含有アクリル系樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
前述した原料組成物中のイミド化剤の含有量は、要求される特性に応じて適宜調整することが可能であるが、例えば、(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して1重量部以上であれば、要求される特性に応じて適宜調整することが可能であり、4重量部以上がさらに好ましい。1重量部未満であると、得られるイミド構造含有アクリル系樹脂を含む樹脂組成物の耐熱性が低下する場合がある。上限は、成形性及び物性との関係で適宜選択することが可能であるが、ハンドリングの容易さから100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましく、70重量部以下がさらに好ましい。
(iii)イミド化促進剤
本実施形態におけるイミド化促進剤は、アンモニア、第1級アミンおよび第2級アミンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、pKaが6以上であれば特に制限されない。
前記第1級アミンは、下記式(2)で表される構造を有することが好ましい。
R4NH2 (2)
(式(2)中、R4は炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基または炭素数6~18のアリールアルキル基である。)
具体的にはメチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミンなどの直鎖または分岐のアルキルアミン;シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミン;ベンジルアミンやフェネチルアミンなどのアリールアルキルアミンが挙げられる。
また、前記第2級アミンは、下記式(3)で表される構造を有することが好ましい。
HN(R5)(R6) (3)
(式(3)中、R5及びR6はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基または炭素数6~18のアリールアルキル基である。また、R5とR6で環構造を形成していてもよい。)
具体的にはジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、ジイソプロピルアミンなどの直鎖または分岐のジアルキルアミン;ピロリジン、ピぺリジン、モルホリンなどの脂環式アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどが挙げられる。
前述したイミド化促進剤としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、ピロリジンおよびピペリジンが好ましい。
また、アンモニアや第1級アミンは、前述したイミド化促進剤ではあるものの、それ自体が(メタ)アクリル系重合体と反応しイミド構造を形成する場合がある。そのため副反応が少なく、所望のイミド構造含有アクリル系樹脂を得られる観点から、第2級アミンであるジエチルアミン、ジメチルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、ピロリジンおよびピペリジンがより好ましく、N-メチルプロピルアミン、ジエチルアミンおよびジメチルアミンが特に好ましい。
前記イミド化促進剤のpKaは6以上であれば特に限定されないが、イミド化を促進する効果が高いことから、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。上限は特に限定されることはないが、例えば14以下が好ましく、13以下がより好ましい。ここでpKaとは、次式で定義される値である。
pKa=-log10Ka
なお、AH→A-+H+の反応における酸解離定数(Ka)は、Ka=[A-][H+]/[AH]で求められる値である。
前述した原料組成物中のイミド化促進剤の含有量は、要求される特性に応じて適宜調整することが可能であるが、例えば、(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して1重量部以上であればよく、3重量部以上がさらに好ましい。1重量部未満であると、イミド化を促進する効果が小さく所望のイミド化率を有するイミド構造含有アクリル系樹脂を得られない場合がある。上限は、成形性及び物性との関係で適宜選択することが可能であるが、ハンドリングの容易さやイミド化促進剤の残留による成形体の機械的特性の悪化を防止する観点から80重量部以下が好ましく、60重量部以下がさらに好ましく、40重量部以下が特に好ましい。
前述した原料組成物中のイミド化促進剤の含有量は、イミド化剤1モルに対して0.1モル~10モルであることが好ましい。効率よいイミド化の促進やイミド構造含有アクリル系樹脂の収率向上の観点から下限は0.5モル以上が好ましく、0.8モル以上が特に好ましい。また、上限は10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましく、3モル以下が特に好ましい。
(iv)イミド構造含有アクリル系樹脂
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を含有する。
(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、R3は芳香族炭化水素基または複素芳香族基である。)
前記式(1)で表される構造において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。中でも、耐熱性に優れていることから、水素原子または炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
前記式(1)で表される構造において、R3は芳香族炭化水素基または複素芳香族基である。芳香環を構成する原子数は5~18が好ましく、5~10がさらに好ましい。具体的に例えば、フェニル基、トリル基、アニシル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、トリクロロフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。中でも、耐熱性に優れていることから、フェニル基、トリル基、アニシル基、キシリル基、ピリジル基、ビフェニル基およびナフチル基が好ましく、フェニル基、トリル基、アニシル基およびキシリル基がより好ましい。
なお、イミド構造含有アクリル系樹脂は、前記式(1)で表される構造において、2種類以上を含んでいてもよい。
イミド構造含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×104~5×105であることが好ましく、5×104~3×105であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
イミド構造含有アクリル系樹脂のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、135℃以上であることが特に好ましい。この範囲を下回ると、成形体やフィルムにした場合の耐熱性が劣るため、高温時の物性変化が大きくなり、適用範囲が狭くなる。ガラス転移温度は、例えば、樹脂10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所製DSC-50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定することができる。
イミド構造含有アクリル系樹脂のイミド化率は、要求される特性に応じて適宜調整することが可能であり、特に限定されるものではないが、耐熱性が高くなることから、イミド化率の下限は10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが特に好ましい。また、粘度の上昇によるハンドリング性悪化を防止する観点から、上限は80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、耐熱性と粘度のバランスに優れた樹脂組成物が得られる。なお、イミド構造含有アクリル系樹脂のイミド化率は後述の方法で求めることができる。
イミド構造含有アクリル系樹脂のイミド化率はフーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製FI/IR-4100)を用いてIRスペクトルを測定することによって求めることができる。1720cm-1付近のエステルカルボニル基に由来する吸収と、1680cm-1に付近のイミドカルボニル基に由来する吸収との強度比からイミド化率を決定する。ここで、イミド化率は、エステルカルボニル基とイミドカルボニル基の合計においてイミドカルボニル基が占める割合である。
イミド構造含有アクリル系樹脂の酸価は、イミド構造含有アクリル系樹脂中でのカルボン酸単位および酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えば国際公開第2005/054311号に記載の滴定法などにより算出することが可能である。本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂の酸価は0.10~1.00mmol/gであることが好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたイミド構造含有アクリル系樹脂を得ることができる。
特に酸成分の中でもカルボン酸の含有量は成形加工性の点から、0.25mmol/g以下が好ましく、さらには0.20mmol/g以下が好ましい。
カルボン酸量の測定方法は、国際公開第2005/054311号に記載の滴定法の溶媒をメタノールからジメチルスルホキシドに変えた酸価(DMSO酸価)を用いることにより算出できる。具体的には、式
(カルボン酸量)=2×(酸価)-(DMSO酸価)
により算出できる。メタノールを用いた滴定では酸無水物を1分子としてカウントするのに対して、ジメチルスルホキシドを用いた滴定では酸無水物を2分子としてカウントするため、上記式が適用できる。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂に含まれるアクリル酸エステル単位は熱安定性の観点から、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがさらに好ましく、0.3重量%未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、少なければ少ない方が好ましく、含有されていないことがより好ましい。
また、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂は、配向複屈折の値が、-0.5×10-3~0.5×10-3であることが好ましく、-0.25×10-3~0.25×10-3であることがより好ましい。
配向複屈折が上記範囲内であれば、環境の変化に対しても、成形加工時に複屈折が生じることなく、安定した光学的特性を得ることができる。
なお、本明細書において、特に断りのない限り、「配向複屈折」とは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折が意図される。配向複屈折(△n)は、式
△n=nx-ny=Re/d
で定義され、位相差計により測定することができる。上記式中において、nxおよびnyは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸とし、フィルムの厚さ方向をZ軸とした場合のX軸方向およびY軸方向の屈折率を表す。また、Reは、面内位相差、dはフィルムの厚さを表す。
イミド構造含有アクリル系樹脂の光弾性係数は、20×10-12m2/N以下であることが好ましく、10×10-12m2/N以下であることがより好ましく、5×10-12m2/N以下であることが更に好ましい。
光弾性係数の絶対値が20×10-12m2/Nより大きい場合は、光漏れが起きやすくなり、特に高温高湿度環境下において、その傾向が著しくなる。
光弾性係数とは、等方性の固体に外力を加えて応力(ΔF)を起こさせると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(Δn)を示すようになるが、その応力と複屈折の比を光弾性係数(c)と呼び、式
c=Δn/ΔF
で示される。
本実施形態において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
(v)イミド構造含有アクリル系樹脂の製造方法
本実施形態のイミド構造含有アクリル系樹脂の製造方法は(メタ)アクリル系重合体とイミド化剤とイミド化促進剤を含む原料組成物を加熱する工程(イミド化工程)を含む。これによりイミド構造含有アクリル系樹脂を製造できる。
イミド化工程における処理方法は、特に限定されず、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用い加熱溶融しながら反応させる方法により、上記(メタ)アクリル系重合体をイミド化し、イミド構造含有アクリル系樹脂とすることができる。
押出機を用いて加熱溶融し、(メタ)アクリル系重合体、イミド化剤、およびイミド化促進剤を含む原料組成物を処理する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、(メタ)アクリル系重合体に対するイミド化剤およびイミド化促進剤の混合を促進することができる。
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、(メタ)アクリル系重合体に対するイミド化剤およびイミド化促進剤の混合を、より一層促進することができる。
(メタ)アクリル系重合体、イミド化剤、およびイミド化促進剤の混合方法は特に限定されないが、事前にイミド化剤とイミド化促進剤を混合しておき、その後、(メタ)アクリル系重合体と混合しても良いし、イミド化剤とイミド化促進剤とを別々に混合しても良い。その場合、イミド化剤から混合しても良いし、イミド化促進剤から混合しても良い。
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008-273140号公報に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、原料樹脂である(メタ)アクリル系重合体を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤およびイミド化促進剤の混合物を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃~320℃としてイミド化を行うことが好ましく、さらに220~300℃としてイミド化を行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が320℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるイミド構造含有アクリル系樹脂から形成しうるフィルムの耐屈曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
押出機での樹脂圧力は、0.1MPa~50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa~30MPaの範囲内が好ましい。0.1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコストの観点から好ましくない。
また、押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤、イミド化促進剤及び副生成物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤およびイミド化促進剤、もしくはメタノールや3級アミン等の副生成物やモノマー類を除去することができる。
また、上記イミド構造含有アクリル系樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械株式会社製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
上記イミド構造含有アクリル系樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
具体的には、(メタ)アクリル系重合体を加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤とイミド化促進剤を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行により樹脂粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械株式会社製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008-273140号公報、特開2008-274187号公報に記載の方法など公知の方法をあげることができる。
(エステル化工程)
本実施形態のイミド構造含有アクリル系樹脂の製造方法では、上記イミド化工程に加え、エステル化剤で処理する工程を含むことができる。このエステル化工程によって、イミド化工程で得られたイミド構造含有アクリル系樹脂の酸価を所望の範囲内に調整することができる。エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2-ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル-t-ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネートおよびトリメチルオルトアセテートが好ましく、コストの観点からジメチルカーボネートが好ましい。
このエステル化工程において、エステル化剤は(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して0~12重量部であることが好ましく、0~8重量部であることがより好ましい。
エステル化剤が上記範囲内であれば酸価を適切な範囲に調整できる。一方上記範囲を外れると未反応のエステル化剤が樹脂中に残存する可能性があり、当該樹脂を使って成型を行った際、発泡や臭気発生の原因となることがある。
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
このエステル化工程では、エステル化剤によって処理することなく、加熱処理等のみを行うこともできる。加熱処理(押出機内での溶融樹脂の混練/分散)のみを行った場合、イミド化工程にて副生した、イミド構造含有アクリル系樹脂中のカルボン酸同士の脱水反応および/またはカルボン酸とアルキルエステル基の脱アルコール反応、等によりカルボン酸の一部または全部を酸無水物基とすることができる。このとき、前述の触媒を使用することも可能である。
エステル化剤によって処理する場合であっても、加熱処理による酸無水物基の生成を進行させることも可能である。
(脱揮工程、フィルトレーション工程)
イミド化工程およびエステル化工程を経たイミド構造含有アクリル系樹脂中には、未反応のイミド化剤、イミド化促進剤、エステル化剤、反応により副生した揮発成分および樹脂分解物等を含んでいるため、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが可能である。
また、イミド構造含有アクリル系樹脂中の異物低減を目的として、押出機の最後にフィルターを設置することも可能である。フィルターの前にはイミド構造含有アクリル系樹脂を昇圧するためにギアポンプを設置した方が好ましい。フィルターの種類としては、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス鋼製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。
(vi)イミド構造含有アクリル系樹脂組成物
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂には、必要に応じ、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などの耐候性安定剤や、触媒、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤等を単独または2種以上組み合わせて、本発明の目的を損なわれない範囲で添加し、イミド構造含有アクリル系樹脂組成物としてもよい。また、これらの添加剤は、イミド構造含有アクリル系樹脂を成形加工する際に添加することも可能である。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物は紫外線吸収剤との相溶性もよく、用途幅を広げることができる。紫外線吸収剤については、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物およびオキサジアゾール系化合物等が挙げられる。これらの中でも添加量に対する紫外線吸収性能の観点でトリアジン系化合物が好ましい。トリアジン系化合物としては、市販の任意のものが使用できる。
紫外線吸収剤は、波長300nm以上370nm以下の最大吸収波長を有する。このような紫外線吸収剤を含むイミド構造含有アクリル系樹脂組成物は、紫外線に曝された場合、紫外線A波(波長320nm以上400nm以下)の光による劣化を効率的に抑制する。そのため、紫外線吸収剤の添加量が比較的少量でよく、紫外線吸収剤の増量に起因するブリードアウトは起き難い。
また、紫外線吸収剤は、窒素雰囲気下において、1%重量減少温度が350℃以上である。耐熱性が高く、モル吸光係数が大きいという観点で、トリアジン系化合物が好ましい。トリアジン系化合物が用いられると、添加量が抑えられ、加工における金型(ロール等)汚染も抑えられる。また、トリアジン系化合物を使用した紫外線吸収剤であれば、特開2014-95926号公報に記載のように、一般的な熱安定剤の添加をしなくても、熱安定性を高められる。
そして、このようなトリアジン系化合物を使用した紫外線吸収剤の一例としては、Tinuvin1577、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479(いずれもBASF製)およびLA-F70(ADEKA製)などが挙げられる。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合の添加量は、イミド構造含有アクリル系樹脂100重量部に対して紫外線吸収剤が0.1重量部以上、5.0重量部以下であることが好ましく、0.4重量部以上、2.0重量部以下であることがさらに好ましい。
紫外線吸収剤が0.1重量部未満であると、紫外線吸収性が必要な用途で十分な効果が得られない場合があり、2.0重量部よりも多いと、フィルム製膜時にブリードアウトする等が発生する場合がある。
(vii)イミド構造含有アクリル系樹脂組成物に含まれるその他の成分
前述のイミド構造含有アクリル系樹脂組成物は、イミド構造含有アクリル系樹脂の機械的強度を向上させるために架橋弾性体を含んでもよい。架橋弾性体は、公知の懸濁重合、分散重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の重合方法によって製造できる。特に以下に記載するようなコアシェル型構造を有する架橋弾性体を製造するには、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の重合方法を用いることが好ましい。
架橋弾性体としては、ゴム状重合体からなるコア層とガラス状重合体(硬質重合体)からなるシェル層とを有するコアシェル型弾性体が好ましい。さらにゴム状重合体からなるコア層は、最内層あるいは中間層としてガラス状重合体からなる層を一層以上有していても良い。
コア層を構成するゴム状重合体のガラス転移温度Tgは20℃以下が好ましく、-60~20℃がより好ましく、-60~10℃がさらに好ましい。コア層を構成するゴム状重合体のTgが20℃を超えると、イミド構造含有アクリル系樹脂の機械的強度の向上が十分ではないおそれがある。シェル層を構成するガラス状重合体(硬質重合体)のTgは、50℃以上が好ましく、50~140℃がより好ましく、60~130℃がさらに好ましい。シェル層を構成するガラス状重合体のTgが50℃より低いと、イミド構造含有アクリル系樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
本明細書において、「ゴム状重合体」および「ガラス状重合体」の重合体のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した値を用いることとする(例えば、ポリメチルメタクリレートは105℃であり、ポリブチルアクリレートは-54℃である)。
上記コアシェル型弾性体におけるコア層の含有割合は、好ましくは30~95重量%、より好ましくは50~90重量%である。コア層におけるガラス状重合体層の割合は、コア層の総量(100重量%)に対して0~60重量%、好ましくは0~45重量%、より好ましくは10~40重量%である。上記コアシェル型弾性体中におけるシェル層の含有割合は、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~50重量%である。
上記コアシェル型弾性体には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。
上記コア層を構成するゴム状重合体を形成する重合性モノマーとしては、任意の適切な重合性モノマーを使用してもよい。
上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマー(100重量%)中、アルキル(メタ)アクリレートは50重量%以上含まれることが好ましく、50~99.9重量%含まれることがより好ましく、60~99.9重量%含まれることがさらに好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等、アルキル基の炭素数が2~20のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのアルキル基は、脂環式あるいは芳香族の環状置換基、分岐構造、あるいは官能基を有していても良い。これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびイソノニルアクリレートがより好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーは、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを含むことが好ましい。上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマー中、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーは0.01~20重量%含まれることが好ましく、0.1~20重量%含まれることがより好ましく、0.1~10重量%含まれることがさらに好ましく、0.2~5重量%含まれることが特に好ましい。
上記分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニルモノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート等や、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができる。また、異なる反応性の重合性官能基を有する多官能性モノマーとして、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレートおよびアリルメタクリレートが好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーには、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーを含んでも良い。上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマー中、他の重合性モノマーは0~49.9重量%含まれることが好ましく、0~39.9重量%含まれることがより好ましい。
上記他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等を挙げることができる。また、他の重合性モノマーとしては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するモノマーでもよい。具体的には、エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジルメタクリレート等を挙げることができ、カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができ、水酸基を有するモノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート等を挙げることができ、アミノ基を有するモノマーとして、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
また、上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーは、連鎖移動剤を少量併用しても良い。このような連鎖移動剤としては、広く公知のものが使用可能であるが、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸誘導体などが例示できる。
上記シェル層および、コア層中のガラス状重合体層を構成するガラス状重合体を形成する重合性モノマーとしては、任意の適切な重合性モノマーを使用してもよい。
上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマー(100重量%)中、アルキル(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種が50~100重量%含まれることが好ましく、60~100重量%含まれることがより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1~8のものが好ましい。また、これらのアルキル基は、脂環式あるいは芳香族の環状置換基、分岐構造、あるいは官能基を有していても良い。このようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では特にメチルメタクリレートが好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等を挙げることができ、これらのなかでも、スチレンが好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを含んでいても良い。上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマー(100重量%)中、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーは0~10重量%含まれることが好ましく、0~8重量%含まれることがより好ましく、0~5重量%含まれることがさらに好ましい。
上記分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーの具体例としては、前述したものと同様のものを挙げることができる。
上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーを含んでいても良い。上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマー(100重量%)中、他の重合性モノマーは0~50重量%含まれることが好ましく、0~40重量%含まれることがより好ましい。
上記他の重合性モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、前述したもの以外のアルキル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等を挙げることができる。また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するものでもよい。エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート等を挙げることができ、カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができ、水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシメタクリレート、2-ヒドロキシアクリレート等を挙げることができ、アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
更に、上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、ゴム状重合体層に使用するものと同様の、公知の連鎖移動剤を少量併用する事も好ましい。
本実施形態におけるコアシェル型弾性体の製造方法としては、コアシェル型の粒子を製造し得る任意の適切な方法を採用することができる。
例えば、コア層を構成するゴム状重合体を形成する重合性モノマーを懸濁または乳化重合させて、ゴム状重合体粒子を含む懸濁または乳化分散液を製造し、続いて、該懸濁液または乳化分散液にシェル層を構成するガラス状重合体を形成する重合性モノマーを加えてラジカル重合させ、ゴム状重合体粒子の表面をガラス状重合体が被覆してなる多層構造を有するコアシェル型弾性体を得る方法が挙げられる。ここで、ゴム状重合体を形成する重合性モノマー、および、ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、一段で重合しても良いし、組成比を変更して2段以上で重合してもよい。
上記コアシェル型弾性体の好ましい構造としては、例えば、(a)軟質でゴム状のコア層および、硬質でガラス状のシェル層を有し、上記コア層が(メタ)アクリル系架橋弾性重合体層を有するもの、(b)上記ゴム状のコア層が、その内部にガラス状の層を一層以上有する多層構造を有し、更にコア層の外側にガラス状のシェル層を有するものなどが挙げられる。各層のモノマー種を適宜選択することによって、イミド構造含有アクリル系樹脂の諸物性を任意に制御することができる。
コアシェル型弾性体の更に好ましい構造の具体例としては、例えば、(A)上記コアシェル型弾性体のシェル層がアルキルアクリレートを3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上含む非架橋のメタクリル樹脂であるもの、(B)上記コアシェル型弾性体のシェル層がアルキルアクリレートの含有量の異なる2段以上の多層からなり、トータルでアルキルアクリレートを10重量%以上、より好ましくは15重量%以上含む非架橋のメタクリル樹脂であるもの、(C)上記コアシェル型弾性体のコア層が、アルキルメタクリレート、多官能性モノマー、アルキルメルカプタン、適宜その他のモノマーの混合物を重合したガラス状重合体層の存在下に、アルキルアクリレート、多官能性モノマー、アルキルメルカプタン、適宜その他のモノマーの混合物を重合したゴム状重合体層を形成した多層構造を有するもの、(D)上記コアシェル型弾性体のコア層が、有機過酸化物をレドックス型重合開始剤として使用して重合したガラス状重合体層の存在下に、過酸(過硫酸、過リン酸塩等)を熱分解型開始剤として使用して重合したゴム状重合体層を形成した多層構造を有するもの、等が例示される。このような好ましいコアシェル型弾性体の構造上の設計要素は、一つだけを有しても良いし、二つ以上の複数の設計要素を併用しても良い。このような構造を有することにより、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂中でコアシェル型弾性体が良好に分散しやすくなり、フィルムを形成した際に未分散や凝集による欠陥が少なく、また、強度、靭性、耐熱性、透明性、外観に優れ、さらに温度変化や応力による白化が抑制され、品質の優れたフィルムを得ることが出来る。
本実施形態におけるコアシェル型弾性体を乳化重合、懸濁重合等により製造する場合には、公知の重合開始剤を用いることができる。特に好ましい重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過リン酸ナトリウム等の過リン酸塩、2,2-アゾビスイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物、t-ブチルイソプロピルオキシカーボネート、t-ブチルパーオキシブチレート等のパーエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機パーオキサイド化合物などが挙げられる。これらは熱分解型重合開始剤として使用してもよく、硫酸第一鉄などの触媒及びアスコルビン酸、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の水溶性還元剤の存在下にレドックス型重合開始剤として使用しても良く、重合するべき単量体の組成、層構造、重合温度条件等に応じて適宜選定すれば良い。
本実施形態におけるコアシェル型弾性体を乳化重合により製造する場合には、公知の乳化剤を用いて通常の乳化重合により製造することができる。公知の乳化剤としては、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。このうち、得られたコアシェル型弾性体の熱安定性を向上させる観点から、特にはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)を用いて重合することが好ましい。乳化重合により得られるコアシェル型弾性体ラテックスは、噴霧乾燥、あるいは一般的に知られるように、ラテックスに凝固剤として電解質あるいは有機溶剤等を添加することでポリマー分を凝固し、適宜加熱・洗浄・水相の分離等の操作を実施してポリマー分の乾燥を行ない、塊状あるいは粉末状のコアシェル型弾性体が得られる。凝固剤としては、水溶性電解質や有機溶剤等、公知のものが使用できるが、得られた共重合体の成形時の熱安定性を向上させる観点や生産性の面からは、塩化マグネシウムあるいは硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩や、酢酸カルシウムや塩化カルシウム等のカルシウム塩を用いることが好ましい。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物が、コアシェル型弾性体を含む場合は、イミド構造含有アクリル系樹脂(100重量部)に対してコアシェル型弾性体を1~40重量部含むことが好ましく、より好ましくは2~35重量部、さらに好ましくは3~25重量部である。コアシェル型弾性体の含有量が1重量部未満であると、イミド構造含有アクリル系樹脂の機械的強度の向上が十分ではなく、40重量部を超えると、イミド構造含有アクリル系樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
上記コアシェル型弾性体の好ましい粒子径としては、軟質のコア層の粒子径が1~500nmであることが好ましく、10~400nmであることがより好ましく、50~300nmであることがさらに好ましく、70~300nmであることが特に好ましい。上記コアシェル型弾性体のコア層の粒子径が1nm未満であると、イミド構造含有アクリル系樹脂の機械的強度の向上が十分ではなく、500nmよりも大きいと、イミド構造含有アクリル系樹脂の耐熱性や透明性が損なわれるおそれがある。
コアシェル型弾性体のコア層の粒子径は、コアシェル架橋弾性体とスミペックスEXとを50:50の重量比でブレンドしたコンパウンドを成形し得られたフィルムを、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM-1200EX)にて、加速電圧80kV、RuO4染色超薄切片法で撮影し、得られた写真からゴム粒子画像を無作為に100個選択し、それらの粒子径の平均値を求めることができる。
(viii)イミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するフィルム
前記したイミド構造含有アクリル系樹脂組成物は、例えば公知の成形方法でイミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するフィルムとすることができる。
イミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するフィルムのヘイズ値が2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましい。ヘイズ値、透過率ともに上記の範囲内にあると、使用できる用途幅が広がるために好ましい。
光学異方性については特に制限されないが、面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい場合がある。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい場合がある。より具体的には、波長590nmでの面内位相差が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることが特に好ましい。また、厚さ方向位相差が40nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。
Re=(nx-ny)×d Rth=|(nx+ny)/2-nz|×d
上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物から得られるフィルムは、異物量が少ない。異物は、50個/m2以下であることが好ましく、40個/m2であることがさらに好ましく、30個/m2以下であることが特に好ましい。上記の異物は、得られた延伸後のフィルムから1m2分を切り出し、20μm以上の異物数をマイクロスコープ観察などでカウントし、合計した異物数である。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するフィルムは、電子材料の基板に使用することができる。アンテナ用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、フォルダブルディスプレイ用基板、ローラブルディスプレイ用基板、タッチパネル用基板、透明ディスプレイ用基板、空間ディスプレイ用基板、ホログラム用基板、サイネージ用基板、ヘッドアップディスプレイ周辺部材(視点調整フィルム、画像調整フィルム、画像投影スクリーン、再帰反射フィルム、レンズシート、ダストカバー)、輝度向上フィルム、カバーガラス代替フィルム、ガラス基板代替フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、電子デバイス用両面・片面テープや粘着フィルムの基材、AR Glassの光導波路、調光デバイス用基板、遮光デバイス用基板、高周波回路基板フィルム、透明フレキシブルプリント基板、電池セパレーター用フィルム、スマートフォンのバックカバー、離型フィルムまたはX線検査装置のディテクター基板など種々の用途に使用することができる。
また、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等にも好適に用いることができる。
本実施形態におけるフィルムは、前述したように、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルム、透明導電フィルム等の液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
また、本実施形態におけるフィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本実施形態におけるフィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
(フィルムの製造方法)
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するフィルムの製造方法の一例について説明するが、本実施形態におけるフィルムの製造方法はこれに限定されない。つまり、本実施形態におけるフィルムの製造方法は本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、等を挙げることが出来る。また、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本実施形態におけるフィルムを製造することが出来る。中でも溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
以下、本実施形態におけるフィルムの製造方法の一例として、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で得られたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で得られたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂を、押出機に供給し、該イミド構造含有アクリル系樹脂を加熱溶融させる。
イミド構造含有アクリル系樹脂は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂をペレット等の形態にして、熱風乾燥機や真空乾燥機等を用いて行うことができる。
次に、押出機内で加熱溶融されたイミド構造含有アクリル系樹脂を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、フィルム長手方向の厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、イミド構造含有アクリル系樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
次に、Tダイに供給されたイミド構造含有アクリル系樹脂を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを製膜する。上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して製膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、製膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで製膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、比較的厚みの厚い原反フィルムを一旦取得する。その後、該原反フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することが好ましい。
より具体的に説明すると、厚み40μmのフィルムを製造する場合、また、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの原反フィルムを取得する。その後、該原反フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
このように、本実施形態におけるフィルムが延伸フィルムである場合、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂を一旦、未延伸状態の原反フィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルムを製造することができる。
本実施形態における光学フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)両方の耐屈曲性を向上させるためには、二軸延伸を行うことが好ましい。
本明細書では、説明の便宜上、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原反フィルム」と称する。
原反フィルムを延伸する場合、原反フィルムを成形後、直ちに、該原反フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原反フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原反フィルムの延伸を行ってもよい。
なお、原反フィルムに成形後、直ちに該原反フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原反フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間)の場合、延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればく、完全なフィルムの状態である必要はない。また、上記原反フィルムは、完成品であるフィルムとしての性能を有していなくてもよい。
(フィルムの延伸方法)
原反フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。原反フィルムを延伸するとき、原反フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃~5℃、好ましくは1℃~3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
上記範囲内で予熱することにより、原反フィルムの幅方向の厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原反フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
一方、原反フィルムの予熱温度が高すぎると、原反フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原反フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原反フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
なお、本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂は、原反フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本実施形態では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られるフィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
原反フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。一般的には、DSC法によって求めた原反フィルム(イミド構造含有アクリル系樹脂組成物)のガラス転移温度をTgとした時に、(Tg-30℃)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg-20℃)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることがさらに好ましく、(Tg+10℃)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。すなわち光学フィルムの二軸延伸の延伸温度は、イミド構造含有アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg-30℃以上Tg+30℃以下の温度範囲であることが好ましい。
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、およびMIT耐屈曲性の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムの内部ヘイズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
上記原反フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍~3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍~2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍~2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、さらに、内部ヘイズが1.0%以下である延伸フィルムを製造することができる。
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂が架橋弾性体を含む場合には、フィルムの機械的強度に優れることから、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムのいずれでも好適に使用できる。
(ix)イミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するアンテナ用基板
本実施形態におけるイミド構造含有アクリル系樹脂組成物を含有するアンテナ用基板は、前記のイミド構造含有アクリル系樹脂組成物をフィルム成形したものを用いることができる。
誘電特性、耐熱性、耐候性、及び透明性に優れているため、本実施形態におけるアンテナ用基板は、車両の窓ガラス、建築物の窓ガラス、産業機械の表示部、住宅内の電子機器及び表示装置のディスプレイ等に使用することができる。
誘電特性としては、例えば3GHzの周波数で測定した場合、誘電正接Df値は、0.010以下であることが好ましく、0.007以下であることがさらに好ましい。Df値がこの範囲にあると、損失が低くなる。比誘電率Dk値は3.2以下であることが好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。
温度上昇により基材が膨張収縮すると、導体で形成されたアンテナ部分も基材の収縮膨張に引張られアンテナ寸法が変化する。アンテナ寸法は共振する周波数の波長の長さで一義的に決まるため、アンテナ寸法が温度の上昇等で変化することは好ましくない為、線膨張係数は100ppm以下であることが好ましく、80ppm以下であることが特に好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、イミド構造アクリル系樹脂の評価方法は以下の通りである。以下で「部」および「%」は、特記ない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。
(ガラス転移温度)
イミド構造含有アクリル系樹脂10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、株式会社SII製、DSC7020)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
(平均屈折率)
株式会社アタゴ製アッベ屈折計3Tを用いて測定した。
(環構造の含有量の算出)
得られたイミド構造含有アクリル系樹脂を1H-NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて測定を行った。対象となる環構造部分とそれ以外の部分のモル比から重量換算を行い算出した。具体的には、上記一般式(1)のR3がフェニルであるN-フェニルグルタルイミドのケースでは、主鎖のメチレン基CH2とメチル基CH3由来の0.5~2.5ppm付近のピーク面積A、N-フェニルグルタルイミドの芳香環のプロトン由来の6.8~7.2ppm付近のピーク面積Bと、7.3ppm~7.6ppm付近のピークの面積Cより、環構造の含有量(モル)を次式で求めた。求められたモル比を用いて重量換算を行い算出できる。
環構造の含有量(モル)=(B+C)/A
(収率)
収率は、投入したイミド化剤と式(1)で表される構造を有するイミド構造含有アクリル系樹脂のイミド環構造の含有量のモル比から次式により算出した。
収率(モル%)=環構造の含有量(モル)/投入したイミド化剤(モル)×100
(イミド化率)
イミド構造含有アクリル系樹脂のイミド化率はフーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製FI/IR-4100)を用いてIRスペクトルを測定することによって求めた。1720cm-1付近のエステルカルボニル基に由来する吸収と、1680cm-1に付近のイミドカルボニル基に由来する吸収との強度比から次式によりイミド化率を決定した。ここで、イミド化率は、エステルカルボニル基とイミドカルボニル基の合計においてイミドカルボニル基が占める割合である。
イミド化率(%)=イミドカルボニル基の吸収強度/(エステルカルボニル基の吸収強度+イミドカルボニル基の吸収強度)
(厚み測定)
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて、光学フィルムの厚みを測定した。
(光学特性)
面内位相差Δndおよび厚み方向位相差Rthは、王子計測機器(株)製、位相差測定装置KOBRA-WRを用いて測定を行った。測定波長590nmで行った。
(全光線透過率、及びヘイズ値)
樹脂組成物(成形体)又はフィルムの全光線透過率、及びヘイズ値(Haze)は、日本電色工業株式会社製 NDH-300Aを用い、JIS K7105の記載の方法にて測定した。
(380nmにおける光透過率)
紫外可視分光光度計(日本分光:V-560)を用いて、光学フィルムの波長380nmにおける光透過率を測定した。
(比誘電率Dk、誘電正接Df)
比誘電率Dkと誘電正接Dfは、ネットワークアナライザN5224B(キーサイトテクノロジー社製)と空洞共振器、空洞共振器摂動法解析ソフトCP-MA(株式会社関東電子応用開発製)を用いて測定した。測定するフィルムを2mm×100mmに切り出し、23℃/50%RH環境下で24時間調湿後に測定を行った。測定は3GHzで行った。
(線膨張係数(CTE))
線膨張係数は、SIIナノテクノ口ジ一社製熱機械的分析装置、商品名:TMA/SS6100により、10℃~100℃まで10℃/minで昇温させた後、10℃まで40℃/minで冷却し、さらに10℃/minで昇温させて、2回目の昇温時の、50~100℃の値を見積もった。測定条件を以下に示す。
サンプル形状:幅3mm、長さ10mm
荷重:1g
雰囲気:空気雰囲気下
(耐候性)
耐候性は、キセノンウエザオメーターを使用し、照射エネルギー63W/m2、温度40℃(ブラックパネル温度:63℃)、降雨ありの条件で300時間後のYIおよび全光線透過率の変化量を測定した。YIの変化量が1以上もしくは全光線透過率の変化量が1%以上を×とした。
(黄色度YIの測定)
日本電色工業製ハンディ色差計NR-11Bを用いて、三刺激値X,Y,Zを測定し、この三刺激値からJIS-K7103に基づいて、黄色度YIを算出した。
(耐屈曲性(MIT耐屈曲試験))
フィルムを幅15mmの短冊状にカットしこれを試験片とした。この試験片を、東洋精機(株)製のMIT耐柔疲労試験機型式Dを用いて、試験荷重1.96N、速度175回/分、折り曲げクランプの曲率半径Rは0.38mm、折り曲げ角度は左右へ135°で測定した。MD方向、TD方向についてそれぞれ行い、算術平均値をMIT往復折り曲げ回数とした。
(実施例1)
40mmΦ完全噛合型同方向回転二軸押出反応機を用いて樹脂を作製した。押出機に関しては直径40mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が90の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ社製CE-T-2E)を用いて、押出機原料供給口に原料樹脂を投入した。又、押出機に於けるベントの減圧度は-0.10MPaとした。押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却水槽で冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、押出機の内部の圧力確認、又は押出変動を見極める為に、押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
原料の(メタ)アクリル系重合体としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10万)を使用し、イミド化剤としてアニリン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を、イミド化促進剤としてジエチルアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いてイミド構造含有アクリル系樹脂を製造した。この際、押出機最高部温度を280℃、スクリュー回転数は100rpm、ポリメタクリル酸メチル樹脂は10kg/h、アニリンの添加部数はポリメタクリル酸メチル樹脂100部に対して8.0部、ジエチルアミンの添加部数はポリメタクリル酸メチル樹脂100部に対して6.3部とした。イミド化剤とイミド化促進剤は事前に混合させておき、アニリンとジエチルアミンの混合液を、液添ポンプを用いて押出機に添加した。得られたイミド構造含有アクリル系樹脂のイミド化率は27.2%、酸価は0.77mmol/g、Tgは134℃、収率は81%であった。
このペレット状のイミド構造含有アクリル系樹脂を100℃で8時間乾燥後、40mmΦ単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押し出して得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み150μmのフィルムを得た。このフィルムについて、延伸倍率2倍、Tgより5℃高い温度で一軸延伸を行い、一軸延伸フィルムを作製した。
(実施例2、4~9、参考例3、比較例1~6)
実施例2、4~9、参考例3、比較例1~6は表1に従って、イミド化剤の種類と添加部数やイミド化促進剤の種類と添加部数を変更した以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
表1に示すように、芳香族アミン化合物を用いてイミド化する際に、pKaが6以上であるイミド化促進剤を添加することで効率よくイミド化が進行し、イミド構造含有アクリル系樹脂を良好な収率で得ることができることがわかる。比較例2、3では添加するイミド化促進剤が第3級アミンであるため、イミド化反応が効率よく進行せず、得られた樹脂のガラス転移温度が低いものとなっていることが確認された。実施例1、2、4~9、参考例3で得られたイミド構造アクリル系樹脂のガラス転移温度は比較例1~5のものよりも高く、耐熱性を要求される用途に好適であることがわかる。比較例6では添加するイミド化剤がモノメチルアミンであるため、厚さ方向位相差および面内位相差が大きいものとなっていることが確認された。