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JP7804584B2 - ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法 - Google Patents
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JP7804584B2 - ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法 - Google Patents

ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法

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Description

本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を培養することによるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法に関する。
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下ではPHAと称する場合がある)は微生物が菌体内に貯蔵するバイオポリエステルである。プラスチック材料として利用されており、使用後は生分解性を有するため、環境に与える負荷が低い材料として近年注目されている。
PHAの製造には、PHA産生能力を有する微生物を培養して当該微生物にPHAを蓄積させる方法が行なわれている。その培養の際には、当該微生物によって好適に資化される炭素源を与えることが必要である。その炭素源の代表的なものとして、糖質、油脂、遊離脂肪酸などが挙げられる。
例えば、特許文献1では、パーム油を炭素源として用いて、PHA産生能力を有する微生物を培養することが記載されている。
特表2013-510572号公報
パーム油を炭素源として用いてPHA産生微生物を培養すると、PHAを効率良く製造できることが知られている。しかしながら、パーム油は比較的高価な油脂であるため、パーム油以外の入手しやすい油脂を炭素源として用いてPHAを製造することが求められている。
そこで、各種油脂を炭素源として用いたPHA産生微生物の培養を試みたところ、パーム油と同程度のPHA生産速度を達成できる油脂と、パーム油よりも明らかにPHA生産速度が遅くなる油脂があることが判明した。そして、PHAの生産速度が遅くなる油脂は、概して、油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂であることが判明した。
このような不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂は、例えば菜種油など、食品用途で広く使用されており、使用後の食用油は多量に廃棄されている。そのような食用油を有効利用する観点から、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂をPHA製造における炭素源として使用することが望まれる。
本発明は、以上に鑑み、PHA産生微生物を培養してPHAを産生させるにあたって、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂を炭素源として使用しながら、高いPHA生産速度を達成することを目的とする。
本発明者らは、PHA産生微生物の炭素源として、パーム油など不飽和脂肪酸の含有割合が比較的低い油脂Aと、菜種油など不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂Bの双方を利用し、かつ、培養の初期の段階では油脂Aを使用することで、油脂Bを利用しているにも関わらず、油脂Aの単独使用と同程度の高いレベルのPHA生産速度を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、炭素源の存在下でポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を培養することによるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法であって、前記培養において、炭素源として油脂A及び油脂Bを使用し、前記培養全体で油脂Aと油脂Bの合計使用量に対する油脂Bの使用量は10重量%以上である、製造方法に関する。
油脂A:前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%に到達するまで使用する油脂の総体を指し、油脂A全体において、構成脂肪酸である不飽和脂肪酸の平均含有割合が25重量%以上75重量%未満である。
油脂B:油脂Bにおける構成脂肪酸である不飽和脂肪酸の含有割合は、油脂A全体における不飽和脂肪酸の前記平均含有割合より高い。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%を超えて85重量%未満のある時点以降に使用する炭素源は、油脂Bである。
好ましくは、油脂Bは、不飽和脂肪酸の含有割合が60重量%以上98重量%以下の油脂である。
好ましくは、前記培養全体で油脂Aと油脂Bの合計使用量に対する油脂Bの使用量は40重量%以上である。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物の培養を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が80重量%以上に達するまで実施する。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を含む培地に、油脂A及び/又は油脂Bを連続添加しながら培養を行う。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を含む培地に、油脂Aを連続添加しながら培養を行った後、油脂Bを連続添加しながら培養を継続する。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、少なくとも3-ヒドロキシブチレート単位を含む。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシブチレート単位の単独重合体、又は、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含む。より好ましくは、前記他のヒドロキシアルカノエート単位が、3-ヒドロキシヘキサノエート単位である。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物が細菌である。より好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物がカプリアビダス属に属する細菌である。
本発明によれば、PHA産生微生物を培養してPHAを産生させるにあたって、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂を炭素源として使用しながら、高いPHA生産速度を達成することができる。
以下に、本発明の具体的な実施態様を詳細に説明するが、本発明はこれら実施態様に限定されるものではない。
本実施形態は、炭素源の存在下でPHA産生微生物を培養することによるPHAの製造方法に関する。
本開示におけるPHAとは、微生物が生産し得るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)である限り特に限定されないが、炭素数4~16の3-ヒドロキシアルカン酸から選択される1種のモノマーの単独重合体、炭素数4~16の3-ヒドロキシアルカン酸から選択される少なくとも1種のモノマーとその他のヒドロキシアルカン酸(例えば、炭素数4~16の4-ヒドロキシアルカン酸、乳酸等)の共重合体、及び、炭素数4~16の3-ヒドロキシアルカン酸から選択される2種以上のモノマーの共重合体が好ましい。具体的には、3-ヒドロキシ酪酸(略称:3HB)のホモポリマーであるP(3HB)、3HBと3-ヒドロキシ吉草酸(略称:3HV)の共重合体P(3HB-co-3HV)(略称:PHBV)、3HBと3-ヒドロキシヘキサン酸(略称:3HH)の共重合体P(3HB-co-3HH)(略称:PHBH)、3HBと4-ヒドロキシ酪酸(略称:4HB)の共重合体P(3HB-co-4HB)、並びに、乳酸(略称:LA)を構成成分として含むPHA、例えば3HBとLAの共重合体P(LA-co-3HB)などが挙げられるが、これらに限定されない。
PHAは、ポリマーとしての応用範囲が広いという観点から、少なくとも3-ヒドロキシブチレート単位を含むPHAが好ましく、3-ヒドロキシブチレート単位の単独重合体、又は、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体がより好ましい。前記共重合体のなかでも、PHBV、PHBHがさらに好ましく、PHBHが特に好ましい。
なお、生産されるPHAの種類は、使用する微生物の保有するあるいは別途導入されたPHA合成酵素遺伝子の種類や、その合成に関与する代謝系の遺伝子の種類、培養条件などによって適宜選択しうる。
PHA産生微生物は、PHA産生能を有する微生物である限り特に限定されず、自然界で見出される微生物であってもよいし、突然変異体または形質転換体であってもよい。具体的には、カピリアビダス・ネケータ(Cupriavidus necator)等のカピリアビダス属、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latas)等のアルカリゲネス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans)、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)等のシュードモナス属、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)等のバチルス属、アゾトバクター属、ノカルディア属、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonaso hydrophila)等のアエロモナス属、ラルストニア(Ralstonia)属、ワウテルシア(Wautersia)属、コマモナス(Comamonas)属などが挙げられる(Microbiological Reviews、450-472項、1990年)。遺伝子工学的な手法を用いて、PHA合成酵素遺伝子等を導入することにより、人為的にPHAを生産させる改変を施した生物細胞を用いることもできる。例えばエシェリキア(Esherichia)属等のグラム陰性の細菌、バチルス(Bacillus)属等のグラム陽性の細菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、キャンディダ(Candida)属等の酵母類、植物などの高等生物細胞も利用できる。多量のPHAを蓄積可能であるため、細菌が好ましく、カピリアビダス属に属する細菌が特に好ましい。
形質転換により導入されるPHA合成酵素遺伝子としては特に限定されず、アエロモナス・キヤビエ、Aeromonas hydrophila、Pseuromonas SP 61-3、Cupriavidus necator由来のPHA合成酵素遺伝子や、それらの改変体などが挙げられる。前記改変体とは、1以上のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入、又は置換されたアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする塩基配列のことをいう。
PHA産生微生物を炭素源の存在下で培養することで、菌体内にPHAを蓄積させることができる。前記炭素源として油脂を使用する。但し、油脂以外の炭素源を油脂と併用してもよい。
前記油脂は、構成脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物であるトリグリセリドを含む。構成脂肪酸は、1つ以上の炭素-炭素不飽和結合を有する不飽和脂肪酸、及び/又は、炭素-炭素不飽和結合を持たない飽和脂肪酸を含み得る。前記油脂としては、動物性油脂、植物性油脂、それらの混合油脂、エステル交換油、分別油などを使用でき、特に限定されない。植物性油脂の具体例としては、菜種油、ひまわり油、大豆油、オリーブ油、コーン油、パーム油、パーム核油、綿実油、ゴマ油、ナッツ油、ヤトロファ油、米油などが挙げられる。動物性油脂の具体例としては、ラードなどが挙げられる。これらを単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
前記油脂の構成脂肪酸は、炭素数2~4の短鎖脂肪酸、炭素数5~12の中鎖脂肪酸、炭素数12以上の長鎖脂肪酸を含む。中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びリノレン酸からなる群より選択される少なくとも3種類の構成脂肪酸を含む油脂が好ましい。更には、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエルカ酸からなる群より選択される少なくとも2種類の構成脂肪酸を含む油脂が特に好ましい。
本実施形態では、炭素源として使用する油脂として、構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有割合が互いに異なる2種類の油脂を使用する。2種類の油脂を、油脂Aと、油脂Bに分類し、それぞれ以下のように定義する。
油脂A:ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%に到達するまで使用する油脂の総体を指し、油脂A全体において、構成脂肪酸である不飽和脂肪酸の平均含有割合が25重量%以上75重量%未満である。
油脂B:油脂Bにおける構成脂肪酸である不飽和脂肪酸の含有割合は、油脂A全体における不飽和脂肪酸の前記平均含有割合より高い。
尚、不飽和脂肪酸の含有割合は、油脂を構成する脂肪酸の総重量に対して不飽和脂肪酸重量が占める割合であり、構成される脂肪酸重量を測定することで算出できる。測定方法は、油脂を強アルカリによりケン化し、遊離脂肪酸とした後、揮発性を高めるために脂肪酸のカルボキシル基をメチルエステル化することで、ガスクロマトグラフィーにより揮発分離し、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を同定できる。
(油脂A)
油脂Aは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%に到達するまで使用する油脂の総体を指すものであり、油脂A全体における不飽和脂肪酸の平均含有割合が25重量%以上75重量%未満の範囲内にある。当該不飽和脂肪酸の平均含有割合は、30重量%以上70重量%以下であることが好ましく、40重量%以上65重量%以下であることがより好ましく、50重量%以上60重量%以下であることがさらに好ましい。
油脂Aは、油脂A全体におけるパルミチン酸の平均含有割合が20重量%以上65重量%以下であることが好ましく、25重量%以上60重量%以下であることがより好ましく、30重量%以上55重量%以下であることがさらに好ましい。
油脂Aは、前記不飽和脂肪酸の平均含有割合を満足する限り、例えば、植物性油脂など入手可能な油脂1種類から構成されるものであってもよいし、入手可能な油脂2種類以上の油脂から構成されるものであってもよい。単独で油脂Aに該当する油脂の例として、パーム油や、ラードを挙げることができる。
油脂Aが2種類以上の油脂から構成される場合、油脂A全体として、前述した不飽和脂肪酸の平均含有割合を満足すればよい。油脂Aを構成する個々の油脂における不飽和脂肪酸の含有割合は特に限定されず、25重量%以上75重量%未満の範囲内になくてもよい。また、油脂Aが2種類以上の油脂から構成される場合、2種類以上の油脂は混合して培地に添加してもよいし、また、混合せずに、同時に又は順次、培地に添加してもよい。
尚、本実施形態における「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物の培養」とは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物にポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)を高濃度に蓄積させることを目的に行う最終段階の「本培養」を指す。「本培養」の前に行う「前培養」及び「種母培養」は、本実施形態における「培養」には含まれない。そのため、「前培養」及び「種母培養」で使用する炭素源は、「油脂A」に包含されない。
(油脂B)
油脂Bは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%を超えたある時点以降に使用される炭素源であって、油脂Bにおける不飽和脂肪酸の含有割合が、油脂A全体における不飽和脂肪酸の平均含有割合より高いものを指す。油脂Bの不飽和脂肪酸の含有割合(重量%)と油脂A全体における不飽和脂肪酸の平均含有割合(重量%)の差分は、特に限定されないが、油脂Aと油脂Bを併用することによる効果をより良く達成する観点から、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることが更に好ましい。
油脂Bの不飽和脂肪酸の含有割合は、これと併用する特定の油脂A全体における不飽和脂肪酸の平均含有割合との関係において定義されており、具体的な数値は限定されない。油脂Bの不飽和脂肪酸の含有割合の具体的な数値は、これと併用する特定の油脂A全体における不飽和脂肪酸の平均含有割合より高い数値である限り特に限定されず、75重量%以上であってもよいし、25重量%以上75重量%未満の範囲内にあってもよい。例えば、後述する実施例8で示すように、不飽和脂肪酸の含有割合が58重量%である油脂Aに対し、不飽和脂肪酸の含有割合が66重量%である油脂Bを使用することができる。
好適な一態様では、油脂Bの不飽和脂肪酸の含有割合は、60重量%以上98重量%以下であることが好ましく、65重量%以上96重量%以下であることがより好ましく、70重量%以上95重量%以下であることがさらに好ましく、75重量%以上94重量%以下であることが特に好ましい。
油脂Bは、その不飽和脂肪酸の含有割合が油脂A全体における不飽和脂肪酸の平均含有割合より高い限り、例えば、植物性油脂など入手可能な油脂1種類から構成されるものであってもよいし、入手可能な油脂2種類以上から構成されるものであってもよい。油脂Bに該当する油脂の例として、菜種油を挙げることができる。また、油脂Bは、前記要件を満足する限り、廃棄された食用油等であってもよい。
本発明者らの検討によって、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂Bは、これを炭素源として単独で使用してPHA産生微生物を培養すると、PHA生産速度が遅くなることが判明している。
しかし、本実施形態では特定条件で油脂Aと油脂Bを併用することにより、良好なPHA生産速度を達成することができる。このため、油脂Bを、PHA産生微生物の炭素源として有効利用することが可能となる。油脂Bを有効利用する観点から、油脂Bの使用割合は多いほど好ましい。具体的には、前記培養全体で使用する油脂Aと油脂Bの合計使用量に対する油脂Bの使用量は10重量%以上であり、40重量%以上であってもよく、60重量%以上であってもよく、80重量%以上であってもよい。油脂Bの使用量の上限値は特に限定されないが、97重量%以下であることが好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。以上のように高い割合で油脂Bを使用しても、油脂Aを単独使用した場合と同等レベルの高いPHA生産速度を達成することができる。
また、培養全体で使用する油脂Aと油脂Bの合計使用量に対する油脂Aの使用量は、特に限定されないが、PHA生産速度の改善を達成する観点から、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましい。前記油脂Aの使用量の上限値は、90重量%以下であり、60重量%以下であってもよく、40重量%以下であってもよく、20重量%以下であってもよい。
(炭素源の使用態様)
本実施形態では、PHA産生微生物の培養において、少なくとも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%に到達するまでは、炭素源として、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的低い油脂Aを使用する。その後、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%を超えたある時点以降は、炭素源として、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂Bを使用する。
このように培養の初期の段階で油脂Aを使用し、その後、油脂Bを使用することで、単独使用ではPHA生産速度が遅くなる油脂Bを利用しながらも、高レベルのPHA生産速度を達成することができる。そのメカニズムは不明であるが、培養の初期の段階ではPHAの蓄積よりもPHA産生微生物の増殖が優先し、この細胞増殖段階では、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的低い油脂Aのほうが炭素源として適しているが、増殖がある程度進行しPHAの蓄積が優先するようになると、炭素源の種類の影響は軽減され、油脂Bも炭素源として有効であるためと推測される。
PHA蓄積量が16重量%を超えた後、ある程度の時間は、油脂Aと同じ不飽和脂肪酸の含有割合を有する油脂を継続使用することが好ましいが、いずれかの時点で、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂Bに変更する。好適な一態様によると、PHA産生微生物中のPHA蓄積量が16重量%を超えて85重量%未満のある時点以降に使用する炭素源は、油脂Bであることが好ましい。これにより、単独使用ではPHA生産速度が遅くなる油脂Bを、PHA産生微生物を培養する際の炭素源として有効利用することができる。前記PHA産生微生物中のPHA蓄積量は、20重量%以上80重量%以下が好ましく、25重量%以上50重量%以下がより好ましく、25重量%以上45重量%以下がさらに好ましく、30重量%以上40重量%以下が特に好ましい。
尚、PHA産生微生物中のPHA蓄積量は、培養液から一定量を回収し、油脂を取り除くため有機溶剤と混合後、水で洗浄して乾燥させて得た乾燥菌体の重量と、同量の培養液から回収したPHAの重量を測定し、以下の式で算出することが可能である。
PHA蓄積量(%)=[一定量の培養液から回収したPHA重量(g)]/[一定量の培養液から得られる乾燥菌体重量(g)]×100
本実施形態の好適な一態様によると、油脂Aの存在下で培養を開始し、培養の途中で(PHA産生微生物中のPHA蓄積量が最終的なレベルに到達する前に)、炭素源の種類を変更して、油脂Bの存在下で培養を継続し、PHA産生微生物中のPHA蓄積量が最終的なレベルに到達した時に培養を終了することが好ましい。このように培養の初期では油脂Aを炭素源として利用し、培養の途中から油脂Bを炭素源として利用することで、単独使用ではPHA生産速度が遅くなる油脂Bを炭素源として利用しているにも関わらず、高レベルのPHA生産速度を容易に達成することができる。
前記好適な一態様において、炭素源を油脂Aから油脂Bに変更するタイミングは特に限定されず、PHA産生微生物中のPHA蓄積量や、油脂Bの使用割合に応じて適宜決定することができるが、例えば、PHA産生微生物中のPHA蓄積量が16重量%を超えて85重量%未満のある時点であってよく、20重量%以上80重量%以下のある時点が好ましく、25重量%以上50重量%以下のある時点がより好ましく、30重量%以上45重量%以下のある時点がさらに好ましく、30重量%以上40重量%以下の範囲内にある時点が特に好ましい。このようなタイミングで炭素源の種類を変更することによって、油脂Bの使用量を増加させつつ、高いPHA生産速度を達成することかできる。
培養を終了する時のPHA産生微生物中のPHA蓄積量は特に限定されず、適宜決定すればよいが、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
PHA産生微生物を含む培地への油脂A又は油脂Bの添加方法は、一括添加であってもよく、連続添加であってもよいが、連続添加であることが好ましい。即ち、PHA産生微生物の培養は、PHA産生微生物を含む培地に、油脂A及び/又は油脂Bを連続添加しながら行うことが好ましい。ここで「連続添加」とは、経時的に途切れることなく継続して添加する態様の他、断続的に、一時的な休止期間を置きながら繰り返し添加する態様も含む。
連続添加の具体的な一態様によると、PHA産生微生物を含む培地に、油脂Aを連続添加して分散させつつ培養を行った後、炭素源の種類を変更して、油脂Bを連続添加して分散させつつ培養を継続することが好ましい。
(培地)
PHA産生微生物の培養で使用する培地としては、微生物の成長増殖に資する栄養源を含んだ液体の培地であれば良い。上述した炭素源の他、炭素源以外の窒素源、無機塩類、その他の有機栄養源を含む液体にPHA産生微生物を混合して、攪拌、振とうなどにより分散させることが好ましい。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。その他の有機栄養源としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
このような栄養源を含む培地、炭素源、及び、PHA産生微生物を容器内で分散させることにより、培養液が得られる。培養の条件は、上述した炭素源及びその添加方法以外は、通常の微生物培養法に従うことができ、培養スケール、通気攪拌条件、培養温度、培養時pH、培養時間などは特に限定されない。
(PHA回収)
培養を適切な時間行って菌体内にPHAを蓄積させた後、周知の方法を用いて菌体からPHAを回収すればよい。その回収方法は特に限定されないが、例えば、次のような方法によって実施することができる。一例として、培養終了後、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水、メタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてPHAを抽出する。このPHAを含んだ溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてPHAを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてPHAを回収することができる。
別の例として、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水、メタノール等により洗浄する。続いて、洗浄サンプルをラウリル硫酸ナトリウム(SDS)溶液と混合し、超音波破砕により細胞膜を破壊し、遠心分離機等で菌体成分とPHAを分離し、PHAを乾燥させることによりPHAを回収することもできる。
本実施形態によると、単独使用ではPHA生産速度が遅くなる不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂を利用しながら、良好な生産速度でPHAを製造することが可能になる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(使用油脂)
以下の実施例、比較例、及び参考例で使用した油脂1~11について、各油脂を構成する脂肪酸の含有割合と、飽和脂肪酸の合計含有割合、及び、不飽和脂肪酸の合計含有割合を表1に示す。尚、油脂1はパーム油、油脂3は菜種油、油脂10はラードである。
(PHA蓄積量の算出方法)
PHA蓄積量(重量%)は、一定量の培養液を有機溶剤と混合後、水で洗浄して乾燥させて得た乾燥菌体の重量と、同量の培養液から回収したPHAの重量を測定し、以下の式で算出した。
PHA蓄積量(重量%)=[各実施例、比較例、又は参考例で得られたPHA重量(g)]/[各実施例、比較例、又は参考例における乾燥菌体重量(g)]×100
(PHA生産性の算出方法)
PHA生産性(%)は、下記式にて、油脂1のみを用いてPHAを生産した参考例1又は参考例5における培養溶液1リットル当たりから得られたPHA重量(g)に対する、各実施例、比較例、又は参考例における培養溶液1リットル当たりから得られたPHA重量(g)の比率として算出した。尚、基準とする参考例は、参考例1又は5のうち、同じPHA産生微生物を用いた参考例を選択する。
PHA生産性(%)=[各実施例、比較例、又は参考例で得られたPHA重量(g)]/[参考例1又は参考例5で得られたPHA重量(g)]×100
(比較例1~7及び参考例1~4)
PHA産生微生物として、KNK-005株(米国特許第7384766号参照)を用いて、下記に示した方法で(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。本培養では、炭素源である油脂として、表2に示す各油脂を単独で使用した。
(1)前培養
まず、KNK-005株のグリセロールストック 20μLを前培養培地20mLに接種し、30℃、18時間培養した。
尚、前培養培地は、1w/v% Meat-extract、1w/v% Bacto-Tryptone、0.2w/v% Yeast-extract、0.9w/v% NaHPO・12HO、0.15w/v% KHPO、(pH6.8)とした。
(2)種母培養
得られた前培養液を、1.8Lの種母培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL-8C)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度30℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.5~6.6の間でコントロールしながら24時間培養し、種母培養を行なった。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
尚、種母培養培地は、1.1w/v% NaHPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、2.5w/v% パームオレインオイル、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、とした。炭素源はパームオレインオイルを10g/Lの濃度で一括添加した。
(3)本培養
得られた種母培養液を、2.5Lの本培養培地を入れた5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製Bioneer-Neo)に5.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度34℃、攪拌速度600rpm、通気量6.0L/minとし、pHは6.5から6.6の間でコントロールした。pHコントロールには25%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
炭素源として、表2に示した各油脂を培養期間中、断続的に添加しながら本培養を行った。本培養は48時間行い、培養終了後、培養液を一定量回収し、蒸留水、メタノールで洗浄後に真空乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。前記と同様に菌体を洗浄後、SDSを用いて菌体構成成分を溶かし、超音波破砕によりPHAと菌体成分を分離し、PHAのみを回収することでPHA蓄積量を測定した。これに基づきPHA生産性を算出し、表2に示した。
尚、本培養培地は、0.385w/v% NaHPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0.291w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、0.05w/v% BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。
表2より次のことが分かる。比較例1~7で使用した各油脂は、油脂中の不飽和脂肪酸の含有割合が高く、これらの油脂を炭素源として単独で使用した結果、PHA生産性が80%未満と低くなったことが分かる。一方、参考例1~4で使用した各油脂は、不飽和脂肪酸の含有割合が75重量%未満と低く、これらの油脂を炭素源として単独で使用した結果、PHA生産性が80%以上と良好であったことが分かる。
(実施例1)
次に記載する点以外は、比較例1~7及び参考例1~4と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。本培養では、炭素源として、まず、第一油脂(油脂1)を断続的に添加しながら本培養を開始した。微生物中のPHA蓄積量が15重量%に達した時点で、炭素源を第二油脂(油脂2)に切り替えて、第二油脂を断続的に添加しながら本培養を継続した。本培養の開始から48時間経過した時に培養を終了した。表3に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
当該実施例では、油脂1全量と、PHA蓄積量が15重量%から16重量%に達するまでに使用した微量の油脂2が、油脂Aに該当する。この時、油脂Aの不飽和脂肪酸の平均含有割合は、約58%である。また、油脂2が油脂Bに該当する。
(実施例2)
本培養で、第二油脂として油脂8を使用したこと以外は、実施例1と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表3に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
当該実施例では、油脂1全量と、PHA蓄積量が15重量%から16重量%に達するまでに使用した微量の油脂8が、油脂Aに該当する。この時、油脂Aの不飽和脂肪酸の平均含有割合は、約56%である。また、油脂8が油脂Bに該当する。
(実施例3~4)
本培養で、第一油脂及び第二油脂としてそれぞれ表3に記載のものを使用し、第一油脂から第二油脂への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が20重量%に達した時点で実施したこと以外は、実施例1と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表3に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
尚、当該実施例では、第一油脂(油脂1)が油脂Aに該当し、第二油脂(油脂2)が油脂Bに該当する。以下の実施例5~9も同様である。
(実施例5~8)
本培養で、第一油脂及び第二油脂としてそれぞれ表3に記載のものを使用し、第一油脂から第二油脂への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が30~34重量%に達した時点で実施したこと以外は、実施例1と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表3に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(実施例9)
本培養で、第一油脂から第二油脂への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が79重量%に達した時点で実施したこと以外は、実施例1と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表3に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
表3より次のことが分かる。実施例1~9は、油脂中の不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の第一油脂を炭素源として用いて本培養を開始し、本培養の途中で、炭素源を、不飽和脂肪酸の含有割合が第一油脂より高い第二油脂に切り替えて本培養を継続したものである。いずれも、PHA生産性が80%以上と良好であったことが分かる。特に実施例3~8は、単独使用でのPHA生産性が低い第二油脂を80重量%以上も使用しているにも関わらず、PHA生産性が90%以上と極めて高くなっている。
不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂は、表2の比較例1~7や参考例4で示したように単独で使用するとPHA生産性が低くなるにも関わらず、不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の油脂と組み合わせて順次使用することで良好なPHA生産性を達成できることが分かる。
(比較例8)
次に記載する点以外は、実施例1と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。実施例1の本培養での油脂1と油脂2の添加順序を逆にして、まず、炭素源として油脂2を断続的に添加しながら本培養を開始した。微生物中のPHA蓄積量が30重量%に達した時点で、炭素源を油脂1に切り替えて、油脂1を断続的に添加しながら本培養を継続した。本培養の開始から48時間経過した時に培養を終了した。表4に、本培養で使用した炭素源中の油脂1及び油脂2それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(比較例9)
本培養で、油脂2から油脂1への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が80重量%に達した時点で実施したこと以外は、比較例8と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表4に、本培養で使用した炭素源中の油脂1及び油脂2それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
表4より次のことが分かる。比較例8及び9では、実施例1~9とは異なり、油脂中の不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂(油脂2)を炭素源として用いて本培養を開始し、本培養の途中で、炭素源を、不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の油脂(油脂1)に切り替えて本培養を継続したものである。結果、PHA生産性が80%未満と低く、比較例1~7と同程度であった。特に比較例8は、単独使用でPHA生産性が最も高い油脂1を80重量%以上も使用しているにも関わらず、PHA生産性が76%と極めて低くなっている。
以上より、良好なPHA生産性を得るには、培養の初期に使用する炭素源は、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂ではなく、実施例1~9のように不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の油脂であることが望ましいことが分かる。
(比較例10~12及び参考例5~7)
PHA産生微生物として、Cupriavidus necator H16株を用い、本培養の炭素源として、表5に示す各油脂を単独で使用したこと以外は、比較例1~7及び参考例1~4と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表5に、算出したPHA生産性の数値を示した。
表5より次のことが分かる。油脂中の不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂を炭素源として単独で使用した比較例10~12では、PHA生産性が80%未満と低くなった。一方、不飽和脂肪酸の含有割合が75重量%未満と低い油脂を炭素源として単独で使用した参考例5~7では、PHA生産性が80%以上と良好であったことが分かる。即ち、比較例10~12及び参考例5~7では、比較例1~7及び参考例1~4とは異なるPHA産生微生物を使用したが、炭素源の種類とPHA生産性の関係は同じ傾向にあることが分かる。
(実施例10)
次に記載する点以外は、比較例10~12及び参考例5~7と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。本培養では、炭素源として、まず、第一油脂(油脂1)を断続的に添加しながら本培養を開始した。微生物中のPHA蓄積量が15重量%に達した時点で、炭素源を第二油脂(油脂2)に切り替えて、第二油脂を断続的に添加しながら本培養を継続した。本培養の開始から48時間経過した時に培養を終了した。表6に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(実施例11)
本培養で、第二油脂として油脂8を使用したこと以外は、実施例10と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表6に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(実施例12~13)
本培養で、第一油脂及び第二油脂としてそれぞれ表6に記載のものを使用し、第一油脂から第二油脂への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が20重量%に達した時点で実施したこと以外は、実施例10と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表6に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(実施例14~18)
本培養で、第一油脂及び第二油脂としてそれぞれ表6に記載のものを使用し、第一油脂から第二油脂への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が30~34重量%に達した時点で実施したこと以外は、実施例10と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表6に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(実施例19)
本培養で、第一油脂から第二油脂への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が82重量%に達した時点で実施したこと以外は、実施例10と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表6に、本培養で使用した炭素源中の第一油脂及び第二油脂それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
表6より次のことが分かる。実施例10~19は、実施例1~9と同様、油脂中の不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の第一油脂を炭素源として用いて本培養を開始し、本培養の途中で、炭素源を、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い第二油脂に切り替えて本培養を継続したものである。いずれも、PHA生産性が80%以上と良好であったことが分かる。特に、実施例12~18は、単独使用でのPHA生産性が低い第二油脂を80重量%以上も使用しているにも関わらず、PHA生産性が90%以上と極めて高くなっている。
不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂は、表5の比較例10~12や参考例7で示したように単独で使用するとPHA生産性が低くなるにも関わらず、不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の油脂と組み合わせて順次使用することで良好なPHA生産性を達成できることが分かる。
(比較例13)
次に記載する点以外は、実施例10と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。実施例10の本培養での油脂1と油脂2の添加順序を逆にして、まず、炭素源として油脂2を断続的に添加しながら本培養を開始した。微生物中のPHA蓄積量が32重量%に達した時点で、炭素源を油脂1に切り替えて、油脂1を断続的に添加しながら本培養を継続した。本培養の開始から48時間経過した時に培養を終了した。表7に、本培養で使用した炭素源中の油脂1及び油脂2それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
(比較例14)
本培養で、油脂2から油脂1への切り替えを、微生物中のPHA蓄積量が80重量%に達した時点で実施したこと以外は、比較例13と同じ条件で、(1)前培養、(2)種母培養、及び(3)本培養を順次実施した。表7に、本培養で使用した炭素源中の油脂1及び油脂2それぞれの割合と、算出したPHA生産性の数値を示した。
表7より次のことが分かる。比較例13及び14では、実施例10~19とは異なり、油脂中の不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂(油脂2)を炭素源として用いて本培養を開始し、本培養の途中で、炭素源を、不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の油脂(油脂1)に切り替えて本培養を継続したものである。結果、PHA生産性が80%未満と低く、比較例10~12と同程度であった。特に比較例13は、単独使用でPHA生産性が最も高い油脂1を80重量%近くも使用しているにも関わらず、PHA生産性が73%と極めて低くなっている。
以上より、良好なPHA生産性を得るには、培養の初期に使用する炭素源は、不飽和脂肪酸の含有割合が比較的高い油脂ではなく、実施例10~19のように不飽和脂肪酸の含有割合が25重量%以上75重量%未満の油脂であることが望ましいことが分かる。

Claims (10)

  1. 炭素源の存在下でポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を培養することによるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法であって、
    前記培養において、炭素源として油脂A及び油脂Bを使用し、
    前記製造方法は、
    (i)前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が16重量%を超えて85重量%未満のある時点までは、油脂Aの存在下で前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を培養し、
    (ii)油脂Aを油脂Bに変更し、油脂Bの存在下で前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物の培養を継続することを含み、
    前記培養全体で油脂Aと油脂Bの合計使用量に対する油脂Bの使用量は10重量%以上である、製造方法。
    油脂A:油脂Aは1種類以上の油脂を含み、油脂A全体において、構成脂肪酸である不飽和脂肪酸の平均含有割合が25重量%以上75重量%未満である。
    油脂B:油脂Bにおける構成脂肪酸である不飽和脂肪酸の含有割合は、油脂A全体における不飽和脂肪酸の前記平均含有割合より高い。
  2. 油脂Bは、不飽和脂肪酸の含有割合が60重量%以上98重量%以下の油脂である、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記培養全体で油脂Aと油脂Bの合計使用量に対する油脂Bの使用量は40重量%以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物の培養を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)蓄積量が80重量%以上に達するまで実施する、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物を含む培地に、油脂Aを連続添加しながら培養を行った後、油脂Bを連続添加しながら培養を継続する、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、少なくとも3-ヒドロキシブチレート単位を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシブチレート単位の単独重合体、又は、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記他のヒドロキシアルカノエート単位が、3-ヒドロキシヘキサノエート単位である、請求項に記載の製造方法。
  9. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物が細菌である、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)産生微生物がカプリアビダス属に属する細菌である、請求項記載の製造方法。
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