以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[ポリアリーレンスルフィド共重合体]
ポリアリーレンスルフィド共重合体のガラス転移点の下限は95℃以上であり、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。ガラス転移点が95℃未満では高温条件下において高い剛性が得られない。ガラス転移点の上限は190℃以下であり、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。ガラス転移点が190℃を超えると成形品の耐薬品性が不足する。ガラス転移点は示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した際に検出されるベースラインシフトの変曲点と定義する。
ポリアリーレンスルフィド共重合体の結晶化温度は165℃以上であり、170℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、190℃以上がさらに好ましく、200℃以上がよりいっそう好ましい。結晶化温度が165℃未満では、共重合体を成形加工する際や、後述するように共重合体に充填材および/またはその他添加剤を配合して樹脂組成物を製造する際の結晶化速度が不十分となることによる生産性の低下や、得られた樹脂組成物の結晶化が不十分となることによる機械特性や耐薬品性の低下が生じる。結晶化温度の上限に特に制限はないが、一般的に、235℃以下の範囲が例示できる。結晶化温度は、示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した際に検出される結晶化ピーク温度の値とする。
ポリアリーレンスルフィド共重合体は、300℃以下の融点を有することが好ましい。融点が300℃以下であることによって、溶融成形加工が容易になる。融点は示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した後、100℃で1分間保持し、再度20℃/分の速度で340℃まで昇温した際に検出される融解ピーク温度の値とする。融点はポリアリーレンスルフィド共重合体中のアリーレンスルフィド単位の分子量を選択することによって調整することができる。
ポリアリーレンスルフィド共重合体は、アリーレンスルフィド単位として、式、-(Ar-S)-の繰り返し単位を70モル%以上含有する共重合体であり、好ましくは80モル%以上含有する共重合体である。Arとしては下記の式(I)~式(XI)などで表される単位などがあるが、中でも式(I)で表される単位が特に好ましい。
(R3,R4は水素、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素数6~24のアリール基、ハロゲン基および反応性官能基から選ばれた置換基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(XII)~式(XIV)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、-(Ar-S)-の単位1モルに対して0~1モル%の範囲であることが好ましい。
(ここで、Arは先の式(I)~式(XI)で表される単位である。)
アリーレンスルフィド単位は、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位として下記式(XV)で表されるp-フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
アリーレンスルフィド単位の数平均分子量の下限は1,000以上であり、1,500以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。アリーレンスルフィド単位の数平均分子量が1,000未満の場合は、ポリアリーレンスルフィド共重合体の耐薬品性が十分に得られない。アリーレンスルフィド単位の数平均分子量の上限は10,000以下であり、6,000以下が好ましく、4,000以下がより好ましい。アリーレンスルフィド単位の数平均分子量が10,000を超える場合は、ポリアリーレンスルフィド共重合体の耐熱性が十分に得られない。ポリアリーレンスルフィド共重合体中のアリーレンスルフィド単位の数平均分子量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド共重合体を10%の水酸化ナトリウム水溶液中で還流条件下、5時間処理した後の残渣を分子量測定することで求めることができる。ポリアリーレンスルフィド共重合体中のアリーレンスルフィド単位の数平均分子量を上記の範囲とするためには、ポリアリーレンスルフィド共重合体の製造において、後述する、数平均分子量Mnが1,000以上10,000以下であるポリアリーレンスルフィド(A)を用いることが好ましい。重量平均分子量および数平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
共重合成分としてポリアリーレンスルフィド共重合体に含有される構造としては、芳香環を含む構造が例示され、好ましくは前記式(a)~(s)で示される構造であり、より好ましくは前記式(a)~(e)、(i)および(j)で示される構造であり、中でも前記式(i)で示される構造が特に好ましい。これらの構造を含むことで、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体の結晶性が優れる傾向にある。
ポリアリーレンスルフィド共重合体中の、-(Ar-S)-の繰り返し単位からなるアリーレンスルフィド単位と共重合成分とは、イミド基で連結される。イミド基で連結されることにより、高温において高い剛性が発現する。イミド基量の下限は、ポリアリーレンスルフィド共重合体中の硫黄原子に対して1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、4モル%以上がさらに好ましい。上記のような範囲とすることで、高温条件下における剛性低下を十分に抑制できる傾向にある。イミド基量の上限は、60モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましく、20モル%以下がよりいっそう好ましい。イミド基量が多くなると、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体の耐薬品性が低下する傾向にあるが、上記のような範囲とすることで、十分な耐薬品性や機械特性を発現するポリアリーレンスルフィド共重合体が得られる傾向にある。なお、イミド基の量は、ポリアリーレンスルフィド共重合体の製造に用いるポリアリーレンスルフィド(A)が含有する官能基量、および、化合物(B)が含有する官能基量を用いて計算によって求めることも可能であるし、ポリアリーレンスルフィド共重合体のFT-IRスペクトルあるいはNMRスペクトルを用いて求めることも可能である。
ポリアリーレンスルフィド共重合体は、アミノ基量、またはカルボキシル基量の二分の一および酸無水物基量の合計量のいずれかを多く有することが好ましい。アミノ基量、またはカルボキシル基量の二分の一および酸無水物基量の合計量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する比強度で評価することが可能である。FT-IR評価には溶融状態から急冷して作製した非晶フィルムを用いることが好ましい。以下に記載する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収の比強度、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度を評価する場合には、非晶フィルムを作製するための溶融温度は320℃で行う。ポリアリーレンスルフィド共重合体の、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収の比強度の下限は、0.11以上が好ましく、0.13以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましく、0.20以上がよりいっそう好ましく、0.40以上がさらにいっそう好ましい。また、ポリアリーレンスルフィド共重合体の、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度の下限は、0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましく、0.50以上がよりいっそう好ましく、1.0以上がさらにいっそう好ましい。なお、本発明においては、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度を測定することで、カルボキシル基および酸無水物基の合計量を評価する。上記範囲のように、アミノ基量、またはカルボキシル基量の二分の一および酸無水物基量の合計量のいずれかを多く有することで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の結晶化温度が高くなり、結晶性に優れる傾向にある。この理由は定かではないが、共重合体中に同様の構造が多く存在することで、ポリマーの末端やポリマー鎖が配列しやすくなるためと考えられる。一方、ポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量およびそれに由来する機械特性の観点からは、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収の比強度の上限は、0.90以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.50以下がさらに好ましい。また、ポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量およびそれに由来する機械特性の観点からは、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度の上限は、2.2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましく、0.60以下がよりいっそう好ましく、0.40以下がさらにいっそう好ましい。アミノ基量、またはカルボキシル基量の二分の一および酸無水物基量の合計量のいずれを多く有するかについては、ポリアリーレンスルフィド共重合体に求める反応性や特性、ポリアリーレンスルフィド共重合体の用途、使用環境、ポリアリーレンスルフィド共重合体を含有する樹脂組成物に含まれる各種充填材およびその他添加剤の種類やそれらが有する構造などに応じて、選択することが可能である。
ポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量の下限は、重量平均分子量で10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上がさらに好ましく、40,000以上がよりいっそう好ましい。重量平均分子量の下限が上記範囲であることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の機械特性が優れる傾向にある。重量平均分子量の上限に特に制限はないが、200,000以下を例示でき、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。重量平均分子量の上限が上記範囲であることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の成形性や結晶性が優れる傾向にある。なお、前記重量平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
[ポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法]
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体は、数平均分子量Mnが1,000以上10,000以下であるポリアリーレンスルフィド(A)、および式(a’)~(u’)から選ばれる少なくとも一つの化合物(B)(以下、化合物(B)と略記する場合がある。)を加熱する方法により製造することが好ましい。その際に、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比が、0.75以上0.97以下、または、1.03以上1.25以下であることが好ましい。以下、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)について説明する。
[ポリアリーレンスルフィド(A)]
ポリアリーレンスルフィド(A)とは、式、-(Ar-S)-の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。ここで、主要構造単位とするとは、当該繰り返し単位を70モル%以上含有することをいう。Arとしては前記式(I)~式(XI)などで表される単位などがあるが、中でも式(I)で表される単位が特に好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記式(XII)~式(XIV)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、-(Ar-S)-の単位1モルに対して0~1モル%の範囲であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド(A)は、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位として前記式(XV)で表されるp-フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィド(A)は官能基としてアミノ基、隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基、およびその2つのカルボキシル基に由来する酸無水物基から選択される少なくともいずれかを含有する。ポリアリーレンスルフィド(A)と後述する化合物(B)とを加熱する際の反応性の観点から、ポリアリーレンスルフィド(A)の有する官能基と化合物(B)の有する官能基の組み合わせは、アミノ基と酸無水物基であることが好ましい。よって、化合物(B)の官能基によるが、ポリアリーレンスルフィド(A)が含有する官能基はアミノ基または酸無水物基が好ましい。さらに、後述する製造方法でポリアリーレンスルフィド(A)を製造する際の重合反応の容易さの観点から、ポリアリーレンスルフィド(A)の有する官能基はアミノ基であることが好ましく、それに伴い化合物(B)の有する官能基は酸無水物基であることが好ましい。官能基の位置はポリアリーレンスルフィドの主鎖中であっても末端であってもよいが、末端導入の方が官能基を有する他のポリマーや化合物との反応制御が容易であるため好ましく、後述するように化合物(B)との共重合反応を行う観点でも好ましい。末端導入の場合はArと結合するSに対してp位であることが好ましい。また、上記Arと結合した官能基を有するポリアリーレンスルフィドも好ましい形態として例示できる。上記官能基は、化合物(D)に由来する構造であり、詳細については後述する。
ポリアリーレンスルフィド(A)が含有する官能基量の下限は400μmol/g以上であることが好ましく、500μmol/g以上であることがより好ましく、700μmol/g以上であることがさらに好ましい。官能基が上記の下限値以上であることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体のガラス転移点が十分に高くなる傾向にあるため好ましい。また、官能基量の上限は5,000μmol/g以下が好ましく、4,000μmol/g以下がより好ましく、3,000μmol/g以下がさらに好ましい。官能基量が上記の上限値以下であることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の耐薬品性が低下することを防止できるため好ましい。なお、官能基が隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基である場合、上記官能基とは、隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基から生成する酸無水物基の量のことを指すものとする。ポリアリーレンスルフィド中の官能基はポリアリーレンスルフィドをFT-IR分析することによって、例えばベンゼン環由来の1901m-1における吸収に対するアミノ基由来の3382cm-1の吸収の強度、ベンゼン環由来の1901m-1における吸収に対する酸無水物基由来の1860cm-1の吸収の強度を比較することで定量することができる。
ポリアリーレンスルフィド(A)の数平均分子量は1,000以上であり、2,000以上が好ましい。ポリアリーレンスルフィド(A)の数平均分子量が1,000未満の場合は、ポリアリーレンスルフィド共重合体の耐薬品性が十分に得られない。ポリアリーレンスルフィド(A)の数平均分子量の上限値は、10,000以下であり、6,000以下が好ましく、4,000以下がより好ましい。ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量が10,000を超えると、ポリアリーレンスルフィド共重合体、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物の耐熱性が十分に得られない。数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出される値である。
ポリアリーレンスルフィド(A)は30℃から320℃まで10℃/分の昇温速度で加熱したときの重量減少率が5wt%以下であることが好ましく、4wt%以下であることがより好ましく、3wt%以下であることがさらに好ましい。重量減少率は小さいほど好ましいが、下限としては、例えば0.01wt%以上が例示できる。ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法として、後述する例を用いれば、ポリアリーレンスルフィド(A)中に多量の官能基を導入しても、加熱時のガス成分となりやすい成分が残存しにくい傾向にある。
上記重量減少率は、一般的な熱重量分析によって求めることが可能である。この分析における雰囲気は通常、常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気であり、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気を用いることが好ましい。この中でも経済性および取扱い性の容易さの面からは窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気圧、すなわち絶対圧で101.3kPa近傍の圧力条件のことである。また、重量減少率の測定においては室温から320℃以上の任意の温度まで昇温速度10℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィドを実使用する際や溶融させ成形や反応を行う際に頻用される温度領域である。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のポリアリーレンスルフィドからのガス発生量や成形加工・反応時の機器の汚染度の指標となる。したがって、このような温度範囲における重量減少率が少ないポリアリーレンスルフィドは、品質の高い優れたポリアリーレンスルフィドであるといえる。
また、ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法として、後述する例を用いると、そのポリアリーレンスルフィド(A)を用いて得らえるポリアリーレンスルフィド共重合体の結晶性も優れる傾向にあるため好ましい。これも、後述する製造方法でポリアリーレンスルフィド(A)を製造すると、加熱時のガス成分となりやすい成分が残存しにくいことによるものと考えられる。
以下に本発明のポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法について具体的に述べる。下記方法に限定されるものではないが、本発明においては、有機極性溶媒中で、少なくともジハロゲン化芳香族化合物、無機スルフィド化剤および化合物(D)をアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させるポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、反応容器中で無機スルフィド化剤1モルに対して化合物(D)を0.04モル以上0.5モル以下の範囲で存在させる方法が好ましい。ここで、化合物(D)は少なくとも1つの芳香環を有し、該1つの芳香環上にアミノ基、隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基、およびその2つのカルボキシル基に由来する酸無水物基から選ばれる少なくとも1種類の官能基と、水酸基、水酸基の塩、チオール基、およびチオール基の塩から選ばれる少なくとも1種類の官能基とを有する化合物である。このような製造方法を選択する場合、不純物の少ない官能基含有ポリアリーレンスルフィド(A)が得られ、それを用いて製造するポリアリーレンスルフィド共重合体の結晶化温度が高くなりやすい。
また、ポリアリーレンスルフィド(A)が含有する官能基として隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基またはその2つのカルボキシル基に由来する酸無水物基を選択する場合には、有機極性溶媒中で、少なくともジハロゲン化芳香族化合物、無機スルフィド化剤およびモノハロゲン化化合物をアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させる、公知のポリアリーレンスルフィドの製造方法を採用することも、モノハロゲン化化合物の反応性、すなわちポリアリーレンスルフィド(A)への官能基導入の容易さの観点で有効である。ここで使用するモノハロゲン化化合物としては例えば、3-クロロフタル酸、4-クロロフタル酸などを挙げることができる。
[無機スルフィド化剤]
ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法で用いられる無機スルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであればよく、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことを指す。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、この様な形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系中で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物も用いることができる。これらのアルカリ金属水硫化物およびアルカリ金属水酸化物は水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができ、水和物または水性混合物が入手のしやすさ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系内で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状態、液体状態、水溶液状態のいずれの形態で用いても差し障りない。
[化合物(D)]
ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法で用いられる化合物(D)は、少なくとも1つの芳香環を有し、該1つの芳香環上にアミノ基、隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基、およびその2つのカルボキシル基に由来する酸無水物基から選ばれる少なくとも1種類の官能基と、水酸基、水酸基の塩、チオール基、およびチオール基の塩から選ばれる少なくとも1種類の官能基とを有する化合物である。化合物(D)はポリアリーレンスルフィドに官能基として導入されるアミノ基、隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基、およびその2つのカルボキシル基に由来する酸無水物基から選択されるいずれかの官能基と、後述する重合反応工程でジハロゲン化芳香族化合物と反応する水酸基、または水酸基の塩、またはチオール基、またはチオール基の塩を有する芳香族化合物であればよい。その具体例として、2-アミノフェノール、4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、3-ヒドロキシフタル酸、4-ヒドロキシフタル酸、3-メルカプトフタル酸、4-メルカプトフタル酸およびこれらの化合物の水酸基またはチオール基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩となっている化合物を好ましい化合物として例示することができる。反応性の観点から4-アミノフェノール、4-アミノチオフェノールを特に好ましい化合物として例示することができる。上記の特徴を有していれば、異なる2種類以上の化合物(D)を組み合わせて用いることも可能である。化合物(D)として水酸基またはチオール基を有する化合物を用いる場合、等量のアルカリ金属水酸化物を同時に使用することが好ましい実施形態である。また、化合物(D)として水酸基またはチオール基が塩の形態をとる化合物を用いる場合、あらかじめ塩を形成してからポリアリーレンスルフィドの製造に使用することも可能であるし、反応容器内の反応で塩を形成することも可能である。
化合物(D)の使用量の下限は仕込み無機スルフィド化剤1モルに対し、0.04モル以上であり、0.05モル以上が好ましく、0.06モル以上がより好ましく、0.08モル以上がさらに好ましく、0.1モル以上がよりいっそう好ましい。使用量がこの値以上であることでアミノ基をポリアリーレンスルフィドに十分に導入できるため好ましい。また、化合物(D)の使用量の上限は仕込み無機スルフィド化剤1モルに対して0.5モル以下であり、0.45モル以下がより好ましく、0.4モル以下がさらに好ましい。使用量がこの値以下であることでポリアリーレンスルフィドの分子量低下を防止し、機械特性の低下を防止できるため好ましい。
化合物(D)の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合反応工程のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、効率よくジハロゲン化芳香族化合物と反応させる観点から、ジハロゲン化芳香族化合物を反応容器に添加するのと同じ段階で添加することがより好ましい。
[ジハロゲン化芳香族化合物]
ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法で用いられるジハロゲン化芳香族化合物としては、p-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、o-ジブロモベンゼン、m-ジブロモベンゼン、1-ブロモ-4-クロロベンゼン、1-ブロモ-3-クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、および1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン、1-メチル-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジメチル-2,5-ジクロロベンゼン、1,3-ジメチル-2,5-ジクロロベンゼン、2,5-ジクロロ安息香酸、3,5-ジクロロ安息香酸、2,5-ジクロロアニリン、3,5-ジクロロアニリン、ビス(4-クロロフェニル)スルフィドなどのハロゲン以外の置換基を有する化合物も含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p-ジクロロベンゼンに代表されるp-ジハロゲン化ベンゼンを主成分とするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p-ジクロロベンゼンを80~100モル%含むものであり、さらに好ましくは90~100モル%含むものである。また、異なる2種類以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量の下限は特に制限はないが、下記式で表現される[モノマー比]を0.8以上とすることが好ましく、0.9以上とすることがより好ましく、0.95以上とすることがさらに好ましい。[モノマー比]を上記の範囲とすることで重合反応系を安定化し、副反応を防止することができるため、好ましい。また、使用量の上限は特に制限はないが、[モノマー比]を1.2以下とすることが好ましく、1.1以下とすることがさらに好ましく、1.05以下とすることがより好ましい。[モノマー比]を上記の範囲とすることでポリアリーレンスルフィド中に残存するハロゲン量を低減することができるため好ましい。なお、下記式における[ジハロゲン化芳香族化合物物質量]、[無機スルフィド化剤物質量]、および[化合物(D)物質量]は、ポリアリーレンスルフィドを製造する際における各化合物の使用量を示す。
[モノマー比]=[ジハロゲン化芳香族化合物物質量]/([無機スルフィド化剤物質量]+[化合物(D)物質量])
[有機極性溶媒]
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法で用いられる有機極性溶媒として、有機アミド溶媒が好ましく例示できる。具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのN-アルキルピロリドン類、N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は仕込み無機スルフィド化剤1モルに対し、2.0モル以上が好ましく、2.2モル以上がより好ましく、2.3モル以上がさらに好ましい。使用量がこの値以上であることで収率良くポリアリースルフィドを合成できるため好ましい。また、有機極性溶媒の使用量は仕込み無機スルフィド化剤1モルに対して6.0モル以下が好ましく、5.0モル以下がより好ましく、4.0モル以下がさらに好ましい。使用量がこの値以下であることで、得られるポリアリーレンスルフィドを加熱した際の発生ガスを低減できるため好ましい。
[重合助剤]
比較的に高重合度のポリアリーレンスルフィドをより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは、得られるポリアリーレンスルフィドの粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1~20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1~3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより合成してもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価である。一方、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込み無機スルフィド化剤1モルに対し、通常0.01モル~2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル~0.6モルの範囲が好ましく、0.2モル~0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込み無機スルフィド化剤1モルに対し、通常0.3モル~15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6モル~10モルの範囲が好ましく、1モル~5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、より少量のアルカリ金属カルボン酸塩と水で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合反応工程のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時あるいは重合開始時に他の添加物と同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ジハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応工程の途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられる。重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、無機スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込み無機スルフィド化剤1モルに対して、通常0.02モル~0.2モル、好ましくは0.03モル~0.1モル、より好ましくは0.04モル~0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合反応工程のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時あるいは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明のポリアリーレンスルフィドの好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、もちろんこの方法に限定されるものではない。
[前工程]
ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法において、通常、無機スルフィド化剤は水和物の形で使用されるが、ジハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒と無機スルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、無機スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製される無機スルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温~150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃~260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよいし、化合物(D)を加えておいてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
前工程の終了時、すなわち重合反応工程の前における系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3モル~10.0モルであることが好ましい。ここで系内の水分量とは、重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中で少なくとも無機スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および化合物(D)を200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりポリアリーレンスルフィド(A)を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下において、常温~240℃、好ましくは100℃~230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で化合物(D)および重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
この混合物を通常200℃~290℃未満の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01℃/分~5℃/分の速度が選択され、0.1℃/分~3℃/分の範囲がより好ましい。
一般的に、最終的には250℃~290℃未満の温度まで昇温し、その温度で通常0.25時間~50時間、好ましくは0.5時間~20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃~260℃で一定時間反応させた後、270℃~290℃未満に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃~260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25時間~10時間の範囲が選ばれる。
なお、ポリマーの分子量を調整するため、重合途中で化合物(D)の添加を行うことも可能であるが、化合物(D)の効率的な反応の観点からは化合物(D)の少なくとも一部はジハロゲン化芳香族化合物と同じ段階で添加することがより好ましい。
[回収工程]
ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用してもよい。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いてもよい。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分~3℃/分程度である。徐冷工程の全工程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化し析出するまでは0.1℃/分~1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用してもよい。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つである。この回収方法のうち、好ましい方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法である。ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には、常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃~250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
ポリアリーレンスルフィドは、上記重合反応工程、回収工程を経て生成した後、後処理工程として酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄を施すことが可能である。不純物除去の観点からは、後処理工程は、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄のいずれかを施すことが好ましく、2種以上の処理を併用することがより好ましい。
酸処理を行う場合は次の通りである。酸処理に用いる酸は、ポリアリーレンスルフィド(A)を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられる。なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のようなポリアリーレンスルフィド(A)を分解、劣化させるものは好ましくない。酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド(A)を浸漬せしめる方法があり、必要により撹拌または加熱することも可能である。酸の溶液を用いる場合、溶液は有機溶媒を用いた溶液でも水溶液でもよいが、酸の混和性、ポリアリーレンスルフィドに含まれる塩や塩基性成分の溶解性が比較的高い傾向にある観点からは水溶液が好ましく、用いる水は、ポリアリーレンスルフィドの好ましい化学的変性の効果を損なわないために蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の酢酸水溶液を80℃~200℃に加熱した中にポリアリーレンスルフィド(A)粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上となってもよく、例えばpH4~8程度となってもよい。酸処理を施されたポリアリーレンスルフィド(A)に残留している酸または塩などを除去するため、さらに水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、ポリアリーレンスルフィド(A)の好ましい化学的変性の効果を損なわないために、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。酸処理を行う場合、ポリアリーレンスルフィド(A)を用いてポリアリーレンスルフィド共重合体を得る際に、より高分子量のポリアリーレンスルフィド共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
熱水処理を行う場合は次の通りである。ポリアリーレンスルフィド(A)を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではポリアリーレンスルフィドの好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。熱水処理によるポリアリーレンスルフィド(A)の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限はない。所定量の水に所定量のポリアリーレンスルフィド(A)を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。ポリアリーレンスルフィド(A)と水との割合は、水が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリアリーレンスルフィド(A)200g以下の浴比(乾燥ポリアリーレンスルフィド(A)重量に対する洗浄液重量)が選ばれる。また、末端の反応性官能基の好ましくない分解を回避するため、処理の雰囲気は不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、残留している成分を除去するため、この熱水処理操作を終えたポリアリーレンスルフィド(A)は、温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次の通りである。ポリアリーレンスルフィド(A)の洗浄に用いる有機溶媒は、ポリアリーレンスルフィドを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。例えばN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがポリアリーレンスルフィド(A)の洗浄に用いる有機溶媒として挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましい。また、アリーレンスルフィド構造を有する不純物を除去する観点からは、比較的高い溶解性が得られやすい含窒素極性溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびクロロホルムが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用されてもよいし、水と混合されて使用されてもよい。有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中にポリアリーレンスルフィド(A)を浸漬せしめる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンスルフィド(A)を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温~300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温~150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。有機溶媒により、ポリアリーレンスルフィド(A)の加熱時の発生ガス量が少なくなり、また、ポリアリーレンスルフィド(A)を用いて後述するポリアリーレンスルフィド共重合体を得る際に、高分子量体が容易に得られる傾向にあるため好ましい。
[熱酸化架橋処理]
ポリアリーレンスルフィド(A)は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱や過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。ただし、ポリアリーレンスルフィド(A)の数平均分子量は10,000以下である。
[化合物(B)]
化合物(B)は、前記式(a’)~(u’)から選ばれる少なくとも一つである。
Xは隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基、もしくはその2つのカルボキシル基に由来する酸無水物基、およびアミノ基から選択されるいずれかである。前述したポリアリーレンスルフィド(A)と化合物(B)とを加熱する際の反応性の観点から、ポリアリーレンスルフィド(A)の有する官能基と化合物(B)の有する官能基の組み合わせは、アミノ基と酸無水物基であることが好ましい。よって、ポリアリーレンスルフィド(A)の官能基によるが、化合物(B)が含有する官能基はアミノ基または酸無水物基が好ましい。さらに、前述した製造方法でポリアリーレンスルフィド(A)を製造する際の重合反応の容易さの観点から、ポリアリーレンスルフィド(A)の有する官能基はアミノ基であることが好ましく、それに伴い化合物(B)の有する官能基は酸無水物基であることが好ましい。R、R1、およびR2は水素、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数6~24のアリーレン基、およびハロゲン基から選ばれる置換基であり、R、R1、およびR2は同一でも異なっていてもよい。入手の容易性から水素、メチル基、エチル基、またはプロピル基が好ましい。また、各化合物の芳香族環は2置換体または3置換体であってもよく、一つの芳香族環に置換された複数の置換基Xは同一でも異なっていてもよい。
化合物(B)の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-チオジフタル酸、3,3’,4,4’-スルホニルジフタル酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-スルフィニルジフタル酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラカルボキシルジフェニルメタン、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’-チオジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-スルホニルジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-スルフィニルジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラカルボキシルジフェニルメタン二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-チオジ安息香酸、4,4’-ジカルボキシルベンゾフェノン、4,4’-スルフィニルジ安息香酸、4,4’-ジカルボキシルビフェニル、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、o-トルイジン、1,5-ジアミノナフタレンが挙げられ、反応性の観点から3,3’,4,4’-チオジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-スルフィニルジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-チオジ安息香酸、4,4’-ジカルボキシルベンゾフェノン、4,4’-スルフィニルジ安息香酸、4,4’-ジカルボキシルビフェニルピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,7-ジアミノフルオレンが好ましく用いられる。
[ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)の加熱条件]
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体は、数平均分子量Mnが1,000以上10,000以下であるポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比が、0.75以上0.97以下、または、1.03以上1.25以下の条件で、加熱し製造することができる。
前述の通り、ポリアリーレンスルフィド共重合体は、アミノ基量、または隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基および酸無水物基の合計量のいずれかを多く有することが好ましいため、そのためにポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比を上記範囲とすることが好ましい。
アミノ基を多く含有したい場合、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比の下限は0.75以上である。この範囲とすることで、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体が十分なイミド基量を有することができ、高温条件下における剛性低下を十分に抑制できる。また、アミノ基を多く含有したい場合、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比の上限は0.97以下であり、0.95以下が好ましく、0.93以下がより好ましく、0.90以下がさらに好ましく、0.85以下がいっそう好ましい。上限を上記範囲とすることで、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体が結晶性に優れ、高い結晶化温度を示す傾向、優れた機械特性や耐薬品性を示す傾向にある。
酸無水物基および隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基を多く含有したい場合、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比の上限は1.25以下である。この範囲とすることで、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体が十分なイミド基量を有することができ、高温条件下における剛性低下を十分に抑制できる。また、酸無水物基および隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基を多く含有したい場合、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、カルボキシル基量の二分の一および酸無水物基の合計量と、アミノ基の合計量との比の下限は1.03以上であり、1.06以上が好ましく、1.10以上がより好ましく、1.15以上がさらに好ましい。下限を上記範囲とすることで、得られるポリアリーレンスルフィド共重合が結晶性に優れ、高い結晶化温度を示す傾向、優れた機械特性や耐薬品性を示す傾向にある。
ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)の加熱は、初めから全量を混合して加熱してもよいし、ポリアリーレンスルフィド(A)の少なくとも一部、および化合物(B)の少なくとも一部を混合して加熱した後、残りのポリアリーレンスルフィド(A)および/または化合物(B)を混合して加熱してもよい。後者の場合、ポリアリーレンスルフィド(A)の少なくとも一部、および、化合物(B)の少なくとも一部を混合して加熱した後、引き続き残りのポリアリーレンスルフィド(A)および/または化合物(B)を混合して加熱してもよいし、ポリアリーレンスルフィド(A)の少なくとも一部、および、化合物(B)の少なくとも一部を混合して加熱した後、生成物を一度取り出し、さらに残りのポリアリーレンスルフィド(A)および/または化合物(B)を混合して加熱してもよい。
ポリアリーレンスルフィド共重合体が効率的に得られる観点からは、初めからポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)の全量を混合して加熱することが好ましい。一方で、ポリアリーレンスルフィド共重合体の、ガラス転移点、結晶化温度、融点などの熱特性や、分子量、用途に応じた末端種およびその量を制御しやすく調整しやすいという観点からは、ポリアリーレンスルフィド(A)の少なくとも一部、および、化合物(B)の少なくとも一部を混合して加熱した後、残りのポリアリーレンスルフィド(A)および/または化合物(B)を混合して加熱することが好ましい。
加熱の温度の下限は200℃以上が例示でき、230℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。加熱温度の下限をこのような範囲とすることで、容易にポリアリーレンスルフィド(A)と化合物(B)との反応を促進することができ、ポリアリーレンスルフィド(A)が溶融解する温度以上とすることでより短時間で反応を完結できる傾向にある。ポリアリーレンスルフィド(A)が溶融解する温度は、ポリアリーレンスルフィド(A)の組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばポリアリーレンスルフィド(A)を示差走査型熱量計で分析することで把握することが可能である。加熱温度の上限としては400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。加熱温度の上限をこのような範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィド(A)間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応を抑制でき、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体の特性低下を抑制できる傾向にある。
加熱を行う時間はポリアリーレンスルフィド(A)の組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間の下限としては、0.1分以上が例示でき、1分以上が好ましく、2分以上がより好ましく、3分以上がさらに好ましい。加熱時間の下限をこのような範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィド(A)と化合物(B)との反応をより十分に進めることができる。加熱時間の上限としては、100時間以内が例示でき、20時間以内が好ましく、10時間以内がより好ましく、1時間以内がさらに好ましい。加熱時間の上限をこのような範囲とすることで、経済性に優れ、かつ前記した好ましくない副反応を避けられる傾向にある。
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法においては、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)が有する、アミノ基と、隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基または酸無水物基との反応により、イミド基を形成する。イミド基を形成する組み合わせとしては、アミノ基と隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基、アミノ基と酸無水物基のいずれでもよいが、ポリアリーレンスルフィド(A)と化合物(B)とを加熱する際の反応性の観点から、官能基の組み合わせは、アミノ基と酸無水物基であることが好ましい。さらに、前述した製造方法でポリアリーレンスルフィド(A)を製造する際の重合反応の容易さの観点から、ポリアリーレンスルフィド(A)の有する官能基はアミノ基であることが好ましく、それに伴い化合物(B)の有する官能基は酸無水物基であることが好ましい。
加熱は、溶媒の非存在下で行うことも、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒の存在下で行う場合、溶媒としては、生成したポリアリーレンスルフィド共重合体の分解や架橋などの好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。一方で、ポリアリーレンスルフィド共重合体が効率的に得られる観点からは、実質的に無溶媒条件で行うことが好ましい。また、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体を成形加工する際の、発生ガスによる成形品の汚染を防ぐ観点からも、実質的に無溶媒条件で行うことが好ましい。ここで、実質的な無溶媒条件とは、ポリアリーレンスルフィド(A)および化合物(B)を加熱する系内の溶媒が10重量%以下であることを指し、3重量%以下が好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法における加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
加熱の際の雰囲気は、非酸化性雰囲気であることが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより、ポリアリーレンスルフィド(A)間や生成するポリアリーレンスルフィド共重合体間などでの架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、より好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、すなわち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、圧力の上限としては50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。圧力の上限をこのような範囲とすることで、架橋反応など好ましくない副反応が抑制できる傾向にある。圧力の下限としては0.1kPa以上が例示できる。圧力の下限を0.1kPa以上とすることで、必要以上に減圧にすることによる反応装置への負荷を避けることができる。
[ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物]
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体は、本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体を含有するポリアリーレンスルフィド共重合体組成物としても使用することができる。ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物は、本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体を含有すれば、それ以外の任意の成分、たとえば結晶核剤、各種充填材およびその他添加剤を配合することもできる。
また、本発明では、数平均分子量Mnが1,000以上10,000以下であるアリーレンスルフィド単位を構造単位として有し、アリーレンスルフィド単位と共重合成分とがイミド基で連結されるポリアリーレンスルフィド共重合体(C)および結晶核剤を含有する、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物も得ることができる。
ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物のガラス転移点の下限は95℃以上であり、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。ガラス転移点が95℃未満では高温条件下において高い剛性が得られない。ガラス転移点の上限は190℃以下であり、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。ガラス転移点が190℃を超えると成形品の耐薬品性が不足する。ガラス転移点は示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した際に検出されるベースラインシフトの変曲点と定義する。
ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物の結晶化温度は165℃以上であり、170℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、190℃以上がさらに好ましく、200℃以上がよりいっそう好ましい。結晶化温度が165℃未満では、共重合体組成物を成形加工する際や、後述するように共重合体組成物にさらに充填材および/またはその他添加剤を配合して樹脂組成物を製造する際の結晶化速度が不十分となることによる生産性の低下や、得られた樹脂組成物の結晶化が不十分となることによる機械特性や耐薬品性の低下が生じる。結晶化温度の上限に特に制限はないが、一般的に、235℃以下の範囲が例示できる。結晶化温度は、示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した際に検出される結晶化ピーク温度の値とする。
ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物は、300℃以下の融点を有することが好ましい。融点が300℃以下であることによって、溶融成形加工が容易になる。融点は示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した後、100℃で1分間保持し、再度20℃/分の速度で340℃まで昇温した際に検出される融解ピーク温度の値とする。融点はポリアリーレンスルフィド共重合体組成物中のアリーレンスルフィド単位の分子量を選択することによって調整することができる。
[ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)]
ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物が含有する、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)は、アリーレンスルフィド単位の繰り返し単位、アリーレンスルフィド単位の数平均分子量、共重合成分として含有される構造、アリーレンスルフィド単位と共重合成分の連結基、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)のガラス転移点、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)の融点、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)の分子量が、前記ポリアリーレンスルフィド共重合体と同じ特徴を有する。ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)の結晶化温度は、特に限定されないが、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、165℃以上であることがさらに好ましい。ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)の結晶化温度が上記範囲にある場合、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体組成物の結晶化温度が高くなる傾向にある。
[結晶核剤]
結晶核剤としては、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも一つを含有する。中でも、結晶化温度を向上する効果の面で、タルク、ポリエーテルエーテルケトンを含有することが好ましく、ポリエーテルエーテルケトンを含有することがより好ましい。タルク、ポリエーテルエーテルケトンは、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)中での分散性や相溶性に優れるため、高い結晶化温度向上効果が得られると考えられる。結晶核剤を含有することで、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物の結晶化温度がより向上する傾向にあり、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を成形加工する際や、さらに充填材および/またはその他添加剤を配合して樹脂組成物を製造する際に、十分な結晶化速度が得られるので、成形品製造時の生産性が向上し、得られた成形品が結晶化することで優れた機械特性や耐薬品性を示す傾向にある。結晶核剤の量の下限としては、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)100重量部に対し、0.01重量部以上が例示でき、0.02重量部以上が好ましく、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましく、0.2重量部以上がよりいっそう好ましく、0.5重量部以上がさらにいっそう好ましい。結晶核剤の量の下限をこのような範囲とすることで、より高い結晶化温度向上効果が得られる傾向にある。結晶核剤の量の上限としては、5重量部以下が例示でき、3重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。結晶核剤の量の上限をこのような範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物の機械特性が十分に維持される傾向にある。
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体は、結晶核剤以外にも、さらに各種充填材およびその他添加剤を配合した樹脂組成物として使用することもできる。樹脂組成物の製造における配合の方法は特に限定されるものではないが、単軸または2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、およびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して、ポリアリーレンスルフィド共重合体の融解ピーク温度+5~100℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。
充填材としては、例えば、無機充填材や有機充填材が挙げられる。充填材の種類は特定されるものではないが、樹脂組成物としての充填材による補強効果を考慮すると、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状無機充填材が好ましい。炭素繊維は機械特性向上効果のみならず成形品の軽量化効果も有している。また、充填材が炭素繊維の場合、樹脂組成物の機械特性や耐薬品性が向上する効果が、より大きく発現するのでより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。
またポリアリーレンスルフィド共重合体組成物の用途としては、電気・電子部品、音声機器部品、家庭、事務電気製品部品、機械関連部品、光学機器、精密機械関連部品、水廻り部品、自動車・車両関連部品、航空・宇宙関連部品その他の各種用途が例示できる。
以下、本発明の方法を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[官能基含有量の分析]
ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィド共重合体、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物、ポリアリーレンスルフィド共重合体(C)が有するアミノ基量、ならびに隣接する2つの炭素にそれぞれ結合された2つのカルボキシル基および酸無水物基の合計量は、320℃での加熱による溶融状態から急冷して作製した非晶フィルムをFT-IR(日本分光(株)製IR-810型赤外分光光度計)測定し、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収強度、または、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収強度を比較することによって見積もった。
[分子量測定]
数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC-7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1-クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL。
[加熱時の重量減少率の測定]
ポリアリーレンスルフィドの加熱時の重量減少率は、熱重量分析機を用いて下記条件で行った。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約5mg
測定条件
(a)プログラム温度30℃で1分保持
(b)プログラム温度30℃から340℃まで昇温。この際の昇温速度10℃/分。
上記の条件で測定した320℃時点の重量と30℃時点の重量から、以下の式により重量減少率を求めた。
重量減少率(%)=((30℃時点の重量(mg)-320℃時点の重量(mg))/30℃時点の重量(mg))×100。
[ガラス転移点および融点および結晶化温度の測定]
ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)および結晶化温度(Tmc)は、溶融状態から急冷して作成した非晶フィルム約10mgを用い、示差走査熱量計(DSC)により測定した。ガラス転移点は、20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した際に検出されるベースラインシフトの変曲点とした。結晶化温度は、20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した際に検出される結晶化ピーク温度の値とした。融点は、20℃/分の速度で0℃から340℃まで昇温した後、340℃で1分間保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した後、100℃で1分間保持し、再度20℃/分の速度で340℃まで昇温した際に検出される融解ピーク温度の値とした。
装置:TAインスツルメントTA-Q200
キャリアーガス:窒素
サンプルパージ流量:50mL/分。
[参考例1]
撹拌機および底栓弁付きのオートクレーブに、48.4%水硫化ナトリウム7.14kg(61.6モル)、97%水酸化ナトリウム2.87kg(69.3モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)14.57kg(147モル)及びイオン交換水4.19kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水7.88kgおよびNMP0.039kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点で硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本工程後の系内の無機スルフィド化剤は60.2モルであった。
その後、200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)9.45kg(64.3モル)、4-アミノチオフェノール(4-ATP)1.02kg(8.23モル)、NMP2.78kg(28.0モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、撹拌しながら0.6℃/分の速度で260℃まで昇温し、260℃で120分反応した。
反応終了後、直ちにオートクレーブ底栓弁を開放し、内容物を撹拌機付き装置にフラッシュさせ、230℃の撹拌機付き装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。
得られた回収物およびイオン交換水を撹拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過する作業を3回行い、ケークを得た。得られたケークおよびイオン交換水30リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物をフィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥した。
得られたPPS3kgおよびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)30kgを撹拌機付きの容器に投入し、30分間撹拌を行った後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークをイオン交換水30リットルで15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、窒素気流下、120℃で4時間乾燥することで乾燥PPSを得た。アミノ基量は730μmol/g、数平均分子量は1,800、加熱時重量減少率は1wt%であった。
[実施例1]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が0.81となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して撹拌しながら3分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収の比強度は0.64であった。酸無水物基由来の1860cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は97℃、結晶化温度は196℃、融点は266℃であった。結果を表1にまとめた。
[実施例2]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.20となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して撹拌しながら3分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。その後、実施例2の反応に用いた合計量の、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が0.95となるように、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体にさらに参考例1で得られたPPSを加え、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して撹拌しながら3分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収の比強度は0.13であった。酸無水物基由来の1860cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は112℃、結晶化温度は172℃、融点は256℃であった。結果を表1にまとめた。
[比較例1]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が0.98となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、アミノ基由来の3382cm-1における吸収の比強度は0.10であった。酸無水物基由来の1860cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は112℃、結晶化温度は163℃、融点は256℃であった。結果を表1にまとめた。
[実施例3]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.20となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度は1.79であった。アミノ基由来の3382cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は113℃、結晶化温度は206℃、融点は259℃であった。結果を表1にまとめた。
[実施例4]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.03となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度は0.50であった。アミノ基由来の3382cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は113℃、結晶化温度は198℃、融点は256℃であった。結果を表1にまとめた。
[実施例5]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.02となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度は0.38であった。アミノ基由来の3382cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は114℃、結晶化温度は197℃、融点は256℃であった。結果を表1にまとめた。
[実施例6]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.20となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して撹拌しながら3分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。その後、実施例6の反応に用いた合計量の、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.01となるように、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体にさらに参考例1で得られたPPSを加え、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して撹拌しながら3分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度は0.26であった。アミノ基由来の3382cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は114℃、結晶化温度は171℃、融点は254℃であった。結果を表1にまとめた。
[比較例2]
参考例1で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.002となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度は0.18であった。アミノ基由来の3382cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は115℃、結晶化温度は161℃、融点は252℃であった。結果を表1にまとめた。
[参考例2]
参考例2では、国際公開第2019/151288号に開示されている方法により、アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドを得た。
撹拌機付きのオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(70.97モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.4kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.58kg(31.50モル)、およびイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp-ジクロロベンゼン10.24kg(69.63モル)、NMP9.01kg(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1.26kg(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26.3kgのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31.9kgのNMPで洗浄、濾別した。これを、56kgのイオン交換水で数回洗浄、濾別した。70kgのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥してPPSを得た。
得られたPPS80gと4,4’-チオジアニリン(TDA)12gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら180分間加熱を行ってPPSを得た。アミノ基量は1,100μmol/g、数平均分子量は2,300、加熱時重量減少率は7wt%であった。
[比較例3]
参考例2で得られたPPSとピロメリット酸無水物を、ピロメリット酸無水物が有する酸無水物基量/PPSが有するアミノ基量の比が1.02となるように、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま320℃に温調して撹拌しながら20分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体を得た。
FT-IRスペクトルより、得られたポリアリーレンスルフィド共重合体はフェニレンスルフィド単位を構造単位として含有しており、イミド基が導入されていることを確認した。また、FT-IRスペクトルより、アリーレンスルフィド単位のベンゼン環由来の1901cm-1における吸収強度に対する、酸無水物基由来の1860cm-1における吸収の比強度は0.53であった。アミノ基由来の3382cm-1における吸収は見られなかった。DSC測定の結果、ガラス転移点は122℃、結晶化のピークは観察されず、融点は250℃であった。結果を表1にまとめた。
なお、表中のPDAはピロメリット酸無水物のことを指す。
実施例1から6に示すように、本発明では、結晶化温度が165℃以上である、高い結晶性を有するポリアリーレンスルフィド共重合体を得ることができる。
実施例1、実施例2、比較例1のIR測定結果および酸無水物基量/アミノ基量の比の比較から、ポリアリーレンスルフィド共重合体がアミノ基を多く有することで、またそのために酸無水物基量/アミノ基量の比を小さくすることで、より高い結晶性を得られることがわかる。さらに、実施例1と実施例2の結果から、ポリアリーレンスルフィドおよび化合物(B)の加熱は、初めから全量を混合して加熱してもよいし、ポリアリーレンスルフィドの少なくとも一部および化合物(B)の少なくとも一部を混合して加熱した後、残りを混合して加熱してもよいことがわかる。
実施例3から6、比較例2のIR測定結果および酸無水物基量/アミノ基量の比の比較から、ポリアリーレンスルフィド共重合体が酸無水物基を多く有することで、またそのために酸無水物基量/アミノ基量の比を大きくすることで、より高い結晶性を得られることがわかる。さらに、実施例3から5と実施例6の結果から、ポリアリーレンスルフィドおよび化合物(B)の加熱は、初めから全量を混合して加熱してもよいし、ポリアリーレンスルフィドの少なくとも一部および化合物(B)の少なくとも一部を混合して加熱した後、残りを混合して加熱してもよいことがわかる。
また、比較例3が示すように、従来用いられていたポリアリーレンスルフィドの製法を用いた場合には、ポリアリーレンスルフィド共重合体が酸無水物基を多く有しても、またそのために酸無水物基量/アミノ基量の比を大きくしても、結晶化温度は観察されず、結晶性に優れないことがわかる。参考例2のポリアリーレンスルフィドには、加熱時のガス成分となりやすい成分が残存しており、そのような成分もしくはその一部が結晶性に影響したと考えられる。
[実施例7]
実施例2で得られたポリアリーレンスルフィド共重合体とポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製、PEEK 450PF)0.1重量部を、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した後、反応容器内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。反応容器内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して撹拌しながら3分間加熱した後、室温まで冷却してポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得た。
DSC測定の結果、ガラス転移点は112℃、結晶化温度は174℃、融点は256℃であった。結果を表2にまとめた。
[実施例8]
実施例2で得られたポリアリーレンスルフィド共重合体とポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製、PEEK 450PF)0.5重量部を、撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能な反応容器に投入した以外は、実施例7と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得た。
DSC測定の結果、ガラス転移点は112℃、結晶化温度は177℃、融点は255℃であった。結果を表2にまとめた。
[実施例9]
反応容器内の温度を340℃に変更した以外は、実施例8と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得た。
DSC測定の結果、ガラス転移点は112℃、結晶化温度は174℃、融点は255℃であった。結果を表2にまとめた。
[実施例10]
核剤としてタルク(竹原化学工業株式会社製 “ハイトロン”(平均粒径4.0μm))を用いた以外は、実施例8と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得た。
DSC測定の結果、ガラス転移点は113℃、結晶化温度は180℃、融点は255℃であった。結果を表2にまとめた。
[実施例11]
ポリアリーレンスルフィド共重合体として比較例2で得られたポリアリーレンスルフィド共重合体を用いた以外は、実施例9と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得た。
DSC測定の結果、ガラス転移点は116℃、結晶化温度は178℃、融点は253℃であった。結果を表2にまとめた。
[実施例12]
ポリアリーレンスルフィド共重合体として比較例2で得られたポリアリーレンスルフィド共重合体を用いた以外は、実施例10と同様の条件で実施し、ポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得た。
DSC測定の結果、ガラス転移点は114℃、結晶化温度は166℃、融点は252℃であった。結果を表2にまとめた。
なお、表中のPEEKはポリエーテルエーテルケトンのことを指す。
実施例7から12に示すように、本発明では、結晶化温度が165℃以上である、高い結晶性を有するポリアリーレンスルフィド共重合体組成物を得ることができる。
実施例2と実施例7から10の比較から、高い結晶性を示すポリアリーレンスルフィド共重合体がさらに結晶核剤を含有することにより、より高い結晶性が得られることがわかる。実施例7と8の比較から、結晶核剤配合量を増やすことにより、より高い結晶性が得られることがわかる。
比較例2と実施例11、12の比較から、結晶性が不十分であったポリアリーレンスルフィド共重合体に対しても結晶核剤は有効であり、結晶核剤を含有することにより、高い結晶性が得られることがわかる。