図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16と、を備えている。
エンジン12は、公知の内燃機関であって、後述する電子制御装置80によって、車両10に備えられた燃料噴射装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12のトルクであるエンジントルクTeが制御される。
動力伝達装置16は、非回転部材であるケース18内に、エンジン12に連結されたトルクコンバータ20、トルクコンバータ20に連結された自動変速機22等を備えている。又、動力伝達装置16は、変速機出力軸24に連結されたプロペラシャフト26、プロペラシャフト26に連結されたディファレンシャルギヤ28、ディファレンシャルギヤ28に連結された1対のドライブシャフト30等を備えている。変速機出力軸24は、自動変速機22の出力部材である。又、動力伝達装置16は、ケース18内に、エンジン12とトルクコンバータ20とを連結するエンジン連結軸32等を備えている。
トルクコンバータ20は、エンジン連結軸32と連結されたポンプ翼車20a、及び変速機入力軸34と連結されたタービン翼車20bを備えている。変速機入力軸34は、自動変速機22の入力部材である。トルクコンバータ20は、エンジン12からの動力を流体を介してエンジン連結軸32から変速機入力軸34へ伝達する流体式伝動装置である。
トルクコンバータ20は、ポンプ翼車20aとタービン翼車20bとを連結するLUクラッチ36を備えている。LUクラッチ36は、エンジン12と自動変速機22との間の動力伝達経路に設けられた、エンジン12と自動変速機22とを連結する直結クラッチであって、公知のロックアップクラッチであり、例えば油圧式摩擦係合装置である。LUクラッチ36は、LU油圧PRluによりLUクラッチ36のトルク容量であるLUトルクTluが変化させられることで、制御状態が切り替えられる。LU油圧PRluは、車両10に備えられた油圧制御回路52からLUクラッチ36に供給される調圧された係合圧である。
LUクラッチ36の制御状態としては、解放状態(完全解放状態ともいう)、LUクラッチ36が滑りを伴って係合されたスリップ状態、及び係合状態(完全係合状態ともいう)がある。LUクラッチ36が解放状態とされることにより、トルクコンバータ20はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。又、LUクラッチ36が係合状態とされることにより、トルクコンバータ20はポンプ翼車20a及びタービン翼車20bが一体回転させられるロックアップ状態(完全ロックアップ状態ともいう)とされる。
又、動力伝達装置16は、LUクラッチ36と変速機入力軸34との間の動力伝達経路に介在させられたダンパ38を備えている。ダンパ38は、例えば脈動吸収ダンパである。尚、ダンパ38は、エンジン12と自動変速機22との間の動力伝達経路に設けられておれば良い。
自動変速機22は、例えば係合装置CBを備えた公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、複数の公知の油圧式摩擦係合装置を含んでいる。係合装置CBは、各々、CB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態、スリップ状態、解放状態などの制御状態が切り替えられる。CB油圧PRcbは、油圧制御回路52から係合装置CBに供給される調圧された係合圧である。
自動変速機22は、係合装置CBのうちの何れかの係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γ(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかが形成される有段変速機である。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸34の回転速度であり、自動変速機22の入力回転速度である。AT入力回転速度Niは、トルクコンバータ20の出力回転速度であるタービン回転速度Ntと同値である。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸24の回転速度であり、自動変速機22の出力回転速度である。
車両10は、機械式のオイルポンプ54を備えている。オイルポンプ54は、ポンプ翼車20aに連結されており、エンジン12により回転駆動させられて動力伝達装置16にて用いられる作動油OILを吐出する。オイルポンプ54が吐出した作動油OILは、油圧制御回路52へ供給される。油圧制御回路52は、オイルポンプ54が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、LU油圧PRluなどを供給する。
車両10は、更に、エンジン12や自動変速機22の制御などに関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置80を備えている。電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUは、例えばRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。
電子制御装置80には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、入力回転速度センサ62、出力回転速度センサ64、アクセル開度センサ66、スロットル弁開度センサ68、ブレーキセンサ70、油温センサ72など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、AT入力回転速度Ni(=タービン回転速度Nt)、AT出力回転速度No、アクセル開度θacc、スロットル弁開度θth、ブレーキオン信号Bon、作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。エンジン回転速度Neは、エンジン12の回転速度である。AT出力回転速度Noは、車速Vに対応する回転速度である。アクセル開度θaccは、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量である。スロットル弁開度θthは、電子スロットル弁の開度である。ブレーキオン信号Bonは、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号である。作動油温THoilは、作動油OILの温度である。
電子制御装置80からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、油圧制御回路52など)に各種指令信号(例えばエンジン制御指令信号Se、CB油圧制御指令信号Scb、LU油圧制御指令信号Sluなど)が、それぞれ出力される。エンジン制御指令信号Seは、エンジン12を制御する為の指令信号である。CB油圧制御指令信号Scbは、係合装置CBを制御する為の指令信号である。LU油圧制御指令信号Sluは、LUクラッチ36を制御する為の指令信号である。
各油圧制御指令信号Sについて、LU油圧制御指令信号Sluを例示して説明する。電子制御装置80は、LU油圧PRluの指示値として、油圧制御回路52からLU油圧PRluを供給させる為のLUクラッチ36の指示油圧であるLU指示油圧Spluを算出する。電子制御装置80は、LU指示油圧Spluを、油圧制御回路52に備えられた、LU油圧PRluを出力するLUソレノイドSLluを駆動する為のLU指示電流値Siluに変換する。LU指示電流値Siluは、電子制御装置80に備えられた、LUソレノイドSLluを駆動するソレノイド用ドライバに対する指示電流である。LU油圧制御指令信号Sluは、LU指示電流値Siluに基づいて、ソレノイド用ドライバがLUソレノイドSLluを駆動する為の駆動電流又は駆動電圧である。つまり、LU指示油圧Spluは、LU油圧制御指令信号Sluに変換されて油圧制御回路52へ出力される。本実施例では、便宜上、LU指示油圧SpluとLU油圧制御指令信号Sluとを同意に取り扱う。
電子制御装置80は、車両10における各種制御を実現する為に、エンジン制御手段すなわちエンジン制御部82、変速機制御手段すなわち変速機制御部84、及びLUクラッチ制御手段すなわちLUクラッチ制御部86を備えている。
エンジン制御部82は、例えば予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdemを算出する。エンジン制御部82は、伝達損失、補機負荷、変速比γ等を考慮して算出した、要求駆動トルクTrdemを実現する為の要求エンジントルクTereqが得られるように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。
エンジン制御部82は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcにある場合には、エンジン12への燃料供給を停止する高回転時FC制御CNfcを実行する。FC回転速度領域ARfcは、FC回転速度Nefc以下且つFC回転速度Nefc近傍の予め定められた所定高回転領域である。FC回転速度Nefcは、エンジン12の耐久性の上で超えてはいけない程の高回転速度として予め定められたエンジン回転速度Neである。FC回転速度Nefc近傍のエンジン回転速度Neは、エンジン12の耐久性の上で好ましくない高回転速度の範囲として予め定められたエンジン回転速度Neの領域である。
FC回転速度Nefcは、例えばエンジン水温、エンジン12の暖機状態、エンジン12の学習状態などに基づいて変化させられても良い。例えば、エンジン水温が低い場合は、エンジン水温が高い場合に比べて低いFC回転速度Nefcが設定される。又、エンジン12が暖機中である場合は、エンジン12の暖機が完了している場合に比べて低いFC回転速度Nefcが設定される。又、エンジントルクTeの学習が進行していない場合は、エンジントルクTeの学習が進行している場合に比べて低いFC回転速度Nefcが設定される。
変速機制御部84は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機22の変速判断を行い、必要に応じてつまりその変速判断の結果に応じて自動変速機22の変速制御を実行する為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路52へ出力する。
LUクラッチ制御部86は、LUクラッチ36の制御状態を制御する直結クラッチ制御部である。つまり、LUクラッチ制御部86は、解放状態、スリップ状態、及び係合状態のうちの何れかの制御状態となるようにLUクラッチ36を制御する。例えば、LUクラッチ制御部86は、予め定められた関係であるロックアップ領域線図を用いて制御領域の判断を行い、その判断した制御領域に対応する制御状態が実現されるLU油圧PRluをLUクラッチ36へ供給する為のLU油圧制御指令信号Sluを油圧制御回路52へ出力する。前記ロックアップ領域線図は、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、解放状態に対応する解放領域、スリップ状態に対応するスリップ領域、及び係合状態に対応するロックアップ領域を有する所定の関係である。
LUクラッチ制御部86は、制御領域がロックアップ領域であると判断した場合には、LUクラッチ36を係合状態に制御する、すなわちロックアップ制御CNluonを実行する。ロックアップ制御CNluonは、LU入力トルクTinluを伝達可能なLUトルクTluが得られる為のLU油圧PRluを設定してLUクラッチ36を完全係合状態とする制御である。LU入力トルクTinluは、LUクラッチ36への入力トルクであって、例えばエンジントルクTeと同意である。LU入力トルクTinluを伝達可能なLUトルクTluは、例えばLU入力トルクTinluに安全率(>1)を乗算したトルク値である。一方で、LUクラッチ制御部86は、制御領域が解放領域であると判断した場合には、LU油圧PRluをゼロ値に設定してLUクラッチ36を完全解放状態とする。
他方で、LU入力トルクTinluに対してLUトルクTluが小さいと、LUクラッチ36に滑りが生じる。LUクラッチ制御部86は、制御領域がスリップ領域であると判断した場合には、LUクラッチ36をスリップ状態に制御する、すなわちLUスリップ制御CNluspを実行する。LUスリップ制御CNluspは、LU入力トルクTinluに対して、目標LUスリップ量Nslplutを実現させる為のLU油圧PRluを設定してLUクラッチ36をスリップ状態とする制御、つまりLUクラッチ36のスリップ制御である。目標LUスリップ量Nslplutは、LUクラッチ36のスリップ量すなわちLUスリップ量Nslpluの目標値である。LUスリップ量Nslpluは、LUクラッチ36の入出力回転速度差、つまりLU入力回転速度(=エンジン回転速度Ne)とLU出力回転速度(=タービン回転速度Nt)との回転速度差(=Ne-Nt)である。目標LUスリップ量Nslplutは、予め設定された所定入出力回転速度差である。前記ロックアップ領域線図において、スリップ領域は、例えばロックアップ領域と比較して低車速領域にて設定されている。スリップ領域は、ロックアップ制御CNluonの実行が難しい領域でスリップ状態としてエネルギー効率向上やドライバビリティ向上を図る為の領域である。又、スリップ領域は、ドライバビリティやこもり音等(例えばNV(騒音・振動)性能)を考慮して設定されている領域でもある。
LUクラッチ制御部86は、LUスリップ制御CNluspの実行中には、LUスリップ量Nslpluが目標LUスリップ量Nslplutとなるようにフィードバック(=FB)制御によってLU油圧PRluつまりLUトルクTluを補正する。LUクラッチ制御部86は、LU油圧PRluのフィードフォワード(=FF)量としてのFFLU油圧PRluffに、FB量としてのFBLU油圧PRlufbを加えることで、LUトルクTluを補正する。FBLU油圧PRlufbは、FFLU油圧PRluffを補正するLU油圧PRluの補正量である。LUクラッチ制御部86は、例えばLU入力トルクTinluや目標LUスリップ量Nslplutに応じた値が予め定められたマップ又は関数を用いてFFLU油圧PRluffを算出する。上記マップ又は関数は、例えばLU入力トルクTinluが大きい程、FFLU油圧PRluffが大きな値となるように予め定められている。LUクラッチ制御部86は、例えばスリップ量差に基づく、比例項(P成分)、積分項(I成分)、及び微分項(D成分)を有する予め定められたFB制御式を用いてFBLU油圧PRlufbを算出する。上記スリップ量差は、LUスリップ量Nslpluと目標LUスリップ量Nslplutとの差(=Nslplu-Nslplut)である。このように、LUクラッチ制御部86は、LUスリップ量Nslpluが目標LUスリップ量Nslplutとなるように、LU入力トルクTinluに応じてLUクラッチ36をスリップ状態に制御するFB制御によるLUスリップ制御CNluspを実行する。LUスリップ制御CNluspとしては、アクセルオンの加速走行時に実行される加速時スリップ制御、アクセルオフの減速走行時に実行される減速時スリップ制御などがある。
ここで、高回転時FC制御CNfcの実行時には、LU入力トルクTinluつまりエンジントルクTeが断続的に生じるので、ダンパ38等のハード保護の為に、LUクラッチ36を解放状態に制御することが考えられる。しかしながら、高回転時FC制御CNfcの終了後の再加速時には、LUクラッチ36の解放状態からの加速となる。その為、LUクラッチ36を係合状態へ制御するまでに相応の時間を要し、狙いの加速度が得られないおそれがある。
そこで、LUクラッチ制御部86は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づくと想定される場合には、高回転時FC制御CNfcが実行される前からLUスリップ制御CNluspを実行する、つまりFC前スリップ制御CNspbfcを実行する。これにより、トルクコンバータ20がロックアップ状態であるときと同等の動力伝達状態を維持しつつ、高回転時FC制御CNfcが実行されたときにはハード保護を実現することができる。又、LUクラッチ36を完全解放状態としていないので、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcから遠ざかると想定される場合には、LUクラッチ36を速やかに係合状態へ制御することができる。
更に、LUクラッチ制御部86は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入った場合には、LUスリップ制御CNluspにおけるLU油圧PRluを、FC前スリップ制御CNspbfcの場合から切替え可能とするFC時スリップ制御CNspfcを実行する。これにより、高回転時FC制御CNfcの実行中において、LUクラッチ36の完全解放状態と同等のハード保護を実現することができる。又、LUクラッチ36を完全解放状態としていないので、高回転時FC制御CNfcの終了後の再加速時には、LUクラッチ36のスリップ状態からの加速となり、LUクラッチ36を速やかに係合状態へ制御することができて狙いの加速度が得られ易くされる。
図2は、高回転時FC制御CNfcに際して再加速性を向上する為の制御フェーズの遷移の一例を説明する図である。図2において、フェーズ[0]及びフェーズ[4]は、何れも、ロックアップ制御CNluonを実行する定常制御フェーズである。フェーズ[0]のときに遷移条件[1]が成立すると、フェーズ[1]に移行する。フェーズ[1]は、FC前スリップ制御CNspbfcを実行する制御フェーズである。遷移条件[1]は、例えばエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていると判定されたという条件である。フェーズ[1]のときに遷移条件[2]が成立すると、フェーズ[2]に移行する。フェーズ[2]は、FC時スリップ制御CNspfcを実行する制御フェーズである。遷移条件[2]は、例えばエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入ったと判定されたという条件である。フェーズ[2]のときに遷移条件[3]が成立すると、フェーズ[3]に移行する。フェーズ[3]は、FC前スリップ制御CNspbfcを実行する制御フェーズである。遷移条件[3]は、例えばエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcから外れたと判定されたという条件である。フェーズ[3]のときに遷移条件[4]が成立すると、フェーズ[4]に移行する。遷移条件[4]は、例えばエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcから遠ざかっていると判定されたという条件である。
電子制御装置80は、高回転時FC制御CNfcに際して再加速性を向上する制御作動を実現する為に、更に、回転領域判定手段すなわち回転領域判定部88を備えている。
回転領域判定部88は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいているか否かを判定する。回転領域判定部88は、例えばエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに対して所定回転速度低い回転速度以上であるか否かに基づいて、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいているか否かを判定する。回転領域判定部88は、例えばエンジン回転速度NeがFC回転速度Nefcから所定回転速度αを減算した値(=Nefc-α)以上であるか否かに基づいて、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに対して所定回転速度低い回転速度以上であるか否かを判定する。所定回転速度αは、例えば上昇中のエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていることを判断する為の予め定められた閾値である。尚、所定回転速度αは、FC回転速度領域ARfcの下限値に対して減算される閾値として予め定められても良い。
回転領域判定部88は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し易い状態の場合にはエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し難い状態の場合と比較して、所定回転速度αを大きな値に設定する。エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し易い状態は、例えばアクセル開度θaccが大きい状態、又は、自動変速機22のギヤ段がローギヤ段の状態、又は、走行モードが燃費性能よりも動力性能を重視する走行モードの状態である。エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し難い状態は、例えばアクセル開度θaccが小さい状態、又は、自動変速機22のギヤ段がハイギヤ段の状態、又は、走行モードが動力性能よりも燃費性能を重視する走行モードの状態である。自動変速機22のローギヤ段は、変速比γが大きい側のギヤ段すなわち低車速側ギヤ段である。
又、回転領域判定部88は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っているか否かを判定する。
LUクラッチ制御部86は、ロックアップ制御CNluonを実行しているときに、回転領域判定部88によってエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていると判定された場合には、FC前スリップ制御CNspbfcを実行する。FC前スリップ制御CNspbfcは、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによって実行される。
LUクラッチ制御部86は、FC前スリップ制御CNspbfcを実行しているときに、回転領域判定部88によってエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っていると判定された場合には、FC時スリップ制御CNspfcを実行する。FC時スリップ制御CNspfcは、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによって実行されても良い。或いは、FC時スリップ制御CNspfcは、所定条件CDspが成立したか否かに基づいて、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによって実行されたり、FB制御と比べてLU油圧PRluを低下させたLUスリップ制御CNluspによって実行されても良い。
回転領域判定部88は、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っているか否かを判定する際には、所定条件CDspが成立しているか否かを判定する。LU入力トルクTinluが大きいと、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによってFC時スリップ制御CNspfcを実行したとしても、ダンパ38等のハード保護を実現し難い可能性がある。その為、所定条件CDspは、LU入力トルクTinluが所定入力トルクTinluf以上であるという条件である。所定入力トルクTinlufは、例えばダンパ38等のハード保護を実現し難くなる程のLU入力トルクTinluであることを判断する為の予め定められた閾値である。又は、作動油温THoilが低いと、FB制御によるLUスリップ制御CNluspの制御性が悪化し易く、FC時スリップ制御CNspfcを実行したとしても、ダンパ38等のハード保護を実現し難い可能性がある。その為、所定条件CDspは、作動油温THoilが所定油温THoilf以下であるという条件である。所定油温THoilfは、例えばダンパ38等のハード保護を実現し難くなる程の作動油温THoilであることを判断する為の予め定められた閾値である。
LUクラッチ制御部86は、回転領域判定部88によってエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っていると判定された場合に、回転領域判定部88によって所定条件CDspが不成立であるとされたときには、FB制御によるLUスリップ制御CNluspを維持する。一方で、LUクラッチ制御部86は、回転領域判定部88によってエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っていると判定された場合に、回転領域判定部88によって所定条件CDspが成立しているとされたときには、FB制御によるLUスリップ制御CNluspを実行するときよりもLU油圧PRluを低下させる。
LUクラッチ制御部86は、LU油圧PRluを低下させるときには、LUスリップ制御CNluspが維持される範囲で実施する。LUスリップ制御CNluspが維持される範囲は、例えばFB制御によるLUスリップ制御CNluspの実行時のLU油圧PRluを上限油圧とし、LUクラッチ36をパック詰め完了状態とするときのLU油圧PRluを下限油圧とする範囲である。LUクラッチ36のパック詰め完了状態は、LUクラッチ36の摩擦プレート等におけるパッククリアランスが詰められた状態である。LUクラッチ36のパック詰め完了状態は、そのパック詰め完了状態からLU油圧PRluを増大させればLUクラッチ36がLUトルクTluを持ち始める状態である。LUクラッチ36をパック詰め完了状態とするときのLU油圧PRluを下限油圧とすることで、LUクラッチ36を係合状態へ移行するときにLUトルクTluが速やかに上昇させられる。
このように、LUクラッチ制御部86は、回転領域判定部88によってエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っていると判定された場合には、所定条件CDspに基づいて、回転領域判定部88によってエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていると判定された場合よりもLU油圧PRluを、LUトルクTluが速やかに上昇させられるLUクラッチ36のスリップ状態が維持可能な範囲で低下させる。
図3は、電子制御装置80の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、高回転時FC制御CNfcに際して再加速性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図3において、先ず、LUクラッチ制御部86の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、トルクコンバータ20が完全ロックアップ状態とされているか否か、つまりロックアップ制御CNluonが実行されているか否かが判定される。尚、ここでの完全ロックアップ状態には、ロックアップ制御CNluonを実行していても、トルクコンバータ20が僅かにスリップしている状態も含んでいる。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は回転領域判定部88の機能に対応するS20において、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいているか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS20の判断が肯定される場合はLUクラッチ制御部86の機能に対応するS30において、ロックアップ制御CNluonから、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによって実行されるFC前スリップ制御CNspbfcへ移行させられる。アクセルオン時であるので、ここでのLUスリップ制御CNluspは加速時スリップ制御である。次いで、回転領域判定部88の機能に対応するS40において、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っており、且つ、所定条件CDspが成立しているか否かが判定される。このS40の判断が肯定される場合はLUクラッチ制御部86の機能に対応するS50において、FB制御によるLUスリップ制御CNluspと比べてLU油圧PRluを低下させたLUスリップ制御CNluspによってFC時スリップ制御CNspfcが実行される。上記S40の判断が否定される場合はLUクラッチ制御部86の機能に対応するS60において、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによって現在のスリップ状態が維持される。
図4は、図3のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。図4において、ロックアップ制御CNluonの実行中に(t1時点以前、フェーズ[0]参照)、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていると判定されると、FC前スリップ制御CNspbfcが開始される(t1時点参照)。FC前スリップ制御CNspbfcの実行中に(t1時点-t2時点、フェーズ[1]参照)、エンジン回転速度Neが更に上昇してFC回転速度領域ARfcに入ったと判定されると、FC時スリップ制御CNspfcが開始される(t2時点参照)。FC時スリップ制御CNspfcの実行中に(t2時点-t3時点、フェーズ[2]参照)、所定条件CDspが不成立であるときには、実線に示すように、FB制御によるLUスリップ制御CNluspが維持される。FC時スリップ制御CNspfcの実行中に、所定条件CDspが成立しているときには、破線に示すように、FB制御によるLUスリップ制御CNluspと比べてLU油圧PRluを低下させたLUスリップ制御CNluspが実行される。FC時スリップ制御CNspfcの実行中に、エンジン回転速度Neが低下してFC回転速度領域ARfcから外れたと判定されると、FC時スリップ制御CNspfcが終了させられ、FC前スリップ制御CNspbfcと同等のLUスリップ制御CNluspが開始される(t3時点参照)。FC前スリップ制御CNspbfcと同等のLUスリップ制御CNluspの実行中に(t3時点-t4時点、フェーズ[3]参照)、エンジン回転速度Neが更に低下してFC回転速度領域ARfcから遠ざかっていると判定されると、LUスリップ制御CNluspが終了させられ、ロックアップ制御CNluonが開始される(t4時点参照)。これにより、ロックアップ制御CNluonを実行する定常制御に戻される(t4時点以降、フェーズ[4]参照)。
上述のように、本実施例によれば、ロックアップ制御CNluonが実行されているときに、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていると判定された場合には、FC前スリップ制御CNspbfcが実行される。加えて、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っていると判定された場合には、所定条件CDspに基づいて、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいていると判定された場合よりもLU油圧PRluが、LUトルクTluが速やかに上昇させられるLUクラッチ36のスリップ状態が維持可能な範囲で低下させられる。これにより、高回転時FC制御CNfcの実行が予想されるときには事前にLUクラッチ36の係合状態が解除される。又、高回転時FC制御CNfcの実行時には、LUクラッチ36の係合状態が確実に解除されており、ダンパ38等の耐久性の低下が抑制される。加えて、LUクラッチ36の係合状態の解除は、完全に解放状態とするのではなく、LUトルクTluが速やかに上昇させられるスリップ状態が維持可能な範囲で実現されるので、必要に応じてLUクラッチ36を速やかに係合状態へ復帰させることができる。よって、高回転時FC制御CNfcに際して、再加速性を向上することができる。
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに対して所定回転速度低い回転速度以上であるか否かに基づいて、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに近づいているか否かが判定される。これにより、FC前スリップ制御CNspbfcが適切に実行される。
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し易い状態の場合にはエンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し難い状態の場合と比較して、所定回転速度αが大きな値に設定される。これにより、高回転時FC制御CNfcの実行が適切に予想される。
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに到達し易い状態は、アクセル開度θaccが大きい状態、又は、自動変速機22のギヤ段がローギヤ段の状態、又は、走行モードが燃費性能よりも動力性能を重視する走行モードの状態である。これにより、高回転時FC制御CNfcの実行が一層適切に予想される。
また、本実施例によれば、FC前スリップ制御CNspbfcは、FB制御によるLUスリップ制御CNluspによって実行される。又、エンジン回転速度NeがFC回転速度領域ARfcに入っていると判定された場合に、所定条件CDspが不成立のときには、FB制御によるLUスリップ制御CNluspが維持される一方で、所定条件CDspが成立したときには、FB制御によるLUスリップ制御CNluspが実行されるときよりもLU油圧PRluが低下させられる。これにより、高回転時FC制御CNfcの実行が予想されるときにはFC前スリップ制御CNspbfcが適切に実行される。又、高回転時FC制御CNfcの実行時には、LUクラッチ36の係合状態が確実に解除される。加えて、LUクラッチ36の係合状態の解除は、完全に解放状態とするのではなく、LUトルクTluが速やかに上昇させられるスリップ状態が維持可能な範囲で適切に実現される。
また、本実施例によれば、所定条件CDspは、LU入力トルクTinluが所定入力トルクTinluf以上であるという条件である。これにより、高回転時FC制御CNfcの実行時には、ダンパ38等の耐久性の低下が適切に抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、自動変速機22は、公知のベルト式の無段変速機、公知の同期噛合型平行2軸式の自動変速機、公知のDCT(Dual Clutch Transmission)などであっても良い。
また、前述の実施例において、トルクコンバータ20は、トルク増幅作用のないフルードカップリング等の流体式伝動装置に置き換えられても良い。又は、流体式伝動装置は、発進用のクラッチに置き換えられても良い。この場合、このような発進用のクラッチが、エンジンと自動変速機との間の動力伝達経路に設けられた、エンジンと自動変速機とを連結する直結クラッチとして機能する。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。