JP7807841B2 - 植物成長促進組成物 - Google Patents
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Description
特許文献2には、酵母細胞壁分解物を含む、エチレンおよび/またはジャスモン酸シグナル伝達系を活性化させる遺伝子の活性化用組成物について開示されており、酵母細胞壁分解物を植物に与えることにより、植物体の抗菌性や病害予防に関与する植物ディフェンシン遺伝子の発現を活性化させることが報告されている。
特許文献3には、メタノール資化性細菌の細胞壁含有物を穀物類の栽培用植物体に接種することで、穀物類の収量を増加させる方法について開示されている。
[1]
にんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上を有効成分として含む植物成長促進組成物。
[2]
茎葉部若しくは根部の伸張、葉数の増加、開花若しくは結実の促進、花若しくは果実の数の増加、植物体重量若しくは作物収量の増加、緑化、および分蘖の促進からなる群から選択される1種以上の植物成長促進作用を有する、上記[1]記載の植物成長促進組成物。
[3]
環境ストレス耐性向上作用を有する、上記[1]又は[2]に記載の植物成長促進組成物。
[4]
温度ストレス、栄養ストレス、化学的ストレス、光ストレス、乾燥ストレス、pHストレス、塩ストレス、低酸素ストレス、食害ストレス、物理的ストレス、および病害ストレスからなる群から選択される1種以上に対する環境ストレス耐性向上作用を有する、上記[3]記載の植物成長促進組成物。
[5]
ストレス応答系の遺伝子を活性化させる、上記[3]記載の植物成長促進組成物。
[6]
にんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上を有効成分として含む植物成長促進組成物を、植物若しくは植物の生育する土壌又は培養液に使用する、植物成長促進方法。
[7]
培養液又は希釈溶媒に対する前記植物成長促進組成物の使用量が0.001~50質量%または0.001~50体積%またはである、上記[6]記載の植物成長促進方法。
本実施形態における植物成長促進組成物は、にんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上を有効成分として含む。にんじん(Daucus carota subsp. sativus)は、セリ科(Apiaceae)ニンジン属(Daucus)の植物である。具体的にはDaucus carota subsp. sativusが挙げられ、より具体的にはDaucus carota L.,が挙げられる。にんじんの品種及び産地等は特に限定されず、例えば、晩抽天翔、向陽2号、愛紅、れいめい等の品種が挙げられる。
1)根の伸長、根の活着率の向上
2)栄養吸収効率の増大
3)花芽の誘導、開花の促進、結実量の増大
4)糖分など成分の蓄積
5)節水効果の増大
6)カルス化の誘導効果
7)植物体のサイズの向上、中でも、地上部及び地下部の伸長又は肥大
8)傷の修復
すなわち、本実施形態の植物成長促進組成物は、茎葉部若しくは根部の伸張、葉数の増加、開花若しくは結実の促進、花若しくは果実の数の増加、植物体重量若しくは作物収量の増加、緑化、又は分蘖の促進のような生育の促進効果に加えて、上記1)~8)のような作用を有していてもよい。上記1)の作用が発揮されることで、根による栄養の吸収が促進され、植物全体の成長が促進されてもよい。
本実施形態における植物成長促進組成物の栄養ストレス耐性付与効果としては、例えば、植物の栄養源となる化学物質の欠乏状態(栄養不足状態)にある植物に対して正常な生育を促す効果が挙げられる。ここで、栄養不足状態とは、例えば、実施例の表1の試験期の濃度に示される栄養成分未満の状態であってよく、具体的には、各栄養成分の量が、表1の試験期の濃度に示される量の2分の1~3分の1、3分の1~4分の1、4分の1~5分の1、5分の1~6分の1、6分の1~7分の1、7分の1~8分の1程度となっている状態であってよい。なお、表1の試験期の濃度は、イネ等の作物の栽培に一般的に使用される濃度である。
環境ストレスへの応答指標として一般的に知られている遺伝子とは、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)、Ensembl Plants、The Arabidopsis Information Resource(TAIR)、The Rice Annotation Project (RAP)等の公知のデータベースに開示されている遺伝子である。具体的には、高温ストレスへの応答指標として一般的に知られている遺伝子としては、Os01g0135900、Os01g0273500、Os01g0875700、Os02g0753800、Os03g0161900、Os03g0266300、Os03g0426900、Os05g0110100、Os05g0364500、Os05g0460000、Os05g0530400、Os06g0682900、Os06g0716700、Os06g0727200、Os08g0127600、Os08g0191100、Os08g0500700、Os09g0133600、Os11g0216100、Os11g0661200等が挙げられる。例えば、本実施形態における植物成長促進組成物を植物に施用することで、高温で馴化した該植物における、Os01g0135900、Os01g0273500、Os01g0875700、Os02g0753800、Os03g0161900、Os03g0266300、Os03g0426900、Os05g0110100、Os05g0364500、Os05g0460000、Os05g0530400、Os06g0682900、Os06g0716700、Os06g0727200、Os08g0127600、Os08g0191100、Os08g0500700、Os09g0133600、Os11g0216100、Os11g0661200等の遺伝子の発現量が、コントロールと比べて上昇する。
植物成長促進組成物の調製方法としては、例えば、にんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上を得た後、必要に応じて上述した農業上許容される成分と混合することにより得ることができる。
にんじんエキスの取得方法は特に限定されず、一般的な植物エキスを抽出するための方法を用いることができる。具体的には、例えば、にんじんの葉、茎、皮、又は根を加熱又は破砕した後、夾雑物を除去することでにんじんエキス原料を得る工程と、前記工程で得られたにんじんエキス原料を濃縮してにんじん濃縮液を得る工程と、前記工程で得られたにんじん濃縮液を分画することで、特定の成分を含むにんじんエキスを得る工程と、を含む方法により取得することができる。また、にんじんエキスの取得における各工程を経たにんじんの葉、茎、根、皮、種子、花、及び果実からなる群から選択される1種以上を原料として、にんじんエキスを取得することもできる。例えば、にんじんエキス原料を得る工程で除去された夾雑物などのにんじん残渣から、上記と同様の方法でにんじんエキス原料やにんじん濃縮液を得て、そのにんじんエキス原料やにんじん濃縮液から、上記と同様の方法でにんじんエキスを得ることができる。あるいは、任意のにんじん加工品の製造過程で得られた夾雑物などのにんじん残渣を原料として、にんじんエキスを取得してもよい。にんじんエキス原料、又はにんじん濃縮液を、そのままにんじんエキスとして用いてもよい。各工程において、又は、各工程の後に、にんじんエキス原料、にんじん濃縮液、又はにんじんエキスを加熱又は加圧してもよい。加熱する場合、加熱温度や加熱時間等の諸条件は、使用するにんじんの品種、部位、状態等によって適宜決定することができる。
にんじん粉末の取得方法は特に限定されず、にんじんエキス原料、にんじん濃縮液、若しくはにんじんエキスを取得する際に生じるような夾雑物などのにんじん残渣、にんじんエキス原料、にんじん濃縮液、にんじんエキス、又はにんじん(にんじんの葉、茎、皮、果梗、種子、及び実からなる群から選択される1種以上)の新鮮物または凍結物を、熱風乾燥や風乾、乾熱乾燥、減圧乾燥などの手法により乾燥させた後、粉末状に破砕することにより取得することができる。
にんじんの破砕は、にんじん新鮮物やにんじん乾物を用いて、例えばミキサーにより行うことができる。粉砕されたにんじんは濾布、濾紙などを用いて濾過することで夾雑物が取り除かれたにんじんエキス原料を得る。濾過を行う際には、有機溶媒等の抽出溶媒をあらかじめ加えてもよい。また、濾過に代えて、遠心分離機で上清を取得する方法で夾雑物を取り除いてもよい。
得られたにんじんエキス原料は減圧濃縮法、凍結濃縮法、膜濃縮法などを用いて濃縮することでにんじん濃縮液を得ることができる。濃縮する際の濃縮率は、好ましくは3~30倍であり、より好ましくは4~20倍である。濃縮率が5倍以上であると、植物成長促進組成物の植物への添加量が少なくなるためハンドリング性が向上し、運搬コストが削減される傾向にあり、30倍以下であると、植物成長促進組成物中の沈殿物が少なく取扱いが容易となる傾向にある。
なお、植物成長促進組成物の調製においては、にんじんエキス原料の濃縮は必須ではなく、得られたにんじんエキス原料をそのまま以下の分画工程に供してもよい。
得られたにんじん濃縮液は溶媒抽出などにより分画することで、特定の成分を含むにんじんエキスを得ることができる。分画工程では、例えば、液液分配によって親水性画分と疎水性画分が得られる。さらにカラムを通すことでより精製された画分を取得できる。
本実施形態における植物成長促進方法は、上述したにんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上を有効成分として含む組成物を、植物若しくは植物の生育する土壌又は培養液に使用することで、植物の成長を促進させる方法である。当該方法においては、植物成長促進組成物を、発芽前又は発芽後を含む任意の生育段階にある植物又はその部分(例えば、種子、幼苗又は成熟した植物)に施用することができる。また、植物自体だけでなく、植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することができる。生育段階にある植物又は植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に植物成長促進組成物を施用することにより、植物の成長を促進させることができる。
イネの色と形から根部を特定し、特定された根部の重量を微量天秤で瓶量した。
20.0gのにんじんの葉を5cm間隔で切った後、乾燥させ、ミキサーで破砕してにんじん粉末を得た。にんじん粉末から親水性画分を得て、にんじんエキスとした。
表1に示す育苗期の培養液でイネを生育させた。その後、表1に示す試験期の培養液900mLにイネを移し、得られたにんじんエキスを0.1125mL添加(0.0125体積%)し、イネに与える影響を調査した。その結果、にんじんエキスを添加していない場合と比較してイネ根部の重量が72.0%増加しており、イネの根張りの向上効果が見られた(図1)。
なお、育苗期の栄養成分の濃度は、イネの生育に十分である試験期の濃度の6分の1~7分の1程度であったことから、にんじんエキスを添加されたイネは栄養不足状態であった。
100.0gのにんじんの葉を5cm間隔で切った後、100mLの超純水に加えてミキサーで破砕し、夾雑物を取り除いて得られたにんじんエキス原料をにんじんエキスとした。
実施例1と同様に育苗させたイネを、表1に示す試験期の培養液900mLに移し、上記で得られたにんじんエキスを培養液900mLに0.036mL添加(0.004体積%)し、イネに与える影響を調査した。その結果、にんじんエキスを添加していない場合と比較してイネ根部の重量が18.4%増加しており、イネの根張りの向上効果が見られた。また、イネ地上部の重量が10.2%増加していた(図2)。
100.0gのにんじんの葉を5cm間隔で切った後、100mLの超純水を加え、夾雑物を取り除いてにんじんエキス原料を抽出した。得られたにんじんエキス原料を濃縮することでにんじんエキスを得た。
実施例1と同様に育苗させたイネを、表1に示す試験期の培養液900mLに移し、上記で得られたにんじんエキスを培養液900mLに0.225mL添加(0.025体積%)し、イネに与える影響を調査した。その結果、にんじんエキスを添加していない場合と比較してイネ根部の重量が16.6%増加しており、イネの根張りの向上効果が見られた(図3)。
イネの遺伝子発現の変動についても評価を実施した。
・イネの植物体の調製
実施例1と同様に育苗させたイネを、表1に示す試験期の培養液900mLに移し、実施例3に用いたにんじんエキスを培養液900mLに0.225mL添加(0.025体積%)し、イネを栽培した。
・RNA抽出
Maxwell RSC Plant RNA Kit(Promega)およびMaxwell RSC Instrument(Promega)を用いて、手順書通りにRNAサンプルを取得した。
・RNAの品質確認
測定機器:Agilent 5400 Bioanalyzer <5312AA> (Agilent Technologies社)、試薬kit:Agilent RNA kit(15nt)<DNF-471> (Agilent Technologies社)および解析ソフト:ProSize(AgilentTechnologies社)を用いて、RNAサンプルの品質に問題ないことを確認した後、ライブラリ調製に用いた。
・ライブラリ調製
NEBNext Ultra II RNA Library Prep Kit for Illuminaを用いて次世代シーケンサーDNBSEQ T7用ライブラリを以下の工程に従い調製した。
1 オリゴ(dT)マグネティックビーズによるmRNAの精製
2 断片化
3 ランダムプライマーを用いた1本鎖cDNAならびに2本鎖cDNAの合成
4 エンドリペア、ポリアデニル化、アダプターの結合、サイズによる選択、増幅を実施
・シーケンス解析
機器:DNBSEQ T7 (MGI社)
・シーケンス(概略)
DNBSEQ T7を用いて以下の工程に従いシーケンスを行った。
1 シーケンス試薬の添加
2 1塩基伸長反応
3 未反応塩基の除去
4 蛍光シグナルの取り込み
5 保護基と蛍光の除去
6 2Cycle…3Cycle…とサイクルを繰り返し、300cycleまで実施
(C)データ解析
・1次データ解析
解析用コンピューターのOS:Ubuntu Desktop 22.04.4 LTS
解析ソフトウェア:FastQC、hisat2、samtools、HTSeq、DESeq2
上記のソフトウェアを使用して解析を実施した。
1 リードのクオリティの確認
FastQCを用いて、得られたfastqファイルに含まれている塩基のクオリティを確認した。
2 マッピング・ソーティング
hisat2を用いて、Oryza sativaリファレンスゲノムOryza sativa Japonica Group (assembly IRGSP-1.0)にマッピングした。続いて、samtoolsを用いて、ファイルをソートし、二値データに変換した。
3 リードカウント
HTSeqの中のhtseq-countを用いてマッピングされたリード数を計数した。
4 統計解析
統計パッケージR上でDESeq2パッケージを用いて、対照区とにんじんエキス添加区における遺伝子発現量を比較した。
・3次データ解析
先行研究にて、各種の環境ストレス耐性に関与すると報告されている遺伝子をイネアノテーションプロジェクト(https://rapdb.dna.affrc.go.jp/)から検索した。検索した遺伝子を本実験にて作成した遺伝子発現リストから検索した。
・解析対象遺伝子の選定と遺伝子発現量の描画
既知のデータベースに存在する各種の環境ストレス耐性遺伝子を収集した。その後、発現量が上昇した遺伝子のリストから各種ストレス耐性遺伝子を抽出し、それらの発現量をヒートマップならびに棒グラフとして表した。図4、6、8及び10のヒートマップにおけるCTSは対照区、CRSはにんじんエキス添加区を示す。
Os01g0135900、Os01g0875700、Os02g0753800、Os08g0500700とOs11g0661200の発現量が対照区よりも増大する傾向にあった(図4)。中でも、高温ストレス耐性遺伝子であるOs08g0500700の発現量が地上部で増大していた(図5)。これらの高温ストレス耐性に関連する分子について、これまでに下記の内容が報告されているため、高温ストレス耐性に寄与していると考えられる。Os08g0500700と相同な分子は高温ストレスによって発現が誘導され、生化学的な解析から植物が高温条件下でも生存するために重要な役割を果たしていることが示唆されている(参考文献1)。この遺伝子ならびに類似遺伝子は、シロイヌナズナやイネ以外にも、ブドウ、ローズガム、Amborella trichopoda、オレンジ、ゼニゴケ等において広く存在していることが報告されている(参考文献2)。
参考文献2:https://phylogenes.arabidopsis.org/tree/PTHR11528
参考文献3:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jac.12533
参考文献4:https://www.arabidopsis.org/locus?key=30587
参考文献5:https://www.arabidopsis.org/locus?key=29007
参考文献6:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pce.13437
Claims (6)
- にんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上のみを有効成分として含むバイオスティミュラント。
- 茎葉部若しくは根部の伸張、葉数の増加、開花若しくは結実の促進、花若しくは果実の数の増加、植物体重量若しくは作物収量の増加、緑化、および分蘖の促進からなる群から選択される1種以上の植物成長促進作用を有する、請求項1記載のバイオスティミュラント。
- 温度ストレス、栄養ストレス、化学的ストレス、光ストレス、乾燥ストレス、pHストレス、塩ストレス、低酸素ストレス、食害ストレス、物理的ストレス、および病害ストレスからなる群から選択される1種以上に対するストレス耐性向上作用を有する、請求項1又は2に記載のバイオスティミュラント。
- ストレス応答系の遺伝子を活性化させる、請求項1又は2に記載のバイオスティミュラント。
- にんじんエキスおよびにんじん粉末からなる群から選択される1種以上のみを有効成分として含むバイオスティミュラントを、植物若しくは植物の生育する土壌又は培養液に使用する、環境ストレス耐性向上方法。
- 培養液又は希釈溶媒に対する前記バイオスティミュラントの使用量が0.001~50質量%または0.001~50体積%である、請求項5記載の環境ストレス耐性向上方法。
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