(本開示の一態様に至った知見)
上述のように、手をガラス面等に接触させずに撮像した画像では、高コントラストの指紋画像が得ることが難しい。そのため、このような指紋画像を認証情報として用いると誤認証が発生しやすくなる。そこで、発明者は、種々の波長の照明光を用いた指紋の撮像実験を繰り返すことにより、以下の知見を得た。
図1は、Thorlabs社製の中心波長の異なるLED(light emitting diode)をそれぞれ用いた照明光を指に照射して撮像した結果を示す図である。図1には、発光の中心波長がそれぞれ970、1050、1200、1300、1450、1550および1650ナノメートルのLEDを用いて撮像した結果である、複数の指紋画像が示されている。図1における指紋画像に付されている数値は、LEDの中心波長である。また、図2は、Thorlabs社が参考のために提供している、図1に示される指紋画像の撮像に用いたLEDの発光スペクトルを示す図である。図1に示される指紋画像の撮像において、照明光は、指の指紋がある側の斜め前方から照射し、撮像は、指の正面から行った。
図1に示されるように、中心波長が970、1050、1200および1300ナノメートルのLEDを用いた場合、各指紋画像のコントラストは低い。これに対し、中心波長が1450、1550、1650ナノメートルのLEDを用いた場合には、各指紋画像のコントラストは高い。つまり、指紋の像が明瞭に撮像されている。また、中心波長が1450、1550、1650ナノメートルのLEDを用いた場合には、指紋画像のコントラストが高い以外にも、汗の出る孔である汗孔の像が明瞭に撮像されている。具体的には、指紋画像における白い点が汗孔である。また、中心波長が1450、1550、1650ナノメートルのLEDを用いた場合、指紋と同様に、肌のしわの像も明瞭に撮像されている。
同様の撮像結果は、上述のLEDの代わりに、照明光に幅広い波長範囲を含むハロゲンランプを用い、撮像装置側に特定の波長を透過させるバンドパスフィルターを装着し、バンドパスフィルターの透過波長を変更し、バンドパスフィルターを透過する指からの反射光を撮像する試験においても得られた。
さらに、このコントラスト差等が生じる原因について本発明者が検討をおこなった結果、皮膚内部に侵入し再度放出される肌内光と呼ばれる散乱反射光成分が上記現象の原因であることを解明した。
図3は、指表面に照射された光の経路を示す概念図である。
図3に示されるように、指Fの表面に照射された光1101の一部は、表面で反射され表面反射光1102となる。表面反射光1102は、光1101が当たりやすい凸部において多くなり、凸部の陰1200となる凹部においては少なくなる。よって、表面反射光1102の成分は、指の凹凸情報である指紋についての情報を多く含むことになる。
一方、指Fの表面に照射された光1101の一部は、指Fの内部に侵入する。指Fの内部に侵入した光1105は、何度も散乱されることで指内部に広がり、様々な方向に向かう散乱光1104となる。散乱光1104の一部は、指Fの表面から再度放出される。この指Fの表面から再度放出される光は、肌内光1103とも呼ばれる。肌内光1103は、光1101の指Fによる散乱反射光である。肌内光1103は、指Fの内部での散乱により、もともと入射した指Fの表面の情報を失っている光である。また、肌内光1103は、指Fの凸部と凹部とでほとんど同じように放射される。そのため、肌内光1103は、表面反射光1102のような指の凹凸情報である指紋についての情報をほとんど含まないことになる。
以上のような光の経路であることにより、ガラス面等へ非接触の状態の指の指紋の像は、表面反射光1102成分が多いほど明瞭に撮像され、肌内光1103成分が多いほど不明瞭に撮像される。
次に、発明者は、肌内光強度の波長依存性を調べるため、下記の実験を行った。
図4は、波長を変えて肌に光を入射させた場合の、肌内光の強度の波長依存性を示す図である。具体的には、図4には、肌に押し当てた直径400マイクロメートルの光ファイバーコアから肌に光を侵入させ、光を侵入させた光ファイバーコアの中心から中心距離がそれぞれ0.4ミリメートル、0.8ミリメートルおよび1.2ミリメートル離れ、肌に押し当てた直径400マイクロメートルの光ファイバーコアで肌内光を受光した際の強度の波長依存性が示されている。
図4から明らかなように、1380ナノメートル未満の波長に比べて、1380ナノメートル以上の波長において肌内光は顕著に減衰している。
また、図5は、水の吸収係数の波長依存性を示す図である。図5に示される水の吸収係数の波長依存性と、図4に示される肌内光の波長依存性と比較すると、高い相関があることがわかる。つまり、肌内光の減衰は、主として皮膚に含まれる水分による共鳴吸収の影響であると考えられる。
図5に示される水の吸収係数は、1380ナノメートル以上の波長において、1380ナノメートルより短い波長における値以上の値をとる。つまり、肌内光は、1380ナノメートル以上の波長であれば、1380ナノメートル未満の波長よりも強度が低くなると言える。なお、図5で示される水の吸収係数は、1450ナノメートルの波長よりも長くなると低下しているが、水の吸収係数は、1600ナノメートルから1700ナノメートル付近の波長で極小値となり、1600ナノメートル以上の波長でも、1380ナノメートルの波長での値よりも高い値をとる。
また、肌内光成分は、上述のように指内部での水による吸収に強い影響を受ける一方、表面反射光成分は、肌内部に侵入しないため、水による吸収にあまり影響を受けない。そのため、肌内光成分が顕著に減衰している1380ナノメートル以上の波長においては、指に照射した光の指による反射光のうち、撮像されるのは表面反射光成分が主となる。よって、その撮像により得られる指紋画像は、認証に利用できる表面の凹凸の情報をより多く含む。このように、発明者は、1380ナノメートル以上の波長の光を用いて撮像することにより、誤認証が生じにくくなり、より精度よく、または、高速に認証を行うことが可能になることを見出した。これらのことは、指の像を撮像して指紋画像を取得する場合だけでなく、手のひらの像を撮像して掌紋画像を取得する場合にも同様である。
以下、このような知見のもとに着想された本開示の実施の形態について説明する。
本開示の一態様の概要は以下の通りである。
本開示の一態様に係る非接触認証システムは、1380ナノメートル以上の波長範囲において光成分を含む照明光を、手のうちの物体に接触していない部分に照射する1以上の照明装置と、前記手の前記部分において前記照明光を反射することにより生じた反射光における、前記波長範囲の光成分を撮像することで、指紋画像および掌紋画像のうちの少なくとも一方を認証情報として取得する撮像装置とを備える。
このように、撮像装置は、1380ナノメートル以上の波長範囲に光成分を有する、物体に非接触状態の手において反射した反射光を撮像して、認証情報を取得する。そのため、肌内光の影響が少ないことで手の表面の凹凸の情報を多く含む認証情報を取得できる。このようにして取得された認証情報を用いて認証が行われることにより、誤認証が発生しにくくなる。よって、本態様に係る非接触認証システムは、誤認証の発生を抑制できる認証情報を、物体に接触していない手から取得できる。
また、例えば、前記認証情報は、汗孔の位置を示す情報を含んでもよい。
これにより、認証精度の向上が期待できる汗孔の位置を示す情報が認証情報に含まれるため、このような認証情報が認証に用いられることにより誤認証の発生をさらに抑制できる。
また、例えば、前記撮像装置は光電変換層を含んでもよく、前記光電変換層の感度は、1380ナノメートル以上の波長範囲においてピークを有してもよい。
これにより、1380ナノメートル以上の波長範囲での撮像装置の感度を高めることができる。
また、例えば、前記光電変換層は、量子ドットを含んでもよい。
量子ドットは、急峻な吸光ピークを有しうるため、1380ナノメートル以上の特定の波長に高い感度を有し、特定の波長とは異なる波長には低い感度を有する撮像装置が実現できる。
また、例えば、前記光電変換層は、半導体型カーボンナノチューブを含んでもよい。
半導体型カーボンナノチューブは、急峻な吸光ピークを有しうるため、1380ナノメートル以上の特定の波長に高い感度を有し、特定の波長とは異なる波長には低い感度を有する撮像装置が実現できる。
また、例えば、前記撮像装置により撮像される前記光成分は、地表における太陽光が有意に減衰している波長を含んでいてもよい。言い換えると、前記撮像装置は、1380ナノメートル以上の波長範囲の中で、地表における太陽光の減衰波長を含む波長範囲の光成分を撮像することで前記認証情報を取得してもよい。なお、地表における太陽光の減衰波長とは、大気圏外における太陽光強度と地表における太陽光強度を比較した場合、大気による吸収により後者が減衰している割合が有意な値を持つ波長の意味である。
これにより、太陽光の影響が低減され、反射光による影響が相対的に大きい認証情報を取得できるため、このような認証情報が認証に用いられることにより誤認証の発生をさらに抑制できる。
また、例えば、前記撮像装置は光学フィルターを含んでもよく、1380ナノメートル未満の波長を有する光に対する前記光学フィルターの透過率は、1380ナノメートル以上の波長を有する光に対する前記光学フィルターの透過率よりも低くてもよい。
これにより、1380ナノメートル以上の波長範囲での撮像装置の感度を相対的に高めることができる。
また、例えば、前記1以上の照明装置は、前記照明光の発光強度を周期的に変化させてもよく、前記撮像装置は、前記照明光の発光強度の変化に対応して、前記撮像装置の感度を周期的に変化させてもよい。
これにより、照明光の発光強度の位相と撮像装置の感度の位相との関係を変化させて撮像された画像を認証情報として取得できる。つまり、照明光の手による反射光の影響が大きい画像と小さい画像とを取得できるため、これらの画像の差分画像を取得する等によって、環境光の影響を低減できる認証情報を取得できる。
また、例えば、前記1以上の照明装置は、第1方向及び前記第1方向と異なる第2方向から前記照明光を前記手に照射してもよく、前記撮像装置は、前記第1方向から前記手に照射された前記照明光に起因する前記反射光及び前記第2方向から前記手に照射された前記照明光に起因する前記反射光を撮像してもよい。
このように、照射方向が異なる照明光の手による反射光を撮像することで、手の凹凸の陰影の形成され方が変化し、手の凹凸の陰影に由来するコントラストが高い画像が撮像される領域が異なる画像が取得できる。よって、より広い範囲で手の表面の凹凸の情報を多く含む認証情報を取得できる。
また、例えば、前記1以上の照明装置は、前記第1方向から前記照明光を前記手に照射する第1照明装置及び前記第2方向から前記照明光を前記手に照射する第2照明装置を含んでもよく、前記第1照明装置が前記照明光を前記手に照射するタイミングは、前記第2照明装置が前記照明光を前記手に照射するタイミングと異なっていてもよい。
これにより、簡易な構成で互いに異なる複数の照射方向から手に照明光を照射することができる。
また、例えば、前記1以上の照明装置は、前記照明光が前記手に照射される方向を変化させる調整部を含んでもよく、前記1以上の照明装置は、前記調整部を用いて、前記第1方向及び前記第2方向から前記照明光を前記手に照射してもよい。
これにより、照明装置の数を増やすことなく互いに異なる複数の照射方向から手に照明光を照射することができる。
また、例えば、前記撮像装置により撮像される前記光成分は、前記反射光における、1380ナノメートル以上2500ナノメートル未満の波長範囲の光成分であってもよい。言い換えると、前記撮像装置は、前記照明光の前記反射光における、1380ナノメートル以上2500ナノメートル未満の波長範囲の光成分を撮像することで、前記指紋画像および前記掌紋画像のうちの少なくとも一方を前記認証情報として取得してもよい。
これにより、2500ナノメートル未満の波長範囲には、撮像装置における熱雑音、および、被写体からが熱的に放射する成分等が少なく、明瞭な認証情報を取得できる。
本開示の一態様に係る認証方法は、1380ナノメートル以上の波長範囲において光成分を含む照明光を手のうちの物体に接触していない部分に照射することと、前記手の前記部分において前記照明光を反射することにより生じた反射光における、前記波長範囲の光成分を撮像することで、指紋画像および掌紋画像のうちの少なくとも一方を認証情報として取得することとを含む。
これにより、上記非接触認証システムと同様に、物体に非接触状態の手から、肌内光の影響の少ないことで手の表面の凹凸の情報を多く含む認証情報を取得できる。よって、本態様に係る認証方法は、誤認証の発生を抑制できる認証情報を、物体に接触していない手から取得できる。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の本実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
また、本明細書において、要素間の関係性を示す用語、および、要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
[1.非接触認証システムの構成]
まず、本実施の形態に係る非接触認証システムの構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る非接触認証システム100の概略構成を示すブロック図である。
図6に示されるように、非接触認証システム100は、照明装置110と、撮像装置120と、管理装置130とを備える。非接触認証システム100は、物体に接触していない手から認証情報を取得する。具体的には、非接触認証システム100は、物体に接触していない手の少なくとも一部から認証情報を取得する。図6に示される例では、非接触認証システム100は、被認証者の手の一部である指Fから認証情報を取得する。認証情報は、指紋画像、掌紋画像、または指紋画像及び掌紋画像の両方である。言い換えると、認証情報は、指、手のひら、または指及び手のひらの両方の像が映る画像である。以下では、非接触認証システム100が、物体に接触していない指Fから認証情報、つまり指紋画像を取得する例について説明する。
非接触認証システム100において、照明装置110は、プリズムのガラス面等に接触していない被写体である指Fに対して照明光150を照射する。そして、撮像装置120は、照明光150の指Fによる反射光160を撮像することで、指紋画像を認証情報として取得する。反射光160は、上述のように、指Fによる表面反射光と指Fによる散乱反射光である肌内光とを含む。以下では、照明装置110は、何の物体にも接触していない指Fに照明光150を照射する場合について説明する。なお、指Fは、物体に接触している部分があってもよい。この場合、照明装置110は、少なくとも、指Fの物体に接触していない部分に照明光150を照射する。撮像装置120は、指Fの物体に接触していない部分からの、照明光150の反射光160を撮像する。
管理装置130は、例えば、照明装置110および撮像装置120の動作の制御、ならびに、撮像装置120によって取得される認証情報に関する各種情報処理を行う。
以下、非接触認証システム100の各構成要素の詳細について説明する。
[1.1.照明装置]
照明装置110は、例えば、光源111と照明光学系112と光学フィルター113とを有する。
照明装置110は、被写体である指Fに、1380ナノメートル以上の波長範囲に光成分を有する照明光150を照射する。照明光150は、例えば、1380ナノメートル以上2500ナノメートル未満の波長を有する光成分を有する。なお、本明細書において、可視光成分を含まない光も、便宜上、「照明光」と表現する。
照明光150は、1380ナノメートル未満の波長の光成分を含んでいてもよい。照明装置110は、例えば、主たる光成分として1380ナノメートル以上の波長範囲に光成分を有する照明光150を照射する。照明光150が、主たる光成分として1380ナノメートル以上の波長範囲に光成分を有するとは、照明光150の発光スペクトルにおいて、詳細を後述する撮像装置120が感度を有する波長範囲にわたって、発光強度と撮像素子121の量子効率との積を積分した値に対して、1380ナノメートル以上の波長で発光強度と撮像素子121の量子効率との積を積分した値が50%以上であることを意味する。なお、感度を有する波長範囲とは、撮像装置120が、撮像結果に影響を及ぼす量子効率を有する波長範囲、例えば、0ではない量子効率を有する波長範囲を意味する。
撮像装置120が感度を有する波長範囲は、おもに撮像素子121に用いられる光電変換材料と光学フィルター123とにより定まる。例えば、光電変換材料として一般的なインジウムガリウムヒ素化合物を用いた撮像素子の場合は、感度を有する波長範囲は、おおむね1700ナノメートル以下である。光電変換材料として硫化鉛をコアとして含む量子ドットを用いた撮像素子の場合は、量子ドットの粒径等により異なるが、感度を有する波長範囲は、おおむね1600ナノメートル以下である。
照明光150は、撮像素子121が感度を有さない波長範囲に光成分を持ってもよい。照明光150は、(1)撮像素子121が感度を有する波長範囲の光成分であって、波長が1380ナノメートル以上の光成分、(2)撮像素子121が感度を有する波長範囲の光成分であって、波長が1380ナノメートル未満の光成分、および、(3)撮像素子121が感度を有さない波長範囲の光成分の3種類を含みうる。照明光150の発光スペクトルにおいて、撮像素子121が感度を有する波長範囲であって1380ナノメートル以上の波長範囲で発光強度と撮像素子121の量子効率との積を積分した値は、撮像素子121が感度を有する波長範囲であって1380ナノメートル未満の波長範囲で発光強度と撮像素子121の量子効率との積を積分した値と同じか、より大きい。照明光150における(3)の光成分の割合については、特に限定されない。
そのため、撮像素子121が、波長1380ナノメートル以上にのみ有意な感度を有する場合には、照明光150は、波長1380ナノメートル以上に撮像に十分な強度の光成分を有していればよい。例えば、キセノンランプの出す光のように、紫外線から遠赤外線までの幅広い波長範囲の光成分を含んでもよい。
照明装置110は、ガラス等に押し付けられていない、いわゆる非接触状態の指Fの指紋がある領域を照明するように配置される。照明光150が照射される指Fは、何の物体にも接触せず、例えば、大気中に露出している。また、指Fに照射された照明光150の指F表面による反射光160が、撮像装置120に入射するように照明装置110は配置される。
また、照明装置110は、例えば、指紋領域の凹部である指紋線間の溝が、指紋領域の凸部である指紋線により陰となるような角度で照明光150を照射するように配置される。つまり、照明装置110は、例えば、指紋線間の溝の底部に対して垂直ではなく、斜め方向から照明光150を照射するように配置される。
また、照明装置110による照明光150の照射方向と、撮像装置120による撮像方向とは、例えば、互いに異なっている。なお、照明装置110による照明光150の照射方向と、撮像装置120による撮像方向とは、同一の方向であってもよい。
光源111は、1380ナノメートル以上の波長に光成分、言い換えると発光強度を有する光を射出する。光源111が射出する光は、1380ナノメートル未満の波長の光成分を含んでもよい。
光源111は、例えば、1380ナノメートル以上の波長の光成分と1380ナノメートル未満の波長の光成分の双方を含む幅広い波長範囲の光を射出する光源である。このような光源111としては、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプおよびスーパーコンティニューム光源等が挙げられる。
また、光源111は、1380ナノメートル以上の波長範囲において、特定の波長範囲に偏った光成分を有する光を射出する光源であってもよい。光源111は、例えば、1380ナノメートル以上の波長範囲に光成分の中心波長を有し、発光スペクトルにおける光成分の半値幅が数百ナノメートル以下の範囲の光を射出する。このような光源111としては、例えば、LED、レーザーダイオードおよびスーパールミネッセントダイオード等が挙げられる。具体的には、例えば、図2に発光スペクトルが示されているThorlabs社製のM1450L3は、中心波長が約1450ナノメートルであり、光成分の半値幅が約100ナノメートルである。光源111には、M1450L3が用いられてもよい。また、例えば、光源111には、光成分の中心波長が1550ナノメートルであり、光成分の半値幅が1ナノメートル以下のレーザーダイオードが用いられてもよい。
照明光学系112は、光源111が射出する光を被写体に照射する機能を有する。照明光学系112は、光源111が射出する光が入射する位置に配置される。照明光学系112は、例えば、レンズおよび鏡等で構成される。なお、砲弾型発光ダイオードのように、光を放射する方向が制限された光源111が用いられる場合には、照明光学系112は、照明装置110に備えられていなくてもよい。また、照明光学系112は、必要に応じてシャッター、および絞り等を含んでいてもよい。
光学フィルター113は、光源111が射出する光から、1380ナノメートル未満の波長の光成分を低減する機能を有する。光学フィルター113は、光源111が射出する光の光路上に配置される。光学フィルター113は、例えば、光源111と照明光学系112との間に配置されるが、照明光学系112と指Fとの間に位置するように配置されてもよい。
光学フィルター113としては、例えば、誘電体多層膜から構成された干渉フィルター、および、色ガラスなどから構成された吸収フィルター等が挙げられる。光学フィルター113は、1380ナノメートル以上の波長の光に対する透過率よりも1380ナノメートル未満の波長の光に対する透過率が低いロングパスフィルターであってもよく、1380ナノメートル以上の特定の中心波長前後の範囲において光の透過率が有意に高い波長範囲を有するバンドパスフィルターでもよい。バンドパスフィルターが有意に高い透過率を有する波長範囲は、撮像装置120が特に高い感度を有する波長と一致していてもよい。例えば、撮像装置120の撮像素子121は、バンドパスフィルターが有意に高い透過率を有する波長範囲に感度ピークを有する。なお、光源111が主たる光成分として1380ナノメートル以上の波長に光成分を有する光を射出する場合には、光学フィルター113は、照明装置110に備えられていなくてもよい。
[1.2.撮像装置]
撮像装置120は、例えば、撮像素子121と、撮像光学系122と、光学フィルター123とを有する。撮像装置120は、1380ナノメートル以上の波長に感度を有する。撮像装置120は、例えば、撮像素子121が1380ナノメートル以上の波長に感度を有することで、1380ナノメートル以上の波長の光を撮像する。
撮像装置120は、照明光150を照射された非接触状態の指の凸部である指紋線からの反射光160が入射する位置に配置される。
撮像装置120は、照明光150で照明された非接触状態の指Fの指紋がある領域からの反射光160における1380ナノメートル以上の波長範囲の光成分を撮像する。また、撮像装置120は、1380ナノメートル以上の波長範囲の中で、地表における太陽光の減衰ピークを含む波長範囲の光成分を撮像してもよい。太陽光の減衰ピークを含む波長範囲の詳細については後述する。また、撮像装置120は、反射光160における1380ナノメートル以上2500ナノメートル未満の波長範囲の光成分を撮像してもよい。
また、撮像装置120は、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として反射光160を撮像してもよい。撮像装置120は、例えば、反射光160を、1380ナノメートル以上2500ナノメートル未満の波長範囲を主たる撮像成分として撮像する。ここで、主たる撮像成分とは、以下の意味である。
撮像素子121は、光子の入射により信号電荷を発生させる機能を有する。撮像装置120は、撮像素子121によって反射光160を撮像する。撮像素子121は、1380ナノメートル以上の波長の光の入射によって撮像成分である信号電荷を発生させる。つまり、撮像素子121は、1380ナノメートル以上の波長に感度を有する。この時、光子1つに対して発生させる信号電荷の割合を量子効率と呼ぶ。量子効率は、波長依存性を有する。また、撮像素子121に入射する光子の量(つまり、反射光160の光成分)も、波長依存性を有する。そのため、ある波長の光が発生させる信号電荷量は式1を満たす。(ある波長の光が発生させる信号電荷量)=(ある波長における光子の量)×(ある波長における量子効率)・・・式1
ここで、撮像素子121に反射光160が入射したときに発生する全信号電荷量は、反射光160に関して、式1を全波長範囲に渡って積分した値である。当該全波長範囲は、撮像の対象となる光の波長の全範囲を意味し、例えば、撮像素子121が0でない量子効率を有する全ての波長範囲である。
式1の値が大きい波長の光は、式1の値が小さい波長の光よりもより多くの信号電荷を発生させる、つまり、撮像結果により大きな影響を与える。主たる撮像成分とするための波長範囲とは、信号電荷を主として発生させている波長範囲を意味する。反射光160を、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像するとは、例えば、1380ナノメートル以上の波長範囲の反射光160によって発生する信号電荷量が、反射光160によって発生する全信号電荷量に対して50%以上であることを意味し、90%以上であることを意味してもよい。
上述のように、撮像装置120は、反射光160を、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像する。式1から明らかなように、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分とするためには、照明光150が1380ナノメートル以上の波長に光成分を有することと、撮像素子121が1380ナノメートル以上の波長において0でない量子効率を有することとが必要である。例えば、1380ナノメートル未満の波長の光に対する撮像素子121の量子効率よりも、1380ナノメートル以上の波長の光に対する撮像素子121の量子効率が高い。これは、撮像素子121の量子効率の波長依存性において、1380ナノメートル未満の波長で量子効率を積分した値よりも、1380ナノメートル以上の波長で量子効率を積分した値が大きいことを意味する。また、撮像素子121の量子効率の波長依存性において、380ナノメートル以上1380ナノメートル未満の波長で量子効率を積分した値よりも、1380ナノメートル以上2500ナノメートル未満の波長で量子効率を積分した値が大きくてもよい。また、撮像素子121が高い感度、つまり、高い量子効率を有する波長と、照明光150が大きな光成分を持つ波長を一致させてもよい。
撮像装置120が主たる撮像成分として撮像を行う波長範囲は、例えば、2500ナノメートル未満の近赤外領域の範囲である。波長2500ナノメートル以上の中赤外領域および4000ナノメートル以上の遠赤外領域は、撮像素子121における熱雑音が多く、また、被写体そのものが熱的に放射する成分が多くなる。そのため、中赤外領域または遠赤外領域において撮像を行うと、明瞭な認証情報の取得が困難になる可能性がある。
撮像素子121は、例えば、光子を電荷に変換する光電変換材料、および、光電変換材料で生成した電荷を信号電荷として読み出すための周辺回路等を含む。撮像素子121が、1380ナノメートル以上の波長に感度を有するための光電変換材料としては、例えば、インジウムガリウムヒ素化合物、硫化鉛もしくはセレン化鉛をコアとして含む量子ドット、および半導体型カーボンナノチューブ等が挙げられる。
撮像素子121は、例えば、光電変換材料を含む光電変換層を含む光電変換素子を有する積層型イメージセンサである。図7は、撮像素子121が有する光電変換素子125の概略構成の一例を示す断面図である。図7に示されるように、光電変換素子125は、画素電極127と、画素電極127に対向して配置される対向電極128と、画素電極127と対向電極128との間に位置する光電変換層126とを含む。
光電変換層126は、入射した光を吸収し、信号電荷として正孔-電子対を生成する光電変換材料を含む。光電変換材料は、例えば、1380ナノメートル以上の波長の光を吸収する半導体性の無機材料、または、半導体性の有機材料である。光電変換層126は、例えば、光電変換材料として、量子ドット、半導体型カーボンナノチューブ、または量子ドット及び半導体型カーボンナノチューブの両方を含む。
半導体量子ドットおよび半導体型カーボンナノチューブは、急峻な吸光ピークを有する。また、量子ドットの吸光ピーク波長は、半導体量子ドットの材料および粒径で制御可能である。半導体型カーボンナノチューブの吸光ピーク波長は、半導体型カーボンナノチューブのカイラリティにより制御可能である。そのため、半導体量子ドットおよび半導体型カーボンナノチューブのうちの少なくとも一方が光電変換材料として用いられることで、感度を有する波長を容易に調整できるため、特定の波長に高い感度を有し、特定の波長とは異なる波長には低い感度を有する撮像素子121が実現できる。例えば、光電変換層126が1380ナノメートル以上の波長に吸光ピークを有する量子ドットおよび半導体型カーボンナノチューブのうちの少なくとも一方を含むことで、1380ナノメートル以上の波長に高い感度を有し、1380ナノメートル未満の波長に低い感度を有する撮像素子121を実現できる。
画素電極127は、光電変換層126で生成された信号電荷を捕集するための電極である。撮像素子121の周辺回路は、画素電極127によって捕集された信号電荷を読み出す。画素電極127は、導電性材料を用いて形成されている。導電性材料は、例えば、アルミニウム、銅などの金属、金属窒化物、または、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンである。
対向電極128は、例えば、透明な導電性材料から形成される透明電極である。対向電極128は、光電変換層126において光が入射される側に配置される。したがって、光電変換層126には、対向電極128を透過した光が入射する。なお、本明細書における「透明」は、検出しようとする波長範囲の光の少なくとも一部が透過することを意味する。
対向電極128には、電圧が印加される。対向電極128に印加する電圧を調整することにより、対向電極128と画素電極127との電位差を所望の電位差に設定および維持することができる。対向電極128は、例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnOなどの透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conducting Oxide)を用いて形成される。
このように、積層型イメージセンサでは、画素電極127の電位に対する対向電極128の電位が制御されることにより、光電変換によって光電変換層126内に生じた正孔-電子対のうち正孔および電子のいずれか一方を、信号電荷として画素電極127によって捕集することができる。
撮像素子121は、例えば、それぞれ、信号電荷を読み出す複数の画素を有し、複数の画素それぞれに光電変換素子125が設けられる。この場合、画素電極127は、複数の画素ごとに設けられるが、光電変換層126および対向電極128は、複数の画素にまたがって設けられていてもよい。
なお、光電変換素子125は、光電変換層126と画素電極127との間、光電変換層と対向電極128との間、または光電変換層126と画素電極127との間および光電変換層と対向電極128との間の両方に位置する、電荷輸送層、電荷ブロッキング層およびバッファ層等の他の層を含んでいてもよい。
再び図6を参照し、撮像光学系122は、被写体の像を撮像素子121上に結ぶ機能を有する。撮像光学系122は、撮像素子121における反射光160の入射側に配置される。撮像光学系122は、撮像光学系122に入射した反射光160を撮像素子121へ入射させる。撮像光学系122は、例えば、レンズおよび曲面ミラー等で構成される。撮像光学系122には、例えば、主たる撮像成分として撮像を行う波長範囲において、良好な透過率と結像性能とを有するものが選択される。
光学フィルター123は、例えば、1380ナノメートル以上の波長の光成分を透過させ、1380ナノメートル未満の波長の光成分を遮断あるいは減衰させる。つまり、光学フィルター123は、反射光160から、1380ナノメートル未満の波長の光成分を低減する機能を有する。光学フィルター123は、撮像光学系122と撮像素子121との間、または、撮像光学系122における反射光160の入射側に配置される。
光学フィルター123は、例えば、1380ナノメートル以上の波長の光に対する透過率よりも1380ナノメートル未満の波長の光に対する透過率が低いロングパスフィルターである。光学フィルター123としては、例えば、誘電体多層膜から構成された干渉フィルター、および、色ガラスなどから構成された吸収フィルター等が挙げられる。
また、光学フィルター123は、1380ナノメートル以上の特定の中心波長前後の範囲にのみ高い光の透過率を有するバンドパスフィルターであってもよい。バンドパスフィルターにおける特定の中心波長は、照明光150が大きな光成分を有する波長とほぼ一致していてもよい。例えば、バンドパスフィルターにおける特定の中心波長前後の範囲に照明光150の光成分のピーク波長が含まれていてもよい。また、照明装置110の光学フィルター113がバンドパスフィルターである場合、光学フィルター113および光学フィルター123それぞれのバンドパスフィルターにおける特定の中心波長は同じであってもよい。なお、撮像素子121が1380ナノメートル以上にのみ高い感度を有する場合等には、光学フィルター123は、撮像装置120に備えられていなくてもよい。
このように、撮像装置120が光学フィルター123を有することにより、撮像素子121に到達する1380ナノメートル未満の波長の光成分を減らすことができる。そのため、屋外のように、照明装置110が発した照明光150の指Fによる反射光160以外の光、例えば太陽光および環境照明光等が多い状況において、1380ナノメートル未満の波長の光が撮像素子121に入射する割合を減らすことができる。
なお、撮像素子121は、それぞれ、信号電荷を読み出す複数の画素を有し、その一部の画素のみが1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像してもよい。例えば、撮像素子121は、R(赤)画素、G(緑)画素、B(青)画素およびIR(赤外線)画素の4種類の画素を有し、IR画素のみによって読み出された信号電荷に基づく情報を用いて、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像してもよい。また、可視光を撮像するR画素、G画素およびB画素によって読み出された信号電荷に基づく情報は、認証すべき被写体の有無の確認に用いてもよい。また、IR画素とそれ以外の画素との撮像結果を比較することで、被写体が本当の生体の指であるか、あるいは偽の指であるかを判定してもよい。偽の指の判定方法の詳細については、その他の実施の形態において説明する。
[1.3.撮像における波長の範囲]
本実施の形態に係る非接触認証システム100において、撮像装置120は、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像する。非接触認証システム100では、このような波長範囲を主たる撮像成分として撮像をおこなうように、照明装置110の光源111、および、撮像装置120の撮像素子121等が選択される。また、非接触認証システム100では、このような波長範囲を主たる撮像成分として撮像をおこなうように、照明光150の波長範囲を制限する光学フィルター113、および、撮像波長範囲を制限する光学フィルター123が選択されてもよい。
また、撮像装置120は、主たる撮像成分とする1380ナノメートル以上の波長範囲の中で、特定の波長範囲を主たる撮像成分として撮像してもよい。特定の波長範囲は、例えば、以下の観点から選択される。
第1の観点は、太陽光強度である。図8は、地表における太陽光強度の波長依存性を示す図である。図8に示されるように、地表に届いている太陽光強度は、波長により大きな変化を示す。具体的には、地表に届いている太陽光強度は、1380ナノメートル以上の波長範囲においては、1380ナノメートルから1500ナノメートルの波長範囲、および、1780ナノメートルから1990ナノメートルの波長範囲において、強い減衰を示している。これは、太陽光が大気に吸収されたためである。このような太陽光が減衰した波長を利用することで、撮像素子121に太陽光成分が入射する割合を減ずることができる。撮像装置120は、例えば、地表における太陽光の減衰している波長を含む波長範囲を主たる撮像成分として撮像する。その結果、撮像装置120による撮像は、反射光160により行われる割合が高くなる。また、太陽光の減衰は、大気中の水分による吸収の影響が大きいため、太陽光強度が低くなっている波長では、皮膚の水分の吸収の影響で、肌内光も少なくなりやすい。よって、環境光および肌内光の影響が低減され、より意図した撮像が可能になり指紋画像のコントラストを向上させることができる。
太陽光の影響は、例えば、撮像装置120が有する光学フィルター123により調整可能である。太陽光の影響は、例えば、光学フィルター123がバンドパスフィルターである場合、バンドパスフィルターの透過帯の中心波長および半値幅により調整できる。
例えば、透過帯の半値幅が約10ナノメートルのバンドパスフィルターを使用した場合、透過帯の中心波長を、1380ナノメートルから1420ナノメートルの波長範囲、または、1820ナノメートルから1940ナノメートルの波長範囲にすることで、バンドパスフィルターを透過する太陽光の強度を、バンドパスフィルターの中心波長が可視域である場合に比べ約1/10以下とすることができる。
また、同様に、透過帯の半値幅が約50ナノメートルのバンドパスフィルターを使用した場合、透過帯の中心波長を1380ナノメートルから1430ナノメートルの波長範囲にすることで、バンドパスフィルターを透過する太陽光の強度を、バンドパスフィルターの中心波長が可視域である場合に比べ約1/10以下とすることができる。
また、上述の太陽光の減衰ピーク波長を含む波長範囲を、撮像装置120における主たる撮像成分とするために、照明装置110の光源111には、当該波長範囲に発光ピークを有する発光ダイオード、レーザーダイオードまたはスーパールミネッセントダイオードが用いられてもよい。また、光学フィルター123が上述のバンドパスフィルターである場合、照明装置110の光源111は、当該バンドパスフィルターの透過帯において発光ピークを有していてもよい。
第2の観点は、アイセーフである。光源111がレーザーダイオードである場合には、安全性の観点から放射できる強度に制限がある。安全性の観点から許容される強度は波長に依存する。例えば、1400ナノメートルから2600ナノメートルの波長範囲のレーザー光は、眼球での吸収が大きく網膜に与える影響が少ない。そのため、許容される強度がそれ以外の波長のレーザー光よりも高い。高出力の光源111を用いるほど、撮像装置120がより短時間でノイズの少ない画像を取得できる。よって、撮像装置120は、例えば、光源111として用いるレーザーダイオードが射出するレーザー光の波長範囲を主たる撮像成分として撮像する。例えば、1550ナノメートルの波長を有するレーザー光を射出するレーザーダイオードは、アイセーフであり、高出力のものが入手しやすい。
第3の観点は、撮像素子121の感度である。上述のように、撮像素子121に用いられる光電変換材料として、量子ドットまたは半導体型カーボンナノチューブが用いられることで、特定の波長に高い感度を有し、特定の波長とは異なる波長には低い感度を有する撮像素子121が実現できる。そのため、撮像装置120は、例えば、光電変換材料の吸光ピークに由来する吸光の波長範囲を主たる撮像成分として撮像する。例えば、半導体型カーボンナノチューブは、カイラリティとよばれる物理量により急峻な吸光ピーク波長である共鳴波長が異なるという特徴を持つ。単一のカイラリティを有する半導体型カーボンナノチューブの共鳴は、数十ナノメートルから百ナノメートル程度の狭い半値幅を持つため、光電変換材料として半導体型カーボンナノチューブを用いることにより、共鳴波長に由来する吸光の波長範囲で特異的に高い感度を有する撮像素子121が実現できる。
例えば、カイラリティ(9,8)の半導体型カーボンナノチューブは、共鳴波長が約1450ナノメートルであり、カイラリティ(10,6)の半導体型カーボンナノチューブは共鳴波長が約1400ナノメートルである。このように共鳴波長が1380ナノメートル以上の半導体型カーボンナノチューブを光電変換材料として利用し、光源111の射出する光の波長のピークをその共鳴波長に合わせることで、共鳴波長近傍以外の波長の環境光の影響を低減することができる。
半導体型カーボンナノチューブを光電変換材料として用いた撮像素子の詳細については、本発明者による特許文献2に詳細な記載がある。
[1.4.管理装置等その他の構成]
管理装置130は、例えば、制御部131と、抽出部132と、認証部133と、記憶部135とを有するコンピュータである。
制御部131は、照明装置110および撮像装置120の動作を制御するための処理部である。制御部131は、照明装置110および撮像装置120に対して各種制御信号等を出力する。
抽出部132は、撮像結果(つまり指紋画像等)である認証情報から特徴的な情報を抽出するための処理部である。
認証部133は、抽出部132が抽出した情報と過去に登録された情報、例えば、記憶部135に登録された情報との比較、および、撮像装置120が撮像した画像の比較等を行うことで、判定および個人認証等を行う処理部である。
制御部131、抽出部132および認証部133等の処理部は、例えば、1つまたは複数のプロセッサによって実現され、マイクロコンピュータまたは専用回路等によって実現されてもよい。
記憶部135は、撮像結果および処理部における処理に用いる情報を記憶するための記憶装置である。また、記憶部135には、制御部131、抽出部132および認証部133等の処理部が実行するプログラムが記憶される。記憶部135は、例えば、半導体メモリまたはHDD(Hard Disk Drive)等により実現される。
なお、管理装置130の各構成要素は複数の装置に分かれて備えられていてもよく、管理装置130の構成要素の少なくとも1つは、照明装置110または撮像装置120に備えられてもよい。
また、非接触認証システム100は、人感センサ等の手を検知するためのセンサをさらに備えていてもよい。また、非接触認証システム100は、撮像装置120をセンサとして用いてもよい。例えば、制御部131は、センサの検知結果を取得し、センサが指Fを検知したことをトリガーとして、照明装置110による照明光150の照射および撮像装置120による撮像を開始させてもよい。
[2.非接触認証システムの動作例]
次に、本実施の形態に係る非接触認証システム100の動作について説明する。具体的には、物体に接触していない手から認証情報を取得する非接触認証システム100が実施する認証方法について説明する。図9は、本実施の形態に係る非接触認証システム100の動作例を示すフローチャートである。
図9に示されるように、まず、照明装置110は、1380ナノメートル以上の波長に光成分を有する照明光150を指Fに向け照射する(ステップS11)。照明装置110は、例えば、制御部131による制御、または、ユーザからの操作に基づいて、照明光150を照射する。なお、照明装置110は、非接触認証システム100の動作中、常時、照明光150を照射していてもよい。
次に、撮像装置120は、指Fに照射された照明光150の指Fにおける反射により生じた反射光160を、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像する(ステップS12)。撮像装置120は、例えば、制御部131による制御、または、ユーザからの操作に基づいて、反射光160を撮像する。これにより、撮像装置120は、認証情報として、撮像結果である指紋画像を取得する。また、指紋画像には、図1に示される画像を用いて説明したような指Fにおける汗孔の位置を示す情報が含まれていてもよい。撮像装置120は、例えば、取得した指紋画像を管理装置130へ出力する。
次に、管理装置130の抽出部132は、撮像装置120から指紋画像を取得し、認証に用いられる指Fの特徴を示す情報である特徴情報を抽出する(ステップS13)。抽出部132は、例えば、指紋の模様、指紋の分岐点などの分布、および、汗孔の分布などのうちの少なくとも1つの情報を特徴情報として抽出する。
次に、認証部133は、抽出部132が抽出した特徴情報に基づいて、認証を行う(ステップS14)。例えば、記憶部135には、認証候補者を示す情報と特徴情報とが対応付けられて記録されており、認証部133は、抽出部132が抽出した特徴情報と、記憶部135に記録されている特徴情報との照合を行うことで個人認証を行う。認証部133は、例えば、認証した結果を被認証者に通知するための情報を出力する。ステップS13からステップS14における特徴情報の抽出および特徴情報の照合等については、公知の指紋認証技術が用いられうる。
なお、ステップS13からステップS14の処理は、外部の装置によって行われてもよい。
以上のように、非接触認証システム100において、撮像装置120は1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として、物体に非接触状態の指Fによる反射光160を撮像して、指紋画像を認証情報として取得する。そのため、肌内光の影響が少ないことで指Fの指紋の凹凸の情報を多く含む認証情報を取得できる。例えば、撮像装置120によってコントラストの高い指紋画像が撮像される。このようにして取得された指紋画像を用いて、認証部133が認証を行うことにより、誤認証が発生しにくくなる。このように、非接触認証システム100は、誤認証の発生を抑制できる認証情報を、物体に接触していない指Fから取得できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る非接触認証システムについて説明する。実施の形態2では、複数の照明装置を備える非接触認証システムの例について説明する。以下の実施の形態2の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡素化する。
[1.非接触認証システムの構成]
図10は、本実施の形態に係る非接触認証システム200の概略構成を示すブロック図である。図10に示されるように、非接触認証システム200は、実施の形態1に係る非接触認証システム100と比較して、照明装置110の代わりに複数の照明装置として照明装置110Aおよび照明装置110Bを備える点で相違する。つまり、実施の形態2に係る非接触認証システム200は、複数の照明装置である照明装置110Aおよび照明装置110Bと、撮像装置120と、管理装置130とを備える。
照明装置110Aおよび照明装置110Bは、それぞれ、照明装置110と同様に、光源111と、照明光学系112と、光学フィルター113とを有する。照明装置110Aは、照明光150Aを指Fに照射し、照明装置110Bは、照明光150Aとは照射方向の異なる照明光150Bを指Fに照射する。照明装置110Aおよび照明装置110Bは、互いに異なる方向から照明光150Aおよび照明光150Bを指Fに照射する。なお、非接触認証システム200が備える複数の照明装置の数は、図10で示される例では2つであるが、3つ以上であってもよい。また、照明装置110Aおよび照明装置110Bは、共通の1つの筐体等に収められた装置であってもよい。
非接触認証システム200において、撮像装置120は、照明光150Aの指Fによる反射光160A、および、照明光150Bの指Fによる反射光160Bをそれぞれ撮像する。
このような構成により、1つの照射方向から照明光150が照射された実施の形態1とは異なり、本実施の形態に係る非接触認証システム200では、複数の照射方向から照明光150Aおよび照明光150Bが照射される。また、非接触認証システム200において、照明光を照射する照明装置は、順次切り替え可能であり、照明装置110Aおよび照明装置110Bは、それぞれ照明光150Aと照明光150Bとを異なるタイミングで指Fに照射する。非接触認証システム200では、照明装置110Aおよび照明装置110Bは、例えば、制御部131の制御、または、ユーザの操作に基づいて、照明光150Aと照明光150Bとを異なるタイミングで指Fに照射する。
非接触認証システム200が互いに異なる複数の照射方向から照明光150Aおよび照明光150Bを順次切り替えて照射することで、以下のような利点が生じる。
上記で図3を用いて説明したように、指紋の像が明瞭に撮像され、コントラストが向上するのは、指表面の凸部に照明光が照射され、かつ、指表面の凹部が陰となっている場合である。
図11は、指表面に照明光が照射される状況を示す概念図である。図11においては、指Fの延びる方向(図11における縦方向)に対して斜め方向から照射する照明光が矢印で示されている。図11に示されるように、何の物体にも接触していない非接触状態の指Fは、立体的な曲面を構成している。ここで、図11に示される照明光の照射方向である場合には、指Fにおいて、第1の凸部411、第2の凸部412および第3の凸部413には照明光が良く当たる状況である。一方、指Fにおいて、第4の凸部414および第5の凸部415には照明光がほとんど当たっていない。
また、指Fにおいて、第1の凹部421には遮るものがないため照明光が当たっている。一方、指Fにおいて、第2の凹部422は第2の凸部412に照明光を遮られ、第3の凹部423は第3の凸部413に照明光を遮られるため、第2の凹部422および第3の凹部423には、照明光が当たらない。また、第4の凹部424には、周辺の凸部を含め照明光が当たっていない。
指紋画像のコントラストが高くなるように、指Fの像が最も明瞭に撮像される指Fの領域は、照明光の当たる凸部に挟まれた、照明光の当たらない凹部である。図11に示される状況では第2の凹部422近傍の像が、最も明瞭に撮像される。
このように、指紋画像のコントラストは、指Fの立体形状および指紋の立体形状に対する照明光の照射方向に依存する。そのため、照明光の照射方向を変更することで、指Fにおいて照明されている部分、および、凹部に陰が生じる指Fの部分の位置を変更し、指紋画像のコントラストが高い領域を変更することができる。よって、照明光の照射方向を順次変更すれば、指Fの広い範囲にわたって指紋画像を高いコントラストで取得することが可能になる。図10では、照明装置の数が2つである例を示したが、より多くの照明装置を備えて、照明光の照射方向をより多く変更できるほど高コントラストで撮像できる指Fの範囲が広がることは明らかである。
また、照明光の照射方向の変更による指紋のコントラスト変化は、指Fと指紋が立体的であることに起因している。そのため、平坦な紙に印刷した偽の指紋像、または、液晶ディスプレイ等に表示した偽の指紋像では、このようなコントラスト変化は生じない。よって、照明光の照射方向の変更によって変化する指紋画像のコントラストの変化に関する情報を、偽の指紋による不正認証を抑制するための、偽の指紋であるか否かの判定に用いることも可能である。
[2.非接触認証システムの動作例]
次に、本実施の形態に係る非接触認証システム200の動作について説明する。図12は、本実施の形態に係る非接触認証システム200の動作例を示すフローチャートである。
図12に示されるように、まず、第1の照明装置である照明装置110Aは、第1の照明光である照明光150Aを指Fに向け照射する(ステップS21)。そして、撮像装置120は、指Fに照射された照明光150Aの指Fにおける反射によって生じた反射光160Aを撮像する(ステップS22)。これにより、撮像装置120は、認証情報として、撮像結果である第1の指紋画像を取得する。撮像装置120は、例えば、取得した第1の指紋画像を管理装置130へ出力する。管理装置130の抽出部132は、撮像装置120から第1の指紋画像を取得し、記憶部135に記録する。
次に、第2の照明装置である照明装置110Bは、第1の照明光とは照射方向の異なる第2の照明光である照明光150Bを指Fに向け照射する(ステップS23)。また、この際、照明装置110Aは、消灯し、照明光150Aを指Fに照射しない。そして、撮像装置120は、指Fに照射された照明光150Bの指Fにおける反射によって生じた反射光160Bを撮像する(ステップS24)。これにより、撮像装置120は、認証情報として、撮像結果である第2の指紋画像を取得する。撮像装置120は、例えば、取得した第2の指紋画像を管理装置130へ出力する。管理装置130の抽出部132は、撮像装置120から第2の指紋画像を取得し、記憶部135に記録する。
次に、抽出部132は、記憶部135に記録した第1の指紋画像および第2の指紋画像から、特徴情報を抽出する(ステップS25)。抽出部132は、第1の指紋画像と第2の指紋画像とを比較し、各画像のコントラスト情報などに基づいて、特徴情報を抽出する領域を決定する。例えば、抽出部132は、第1の指紋画像と第2の指紋画像とを比較して、それぞれの画像について、他方の画像よりもコントラストが高い領域、つまり、特徴情報となる指紋の模様等が明瞭に撮像されている領域を決定し、決定した領域から特徴情報を抽出する。抽出部132は、例えば、第1の指紋画像および第2の指紋画像をそれぞれ複数の区画に分割し、同じ位置の区画同士のコントラスト値を比較することで、それぞれの画像について、他方の画像よりもコントラスト値が高い区画を抽出する。また、抽出部132は、第1の指紋画像と第2の指紋画像との合成画像を生成し、合成画像から特徴情報を抽出してもよい。これにより、単一の照射方向から指Fに照射した照明光の指Fによる反射光を撮像した指紋画像を用いた場合よりも、広い範囲から認証に用いられる特徴情報を抽出することができる。
次に、認証部133は、抽出部132が抽出した特徴情報に基づいて、認証を行う(ステップS26)。ステップS26では、例えば、上述のステップS14と同様の処理が行われる。
なお、ステップS25において、抽出部132は、さらに、第1の指紋画像と第2の指紋画像とを比較し、撮像された指が実際の生体の指であるか、平面に印刷または表示された偽の指であるかを判定してもよい。抽出部132は、例えば、第1の指紋画像と第2の指紋画像とを比較し、第1の指紋画像と第2の指紋画像とが所定の類似度以上である場合には偽の指であると判定し、所定の類似度未満である場合には、生体の指であると判定する。抽出部132は、例えば、判定した結果を被認証者に通知するための情報を出力する。
[3.変形例]
次に、実施の形態2の変形例に係る非接触認証システムについて説明する。実施の形態2では、複数の照明装置から照明光が照射されることで、互いに異なる複数の照射方向から照明光を指に照射したが、実施の形態2の変形例では、照明装置による照明光の照射方向を変化させることで、互いに異なる複数の照射方向から照明光を指に照射する。
図13は、本変形例に係る非接触認証システム200Aの概略構成を示すブロック図である。図13に示されるように、非接触認証システム200Aは、実施の形態1に係る非接触認証システム100と比較して、照明装置110の代わりに照明装置210を備える点で相違する。つまり、実施の形態2の変形例に係る非接触認証システム200Aは、照明装置210と、撮像装置120と、管理装置130とを備える。
照明装置210は、照射する照明光250の照射方向を変更できる装置である。照明装置210は、照明装置110と同様の光源111、照明光学系112および光学フィルター113に加え、照明光250の指Fに対する照射方向を調整するための調整部211をさらに有する。
調整部211は、照明光250の指Fに対する照射方向を変化させる。調整部211は、例えば、照明装置210を可動させるための機構を有する。これにより、照明装置210は、指Fに対して、照明光250の照射方向が変化するように移動する。また、調整部211は、例えば、照明光学系112を可動させるための機構を有していてもよい。これにより、照明光学系112が光源111から射出される光の光路を変更することで、照明光250の照射方向が変化する。調整部211は、例えば、照明装置210の筐体または照明光学系112に接続されたアクチュエータまたはモータ等の駆動装置等で構成される。また、調整部211は、手動で照明光250の照射方向を変化させるための可動軸および支持部材、または、スライダ等で構成されていてもよい。
非接触認証システム200Aの動作では、図12に示されるフローチャートのステップS21において、照明装置210は、第1の照明光として照明光250を指Fに向け照射する。また、ステップS23において、照明装置210は、調整部211が照明光250の照射方向を変化させることで、第1の照明光とは照射方向の異なる第2の照明光となるように照明光250を照射する。調整部211は、例えば、管理装置130の制御部131の制御、または、ユーザからの操作に基づいて、照明光250の照射方向を変化させる。これにより、撮像装置120は、反射光260を撮像して、第1の指紋画像および第2の指紋画像を取得する。その他のステップについては、非接触認証システム200と同様の動作が行われる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る非接触認証システムについて説明する。実施の形態3では、変調照明機能を有する照明装置と感度変調機能を有する撮像装置とを備える非接触認証システムの例について説明する。以下の実施の形態3の説明において、実施の形態1および実施の形態2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡素化する。
[1.非接触認証システムの構成]
図14は、本実施の形態に係る非接触認証システム300の概略構成を示すブロック図である。図14に示されるように、非接触認証システム300は、実施の形態1に係る非接触認証システム100と比較して、照明装置110および撮像装置120の代わりに照明光350の発光強度を周期的に変化させる照明装置310および感度を周期的に変化させる撮像装置320を備える点で相違する。つまり、非接触認証システム300は、照明装置310と、撮像装置320と、管理装置130とを備える。なお、本明細書において、発光強度または感度を周期的に変化させることを、変調すると記載する場合がある。
照明装置310は、光源311と、照明光学系312と、光学フィルター113とを有する。また、撮像装置320は、撮像素子321と、撮像光学系322と、光学フィルター123とを備える。照明装置310が照射する照明光350の波長、および、撮像装置320が主たる撮像成分として撮像する波長範囲等についての要件は、基本的に実施の形態1に係る非接触認証システム100と同様である。
照明装置310は、照射する照明光350の発光強度を周期的に変化させる機能を有する。この機能は、例えば、光源311に、レーザーダイオードまたは発光ダイオード等の電流制御または電圧制御により光量を調整する機能を有する発光素子と、電流もしくは電圧を周期的に繰り返し変化させる電源とを用いて実現してもよい。また、光源311は、パルスレーザー等の時間的に強度が周期的に変化する光を射出する光源であってもよい。また、照明装置310の照明光学系312が周期的に開閉を繰り返すことのできるシャッター、または、チョッピングブレードを含み、被写体である指Fに向けて照射される照明光350の発光強度を周期的に変化させることで実現してもよい。また、照明装置310は、音響光学素子または電気光学変調器を有し、これらを用いて照明光350の強度変調を行ってもよい。
照明装置310は、オフセット付き正弦波のように連続的に照明光350の強度を変化させてもよく、パルス列のように離散的に照明光350の強度を変化させてもよい。
照明光350の発光強度が周期的に変化するため、照明光350の指Fによる反射光360も同じ周期で発光強度が変化する。撮像装置320は、反射光360を撮像する。
撮像装置320は、露光期間において、照明光350の周期的な変化に対応して感度を周期的に変化させる機能を有する。ここで、露光期間とは、撮像素子321が蓄積された信号電荷のリセットを行い、信号電荷の蓄積を開始してから、信号電荷の読み出しを開始するまでの間の期間を意味する。撮像装置320の感度の変化の周期は、例えば、照明光350の発光強度の変化の周期と同一である。なお、照明光350の強度の変化と撮像装置の感度の変化がともに離散的なパルス状である場合には、一方の周期が他方の周期の整数倍であってもよい。
高速に感度を変調する機能を有する撮像装置320の例としては、ICCDカメラ(イメージインテンシファイアカメラ)が挙げられる。ICCDカメラは、受光面に光が入射することで生じた電子を、マルチチャンネルプレートで増倍させたのち、蛍光面に衝突させ、そこで生じた蛍光をカメラで撮像する。この時、マルチチャンネルプレートに印加する電圧を周期的に変化させることで、感度を周期的に変化させることができる。
また、高速に感度を変調する機能を有する撮像装置320を実現するための撮像素子321の例としては、積層型イメージセンサおよび電荷振り分け素子が挙げられる。
積層型イメージセンサは、図7に示されるような対向電極と画素電極との間に光電変換層を挟んだ構造を有する撮像素子である。積層型イメージセンサにおいて、感度は、透明電極と画素電極との間の電位差、いわゆるバイアス電圧に依存する。バイアス電圧を所定の閾値以下とすることにより、感度を実質的に0とすることが可能であり、またバイアス電圧が所定の閾値以上であっても、例えば、バイアス電圧に応じて感度が変化する。このような積層型イメージセンサにおける感度変調については、例えば、本発明者による特許文献3に詳細な記載がある。
電荷振り分け素子は、各画素の光電変換領域に対し、2つ以上の電荷捕集部、もしくは一つ以上の電荷捕集部と電荷破棄部とを有する撮像素子である。電荷振り分け素子の例としては、マルチタップCCDおよび転送変調型積層型イメージセンサが挙げられる。
マルチタップCCDについては、特許文献4に詳細な記載がある。転送変調型積層型イメージセンサについては、本発明者による国際公開第2021/176876号及び特許文献5に詳細な記載がある。
電荷振り分け素子の場合、1つの光電変換領域に対し、2つ以上の電荷捕集部を持つ構成であれば、それぞれ位相の異なる2つの感度を変調して撮像した結果である2つの指紋画像を同時に得ることができる。後述するように、本実施の形態において、照明光350の強度が高い位相において感度が高くなるように変化させて撮像した撮像結果と、照明光350の強度が低い位相において感度が高くなるように変化させて撮像した撮像結果との両方を得ることで、環境光を効果的に除去できる。このように、撮像素子321として電荷振り分け素子を用いることで、上記の2つの撮像結果を同時に得ることができ、環境光を効果的に除去できる。
また、撮像装置320は、例えば、撮像光学系322が、撮像素子321に入射する光を物理的に周期的に遮断するシャッターまたはチョッパーを含むことで、感度を周期的に変化させてもよい。
非接触認証システム300は、例えば、制御部131の制御によって、照明光350の強度の変化の位相と、撮像装置320の感度の変化の位相との相対関係を、2つの状態に切り替える。より具体的には、非接触認証システム300は、照明光350の発光強度が高い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる場合と、照明光350の発光強度が低い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる場合とを切り替える。
図15は、照明光350の発光強度の変化および撮像装置320の感度の変化の例を示す図である。図15の部分(a)は、照明光350の発光強度の変化の例を示し、図15の部分(b)および部分(c)は、それぞれ、撮像装置320の感度の変化の例である感度例1および感度例2を示している。非接触認証システム300は、例えば、図15の部分(a)に示される照明光350が照射されている場合に、撮像装置320が感度例1の感度で撮像する場合と、感度例2の感度で撮像する場合とを切り替える。感度例1における撮像装置320の感度が高い期間と、感度例2における撮像装置320の感度が高い期間とは、同じ長さである。また、感度例1における撮像装置320の感度が高い位相での感度と、感度例2における撮像装置320の感度が高い位相での感度とは、同じ高さである。なお、図15において、照明光350の発光強度が高い期間は、撮像装置320の感度が高い期間よりも短いが、照明光350の発光強度が高い期間は、撮像装置320の感度が高い期間と同じであってもよい。
このような発光強度および感度の制御は、例えば、照明装置310および撮像装置320に加えて、図14に図示されていないファンクションジェネレーター等の周期信号発生装置が非接触認証システム300に備えられ、周期信号発生装置からの出力を照明装置310と撮像装置320とがともに受け取る構成で実現されてもよい。また、このような発光強度および感度の制御は、制御部131が、照明装置310および撮像装置320に周期信号を出力することで実現されてもよい。また、このような周期信号を出力する機能を有する回路等が、照明装置310または撮像装置320に、含まれていてもよい。
[2.非接触認証システムの動作例]
次に、本実施の形態に係る非接触認証システム300の動作について説明する。図16は、本実施の形態に係る非接触認証システム300の動作例を示すフローチャートである。
図16に示されるように、まず、照明装置310は、周期的に強度が変化する照明光350を指Fに向け照射する(ステップS31)。照明装置310は、例えば、図15の部分(a)で示される発光強度の照明光350を指Fに照射する。
次に、撮像装置320は、指Fに照射された照明光350の指Fにおける反射によって生じた反射光360を、照明光350の発光強度の変化の位相と撮像装置320の感度の変化の位相とが第1の位相関係である状態において撮像する(ステップS32)。撮像装置320は、例えば、図15の部分(a)および部分(b)に示されるように、照明光350の発光強度の変化の位相と撮像装置320の感度の変化の位相とが、照明光350の発光強度が高い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる位相関係になるように、照明光350の発光強度の変化と同じ周期で感度を変化させる。これにより、撮像装置320は、認証情報として、撮像結果である第3の指紋画像を取得する。撮像装置320は、例えば、取得した第3の指紋画像を管理装置130へ出力する。管理装置130の抽出部132は、撮像装置320から第3の指紋画像を取得し、記憶部135に記録する。
次に、撮像装置320は、指Fに照射された照明光350の指Fにおける反射によって生じた反射光360を、照明光350の発光強度の変化の位相と撮像装置320の感度の変化の位相とが第2の位相関係である状態において撮像する(ステップS33)。撮像装置320は、例えば、図15の部分(a)および部分(c)に示されるように、照明光350の発光強度の変化の位相と撮像装置320の感度の変化の位相とが、照明光350の発光強度が低い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる位相関係になるように、照明光350の発光強度の変化と同じ周期で感度を変化させる。これにより、撮像装置320は、認証情報として、撮像結果である第4の指紋画像を取得する。撮像装置320は、例えば、取得した第4の指紋画像を管理装置130へ出力する。管理装置130の抽出部132は、撮像装置320から第4の指紋画像を取得し、記憶部135に記録する。
次に、抽出部132は、記憶部135に記録した第3の指紋画像と第4の指紋画像との差分画像を生成する(ステップS34)。抽出部132は、例えば、第3の指紋画像から第4の指紋画像を差し引いた差分画像を生成する。具体的には、抽出部132は、例えば、第3の指紋画像および第4の指紋画像の各画素の画素値の差分を演算することにより、差分画像を生成する。
次に、抽出部132は、生成した差分画像から認証に用いられる特徴情報を抽出する(ステップS35)。ステップS35では、指紋画像の代わりに差分画像を用いる以外は、上述のステップS13と同様の処理が行われる。
次に、認証部133は、抽出部132が抽出した特徴情報に基づいて、認証を行う(ステップS36)。ステップS36では、例えば、上述のステップS14と同様の処理が行われる。
これにより、第3の指紋画像と第4の指紋画像とには、照明光350の他に、太陽光および室内照明光などの照明光350以外の光、いわゆる環境光の影響が含まれている。環境光は、ステップS32とステップS33とで、撮像装置320の感度が高い期間が同じであれば、第3の指紋画像および第4の指紋画像それぞれにほぼ等しく含まれている。そのため、第3の指紋画像と第4の指紋画像との差分画像では、環境光成分が差し引かれている。なお、撮像装置320の感度が高い期間が異なっている場合でも、期間の長さの差に応じた補正係数を差分画像の生成時に適用することで、環境光成分を差し引くことができる。
一方、第3の指紋画像は、照明光350の発光強度が高い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる場合の撮像結果であるため、照明光350の指Fによる反射光360成分を第4の指紋画像より多く含む。これは、第3の指紋画像が、照明光350の発光強度が高い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる場合の撮像結果であり、第4の指紋画像が、照明光350の発光強度が低い位相において撮像装置320の感度が高い位相となる場合の撮像結果であるためである。その結果、差分画像では、第3の指紋画像から環境光成分が差し引かれるため反射光360成分が残る。よって、差分画像は、環境光の影響をより少なくした状態で、反射光360に由来する情報を含む。これにより、差分画像における指紋形状に由来するコントラスト等が高くなるため、抽出情報が抽出されやすくなり、認証の精度が向上する。
なお、上記の動作例は一例であり、指紋画像に反射光360成分が含まれる量が互いに異なる2つの照明光強度変化と感度変化との位相関係で指紋画像を撮像することで、同様の効果が得られる。例えば、撮像装置320の感度の位相を変化させる代わりに、照明光350の発光強度の位相を変化させることで、異なる位相関係で撮像した指紋画像を取得してもよい。また、照明光350の発光強度の変化の周期および撮像装置320の感度の変化の周期は、一定でなくてもよい。
また、撮像素子321が電荷振り分け素子である場合は、ステップS32とステップS33とを同時に実施することができる。そのため、撮像時間を短縮でき、かつ、2つの指紋画像を撮像する間の環境光および被写体の変化が小さくなり、環境光を効果的に除去することができる。
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る非接触認証システムについて、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態および変形例に限定されるものではない。
例えば、撮像装置は、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として反射光を撮像することに加えて、1380ナノメートル未満の波長範囲を主たる撮像成分として反射光を撮像してもよい。この場合、例えば、撮像装置は、透過波長範囲の異なる複数の光学フィルターを有し、複数の光学フィルターを切り替えることで、異なる波長範囲を主たる撮像成分として反射光を撮像する。また、撮像装置の撮像素子が、1380ナノメートル以上の波長の光を撮像するための画素と1380ナノメートル未満の波長の光を撮像するための画素とを有する構成であってもよい。また、非接触認証システムが、複数の撮像装置として、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として反射光を撮像する撮像装置と、1380ナノメートル未満の波長範囲を主たる撮像成分として反射光を撮像する撮像装置とを備えていてもよい。
被写体が実際の指である場合、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像して得られた指紋画像のコントラストは、1380ナノメートル未満の波長範囲を主たる撮像成分として撮像して得られた指紋画像のコントラストよりも高い。これは、上述したように、指を構成する組織の分光吸収特性によって、表面反射光と肌内光に由来する散乱反射光との比率が波長によって変化するためである。
一方、樹脂等により作製された偽の指、紙に印刷された指の画像またはディスプレイに表示された指の画像等の場合、1380ナノメートル以上の波長範囲を主たる撮像成分として撮像して得られた指紋画像のコントラストと、1380ナノメートル未満の波長範囲を主たる撮像成分として撮像して得られた指紋画像のコントラストとの関係は、実際の指とは異なる可能性がある。これは偽の指の分光吸収特性が、実際の指とは異なる可能性があるためである。例えば、偽の指は、水分による吸収が実際の指よりも小さいため、偽の指での上記2つの指紋画像のコントラストの差は、実際の指での上記2つの指紋画像のコントラストの差よりも小さくなる。そのため、2種類の異なる波長範囲を主たる撮像成分として撮像した指紋画像のコントラストの関係から、偽の指を検出できる可能性がある。例えば、管理装置の認証部は、個人認証に加えて、上記2つの指紋画像を取得し、2つの指紋画像を比較することで、被写体が偽の指であるか否かを判定してもよい。
また、例えば、照明装置は、直線状の照明光を指に対し照射し、その照射位置を順次変更する機能を有してもよい。照明光を面的に照射する場合に比べ、照明光の密度を高めることができるため、撮像装置が信号雑音比の高い画像を得ることができる。また、立体的な指に対して直線状の光を照射した場合、照射された領域の形状は曲線となる。このことを利用し、平面の印刷物または平面ディスプレイに表示された偽の指を識別することが可能となる。照射位置の変更は、例えばガルバノミラーにより行うことができる。
また、例えば、上記実施の形態および変形例では、被写体が指であったが、被写体は手のひらであってもよく、指および手のひらの両方が被写体であってもよい。
また、例えば、上記実施の形態および変形例では、非接触認証システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。また、非接触認証システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態および変形例で説明された非接触認証システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
また、非接触認証システムは、上記実施の形態および変形例で説明した各構成要素を全て備えていなくてもよく、目的の動作をさせるための構成要素のみで構成されていてもよい。
また、例えば、非接触認証システムが通信部を備え、管理装置は、ユーザのスマートフォン、ユーザによって持ち込まれた専用機器またはクラウドサーバ等の外部の機器であり、非接触認証システムが通信部を用いて外部の機器と通信することで認証が行われてもよい。
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
例えば、本開示は、上記実施の形態の非接触認証システムとして実現されてもよいし、処理部が行う認証方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
その他、本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態および実施例に施したもの、ならびに、実施の形態および実施例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。