JP7819901B2 - ひきこもりのバイオマーカー、ひきこもり識別支援方法 - Google Patents
ひきこもりのバイオマーカー、ひきこもり識別支援方法Info
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Description
[項1]
オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも3種を含む、ひきこもり識別用バイオマーカー。
[項2]
オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも4種を含む、ひきこもり識別用バイオマーカー。
[項3]
前記アシルカルニチンが、長鎖アシルカルニチンである、項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカー。
[項4]
オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも2種を含む血中成分を、被験者のひきこもり状態の有無を識別するための指標とする方法。
[項5]
オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも2種を含む血中成分を、被験者のひきこもり状態の重症度を判定するための指標とする方法。
[項6]
尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む血中成分を、被験者を非ひきこもり者層、うつ傾向を有するひきこもり者層及びその他のひきこもり者層に層別化するための指標とする方法。
[項7]
複数のひきこもり者及び非ひきこもり者の血液試料中の、項1~3のいずれか一項に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記含有量をひきこもりであるか否かの識別結果に対応付けて、教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記含有量を入力すると、ひきこもりであるか否かを出力するひきこもり識別支援用モデルを生成する工程と、
を有する、ひきこもり識別支援用モデルの生成方法。
[項8]
複数のひきこもり者及び非ひきこもり者の血液試料中の、項1~3のいずれか一項に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記含有量をひきこもりの重症度の判定結果に対応付けて、教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記含有量を入力すると、ひきこもりの重症度を出力するひきこもりの重症度予測支援用モデルを生成する工程と、
を有する、ひきこもりの重症度予測支援用モデルの生成方法。
[項9]
前記ひきこもり識別用バイオマーカーは、オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも2種を含む、項7又は8に記載の生成方法。
[項10]
複数のひきこもり者及び非ひきこもり者の血液試料中の、項1~3のいずれか一項に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記含有量をひきこもりのクラスタリング分類の判定結果に対応付けて、教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記含有量を入力すると、ひきこもりのクラスタリング分類を出力するひきこもりの層別化支援用モデルを生成する工程と、
を有する、ひきこもりの層別化支援用モデルの生成方法。
[項11]
前記ひきこもり識別用バイオマーカーは、尿酸、コレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項10に記載の生成方法。
[項12]
前記機械学習は、ランダムフォレストによる機械学習である、項7又は9に記載の生成方法。
[項13]
前記機械学習は、部分的最小二乗回帰による機械学習である、項8又は9に記載の生成方法。
[項14]
被験者の血液試料中の、項1~3のいずれか一項に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記被験者の前記含有量を、項7,9及び12のいずれか一項に記載の生成方法によって生成されたひきこもり識別支援用モデルに入力することにより、前記被験者がひきこもりであるかを予測する工程と、
を有するひきこもり識別支援方法。
[項15]
被験者の血液試料中の、項1~3のいずれか一項に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記被験者の前記含有量を、項8,9及び13のいずれか一項に記載の生成方法によって生成されたひきこもりの重症度予測支援用モデルに入力することにより、前記被験者のひきこもりの重症度を予測する工程と、
を有するひきこもりの重症度予測支援方法。
[項16]
被験者の血液試料中の、項1~3のいずれか一項に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記被験者の前記含有量を、項10又は11に記載の生成方法によって生成されたひきこもりの層別化支援用モデルに入力することにより、前記被験者のひきこもりのクラスタリング分類を予測する工程と、
を有するひきこもりの層別化支援方法。
本発明は、ひきこもり識別用バイオマーカーを提供する。本発明のひきこもり識別用バイオマーカーは、オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも3種を含み、好ましくはオルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも4種を含む。また、本発明のバイオマーカーには、オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸、コレステロールエステル以外のものをさらに含んでもよい。
<アシルカルニチン>
アシルカルニチンは、カルニチンの水酸基に脂肪酸由来のアシル基が結合した構造であり、その脂肪酸部分の炭素鎖長、不飽和結合の有無と数、炭素鎖に結合する水素原子の酸素原子又はヒドロキシ基への置換等により、多様な構造を有するが、本明細書においてはそれらを総称してアシルカルニチンと記載する。
ビリルビンは、血液等の生体試料中において、抱合型ビリルビン、非抱合型ビリルビン、及びデルタ型ビリルビンの3種類が存在し、これらの総和が総ビリルビンと称される。抱合型ビリルビンはグルクロン酸抱合を受けているビリルビンであり、直接型ビリルビンとも称される。非抱合型ビリルビンはグルクロン酸抱合を受けていないビリルビンであり、間接型ビリルビンとも称される。本発明のバイオマーカーに用いられるビリルビンとしては、好ましくは、総ビリルビン(T-Bil)、直接型ビリルビン(D-Bil)、直接型ビリルビン/間接型ビリルビン比(R-Bil)が用いられる。本発明のバイオマーカーとして用いられるビリルビンは、総ビリルビン(T-Bil)、直接型ビリルビン(D-Bil)、間接型ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比(R-Bil)について、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルギナーゼは、アルギニンからオルニチンを生成する反応を制御する酵素である。被験者の血液試料中のアルギニンの含有量は、ひきこもり者において、非ひきこもり者と比較して低い結果が得られる。また、被験者の血液試料中のオルニチンの含有量は、ひきこもり者において、非ひきこもり者と比較して高い結果が得られる。さらにまた、被験者の血液試料中のアルギナーゼの含有量は、ひきこもり者において、非ひきこもり者と比較して高い結果が得られる。これにより、アルギニン、オルニチン、アルギナーゼはそれぞれ、本発明のひきこもり識別用バイオマーカーとして好ましく用いられる。なお、アルギナーゼは特に男性のひきこもり者を特徴づける指標として有用である。
尿酸は、核酸及びATP構成成分の一つであるプリン体の最終代謝産物である。被験者の血液試料における尿酸値をひきこもり識別用の指標として用いることができる。特に、被験者を抑うつ傾向の程度でクラスタリングする際の指標として好ましく用いることができる。
コレステロールエステルは、コレステロールの脂肪酸エステルであり、その脂肪酸部分の炭素鎖長、不飽和結合の有無と数、等により、多様な構造を有するが、本明細書においてはそれらを総称してコレステロールエステルと記載する。
オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸、コレステロールエステル以外の、本発明のバイオマーカーに含まれるものとしては、例えば以下のものが挙げられるが、これに限定されない。オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸、コレステロールエステル以外の、本発明のバイオマーカーに含まれる以下の成分は、1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・生化学検査項目
HDLコレステロール(HDL.C)、LDLコレステロール(LDL.C)、総コレステロール(Total.C)、フィブリノーゲン(FIB)、フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)、高感度C反応性蛋白質(hsCRP)等。
・アミノ酸等
アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、クレアチン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等。
・リソホスファチジルコリン
リソホスファチジルコリンを構成する脂肪酸の炭素鎖長が12以上22以下のもの等。例えば、パルミトイルリソホスファチジルコリン(LPC_16:0)、オレオイルリソホスファチジルコリン(LPC_18:1)、リノレイルリソホスファチジルコリン(LPC_18:2)等が挙げられる。なお、本明細書中において、リソホスファチジルコリンを略号で記載することがあるが、例えば、LPC_16:0は、リソホスファチジルコリンの脂肪酸炭素数16、二重結合数0を示す。
・ホスファチジルコリン
ホスファチジルコリンを構成する脂肪酸の炭素鎖長が12以上22以下のもの等。例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(PC_32:0)、ジオレオイルホスファチジルコリン(PC_36:2)、ジリノレイルホスファチジルコリン(PC_36:4)等が挙げられる。なお、本明細書中において、ホスファチジルコリンを略号で記載することがあるが、例えば、PC_36:2は、ホスファチジルコリンの脂肪酸炭素数の合計が36、二重結合数2を示す。
・ホスファチジルエタノールアミン
ホスファチジルエタノールアミンを構成する脂肪酸の炭素鎖長が12以上22以下のもの等。例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(PE_36:2)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(PE_36:4)等が挙げられる。なお、本明細書中において、ホスファチジルエタノールアミンを略号で記載することがあるが、例えば、PE_36:2は、ホスファチジルエタノールアミンの脂肪酸炭素数の合計が36、二重結合数2を示す。
・トリグリセリド
トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素鎖長が12以上22以下のもの等。例えば、パルミトイルジオレオイルグリセロール(TG_52:2)、パルミトイルステアロイルリノレオイルグリセロール(TG_52:3)等が挙げられる。なお、本明細書中において、トリグリセリドを略号で記載することがあるが、例えば、TG_52:2は、トリグリセリドの脂肪酸炭素数の合計が52、二重結合数2を示す。
2.1 ひきこもり状態の有無の識別
本発明の別の実施形態において、被験者の血中成分を、被験者のひきこもり状態の有無を識別するための指標とする方法を提供する。前記血中成分としては、本発明のひきこもり識別用バイオマーカーを用いることができ、オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも2種を含む血中成分が挙げられる。
被験者の血液試料中の本発明のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程について、以下に記載する。
取得した含有量とあらかじめ設定されたカットオフ値を比較しひきこもり状態の有無を判定する工程について、以下に記載する。
図2は、本実施形態のひきこもり識別支援用モデル生成システム1の概略構成を示すブロック図である。ひきこもり識別支援用モデル生成システム1は、本実施形態のひきこもり識別支援用モデルの生成方法を実施するためのシステムであり、被験者における血液試料中の含有量測定器2と、教師データ生成装置3と、機械学習装置4とを備えている。
図4は、本実施形態の支援装置5の概略構成を示すブロック図である。支援装置5は、本実施形態のひきこもり識別支援方法を実施するための装置である。
ひきこもり状態の重症度は、構造化面接に基づく病的ひきこもり評価や自記式のHQ-25(25-item Hikikomori Questionnaire)等の検査手法により、ある程度評価可能であるが、患者の主観的な訴えや態度に依拠していることから、より客観的な評価方法が求められている。
本実施形態において、被験者の血液試料中の本発明のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程については、上記「<血液試料中のバイオマーカーの含有量の測定方法>」の項に記載した方法が好ましく用いられる。
図6は、本発明の一実施形態のひきこもり重症度予測支援用モデル生成システム1’の概略構成を示すブロック図である。ひきこもり重症度予測支援用モデル生成システム1’は、本発明の一実施形態のひきこもり重症度予測支援用モデルの生成方法を実施するためのシステムであり、含有量測定器2と、教師データ生成装置3’と、機械学習装置4’とを備えている。なお、図6では、図2におけるものと同一の機能を有する部材は、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図8は、本実施形態の支援装置5’の概略構成を示すブロック図である。支援装置5’は、本実施形態のひきこもり重症度予測支援方法を実施するための装置である。
ひきこもり状態となる原因として、環境要因、性格、こころの病気等様々な事柄が考えられており、ひきこもり者をその背景で層別化することが可能である。本明細書において、『層別化』とは、ひきこもり状態をその背景に応じてサブタイプに分類し、そのサブタイプごとのひきこもり者のクラスタリング分類を定義することを意味する。ひきこもりの背景としては、例えばうつ病、社交不安障害、発達障害、統合失調症の傾向等が挙げられる。ひきこもり者を例えばうつ傾向の有無で層別化した場合には、うつ傾向があるひきこもり者層には、ひきこもり状態の解消にうつ病の治療法が有効であると判断することができ、うつ傾向がないひきこもり者層には、ひきこもり状態の解消にうつ病の治療法が有効でないと判断することができる。
本実施形態において、被験者の血液試料中の本発明のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程については、上記「<血液試料中のバイオマーカーの含有量の測定方法>」の項に記載した方法が好ましく用いられる。
図10は、本実施形態のひきこもり層別化支援用モデル生成システム1”の概略構成を示すブロック図である。ひきこもり層別化支援用モデル生成システム1”は、本実施形態のひきこもり層別化支援用モデルの生成方法を実施するためのシステムであり、含有量測定器2と、教師データ生成装置3”と、機械学習装置4”とを備えている。なお、図10では、図2及び図6におけるものと同一の機能を有する部材は、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図12は、本実施形態の支援装置5”の概略構成を示すブロック図である。支援装置5”は、本実施形態のひきこもり層別化支援方法を実施するための装置である。
本実施形態において、ひきこもり識別用バイオマーカーは、ひきこもり者の識別、重症度予測、層別化以外に以下に示す用途に使用できる。
一般に、介入の効果には個人差がみられることから、各個人における介入の効果を調べることは非常に有益であり、本発明のひきこもり識別用バイオマーカーを用いれば容易に介入の効果を調べることができる。
また、本発明のひきこもり識別用バイオマーカーをひきこもり状態の予防や早期介入のために使用することもできる。
[1]被験者の選定及び血漿サンプルの収集
本実施例における被験者(ひきこもり者及び非ひきこもり者)のデータは、九州大学において、すべての被験者に書面によるインフォームドコンセントを得て使用した。被験者の選定方法について以下に示す。また、被験者に関するデータを表2に示す。
ひきこもりの基準として、以下の3項目を満たす者をひきこもり者と定義し、薬物治療が行われていないひきこもり者42名(平均年齢30.2歳、SD=8.2)について血液試料を集めた。
(a)週4日以上自宅から外出していない
(b)社会参加活動を6か月以上継続しておこなっていない
(c)それにより機能障害や苦痛を感じている
上記3項目を満たさず、ひきこもり状態となっていない者を非ひきこもり者とし、非ひきこもり者41名について血液試料を集めた。
血液試料の収集は、静脈穿刺による末梢血液採取により行った。
(1)血液試料の前処理
血液試料中の血中代謝物を抽出するため、血漿10μLに対し、氷冷メタノール250μLを添加し、ボルテックスミキサーで撹拌した後、遠心分離を行った(14,000×g、4℃、15分)。その後、上清を1.5mLのエッペンドルフマイクロチューブに採取し、同量の水で希釈した後、以下の各種化合物の分析に使用した。
[2](1)において得られた上清について、25μLの上清を0.1%ギ酸溶液で3倍希釈した後、LC/MS分析を行った。LC/MS分析には、LCMS-8060(島津製作所製)を使用した。多様な水溶性化合物を分析するため、HS-F5-3カラム(150×2.1mm、3μm particle size、シグマアルドリッチ製)を用い、溶媒A(0.1%ギ酸水溶液)と溶媒B(0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)からなる移動相で実施した。カラムオーブンの温度は40℃設定で行った。移動相のグラジエントは、以下の条件で行った。
・流速0.25ml/min。0-2 min, 0%B; 2-5min, 0-25%B; 5-11min, 25-35%B; 11-15min, 35-95%B; 15-25min, 95%B; 25.1-30min, 0%B。
また、質量分析はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)のnegative/positiveイオンモードで多重反応モニタリングモードで実施した。ESIの条件は、以下の通りである。
・ドライガス流量10L/min、ネブライザーガス流量3L/min、ヒートガス流量10L/min、インターフェース温度300℃、DL温度250℃、ヒートブロック温度400℃、CIDガス圧270kPa。
[2](1)において得られた上清について、30μLの上清に270μLの氷冷メタノールを添加し、ボルテックスミキサーで撹拌した後、遠心分離を行った(14,000×g、4℃、15分)後、上清を採取した。採取した上清について、LC/MS分析を行った。LC/MS分析には、LCMS-8060(島津製作所製)を使用した。カラムはLuna HILIC column 200A (150 mm×2.0mm、3 μm、フェノメネックス製)を使用し、溶媒A(10mMギ酸アンモニウム)と溶媒B(アセトニトリル/10mMギ酸アンモニウム(9/1、v/v))からなる移動相で実施した。カラムオーブンの温度は40℃設定で行った。移動相のグラジエントは、以下の条件で行った。
・流速0.3mL/min。0-2.5 min, 100%B; 2.5-4 min, 100-50%B; 4-7.5 min, 50-5%B; 7.5-10 min, 5%B; 10,1-12.5 min, 100%B。
また、アシルカルニチンの検出は、ESI Positiveモードでm/z 85.5のプリカーサイオンスキャンを、脂肪酸鎖長に応じて衝突エネルギー(CE)を調整して実施した。
・短鎖アシルカルニチン(C0-8):20eV
・中鎖アシルカルニチン(C9-12):35eV
・長鎖アシルカルニチン(C12-18):45eV
[2](1)において得られた上清について、5μLの上清を0.1%ギ酸の20%アセトニトリル溶液で200倍希釈した後、LC/MS分析を行った。LC/MS分析には、LCMS-8060(島津製作所製)を使用した。カラムは、Kinetex C8カラム(150×2.1 mm、 2.6 μm particle size、フェノメネックス製)を使用し、溶媒A(20mMギ酸アンモニウム)と溶媒B(アセトニトリル/イソプロパノール(1/1、v/v))からなる移動相で実施した。カラムオーブンの温度は45℃設定で行った。移動相のグラジエントは、以下の条件で行った。
・流速0.3mL/min。0-1min, 20%B; 1-2 min, 40%B; 2-25 min, 92.5%B; 25.1-35 min, 100%B; 35.1-38 min,20%B。
質量分析はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)のpositiveイオンモードで多重反応モニタリングモードで実施した。
[3]代謝物のデータ処理
LC-MSのデータ解析は、Lab Solutions LC-MS software program(島津製作所製)を使用した。合計で127成分(生化学検査項目10成分、血中代謝物117成分)の情報が得られ、ひきこもり者と非ひきこもり者でそれらのデータを比較した。その結果を表3、図14に示す。なお、統計解析には、GraphPad Prism8を使用し、散布図の作成には、EnhancedVolcano R package(ver.1.6.0)を使用した。ひきこもり者と非ひきこもり者で最も差がみられたのは、直接型ビリルビン/間接型ビリルビン比(R-Bil)であり、ひきこもり者において低い結果となった。長鎖アシルカルニチン(AC_16:0、AC_16:1、AC_18:1、AC_18:2)では、ひきこもり者において非ひきこもり者より高い結果となった。アルギニンではひきこもり者において非ひきこもり者より低い結果となり、オルニチンにおいてはひきこもり者において非ひきこもり者より高い結果となった。
これら127成分のデータを用いて、ひきこもり者と非ひきこもり者を識別するランダムフォレストモデルを作成した。なお、ランダムフォレストの作成には、randomForest R package (ver.4.6-14)の「ランダムフォレスト」機能を用い、「mrty」パラメータにcaret Rpackage (ver. 6.0-88)の「train」機能を用いて実施した。全データを無作為に6等分し、6分の5を教師データとしてモデルを作成し、6分の1をモデル確認用のデータとして用いた(図15A)。このような無作為抽出操作を5回行い、モデルを作成した(ntree=500;mtry=5)。得られた識別モデルは、カッパ係数が0.7以上と良好な識別精度を有しており、実用的な精度であるといえる(図15B)。また、AUC(area under the receiver operating characteristic (ROC))が0.854(CI=0.648-1.000)であった(図15C)。なお、予測結果の性能評価には、pROC R package (ver.1.17.0.1)の「auc」機能、又はcaret R packageの「confusionMatrix」機能を用いた。
ひきこもり者において、アルギニンが低下しオルニチンが上昇すること、及びアルギナーゼを介してアルギニンからオルニチンが生成することから、アルギナーゼもひきこもりの指標となりうると考えられたが、ひきこもり者と非ひきこもり者の比較では、血中アルギナーゼは有意差がみられなかった。しかし、性別とひきこもりの有無で4つのグループに分けて解析したところ、男性のひきこもり者において血中アルギナーゼが高いことが明らかとなった(図16C)。そのため、男性において、アルギニンとオルニチンに負の相関がみられた(図16D)。
[1]ひきこもりの重症度の判定
被験者のひきこもりの重症度を、HQ-25(25-item Hikikomori Questionnaire)を使用して評価した。
[2]被験者のひきこもり状態の重症度を予測可能な重症度予測支援用モデルの作成
実施例1の[1]~[3]の工程で得られた127成分のデータを用い、被験者のひきこもりの重症度をHQ-25で予測する部分最小二乗法モデルを作成した(図17A)。なお、部分最小二乗法(PLS)モデルは、pls Rpackage (ver. 2.7-3)の「plsr」又は「mvr」機能を用いて作成した。当該モデルの自乗平均誤差(RMSE)は18.5であり、平均絶対誤差(MAR)は15.5であった。さらに、相関係数は平均で0.8であった。なお、自乗平均誤差(RMSE)と平均絶対誤差(MAR)は予測結果とHQ-25の実際の結果を、以下の数式に当てはめて算出した。
すべての被験者の精神医学試験データ(表1の23項目のデータ)を用いて、主成分クラスタリング分析を行った(図18A、B)。その結果、被験者を3つのクラスターに分類することができた。
・クラスター1:ほぼ非ひきこもり者からなる群。
・クラスター2:ひきこもり者と非ひきこもり者が半分ずつの群。
・クラスター3:ほぼひきこもり者からなる群。
1’ 重症度予測支援用モデル生成システム
1” 層別化支援用モデル生成システム
2 含有量測定器
3 教師データ生成装置
3’ 教師データ生成装置
3” 教師データ生成装置
30 補助記憶装置
31 取得部
32 教師データ生成部
32’ 教師データ生成部
32” 教師データ生成部
4 機械学習装置
4’ 機械学習装置
4” 機械学習装置
40 補助記憶装置
41 学習部
41’ 学習部
41” 学習部
5 支援装置
5’ 支援装置
5” 支援装置
50 補助記憶装置
51 取得部
52 予測部
52’ 予測部
52” 予測部
6 表示装置
D1 識別結果データベース
D2 教師データ
D3 重症度判定結果データベース
D4 教師データ
D5 クラスタリング分類判定結果データベース
D6 教師データ
M1 識別支援用モデル
M2 重症度予測支援用モデル
M3 層別化支援用モデル
Claims (15)
- 長鎖アシルカルニチン並びに
オルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも2種を含む、ひきこもり識別用バイオマーカー。 - 長鎖アシルカルニチン並びに
オルニチン、ビリルビン、アルギニン、アルギナーゼ、尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも3種を含む、ひきこもり識別用バイオマーカー。 - 長鎖アシルカルニチン並びに
オルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも1種を含む血中成分を、被験者のひきこもり状態の有無を識別するための指標とする方法。 - 長鎖アシルカルニチン並びに
オルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも1種を含む血中成分を、被験者のひきこもり状態の重症度を判定するための指標とする方法。 - 尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む血中成分を、被験者を非ひきこもり者層、うつ傾向を有するひきこもり者層及びその他のひきこもり者層に層別化するための指標とする方法であって、
血液試料中の尿酸及びコレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも1種の含有量が基準値以上である場合に、うつ傾向を有するひきこもり者層に該当する可能性が高いことを示す、方法。 - 複数のひきこもり者及び非ひきこもり者の血液試料中の、請求項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記含有量をひきこもりであるか否かの識別結果に対応付けて、教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記含有量を入力すると、ひきこもりであるか否かを出力するひきこもり識別支援用モデルを生成する工程と、
を有する、ひきこもり識別支援用モデルの生成方法。 - 複数のひきこもり者及び非ひきこもり者の血液試料中の、請求項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記含有量をひきこもりの重症度の判定結果に対応付けて、教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記含有量を入力すると、ひきこもりの重症度を出力するひきこもりの重症度予測支援用モデルを生成する工程と、
を有する、ひきこもりの重症度予測支援用モデルの生成方法。 - 前記ひきこもり識別用バイオマーカーは、オルニチン、アシルカルニチン、ビリルビン、アルギニン及びアルギナーゼからなる群より選択される少なくとも2種を含む、請求項6又は7に記載の生成方法。
- 複数のひきこもり者及び非ひきこもり者の血液試料中の、請求項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記含有量をひきこもりのクラスタリング分類の判定結果に対応付けて、教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記含有量を入力すると、ひきこもりのクラスタリング分類を出力するひきこもりの層別化支援用モデルを生成する工程と、を有する、ひきこもりの層別化支援用モデルの生成方法。 - 前記ひきこもり識別用バイオマーカーは、尿酸、コレステロールエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の生成方法。
- 前記機械学習は、ランダムフォレストによる機械学習である、請求項6又は8に記載の生成方法。
- 前記機械学習は、部分的最小二乗回帰による機械学習である、請求項7又は8に記載の生成方法。
- 被験者の血液試料中の、請求項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記被験者の前記含有量を、請求項6,8及び11のいずれか一項に記載の生成方法によって生成されたひきこもり識別支援用モデルに入力することにより、前記被験者がひきこもりであるかを予測する工程と、
を有するひきこもり識別支援方法。 - 被験者の血液試料中の、請求項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記被験者の前記含有量を、請求項7,8及び12のいずれか一項に記載の生成方法によって生成されたひきこもりの重症度予測支援用モデルに入力することにより、前記被験者のひきこもりの重症度を予測する工程と、
を有するひきこもりの重症度予測支援方法。 - 被験者の血液試料中の、請求項1又は2に記載のひきこもり識別用バイオマーカーの含有量を取得する工程と、
前記被験者の前記含有量を、請求項9又は10に記載の生成方法によって生成されたひきこもりの層別化支援用モデルに入力することにより、前記被験者のひきこもりのクラスタリング分類を予測する工程と、を有するひきこもりの層別化支援方法。
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