以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
図1Aは、本発明の実施例の事業リスク分析システムの構成を示すブロック図である。
本実施例の事業リスク分析システムは、ネットワーク13を介して通信可能に接続された事業リスク分析装置11及びユーザ端末12によって構成される。
図1Bは、本発明の実施例の事業リスク分析装置11のハードウェア構成を示すブロック図である。
事業リスク分析装置11は、例えば、演算部111、記憶部112、入力部113、表示部114および通信部115を有するシステムによって実現される。
演算部111は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置を用いて構成することができる。以下の説明において事業リスク分析装置11が実行する処理は、演算部111の機能によって実現される。演算部111の機能は、その機能を実装した回路デバイスを用いて構成することもできるし、その機能を実装したソフトウェア(例えば後述する事業リスク分析プログラム121)を演算部111が実行することによって構成することもできる。
記憶部112は、演算部111によって実行されるソフトウェア、演算部111が実行する処理において参照される情報、及び、処理の結果として生成される情報等を格納する記憶装置である。記憶部112は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置及びHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置を含んでもよい。本実施例の記憶部232には、事業リスク分析プログラム121、事業構成情報122、関連業務情報123、発生確率評価表124、発生頻度算出表125、インパクト情報126及びリスク値算出表127が格納される。
事業リスク分析プログラム121は、後述する事業リスク分析装置11の処理を演算部111に実行させるためのプログラムである。すなわち、後にフローチャート等を参照して説明する事業リスク分析装置11の処理の処理は、演算部111が事業リスク分析プログラム121に従って実行する。事業リスク分析プログラム121は、ネットワーク13に接続された外部装置(図示省略)の不揮発又は非一時的記憶媒体からネットワーク13経由で事業リスク分析装置11に導入されてもよいし、可搬型の不揮発又は非一時的記憶媒体経由で事業リスク分析装置11に導入されてもよい。事業構成情報122~リスク値算出表127の詳細については後述する。
入力部113は、事業リスク分析装置11の管理者又はユーザ等からの情報の入力を受け付ける装置であり、例えばキーボード、マウス及びタッチパネル等の少なくともいずれかを含んでもよい。表示部114は、事業リスク分析装置11の管理者又はユーザ等に対して情報を出力するための装置であり、例えば画像表示装置であってもよい。通信部115は、ネットワーク13に接続され、他の機器との通信を実行する。図1Bの例では、通信部115は、ネットワーク13を介してユーザ端末12と通信する。
各ユーザ端末12は、例えば、事業リスク分析装置11の各ユーザが所持する携帯型もしくは据え置き型のPC(Personal Computer)、いわゆるタブレット端末、又はいわゆるスマートフォン等であってもよい。事業リスク分析装置11のユーザとして想定されるのは、例えば、セキュリティ対策の提供元である事業者の営業担当者、又は、セキュリティ対策を自社に導入しようとしている事業者のシステム担当者等であるが、以下は前者のユーザを例として説明する。
ユーザは、ユーザ端末12を使用せずに事業リスク分析装置11を直接操作してもよいし、事業リスク分析装置11の機能をユーザ端末12に実装できる場合にはそのユーザ端末12を事業リスク分析装置11として使用してもよい。後者の場合、ユーザ端末12の構成は図1Bに示したものと同様であってもよい。
図2は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が実行する処理を示すフローチャートである。
以下、セキュリティ対策の提供元である事業者の営業担当者(ユーザ)が、提供先である顧客事業者にセキュリティ対策を提案する例を説明する。
最初に、ユーザは、顧客事業者に対するヒアリング等を実施して、顧客の事業の構成を明確化し、その結果を事業リスク分析装置11に入力する(ステップS1001)。この処理の詳細については図3A~図4を参照して後述する。
次に、ユーザは、ヒアリング等に基づいて顧客の事業の出力に関連する業務(すなわち関連業務)を特定して、その結果を事業リスク分析装置11に入力する(ステップS1002)。この処理の詳細については図5~図8を参照して後述する。
次に、事業リスク分析装置11は、関連業務の構成要素の情報に基づいて、事業301において情報セキュリティに関連して発生する望ましくない事象の発生確率を評価する(ステップS1004)。この処理の詳細については図9~図14を参照して後述する。
次に、事業リスク分析装置11は、事業の出力に基づいて、起こりうる事象を抽出し、それが事業に対して与えるインパクトを評価する(ステップS1005)。この処理の詳細については図15を参照して後述する。
次に、事業リスク分析装置11は、評価した発生確率及びインパクトに基づいて、各事業リスクの大きさ(リスク値)を計算する(ステップS1006)。この処理の詳細については図16及び図17を参照して後述する。
最後に、事業リスク分析装置11は、リスク値が高い事業リスクと、それに関連する業務とを出力する。(ステップS1007)。この処理の詳細については図18及び図19を参照して後述する。
図3A及び図3Bは、それぞれ、本発明の実施例における事業モデル及び業務モデルを示す説明図である。
ステップS1001における事業の構成の明確化は、事業モデル及び業務モデルに基づいて行われる。図3Aに示すように、事業301は、入力302が入力されると、所定の業務(後述)を行って、出力303を出力するものである。この事業301は、規格/計画306に基づいて行われ、その遂行のために人307及びシステム/装置308といったリソースが投入される。
例えば、事業301が部品を製造する事業である場合、入力302は部品の原材料等であり、規格/計画306は当該部品を製造するための規格及び製造計画等の少なくともいずれかである。ここでは入力302と規格/計画306とを区別しているが、これらを全て入力302に含めてもよい。人307は当該業務に関与する人(例えば設計者、製造作業者等)であり、システム/装置308は、業務に使用するシステム及び装置等の少なくともいずれかである。
出力303は、事業の成果物などの、意図する出力304と、意図しない出力305とを含む。例えば部品製造事業の場合、製造された部品が意図する出力304に該当する。また、製造が正常に行われた場合にも当然に発生する廃棄物等も意図する出力304に含まれる。一方、製造が正常に行われなかった場合の廃棄物(例えば不良の部品等)は、意図しない出力305に該当する。また、意図しない出力305として情報が含まれる場合がある。例えば本来は機密である設計情報等が流出した場合には、その情報が意図しない出力305に該当する。
上記の説明では事業301の例として部品を製造する事業を挙げたが、事業301はそれ以外の事業であってもよい。例えば事業301が何らかの情報サービスを提供する事業である場合、入力302はその事業の顧客からの発注情報であり、意図する出力304は当該サービスによって提供される情報であり、意図しない出力305は当該サービスに関する機密情報(例えば顧客の個人情報等)であってもよい。
事業301は、一般に1以上の業務によって構成される。図3Bには、二つの業務によって構成される事業301の例を示す。図3Bの例では、事業301は第1の業務である業務311-1及び第2の業務である業務311-2によって構成される。なお、以下の説明において複数の業務を区別せずにいずれにも共通する説明をする場合には業務311のように記載し、各業務を区別して説明する場合には業務311-1のように枝番号を付して記載する。他の構成要素についても同様である。
業務311-1は、入力312-1が入力されると、出力316-1を出力するものである。出力316-1は、次の業務311-2に入力される。この業務311-1は、規格/計画313-1に基づいて行われ、その遂行のために人314-1及びシステム/装置315-1といったリソースが投入される。
業務311-2は、業務311-1の出力316-1が入力されると、出力316-2を出力するものである。この業務311-2は、規格/計画313-2に基づいて行われ、その遂行のために人314-2及びシステム/装置315-2といったリソースが投入される。
入力312-1は事業301の入力302に相当し、出力316-2は事業301の出力303に相当する。規格/計画313-1及び規格/計画313-2はそれぞれ規格/計画306の少なくとも一部である。人314-1及び人314-2はそれぞれ人307の少なくとも一部である。システム/装置315-1及びシステム/装置315-2はそれぞれシステム/装置308の少なくとも一部である。
図4は、本発明の実施例において明確化された事業の構成を示す説明図である。
図4の例では、事業301が、仕入れ業務311-3、部品製造業務311-4、出荷管理業務311-5、R&D(研究開発)業務311-6及び設計業務311-7によって構成されることが明確化される。
この例において、事業301は部品を製造する事業であり、入力302は原材料である鉄であり、出力304には少なくとも製造された部品が含まれる。仕入れ業務311-3の入力312-3及び出力316-3は、いずれも鉄である。仕入れ業務311-3には、人314-3として在庫管理者が、システム/装置315-3として在庫管理システムが投入される。
なお、上記のように入力312-3及び出力316-3が鉄である場合に、これらを鉄312-3及び鉄316-3と記載する場合がある。他の構成要素についても同様である。また、後述する他の業務の構成要素についても同様である。
部品製造業務311-4には、仕入れ業務311-3の出力316-3である鉄、及び、設計業務311-7の出力316-7である設計情報が入力される。部品製造業務311-4は、規格/計画313-4である生産計画に基づいて行われ、人314-4として作業者が、システム/装置315-4として製造システム及び成型装置が投入され、出力316-4として部品が出力される。
出荷管理業務311-5には、部品製造業務311-4の出力316-4である部品が入力され、人314-5として出荷管理者が、システム/装置313-5として出荷管理システム及び出荷倉庫が投入される。出荷管理業務311-5の出力316-5として部品が出力される。
R&D業務311-6には、人314-6として研究員が、システム/装置315-6として研究用システムが投入される。R&D業務311-6の出力316-6は、研究結果である。設計業務311-7には、R&D業務311-6の出力316-6である研究結果が入力され、人314-7として設計者が、システム/装置315-7として設計システムが投入される。設計業務311-7の出力316-7は、設計情報である。
事業301の出力303を構成する意図する出力304のうち部品304-1は、出荷管理業務311-5の出力である部品316-5に相当する。一方、意図しない出力305のうちモノに相当する廃棄物305-1は、部品製造業務311-4から出力されることが想定される。ここで、廃棄物305-1は、部品製造が正常に行われた場合に当然に発生する廃棄物ではなく、業務における何らかの問題に起因して発生する廃棄物である。ここで、問題としては、例えば、低品質の鉄又は設計情報の誤りといった入力の不良、生産計画の誤り、作業者による作業ミス、又は、製造システム等の不具合等が想定される。
また、意図しない出力305のうち情報に相当する設計情報305-2は、本来機密であるのに漏洩するものであり、部品製造業務311-4又は設計業務311-7から出力されることが想定される。
上記のように事業301を構成する業務311、各業務に投入されるリソース及び各業務の入出力等が明確化され、それらを示す情報が事業構成情報122として事業リスク分析装置11に保持される。
図5は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が事業の出力に関連する業務を特定する処理を示すフローチャートである。
具体的には、図5は、図2のステップS1002において実行される処理を詳細に説明するものである。
最初に、ユーザは、顧客事業者に対するヒアリング等に基づいて、事業301に含まれる業務311を、バリューチェーンにおける「主活動」と「支援活動」とに分類し、その結果を事業リスク分析装置11に入力する(ステップS2001)。この処理の詳細については図6を参照して後述する。
次に、ユーザは、顧客事業者に対するヒアリング等に基づいて、事業301に含まれる業務311から、オンライン処理の業務を抽出して、その結果を事業リスク分析装置11に入力する(ステップS2002)。この処理の詳細については図7Aを参照して後述する。
次に、事業リスク分析装置11は、意図する出力の関連業務を特定し(ステップS2003)、意図しない出力の関連業務を特定して(ステップS2004)、それらの結果を事業リスク分析装置11に入力する。これらの処理の詳細については図7A及び図7Bを参照して後述する。
最後に、事業リスク分析装置11は、各出力と業務311との関係を整理する(ステップS2005)。この処理の詳細については図8を参照して後述する。
図6は、本発明の実施例において特定された業務の分類の説明図である。
ここでは、図4に示すように特定された業務311を「主活動」及び「支援活動」に分類する例を示す。「主活動」とは、一般的なバリューチェーン分析において、直接的な価値を生む活動と分類されるものである。例えば特定された業務311のうち仕入れ業務311-3、部品製造業務311-4及び出荷管理業務311-5が主活動に分類される。図6ではこれらの業務を太枠で示す。一方、「支援活動」とは、主活動をサポートするための活動と分類されるものである。例えば特定された業務311のうちR&D業務311-6及び設計業務311-7が支援活動に分類される。なお、このような分類は一例であり、ユーザはヒアリング等の結果に基づいて適宜分類を行うことができる。
図7Aは、本発明の実施例におけるオンライン処理の業務の抽出及び意図する出力の関連業務の特定の説明図である。
ここでは、図4に示すように特定された業務311から、オンライン処理の業務を抽出し、さらに、意図する出力に関連する業務を特定する例を示す。オンライン処理の業務とは、入力が行われた場合に直ちに業務が実行されてその成果が出力される業務311である。
図7Aの例では、部品製造業務311-4及び出荷管理業務311-5が、即時的に行われるオンライン処理の業務として特定される。一方、仕入れ業務311-3は、例えば1日に1回、それまでに入力された鉄を対象として実行されるなど、即時的でない処理が行われるため、オンライン処理の業務として抽出されない。R&D業務311-6及び設計業務311-7も同様に即自的でないためオンライン処理の業務として抽出されない。
なお、オンライン処理の業務は、即時的に行われるため、セキュリティリスクが発生した場合に、出力の停止、出力の遅延又は不正な出力など、業務において望ましくない事象を起こしやすい。本実施例では、そのような業務が、より分析の重要性が高い業務として抽出される。ただし、各業務がオンライン処理の業務に該当するか否かは、それぞれの業務の実態に依存するため、ユーザはヒアリング等の結果に基づいて業務の実態に即して適切にオンライン処理の業務を抽出することが望ましい。また、全ての業務を対象として重要度を設定せずに分析したい場合には、ステップS2002をスキップしてもよい。
また、図7Aは、意図する出力の関連業務として部品製造業務311-4及び出荷管理業務311-5が特定される例を示す。これは、意図する出力である部品304-1が部品製造業務311-4によって製造され、出荷管理業務311-5を経て出力されるためである。
図7Bは、本発明の実施例における意図しない出力の関連業務の特定の説明図である。
図7Bは、意図しない出力の関連業務として部品製造業務311-4及び設計業務311-7が特定される例を示す。これは、意図しない出力である廃棄物305-1が部品製造業務311-4から出力され、意図しない出力である設計情報305-2が部品製造業務311-4及び設計業務311-7から出力されるためである。
図7A及び図7Bに示した関連業務の特定は、事業リスク分析装置11が、図4に示した事業構成情報122に基づいて行うことができる。特定された関連業務は、例えば図8に示す関連業務情報123として事業リスク分析装置11の記憶部112に保持される。
図8は、本発明の実施例において特定された関連業務情報123の説明図である。
関連業務情報123は、出力種別801、出力802及び関連業務803を含む。出力種別801は、各出力の種別(すなわち意図する出力か意図しない出力か)を示す。出力802は、各出力の内容を示す。関連業務803は、各出力に関連する業務を示す。
上記の図4に示した事業構成情報122に基づく関連業務情報123は、意図する出力である部品304-1が部品製造業務311-4及び出荷管理業務311-5に関連すること、意図しない出力である廃棄物305-1が部品製造業務311-4に関連すること、及び、意図しない出力である設計情報305-2が部品製造業務311-4及び設計業務311-7に関連することを示している。
図9は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が事象の発生確率を評価する処理を示すフローチャートである。
最初に、ユーザは、顧客事業者に対して発生確率評価表124及び発生頻度算出表125を提示して、その内容について合意する(ステップS3001)。発生確率評価表124及び発生頻度算出表125の詳細については、図10~図13Bを参照して後述する。
次に、事業リスク分析装置11は、発生確率評価表124に基づいて、「脅威の現実化」の観点で、いずれかの関連業務の各構成要素におけるリスクの発生確率を評価する(ステップS3002)。次に、事業リスク分析装置11は、発生確率評価表124に基づいて、「脆弱性の利用」の観点で、各構成要素におけるリスクの発生確率を評価する(ステップS3003)。次に、事業リスク分析装置11は、ステップS3002及びステップS3003の評価結果に基づいて、各構成要素におけるリスクの発生確率を特定する(ステップS3004)。
次に、事業リスク分析装置11は、当該関連業務の全ての構成要素について評価が完了したかを判定する(ステップS3005)。評価が完了していない構成要素が残っている場合(ステップS3005:No)、事業リスク分析装置11は、評価が完了していない構成要素を対象としてステップS3002~ステップS3004を実行する。全ての構成要素について評価が完了した場合(ステップS3005:Yes)、事業リスク分析装置11は、構成要素の評価結果のうち最も高い値を当該関連業務におけるリスクの発生確率として採用する(ステップS3006)。
次に、事業リスク分析装置11は、全ての関連業務について評価が完了したかを判定する(ステップS3007)。評価が完了していない関連業務が残っている場合(ステップS3007:No)、事業リスク分析装置11は、評価が完了していない関連業務を対象としてステップS3002~ステップS3006を実行する。全ての関連業務について評価が完了した場合(ステップS3007:Yes)、処理を終了する。
図10は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が保持する、人に関する発生確率評価表124を示す説明図である。
具体的には、図10は、発生確率評価表124のうち、業務311の構成要素である人314に関する部分124-1を示す。
発生確率評価表124は、構成要素1001、観点1002、サブ観点1003、尺度1004及びガイドワード1005を含む。
構成要素1001は、業務311の構成要素を特定する情報である。図10の例では構成要素1001の値は「人」となる。
観点1002は、リスクの評価の観点を示すものである。本実施例では、観点1002の値は「脅威の現実化」又は「脆弱性の利用」のいずれかとなる。ここで、脅威の現実化の発生頻度とは、情報セキュリティ上の脅威が発生する確率であり、脆弱性の利用の発生確率とは、発生した脅威がシステム等に存在する脆弱性を利用する事態が発生する確率である。一例を挙げると、脅威の現実化とは、ウィルスが事業のシステムに到達することに相当し、脆弱性の利用は、そのウィルスが事業のシステムに構築されたセキュリティ対策を突破することに相当する。これらは、例えば、IEC62443-2-1に記述されたものであってもよい。脅威が発生し、かつ、その脅威がシステムの脆弱性を利用できたときに、情報セキュリティに関連する望ましくない事象が発生すると考えられる。
尺度1004は、各観点の(すなわち脅威の現実化又は脆弱性の利用の)発生確率の高さを示す値である。図10の例では、尺度1004の値は、高い発生確率を示す「高」、中程度の発生確率を示す「中」、及び、低い発生確率を示す「低」のいずれかとなる。このような値は一例であり、例えばより具体的な確率の数値など、上記と異なる値が使用されてもよい。
ガイドワード1005は、各構成要素における各観点の発生確率の高さに対応する、各構成要素の状態を表現する情報である。
なお、構成要素と観点との組み合わせをさらに分類することによって適切なガイドワードを設定しやすい場合がある。このために、サブ観点1003が設定されてもよい。この分類は必要に応じて行えばよく、図10の例ではサブ観点1003は設定されない。
図10の例では、構成要素「人」の観点「脅威の現実化」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「本人認証の仕組みがあり、定期的に監査を実行している」、「本人認証の仕組み、又は監査の仕組みが一部ある」、及び、「本人認証の仕組みや監査の仕組みがない」である。これは、業務311の構成要素である人314に関して、脅威の現実化の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、本人認証の仕組みがあって定期的に監査を実施している場合には脅威の現実化の発生確率が低いと評価され、本人認証の仕組み又は監査の仕組みが一部ある場合には脅威の現実化の発生確率が中程度と評価され、本人認証の仕組みも監査の仕組みもない場合には脅威の現実化の発生確率が高いと評価される。
一方、構成要素「人」の観点「脆弱性の利用」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「教育や訓練を定期的に実施」、「始めに教育を実施」、及び、「教育や訓練プログラムがない」である。これは、業務311の構成要素である人314に関して、脆弱性の利用の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、リスク低減のための人に対する教育及び訓練を定期的に実施している場合には脆弱性の利用の発生確率が低いと評価され、最初(例えば入社時又は着任時等)に教育を実施している場合には脆弱性の利用の発生確率が中程度と評価され、教育及び訓練プログラムがない場合には脆弱性の利用の発生確率が高いと評価される。
図11は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が保持する、システム/装置に関する発生確率評価表124を示す説明図である。
具体的には、図11は、発生確率評価表124のうち、業務311の構成要素であるシステム/装置315に関する部分124-2を示す。
図11の例では、構成要素1001の値は「人」となる。また、観点1002の値「脅威の現実化」に対応するサブ観点1003として「ネットワーク」及び「コンポーネント」が含まれる。
構成要素「システム/装置」の観点「脅威の現実化」及びサブ観点「ネットワーク」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「他ネットワークから隔離された状態」、「専用線の閉域網に接続」、及び、「インターネット等の公衆網に接続」である。これは、業務311の構成要素であるシステム/装置315に関して、ネットワークにおける脅威の現実化の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、当該システム又は装置が他のネットワークから隔離された状態である場合には脅威の現実化の発生確率が低いと評価され、専用線等の閉域網に接続されている場合には脅威の現実化の発生確率が中程度と評価され、インターネット等の公衆網に接続されている場合には脅威の現実化の発生確率が高いと評価される。
構成要素「システム/装置」の観点「脅威の現実化」及びサブ観点「コンポーネント」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「汎用OS/ミドル/アプリをほとんど利用していない」、「一部汎用OS/ミドル/アプリを利用」、及び、「汎用OS/ミドル/アプリを利用」である。これは、業務311の構成要素であるシステム/装置315に関して、コンポーネントにおける脅威の現実化の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、当該システム又は装置がOS(Operating System)、ミドルウェア及びアプリケーションといったコンポーネントとして汎用品をほとんど利用していない(例えば利用しているコンポーネントのうち汎用品が全体の3割より少ない)場合には脅威の現実化の発生確率が低いと評価され、一部に汎用品を利用している(例えば全体の3割から7割が汎用品である)場合には脅威の現実化の発生確率が中程度と評価され、汎用品を利用している(例えば全体の7割以上が汎用品である)場合には脅威の現実化の発生確率が高いと評価される。
構成要素「システム/装置」の観点「脆弱性の利用」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「セキュリティを考慮したシステム開発/構築+セキュリティ運用保守の実施」、「ある程度セキュリティを考慮しているが、更新されるセキュリティ状況(脆弱性等)はキャッチできていない」、及び、「設計開発において、セキュリティを特に考慮していない」である。これは、業務311の構成要素であるシステム/装置315に関して、脆弱性の利用の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、当該システム又は装置が開発又は構築されるときにセキュリティが考慮され、かつ、セキュリティ運用保守が実施されている場合には脆弱性の利用の発生確率が低いと評価され、ある程度セキュリティが考慮されているが、更新されるセキュリティ状況をキャッチできていない場合には脆弱性の利用の発生確率が中程度と評価され、セキュリティが考慮されていない場合には脆弱性の利用の発生確率が高いと評価される。
図12は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が保持する、入力、規格、計画に関する発生確率評価表124を示す説明図である。
具体的には、図12は、発生確率評価表124のうち、業務311の構成要素である入力312及び規格/計画313に関する部分124-4を示す。
図12の例では、構成要素1001の値は「入力、規格/計画」となる。
構成要素「入力、規格/計画」の観点「脅威の現実化」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「組織内ネットワーク(LAN、Local Area Network等)を経由して受け取る、又は、内部者のみがアクセス可能な敷地内で内部者により渡される」、「広域ネットワーク(WAN、Wide Area Network等)を経由して受け取る、又は、内部者を介して受け取るが、外部者もアクセスできる可能性がある」、及び、「インターネットを経由して受け取る、又は、外部者を介して受け取る」である。これは、業務311の構成要素である入力、規格又は計画に関して、脅威の現実化の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、当該入力、規格又は計画がLAN等の組織内ネットワークを経由して取得されるか、又は、内部者のみがアクセス可能な敷地内で内部者から取得される場合には脅威の現実化の発生確率が低いと評価され、WAN等の広域ネットワークを経由して取得されるか、又は、内部者から取得されるが外部者からもアクセスできる可能性がある場合には脅威の現実化の発生確率が中程度と評価され、インターネットを経由して取得されるか、外部者を介して取得される場合には脅威の現実化の発生確率が高いと評価される。
構成要素「入力、規格/計画」の観点「脆弱性の利用」の発生確率の尺度「低」、「中」及び「高」に対応するガイドワード1005は、それぞれ、「受け取った入力をチェックする仕組みがある(技術的にある)」、「受け取った入力を簡易チェックする(目視確認など)」、及び、「受け取った入力をチェックする仕組みがない」である。これは、業務311の構成要素である入力、規格又は計画に関して、脆弱性の利用の発生確率が次のように評価されることを示している。すなわち、当該入力、規格又は計画を取得したときにそれをチェックする技術的な仕組みがある場合には脆弱性の利用の発生確率が低いと評価され、目視チェックなどの簡易チェックを行う仕組みがある場合には脆弱性の利用の発生確率が中程度と評価され、チェックする仕組みがない場合には脆弱性の利用の発生確率が高いと評価される。
図13Aは、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が保持する、入力、規格、計画及び人に関する発生頻度算出表125を示す説明図である。
発生頻度算出表125は、評価された脅威の現実化及び脆弱性の利用の発生確率に基づいて、望ましくない事象が発生する頻度を算出するための表である。具体的には、脅威の現実化のリスクの発生確率1402と脆弱性の利用のリスクの発生確率1401との組み合わせに対応する事象の発生頻度の値(すなわち事象の発生確率の高さを示す値)が保持される。
図13Aには、業務311の構成要素のうち入力312、規格/計画313及び人314に関する脅威の現実化及び脆弱性の利用の発生確率に基づく事象の発生頻度を算出するための発生頻度算出表125-1を示す。この例では、脅威の現実化の発生確率及び脆弱性の利用の発生確率の両方が「高」である場合に、事象の発生頻度は「5」となる。なお、この例では事象の発生頻度の数値が大きいほど発生頻度が高いことを示す。
同様に、脅威の現実化のリスクの発生確率及び脆弱性の利用のリスクの発生確率の一方が「高」、もう一方が「中」である場合に、事象の発生頻度は「4」となる。脅威の現実化のリスクの発生確率及び脆弱性の利用のリスクの発生確率の一方が「高」、もう一方が「低」であるか、又は、それらの両方が「中」である場合に、事象の発生頻度は「3」となる。脅威の現実化のリスクの発生確率及び脆弱性の利用のリスクの発生確率の一方が「中」、もう一方が「低」である場合に、事象の発生頻度は「2」となる。脅威の現実化のリスクの発生確率及び脆弱性の利用のリスクの発生確率の両方が「低」である場合に、事象の発生頻度は「1」となる。
図13Bは、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が保持する、システム及び装置に関する発生頻度算出表125を示す説明図である。
図13Bには、業務311の構成要素のうちシステム/装置315に関する脅威の現実化及び脆弱性の利用の発生確率に基づく事象の発生頻度を算出するための発生頻度算出表125-2を示す。図11に示すように、脅威の現実化については二つのサブ観点に応じた値が設定されるため、この例では、それらの二つの値と、脆弱性の利用の発生確率の値との組み合わせに応じた事象の発生頻度が保持される。
具体的には、脅威の現実化の二つのサブ観点の発生確率の両方が「高」、又は、一方が「高」でもう一方が「中」である場合に、脆弱性の利用のリスクの発生確率が「高」であれば事象の発生頻度は「5」、脆弱性の利用の発生確率が「中」であれば事象の発生頻度は「4」、脆弱性の利用の発生確率が「低」であれば事象の発生頻度は「3」となる。
脅威の現実化の二つのサブ観点の発生確率の両方が「中」、又は、一方が「高」でもう一方が「低」である場合に、脆弱性の利用の発生確率が「高」であれば事象の発生頻度は「4」、脆弱性の利用の発生確率が「中」であれば事象の発生頻度は「3」、脆弱性の利用の発生確率が「低」であれば事象の発生頻度は「2」となる。
脅威の現実化の二つのサブ観点の発生確率の両方が「低」、又は、一方が「中」でもう一方が「低」である場合に、脆弱性の利用の発生確率が「高」であれば事象の発生頻度は「3」、脆弱性の利用の発生確率が「中」であれば事象の発生頻度は「2」、脆弱性の利用の発生確率が「低」であれば事象の発生頻度は「1」となる。
図10~図13Bに示した表の作成方法は限定しない。例えばユーザが顧客事業者に対するヒアリング等に基づいてこれらの表を作成してもよいし、予め用意されたテンプレートを使用してもよいし、予め用意されたテンプレートをヒアリングの結果に基づいて修正することで作成してもよい。そのような作成及び確認作業が図9のステップS3001において行われてもよい。
ステップS3002及びS3003では、例えば、ユーザが顧客事業者に対するヒアリング等を行うことで顧客事業者の事業の各業務の各構成要素の状態を把握し、それを図10~図12に示したガイドワード1005と照合し、該当するガイドワード1005に対応する尺度1004を取得することによって、各構成要素の脅威の現実化及び脆弱性の利用の発生確率を特定してもよい。
また、図13A及び図13Bに示した発生頻度算出表125は、発生頻度を算出するための情報の一例であり、上記以外の情報が使用されてもよい。前述のように、脅威が現実化し、かつ、その脅威が脆弱性を利用したときに事象が発生すると考えられることから、事象の発生頻度は、脅威の現実化の発生確率が高いほど事象の発生頻度が高くなり、脆弱性の利用の発生確率が高いほど事象の発生頻度が高くなるように算出される。例えば、脅威の現実化の発生確率及び脆弱性の利用の発生確率が、0から1までの数値又は0%から100%までの数値によって表される場合、両者の発生確率を乗算することによって事象の発生頻度を算出する数式を、発生頻度算出表125の代わりに発生頻度を算出するための情報として使用してもよい。
図14は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が各関連業務における事象の発生頻度を特定した結果を示す説明図である。
すなわち、図14は、図9のステップS3006の実行結果として得られる情報の一例である。この情報は、関連業務1501、構成要素1502、評価結果及び理由1503、構成要素の発生頻度1504及び関連業務の発生頻度1505を含む。関連業務1501は、事業301を構成する業務311のうち関連業務を特定する情報である。構成要素1502は、関連業務の構成要素を特定する情報である。評価結果及び理由1503は、各構成要素における脅威の現実化及び脆弱性の利用の発生確率の評価結果及びその理由を示す。構成要素の発生頻度1504は、各構成要素における事象の発生頻度を示す。関連業務の発生頻度1505は、各関連業務における事象の発生頻度を示す。
ここで、図14の例について説明する。関連業務である部品製造業務311-4の構成要素のうち入力は鉄及び設計情報である。これらのうち設計情報の入力についてヒアリングした結果、設計情報が社内LANを経由して入手され、担当者の承認済みであることが目視で確認されていることが判明した場合、これらは図12に示すガイドワード1005のうち「組織内ネットワーク(LAN等)を経由して受け取る」及び「受け取った入力を簡易チェックする(目視確認など)」に該当することから、設計情報の入力に関する脅威の現実化の発生確率は「低」、脆弱性の利用の発生確率は「中」と特定される(ステップS3002~S3004)。これらの結果を図13Aに示す発生頻度算出表125-1に照合することによって、部品製造業務311-4への設計情報の入力における事象の発生頻度は「2」と特定され、構成要素の発生頻度1504として保持される(ステップS3006)。
同様に、部品製造業務311-4の構成要素である鉄、作業者、製造システム、整形装置及び生産計画における事象の発生頻度を特定した結果、それぞれ「2」、「1」、「4」、「2」及び「1」となった場合、それらのうち最大の値「4」が、部品製造業務311-4における事象の発生頻度として採用され、関連業務の発生頻度1505として保持される。
他の関連業務である出荷管理業務311-5及び設計業務311-7についても同様の処理が行われ、関連業務の発生頻度1505としてそれぞれ「3」及び「5」が特定される。
図15は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が起こりうる事象及びそのインパクトを評価した結果を示す説明図である。
すなわち、図15は、図2のステップS1005の実行結果として得られるインパクト情報126の一例である。この情報は、出力項目1601、HAZOPガイドワード1602、発生事象1603、観点1604、事業リスク1605及びインパクト1606を含む。出力項目1601は、事業の出力を特定する情報である。HAZOPガイドワード1602は、事業の出力に対応して起こりうる事象の類型を示す。例えば、HAZOP(Hazard and Operability Studies)のガイドワードに基づく類型であってもよいし、それ以外の類型の情報を利用できる場合にはそれを利用してもよい。
発生事象1603は、出力及び事象の類型に対応して実際に発生することが想定される事象を示す。観点1604は、想定した事象が発生した場合にその影響が及ぶ対象(例えば、人、環境及び組織)を示す。事業リスク1605は、想定した事象が発生した場合の影響の内容を表現する情報である。インパクト1606は、想定した事象が発生した場合の影響の大きさを示す。観点ごとの事象の影響のレベルは、例えばIEC62443-2-1など、公知の規格に準拠したものであってもよい。
出力項目1601には、事業301において想定される全ての出力、例えば、意図する出力304である部品304-1、意図しない出力305である廃棄物305-1及び設計情報305-2を示す情報が保持される。「部品」に対応するHAZOPガイドワード1602には、部品の出力に関する事象の類型として、「no」(出力なし)、「invalid」(不正出力)、「much」(過剰出力)及び「less」(出力不足)が保持される。これらに対応する発生事象1603は、それぞれ、「部品の製造が停止する」、「不正な部品が製造される」、「過剰に部品が製造される」及び「部品の製造量が不足する」である。
一方、意図しない出力である「廃棄物」及び「設計情報」については、出力されないことが望ましいものであるため、それらに対応するHAZOPガイドワード1602の値はいずれも「出力される」となり、発生事象1603としてそれぞれ「予期せぬ廃棄物が出る」及び「設計情報が流出する」が保持される。
例えば、部品の出力について、「部品の製造が停止する」という事象が発生した場合、それが組織に対して与える影響(事業リスク1605)として、「部品の製造が停止し、顧客の信頼を失墜する」といったものが想定され、そのインパクト1606は「大」と評価される。
一方、部品の出力について、「不正な出力が製造される」という事象が発生した場合、それが人に対して与える影響として、「不正な部品が製造され、その顧客(利用者)が負傷する」といったものが想定され、そのインパクト1606は「中」と評価される。さらに、それが組織に与える影響として、「不正な部品が製造され、顧客の信頼を失墜する」といったものが想定され、そのインパクト1606は「中」と評価される。
このように、事業301の出力303に対応するそれぞれの類型の事象が発生した場合の各対象への影響の内容及びその程度(インパクトの大きさ)が評価され、記憶部112に保持される。この評価は、ユーザが顧客に対するヒアリングに基づいて行うことができる。
図16は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が保持するリスク値算出表127を示す説明図である。
リスク値算出表127には、インパクト1701の値と発生頻度1702の値とに対応するリスク値が保持される。ここで、インパクト1701は図15のインパクト1606の値に対応し、発生頻度1702は図14の関連業務の発生頻度1505に対応する。インパクト1701の値が大きいほどリスク値が大きくなり、発生頻度1702が大きいほどリスク値が大きくなるように設定される。
例えば、インパクト1701が「大」の場合の発生頻度1702の値「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」に対応するリスク値がそれぞれ「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」と設定されてもよい。インパクト1701が「中」の場合の発生頻度1702の値「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」に対応するリスク値がそれぞれ「4」、「3」、「2」、「1」及び「1」と設定されてもよい。インパクト1701が「省」の場合の発生頻度1702の値「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」に対応するリスク値がそれぞれ「3」、「2」、「1」、「1」及び「1」と設定されてもよい。
図17は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が各業務のリスク値を算出した結果を示す説明図である。
図17に示すリスク値算出結果は、図15に示したものと同様の出力項目1601~インパクト1606に加えて、関連業務1801、発生頻度1802及びリスク値1803を含む。出力項目1601~インパクト1606については説明を省略する。
関連業務1801は、各出力の関連業務を示す。発生頻度1802は、各関連業務における想定した事象の発生頻度を示す。リスク値1803は、インパクト1606と発生頻度1802都に基づいて算出された各関連業務のリスク値を示す。
例えば、部品の出力について、「部品の製造が停止する」という事象が発生した場合、それが組織に対して与える影響(事業リスク1605)として、「部品の製造が停止し、顧客の信頼を失墜する」といったものが想定され、そのインパクト1606は「大」と評価される。さらに、図14に示したように、部品の出力の関連業務である部品製造業務311-4及び出荷管理業務311-5における事象の発生頻度はそれぞれ「4」及び「3」であることから、図16のリスク値算出表127に基づいて、部品製造業務311-4及び出荷管理業務311-5における当該事象のリスク値はそれぞれ「4」及び「3」と算出される。部品の出力に関する他の事象のリスク値、及び、他の出力に関するリスク値も同様に算出される。
図18は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が処理の結果として出力する情報の第1の例を示す説明図である。
具体的には、図18は、ステップS1007において出力される情報の一例である。この情報は、事業リスク分析装置11の表示部114がユーザに対して出力してもよいし、事業リスク分析装置11がネットワーク13を介してユーザ端末12に出力し、ユーザ端末12がユーザに対して出力してもよい。後述する図19の情報も同様である。
図18の例では、図17に示したリスク値の算出結果をリスク値の高さに従ってソートした情報が出力される。すなわち、図18に示す事業リスク1901、観点1902、インパクト1903、関連業務1904、発生頻度1905及びリスク値1906は、それぞれ、図17の事業リスク1605、観点1604、インパクト1606、関連業務1801、発生頻度1802及びリスク値1803に対応し、それらの情報がリスク値1906の大きさの順にソートされている。
さらに、図18に示す情報は、コメント1907を含んでもよい。図18の例では、コメント1907として、大きいリスク値に関連する業務を特定する情報が出力される。
図19は、本発明の実施例の事業リスク分析装置11が処理の結果として出力する情報の第2の例を示す説明図である。
図19の例では、図17に示したリスク値の算出結果を、関連業務ごとにまとめてソートした情報が出力される。すなわち、図19に示す事業リスク1901~リスク値1906は、図18に示したものと同様であるが、図19ではそれらの情報が業務ごとにまとめられており、さらに、業務の重要度2001が追加されている。
業務の重要度2001は、各関連業務のリスク値1906に基づいて算出される。例えば、関連業務ごとの事象のリスク値に、所定の基準(図19の例では「4」)以上の値が含まれる場合には、その関連業務の重要度を「高」と判定し、そうでない場合には「中」又は「低」と判定してもよい。
コメント2002としては、各関連業務の重要度をまとめた情報が出力されてもよい。
図18又は図19に示す情報を提示することによって、事業に潜在するセキュリティ上の脆弱性を可視化し、対策の提案に活用することができる。
なお、本発明の実施形態のシステムは、例えば次のように構成されてもよい。
(1)事業リスク分析システム(例えば事業リスク分析装置11又はその機能を有するシステム全体)であって、演算部(例えば演算部111)と、記憶部(例えば記憶部112)と、を有し、記憶部は、事業構成情報(例えば事業構成情報122)と、発生確率評価情報(例えば発生確率評価表124)と、を保持し、事業構成情報は、事業に含まれる業務及び前記業務を構成する構成要素を特定する情報を含み、発生確率評価情報は、構成要素において情報セキュリティ上の脅威の現実化が発生する確率を示す値と、構成要素の状態を表現するガイドワードとを対応付ける情報、及び、構成要素において脅威による脆弱性の利用が発生する確率を示す値と、構成要素の状態を表現するガイドワードとを対応付ける情報を含み、演算部は、発生確率評価情報に含まれるガイドワードに基づいて、業務の構成要素の実際の状態に対応する脅威の現実化が発生する確率を示す値及び脆弱性の利用が発生する確率を示す値が特定された場合、特定された値に基づいて、業務の構成要素において情報セキュリティに関する事象が発生する頻度を算出し(例えばステップS1004、S3002~S3003)、構成要素における事象の発生頻度に基づいて、業務における事象の発生頻度を算出し(例えばステップS1004、S3004)、事象の発生頻度と、事象が事業に与える影響の大きさと、に基づいて、業務のリスク値を算出する(例えばステップS1006)。
これによって、事業におけるセキュリティのリスクを適切に評価することができる。
(2)上記(1)において、演算部は、脅威の現実化が発生する確率が高いほど事象が発生する頻度が高くなり、脆弱性の利用が発生する確率が高いほど事象が発生する頻度が高くなるように、事象が発生する頻度を算出する(例えばステップS3004、図13A、図13B)。
これによって、事象の発生頻度を適切に算出することができる。
(3)上記(2)において、事業は、複数の業務を含み、事業構成情報は、事業の出力を特定する情報を含み、演算部は、事業構成情報に基づいて、複数の業務から、事業の出力の関連業務を特定し(例えばステップS1002)、特定された関連業務について、事象が発生する頻度を算出する(例えばステップS1004)。
これによって、事業の出力への影響に基づいてリスクを適切に評価することができる。
(4)上記(3)において、複数の業務のうち、事業の出力となる物又は情報を出力する業務が関連業務として特定され、記憶部は、業務の出力ごとに、事象が発生した場合の事業への影響の大きさを示す情報(例えば図15のインパクト1606)を保持し、演算部は、事象が発生する頻度が高いほど事業のリスク値が大きくなり、事象が発生した場合の事業への影響が大きいほど事業のリスク値が大きくなるように、事業のリスク値を算出する(例えばステップS1006、図16)。
これによって、事象の発生頻度とその影響の大きさに基づいて事業のリスクを適切に評価することができる。
(5)上記(4)において、事業の出力は、意図する出力(例えば意図する出力304)及び意図しない出力(例えば意図しない出力305)を含み、関連業務における前記事象は、意図する出力の停止、不正、過剰及び不足、並びに、意図しない出力の発生の少なくとも一つ(例えば図15のHAZOPガイドワード1602)を含む。
これによって、事業の出力への影響に基づいてリスクを適切に評価することができる。
(6)上記(1)において、業務の構成要素は、業務の入力(例えば入力312)、並びに、業務に投入される人(例えば人314)、システム、装置(例えばシステム/装置315)、規格及び計画(例えば規格/計画313)の少なくとも一つを含む。
これによって、業務の構成要素に基づいてリスクを適切に評価することができる。
(7)上記(1)において、業務は、複数の構成要素によって構成され、演算部は、業務を構成する複数の構成要素における事象の発生頻度のうち最大のものを、業務における事象の発生頻度として算出する。
これによって、各業務におけるリスクを適切に評価することができる。
(8)上記(1)において、事業は、複数の業務を含み、演算部は、複数の業務のうち、即時的な処理が行われるオンライン業務について、事象が発生する頻度を算出する。
これによって、事業のリスクを適切に評価することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したものであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。