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JP7824564B2 - セラミックス焼結体 - Google Patents
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JP7824564B2 - セラミックス焼結体 - Google Patents

セラミックス焼結体

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Description

本願は、セラミックス焼結体を開示する。
各種の構造材料としてセラミックス焼結体が使用されている。セラミックス焼結体には、高い靭性が求められる場合がある。セラミックス焼結体の靭性を高める方法として、熱膨張差の異なる2相を混合し、残留応力を発生させることで、き裂の進展を抑制する方法がある(例えば、特許文献1及び2)。
特開2016-132607号公報 特開2005-035803号公報
従来のセラミックス焼結体は、靭性及び耐摩耗性の両立に関して、改善の余地がある。
本願は、上記課題を解決するための手段として、以下の複数の態様を開示する。
<態様1>
第1化合物と第2化合物とを含むセラミックス焼結体であって、
前記第1化合物が、炭化珪素であり、
前記第2化合物が、第四族元素の二ホウ化物であり、
前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下であり、
前記セラミックス焼結体の研磨面の300μm×300μmの領域を15μm×15μmの400個の区画に区切り、前記区画の各々について前記第1化合物の面積比率を特定した場合における、前記第1化合物の面積比率の変動係数CVが、0.14超0.23未満である、
セラミックス焼結体。
<態様2>
前記第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表される、
態様1のセラミックス焼結体。
<態様3>
前記変動係数CVが、0.15以上0.20以下である、
態様1又は2のセラミックス焼結体。
<態様4>
5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、
480MPa以上の曲げ強度を有する、
態様1~3のいずれかのセラミックス焼結体。
<態様5>
5.5mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、
500MPa以上の曲げ強度を有する、
態様1~3のいずれかのセラミックス焼結体。
<態様6>
前記セラミックス焼結体に対してアブレシブ摩耗試験を行った場合において、単位投入粒子量あたりの前記セラミックス焼結体の摩耗量が、0.5mm/kg以下となる、
態様1~5のいずれかのセラミックス焼結体。
<態様7>
第1化合物と第2化合物とを含むセラミックス焼結体であって、
前記第1化合物が、炭化珪素であり、
前記第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表される第四族元素の二ホウ化物であり、
前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下であり、
5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、
500MPa以上の曲げ強度を有し、
前記セラミックス焼結体に対してアブレシブ摩耗試験を行った場合において、単位投入粒子量あたりの前記セラミックス焼結体の摩耗量が、0.5mm/kg以下となる、
セラミックス焼結体。
本開示のセラミックス焼結体においては、高い靭性と耐摩耗性とが両立される。
セラミックス焼結体の一例を示す概略図である。 変動係数CVが小さいセラミックス焼結体におけるき裂の進展を説明するための概略図である。 変動係数CVが所定範囲内であるセラミックス焼結体におけるき裂の進展を説明するための概略図である。 変動係数CVが大きいセラミックス焼結体におけるき裂の進展を説明するための概略図である。 アブレシブ試験装置について説明するための概略図である。
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係るセラミックス焼結体について説明する。ただし、本開示のセラミックス焼結体は、以下の実施形態に限定されるものではない。
1.セラミックス焼結体
本開示のセラミックス焼結体は、第1化合物と第2化合物とを含む。前記第1化合物は、炭化珪素である。前記第2化合物は、第四族元素の二ホウ化物である。前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合は、50質量%以上70質量%以下である。前記セラミックス焼結体の研磨面の300μm×300μmの領域を15μm×15μmの400個の区画に区切り、前記区画の各々について前記第1化合物の面積比率を特定した場合における、前記第1化合物の面積比率の変動係数CVは、0.14超0.23未満である。
1.1 第1化合物
本開示のセラミックス焼結体は、第1化合物として、炭化珪素を含む。セラミックス焼結体に占める第1化合物の割合は、後述の第2化合物の割合に依存する。セラミックス焼結体に占める第1化合物の割合は、例えば、30質量%以上50質量%以下であってもよく、32質量%以上48質量%以下であってもよく、34質量%以上46質量%以下であってもよい。これら下限値及び上限値は任意に組み合わせられてもよい。
本開示のセラミックス焼結体において、第1化合物の形態は、特に限定されるものではない。例えば、図1に示されるように、セラミックス焼結体10は、第1化合物からなる第1相10aを有する。当該第1相10aの大きさや形状は特に限定されるものではない。第1相10aは、第1化合物の結晶粒からなるものであってもよい。第1相10aが1つの結晶粒から構成される場合、当該結晶粒の直径(断面における円相当直径)は、例えば、1μm以上10μm以下、又は、2μm以上5μm以下であってもよい。これら下限値及び上限値は任意に組み合わせられてもよい。「結晶粒」は、1つの結晶子からなるものであってもよいし、複数の結晶子が1つにまとまって1つの粒を構成したものであってもよい。尚、第1化合物の結晶粒や後述の第2化合物の結晶粒が、複数の結晶子が1つにまとまって1つの粒を構成したものである場合においても、き裂は第1化合物の結晶粒と第2化合物の結晶粒との間で進展するものと考えられる。
本開示のセラミックス焼結体において、第1化合物は、その面積比率についての変動係数CVが所定の範囲となるように、ある程度偏在して存在している。変動係数CVの詳細については後述する。
1.2 第2化合物
本開示のセラミックス焼結体は、第2化合物として、第四族元素の二ホウ化物を含む。第四族元素(チタン族元素)は、チタン、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1種である。すなわち、第2化合物は、チタンの二ホウ化物であってもよいし、ジルコニウムの二ホウ化物であってもよいし、ハフニウムの二ホウ化物であってもよいし、チタン及びジルコニウムの複合二ホウ化物であってもよいし、チタン及びハフニウムの複合二ホウ化物であってもよいし、ジルコニウム及びハフニウムの複合二ホウ化物であってもよいし、チタン、ジルコニウム及びハフニウムの複合二ホウ化物であってもよい。本発明者の知見によれば、第2化合物が、チタンを含む二ホウ化物である場合に、セラミックス焼結体が、靭性及び耐摩耗性の双方に一層優れたものとなり易い。特に、第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表されるものである場合、靭性及び耐摩耗性に関して顕著な向上効果が期待できる。
セラミックス焼結体に占める第2化合物の割合は、50質量%以上70質量%以下である。セラミックス焼結体に占める第2化合物の割合が少な過ぎると、セラミックス焼結体が靭性及び耐摩耗性の双方に劣るものとなり易い。一方、セラミックス焼結体に占める第2化合物の割合が多過ぎると、セラミックス焼結体が耐摩耗性に劣るものとなり易い。また、セラミックス焼結体に占める第2化合物の割合は、セラミックス焼結体の曲げ強度等のその他の機械特性にも影響を与える。本発明者の知見によれば、セラミックス焼結体に占める第2化合物の割合が50質量%以上70質量%以下である場合に、セラミックス焼結体において高い靭性と耐摩耗性とが両立され、かつ、セラミックス焼結体が優れた曲げ強度等を有するものとなり易い。セラミックス焼結体に占める第2化合物の割合は、52質量%以上68質量%以下であってもよく、54質量%以上66質量%以下であってもよい。これら下限値及び上限値は任意に組み合わせられてもよい。
本開示のセラミックス焼結体において、第2化合物の形態は、特に限定されるものではない。例えば、図1に示されるように、セラミックス焼結体10は、第2化合物からなる第2相10bを有する。当該第2相10bの大きさや形状は特に限定されるものではない。第2相10bは、第2化合物の結晶粒からなるものであってもよい。第2相10bが1つの結晶粒から構成される場合、当該結晶粒の直径(断面における円相当直径)は、例えば、1μm以上10μm以下、又は、2μm以上5μm以下であってもよい。これら下限値及び上限値は任意に組み合わせられてもよい。「結晶粒」は、1つの結晶子からなるものであってもよいし、複数の結晶子が1つにまとまって1つの粒を構成したものであってもよい。
1.3 その他の成分
本開示のセラミックス焼結体は、上記の第1化合物及び第2化合物に加えてその他の成分を含み得る。その他の成分としては、原料に含まれる不純物に由来する成分、製造工程において混入する不純物に由来する成分、焼結助剤等に由来する主に粒界相を構成する成分(第1化合物以外の炭化物、第2化合物以外のホウ化物等)等が挙げられる。具体的には、その他の成分として、第四族元素の炭化物、炭化ホウ素から選ばれる少なくとも1種が含まれていてもよい。その他の成分は少ない方が好ましい。例えば、セラミックス焼結体に占める上記の第1化合物及び第2化合物を合計の割合は、90質量%以上100質量%以下、95質量%以上100質量%以下、又は、99質量%以上100質量%以下であってもよい。これら下限値及び上限値は任意に組み合わせられてもよい。
1.4 変動係数CV
セラミックス焼結体は、き裂の進展し難さを表す破壊靭性値が高い方が、摩耗の際の破壊が抑制され、耐摩耗性が向上するものと考えられる。セラミックス焼結体の破壊靭性値を高める方法としては、(1)柱状粒子を発達させること、(2)2種以上の材料を複合化することによってき裂が進展しにくい応力場を付与することや進展経路を屈曲すること、などがあり得る。(1)に関しては焼結の過程で溶解、再析出が発生する特定の材料で用いられる手法であり、主にSi系の材料で用いられる。本開示のセラミックス焼結体においては、(2)の手法によって破壊靭性値を高める。すなわち、2つの材料の熱膨張差を利用して、焼結時の高温から室温に戻った際に発生する残留応力によって、き裂の進展が抑制され、高靭性化が達成される。
セラミックス焼結体の破壊靭性値は、特許文献1に示されているように、混合する異種材料の偏析を大きくして、より大きな残留応力場が発生することにより、さらなる向上が可能である。しかしながら、本発明者の知見によると、このような大きな偏在の存在は、破壊の起点となる大きな欠陥となり得る。例えば、残留応力が大きいことにより異種材料間で初期クラックが存在することなどである。セラミックスのような脆性材料は、初期欠陥が小さいほど、かつ破壊靭性値が大きいほど強度が高くなる。ただし、破壊靭性値は、あくまでき裂の進展のし難さを示す指標に過ぎず、初期欠陥が大きい場合は、比較的小さな応力でも破壊に達してしまう。本発明者の知見によると、セラミックス焼結体において、2つの材料の偏在を大きくし過ぎると、破壊靭性値が高い場合でも、破壊の起点となる欠陥が大きくなり、結果的に耐摩耗性に劣るものとなる。
以上の通り、セラミックス焼結体において2つの成分(相)を偏在させることで、比較的大きな領域で、残留応力によるき裂進展抑制の効果が得られ、高靭性化を達成できる。当該2つの成分(相)の偏在が少ない場合(すなわち、2つの成分(相)が均一に分散している場合)、セラミックス焼結体においてき裂が直線的に進展し易く、靭性に劣るものとなり易い(図2A)。一方で、当該2つの成分(相)が過度に偏在すると、セラミックス焼結体が摩耗した際に、剥離する領域が大きくなり、摩耗体積が増大して耐摩耗性に劣るものとなり易い(図2C)。すなわち、セラミックス焼結体においては、当該2つの成分(相)について適切な偏在具合を達成することで、高靭性と耐摩耗性とが両立され得るといえる(図2B)。
以上の観点から、本開示のセラミックス焼結体においては、当該セラミックス焼結体の研磨面の300μm×300μmの領域を15μm×15μmの400個の区画に区切り、当該区画の各々について第1化合物の面積比率を特定した場合における、第1化合物の面積比率の変動係数CVが、0.14超0.23未満であることで、高靭性と耐摩耗性とを両立することができる(図2B)。当該変動係数CVが小さすぎると、き裂が直線的に進展し易い(図2A)。また、当該変動係数CVが大き過ぎると、摩耗体積が増加し易い(図2C)。特に、当該変動係数CVが0.15以上0.20以下である場合に、高靭性と耐摩耗性とがさらに優れたものとなる。
尚、第1化合物の面積比率についての変動係数CVは、SEM-EDSやEPMA等を用いて、セラミックス焼結体の研磨面における元素分布を得ることで求めることができる。例えば、SEM―EDSによって当該研磨面における元素分布のマッピング像を測定し、画像解析ソフトを用いてその面積分率を測定することができる。得られた観察像の300μm×300μmの領域を、15μm×15μmの400個(20個×20個)の区画に区切り、当該区画の各々について第1化合物である炭化珪素の面積分率を求める。当該区画ごとに求められた当該面積分率に基づいて、当該面積分率の標準偏差と平均値(算術平均値)とを求め、当該標準偏差を当該平均値で割ることにより、変動係数CVを求めることができる。なお、焼結体の研磨面の面積が10mm未満である場合、当該研磨面における1つの領域について変動係数CVを求めれば十分であり、当該1つの領域の変動係数CVが0.14超0.23未満であるか否かを確かめる。一方、焼結体の研磨面として10mm以上の面積を確保できる場合には、各領域の中心点間距離が1mm以上となるような10個の領域について、各々、変動係数CVを算出し、各領域の変動係数CVが、0.14超0.23未満であるか否かを確かめる。本開示のセラミックス焼結体は、当該10個の領域のすべてについて、変動係数CVが0.14超0.23未満となる。
1.5 その他
以上の通り、本開示のセラミックス焼結体は、上記の第1化合物と所定量の第2化合物とを含み、かつ、上記の変動係数CVを満たすことで、高靭性と耐摩耗性とが両立されたものとなる。本開示のセラミックス焼結体は、例えば、以下の機械特性を有するものであってよい。
1.5.1 破壊靭性値(KIC)
本開示のセラミックス焼結体は、例えば、5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有するものであってもよい。好ましくは、5.5mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有する。破壊靭性値の上限は特に限定されるものではなく、高いほど好ましい。本開示のセラミックス焼結体は、例えば、6.0mPa・m1/2以下の破壊靭性値を有するものであってもよい。尚、破壊靭性値は、JIS-R1607に準拠したSEPB法により測定される。
1.5.2 曲げ強度
本開示のセラミックス焼結体は、例えば、480MPa以上の曲げ強度を有するものであってもよい。好ましくは、500MPa以上の曲げ強度を有する。曲げ強度の上限は特に限定されるものではなく、高いほど好ましい。本開示のセラミックス焼結体は、例えば、550MPa以下の曲げ強度を有するものであってもよい。尚、曲げ強度は、JIS-R1601に準拠した3点曲げ試験により測定される。
一実施形態に係るセラミックス焼結体は、例えば、5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、かつ、480MPa以上の曲げ強度を有するものであってもよく、5.5mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、かつ、500MPa以上の曲げ強度を有するものであってもよく、5.0mPa・m1/2以上6.0mPa・m1/2以下の破壊靭性値を有し、かつ、480MPa以上550MPa以下の曲げ強度を有するものであってもよく、5.5mPa・m1/2以上6.0mPa・m1/2以下の破壊靭性値を有し、かつ、500MPa以上550MPa以下の曲げ強度を有するものであってもよい。
1.5.3 耐摩耗性
本開示のセラミックス焼結体は、例えば、当該セラミックス焼結体に対してアブレシブ摩耗試験を行った場合において、単位投入粒子量あたりの当該セラミックス焼結体の摩耗量が、0.5mm/kg以下となるものであってもよい。尚、本願にいう「アブレシブ摩耗試験」とは、図3に示される装置を用いて実施されるものをいう。具体的には、セラミックス焼結体から、55mm×20mm×20mmの試験片1を切り出し、55mm×20mmの試験面を♯2000のダイヤモンド砥石の研削盤で全面に研削を行ってから試験に用いる。図3に示すような装置において、表面にニトリルゴムを接着した直径224mm、幅12mmのホイル3を用い、ホイル3の回転数が200rpm、試験片1の押しつけ荷重が130Nとなるようにしつつ、投射ノズル2から試験片1及びホイル3の間へと摩耗粒子4としての珪砂6号を350g/minの投入速度で送り込む。摩耗粒子4の総投入量が21kgとなるまで試験を実施する。試験前後の試験片1の重量を測定し、その重量変化とアルキメデス法により求めた密度とから摩耗体積を算出し、これを投入した摩耗粒子4の総重量で割ることで、「単位投入粒子(投入粒子1kg)あたりのセラミックス焼結体の摩耗量(mm/kg)」を算出する。尚、重量測定の直前に、試験片1に対してアセトン中で超音波洗浄を施すことで、試験片1の表面に残存した粒子やごみの除去を行ってから重量測定を行う。上記の条件以外の条件については、ASTM G65に従うものとする。
1.5.4 ビッカース硬度
本開示のセラミックス焼結体は、例えば、2000以上2500以下のビッカース硬度を有するものであってもよい。尚、ビッカース硬度は、鏡面研磨したセラミックス焼結体を用いて、JIS-R1610に準拠して、押し込み荷重を98Nとして測定する。
1.5.5 密度
本開示のセラミックス焼結体は、例えば、3.5g/cm以上5.0g/cm以下の密度を有するものであってもよい。ただし、セラミック焼結体の密度は、第2化合物の種類等によって変化し得る。また、本開示のセラミックス焼結体は、例えば、97%以上の相対密度を有するものであってもよい。尚、密度は、アルキメデス法により測定する。
2.セラミックス焼結体の製造方法
本開示のセラミックス焼結体は、例えば、以下に説明される方法によって製造することができる。すなわち、一実施形態に係るセラミックス焼結体の製造方法は、第1化合物の粉末と第2化合物の粉末と任意に焼結助剤(副原料)と任意にその他の原料とを混錬して造粒体を得ること、及び、前記造粒体を成形して脱脂、焼成すること、を含む。
2.1 第1化合物の粉末及び第2化合物の粉末
第1化合物の粉末や第2化合物の粉末は、各々、公知の方法によって製造されたものであればよい。各々の粒子径は、特に限定されるものではなく、目的とする性能等に応じて、適宜選択されればよい。第1化合物の粉末の平均粒子径は、例えば、10nm以上5μm以下であってもよい。また、第2化合物の粉末の平均粒子径は、例えば、500nm以上5μm以下であってもよい。第1化合物の粉末及び第2化合物の粉末は、各々、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。尚、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(D50、メジアン径)を意味する。平均粒子径の測定は(株)堀場製作所製レーザー回折式粒子径分布測定装置LA-960で実施し、純水溶媒中にヘキサメタりん酸ナトリウムを分散剤として添加して測定を行った結果を採用する。
2.2 副原料
上記の粉末は、焼結させることが難しい場合がある。そのため、一実施形態に係る製造方法においては、上記の粉末とともに副原料としての焼結助剤を混合してもよい。副原料としての焼結助剤の種類は特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラックなどの炭素、及び、炭化ホウ素などの炭化物のうちの少なくとも1種であってもよい。
2.3 その他の原料
一実施形態に係る製造方法においては、上記の粉末とともに、焼成後に第1化合物や第2化合物となり得るその他の原料を混合してもよい。例えば、上記の粉末とともに、第四族元素の炭化物(例えば、上記の第2化合物を構成する第四族元素とは異なる第四族元素の炭化物)を含ませることで、焼成時に、上記の第2化合物の粉末と、当該第四族元素の炭化物とを反応させることができる。これにより、例えば、第2化合物として、複数種類の第四族元素を含む複合二ホウ化物が得られる。
2.4 粉末の混錬及び造粒
上記の粉末等が混錬されることで、造粒体が得られる。上記の粉末と副原料とその他の原料との混合比は、目的とするセラミックス焼結体の性能に応じて、適宜決定されればよい。すなわち、最終的に得られるセラミックス焼結体における第2化合物の含有量が50質量%以上70質量%以下となるような比率にて混合される。また、上記の粉末と副原料とその他の原料とを混錬及び造粒する方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記の粉末と副原料とその他の原料とをバインダー、分散材及び溶媒とともに機械的に混合してスラリーを得たうえで、当該スラリーをスプレードライ等で乾燥することで、所望の造粒体が得られる。この場合のバインダー、分散剤及び溶媒の種類は、特に制限されるものではない。また、造粒体のサイズ等も、特に限定されるものではない。
ここで、分散剤の添加量が少ない場合、同種の原料粉末同士が凝集して上記の変動係数CVが高くなり、分散剤の添加量が多い場合、原料粉末が均一に分散して上記の変動係数CVが低くなる。また、分散剤の種類によって原料粉末の分散状態への影響は異なる。最終的に望ましい変動係数CV等が得られるように、分散剤の種類や量が決定されるとよい。また、上記の原料粉末と副原料とを機械的に混合(混練)する際の混合時間を長くした場合、原料粉末の解砕が進み凝集が解け、結果として上記の変動係数CVが低くなり、混合時間を短くした場合、原料粉末の解砕が進まず同種の原料粉末同士が凝集した状態となり、結果として上記の変動係数CVが高くなる傾向にある。最終的に望ましい変動係数CV等が得られるように、混合手段や混合時間が決定されるとよい。以上の通り、分散剤の種類や添加量、及び、混合条件等を調整して原料粉末の偏在を制御することで、上記の変動係数CVを望ましい範囲に制御することができる。
2.5 造粒体の成形及び焼成
上記の造粒体は、焼成前に成形される。造粒体は、公知の成形手段によって成形されればよい。成形手段は、目的とするセラミックス焼結体の形状等に応じて、適当なものが選択されればよい。例えば、造粒体を金型に充填してプレス成形してもよいし、CIP等によってプレス成形してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
上述の通り、本開示のセラミックス焼結体の要件である第2化合物の含有量や第1化合物の面積比率についての変動係数CVは、原料粉末の混合条件等を制御することによって達成され得る。すなわち、焼成条件によらず、本開示のセラミックス焼結体の要件が満たされる。この点、焼成条件は、上記の原料粉末及び副原料を適切に焼結可能な条件であればよい。焼成時の昇温速度、最高温度、最高温度での保持時間、冷却速度等は、上記の粉末や副原料やその他の原料の種類によって最適な条件が選択されればよく、最終的に得られるセラミックス焼結体の機械的特性に応じて最適な条件が選択され得る。焼成は複数回行われてもよく、また、HIPが行われてもよい。
3.用途
以上の通り、本開示のセラミックス焼結体においては、第1化合物とともに所定量の第2化合物が含まれ、かつ、第1化合物についての変動係数CVが所定範囲内であることで、高靭性と耐摩耗性とが両立される。例えば、本開示のセラミックス焼結体を鋼板が通板する際の位置決めガイドロールや、高炉の炉頂ホッパーにおけるシュートライナーのように摺動摩耗に曝される部材として適用した際、摩耗速度が抑えられ、部材の補修周期を延ばすことができる。
4.補足
本開示のセラミックス焼結体は、以下の構成を備えるものであってもよい。この場合も、高靭性と耐摩耗性とが両立される。すなわち、一実施形態に係るセラミックス焼結体は、第1化合物と第2化合物とを含み、前記第1化合物が、炭化珪素であり、前記第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表される第四族元素の二ホウ化物であり、前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下であり、5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、500MPa以上の曲げ強度を有し、前記セラミックス焼結体に対してアブレシブ摩耗試験を行った場合において、単位投入粒子量あたりの前記セラミックス焼結体の摩耗量が、0.5mm/kg以下となるものであってもよい。各構成の詳細については、上述の通りである。
以下、実施例を示しつつ本発明についてさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱せず、その目的を達する限りにおいては、種々の条件を採用可能とするものである。
1.評価用のセラミックス焼結体の作製
1.1 実施例1~8、比較例1~2
SiC粉末(α型、平均粒径0.7μm)と、TiB粉末(平均粒径2μm)と、ZrB粉末(平均粒径2μm)と、ZrC粉末(平均粒径2μm)とを、下記表1に示される組成となるように、焼結助剤、蒸留水、分散剤及びバインダーとともに、転動型ボールミルにより10時間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライによって気流乾燥し、造粒体を得た。
ここで、分散剤としてポリアクリル酸系のものを用い、分散剤の添加量は上記原料粉末の総質量に対して1質量%とした。また、蒸留水の添加量は、原料粉末の総質量に対して80質量%とした。また、焼結助剤として、上記の原料粉末の総質量に対して1質量%の炭素粉末(カーボンブラック、平均粒径0.05μm)及び炭化ホウ素粉末(平均粒径0.8μm)を添加した。
得られた造粒体を10MPaの一軸加圧で成形した後、ゴム容器に入れて、140MPaにてCIP成形を行い、成形体を得た。得られた成形体をAr雰囲気にて脱脂した後、Ar雰囲気にて2150℃で8時間保持し、常圧焼成して、中間焼結体を得た。さらに中間焼結体に対して、2000℃で3時間、198MPaのArガス加圧下でHIP処理を行うことで、評価用のセラミックス焼結体を得た。
1.2 比較例3~6
実施例1~8、比較例1~2と同じ原料粉末を、下記表1に示す組成となるように、焼結助剤、蒸留水、分散剤及びバインダーとともに、転動型ボールミルにより10時間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライによって気流乾燥し、造粒体を得た。
ここで、分散剤としてポリアクリル酸系のものを用い、分散剤の添加量は上記原料粉末の総質量に対して、比較例3及び4については0.5質量%とし、比較例5及び6については0.2質量%とした。蒸留水の添加量や焼結助剤の種類及び添加量については、上述のものと同様である。分散剤の量が少ない場合、同種の原料粉末同士が凝集して、セラミックス焼結体における各相の偏在が大きくなる。すなわち、分散剤の量が少ない方が後述の変動係数CVは大きくなる。
得られた造粒体について、実施例1~8、比較例1~2と同様にして成形、脱脂、焼成及びHIP処理を行い、評価用のセラミックス焼結体を得た。
1.3 実施例9、比較例7
下記表1に示される配合の原料粉末200gを、有機溶媒300mlとともに遊星型ボールミルにより混合したのち、ドラフト内で乾燥させて有機溶媒を蒸発させることで、混合粉を得た。得られた混合粉について、実施例1~8、比較例1~2と同様にして、成形、焼成及びHIP処理を行い、評価用のセラミックス焼結体を得た。実施例9、比較例7においては、焼結助剤として、上記の原料粉末の総質量に対して1質量%の炭素粉末(カーボンブラック、平均粒径0.05μm)及び炭化ホウ素粉末(平均粒径0.8μm)を遊星型ボールミルによる混合の際に添加した。
ここで、遊星型ボールミルによる混合時間は、実施例9については6時間、比較例7については12時間とした。混合時間が長い場合、原料粉末の解砕が進み、各相が均一に分散された焼結体となる。すなわち、混合時間が長い方が後述の変動係数CVは小さくなる。
2.セラミックス焼結体の評価
セラミックス焼結体の密度及び相対密度、曲げ強度、破壊靭性値(KIC)、ビッカース強度を測定した。また、セラミックス焼結体に対してアブレシブ試験を行い、単位投入粒子量(1kg)あたりのセラミックス焼結体の摩耗量を測定した。セラミックス焼結体の研磨面の300μm×300μmの領域を15μm×15μmの400個の区画に区切り、当該区画の各々について炭化珪素の面積比率をSEM-EDSにより特定し、炭化珪素の面積比率の変動係数CVを測定した。各々の測定方法の詳細については、実施形態にて説明の通りである。下記表1に各々の測定結果を示す。
表1に示される結果から以下のことが分かる。
比較例1に係るセラミックス焼結体は、第2化合物(第四族元素の二ホウ化物)の含有量が少ない。そのため、靭性及び耐摩耗性ともに、不十分となった。
比較例2に係るセラミックス焼結体は、第2化合物(第四族元素の二ホウ化物)の含有量が多い。そのため、靭性は確保されたものの、セラミックス焼結体が摩耗した際に、剥離する領域が大きくなって、耐摩耗性が不十分となった。
比較例3~6に係るセラミックス焼結体は、第1化合物(炭化珪素)の面積比率についての変動係数CVが大きく、第1化合物が過度に偏在した状態にある。そのため、2つの材料の偏在による残留応力によって、き裂進展抑制効果が得られ、靭性は確保されたものの、セラミックス焼結体が摩耗した際に、剥離する領域が大きくなって、耐摩耗性が不十分となった(図2C参照)。
比較例7に係るセラミックス焼結体は、第1化合物(炭化珪素)の面積比率についての変動係数CVが小さく、第1化合物が均一に分散した状態にある。そのため、残留応力によるき裂進展抑制効果が得られず、靭性及び耐摩耗性ともに、不十分となった(図2A参照)。
これに対し、実施例1~9に係るセラミックス焼結体は、第2化合物(第四族元素の二ホウ化物)の含有量が所定範囲内で、かつ、第1化合物(炭化珪素)の面積比率についての変動係数CVが所定範囲内であることで、残留応力によるき裂進展抑制効果によって高い靭性を有し、また、セラミックス焼結体が摩耗した際に、剥離する領域が小さくなって優れた耐摩耗性を有するものとなった(図2B参照)。
尚、実施例1~9に示されるように、第2化合物がTiBである場合もZrBである場合も、同様の効果が奏される。元素周期表においてTi及びZrと同じ族に属するHf(ハフニウム)の二ホウ化物についても、同様の効果が奏されるものと考えられる。すなわち、第2化合物が第四族元素の二ホウ化物であれば、所望の効果が発揮されるものといえる。
また、表1中のその他の成分としてのZrCは、セラミックス焼結体において第2化合物としてのTi1-xZrを構成するものと考えられる。すなわち、実施例1~9に示される結果から、第2化合物として、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)を用いた場合に、優れた効果が奏されるものといえる。
以上の通り、第1化合物と第2化合物とを含むセラミックス焼結体であって、以下の要件A~Dを満たすものは、高い靭性と耐摩耗性とが両立されたものといえる。
要件A:前記第1化合物が、炭化珪素である。
要件B:前記第2化合物が、第四族元素の二ホウ化物である。
要件C:前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下である。
要件D:前記セラミックス焼結体の研磨面の300μm×300μmの領域を15μm×15μmの400個の区画に区切り、前記区画の各々について前記第1化合物の面積比率を特定した場合における、前記第1化合物の面積比率の変動係数CVが、0.14超0.23未満である。
また、上記結果より、第1化合物が、炭化珪素であり、第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表される第四族元素の二ホウ化物であり、セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下である条件においては、CV値を0.15以上0.20以下とすることにより、5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、かつ500MPa以上の曲げ強度を有するような焼結体となり、アブレシブ摩耗試験を行った際の単位投入粒子量あたりの前記セラミックス焼結体の摩耗量は0.5mm/kg以下となることが判る。
1 試験片
2 投射ノズル
3 ホイル
4 摩耗粒子
10 セラミックス焼結体
10a 第1相(炭化珪素)
10b 第2相(第四族元素の二ホウ化物)

Claims (7)

  1. 第1化合物と第2化合物とを含むセラミックス焼結体であって、
    前記第1化合物が、炭化珪素であり、
    前記第2化合物が、第四族元素の二ホウ化物であり、
    前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下であり、
    前記セラミックス焼結体の研磨面の300μm×300μmの領域を15μm×15μmの400個の区画に区切り、前記区画の各々について前記第1化合物の面積比率を特定した場合における、前記第1化合物の面積比率の変動係数CVが、0.14超0.23未満である、
    セラミックス焼結体。
  2. 前記第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表される、
    請求項1に記載のセラミックス焼結体。
  3. 前記変動係数CVが、0.15以上0.20以下である、
    請求項1に記載のセラミックス焼結体。
  4. 5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、
    480MPa以上の曲げ強度を有する、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体。
  5. 5.5mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、
    500MPa以上の曲げ強度を有する、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体。
  6. 前記セラミックス焼結体に対してアブレシブ摩耗試験を行った場合において、単位投入粒子量あたりの前記セラミックス焼結体の摩耗量が、0.5mm/kg以下となる、
    請求項1~のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体。
  7. 第1化合物と第2化合物とを含むセラミックス焼結体であって、
    前記第1化合物が、炭化珪素であり、
    前記第2化合物が、Ti1-xZr(0≦x≦0.05)で表される第四族元素の二ホウ化物であり、
    前記セラミックス焼結体に占める前記第2化合物の割合が、50質量%以上70質量%以下であり、
    5.0mPa・m1/2以上の破壊靭性値を有し、
    500MPa以上の曲げ強度を有し、
    前記セラミックス焼結体に対してアブレシブ摩耗試験を行った場合において、単位投入粒子量あたりの前記セラミックス焼結体の摩耗量が、0.5mm/kg以下となる、
    セラミックス焼結体。
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