本発明の実施形態に係る細胞分散システムは、多能性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞又は体細胞(以下、「細胞」と称する場合がある。)の細胞凝集塊を破砕して分散させるものであり、第1開口部、第2開口部、及び、第1開口部と第2開口部の間に設けられた所定長さの狭小流路を有する分散器を有する。ここで、「所定長さ」とは、流路の最小幅に対する流路の実効長さの比(アスペクト比)が1より十分に大きいことを意味する。
そして、前記第1又は第2開口部から前記第2又は第1開口部に向かって細胞凝集塊を含む液体を、前記狭小流路を通じて移動させることで、物理的な作用のみで細胞凝集塊の少なくとも一部を細胞シートの作製にも利用可能な大きさ(以下、「所定の大きさ」と称する場合がある。)に破砕して分散させることが可能である。
この細胞分散システムに適用可能な多能性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞又は体細胞は、特に限定はない。各種の多能性幹細胞、各種の体性幹細胞、各種の前駆細胞、所望の組織に由来する自家の体細胞、予め増殖させた未分化状態の多能性幹細胞、体性幹細胞又は前駆細胞を疾患のある組織に適用可能な体細胞に分化させた多能性幹細胞、体性幹細胞又は前駆細胞由来体細胞などが挙げられる。多能性幹細胞は、自己再生が可能で、成体内に存在するあらゆる細胞に分化が可能なものであり、胚性幹細胞(ES細胞)、iPS細胞などである。体性幹細胞(成体幹細胞或いは組織幹細胞とも称される。)は、自己再生が可能で、通常、由来となる組織内の様々な細胞に分化が可能なものである。前駆細胞は、幹細胞から最終分化細胞に至る過程で出現する細胞であり、体性幹細胞より自己再生能に制限があるものであるとされている。また、これらの細胞は、ヒト、イヌ、ネコなどの哺乳動物に由来するものを採用可能であるが、ヒト由来の細胞が好適である。
この細胞分散システムに適用可能な細胞凝集塊を含む液体(以下、「細胞液」と称する場合がある。)は、特に限定はなく、予め増殖培養した後の細胞凝集塊を含む培養液をそのまま使用してもよいし、予め増殖培養した後、増殖培養に使用した培養液の全部又は一部を同一の新鮮な培養液又は培養液以外で細胞の生存維持が可能な成分を含む液体などに入れ替えたものを使用してもよい。予め増殖培養した後の細胞凝集塊を含む培養液は、例えば、特許文献3などに記載の大量細胞培養システムにより培養して得られた、細胞凝集塊(スフェロイド)含有培養液などが挙げられる。
破砕の対象となる細胞凝集塊は、多数の細胞が凝集した塊であり、スフェロイドとも称する。細胞分散システムに適用する液体には、多数の細胞凝集塊が含まれ、その大きさには分布がある。また、この分布は、細胞の種類などによって異なるが、細胞凝集塊の平均粒子径は、典型的には、100μm以上、例えば100~2000μmである。尚、破砕とは、細胞破壊を伴わない細胞凝集塊の分割、微細化及び単細胞化を意図するものであるが、全く細胞破壊を伴わないことを意味するものではない。
狭小流路は、細胞凝集塊の少なくとも一部を所定の大きさに破砕して分散させることが可能な程度に狭小な流路であればよく、例えば、細胞凝集塊を多数含む集団のうちの少なくとも一部の細胞凝集塊を所定の大きさになるように破砕を生じさせ得る程度の最小幅を有する。流路を狭小にすることで、当該流路を通過する細胞凝集塊に対して剪断力を負荷することできる。また、狭小な流路が所定の長さを有することで、狭小な連続する管路を形成し、連続した剪断力の負荷による細胞凝集塊の効率的な破砕、分散が可能になると考えられる。この最小幅は、細胞の種類などに応じて適宜決定することができるが、例えば、細胞凝集塊の粒度分布において、100μm以上の最頻値となる粒子径の0.20~2倍の大きさとするのが好ましい。100μm以上の細胞凝集塊を対象にするのは、破砕の対象となる細胞凝集塊の大きさであることによる。粒度分布は、顕微鏡等の拡大画像を用いた画像解析により測定し、算出することができる(例えば、株式会社SCREENホールディングス製、Cell3iMagerを用いて行うことができる。)。狭小流路の長さは、細胞の種類、狭小流路の最小幅の大きさ、細胞凝集塊を含む液体の流速などを考慮して、調整することができる。もっとも、例えばステンレス製のメッシュ状のフィルタのような厚み方向の長さでは、細胞の破壊を抑制しようとすると十分な破砕、分散作用は得られない。このようなメッシュフィルタを用いる場合、開口幅が70μm前後のメッシュフィルタが使われているが、細胞凝集塊はこのような開口幅であれば通過できるものがある。通過できないものは分割されながら通過し、その際に細胞の破壊が起こる場合がある。開口幅を70μmより小さくするとその傾向が強くなる。細胞破壊を抑制するため開口幅を大きくすると、細胞凝集塊はより大きい大きさにしか分割されないことになる。分割されず通過可能な細胞凝集塊のうち、メッシュの開口幅より大きいものは、フィルタ通過後の細胞凝集塊は強制的に長細い形状となっている。フィルタを通過した後は、剪断力は負荷されないか、非常に小さく、そのままの形状を維持することになり、所望の大きさに破砕されることはない。一方、前述の狭小流路の場合は、例えば流路断面において最小幅が70μm前後でも、最小幅より大きく狭小流路を通過可能な細胞凝集塊は、変形しながら狭小流路に進入することになるが、狭小流路が所定長さ連続するため、連続する流路を構成する壁面や細胞液の乱流よって細胞凝集塊に変形力及び剪断力が作用し、細胞凝集塊に繰り返し剪断力と変形力が加わることにより破砕、分散される。また、メッシュフィルタによる強制的な分断とは異なり、流路壁面や乱流による応力は細胞を破壊する程度の強力な負荷ではないことで細胞破壊も抑制されると考えられる。狭小流路が、流路断面において最小幅以外の寸法は細胞凝集塊の粒子径よりも十分に大きい場合は、流路の最小幅が細胞凝集塊の粒子径よりも小さい場合でも細胞凝集塊は変形しながら通過し易く、流路通過時には前述のように繰り返し剪断力と変形力が加わるため、より多くの細胞凝集塊を破砕し、分散することができる。
また、狭小流路は、細胞凝集塊の少なくとも一部を所定の大きさに破砕して分散させることが可能な程度に狭小な流路であればよく、その流路構造は特に限定はないが、限られた容積で、効率的に破砕して分散させる観点から、狭小流路の長さ方向に直交する断面形状が、一重連続円環状、一重離散円環状、多重離散円環状、円形状、方形状から選択される少なくとも一種であるのが好ましく、一重連続円環状、一重離散円環状、多重離散円環状、又は、これらと方形状の組み合わせであるのがより好ましい。また、この断面形状は、狭小流路の長さ方向に同じ形状で連続してもよいし、変化させてもよい。変化させる場合は、前記第1又は第2開口部側から前記第2又は第1開口部側に向かって漸次小さくなった後漸次大きくなるようにするのが好ましい。
以下では、図面に基づき、実施形態に係る細胞分散システムを説明する。
図1は、実施形態に係る細胞分散システムに適用可能な分散器及びベッセルの一構成例を示したものである。図中符号1aは第1シリンジ、1bは第2シリンジ、2は第1ベッセル、3は第2ベッセル、4は分散器をそれぞれ示している。図1(a)は、分解状態の分散器4、及び、分散器4に未接続状態の第1シリンジ1a及び第2シリンジ1bを示した断面図であり、図2(b)は組立状態の分散器4、第1シリンジ1a及び第2シリンジ1bを示した断面図である。
第1シリンジ1aは、図1に示すように、円筒形の外筒部5の両端に外形が同一円形のフロントフランジ6とバックフランジ7を一体的に設け、フロントフランジ6の中心部に設けた吐出口となるヘッド8は、標準的なルアーロック構造とし、プランジャ9の軸部10の先端には外筒部5内に摺動可能に弾性嵌合するガスケット11を設け、基端にプランジャボタン12を設けた構造である。本例では、ガスケット11と外筒部5内の弾性嵌合は、ガスケット11の外周部に設けられた2つのOリング11Bにより行われるが、これに限定されるわけではない。第2シリンジ1bも、第1シリンジ1aと同じ構造を有する。つまり、第1ベッセル2と第2ベッセル3は同じ構造を有している。もっとも、両シリンジを例えば異なる容積にするなどの異なる構造にしてもよい。
本例では、ガスケット11の先端チップ11Aの形状を円錐形凸部とし、外筒部5の先端側内面、即ちフロントフランジ6を設けた側の内面6Aの形状は、先端チップ11Aを受け入れる円錐形凹部とし、外筒部5の内部の液体を残さずに吐出できるようにしている。もっとも、液体を残さずに吐出できように、先端チップ11Aの先端面と内面6Aとが対応する形状を有しておればよく、例えば両者を平面としてもよい。また、フロントフランジ6の外面に一体的に設けられたヘッド8は、ルアーロック構造を有する。
第1ベッセル2及び第2ベッセル3の容量、内径は、処理する細胞液の量等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、容量は5~100mLのものを用いることができ、内径は5~50mmのものを用いることができる。第1シリンジ1a及び第2シリンジ1bを構成する部材の材質は、特に限定はなく、各部材の機能に応じて、金属、ガラス、セラミックなどの無機材料、合成樹脂などの有機材料を適宜選択して採用することができる。オートクレーブにより滅菌処理する場合は、滅菌処理条件に対応可能な耐熱性の材質を用いる必要がある。また、電磁波或いはガスによる滅菌処理を行う場合もそれぞれの処理条件に対応可能な材質を用いる必要がある。
分散器4は、図1~3に示すように、ベッセル2、3内の細胞液を通過させることで細胞凝集塊を破砕することが可能な狭小流路41を有し、両ベッセル2、3のそれぞれのヘッド8、8同士を接続できるものである。分散器4は、狭小流路形成部材40、第1部材13及び第2部材14を有する。第1部材13は、中心に流路15を設けるとともに、軸方向一端側に内部が中空のハウジング部16を設け、ハウジング部16の内周にメスネジ部17を設け、軸方向他端側にヘッド8との接続部18を設けたものである。第2部材14は、中心に流路19を設けるとともに、軸方向一端側に第1部材13のメスネジ部17に螺合するオスネジ部20を設け、軸方向他端側に前記ヘッド8との接続部21を設けたものである。そして、第2部材14のオスネジ部20には、その先端で開口する凹部22を形成し、凹部22内に狭小流路形成部材40を配置し、第1部材13のメスネジ部17に第2部材14のオスネジ部20を螺合した状態で、第1部材13のハウジング部16の内側底面と第2部材14の凹部22の内側底面との間に狭小流路形成部材40に設けられているパッキン43を圧縮してシールする。これに加え、(1)オスネジ部20の先端側外周面20Aとハウジング部16の底面側内周面16B、及び/又は、オスネジ部20の基端側外周面20Bとハウジング部16の先端側内周面16Aがテーパ嵌合することにより、(2)狭小流路形成部材40の軸方向両端側又は一方端側に流路15、19と連通する中心孔を有するパッキンを設けて圧縮することにより、第1部材13と第2部材14の間をシールしてもよい。また、狭小流路形成部材40の軸方向長さを短くする場合は、流路15、19と連通する中心孔を有するスペーサーを、狭小流路形成部材40と隣接する位置に設けてもよい。
狭小流路形成部材40は、図3に示すように、内側部材42、パッキン43、外側部材44を有する。内側部材42には、円柱状の構造の円柱部45の軸方向一方端(基端)に、フランジ46が設けられるとともに、断面円形の凹部47が設けられている。凹部47の側壁には、凹部47の内側と外側が連通する小孔48が複数設けられている(図2、3に示す例では、断面円形の小孔が8個設けられている。)。また、軸方向他方端(先端)から小孔48に近接する部分に亘る範囲の外周面49にらせん凸状部49aが設けられている。また、凹部47の底面47aは円形平面となっている。パッキン43は、内側部材42の円柱部45を挿通可能な中心孔50が設けられている。外側部材44は、円筒状の構造を有し、軸方向一方端から他方端に亘る中空部が形成され、中空部を形成する内周面51には、らせん凹条部51aが形成されている。そして、内側部材42と外側部材44の間にパッキン43を配置し、内側部材42の円柱部45をパッキン43の中心孔50及び外側部材44の内周面51で形成される中空部に挿入し、フランジ46の円柱部45側の円環面と外側部材44の円環状の基端面44aとを、パッキン43を介して当接させ、パッキン43を前述のように圧縮した状態にすることで、内側部材42の外周面49と外側部材44の内周面51とで囲まれた一重連続円環状の断面を有する狭小流路41が形成される。この狭小流路41は、内側部材42の小孔48、並びに、内側部材42の先端面45aの外周縁及び外側部材44の内周面51とで囲まれる部分において開口し、開口部を形成している。即ち、これらの開口部が、分散器4の第1開口部及び第2開口部に対応する。また、図2に示すようにシリンジ1aから細胞液を分散器4に流入させ場合は、細胞液は、内側部材42の底面47aに突き当たり、流れ方向を軸方向からこれに直交する方向に向きを変え、小孔48から狭小流路41の外側の周壁である外側部材44の内周面51側に向かうことになる。即ち、底面47aは、細胞液を狭小流路44の周壁側に向かわせる構造体を構成する。
狭小流路41の軸方向の長さは、前述のように諸条件を考慮して決定することができ、例えば、3~20mmとすることができる。狭小流路41の最小幅は、内側部材42の円柱部45の外径とこれと同心円の位置の外側部材55の内周面51の内径により算出される。この最小幅は、前述のように諸条件を考慮して決定することができる。図2、3に示す例では、内側部材42の円柱部45の最大外径と、外側部材55の内周面51の最小内径は一定である。また、らせん凸条部49aとらせん凹条部51aとは相互に凹凸が対応するように設けられており、軸方向に概ね同じ幅で軸方向断面において連続する屈曲線状の流路を形成している(図3(b)参照)。このような流路は、例えば、らせん凸条部49aとらせん凹条部51aをピッチが同じ雄ねじ構造と雌ねじ構造とし、雄ねじ構造の呼び径を雌ねじ構造のものより小さくすることで形成可能である。また、図示した構造以外に、らせん凸条部49aとらせん凹条部51aをピッチが異なる雄ねじ構造と雌ねじ構造とし、雄ねじ構造の外径(ねじ山径)が雌ねじ構造の内径(ねじ山径)よりも小さい構造とし、両者が螺合せず、雌ねじ構造の部分に雄ねじ構造の部分を落とし込んで組み合わせる構造とすることもできる。小孔48の大きさは特に限定はなく、小孔48の設置数、狭小流路41の最小幅、細胞凝集塊の平均粒子径、細胞液の通過性などを考慮して適宜決定することができる。例えば、らせん凸条部49aとらせん凹条部51aで囲まれる断面積と小孔48の全部合わせた断面積をほぼ同一にすることで小孔48での流速変化を最小に抑えることができる。
図3に示す狭小流路形成部材40では、図に示す実施形態以外に、例えば、以下のような変形例を採用することができる。内側部材42の小孔48の形状は断面円形に限らず、断面方形でもよいし、その他の形状でもよい。狭小流路41を構成する円柱部45の外周面49と内周面51にはそれぞれらせん凸条部49aとらせん凹条部51aが形成されて、それぞれの周面49、51には凹凸が設けられているが、なくてもよい。また、らせん形状に限らず、閉じた環状の凹凸を軸方向に等間隔または任意の間隔で設けたものであってもよい。また、狭小流路41の幅は軸方向で概ね一定であるが、小孔48の側から漸次小さくなった後漸次大きくなるように円柱部45の外径と内周面51の内径を変化させてもよい。この場合、軸方向で対称構造にするのが好ましい。また、内側部材42を軸方向で対称になるように配置した構造、即ち、内側部材42のフランジ46、凹部47、小孔48を軸方向両側に設けた構造となるようにしてもよい。
図3(b)に示す狭小流路形成部材40を用い、内側部材42の凹部47の側から細胞液を送液する場合を説明すると以下のとおりである。内側部材42の凹部47の側から送液された細胞液は、内側部材42の凹部47の底面47aに突き当たり流れ方向を変えて第1開口部となる各小孔48から、軸方向に直交する断面形状が一重連続円環状の狭小流路41内に流入する。そして、外側部材44の内周面51に突き当たり、さらに流れ方向を変えて軸方向に沿って狭小流路41内を通り、内側部材42の先端面45aの外周縁及び外側部材44の内周面51とで囲まれる開口部(第2開口部)から流出する。このように軸方向に直交する断面形状が円環状で、軸方向に所定の長さを有する狭小流路41を通過することで、細胞凝集塊は、内周面51と外周面49に衝突することで剪断応力が負荷されたり、液体の流動により生じる剪断流による剪断力が負荷されたりすることで、細胞の破壊を抑制しながら、破砕され、所定の大きさになると考えられる。また、第1回開口部となる小孔48の近傍の外側と内側に細胞液の流れ方向を変更する構造を有することで剪断力がより効果的に作用し、細胞凝集塊の効率的な破砕が促進されると考えられる。小孔48の大きさより大きい細胞凝集塊は、その程度に応じてより小さい細胞凝集塊に分割されたり、変形したりして小孔48を通過し得ると考えられる。本例では、狭小流路41を構成する周面49、51には凹凸が設けられていることで、さらに効率よく細胞凝集塊が破砕されると考えられる。
一方、前述の第2開口部の側から細胞液を送液する場合はこれとは反対方向の流れになる。この場合、細胞液は第2開口部に直接流入するもの、内側部材42の先端面45aに突き当たり流れ方向を変え、さらに流れ方向を変えて第2開口部に流入するものがある。第2開口部から狭小流路41に流入した細胞液は、軸方向に沿って狭小流路41内を通り、小孔48の内側近傍で流れ方向を変えて第1開口部である小孔48から流出する。このように反対方向からでも、第2開口部の外側近傍から流入し狭小流路41を通過して第1開口部から流出することで、同様に、細胞凝集塊に対して剪断力が効率よく負荷され、細胞凝集塊は、細胞の破壊を抑制しながら効率的に破砕され、所定の大きさになると考えられる。
図2、3に示す構造の狭小流路形成部材40以外に、例えば、図4~7に示す構造の狭小流路形成部材40a、40bを採用することができる。
図4、5に示す狭小流路形成部材40aは、円柱状の形状を有し、その軸方向の一方端の端面92から他方端の端面93に亘り軸方向に平行に伸びる複数の狭小な中空部が形成された構造を有する。そして、これらの中空部が狭小流路となり、図中、符号90a~90c、91a~91cがこれらに対応する。各狭小流路は両端面92,93で開口し、当該部分においてそれぞれ開口部を形成している。一方を第1開口部、他方を第2開口部とする。符号90a~90cの狭小流路(外側狭小流路)と符号91a~91cの狭小流路(内側狭小流路)は、それぞれ、軸方向(狭小流路の長さ方向に対応する。)に直交する断面(軸方向直交断面とも称する。)形状が不連続な円環形状、即ち、離散円環状であり、外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…とは、円柱構造の中心軸を中心とする同心円状に配置され、二重円環状となっている。図4、5に示す例では、各円環は、3つずつに均等に分割されているが、これに限定されず、2つでも良いし、4つ以上でもよく、これらの分割は均等でもよいし、不均等でもよい。また、軸方向直交断面の放射方向の外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…の配置の仕方も特に限定はない。外側狭小流路90a,…の幅は、外側狭小流路90a,…を形成する外側の周面94,…と内側の周面95,…の軸方向直行断面の径から算出することができる。また、同様に、内側狭小流路91a,…の幅は、内側狭小流路91a,…を形成する外側の周面96,…と内側の周面97,…の軸方向直行断面の径から算出することができる。図4、5に示す例では、各周面の軸方向直行断面の径が軸方向に沿って同じであるため、これらの幅は軸方向に沿って同じであり、軸方向の何れかの直行断面における径から最小幅を算出することができ、各狭小流路において同じである。これらの各狭小流路における最小幅は、細胞凝集塊を最終的に所定の大きさに破砕して分散できれば、それぞれ同じであっても異なってもよいが、同じであるのが好ましい。外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…の軸方向の長さは、前述のように諸条件を考慮して決定することができ、例えば、3~20mmとすることができる。
図4、5に示す狭小流路形成部材40aでは、図に示す実施形態以外に、例えば、以下のような変形例を採用することができる。図に示す例では、各周面は平滑面であるが、何れかに凹凸を設けてもよい。また、外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…の幅は軸方向のいずれの位置でも同じであるが、端面92の側から端面93の側に向かって漸次小さくなった後漸次大きくなるように周面94,…の軸方向直行断面における径を変化させてもよい。この際の最小幅となる位置は両端面92,93から等距離の位置が好ましい。また、外側狭小流路90a,…の軸方向一の端部が第1開口部に連続し且つ軸方向二の端部は閉鎖し、一方、内側狭小流路91a,…の軸方向二の端部が第2開口部に連続し且つ軸方向一の端部が閉鎖し、軸方向中間部或いは内側狭小流路91a,…の軸方向一の端部の近傍部で、外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…を連通させた構造でも良い。
図4、5に示す狭小流路形成部材40aを用い、軸方向の一方端の端面92から他方端の端面93に細胞液を送液する場合を説明すると以下のとおりである。端面92の側から送液された細胞液は、外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…の端面92の開口部(第1開口部)に直接流入するもの、端面92に突き当たり流れ方向を変えて第1開口部に流入するものがある。第1開口部から外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…に流入した細胞液は、軸方向に沿って外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…を通り、それぞれの端面93の開口部(第1開口部)から流出する。このように軸方向に直交する断面形状が二重離散円環状で、軸方向に所定の長さを有する外側狭小流路90a,…と内側狭小流路91a,…を通過することで、細胞凝集塊は、外側の周面94,…と内側の周面95,…、外側の周面96,…と内側の周面97,…に衝突することで剪断応力が負荷されたり、液体の流動により生じる剪断流による剪断力が負荷されたりすることで、細胞の破壊を抑制しながら、破砕され、所定の大きさになると考えられる。また、第1回開口部の近傍に細胞液の流れ方向を変更し得る構造を有することで剪断力がより効果的に作用し、細胞凝集塊の効率的な破砕が促進されると考えられる。第1開口部の大きさより大きい細胞凝集塊は、その程度に応じてより小さい細胞凝集塊に分割されたり、変形したりして第1開口部を通過し得ると考えられる。尚、本実施形態は軸方向において同じ形状、構造を有するため、端面93から端面92に向かって細胞液を送液する場合も同じである。
図6、7に示す狭小流路形成部材40bは、円柱状の内側部40cと、この外周において支持しつつ内側部40cの外側全体を囲むように設けられる円筒状の外側部40dで構成される。部材40bの軸方向の両端において端面99,100を有する。端面99,100は外側部40dに形成されている。両端面99,100の中心には開口部101,102が形成されている。尚、2つの開口部101,102の一方を第1開口部、他方を第2開口部とする。また、部材40bの内部には、内側部40cと外側部40dで囲まれる中空部が形成され、この中空部が狭小流路105を形成している。狭小流路105は、部材40bの軸方向の一方端側から他方端側に向かって軸方向に平行に伸びる円環状に配置された複数の狭小な中空部98a,98b,98c,98dと、これらの中空部98a,…の軸方向両端において連続し、軸方向に直交する方向に延びる円板状の狭小な中空部103,104とを有する。この狭小流路105は、両端面99,100の開口部101,102と連通し、開口している。
中空部98a,98b,98c,98dで構成される部分の狭小流路105は、軸方向(狭小流路の長さ方向に対応する。)に直交する軸方向直交断面形状が不連続な円環状、即ち、離散円環状であり、中空部98a,…は、円柱状の内側部40cの中心軸を中心とする同一円周上に配置されている。図6、7に示す例では、円環が、4つずつに均等に分割された円弧状の形状を有するが、これに限定されず、分割数は2つでも、3つでも、5つ以上でもよく、これらの分割は均等でもよいし、不均等でもよい。中空部98a,…の幅は、中空部98a,…を形成する外側部40dの内周面106,…と内側部40cの外周面107,…の軸方向直行断面の径から算出することができる。図6、7に示す例では、各周面の軸方向直行断面の径が軸方向に沿って同じであるため、これらの幅は軸方向に沿って同じであり、軸方向の何れかの直行断面における径から最小幅を算出することができ、各中空部98a,…において同じである。これらの各中空部98a,…における最小幅は、細胞凝集塊を最終的に所定の大きさに破砕して分散できれば、それぞれ同じであっても異なってもよいが、同じであるのが好ましい。軸方向直交断面形状が離散円環状である中空部98a,…で構成される部分の狭小流路105の軸方向の長さは、前述のように諸条件を考慮して決定することができ、例えば、3~20mmとすることができる。
中空部103,104で構成される部分の狭小流路105は、軸方向直交断面形状が円形状を有し、軸方向に平行な方向な断面が方形状を有し、全体として円板形状を有する。中空部103,104で構成される部分の狭小流路105の幅は内側部40cの軸方向の両端面108,109と、これと対向する外側部40dの軸方向の両内側底面110,111との間の最短距離から算出することができる。図に示す例では、端面108,109と底面110,111とは平行で、それらの間の最短距離は同じであり、中空部103,104全体で同じ幅である。中空部98a,…と、中空部103,104の幅は同じでも異なってもよいが、同じであるのが好ましい。中空部103,104で構成される部分の狭小流路105において、軸方向に直交する方向の大きさは、両内側底面110,111の直径により規定することができ、この大きさは、前述のように諸条件を考慮して決定することができ、例えば、3~20mmとすることができる。
ここで、中空部103,104を流れる細胞液は、例えば開口部101から流入して開口部101の中心から放射方向外側に向かって流れるため、狭小流路の長さ方向は、部材40bの軸方向に直行する方向である。そのため、中空部103,104の長さ方向に直交する断面形状は方形状である。このように、狭小流路105は、その長さ方向に直交する断面形状が、一重離散円環状と方形状とを組み合わせた断面形状となっている。
また、例えば後述する図8に示すようにして、シリンジ1aから細胞液Yを分散器4に流入させた場合は、細胞液Yは、外側部40dの開口部101から狭小流路105に流入し、内側部40cの端面108に突き当たり、流れ方向を軸方向からこれに直交する方向に向きを変え、軸方向直行断面形状が離散円環状の狭小流路105の外側の周壁側である外側部40dの内周面106側に向かうことになる。即ち、内側部40cの軸方向端面108は、細胞液Yを軸方向に沿って延びる部分の狭小流路105の周壁側に向かわせる構造体を構成する。尚、シリンジ1bから細胞液Yを分散器4に流入させた場合は、内側部40cの軸方向端面109が、細胞液Yを軸方向に沿って延びる部分の狭小流路105の周壁側に向かわせる構造体を構成する。
図6、7に示す狭小流路形成部材40bでは、図に示す実施形態以外に、例えば、以下のような変形例を採用することができる。図に示す例では、各中空部98a,…を形成する壁面は平滑面であるが、何れかに凹凸を設けてもよい。また、図に示す例では、狭小流路105の幅は軸方向のいずれの位置でも、軸方向に直交する何れの位置でも同じであるが、(1)離散円環状の中空部98a,…において、端面108の側から端面109の側に向かって漸次小さくなった後漸次大きくなるように内周面106,…、外周面107の軸方向直行断面における径を変化させてもよいし、或いは、(2)開口部101から開口部102の側に向かって漸次小さくなった後漸次大きくなるように各中空部の幅を変化させてもよい。この際の最小幅となる位置は両端面108,109から等距離の位置が好ましい。また、両端面108,109は平坦面であるが、例えば、円錐形、円錐台形などとし、これに対応するように、底面110,111を傾斜面としてもよい。
図6、7に示す狭小流路形成部材40bを用い、軸方向の一方の端面99の開口部101から他方の端面100の開口部102に向かって細胞液を送液する場合を説明すると以下のとおりである。端面99の側から送液された細胞液は、開口部101(第1開口部)に直接流入するもの、端面99に突き当たり流れ方向を変えて第1開口部に流入するものがある。開口部101から中空部103で構成される部分の狭小流路105に流入した細胞液は、端面108に突き当たり流れ方向を変えて内周面106側に向かう。次いで、内周面106に突き当たり方向を変えて最終的に中空部98a,…で構成される部分の狭小流路105に流入し、軸方向に沿って他方の端面100側に向かう。次いで、底面111に突き当たり方向を変えて、中空部103,104で構成される部分の狭小流路105に流入し、底面109の周縁部から最終的に底面109即ち端面100の中心に形成されている開口部102から流出する。このように軸方向に直交する断面形状が二重離散円環状で、軸方向に所定の長さを有する中空部98a,…で構成される部分、及び、円板形状の中空部103,104で構成される部分を有する狭小流路105を通過することで、細胞凝集塊は、壁面と衝突することで剪断応力が負荷されたり、液体の流動により生じる剪断流による剪断力が負荷されたりすることで、細胞の破壊を抑制しながら、破砕され、所定の大きさになると考えられる。また、開口部101の近傍や、狭小流路105に細胞液の流れ方向を変更し得る構造を設けることで剪断力がより効果的に作用し、細胞凝集塊の効率的な破砕が促進されると考えられる。開口部101の大きさより大きい細胞凝集塊は、その程度に応じてより小さい細胞凝集塊に分割されたり、変形したりして開口部101を通過し得ると考えられる。尚、本実施形態は軸方向において同じ形状、構造を有するため、端面100から端面99に向かって細胞液を送液する場合も同様に考えることができる。
図3~7に示す狭小流路形成部材40,…、第1部材13及び第2部材14を構成する部材の材質は特に限定はなく、各部材の機能に応じて、金属、セラミックなどの無機材料、合成樹脂などの有機材料を適宜選択して採用することができるが、細胞液と接する部分は、細胞凝集塊やその破砕物等の付着を抑制することが可能なコーティングが施されたものを用いるのが好ましい。尚、滅菌処理条件に応じて各条件に適応可能な材質を用いる必要がある。
次に、図8により、細胞分散システムの概要を説明する。まず、第1ベッセル2に所定数の細胞を含む細胞液を注入する。細胞液は、前述のように例えば特許文献3などに記載の大量細胞培養システムにより培養して得られた、細胞凝集塊を含有する培養液をそのまま用いてもよい。第1ベッセル2に充填される細胞液に含まれる細胞数は、移植手術等に必要な細胞数を含むように適宜決定することができる。また、心筋細胞の細胞凝集塊は、cTnT陽性率が80%以上のものを用いるのが好ましい。
図8(a)に示すように、細胞液Yが入った第1ベッセル2のヘッド8と、分散器4の一方の接続部18に接続するとともに、第2ベッセル3のヘッド8に分散器4の他方の接続部21を接続し、第1ベッセル2のヘッド8が下向きになるように配置して静置する。このように静置すると、第1ベッセル2のヘッド8側の下部に細胞凝集塊Xが沈殿する。その状態で、第1ベッセル2のプランジャ9を押し込むと同時に、第2ベッセル3のプランジャ9を引き抜き方向へ後退させて、両プランジャ9,9を相補的に移動させ、上流側と下流側とで差圧を生じさせて、第1ベッセル2内の細胞液Yを第2ベッセル3に移動させる(図8(b))。この時、例えば、図3~7に示す狭小流路形成部材40,…を用いた場合、第1ベッセル2から押し出された細胞液Yは、ヘッド8から第1部材13の管路15を通って狭小流路形成部材40,…に到達する。そして、前述のようにして、細胞液Yは第1開口部から流入し、狭小流路41,…を通過して第2開口部から流出する。細胞凝集塊Xは、所定の大きさに破砕、分散されるため、細胞凝集塊Xが破砕、分散された分散液Zが得られる(図8(b))。細胞液Yの供給速度(ml/sec)は、細胞の種類、狭小流路の構造などに応じて適宜決定可能であり、iPS細胞由来の心筋細胞の場合は、例えば、0.1~5ml/secとすることができる。また、狭小流路内を通過する細胞液Yの流速(線速度)は、iPS細胞由来の心筋細胞の場合は、例えば、0.05~10m/secとすることができ、0.1~1m/secが好ましい。この流速は、例えば、供給速度(ml/sec)と、第1開口部から軸方向の同じ位置における細胞液の通過する断面積とから算出することができる。断面積が所定の位置で異なる場合は、そのうち供給速度が最大の値を採用するものとする。
細胞液Yは、前述のように1回狭小流路を通過させただけでは細胞凝集塊Xを所望の所定の大きさに破砕、分散することができない場合は、2回以上、狭小流路を通過させてもよい。この場合、図8(b)に示す状態から、第2ベッセル3のプランジャ9を押し込むと同時に、第1ベッセル2のプランジャ9を引き抜き方向へ後退させ、上流側と下流側とで差圧を生じさせて、第2ベッセル3内の1回破砕分散済みの細胞液Y(分散液Z)を第1ベッセル2に移動させ、再び図8(a)に示す状態にする。この時、例えば、図3~7に示す狭小流路形成部材40,…を用いた場合、分散液Zが狭小流路41,…を通過する際に、再度、分散液Z中の十分に破砕されていない細胞凝集塊に剪断力が負荷され、破砕が促進される。細胞凝集塊Xが所望の所定の大きさに破砕、分散されるまで、以上の操作を繰り返し、細胞凝集塊Xの平均粒径を徐々に小さくすることができる。但し、繰り返し回数が多すぎると、細胞の破壊或いは破壊されないものの死細胞が増加する傾向にあるため、使用する細胞腫などに応じて繰り返し回数を適宜決定するのが好ましい。例えばiPS細胞由来の心筋細胞の場合は、繰り返し回数は、5回以内が好ましい。
以上のような一連の工程を経て得られる細胞凝集塊の破砕物は、死細胞の発生が抑制され、かつ、例えば細胞シートの製造にも適用可能な大きさを有したものとなる。また、細胞シートの製造以外にも、立体的な細胞組織の製造などに適用可能である。
前述の一連の工程は、例えば、図9、10に示す細胞凝集塊分散装置Aにより自動的に行うことができる。尚、この装置Aは、特許文献3、4に記載のベッセル間細胞液移送装置を応用したものである。
図9、10に示す細胞凝集塊分散装置Aは、2つのベッセルのヘッド8,8同士を接続具4で接続した状態で、外筒部5のフロントフランジ6を軸方向移動不能に保持し、プランジャボタン12を把持してプランジャ9を軸方向へ駆動し、一定速度で所定量の細胞液を一方のベッセルから他方のベッセルに移動させ、細胞凝集塊を破砕し、分散させることができる自動化装置の一例である。
細胞凝集塊分散装置Aは、互いに同一鉛直方向に対向する第1機構27と第2機構28とを共通のベース部29を設け、それぞれにベッセルを装着して、外筒部5を固定した状態で、プランジャ9を前進、後退駆動するのである。ここで、「前進」とはベッセルのヘッド8から細胞液を吐出する方向に進むことを意味し、「後退」とは外部から細胞液を吸引する方向に進むことを意味し、前進と逆に進むことを意味している。
細胞凝集塊分散装置Aは、図9、10に示すように、第1機構27には、第1ベッセル2の外筒部5を固定する固定部30とプランジャ9を進退駆動する可動部31を備え、可動部31の背面にはこれを駆動する第1駆動機構部が設けられている。また、第2機構28にも、第2ベッセル3の外筒部5を固定する固定部33とプランジャ9を進退駆動する可動部34を備え、可動部31の背面にはこれを駆動する第2駆動機構部が設けられている。ここで、第1機構27の可動部31と第1駆動機構部は、第2機構28の可動部34と第2駆動機構部と同一構造であり、互いに上下反転したものとなっている。第1機構27の可動部31と、第2機構28の可動部34は、分散器4を流れる流量が一致するように、同調して進退駆動される。また、それぞれのベッセルの断面積が異なる場合も断面積に応じて流量が一致するように、同調して進退駆動される。尚、第1及び第2駆動機構部は、例えば、特許文献3、4に記載と同様に構成することができる。
ベース部29は、保護カバー類36で覆われている部分において、水平なベース板37の上面の中央部に垂直な支持板を立起状態で固定するとともに、この支持板の背面側の両側縁に沿って2つの補強板を立設し、ベース板37と支持板に固定し、平面視コ字形の剛性の高い構造となっている。そして、この支持板の前面上部に第1駆動機構部、前面下部に第2駆動機構部が配置されるとともに、前面中央部で両駆動機構部の間に第1機構27の固定部30と第2機構28の固定部33が配置されている。
第1機構27の固定部30と第2機構28の固定部33は、前記支持板の表面側に間隔を置いて平行に固定した共通の固定ステージ54に直接又は間接的に取付けて設けている。本実施形態では、固定部33は、固定ステージ54の下部に直接取付け、固定部30は、固定ステージ54の上部に設けた上下方向に移動可能となした可動ステージ55上に取付けている。分散器4の寸法や、前記ベッセルのヘッド8に対する分散器4の接続深さの誤差を吸収するため、必要に応じて、固定部33と固定部30とを間隔調整具を介して連結してもよい。この間隔調整具は、例えば、特許文献3、4に記載のものを採用することができる。
第1機構27の可動部31は、ステージ38上に設けられ、ステージ38に対してプランジャ9のプランジャボタン12を保持するプランジャ保持部57を、上下方向に位置を微調整して固定できるようになっている。具体的には、ステージ38の表面に調整板58を接合状態で上下方向に移動案内可能になるように構成し、調整板58の中心に開口した上下方向に延びた長孔を通して締付ネジ62をステージ44に螺合した構造である。締付ネジ62に設けたハンドル63を持って手動で簡単に締め付け、緩めることができるようになっている。ここで、前記プランジャ保持部57は、図10に示すように、プランジャボタン12を前面側から係合する係合凹部64で構成している。
また、同様に、第2機構28の可動部34は、ステージ51上に設けられ、ステージ51に対してプランジャ9のプランジャボタン12を保持するプランジャ保持部65を、上下方向に位置を微調整して固定できるようになっている。具体的には、ステージ51の表面に調整板66を接合状態で上下方向に移動案内可能になるように構成し、調整板66の中心に開口した上下方向に延びた長孔69を通して締付ネジ70をステージ51に螺合した構造である。締付ネジ70に設けたハンドル71を持って手動で簡単に締め付け、緩めることができるようになっている。ここで、前記プランジャ保持部65は、図10に示すように、前記プランジャボタン12を前面側から係合する係合凹部72で構成している。
第1機構27の固定部30には、第1ベッセル2の外筒部5を保持する外筒部保持部73を設けている。具体的には、外筒部保持部73は、図10に示すように、外筒部5を受け入れるU字状凹部74と、フロントフランジ6を嵌合するフランジ嵌合溝75と、フロントフランジ6を外側から押さえて保持する保持部材76とからなる。保持部材76は、一端を水平回動可能に保持するとともに、他端を弾性的にフック77で係脱できるように構成している。ここで、外筒部保持部73は、バックフランジ7も同時に保持できるように、上下2カ所に設けることも好ましい。
また、同様に、第2機構28の固定部33には、第2ベッセル3の外筒部5を保持する外筒部保持部78を設けている。具体的には、外筒部保持部78は、図10に示すように、外筒部5を受け入れるU字状凹部79と、フロントフランジ6を嵌合するフランジ嵌合溝80と、フロントフランジ6を外側から押さえて保持する保持部材81とからなる。保持部材81は、一端を水平回動可能に保持するとともに、他端を弾性的にフック82で係脱できるように構成している。ここで、外筒部保持部78は、バックフランジ7も同時に保持できるように、上下2カ所に設けることも好ましい。
また、図示しないが、安全のためとホームポジションを決定するために、各可動部の可動範囲を制限するリミット機構が設けられている。このリミット機構は、例えば、特許文献3、4に記載のものを採用することができる。尚、下側の第2ベッセル3を単純な容器とし、第1ベッセル2から分散器4の狭小流路を通過させて細胞凝集塊が所定の大きさに破砕され、分散された細胞液を直接所望の容器に採取することも可能である。つまり、細胞凝集塊分散装置Aの第1機構27のみを備えた装置でも、細胞凝集塊の破砕、分散作業は可能である。
以上のように構成した細胞凝集塊分散装置Aに、第1ベッセル2と第2ベッセル3を装着するには、図10に示すように、先ず第1ベッセル2と第2ベッセル3のヘッド8,8同士を分散器4で連結しておき、保持部材76,81は解放するとともに、締付ネジ62,70を緩めておいた状態で、第1ベッセル2のフロントフランジ6をフランジ嵌合溝75に嵌合するとともに、プランジャボタン12を係合凹部64に係合し、第2ベッセル3のフロントフランジ6をフランジ嵌合溝80に嵌合するとともに、プランジャボタン12を係合凹部72に係合し、それから保持部材76,81を閉じてそれぞれフロントフランジ6を保持する。それから、締付ネジ62,70を締め付けてセットする。
細胞凝集塊分散装置Aを用いて細胞凝集塊を破砕、分散する場合、前述のようにして、図8(a)に示す状態で連結した第1シリンジ1a、分散器4及び第2シリンジ1bを細胞凝集塊分散装置Aにセットし、静置する。暫くこの状態を維持して、第1ベッセル2の内部で細胞凝集塊を沈殿させる。それから、第1機構27の可動部31を前進させて第1ベッセル2のプランジャ9を押し込むと同時に、可動部34を後退させて第2ベッセル3のプランジャ9を引き抜き方向へ移動させて、両プランジャ9,9を相補的に移動させ、細胞液に含まれる細胞凝集塊を破砕、分散し、第2ベッセル3に細胞凝集塊の破砕物が分散した分散液を収容する。破砕物が所定の大きさになっている場合は、破砕、分散を終了する。所定の大きさになっていない場合は破砕物に対して再度破砕、分散処理を行う。
第2ベッセル3に収容した分散液(細胞液)に対して再度破砕、分散処理を行う場合は、引き続き、第1機構27の可動部31を後退させて第1ベッセル2のプランジャ9を引き抜き方向へ移動させると同時に、可動部34を前進させて第2ベッセル3のプランジャ9を押し込む方向へ移動させ、分散液(細胞液)に含まれる細胞凝集塊を所定の大きさに破砕、分散し、第1ベッセル2に所定の大きさの破砕物が分散した分散液を収容する。必要に応じて、以上の破砕、分散処理を繰り返すことで、当初の細胞凝集塊を所定の大きさに破砕、分散させることができる。
以下、実施例に基づき本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施例1)
先ず、容量10mlの第1ベッセル2に、生細胞数換算で1×107個のiPS細胞(253G1株)の細胞凝集塊と10mlの培地(StemFit AK02N、10mM Y-27632添加)を含む細胞液を入れた。図3に示すような狭小流路形成部材40を有する分散器4を用い、図1に示すように第1シリンジ1a、分散器4、容量10mlの第2ベッセルを有する第2シリンジ1bを接続し、前述の細胞凝集塊分散装置Aに取り付け、静置した。ついで、狭小流路41を通過する流速が0.16m/secとなるように細胞凝集塊分散装置Aの可動部31,34を前述のように移動させて両プランジャ9,9を相補的に移動させることで、細胞液を狭小流路41を通じて移動させて、細胞凝集塊を破砕し、分散させた細胞液(分散液)を第2ベッセル3に収容した。得られた分散液及び処理前の細胞液について、株式会社SCREENホールディングス製、Cell3iMagerを用いて、撮像を取得し、粒度分布を測定した。尚、粒度分布の測定には、40μmストレーナーを通過したものについて測定した。破砕、分散処理前の分散液の結果を図12(a)に、同処理後の分散液の結果を図12(b)に示す。また、トリパンブルー染色法による測定より、生細胞を確認できた。
尚、本実施例で用いた狭小流路形成部材40の形状、構造、寸法は以下のとおりである。円柱部45は、小孔48より先端側にM3.5、ピッチ0.35mmの雄ねじ構造の凹凸を有し、小孔48は、φ0.7mmの断面円形で、その中心の位置が、フランジ46の上面から1.35mmとなるように、かつ、周方向に等間隔で8個形成されており、小孔48の中心から先端45aまでの距離が3.5mmである。外側部材44は内周面51の軸方向全体が、M4、ピッチ0.5mmの雌ねじ構造の凹凸を有し、軸方向長さが3.5mmである。雄ねじ構造の部分と雌ねじ構造の部分とは、螺合ではなく落とし込みによる組み合わせが可能であった。パッキン43の厚みは1mmである。以上より、狭小流路の幅は、0.2~0.5mm(最小幅は0.2mm)であり、軸方向長さ(小孔48のフランジ46に近い位置から円柱部45の先端45aまでの距離)は、2.5mmである。
図12(a)に示すように、分散処理前の細胞凝集塊の粒度分布において100μm以上における最頻値となる粒子径は420μmであり、狭小流路の最小幅0.2mmは、その粒子径の0.48倍である。
(参考例1)
図3に示すような狭小流路形成部材40に変えて、図11に示す流路形成部材200を用い、0.5ml/secの流量で細胞液を送液した以外は、実施例1と同様にして細胞凝集塊を破砕した。実施例1と同様にして、処理前後の画像を取得して、粒度分布を測定した。結果を図13に示す。処理前の細胞液の結果を図13(a)に、同処理後の処理液の結果を図13(b)に示す。
尚、図11に示す流路形成部材200は、中心に径1mmの貫通孔203を有する厚み1mmの円板(A)201、中心に径4mmの貫通孔204を有する厚み1mmの円板(B)202を、A、B、A、B、A、Aの順に積層し、流路内に連続する大きな段を設けた構造を有する。径1mmの貫通孔を通過する際の流速は0.16m/secである。
図13(a)に示すように、分散処理前の細胞凝集塊の粒度分布において100μm以上における最頻値となる粒子径は420μmであり、流路の最小幅1mmは、その粒子径の2.4倍である。
狭小流路を通過させることで、図12に示すように、分散処理前後で細胞凝集塊の影が薄くなっており、細胞凝集塊は、分散処理前後で40μm以下の数が飛躍的に増加し、細胞シートの製造にも適用可能な大きさに破砕され、分散されていることが分かる。一方、参考例1は、図11に示すように、流路内に大きな段を複数設けて、細胞凝集塊に対する剪断力による負荷の拡大を試みたが、図13に示すように、処理前後で細胞凝集塊の画像に大きな変化は見られず、ある程度40μm以下の数は増加しているものの、実施例1と比較して、十分な破砕効果が得られないことがわかる。これは、流路幅が小さくても1mmと細胞凝集塊よりも比較的大きく狭小ではなかったことによると考えられる。