本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と難燃剤とを含有する難燃性樹脂組成物であって、前記難燃剤として、酸性官能基を有する多糖類、前記酸性官能基の少なくとも一部を残して改変された前記酸性官能基を有する多糖類の誘導体、及びそれらの塩から選ばれる1種以上からなる酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物の混合物、又は、前記酸性多糖類と反応性を有する反応性有機ケイ素化合物と前記酸性多糖類との反応物を含有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記難燃性樹脂組成物が前記反応物を含有し、前記反応性有機ケイ素化合物が反応性シリコーンオイル又はシランカップリング剤を含むことが好ましい。反応物であれば、有機ケイ素化合物は酸性多糖類に近接して存在することになり、酸性多糖類と成形装置等との間の摩擦を軽減させ易い。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記酸性多糖類がアルギン酸カルシウムを含むことが好ましい。アルギン酸のカルシウム塩は、分子間架橋構造を形成しやすく耐熱性が高い。したがって、これを用いることで、成形時の着色や分解を効果的に抑制できる。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記混合物における前記酸性多糖類に対する非反応性有機ケイ素化合物の割合及び前記反応物における前記酸性多糖類に対する前記反応性有機ケイ素化合物の割合が、それぞれ2~30質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記難燃性樹脂組成物の全量に対する前記混合物及び前記反応物の合計含有量が、5~40質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記難燃性樹脂組成物が、さらに、リン系難燃剤を、前記難燃性樹脂組成物の全量に対して1~20質量%の範囲内で含有することが好ましい。一般的な難燃剤の1種であるリン系難燃剤は、燃焼中にリンがリン酸になり、そのリン酸が脱水反応を促進することで、炭化層の形成を補助するものと考えられる。すなわち、リン系難燃剤は酸性多糖類の酸性官能基と同様に炭化を促進する効果があるので、合力して難燃化を促進できる。加えてリン酸と多糖類はともに水素結合を形成できるために、分子間距離が近接しやすく、難燃性の効果をより得やすい。
本発明の難燃性樹脂筐体は、難燃性樹脂組成物を用いて作製された難燃性樹脂筐体であって、前記難燃性樹脂組成物が上記本発明の難燃性樹脂組成物であることを特徴とする。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[難燃性樹脂組成物]
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と難燃剤とを含有する難燃性樹脂組成物であって、前記難燃剤として、酸性官能基を有する多糖類、前記酸性官能基の少なくとも一部を残して改変された前記酸性官能基を有する多糖類の誘導体、及びそれらの塩から選ばれる1種以上からなる酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物の混合物、又は、前記酸性多糖類と反応性を有する反応性有機ケイ素化合物と前記酸性多糖類との反応物を含有することを特徴とする。
以下、酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物の混合物、及び、酸性多糖類と反応性を有する反応性有機ケイ素化合物と酸性多糖類との反応物を併せて「酸性多糖類系難燃剤(A)」ということもある。酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物の混合物を「混合物(A1)」、酸性多糖類と反応性を有する反応性有機ケイ素化合物(以下、単に「反応性有機ケイ素化合物」ともいう。)と酸性多糖類との反応物を「反応物(A2)」ともいう。
混合物(A1)は、酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物を予め混合した混合物(A1)として難燃性樹脂組成物に配合されてもよく、難燃性樹脂組成物に酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物が別々に配合されて当該難燃性樹脂組成物内で混合物(A1)として存在する形態であってもよい。
反応物(A2)は、酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を予め反応させた反応物(A2)として難燃性樹脂組成物に配合されてもよく、難燃性樹脂組成物に酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物が別々に配合されて当該難燃性樹脂組成物内で反応した反応物(A2)として存在する形態であってもよい。なお、反応物(A2)には、反応性有機ケイ素化合物と酸性多糖類が実際に反応して得られる反応生成物と共に、未反応原料、すなわち、未反応の反応性有機ケイ素化合物と酸性多糖類が含まれていてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、反応物(A2)は、反応の際に生成される副生物を含んでいてもよい。
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、酸性多糖類系難燃剤(A)を含有する。本発明の難燃性樹脂組成物において、酸性多糖類系難燃剤(A)は難燃剤として機能する。本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び酸性多糖類系難燃剤(A)以外に、難燃剤として酸性多糖類系難燃剤(A)以外の難燃剤、例えばリン系難燃剤を含有してもよい。また、本発明の難燃性樹脂組成物は、これら以外に、難燃性樹脂組成物が一般的に含有する各種添加剤を任意に含有できる。以下、本発明の難燃性樹脂組成物における各成分について説明する。
(熱可塑性樹脂)
本発明の難燃性樹脂組成物が含有する熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂が特に制限なく用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイト樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物が含有する熱可塑性樹脂としては、一般的に生分解性樹脂として扱われる熱可塑性樹脂を用いることができる。生分解性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール及びこれらを含む共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂は、上記樹脂の1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
なお、上記ポリスチレン系樹脂には、ポリスチレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等が含まれる。
芳香族ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル誘導体成分と、脂肪族ジオールや脂環族ジオール等のジオール成分とがエステル反応により連結した構造を有する芳香族ポリエステルが挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4´-ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートなどの共重合ポリエステルが挙げられる。
生分解性熱可塑性樹脂である脂肪族ポリエステルとしては、オキシ酸の(共)重合体であるポリオキシ酸及び脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の重縮合体が挙げられる。ポリオキシ酸としては、例えば、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D-乳酸(PDLA)、L-乳酸とD-乳酸とのランダム共重合体、L-乳酸とD-乳酸とのステレオコンプレックス等のポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸等が挙げられる。脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の重縮合体としては、例えば、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート等が挙げられる。
熱可塑性樹脂として生分解性熱可塑性樹脂を用いることは、環境負荷を低減できる観点から好ましい。また、生分解性熱可塑性樹脂を生分解性ではない熱可塑性樹脂を組み合わせて用いることで、両者の有する利点を併せ持つ熱可塑性樹脂としてもよい。
本発明の難燃性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、難燃性樹脂組成物から酸性多糖類系難燃剤(A)及び任意に含有するその他の各種添加剤の含有量を除いた量である。
(酸性多糖類系難燃剤(A))
酸性多糖類系難燃剤(A)は、混合物(A1)又は反応物(A2)からなる。酸性多糖類系難燃剤(A)は、混合物(A1)単独又は反応物(A2)単独からなってもよく、両者の組合せからなってもよい。
<混合物(A1)>
混合物(A1)は酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物の混合物である。混合物(A1)が含有する酸性多糖類は、酸性官能基を有する多糖類、その誘導体(ただし、酸性官能基の少なくとも一部を残して改変された誘導体)及びそれらの塩から選ばれる1種以上からなる。
本明細書において、多糖類とは、グリコシド結合により多数の単糖分子が脱水縮合した物質の総称である。多糖類の構成単位となる単糖の種類は1又は2以上である。当該単糖としては、五炭糖(ペントース)又は六炭糖(ヘキソース)が好ましく、六炭糖がより好ましい。多糖類の重合度は、例えば、50~20000が挙げられ、200~1500が好ましく、200~1100がより好ましい。
酸性官能基を有する多糖類の誘導体は、当該多糖類の酸性官能基の少なくとも一部を残して改変された誘導体である。本明細書において、特に断らない限り、酸性官能基を有する多糖類の誘導体とは、上記意味で用いられる。酸性官能基を有する多糖類の誘導体としては、当該多糖類の酸性官能基の少なくとも一部を残して、当該多糖類の骨格に結合する原子を異なる原子や置換基で置き換えた化合物や、当該多糖類の糖鎖が元来有するヒドロキシ基や酸性官能基の一部等の官能基を介して他の化合物又は当該多糖類の他の分子と結合して得られる化合物等が含まれる。
酸性多糖類が有する酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、チオカルボキシ基(-CSOH)、スルフィノ基(-SO2H)、スルフェノ基(-SOH)等が挙げられ、カルボキシ基、スルホ基が好ましい。なお、酸性官能基は、スルホ基を有する酸性官能基、例えば、スルホ基が酸素原子に結合した酸性官能基(-O-SO3H)であってもよい。酸性官能基の塩としては、Li、Na、K等のアルカリ金属との塩、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属との塩、及びアルキル(アンモニウム)(例えば、R4N+-(Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。ただしRの少なくとも1つはアルキル基である。))塩が挙げられる。
酸性多糖類の分子量としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求められるポリスチレン基準の重量平均分子量として、1万~25万の範囲にあるのが好ましく、2万~8万の範囲にあるのがより好ましい。
酸性多糖類の例には、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、オオバコ、キシラン、アラビン酸、トラガカント酸、ハバ(khava)ガム、亜麻仁酸、セルロン酸、リケニンウロン酸、ジェランガム、ラムザンガム、ウェランガム、カラギーナン、グリコサミノグリカン類(例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸塩、コンドロイチン-6-硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラチン硫酸塩、及びヘパリン)及びその塩が挙げられる。
これらの中でも、酸性多糖類としては、難燃性樹脂組成物中への混合時の耐熱安定性の観点から、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム及びジェランガムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのなかでも、難燃性と耐熱性の両立の観点からアルギン酸及びアルギン酸塩がより好ましく、アルギン酸の2価の塩がさらに好ましく、アルギン酸カルシウムが特に好ましい。
アルギン酸は、海藻(褐藻類)の藻体に含まれる細胞間多糖として知られており、典型的には、当該藻体から工業的に抽出・精製して得られる天然由来の化合物とされる。アルギン酸は、下記式(1)で構造が示されるマンヌロン酸単位とグルロン酸単位を繰り返し構成単位とする多糖類の1種である。式(1)中、左側の括弧で括られた単位がグルロン酸単位であり、右側の括弧で括られた単位がマンヌロン酸単位である。グルロン酸及びマンヌロン酸は、共にウロン酸の1種である。グルロン酸とマンヌロン酸は、互いに立体異性体でありグルロン酸がL体であり、マンヌロン酸がD体である。
式(1)において、Gはアルギン酸骨格中のグルロン酸単位のモル数を示し、Mはアルギン酸骨格中のマンヌロン酸単位のモル数を示す。なお、式(1)は、化合物中の各構成単位のモル組成を示す式であり、Gモルのグルロン酸単位のブロックとMモルのマンヌロン酸単位のブロックが結合した構造を示すものではない。すなわち、式(1)は、化合物中のグルロン酸単位とマンヌロン酸単位の結合順を特定するものではない。式(1)で示されるアルギン酸におけるマンヌロン酸単位とグルロン酸単位のモル比(M/G比)は、M/Gで示される。
なお、本明細書において、「グルロン酸単位」及び「マンヌロン酸単位」の用語には、式(1)に示されるグルロン酸単位及びマンヌロン酸単位に加えて、各単位の水素原子が置換された又はヒドロキシ基若しくはカルボキシ基を介して置換基が導入された誘導体におけるグルロン酸骨格を含む単位及びマンヌロン酸骨格を含む単位がその範疇に含まれる。アルギン酸又はアルギン酸の誘導体の塩についても同様である。
上記のとおり式(1)中、グルロン酸単位とマンヌロン酸単位の結合順は特に限定されない。グルロン酸単位とマンヌロン酸単位がランダムに結合していてもよく、グルロン酸単位のブロックとマンヌロン酸単位のブロックが結合していてもよく、これらの組合せであってもよい。式(1)に示されるアルギン酸は、典型的には、グルロン酸とマンヌロン酸がランダムに結合したブロック(以下、「MGブロック」ともいう。)と、グルロン酸単位のブロック(以下、「GGブロック」ともいう。)とマンヌロン酸単位のブロック(以下、「MMブロック」ともいう。)の組合せからなる。
グルロン酸単位が連鎖した部分は、分子構造が密になり易く、さらに架橋し易いことから、M/G比は小さければ小さいほど耐熱性が向上する。本発明に係るアルギン酸類のM/G比は、1.2以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。M/G比の下限は0である。M/G比が0とは、アルギン酸類の構成単位が全てグルロン酸単位で構成される場合である。
ここで、アルギン酸類は、典型的には、天然由来であり、M/G比は、海藻(褐藻類)の種類、産地、季節、さらには、藻体の部位により異なる。適切な原料海藻を厳密に選択して工業的に抽出・精製処理することでM/G比の異なるアルギン酸類を作り分けることができる。アルギン酸類のM/G比は、このようにして調整されることから、コスト面を含む入手容易性及び環境負荷等を考慮すると、M/G比の下限は0.3程度が好ましく、0.4程度がより好ましい。
なお、アルギン酸類のM/G比は、例えば、「未利用褐藻類の原料性状について」(北海道立水産試験場研究報告、第57号,15-22(2000)、宮崎亜希子他)に記載された方法で測定することができる。
アルギン酸誘導体及び、アルギン酸又はその誘導体の塩についても、上記同様の方法でM/G比を測定することができる。また、M/G比が既知のアルギン酸から得られるアルギン酸誘導体及び、アルギン酸又はその誘導体の塩のM/G比は、元のアルギン酸のM/G比から変化しないので、元のアルギン酸のM/G比をそのまま用いることができる。
また、アルギン酸又はその誘導体において、グルロン酸単位が連鎖した部分は、2価の塩となった場合は、エッグボックス構造と呼ばれるイオンを中心とした密な分子間架橋構造を形成しやすい。下記式(3)に、アルギン酸カルシウムのグルロン酸単位が連鎖した部分の分子間架橋構造の一部を示す。
式(3)には、隣り合う2本の分子鎖(分子鎖(I)及び分子鎖(II))が示され、それぞれ4個のグルロン酸単位が連鎖している部分を示している。分子鎖(I)及び分子鎖(II))はそれぞれグルロン酸単位が折れ曲がって連結されており、分子鎖の両側(式(3)の見た目の位置から、便宜上、一方を「上側」、他方を「下側」と区別する)にCOO-が存在している。式(3)では、分子鎖(I)の下側のCOO-と分子鎖(II)の上側のCOO-がCa2+を介して塩を形成することで、分子鎖(I)と分子鎖(II)が架橋している。
また、式(3)中には示されていないが、分子鎖(I)の上側のCOO-及び分子鎖(II)の下側のCOO-は、それぞれCa2+を介して、別の分子鎖のCOO-と塩を形成して架橋している。このようにして形成される分子間架橋構造が、特に熱安定性の向上をもたらし、成形時の着色を効果的に抑制できるとされる。
酸性多糖類は、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
混合物(A1)において酸性多糖類と共に用いる非反応性有機ケイ素化合物としては、反応性の官能基を有しない、特には酸性多糖類と反応性を有する官能基を有しない各種有機ケイ素化合物が特に制限なく挙げられる。
具体的には、非反応性シリコーンオイル、非反応性シラザン化合物等が挙げられ、非反応性シリコーンオイルが好ましい。
非反応性シリコーンオイルとしては、シロキサン結合による主骨格を有する高分子化合物であって、ケイ素原子に非反応性の有機基が結合した液状化合物が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとして、典型的には、下記式(4)で構造を示される化合物が挙げられる。
式(4)中、R2は互いに独立して1価の非置換の炭化水素基(ただし、脂肪族不飽和基を有しない)を示し、R1は、互いに独立してR2について示した基又は非反応性置換基を有する1価の炭化水素基を示す。m及びnは、それぞれ括弧で囲まれた繰り返し単位の数を示す。mは1以上の整数であり、nは0又は1以上の整数である。m+nは、オイルとしての性状を保てる範囲である。オイルとしての性状を保てるとは、具体的には、動粘度(25℃)が1~20000mm2/s程度の範囲をいう。
R2としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、環状、又はこれらを組み合わせた構造のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基のようなアラルキル基が例示される。
R1としては、例えば、上記R2で示した基、及び、これらが非反応性置換基で置換された基が挙げられる。非反応性置換基としては、ハロゲン原子(クロロ基、フロロ基、ブロモ基等)、ポリエーテル基(例えば、-(CxH2xO)aR12;xは2~6の整数であり、aは1以上の整数である。aが2以上の場合、xの数が異なる単位の組合せ、例えば、xが2の単位とxが3の単位の組合せであってもよい。)、ポリエステル基(-OCOR12)、ポリアミド基(-NHCOR12)、-Si(R12)2OSiR12
3等が挙げられる。なお、各式におけるR12は上記R2で示した基と同様の基とすることができる。R1は、ケイ素原子に直接結合するポリエステル基(-OCOR12)であってもよい。
式(4)に示す化合物としては、典型的には、R1とR2が全てメチル基であるジメチルポリシロキサン、R2が全てメチル基であり、R1の少なくとも1つが、メチル基以外のR2として例示した基、R2が非反応性置換基で置換された基、ポリエステル基である化合物が挙げられる。
より具体的には、ジメチルポリシロキサン、両末端のR1及びR2が全てメチル基であり側鎖のR1が長鎖アルキル基(炭素数6~20)、フェニル基、2-フェニルプロピル基、フロロアルキル基(例えば、-CH2CH2CF3)、ポリエーテル基(例えば、-R11(C2H4O)a1(C3H6O)a2R12)、ポリエステル基(-OCOR12)、ポリアミド基(-R11NHCOR12)、-R11Si(R12)2OSiR12
3から選ばれる化合物、及び側鎖のR1及びR2が全てメチル基であり両末端のR1がポリエーテル基(例えば、-R11(C2H4O)a1(C3H6O)a2R12)である化合物等が挙げられる。ここで、側鎖のR1が上記各基である場合、R1は1種であっても2種以上であってもよい。また、各式におけるR11は上記R2で示した基から水素原子が欠落した2価の基である。
非反応性シリコーンオイルは、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。非反応性シリコーンオイルは、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、いずれも信越化学工業社製の製品として、KF-96(ジメチルシリコーンオイル)、KF-50、KF-54(いずれも、メチルフェニルシリコーンオイル)、KF-351A、KF-352A、KF-6011、KF-6012、X-22-2516(いずれも、ポリエーテル変性シリコーンオイル)、KF-410(アラルキル変性シリコーンオイル)、X-22-821,FL-100(いずれも、フロロアルキル変性シリコーンオイル)、KF-412、KF-413、X-22-7322、X-22-1877(いずれも、長鎖アルキル変性シリコーンオイル)、X-22-715(高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル)、KF-3935(高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル)、KF-6004(両末端ポリエーテル変性シリコーンオイル)等が挙げられる。
以上、式(4)に構造を示す化合物を例に非反応性シリコーンオイルを説明したが、本発明に用いる非反応性シリコーンオイルはこれに限定されず、非反応性であれば、環状シリコーンオイル、3次元に結合したシリコーンオイル等も用いることが可能である。
混合物(A1)における、酸性多糖類に対する非反応性有機ケイ素化合物の割合は、2~30質量%の範囲内が好ましく、5~25質量%の範囲内がより好ましい。酸性多糖類に対する非反応性有機ケイ素化合物の割合上記範囲内にあると、成形品の調色性や衝撃強度がより向上する。
<反応物(A2)>
反応物(A2)は酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物の反応物である。酸性多糖類は、混合物(A1)において説明したのと同様の酸性多糖類を用いることができる。反応性有機ケイ素化合物は、酸性多糖類と反応性の官能基を有する有機ケイ素化合物である。上記のとおり反応物(A2)は、反応性有機ケイ素化合物と酸性多糖類が実際に反応して得られる反応生成物のみからなってもよく、反応生成物に加えて、未反応原料、すなわち、未反応の反応性有機ケイ素化合物と酸性多糖類を含んでいてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、反応物(A2)は、反応の際に生成される副生物を含んでいてもよい。
反応性有機ケイ素化合物における反応性の官能基としては、酸性多糖類が有するヒドロキシ基又は酸性官能基に反応性を有する基、例えば、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、シラノール基、加水分解性シリル基、カルボキシ基、フェノール基、ヒドロシリル基、酸無水物基等が挙げられる。これらの中でも、シラノール基、加水分解性シリル基、ヒドロシリル基が好ましい。
なお、シラノール基はケイ素原子にヒドロキシ基が1~3個結合した基を、加水分解性シリル基はケイ素原子に加水分解性基が1~3個結合した基を、ヒドロシリル基はケイ素原子に水素原子が1~3個結合した基をそれぞれ示す。ヒドロキシ基、加水分解性基、水素原子が結合していないケイ素原子の結合手は-O-Siや炭化水素基等、これら以外の基に結合している。
反応性有機ケイ素化合物として、具体的には、反応性シリコーンオイル及びシランカップリング剤が好ましい。反応性シリコーンオイルとしては、例えば、下記式(5)で示される構造の化合物が挙げられる。
式(5)中、R2及びR1は、式(4)におけるR2及びR1と同じ意味である。R3は、R2又はR1について示した基、若しくは水素原子、ヒドロキシ基、加水分解性基又は反応性置換基を有する1価の炭化水素基を示し、少なくとも1つは水素原子、ヒドロキシ基、加水分解性基又は反応性置換基を有する1価の炭化水素基である。m、n及びpは、それぞれ括弧で囲まれた繰り返し単位の数を示す。mは1以上の整数であり、n及びpは0又は1以上の整数である。m+n+pは、オイルとしての性状を保てる範囲である。
反応性を有する場合のR3として、具体的には、水素原子、ヒドロキシ基、加水分解性基、カルビノール基(-R14OH;R14は、2価脂肪族飽和炭化水素基)、及び、アミノ基(-NR13
2;R13は水素原子、R2と同様の基又は-R11NR13
2である(R11は上記と同じ意味である。)。)、エポキシ基(脂環式エポキシ基を含む)、メルカプト基、シラノール基、加水分解性シリル基、カルボキシ基、フェノール基、ヒドロシリル基、又は酸無水物基等を含有する炭化水素基が挙げられる。R3としては、水素原子、ヒドロキシ基、加水分解性基、又は、シラノール基、加水分解性シリル基、若しくはヒドロシリル基を有する炭化水素基が好ましい。
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアネート基、アミノ基、アミノ基の少なくとも1つの水素がアルキル基で置換された基等が挙げられる。加水分解反応により水酸基(シラノール基)となり、さらに酸性多糖類と脱水縮合する反応が円滑に進みやすい点から、アルコキシ基又はハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。加水分解性基としては、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
加水分解性シリル基を有する炭化水素基としては、例えば、-R11SiR12
3-qXqが例示できる。R11及びR12は上記と同じ意味であり、Xは加水分解性基を示す。qは1~3の整数であり、2又は3が好ましく、3がより好ましい。好ましい、-R11SiR12
3-qXqとしては、-(CH2)n1-Si(O(CH2)n2CH3)3(n1は、1~4の整数、n2は0又は1を表す)が例示できる。また、シラノール基を有する炭化水素基としては、上記式;-R11SiR12
3-qXqにおいて、Xの代わりにOH基を有する基が例示できる。
式(5)に示す化合物として、具体的には、両末端のR3、R2及びR1が全てメチル基であり、側鎖のR3が、反応性を有する場合のR3として上に説明した官能基から選ばれる基である化合物、及び側鎖のR3、R2及びR1が全てメチル基であり両末端又は一方の末端のR3が反応性を有する場合のR3として上に説明した官能基から選ばれる基である化合物等が挙げられる。
反応性シリコーンオイルにおける、反応性官能基の含有量は、例えば、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(式(5)において、両末端のR3、R2及びR1が全てメチル基であり、側鎖のR3が水素原子である化合物)の場合のケイ素原子に結合する水素原子の当量として、50~300g/molが例示できる。また、ジメチルシリコーンオイルに、ケイ素原子に結合するアルコキシ基が導入された反応性シリコーンオイル、例えば、式(5)において、両末端のR3、R2及びR1が全てメチル基であり、側鎖のR3が-(CH2)n1-Si(O(CH2)n2CH3)3(n1は、1~4の整数、n2は0又は1を表す)である化合物における当該アルコキシ基の当量として、100~100000g/molが例示できる。
反応性シリコーンオイルは、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。反応性シリコーンオイルは、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、いずれも信越化学工業社製の製品として、KF-99、KF-9901(いずれも、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、KF-868、KF-859、KF-8004、KF-8021、X-22-3939A、KF-8010(いずれも、アミノ変性シリコーンオイル)、KF-101、KF-1001、X-22-343、X-22-2000、KF-102、X-22-4741、X-22-163(いずれも、エポキシ変性シリコーンオイル)、X-22-4039、KF-6000(いずれも、カルビノール変性シリコーンオイル)、KF-2001、X-22-167B(いずれも、メルカプト変性シリコーンオイル)、X-22-3701E、X-22-162C(いずれも、カルボキシ変性シリコーンオイル)、X-21-5841(シラノール末端シリコーンオイル)、X-22-168AS(カルボン酸無水物変性シリコーンオイル)等が挙げられる。
ジメチルシリコーンオイルに、ケイ素原子に結合するアルコキシ基が導入された、反応性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、いずれも信越化学工業社製の製品として、下記式(6)に構造が示されるKF-9908(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)、下記式(7)に構造が示されるKF-9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)等が例示できる。式(6)及び式(7)中、x、y、z、wは、それぞれ1以上の整数である。
以上、式(5)に構造を示す化合物を例に反応性シリコーンオイルを説明したが、本発明に用いる反応性シリコーンオイルはこれに限定されず、反応性であれば、環状シリコーンオイル、3次元に結合したシリコーンオイル等も用いることが可能である。
シランカップリング剤は、ケイ素原子に加水分解性基が結合した構造を有する化合物であり、例えば、下記式(6)で示される化合物又はその部分加水分解縮合物が例示できる。シランカップリング剤の分子量は、例えば、120~10000程度が好ましい。
式(8) R6
4-t-Si-Xt
式(8)中、R6は1価有機基であり、Xは加水分解性基である。tは1~4の整数であり、1~3が好ましく、3がより好ましい。R6及びXがそれぞれ複数存在する場合には、それらは互いに同一であってもよく、異なってもよい。加水分解性基としては、好ましい態様を含めて上記で説明したのと同様である。
R6は、非反応性の1価有機基であってもよく、反応性官能基を有する1価有機基であってもよい。R6が有してもよい反応性官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、イソシアヌレート基、ウレイド基等が挙げられる。
非反応性の有機基であるR6としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、環状、又はこれらを組み合わせた構造のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基のようなアラルキル基が例示される。
反応性官能基を有する1価有機基のうち、例えば、ビニル基及びスチリル基は直接ケイ素原子に結合してもよく、2価の連結基を介してケイ素原子に結合してもよい。ビニル基及びスチリル基以外に上記で例示した基については、典型的には、2価の連結基を介してケイ素原子に結合する。2価の連結基としては、炭素-炭素原子間に酸素原子を有してもよい2価炭化水素基が例示でき、炭素-炭素原子間に酸素原子を有してもよい-(CH2)y-(yは1~10の整数)等が好ましい。
なお、シランカップリング剤には、炭素原子で形成される主鎖を有する化合物の側鎖末端に加水分解性シリル基、例えば、上記-R11SiR12
3-qXqで示される基が導入された化合物が含まれる。主鎖には、例えば、以下の式(9)又は式(10)で表される2価の基を繰り返し単位とする主鎖が例示できる。主鎖は式(9)の繰り返し単位のみで構成されてもよく、式(10)の繰り返し単位のみで構成されてもよく、両方の繰り返し単位で構成されていてもよい。
式(9) -CH2-CH2-
式(10) -CH2-CH=CH-CH2-
式(9)中又は式(10)中の-CH2-の水素原子の少なくとも1つが末端に加水分解性シリル基を有する基に置換されて、シランカップリング剤となる。それ以外の-CH2-に結合する水素原子は、置換基を有してもよい1価の炭化水素基、例えば、R2と同様の基に置換されていてもよい。置換基としては、R1で説明した非反応性の置換基であってもよく、R3で説明した反応性の置換基であってもよい。シランカップリング剤は、加水分解性シリル基を有する単位を有する限り、複数の式(9)の繰り返し単位又は複数の式(10)の繰り返し単位を有していてもよい。
シランカップリング剤は、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。シランカップリング剤は、市販品を使用することができる。シランカップリング剤は、これらの1種又は2種以上の部分加水分解(共)縮合物として用いてもよい。
シランカップリング剤として、具体的には、アルキルシランとして、メチルトリメトキシシラン(KBM-13)、ジメチルジメトキシシラン(KBM-22)、フェニルトリメトキシシラン(KBM-103)、n-プロピルトリメトキシシラン(KBM-3033)、n-ヘキシルトリメトキシシラン(KBM-3063)、n-オクチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン(KBM-3103C)、メチルトリエトキシシラン(KBE-13)、ジメチルジエトキシシラン(KBE-22)、フェニルトリエトキシシラン(KBE-103)、n-プロピルトリエトキシシラン(KBE-3033)、n-ヘキシルトリエトキシシラン(KBE-3063)、n-オクチルトリエトキシシラン(KBE-3183)、n-デシルトリエトキシシラン等が例示できる。なお、化合物名の後ろの括弧内に市販品の製品名(いずれも、信越化学工業社製)を記す。以下、同様である。
また、加水分解性基以外に反応性官能基を有するシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン(KBM-1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE-1003)、7-オクテニルトリメトキシシラン(KBM-1083)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-402)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-402)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-403)、8-グリシドキシオクチルメトキシシラン(KBM-4803)、p-スチリルトリメトキシシラン(KBM-1403)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-502)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-503)、8-メタクリロキシオクチルメトキシシラン(KBM-5803)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103P)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM-575)、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン(KBM-6803)、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(KBM-9659)、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(KBE-585A)、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE-9007N)、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(X-12-967C)等が例示できる。
炭素原子で形成される主鎖を有する化合物の側鎖末端に加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤として、下記式(11)又は式(12)で構造が示される化合物が例示できる。式(11)及び式(12)中、Meはメチル基であり、Etはエチル基である。a、b、c、e、g、hは、それぞれ1以上の整数である。市販品については、それぞれ信越化学工業社製の、式(11)のシランカップリング剤としては、X-12-1287Aが、式(12)のシランカップリング剤としては、X-12-1281Aが例示できる。
反応性有機ケイ素化合物としては、上記に例示した各化合物の1種が単独で、又は2種以上が組み合わせて用いられる。反応物(A2)における、酸性多糖類に対する反応性有機ケイ素化合物の割合は、2~30質量%の範囲内が好ましく、5~20質量%の範囲内がより好ましい。酸性多糖類に対する反応性有機ケイ素化合物の割合上記範囲内にあると、成形品の調色性や衝撃強度がより向上する。
なお、上記割合は、反応物(A2)が含有する反応生成物及び未反応の原料の合計から計算される。例えば、反応物(A2)が、酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を反応させた後、反応生成物のみを取り出して得られた場合、すなわち反応生成物のみからなる場合には、当該反応生成物の化学構造を分析して酸性多糖類に由来する部分の量と反応性有機ケイ素化合物に由来する部分の量から上記割合を算出する。
反応物(A2)が、酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を反応させた後、溶媒等を除去した反応物として得られる場合、すなわち反応生成物と未反応原料からなる場合には、反応生成物中の各成分の量と未反応成分の量から上記割合が算出される。また、反応物(A2)が、難燃性樹脂組成物に酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物が別々に添加され、組成物の製造時に反応される場合には、別々に添加された酸性多糖類の量に対する反応性有機ケイ素化合物の量の割合として算出される。
反応物(A2)について、難燃性樹脂組成物に配合される前に酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を反応させる場合、例えば以下の(i)~(iii)の方法で反応させることができ、(i)の方法が好適である。反応に用いる酸性多糖類及び反応性有機ケイ素化合物は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
(i)酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を溶媒中で分散して所定の条件で反応させる湿式法
(ii)酸性多糖類と、少量の溶媒に溶解させた反応性有機ケイ素化合物又は反応性有機ケイ素化合物を混合して反応させる乾式法
(iii)空中に酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を噴霧して混合することで反応させる方法
上記の方法で得られた粗反応物には、酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物が実際に反応して反応生成物の他に未反応原料、すなわち、未反応の反応性有機ケイ素化合物と酸性多糖類及び副生物が含まれる。粗反応物における副生物の含有量が本発明の効果を損なわない範囲であれば、粗反応物をそのまま反応物(A2)として用いてもよく、粗反応物から、副生物を除去したものを反応物(A2)として用いてもよい。また、粗反応物から反応生成物のみを取り出して反応物(A2)として用いてもよい。
酸性多糖類系難燃剤(A)は、上に説明した混合物(A1)及び反応物(A2)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合、混合物(A1)の2種以上であってもよく、反応物(A2)の2種以上であってもよく、混合物(A1)と反応物(A2)を組み合わせた2種以上であってもよい。本発明の難燃性樹脂組成物において、酸性多糖類系難燃剤(A)の含有量は、難燃性樹脂組成物の全量に対して5~40質量%の範囲内であることが好ましく、20~30質量%の範囲内であることがより好ましい。難燃性樹脂組成物における酸性多糖類系難燃剤(A)の含有量が、上記範囲内であれば、得られる成形品において、難燃性、調色性及び衝撃強度がバランスよく達成できる。
(リン系難燃剤)
本発明の難燃性樹脂組成物は、酸性多糖類系難燃剤(A)に加えて、酸性多糖類系難燃剤(A)以外の難燃剤として、リン系難燃剤を含有することが好ましい。上記のとおり、リン系難燃剤には、酸性多糖類系難燃剤(A)の炭化層の形成を補助する作用があり、さらに水素結合を形成して分子間距離を短くすることができるため、両者が合力することで難燃化をより促進できる。
リン系難燃剤の含有量は、本発明の難燃性樹脂組成物の全量に対して、1~20質量%の範囲内であることが好ましく、2~15質量%の範囲がより好ましく、3~10質量%の範囲がさらに好ましい。
リン系難燃剤の含有量が上記範囲内であれば、酸性多糖類系難燃剤(A)の含有量を十分に確保でき、酸性多糖類系難燃剤(A)による効果を損なうことなく、得られる成形品において難燃性を促進することができる。また、含有量が上記上限以下であれば、リン系難燃剤を含有することによる成形品の強度低下を抑制し易い。
また、リン系難燃剤は、組み合わせる熱可塑性樹脂の種類によっては、溶融時に分離しやすく、分離したものがブリードアウトして成形品表面に残り、外観の低下を招くことがある。難燃性樹脂組成物の全量に対する含有量が20質量%であれば、リン系難燃剤のブリードアウトに起因する外観の低下を抑制できる。
リン系難燃剤としては、例えば、ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸等の金属、アンモニウム等との塩、ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸等のエステル化合物等が挙げられる。リン系難燃剤としては、これらの中でも、難燃性の効果の観点からリン酸エステル化合物(後で詳述する)が好ましい。
上記塩として、具体的には、ホスフィン酸金属塩、特にはホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛、ホスホン酸金属塩、特にはホスホン酸アルミニウム、ホスホン酸カルシウム、及びホスホン酸亜鉛、さらにはそれらに相当するホスホン酸金属塩の水和物、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
ホスフィン酸エステル化合物としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が含まれる。
ホスホン酸エステル化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2-メチル-プロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート等が含まれる。
また、上記以外のリン系難燃剤として、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド(DOPO)の誘導体、ポリホスホン酸塩(例えば、Nofia(商標)HM1100(FRXPolymers(Chelmsford,USA)製)、亜鉛ビス(ジエチルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミンポリ(リン酸アルミニウム)、メラミンポリ(リン酸亜鉛)、メチルホスホン酸メラミン塩、リン酸グアニル尿素、リン酸グアニジン、エチレンジアミンリン酸塩、及びホスファゼン化合物、例えば、フェノキシホスファゼンオリゴマー等をリン系難燃剤として用いてもよい。
リン系難燃剤は、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〔リン酸エステル化合物〕
リン酸エステル化合物は、脂肪族リン酸エステル化合物であっても芳香族リン酸エステル化合物であってもよく、芳香族リン酸エステル化合物が好ましい。芳香族リン酸エステル化合物をリン系難燃剤として使用すると、より低温、低せん断で混練、成形が可能となり、酸性多糖類系難燃剤(A)が混錬、成形時に熱分解を起こして着色や発泡することを抑えることができる。また、着火時の高温下で分解してリン酸が発生して酸性多糖類系難燃剤(A)の炭化を促進して難燃性の効果をより発揮しやすくなることが期待できる。
リン酸エステル化合物としては、リン酸と脂肪族又は芳香族アルコールを反応させたモノマー型リン酸エステル化合物及びオキシ塩化リンと2価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応物である芳香族縮合リン酸エステル化合物等が挙げられる。
リン酸エステル化合物として、具体的には、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスフェート、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビスフェノールAビス-ジクレジルホスフェート、ビフェノールAビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールAビス-ジキシレニルホスフェート等が含まれる。
また、リン酸エステル化合物は、耐熱性等の観点で、縮合タイプである縮合リン酸エステル化合物であることが好ましい。縮合リン酸エステル化合物としては、例えば、下記化学式(P)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物が挙げられる。
上記式(P)中、R1~R5はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R1~R5は同一でも異なっていてもよい。複数(5個)存在するR1は、互いに同一でも異なっていてもよい。それぞれ複数(4~5個)存在するR2、R3、R4及びR5についても同様である。nは1~30の整数であり、好ましくは1~10の整数である。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、tert-アミル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、2,6-キシリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
芳香族縮合リン酸エステル化合物は、上記のとおりオキシ塩化リンと2価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応物であり、式(P)で構造が表される芳香族縮合リン酸エステル化合物は、2価のフェノール系化合物が、置換基を有してもよいレゾシノール(以下、「レゾシノール化合物」ともいう。)である場合の化合物である。芳香族縮合リン酸エステル化合物は、レゾシノール化合物に替えて、4,4´-ビフェノール、ビスフェノールA(それぞれ置換基を有してもよい。)を用いて得られる化合物であってもよい。具体的には、式(P)において、レゾシノール化合物残基の代わりに、それぞれ置換基を有してもよい、4,4´-ビフェノール残基、又はビスフェノールA残基を有する芳香族縮合リン酸エステル化合物を本発明に用いることができる。
リン酸エステル化合物は市販品を用いてもよい。リン酸エステル化合物の市販品としては、例えば、いずれも大八化学工業社製の、PX-200(レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート)、CR-733S(レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート)、CR-741(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が使用できる。
(その他の難燃剤)
本発明の難燃性樹脂組成物は酸性多糖類系難燃剤(A)を難燃剤として含有する。難燃剤は、任意にリン系難燃剤を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、酸性多糖類系難燃剤(A)及びリン系難燃剤以外のその他の難燃剤(単に「その他の難燃剤」ともいう。)を含有してもよい。その他の難燃剤としては、例えば、酸性多糖類系難燃剤(A)以外の多糖類、金属水酸化物、イントメッセント系難燃剤が挙げられる。
上記難燃剤がその他の難燃剤として金属水酸化物を含有する場合、その含有量としては、難燃性樹脂組成物の全量に対して5~20質量%の範囲内が好ましく、5~10質量%の範囲内であることがより好ましい。難燃性樹脂組成物における金属水酸化物の含有量が、上記範囲内であれば、得られる成形品において、難燃性の発現と強度の維持の両立をより高いレベルで達成し易い。
上記金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、水酸化アルミニウムが特に好ましい。
上記金属水酸化物の形態は粒子が好ましい。粒子形状は特に制限されず、球状、紡錘状、板状、鱗片状、針状、繊維状等が挙げられる。また、金属水酸化物粒子の平均一次粒子径は、10nm~100μmの範囲内にあることが好ましく、10~100nmの範囲内がより好ましい。金属水酸化物粒子の平均一次粒子径は、例えば、体積基準のメジアン径(D50)である。体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、レーザ回折・散乱法により、LA-960S2(HORIBA社製)等を用いて計測できる。
上記金属水酸化物の粒子は、必要に応じて表面修飾剤により表面修飾されていてもよい。表面修飾に用いる表面修飾剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のようなアルキルシラザン系化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシランのようなアルキルアルコキシシラン系化合物、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランのようなクロロシラン系化合物、シリコーンオイル、シリコーンワニス、各種脂肪酸等を用いることができる。これらの表面修飾剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(その他の添加剤)
本発明の難燃性樹脂組成物が任意に含有できる難燃剤以外の添加剤としては、酸化防止剤、フィラー、結晶核剤等が挙げられる。本発明の難燃性樹脂組成物におけるその他の添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であり、例えば、難燃性樹脂組成物の全量に対して、0~30質量%程度の範囲内であり、0~20質量%の範囲内が好ましい。また、合計で30質量%以下が好ましい。
(難燃性樹脂組成物の製造)
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び酸性多糖類系難燃剤(A)、並びに必要に応じて含有されていてもよいリン系難燃剤、その他の難燃剤、及びその他の添加剤を溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法は特に限定されず、公知の溶融混練方法をとることができる。
具体例を挙げると、各成分を例えばタンブラーやヘンシェルミキサーとして知られた高速ミキサー等の各種混合機を用いて予め予備混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、及びニーダー等の混練装置で溶融混練する方法が挙げられる。これらの中でも、生産効率がよいことから、押出機を用いて溶融混練する製造方法がより好ましく、二軸押出機を用いる製造方法がさらに好ましい。押出機を使用して各成分を溶融混練し、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出した混練物をペレット状やフレーク状等の形態に加工することができる。
なお、酸性多糖類系難燃剤(A)が混合物(A1)の場合、酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物を予め混合した混合物(A1)として難燃性樹脂組成物に配合されてもよく、難燃性樹脂組成物に酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物が別々に配合されてもよい。その場合、酸性多糖類と非反応性有機ケイ素化合物が、難燃性樹脂組成物が含有する酸性多糖類系難燃剤(A)以外の成分に投入される時期は同時であってもよく、異なってもよい。非反応性有機ケイ素化合物を先に投入し、次いで酸性多糖類を投入する方法が好ましい。
酸性多糖類系難燃剤(A)が反応物(A2)の場合、酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物を予め反応させた反応物(A2)として難燃性樹脂組成物に配合されてもよく、難燃性樹脂組成物に酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物が別々に配合されて当該難燃性樹脂組成物内で反応した反応物(A2)として存在する形態であってもよい。その場合、酸性多糖類と反応性有機ケイ素化合物が、難燃性樹脂組成物が含有する酸性多糖類系難燃剤(A)以外の成分に投入される時期は同時であってもよく、異なってもよい。反応性有機ケイ素化合物を先に投入し、次いで酸性多糖類を投入する方法が好ましい。
また、混合物(A1)及び反応物(A2)を組み合あわせて用いる場合においても、上記それぞれの投入方法と同様の方法を踏襲できる。例えば、混合物(A1)と反応物(A2)は、同時に投入されてもよく、別々に投入されてもよい。また、混合物(A1)と反応物(A2)をそれぞれ構成する成分を順次投入してもよい。順次投入する場合、最後に酸性多糖類を投入する方法が好ましい。
なお、予め各成分を混合する予備混合を行う前に、各成分を十分に乾燥しておくことが好ましい。この際の乾燥温度としては、特に限定されるものではないが、60~100℃であることが好ましい。また、乾燥時間については特に限定されるものではないが、2~6時間であることが好ましい。さらに乾燥の際、減圧下で行うことで、乾燥がより進行しやすくなるため、好ましい。また、上記乾燥を予備混合した後に再度行ってもよい。
溶融混練の際の温度は、例えば、150~280℃であり、使用する熱可塑性樹脂及び酸性多糖類系難燃剤(A)の種類、含有量等に応じて適宜選択される。なお、溶融混練の際の温度は、例えば、二軸押出機等の混練装置におけるシリンダ温度に相当する。また、シリンダ温度とは、混練装置のシリンダにおいて複数の温度設定がなされる場合には、最も高いシリンダ部の温度を指す。混練圧力は特に限定されないが、1~20MPaであることが好ましい。
溶融混練の際の混練装置からの吐出量は特に限定されるものではないが、溶融混練が十分に行われることから、10~100kg/hrで行うことが好ましく、20~70kg/hrで行うことがより好ましい。
上記のようにして混練装置により溶融混練された混練物は、混練装置から押し出された後、冷却処理されることが好ましい。冷却処理は特に限定されず、例えば上記混練物を0~60℃の水に浸漬して水冷する方法、-40~60℃の気体で冷却する方法、-40~60℃の金属に接触させる方法などが用いられうる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、粉末状、顆粒状、タブレット(錠剤)状、ペレット状、フレーク状、繊維状、及び液状等の各種形態をとることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、酸性多糖類系難燃剤(A)という天然由来で環境負荷が少ない難燃剤を使用しながら、難燃性、調色性及び強度、特に衝撃強度が保持された成形品が製造可能である。
ここで、難燃性とは、耐燃性の一つで、燃焼する速さは遅いが、ある程度は燃え続ける性質を指す。耐燃性の評価については、JIS、ASTMなどがあるが、一般には、特にUL規格が重視されている。UL規格とはアメリカの「Underwriters Laboratorie社」が定め、同社によって評価される規格である。
本発明の難燃性樹脂組成物から成形される成形品において、所定のサイズの試験片として、上記UL規格で評価された場合に、UL94HBで合格と評価されることが好ましく、UL94V-2で合格と評価されることがより好ましく、UL94V-0で合格と評価されることがさらに好ましい。
また、本発明の難燃性樹脂組成物を用いれば、以下に説明する通常の成形方法によって、上記十分な難燃性を有しながら、調色性に優れ外観が良好であるとともに、衝撃強度等の機械的強度にも優れる成形品が得られる。
具体的には、本発明の難燃性樹脂組成物から成形される成形品において、所定のサイズの試験片として、JIS K7110に準拠した方法で測定されるアイゾット衝撃強度は、4kJ/m2以上が好ましく、7kJ/m2以上がより好ましい。
(成形品)
本発明の難燃性樹脂組成物を用いて、成形品を作製することができる。この成形品により、難燃性を有する製品を得ることができる。成形品を製造する際には、難燃性樹脂組成物を各種成形機内で溶融させ、成形することができる。成形手法としては、成形品の形態及び用途等に応じて適宜選択でき、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、及びインフレーション成形等を挙げることできる。また、押出成形及びカレンダー成形等で得られたシート状又はフィルム状の成形品について、真空成形や圧空成形等の二次成形を行うこともできる。
[難燃性樹脂筐体]
本発明は、上記本発明の難燃性樹脂組成物を用いて製造された成形品を難燃性樹脂筐体として提供できる。難燃性樹脂筐体が収容する物品は特に制限されない。難燃性樹脂筐体としては、例えば、各種機械、機器等の筐体等、一般的に難燃性樹脂で製造される筐体が挙げられる。
(用途)
本発明の難燃性樹脂組成物から成形される上記筐体を含む成形品の用途としては、特に限定されず、例えば、家電製品及び自動車等の分野における電気電子部品、電装部品、外装部品、及び内装部品等、並びに各種包装資材、家庭用品、事務用品、配管、及び農業用資材等を挙げることができる。
本発明は、上記成形品を部品として使用したことを特徴とする電子機器を提供できる。電子機器としては特に制限されないが、コンピュータ、スキャナ、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、これらの機能を兼ね備えたMFP(Multi Function Peripheral)と称される復合機等のOA機器、商業印刷用のデジタル印刷システム等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[難燃性樹脂組成物の調製]
実施例における難燃性樹脂組成物の構成材料として、以下の熱可塑性樹脂及び難燃剤(酸性多糖類系難燃剤、リン系難燃剤等)を準備した。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂として、ABS樹脂;トヨラック700-314(製品名、東レ株式会社製)を準備した。
(リン系難燃剤)
リン系難燃剤として、リン酸エステル化合物;PX-200(製品名、大八化学工業株式会社製)を準備した。
(酸性多糖類系難燃剤)
酸性多糖類系難燃剤として、表Iに示す酸性多糖類及び、有機ケイ素化合物又はケイ素原子を含まない有機化合物を用いて調製した酸性多糖類系難燃剤A21~A27、A11及び酸性多糖類系難燃剤Cf1、Cf2を用いた。酸性多糖類系難燃剤A21~A27、A11は本発明の難燃性樹脂組成物に適用可能な酸性多糖類系難燃剤であり、酸性多糖類系難燃剤Cf1、Cf2は、本発明の難燃性樹脂組成物に適応しない比較例用の酸性多糖類系難燃剤である。
<酸性多糖類系難燃剤の調製>
酸性多糖類系難燃剤の調製に用いたアルギン酸カルシウムは、キミカ社製のCAW-80(製品名、M/G比;1.2)であった。表Iには有機ケイ素化合物を製品名(全て信越化学工業社製)で示した。以下に製品名に対応する有機ケイ素化合物の化合物名を示す。表I中の溶媒の略号については、EtOHがエタノールを、Tolがトルエンを、MeOHがメタノールをそれぞれ示す。
[反応性有機ケイ素化合物]
KF-9908;トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン
KF-9901;ハイドロゲンジメチコン(官能基当量140g/mol)、動粘度(25℃);20mm2/s
KBE-3083;n-オクチルトリエトキシシラン
KBM-573;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
[非反応有機ケイ素化合物]
KF-96 50CS;ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、動粘度(25℃);50mm2/s
酸性多糖類系難燃剤A21は、次のとおり調製した。すなわち、アルギン酸カルシウム(1質量部)を、撹拌したエタノール(1.97質量部)に加えて、10分間撹拌する。それを超音波バスに30分間浸けて超音波を印加したのち、撹拌しながら、KF-9908(0.2質量部)をトルエン(2.17質量部、エタノールと同体積)に溶解させた液を加え、さらに一時間撹拌する。溶媒を減圧留去したのち、得られた粉体を150℃で1時間加熱して、反応物(酸性多糖類系難燃剤A21)を得る。
酸性多糖類系難燃剤A22~A25、A11も同様に、表Iに示すアルコール(エタノール又はメタノール)でアルギン酸カルシウムを超音波分散してから、有機ケイ素化合物を溶解させたトルエンを加えて、上記と同様の処理を行う。また、酸性多糖類系難燃剤A26、A27については、溶媒全量を最初から用いてアルギン酸カルシウムを超音波分散してから有機ケイ素化合物を単独で加えて、上記と同様の処理を行う。ただし、酸性多糖類系難燃剤A22~A11におけるアルギン酸カルシウムに対する有機ケイ素化合物の量は、表Iのとおりとした。
酸性多糖類系難燃剤Cf1としては、アルギン酸カルシウム(キミカ社製のCAW-80)それ自体を用いた。
酸性多糖類系難燃剤Cf2は、反応性有機ケイ素化合物の代わりに、ケイ素原子を含まない反応性有機化合物であるラウリン酸ナトリウムと酸性多糖類を反応させた例であり、次のとおり調製した。
すなわち、アルギン酸カルシウム(キミカ社製のCAW-80)(1質量部)とラウリン酸ナトリウム(0.03質量部)とをイオン交換水(3.8質量部)とエタノール(1.6質量部)の混合溶媒に加え、95℃で2時間加熱したのち、溶媒を減圧留去し、遠心水洗を繰り返し、エタノール洗浄と濾過を行い、100℃、1時間乾燥を行って白色粉体(酸性多糖類系難燃剤Cf2)を得た。
ここで、アルギン酸カルシウムは高い吸湿性を有するため、上記における質量は、事前に105℃乾燥で恒量を確認するテストから求めた正味の質量を含むように補正して投入する。ちなみに、今回用いたアルギン酸カルシウムの含水率は12.1質量%であった。また、表Iの酸性多糖類系難燃剤A22~A11においては、固形分質量の1g当たりで、溶媒の総量を5mlに設定している。
表I中、反応又は混合に用いた溶媒の組成は体積比で示した。表Iの「含ケイ素」欄において、「○」は有機化合物がケイ素原子を含有すること示し、「×」は有機化合物がケイ素原子を含有しないことを示す。
(難燃性樹脂組成物の調製)
混練前の事前乾燥として、熱可塑性樹脂及び難燃剤(酸性多糖類系難燃剤、リン系難燃剤等)をそれぞれ80℃で4時間乾燥した。次いで、表IIに示される成分比(質量%)で秤量し、ドライブレンドした。
次いで、二軸押出混練機(Thermo Scientific社製、HAAKE二軸スクリューエクストルーダー)の原材料供給口(ホッパー)から、ドライブレンドして得られた混合物を毎時10kgで供給し、シリンダの温度200℃とし、スクリューの回転数を400rpmとの条件で溶融混練を行った。混練後の溶融樹脂を30℃の水槽にて冷却した後、ペレタイザーにてペレット化して、難燃性樹脂組成物1~13を得た。難燃性樹脂組成物1~11は、本発明の難燃性樹脂組成物に相当し、難燃性樹脂組成物12、13は比較例である。
<評価>
上記で得られた難燃性樹脂組成物1~13について、以下の評価1~3を行い、評価した。結果を難燃性樹脂組成物の組成と共に表IIに示す。
(評価1:調色性)
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物1~13のそれぞれを、80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(Rambaldi社製、Babyplast)を用いて、シリンダ温度を表IIに示す温度、金型温度を50℃として成形し、縦125mm、横13mm、厚さ1.6mmの短冊型試験片を得た。得られた試験片について、目視にて外観を観察し、以下の基準で調色性の評価を行なった。△以上であれば実用上問題ない(合格)と判断した。
ここで、射出成形機のシリンダ温度は、難燃性樹脂組成物1~13において流動性が確保できる温度域の内の低温側に調整した。難燃性樹脂組成物1~11においては、酸性多糖類と有機ケイ素化合物との反応又は混合を行ったことにより、難燃性樹脂組成物の流動性が向上したとこから、シリンダ温度を170℃に下げることが可能であった。一方、難燃性樹脂組成物12、13では、流動性を確保するためにシリンダ温度は180℃とすることが必要であった。
◎:白色に近く、非常に幅広い着色が可能である。
〇:クリーム色であり、幅広い着色が可能である。
△:淡褐色であり、黒色以外の濃色にも使用できる可能性がある。
×:濃褐色であり、黒色以外には使用することは困難である。
(評価2:難燃性)
上記で得られた試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して難燃性試験を行った。試験はUL94V試験法を採用し、難燃性を、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:V-0(合格)
○:V-1(合格)
△:V-2(合格)
×:規格外(V-2に達していない=不合格)
(評価3:衝撃強度)
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物1~13のそれぞれを、80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(Rambaldi社製、Babyplast)を用いて、シリンダ温度を表IIに示す温度、金型温度を50℃として成形し、縦80mm、横10mm、高さ4.0mmの大きさの試験片を得た。
成形数は10ショットを捨てショットとした後、連続10ショットを成形した。得られた10個の成形品のアイゾット衝撃強度をJIS K7110に準拠した方法で測定し、以下の基準により評価した。衝撃強度は、〇以上であれば実用上問題ない(合格)と判断した。
◎:7kJ/m2以上
○:4kJ/m2以上7kJ/m2未満
×:4kJ/m2未満
表IIから、本発明の難燃性樹脂組成物は得られる成形品において、環境負荷が低減され、かつ、難燃性、調色性及び衝撃強度に優れることがわかる。なお、難燃性樹脂組成物1~11においては、シリンダ温度180℃で成形された成形品においても、調色性、難燃性、及び衝撃強度は実用上問題ない(合格)レベルであった。