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JP7840705B2 - トリプルネガティブ乳癌の予後を診断する方法 - Google Patents
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JP7840705B2 - トリプルネガティブ乳癌の予後を診断する方法 - Google Patents

トリプルネガティブ乳癌の予後を診断する方法

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Description

本発明は広く、トリプルネガティブ乳癌の予後を診断する方法等に関する。
乳癌と診断された場合、患者は通常、その性質によりサブタイプに分類され、治療方法が決定される。乳癌におけるホルモン受容体としてのエストロゲン受容体とプロゲストロン受容体、そしてヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)を発現していない乳癌はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)と呼ばれている。
トリプルネガティブ乳癌は乳癌の約10~15%を占める最も悪性度の高いサブタイプであり、早期の再発を特徴としている。ホルモン受容体陽性乳癌やHER2陽性の乳癌と異なり、ホルモン剤、HER2タンパク質受容体を標的とする薬剤はトリプルネガティブ乳癌に対して治療効果を奏さない。また、トリプルネガティブ乳癌は他の乳癌のサブタイプと比較して予後不良でもあり、再発する確率も高いことから、予後予測が極めて重要となる。
非特許文献1では、乳癌患者の遺伝子コピー数変化量(CNA burden:以下、「CNA」と区別する観点から「CNA量」ともいう。)、すなわち、常染色体でのCNAコール中で1kb以上ある領域のサイズのトータルを、常染色体全体のサイズで割った割合が乳癌の予後バイオマーカーとなり得ることが記載されている。非特許文献1では、乳癌の患者群をCNA量が多い群(High)と少ない群(Low)にそれぞれ分類し、多い群の死亡リスクが高いことが示唆されている。
しかしながら、非特許文献1では、CNA量が検討された症例数も少ないし、CNA量の多い群と少ない群との間に結果的に予後に違いが出たとされているに過ぎないため、示されているカットオフ値の設定が妥当ではない可能性がある。そのため、当業者がCNA量の多寡のみを指標としてトリプルネガティブ乳癌の予後を予測することはできない。
本発明者らは、癌関連遺伝子のコピー数変化(CNA)の総和がトリプルネガティブ乳癌患者の予後の指標となり得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本願は以下の発明を包含する。
(1)
ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性の乳癌患者の予後診断を補助する方法であって、
前記乳癌患者由来の試料に含まれる癌関連遺伝子のコピー数変化(CNA)を測定する工程と、
コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和数を算出する工程とを含み、
コピー数変化の総和が所定のカットオフ値以上である場合に予後が不良であり、コピー数変化の総和が所定のカットオフ値より少ない場合に予後が良好であり、
カットオフ値がROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve curve)解析により決定される、方法。
(2)
コピー数変化が2.5以上の場合にコピー数が増加している遺伝子と決定され、コピー数変化が0.75以下の場合にコピー数変化が減少している遺伝子と決定される、(1)に記載の方法。
(3)
癌関連遺伝子が以下の435遺伝子から成る群から選択される、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)
予後診断が、HER2、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性であると判断されてから1000日以降の生存率の予測である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)
試料が初発乳癌患者に由来する、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
カットオフ値が20.5である、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
従来、TP53等の特定の遺伝子が乳癌の予後に最も影響するという報告はあったが、CNAの総和が、そのような特定の遺伝子よりも予後に影響が強いというデータは報告されていない。
検体を採取した時点ではCNAが高い群も低い群もトリプルネガティブ乳癌のステージや進行度に明らかな差はなかったものの、その後追跡調査を行った結果、CNAが高い方が、転移や再発をしやすく、化学療法が効きにくかった等の特徴を有していた。そのため、癌関連遺伝子のCNAの総和がトリプルネガティブ乳癌患者の予後の有力な指標となり得る。
図1は、一実施形態における予後予測ワークフローを示す。 図2は、一実施形態における予後予測方法を示す。 図3は、トリプルネガティブ乳癌と確定診断された53例について、CNA総和値が20.5以上をCNA総和値High群、20.5未満をCNA総和値Low群とした場合の生存曲線を示す。横軸は確定診断後の日数を表している。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について説明するが、本発明の範囲は以下の実施形態に限定して解釈されない。
(予後診断を補助する方法)
第一の態様において、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性の乳癌患者の予後診断を補助する方法であって、
前記乳癌患者由来の試料に含まれる癌関連遺伝子のコピー数変化(CNA)を測定する工程と、
コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和数を算出する工程とを含み、
コピー数変化の総和が所定のカットオフ値以上である場合に予後が不良であり、コピー数変化の総和が所定のカットオフ値より少ない場合に予後が良好であり、
カットオフ値がROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve curve)解析により決定される、方法、が提供される。
トリプルネガティブ乳癌は、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体のいずれも発現していない乳癌である。病理検査等によりこれら3つが陰性(発現していない)と診断された患者から、癌関連遺伝子を含む試料が採取される。
癌関連遺伝子を含む試料として、乳癌患者の病巣に由来する生検検体や手術検体が挙げられる。検体は初回診断時の検体であることが好ましく、また、病理学的に乳癌と確定診断されている検体が好ましい。乳癌の診断は穿刺吸引細胞診、分泌液細胞診、捺印細胞診等の細胞診や針生検、吸引式乳房組織生検等の組織診により行われる。
検体は更に、ホルモン受容体、HER2、Ki67等を指標としてサブタイプ分類される。例えば、HER2、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性の検体はトリプルネガティブ乳癌であると判断される。トリプルネガティブ乳癌の診断にはIHC(immunohistochemistry)法やFISH(fluorescence in situ hybridization)法等の公知の方法を使用することができる。
乳癌はサブタイプ分類により術前と術後において選択されるべき療法が変わる。トリプルネガティブ乳癌の治療方法として外科的手術、放射線治療、抗癌剤治療等が挙げられるが、抗癌剤治療はしばしば術前に行われる。このような抗癌剤として、アントラサイクリン系抗癌剤(アドリアマイシン、エピルビシン等)、タキサン系抗癌剤(パクリタキセル、ドセタキセル等)、PARP阻害薬であるリムパーザ(オラパリブ)、PD-L1阻害剤であるテセントリク(登録商標)(アテゾリズマブ)等が挙げられ、これらの薬剤を組み合わせて使用してもよい。
トリプルネガティブ乳癌は侵襲性が高く、早期の再発リスクが高い。患者はしばしば術後数年以内に再発し、その予後も不良である。そのため、トリプルネガティブ乳癌と診断され、更に治療を受けた患者に由来すると判断された試料について予後診断を行うことが重要になる。
一実施形態において、トリプルネガティブ乳癌と診断された患者に由来する試料は癌関連遺伝子のコピー数変化(CNA)を測定する工程にかけられる。
コピー数変化が測定される試料は生検検体又は手術検体であってもよい。試料はコピー数変化の測定が可能な状態であればよく、ホルマリン固定パラフィン包埋などによる標本化処理や、抗体や蛍光標識物質による染色処理等の処理が事前になされていてもよい。試料は原発巣由来でも転移巣由来でもよい。
本明細書で使用する場合、「CNA」は、Copy Number Alterations(コピー数変化)の略であり、体細胞において後天的に生じるDNAのコピー数の変化を意味する。
コピー数変化は遺伝子パネル検査、全ゲノム検査、癌ゲノム検査等で一般的に報告される項目の一つであり、体細胞において後天的に生じるDNAのコピー数変化を意味する。CNAはコピー数の増加と減少に分けられ、高度なコピー数増加は増幅、比較的低レベルの増加はゲイン、減少は欠失又はロスと称される。片アレルの欠失はヘミ欠失、両アレルの欠失はホモ欠失といわれる。
CNAは次世代シーケンサー等の遺伝子変異検出手段により計測することができる。以下の手順で整数化した数値を異常コピー数とし、これと正常コピー数とを比較して、変化した倍数がCNAとなる。一例を挙げると、正常コピー数を「1」としたときに例えば「3」倍となった倍数を「変化した倍数」とする。:
1)シーケンサーで算出されたカバレッジの正規化;
2)バイアス(GC含量や繰り返し配列)の修正;
3)キャプチャー試薬により捕捉された領域(on-target領域とoff-target領域)をセグメント化することによる整数化。
本明細書で使用する場合、「癌関連遺伝子」とは、癌の発症に関与している遺伝子群であって、癌遺伝子及び癌抑制遺伝子を含む遺伝子群を意味する。癌遺伝子は主に細胞の増殖や分化に必要な働きを有する遺伝子であり、癌抑制遺伝子は、このような癌遺伝子に変異が生じた細胞に対して増殖抑制等の機能を発揮する遺伝子である。癌関連遺伝子は癌遺伝子パネル検査で対象とされる遺伝子であってもよい。
癌関連遺伝子の例として、以下の表に記載の遺伝子が挙げられる。
続いて、測定されたCNAについて、コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和数が算出される。算出工程は、癌関連遺伝子のうち、コピー数が減少している遺伝子数をカウントする工程及びコピー数が増加している遺伝子数をカウントする工程を含んでもよい。
限定することを意図するものではないが、CNAの算出は次世代シーケンサー等を用いた遺伝子パネル検査において行うことができる。パネル検査では、各遺伝子におけるコピー数の変化が算出され、患者毎にコピー数が変化した遺伝子が列挙される。
試料におけるCNAは遺伝子毎に絶対値として計算され、例えば、検体Xにおいて、遺伝子AのCNA変化は3.8倍であり(異常のない正常部との比較でコピー数以上が3.8倍になっている)、遺伝子BのCNA変化は5.5倍である等のように表される。一方、従来技術はCNA変化を絶対値ではなく割合で表している点で異なる。
一実施形態において、コピー数変化が2.5以上の場合にコピー数が増加している遺伝子と決定され、コピー数変化が0.75以下の場合にコピー数変化が減少している遺伝子と決定される。
検体を採取した時点でのCNAは、変化が高いものも低いものもサンプル間でステージや進行度に明確な差はないが、CNA変化の総和を指標とすることで、トリプルネガティブ乳癌の予後診断を補助することが可能になる。例えば、コピー数変化の総和が所定のカットオフ値以上である場合に予後が不良であり、コピー数変化の総和が所定のカットオフ値より少ない場合に予後が良好であると判断される。
カットオフ値は、縦軸に感度、横軸に(1-特異度)をプロットしたROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve curve)解析により決定される。例えば、コピー数変化が起こっている遺伝子数の連続変数でROC曲線を描いて算出した値に基づき、コピー数変化が多い群(High)と少ない群(Low)に分けて解析が行われ、感度-(1-特異度)の最適点がカットオフ値として導かれる。好ましいカットオフ値は20.5である。
本明細書で使用する場合、「予後診断」とは、予後の予測や、治療や診断から所定の期間経過後、例えば確定診断から1000日後の生存率を意味する。例えば、限定することを意図するものではないが、対象患者のCNAの総和が20.5に対してHighだった場合、3年生存率で約60%、5年生存率で40%の生存率であることを予測することが可能となり、一方、Lowだった場合は、3年後、4年後、5年後においてもその生存率は80%以上であることが予測可能となる。
(治療方法)
第二の態様において、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性の乳癌患者を治療する方法であって、
前記乳癌患者由来の試料に含まれる癌関連遺伝子のコピー数変化(CNA)を測定する工程と、
コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和数を算出する工程と、
コピー数変化の総和が所定のカットオフ値以上である場合に予後が不良であり、コピー数変化の総和が所定のカットオフ値より少ない場合に予後が良好であると決定する工程と、
予後が不良であると決定された患者については治療強度の高いレジメンで、予後が良好であると決定された患者については治療強度の低いレジメンで治療する工程と、
を含み、
カットオフ値がROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve curve)解析により決定される、方法、が提供される。
予後不良であると予め判断できる場合は、再発を来す前に周術期において、化学療法の中でも、多剤併用薬物療法等のより治療強度の高いレジメンを用いた治療を実施することが可能となり、再発の危険性を低下させる対策を講じることができる。また、予後良好と判断できる場合には、標準治療としての化学療法を行うか、あるいは化学療法を省略し、経過観察を行うことが考えられる。例えば、治療強度を弱め、場合によっては化学療法を省略して患者の負担を軽減した薬物療法を行い、低い再発率を担保しながら副作用の軽減と患者の生活の質の向上を行うこともできる。
トリプルネガティブ乳癌の多剤併用薬物療法としては、アンスラサイクリン系薬剤やタキサン系薬剤を用いるものが知られている。アンスラサイクリン系薬剤の例としては、アドリアシン(ドキソルビシン)、ファルモルビシン(エピルビシン)等が挙げられる。タキサン系薬剤の例としては、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)等が挙げられる。しかしながら、これらの薬剤はあくまでも例示に過ぎず、トリプルネガティブ乳癌の治療に使用する薬剤は公知のものを適宜組合せることができる。
治療強度の低いレジメンの例として、術前又は術後にアンスラサイクリン系薬剤とシクロフォスファミドの併用療法を行った後、タキソールを行う多剤併用薬物療法と、化学療法を全て省略する治療とが挙げられる。化学療法を省略する場合、通常、腫瘍の外科的切除を行った後は以降は治療を行わず、経過観察をしてもよい。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
図1に示すフローに従い、乳癌と疑われる患者について乳癌検診から予後予測評価までを行った。まず、乳癌疑いの症例の中から針生検で病理学的に乳癌と確定診断をされた症例について、針生検で得られた組織検体でホルモンレセプター及びHER2評価を行った。その結果、トリプルネガティブ乳癌と確定診断された53例に対し、ゲノム遺伝子検査システムであるCANCERPLEX(登録商標)(デンカ株式会社製)を用い、CNAの測定を実施した。
図2に示すフローに従い、予後予測を行った。まず、53例の各検体で得られたCNAに関し、コピー数が増加している遺伝子数と減少している遺伝子数との総和数を算出し、各検体のCNA総和値を算出した。
算出されたCNA総和値を検定変数、観察期間中の死亡の有無を状態変数としてROC曲線を作成し、Youdenインデックス(感度+特異度-1)が最大となるCNA総和値を算出し、カットオフ値とした。このとき得られたカットオフ値は20.5であったため、CNA総和値が20.5以上をCNA総和値High群、20.5未満をCNA総和値Low群とし、HighとLowを判定することで予後予測を行った。
結果を図3に示す。
CNAは癌の生物学的悪性度をよく反映しているため、診断時のCNAがhighである症例は、癌の性質上、高率に再発し患者が死に至ることが予想される。このようなCNAがhighの症例に対しては、再発を来す前に予め周術期において治療強度の高いレジメンを用いた薬物療法を実施することによって、再発の危険性を低下させることが可能となる。一方、CANがlowの群では癌が再発する危険性が低いため、トリプルネガティブ乳癌に対する標準的な周術期薬物療法、もしくは、治療強度を弱めて副作用を軽減するような治療を行うことによって、低い再発率を担保しながら副作用の軽減と患者の生活の質の向上を目指すことが可能となる。

Claims (5)

  1. ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性の乳癌患者の予後診断を補助する方法であって、
    前記乳癌患者由来の試料に含まれる、以下の435遺伝子から成る癌関連遺伝子:
    のコピー数変化(CNA)を測定する工程と、
    435遺伝子のうち、コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和を算出する工程とを含み、
    コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和が所定のカットオフ値以上である場合に予後が不良であり、コピー数が増加している遺伝子数と、コピー数が減少している遺伝子数との総和が所定のカットオフ値より少ない場合に予後が良好であり、
    カットオフ値がROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve)解析により決定される、方法。
  2. コピー数変化が2.5以上の場合にコピー数が増加している遺伝子と決定され、コピー数変化が0.75以下の場合にコピー数変化が減少している遺伝子と決定される、請求項1に記載の方法。
  3. 予後診断が、HER2、エストロゲン受容体及びプロゲストロン受容体の発現が陰性であると判断されてから1000日以降の生存率の予測である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 試料が初発乳癌患者に由来する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
  5. カットオフ値が20.5である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
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