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JP7840922B2 - 鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材、植物の生育を促進する方法、及び植物から得られる作物を生産する方法 - Google Patents
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JP7840922B2 - 鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材、植物の生育を促進する方法、及び植物から得られる作物を生産する方法 - Google Patents

鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材、植物の生育を促進する方法、及び植物から得られる作物を生産する方法

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NITE NITE P-03984 NITE NITE P-03991
本発明は、鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材、植物の生育を促進する方法、及び植物から得られる作物を生産する方法に関する。
植物は空気及び土壌から無機栄養素を吸収し、それらを太陽光のエネルギーを利用して有機物へ変換したり、代謝反応等で利用しながら成長する。
植物の生育に必須な栄養素(元素)のうち、鉄(Fe)は、植物の要求量が小さいため、微量必須元素に分類される。鉄は、植物を含む生物において、DNAなどの核酸合成やエネルギー産生及び各種の酵素反応に必須な元素である。そのため、鉄は生命活動の維持に不可欠な元素である。しかしながら、植物は一度土地に根付くと移動することができないため、根付いた場所の土壌中から生育に必要な栄養素を優先的に取り込む機構が必要となる。
中性又はアルカリ性の土壌において、鉄は3価の鉄(Fe3+)として存在する。3価の鉄(Fe3+)は水に溶けにくいため、中性又はアルカリ性の土壌では、植物への鉄の吸収が著しく阻害される。イネ科植物の中には、シデロフォアと呼ばれる3価の鉄(Fe3+)と強力に結合する分子を分泌するものが存在する。シデロフォアは3価の鉄(Fe3+)に対して高い親和性を有しており、3価の鉄(Fe3+)と錯体を形成するキレート剤として作用する。3価の鉄(Fe3+)は、シデロフォアとの錯体を形成した結果可溶化し、根から吸収されて植物に取り込まれる。
微生物の中にもシデロフォアを産生するものが存在しており、糸状菌エンドファイトとして植物宿主と共生しているものが報告されている(非特許文献1)。
糸状菌エンドファイトとは、内生菌とも呼ばれ、植物宿主の体内で生息し共生することにより生長促進、ストレス耐性の増大等の利益を宿主にもたらす糸状菌をいう(特許文献1)。糸状菌エンドファイトの中には、土壌中において、不溶性リン酸やク溶性リン酸(クエン酸中など酸性条件下で溶解するリン酸)を、植物の根から吸収可能とする水溶性リン酸へと変換するリン酸可溶化能を有する糸状菌も報告されている(非特許文献2及び3)。また、土壌中に存在し、植物の成長に悪影響を与える重金属(例えば、カドミウム)と吸着することで、植物へのその取り込みを減少させる糸状菌も報告されている(非特許文献4)
特開2018-174708号公報
Chowdappa, S. et al., Detection and characterization of antibacterial siderophores secreted by endophytic fungi from Cymbidium aloifolium. Biomolecules. (2020), 10(10):1412. Milani R., et al. Bacillus subtilis isolates with different abilities to promote plant growth in maize, cotton and soybean crops isolation and characterization of bacterial strains. Asian Jr. of Microbiol. Biotech. Env. Sc.(2019), Vol.21, No.(4): 827-836 Kumer, P. et al., Seed bio-priming with tri-species consortia of phosphate solubilizing rhizobacteria (PSR) and its effect on plant growth promotion. Heliyon.(2020), Volume 6, issue 12, e05701. Joner, E. J., et al., (2000) Metal-binding capacity of arbuscular mycorrhizal mycelium. (2000) Plant and Soil volume 226:227-234
本発明の課題は、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物を可溶化して、植物の生育を促進するための新規な手段の提供にある。
本発明者等は鋭意検討の結果、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物を可溶化する作用を発揮し、植物の生育を促進する新たな糸状菌エンドファイトを見出し、以下の発明を完成した。
[1] 鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材であって、
前記糸状菌エンドファイトが、フザリウム属(Fusarium sp.)及びレカニシリウム属(Lecanicillium sp.)からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、資材である。
[2] [1]に記載の資材は、上記鉄化合物が、3価の鉄化合物である。
[3] [1]又は[2]に記載の資材は、上前記鉄化合物の含有量が、上記資材の10~50,000ppmである。
[4] [1]~[3]のいずれか1項に記載の資材は、上記糸状菌エンドファイトがシデロフォアを産生する。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の資材は、上記糸状菌エンドファイトがインドール-3-酢酸を産生する。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の資材は、不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を含む原材料を含む。
[7] [1]~[6]のいずれか1項に記載の資材は、上記原材料が、汚泥の焼成物である。
[8] [1]~[6]のいずれか1項に記載の資材は、上記糸状菌エンドファイトが乾燥固体培養物の粉砕物である。上記資材は、体積粒度分布における累積50%粒子径(D50)が100~900μmである。上記資材は、累積90%粒子径(D90)が1000~5000μmである。
[9] [1]~[6]のいずれか1項に記載の資材は、植物の生育の促進のために用いられる。
[10] 植物の生育を促進する方法であって、
植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物に糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。上記方法は、上記糸状菌エンドファイトが、フザリウム属(Fusarium sp.)及びレカニシリウム属(Lecanicillium sp.)からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む。
[11] [10]に記載の方法は、上記鉄化合物が3価の鉄化合物である。
[12] [10]又は[11]に記載の方法は、上前記鉄化合物の含有量が、上記植物を生育する土壌の10~50,000ppmである。
[13] [10]~[12]のいずれか1項に記載の方法は、上記植物の根圏又はその周辺環境の不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸に前記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。
[14] [10]~[13]のいずれか1項に記載の方法は、上記植物の根圏又はその周辺環境の汚泥の焼成物に、上記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。
[15] [10]~[14]のいずれか1項に記載の方法は、上記植物の根圏又はその周辺環境の重金属に上記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。
[16] [10]~[15]のいずれか1項に記載の方法は、上記重金属が、カドミウム及び/または鉛を含む。
[17] 植物から得られる作物を生産する方法であって、
植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物に糸状菌エンドファイトを接触させ、前記植物を生育することを含む。上記方法は、上記植物から得られる作物を収穫することを含む。上記方法において、上記糸状菌エンドファイトは、フザリウム属(Fusarium sp.)及びレカニシリウム属(Lecanicillium sp.)からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む。
[18] [17]に記載の方法は、上記鉄化合物が3価の鉄化合物である。
[19] [17]又は[18]に記載の方法は、上記鉄化合物の含有量が、上記植物を生育する土壌の10~50,000ppmである。
[20] [17]~[19]のいずれか1項に記載の方法は、上記植物の根圏又はその周辺環境の不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸に上記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。
[21] [17]~[20]のいずれか1項に記載の方法は、上記植物の根圏又はその周辺環境の汚泥の焼成物に、上記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。
[22] [17]~[21]のいずれか1項に記載の方法は、上記植物の根圏又はその周辺環境の重金属に上記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む。
[23] [17]~[22]のいずれか1項に記載の方法は、上記重金属が、カドミウムおよび/または鉛を含む。
本発明を採用することによって植物を育成した場合、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物を可溶化し、植物の生育が促進される。
図1は、実験3-1で実施したCAS Agar Assayによる菌株のシデロフォア産生の定性的な解析結果を示す。a:実施例5、b:実施例6。
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
[概要]
本発明者等は、鉄化合物をキレートする作用を発揮する新規の糸状菌エンドファイトを見出した。これらの糸状菌エンドファイトが産生する鉄化合物をキレートする因子により、鉄化合物が可溶化し、それを取り込む植物の生育が促進される。本発明は、かかる新たな糸状菌エンドファイトの発見に基づくものである。
本実施形態の一態様は、鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材であって、上記糸状菌エンドファイトが、フザリウム属(Fusarium sp.)及びレカニシリウム属(Lecanicillium sp.)からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、資材に関する。上記糸状菌エンドファイトは、鉄化合物をキレートする因子を産生する。それにより、鉄化合物、特に不溶性の鉄化合物が可溶化し、それが溶解した水を根から取り込むことで、植物の生育が促進される。本実施形態の一態様において、上記資材は、植物の生育の促進のために用いられる資材である。
また、本実施形態の一態様は、植物の生育を促進する方法であって、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物に糸状菌エンドファイトを接触させることを含み、上記糸状菌エンドファイトが、フザリウム属(Fusarium sp.)及びレカニシリウム属(Lecanicillium sp.)からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、方法に関する。
また、本実施形態の一態様は、植物から得られる作物を生産する方法であって、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物に糸状菌エンドファイトを接触させ、上記植物を生育すること、および上記植物から得られる作物を収穫することを含み、上記糸状菌エンドファイトが、フザリウム属(Fusarium sp.)及びレカニシリウム属(Lecanicillium sp.)からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、方法に関する。本実施形態の一態様の方法によって育成され、収穫される作物は、収穫重量が増加する。また、本実施形態の一態様の方法によって育成され、収穫される作物は、生育のばらつきが抑えられる。なお、本開示において「作物」とは、「植物そのもの」及び植物において形成される「収穫対象となる部分」の両方を含む意味で用いられている。「収穫対象となる部分」とは、例えば、サラダ菜などの地上部に可食部を形成する植物の場合は、地上部の可食部を指す。また、例えば稲の場合、その可食部、すなわち「米」を指す。また、タマネギなどの地下部に可食部を形成する植物の場合は、地下部の可食部を指す。また、本開示において、「接触させる」とは、糸状菌エンドファイトを、対象物質(例えば、鉄化合物、不溶性リン酸、ク溶性リン酸、又は重金属)と物理的に直接接触させることや、糸状菌エンドファイトから生成される物質(例えば、シデロフォア)を対象物質に作用させることも含む意味で用いられる。
本開示において「糸状菌エンドファイト」とは、エンドファイトとして機能しうる糸状菌を指す。エンドファイトは内生菌とも呼ばれ、植物宿主の体内で生息し共生することにより生長促進、ストレス耐性の増大等の利益を宿主にもたらす微生物を指す。
本実施形態の一態様において用いられ得る糸状菌エンドファイトは、フザリウム属(Fusarium sp.)である。フザリウム属の例として、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)が挙げられる。また、本実施形態に用いられ得るフザリウム・ソラニは、例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に2023年10月16日付で寄託されておりNITE P-03991の受託番号にて入手可能である15-B株を用いることができる。
本実施形態の一態様において用いられ得る糸状菌エンドファイトは、レカニシリウム属(Lecanicillium sp.)である。本実施形態の一態様において用いられ得るレカニシリウム属の糸状菌エンドファイトは、例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に2023年9月15日付で寄託されておりNITE P-03984の受託番号にて入手可能である100-1株を用いることができる。
本開示において、鉄化合物とは鉄元素を含む化合物であり、不溶性又は難溶性の鉄化合物であってもよい。本実施形態の一態様が適用されると、不溶性又は難溶性の鉄化合物が可溶化され、植物の根から取り込むことができる。本実施形態の一態様において、鉄化合物は、中性又はアルカリ性条件下において不溶性又は難溶性の鉄化合物であり、好ましくは3価の鉄化合物である。3価の鉄化合物は、例えば、水酸化鉄(III)、酸化鉄(III)、リン酸鉄(III)などが挙げられる。本実施形態の一態様において、鉄化合物は、資材又は適用される土壌において、10~50,000ppmであってもよく、好ましくは、20~30,000ppmである。
本開示において、「シデロフォア」とは、3価の鉄イオンと高い親和力を有する分子であり、3価の鉄イオンと結合して、鉄-シデロフォア複合体(錯体)を形成するキレート剤として作用する。シデロフォアは、不溶性又は難溶性の鉄化合物に由来する3価の鉄イオンと、鉄-シデロフォア複合体(錯体)を形成し、水に溶ける。水に溶けた鉄-シデロフォア複合体(錯体)は、根から取り込まれて植物において鉄を利用可能とする。
本実施形態の一態様において用いられ得る糸状菌エンドファイトは、シデロフォアを産生する。シデロフォアの存在は、例えば、CAS(Chrome azurol S)を用いたアッセイによって評価することができる。CASは、鉄イオンと結合すると特徴的な呈色をする色素化合物であり、CASを含んだ溶液にシデロフォアなどの鉄結合能の高い化合物を添加することによって、CAS-鉄複合体から鉄イオンを奪い取り、その結果、CAS-鉄複合体に特徴的な呈色が解消する。この反応を利用することによって、シデロフォアの存を判定することができる。
後述の実施例に示すように、上記糸状菌エンドファイトは、非特許文献1に記載の糸状菌と比較して、鉄化合物をキレートする能力が顕著に優れている。
本実施形態の一態様において、資材は不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を含む原材料を含んでもよい。本実施形態の一態様において用いられる糸状菌エンドファイトは、不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を可溶化して水溶性リン酸に変換することができる。
本開示において「水溶性リン酸」は、水に溶解するリン酸を指す。水溶性リン酸の例としては、リン酸二水素カリウムが挙げられる。水溶性リン酸は、そのままの状態で、植物が根から吸収することができる。
本開示において「ク溶性リン酸」は、クエン酸中など酸性条件下で溶解するリン酸を指す。ク溶性リン酸の例としては、リン酸二カルシウム(DCP)が挙げられる。植物はク溶性リン酸をそのままでは吸収できないが、根から根酸を分泌して、ク溶性リン酸を水溶性リン酸に変換して吸収することができる。しかし、植物は土壌中のク溶性リン酸を、根酸が到達可能な根圏のごく狭い範囲でしか利用することができない。
本開示において「不溶性リン酸」は、水や酸性条件下では溶解しないリン酸を指す。不溶性リン酸の例としては、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸アルミニウム(AP)が挙げられる。植物は不溶性リン酸を吸収できず、これを吸収可能とする手段も持たない。
本開示においてリン酸の「可溶化」とは、不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を水溶性リン酸に変換することを指す。
後述の実施例に示すように、糸状菌エンドファイトは、非特許文献3に記載の細菌と比較して、不溶性リン酸又は不溶性リン酸源を可溶化する能力が顕著に優れている。前述のように、植物は根から根酸を分泌してク溶性リン酸を可溶化できるものの、根酸が到達可能な根圏のごく狭い範囲を除いては、通常は土壌中のク溶性リン酸を利用することができない。しかし、糸状菌エンドファイトは植物と共生し、植物が光合成で産生した糖を吸収して自らの生育に利用している。糸状菌の菌糸は植物の根よりも細く、土壌中のわずかな隙間(気相)にどんどん伸ばしていくことが可能である。糸状菌はそのようにして、植物根よりも広い土壌中に菌糸をはびこらせ、土壌中の養分を分解(溶解)しながら菌糸を伝って植物根に送りこんでいる(特許文献1)。従って、糸状菌エンドファイトを用いれば、根酸の届かない広範囲のク溶性リン酸及び不溶性リン酸を、根から伸びた糸状菌エンドファイトの菌糸が可溶化し、植物が吸収できるようにすることができる。
なお、糸状菌エンドファイトは、何れか1種の菌を単独で使用してもよく、2種以上の菌を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。2種以上の糸状菌エンドファイトを併用する場合は、同じ属の2種以上の菌を組み合わせてもよく、異なる2つ以上の属から各々1種又は2種以上の菌を選択して組み合わせてもよい。2種以上の糸状菌エンドファイトを併用することで、相乗効果によるリン酸可溶化能の向上が期待できる場合がある。
本実施形態の資材に使用される原材料は、植物の生育促進に使用される原材料であれば制限されない。原材料の一例としては、土壌が挙げられる。原材料の一例としては、リン鉱石、鉄鋼スラグ及びこれらの粉砕物、並びにこれらと作物残渣との混合物が挙げられる。作物残渣の一例としては、ソルガム残渣が挙げられる。原材料の一例としては、リン酸を含有する汚泥が挙げられる。具体的には、下水汚泥、動物の糞尿(例えば牛糞、鶏糞)及びこれに由来する汚泥、肉骨粉及びこれに由来する汚泥、キノコ排菌床及びこれに由来する汚泥、並びにこれらの焼成物が挙げられる。上記焼成物は焼却物と称する場合もある。また、これらの原材料に濃縮、脱水、分離、消化、乾燥または焼成を単独で又は複数組み合わせて施したものも、本実施形態の資材に使用される原材料に含まれる。これらの原材料は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本実施形態の資材に使用される原材料は、少なくとも不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を含むものであってもよい。本実施形態に使用される原材料は、不溶性リン酸及びク溶性リン酸のうち、何れか一方のみを含んでいてもよく、両方を共に含んでいてもよい。また、本実施形態に使用される原材料における不溶性リン酸及びク溶性リン酸の各含有率も制限されない。
但し、不溶性リン酸及びク溶性リン酸の両方を含む原材料のうち、{不溶性リン酸の含有量}>{ク溶性リン酸の含有量}である原材料(即ち、不溶性リン酸の含有量がク溶性リン酸の含有量よりも大きい原材料)では、ク溶性リン酸のみを可溶化できる微生物が存在したとしても、植物にとって成長に必要な水溶性リン酸量が不足することがある。このような{不溶性リン酸の含有量}>{ク溶性リン酸の含有量}となる環境下では、ク溶性リン酸と不溶性リン酸の両方を可溶化できる糸状菌エンドファイトが含まれることにより、植物の生育に十分なリン酸を供給できるメリットがある。即ち、一態様によれば、原材料及び資材が不溶性リン酸及びク溶性リン酸の両方を含むと共に、{不溶性リン酸の含有量}>{ク溶性リン酸の含有量}である。なお、{不溶性リン酸の含有量}>{ク溶性リン酸の含有量}である原材料の例としては、リン鉱石及びその粉砕物、火山灰性の土壌が挙げられる。
一方、不溶性リン酸及びク溶性リン酸の両方を含む原材料のうち、{不溶性リン酸の含有量}<{ク溶性リン酸の含有量}である原材料(即ち、不溶性リン酸の含有量がク溶性リン酸の含有量よりも小さい原材料)では、上記の{不溶性リン酸の含有量}>{ク溶性リン酸の含有量}である原材料に比べてリン酸の溶解性が高いため、植物の生育に対して即効性がある。即ち、一態様によれば、原材料及び資材が不溶性リン酸及びク溶性リン酸の両方を含むと共に、{不溶性リン酸の含有量}<{ク溶性リン酸の含有量}である。なお、{不溶性リン酸の含有量}<{ク溶性リン酸の含有量}である原材料の例としては、下水汚泥、動物の糞尿(例えば牛糞、鶏糞)及びこれに由来する汚泥、肉骨粉、キノコ排菌床、並びにこれらの焼成物(又は焼却物)が挙げられる。
一態様によれば、本実施形態の資材及び/又はそれが適用される植物の根圏又はその周辺環境は、重金属を含むものであってもよい。本実施形態に使用され得る上記糸状菌エンドファイトは、資材及び/又はそれが適用される植物の根圏又はその周辺環境に存在する重金属を吸着させることができる。これにより、生育促進の対象とする植物に対し、悪影響を及ぼし得る重金属が取り込まれることを抑制することができる。本実施形態の糸状菌エンドファイトが吸着し得る重金属は、例えば、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)が挙げられるが、好ましくはカドミウム(Cd)または鉛(Pb)である。
一態様によれば、本実施形態の資材及び/又はそれに使用される原材料中の不溶性リン酸及びク溶性リン酸の合計含有率は、何れも0.5質量%以上、中でも3質量%以上、更には5質量%以上であることが好ましい。資材及び/又は原材料中の不溶性リン酸及びク溶性リン酸の合計含有量を前記下限以上とすることで、糸状菌エンドファイトによる可溶化能を確実に発揮させ、より効果的に植物生育促進又は土壌改良効果を得ることが可能となる。一方、当該合計含有量の上限値は特に限定されないが、例えば95質量%以下とすることができる。
なお、原材料及び資材の不溶性リン酸の含有量及びク溶性リン酸の含有量は、何れもキノリン質量法により測定することができる。
一態様によれば、本実施形態の資材は、更に水溶性リン酸を含んでいてもよい。当該水溶性リン酸は、原材料に含まれていたものであってもよい。また、当該水溶性リン酸は、原材料に含まれる不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸が、糸状菌エンドファイトによって可溶化されて生じたものであってもよい。本実施形態の資材が水溶性リン酸を含む場合、その含有率は制限されない。
本実施形態に使用される糸状菌エンドファイトは、鉄化合物及び/又は不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物と組み合わせて併用してもよい。鉄化合物及び/又は不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。鉄化合物を可溶化することができる他の微生物の例としては、Aspergillus nidulans、Aspergillus sydowii、Aspergillus terreus、Azotobacter vinelandii、Bacillus subtilis、Burkholderia cepacia、Cymbidium aloifolium、Escherichia coli、Penicillium chrysogenum、Pseudomonas aeruginosa、Rhodotorula pilimanae、Streptomyces pilosus、Streptomyces coelicolor、及びUstilago sphaerogenaが挙げられる。
不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物の例としては、Achromobacter marplatensis、Acinetobacter calcoaceticus、Advenella属細菌、Agromyces aruantiacus、Alcaligenes faecalis、Arthrobacter属細菌、Bacillus pumilus、Bacillus subtilis、Bordetella avium、Brevibacterium frigoritolerans、Burkholderia cenocepacia、Cronobacter sakazakii、Ensifer属細菌、Enterobacter ludwigii、Enterococcus属細菌、Flavobacterium ahuensis、Fusarium oxysporum、Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactococcus garvieae、Lactococcus lactis、Leifsonia属細菌、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc pseudomesenteroides、Microbacterium hydrocarbonoxydans、Nocardioides属細菌、Pantoea agglomerans、Pediococcus pentosaceus、Pediococcus stilesii、Pseudomonas aeruginosa、Rhizobium tropici、Serratia marcescens、Shinella kummerowiae、Sinorhizobium medicae、Staphylococcus epidermidis、Stenotrophomonas maltophilia、Streptomyces roseofulvus、Trabulsiella guamensis、Trimyema compressum、Weissella confusa、及びWeissella ghanensisが挙げられる。
本実施形態の一態様において用いられ得る糸状菌エンドファイトは、オーキシンと呼ばれる植物ホルモンの一種であるインドール-3-酢酸(IAA)を産生する。インドール-3-酢酸は、植物成長調節物質であり、植物の成長、発根促進、細胞伸長促進、形成層細胞の分裂誘導などの効果を発揮する。後述の実施例に示すように、本実施形態の一態様において用いられ得る糸状菌エンドファイトは、非特許文献2に記載の細菌と比較して、インドール-3-酢酸を産生する能力が顕著に優れている。
本実施形態の資材における糸状菌エンドファイトの菌体数は特に制限されない。一態様によれば、本実施形態の資材が主に糸状菌エンドファイトの培養物である場合、糸状菌エンドファイトの菌体数は、資材1gあたりの平均コロニー数として、例えば1×10cfu/g以上、又は5×10cfu/g以上、又は1×10cfu/g以上、又は5×10cfu/g以上とすることができ、また、例えば1×1011cfu/g以下、又は5×1010cfu/g以下、又は1×1010cfu/g以下、又は5×10cfu/g以下とすることができる。なお、糸状菌エンドファイトに加えて、鉄化合物及び/又は不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物を併用する場合、斯かる他の微生物の菌体数も、糸状菌エンドファイトの菌体数と同様の範囲とすることができる。また、本実施形態の資材が糸状菌エンドファイトの培養物とその他の原材料を含む場合、培養物糸状菌エンドファイトの菌体数は、資材1gあたりの平均コロニー数として、1×10cfu/g以上、又は5×10cfu/g以上、又は1×10cfu/g以上、又は5×10cfu/g以上とすることができ、また、例えば1×1011cfu/g以下、又は5×1010cfu/g以下、又は1×1010cfu/g以下、又は5×10cfu/g以下とすることができる。
本実施形態に使用される糸状菌エンドファイトは、糸状菌エンドファイトの培養物であってもよい。上記糸状菌エンドファイトの培養物の例としては、固体培養物、液体培養物が挙げられる。上記固体培養物とは、固体培養の結果得られる、固体培養用培地において糸状菌エンドファイトが培養された培養物を指す。上記液体培養物とは、液体培養の結果得られる、液体培養用培地において糸状菌エンドファイトが培養された培養物を指す。各培養物の調製方法については後述する。
一態様によれば、本実施形態に使用される糸状菌エンドファイトは、糸状菌エンドファイトの固体培養物である。上記固体培養物は、乾燥固体培養物であることが好ましく、より好ましくは乾燥固体培養物の粉砕物である。
なお、糸状菌エンドファイトに加えて、鉄化合物及び/又は不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物を併用する場合、斯かる他の微生物も、培養物として用いることができる。上記固体培養物の一例としては、固体培養物、液体培養物が挙げられる。中でも、固体培養物であることが好ましく、乾燥固体培養物であることがより好ましく、特に乾燥固体培養物の粉砕物であることが好ましい。
上記粉砕物の粒度は、限定されないが、例えば以下の通りである。一態様によれば、上記粉砕物の体積粒度分布における累積10%粒子径(D10)は、例えば50μm以上、又は100μm以上、又は150μm以上、又は200μm以上であり、また、例えば400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下である。一態様によれば、上記粉砕物の体積粒度分布における累積50%粒子径(D50)は、例えば100μm以上、又は200μm以上、又は300μm以上、又は400μm以上であり、また、例えば900μm以下、又は850μm以下、又は800μm以下である。一態様によれば、上記粉砕物の体積粒度分布における累積90%粒子径(D90)は、例えば1000μm以上、又は1100μm以上、又は1200μm以上であり、また、例えば5000μm以下、又は4000μm以下、又は3000μm以下、又は2000μm以下である。粒度が均一な乾燥固体培養物の粉砕物を含む資材を用いると、植物の生育を更に促進することができ、植物の育成促進の効果にムラが生ずることも抑制できる。なお、糸状菌エンドファイトに加えて、鉄化合物及び/又は不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物を乾燥固体培養物の粉砕物として併用する場合、斯かる他の微生物の粉砕物の粒度も、糸状菌エンドファイトの粉砕物の粒度と同様の範囲とすることができる。
なお、粉砕物の粒度の測定方法は制限されず、任意の方法で測定することができる。斯かる測定方法の例としては、レーザー回折法、散乱法、撮像法、光透過式遠心沈降法、沈降法、電気抵抗法、比表面積法、篩通過法が挙げられる。粉砕物の粒度を測定するための機器も制限されず、任意の市販の粒度測定器により測定することができる。斯かる測定機器の例としては、LMS-2000e、LMS-3000(株式会社セイシン企業)が挙げられる。なお、上記粉砕物の粒度は、培養物を乾燥させてから粉砕するので、乾式の測定方法を用いることが好ましい。
本実施形態の資材は、原材料及び糸状菌エンドファイト、並びに任意により用いられる、鉄化合物及び/又は不溶性リン酸を可溶化することができる他の微生物以外の成分を含んでいてもよい。例としては、窒素源、カリウム源、炭素源が挙げられる。窒素源の例としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、チリ硝石が挙げられる。カリウム源の例としては、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、ケイ酸カリウムが挙げられる。炭素源の例としては、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトースが挙げられる。
本実施形態の資材は、植物の生育促進用又は土壌の改良用に使用される。例えば、本実施形態の資材を単独で、又は土壌等の他の資材と混合して、植物の根圏又はその周辺環境に施用すればよい。これにより、本実施形態の資材やこれと混合される土壌中の、不溶性又は難溶性の鉄化合物、及び/又は不溶性のリン酸及び/又はク溶性リン酸が、糸状菌エンドファイトにより可溶化され、植物の吸収可能な鉄及び/又は水溶性リン酸が増加する。こうして植物の鉄及び/又はリン酸利用性が向上し、植物の生育が促進され、又は土壌が改良されることになる。なお、本開示において「根圏」とは、植物の根の分泌物と土壌生物とによって影響されている土壌空間を意味する。
本実施形態の資材の適用対象となる植物は限定されない。例えば、一年生植物でも多年生植物でもよく、被子植物でも裸子植物でもよい。鉄又はリン酸の要求量が比較的高い植物に本実施形態の資材を適用すれば、本実施形態の資材の生育促進効果がより顕著に得られるので好ましい。リン酸の要求量が比較的高い作物植物の例としては、イチゴ、キュウリ、トマト、キャベツ、ナス、レタス、タマネギ、エンドウ、トウモロコシ、ハクサイ、タバコ、シシトウ、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、ブロッコリー、花き類が挙げられる。
[資材の製造方法]
一実施形態は、植物生育促進用又は土壌改良用資材を製造する方法に関する。上記方法は、不溶性又は難溶性の鉄化合物及び/又は不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を含む原材料と糸状菌エンドファイトとを混合することを含む。本実施形態の製造方法において、原材料及び糸状菌エンドファイトの詳細については、上述したとおりである。
・培養
本実施形態の製造方法では、前述のように、予め糸状菌エンドファイトを培養した培養物を用意し、これを原材料と混合することが好ましい。糸状菌エンドファイトの培養条件は制限されない。例えば液体培養でも固体培養でもよい。
本開示において「液体培養」とは、液体培地を用いて株を培養することを指す。「液体培養物」とは、液体培養の結果得られる液体の培養物を指す。糸状菌エンドファイトを液体培養に供するとは、当該糸状菌を液体培地に接種し、液体培地において培養を行うことを指す。糸状菌エンドファイトは、媒体に保菌された種菌の状態であってもよい。媒体としては、例えば、寒天が挙げられる。雑菌による汚染を回避するため、接種は滅菌条件で行うことが好ましい。
液体培地は、例えば液体に様々な添加物を添加することにより、糸状菌エンドファイトの培養に適した組成となるように調製することで作製できる。液体としては、例えば、水が挙げられる。液体培地に添加する添加物は、例えば、糖類、ミネラル、窒素源、ビタミン、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基が挙げられる。好ましくは、液体培地は、糖類、窒素源を含む。液体培地に含まれる窒素源は、例えば、ペプトンが挙げられる。
糖類としては、限定されないが、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、シュクロース、ラクトース、オリゴ糖、及びグリセロールから選択される一種又は複数種が挙げられる。糖類の上限は、制限されるものではないが、液体培地に対する糖類の合計量として、例えば通常60g/培地L以下、又は50g/培地L以下、又は40g/培地L以下、又は30g/培地L以下とすることができる。糖類などの栄養分が多すぎると、菌糸濃度が高くなりすぎる場合がある。一方、糖類の下限は、制限されるものではないが、液体培地に対する糖類の合計量として、例えば0.5g/培地L以上、又は1g/培地L以上、又は5g/培地L以上、又は10g/培地L以上とすることができる。糖類などの栄養分が少なすぎると、菌糸が十分に伸長しない場合がある。例えば、ある実施形態では、糖類はグルコースであり、約20g/培地Lの量で添加される。
ミネラルとしては、限定されないが、無機塩、例えばアルカリ及びアルカリ土類金属塩、その他の金属の塩であってよい。このような無機塩として、例えば、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、塩化物、アルカリ金属酸化物、モリブデン酸塩、亜セレン酸塩、ハロゲン化物から選択される一種又は複数種の塩類が挙げられる。塩類は、一種又は複数種を用いることができる。塩類の上限は、制限されるものではないが、酵母エキスおよびペプトンに含まれる量を除くものとして、液体培地に対する塩類の合計量を、例えば10.0g/培地L以下、又は8.0g/培地L以下、又は5.0g/培地L以下、又は2.0g/培地L以下とすることができる。塩類が栄養分として多すぎると、菌糸濃度が高くなりすぎる場合がある。一方、塩類の下限は、制限されるものではないが、酵母エキスに含まれる量を除くものとして、液体培地に対する塩類の合計量を、例えば0.01g/培地L以上、又は0.05g/培地L以上、又は0.1g/培地L以上、又は0.25g/培地L以上とすることができる。塩類などのミネラルが少なすぎると、菌糸が十分に伸長しない場合がある。例えば、ある実施形態では、塩類として、硫酸マグネシウムが約0.5g/培地Lの量で添加され、かつ、リン酸二水素カリウムが約0.1g/培地Lの量で添加される。
窒素源としては、酵母エキス、タンパク質分解物及びタンパク質から選択される一種又は複数種の窒素源が挙げられる。タンパク質分解物の例としては、ペプトンが挙げられる。液体培地に酵母エキス及び/又はペプトンを添加すると、アミノ酸、ペプチドといったタンパク質分解物、タンパク質、塩類を含む栄養素を追加することができる。液体培地に対する窒素源の量は制限されるものではないが、窒素源の上限は、酵母エキス及びペプトン等の窒素源の合計量として、例えば30.0g/培地L以下、又は20.0g/培地L以下、又は15.0g/培地L以下、又は10.0g/培地L以下とすることができる。窒素源の下限は、酵母エキス及びペプトン等の窒素源の合計量として、例えば0.05g/培地L以上、又は0.1g/培地L以上、又は0.5g/培地L以上、又は1.0g/培地L以上とすることができる。液体培地に対する酵母エキスの量は制限されるものではないが、酵母エキスの上限は、例えば20.0g/培地L以下、又は15.0g/培地L以下、又は10.0g/培地L以下、又は5.0g/培地L以下とすることができる。酵母エキスの下限は、例えば0.01g/培地L以上、又は0.05g/培地L以上、又は0.1g/培地L以上、又は0.5g/培地L以上とすることができる。液体培地に対するペプトンの量は制限されるものではないが、ペプトンの上限は、例えば10.0g/培地L以下、又は8.0g/培地L以下、又は5.0g/培地L以下、又は2.0g/培地L以下とすることができる。ペプトンの下限は、例えば0.01g/培地L以上、又は0.05g/培地L以上、又は0.1g/培地L以上、又は0.5g/培地L以上とすることができる。上記と同様、栄養分が多すぎると菌糸濃度が高くなりすぎてしまう場合がある。一方、窒素源が少なすぎると、菌糸が十分に伸長しない場合がある。例えば、ある実施形態では、酵母エキスが約2.0g/培地Lの量で添加され、かつ、ペプトンが約1.0g/培地Lの量で添加される。更に、必要であれば適当な酸又は塩基を加えることにより適宜pHを調整してもよい。
液体培養は、適切な培養手段で実施できる。例えば、三角フラスコといった容器を用い、スターラーといった攪拌装置により攪拌しながら培養できる。また、液体培養は、温度制御装置等により培養条件を調節されることが好ましい。液体培養には、必要に応じて、振動装置、湿度測定装置、pH調節装置、濁度測定装置、光制御装置、特定気体濃度測定装置及び圧力測定装置から選択される1又は複数の装置を用いてもよい。特定気体濃度測定装置は、例えば、特定気体として、O、COが測定できればよい。液体培養には、汚染を防ぐ観点から任意にシリコ栓を用いてもよい。適宜、液体培養には、通気攪拌培養、振とう培養、又は静置培養等を行ってもよい。例えば、ある実施形態では、三角フラスコに液体培地とスターラーを投入し、フラスコの口をシリコ栓で封じ、通気性を確保した攪拌培養が行われる。
液体培養の期間は、制限されるものではないが、菌体が所望の濃度に達した時点で完了とすることができる。具体的には、制限されるものではないが、菌体が液体培養物1Lあたりの平均コロニー数として、例えば1×10cfu/培地L以上、又は1×10cfu/培地L以上、又は1×10cfu/培地L以上、又は1×10cfu/培地L以上、又は約5×10cfu/培地Lに達したときに培養を完了できる。例えば、液体培養の期間の上限は、例えば8日間以下、又は6日間以下、又は5日間以下、又は4日間以下とすることができる。一方、液体培養の期間の下限は、通常6時間以上、又は12時間以上、又は18時間以上、又は1日間以上とすることができる。液体培養の期間が長すぎると菌糸濃度が高くなりすぎてしまう場合がある。一方、液体培養の期間が短すぎると、菌糸が十分に伸長しない場合がある。例えば、ある実施形態では、液体培養の期間は、2~4日間、例えば、3日間行えば、液体培養に続く固体培養を行うのに適切な濃度の液体培養物が得られる。
一方、本明細書において「固体培養」とは、固体培地および水を含有する固体培養用培地を用いて株を培養することを指す。「固体培養物」とは、固体培養の結果得られる、固体培養用培地において株が培養された培養物を指す。糸状菌エンドファイトを固体培養に供するとは、当該糸状菌の液体培養物を固体培養用培地に接種し、固体培養用培地において培養を行うことを指す。
固体培地は、例えば培地として、フスマ、オカラ、竹粉、オガクズ、モミガラ、バガス、セルロースパウダー、セロビオース、コーヒー粕、デンプンを使用できる。固体培養に用いられる水は、例えば、菌株の成長に寄与する様々な添加物を添加してもよい。添加物は、例えば糸状菌エンドファイト以外の細菌の増殖を抑制できる抗生物質が挙げられる。
固体培養用培地は、固体培地に水を添加し混合することにより調製できる。固体培養用培地の含水率は、制限されるものではないが、例えば、含水率の上限は、通常85質量%以下、中でも80質量%以下、更には75質量%以下、特に70質量%以下であることが好まし。含水率の下限は、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、更には45質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。固体培養培地は、含水率が高すぎると水分過多となり培地に十分な間隙が生じないため生育が促進されない。一方、固体培養培地は、含水率が低すぎると、培養に十分な水分を確保できない。例えば、ある実施形態では、固体培養用培地の含水率は、50~70質量%、例えば、60質量%であると、エンドファイト資材として適切な菌糸濃度を有する固体培養物が得られる。
固体培養用培地への糸状菌エンドファイトの接種は、制限されるものではないが、例えばマイクロピペットその他の器具を用いて接種する方法、又は株が入っている容器の口をバーナーで炙る措置の少なくとも何れか一方の方法により、滅菌後デカントして直接接種する方法が採用できる。いずれの方法を用いるにせよ、液体培養物を固体培養用培地に接種することにより、液体培養物を固体培養用培地の全体にいきわたらせることが可能になる。これにより、菌糸がより均一に固体培養用培地全体に伸長するように繁殖する結果、一層均一な培養物が得られることとなり、惹いてはより粒度が揃った培養物の粒子を得ることができると考えられる。
固体培養は、適切な培養手段で実施できる。例えば、固体培養は、プラスチック等の袋といった容器を用い、容器を静置することにより培養できる。また、固体培養には、温度制御装置、湿度測定装置等により培養条件を調節することが好ましい。必要に応じて、攪拌装置、振動装置、pH調節装置、濁度測定装置、光制御装置、特定の気体濃度測定装置及び圧力測定装置から選択される1又は複数の装置を用いてもよい。特定気体濃度測定装置は、例えば、特定気体として、O、COが測定できればよい。固体培養には、汚染を防ぐ観点から使い捨ての容器を使用することが好ましく、任意に袋の口を閉じるといった方策を行ってもよい。適宜攪拌培養、振とう培養、又は静置培養等を行ってもよい。例えば、ある実施形態では、通気フィルターを備えた使い捨ての袋を使用し、袋の口を閉じて静置培養が行われる。
固体培養の期間は、制限されるものではないが、菌体が所望の濃度に達した時点で完了とすることができる。具体的には、制限されるものではないが、菌体が固体培養物1gあたりの平均コロニー数として、例えば1×10~1×1011cfu/g、又は5×10~5×1010cfu/g、又は1×10~1×1010cfu/g、又は5×10~5×10cfu/g、又は約1×10cfu/gに達したときに培養を完了できる。固体培養の期間の上限は、例えば通常20日間以下、中でも18日間以下、更には15日間以下、特に12日間以下であることが好ましい。固体培養の期間の下限は、通常5日間以上、中でも6日間以上、更には7日間以上、特に8日間以上であることが好ましい。固体培養の期間が長すぎると、雑菌による汚染のリスクが増大する場合がある。また、固体培養の期間が長すぎると、エンドファイト資材の効率的な生産の妨げになる場合がある。一方、固体培養の期間が短すぎると菌糸が十分に伸長しない場合がある。例えば、ある実施形態では、固体培養を8~12日間、例えば、10日間行えば、エンドファイト資材として適切な菌糸濃度を有する固体培養物が得られる。
培養時の温度は、液体培養及び固体培養の何れにおいても特に限定されず、糸状菌エンドファイトの生育を妨げない範囲で任意の温度とすることができる。具体的に、培養時の温度の上限は、例えば40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下、又は25℃以下とすることができる。一方、培養時の温度の下限は、例えば5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上、又は20℃以上とすることができる。ある実施形態では、培養は20~25℃、例えば25℃±1℃で実施できる。
培養時の湿度は、液体培養及び固体培養の何れにおいても特に限定されず、糸状菌エンドファイトの生育を妨げない範囲で任意の湿度とすることができる。具体的に、培養時の湿度の上限は、例えば100%RH以下、又は95%RH以下、又は90%RH以下とすることができる。一方、培養時の湿度の下限は、例えば55%RH以上、又は60%RH以上、又は65%RH以上とすることができる。ある実施形態では、培養は60~80%RH、例えば約70%RHの湿度で実施できる。
また、汚染防止の観点から、液体培地、固体培地、及び/又は固体培養用培地は、例えば、濾過滅菌、オートクレーブ滅菌、煮沸滅菌、及び放射線滅菌、次亜塩素酸ソーダ、オゾン処理といった任意の公知の手段で殺菌することが好ましい。接種といった各作業は滅菌雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、固体培養用培地の場合、固体培地に適度な水分を加えてから滅菌することができる。
・後処理
糸状菌エンドファイトを固体培養した場合、固体培養物を乾燥してもよい。乾燥は、エアコン、除湿器など汎用の機器を用いて行えばよい。例えば、25℃、50%RHの環境で3日間放置することにより行うことができる。
また、糸状菌エンドファイトの固体培養物を乾燥した後、これを粉砕して粉砕物としてもよい。乾燥固体培養物の粉砕は、フードプロセッサー、コーヒーミル、ペッパーミルなど汎用の粉砕機を用いて行うことができる。一態様によれば、糸状菌エンドファイトの乾燥固体培養物の粉砕は、粉砕物の体積粒度分布における累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、及び/又は累積90%粒子径(D90)が、前述の範囲内に調製されることが好ましい。
・混合
本実施形態の製造方法において、原材料と糸状菌エンドファイトの培養物との混合比率は制限されない。一態様によれば、原材料と糸状菌エンドファイトの培養物との合計量に対する糸状菌エンドファイトの培養物の量の比率は、例えば10質量%以上、又は20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上とすることができ、また、例えば95質量%以下、又は90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
本実施形態の製造方法において、原材料と糸状菌エンドファイトとの混合条件や混合方法は、糸状菌エンドファイトが死滅しない環境であれば制限されない。但し、糸状菌エンドファイトの生育を妨げない環境であることが好ましく、糸状菌エンドファイトを培養できる環境であることがより好ましい。具体的には以下の通りである。
本実施形態の製造方法において、原材料と糸状菌エンドファイトの培養物との混合時の温度の上限は、例えば40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下、又は25℃以下とすることができる。一方、混合時の温度の下限は、例えば5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上、又は20℃以上とすることができる。ある実施形態では、混合は20~25℃、例えば25℃±1℃で実施できる。
本実施形態の製造方法において、原材料と糸状菌エンドファイトの培養物との混合時の湿度の上限は、例えば100%RH以下、又は95%RH以下、又は90%RH以下とすることができる。一方、混合時の湿度の下限は、例えば55%RH以上、又は60%RH以上、又は65%RH以上とすることができる。ある実施形態では、混合は60~80%RH、例えば約70%RHの湿度で実施できる。
[植物生育促進又は土壌改良方法]
一実施形態は、植物の生育を促進する方法に関する。本実施形態の方法は、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物及び/又は不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸に、糸状菌エンドファイト及び/又はそれを含む資材を接触させることを含む。具体的には、植物の根圏又はその周辺環境に存在する土壌又は資材に、糸状菌エンドファイトの培養物を施用することにより、植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物及び/又は不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を可溶化させればよい。本実施形態の方法において使用される糸状菌エンドファイト、及び適用対象となる植物の詳細については、上述したとおりである。
一実施形態は、土壌を改良する方法に関する。本実施形態の方法は、鉄化合物及び/又は不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を含む土壌に、糸状菌エンドファイト及び/又はそれを含む資材を接触させることを含む。これにより、土壌中の鉄化合物及び/又は不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸が糸状菌エンドファイトによって可溶化され、土壌が改良されて植物の生育に適した土壌となる。本実施形態の方法において使用される糸状菌エンドファイト、及び対象となる土壌の詳細については、上述したとおりである。
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明する。但し、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下に説明する各実験において使用した実験機器及び試薬は以下の通り。
また、以下の実験で使用した菌株は以下の通りである。
フザリウム・ソラニ(Fusarium solani):15-B株(NITE P-03991)
レカニシリウム属(Lecanicillium sp.):100-1株(NITE P-03984)
[実験1]インドール-3-酢酸(IAA)の産生
<実施例1>
(1)以下の組成からなるDYGS培地を作製し、121℃、20分間オートクレーブ滅菌した。
(2)F. solaniの菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天を3片、DYGS培地に加えた。
(3)25℃、暗所にて4日間、スターラーで攪拌しながら培養した。
(4)上記(3)の培養液を回収し、φ0.22μmのシリンジフィルターで濾過し、濾液を獲得した。
(5)以下の組成からなる50×Salkowski’s reagentを作製した。
(6)上記の50×Salkowski’s reagentを純水で25倍に希釈し、2×Salkowski’s reagentを作製した。
(7)上記(4)の培養液の濾液2mlに2×Salkowski’s reagentを2ml加えて、それをアルミホイルで遮光し、室温で30分間静置した。
(8)上記(7)を実施した後の混合物について、分光光度計を用いて波長526nmの吸光度を測定した。純水2mLに2mlの2×Salkowski’s reagentを加えて室温で30分間静置して基準液を調製した。また、100μg/ml IAA 2mLに2mlの2×Salkowski’s reagentを加えて室温で30分間静置して標準液を調製した。基準液と標準液を用いて、検量線を作成した。
<実施例2>
F. solaniの代わりにLecanicillium sp.の種菌寒天を3片加えたこと以外は、<実施例1>と同様に実験を行った。
<比較例1>
種菌寒天を加えなかったこと以外は、<実施例1>と同様に実験を行った。
[実験1の結果]
上記実験の結果、培養後のインドール-3-酢酸(IAA)の産生量は以下の通りとなった。
<実施例1>および<実施例2>のIAA量は<比較例1>よりも大きいことから、F. solaniならびにLecanicillium sp.はIAAを産生する菌株であることが示唆された。菌株によるIAA産生能はそれぞれ23μg/ml、15μg/mlであり、非特許文献2で分離されたBaciilus属エンドファイトよりも高い値を示した。
[実験2] 不溶性リン酸の可溶化
<実施例3>
(1)以下の組成からなるNBRIP培地を作製した。
(2)リン酸源として、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸アルミニウム(AP)、リン酸二カルシウム(DCP)、リン鉱石粉末(モロッコ産)、下水汚泥焼成灰のうち1種につき、3本のポリプロピレン(PP)ビンに、0.1gずつ添加した。
(3)NBRIP培地をPPビンに20mlずつ分注した。
(4)(3)のPPビンを121℃、20分間オートクレーブ滅菌した。
(5)十分に冷ましたあと、F. solaniの菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天を1片ずつ、1種のリン酸源につき3本のPPビンに添加した。
(6)(5)のPPビンを25℃、100rpmで振とうしながら培養した。
(7)TCP、AP、DCPは4日目に、リン鉱石と下水汚泥焼成灰は5日目に振とうを止め、培養液をフィルター濾過して回収した。
(8)試験管に純水を7.6ml、培養液を400μL加えた。また、標準液として100μg/ml KHPOを、ブランクとして純水をそれぞれ使用した。
(9)トルオグ法発色試薬Aを1ml/sample、トルオグ法発色試薬Bを0.085g/sample加え、完全に溶解して発色試薬を作製した。
(10)発色試薬を試験管に1ml加え、タッピングで混和したのち、10分間静置した。
(11)土壌分析機でリン酸量を計測した。
<比較例2>
F. solaniの種菌寒天を加えなかったこと以外は、<実施例3>と同様に実験を行った。
<実施例4>
F. solaniの菌種寒天の代わりにLecanicillium sp.を加えたこと以外は、<実施例3>と同様に実験を行った。
<比較例3>
F. solaniの種菌寒天を加えなかったこと以外は、<実施例3>と同様に実験を行い、<実施例4>と同時に行った。
[実験2の結果]
上記実験の結果、培養後の水溶性リン酸の可溶化量は以下の通りとなった。
<実施例3>および<実施例4>は、それぞれ<比較例2>と<比較例3>よりも多く水溶性リン酸を含み、これは培地中の不溶性リン酸源が菌株によって可溶化されたことを示す。また、これらの値は非特許文献3よりも高い値を示した。
[実験3]シデロフォアの産生
[実験3-1]シデロフォア産生の定性的な解析
<実施例5>
(1)Solution I、Solution II、Solution IIIをそれぞれ作製した。
・Solution I
・Solution II
(i)純水110μLにHCl(12mol/L)を10μL加え、1mol/L HClとした
(ii)純水9.9mlに、1mol/L HCLを100μL加え、10mM HClとした。
(iii)10mM HClに0.003gのFeCl・6HOを加えた。
・Solution III
(2)Solution I 50mLに、9mlのSolution IIを加えて混ぜた後、Solution IIIをさらに40mL加えた。その後、混合物を121℃、20分間オートクレーブ滅菌した。滅菌後は、混合物を無菌環境でPPビンに移した。
(3)以下の試薬をそれぞれ調製した。
・Minimal Media 9(MM9) Salt Solution
純水90mlに、NaOHをゆっくりと加えて調製した。
完全に溶解したのち、121℃、20分間オートクレーブ滅菌した。
完全に溶解したのち、φ0.22μmのシリンジフィルターで濾過して滅菌した。
(4)MM9 Salt Solution 20mlを純水150mlで希釈し、NaOH溶液を加えてpHを6.0に調製した。
(5)(4)で得られた溶液にPIPES 6.44gを少しずつ加えながら溶解させ、NaOH溶液でpHを6.0、6.3、6.55となる3種類の溶液を調製した。
(6)細菌用寒天3gを(5)で得られた溶液に加え、121℃、20分間オートクレーブ滅菌した。
(7)(6)で得られた溶液に6mlのカザミノ酸溶液と2mlの20%グルコース溶液を加えた。
(8)(7)で得られた溶液に20mlのBlue Dye Solutionを、容器の壁面につたえながらゆっくりと加えた。
(9)(8)で得られた溶液を泡立たないように振り混ぜ、シャーレ10枚に分注し、CAS Agar培地とした。
(10)F. solaniの菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天をCAS Agar培地に載せ、25℃、70%RHで5日間静置した。
<実施例6>
F. solaniの代わりにLecanicillium sp.の菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天を載せたこと以外は、<実施例5>と同様に実験を行った。
[実験3-2]シデロフォア産生量の定量的な解析
<実施例7>
(1)以下の組成を有する液体培地を作製し、121℃、20分間オートクレーブ滅菌した。
(2)(1)で得られた液体培地にF. solaniの菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天を3片加えた。
(3)(2)の液体培地をスターラーで25℃、700rpm、3日間攪拌培養した。
(4)(3)において培養した液体培地を回収し、φ0.22μmシリンジフィルターで濾過した。
(5)Blue Dye Solution 2mlに純水8mlを加え、5倍希釈した。
(6)(4)の濾液2mlと5倍希釈Blue Dye Solution 2mlを試験管で混和した。
(7)(6)の溶液に0.2M 5-スルホサリチル酸を10μL加え、室温で30分間静置した。
(8)(7)の溶液を分光光度計を用いて、波長626nmの吸光度を測定した。
(9)以下の式により、シデロフォア産生量を算出した。
%シデロフォアユニット = (Ar-As) / Ar x 100
Ar = 培地の吸光度
As = サンプルの吸光度
<実施例8>
F. solaniの代わりにLecanicillium sp. を加えたこと以外は、<実施例7>と同様に実験を行った。
<比較例4>
F. solaniの種菌寒天を加えなかったこと以外は、<実施例7>と同様に実験を行った。
[実験3の結果]
CAS agar assayを行ったところ、<実施例5>および<実施例6>では、菌株の周囲に赤色のHaloを生じ、F. solaniおよびLecanicillium sp.がシデロフォアを産生することが示唆された(図1)。
そこで、CAS liquid assayによってシデロフォアの産生量を定量的に解析した。F. solaniおよびLecanicillium sp.は、培養3日目の時点において、液体培地中で菌糸を十分に増殖させた.<実施例7>および<実施例8>ではシデロフォア産生量は大きく変わらず、それぞれ62.78%、63.36%の鉄をキレートした(表14)。この値は先行研究である非特許文献1の値よりも高く、より多く鉄をキレートできることが期待できる。
[実験4]重金属吸着(1)
<実施例9>
(1)5mg/L 硝酸カドミウム四水和物の水溶液を、チューブに30ml加えた。
(2)(1)にF. solaniの菌糸粉末を50mg加えた。
(3)(2)で得られた溶液を室温、100rpmで60分間振とうした。
(4)(3)で得られた溶液をφ0.22μmのシリンジフィルターで濾過した。
(5)(4)で得られた溶液について、ICPでカドミウム(Cd)の濃度を測定した。
<実施例10>
F. solaniの代わりにLecanicillium sp. の菌糸粉末を加えたこと以外は、<実施例9>と同様に実験を行った。
<比較例5>
菌糸粉末を加えなかったこと以外は、<実施例9>と同様に実験を行った。
[実験4の結果]
<実施例9>および<実施例10>に含まれるカドミウムの量が<比較例5>よりも少ないことから、菌糸にカドミウムが吸着されたことが示唆された(表15)。また、F. solaniよりもLecanicillium sp.で高い吸着能を示した。この値は先行研究である非特許文献4の値と比較しても遜色ない値であり、同等のカドミウムを吸着することが期待される。
[実験5]重金属吸着(2)
<実施例11>
(1)10mg/L 硝酸鉛水溶液を、チューブに30ml加えた。
(2)(1)にF. solaniの菌糸粉末を10mg加えた。
(3)(2)で得られた溶液を室温、100rpmで60分間振とうした。
(4)(3)で得られた溶液をφ0.22μmのシリンジフィルターで濾過した。
(5)(4)で得られた溶液について、ICPで鉛(Pb)の濃度を測定した。
<実施例12>
F. solaniの代わりにLecanicillium sp. の菌糸粉末を加えたこと以外は、<実施例11>と同様に実験を行った。
<比較例6>
菌糸粉末を加えなかったこと以外は、<実施例11>と同様に実験を行った。
[実験5の結果]
<実施例11>および<実施例12>に含まれる鉛の量が<比較例6>よりも少ないことから、菌糸に鉛が吸着されたことが示唆された(表15)。また、Lecanicillium sp.よりもF. solaniで高い吸着能を示した。
[実験6]資材の作製方法とコロニー数の測定
<実施例13>
(1)ブドウ糖ペプトン培地2.85gに純水を100ml加えた。
(2)(1)の溶液を121℃、20分間、オートクレーブで滅菌した。
(3)(2)の溶液にF. solaniの菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天を3片加え、700rpmのスターラーで3日間、25℃にて攪拌しながら培養した。
(4)フスマ500gに純水500mlを加えてよく混ぜ、フィルターつき菌床袋に移した。
(5)(4)を121℃、60分間、オートクレーブで滅菌した。
(6)(3)で得られたF. solaniの培養液100mlを(5)で滅菌した菌床袋に加えて密封した。
(7)25℃、70%RHで5日間静置した。
(8)袋から菌床を取り出して破砕し、25℃で3日間乾燥した。
(9)乾燥物をフードプロセッサーで粉砕し、φ2mmの篩で篩過した。これを「Fusarium資材」とした。
(10)Fusarium資材1gを純水10mlに懸濁し、これを10倍希釈液とした。
(11)(10)で得られた10倍希釈液から1ml回収し、9mlの純水を加えて10倍希釈液とした。以降、同様の手順で10倍希釈液まで作製した。
(12)DRBC培地15.75gに純水500mlを加え、121℃、20分間、オートクレーブで滅菌した。
(13)プラスチックシャーレに流し込み、静置して固めた。
(14)(11)で作製した10~10倍希釈液を1ml、DRBC固形培地に塗布した。
(15)25℃、70%RHで2日間静置した。
(16)形成されたコロニーの数を計測した。
<実施例14>
F. solaniの代わりにLecanicillium sp. の菌糸で満たされた約5mm角の種菌寒天を加え、(15)において3日間静置し、さらに完成した資材を「Lecanicillium資材」としたこと以外は、<実施例13>と同様に実験を行った。
[実験6の結果]
<実施例13>および<実施例14>から、資材1g中に含まれるコロニーはそれぞれ約10~17x10個、2~5x10個であった(表17)。
[実験7]サラダ菜の生育実験
<実施例15>
(1)無栄養の培土とバーミキュライトを容積比1:1で混合して、栽培土を作製した。
(2)(1)の栽培土1000mlに、窒素源として硫安270mg、リン酸源として過リン酸石灰450mg、カリウム源として加里270mg、<実施例13>で作製したFusarium資材2gを加え、よく混合した。
(3)直径9cmの栽培ポットに(2)で作製した栽培土を100mlずつ配り、サラダ菜(岡山サラダ菜)を播種した。
(4)播種から60日間、ポットで栽培した。
<実施例16>
Fusarium資材の代わりに<実施例14>で作製したLecanicillium資材を加えたこと以外は、<実施例15>と同様に実験を行った。
<比較例7>
Fusarium資材またはLecanicillium資材のどちらも加えなかったこと以外は、<実施例15>と同様に実験を行った。
[実験7の結果]
<実施例15>は、<比較例7>と比較して可食部の収穫重量が約1.21%上昇した。更に、生育のばらつきが抑えられ、標準偏差が小さくなった。<実施例16>は、<比較例7>と比較して可食部の収穫重量が64.46%上昇した。
[まとめ]
本発明は、植物の生育を促進する糸状菌エンドファイトの利用を提案するものであり、農作物の健全な生育と、収穫量の増加に寄与するものである。似たような先行研究として特許文献1が挙げられるが、本発明は菌による植物生育促進の作用機序について、より詳細に解析されており、より多くの機能が期待されるものである。
本発明は、農業や園芸等の分野に広く適用でき、その利用価値は極めて大きい。例えば、アルカリ土壌などの鉄の供給が困難な土壌においても植物の栽培が可能となり、栽培可能な耕地面積が拡大され、今後の食糧問題や資源問題を解決することが可能となる。
NITE P-03991
NITE P-03984

Claims (16)

  1. 鉄化合物と糸状菌エンドファイトを含む資材であって、
    前記糸状菌エンドファイトが、レカニシリウム属(Lecanicillium sp.)を含む、資材。
  2. 前記鉄化合物が3価の鉄化合物である、請求項1に記載の資材。
  3. 前記鉄化合物の含有量が、前記資材の10~50,000ppmである、請求項1に記載の資材。
  4. 前記糸状菌エンドファイトがシデロフォアを産生する、請求項1に記載の資材。
  5. 前記糸状菌エンドファイトがインドール-3-酢酸を産生する、請求項1に記載の資材。
  6. さらに、不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸を含む原材料を含む、請求項1に記載の資材。
  7. 前記原材料が、汚泥の焼成物である、請求項6に記載の資材。
  8. 前記糸状菌エンドファイトが乾燥固体培養物の粉砕物であり、体積粒度分布における累積50%粒子径(D50)が100~900μmであり、累積90%粒子径(D90)が1000~5000μmである、請求項1に記載の資材。
  9. 植物の生育を促進する方法であって、
    植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物に糸状菌エンドファイトを接触させること
    を含み、
    前記糸状菌エンドファイトが、レカニシリウム属(Lecanicillium sp.)を含む、方法。
  10. 前記植物の根圏又はその周辺環境の不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸に前記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記植物の根圏又はその周辺環境の汚泥の焼成物に、前記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む、請求項9に記載の方法。
  12. 前記植物の根圏又はその周辺環境の重金属に前記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む、請求項9に記載の方法。
  13. 植物から得られる作物を生産する方法であって、
    植物の根圏又はその周辺環境の鉄化合物に糸状菌エンドファイトを接触させ、前記植物を生育すること、および
    前記植物から得られる作物を収穫すること
    を含み、
    前記糸状菌エンドファイトが、レカニシリウム属(Lecanicillium sp.)を含む、方法。
  14. 前記植物の根圏又はその周辺環境の不溶性リン酸及び/又はク溶性リン酸に前記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記植物の根圏又はその周辺環境の汚泥の焼成物に、前記糸状菌エンドファイトを接触させることを含む、請求項13に記載の方法。
  16. 前記植物の根圏又はその周辺環境の重金属に前記糸状菌エンドファイトを接触さることを含む、請求項13に記載の方法。
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