JP7843118B2 - 加熱済み食品の製造方法 - Google Patents
加熱済み食品の製造方法Info
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[1]肉の表面に、アルカリ性物質及び澱粉を含む処理成分を接触させる工程と、前記接触させる工程の後に、前記肉を前記澱粉の糊化温度以上の温度で加熱し、前記澱粉による膜を成膜する工程と、前記成膜する工程の後に、前記肉を密閉状態で加熱処理する工程と、を備え、更に、前記肉と特定香気成分とを組み合わせる工程を含み、前記特定香気成分が、芳香族アルデヒド類又はラクトン類から選択される少なくとも一種を含んでいる、加熱済み食品の製造方法。
[2]前記処理成分が、更に前記特定香気成分を含む、[1]に記載の製造方法。
[3]前記加熱処理する工程は、前記肉を前記特定香気成分と共に容器に密閉する工程
を含んでいる、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記肉が、牛肉又は豚肉である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記肉の質量に対して、前記特定香気成分が0.5~300ppmの量で使用される、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
本発明に係る方法は、肉の表面に、アルカリ性物質及び澱粉を含む処理成分を接触させる工程と、接触させる工程の後に、肉を澱粉の糊化温度以上の温度で加熱し、澱粉による膜を成膜する工程と、成膜する工程の後に、肉を密閉状態で加熱処理する工程とを備える。このような工程(食感改善工程という)を採用することによって、肉の食感及び保存性を向上させることができる。
ここで、本発明の方法は、更に、肉と特定香気成分とを組み合わせる工程を備える。特定香気成分は、芳香族アルデヒド類又はラクトン類から選択される少なくとも一種を含んでいる。食感改善工程と特定香気成分とを組み合わせることによって、加熱済み食品の肉の風味をより向上させることができる。
本実施形態では、食感改善工程における、処理成分に特定香気成分が含まれている。すなわち、肉に対して、特定香気成分を含む処理成分を接触させることによって、肉と特定香気成分とが組み合わされる。以下に、各工程について詳述する。
まず、肉を準備する。
「肉」としては特に限定されるものではないが、畜肉が好ましい。畜肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉、及び羊肉等が挙げられる。好ましくは、牛肉又は豚肉が用いられる。より好ましくは、赤身肉である。一般に、加熱済み食品では、脂身(サシの入った肉)の和牛肉等を用いる場合、加熱(加圧加熱)処理によって、脂が流出し、肉の旨味に乏しくなることが多い。一方、これに代えて、グラスフェッドである場合が多い外国産牛等の赤身肉を使用した加熱済み食品では、和牛肉等に比べて、旨味に乏しく、風味や食感に欠けることが多い。本実施形態により、広く肉の風味及び食感を改善することが可能となり、外国産牛等の赤身肉等を使用した場合であっても、和牛を使用した場合と同様の風味や食感を実現することができる。
アルカリ性物質としては、飲食可能であり、水に溶解した際に、アルカリ性を示すものであればよく、特に限定されない。アルカリ性物質を使用することにより、肉の状態がアルカリ性側に保持される。その結果、肉の特定香気成分の浸潤、食感保持及び保存性向上作用を奏する。
アルカリ性物質として、例えば、アルカリ金属・アルカリ土類金属水酸化物等のアルカリと、それらの弱酸との塩等が挙げられる。具体的には、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩を含む物質が例示される。
好ましくは、アルカリ性物質として、pHをアルカリ側に緩衝する作用を有する物質が使用される。そのような物質として、例えば、酸解離定数pKa値が4以上、好ましくは5以上、更に好ましくは6以上の酸と、アルカリとから生じる塩が挙げられる。このような物質を用いると、肉がより低いpHの液部等と組合わされた場合においても、良好に緩衝作用が奏される結果、肉が液部よりもアルカリ側のpH、例えば、pH5.5~7.5、好ましくはpH6~7に維持される。肉のpHがこのような範囲に維持されることで、好適に肉の特定香気成分の浸潤、食感保持及び保存性向上作用が付与される。
アルカリ性物質の使用量は、肉100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
澱粉は、次の成膜工程において膜を形成するために使用されている。澱粉としては、未膨潤のものが使用される。
澱粉としては、未加工澱粉及び加工澱粉のいずれも使用可能である。澱粉として、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、及び糯米澱粉等が挙げられる。また、小麦粉等の澱粉を含む食品原料を使用してもよい。好ましくは馬鈴薯澱粉が使用される。
好ましくは、澱粉として、糊化温度が45~100℃のものが使用される。澱粉の糊化温度は、より好ましくは80~100℃である。このような澱粉を使用すると、より良好に成膜化処理を実施することができる。すなわち、後工程において成膜された膜が脱落しにくくなる。その結果、特定香気成分の保持、歩留まりが改善する。
特定香気成分は、風味改善のために使用されている。特定香気成分は、芳香族アルデヒド類又はラクトン類から選択される少なくとも一種を含んでいる。
最も好ましくは、バニリンを含む。バニリンは、化学式C8H8O3を有する香気成分であり、バニラの香りの主要な成分となる物質である。バニリンを含む芳香族アルデヒド類は、天然物及び合成物のいずれも使用することができる。
バニリンを含む場合、バニリンの使用量は、肉100質量部に対して、0.0005~0.002質量部(5~20ppm)であることが好ましい。
処理成分を肉の表面に接触させる方法については、特に限定されない。例えば、タンブラー法、インジェクション法、浸漬法、粉体付着法等が例示される。
また、処理成分水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、例えば0.1~40質量%である。処理成分水溶液中の澱粉の濃度は例えば30~70質量%である。処理成分水溶液中の特定香気成分の濃度は、例えば0.0005~0.1質量%(5~1000ppm)である。バニリンを使用する場合には、0.003~0.015質量%(30~150ppm)が好適である。
処理成分を接触させる前に、肉に突き刺し処理等を行ってもよい。
続いて、成膜処理を行う。具体的には、肉を、澱粉の糊化温度以上の温度で加熱する。好ましくは、肉に含まれる蛋白質が熱変性するような温度で、加熱を行う。
これによって、澱粉が糊化して膜状となり、肉の表層部に膜が形成される。上記の成膜によって、肉に浸潤した特定香気成分の保持、肉の食感保持、歩留まりの向上を図れる。成膜の為の加熱温度は、例えば80~120℃、好ましくは90~110℃である。加熱時間は、例えば3~30分、好ましくは5~20分である。
あるいは、蒸気による処理、熱風による処理、油により揚げる処理、又は炒める処理等を施すことによって肉を加熱し、成膜することもできる。
続いて、成膜処理後の肉を、容器に入れ、密封する。必要に応じて、他の食品と共に肉を容器に入れてもよい。他の食品としては、例えば、カレーソースが挙げられる。カレーソースを使用する場合、その使用量は、肉100質量部に対して例えば50~2000質量部、好ましくは100~800質量部である。
密封後、加熱処理を行う。ここでの加熱処理は、殺菌等を目的とした処理である。好ましくは、レトルト加熱(加熱加圧殺菌)が行われ、より軽度の湯中加熱等が行われてもよい。加熱温度は、例えば100~150℃である。加熱時間は、例えば、10分~60分である。本発明により、加熱処理後も、肉の良好な風味、食感、歩留まりが保持される。
続いて、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態に対して、特定香気成分の使用タイミングが変更されている。本実施形態では、ステップS1において、処理成分に、必ずしも特定香気成分が含まれている必要はない。その代わりに、ステップS3において特定香気成分が使用される。すなわち、肉と特定香気成分とが、ステップS3において一緒にさせられる(組み合わされる)。尚、その他の点については第1の実施形態と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
また、成膜処理後の肉及び他の食品を合せた、食品全体中の特定香気成分の量は、例えば0.000005~0.005質量%である。バニリンを含む場合、バニリンの量は、0.00003~0.0003質量%(0.3~3ppm)が好適である。
例えば特定香気成分がバニリンを含む場合、食品中のバニリンの量は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析装置等公知の測定技術を使用することにより、求めることができる。具体的には、ジメチルポリシロキサン(PDMS)コーティングされた攪拌子を試料瓶に入れ、試料中で攪拌させて香気成分を抽出、濃縮(SBSE:スターバー抽出法)し、これを、加熱脱離装置付きガスクロマトグラフ質量分析装置に供し、標準添加法にて定量値を測定する方法等が挙げられる。他の特定香気成分についても、それぞれ適当な測定方法によって、食品中の量を求めることができる。
肉として、赤身牛肉1kgを一口大にカットしたものを準備した。一方で、重曹6g、馬鈴薯澱粉25g、バニリンを含むバニラ香料1g、及び、水15gを含む処理溶液を調製した。調製した処理溶液を赤身牛肉に加えて混合し、赤身牛肉の表面に均一に付着させた(ステップS1)。尚、赤身牛肉100質量部に対するバニリンの配合量は、約0.001質量部(10ppm)であった。
次いで、赤身牛肉を沸騰水中に投入し、5分間ボイルした(ステップS2)。その後、20℃の水中で赤身牛肉を冷却した。冷却後、赤身牛肉30gを、カレーソース150gと一緒にレトルトパウチに充填した。レトルトパウチを密封シールした後、105℃で35分間レトルト加熱(加圧加熱殺菌処理、ステップS3)を行い、レトルトカレーソースを得た。赤身牛肉を含むカレーソース全体100質量部に対するバニリン量は、約0.0001質量部(1ppm)であった。
バニラ香料を使用しなかった点を除いて実施例1と同様にして、レトルトカレーソースを得た。
前記処理溶液として、前記バニラ香料を含まない溶液を使用した。一方で、前記カレーソースとして、カレーソース180gに対して前記バニラ香料0.18gを添加したものを使用した。牛肉を含むカレーソース全体中のバニリン量は、約0.0003(3ppm)質量%である。その他の点は実施例1と同様にして、レトルトカレーソースを得た。
実施例1~2及び比較例1に係るカレーソースについて、肉の旨味及び美味しさを評価した。比較例1のものは、肉の旨味が弱く、美味しくないものであった。これに対して、実施例1~2では、和牛肉のような美味しさがアップしていた。
すなわち、以下の基準で評価した場合に、実施例1のものは「◎」、実施例2のものは「〇」、比較例1のものは「×」となった。また、実施例1のカレーソースを、長期保管(常温12か月相当保管)した後も、評価は「◎」となった。
◎:食感の柔らかさがあり、歩留まりが保持されていて、良質な肉の脂の旨味を感じ、全体として風味や食感に優れる。
〇:食感の柔らかさがあり、歩留まりが保持されていて、◎より弱いが、良質な肉の脂の旨味を感じる。
×:食感、歩留まりが改善されているが、肉の旨味に乏しく、全体として風味や食感に欠ける。
前記バニラ香料を、ベンズアルデヒドを含むアーモンド香料1gに代え、その他の点は実施例1と同様にして、レトルトカレーソースを得た。
ステップS1における、赤身牛肉100質量部に対するベンズアルデヒドの配合量は、約0.009質量部(90ppm)であった。また、ステップS3における、牛肉を含むカレーソース全体100質量部に対するベンズアルデヒドの含有量は、約0.002質量部(20ppm)であった。カレーソースの官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
前記バニラ香料を、短鎖ラクトン(オクタラクトン等)を含むココナッツ香料1gに代え、その他の点は実施例1と同様にして、レトルトカレーソースを得た。
ステップS1における、赤身牛肉100質量部に対する短鎖ラクトンの配合量は約、0.007質量部(70ppm)であった。また、ステップS3における、牛肉を含むカレーソース全体100質量部に対する短鎖ラクトンの含有量は、約0.001質量部(10ppm)であった。カレーソースの官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
(実施例5)
前記バニラ香料を、中長鎖ラクトンを含む油脂香料1gに代え、その他の点は実施例1と同様にして、レトルトカレーソースを得た。
ステップS1における、赤身牛肉100質量部に対する中長鎖ラクトンの配合量は、約0.009質量部(90ppm)であった。また、ステップS3における、牛肉を含むカレーソース全体100質量部に対する中長鎖ラクトンの含有量は、約0.002質量部(20ppm)であった。カレーソースの官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
(実施例6)
肉として、ロース豚肉1kgを一口大にカットしたものを準備した。一方で、重曹6g、馬鈴薯澱粉25g、バニリンを含むバニラ香料1g、及び、水15gを含む処理溶液を調製した。調製した処理溶液をロース豚肉に加えて混合し、豚肉の表面に均一に付着させた(ステップS1)。尚、豚肉100質量部に対するバニリンの配合量は、約0.001質量部(10ppm)であった。
次いで、ロース豚肉を沸騰水中に投入し、5分間ボイルした(ステップS2)。その後、20℃の水中で豚肉を冷却した。冷却後、ロース豚肉30gを、たれ150gと一緒にレトルトパウチに充填した。レトルトパウチを密封シールした後、105℃で35分間レトルト加熱(加圧加熱殺菌処理、ステップS3)を行い、レトルト豚角煮を得た。豚角煮100質量部に対するバニリンの含有量は、約0.0001質量部(1ppm)であった。豚角煮の官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
(実施例7)
前記バニラ香料を、ベンズアルデヒドを含むアーモンド香料1gに代え、その他の点は実施例6と同様にして、レトルト豚角煮を得た。
ステップS1における、ロース豚肉100質量部に対するベンズアルデヒドの配合量は、約0.009質量部(90ppm)であった。また、ステップS3における、レトルト豚角煮100質量部に対するベンズアルデヒドの含有量は、約0.002質量部(20ppm)であった。豚角煮の官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
(実施例8)
前記バニラ香料を、短鎖ラクトン(オクタラクトン等)を含むココナッツ香料1gに代え、その他の点は実施例6と同様にして、レトルト豚角煮を得た。
ステップS1における、ロース豚肉100質量部に対する短鎖ラクトンの配合量は、約0.007質量部(70ppm)であった。また、ステップS3における、豚角煮100質量部に対する短鎖ラクトンの含有量は、約0.001質量部(10ppm)であった。豚角煮の官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
(実施例9)
前記バニラ香料を、中長鎖ラクトンを含む油脂香料1gに代え、その他の点は実施例6と同様にして、レトルト豚角煮を得た。
ステップS1における、ロース豚肉100質量部に対する中長鎖ラクトンの配合量は、約0.009質量部(90ppm)であった。また、ステップS3における、豚角煮100質量部に対する中長鎖ラクトンの含有量は、約0.002質量部(20ppm)であった。豚角煮の官能評価は、前記の基準で「◎」となった。
Claims (3)
- 肉の表面に、特定香気成分、アルカリ性物質及び澱粉を含む処理成分を接触させる工程と、
前記接触させる工程の後に、前記肉を前記澱粉の糊化温度以上の温度で加熱し、前記澱粉による膜を前記肉の表層部に成膜する工程と、
前記成膜する工程の後に、前記肉を密閉状態で加熱処理する工程と、
を備え、
前記特定香気成分が、バニリンであり、
前記接触させる工程が、前記処理成分を水溶液として前記肉の表面に付着させることを含み、前記水溶液中のバニリンの濃度が30~150ppmであり、
前記接触させる工程において、バニリンの使用量が、前記肉100質量部に対して、0.001質量部以上0.002質量部以下であり、
前記成膜する工程が、前記処理成分を接触させた前記肉を、熱水に投入することを含み、成膜の為の加熱温度が80~120℃である、
加熱済み食品の製造方法。 - 前記加熱処理する工程は、前記肉を前記特定香気成分と共に容器に密閉する工程
を含んでいる、請求項1に記載の製造方法。 - 前記肉が、牛肉又は豚肉である、請求項1又は2に記載の製造方法。
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Patent Citations (4)
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|---|---|---|---|---|
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Non-Patent Citations (1)
| Title |
|---|
| 入江 正和,和牛肉における脂肪質と食味性,日本畜産学会報,2025年02月25日,第92巻、第1号,p.1-16 |
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|---|---|
| JP2022183788A (ja) | 2022-12-13 |
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