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JP7852016B2 - 接合用W-Pt-Cu合金 - Google Patents
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JP7852016B2 - 接合用W-Pt-Cu合金 - Google Patents

接合用W-Pt-Cu合金

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本発明は、合金材料に関する。例えば、タングステン部材とタングステン以外の金属部材とを接合する接合材として使用し得る合金材料に関する。
タングステン(W)を含むタングステン部材(以下「W部材」ともいう)は、融点が高く、かつ、熱膨張率が低いという特徴を有し、高温環境での信頼性に優れている。このため、W部材は、ダイバータ、加速器、プラズマ放電装置、高温炉、薄膜形成装置等の高温環境に晒される超高温部品に使用される。一方、タングステンは、希少かつ高価な金属であり、かつ、加工が困難であるため、タングステン以外の金属部材(以下、「異種金属部材」ともいう)と接合された状態で用いられることが多い。例えば、材料コストや放熱性(熱伝導性)などの観点から、接合対象である異種金属部材として銅(Cu)などが用いられる。
W部材と異種金属部材との接合には、例えば、銀(Ag)や銅を含むろう材が用いられる。かかるろう材の一例が特許文献1、2に開示されている。具体的には、特許文献1には、コバルト(Co)を用いて炭化タングステン(WC)を焼結した超硬合金の接合において、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)を含むろう材を使用する技術が開示されている。これによって、超硬合金中のCoがろう材へ拡散することを抑制し、超硬合金の強度低下による破損を防止できる。一方、特許文献2には、アルミナ分散強化銅と被接合金属(例えば、タングステン)とを接合する際に、リン(P)を含有するろう材を使用している。そして、接合時の熱処理温度を、銅の融点よりも低く、リンと銅との共晶反応により低下した銅の融点よりも高い範囲に設定している。これによって、アルミナ分散強化銅と被接合金属とを接合している。
また、ろう付け以外の接合手段として、NDB法(Non Defective Bonding)が挙げられる。このNDB法は、W部材と異種金属部材とを直接接合する技術であり、その一例が非特許文献1、2に開示されている。例えば、非特許文献1では、タングステン部材と銅部材とを接触させた状態で銅部材の溶融・冷却を行う。非特許文献1では、かかる接合手段を実施することによって、W部材の微小な凹凸表面に、溶融した銅部材が入り込み、原子間相互の引力が増大することによって擬似的な金属結合が形成されると予測している。
特許第5385951号 特許第6528257号
J.Plasama Fusion Res. Vol.95, No.8(2019)374-376 スマートプロセス学会誌 第6巻 第5号(2017年9月)
ところで、近年のW部材の用途の広がりに伴い、W部材と異種金属部材とをより好適に接合できる新規な技術が求められている。本発明は、かかる要求に応じてなされたものであり、その主な目的は、タングステン部材と異種金属部材との好適な接合を実現する新規な技術を提供することである。
本発明者は、タングステン部材と異種金属部材とを接合する新規な技術を見出すために種々の実験と検討を行った結果、W部材用の接合材として好適に機能する新規な合金材料を発見した。具体的には、PtとWを含む合金(Pt-W合金)と、銅(Cu)を含むCu源とを接触させた状態で加熱処理を行うと、驚くべきことに、Pt-W合金のPtがCuに移動することを発見した。そして、このCuによるPtの吸収は、CuがPt-W合金の結晶粒界に入り込みながら進むため、Wを主成分とするW相と、PtとCuとを含むPt-Cu相とが混在した三元二相の合金材料(以下「W-Pt-Cu合金」ともいう)が生成された。一般的には、WとCuは互いに混合して合金を形成することはないと考えられており、このような合金は過去に報告されていなかった。本発明者らは、このW-Pt-Cu合金は、Cuをはじめとする異種金属部材とW部材とを良好に接合する新規な接合材になり得ると考え、当該合金材料の性質と生成メカニズムを解析した。その結果、上記W-Pt-Cu合金は、以下に示すメカニズムによって生成されることを見出した。
まず、W-Pt-Cu合金の前駆物質であるPt-W合金は、上述の通り、PtとWを含む合金である。このPt-W合金よりもPt-Cu合金の方が安定しているため、Pt-W合金とCu源とを接触させた結果、Pt-W合金中のPtのCuへの移動が進んだと考えられる。また、Pt-W合金とCuとの界面よりも、Wを主成分とするW相と、PtとCuとを含むPt-Cu相との界面の方が安定していると考えられる。ここで、タングステン部材との接合に目を向けると、W相とPt-Cu相との界面が安定していることは、タングステン部材と合金材料との接合の安定性につながる。接合面では、タングステン部材は、主にPt-Cu相と接合するためである。このように、前駆物質としてPt-W合金を準備し、当該Pt-W合金中のPtをCuに移動させることによって、従来は合金を形成しないと考えられていたWとCuとが混在する合金材料を製造できる。そして、かかる合金材料は、タングステン部材と異種金属部材との好適な接合を実現する新規な接合材になり得る。
ここに開示される製造方法は、上述した知見に基づいてなされたものであり、W相とPt-Cu相とが混在した三元二相の合金材料(W-Pt-Cu合金)を製造する方法である。かかる製造方法は、白金(Pt)とタングステン(W)とを含むPt-W合金の白金(Pt)を、銅(Cu)を含むCu源に移動させることを特徴とする。上述したように、かかる製造方法によって、W-Pt-Cu合金を製造することができる。そして、かかるW-Pt-Cu合金は、W相とPt-Cu相との界面が安定しているためW部材との間で好適な接合性を発揮でき、かつ、Pt-Cu相を有しているため異種金属部材(Cu部材、Pt部材など)との間で好適な接合性を発揮できる。すなわち、ここに開示される技術によると、W部材と異種金属部材との好適な接合を実現することができる。
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、Pt-W合金は、金属間化合物である。かかる金属間化合物のPt-W合金の一例として、PtWが挙げられる。かかるPtWを前駆物質とすることによって、W相とPt-Cu相とが微細に混在したW-Pt-Cu合金を生成できる。
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、Pt-W合金とCu源とを接触させる。本発明者の検討によると、Pt-W合金とCu源とを直接接触させることによって、Pt-W合金から銅(Cu)への白金(Pt)の移動が生じ、W-Pt-Cu合金が生成される。
また、ここに開示される製造方法の好適な一態様では、接触させたPt-W合金とCu源とを加熱することが好ましい。これによって、Pt-W合金から銅(Cu)への白金(Pt)の移動が促進されるため、W-Pt-Cu合金を効率よく生成することができる。
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、白金(Pt)を含むPt源と、タングステン(W)を含むW源とを接触させた状態で加熱処理を行うことによってPt-W合金を生成するPt-W合金生成工程と、Pt-W合金とCu源とを接触させた状態で加熱処理を行うことによって、Pt-W合金中の白金(Pt)をCuに移動させてW-Pt-Cu合金を生成するW-Pt-Cu合金生成工程とを備えている。
上述の通り、W-Pt-Cu合金を生成するには、前駆物質としてPt-W合金を使用する必要がある。かかるPt-W合金は、Pt源とW源とを接触させた状態で加熱処理を行うことによって効率よく生成できる。また、本発明者らの検討によると、Pt-W合金とCu源とを接触させるのみでも、Pt-W合金からCuへのPtの移動(拡散)が生じて、W-Pt-Cu合金が生成される。しかし、Pt-W合金とCu源との接触だけで充分なW-Pt-Cu合金を生成するには非常に長い時間が掛かる。このため、本態様では、Pt-W合金とCu源とを接触させた状態で加熱処理を行い、Pt-W合金からCuへのPtの移動を促進している。以上のように、本態様の製造方法によると、W-Pt-Cu合金を効率よく生成できる。
なお、Pt-W合金生成工程を実施する態様では、当該Pt-W合金生成工程における加熱温度は、800℃以上1200℃以下であることが好ましい。また、Pt-W合金生成工程の加熱時間は、0.5時間以上3時間以下であることが好ましい。このようにPt-W合金生成工程の条件(加熱温度、加熱時間)を設定することによって、Pt-W合金を効率よく生成することができるため、W-Pt-Cu合金の生産性を向上できる。
また、W-Pt-Cu合金生成工程を実施する態様では、W-Pt-Cu合金生成工程における加熱温度は、800℃以上1200℃以下であることが好ましい。また、W-Pt-Cu合金生成工程における加熱時間は、0.5時間以上3時間以下であることが好ましい。このようにW-Pt-Cu合金生成工程の条件(加熱温度、加熱時間)を設定することによって、Pt-W合金からCuへのPtの移動を適切に生じさせることができるため、W-Pt-Cu合金の生産性を向上できる。
ここに開示される製造方法の他の好適な態様では、タングステン(W)を含むW源とCu源との間に、白金(Pt)を含むPt源を介在させた状態で加熱処理を行うことによって、W源とPt源との境界にPt-W合金を生成すると共に、当該Pt-W合金中の白金(Pt)をCuに移動させてW-Pt-Cu合金を生成する。
上述の態様では、Pt-W合金生成工程と、W-Pt-Cu合金生成工程を含む2回以上の加熱処理を実施することによってW-Pt-Cu合金を製造している。しかしながら、ここに開示される製造方法は、上述の態様に限定されない。例えば、W源とCu源との間にPt源を介在させた状態で、まとめて加熱処理を行った場合でもW-Pt-Cu合金を製造できることが実験によって確認されている。具体的には、本態様のように、W源とPt源とCu源とをまとめて加熱すると、W源とPt源との境界にPt-W合金が生成される。そして、加熱処理がさらに進むと、Pt-W合金とCu(Pt-Cu合金を含む)とが微細に入り混じりながらPt-W合金のPtがCuに移動する。この結果、W源とCu源との間に、W相とPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金が生成される。
なお、W源とPt源とCu源とをまとめて加熱する態様において、加熱処理の温度は、800℃以上1200℃以下が好ましい。また、加熱処理の時間は、0.5時間以上3時間以下が好ましい。このように加熱条件を設定することによって、Pt-W合金の生成と、当該Pt-W合金からCuへのPtの移動を適切に生じさせ、W-Pt-Cu合金を効率よく製造できる。
さらに、W源とPt源とCu源とをまとめて加熱する態様では、加熱処理において、前記W源と前記Cu源とを挟み込むように0.5g/mm以上5g/mm以下の圧力で加圧することが好ましい。これによって、各々の材料を密着させることができるため、W-Pt-Cu合金の生産効率をさらに向上させることができる。
また、ここに開示される製造方法の他の一態様では、Pt-W合金とCu源との間に中間金属部材を介在させる。上述した各態様では、Pt-W合金とCu源とを直接接触させているが、ここに開示される製造方法は、このような態様に限定されない。本発明者が実施した実験によると、Pt-W合金とCu源との間に、他の金属部材(中間金属部材)が介在している場合でも、Pt-W合金から銅(Cu)への白金(Pt)の移動が生じ、W-Pt-Cu合金が生成される。
なお、上述した中間金属部材を介在させる態様においても、接触させたPt-W合金と、中間金属部材と、Cu源とを加熱することが好ましい。これによって、Pt-W合金からCuへのPtの移動が促進されるため、W-Pt-Cu合金の生成効率が向上する。
さらに、上述した中間金属部材を介在させる態様において、中間金属部材は、少なくともPtを含むことが好ましい。これによって、Pt-W合金からCuへのPtの移動がさらに好適に生じるため、W-Pt-Cu合金の生成効率をさらに向上できる。
次に、ここに開示される技術の他の側面として合金材料が提供される。ここに開示される合金材料は、タングステン(W)を主成分とするW相と、白金(Pt)と銅(Cu)とを有するPt-Cu相とが混在することを特徴とする。
かかる合金材料は、W相とPt-Cu相との界面が安定しているため、W部材に対して好適な接合性を発揮できる。一方で、この合金材料にはPt-Cu相が混在しているため、異種金属部材(Cu部材、Pt部材など)に対しても好適な接合性を発揮できる。このため、ここに開示される合金材料は、W部材と異種金属部材とを接合する接合材として使用できる。また、この合金材料は、高融点金属であるWを含んでいるため、従来一般のろう材と比べて優れた耐熱性を発揮することが期待される。さらに、この合金材料は、W部材に近い熱膨張率を有していることが予想されるため、膨張収縮量の差に起因する応力による接合部の劣化を抑制することも期待できる。
また、ここに開示される合金材料の好適な一態様では、Pt-Cu相からなるマトリックス中に複数のW相が存在していることを特徴とする。このように、合金材料の組織全体においてW相とPt-Cu相とが混在している構造をとることによって、タングステン部材と異種金属部材との両方に対してより好適な接合性を発揮できる。
また、ここに開示される合金材料の好適な一態様では、SEM観察において、面積0.001μm~1μm(好適には0.001μm~0.1μm)のW相が0.2ヶ所/μm以上の密度で存在するW相存在領域を有しており、W相存在領域が所定の方向に10μm以上存在する。このように、一定以上の密度でW相が存在するW相存在領域が10μm以上の長さで存在している合金材料は、W部材に対してより好適な接合性を発揮できる。
ここに開示される合金材料の好適な一態様では、W相に存在する金属元素の総数を100atm%としたとき、W相に存在するタングステン原子の原子数が75atm%以上であることを特徴とする。これによって、タングステン部材に対して高い接合性を発揮する合金材料を得ることができる。
また、ここに開示される技術の他の側面として、接合体が提供される。かかる接合体は、上記W-Pt-Cu合金材料を介して、タングステンを含む第1部材と、第2部材とが接合されていることを特徴とする。上記した通り、W-Pt-Cu合金材料は、タングステンを含む金属部材(W部材)に対する接合材として好適に使用できる。
ここに開示される接合体の好適な一態様では、第1部材は、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、銅タングステン複合材料、銀タングステン複合材料からなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする。ここに開示される合金材料は、上述したようなW系材料からなる第1部材に対して好適な接合性を発揮できる。
ここに開示される接合体の好適な一態様では、第2部材は、銅、白金、白金-銅合金、白金-タングステン合金、銅合金からなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする。ここに開示される合金材料は、上述したようなCu、Pt、Wの少なくとも一種を含む異種金属部材に対して特に好適な接合性を発揮できる。また、ここに開示される接合体の第2部材は、上述したような異種金属部材に限定されず、第1部材と同じタングステン部材であってもよい。すなわち、ここに開示されるW-Pt-Cu合金材料は、タングステン部材と異種金属部材の接合だけでなく、タングステン部材同士の接合にも使用できる。
一実施形態に係る合金材料を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係る接合体を模式的に示す断面図である。 解析用試料A-1の断面SEM像である。 (a)は解析用試料A-1のEDX分析に基づいたWの元素マップであり、(b)はPtの元素マップである。 (a)は図3(b)中の領域αにおけるEDXスペクトルであり、(b)は領域βにおけるEDXスペクトルである。 図3(b)中の線分X上におけるW、Ptの濃度分布を示すグラフである。 (a)は図3(b)中の領域αにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(b)は領域βにおける電子線回折の結果を示す画像である。 (a)および(b)はEBSDを用いて解析用試料A-1の結晶構造を解析した画像であり、(c)は(b)の画像をタングステンとPtWに分けて彩色した画像である。 (a)は解析用試料A-1のW板における粒度分布であり、(b)はPt-W合金における粒度分布である。 (a)および(b)は解析用試料A-2の断面SEM像である。 (a)はEBSDを用いて解析用試料A-2の結晶構造を解析した画像であり、(b)は(a)の画像をW相とPt-Cu相とに分けて彩色した画像である。また、(c)は、(b)中のPt-Cu相の結晶粒の結晶方位を示す画像であり、(d)は、(b)中のW相の結晶粒の結晶方位を示す画像である。 (a)は解析用試料A-2のPt-Cu相における粒度分布であり、(b)はW相における粒度分布である。 (a)はサンプル1の断面SEM像(250倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル1の断面SEM像(1000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル1の断面SEM像(10000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル1の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 サンプル1に対する元素分析を実施した領域を示すSEM画像である。 サンプル1のSEM画像であり、(a)はCu部材とW部材との境界を示す画像であり、(b)および(c)は境界部分をさらに拡大した画像である。 サンプル1のHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図19中のW-Pt-Cu合金におけるEDXスペクトルである。 サンプル1のHAADF-STEM画像におけるW相のEDXスペクトルである。 サンプル1のHAADF-STEM画像におけるPt-Cu相のEDXスペクトルである。 (a)はサンプル2の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル2の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 図23(b)中の線分X1上におけるW、Pt、Cuの濃度分布を示すグラフである。なお、図中の(a)はPtの分析結果を示し、(b)はWの分析結果を示し、(c)はCuの分析結果を示す。 (a)はサンプル3の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル3の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル3の断面SEM像(200000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル4の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル4のPt-Cu層における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル4のPt-W層における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル4のW-Pt-Cu層における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル4のタングステン部材における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 図29(a)中の線分X2上におけるW、Pt、Cuの濃度分布を示すグラフである。なお、図中の(a)はPtの分析結果を示し、(b)はWの分析結果を示し、(c)はCuの分析結果を示す。 (a)はサンプル4の反射電子像(5000倍)であり、(b)は(a)中の領域αの拡大図(20000倍)であり、(c)は(a)中の領域βの拡大図(20000倍)である。 (a)はサンプル4の領域αにおける断面SEM像(20000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたCu,Pt,Wの元素マップである。 (a)はサンプル4の領域βにおける断面SEM像(20000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたCu,Pt,Wの元素マップである。 サンプル4のHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図38中の線分X3上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。 サンプル4のW板と、W-Pt-Cu層のW相と、W-Pt-Cu層のPt-Cu相との界面におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図40中の線分X4上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。 図40中の線分X4上におけるOとFeの濃度分布を示すグラフである。 (a)は図38(a)中の領域αにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(b)は領域βにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(c)は領域γにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(d)は領域δにおける電子線回折の結果を示す画像である。 サンプル4のW板におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 サンプル4のPt-W層におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 サンプル4のPt-Cu層におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図44中のPt-Cu領域におけるEDXスペクトルである。 図40中のPt-Cu領域におけるEDXスペクトルである。 図45中のPt-Cu領域におけるEDXスペクトルである。 図46中のPt-Cu領域におけるEDXスペクトルである。 (a)はサンプル5の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル5の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル6の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル6の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル7の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル7のPt-W層の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル7のW-Pt-Cu層の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル7のW板の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル7のW板とW-Pt-Cu層との界面における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル8のCu未塗布部における断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル8のCu未塗布部における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル8のCu塗布部における断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル8のCu塗布部に形成されたW-Pt-Cu層の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル8のCu塗布部に形成されたW-Pt-Cu層の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル8のCu塗布部に形成されたW-Pt-Cu層とW板との境界における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル9の断面SEM像(250倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)はサンプル9の断面SEM像(1000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)はサンプル9の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)はサンプル9の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)はサンプル10の断面SEM像(5000倍)であり、(c)はEDX分析に基づいたWの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。 サンプル11の断面SEM像(5000倍)である。 サンプル11の断面SEM像(50000倍)である。 (a)はサンプル12の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(e)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Pt,Auの元素マップである。 (a)はサンプル12の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(e)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Pt,Auの元素マップである。
以下、ここに開示される技術の一実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において、「A~B(A、Bは数値)」と記載した場合、「A以上B以下」を意味するものとする。
1.合金材料
図1は、本実施形態に係る合金材料を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る合金材料(W-Pt-Cu合金)10は、W相12と、Pt-Cu相14とが混在した三元二相の合金材料である(図1参照)。以下、本実施形態に係る合金材料10に含まれる各相について説明する。
(1)W相
W相12は、タングステンを主成分とする相である。本明細書において「タングステンを主成分とする」とは、タングステン以外の元素が意図的に含まれていないことを指す。したがって、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物(W以外の金属元素)を副成分として含む相は、本明細書における「W相」の概念に包含される。例えば、二相合金における一方の相における金属元素の総数を100atm%としたときに、当該一方の相におけるW原子の原子数が75atm%以上であれば、「タングステンを主成分としたW相が形成されている」ということができる。なお、本実施形態に係る合金材料10とW部材との接合性とを向上させるという観点から、W相におけるW原子の原子数は、77.5atm%以上が好ましく、80atm%以上がより好ましく、82.5atm%以上が特に好ましい。なお、W相におけるW原子の原子数の上限は、特に限定されず、99.5atm%以下であってもよく、97.5atm%以下であってもよく、95atm%以下であってもよく、92.5atm%以下であってもよく、90atm%以下であってもよい。なお、本明細書における「原子数」は、合金材料の断面SEM画像に対してエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を実施して得られた元素分析に基づいた数値である。
なお、W相12に含まれ得る不可避的不純物としては、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、トリウム(Th)などが挙げられる。また、W相12におけるタングステンは、金属単体の状態で存在していてもよいし、化合物(酸化物等)や、他の金属元素との合金の状態で存在していてもよい。
(2)Pt-Cu相
Pt-Cu相14は、白金(Pt)と銅(Cu)を有する相である。かかるPt-Cu相14は、PtとCuを含んでいればよく、PtやCu以外の第3の金属元素を含むことを排除する意図はない。さらに、Pt-Cu相14は、PtとCuが主成分である必要もなく、上述の第3の金属元素が主成分であってもよい。詳しくは後述するが、合金材料10を製造する際に使用する材料や製造方法によっては、PtとCu以外の第3の金属元素をPt-Cu相14の主成分にすることもできる。具体的には、Pt-Cu相における金属原子の総数を100atm%としたときのPt原子とCu原子の合計原子数は、20atm%以上であってもよく、30atm%以上であってもよく、40atm%以上であってもよい。なお、銅部材との接合性などを考慮すると、上記Pt原子とCu原子の合計原子数は、50atm%以上が好ましく、65atm%以上がより好ましく、75atm%以上がさらに好ましく、85atm%以上が特に好ましい。一方、Pt-Cu相におけるPt原子とCu原子の合計原子数の上限は、特に限定されず、99.5atm%以下であってもよく、99atm%以下であってもよく、97.5atm%以下であってもよく、95atm%以下であってもよい。なお、Pt-Cu相14に含まれ得る第3の金属元素としては、W、Mo、Fe、Pd、Ir、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなどが挙げられる。これらの第3の金属元素の中でも、WよりもCuとの間で合金を生成しやすい金属元素(例えば、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなど)は、Pt-Cu相14の主成分になり得る。
また、Pt-Cu相に存在するPtとCuの各々の原子数についても特に限定されない。例えば、Pt-Cu相に存在するPtの原子数は、0.1atm%以上であってもよく、0.5atm%以上であってもよく、1atm%以上であってもよい。一方、Pt原子の原子数の上限は、25atm%以下であってもよく、22.5atm%以下であってもよく、20atm%以下であってもよく、17.5atm%以下であってもよい。また、Pt-Cu相におけるCuの原子数は、15atm%以上であってもよく、20atm%以上であってもよく、30atm%以上であってもよく、40atm%以上であってもよい。なお、銅部材との接合性などを考慮すると、Cu原子の原子数は、50atm%以上が好ましく、65atm%以上がより好ましく、75atm%以上がさらに好ましく、80atm%以上が特に好ましい。一方、Cu原子の原子数の上限は、85atm%以下であってもよく、82.5atm%以下であってもよく、80atm%以下であってもよい。なお、上述した通り、Pt-Cu相に存在するPtとCuの各々の原子数は、特に限定されない。例えば、Cu製の部材に合金材料10を接触させることによって、当該Cu製の部材にPtを拡散させて、合金材料10中のPtの原子数を減少させることができる。同様に、Cuを拡散させ得る部材(例えば、Au、Ni)を合金材料10と接触させることによって、合金材料10中のCuの原子数を減少させることができる。
(3)合金材料の組織
次に、本実施形態に係る合金材料10の組織について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る合金材料10は、上述したW相12とPt-Cu相14とが混在した三元二相の合金である。すなわち、本実施形態に係る合金材料10は、金属組織の全体でW相12とPt-Cu相14とが混ざり合った状態で存在している。典型的には、この合金材料10では、Pt-Cu相14からなるマトリックスが形成されており、当該Pt-Cu相14のマトリックス中に複数のW相12が存在している。このように、本実施形態に係る合金材料10では、W相12とPt-Cu相14との界面が安定しているためW部材に対して高い接合性を発揮できる一方で、Pt-Cu相14を有しているため異種金属部材(Cu部材、Pt部材など)との間で好適な接合性を発揮できる。なお、ここに開示される合金材料(W-Pt-Cu合金)の一例として、長尺な島状のW相が厚み方向に延びるように複数点在し、当該複数のW相の間を充填するようにPt-Cu相が形成された形態が挙げられる(例えば、図16(a)、図19等参照)。但し、W相の形状は、上述した長尺な島状に限定されず、略球形(例えば、図52(a)参照)であってもよい。
なお、ここに開示される合金材料は、当該合金材料の全体に亘って複数のW相が点在する形態に限定されない。例えば、Pt-Cu相の特定の領域において、一定以上の密度でW相が存在していてもよい(図73(a)参照)。本明細書では、当該一定以上の密度のW相が存在する領域を「W相存在領域」と称する。より具体的には、本明細書における「W相存在領域」は、SEM観察において、面積が0.001μm~1μm(好ましくは0.001μm~0.1μm)のW相が、1μmの範囲のPt-Cu相において0.2箇所/μm以上の密度で存在している領域である。そして、このようなW相存在領域が所定の方向において10μm以上存在することによって、W部材と異種金属部材との両方に対して好適な接合性を発揮できる。なお、上述した「W相存在領域が存在する方向」は、特に限定されない。すなわち、W相が一定以上密集したW相存在領域が、少なくとも一つの方向(例えば、厚み方向、幅方向、奥行方向の何れか)において10μm以上存在していれば、タングステン部材と異種金属部材の両方に対して好適な接合性を発揮する合金材料を得ることができる。なお、上述した通り、W相存在領域におけるW相の密度は、0.2箇所/μmが適切である。但し、W部材との接合性を考慮すると、W相存在領域におけるW相の密度は、0.3箇所/μm以上がより適切であり、0.5箇所/μm以上がさらに適切である。また、W部材との接合性をさらに向上させるという観点から、W相存在領域におけるW相の密度は、0.5箇所/μm以上が好ましく、1箇所/μm以上がより好ましく、1.5箇所/μm以上がさらに好ましく、2箇所/μm以上が特に好ましい。一方、異種金属部材(Cu部材等)との接合性を考慮すると、W相存在領域におけるW相の密度は、100箇所/μm以下が適当であり、50箇所/μm以下が好ましく、10箇所/μm以下がより好ましく、7.5箇所/μm以下がさらに好ましく、5箇所/μm以下が特に好ましく、例えば4箇所/μm以下になり得る。
また、各々のW相の平均面積は、1μm以下が好ましく、0.75μm以下がより好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.25μm以下が特に好ましい。このような微小なW相が、Pt-Cu相のマトリックス中に存在することによって、タングステン部材と異種金属部材との両方に対して、より好適な接合性を発揮できる。また、W相の平均面積の下限値は、特に限定されず、0.001μm以上であってもよく、0.005μm以上であってもよく、0.01μm以上であってもよく、0.05μm以上であってもよい。なお、「W相の平均面積」は、SEM観察において確認されたW相を50個以上(好適には85個)抽出し、当該抽出した複数のW相の面積の平均値を求めることによって得ることができる。
また、W相を構成する結晶粒は、微細である方が好ましい。一例として、W相を構成する結晶粒のD50粒子径は、1000nm以下が好ましく、900nm以下がより好ましく、800nm以下がさらに好ましく、700nm以下が特に好ましい。一方、W相の結晶粒のD50粒子径の下限値は、特に限定されず、100nm以上であってもよく、200nm以上であってもよく、300nm以上であってもよく、400nm以上であってもよい。一方、Pt-Cu相を構成する結晶粒も、微細である方が好ましい。例えば、Pt-Cu相を構成する結晶粒のD50粒子径は、800nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましく、400nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。一方、Pt-Cu相の結晶粒のD50粒子径の下限値は、特に限定されず、20nm以上であってもよく、40nm以上であってもよく、60nm以上であってもよく、80nm以上であってもよい。このような微細な結晶粒によってW相とPt-Cu相の各々が構成されていることによって、W相とPt-Cu相とを好適に混在させることができるため、W部材と異種金属部材との接合性をより高めることができる。W相とPt-Cu相の各々の結晶粒の大きさを相対的に比較すると、W相が相対的に大きな結晶粒によって構成され、Pt-Cu相が相対的に微少な結晶粒によって構成されている方が好ましい。なお、本明細書における「結晶粒のD50粒子径」は、個数基準の結晶粒の粒度分布において、微粒子側からの累積50%に相当することをいう。また、「結晶粒の粒子径」は、合金材料のSEM画像に対して、電子線後方散乱回折法(EBSD:Electron backscatter diffraction)を用いて結晶解析を行うことによって得られた「結晶粒の円相当径」である。
2.接合体
次に、上述した合金材料10を用いて、2種類の部材を接合した接合体について説明する。図2は、本実施形態に係る接合体を模式的に示す断面図である。かかる接合体100では、上述した合金材料10を介して、タングステンを含む第1部材(W部材)20と第2部材30とが接合されている。上述した通り、本実施形態に係る合金材料10では、W相とPt-Cu相との界面が安定しているため、W部材20に対して好適な接合性を発揮できる。一方で、かかる合金材料10は、金属組織の全体にPt-Cu相14が存在しているため、Pt-Cu合金と好適に接合される異種金属部材とも好適に接合する。このため、ここに開示される合金材料10は、第1部材(W部材)20と第2部材30とを接合する接合材として機能する。
さらに、この合金材料10は、高融点金属であるWを含んでいるため、従来一般のろう材と比べて優れた耐熱性を発揮できる。さらに、この合金材料10は、W部材20に近い熱膨張率を有しているため、膨張収縮量の差に起因する大きな応力が加わることによる接合部分(合金材料10)の破損も抑制できる。従って、この合金材料10によって接合された接合体100は、ダイバータ、加速器、プラズマ放電装置、高温炉、薄膜形成装置等の超高温部品への利用が特に期待される。
なお、第1部材(W部材)20は、Wを含む固形の金属部材であれば、特に限定されない。かかるW部材20の素材の一例として、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、銅-タングステン合金、銀-タングステン合金などが挙げられる。また、本明細書における第1部材(すなわち、W部材)は、上述のタングステン材料のみからなる部材に限定されず、タングステン材料と他の材料とが複合した複合材料であってもよい。ここで、タングステン材料と複合され得る材料としては、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、トリウム(Th)等の各種金属材料、トリア(ThO)、イットリア等の高融点セラミックなどが挙げられる。なお、説明の便宜上、図2では板状のW部材20を記載しているが、W部材の形状は特に限定されない。例えば、W部材の形状は、筒状、柱状などの一般的な金属部材の形状を特に制限なく採用できる。
一方、第2部材30は、合金材料(W-Pt-Cu合金)10と好適に接合される部材であれば特に限定されず、種々の部材を特に制限なく使用できる。かかる第2部材30の好適な一例として、タングステン以外の金属元素を主成分とする異種金属部材が挙げられる。かかる異種金属部材の一例として、CuやPtを含む金属部材が挙げられる。このような異種金属部材の具体例として、Cu部材、Pt部材、Pt-Cu合金部材などが挙げられる。また、異種金属部材は、CuやPtに対して良好な接合性を有する金属部材(Ni部材、Co部材など)であってもよい。なお、第2部材30の素材は、合金材料10のPt-Cu相14の主成分に応じて適宜変更でき、上述したCuやPtに対して良好な接合性を有する金属部材にも限定されない。例えば、後述する合金材料の製造において、PtやCu以外の第3の金属元素(例えばAu、Ni、Znなど)をCu源に混入させることによって、当該第3の金属元素を含むPt-Cu相14を形成できる。このような第3の金属元素を含むPt-Cu相14を形成した場合には、当該第3の金属元素と接合相性のよい金属部材を第2部材30に使用できる。一例として、Auを含むPt-Cu相14を形成した場合には、上記Cu部材、Pt部材、Pt-Cu合金部材の他に、Au部材、Ag部材などを接合対象とすることができる。加えて、本明細書における「異種金属部材」とは、タングステン以外の金属元素を主成分とした金属部材を意図するものであり、副成分としてWを含む金属部材を排除する意図はない。すなわち、異種金属部材は、タングステンを含む合金であってもよい。
さらに、第2部材30は、上述したような異種金属部材に限定されない。例えば、ここに開示される合金材料10は、W部材と異種金属部材との接合に限定されず、W部材同士を接合する接合材として使用することもできる。すなわち、第2部材30は、上述の第1部材20と同種のW部材(一例として、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン等、および、これらを含む複合材料)であってもよい。一般的に、W部材は、融点が高いため、直接溶接することが困難である。しかし、ここに開示される合金材料を使用すれば、W部材同士を容易に接合できる。さらに、第2部材30は、金属部材でなくてもよい。例えば、第2部材30は、トリア(ThO)、イットリア等のセラミックや、ガラスなどであってもよい。ここに開示される合金材料10は、このような非金属部材に対しても好適な接合性を発揮できる。
3.合金材料の製造方法
次に、ここに開示される合金材料を製造する方法について説明する。ここに開示される合金材料は、PtとWとを含むPt-W合金と、銅(Cu)を含むCu源を前駆物質として準備し、Pt-W合金からCu源にPtを移動させることによって製造できる。一例として、かかるPt-W合金からCu源へのPtの移動は、当該Pt-W合金とCu源とを接触させることによって生じる。具体的には、Pt-W合金とCu源とを接触させると、Pt-W合金からCu源にPtが拡散(移動)する。このとき、Pt-W合金の結晶粒とCuとの粒界においてPtの拡散が生じやすいため、Pt-W合金の結晶粒とCuとが微細に入り混じりながらPtの拡散が進む。この結果、PtとCuとを含むPt-Cu相と、Pt-W合金から脱Ptが進んだ後のW相とが混在した三元二相の合金材料(W-Pt-Cu合金)が生成される。
ここで、W-Pt-Cu合金を製造するには、Pt-W合金中のPtをCuに移動させることができればよく、具体的な手順は特に限定されない。すなわち、ここに開示される合金材料の製造方法は、具体的な手順(工程)が異なる複数の製造方法を包含する。以下、ここに開示される製造方法の一例(第1の実施形態)を説明する。
(1)第1の実施形態
本実施形態に係る製造方法は、Pt-W合金生成工程と、W-Pt-Cu合金生成工程とを備えている。以下、各々の工程について説明する。
(a)Pt-W合金生成工程
本工程では、白金(Pt)を含むPt源と、タングステン(W)を含むW源とを接触させた状態で加熱処理を行う。これによって、W-Pt-Cu合金の前駆物質であるPt-W合金を容易に生成できる。なお、本工程において生成されるPt-W合金は、PtとWを含んでいれば特に限定されない。かかるPt-W合金の一例として、PtとWとを所定の整数比で含む金属間化合物(例えば、PtW)が挙げられる。この種の金属間化合物は、結晶粒が非常に微細であるため、W-Pt-Cu合金の前駆物質として使用することによって、W相とPt-Cu相とが微細に混在した合金材料を生成できる。具体的には、Pt-W合金の結晶粒のD50粒子径は、2000nm以下が適当であり、1500nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。一方、Pt-W合金の結晶粒のD50粒子径の下限値は、特に限定されず、40nm以上であってもよく、60nm以上であってもよく、80nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。
なお、本工程で使用するW源は、W元素を含む材料であればよく、詳細な成分や形態は特に限定されない。かかるW源の一例として、タングステン粒子を含む粉体材料、タングステンを含む化合物の固体又は溶液、タングステンを含む固形の金属部材などが挙げられる。かかるW源の素材には、上述した第1部材(W部材)20と同種の材料が挙げられるため重複した説明を省略する。また、詳しくは後述するが、ここに開示される製造方法によると、合金材料10(図1参照)のみを単独で製造することもできるし、W部材20に付着した状態の合金材料10(図2参照)を製造することもできる。ここに開示される製造方法を限定することを意図したものではないが、合金材料10のみを単独で製造する場合には、厚みが50μm以下のタングステン薄膜をW源として使用することが好ましい。これによって、W源の全てが合金材料10の形成に使用されるため、タングステン部材が付着していない単独の合金材料10を形成できる。かかるタングステン薄膜は、例えば、化学蒸着や物理蒸着などによって形成できる。なお、単独の合金材料10をより確実に形成するという観点から、タングステン薄膜の厚みは、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましい。また、Wの不足によるPt-W合金の形成不良を防止するという観点から、タングステン薄膜の厚みの下限値は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましく、1μm以上が特に好ましい。
一方、Pt源は、Pt元素を含む材料であればよく、詳細な成分や形態は特に限定されない。かかるPt源の一例として、所定の溶剤にPt粉末を分散させたPtペーストが挙げられる。このようなPtペーストをW源の表面に塗布した後に加熱処理を行うことによってPt-W合金を容易に生成できる。かかるPtペーストは、Pt粒子を含んでいる点を除いて特に限定されず、ここに開示される技術の効果を阻害しない限り、従来公知のPtペーストを使用できる。一例として、ペースト中のPt粒子の平均粒子径は、0.01μm~10μmが好ましく、0.05μm~5μmがより好ましく、0.1μm~1.0μmが特に好ましく、例えば0.5μmである。なお、本明細書における「平均粒子径」は、SEM観察に基づいて測定した複数(例えば100個)の粒子の粒子径の平均値である。また、Ptペーストの総体積を100vol%としたときのPt粒子の含有量(体積比)は、1vol%以上が好ましく、2.5vol%以上がより好ましく、5vol%以上がさらに好ましく、7.5vol%以上が特に好ましい。これによって、Ptの不足によるPt-W合金の形成不良を防止できる。一方、Ptペーストの粘土上昇を抑制して作業性を向上させるという観点から、Pt粒子の含有量(体積比)の上限は、20vol%以下が好ましく、17.5vol%以下がより好ましく、15vol%以下がさらに好ましく、12.5vol%以下が特に好ましい。なお、Ptペーストの総重量を100wt%としたときのPt粒子の含有量(重量比)は、50wt%以上が好ましく、55wt%以上がより好ましく、60wt%以上がさらに好ましく、65wt%以上が特に好ましい。一方、Pt粒子の含有量(重量比)の上限は、90wt%以下が好ましく、85wt%以下がより好ましく、80wt%以下がさらに好ましく、75wt%以下が特に好ましい。なお、Pt粒子を除くPtペーストの成分(溶剤、バインダ、分散剤など)は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて、従来公知の成分を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を特徴付けるものではないため詳細な説明を省略する。
また、Ptの不足によるPt-W合金の形成不良を防止するという観点から、本工程におけるPtペーストの塗布厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、40μm以上が特に好ましい。一方、Ptペーストの塗布厚みの上限は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、60μm以下が特に好ましい。これによって、未反応のPtがPt-W合金の表面に生じ、後述のW-Pt-Cu合金生成工程におけるPt-W合金とCu源との反応を妨げることを防止できる。なお、Ptペーストの塗布厚みは、ペースト塗布時に使用するメタルマスクの厚みを調節することによって所望の厚みに容易に制御することができる。
また、本工程における加熱温度は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、Pt-W合金の生成効率を向上させることができる。一方、本工程における加熱温度の上限は、1250℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましく、1150℃以下がさらに好ましく、1100℃以下が特に好ましい。また、本工程における加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。これによって、適切にPt-W合金を形成できる。一方、製造効率の観点から、本工程における加熱時間の上限は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下が特に好ましい。なお、本明細書における「加熱温度」は加熱処理における最高温度を指し、「加熱時間」は当該最高温度を維持する時間を指す。また、加熱処理中の雰囲気は、非酸化雰囲気(中性雰囲気、還元雰囲気)に設定することが好ましい。還元ガスの一例として、水素(H)ガス、炭化水素(CH、Cなど)ガスなどが挙げられる。また、中性ガスの一例として、窒素(N)ガスなどが挙げられる。また、これらの還元ガスと中性ガスとを混合したものを使用することもできる。例えば、水素(H)ガスを1%~5%(例えば3%)の濃度で窒素(N)ガスと混合した混合ガスなどを用いることができる。
なお、加熱処理中の急激な体積変化に伴う破損(クラック等)を防止するという観点から、Pt-W合金の形成のための加熱処理の前に、Ptペーストを乾燥させる乾燥処理を実施することが好ましい。かかる乾燥処理における加熱温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。一方、上記クラックの防止という観点から、乾燥処理における加熱温度の上限は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。また、乾燥時間は10分以上60分以下(例えば30分程度)が好ましい。
また、バインダ等の有機成分をPtペーストに添加している場合には、Pt-W合金を生成するための加熱処理の前に、有機成分の除去を目的とした予備加熱処理(脱バインダ処理)を実施してもよい。なお、この脱バインダ処理によってW源が酸化して酸化タングステンが生じた場合、Pt-W合金の生成が阻害される可能性がある。このため、Ptペーストに添加する有機成分(バインダ等)は、非酸化雰囲気で充分に加熱分解できる樹脂材料(例えば、アクリル樹脂など)が好ましい。なお、有機成分を確実に除去するという観点から、脱バインダ処理における加熱温度は、145℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、155℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。一方、脱バインダ処理中にPt-W合金の生成が進行することを防止するため、脱バインダ処理における加熱温度の上限は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、350℃以下が特に好ましい。また、脱バインダ処理における加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。これによって、有機成分を確実に除去できる。一方、製造効率の観点から、脱バインダ処理における加熱時間の上限は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましく、2時間以下が特に好ましい。
(b)W-Pt-Cu合金生成工程
本工程では、Cuを主成分として含む材料であるCu源とPt-W合金とを接触させた状態で加熱処理を行う。これによって、Pt-W合金中からCuへのPtの移動(典型的には拡散)が急速に進行する。このとき、Pt-W合金の結晶粒とCuとが微細に入り混じりながらPtの拡散が進む。一方、Pt-W合金中のWは、Cuとほとんど固溶しない。このため、Pt-W合金からCuへの脱Ptが進み、Wが主成分であるW相が形成される。一方、CuにPtが供給されることによって、W相の周囲に充填されるようにPt-Cu相が形成される。このように、本実施形態に係る製造方法によると、本来であれば合金を形成しないWとCuとが混在した三元二相の合金材料(W-Pt-Cu合金)を製造できる。
なお、上述した通り、Cu源とPt-W合金とを接触させれば、Pt-W合金からCuへのPtの移動(拡散)が生じるため、加熱処理等を行わなくても、W-Pt-Cu合金を生成することができる。しかし、本実施形態のように加熱処理を伴うW-Pt-Cu合金生成工程を実施すると、CuへのPtの拡散が急速に進行するため、W-Pt-Cu合金の製造効率を大幅に向上させることができる。なお、かかる加熱処理における最高温度は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、Ptの拡散をより好適に促進してW-Pt-Cu合金を効率よく形成できる。一方、最高焼成温度の上限は、1500℃以下が好ましく、1400℃以下がより好ましく、1300℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。また、本工程における焼成時間は、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。これによって、W相とPt-Cu相とが十分に混在したW-Pt-Cu合金を形成できる。一方、製造効率の観点から、本工程における焼成時間の上限は、3時間以下が好ましく、2.5時間以下がより好ましい。
また、本工程における焼成雰囲気は、非酸化雰囲気(例えば、中性雰囲気、不活性雰囲気、還元雰囲気)に設定することが好ましい。還元ガスの一例として、水素(H)ガス、炭化水素(CH、Cなど)ガスなどが挙げられる。また、不活性ガスの一例として、アルゴン(Ar)ガスなどが挙げられ、中性ガスの一例として、窒素(N)ガス、アンモニアなどが挙げられる。また、還元ガスと不活性ガス(若しくは中性ガス)とを混合したものを使用することもできる。例えば、水素ガスを1%~5%(例えば3%)の濃度で窒素ガスと混合した混合ガスなどを用いることができる。
また、本工程においては、Pt-W合金とCu源とを挟み込むように0.5g/mm以上(より好ましくは1g/mm以上、特に好ましくは1.5g/mm以上)の荷重を加えながら焼成処理を行うことが好ましい。これによって、Cu源とPt-W合金との間に隙間が生じることを防止し、W-Pt-Cu合金をより効率よく形成できる。なお、Pt-W合金とCu源に加える荷重の上限は、特に限定されず、10g/mm以下であってもよく、8g/mm以下であってもよく、6g/mm以下であってもよく、5g/mm以下であってもよい。
なお、本工程で使用するCu源は、Cuを含む材料であればよく、その成分は特に限定されない。具体的には、Cu源は、Cuに限定されず、Cu以外の金属元素を含んでいてもよい。このとき、PtやCu以外の第3の金属元素をCu源に混合することによって、製造後のW-Pt-Cu合金のPt-Cu相に、当該第3の金属元素を含ませることができる。これによって、CuやPt以外の金属元素を主成分とする異種金属部材に対する接合性を向上させることができる。ここで、Cu源に混合し得る第3の金属元素としては、金(Au)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)シリカ(Si)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ベリリウム(Be)などが挙げられる。
一方、Cu源の形状も、特に限定されず、Cuを含む固形の金属部材(Cu部材)であってもよいし、Cu粉末を溶剤に分散させたCuペーストであってもよい。一例として、合金材料のみを単独で製造する場合には、一定以下の厚みで塗布した銅ペーストをCu源として使用することが好ましい。これによって、Cu源の全てが合金材料の形成に使用されるため、銅部材が付着していない単独の合金材料を形成できる。また、銅ペーストの代わりに、例えば、化学蒸着などによって付着させた銅薄膜などを形成してもよい。なお、単独の合金材料を確実に形成するという観点から、Cu源の厚みは、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、60μm以下が特に好ましい。一方、Cuの不足によるW-Pt-Cu合金の形成不良を防止するという観点から、Cu源の厚みの下限値は、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、40μm以上が特に好ましい。
なお、Cu源としてCuペーストを使用する場合、当該ペースト中のCu粒子の平均粒子径は、0.01μm~10μmが好ましく、0.1μm~5μmがより好ましく、0.5μm~2μmが特に好ましく、例えば1μmである。また、Cuペーストの総体積を100vol%としたときのCu粒子の含有量(体積比)は、5vol%以上が好ましく、10vol%以上がより好ましく、15vol%以上がさらに好ましく、20vol%以上が特に好ましい。これによって、Cuの不足によるPt-W合金の形成不良を防止できる。一方、銅ペーストの粘度上昇を抑制して作業性を向上させるという観点から、Cu粒子の含有量(体積比)の上限は、55vol%以下が好ましく、50vol%以下がより好ましく、45vol%以下がさらに好ましく、40vol%以下が特に好ましい。なお、Cuペーストの総重量を100wt%としたときのCu粒子の含有量(重量比)は、60wt%以上が好ましく、65wt%以上がより好ましく、70wt%以上がさらに好ましく、75wt%以上が特に好ましい。一方、Cu粒子の含有量(重量比)の上限は、95wt%以下が好ましく、90wt%以下がより好ましく、85wt%以下が特に好ましい。なお、Cu粒子を除くCuペーストの成分(溶剤、バインダ、分散剤など)は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて、従来公知の成分を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を特徴付けるものではないため詳細な説明を省略する。また、上述したように、第3の金属元素をCu源に添加する場合には、当該第3の金属元素の粉体をCuペーストに添加することが好ましい。これによって、第3の金属元素をCu源に容易に添加できる。
(2)第2の実施形態
次に、ここに開示される合金材料の製造方法の他の例(第2の実施形態)について説明する。
上述した第1の実施形態では、Pt-W合金生成工程と、W-Pt-Cu合金生成工程を含む2回以上の加熱処理を実施することによってW-Pt-Cu合金を製造する。しかしながら、ここに開示される製造方法は、上述の実施形態に限定されない。例えば、W源とCu源との間にPt源を介在させた状態で、まとめて加熱処理を行った場合でもW-Pt-Cu合金を製造できることが実験によって確認されている。具体的には、本実施形態のように、W源とPt源とCu源とをまとめて加熱すると、W源とPt源との境界にPt-W合金が生成される。そして、加熱処理がさらに進むと、Pt-W合金とCu(Pt-Cu合金を含む)とが微細に入り混じりながらPt-W合金のPtがCuに移動する。この結果、W源とCu源との間に、W相とPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金が生成される。なお、W-Pt-Cu合金を確実に製造するという観点からは、上述した第1の実施形態のように、Pt-W合金生成工程を事前に行って前駆物質(Pt-W合金)を確実に生成させた後に、W-Pt-Cu合金の生成を行う方が好ましい。一方、製造効率や製造コストを考慮すると、本実施形態のように、Pt-W合金の生成と、W-Pt-Cu合金の生成を同時に行った方が好ましい。
また、本実施形態における加熱処理の温度は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、Ptの拡散をより好適に促進してW-Pt-Cu合金を効率よく形成できる。一方、最高焼成温度の上限は、1500℃以下が好ましく、1400℃以下がより好ましく、1300℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。また、本工程における焼成時間は、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。これによって、W相とPt-Cu相とが十分に混在したW-Pt-Cu合金を形成できる。一方、製造効率の観点から、本工程における焼成時間の上限は、3時間以下が好ましく、2.5時間以下がより好ましい。
また、本実施形態では、上述の加熱処理において、W源とCu源とを挟み込むように0.5g/mm以上(より好ましくは1g/mm以上、特に好ましくは1.5g/mm以上)の荷重を加えながら焼成処理を行うことが好ましい。これによって、Cu源とPt源とW源の各々の部材の間に隙間が生じることを防止し、W-Pt-Cu合金をより効率よく形成できる。なお、各部材を挟み込む際の荷重の上限は、特に限定されず、10g/mm以下であってもよく、8g/mm以下であってもよく、6g/mm以下であってもよく、5g/mm以下であってもよい。
4.他の実施形態
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。但し、上述の実施形態は、ここに開示される技術を限定することを意図したものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述した各々の実施形態において説明した各種の条件は、合金材料のみを単独で製造するための条件の一例であり、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。目的とする合金材料の形状や状態に応じて、W源、Cu源、Pt源、焼成温度、焼成時間等の種々の条件を適宜することができる。具体例として、上述の実施形態では、合金材料のみを単独で製造するために、W源としてWペーストやW薄膜を使用し、Cu源としてCuペーストやCu薄膜を使用している。しかし、所定の厚みを有するタングステン部材をW源として使用することによって、タングステン部材と接合された状態の合金材料を製造できる。かかる形態によると、合金材料の製造と、当該合金材料とタングステン部材との接合処理とを同時に実施できるため、作業効率等の観点から好適である。なお、タングステン部材の厚みが0.1mm以上(好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上)であれば、W-Pt-Cu合金を形成した後でもタングステン部材が残るため、タングステン部材と接合された状態の合金材料を得ることができる。
同様に、接合対象である異種金属部材がCu部材である場合には、所定の厚みを有する銅部材をCu源として使用することによって、Cu部材(異種金属部材)と接合された状態の合金材料を製造でき、作業効率等の観点から好適である。なお、銅部材の厚みが0.1mm以上(好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上)であれば、W-Pt-Cu合金を形成した後でも銅部材が残り、銅部材と接合された状態の合金材料を得ることができる。
また、所定の厚みを有するタングステン部材をW源として使用し、所定の厚みを有する銅部材をCu源として使用することによって、W-Pt-Cu合金を介してW部材とCu部材とが接合された接合体を製造できる。かかる製造方法によると、所望の接合体を効率良く製造できる。なお、このようにして製造した接合体は、W部材とCu部材との間に形成された合金材料の全てがW-Pt-Cu合金で構成されていなくてもよい。例えば、合金材料のW部材側の領域にPt-W合金が形成されていてもよいし、Cu部材側の領域にPt-Cu合金が形成されていてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、何れもPt-W合金とCu源とを直接接触させている。しかしながら、ここに開示される製造方法は、これらの実施形態に限定されず、他の金属部材(中間金属部材)を介在させて、Pt-W合金とCu源とを接触させてもよい。本発明者は、このような場合でもPt-W合金からCuへのPtの移動が生じ、W-Pt-Cu合金が生成されることを実験で確認している。なお、かかる中間金属部材の一例として、Ptを含む金属部材が挙げられる。なお、中間金属部材は、Cu成分を拡散させる金属部材が好ましい。例えば、Pt以外に、Cuと合金化(特に固溶)し得る金属や合金が用いられ得る。中間金属部材の具体例として、Ni、Au、Sn、Znなどを含む金属部材や銅合金などが挙げられる。これらの中でもCuと全率固溶体を形成できるNi、Au、Ptは、中間金属部材として特に好適である。また、上述した各形態と同様に、中間金属部材を介在させた場合でも加熱処理を行うことが好ましい。これによって、Pt-W合金からCuへのPtの移動を促進できる。なお、加熱処理の条件は、上述した実施形態と同程度に設定することができるため重複した説明を省略する。
また、以上の実施形態では、ここに開示される合金材料をタングステン部材と異種金属部材との接合材として使用している。しかし、ここに開示される合金材料は、接合材に限定されず、様々な分野への応用が期待できる。ここに開示される合金材料の用途の他の例として、金属部材(例えばW部材)の表面を保護するバリア膜、触媒などが挙げられる。また、ここに開示される合金材料を構成するW相とPt-Cu相とでは、Pt-Cu相の方が酸に溶解しやすい。このため、Pt-Cu相のマトリクス中で非常に微細なW相が存在している合金材料を製造し、この合金材料のPt-Cu相を酸に溶解させることによって、非常に微細なタングステン粒子を製造できる。すなわち、ここに開示される合金材料は、タングステン粒子の製造にも使用することもできる。
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
A.第1の試験
本試験では、上述した第1の実施形態のように、Pt-W合金生成工程と、W-Pt-Cu合金生成工程を実施してW-Pt-Cu合金を製造した。そして、各々の工程において種々の解析を行い、W-Pt-Cu合金の生成メカニズムを調べた。
1.Pt-W合金生成工程
まず、平均粒径0.5μmのPt粉と、バインダ(アクリル樹脂)と、溶剤(IBA:isobutyl alcohol)とを混合してPtペーストを調製した。このPtペーストの総重量に対するPt粉の含有率は、70wt%(体積割合で10vol%)に設定した。次に、かかるPtペーストを、メタルマスク(厚さ50μm×20mm×20mm)を使用してタングステン板(W板)の表面に塗布した。次に、乾燥処理(乾燥温度:120℃、乾燥時間:30分間)を実施し、W板表面のPtペーストを乾燥させた。そして、乾燥したPtペーストが付着したW板に加熱処理を行うことによって、解析用試料A-1を得た。なお、加熱処理における雰囲気は、還元雰囲気中(N-H(3%)ガス)に設定した。また、本工程では、4℃/minの昇温速度で400℃まで昇温して1時間保持した後に、4℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温して2時間保持するという条件で加熱処理を実施した。
加熱処理後の解析用試料A-1を、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いて薄片化し、切断面の断面SEM画像を撮像した(図3参照)。また、本試験では、撮像した断面SEM画像(図3(b))に対してEDX分析を実施し、W元素とPt元素の各々の元素マッピング像を取得した(図4参照)。図4中の(a)はWの元素マップであり、(b)はPtの元素マップである。これらの解析の結果から、加熱処理後の解析用試料A-1は、W板と、当該W板の表面に形成されたPt-W合金とを備えていることが分かった。
さらに、本試験では、図3(b)中の領域α(W板部分)と領域β(Pt-W合金部分)の各々のEDXスペクトルを取得した。領域αのEDXスペクトルを図5(a)に示し、領域βのEDXスペクトルを図5(b)に示す。そして、これらのEDXスペクトルに基づいて、各領域における元素の存在比率を解析した。この結果、領域α(W板部分)では、Pt:0atm%、W:99.05atm%、Fe:0.95atm%という結果が確認された。一方、領域β(Pt-W合金部分)では、Pt:64.52atm%、W:34.30atm%、Fe:1.18atm%という結果が確認された。さらに、本試験では、図3(b)中に引いた長さ7000nmの線分X上でEDXライン分析を実施し、WとPtの元素濃度(atm%)の変化を調べた。結果を図6に示す。図6に示すように、領域α(W板部分)で約100atm%であったW元素が、領域β(Pt-W合金部分)において33atm%程度まで減少した。一方、領域βでは、Pt元素が66atm%まで増加した。また、本試験では、図3(b)中の領域α(W板部分)と領域β(Pt-W合金部分)の各領域において電子線回折を行った。結果を図7に示す。図7中の(a)は、領域α(W板部分)における電子線回折の結果を示す画像であり、(b)は、領域β(Pt-W合金部分)における電子線回折の結果を示す画像である。かかる電子線回折では、領域αにおいてWの回折図形が得られ、領域βにおいては少なくともPtWの011面における回折図形が得られた。かかる解析結果から、本工程にて生成されたPt-W合金は、PtとWとが2:1という整数比で混合した金属間化合物(PtW)であることが分かった。
次に、解析用試料A-1のSEM画像に対してEBSDを用いて結晶構造を解析した。解析結果のSEM/EBSD画像を図8に示す。また、図8中の(c)は、図8(b)のSEM/EBSD画像中のタングステンとPtWを彩色したものである。さらに、かかるEBSDの解析結果に基づいて、W板とPt-W合金の各領域における結晶粒の粒子径を測定した。具体的には、W板とPt-W合金の各領域において画像内の結晶粒の円相当径を測定し、個数基準の粒度分布を作成した。結果を図9に示す。なお、図9中の(a)はW板における結晶粒の粒度分布であり、(b)はPt-W合金における結晶粒の粒度分布である。これらの解析結果から、W板上に形成されたPt-W合金(PtW)は、数百nmという非常に微細な結晶粒によって構成されていることが分かった。
2.W-Pt-Cu合金生成工程
本工程では、平均粒径1μmのCu粉と、バインダ(アクリル樹脂)と、溶剤(IBA:isobutyl alcohol)とを混合してCuペーストを調製した。このCuペーストの総重量に対するCu粉の含有率は、80wt%(体積割合で30vol%)に設定した。そして、上記解析用試料A-1のPt-W合金側の表面に、Cuペーストをメタルマスク(厚さ50μm×20mm×20mm)を用いて塗布した。次に、乾燥処理(乾燥温度:120℃、乾燥時間:30分間)を実施して解析用試料A-1の表面のCuペーストを乾燥させた後に、加熱処理を実施して解析用試料A-2を作成した。なお、加熱処理の雰囲気は、還元雰囲気(N-H(3%)ガス)に設定した。また、本工程では、4℃/minの昇温速度で400℃まで昇温して1時間保持した後に、4℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温して2時間保持するという条件で加熱処理を実施した。
本工程における解析では、最初に、加熱処理後の解析用試料A-2をFIB-SEMを用いて薄片化した。そして、切断面の断面SEM画像を撮像した。結果を図10に示す。次に、EBSDを用いて解析用試料A-2の結晶構造を解析した。結果を図11に示す。かかる図11(b)に示すように、解析用試料A-2には、W相とPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金が形成されていることが分かった。そして、これらのW相とPt-Cu相は、何れも微小な結晶粒から構成されていることが分かった。そして、図11(c)に示すように、Pt-Cu相は、結晶方位がランダムであり、かつ、特に微小な結晶粒によって構成されていることが分かった。一方、図11(d)に示すように、W相は、Pt-Cu相よりも大きな結晶粒によって構成されており、当該結晶粒の結晶方位が[101]方向に配向していることが分かった。
さらに、本試験では、上述のEBSDの解析結果に基づいて、W-Pt-Cu合金における結晶粒の粒子径を測定した。ここでは、W相とPt-Cu相の各相を構成する結晶粒の円相当径を観察視野分測定し、各相における粒度分布を求めた。結果を図12に示す。なお、図12(a)はPt-Cu相の粒度分布であり、(b)はW相の粒度分布である。図12に示すように、W相のD50粒子径は621nmであり、Pt-Cu相のD50粒子径は102nmであり、W相とPt-Cu相は、いずれも非常に微細な結晶粒から構成されていることが分かった。当該図12に示す粒度分布と図11に示すSEM/EBSD画像から、解析用試料A-2に形成されたW-Pt-Cu合金は、比較的に大きなW相の結晶粒の間に、非常に微少なPt-Cu相の結晶粒が充填されたような形態を有していると推測される。すなわち、かかる解析より、W-Pt-Cu合金は、PtW合金とCuとが入り混じりながら、PtW合金中のPtがCuへ移動(拡散)することによって生成されると解される。
B.第2の試験
本試験では、上述した第2の実施形態のように、W源とCu源との間にPt源を介在させた状態でまとめて加熱処理を行った。そして、得られた合金材料に対して種々の解析を行った。
1.サンプルの作製
まず、W源として板状のタングステン部材(厚さ0.3mm、長さ7.5mm、幅7.5mm)を準備した。そして、Pt源としてPtペーストを準備し、当該Ptペーストをタングステン部材の片面全面に塗布した。なお、本試験で使用したPtペーストは、21vol%のPt粉末(平均粒子径:0.5μm)と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤とを混錬したものである。なお、Ptペーストの溶剤には、2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrateを使用した。そして、本試験では、120℃、30分間の乾燥処理を行ってPtペーストを乾燥させた後に、大気中で脱バインダ処理(200℃、3時間)を行った。
次に、Cu源として、板状の銅部材(厚さ0.3mm、長さ20mm、幅20mm)を準備した。そして、タングステン部材のペースト塗布面と銅部材とを面接触させ、タングステン部材の上に50gのアルミナブロックを載置することによって、タングステン部材と銅部材との接触部分に0.89kPaの圧力を加えた。この状態で、昇温速度4℃/min、最高焼成温度を1000℃、焼成時間2時間の焼成処理を実施することによって、タングステン部材と銅部材とが接合された接合体(サンプル1)を得た。なお、焼成時の雰囲気ガスには、3%の水素(H)を含むNガスを使用した。
2.サンプルの解析
(1)SEM観察およびEDX分析
サンプル1の接合体を積層方向に沿って切断した後、イオンミリングを用いて切断面を研磨し、切断面の断面SEM画像を撮像した。また、撮像した断面SEM画像に対してEDX分析を実施し、タングステン(W)と、銅(Cu)と、白金(Pt)の各々の元素マッピング像を取得した。倍率250倍における解析結果を図13に示し、倍率1000倍における解析結果を図14に示し、倍率10000倍における解析結果を図15に示し、倍率50000倍における解析結果を図16に示す。なお、図13~図16における(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。
まず、図13に示すように、低倍率250倍での観察では、タングステン部材と銅部材との間に、Pt-Cu合金を主成分とした合金層(Pt-Cu層)が確認された。かかるPt-Cu合金は、通常、タングステン部材に対する接合性が低いにも関わらず、サンプル1の接合体では、Pt-Cu層とタングステン部材とが強固に接合されているように見えた。そこで、図14に示すように、より高倍率(1000倍)でPt-Cu層とタングステン部材との境界を観察した結果、タングステン部材とPt-Cu合金層との境界に、WとPtとCuとが混在する層(W-Pt-Cu層)が形成されていることが分かった。そして、このW-Pt-Cu層をさらに拡大したところ、図15および図16に示すように、Pt-Cu相マトリクス中にW相が混在したW-Pt-Cu合金が確認された。以上の解析結果から、W源とCu源との間にPt源を介在させた状態でまとめて加熱処理を行った場合でも、W-Pt-Cu合金を生成できることが分かった。さらに、このW-Pt-Cu合金を介すると、従来は接合が困難であった、タングステン部材と銅部材とを強固に接合できることが分かった。
(2)原子数の測定
次に、本試験では、上記W-Pt-Cu合金が形成されている領域において、図16(a)のような倍率50000倍の断面SEM画像を5視野取得した。そして、EDX組成分析によって、各視野におけるWとPtとCuの原子数を測定し、その平均値を算出した。その結果、サンプル1で形成されたW-Pt-Cu合金におけるWの平均原子数は34atm%であり、Pt-Cuの平均原子数は66atm%であった。また、Pt-Cu合金におけるPtとCuとの比率は、14.6:85.4であった。
(3)領域毎の元素分析
また、本試験では、サンプル1の倍率1000倍のSEM写真(図17参照)中のポイント1~ポイント6の各ポイントにおいてEDX解析を行い、WとPtとCuの原子数の比率(atm%)を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
図17および表1に示すように、サンプル1中のポイント1がタングステン部材であり、ポイント2がW-Pt-Cu層であり、ポイント3~5がPt-Cu層であり、ポイント6が銅部材であることが分かる。そして、表1を見ると、ポイント1からポイント6に向かうにつれてPt/Cu比が減少している(ポイント1に近い方がPt/Cu比が多い)ことが分かった。このことから、焼成初期において、タングステン部材に近い領域(ポイント2付近)でPt-W合金が生成され、当該Pt-W合金から銅部材(ポイント6)側に向かってPtが拡散した結果、タングステン部材に隣接したポイント2にW-Pt-Cu層が形成されたと予想できる。また、タングステン部材から離れた領域(ポイント3~4)では、Pt-W合金が形成されなかったため、PtとCuとが混合したPt-Cu合金が形成されたと予想できる。なお、このようにCu原子数が順次変化する金属接合部材では、接合部分における熱応力が緩和されるという効果が期待できる。
(4)W相の面積測定
また、本試験では、サンプル1の断面SEM画像を解析してW相の面積に関する測定を行った。画像解析には、米国国立衛生研究所(NIH)製の画像解析ソフト(ImageJ 1.52a)を用いた。具体的には、図15(a)(倍率10000倍のSEM画像)を二値化し、白黒反転させることによって、W相が黒色、Pt-Cu相が白色で表示されるようにした。そして、5μm×7.5μmの視野内に存在する黒色のドットをカウントすることによってW相の面積を測定した。この結果、白色で表示されたPt-Cu相のマトリックス中に、面積が0.007μm~1.02μmの範囲のW相が85箇所確認された。確認された85箇所のW層の各々の面積を下記の表2に示す。換言すると、サンプル1におけるW-Pt-Cu合金では、面積が0.007μm~1.02μmの範囲のW相が、約2.3箇所/μmの密度で存在していることが分かった。また、上記視野におけるW相の平均面積は、0.113μmであった。また、W相の面積の最大値は1.02μmであり、最小値は0.007μmであった。
(5)結晶組織の観察
FIB-SEMを用いてサンプル1を薄片化してSEM/EBSD画像を取得した。結果を図18に示す。かかる図18に示すように、サンプル1では、タングステン部材と銅部材との間にPt-Cu合金が形成されており、そのPt-Cu合金とタングステン部材との境界にW-Pt-Cu合金が形成されていることが分かる。そして、タングステン部材におけるW-Pt-Cu合金に接した領域では、Wの結晶粒が他の領域よりも小さくなっていることが確認された。これは、W-Pt-Cu合金の生成のために、当該領域からWが供給されたためと推測される。そして、当該Wの結晶組織が小さくなった領域では強度の向上が期待できる。
(6)元素マッピング
また、本試験では、FIB-SEMで薄片化した試験片のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)画像(倍率50000倍)を取得した。そして、当該HAADF-STEM画像における元素マッピング像を取得すると共に、EDXスペクトルを取得した。HAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を図19に示す。また、取得したHAADF-STEM画像のW-Pt-Cu層全体のEDXスペクトルを図20に示す。そして、W-Pt-Cu中のW相のEDXスペクトルを図21に示し、Pt-Cu相のEDXスペクトルを図22に示す。
まず、図20に示すように、W-Pt-Cu層全体では、W元素、Cu元素、Pt元素、Mo元素、Fe元素、O元素が主に確認された。そして、図20及び図21に示すように、W相では、W元素、Mo元素、Fe元素、O元素が主に確認された。これらのうち、Mo元素、Fe元素は、W板に含まれる不純物に由来すると考えられる。また、Moに関してはサンプルフォルダに含まれるものを検出した可能性がある。一方、図19および図22に示すように、Pt-Cu相では、Cu元素、Pt元素、O元素が主に確認された。なお、W相とPt-Cu相の両方で確認されたO元素は、測定環境で付着した酸素や試験片の表面酸化に由来すると考えられる。そして、図19に示す画像から、W-Pt-Cu層には、Wを主成分とするW相と、Pt-Cu合金を有するPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金が形成されていることが明確に裏付けられた。
そして、図21を解析した結果、W相におけるWの原子数は84.57atm%であり、Cuの原子数は2.56atm%であり、Ptの原子数は0.06atm%であった。また、W相には、不純物であるモリブデン(Mo)が12.81atm%含まれていたが、これはサンプルフォルダに含まれるものを検出したと考えられる。一方、図22を解析した結果、Pt-Cu相におけるWの原子数は2.31atm%であり、Cuの原子数は78.13atm%であり、Ptの原子数は15.59atm%であった。また、Pt-Cu相には、不純物であるモリブデン(Mo)が3.97atm%含まれていた。このMoもサンプルフォルダに含まれるものを検出したと考えられる。
C.第3の試験
本試験では、上述した第2の試験から条件を異ならせて、10種類の接合体(サンプル2~11)を作製した。以下、各サンプルの作製条件と、各サンプルに対して行った解析を説明する。
(1)サンプル2
サンプル2では、PtペーストにおけるPt粉の含有量を10vol%に減らした点を除いて、サンプル1と同じ条件でタングステン部材と銅部材と接合した接合体を作製した。かかるサンプル2に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル2の倍率5000倍における解析結果を図23に示し、倍率50000倍における解析結果を図24に示す。なお、図23、図24中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。さらに、サンプル2に形成されたW-Pt-Cu合金のSEM写真(倍率50000倍)を5視野分取得し、各視野においてEDX解析を行い、WとPtとCuの原子数の比率(at%)を測定した。測定結果を以下の表3に示す。
図23、図24に示すように、サンプル2では、サンプル1と同様に、タングステン部材と銅部材との接合部に、三元二相のW-Pt-Cu合金が形成されていた。さらに、表2に示す各視野における測定結果から算出すると、サンプル2のW-Pt-Cu層におけるW相とPt-Cu相との存在比率の平均値は、23.37:76.63であった。そして、Pt-Cu相におけるPt元素とCu元素との存在比率は、7.07:92.93であった。かかる結果から、サンプル2では、Cuに対するPtの比率がサンプル1よりも小さくなっていることが分かった。これは、サンプル1と比較してPt含有量の少ないPtペーストを使用したためと解される。
次に、図24(a)の上側(Pt-Cu合金側)から下側(タングステン部材側)に長さ20μmの線分X1を引き、当該線分X1上におけるW、Pt、Cuの各元素の元素濃度の変化を調べるライン分析を行った。結果を図25に示す。この図25の横軸の0μmの位置は線分X1の上端に対応しており、20μmの位置は線分X1の下端に対応している。一方、縦軸は各々の元素の特性X線強度を示している。そして、図25中の(a)のグラフはPtの分析結果を示し、(b)のグラフはWの分析結果を示し、(c)のグラフはCuの分析結果を示している。図25に示すように、Pt-Cu合金が存在する領域(図23(a)中の上側)では、Pt元素とCu元素が主成分となっており、W元素は殆ど確認されなかった。そして、W-Pt-Cu合金が存在する領域(図23(a)中の中央部分)では、W元素とPt元素とCu元素の各々が確認された。そして、タングステン部材(図23(a)中の下側)は、殆どがW元素によって構成されていたが、Pt元素がわずかに存在していた。
(2)サンプル3
サンプル3では、タングステン部材と銅部材とを焼成する際の温度を800℃に変更した点を除いて、サンプル2と同じ条件でタングステン部材と銅部材とを接合した。かかるサンプル3に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル3の倍率5000倍における解析結果を図26に示し、倍率50000倍における解析結果を図27に示し、倍率200000倍における解析結果を図28に示す。なお、図26~図28中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。これらの解析結果から、サンプル3では、W-Pt-Cu合金が存在する領域が薄く、W相とPt-Cu相とが混在する組織が細かくなるという傾向が確認された。
また、サンプル3では、倍率200000倍の断面SEM画像のEDX分析(図28)に基づいて、W元素、Pt元素、Cu元素、O元素の元素数の定量分析を行った。かかる定量分析では、W-Pt-Cu層におけるWの原子数は20.73%であり、Ptの原子数は5.37atm%であり、Cuの原子数は69.11atm%であり、Oの現す数は4.79atm%であった。なお、元素分析の結果、W-Pt-Cu合金におけるW元素、Pt元素、Cu元素の存在比率においては、サンプル2とサンプル3との間に大きな差は見られなかった。
(3)サンプル4
サンプル4では、Ptペーストの塗布後の脱バインダ処理の条件を160℃,30分間に変更した点を除いて、サンプル2と同じ条件でタングステン部材と銅部材との接合を行った。かかるサンプル4に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル4の倍率5000倍の解析結果を図29に示し、Pt-Cu層における倍率50000倍の解析結果を図30に示し、Pt-W層における倍率50000倍の解析結果を図31に示し、W-Pt-Cu層における倍率50000倍の解析結果を図32に示し、タングステン部材における倍率50000倍の解析結果を図33に示す。なお、図29~図33中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。また、サンプル4では、図29~図33の各々の断面SEM画像のEDX分析に基づいて、W元素、Pt元素、Cu元素の元素数の定量分析を行った。分析結果を表4に示す。また、サンプル4については、図29(a)の上側(Pt-Cu合金側)から下側(タングステン部材側)に長さ20μmの線分X2を引き、当該ライン上におけるW、Pt、Cu各元素の濃度分布の変化を調べた。結果を図34に示す。この図34の横軸の0μmの位置は線分X2の上端に対応しており、20μmの位置は線分X2の下端に対応している。また、縦軸は各々の元素の特性X線強度を示している。そして、図34中の(a)はPtの分析結果を示し、(b)はWの分析結果を示し、(c)はCuの分析結果を示している。図34に示すように、Pt-Cu合金が存在する領域では、Pt元素とCu元素の存在が確認され、W元素は確認されなかった。そして、W-Pt-Cu合金が存在する領域では、W元素とPt元素とCu元素の各々が確認された。そして、タングステン部材の領域の殆どがW元素であったが、Pt元素がわずかに存在していた。
サンプル4では、他の実施例よりもW-Pt-Cu層が厚く、その上にPt-Wを主成分とする層が存在していた。このように厚いW-Pt-Cu層が形成されたのは、脱バインダ処理の温度を低下させた結果、酸化タングステンの生成量が少なくなり、W-Pt-Cu号機の前駆体であるPt-W合金の生成が阻害されずに厚く形成されたためと予想される。また、図29に示すように、サンプル4では、W-Pt-Cu層とPt-Cu層との境界に、PtとWを含むPt-W層が生じていることが分かった。そして、このPt-W層は、一部が途切れており、当該途切れた部分にはW-Pt-Cu層が存在していた。このことから、本サンプルでは、W-Pt-Cu合金が生成される際に、上記Pt-W層が途切れた部分を通じてPt-W合金とCuとが混ざり合ったと推測される。
また、サンプル4では、FIB-SEMを用いてサンプル1を薄片化し、上記図29(a)とは異なる視野における反射電子像を取得して種々の解析を行った。先ず、図35(a)はサンプル4の反射電子像(5000倍)であり、(b)は(a)中の領域αの拡大図(20000倍)であり、(c)は(a)中の領域βの拡大図(20000倍)である。この図35にも示されているように、サンプル4では、W板の上に、W-Pt-Cu層が形成され、その上にPt-W層が形成されており、さらにその上にPt-Cu層が形成されていた。そして、サンプル4では、図35(a)中の領域αと領域βの各々において、EDX分析に基づいた元素マッピング像を取得した。領域αにおける元素マッピング像の結果を図36に示し、領域βにおける元素マッピング像の結果を図37に示す。先ず、図36に示すように、領域α中のPt-W層では、粒子径が100~500nm程度のPt-W結晶粒子の間に、微量のPt-Cu結晶粒子が存在していることが確認された。このPt-W層におけるPt-W結晶粒子とPt-Cu結晶粒子との面積比は、98.5:1.5であった。また、W-Pt-Cu層とPt-W層との界面に存在するW相は、ほぼタングステンのみで形成されていた。また、図37に示すように、W-Pt-Cu層におけるPt-Cu相とW相との面積比は、52.9:47.1であった。
次に、サンプル4では、HAADF-STEM画像と、当該HAADF-STEM画像の元素マッピング像も取得した。図38は、サンプル4のHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。また、図39は、図38中の線分X3上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。この図38および図39に示すように、サンプル4では、主にWで構成されたW板と、W相とPt-Cu相とを有したW-Pt-Cu層と、Pt-W合金で形成されたPt-W層と、Pt-Cu合金で形成されたPt-Cu層とが形成されていた。そして、各層における金属元素の存在比率は、次の表5に示す通りであった。
さらに、図40は、サンプル4のW板と、W-Pt-Cu層のW相と、W-Pt-Cu層のPt-Cu相との界面におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。また、図41は、図40中の線分X4上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフであり、図42は、線分X4上におけるOとFeの濃度分布を示すグラフである。先ず、図40および図41に示すように、W板にはPt元素やCu元素が殆ど存在しておらず、かつ、W-Pt-Cu層のPt-Cu相にはW元素が殆ど存在していなかった。このことから、W-Pt-Cu層のPt-Cu相とW板との界面では、金属元素の拡散が殆ど生じていないと解される。また、図40および図42に示すように、W板内に少量の鉄(Fe)元素の存在が確認された。また、酸素(O)元素は、測定ノイズによるものと推測される。そして、これらのFe元素やO元素は、いずれの領域においても存在しており、W-Pt-Cu層のPt-Cu相とW板との界面において明らかな偏在は確認されなかった。
また、サンプル4では、図38中の領域α~領域δの各領域において電子線回折を行った。結果を図43に示す。図43(a)は、領域α(W板)における電子線回折の結果を示す画像である。かかる電子線回折結果から、領域α(W板)に存在する元素がWであることが同定された。次に、図43(b)は、領域β(W-Pt-Cu層)における電子線回折の結果を示す画像である。かかる電子線回折結果から、領域β(W-Pt-Cu層)においてW相とPt-Cu相が確認された。さらに、W-Pt-Cu層中のPt-Cu相には、少なくともCuPtが存在していることが分かった。また、図43(c)は、領域γ(Pt-W層)における電子線回折の結果を示す画像である。かかるPt-W層では、Pt-W合金の他に、Pt-Cu合金も確認された。そして、Pt-W層は、Pt-W合金として、少なくともPtWを含み、Pt-Cu合金として、少なくともCuPtを含んでいた。そして、図43(d)は、領域δ(Pt-Cu層)における電子線回折の結果を示す画像である。かかるPt-Cu層は、Pt-Cu合金として、少なくともCuPtを含んでいた。
次に、上述の図40に示すように、サンプル4では、W板とW-Pt-Cu層との界面におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像を取得している。これに加え、サンプル4では、W板とPt-W層とPt-Cu層の各層におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像を取得した。結果を図44~図46に示す。図40および図44~図46に示すように、サンプル4では、W板とW-Pt-Cu層とPt-W層とPt-Cu層の各々の領域において、PtとCuとを有するPt-Cu相が確認された。これらの各領域におけるPt-Cu相のEDXスペクトルを図47~図50に示すと共に、かかるEDXスペクトルに基づいて算出した元素比率を表6に示す。図47~図50および表6に示すように、各層に存在するPt-Cu相の元素比率には、大きな違いがなかった。
以上の解析の結果、サンプル4では、Pt-W層とW板との間にW-Pt-Cu合金が形成されていた。このことから、W板にPtペーストを塗布して加熱処理することによってPt-W合金が生成された後、当該Pt-W合金にCuを含む成分が入り込み、Pt-W合金中のPtがCuに移動(拡散)することによって、W-Pt-Cu合金が生成されたと考えられる。また、図44に示すように、サンプル4では、W板にもCuが入り込んでいた。このことも、CuがPt-W合金側に入り込むという生成過程を示唆していると解される。
(4)サンプル5
サンプル5では、Ptペーストの塗布後の脱バインダ処理の条件を450℃,30分間に変更した点を除いて、サンプル2と同じ条件でタングステン部材と銅部材との接合を行った。かかるサンプル5に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル5の倍率5000倍の解析結果を図51に示し、W-Pt-Cu合金における倍率50000倍の解析結果を図52に示す。なお、図51および図52中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。かかる解析の結果、サンプル5では、サンプル1、2、4よりもW-Pt-Cu層が薄く、W板上でのW-Pt-Cu合金の分布がまだらであることが確認された。これは、脱バインダ処理の温度を高くしたため、W板の表面に酸化タングステンが生じ、当該酸化タングステンによってW部材とPtとの反応が阻害され、Pt-W合金の生成が阻害されたためと推測される。また、サンプル5では、図52のEDX分析に基づいて、W-Pt-Cu合金におけるW元素、Pt元素、Cu元素の元素数の定量分析を行った。かかる定量分析の結果、W-Pt-Cu層におけるWの原子数は31.06%であり、Ptの原子数は2.03atm%であり、Cuの原子数は66.91atm%であった。かかる元素分析の結果、サンプル5のW-Pt-Cu合金では、Pt元素の存在比率がサンプル2~4よりも少ないことが分かった。
(5)サンプル6
サンプル6では、板状の銅部材に代えて、CuペーストをCu源として使用した。具体的には、サンプル1と同じ寸法のタングステン部材の表面に、サンプル2と同じ組成のPtペーストを塗布した。そして、サンプル4と同じ条件で乾燥処理と脱バインダ処理を行った。その後、Ptペーストの塗布面にCuペーストを塗布した後に乾燥処理(120℃、30分)と加熱処理を実施した。なお、加熱処理は、サンプル1と同じ条件に設定した。そして、本サンプルで使用したCuペーストは、平均粒子径0.5μmのCu粉と、ガラス粉と、エチルセルロース系樹脂と、分散材と、溶剤とを混錬したものを使用した。かかるサンプル6に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル6の倍率5000倍の解析結果を図53に示し、W-Pt-Cu合金における倍率50000倍の解析結果を図54に示す。なお、図53および図54中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。かかる解析の結果、サンプル6においても、他のサンプルと同様にW-Pt-Cu合金の生成が確認できた。このことから、W源とPt源とCu源とを同時に加熱処理する態様においても、Cu源としてCuペーストを使用できることが分かった。また、サンプル6では、図54のEDX分析に基づいて、W-Pt-Cu合金におけるW元素、Pt元素、Cu元素の元素数の定量分析を行った。かかる定量分析の結果、サンプル6のW-Pt-Cu層におけるWの原子数は40.16%であり、Ptの原子数は2.27atm%であり、Cuの原子数は57.57atm%であった。
(6)サンプル7
サンプル7では、W-Pt合金とCu源との間に、中間金属部材(Pt膜)を介在させた場合に、W-Pt-Cu合金が生成されるかについて調べた。具体的には、サンプル1と同じ寸法のタングステン部材の表面に、サンプル2と同じ組成のPtペーストを厚めに塗布した。そして、120℃で30分間の乾燥処理を行った後、大気中で加熱処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:160℃、加熱時間:0.5h)を行うことによって脱バインダ処理を行った。その後、N-H(3%)の雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。そして、サンプルを室温まで冷却し、W板の表面にPt焼成膜が生成されていることを確認した。次に、このPt焼成膜の表面に、サンプル6と同じCuペーストを塗布して120℃で30分間乾燥した。そして、N-H(3%)雰囲気下で焼成処理(昇温温度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。そして、サンプルを室温まで冷却した後、断面をイオンミリングで研磨し、SEM観察、EDX分析を行った。
サンプル7の倍率5000倍の解析結果を図55に示す。また、サンプル7のPt-W層、W-Pt-Cu層、W板、W板とW-Pt-Cu層との界面の各々の部分における倍率50000倍の解析結果を図56~図59に示す。なお、図55~図59中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。図55~図59に示すように、サンプル7においても、他のサンプル2~6と同様に、W-Pt-Cu合金が生成されていることが確認できた。このことから、W-Pt-Cu合金を生成するには、W-Pt合金とCu源とを直接接触させる必要はなく、W-Pt合金とCu源との間に中間金属部材(Pt膜)が介在していてもよいことが分かった。
また、サンプル7では、図55~図59の各図のEDX分析に基づいて、W-Pt-Cu合金におけるW元素、Pt元素、Cu元素の元素数の定量分析を行った。倍率5000倍の解析結果(図55)と、Pt-W層(図56)、W-Pt-Cu層(図57)、W板(図58)、W板とW-Pt-Cu層との界面(図59)の各々の部分における元素数の定量分析の結果を表7に示す。
(7)サンプル8
サンプル8では、Pt-W合金生成工程で生成したPt-W合金と、W-Pt-Cu合金生成工程で生成したW-Pt-Cu合金との形状を比較した。具体的には、サンプル1と同じ寸法のW板の表面に、サンプル2と同じ組成のPtペーストを薄めに塗布した。そして、120℃で30分間の乾燥処理を行った後、大気中で加熱処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:160℃、加熱時間:0.5h)を行うことによって脱バインダ処理を行った。その後、N-H(3%)の雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。そして、サンプルを室温まで冷却し、W板の表面にW-Pt合金が生成されていることを確認した。なお、本サンプルで生成されたW-Pt合金の表面は、微細な凹凸を有する粗面となっていた。次に、本サンプルでは、W-Pt合金の表面にCuペースト(Cu源)を塗布した塗工領域と、Cuペーストを塗布しない未塗工領域を設けた。なお、Cuペーストには、サンプル6と同じものを使用した。そして、塗工領域のCuペーストを120℃で30分間乾燥した後に、N-H(3%)雰囲気下で焼成処理(昇温温度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。そして、サンプルを室温まで冷却した後、断面をイオンミリングで研磨し、SEM観察、EDX分析を行った。
サンプル8の未塗工領域の解析結果を図60および図61に示す。一方、塗工領域の解析結果を図62~図65に示す。先ず、図60に示すように、未塗工領域におけるW板の表面には、表面に微細な凹凸を有するW-Pt合金が形成されていた。一方、図62~図65に示すように、塗工領域では、W板とPt-Cu層との間にW-Pt-Cu合金が形成されていた。そして、サンプル8におけるW-Pt-Cu合金は、未塗工領域のW-Pt合金と同様に、表面(Pt-Cu層側の界面)に微細な凹凸が形成されていた。このことから、Pt-W合金生成工程で生成したPt-W合金の形状が、W-Pt-Cu合金生成工程の後のW-Pt-Cu合金の形状に反映されることが分かった。
(8)サンプル9
サンプル9では、板状のタングステン部材の表面にCuペーストを塗布して乾燥・焼成を行った。具体的には、サンプル1と同じ寸法のタングステン部材の表面に、サンプル6と同じ組成のCuペーストを塗布した。そして、120℃、30分間の乾燥処理を行って、Cuペーストを乾燥させた後に、空気中で400℃、1時間の加熱処理を行った。その後、焼成速度を5℃/min、最高焼成温度を1000℃、焼成時間を30分間に設定した焼成処理を行った。かかるサンプル9に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル9の倍率250倍の解析結果を図66に示し、倍率1000倍の解析結果を図67に示し、倍率5000倍の解析結果を68に示し、倍率50000倍の解析結果を図69に示す。なお、図66~図69中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はO(酸素)の元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はWの元素マップである。これらの解析を見ても、WとCuとが混在した合金材料は形成されていなかった。すなわち、Ptが存在していない状態(W-Pt合金が生成されていない状態)でCuとWとを接触させて加熱処理を行っても、WとCuとが混在した合金材料は生成されないことが分かった。
(9)サンプル10
サンプル10では、板状のタングステン部材の表面にPtペーストを塗布して乾燥・焼成を行った。具体的には、サンプル1と同じ寸法のタングステン部材の表面に、サンプル1と同じ組成のPtペーストを塗布した。そして、120℃、30分間の乾燥処理でPtペーストを乾燥させた後に、空気中で160℃、0.5時間の加熱処理を行った。その後、焼成速度を3℃/min、最高焼成温度を1300℃、焼成時間を10分間に設定した焼成処理を行った。かかるサンプル10に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル10の倍率5000倍の解析結果を図70に示す。なお、図70の(a)は断面SEM画像であり、(c)はWの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。これらの解析の結果、本サンプルのようにPt源とW源とを接触させた状態で加熱することによって、PtとWを含む合金(Pt-W合金)が生成されることが確認された。しかし、本サンプルでは、サンプル1~8のような二相合金は生成されなかった。
(10)サンプル11
サンプル11では、板状のタングステン部材の表面にPt-Cuペーストを塗布して乾燥・焼成を行った。具体的には、サンプル1と同じ寸法のタングステン部材の表面に、Pt粒子とCu粒子とを均一に分散させたPt-Cuペーストを塗布した。そして、120℃、30分間の乾燥処理を行ってペーストを乾燥させた後に、空気中で160℃、0.5時間の第1加熱処理を行った後に、3%Hガス含有Nガス中で、昇温速度10℃/min、最高加熱温度400℃、加熱時間を1時間に設定した第2加熱処理を行った。そして、昇温速度5℃/min、最高焼成温度を1000℃、焼成時間を30分間の加熱処理を行った。かかるサンプル11に対して、第2の試験と同じ条件でSEM観察を実施した。サンプル11の倍率5000倍の解析結果を図71に示し、倍率50000倍の解析結果を図72に示す。これらの解析の結果、本サンプルのようにPt源とCu源を混合した場合、W源とPt源とCu源が存在しているにも関わらず、W-Pt-Cu合金が生成されず、未反応のW部材と、当該W部材の表面に形成されたPt-Cu合金しか確認されなかった。そして、かかるW部材とPt-Cu合金は、適切に接合されていなかった。このような結果担った原因は次のように推測される。本サンプルでは、混在させたPt源とCu源との反応が優先的に生じ、Pt-W合金が生成されなかった。そして、Pt源とCu源とが反応して生じたPt-Cu合金は、W部材との反応性が低いため、サンプル1~6のようなW-Pt-Cu合金が形成されなかった。このことから、W-Pt-Cu合金を生成するには、前駆物質としてPt-W合金を生成し、当該Pt-W合金からPtをCuに移動させる必要があることが分かった。
D.第4の試験
本試験では、CuやPt以外の金属元素(第3の金属元素)を含むPt-Cu相を有したW-Pt-Cu合金を製造した。具体的な製造手順を以下に説明する。
ここでは、最初に、厚さ0.3mm×7.5mm×7.5mmのW板に、Ptペーストを塗布した。Ptペーストは、平均粒子径が0.5μmのPt粉と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤(2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrate)とを混錬することによって調製した。そして、Ptペーストが塗布されたW板に対して乾燥処理(120℃、30分間)を実施した後に、脱バインダ処理(空気中、160℃、0.5時間)を実施した。そして、還元雰囲気(N-H(3%)雰囲気)で加熱処理を行って、W板の表面にPt-W合金(PtW)を生成した。なお、加熱処理では、昇温速度を4℃/minに設定し、最高温度(1000℃)に到達した後に2時間保持した。
次に、W板表面のPt-W合金の上に、Auペーストを塗布した後に、乾燥処理(120℃、30分間)を実施した。なお、Auペーストは、平均粒子径が0.5μmのAu粉と、バインダ(エチルセルロース)と、分散材と、溶剤(ターピネオール)とを混錬することによって調製した。そして、乾燥したAuペーストの上にCuペーストを塗布し、その後に乾燥処理(120℃、30分間)を実施した。なお、Cuペーストには、第1の試験の解析用試料A-2の作製で使用したペーストと同じものを使用した。そして、還元雰囲気(N-H(3%)雰囲気)で加熱処理を行うことによってサンプル12を作製した。なお、加熱処理では、昇温速度を4℃/minに設定し、最高温度(1000℃)に到達した後に2時間保持した。
作製したサンプル12の断面をCP研磨してSEM-EDX分析を行った。結果を図73及び図74に示す。なお、図73の倍率は5000倍であり、図74の倍率は50000倍である。そして、図73および図74中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップであり、(e)はAuの元素マップである。なお、SEM-EDX分析によって測定されたCuの原子数濃度は65.64%であり、Wの原子数濃度は24.50%であり、Ptの原子数濃度は1.23%であり、Auの原子数濃度は8.62%であった。
解析の結果、サンプル12においても、W相とPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金が生成されていることが確認された。しかし、本サンプル生成されたW-Pt-Cu合金のPt-Cu相には、PtとCuの他にAuが含まれていることが分かった(図73(e)及び図74(e)参照)。この結果から、本試験のように、Cu源に第3の元素を含ませると、当該第3の元素がCuやPtと共にPt-Cu相に拡散することが分かった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 合金材料
12 W相
14 Pt-Cu相
20 第1部材
30 第2部材
100 接合体

Claims (2)

  1. タングステン(W)、白金(Pt)、銅(Cu)の3元素及び不可避的不純物からなる接合用W-Pt-Cu合金であって、
    前記タングステン(W)を主成分とするW相と、前記白金(Pt)と前記銅(Cu)とを有するPt-Cu相とが混在しており、
    SEM-EDXに基づいた前記W相のタングステンの原子数は75atm%以上であり、
    前記SEM-EDXに基づいた前記Pt-Cu相の白金の原子数は0.1atm%以上25atm%以下であり、
    SEM観察において、面積0.001μm~1μmのW相が0.2ヶ所/μm以上の密度で存在するW相存在領域を有しており、
    前記W相存在領域は、平面視における幅方向及び奥行方向に10μm以上存在している、
    ことを特徴とする、接合用W-Pt-Cu合金。
  2. 前記W相は、前記不可避的不純物として、Mo、Fe、Co、Ni、Au、Thからなる群から選択される少なくとも一種を含み、
    前記Pt-Cu相は、前記不可避的不純物として、Mo、Fe、Pd、Ir、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の接合用W-Pt-Cu合金。
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